説明

位相差板の製造方法及び光学補償偏光板の製造方法

【課題】液晶表示における高コントラストの視野角拡大補償等に有効な位相差特性を示し、かつ偏光板と併用した場合に薄型性に優れるものとできる光学部材の提供。
【解決手段】偏光板(3)の片側に位相差層を有してなり、面内の屈折率をnx、ny、厚さ方向の屈折率をnz、厚さをd、(nx−ny)d=Re、及び(nx−nz)d=Rzとしたとき、前記の位相差層がRe=20〜300nm、かつRz/Re=1.0〜8を満足するポリマー系延伸フィルムA(7)又はRe=1〜100nm、かつRz/Re=5〜100を満足する厚さが1〜20μmの塗工膜からなるポリマー層B(9)の一方又は両方からなる光学補償偏光板及びその光学補償偏光板を液晶セルの外側に配置してなる液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶セルによる位相差の光学補償等に好適な光学補償偏光板、及びそれを設けた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
VA型やOCB型の液晶セルにおける複屈折による位相差を補償して良視認の視野角の拡大には、面内の屈折率をnx、ny、厚さ方向の屈折率をnzとしたときにその面内の二方向と厚さ方向の三次元の屈折率を制御してnx≧ny>nzの特性を付与した位相差板が有用なことが知られている。
【0003】
従来、前記したnx≧ny>nzの特性を付与した位相差板としては、ポリマーからなる一軸延伸フィルムの一対を面内の遅相軸方向が直交するように積層してなる積層位相差板や、高分子フィルムにテンターによる横延伸又は二軸延伸を施してなる単層の位相差板が知られていた(特許文献1及び2)。
【0004】
しかしながら従来の積層位相差板では、厚さが大きくて偏光板と併用した場合に更に嵩高化し、また1枚毎の接着処理を要して製造効率に乏しい問題点があった。一方、後者の単層位相差板では付与できる位相差の範囲が狭く、厚さ方向の位相差値(Rz)が、法線方向の位相差値(Re)よりも著しく大きくなる場合には単層では対処できず、所望の位相差値を得るために2枚以上を積層した積層位相差板とする必要があり、前者と同様に厚型化や嵩高化する問題点があった。
【特許文献1】特開平3−33719号公報
【特許文献2】特開平3−24502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、液晶表示おける高コントラストの視野角拡大補償等に有効な位相差特性を示し、かつ偏光板と併用した場合に薄型性に優れるものとできる光学部材の開発を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、偏光板の片側に位相差層を有してなり、面内の屈折率をnx、ny、厚さ方向の屈折率をnz、厚さをd、(nx−ny)d=Re、及び(nx−nz)d=Rzとしたとき、前記の位相差層がRe=20〜300nm、かつRz/Re=1.0〜8を満足するポリマー系延伸フィルムA、又はRe=1〜100nm、かつRz/Re=5〜100を満足する厚さが1〜20μmの塗工膜からなるポリマー層Bの一方又は両方からなることを特徴とする光学補償偏光板、及びその光学補償偏光板を液晶セルの外側に配置してなることを特徴とする液晶表示装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前記のReとRzを満足することで、液晶表示おける高コントラストの視野角拡大等の光学補償に有効な位相差特性を示し、かつポリマー系延伸フィルムAは単層物として、またポリマー層Bは塗工膜として形成できて、偏光板との併用形態においても薄さに優れるものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明による光学補償偏光板は、偏光板の片側に位相差層を有してなり、面内の屈折率をnx、ny、厚さ方向の屈折率をnz、厚さをd、(nx−ny)d=Re、及び(nx−nz)d=Rzとしたとき、前記の位相差層がRe=20〜300nm、かつRz/Re=1.0〜8を満足するポリマー系延伸フィルムA、又はRe=1〜100nm、かつRz/Re=5〜100を満足する厚さが1〜20μmの塗工膜からなるポリマー層Bの一方又は両方からなるものである。
【0009】
ポリマー系延伸フィルムAを形成するポリマーについては特に限定はなく、光透過性の適宜なものを1種又は2種以上を混合して用いうる。就中、光透過率が75%以上、特に85%以上の透光性に優れ、表面平滑性、複屈折の均一性、耐熱性に優れるフィルムを形成しうるポリマーが好ましい。また前記した位相差特性Re、Rzを示す延伸フィルムの安定した量産性等の点より、延伸方向の屈折率が高くなる正の複屈折性を示すポリマーが好ましく用いうる。
【0010】
ちなみに前記した正の複屈折性を示すポリマーの例としては、ノルボルネン系ポリマーやポリカーボネート、ポリエーテルスルホンやポリスルホン、ポリオレフィンやアクリル系ポリマー、セルロース系樹脂やポリアリレート、ポリスチレンやポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン、アセテート系ポリマーなどがあげられる。なお後記するポリマー層Bを形成するポリマー等の延伸方向の屈折率が低くなる負の複屈折性を示すポリマーも用いうる。
【0011】
延伸処理対象のフィルムは、例えば流延成膜法やロールコート法やフローコート法等のキャスティング法、押出法などの適宜なフィルム形成方式を適用して形成することができる。就中、厚さムラや配向歪ムラ等の少ない延伸フィルムの量産性などの点より、キャスティング法等の溶液製膜法によるフィルムが好ましく用いうる。フィルムの形成に際しては安定剤や可塑剤や金属類等からなる種々の添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0012】
光学補償効果等の点より好ましく用いうるポリマー系延伸フィルムAは、面内の屈折率をnx、ny、厚さ方向の屈折率をnz、厚さをd、(nx−ny)d=Re、及び(nx−nz)d=Rzとしたとき(以下同じ)、Re=250nm以下、就中22〜200nm、特に25〜150nm、かつRz/Re=7以下、就中6以下、特に5以下を満足するものである。
【0013】
ポリマー系延伸フィルムAの形成は、例えばポリマーフィルムにロール法縦延伸方式やテンター横延伸方式、二軸延伸方式などにより、従来に準じて目的とする位相差特性が発現する延伸処理を施すことにより行うことができる。その場合、ロール法縦延伸方式での加熱は、加熱ロールを用いる方式や雰囲気を加熱する方式、それらを併用する方式のいずれの方式にても行うことができる。
【0014】
また前記の二軸延伸方式では、全テンター方式による同時二軸延伸処理方式や、ロール・テンター法による逐次二軸延伸処理方式のいずれも採ることができる。延伸処理温度は、従来に準じることができ、フィルムを形成するポリマーのガラス転移温度の近傍、就中ガラス転移温度以上が好ましい。
【0015】
ポリマー系延伸フィルムAの厚さは、目的とする位相差特性等に応じて適宜に決定しうる。一般には薄型化を目的に200μm以下、就中30〜150μm、特に40〜120μmとされる。
【0016】
ポリマー層Bは、固体ポリマーを液状化してそれを展開し、その展開層を固体化させてなる塗工膜として形成される。これにより厚さを1〜20μmとすることができる。上記した延伸フィルム方式では、フィルム強度の点より厚さを20μm以下とすることが困難であり、特にその厚さで目的とする位相差特性を付与することが困難である。薄型化や目的とする位相差特性の付与性の点より好ましいポリマー層Bの厚さは、15μm以下、就中12μm以下、特に2〜10μmである。
【0017】
ポリマー層Bの形成には、塗工方式でRe=1〜100nm、かつRz/Re=5〜100を満足する層を形成しうる適宜な固体ポリマーを用いうる。光透過率が75%以上、特に85%以上の透光性に優れる層を形成しうる耐熱性の良好な固体ポリマーが好ましい。就中その塗工層形成性等の点よりポリエーテルケトン、特にポリアリールエーテルケトン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド又はポリエステルイミドの1種、又は2種以上を混合したものなどが好ましく用いられる。
【0018】
ちなみに前記したポリエーテルケトン、特にポリアリールエーテルケトンの具体例としては、例えば下記の一般式(1)で表される繰返し単位を有するものなどがあげられる(特開2001−49110号公報)。
【化1】

