説明

位置情報の決定

【課題】物体から受信機の一つへの直接信号が遅延した反射信号と比べて弱い場合でも精度良く物体の位置を決定する。
【解決手段】複数の受信エレメントを含む、受信するための手段と、受信エレメントで受信された信号106を検出し、受信信号を表す出力信号を生成するための検出手段と、各受信エレメントごとに、他の任意の受信エレメントで受信される信号から生成される任意の出力信号とは別に、その受信エレメントで受信される信号から生成される出力信号にプロセスを適用し、その結果、その受信エレメントで受信される信号106を表すパラメータのそれぞれの値を得るように動作可能な処理手段とを含み、処理手段はさらに、こうして得られたパラメータの値を比較し、その結果、物体に関する位置情報を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信機を組み込んだ物体に関する位置情報を決定するための機器、放射物体を求めて検出体積内を検索するための機器、物体を位置決定するためのシステムに関し、詳細には、物体位置決めシステムにおいて物体で使用するための送信機を組み込んだ物体、位置情報を決定する方法、コンピュータ可読媒体、コンピュータプログラム製品、および信号に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、物体追跡システム、侵入検出器システム、在庫管理、車両衝突検出、ならびにセキュリティおよび作業員追跡システムの分野で具体的な用途が見出せる。
「能動」送信機タグを追跡するための、知られている従来技術のシステムが、「Ultra−wideband precision asset location system」(IEEE Conference on Ultra Wideband Systems and Technologies、2002年5月)と題する論文で公開されている。このシステムでは、船内の貨物室の広く間隔の空いた隅部の場所に配置された複数の受信アンテナを使用して、貨物室内の貨物に取り付けられた送信機タグから放射される超広帯域信号を検出する。円弧近似技法では、受信アンテナの中央コンピュータとの同期を利用し、各アンテナにおける識別パルスの到着時間の知識を使用し、3次元での物体の位置を確定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術のシステムでは、物体から受信機の1つへの直接信号が、遅延した反射信号と比べて弱い場合、例えば、物体と受信機の間に障害物がある場合、問題が生じる。この場合、遅延信号反射がパルス到着時間として誤って識別されることがあり、その結果、位置推定手順で劇的に大きなエラーが生じる可能性がある。また、各従来技術の受信機ユニットは比較的単純であるが、各受信機とコンピュータとを正確に同期させる必要があるので、正確で高価なタイミング回路が必要となることがある。さらに、円弧近似技法を利用すると、システムの精度が制限されることがあり、あいまいさも生じる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従来技術で明らかになった問題を克服するために、送信機を組み込んだ物体に関する位置情報を決定するための機器が提供される。この機器は、物体における送信機から送信された信号を受信するための手段と、受信手段に結合され、物体の角位置を決定することのできる出力を生成するための検出手段とを含む。
【0005】
密接に関係する一態様においては、送信機を組み込んだ物体に関する位置情報を決定するための機器であって、
組み込まれた送信機によって送信される信号パルスを受信するための手段であって、受信するための前記手段が、単一のハウジング内に、または共通の基板上に配置され、前記信号パルスが好ましくは超広帯域信号パルスである手段と、
受信手段に結合され、物体の角位置をそこから決定することができる出力を生成するための検出手段とを含み、
受信するための手段が複数の受信エレメントを含み、検出手段が、複数の受信エレメントで受信された信号パルスの相対タイミングを検出し、それによって角位置を決定することができるように適合される機器が提供される。
【0006】
いずれの事象においても、好ましくは、受信手段が、特性パルス周波数を有するパルス列を受信するように適合され、検出手段が、受信パルス列を表す信号を出力するように適合される。
【0007】
物体の到達距離ではなく角位置が得られる出力を生成することによって、物体の位置をより高い精度で決定することができる。
この機器は、UWBパルスを非同期的に(すなわち、同時送受信制御の下ではなく)送信することができる。到達距離は短いことがあり、一般に50メートル未満、通常、10メートル未満である。精度は、15cm未満とすることができる。好ましくは、複数のタグを同時に扱うことができる。別々の基地局を使用して、正確な位置を決定することができる。
【0008】
当機器は、広範な適用範囲を有することができ、アレイデータ処理またはビーム形成を使用せずに、時間領域プロセスにおいて、遅延を決定して、2次元ではなく3次元での角位置(または到来角)を見つけることができる。各受信機は、角位置を個別に決定することができる。マルチパスを活用して、性能を高める必要はない。この機器は、恒久的または半恒久的に固定することができる。この機器は、2つのアンテナ(必ずしも半波長の間隔を空ける必要はない)および複数の基地局を使用して、位置を決定することができる。
【0009】
この機器は、好ましくは、在庫品目に取り付けられた能動送信機タグを追跡する在庫管理システムなどの位置決めシステム内に設けられる、受信ユニット、またはセンサである。
【0010】
好ましくは、信号を受信する手段が、受動システムで受信される信号とは一般に異なるダイナミックレンジを有する信号を受信するように適合される。能動システムでは、信号強度は、受動システムでの1/Dに対して、1/D(ここで、Dは追跡される物体までの距離)で変化する。好ましくは、受信手段は、15dBより大きいダイナミックレンジ、より好ましくは、20dB、25dB、27dB、または30dBより大きいダイナミックレンジを有する。また、好ましくは、信号を受信するための手段および/または検出手段は、受動システムにおいて一般に受信されるものよりも、より広範囲の信号の形および/または周波数を、受信および/または検出するようにも適合される。この場合も、信号の形および/または周波数の生成が機器の直接制御外であり、より変化しがちであるからである。
【0011】
好ましくは、受信手段は、超広帯域(UWB)パルス、好ましくは0.5GHz〜24GHz、好ましくは2GHz〜12GHz、およびより好ましくは5.8GHz〜7.2GHzの周波数帯域にわたるパルスを受信するように適合される。この周波数範囲は、必要なレーダ特性を伝えるのに好都合で、一方、無線規制によって指定された限界内に収まる。パルスは好ましくは、そのパルスの成形により、シヌソイド周波数における強い周波数ピークおよび大きなサイドローブを有する、成形シヌソイドの形である。しかしながら、他の周波数範囲(およびしたがって他のパルス形状)も可能である。
【0012】
本発明では(全体を通して)、超広帯域(UWB)という語は、好ましくはブロードバンドシステムを意味し、好ましくは0.5〜79または81GHzの周波数範囲を意味する。より具体的には、好ましい周波数範囲は、3.1〜10.6GHz、5.46〜7.25GHz、5.725〜5.875GHz、22〜29GHz、76.5〜77.5GHz、および77〜81GHzのバリエーションである。こうした範囲が正確であることがあるが、それらはプラスまたはマイナス1、2、または5GHzとなることがある。本発明のUWBパルスでは、中心周波数に対する帯域幅の比は、好ましくは10、15、20、25、30、50、75、または100%よりも大きく、あるいは帯域幅は、好ましくは少なくとも100、250、500、または1,000MHzでもある。パルスは一般に、1,000、500、200、100、50、25、10、5、2、または1未満の、無線周波数の個々のサイクルを含んでいる。
【0013】
好ましくは、この機器は、検出手段をトリガするための手段をさらに含み、トリガ手段は送信信号の生成に依存しない。トリガ手段は、例えばタイムベース制御ユニット、または(水晶発振器などの)単純なクロックでよく、物理的に検出手段内に配置されても、システムの他のコンポーネント内に配置されてもよい。好ましくは、トリガ手段は、送信信号とトリガ手段の間に(常に変化する位相または単に一定の位相オフセットなど)定義された位相関係がないように、および/またはトリガ手段および送信信号が互いに異なるクロック源によって駆動されるように、送信信号の生成とは無関係である。本発明の「トリガ」という語は、好ましくは、物体が状態を変えるように、(パルスなどの)刺激を物体に適用することを意味する。そのようなトリガ手段を提供することにより、受信機の制御を単純化し統一することができる。
