説明

位相差フィルム、長尺状偏光板、表示装置、位相差フィルムの製造方法

【課題】微粒子及び紫外線吸収剤を含有し、λ/4の位相差を有し、ヘイズが低く抑えられた位相差フィルム、偏光板、及びそれを用いた表示装置を提供することであり、特に、クロストークが無く、画像のコントラストの高い3D液晶表示装置及び有機EL表示装置を提供すること。
【解決手段】23℃、55%RHの環境下、波長550nmの光で測定したフィルム面内のリターデーション値Roが、128〜148nmの範囲となる、少なくとも二層が積層された構成の位相差フィルムであって、第1層が紫外線吸収剤を含有し、第2層が体積平均粒径が0.01〜1.00μmの範囲内にある微粒子を含有し、かつ該第2層が、前記第1層の形成後巻き取られるまでの間に積層されて作製されたことを特徴とする位相差フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位相差フィルム、長尺状偏光板及び表示装置に関し、更に、これらを用いた液晶立体表示装置及び有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムを延伸してなる延伸フィルムは、その光学異方性を利用して、ディスプレイ装置の構成要素等の光学材料として用いられている。例えば、液晶表示装置において、該延伸フィルムを着色防止、視野角拡大などの光学補償などのための位相差フィルムとして用いたり、当該延伸フィルムと偏光子とを貼り合わせて偏光板として用いたりすることが知られている。
【0003】
そして近年、前記位相差フィルムは有機EL表示装置や立体表示装置の表示品質の向上のためにも必要とされてきている。
【0004】
立体表示装置においては、偏光メガネを掛けて液晶表示装置の3D画像を鑑賞するときに、偏光メガネの偏光角度と液晶表示装置から発せられる偏光の角度が適正な角度からずれたときに画像が二重になるという問題があった。これを防止するために、観賞光の波長の1/4の位相差値(リターデーション値ともいう)を有する位相差フィルムが必要とされている。
【0005】
また、有機EL表示装置においては、外光がセルの電極で反射され、画像が白っぽくなるといった問題があった。これを防止するため、可視光の波長の1/4(λ/4ともいう)の位相差値を有する位相差フィルムを鑑賞側に設けることが試みられている。
【0006】
位相差フィルムを作製するためには、流延などで形成したフィルムを特定の方向に延伸することが必要だが、λ/4といった大きなリターデーション値を得るためには、視野角拡大に必要なリターデーション値を得る場合より延伸率を大きくしなければならない。
【0007】
特許文献1には、このようなλ/4のリターデーション値を有するフィルムが記載されている。このようなフィルムは製膜後、ロールに巻き取るときに傷が付かないように、ドープに微粒子を添加してすべり性を付与している。しかし、微粒子が添加されたフィルムを大きな延伸率で延伸すると、ヘイズが上昇して、透明性が低下するといった問題がある。ヘイズの大きな位相差フィルムを用いた液晶表示装置はコントラストが低下し、黒の再現性が悪くなり、有機EL表示装置では外光が反射して鑑賞の障害になる。
【0008】
また、位相差フィルムの耐光性向上(光照射によるフィルムの着色)や液晶表示装置のカラーフィルター及び偏光子の耐光性向上のために、紫外線吸収剤が添加される。位相差フィルムが微粒子と共に紫外線防止剤を含有すると、リターデーション値がλ/4になるまで延伸された場合は、ヘイズが一層大きくなるといった問題があった。
【0009】
特許文献1では、特定の紫外線吸収剤を用いることにより、ある程度ヘイズを抑えられているが、近年市場では更にヘイズの低い位相差フィルムが要望されており、市場の要求を満たすまでに至っていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−265460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
位相差フィルムが紫外線吸収剤を含有せず、位相差フィルムが太陽光等の光照射により着色すると、液晶表示装置及び有機EL表示装置の画像の色再現性が劣化する。従って、位相差フィルムが紫外線吸収剤を含有することは重要な技術である。
【0012】
前記ヘイズが、微粒子と紫外線吸収剤を併用するときに特に大きくなる理由としては、微粒子の分散性が紫外線吸収剤により低下し、凝集が生じて粒子径が増大しているためと推定している。
【0013】
従って、本発明の課題は、微粒子及び紫外線吸収剤を含有し、λ/4の位相差を有し、ヘイズが低く抑えられた位相差フィルム、偏光板、及びそれを用いた表示装置を提供することであり、更に、クロストークが無く、画像のコントラストの高い3D液晶表示装置及び有機EL表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、λ/4の位相差を有する位相差フィルムであって、紫外線吸収剤を含有する第1層、及び該第1層の形成後巻き取られるまでの間に体積平均粒径が0.01〜1.00μmの範囲内にある微粒子を含有する第2層を積層した位相差フィルムは、ヘイズが低減されること見出し本発明に至った。
【0015】
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0016】
1.23℃、55%RHの環境下、波長550nmの光で測定したフィルム面内のリターデーション値Roが、128〜148nmの範囲となる、少なくとも二層が積層された構成の位相差フィルムであって、第1層が紫外線吸収剤を含有し、第2層が体積平均粒径が0.01〜1.00μmの範囲内にある微粒子を含有し、かつ該第2層が、前記第1層の形成後巻き取られるまでの間に積層されて作製されたことを特徴とする位相差フィルム。
【0017】
2.前記第1層が、延伸して作製された後に、前記第2層が、積層されたことを特徴とする前記1に記載の位相差フィルム。
【0018】
3.前記第2層が、塗布により積層されたことを特徴とする前記1又は2に記載の位相差フィルム。
【0019】
4.アセチル基の置換度X及びプロピオニル基またはブチリル基の置換度Yが、下記式(1)および式(2)を満たすセルロースエステルを含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか一項に記載の位相差フィルム。
【0020】
式(1) 2.0≦X+Y≦3.0
式(2) 0≦Y≦1.5
(上記式において、セルロースエステルがプロピオニル基およびブチリル基を共に有する場合、Yはプロピオニル基の置換度とブチリル基の置換度の総和を表す。)
5.前記1〜4のいずれか一項に記載の位相差フィルムを製造する位相差フィルムの製造方法であって、前記第1層を延伸して巻き取るまでの間に、前記第2層を積層することを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
【0021】
6.前記第2層を塗布により積層することを特徴とする前記5に記載の位相差フィルムの製造方法。
【0022】
7.前記1〜4のいずれか一項に記載の位相差フィルムを長尺状の形態で、長尺状の偏光子の少なくとも一方の面に貼合して形成されたことを特徴とする長尺状偏光板。
【0023】
8.前記1〜4のいずれか一項に記載の位相差フィルムを有することを特徴とする表示装置。
【0024】
9.前記表示装置が、立体画像表示装置または有機EL表示装置であることを特徴とする前記8に記載の表示装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明の上記手段により、微粒子及び紫外線吸収剤を含有し、λ/4の位相差を有し、ヘイズが低く抑えられた位相差フィルムを提供することができる。また、長尺状偏光板およびコントラストが改善された表示装置を提供することが出来る。
【0026】
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0027】
微粒子を含有したフィルムを大きく延伸するとヘイズが生じる。ドープが微粒子と紫外線吸収剤を共に含有すると微粒子が凝集して2次粒子が大きくなるため、ヘイズが大きくなると考え、両者を別の層に添加し、粒子の凝集を防止することによりヘイズを小さくすることが出来たと推察している。更に、延伸する層には微粒子を添加せず、延伸しない層に添加することにより更にヘイズが小さくなると推察している。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】流延ドラムを用いた溶液製膜装置の模式図である。
【図2】流延バンドを用いた溶液製膜装置の模式図である。
【図3】斜め延伸装置の模式図である。
【図4】流延ダイの断面図である。
【図5】流延ダイの断面図である。
【図6】流延ダイの断面図である。
【図7】3D表示装置用シャッタメガネと液晶表示装置の層構成を示す図である。
【図8】3D表示装置用シャッタメガネと液晶表示装置の層構成を示す図である。
【図9】有機EL表示装置の層構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の位相差フィルムは、23℃、55%RHの環境下、波長550nmの光で測定したフィルム面内のリターデーション値Roが、128〜148nmの範囲となる、少なくとも二層が積層された構成の位相差フィルムであって、第1層が紫外線吸収剤を含有し、第2層が体積平均粒径が0.01〜1.00μmの範囲内にある微粒子を含有し、かつ該第2層が、前記第1層の形成後巻き取られるまでの間に積層されて作製されたことを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項9までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0030】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記第1層が、延伸して作製された後に、前記第2層が、積層されたることが好ましい。
【0031】
また、前記第2層が、塗布により積層されることが、本発明のヘイズを低減する観点から、好ましい。
【0032】
本発明の位相差フィルムは、偏光板および表示装置に好適に具備され得る。
【0033】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0034】
(位相差フィルム)
前記位相差フィルムは、128〜148nmの面内リターデーション値Roを有する第1層と微粒子を含有する第2層を有する。128〜148nmの面内リターデーション値Roは、可視光の中心波長λである550nmの略1/4に相当し、λ/4の位相差を意味する。このような位相差を有するフィルムはλ/4板とも呼ばれる。
【0035】
前記Roは第1層を作製後、23℃・55%RHにおいて、波長550nmの光により測定された屈折率から下記式により求められる。
【0036】
Ro=(n−n)×d
式中、nはフィルム面内の最大の屈折率であり、遅相軸方向の屈折率ともいう。nはフィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率であり、進相軸方向の屈折率ともいう。dはフィルムの膜厚(nm)を表す。
【0037】
上記屈折率を用いて、厚み方向のリターデーション値Rtが下記式より求められる。
【0038】
Rt={(n+n)/2−n}×d
式中、nは厚み方向の屈折率を表す。
【0039】
前記位相差フィルムは550nmを中心とする可視光で直線偏光を円偏光に返還するλ/4板(Roが可視光の波長の1/4となる)として用いられる。
【0040】
(第1層)
前記第1層は種々の樹脂を用いて形成することができるが、主として熱可塑性樹脂が用いられる。更に前記第1層には、太陽光によるフィルムの着色を防止するため、及び、偏光子とカラーフィルターの褪色を防止するために、紫外線吸収剤が含有される。
【0041】
(熱可塑性樹脂)
前記位相差フィルム用の熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリオレフィン等を用いることができる。また、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、脂環式オレフィンポリマー、アクリル系ポリマー、セルロースエステル等が挙げられるが、中でもセルロースエステルが好ましい。
【0042】
セルロースエステルフィルムの製造工程におけるリターデーション発現性を高める技術としては、リターデーション上昇剤を用いる方法があるが、リターデーション上昇剤を多く用いると発汗したり、ヘイズが大きくなるので好ましくなく、他の方法としては延伸処理を適宜行うことが好ましい。大きなリターデーション値を得ることができる延伸処理としては、残留溶媒量をできる限り低減させた状態で延伸する方法、低温で延伸する方法、延伸倍率を高める方法等が挙げられるが、特に延伸倍率をたかめる方法が効果的であり好ましい。
【0043】
(ヘイズ)
前記位相差フィルムのヘイズは小さいほど、液晶表示装置及び有機ELの表示品質、特に正面コントラストを向上させることができる。本発明の位相差フィルムのヘイズ値は0.1%未満であることが好ましく、0.05%以下がより好ましい。
【0044】
(セルロースエステル)
本発明の位相差フィルムは、種々の樹脂を用いて作製することができるが、セルロースエステルを含有する態様であることが好ましい。従って、以下において、本発明の位相差フィルムをセルロースエステルフィルムと呼称する場合がある。
【0045】
本発明に用いることができるセルロースエステルは、セルロース(ジ、トリ)アセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、及びセルロースフタレートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0046】
これらの中で特に好ましいセルロースエステルは、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートが挙げられる。
【0047】
混合脂肪酸エステルの置換度として、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有している場合、アセチル基の置換度X、プロピオニル基またはブチリル基の置換度Yが下記式(1)および式(2)を同時に満足するセルロースエステルが好ましい。
【0048】
式(1) 2.0≦X+Y≦3.0
式(2) 0≦Y≦1.5
(式(1)、(2)において、セルロースエステルがプロピオニル基およびブチリル基を有する場合、Yはプロピオニル基の置換度とブチリル基の置換度の総和を表す。)
さらに、本発明で用いられるセルロースエステルは、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn比が1.5〜5.5のものが好ましく用いられ、特に好ましくは2.0〜5.0であり、さらに好ましくは2.5〜5.0であり、更に好ましくは3.0〜5.0のセルロースエステルが好ましく用いられる。
【0049】
本発明で用いられるセルロースエステルの原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロースエステルは適宜混合して、或いは単独で使用することができる。
【0050】
例えば、綿花リンター由来セルロースエステル:木材パルプ(針葉樹)由来セルロースエステル:木材パルプ(広葉樹)由来セルロースエステルの比率が100:0:0、90:10:0、85:15:0、50:50:0、20:80:0、10:90:0、0:100:0、0:0:100、80:10:10、85:0:15、40:30:30で用いることができる。
【0051】
本発明において、セルロースエステルは、20mlの純水(電気伝導度0.1μS/cm以下、pH6.8)に1g投入し、25℃、1hr、窒素雰囲気下にて攪拌した時のpHが6〜7、電気伝導度が1〜100μS/cmであることが好ましい。
【0052】
また、セルロースエステルは、工業的には、硫酸を触媒として合成されているが、この硫酸は完全には除去されておらず、残留する硫酸が溶融製膜時に各種の分解反応を引き起こし、得られるセルロースエステルフィルムの品質に影響を与えるため、本発明に用いられるセルロースエステル中の残留硫酸含有量は、硫黄元素換算で0.1〜40ppmの範囲であることが好ましい。これらは塩の形で含有していると考えられる。残留硫酸含有量が40ppmを超えると熱溶融時のダイリップ部の付着物が増加するため好ましくない。また、熱延伸時や熱延伸後でのスリッティングの際に破断しやすくなるため好ましくない。少ない方が好ましいが、0.1ppm未満とするにはセルロースエステルの洗浄工程の負担が大きくなり過ぎるため好ましくないだけでなく、逆に破断しやすくなることがあり好ましくない。これは洗浄回数が増えることが樹脂に影響を与えているのかもしれないがよく分かっていない。更に0.1〜30ppmの範囲が好ましい。残留硫酸含有量は、同様にASTM−D817−96により測定することができる。
【0053】
また、その他(酢酸等)の残留酸を含めたトータル残留酸量は1000ppm以下が好ましく、500ppm以下が更に好ましく、100ppm以下がより好ましい。
【0054】
セルロースエステルの洗浄は、水に加えて、メタノール、エタノールのような貧溶媒、或いは結果として貧溶媒であれば貧溶媒と良溶媒の混合溶媒を用いることができ、残留酸以外の無機物、低分子の有機不純物を除去することができる。
【0055】
また、セルロースエステルの耐熱性、機械物性、光学物性等を向上させるため、セルロースエステルの良溶媒に溶解後、貧溶媒中に再沈殿させ、セルロースエステルの低分子量成分、その他不純物を除去することができる。更に、セルロースエステルの再沈殿処理の後、別のポリマー或いは低分子化合物を添加してもよい。
【0056】
また、本発明で用いられるセルロースエステルはフィルムにした時の輝点異物が少ないものであることが好ましい。輝点異物とは、二枚の偏光板を直交に配置し(クロスニコル)、この間にセルロースエステルフィルムを配置して、一方の面から光源の光を当てて、もう一方の面からセルロースエステルフィルムを観察した時に、光源の光が漏れて見える点のことである。このとき評価に用いる偏光板は輝点異物がない保護フィルムで構成されたものであることが望ましく、偏光子の保護にガラス板を使用したものが好ましく用いられる。輝点異物はセルロースエステルに含まれる未酢化もしくは低酢化度のセルロースがその原因の1つと考えられ、輝点異物の少ないセルロースエステルを用いることと、溶融したセルロースエステルもしくはセルロースエステル溶液を濾過すること、或いはセルロースエステルの合成後期の過程や沈殿物を得る過程の少なくともいずれかにおいて、一度溶液状態として同様に濾過工程を経由して輝点異物を除去することもできる。溶融樹脂は粘度が高いため、後者の方法のほうが効率がよい。
【0057】
(紫外線吸収剤)
前記第1層は紫外線吸収剤を含有する。
【0058】
紫外線吸収剤はセルロースエステル樹脂が太陽光の照射により黄色に着色するのを防止することが出来る。また、偏光板保護フィルムとして本発明の位相差フィルムを使用した場合、太陽光による偏光子の色素破壊を防止することができる。また、本発明の位相差フィルムを液晶表示装置に使用した場合、カラーフィルターが太陽光により褪色するのを防止することが出来る。
【0059】
使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号、同8−337574号、特開2001−72782号記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号、特開2002−31715号、同2002−169020号、同2002−47357号、同2002−363420号、同2003−113317号記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
【0060】
本発明に有用な紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326(何れもBASFジャパン社製)を好ましく使用できる。高分子紫外線吸収剤としては、大塚化学社製の反応型紫外線吸収剤RUVA−93を例として挙げることができる。
【0061】
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0062】
本発明で好ましく用いられる上記記載の紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
【0063】
紫外線吸収剤のドープへの添加方法は、ドープ中で紫外線吸収剤を溶解するようなものであれば制限なく使用できるが、本発明においては紫外線吸収剤をメチレンクロライド、酢酸メチル、ジオキソラン等のセルロースエステルに対する良溶媒、又は良溶媒と低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)のような貧溶媒との混合有機溶媒に溶解し紫外線吸収剤溶液としてセルロースエステル溶液に添加してドープとする方法が好ましい。この場合できるだけドープ溶媒組成と紫外線吸収剤溶液の溶媒組成とを同じとするか近づけることが好ましい。紫外線吸収剤の含有量は0.01〜5質量%、特に0.5〜3質量%である。
【0064】
(可塑剤)
前記第1層には、所謂可塑剤として知られる化合物を、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水蒸気透過率低減、リターデーション調整等の目的で添加することが好ましく、例えばリン酸エステルやカルボン酸エステルが用いられる。
【0065】
可塑剤はセルロースエステルフィルム中に1〜40質量%、特に1〜30質量%含有することが好ましい。
【0066】
リン酸エステルとしては、例えばトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。
【0067】
カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステル等、フタル酸エステルとしては、例えばジメチルフタレート、ジエチルホスフェート、ジオクチルフタレート及びジエチルヘキシルフタレート等、またクエン酸エステルとしてはクエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルを挙げることができる。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバチン酸ジブチル、トリアセチン等も挙げられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートもこの目的で好ましく用いられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートのアルキルは炭素原子数1〜8のアルキル基である。アルキルフタリルアルキルグリコレートとしてはメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることができ、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく用いられる。またこれらアルキルフタリルアルキルグリコレートを二種以上混合して使用してもよい。
【0068】
また、可塑剤として特許第3793184号公報記載の下記化合物(1)〜(3)のクエン酸エステル系可塑剤を用いることも出来る。
【0069】
【化1】