【0019】
前記の一般式(1)において、Xはハロゲン、アルキル基又はアルコキシ基であり、ベンゼン環へのXの結合数q、すなわちp−テトラフルオロベンゾイレン基とオキシアルキレン基が結合しない、残る位置での水素原子の置換数qの値は、0〜4の整数である。またRは下記の一般式(2)で表される化合物(基)であり、mは0又は1である。さらにnは、重合度を表わし、2〜5000、就中5〜500が好ましい。
【0020】
【化2】

【0021】
なお前記一般式(1)におけるXとしてのハロゲンとしては、例えばフッ素原子や臭素原子、塩素原子やヨウ素原子などがあげられ、就中フッ素原子が好ましい。またアルキル基としては、例えばメチル基やエチル基、プロピル基やイソプロピル基、ブチル基の如き炭素数が1〜6、就中1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基などがあげられ、就中メチル基やエチル基、それらのトリフルオロメチル基の如きハロゲン化アルキル基が好ましい。
【0022】
さらにアルコキシ基としては、例えばメトキシ基やエトキシ基、プロポキシ基やイソプロポキシ基、ブトキシ基の如き炭素数が1〜6、就中1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基などがあげられ、就中メトキシ基やエトキシ基、それらのトリフルオロメトキシ基の如きハロゲン化アルコキシ基が好ましい。前記において特に好ましいXは、フッ素原子である。
【0023】
一方、前記一般式(2)で表される基において、X’はハロゲン、アルキル基又はアルコキシ基であり、ベンゼン環へのX’の結合数q’の値は、0〜4の整数である。X’としてのハロゲン、アルキル基又はアルコキシ基としては、前記したXと同じものが例示できる。
【0024】
好ましいX’は、フッ素原子、メチル基やエチル基、それらのトリフルオロメチル基の如きハロゲン化アルキル基、メトキシ基やエトキシ基、それらのトリフルオロメトキシ基の如きハロゲン化アルコキシ基であり、就中フッ素原子が好ましい。
【0025】
なお前記の一般式(1)においてXとX’は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また一般式(1)、(2)においてq又はq’が2以上であることに基づいて分子中に2個以上存在するX又はX’は、それぞれ独立に同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0026】
特に好ましいRは、下記の一般式(3)で表される基である。
【化3】

【0027】
前記の一般式(2)、(3)においてRは、2価の芳香族基であり、Pは0又は1である。その2価の芳香族基としては、例えば(o,m又はp−)フェニレン基、ナフタレン基、ビフェニル基、アントラセン基、(o,m又はp−)テルフェニル基、フェナントレン基、ジベンゾフラン基、ビフェニルエーテル基、ビフェニルスルホン基、下記の式で表される2価の芳香族基などがあげられる。なお当該2価の芳香族基は、その芳香環に直接結合する水素が前記したハロゲン、アルキル基又はアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0028】
【化4】

【0029】
前記において好ましい2価の芳香族基(R)は、下記の式で表されるものである。
【化5】

【0030】
前記した一般式(1)で表されるポリアリールエーテルケトンは、同じ繰返し単位からなっていてもよいし、異なる繰返し単位の2種又は3種以上を有するものであってもよい。後者の場合、各繰返し単位は、ブロック状に存在していてもよいし、ランダムに存在していてもよい。
【0031】
上記を踏まえて一般式(1)で表されるポリアリールエーテルケトンの内の好ましいものは、下記の一般式(4)で表されるものである。
【化6】

【0032】
また分子末端の基を含めた場合の好ましいポリアリールエーテルケトンは、一般式(1)に対応して下記の一般式(5)で表されるものであり、一般式(4)に対応するものは下記の一般式(6)で表されるものである。これらは分子内のp−テトラフルオロベンゾイレン基側にフッ素原子が結合し、オキシアルキレン基側に水素原子が結合したものである。
【0033】
【化7】

【0034】
【化8】

【0035】
一方、上記したポリアミド又はポリエステルの具体例としては、例えば下記の一般式(7)で表される繰返し単位を有するものなどがあげられる。
【化9】

【0036】
前記の一般式(7)において、Bは、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基若しくはそのハロゲン化物、それらの1種若しくは2種以上で置換されたフェニル基、又は非置換のフェニル基である。zは0〜3の整数である。
【0037】
Eは、共有結合、炭素数2のアルケニル基若しくはそのハロゲン化物、CH基、C(CX基、CO基、O原子、S原子、SO基、Si(R)基、又はNR基である。前記のC(CX基におけるXは、水素原子又はハロゲンであり、Si(R)基及びNR基におけるRは、炭素数1〜3のアルキル基又はそのハロゲン化物である。なおEは、カルボニル基又はY基に対してメタ位又はパラ位にある。またハロゲンは、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子又は臭素原子である(以下、一般式(7)において同じ)。
【0038】
さらにYは、O原子又はNH基である。Aは、水素原子、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基若しくはそのハロゲン化物、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜3のチオアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基若しくはそのハロゲン化物、アリール基若しくはそのハロゲン化物、炭素数1〜9のアルキルエステル基、炭素数1〜12のアリールエステル基若しくはその置換誘導体、又は炭素数1〜12のアリールアミド基若しくはその置換誘導体である。
【0039】
またnは0〜4の整数、pは0〜3の整数、qは1〜3の整数、rは0〜3の整数である。好ましいポリアミド又はポリエステルは、前記のrとqが1であり、そのビフェニル環の少なくとも1個が2位及び2’位で置換されてなる下記の一般式(8)で表される繰返し単位を有するものである。
【0040】
【化10】