【0014】
また、この機器は好ましくは、トリガ制御信号を受信するための手段を含み、トリガ手段は、受信されるトリガ制御信号に応じて、検出手段をトリガするように適合される。トリガ制御信号を受信するための手段は、好ましくは、制御機構などの外部エージェントがトリガパラメータを指定できるようにする通信制御ユニットである。受信されるトリガ制御信号に応じて検出手段をトリガすることにより、この機器は、能動物体により容易にロックオンすることができる。
【0015】
トリガ手段は、好ましくは、制御信号によって決定される周波数で検出手段をトリガするように適合される。これにより、(例えば)外部エージェントが、機器の制御を柔軟に行えるようになり、その結果、より広い範囲の可能な信号にロックオンすることができるようになる。具体的には、これにより、一般に1つの検出周波数に限定されている従来の受動検出システムに対して、システムの柔軟性がより高まる。
【0016】
送信される信号が特性繰返し周波数を有する場合、トリガ手段は、特性繰返し周波数と異なるトリガ周波数で検出手段をトリガするように適合される。受信信号の特性繰返し周波数と異なる周波数で検出手段をトリガすることにより、移動する「距離ゲート」を作成することができ、これにより、受信機クロックの位相を送信機クロックの位相と整合させる必要がなくなる。好ましくは、トリガ周波数Ftrigが、(Fcr/n)+Fdiffによって決まり、ここでFcrは特性繰返し周波数、nは整数の分周比、およびFdiffは走査速度である。
【0017】
nの値は1より大きくてよく、好ましくは2、3、4、または5より大きくてよい。整数の分周比を1より大きくすることにより、検出手段は、特性繰返し周波数よりも低い周波数で動作することができるが、(特により小さいnの値において)情報または精度の著しい損失がない。また、Fdiffは非ゼロでよく、好ましくはFcrの振幅の5%、2%、または1%未満、およびより好ましくはFcrの振幅の0.5%未満である。
【0018】
好ましくは、受信するための手段は、複数の受信エレメントを含み、検出手段は、複数の場所で受信された信号の相対タイミングを検出し、それによって角位置を決定することができるように適合される。さらに好ましくは、複数の受信エレメントは、センサアレイ内の間隔を空けた場所に設けられるが、好ましくは、受信エレメント間の間隔は、機器と他の同じ機器との間の間隔と比べて小さい。例えば、受信エレメント間の距離は、好ましくは、通常の位置決めシステムにおける同じ機器間の距離の5%、1%、0.5%、または0.1%未満である。これにより、物体の角位置を検出する好都合で簡単な方法を提供することができるが、単掃引方向受信機など他の実装も可能である。
【0019】
好ましくは、複数の受信エレメントは、方位角および仰角での位置情報が得られるように適合される。
複数の受信エレメントは、好ましくは、電磁アンテナアレイの形であり、好ましくは、非共線的に配置される3つ(以上)の受信エレメントを含む。例えば、受信エレメントは、直角三角形の軌跡の(すなわち、L形パターンにおける)ほぼ頂点に配置することができる。また、完全に共線的な配置も可能である。
【0020】
受信エレメントは、受信する予定の放射の波長λと同じ次元の大きさである距離だけ間隔を空けることができる。例えば、受信エレメントは、距離mλだけ間隔を空けることができ、ここでmは10未満、好ましくは8、5、3、または2未満でよく、mは0.1よりも大きく、好ましくは0.2、0.3、または0.5より大きくすることができる。
【0021】
エレメントの放射インピーダンスがサイズと共に減少し得るので、エレメントのサイズが減少するにしたがって、エレメントが放射できる、または放射を検出できる効率は低下する。したがって、エレメント自体を過剰に小さくすべきではない。一方、エレメントは過剰に大きくすべきではない。アレイにとって物理的に大きくなりすぎることがあり、また、エレメント間の間隔をより大きくすると格子ローブ効果が生じることがあるからである。一般に、エレメントのサイズは、好ましくは、10λまたは4λ未満で、約λ/4より大きい。好ましい諸実施形態においては、そのサイズは、λ/4またはλ/2の近辺であるが、他の値を使用することもできる。具体的な一例においては、エレメントは、約5cmの波長で約1.5cmのサイズである。大きいエレメントサイズと小さいエレメント間隔の組合せは、エレメントを垂直方向に積み重ね、水平方向にオーバラップさせることによって実現することができる。
【0022】
より有利には、当側面による電磁アンテナアレイは、非共線的に配置される4つの受信エレメントを含むことができる。例えば、受信エレメントは、四辺形の軌跡の、より具体的には、不等辺四辺形の軌跡、またはその四辺形が並行する長辺および短辺を有する長方形の軌跡のほぼ頂点に配置することができる。
【0023】
この(または任意の)側面によれば、電磁アンテナアレイは、2つ未満(および好ましくは1つ未満)の対称軸が存在するように非共線的に配置される少なくとも3つの受信エレメントを含むことができる。
【0024】
諸実施形態においては、軌跡が台形(すなわち、2辺だけが並行である四辺形)であり、このように配置することにより、その感度パターンにおいて異なる人為構造(例えば、格子ローブ)をもつ、並行平面内にある不ぞろいの間隔の2対のアンテナを選択することができるようになる。有利には、短辺は、長辺の長さの0.5〜1倍(または約4分の3)とすることができる。具体的な一例として、台形の軌跡が平行な長辺および短辺を有する場合、短辺の長さは、およそアレイが送受信する予定の放射の波長λでよく、長辺の長さは、およそ3λ/2でよい。そのようなアレイからの信号を適切に処理することによって、格子ローブの影響を大幅に低減することができる。
【0025】
あるいは、四辺形は、他の2つの角は非直角でありながら、ほぼ直角な2つの対角を有することができる。この配置により、人為構造が互いに異なりながら、それぞれの主格子ローブが、正しい3次元方向を向き、したがって相殺するようにさせることができる。
【0026】
複数の受信エレメントは、好ましくは、ほぼ平面構成で配置され、それにより受信エレメントの幾何形状により、受信エレメントで受信された信号に応じて角位置をより直接的に計算することができるようになる。また、1つまたは複数の受信エレメントを、それ以外の受信エレメントが配置された平面の外に配置させることも可能であるが、角度計算がより複雑になり、よりあいまいになる可能性がある。具体的には、エレメントが非平面の表面上に配置され、それに合致する、共形(conformal)の配置も可能である。
【0027】
受信するための手段は、単一のハウジング内に、または共通の基板上に配置することができる。好ましくは、受信するための手段の全物理的大きさは、機器の最大検出距離の10%、5%、1%、または0.5%未満であるが、より大きな物理的大きさも可能である。「受信するための手段」は、好ましくは、上記の複数の受信エレメントなど、単一の機器の受信手段を指す。単一のハウジング内に、または共通の基板上に受信するための手段(および、実際は好ましくは機器自体)を設けることにより、機器の構造をより安価でより単純にすることができる。2つ以上の受信ユニットを、別々の場所に(例えば車両上に)設けることができ、これにより、精度および感度を高めるのを補助することができる。
【0028】
好ましくは、この機器は、処理手段と通信するための通信インターフェースをさらに含む。通信手段は、それだけには限らないが、RS232、Bluetooth、イーサネット、および無線周波リンクを含めた接続を利用する従来の通信ポートでよい。あるいは、通信手段は、例えば処理手段が検出手段と同じハウジング内に設けられる場合、単純な電気的接続でもよい。これにより、この機器で受信される信号を表すデータを処理手段に渡すのを容易にすることができる。
【0029】
通信インターフェースは、この機器で受信される信号を表す複数の信号を出力するように適合させることができる。また、通信インターフェースは、複数の信号を(物理的にまたはその他の点で)別々のチャネルにあるいはアナログまたはデジタル多重信号により、出力するように適合させることもできる。この機器で受信される信号を表す複数の信号を出力することにより、物体の変位を決定するのを補助するための最大量の情報を、処理手段に提供することができる。
【0030】