【0070】
【化2】

【0071】
【化3】

【0072】
また、多価アルコールエステルも用いることが出来る。
【0073】
本発明の位相差フィルムに用いられる多価アルコールは次の一般式(1)で表される。
【0074】
一般式(1):R−(OH)
但し、Rはn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/又はフェノール性ヒドロキシ基(水酸基)を表す。
【0075】
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
【0076】
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0077】
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
【0078】
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0079】
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
【0080】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
【0081】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
【0082】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を二個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
【0083】
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
【0084】
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、二種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
【0085】
以下に、本発明に用いられる多価アルコールエステル系可塑剤の具体的化合物を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0086】
【化4】

【0087】
【化5】

【0088】
【化6】

【0089】
【化7】

【0090】
また、多価アルコールとして糖を用いた、下記一般式(2)で表される糖エステルも用いることが出来る。以下に一般式(2)で表される糖エステルの化合物例も示す。
【0091】
一般式(2)中、R〜Rは、各々独立に、置換又は無置換のアルキルカルボニル基、若しくは、置換又は無置換のアリールカルボニル基を表し、R〜Rは相互に同じであっても、異なっていてもよい。なお、下表中に記載のRは、R〜Rのうちのいずれかを表す。アルキルカルボニル基及びアリールカルボニル基の置換基としては、下表に示すアルキルカルボニル基及びアリールカルボニル基が有するフェニル基、アルコキシ基等の置換基が好ましい。
【0092】
【化8】

【0093】
【化9】

【0094】
(一般式(2)で表される化合物の合成例)
【0095】
【化10】

【0096】
撹拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖34.2g(0.1モル)、無水安息香酸180.8g(0.8モル)、ピリジン379.7g(4.8モル)を仕込み、撹拌下に窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行った。次に、コルベン内を4×10Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。そして、次にトルエン1L、0.5質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを添加し、50℃で30分間撹拌後、静置して、トルエン層を分取した。最後に、分取したトルエン層に水100gを添加し、常温で30分間水洗後、トルエン層を分取し、減圧下(4×10Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、化合物A−1、A−2、A−3、A−4及びA−5の混合物を得た。得られた混合物をHPLC及びLC−MASSで解析したところ、A−1が7質量%、A−2が58質量%、A−3が23質量%、A−4が9質量%、A−5が3質量%であった。なお、得られた混合物の一部をシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製することで、それぞれ純度100%のA−1、A−2、A−3、A−4及びA−5を得た。
【0097】
一般式(2)で表される糖エステルの総平均置換度は6.1〜6.9が好ましいが、当該置換度の範囲は4.0〜8.0であることが特に好ましい。置換度分布は、エステル化反応時間の調節、又は置換度違いの化合物を混合することにより目的の置換度に調整してもよい。
【0098】
これらの化合物は、セルロースエステルに対して1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%となるように含まれていることが好ましい。また、延伸及び乾燥中のブリードアウト等を抑制させるため、200℃における蒸気圧が1400Pa以下の化合物であることが好ましい。
【0099】
これらの化合物は、セルロースエステル溶液の調製の際に、セルロースエステルや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
【0100】
可塑剤としては特に、下記一般式(3)で表される芳香族末端エステル系可塑剤を用いることが好ましい。
【0101】
一般式(3):B−(G−A)−G−B
(式中、Bはベンゼンモノカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基又は炭素数6〜12のアリールグリコール残基又は炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。)
一般式(3)で表される芳香族末端エステル系可塑剤は、Bで示されるベンゼンモノカルボン酸残基とGで示されるアルキレングリコール残基又はオキシアルキレングリコール残基又はアリールグリコール残基、Aで示されるアルキレンジカルボン酸残基又はアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のポリエステル系可塑剤と同様の反応により得られる。
【0102】
本発明に用いられる芳香族末端エステル系可塑剤のベンゼンモノカルボン酸成分としては、例えば、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ一種又は二種以上の混合物として使用することができる。
【0103】
本発明に用いられる芳香族末端エステル系可塑剤の炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用される。
【0104】
また、芳香族末端エステルの炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用できる。
【0105】
また、芳香族末端エステルの炭素数6〜12のアリールグリコール成分としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノール等があり、これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用できる。
【0106】
芳香族末端エステルの炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ一種又は二種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリールジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、1,5ナフタレンジカルボン酸、1,4ナフタレンジカルボン酸等がある。
【0107】
芳香族末端エステル系可塑剤は、数平均分子量が、好ましくは300〜2000、より好ましくは480〜1500の範囲が好適である。また、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、ヒドロキシ(水酸基)価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、ヒドロキシ(水酸基)価は15mgKOH/g以下のものが好適である。
【0108】
以下、前記芳香族末端エステル系可塑剤の合成例を示す。
【0109】
〈サンプルNo.1(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器に、フタル酸820部(5モル)、1,2−プロピレングリコール608部(8モル)、安息香酸610部(5モル)及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.30部を一括して仕込み窒素気流中で攪拌下、還流凝縮器を付して過剰の1価アルコールを還流させながら、酸価が2以下になるまで130〜250℃で加熱を続け生成する水を連続的に除去した。次いで200〜230℃で6.65×10Pa、最終的に4×10Pa以下の減圧下、留出分を除去し、この後濾過して次の性状を有する芳香族末端エステルを得た。
【0110】
粘度(25℃、mPa・s):19815
酸価 :0.4
〈サンプルNo.2(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器に、アジピン酸500部(3.5モル)、安息香酸305部(2.5モル)、ジエチレングリコール583部(5.5モル)及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.45部を用いる以外はサンプルNo.1と全く同様にして次の性状を有する芳香族末端エステルを得た。
【0111】
粘度(25℃、mPa・s):90
酸価 :0.05
〈サンプルNo.3(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器にフタル酸410部(2.5モル)、安息香酸610部(5モル)、ジプロピレングリコール737部(5.5モル)及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.40部を用いる以外はサンプルNo.1と全く同様にして次の性状を有する芳香族末端エステル系可塑剤を得た。
【0112】
粘度(25℃、mPa・s):43400
酸価 :0.2
以下に、本発明に用いられる芳香族末端エステル系可塑剤の具体的化合物を示す。
【0113】
【化11】