【0041】
前記の一般式(8)においてmは0〜3の整数、好ましくは1又は2であり、x及びyは0又は1で、かつ共に0であることはない。なお他の記号は前記の一般式(7)の場合と同義であるが、Eはカルボニル基又はY基に対してパラ配向の共有結合である。
【0042】
前記の一般式(7)、(8)において、B、E、Y又はAが分子中に複数存在する場合、それらは同じであってもよいし、異なっていてもよい。z、n、m、x、yも同様に同じであってもよいし、異なっていてもよい。なおその場合、B、E、Y、A、z、n、m、x、yは、それぞれ独立に判断される。
【0043】
前記の一般式(7)で表されるポリアミド又はポリエステルは、同じ繰返し単位からなっていてもよいし、異なる繰返し単位の2種又は3種以上を有するものであってもよい。後者の場合、各繰返し単位は、ブロック状に存在していてもよいし、ランダムに存在していてもよい。
【0044】
他方、上記したポリイミドの具体例としては、例えば9,9−ビス(アミノアリール)フルオレンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との縮合重合生成物を含み、下記の一般式(9)で表される繰返し単位を1単位以上有するものなどがあげられる。
【0045】
【化11】

【0046】
前記一般式(9)において、Rは、水素原子、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン若しくは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基で置換されたフェニル基、又は1〜10個の炭素原子を有するアルキル基である。4個のRは、各々独立に決定でき、0〜4個の範囲で置換することができる。その置換基は、前記のものであることが好ましいが、一部に異なるものを含んでいてもよい。なおハロゲンは、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子又は臭素原子である(以下、一般式(9)において同じ)。
【0047】
Zは、6〜20個の炭素原子を有する三置換芳香族基である。好ましいZは、ピロメリット基、あるいはナフチレン基やフルオレニレン基、ベンゾフルオレニレン基やアントラセニレン基の如き多環式芳香族基若しくはその置換誘導体、又は下記の一般式(10)で表される基である。なお前記多環式芳香族基の置換誘導体における置換基としては、ハロゲン、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基又はそのフッ素化物などがあげられる。
【0048】
【化12】

【0049】
前記の一般式(10)において、Dは、共有結合、C(R基、CO基、O原子、S原子、SO基、Si(C基、N(R基又はそれらの組合せであり、mは1〜10の整数である。なお前記のRは各々独立に、水素原子又はC(R基である。またRは独立に、水素原子、1〜約20個の炭素原子を有するアルキル基、又は約6〜約20個の炭素原子を有するアリール基である。Rは各々独立に、水素原子、フッ素原子又は塩素原子である。
【0050】
また前記以外のポリイミドとして下記の一般式(11)、(12)で表される単位を有するものなどもあげることができる。就中、一般式(13)で表される単位を有するポリイミドが好ましい。
【0051】
【化13】