好ましくは、通信手段は、処理手段から制御信号を受信するように適合される。これにより、処理手段がこの機器をより容易に制御することができるようになる。
好ましくは、この機器は、検出手段の出力を処理して、物体に関する位置情報を決定するための処理手段をさらに含む。さらに、処理手段は、検出手段の出力を追加の角位置と共に処理し、その結果、物体に関連する送信機の変位を決定するように適合させることができる。
【0031】
また、この特徴は、独立して提供される。したがって、本発明の関係する一態様においては、送信機を組み込んだ物体に関する位置情報を決定するための機器であって、物体に関連する送信機の角位置をそこから決定することのできる出力を検出手段から受信するための入力手段と、検出手段の出力を追加の角位置と共に処理し、その結果、物体に関連する送信機の変位を決定するための処理手段とを含む機器が提供される。
【0032】
好ましくは、追加の角位置は、例えば同様の機器が提供される場所など、この機器から実質上遠く離れた場所に対して決定される物体の角位置である。変位は、好ましくは、デカルト式2次元または3次元での絶対変位であるが、代わりに、この機器または他の物体の場所に相対的な変位でもよい。本発明では「変位」という語は、好ましくは、(好ましくは固定の)データに対する物体の位置を表すデカルト式ベクトル量(またはその等価物)を意味する。この語は、厳密には、ある期間中の物体の相対的移動を包含するが、好ましくは、実質上瞬間的で独立している位置測定も包含する。好ましくは「変位」は、単一の角測定よりも詳細な位置情報を包含し、より好ましくは、複数の角測定とは異なるものである。
【0033】
処理手段は、好ましくは、検出手段からの出力を処理して、物体の角位置を決定するように適合される。好ましくは、角位置は、受信するための手段において複数の場所で受信される信号の差動タイミングの関数として計算される。
【0034】
より好ましくは、処理手段は、検出手段から受信された複数の信号の間のタイミング差を計算し、複数の信号のうちの少なくとも2つの間のタイミング差に応じて角位置を決定するように適合される。したがって、必ずしも他の情報を考慮する必要はなく、受信された信号だけを参照して角位置を決定することができる。
【0035】
あるいは、またはさらに、処理手段は、検出手段からの出力を処理して、物体の擬似距離を決定するように適合させることができる。本発明では「擬似距離」という語は、好ましくは、ターゲットまでの最短測定経路長を意味し、しばしばターゲットまでの往復にかかる時間(この時間は行程に比例する)に即して計算される。経路反射などの影響により、擬似距離は必ずしもターゲットまでの最短距離と等しくはない。好ましくは「擬似距離」という語は、不明なタイムオフセットが組み込まれたタイミング信号から導出される到達距離の測定をさらに包含する。この不明なオフセットは、好ましくは、信号の測定に関与する送信機と受信機の間の非同期関係から生じる。
【0036】
好ましくは、擬似距離は、受信するための手段によって受信される信号振幅の関数として計算される。一般に、マルチパスの影響、ターゲット遮蔽などにより、擬似距離の計算は、角位置の計算よりも精度が低くなり得るが、多くの用途では精度のレベルは許容可能である。
【0037】
有利には、物体の角位置を決定する機能と、擬似距離を決定する機能を組み合わせることにより、1つのセンサ設備だけを使用して機能する能動物体追跡システムを構築することができるが、従来技術のシステムでは、あいまいでなく機能させるために少なくとも2つ(または3つも)のセンサ設備を必要とし得る。
【0038】
処理手段は、検出手段からの出力を処理して、受信信号の振幅を決定し、振幅に応じて擬似距離を決定するように適合させることができる。これにより、必ずしも高精度ではないが、比較的迅速で容易に擬似距離を決定することができる。
【0039】
好ましくは、この機器は、物体の変位を表す信号を出力するための手段をさらに含む。好ましくは、出力信号は、2次元または3次元のデカルト座標を含むが、代わりに、出力信号は、距離測定を含んでもよく、あるいは2次元または3次元のデカルト座標に容易に変換することのできる極座標または固有の座標を含んでもよい。
【0040】
受信信号が特性パルス周波数を有するパルス列を含む場合、検出手段は、好ましくは、受信パルス列を表す信号を出力するように適合される。好ましくは、パルス周波数は、所定の許容限界内で変化することができる。例えば、(例えば、ピーク検出器からの出力など)パルス列を表す測定値ではなくそれから導出される測定値を出力することをせず、受信パルス列を表す信号を出力することにより、より多くの情報が後の処理段階で利用可能となり得、したがって、システムの精度を高めることができる。
【0041】
検出手段は、受信パルスの波形を表す信号を出力するように適合させることができる。これにより、信号を最も高い精度で処理するために後の段階で必要とされる可能性のある、実質上すべての情報が得られる。
【0042】
特性パルス周波数は、2MHz〜20MHz、好ましくは5MHz〜15MHz、およびより好ましくは10.5MHz〜13.5MHzでよい。一実施形態においては、約9MHz〜12MHzの特性パルス周波数が選択される。好ましくは、特性パルス周波数を使用時に変化させ、それによって該当する信号を柔軟に検出できるようにすることができる。
【0043】
検出手段は、好ましくは、受信パルス列をサンプリングし、特性パルス周波数に関する特性サンプリング周波数を有する出力を生成するための手段を含む。受信パルス列をサンプリングすることにより、必要となる複雑な処理を、計算処理的に制限されたアナログ領域ではなく、デジタル領域で実施することができる。
【0044】
サンプリング手段は、好ましくは、出力サンプリング周波数が特性パルス周波数よりも低いダウンサンプラを含む。特性パルス周波数よりも低い出力サンプリング周波数を生成することにより、高価で複雑な高速回路を使用せずに、従来の回路を後の段階で使用することができる。
【0045】
出力サンプリング周波数は、5kHz〜100kHz、好ましくは25kHz〜90kHz、およびより好ましくは60kHz〜85kHzでよい。出力サンプリング周波数は、(好ましくは、人間に容易に聞こえる周波数には限らないが)音声周波数範囲内とすることができる。好ましくは、80kHzの周波数が選択される。そのような範囲の出力サンプリング周波数は、無線周波数信号よりも、従来の回路を使用して処理する方がずっと容易である。
【0046】
この機器は、好ましくは、実質的に所与の複数の特性パルス周波数で動作する入力サンプリングクロックと、出力サンプリング周波数で動作する出力サンプリングクロックとをさらに含み、サンプリング手段は、好ましくは、入力サンプリングクロック信号を受信し次第、信号をサンプリングし、出力サンプリングクロック信号を受信し次第、サンプル出力を生成するように適合される。これにより、信号をダウンサンプリングするための簡単で有効な基礎が得られる。
【0047】
所与の複数の特性パルス周波数は、(1、2、3などの)整数倍でも、好ましくは(1/2、1/3、1/4などの)整数分の1でも、あるいは他の任意の非整数倍でもよい。好ましくは、0.25の倍数が使用される。システムごとに異なる周波数オフセット/偏差が存在し得ることを除き、サンプリングクロック周波数は、一般に特性周波数の倍数であることが理解されよう。
【0048】
サンプリング手段は、好ましくは、前の出力サンプリングクロック信号以降にとられた入力サンプルの平均としてサンプル出力を生成するように適合される。好ましくは、入力サンプルの平均を生成するためにサンプルアンドホールドユニットが設けられ、好ましくは、平均が平均値平均であるが、中央値または最頻値平均でもよい。したがって、入力サンプリングクロック周波数と一致する信号が強調され、他の(雑音)周波数は相殺する傾向となり、それによってシステムの信号対雑音比が高まり得る。好ましくは10〜60の入力サンプル、より好ましくは20〜50の入力サンプル、およびさらにより好ましくは30〜40の入力サンプルがとられ、使用されて、各出力サンプルが生成される。
【0049】
好ましくは、サンプリング手段は、サンプル出力が生成された後、所定の量によって入力サンプリングクロックの位相を進めるように適合される。この機能によって、時間伸張効果が得られ、それにより、出力サンプルは、入力信号波形を時間伸張した表現となる。またこれにより、時間/空間範囲をシーケンシャルに走査することも可能にすることができる。好ましくは、所定の位相シフトは、入力サンプリングクロック周波数よりもかなり小さく、好ましくは、入力サンプリングクロック周波数の20%、10%、5%、または1%未満である。
【0050】