【0114】
【化12】

【0115】
(第1層の製造方法)
前記第1層は、ヘイズを低減するために微粒子を含有しないことが好ましい。
【0116】
前記位相差フィルムの例としてセルロースエステルフィルムの製造方法について述べる。
【0117】
前記位相差フィルムを製造する装置としては、表面が鏡面処理された流延バンドを用いた溶液製膜装置であっても、流延ドラムを用いた溶液製膜装置であってもよい。流延バンドを用いた溶液製膜装置を図1に、流延ドラムを用いた溶液製膜装置を図2に示す。図1に示すバンド式の溶液製膜装置において、11は攪拌機で、綿、可塑剤及び溶剤が投入されているものであり、この攪拌機11は、移送ポンプ12、濾過器13、ストックタンク14、流延送液ポンプ15、及びマット剤、染料、紫外線吸収剤等を添加するための添加剤注入ポンプ16を介して流延ダイ17に連結されている。流延ダイ7の下方には、流延バンド18が設けられるとともに、減圧チャンバー19が設けられている。図2に示すドラム式の溶液製膜装置において、20は流延ドラムで、バンド式の溶液製膜装置における流延バンド18の代わりに設けられている。なお、攪拌機11、移送ポンプ12、濾過器13、ストックタンク14、流延送液ポンプ15、添加剤注入ポンプ16及び流延ダイ17は同一に構成されている。上記流延ダイとしては、図4、図5及び図6に示すようなものを用いることができる。図4は、単層のフィルムを製膜する際に用いる流延ダイで、この流延ダイ30は、1つのマニホールド31が形成されている。図5は、マルチマニホールド型の共流延ダイで、この共流延ダイ30は、3つのマニホールド32が形成され3層構成のフィルムを製膜できるものである。前記3つのマニホールドの内の1つを第1層用のドープを流し、他のマニホールドに第2層用のドープを流して、積層し、本発明の位相差フィルムを製造することも出来る。
【0118】
図6は、フィードブロック型の共流延ダイで、この共流延ダイ30は、マニホールド33が形成されるとともに、フィードブロック34が設けられ、フィードブロック34で合流させられて複数層(図6においては3層)になったドープを流延するものである。なお、以上の流延ダイにおいては、コートハンガーダイを使用しているが、これに限定されるものでなく、Tダイ等他の形状のダイであってもよい。
【0119】
本発明に係る第1層の製造は、セルロースエステル及び可塑剤などの添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状若しくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸する工程、更に乾燥する工程、必要であれば得られたフィルムを更に熱処理する工程、冷却後巻き取る工程により行われることが好ましい。本発明に係る原反フィルムは固形分中に好ましくはセルロースエステルを60〜95質量%含有するものであることが好ましい。
【0120】
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
【0121】
セルロースエステルを溶解しセルロースエステル溶液又はドープ形成に有用な有機溶媒としては、塩素系有機溶媒と非塩素系有機溶媒がある。塩素系の有機溶媒としてメチレンクロライド(塩化メチレン)を挙げることができ、セルロースエステル、特にセルローストリアセテートの溶解に適している。昨今の環境問題から非塩素系有機溶媒の使用が検討されている。
【0122】
非塩素系有機溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができる。
【0123】
これらの有機溶媒をセルローストリアセテートに対して使用する場合には、常温での溶解方法も使用可能であるが、高温溶解方法、高圧溶解方法等の溶解方法を用いることにより不溶解物を少なくすることができるので好ましい。セルローストリアセテート以外のセルロースエステルに対しては、メチレンクロライドを用いることはできるが、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンが好ましく使用される。特に酢酸メチルが好ましい。
【0124】
本発明に用いられるドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。これらはドープを金属支持体に流延後溶媒が蒸発をし始めアルコールの比率が多くなるとドープ膜(ウェブ)がゲル化し、ウェブを丈夫にし金属支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらのうちドープの安定性に優れ、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。これらの有機溶媒は単独ではセルロースエステルに対して溶解性を有していないので貧溶媒という。
【0125】
ドープ中のセルロースエステルの濃度は15〜30質量%、ドープ粘度は100〜500Pa・sの範囲に調製されることが良好なフィルム面品質を得る上で好ましい。
【0126】
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。また、セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤或いは膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
【0127】
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
【0128】
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
【0129】
若しくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースエステルを溶解させることができる。
【0130】
次に、このセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生しやすいという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
【0131】
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
【0132】
輝点異物とは、二枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にセルロースエステルフィルムを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm以下であり、更に好ましくは50個/m以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
【0133】
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
【0134】
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
【0135】
ここで、ドープの流延について説明する。
【0136】
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃以上溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃が更に好ましい。或いは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
【0137】
セルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%又は60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%又は70〜120質量%である。また、当該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
【0138】
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
【0139】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブ又はフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
【0140】
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量が0.5質量%以下となるまで乾燥される。
【0141】
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
【0142】
前記金属支持体から剥離する際に、剥離張力及びその後の搬送張力によってウェブは縦方向に延伸する為、本発明においては流延支持体からウェブを剥離する際は剥離及び搬送張力をできるだけ下げた状態で行うことが好ましい。具体的には、例えば50〜170N/m以下にすることが効果的である。その際、20℃以下の冷風を当て、ウェブを急速に固定化することが好ましい。
【0143】
次いで、上記乾燥したフィルムを延伸することにより、128〜148nmのリターデーション値Roを有する第1層を製造する。
【0144】
(延伸)
128〜148nmのRoを有する位相差フィルムを作製するために、流延したドープを延伸することが好ましい。延伸は第1層と第2層を積層させてから行っても良いし、第1層のみ行っても良いが、好ましくは第1層のみに延伸を行うことが好ましい。
【0145】
図1には、流延された第1層のフィルムが延伸装置22により延伸された後、塗布ダイ23により第2層が塗布され、巻き取りロール21に巻き取られ、第1層が延伸されてから第2層が積層される様子が示されている。
【0146】
図2には、流延された第1層のフィルムに塗布ダイ23により第2層が塗布され、延伸装置22により延伸され、巻き取りロール21に巻き取られることにより、第1層と第2層が同時に延伸される様子が示されている。
【0147】
第1層用のドープを乾燥後、延伸するときの延伸方向はTD方向、MD方向、斜め方向のいずれでも良いが、長尺状位相差フィルムを長尺状偏光子と貼合してロールトゥーロールで長尺状偏光板を製造できることから、斜め方向の延伸が好ましい。
【0148】
また、128〜148nmの面内リターデーション値Ro(波長550nmの光で測定)を得るために、第1層の厚みが20〜100μmが好ましく、延伸率は50〜250%が好ましい。延伸するときのフィルムの温度は140〜220℃が好ましい。
【0149】
(斜め延伸)
前記長尺状位相差フィルムの斜め方向の延伸は、当該長尺状位相差フィルムの搬送方向に対して10〜45°の範囲内の角度で面内遅相軸を有するように斜め方向に延伸した後に、把持手段により、フィルムの両端を搬送方向に対して−90〜−70°の範囲内の角度で、かつ0〜20%の範囲内の延伸率で、延伸することが好ましい。
【0150】
本願において、「長尺状」とは、フィルムの幅に対し、少なくとも5倍程度以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍もしくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻回されて保管又は運搬される程度の長さを有するもの(フィルムロール)としうる。
【0151】
長尺状のフィルムの製造方法では、フィルムを連続的に製造することにより、所望の任意の長さにフィルムを製造しうる。なお、延伸フィルムの製造方法は、製膜後一度巻芯に巻き取り、巻回体にしてから斜め延伸工程に供給するようにしてもよいし、製膜後フィルムを巻き取ることなく、製膜工程から連続して斜め延伸工程に供給してもよい。製膜工程と斜め延伸工程を連続して行うことは、延伸後の膜厚や光学値の結果をフィードバックして製膜条件を変更し、所望の延伸フィルムを得ることができるので好ましい。
【0152】
フィルムの搬送方向と面内遅相軸とがなす角度(θ)は、より好ましくは20〜40°、更に好ましくは25°〜35°である。
【0153】
当該長尺状位相差フィルムの搬送方向に対して10〜45°の範囲内の角度で面内遅相軸を有するように斜め方向に延伸した後に、把持手段により、フィルムの両端を搬送方向に対して−90〜−70°の範囲内の角度で、かつ0〜20%の範囲内の延伸率で、延伸することでツレやスジを防止できる効果を有する。
【0154】
未延伸フィルムの幅は、特に限定されないが、500〜4000mm、好ましくは1000〜2000mmとすることができる。また、フィルムの総厚さは、特に限定されないが、20〜400μm、好ましくは20〜200μmの範囲内であることが好ましい。
【0155】
未延伸フィルムの斜め延伸時の延伸温度での好ましい弾性率は、ヤング率で表して、0.01Mpa以上5000Mpa以下、更に好ましくは0.1Mpa以上500Mpa以下である。弾性率が低すぎると延伸時・延伸後の収縮率が低くなり、シワが消えにくくなり、また高すぎると延伸時にかかる張力が大きくなり、フィルムの両側縁部を保持する部分の強度を高くする必要が生じ、テンターに対する負荷が大きくなる。
【0156】
<斜め延伸テンターによる延伸>
前記延伸に供される長尺状の未延伸フィルムに配向を付与するためには、図1、2に示した延伸装置22として、斜め延伸装置(斜め延伸テンター)を用いることが好ましい。斜め延伸テンターはレールパターンを多様に変化させることにより、フィルムの面内遅相軸方向を自在に設定でき、さらに、フィルムの配向軸をフィルム幅方向に渡って左右均等に高精度に配向させることができ、かつ、高精度でフィルム厚さやリターデーションを制御できるフィルム延伸装置であることが好ましい。
【0157】
図3は、前記延伸フィルムの製造方法に用いられる斜め延伸可能なテンターの模式図である。
【0158】
テンター入り口側のガイドロール48−1によって方向を制御された未延伸フィルム41は、右側のフィルム保持開始点42−1、左側のフィルム保持開始点42−2の位置で把持具(クリップつかみ部ともいう)によって担持され、テンター44にて右側のフィルム保持手段の軌跡43−1、左側のフィルム保持手段の軌跡43−2で示される斜め方向に搬送、延伸され、右側のフィルム保持終了点45−1、左側のフィルム保持終了点45−2によって把持を解放され、テンター出口側のガイドロール48−2によって搬送を制御されて斜め延伸フィルム46が形成される。図中、未延伸フィルムは、フィルムの送り方向47−1に対して、フィルムの延伸方向49の角度で斜め延伸される。
【0159】
斜め延伸工程における延伸率は50〜250%が好ましい。延伸率がこの範囲にあると幅方向厚さムラが小さくなり、大きなRoが得られるので好ましい。斜め延伸テンターの延伸ゾーンにおいて、幅方向で延伸温度に差を付けると幅方向厚さムラをさらに良好なレベルにすることが可能になる。
【0160】
〈搬送方向に対して所定角度の方向への延伸〉
前記斜め延伸では、長尺状位相差フィルムの搬送方向に対して10〜45°の範囲内の角度で面内遅相軸を有するように斜め方向に延伸した後に、把持手段により、フィルムの両端を搬送方向に対して−90〜−70°の範囲内の角度で、かつ0〜20%の範囲内の延伸率で、延伸することが好ましい。そのために、搬送方向に直交する方向、又は斜め方向に延伸できる延伸装置を用いることが好ましい。
【0161】
当該延伸装置は、レールパターンを多様に変化させることにより、フィルムの面内遅相軸方向を自在に設定でき、さらに、フィルムの面内遅相軸方向をフィルム幅方向に渡って左右均等に高精度に配向させることができ、かつ、高精度でフィルム厚さやリターデーションを制御できるフィルム延伸装置であることが好ましい。