【0052】
【化14】

【0053】
【化15】

【0054】
前記の一般式(11)、(12)、(13)において、T及びLは、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基若しくはそのハロゲン化物、それらの1種若しくは2種以上で置換されたフェニル基、又は非置換のフェニル基である。前記のハロゲンは、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子又は臭素原子である(以下、一般式(11)、(12)、(13)において同じ)。zは0〜3の整数である。
【0055】
またG及びJは、共有結合若しくは結合ボンド、CH基、C(CX基、CO基、O原子、S原子、SO基、Si(C基、又はN(CH)基である。前記C(CX基におけるXは、水素原子又はハロゲンである(以下、一般式(11)、(12)、(13)において同じ)。
【0056】
Aは、水素原子、ハロゲン、アルキル基若しくはそのハロゲン化物、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基若しくはそのハロゲン化物、アリール基若しくはそのハロゲン化物、又はアルキルエステル基若しくはその置換誘導体である。
【0057】
Rは、水素原子、ハロゲン、フェニル基若しくはそのハロゲン化物等の置換フェニル基、又はアルキル基若しくはそのハロゲン化物等の置換アルキル基である。nは0〜4の整数、pは0〜3の整数、qは1〜3の整数である。
【0058】
なお前記の一般式(11)、(12)、(13)においてT、A、R又はLは、それぞれ独立に分子中に複数存在する場合、それらは同じであってもよいし、異なっていてもよい。z、n、mも同様に同じであってもよいし、異なっていてもよい。なおその場合、T、A、R、L、z、n、mは、それぞれ独立に判断される。
【0059】
前記した一般式(9)、(11)、(12)、(13)で表されるポリイミドは、同じ繰返し単位からなっていてもよいし、異なる繰返し単位の2種又は3種以上を有するものであってもよい。その異なる繰返し単位は、前記以外の酸二無水物又は/及びジアミンの1種又は2種以上を共重合させて形成したものであってもよい。ジアミンとしては特に芳香族ジアミンが好ましい。後者の異なる繰返し単位を有する場合、各繰返し単位は、ブロック状に存在していてもよいし、ランダムに存在していてもよい。
【0060】
前記した異なる繰返し単位を形成するための酸二無水物としては、例えばピロメルト酸二無水物、3,6−ジフェニルピロメルト酸二無水物、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメルト酸二無水物、3,6−ジブロモピロメルト酸二無水物、3,6−ジクロロピロメルト酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボフェニル)メタン二無水物があげられる。
【0061】
またビス(2,5,6−トリフルオロ−3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(4,4’−オキシジフタル酸無水物)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物(3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物)、4,4’−〔4,4’−イソプロピリデン−ジ(p−フェニレンオキシ)〕ビス(フタル酸無水物)も前記酸二無水物の例としてあげられる。
【0062】
さらにN,N−(3,4−ジカルボキシフェニル)−N−メチルアミン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジエチルシラン二無水物、2,3,6,7−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物や1,2,5,6−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロ−ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物の如きナフタレンテトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物やピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物の如き複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物なども前記酸二無水物の例としてあげられる。
【0063】
好ましく用いうる酸二無水物は、2,2’−ジブロモ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物や2,2’−ジクロロ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−トリハロ置換二無水物の如き2,2’−置換二無水物などであり、特に2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0064】
一方、前記した異なる繰返し単位を形成するためのジアミンとしては、例えば(o,m又はp−)フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、1,4−ジアミノ−2−フェニルベンゼン、1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼンの如きベンゼンジアミン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)一1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンがあげられる。
【0065】
また4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−〔4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルチオエ一テル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、1,8−ジアミノナフタレンや1,5−ジアミノナフタレンの如きナフタレンジアミン、2,6−ジアミノピリジンや2,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジンの如き複素環式芳香族ジアミンなども前記したジアミンの例としてあげられる。
【0066】
好ましく用いうるポリイミドは、例えば2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物や4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−2,2−ジフェニルプロパン二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物やビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物などの芳香族系酸二無水物を用いて調製された、耐熱性で溶媒可溶性のポリイミドである。
【0067】
またジアミンとして、例えば4,4−(9−フルオレニリデン)−ジアニリンや2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタンや2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジンや2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンや1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンや1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンなどの芳香族系ジアミンを用いて調製された、耐熱性で溶媒可溶性のポリイミドも好ましく用いうる。
【0068】
他方、上記したポリアミドイミド又はポリエステルイミドとしては、特に限定はなく適宜なものを1種又は2種以上用いうる。就中、特開昭61−162512号公報に記載されたポリアミドイミドや、特開昭64−38472号公報に記載されたポリエステルイミドなどが好ましく用いうる。
【0069】
ポリマー層B形成用の固体ポリマーの分子量は、特に限定はないが溶剤に可溶であることが好ましい。就中、塗工膜の厚さ制度や表面精度ないし表面平滑性、膜強度、フィルム化した場合の伸縮や歪等によるクラック発生の防止性、溶剤に対する溶解性(ゲル化防止)などの点より重量平均分子量に基づいて1万〜100万、就中2万〜50万、特に5万〜20万が好ましい。なお重量平均分子量は、ポリエチレンオキサイドを標準試料とし、ジメチルホルムアミド溶媒を使用してゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した値である。
【0070】
ポリマー層Bの形成には上記のポリアリールエーテルケトンやポリアミド、ポリエステルやポリイミド等の固体ポリマーを単独で用いてもよいし、同種物を2種以上混合して用いてもよい。また例えばポリアリールエーテルケトンとポリアミドの混合物の如く、異なる官能基を持つ2種以上のポリマーの混合物として用いてもよい。
【0071】
またポリマー層Bを形成する上記固体ポリマーの配向性が著しく低下しない範囲で、上記以外の適宜なポリマーの1種又は2種以上を併用してもよい。ちなみにその併用ポリマーの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂及びAS樹脂、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリイミド、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、ポリアリレート、液晶ポリマー(光重合性液晶モノマーを含む)などの熱可塑性樹脂があげられる。
【0072】
またエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂の如き熱硬化性樹脂なども前記併用ポリマーの例としてあげられる。併用ポリマーの使用量は、配向性が著しく低下しない範囲であれば特に制限されないが、通常50重量%以下、就中40重量%以下、特に30重量%以下とされる。
【0073】
ポリマー層Bを形成する固体ポリマーの液状化には、熱可塑性ポリマーを加熱して溶融させる方式や、固体ポリマーを溶媒に溶解させて溶液とする方法などの適宜な方式を採ることができる。従って当該展開層の固体化は、前者の溶融液ではその展開層を冷却させることにより、また後者の溶液ではその展開層より溶媒を除去して乾燥させることにより行うことができる。ポリマー層Bの形成に際しては、安定剤や可塑剤や金属類等からなる種々の添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0074】
前記の乾燥には自然乾燥(風乾)方式や加熱乾燥方式、特に40〜200℃の加熱乾燥方式、減圧乾燥方式などの適宜な方式の1種又は2種以上を採ることができる。製造効率や光学的異方性の発生を抑制する点からはポリマー溶液を塗工する方式が好ましい。
【0075】