受信手段は、物体において送信される信号に追加の少なくとも1つの信号を受信するように適合させることができ、物体において送信される信号とその追加の信号または各追加の信号とを区別するための手段をさらに含むことができる。好ましくは、区別するための手段は、信号と1、2、5、10、20、または50を超える追加の信号とを区別するように適合される。
【0051】
また、この特徴は、独立して提供される。したがって、本発明の他の一側面においては、送信機を組み込んだ物体に関する位置情報を決定するための機器であって、物体に関連する送信機を含む複数の送信機によって送信される複数の信号を受信するための手段と、物体において送信される信号と任意の追加の受信信号とを区別するための手段であって、その区別が区別手段によって受信される識別情報に応じて行われる手段と、区別された信号に応じて物体の角位置を決定し、それによって物体に関する位置情報を決定することができる手段とを含む機器が提供される。区別手段は、好ましくは、信号の固有特性に応じて、信号に関して区別するように適合される。
【0052】
本発明は、密接に関係する一態様においては、送信機を組み込んだ物体に関する位置情報を決定するための機器であって、複数の信号を受信するための手段であって、各信号が、複数の送信機および組み込まれた送信機を含む前記複数の送信機のうちのそれぞれの送信機によって送信される手段と、組み込まれた送信機によって送信される信号のパルス繰返し周波数に応じて、組み込まれた送信機によって送信される受信信号と任意の追加の受信信号とを区別するための手段とを含み、組み込まれた送信機によって送信される前記受信信号が、好ましくは、少なくとも1つの超広帯域パルスを含む機器を提供する。
【0053】
好ましくは、組み込まれた送信機によって送信される信号が、時分割多重化される。
好ましくは、区別手段は、組み込まれた送信機によって送信される信号の検出を駆動するように動作可能な検出クロックと、選択された信号周波数に応じて検出クロックを設定し、それによって、選択された信号周波数を有する信号が機器によって優先的に検出されるための手段とを含む。
【0054】
このシステムは、好ましくは、パルス繰返し周波数チャネル化によって、超短パルスの複数の非同期送信を可能にする、短パルス/インパルスのシステムでよい。パルス繰返し周波数は、一般に1ns未満のパルス持続時間を有する、1〜10MHz、好ましくは2および6MHzより前、好ましくは約3MHzでよい。システムは、物体/タグ/ターゲットを、最低3回のベースバンド検出で位置決定することができる。
【0055】
固有特性は、信号のパルス繰返し周波数でよい。パルス繰返し周波数は、好ましくは、固有周波数である。好ましくは、例えば6GHzの搬送周波数でn×250kHzでよい相対周波数オフセットを有する、パルス繰返し周波数(PRF)範囲が使用される。ここで、nは1以上の整数である。これにより、12個までの異なる物体が同じ検出空間を占めることが可能になる。十分に高い信号対雑音比を実現することができれば、より狭い周波数ビンを提供することができ、互いに区別することのできる物体数が増え、その逆も同様である。
【0056】
固有特性は、パルス位置変調特性でもよい。好ましくは、変調では、二位相偏移変調(BPSK)または他の任意の適した変調技法の形で、パルスを「振動」させる。
あるいは、またはさらに、信号は、時分割多重化することができる。好ましくは、従来のTDMAのアルゴリズム、規格、およびチップセットが使用される。FDMAおよびCDMAの規格およびチップセットを使用することもできる。有利には、変調技法の使用と周波数偏移を組み合わせて、大きな範囲の一意で識別可能な物体の「シグニチャー」を作成することができる。
【0057】
好ましくは、区別手段は、信号の検出を駆動するように動作可能な検出クロックと、選択された信号周波数に応じて検出クロックを設定し、それによって、選択された信号周波数を有する信号が機器によって優先的に検出されるための手段とを含む。好ましくは、検出クロックは、上記の入力サンプリングクロックである。
【0058】
この機器は、選択された信号周波数と受信信号の間の周波数誤差を検出するための手段と、周波数誤差を補償するための手段とをさらに含むことができる。好ましくは、周波数誤差を検出するための手段は、周波数推定ルーチンである。これは、短期周波数変動の影響を軽減するのに役立ち得る。
【0059】
周波数誤差を検出するための手段は、好ましくは、連続パルスのピークに対応する受信信号中の連続ピーク間の間隔に応じて信号周波数を推定し、推定信号周波数を検出周波数と比較するように適合される。これにより、検出周波数と信号周波数の間の周波数誤差を決定するための比較的容易な方法が得られ、それを使用して、例えば、機器を粗同調することができる。
【0060】
周波数誤差を検出するための手段は、連続したサンプルの位相差に応じて推定信号周波数を計算し、推定信号周波数を検出周波数と比較するように適合させることができる。連続したサンプルの位相差を考慮することにより(例えば、位相差を平均することにより)、周波数誤差のより正確な推定値を生成することができる。これにより、好ましくはピーク検出機能と共に、機器を微調整するのに適し得る。
【0061】
好ましくは、周波数誤差を補償するための手段は、推定周波数誤差によってもたらされる、予想される信号の形を表す整合フィルタ原型を作成するように適合される。整合フィルタ原型は、好ましくは、後述するように、受信信号におけるいくつかの信号波形を識別する比較方法で使用するのに適している。これにより、検出周波数と選択された信号周波数が異なる場合に、検出周波数を選択された信号周波数に整合するように変更する必要がなくなり得、その結果として、サンプリング回路が簡略化され得る。
【0062】
好ましくは、処理手段は、複数の受信エレメントにおける信号の受信の間隔を決定し、それによって物体の角位置を決定することを可能にするための手段を含む。好ましくは、受信エレメントは、上記のものであり、かつ/または機器内に設けられる。間隔は、時間差も空間差も表し得るが、好ましくは、受信エレメントで受信された信号を表すサンプリングされたデータに対するデータオフセットを表す。このデータオフセットは、該当するサンプリングレートによって、対応する時間差にリンクされている。
【0063】
この処理は、好ましくは、周波数領域ではなく、時間領域で実行される。
一実施形態においては、間隔を決定する手段は、少なくとも1対の受信エレメントで受信される信号を相互相関させ、相互相関結果に応じて間隔を決定するように動作する。好ましくは、相互相関方法は、打切り相互相関プロセスであり、それによって、例えば、受信エレメント間の最大信号遅延の知識を使用して、相互相関計算の範囲を制限する。打切り相互相関は、国際公開第01/59473号で教示されている。
【0064】
他の(前の実施形態と組み合わせることができる)一実施形態においては、間隔を決定するための手段は、複数の受信エレメントで受信された信号に整合フィルタを適用し、整合フィルタの出力に応じて時間差を決定するように動作する。好ましくは、整合フィルタは、整合フィルタ原型でプログラムされ、整合フィルタ原型は、好ましくは、生成されるパルス波形の少なくとも一部に対応し、好ましくは、それを使用して、フィルタ入力がフィルタ原型により近く整合するほど、フィルタ出力が大きくなるように、フィルタ係数を設定する。
【0065】
(一般に能動追跡装置によって放射される信号などの)ブロードバンド信号のコンテキストでは理論的に適切ではないが、それにもかかわらず整合フィルタが、有用な性能レベルを実現したという、驚くべき発見がなされた。また、この重要な特徴は、独立して提供される。
【0066】
したがって、本発明の関係する一態様においては、物体に関する位置情報を決定するための機器であって、複数の受信エレメントを含む、受信するための手段と、受信エレメントで受信された信号を検出し、受信信号を表す出力信号を生成するための検出手段と、複数の受信エレメントによって受信される信号間の間隔を検出するように整合フィルタを適用し、それによって物体の角位置を決定するように動作可能な処理手段とを含む機器が提供される。
【0067】
密接に関係する一態様においては、物体に関する位置情報を決定するための機器であって、複数の受信エレメントを含む受信手段と、整合フィルタを含み、受信エレメントのうちの1つによって受信されたある信号と受信エレメントのうちの少なくとも1つの他の受信エレメントによって受信されたその信号またはある信号との間の間隔を検出し、それによって物体の角位置を決定するように動作可能な処理手段とを含む機器が提供される。
【0068】