【0162】
(第2層の積層)
第1層がロールに巻き取られるときに、第1層の表面に傷が付くのを防止するために、第1層が巻き取られる前に第2層を積層する。第2層は微粒子を含有するため適度な滑り性を付与し、前記位相差フィルムに傷が付くのを防止することが出来る。
【0163】
前記第1層に前記第2層を積層するには、共流延法(重層同時流延)、逐次流延法、塗布法等の方法を用いることができる。共流延法および逐次流延法により製造する場合には、先ず、各層用のドープを調製する。共流延法は、流延用支持体(バンドまたはドラム)の上に、各層(3層あるいはそれ以上でも良い)各々の流延用ドープを別のスリットなどから同時に押出す流延用ギーサからドープを押出して各層を同時に流延し、適当な時期に支持体から剥ぎ取り、乾燥させてフィルムを成形する流延法である。
【0164】
逐次流延法は、流延用支持体の上に先ず第1層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して流延し、乾燥あるいは乾燥させることなく、その上に第2層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して流延・積層し、適当な時期に支持体から剥ぎ取り、乾燥させてフィルムを成形する流延法である。塗布法は、一般的には、第1層のフィルムを溶液製膜法により成形し、第2層を形成するために塗布する塗布液を調製し、適当な塗布機を用いて、片面ずつまたは両面同時にフィルムに塗布液を塗布・乾燥して積層構造のフィルムを成形する方法である。
【0165】
以上のように、本発明に係る第2層を積層するには、共流延法、逐次流延法及び塗布法のどの方法を用いてもよい。しかし、第1層を延伸した後に積層する場合は、塗布法が好ましい。
【0166】
前記第2層は微粒子を含有するが、他に前記第1層の場合と同様に、前記の可塑剤を含有することが出来る。
【0167】
(塗布方法)
塗布方法としては、グラビアコーター、スピナーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、リバースコーター、押出コーター、エアードクターコーター、スプレーコート、インクジェット法等公知の方法を用いることができる。塗布量はウエット膜厚で3〜30μmが適当で、好ましくは5〜20μmである。塗布速度は10〜200m/分が好ましい。
【0168】
(微粒子)
前記第2層は、体積平均粒径が0.01μm以上1μm以下の微粒子を含有する。体積平均粒径が0.01μm以上であることにより、前記位相差フィルムは適度な滑り性を有し、巻き取るときに発生する傷を防止できる。1μm以下であることによりヘイズが低く抑えることが出来る。
【0169】
微粒子としては、無機化合物を用いることが好ましい。無機化合物の例には、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムが含まれる。二酸化ケイ素、二酸化チタンおよび酸化ジルコニウムが好ましく、二酸化ケイ素が特に好ましい。無機化合物の微粒子は、表面処理により粒子表面にメチル基を導入することができる。例えば、酸化ケイ素の微粒子をジクロロジメチルシランやビス(トリメチルシリル)アミンで処理すればよい。
【0170】
二酸化ケイ素の微粒子は、既に市販されている(例、アエロジルR972、R972D、R974、R812、日本アエロジル(株)製)。また、酸化ジルコニウムの微粒子にも市販品がある(例、アエロジルR976、R811、日本アエロジル(株)製)。微粒子の体積平均粒径は、0.1乃至1.0μmであることが好ましく、0.1乃至0.5μmであることがさらに好ましい。
【0171】
なお、前記体積平均粒径は、レーザー回折散乱法により測定することができる。例えばベックマン・コールター製LS13320などを用いて計測できる。測定は、有機溶媒に分散して測定を実施するが、製膜する溶媒組成と同じ組成にして測定を行うことが好ましい。
【0172】
前記微粒子を添加することにより、A面(流延バンド又は流延ドラムに流延して警醒したフィルムの空気側)の表面粗さを1.0〜3.0nmに調整することが好ましい。表面粗さが1.0nm以上であればロールに巻き取られたときでも傷が付き難く、表面粗さが3.0nm以下であればフィルムのヘイズを抑えられる。
【0173】
(バインダー)
前記第2層はポリマーを含有することが好ましく、該ポリマーは、上記微粒子のバインダーとしても機能することができる。該ポリマーとしては、親水性ポリマーと疎水性ポリマーのいずれも用いることができる。なお、親水性と疎水性は相対的な概念であって、特に厳密な境界はない。
【0174】
親水性ポリマーの例には、タンパク質(例、ゼラチン、ゼラチン誘導体)、多糖類(例、セルロース誘導体、寒天、アルギン酸ソーダ、でんぷん)、ポリビニルアルコール、アクリル酸系ポリマーおよび無水マレイン酸系ポリマーが挙げられる。
【0175】
セルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロースやヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。
【0176】
疎水性バインダーの例には、セルロースエステル(例えば、ニトロセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、メチルセルロース)、ビニル系ポリマー(例、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルアクリレート)、ポリアミドおよびポリエステルが挙げられる。
【0177】
上記ポリマーの内、ゼラチン、ゼラチン誘導体、アクリル酸系ポリマー、セルロース誘導体およびセルロースエステルが好ましく用いられる。ゼラチン、ゼラチン誘導体およびセルロースエステルが特に好ましい。ポリマーの塗布量は、10mg/m乃至10g/mの範囲であることが好ましい。第2層は、第1層上に直接設けてもよいし、他の層(例えば、帯電防止層)を介して設けてもよい。また、第1層の片面のみに塗布層を設けてもよいし、両面に設けてもよい。
【0178】
(脂肪酸エステル)
第2層には、塗布ムラ改善のために、脂肪酸エステルを添加することができる。該脂肪酸エステルの炭素原子数は、32以上であることが好ましく、32乃至140であることがより好ましく、41乃至140であることがさらに好ましく、48乃至140であることが最も好ましい。また、該脂肪酸エステルを構成する脂肪酸とアルコールの炭素原子数は、それぞれ10以上であることが好ましく、12乃至70であることがさらに好ましい。脂肪酸とアルコールのいずれか一方は、分岐を有していることが好ましい。また、分岐は、エステル結合に隣接する炭素原子のさらに隣の(二番目の)炭素原子の位置であることが好ましい。脂肪酸エステルの添加量は、第2層が含有するポリマーの量の10〜100質量%であることが好ましい。前記脂肪酸エステルについては、特開平3−23438号公報に記載がある。
【0179】
(偏光板)
本発明に係る偏光板は、偏光子としてヨウ素、又は二色性染料をドープしたポリビニルアルコールを延伸したものを使用し、本発明の位相差フィルムであるλ/4板/偏光子/光学フィルムの構成で貼合して製造することができる。
【0180】
なお、立体映像表示装置である液晶表示装置に前記偏光板を使用する場合、上記λ/4板は視認側に貼合し、有機EL表示装置に前記偏光板を使用する場合、視認側とは反対側に貼合する。
【0181】
本発明においては、長尺状位相差フィルムを、長尺状の偏光子の少なくとも一方の面に積層して形成される長尺状偏光板とすることが好ましい。
【0182】
本発明に係る偏光板は、特に立体映像表示装置や有機EL表示装置に用いられることが好ましい。その場合、本発明の位相差フィルムと偏光子との貼合は、位相差フィルムの遅相軸と偏光子の透過軸との角度が実質的に45°になるように積層させるのが好ましい。「実質的に45°」とは、40〜50°であることを意味する。前記位相差フィルムの面内の遅相軸と偏光子の透過軸との角度は、41〜49°であることが好ましく、42〜48°であることがより好ましく、43〜47°であることが更に好ましく、44〜46°であることが最も好ましい。
【0183】
偏光子に対して前記λ/4板を貼合した面と反対側の面に貼合される光学フィルムは、上記式で定義されるリターデーション値Ro、Rtが各々20〜150nm、70〜400nmである光学フィルム、又は0nm≦Ro≦2nm、かつ−15nm≦Rt≦15nmである光学フィルムが好ましい。
【0184】
上記λ/4板を貼合した面と反対側の面に貼合される光学フィルムとして、例えば、負の一軸性を有する化合物であるディスコティック液晶性化合物を支持体上に担持させる方法(例えば、特開平7−325221号公報参照。)、正の光学異方性を有するネマティック型高分子液晶性化合物を深さ方向に液晶分子のプレチルト角が変化するハイブリッド配向をさせたものを支持体上に担持させる方法(例えば、特開平10−186356号公報参照。)、正の光学異方性を有するネマティック型液晶性化合物を支持体上に二層構成にして各々の層の配向方向を略90°とすることにより擬似的に負の一軸性類似の光学特性を付与させる方法(例えば、特開平8−15681号公報参照。)等による光学異方性層を支持体上に設けた光学フィルム、又は、従来のTACフィルムの代わりにセルロース誘導体フィルムを延伸により位相差を発現させた光学フィルム、セルロースエステルフィルムにリターデーション調整剤を添加し、位相差を持たせた光学フィルムを得る方法(例えば、特開2000−275434号公報及び特開2003−344655号公報参照。)等による光学フィルムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0185】
例えば、市販のセルロースエステルフィルムとして、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC16UR、KC4UE、KC8UE、KC4FR−1、KC4FR−2(以上コニカミノルタオプト(株)製)なども好ましく用いられる。
【0186】
偏光子の膜厚は、5〜40μm、好ましくは5〜30μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。
【0187】
偏光板は、一般的な方法で作製することができる。アルカリ鹸化処理した本発明の位相差フィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面には、前記光学フィルムを貼合することが好ましい。
【0188】
偏光板は、更に当該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することができる。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。
【0189】
<液晶表示装置>
本発明においては、長尺状位相差フィルムを断栽して形成された枚葉状フィルム、前記長尺状偏光板を断栽して形成された枚葉状偏光板が具備されている態様の液晶表示装置とすることができる。例えば、本発明に係る偏光板を液晶セルの視認側の面に貼合した液晶表示装置とすることによって、本発明に係る液晶表示装置を作製することができる。
【0190】
本発明に係る偏光板は反射型、透過型、半透過型LCD或いは、スーパーツイステッドネマティック(STN)モード、ツイステッドネマティック(TN)モード、インプレーンスイッチング(IPS)モード、垂直配向(VA)モード、ベンドネマチック(OCB:Optically Aligned Birefringence)モード及びハイブリッド配向(HAN:Hybrid Aligned Nematic)モードの液晶表示装置に好ましく用いられる。
【0191】
本発明においては、特に、当該液晶表示装置は、立体画像表示装置か有機EL表示装置であることが好ましい。
【0192】
前記立体画像表示装置の中でも、特にフレーム・シーケンシャル方式の表示パネルとアクティブシャッター方式のシャッタメガネとからなる立体画像表示装置に好ましく用いられる。その場合、λ/4板である本発明の位相差フィルムは、立体画像表示装置において、種々の態様において用いることができる。例えば、液晶表示装置Lと液晶シャッタメガネKとからなる立体画像表示装置において、当該液晶シャッタメガネは、(1)λ/4板K3、液晶セルK2、及び偏光子K1がこの順に設けられている(図7参照)、又は(2)λ/4板K3、偏光子K4、液晶セルK2、及び偏光子K1がこの順に設けられている(図8参照)態様となる。
【0193】
なお、いずれの態様の場合も、液晶表示装置の視認側偏光板のフィルム、偏光子と液晶セルの配置は、λ/4板、偏光子、光学フィルム及び液晶セルがこの順に設けられている構成になっている。
【実施例】
【0194】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0195】
[実施例1]
(ポリエステルA(芳香族末端エステル系可塑剤)の作製)
窒素雰囲気下、テレフタル酸ジメチル4.85g、1,2−プロピレングリコール4.4g、p−トルイル酸6.8g、テトライソプロピルチタネート10mgを混合し、140℃で2時間攪拌を行った後、更に210℃で16時間攪拌を行った。次に、170℃まで降温し、未反応物の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、ポリエステルAを得た。
【0196】
酸価 :0.1mgKOH/g
数平均分子量:490
分散度 :1.4
分子量300〜1800の成分含有率:90%
ヒドロキシ(水酸基)価:0.1mgKOH/g
ヒドロキシ基(水酸基)含有量:0.04%
ポリエステルAはジカルボン酸に対してモノカルボン酸が2倍モル使用されているので末端がトルイル酸エステルになっている。
【0197】
〈微粒子分散液1〉
セルロースエステル(CAP:アセチル基置換度1.5、プロピオニル基0.9、総置換度2.4;数平均分子量Mn=57,500、重量平均分子量Mw=190,000、Mw/Mn=3.30) 7質量部
微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製) 1質量部
エタノール 92質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
【0198】
〈微粒子塗布液1〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、体積平均粒径が0.1μmとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子塗布液1を調製した。
【0199】
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部。
【0200】
<位相差フィルム1の作製>
(主ドープ液1の作製)
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステル、糖エステル化合物、ポリエステルA、TINUVIN928を攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
【0201】
〈主ドープ液1の組成〉