前記の溶媒としては、例えばクロロホルムやジクロロメタン、四塩化炭素やジクロロエタン、テトラクロロエタンやトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンやクロロベンゼン、オルソジクロロベンゼンの如きハロゲン化炭化水素類、フェノールやパラクロロフェノールの如きフェノール類、ベンゼンやトルエン、キシレンやメトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼンの如き芳香族炭化水素類、アセトンやメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンやシクロヘキサノン、シクロペンタノンや2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンの如きケトン類、酢酸エチルや酢酸ブチルの如きエステル類があげられる。
【0076】
また、t−ブチルアルコールやグリセリン、エチレングリコールやトリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルやジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールやジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールの如きアルコール類、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドの如きアミド類、アセトニトリルやブチロニトリルの如きニトリル類、ジエチルエーテルやジブチルエーテル、テトラヒドロフランの如きエーテル類、その他、塩化メチレンや二硫化炭素、エチルセロソルブやブチルセロソルブなども前記溶媒の例としてあげられる。
【0077】
溶媒は、単独で、あるいは2種以上を適宜な組合せで混合して用いることができる。溶液は、塗工粘度等の点より、溶媒100重量部に対して固体ポリマーを2〜100重量部、就中5〜50重量部、特に10〜40重量部溶解させたものが好ましい。
【0078】
液状化したポリマーの展開には、例えばスピンコート法やロールコート法、フローコート法やプリント法、ディップコート法や流延成膜法、バーコート法やグラビア印刷法等のキャスティング法、押出法などの適宜なフィルム形成方式を採ることができる。就中、厚さムラや配向歪ムラ等の少ないフィルムの量産性などの点より、キャスティング法等の溶液製膜法が好ましく適用することができる。
【0079】
光学補償効果等の点より好ましいポリマー層Bは、Re=80nm以下、就中2〜60nm、特に3〜50nm、かつRz/Re=6〜80、就中7〜60、特に8〜50を満足するものである。
【0080】
ポリマー層Bは、展開層を固体化させた後、そのRe等の制御を目的に必要に応じて、面内における分子を配向させる処理を施したものであってもよい。すなわち当該展開層を固体化させただけの状態では、nx≒ny>nzでReが小さいことが普通である。ちなみに層厚を10μmとした場合、Reは通例、30nm以下、就中1〜20nmである。
【0081】
一方、前記の配向処理を施すことにより、面内における配向軸の精度を高めることができて、nx>ny>nzの特性を付与することができ、特にReを増大させることができる。従ってRz/Re等の位相差特性を制御することができる。
【0082】
前記した面内で分子を配向させる処理は、伸張処理又は/及び収縮処理として施すことができ、その伸張処理は、例えば延伸処理などとして施すことができる。延伸処理には逐次方式や同時方式等による二軸延伸方式、自由端方式や固定端方式等の一軸延伸方式などの適宜な方式の1種又は2種以上を適用することができる。ボーイング現象を抑制する点よりは一軸延伸方式が好ましい。
【0083】
一方、収縮処理は、例えばポリマー層Bの塗工形成を基材上で行って、その基材の温度変化等に伴う寸法変化を利用して収縮力を作用させる方式などにより行うことができる。その場合、熱収縮性フィルムなどの収縮能を付与した基材を用いることもでき、そのときには延伸機等を利用して収縮率を制御することが望ましい。
【0084】
ポリマー層Bの好ましい形成方式は、溶媒に溶解させて液状化したポリマー溶液を支持基材上に展開して乾燥させ、必要に応じて支持基材を介しその固体化物に伸張処理又は収縮処理の一方又は両方を施す方式である。この方式によれば、ポリマー層Bを基材で支持した状態で処理できて製造効率や処理精度などに優れており、連続製造も可能である。
【0085】
前記の支持基材には適宜なものを用いることができ、特に限定はない。ポリマー層Bは、その支持基材との一体化物として用いうるし、支持基材より分離して用いることもできる。前者の支持基材一体型の場合、延伸処理等で支持基材に生じた位相差を利用することもできる。後者の分離方式は、延伸処理等で支持基材に生じた位相差が不都合な場合などに有利である。なお前者の支持基材一体型の場合、その支持基材としては透明なポリマー基材が好ましく用いられる。
【0086】
ちなみに前記のポリマー基材を形成するものの例としては、上記のポリマー系延伸フィルムA、固体ポリマーで例示したものやアセテート系ポリマー、ポリエーテルスルホンやポリスルホン、ポリカーボネートやポリノルボルネン、ポリオレフィンやアクリル系ポリマー、セルロース系樹脂やポリアリレート、ポリスチレンやポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン、液晶ポリマー、あるいはアクリル系やウレタン系、アクリルウレタン系やエポキシ系やシリコーン系等の熱硬化型ないし紫外線硬化型の樹脂などがあげられる。
【0087】
また特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマー、例えば(A)側鎖に置換又は/及び非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換又は/及び非置換のフェニル基並びにニトリル基を有する熱可塑性樹脂との前記A、Bを含有する樹脂組成物などもポリマー基材の形成に用いうる。ちなみに斯かる樹脂組成物の具体例としてはイソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物があげられる。ポリマー基材は、樹脂組成物の混合押出品等からなるフイルムなどとして得ることができる。支持基材による位相差の影響を抑制する点よりは、アセテート系ポリマーの如く等方性に優れるものが好ましい。
【0088】
光学補償偏光板は、偏光板の片側にポリマー系延伸フィルムA又はポリマー層Bの一方又は両方を、必要に応じ接着層ないし粘着層を介して積層することにより形成でき、液晶セルの視野角の拡大やコントラストの向上などを目的とした複屈折による位相差の補償などに好ましく用いうる。その実用に際しては、例えば液晶セル等の他部材と接着することを目的にその片面又は両面に接着層ないし粘着層を設けることができる。
【0089】
前記した粘着層の形成には、例えばアクリル系重合体やシリコーン系ポリマー、ポリエステルやポリウレタン、ポリエーテルや合成ゴムなどの適宜なポリマーを用いてなる透明粘着剤を用いることができる。就中、光学的透明性や粘着特性、耐候性などの点よりアクリル系粘着剤が好ましい。
【0090】
粘着層には必要に応じて例えば天然物や合成物の樹脂類、ガラス繊維やガラスビーズ、金属粉やその他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤や酸化防止剤などの適宜な添加剤を配合することもできる。また透明微粒子を含有させて光拡散性を示す粘着層とすることもできる。粘着層が表面に露出する場合には、それを実用に供するまでの間、セパレータなどを仮着して粘着層表面の汚染等を防止することが好ましい。
【0091】
なお前記の透明微粒子には、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカや酸化カルシウム、アルミナやチタニア、ジルコニアや酸化錫、酸化インジウムや酸化カドミウム、酸化アンチモン等の導電性のこともある無機系微粒子や、ポリメチルメタクリレートやポリウレタの如き適宜なポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系微粒子などの適宜なものを1種又は2種以上用いうる。
【0092】
光学補償偏光板の形成は、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても行いうるが、予め積層することにより、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置等の製造効率を向上させうる利点などがある。積層に際し位相差層A,Bと偏光板の進相軸や透過軸等の光軸の配置角度については特に限定はなく、適宜に決定することができる。一般には偏光板の透過軸と位相差層のnx方向を平行関係又は直交関係に配置することが、正面方向の特性に影響を与えずに斜視方向の特性を制御して視野角の拡大等を図る点より好ましい。
【0093】
光学補償偏光板の形成には、適宜な偏光板を用いることができ、その種類について特に限定はない。就中ポリビニルアルコール系フィルムや部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムの如き親水性高分子フィルムにヨウ素及び/又は二色性染料等の二色性物質を吸着させて延伸したものや架橋処理したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物の如きポリエン配向フィルム等からなる偏光フィルムなどの如く、自然光を入射させると直線偏光を透過する特性を示す吸収型の偏光板が高い偏光度の達成などの点より好ましく用いうる。偏光フィルムの厚さは、1〜80μmが一般的であるがこれに限定されない。
【0094】
偏光板は、偏光フィルムの片側又は両側に透明保護層を設けたものや、ワイヤーグリッド型偏光子などであってもよい。透明保護層は、偏光フィルムの補強、耐熱性や耐湿性の向上などの種々の目的で設けられ、その形成には透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮蔽性等に優れるポリマーなどが好ましく用いられる。ちなみにその例としては上記した支持基材で例示したものなどがあげられる。偏光特性や耐久性などの点より特に好ましい透明保護層は、表面をアルカリ等でケン化処理したトリアセチルセルロースフィルムである。
【0095】
透明保護層の厚さは、任意であるが、一般には偏光板の薄型化などを目的に200μm以下、就中5〜150μm、特に10〜100μmとされる。なお偏光フィルムの両側に透明保護層を設ける場合、その表裏で異なるポリマー等からなる透明保護層とすることもできる。
【0096】
透明保護層は、樹脂の塗布層や樹脂フィルムのラミネート層などとして形成でき、透明微粒子の含有によりその表面が微細凹凸構造に形成されていてもよい。また透明保護層は、ポリマー系延伸フィルムAや支持基材一体型のポリマー層Bに兼ねさせることもでき、その場合には光学補償偏光板、ひいては液晶表示装置等をより薄型化することができる。なお前記の透明微粒子には、上記に例示したものなどを用いうる。透明微粒子の使用量は、透明樹脂100重量部あたり2〜70重量部、就中5〜50重量部が一般的である。
【0097】