他の密接に関係する態様によれば、物体に関する位置情報を決定するための機器であって、複数の受信エレメントを含む、受信するための手段と、受信エレメントで受信された信号を検出し、受信信号を表す出力信号を生成するための検出手段と、各受信エレメントごとに、他の任意の受信エレメントで受信される信号から生成される任意の出力信号とは別に、その受信エレメントで受信される信号から生成される出力信号にプロセスを適用し、その結果、その受信エレメントで受信される信号を表すパラメータのそれぞれの値を得るように動作可能な処理手段とを含み、処理手段はさらに、こうして得られたパラメータの値を比較し、その結果、物体に関する位置情報を取得するように動作可能な機器が提供される。
【0069】
これらの態様のいずれにおいても、この機器は、例えば遅延線を使用するのではなく、デジタル領域における整合フィルタリングを使用して、角位置を決定することが可能となり得る。
【0070】
好ましくは、パラメータは、位相および時間のうちの1つ(したがって、位相または時間またはその両方)である。
好ましくは、処理手段によって適用されるプロセスは、信号の特性、または予想される特性に依存する。好ましくは、特性、または予想される特性は、周波数、位相、帯域幅、およびパルス幅のうちの少なくとも1つである。
【0071】
好ましくは、処理手段によって適用されるプロセスは、物体の特性、または予想される特性に依存し、好ましくは、受信手段からの物体の距離、または予想される距離に依存する。
【0072】
好ましくは、この機器は、複数の可能なプロセスから、処理手段によって適用されるプロセスを選択するように適合された選択手段をさらに含む。このプロセスは、例えば信号自体の周波数範囲に最適であるように適合させることのできるフィルタリングでよい。
【0073】
好ましくは、この機器は、複数組のプロセスデータを記憶するための手段を含み、選択手段は、複数組のプロセスデータから1組のプロセスデータを選択し、それにより処理手段によって適用されるプロセスを選択するように適合される。
【0074】
好ましくは、この機器は、パラメータの、少なくとも1つのあらかじめ取得された値に応じて、かつ/または物体に関する、あらかじめ取得された位置情報に応じて、処理手段によって適用されるプロセスを変更するための手段をさらに含む。
【0075】
好ましくは、このプロセスは整合フィルタを含む。整合フィルタは、好ましくは、フィルタリングされるパルスの逆応答であり、その複素数を乗算するとデルタ関数が得られる特性をもつ波形で定義される。整合フィルタは、好ましくは、電子的に合成される。
【0076】
好ましくは、プロセスは、複数の異なる時間オフセットでフィルタを出力信号に適用すること、およびフィルタからの出力に応じて時間オフセットを選択することを含む。
好ましくは、処理手段の動作は、複数の受信エレメントによって受信された信号の間の間隔を検出するように整合フィルタを適用し、それによって物体の角位置を決定することを含む。
【0077】
好ましくは、この機器は、少なくとも1つの時変信号の形に応じて、および好ましくは少なくとも1つの時変信号の包絡線の形に応じて、整合フィルタを生成するための手段をさらに含む。
【0078】
好ましくは、生成手段は、少なくとも1つの時変信号の形、または少なくとも1つの時変信号の包絡線を、関数、好ましくは二次関数に合わせるように適合される。
好ましくは、受信手段および検出手段は、その周波数の5%、10%、または20%よりも大きい帯域幅を有する信号を受信し検出するように適合される。
【0079】
好ましくは、各信号は、0.5GHz〜24GHz、好ましくは2GHz〜12GHz、およびより好ましくは5.8GHz〜7.2GHzの特性周波数を有する。
好ましくは、信号はパルス信号である。
【0080】
好ましくは、各パルス信号は、少なくとも5サイクルを含み、好ましくは少なくとも10、20、50、100、または500サイクルを含む。
好ましくは、各パルス信号は、2nsより長い、好ましくは5ns、10ns、20ns、および50nsのうちの少なくとも1つよりも長いパルス長を有する。
【0081】
好ましくは、信号は、2MHz〜20MHz、場合によっては5MHz〜15MHz、場合によっては10.5MHz〜13.5MHzの特性繰返し周波数を有するパルス列を含む。
【0082】
好ましくは、位置情報は、物体の角位置である。
好ましくは、その物体または各物体は、送信機を組み込んだ物体を含むまたは備える。
好ましくは、信号は、物体と関連した送信機によって送信される信号である。
【0083】
好ましくは、物体と関連した送信機によって送信される信号は、超広帯域(UWB)信号である。
(少なくとも)いずれの整合フィルタ態様においても、好ましくは、受信手段および検出手段は、その周波数の5%、10%、20%、30%、または40%よりも大きい帯域幅を有する信号を受信し検出するように適合される。あるいは、受信手段および検出手段は、その周波数の5%未満の帯域幅を有する信号を受信し検出するように適合させることもできる。好ましくは、整合フィルタは、パルスの持続時間よりもかなり小さい、受信パルスの一部分に整合するように適合され、整合部分はほぼシヌソイドである。
【0084】
この機器は、物体に向けてプローブ信号を送信するための手段をさらに含み得、受信するための手段は、物体からのプローブ信号の反射を受信するように適合される。
この特徴は、物体に関する位置情報を決定するための機器であって、信号パルスを受信するための手段であって、前記信号パルスが好ましくは超広帯域信号パルスである手段と、受信手段に結合され、物体の角位置をそこから決定することができる出力を生成するための検出手段と、物体に向けてプローブ信号を送信するための手段とを含み、前記受信手段および前記送信手段が、単一のハウジング内に、または共通の基板上に配置され、前記信号パルスが、物体からのプローブ信号の反射および物体に関連した送信機によって送信される信号のうちの1つである機器の形で、独立に提供することもできる。
【0085】
プローブ信号を送信するための手段は、好ましくは、物体と関連した送信機によって送信される信号と異なる信号を送信するように適合される。好ましくは、そのような異なる信号は、周波数、位相、またはパルス波形や関連周波数スペクトルなど他の信号特性において異なる。
【0086】
この機器は、プローブ信号を符号化し、それによってそれを物体から受信された信号と区別することができるための手段をさらに含む。好ましくは、符号化するための手段は、物体に関連した送信機によって送信される信号に関して、上記のとおりである。
【0087】
この機器は、好ましくは、プローブ信号によって照射された物体の位置情報を決定するための手段をさらに含む。これにより、この機器の周囲の環境の認識度が高まり得る。好ましくは、そのように決定される位置情報は、送信機を組み込んだ物体に関する上記の位置情報の形のうちの1つの形である。
【0088】
好ましくは、照射された物体の検出は、放射する物体(すなわち、送信機を組み込んだ物体)の検出と同時に動作可能であるが、あるいは、(例えば、夜において)放射物体の検出が使用不可でありながら動作可能とすることもでき、その逆も同様である。
【0089】
好ましくは(いずれの態様においても)、この機器は、照射された物体の位置情報を、少なくとも1つの既知の物体に関する位置情報と比較し、それによって異常な物体を識別することができるための手段をさらに含む。そのような異常な物体は、例えば、必要な送信タグを有していない、侵入者である可能性がある。
【0090】
好ましくは、「既知の物体」には、この機器によって検出されたいずれかまたはすべての物体、事前プログラムされまたは前の測定から推定された(この機器の付近の構造的特徴などの)基準物体、および追加の物体を含むことも含まないこともある、事前プログラムされまたは測定された検出区域が含まれる。
【0091】
この機器は、好ましくは、比較の結果に応じて警報信号を生成するための手段をさらに含む。これにより、最小限の改変で、侵入検出システムを提供して、物体追跡システムを補って完全にすることができる。好ましくは、その物体または各物体は、送信機を組み込んだ物体を含み、好ましくは、基準物体は、複数の既知の物体および/またはこの機器によって検出された物体を含む。
【0092】
したがって、本発明の他の一態様においては、信号を送信する物体を求めて検出体積内を検索するための機器であって、複数の受信エレメントを含むアレイと、受信エレメントに到着する信号を検出し、受信信号を表す出力信号を生成するための検出手段と、複数の受信エレメントで受信される信号の間の間隔を決定し、それによって物体の存在およびその角位置を決定することができるための処理手段とを含む機器が提供される。
【0093】