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースエステル(CAP:アセチル基置換度1.5、プロピオニル基置換度0.9、総置換度2.4(X=1.5、Y=0.9);数平均分子量Mn=57,500、重量平均分子量Mw=190,000、Mw/Mn=3.30) 100質量部
糖エステル化合物(化合物例;1−22) 7.0質量部
ポリエステルA 2.5質量部
TINUVIN928(紫外線吸収剤、BASFジャパン社製) 1.5質量部
以上を密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解して主ドープ液1を調製した。
【0202】
前記主ドープ液1を、図1の装置の流延ダイ17(図5の流延ダイ30)および延伸装置22を用い流延、延伸し第1層を作製した。延伸装置22ではテンターでフィルムの端部を挟持しながらフィルムの面内遅相軸がフィルムの長手方向に対して45°になるように延伸し、ロール状に巻き取った。このとき、延伸倍率を80〜250%の範囲で変化させてRoが140nmになるよう調整して、延伸倍率を決定した。延伸したフィルムは、Ro=140nm、膜厚60μmの面内位相差を持った位相差フィルムであった。なお、延伸装置22としては図3に示した斜め延伸装置を用いた。
【0203】
次にその第1層の表面に塗布ダイを用いて微粒子塗布液1を塗布し、100℃の雰囲気下で風を当てながら残留溶媒量が10質量%になるまで乾燥し、その後120℃の雰囲気下で風を当てながら10分間乾燥させて、第2層を積層して位相差フィルム1を作製した。なお、粒子含有層の乾燥後の膜厚が、10μmになるように塗布ダイのギャップを調整した。
【0204】
作製した位相差フィルム1の断面を断面TEMで測定すると、粒子含有層の膜厚は10μmであり、粒子は位相差フィルムには含まれていないことを確認した。
【0205】
得られた実施例1の位相差フィルム1は、表1に示すとおり、ヘイズが低くフィルムが透明でかつ紫外線吸収性能を持つ、140nmのRoを有する位相差フィルムであった。
【0206】
<位相差フィルム2の作製>
位相差フィルム1の作製において、セルロースエステルをジアセチルセルロース(DAC:アセチル基置換度2.4、総置換度2.4(X=2.4、Y=0);数平均分子量Mn=59,500、重量平均分子量Mw=190,000、Mw/Mn=3.19)のセルロースエステルに変更した以外は同様にして位相差フィルム2を作製した。
【0207】
得られた位相差フィルム2は、表1に示すとおり、ヘイズが低くフィルムが透明でかつ紫外線吸収性能を持つ、140nmのRoを有する位相差フィルムであった。
【0208】
<位相差フィルム3の作製>
位相差フィルム1の作製において、第1層の延伸後に第2層を塗布する代わりに、製造プロセスを図2のように、流延バンド18に形成した第1層上に第2層を塗布ダイ23により塗布して設けてから延伸装置22により延伸すること、及び、前記微粒子塗布液1で用いた微粒子のアエロジル R972Vに代えてアエロジル R812(日本アエロジル(株)製)を用いること以外は、同様にして位相差フィルム3を作製した。
【0209】
得られた位相差フィルム3は、表1に示すとおり、ヘイズが低くフィルムが透明でかつ紫外線吸収性能を持つ、140nmのRoを有する位相差フィルムであった。
【0210】
<位相差フィルム4の作製>
位相差フィルム3の作製において、図4に示した流延ダイ30により形成した第1層上に図2に示した塗布ダイ23により第2層を設ける代わりに、図5に示した共流延ダイ30を用いて、第1層と第2層を共流延して積層すること以外は同様にして、位相差フィルム4を作製した。
【0211】
得られた位相差フィルム4は、表1に示すとおり、ヘイズが低くフィルムが透明でかつ紫外線吸収性能を持つ、140nmのRoを有する位相差フィルムであった。
【0212】
<位相差フィルム5の作製>
位相差フィルム1の作製において、Roが126nmとなるように延伸率を調整した以外は同様にして位相差フィルム5を作製した。
【0213】
<位相差フィルム6の作製>
位相差フィルム1の作製において、Roが130nmとなるように延伸率を調整した以外は同様にして位相差フィルム6を作製した。
【0214】
<位相差フィルム7の作製>
位相差フィルム1の作製において、Roが146nmとなるように延伸率を調整した以外は同様にして位相差フィルム7を作製した。
【0215】
<位相差フィルム8の作製>
位相差フィルム1の作製において、Roが150nmとなるように延伸率を調整した以外は同様にして位相差フィルム8を作製した。
【0216】
なお、位相差フィルム5〜8の作製において、延伸率を変えることによる膜厚の変化を補正して60μmに合わせるために、主ドープの押し出し量を調整した。
【0217】
<位相差フィルム11の作製>
位相差フィルム1の作製において、主ドープ液1にTINUVIN928(BASFジャパン社製)を添加しないこと以外は、同様に位相差フィルム11を作製した。
【0218】
得られた位相差フィルム11は、表1に示すとおり、ヘイズが低くフィルムが透明ではあるが紫外線吸収性能を持たない、140nmのRoを有する位相差フィルムであった。
【0219】
<位相差フィルム12の作製>
〈微粒子分散液2〉
微粒子(アエロジル R812 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行い微粒子分散液2を作製した。
【0220】
〈微粒子添加液〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液2をゆっくりと添加した。更に、体積平均粒径が0.2μmとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液を調製した。
【0221】
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液2 5質量部。
【0222】
(主ドープ液2の作製)
下記組成の主ドープ液2を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステル、糖エステル化合物、ポリエステルA、TINUVIN928、微粒子添加液を攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液2を調製した。
【0223】
〈主ドープ2液の組成〉
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースエステル(DAC:アセチル基置換度2.4、総置換度2.4;数平均分子量Mn=59,500、重量平均分子量Mw=190,000、Mw/Mn=3.19) 100質量部
糖エステル化合物(化合物例;1−22) 7.0質量部
ポリエステルA 2.5質量部
TINUVIN928(BASFジャパン社製) 1.5質量部
微粒子添加液 1質量部。
【0224】
前記主ドープ液2を用いて、図1の装置と図4のダイを用い、第1層のみからなる位相差フィルム12を作製した。延伸装置22としては図3に示した斜め延伸装置を用い、テンターでフィルムの端部を挟持しながらフィルムの面内遅相軸がフィルムの長手方向に対して45°になるように延伸し、ロール状に巻き取り、位相差フィルム12を作製した。位相差フィルム12は、膜厚60μm、Ro=140nmの面内位相差を持った位相差フィルムであった。
【0225】
得られた位相差フィルム12は、表1に示すとおり、紫外線吸収性能と140nmのRoを有しているが、ヘイズが上昇しており、白く見える。
【0226】
<位相差フィルム13の作製>
下記の微粒子分散液3、微粒子塗付液2を用いる以外は位相差フィルム1の作製と同様の方法で位相差フィルム13を作製した。
【0227】
〈微粒子分散液3〉
セルロースエステル(CAP:アセチル基置換度1.5、プロピオニル基0.9、総置換度2.4;数平均分子量Mn=57,500、重量平均分子量Mw=190,000、Mw/Mn=3.30) 7質量部
RX300(日本アエロジル製、気相法SiO微粒子、体積平均分散粒径7nm)
1質量部
エタノール 92質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
【0228】
〈微粒子塗布液2〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液3をゆっくりと添加した。更に、体積平均粒径が0.007μmとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子塗布液2を調製した。
【0229】
メチレンクロライド 84質量部
微粒子分散液3 16質量部
作製したフィルム13は、140nmのRoを有する位相差フィルムであったが、平均表面粗さRaが0.2nmであり、長尺ロール状に巻き取ったときに、フィルム表面に傷が生じた。
【0230】
<位相差フィルム14の作製>
下記の微粒子分散液4、微粒子塗布液3を用いる以外は位相差フィルム1と同様の方法で位相差フィルム14を作製した。
【0231】
〈微粒子分散液4〉
セルロースエステル(CAP:アセチル基置換度1.5、プロピオニル基0.9、総置換度2.4;数平均分子量Mn=57,500、重量平均分子量Mw=190,000、Mw/Mn=3.30) 7質量部
RX200(日本アエロジル製、気相法SiO微粒子、体積平均分散粒径12nm) 1質量部
エタノール 92質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
【0232】
〈微粒子塗布液3〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液4をゆっくりと添加した。更に、体積平均粒径が0.012μmとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子塗布液3を調製した。
【0233】
メチレンクロライド 84質量部
微粒子分散液4 16質量部
作製したフィルム14は、長尺ロール状に巻いてもフィルム表面に傷が生じなかった。
【0234】
また表1に示すとおりフィルム14は、ヘイズが低くフィルムが透明でかつ紫外線吸収性能を持つ、140nmのRoを有する位相差フィルムであった。
【0235】
<位相差フィルム15の作製>
下記の微粒子分散液5、微粒子塗布液4を用いる以外は位相差フィルム1と同様の方法で位相差フィルム15を作製した。
【0236】
〈微粒子分散液5〉
セルロースエステル(CAP:アセチル基置換度1.5、プロピオニル基0.9、総置換度2.4;数平均分子量Mn=57,500、重量平均分子量Mw=190,000、Mw/Mn=3.30) 7質量部
KEP−100(シリカ粒子、平均粒径1μm、日本触媒社製) 1質量部
エタノール 92質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
【0237】
〈微粒子塗布液4〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液5をゆっくりと添加した。更に、体積平均粒径が1.0μmとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子塗布液4を調製した。
【0238】
メチレンクロライド 84質量部
微粒子分散液5 16質量部
作製したフィルム15は、長尺ロール状に巻いてもフィルム表面に傷が生じなかった。
【0239】
また表1に示すとおりフィルム15は、ヘイズが低くフィルムが透明でかつ紫外線吸収性能を持つ、140nmのRoを有する位相差フィルムであった。
【0240】
<位相差フィルム16の作製>
下記の微粒子分散液6、微粒子塗布液5を用いる以外は位相差フィルム1と同様の方法で位相差フィルム16を作製した。
【0241】
〈微粒子分散液6〉
セルロースエステル(CAP:アセチル基置換度1.5、プロピオニル基0.9、総置換度2.4;数平均分子量Mn=57,500、重量平均分子量Mw=190,000、Mw/Mn=3.30) 7質量部
真球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子(平均粒径2.0μm) 1質量部
エタノール 92質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
【0242】
〈微粒子塗布液5〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液6をゆっくりと添加した。更に、体積平均粒径が1.0μmとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子塗布液5を調製した。
【0243】
メチレンクロライド 84質量部
微粒子分散液6 16質量部
作製したフィルム16は140nmのRoを有する位相差フィルムであったが、ヘイズが高く、3D液晶表示装置用途や有機EL表示装置用途の位相差フィルムとしては適していなかった。
【0244】
<評価方法>
(リターデーション値Roの測定)
位相差フィルム1〜16について、下記のようにRoを測定した。
【0245】
位相差フィルムの面内方向リターデーション値Roの測定/評価は、位相差測定装置(王子計測社製、KOBRA−WXK)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、長さ3000mのフィルムにつき、フィルム流れ方向5m毎に幅方向にフィルムの50mmの間隔でRoの測定を行い、下記式より求めた(Ro)の全データの平均値をリターデーション値Roとした。
【0246】
式 (Ro)=(n−n)×d
式中、nとnは、それぞれ、23℃・55%RH、550nmにおける屈折率n(フィルムの面内の最大の屈折率、遅相軸方向の屈折率ともいう。)、n(フィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率)であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。
【0247】
上記より求めたリターデーション値Roを表1に記す。
【0248】
(微粒子の体積平均粒径の測定)
前記微粒子の体積平均粒径は、前記微粒子塗布液1〜5及び微粒子添加液をレーザー回折散乱法により測定した。測定装置にはベックマン・コールター製LS13320を用いた。
【0249】
(表面粗さの測定)
位相差フィルムのA面(空気側)をJIS B0601−1994により、平均線長さを10mmとして求めた算術平均粗さRaを表面粗さとして表1に記した。
【0250】
(ヘイズの測定)
ヘイズは、日本電色株式会社製ヘイズメーターNDH2000を用いて、JIS−K7136に準じてヘイズを測定する。
【0251】
(長尺ロールの巻き取りキズ)
作製した位相差フィルム1〜16を2000mのロール状に巻いたときに、フィルム表面に傷故障が付くかどうかを目視で評価した。
【0252】
○・・・傷が付かず、2000mのロール状に巻く事が可能
×・・・巻き傷が付き、2000mのロール状に巻く事が不可能
(紫外線耐久性能評価)
前記位相差フィルム1〜16の表面に、スーパーキセノンウェザーメーター(SX120、スガ試験機(株)製)を用いて、光量100W/m、波長300〜400nm、温度50℃、湿度65%、試験時間100時間の条件にて紫外線照射試験を行った。目視により、上記試料の着色を観察した。
【0253】
○・・・変色しない。紫外線耐久性がある。
【0254】
×・・・変色する。紫外線耐久性がない。
【0255】
上記評価結果を表1に示す。
【0256】
【表1】