前記した樹脂フイルムのラミネート処理は、限定するものではないが、例えばアクリル系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーからなる接着剤、あるいはホウ酸やホウ砂、グルタルアルデヒドやメラミンやシュウ酸等のビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤から少なくともなる接着剤等を介して行うことができる。これにより湿度や熱の影響で剥がれにくく光透過率や偏光度に優れるものとすることができる。斯かる接着層は、水溶液の塗工乾燥層等として形成されるものであるが、その水溶液の調製に際しては必要に応じて他の添加剤や、酸等の触媒も配合することができる。特にポリビルアルコール系フィルムとの接着性に優れる点より、ポリビニルアルコール系接着剤を用いることが好ましい。
【0098】
光学補償偏光板の形成には適宜な方式を採ることができ、従って種々の形態の光学補償偏光板を作製することができる。ちなみにその例を図1〜図7(a〜t)に示した。3が偏光フィルム、7がポリマー系延伸フィルムA、9がポリマー層Bであり、1、5は透明保護層、2、4、6、8は接着層ないし粘着層、10は支持基材である。
【0099】
図1、2、図4(l)、図5(n),(o)、図6では偏光フィルム3の両側に接着層等2、4、6を介して透明保護層1、5を設けてなる偏光板を用いた場合を示している。また図1、2、3、及び図4(j),(k)では偏光板にポリマー系延伸フィルムA7とポリマー層B9の両方を設けたものを示している。図例より明らかな如く、ポリマー系延伸フィルムA7とポリマー層B9は、そのいずれが偏光板側に位置してもよい。
【0100】
光学補償偏光板は、図3、図4(j),(k)、図5(m)の如く、偏光板の透明保護層をポリマー系延伸フィルムA7が兼ねる形態のものであってもよい。またそのポリマー系延伸フィルムAは、それとポリマー層B9との積層体からなるものであってもよい。さらに図7の如く、ポリマー系延伸フィルムAに代えて、ポリマー層B9と一体化した支持基材10にて、偏光板の透明保護層を兼ねさせることもできる。前記の場合、ポリマー系延伸フィルムAとポリマー層B又はポリマー層Bと支持基材は、いずれが偏光板側に位置してもよい。
【0101】
光学補償偏光板の形成に際して、偏光板とポリマー系延伸フィルムA又は/及びポリマー層Bは、適宜な順序で積層して目的とする形態とすることができる。ちなみに(a)〜(d),(f),(h)〜(k)は、ポリマー系延伸フィルムA7とポリマー層B9を予め積層したものを接着層等4、6を介して接着したものである。
【0102】
前記の場合、(a),(c),(f),(g),(i),(k)の如くポリマー系延伸フィルムAとポリマー層Bの積層体は、接着層等8を介して接着したものであってもよいし、(b),(d),(h),(j)の如くポリマー系延伸フィルムA7を支持基材としてそれにポリマー層B9を付設したものであってもよい。また(f),(k)の如くポリマー層B9を支持する支持基材10を光学補償偏光板の構成部材として組み込むこともできる。一方、(e)は透明保護層5にポリマー層B9を付設して、それに接着層等8を介してポリマー系延伸フィルムA7を接着したものである。
【0103】
前記において、(a)等の形態では、接着層等6を介してポリマー系延伸フィルムA7を偏光板に接着した後、その上に別個の支持基材に設けたポリマー層B9を接着層等8を介して転写する方式などにても形成することができる。また(b)等の形態では、接着層等6を介してポリマー系延伸フィルムA7を偏光板に接着し、そのポリマー系延伸フィルムAにポリマー層B9を付設する方式にても形成することができる。さらに(a)〜(k)の形態は、上記に準じた方法でポリマー系延伸フィルムA7とポリマー層B9を設けた後、それを偏光フィルム3又は透明保護層5に接着する方式にても形成することができる。
【0104】
偏光板の片側にポリマー系延伸フィルムA7又はポリマー層B9の一方を有する形態のもの(l)〜(t)についても、前記に準じ構成部材を適宜な順序で積層して目的とする形態とすることができる。その場合、ポリマー層Bについては薄さに優れることより例えば(p),(g),(s)の如く、透明保護層5又はそれを兼ねる支持基材10の内側に位置させることもできる。(j)等の如くポリマー系延伸フィルムA7が透明保護層を兼ねる場合も同様である。
【0105】
なお上記の如くポリマー系延伸フィルムAとポリマー層Bの積層体の形成に際しては、ポリマー系延伸フィルムAを支持基材としてその上にポリマー層Bを塗工形成する方式や、別体の支持基材上に塗工形成したポリマー層Bを接着層等を介して転写する方式などの適宜な方式を採りうるが、その後者の場合には、ポリマー層Bを形成することとなる塗工層の乾燥工程で延伸処理を加えて、支持基材をポリマー系延伸フィルムAに変化させることもできる。
【0106】
前記した接着処理には必要に応じて、例えばアクリル系やシリコーン系、ポリエステル系やポリウレタン系、ポリエーテル系やゴム系等の透明な粘着剤などの適宜な接着剤を用いうる。構成部材の光学特性の変化を防止する点より、硬化や乾燥の際に高温プロセスを要しないものが好ましく、長時間の硬化処理や乾燥時間を要しないものが望ましい。また加熱や加湿条件下に剥離等を生じない接着剤が好ましく用いられる。
【0107】
上記において光学補償偏光板を形成する偏光板は、特に位相差層を設けない側にハードコート処理や反射防止処理、スティッキング防止処理や拡散ないし防眩等を目的とした処理などを施したものであってもよい。ハードコート処理は、偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばシリコーン系やウレタン系、アクリル系やエポキシ系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り性等に優れる硬化皮膜ないしフィルムを透明保護層の表面に付加する方式などにて形成することができる。
【0108】
一方、反射防止処理は、偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、例えばフッ素系ポリマーのコート層や多層金属蒸着膜等の光干渉性の膜や従来に準じた反射防止フィルムからなるものなどとして適宜に形成することができる。
【0109】
他方、スティッキング防止は隣接層との密着防止を目的に、防眩処理層は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止などを目的に施されるものであり、例えば上記した透明微粒子含有の樹脂塗工層やエンボス加工、サンドブラスト加工やエッチング加工等の適宜な方式で表面に微細凹凸構造を付与することなどにより、表面反射光が拡散する適宜な方式で形成することができる。
【0110】
また前記の防眩処理層は、偏光板の透過光を拡散して視角を拡大するための拡散層(視角補償機能など)を兼ねるものであってもよい。なお上記のハードコート層や反射防止層、スティッキング防止層や拡散層ないし防眩処理層等は、それらの層を設けたシートなどからなる光学層として、透明保護層とは別体のものとして設けることもできる。
【0111】
本発明による光学補償偏光板は、液晶表示装置等の各種表示装置の形成などに好ましく用いうる。その適用に際しては必要に応じ接着層ないし粘着層を介して、例えば反射板や半透過反射板、輝度向上フィルムや他の位相差板、拡散制御フィルムや偏光散乱フィルムなどの他の光学層の1層又は2層以上を積層してなる光学部材として用いることもできる。積層には、上記した粘着層等の適宜な接着手段を用いることができる。
【0112】
前記の反射板は、それを偏光板に設けて反射型偏光板を形成するためのものである。反射型の偏光板は通常、液晶セルの裏側に配置され、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置(反射型液晶表示装置)などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。
【0113】
反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式で行うことができる。その具体例としては必要に応じマット処理した透明保護層の片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設したものがあげられる。
【0114】
また前記の反射層は、光拡散型のものであってもよい。光拡散型の反射層は、例えば透明微粒子を含有させて表面を微細凹凸構造とした透明保護層の上に、その微細凹凸構造を反映させた反射層を形成する方式などにより得ることができる。表面微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させ、指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点を有する。
【0115】
微細凹凸構造を反映させた反射層は、当該微細凹凸構造上に例えば真空蒸着方式やイオンプレーティング方式やスパッタリング方式等の蒸着方式、メッキ方式などの適宜な方式で金属反射層を付設することにより形成することができる。
【0116】
なお反射層は、上記した偏光板の透明保護層に直接付設する方式に代えて、適宜なフィルムに反射層を付設してなる反射シートなどとして設けることもできる。金属からなる反射層は、その反射面がフィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などから好ましい。
【0117】
さらに反射層は、ハーフミラー等からなる、光を反射しかつ透過する半透過型のものなどであってもよい。半透過型偏光板も通常、液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置等を比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射外光を反射させて表示を達成し、比較的暗い雰囲気においては半透過型偏光板の裏側に配置したバックライト等の内蔵光源を使用して表示を達成するタイプの表示装置などを形成するためのものである。
【0118】
従って半透過型偏光板は、明るい雰囲気下ではバックライト等の光源使用によるエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの表示装置などの形成に有用である。
【0119】
一方、上記した輝度向上フィルムは、偏光板による吸収ロスなどを抑制して輝度の向上を図ることなどを目的に用いられるものである。輝度向上フィルムとしては適宜なものを用いうる。ちなみにその例としては、誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すものがあげられる(例えば3M社製、「D−BEF」等)。
【0120】
また輝度向上フィルムの他の例としてはコレステリック液晶層、就中コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したもの(例えば日東電工社製、「PCF350」や、Merck社製、「Transmax」等)の如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどがあげられる。後者のコレステリック液晶系のものでは、円偏光を直線偏光に変換することを目的に必要に応じて1/4波長板と組合せて用いることもできる。
【0121】
また位相差板としては、前記した1/4波長板のほか一軸や二軸等の適宜な方式による各種ポリマーの延伸フィルム、Z軸配向処理したポリマーフィルム、液晶性高分子層などの適宜な位相差を有するものを用いうる。拡散制御フィルムは、視野角や解像度に関わるギラツキ、散乱光等の制御を目的に用いられるものであり、拡散、散乱又は/及び屈折を利用した光学機能フィルムが用いられる。さらに偏光散乱フィルムは、フィルム中に散乱性物質を含有させて偏光がその振動方向により散乱異方性を生じるようにしたものであり、偏光の制御などに用いられる。