密接に関係する一態様においては、信号を送信する物体を求めて検出体積内を検索するための機器であって、複数の受信エレメントを含むアレイと、受信エレメントに到着する所与の距離ゲートからの少なくとも1つの信号を検出し、少なくとも1つの受信信号を表す出力信号を生成するための検出手段と、距離ゲートを変化させるための手段と、複数の受信エレメントのうちの1つで受信される少なくとも1つの信号と複数の受信エレメントの他の受信エレメントまたは他の各受信エレメントで受信される少なくとも1つの信号との間の間隔を決定し、それにより、物体からの信号の送信が機器と同期化されているかどうかに関係なく、物体の存在およびその角位置を決定することができるための処理手段とを含む機器が提供される。
【0094】
したがって、ロックされていないレーダ中を検索するシステムを実施することができる。
好ましくは、送信信号を生成するのに使用されない、検出手段と結合された受信機クロックをさらに含む。
【0095】
好ましくは、検出手段は、所与の距離ゲート内の信号を検出するように動作可能であり、この機器は、距離ゲートを変化させ、それによってこの機器と同期化されていない物体を検出することができるための手段をさらに含む。
【0096】
好ましくは、物体がこの機器と同期化されていないことは、物体とこの機器が非同期であることを意味する。本発明では「非同期」という語は、好ましくは、具体的には(一方から他方へのパルスの送信など)物体間の対話に関して、共通のタイミングすなわち同期が存在しないことを意味する。この場合、対話に関連するエレメント(例えば、送信機および受信機)は、同じタイミング信号によって駆動されない。好ましくは、「非同期」は、そのようなタイミング信号間の任意の位相差を意味するが、周波数または(同様に)期間における任意の差も意味し得る。
【0097】
本発明では、受動レーダシステム(すなわち、受信機がプローブパルスを送信するシステム)のコンテキストにおける「距離ゲート」という語は、好ましくは、ある時間範囲が経過した後、パルスが進むことになる距離によって規定される空間領域を意味する。例えば、従来技術の受動レーダシステムは、パルスの送信後、所定の遅延で受信機の測定値を読み取るが、例えば、dc/2、(T+d)c/2、(2T+d)c/2などに位置する固定の距離ゲートを有する。ここで、cは光の速度、dはパルスの送信と受信信号のサンプリングとの間の遅延、およびTは、連続パルス間の遅延(一般にdよりもはるかに大きい)である。
【0098】
受信機および送信機が「ロックされていない」(すなわち、同期化されていない)、非同期信号のコンテキストにおいては、「距離ゲート」という語は、好ましくは、受信機クロックからの所与のオフセットで受信機によって検出されることになる、送信機の空間および位相オフセットの組合せを指す。したがって、パルス繰返し時間P(すなわち、送信パルス間で経過する時間)における所与のオフセットdの場合、d/P×360°の受信機に相対的な位相を有する、n(P+d)cの距離にある送信機は、理論的に距離ゲート内に収まることになる。ここで、nは整数、およびcは光の速度である。基本的に距離ゲートは、同期ゲートおよび非同期ゲートのどちらでも同じ方法で生成されるが、非同期のケースでは、距離ゲートはより抽象的な特性であることが注目される。
【0099】
上記から、固定の距離ゲートが使用された場合、この機器からの距離が変化しない物体および受信機に相対的な位相が変化しない物体は、どちらも検出されないことがわかる。また、この重要な特徴は、独立して提供される。
【0100】
好ましくは、この機器は、この機器を同じ機器(すなわち、好ましくは上記の機器)で較正するための手段をさらに含む。これにより、この機器の検出精度を高めることができる。また、この特徴は、独立して提供される。
【0101】
したがって、本発明の関係する一態様においては、送信機を組み込んだ物体に関する位置情報を決定するための機器であって、物体における送信機から送信された信号を受信するための手段と、受信手段に結合され、受信手段によって受信された信号を検出し、受信信号を表す出力信号を生成するための検出手段と、この機器を同じ機器で較正するための手段とを含む機器が提供される。
【0102】
較正手段は、基準送信機からの信号を受信し、受信基準信号を表す信号を出力するように適合させることができる。受信基準信号を表す信号を提供することにより、この機器は、そのような2つの機器間の信号の受信の相対タイミングなど、物体から受信される信号の追加の特性を、外部エージェントが推定することを可能にできる。この特徴は、受信ユニットに共通クロックを提供せずに、そのような相対タイミングを決定させることを可能にできるので、有利である。
【0103】
好ましくは、較正手段は、物体に関連する送信機からの信号の到着時間と基準送信機からの信号の到着時間との間のタイミング差を表す信号を出力するように適合される。これにより、較正を実施するのを補助することができる。
【0104】
あるいは、またはさらに、較正手段は、共通クロック信号に応じて検出手段をトリガするための手段を含むことができる。そのようなクロック信号は、比較的容易に生成することができ、この機器から信号データを出力する目的で既に存在する接続を介して送信することができる。好ましくは、トリガ手段は、共通クロック信号の受信からの所定の時間オフセットで受信信号の走査を開始するように適合される。
【0105】
好ましくは、この機器は、物体をさらに含む(物体自体を組み込む)。これにより、スタンドアロンシステムを作成することができる。この機器は、好ましくは、複数の角位置測定に応じて物体の変位を決定するための手段をさらに含み、好ましくは、遠隔の位置決定機器から角位置情報を受信するための手段を含む。
【0106】
本発明の他の一態様においては、送信機を組み込んだ物体を位置決定するためのシステムであって、上記の少なくとも1つの機器と、複数の決定された角位置に応じて物体の変位を決定するための手段とを含むシステムが提供される。
【0107】
密接に関係する一態様においては、送信機を組み込んだ物体を位置決定するためのシステムであって、物体から信号を受信し、受信信号を表す信号を出力するための手段を含む少なくとも1つの機器と、その機器または各機器に対する物体の角位置を決定するための手段と、決定された角位置情報に応じて物体の変位を決定するための処理手段とを含むシステムが提供される。好ましくは、その機器または各機器は、上記の他の任意の機器の、任意のまたはすべての互換性のある特徴を含んでいる。
【0108】
好ましくは、システムは、好ましくは4未満、および好ましくは3未満の、複数の機器を含む。機器の数は、好ましくは、円弧近似距離方法に基づいた等価システムで必要とされるものよりも、少なくとも1つ少ない。
【0109】
好ましくは、受信するための手段または各手段は非同期であり、好ましくは、このシステムは、少なくとも1つの物体および関連する送信機をさらに含む。
本発明の他の態様においては、上記の機器を含む車両が提供される。
【0110】
本発明のさらに他の態様においては、減衰媒体を介して伝送される信号を受信し検出するように動作可能な、上記の機器が提供される。好ましくは、この機器は、壁または床を通して、壁または床内で、地下から、あるいは受信するための手段と物体との間の見通しコンタクトなしで、信号を受信し検出するように動作可能である。
【0111】
本発明の他の態様においては、位置決め信号を送信するための機器であって、信号を生成するための手段と、信号を送信するための手段とを含み、信号生成手段が、上記の機器で使用するのに適した信号を生成するように適合される機器が提供される。
【0112】
好ましくは、信号生成手段は、特性繰返し周波数を有するパルス列を含む信号を生成するように適合される。特性繰返し周波数は、2MHz〜20MHz、好ましくは5MHz〜15MHz、およびより好ましくは10.5MHz〜13.5MHzでよい。パルスは、0.5GHz〜24GHz、好ましくは2GHz〜12GHz、およびより好ましくは5.8GHz〜7.2GHzの特性周波数を有してよい。
【0113】
信号生成手段は、区別入力に応じて、生成される信号の固有特性を変化させるように適合させることができる。固有特性は、信号のパルス繰返し周波数でよく、あるいはパルス位置変調特性でもよい。この機器は、信号を時分割多重化する手段をさらに含むことができる。
【0114】
信号生成手段は、好ましくは、その周波数の5%、10%、または20%よりも大きい帯域幅を有する信号を生成するように適合される。
本発明の他の態様においては、物体に関する位置情報を決定する方法であって、信号を生成すること、物体から受信機器に信号を送信すること、受信機器で信号を検出すること、および受信機器に相対的な物体の角位置をそこから決定することができる出力を生成することを含む方法が提供される。