【0257】
表1より、体積平均粒径0.01〜1μmの微粒子を第2層に添加した位相差フィルムは、該微粒子を第1層に添加した位相差フィルムよりヘイズが低いことが分かる。また、体積平均粒径0.01μm以上の微粒子を第2層に添加した位相差フィルムは、長尺フィルムをロールに巻いたときに傷が付かないことが分かる。
【0258】
[実施例2]
<ハードコート層・反射防止層の形成>
(Aar1、Barの作製)
後述する立体画像表示装置への適応性の評価実験に資するため、上記で作製した位相差フィルム1の第1層側及び位相差フィルム12の片面に、それぞれ下記のハードコート層を設け、その上に更に下記反射防止層を設け、フィルムAar1とフィルムBarを作製した。
【0259】
〈ハードコート層の塗布〉
下記ハードコート層塗布液1をダイコートし、80℃で乾燥した後、120mJ/cmの紫外線を高圧水銀灯で照射して硬化後の膜厚が6μmになるようにクリアハードコート層を設けた。
【0260】
(ハードコート層用塗布液1)
エタノール 100質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 100質量部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、BASFジャパン社製) 5質量部
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノ−1−オン(イルガキュア907、BASFジャパン社製) 3質量部
BYK−331(シリコーン界面活性剤、ビックケミー・ジャパン(株)製)
5質量部。
【0261】
<反射防止層の塗布>
(中屈折率層の塗布)
ハードコート層表面上に、下記中屈折率層塗布液をダイコートし、80℃で乾燥した後、120mJ/cmの紫外線を高圧水銀灯で照射して、硬化後の膜厚が110nmとなるように中屈折率層を設けた。屈折率は1.60であった。
【0262】
〈粒子分散液Aの作製〉
メタノール分散アンチモン複酸化物コロイド(固形分60%、日産化学工業(株)製アンチモン酸亜鉛ゾル、商品名:セルナックスCX−Z610M−F2)6.0kgにイソプロピルアルコール12.0kgを攪拌しながら徐々に添加し、粒子分散液Aを調整した。
【0263】
(中屈折率層塗布液)
PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル) 40質量部
イソプロピルアルコール 25質量部
メチルエチルケトン 25質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 0.9質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 1.0質量部
ウレタンアクリレート(商品名:U−4HA 新中村化学工業社製) 0.6質量部
粒子分散液A 20質量部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、BASFジャパン社製) 0.4質量部
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907、BASFジャパン社製) 0.2質量部
10%FZ−2207(ポリエーテル変性シリコーンオイル、プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液(日本ユニカー社製) 0.4質量部。
【0264】
(低屈折率層の塗布)
上記中屈折率層上に、下記の低屈折率層塗布液をダイコートし、80℃で乾燥した後、120mJ/cmの紫外線を高圧水銀灯で照射して膜厚が92nmになるように低屈折率層を設け、反射防止層を作製した。屈折率は1.38であった。
【0265】
〈テトラエトキシシラン加水分解物Aの調製〉
テトラエトキシシラン230g(商品名:KBE04、信越化学工業社製)とエタノール440gを混合し、これに2%酢酸水溶液120gを添加した後に、室温(25℃)にて26時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物Aを調製した。
【0266】
(低屈折率層塗布液)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 430質量部
イソプロピルアルコール 430質量部
テトラエトキシシラン加水分解物A 120質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM503、信越化学工業社製) 3.0質量部
イソプロピルアルコール分散中空シリカゾル(固形分20%、触媒化成工業社製シリカゾル、商品名:ELCOM V−8209) 40質量部
アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製) 3.0質量部
10%FZ−2207(ポリエーテル変性シリコーンオイル、プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液(日本ユニカー社製) 3.0質量部。
【0267】
(Aar2〜Aar8の作製)
Aar1の作製において、位相差フィルム1に替えて、位相差フィルム2〜8を用いた他は同様にしてAar2〜Aar8を作製した。
【0268】
<光学フィルム201の作製>
(主ドープ液3の作製)
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステルを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し他の添加剤を加えて攪拌した。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液3を調製した。
【0269】
〈主ドープ液3の組成〉
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースエステル(DAC:アセチル基置換度2.4、総置換度2.4;数平均分子量Mn=59,500、重量平均分子量Mw=190,000、Mw/Mn=3.19)
100質量部
糖エステル化合物(化合物例;1−22) 10.0質量部
ポリエステルA 2.5質量部
チヌビン928(紫外線吸収剤、BASFジャパン(株)製) 2.3質量部
微粒子添加液(実施例1の微粒子添加液と同処方) 1質量部。
【0270】
無端ベルト流延装置を用い、主ドープ液3を温度33℃、2000mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
【0271】
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
【0272】
その後170℃に設定されたテンターにより幅手方向に1.4倍の延伸を行い、次いで130℃に設定された乾燥ゾーンで30分間搬送させて乾燥を行い、両端部のトリミングを行い、かつ端部に幅1cm、高さ8μmのナーリングを有する膜厚40μmの光学フィルム201を作製し、幅2000mm、5000mで巻き取った。
【0273】
光学フィルム201の面内リターデーション値Ro(550)、厚さ方向リターデーションRt(550)は、各々50nm、130nmであった。
【0274】
(偏光板A1の作製)
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍、搬送方向に延伸)した。
【0275】
これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。
【0276】
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子と前記フィルムAar1と、裏面側には光学フィルム201を、長手方向を合わせるようにロール・to・ロールで貼り合わせて偏光板A1を作製した。
【0277】
工程1:フィルムAar1の反射防止層を設けていない面(第2層側)及び光学フィルム201の片面を60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、フィルムAar1および光学フィルム201の偏光子と貼合する側を鹸化した。
【0278】
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
【0279】
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除いた。
【0280】
工程4:フィルムAar1の鹸化した面と偏光子の片面を合わせ、偏光子の他方の面と光学フィルム201の鹸化した面を合わせ、圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
【0281】
工程5:貼合後、80℃の乾燥機中を2分間通して乾燥し、偏光板A1を作製した。
【0282】
(偏光板A2〜8及びBの作製)
前記偏光板A1の作製において、フィルムAar1に替えてフィルムAar2〜8及びBarを用いた他は同様にして偏光板A2〜A8及びBを作製した。
【0283】
<3D液晶表示装置の作製>
3D液晶パネルを以下のようにして作製し、液晶表示装置としての特性を評価した。
【0284】
SONY製60型ディスプレイBRAVIA LX900の予め貼合されていた前面板(偏光板)を剥がして、パネル前面の偏光板とガラス板の間にあった充填剤を除去した。即ち図7に示した、液晶表示装置Lの液晶セルD、偏光板E、バックライトFを残し、前面板(光学フィルム、偏光子及び光学フィルムの積層体)を取り除いた。なお、前記前面板には、図7に示したλ/4板C1は備えられておらず、代わりにλ/4板以外の光学フィルムが備えられている。
【0285】
上記作製した偏光板A1〜8及びBをそれぞれ液晶セルDのガラス面の前面に、図7の偏光板Cと同様の方向で貼合した。
【0286】
即ち、その偏光板の貼合の向きは、フィルムAar1〜8及びフィルムBarの面が、視認側となるように、かつ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、それぞれ、偏光板A1〜8及びBに対応する液晶表示装置A1〜8及びBを各々作製した。
【0287】
(3Dメガネ)
(3DメガネA1の作製)
SONY製3DメガネTDG−BR100のパネル側の面(目側とは反対側の面)にフィルムAar1を貼合した。なお、SONY製3DメガネTDG−BR100には、図7に示す偏光子K1及び液晶セルK2が備えられているが、λ/4板K3は備えられていない。
【0288】
即ち、図7に示す液晶シャッタメガネKのK3の位置にフィルムAar1を貼合し、偏光子K1、液晶セルK2及びλ/4板K3を備えた3DメガネA1を作製した。
【0289】
(3DメガネA2〜8及びBの作製)
3DメガネA1の作製において、フィルムAar1に代えてAar2〜8及びBarを用いた他は同様にして、3DメガネA2〜8及びBを作製した。
【0290】
(3D映像視聴時のクロストーク評価)
(液晶表示装置A1のクロストークの評価)
作製した液晶表示装置について、上記作製した3DメガネA1を通して液晶表示装置A1の画像を観察し、液晶表示装置A1のクロストークの評価を行った。その際、顔を傾けて、メガネの面を表示装置と平行にしたまま、表示装置画像面の法線を軸としてメガネを45度傾けた。
【0291】
○:正常な画像が見える
×:画像が2重に見える。
【0292】
(液晶表示装置A2〜8及びBのクロストークの評価)
前記液晶表示装置A1のクロストークの評価において、液晶表示装置A1に代えて液晶表示装置A2〜8及びBを用い、3DメガネA1に代えて対応する3DメガネA2〜8及びBを用いた他は同様にして、液晶表示装置A2〜8及びBのクロストークの評価を行った。
【0293】
(画像コントラストの評価)
正面コントラストは、測定機(EZ−Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて測定し、液晶表示装置の白表示時の輝度と、黒表示時の輝度の表示装置の面法線方向の輝度比により表した。
【0294】
SONY製3DメガネTDG−BR100を通したSONY製60型ディスプレイBRAVIA LX900の正面コントラストをC0としたときに、下記の基準で判定した。
【0295】
○・・・0.9×C0以上
×・・・0.9×C0未満
以上の評価結果を表2に示す。
【0296】
【表2】