【0122】
上記した2層又は3層以上の光学層を積層した光学部材は、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学部材としたものは、品質の安定性や組立作業性等に優れて液晶表示装置等の製造効率を向上させう利点などがある。
【0123】
本発明による光学補償偏光板や光学部材には、他の光学層や液晶セル等の他部材と接着するための粘着層ないし接着層を必要な面に設けることもできる。その接着層は、上記に準じて形成することができる。就中、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる表示装置の形成性等の点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましく用いうる。また透明微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層等とすることもできる。
【0124】
光学補償偏光板や光学部材に設けた粘着層ないし接着層が表面に露出する場合には、その粘着層等を実用に供するまでの間、汚染防止等を目的にセパレータにて仮着カバーすることが好ましい。セパレータは、上記の支持基材等に準じた適宜な薄葉体に、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤によるコート層を設ける方式などにより得ることができる。
【0125】
上記した光学補償偏光板や光学部材等を形成する位相差層や偏光フィルム、透明保護層や粘着層などの各層は、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの適宜な方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0126】
本発明による光学補償偏光板や光学部材は、液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができ、例えば偏光板を液晶セルの片側又は両側に配置してなる反射型や半透過型、あるいは透過・反射両用型等の液晶表示装置の形成に用いることができる。
【0127】
すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと光学補償偏光板、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による光学補償偏光板ないし光学部材を用いて、それを液晶セルの外側の少なくとも片側に設ける点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。
【0128】
従って液晶セルの片側又は両側に光学補償偏光板を配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライト又はフロントライトを用いた液晶表示装置、あるいは反射板や半透過型反射板を用いてなる透過型や反射型、あるいは反射・透過両用型などの適宜な液晶表示装置を形成することができる。
【0129】
光学補償偏光板は、その位相差層が視認側又は/及び背面側の液晶セルと偏光板の間、特に視認側の偏光板との間に位置するように配置することが補償効果の点などより好ましい。その配置に際しては、上記の光学部材としたものを用いることもできる。
【0130】
前記において液晶表示装置を形成する液晶セルは任意であり、例えば薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、ツイストネマチック型やスーパーツイストネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型のもの、VA型やOCB型のものなどの適宜なタイプの液晶セルを用いたものであってよい。液晶セルの両側に光学補償偏光板や光学部材を設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0131】
また前記において液晶表示装置の形成部品は、積層一体化されていてもよいし、分離状態にあってもよい。また液晶表示装置の形成に際しては、例えばプリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板や保護板などの適宜な光学素子を適宜に配置することができる。かかる素子は、光学補償偏光板と積層してなる上記した光学部材の形態にて液晶表示装置の形成に供することもできる。
【実施例】
【0132】
実施例1
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムをヨウ素水溶液中で5倍に一軸延伸して得た偏光フィルムの両側に、厚さ5μmのPVA系接着剤を介して厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを接着して厚さ190μmの偏光板を得、その片側に厚さ25μmのアクリル系粘着層を介し厚さ80μmの延伸フィルムを接着して、総厚295μmの光学補償偏光板を得た。
【0133】
なお前記の延伸フィルムは、厚さ100μmのノルボルネン系樹脂フィルム(JSR社製、ARTON)をテンターを介し横延伸処理して得たものであり、Re50nm、Rz108nm(Rz/Re=2.2)のものである。なおRe、Rzは、王子計測機器社製、KOBRA−21ADHにて測定した屈折率より算出した(以下同じ)。
【0134】
実施例2
厚さ80μmのTACフィルムをテンターを介し横延伸処理して得た厚さが50μmで、Reが50nmであり、Rzが68nm(Rz/Re=1.4)の延伸フィルムを実施例1と同様の偏光フィルムの片側に厚さ5μmのPVA系接着剤を介して接着し、その偏光フィルムの他面に厚さ80μmのTACフィルムを同様に接着して、総厚160μmの光学補償偏光板を得た。
【0135】
実施例3
2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンと、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’一ジアミノビフェニルから合成された重量平均分子量5.9万のポリイミドの15重量%シクロヘキサノン溶液を二軸延伸ポリエステルフィルムの上に塗布し乾燥させて、厚さ5μm、Re5nm、Rz180nm(Rz/Re=36.0)のポリマー層を形成して、それを実施例1と同様の偏光板の片側に厚さ15μmのアクリル系粘着層を介し接着した後、二軸延伸ポリエステルフィルムを剥離して、総厚210μmの光学補償偏光板を得た。
【0136】
実施例4
厚さ3μm、Re4nm、Rz91nm(Rz/Re=22.8)のポリマー層としたほかは、実施例3に準じて光学補償偏光板を得た。
【0137】
実施例5
実施例3に準じて厚さ5μm、Re5nm、Rz180nmのポリマー層を厚さ80μmのTACフィルム上に形成して、それをポリマー層が外側となるように実施例1と同様の偏光フィルムの片側に厚さ5μmのPVA系接着剤を介して接着し、その偏光フィルムの他面に厚さ80μmのTACフィルムを同様に接着して、総厚195μmの光学補償偏光板を得た。
【0138】
実施例6
ポリマー層付きTACフィルムをそのポリマー層が内側となるように厚さ15μmのアクリル系粘着層を介して接着したほかは、実施例5に準じて総厚205μmの光学補償偏光板を得た。
【0139】
実施例7
実施例3に準じて得た二軸延伸ポリエステルフィルム上のポリマー層を、実施例1で得た光学補償偏光板における延伸フィルムの外側に転写して、総厚315μmの光学補償偏光板を得た。
【0140】
実施例8
厚さ100μmのノルボルネン系樹脂フィルムを180℃で1.2倍に縦延伸処理して厚さ90μm、Re50nm、Rz52nm(Rz/Re=1.0)の延伸フィルムを形成し、それを実施例5による光学補償偏光板におけるポリマー層の側に、厚さ25μmのアクリル系粘着層を介し接着して、総厚310μmの光学補償偏光板を得た。
【0141】
実施例9
実施例3に準じたポリイミド溶液を厚さ80μmのTACフィルム上に塗布して乾燥後、テンターを介しTACフィルムと共に横延伸処理して厚さ73μmの位相差板を得た。これはReが30nmで、Rzが38nm(Rz/Re=1.3)のTAC延伸フィルムに、Reが22nm、Rzが200nm(Rz/Re=9.1)のポリマー層が密着したものであった。ついでそれをポリマー層が外側となるように実施例1と同様の偏光フィルムの片側に厚さ5μmのPVA系接着剤を介して接着し、その偏光フィルムの他面に厚さ80μmのTACフィルムを同様に接着して、総厚183μmの光学補償偏光板を得た。
【0142】
実施例10
位相差板の表裏を逆転させて、ポリマー層が内側となるように接着したほかは実施例9に準じて、総厚183μmの光学補償偏光板を得た。
【0143】
実施例11
厚さ70μmのポリエステルフィルムをテンターを介し160℃で1.2倍に横延伸処理して厚さ59μm、Re50nm、Rz144nm(Rz/Re=2.9)の延伸フィルムを形成し、その上に実施例4に準じ厚さ3μm、Re4nm、Rz91のポリマー層を形成して厚さ62μmの位相差板を得、それをポリマー層が外側となるように実施例1と同様の偏光板の片側に厚さ15μmのアクリル系粘着層を介し接着して、総厚192μmの光学補償偏光板を得た。
【0144】
実施例12
位相差板の表裏を逆転させて、ポリマー層が内側となるように接着したほかは実施例11に準じて、総厚192μmの光学補償偏光板を得た。
【0145】
実施例13
実施例3に準じたポリイミド溶液を厚さ80μmのTACフィルム上に塗布し、その乾燥過程においてフィルムの流れ(長尺)方向に10%の縦延伸を行って厚さ83μmの位相差板を得た。これは、Re25nm、Rz42nm(Rz/Re=1.7)のTAC延伸フイルム上に、ポリイミドからなるRe40nm、Rz200nm(Rz/Re=5)のポリマー層が密着したものであった。ついでそれをポリマー層が外側となるように偏光板の片側にアクリル系粘着剤を介し接着して実施例9に準じ光学補償偏光板を得た。
【0146】
実施例14
4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−2,2−ジフェニルプロパン二無水物と、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニルから合成された重量平均分子量6.2万のポリイミドをシクロペンタノンに溶解して得た20重量%溶液を、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムに塗布し、その乾燥過程でテンターにて1.2倍の横延伸を行って、厚さ65μmの位相差板を得た。これは、Re22nm、Rz45nm(Rz/Re=2.0)のTAC延伸フイルム上に、ポリイミドからなるRe5nm、Rz220nm(Rz/Re=44)のポリマー層が密着したものであった。ついでそれをポリマー層が外側となるように偏光板の片側にアクリル系粘着剤を介し接着して実施例9に準じ光学補償偏光板を得た。
【0147】
参考例
実施例1と同様の偏光板のみを用いた。
【0148】
評価試験
実施例、参考例で得た光学補償偏光板と偏光板を種々の組合せでVA型液晶セルの視認側と背面側に遅相軸が直交するように配置して液晶表示装置を形成し、その上下、左右、対角a(45度と−225度)及び対角b(135度と−315度)の各方向において、コントラスト比が10以上の視野角を調べた。なお光学補償偏光板は、その位相差層がセル側となるように配置した。
【0149】
前記の結果を次表に示した。
【表1】