【0115】
密接に関係する一態様においては、送信機を組み込んだ物体に関する位置情報を決定する方法であって、信号パルス、好ましくは超広帯域信号パルスを生成すること、組み込まれた送信機から、単一のハウジング内に、または共通の基板上に配置され、複数の受信エレメントを含む受信機器に信号パルスを送信すること、複数の受信エレメントにおいて受信された信号パルスの相対タイミングを検出すること、および受信機器に相対的な物体の角位置をそこから決定することができる出力を生成することを含む方法が提供される。
【0116】
この方法は、受信機器で信号の検出をトリガすることをさらに含むことができ、トリガすることは、送信信号の生成に無関係である。好ましくは、この方法は、受信トリガ制御信号に応じて、信号の検出をトリガすることをさらに含む。好ましくは、信号の検出は、制御信号によって決定される周波数でトリガされる。より好ましくは、信号は、特性繰返し周波数で生成され、信号の検出は、特性繰返し周波数とは異なるトリガ周波数でトリガされる。
【0117】
トリガ周波数Ftrigは、好ましくは、(Fcr/n)+Fdiffによって決まり、ここでFcrは特性繰返し周波数、nは整数の分周比、およびFdiffは走査速度である。nは1より大きくてよく、好ましくは2、3、4、または5より大きい。Fdiffは、好ましくは非ゼロであり、好ましくはFcrの振幅の5%、2%、または1%未満、およびより好ましくはFcrの振幅の0.5%未満である。
【0118】
この方法は、好ましくは、複数の受信エレメントで信号を受信すること、および複数の場所で受信される信号の相対タイミングを検出し、それによって受信機器に相対的な物体の角位置を決定することができることをさらに含む。また、この方法は、好ましくは、受信機器で受信された信号を表す複数の信号を出力することもさらに含む。この方法は、受信機器で制御信号を受信することをさらに含んでよく、物体から受信された信号を処理して、物体に関する位置情報を決定することをさらに含んでもよい。
【0119】
受信信号を処理するステップは、追加の角位置と共に信号を処理し、その結果、受信機器に相対的な物体の変位を決定することを含むことができる。この方法は、好ましくは、受信機器で受信された複数の信号間のタイミング差を計算すること、および複数の信号のうちの少なくとも2つの信号間のタイミング差に応じて角位置を決定することをさらに含む。
【0120】
この方法は、物体の擬似距離を決定することをさらに含むことができる。好ましくは、擬似距離を決定するステップは、受信信号の振幅を決定すること、および振幅に応じて擬似距離を決定することを含む。この方法は、物体の変位を表す信号を出力することをさらに含むことができる。
【0121】
好ましくは、信号を生成するステップは、特性パルス周波数を有するパルス列を生成することを含む。この方法は、受信機器で受信パルス列を表す出力を出力することをさらに含んでよく、この方法は、受信パルスの波形を表す信号を出力することをさらに含んでもよい。
【0122】
特性パルス周波数は、2MHz〜20MHz、好ましくは5MHz〜15MHz、およびより好ましくは10.5MHz〜13.5MHzでよい。
この方法は、好ましくは、受信パルス列をサンプリングすること、および特性パルス周波数に関する特性サンプリング周波数を有する出力を生成することをさらに含む。出力サンプリング周波数は、特性パルス周波数よりも低くすることができる。出力サンプリング周波数は、5kHz〜100kHz、好ましくは25kHz〜90kHz、およびより好ましくは60kHz〜85kHzでよい。
【0123】
好ましくは、実質上所与の複数の特性パルス周波数で入力サンプリングクロック信号を生成すること、出力サンプリング周波数で出力サンプリングクロック信号を生成すること、および入力サンプリングクロック信号を受信し次第、信号をサンプリングし、出力サンプリングクロック信号を受信し次第、サンプル出力を生成することをさらに含む。この方法は、好ましくは、前の出力サンプリングクロック信号以降にとられた入力サンプルの平均としてサンプル出力を生成することをさらに含み、この方法は、サンプル出力が生成された後、入力サンプリングクロックの位相を所定の量だけ進めることをさらに含んでもよい。
【0124】
この方法は、好ましくは、物体で送信される信号と少なくとも1つの他の信号とを受信ユニットで区別することをさらに含む。
本発明の関係する一態様においては、物体に関する位置情報を決定する方法であって、物体に関連する送信機を含む複数の送信機によって送信される複数の信号を受信すること、識別情報に応じて物体において送信される信号と任意の追加の受信信号とを区別すること、および区別された信号に応じて物体の角位置を決定し、それによって物体に関する位置情報を決定することができることを含む方法が提供される。
【0125】
密接に関係する一態様においては、送信機を組み込んだ物体に関する位置情報を決定する方法であって、各信号が複数の送信機および組み込まれた送信機を含む複数の送信機のうちのそれぞれの送信機によって送信される、複数の信号を受信すること、および組み込まれた送信機によって送信される信号のパルス繰返し周波数に応じて、組み込まれた送信機によって送信される受信信号と任意の追加の受信信号とを区別することを含み、組み込まれた送信機によって送信される受信信号が、好ましくは少なくとも1つの超広帯域パルスを含む方法が提供される。
【0126】
区別するステップは、好ましくは、信号の固有特性に応じて区別することを含む。固有特性は、信号のパルス繰返し周波数でよく、固有特性は、パルス位置変調特性でもよく、信号は、時分割多重化することができる。
【0127】
好ましくは、この方法は、検出クロックに応じて信号を検出すること、および選択された信号周波数に応じて検出クロックを設定し、それによって選択された信号周波数を有する信号が優先的に検出されることをさらに含む。この方法は、好ましくは、選択された信号周波数と受信信号との間の周波数誤差を検出すること、および周波数誤差を補償することをさらに含む。周波数誤差を検出するステップは、連続パルスのピークに対応する受信信号中の連続ピーク間の間隔に応じて信号周波数を推定すること、および推定信号周波数を検出周波数と比較することを含むことができる。周波数誤差を検出するステップはまた、あるいは代わりに、連続したサンプルの位相差に応じて推定信号周波数を計算すること、および推定信号周波数を検出周波数と比較することを含むこともできる。周波数誤差を補償するステップは、推定周波数誤差によってもたらされる、予想される信号の形を表す整合フィルタ原型を作成することを含む。
【0128】
この方法は、好ましくは、複数の場所における信号の受信の間隔を決定し、それによって物体の角位置を決定することを可能にすることをさらに含む。間隔を決定するステップは、少なくとも1対の場所で受信される信号を相互相関させること、および相互相関結果に応じて間隔を決定することを含むことができる。あるいは、間隔を決定するステップは、整合フィルタを複数の場所で受信される信号に適用すること、および整合フィルタの出力に応じて時間差を決定することを含むことができる。
【0129】
本発明の関係する一態様においては、複数の場所で信号を受信すること、受信信号を表す出力信号を生成する場所で受信された信号を検出すること、および複数の場所で受信される信号間の間隔を検出するように整合フィルタを適用し、それによって物体の角位置を決定することを含む方法が提供される。受信信号は、その周波数の5%、10%、または20%よりも大きい帯域幅を有することができる。
【0130】
密接に関係する一態様においては、物体に関する位置情報を決定する方法であって、複数の受信エレメントを含む受信機器で信号を受信すること、および受信エレメントのうちの1つでの信号の受信と受信エレメントのうちの少なくとも1つの他の受信エレメントでの信号の受信との間の間隔を検出するように整合フィルタを適用し、それによって物体の角位置を決定することを含む方法が提供される。
【0131】
この方法が、物体に向けてプローブ信号を送信すること、および物体からのプローブ信号の反射を受信することをさらに含む場合、プローブ信号を送信するステップは、物体で送信される信号と異なる信号を送信することを含むことができる。この方法は、プローブ信号を符号化し、それによってそれを物体から受信された信号と区別することができることをさらに含むことができる。
【0132】