【0297】
表2より、Roが128〜148nmである位相差フィルムを片面に貼合した偏光板を用いた3D液晶表示装置はクロストークが無いことが分かる。また、紫外線吸収剤と微粒子を含有しRoが128〜148nmとなるように延伸した単層構成の位相差フィルムを用いた3D液晶表示装置に対し、第1層が微粒子を含有する代わりに第2層が微粒子を含有する積層構成の位相差フィルムを用いた3D液晶表示装置は画像の正面コントラストが高いことが分かる。
【0298】
[実施例3]
<有機EL表示装置への適用>
(偏光板P1〜8及びQの作製)
偏光板A1〜8及びBの作製において、フィルムAar1〜8及びBの反射防止層を設けていない面(第2層側)を鹸化し偏光子と貼合する代わりに、位相差フィルム1〜8の第2層及び位相差フィルム12の片面を鹸化して偏光子と貼合した以外は同様にして、対応する偏光板P1〜8及びQを作製した。
【0299】
(有機EL表示装置の作製)
有機EL表示装置 GALAXY−S(韓国サムスン電子製)を用いて、ガラス板以下を残し、ガラス板より視認側の層を剥離し、前記偏光板P1〜8及びQを図9に示した偏光板Cのように(位相差フィルムがガラス板と向き合う)となるように貼合し、有機EL表示装置A1〜8及びBを作製した。
【0300】
即ち図9に示した有機EL表示装置Mのガラス板G1、ITO透明電極H、有機発光層I、反射電極J及びガラス板G2を残して、偏光板Cを剥離し、前記偏光板P1〜8及びQを、ガラス板G1の面に、図9に示した偏光板Cの方向(ガラス板G1側から、λ/4板C1、偏光子C2、光学フィルムC3の順)で貼合した。
【0301】
<有機EL表示装置の反射防止効果の評価>
(反射率の測定)
上記により作製した有機EL表示装置A1〜8及びBについて、反射率測定を行った。
【0302】
それぞれのフィルムを具備した有機EL表示装置を装置A、装置Bと置く。測定は分光測色計CM2500d(コニカミノルタセンシング製)を用いて550nmの反射率を測定した。
【0303】
○・・・反射率が7%未満
×・・・反射率が7%以上
上記評価結果を表3にしめす。
【0304】
【表3】