【0150】
表より実施例に相当する例1〜14の全てにおいて、比較例としての例15と対比して、コントラスト比が10以上の視野角がその角度に基づいて倍以上拡大されていることが判る。これより本発明による光学補償偏光板にて、液晶セルを光学補償して視認性に優れる高表示品位の液晶表示装置の得られることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】光学補償偏光板例の断面図
【図2】他の光学補償偏光板例の断面図
【図3】さらに他の光学補償偏光板例の断面図
【図4】さらに他の光学補償偏光板例の断面図
【図5】さらに他の光学補償偏光板例の断面図
【図6】さらに他の光学補償偏光板例の断面図
【図7】さらに他の光学補償偏光板例の断面図
【符号の説明】
【0152】
1、5:透明保護層
2、4、6、8:接着層(粘着層)
3:偏光フィルム(偏光板)
7:ポリマー系延伸フィルムA
9:ポリマー層B
10:支持基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光板の片側に位相差層を有してなり、面内の屈折率をnx、ny、厚さ方向の屈折率をnz、厚さをd、(nx−ny)d=Re、及び(nx−nz)d=Rzとしたとき、前記の位相差層がRe=20〜300nm、かつRz/Re=1.0〜8を満足するポリマー系延伸フィルムA、又はRe=1〜100nm、かつRz/Re=5〜100を満足する厚さが1〜20μmの塗工膜からなるポリマー層Bの一方又は両方からなることを特徴とする光学補償偏光板。
【請求項2】
請求項1において、ポリマー層Bがポリエーテルケトン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド又はポリエステルイミドの少なくとも1種よりなる光学補償偏光板。
【請求項3】
請求項1又は2において、片面又は両面に粘着層を有する光学補償偏光板。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の光学補償偏光板を液晶セルの外側に配置してなることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−179062(P2007−179062A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8713(P2007−8713)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【分割の表示】特願2002−309550(P2002−309550)の分割
【原出願日】平成14年10月24日(2002.10.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】