【0305】
表3より、紫外線吸収剤と微粒子を含有するドープをRoが128〜148nmと成るように、延伸した単層構成の位相差フィルムを用いた有機EL表示装置に対して、第2層が微粒子を含有する積層構成の位相差フィルムを用いた有機EL表示装置は外光の反射が小さいことがわかる。
【0306】
また、積層構成であっても、Roが128より小さいか、148nmより大きいと、外光の反射が大きく、128〜148nmでは外光の反射が小さいことが分かる。
【符号の説明】
【0307】
11 攪拌機
12 移液ポンプ
13 濾過器
14 ストックタンク
15 流延送液ポンプ
16 添加剤注入ポンプ
17 流延ダイ
18 流延バンド
19 減圧チャンバー
20 流延ドラム
21 巻き取りロール
22 延伸装置
23 塗布ダイ
30 流延ダイ
41 未延伸フィルム
42−1 右側のフィルム保持開始点
42−2 左側のフィルム保持開始点
43−1 右側のフィルム保持手段の軌跡
43−2 左側のフィルム保持手段の軌跡
44 テンター
45−1 右側のフィルム保持終了点
45−2 左側のフィルム保持終了点
46 斜め延伸フィルム
47−1 フィルムの送り方向
48−1 テンター入り口側のガイドロール
48−2 テンター出口側のガイドロール
49 フィルムの延伸方向
K 液晶シャッタメガネ
K1 偏光子
K2 液晶セル
K3 λ/4板
L 液晶表示装置(例えばテレビジョン(TV))
C 偏光板
C1 λ/4板又は光学フィルム
C2 偏光子
C3 光学フィルム
D 液晶セル
E 偏光板
F バックライト
a 吸収軸
b 遅相軸
G1,G2 ガラス板
H ITO透明電極
I 有機発光層
J 反射電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
23℃、55%RHの環境下、波長550nmの光で測定したフィルム面内のリターデーション値Roが、128〜148nmの範囲となる、少なくとも二層が積層された構成の位相差フィルムであって、第1層が紫外線吸収剤を含有し、第2層が体積平均粒径が0.01〜1.00μmの範囲内にある微粒子を含有し、かつ該第2層が、前記第1層の形成後巻き取られるまでの間に積層されて作製されたことを特徴とする位相差フィルム。
【請求項2】
前記第1層が、延伸して作製された後に、前記第2層が、積層されたことを特徴とする請求項1に記載の位相差フィルム。
【請求項3】
前記第2層が、塗布により積層されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の位相差フィルム。
【請求項4】
アセチル基の置換度X及びプロピオニル基またはブチリル基の置換度Yが、下記式(1)および式(2)を満たすセルロースエステルを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の位相差フィルム。
式(1) 2.0≦X+Y≦3.0
式(2) 0≦Y≦1.5
(上記式において、セルロースエステルがプロピオニル基およびブチリル基を共に有する場合、Yはプロピオニル基の置換度とブチリル基の置換度の総和を表す。)
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の位相差フィルムを製造する位相差フィルムの製造方法であって、前記第1層を延伸して巻き取るまでの間に、前記第2層を積層することを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記第2層を塗布により積層することを特徴とする請求項5に記載の位相差フィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の位相差フィルムを長尺状の形態で、長尺状の偏光子の少なくとも一方の面に貼合して形成されたことを特徴とする長尺状偏光板。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の位相差フィルムを有することを特徴とする表示装置。
【請求項9】
前記表示装置が、立体画像表示装置または有機EL表示装置であることを特徴とする請求項8に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−37161(P2013−37161A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172707(P2011−172707)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】