また、この方法は、プローブ信号によって照射された物体の位置情報を決定することをさらに含むこともできる。好ましくは、この方法は、次に、照射された物体の位置情報を、少なくとも1つの既知の物体に関する位置情報と比較し、それによって異常な物体を識別することができることをさらに含む。この方法は、比較の結果に応じて警報信号を生成することをさらに含むことができる。その物体または各物体は、好ましくは、受信機器で受信される信号を送信する物体を含む。
【0133】
また、本発明は、物体に関する位置情報を決定する方法であって、受信手段および送信手段を、単一のハウジング内に、または共通の基板上に配置すること、送信手段を使用して、物体に向けてプローブ信号を送信すること、物体からのプローブ信号の反射および物体に関連する送信機によって送信される信号のうちの1つであり、好ましくは超広帯域信号パルスである信号パルスを受信手段で受信すること、および受信信号パルスに応じて、物体の角位置をそこから決定することができる出力を生成することを含む方法も提供する。
【0134】
本発明の他の態様においては、信号を送信する物体を求めて検出体積内を検索する方法であって、複数の場所で信号を受信すること、受信信号を表す出力信号を生成する場所に到着する信号を検出すること、および複数の場所で受信される信号の間の間隔を決定し、それによって物体の存在およびその角位置を決定することができることを含む方法が提供される。
【0135】
密接に関係する一態様においては、信号を送信する物体を求めて検出体積内を検索する方法であって、距離ゲートを設定するステップと、少なくとも1つの信号が複数の受信エレメントを含む機器で受信された場合、かかる少なくとも1つの信号を検出するステップと、複数の受信エレメントのうちの1つで受信された少なくとも1つの信号と複数の受信エレメントのうちの他の受信エレメントまたは他の各受信エレメントで受信された少なくとも1つの信号との間の間隔を決定するステップと、距離ゲートを変化させるステップと、検出するステップおよび決定するステップを繰返し、それによって物体からの信号の送信が機器と同期化されているかどうかに関係なく、物体の存在およびその角位置を決定することができるステップとを含む方法が提供される。
【0136】
この方法は、所与の距離ゲート内の信号を検出すること、および距離ゲートを変化させ、それによって受信機器と同期化されていない物体を検出することができることをさらに含むことができる。
【0137】
この方法は、好ましくは、受信機器を同じ機器で較正することをさらに含む。
本発明の関係する一態様においては、物体に関する位置情報を決定する方法であって、物体で送信された信号を受信機器で検出すること、受信信号を表す出力信号を生成すること、および受信機器を同じ機器で較正することを含む方法が提供される。この方法は、好ましくは、基準送信機から信号を受信すること、および受信基準信号を表す信号を出力することをさらに含む。この方法は、物体において送信される信号の到着時間と基準送信機において送信される信号の到着時間との間のタイミング差を表す信号を出力することをさらに含むことができる。
【0138】
受信機器を較正するステップは、共通クロック信号に応じて検出手段をトリガすることを含むことができ、そのケースでは、この方法は、共通クロック信号の受信からの所定の時間オフセットで受信信号の走査を開始することをさらに含むことができる。
【0139】
好ましくは、この方法は、複数の角位置測定に応じて物体の変位を決定することをさらに含む。この方法は、減衰媒体を介して伝送される信号を受信し検出することをさらに含むことができる。
【0140】
本発明の他の態様においては、位置決め信号を送信する方法であって、信号を生成すること、および信号を送信することを含み、信号が、上記の機器で使用するのに適している方法が提供される。
【0141】
本発明のさらに他の態様においては、位置決め信号を送信する方法であって、信号を生成すること、および信号を送信することを含み、信号が、上記の方法で使用するのに適している方法が提供される。
【0142】
この信号は、上記の特性繰返し周波数を有するパルス列を含むことができる。
この方法は、区別入力に応じて生成信号の固有特性を変化させることをさらに含むことができる。固有特性は、上記のとおりとすることができる。この方法は、信号を時分割多重化することをさらに含むことができる。信号帯域は、上記のとおりとすることができる。
【0143】
本発明の他の態様においては、上記の機器で使用するのに適した信号が提供される。
本発明の関係する一態様においては、特性パルス周波数を有するパルス列を含む信号であって、特性パルス周波数が、2MHz〜20MHz、好ましくは5MHz〜15MHz、およびより好ましくは10.5MHz〜13.5MHzであり、パルスが、0.5GHz〜24GHz、好ましくは2GHz〜12GHz、およびより好ましくは5.8GHz〜7.2GHzの特性周波数を有する信号が提供される。
【0144】
好ましくは、この方法は、区別入力に応じて生成信号の固有特性を変化させることをさらに含む。好ましくは、固有特性は、信号のパルス繰返し周波数である。好ましくは、固有特性は、パルス位置変調特性である。好ましくは、この方法は、信号を時分割多重化することをさらに含む。好ましくは、この信号は、その周波数の5%、10%、または20%よりも大きい帯域幅を有する。
【0145】
上記と同様に、信号は、時分割多重化を使用して符号化してよく、パルス位置変調を使用して符号化してもよい。
本発明の他の態様によれば、物体に関する位置情報を決定するためのシステムにおいて使用するための機器であって、システムの受信機によって検出されるパルスシーケンスを送信するための送信機を含み、送信機が、パルスシーケンスの特性を変化させてデータを受信機に送信するように適合される機器が提供される。
【0146】
送信機によって放射されるパルスシーケンスの特性を変化させることによって、送信機と受信機の間でデータを送信することが可能となる。
好ましくは、パルスシーケンスの特性を変化させる速度は、パルス周波数よりも大幅に低い。このようにして、メッセージのデータ速度は、システム自体の無線周波数よりもはるかに低くすることができる。
【0147】
送信機は、パルスシーケンスのパルス繰返し周波数(PRF)を変化させるように適合させることができる。例えば、2つのパルス繰返し周波数を使用することにより、「0」または「1」を送信機によって送信することができる。PRFは、好ましくは、擬似ランダムに変化させる。複数の送信機が存在し、干渉を避けるためにそれぞれが異なるPRFをもつ場合、変調は、各送信機ごとに異なるようにしてよく、変調の帯域幅は、各PRFチャネルの周波数帯域よりも小さくてよい。
【0148】
パルスシーケンスは、周期的に中断されてよい。受信機で中断のパターンを分析することにより、送信機によって送信される情報を決定することができる。例えば、送信は、特定の符号に対応する所定の期間、オンおよびオフに切り換えることができる。
【0149】
したがって、受信機で受信されるパルスから決定することのできる位置情報に加えて、パルスシーケンスの特性の変化を分析することにより、送信機によって送信される追加の情報を決定することもできる。
【0150】
このようにして、符号化されたメッセージを、送信機によって送信することができる。
データ送信は、好ましくは、PRF変調によって行われる。これは、例えば、複数の送信機を区別するために使用することができる。各送信機は、この方法により、送信機を識別する情報を含む情報を送信することができる。この機構は、一般に、送信機と受信機システムの間でデータを送信するために使用することができる。
【0151】
送信機は、物体と関連付けることができる。このようにして、物体に関する位置情報ならびに追加情報を、送信されるパルスシーケンスから決定することができる。送信機は、タグ、好ましくは、上記の本発明の態様のいずれかに対応するタグと関連付けることができる。
【0152】
パルスシーケンスは送信データを含み、位置情報を決定するのに使用される送信信号とほぼ同じ周波数で送信することができる。
好ましくは、データを含むパルスシーケンスは、位置情報を決定するためにも使用される。
【0153】
送信データは、送信機のIDに関する情報を含むことができる。例えば、データは、送信機の識別子を含むことができる。送信機が物体と関連する場合、この情報を使用して、物体を識別することができる。
【0154】
この情報は、送信機と受信機の間で通信を確立するのに使用される識別子を含むことができる。
この機器は、送信機と受信機の間で通信を行うための手段をさらに含むことができる。例えば、この機器は、追加の通信を行うために、例えば送信機システムまたは受信機システムにおいて、別個の無線送信機を含むことができる。
【0155】
このような通信を使用して、例えば、送信機から、例えば物体に関する追加の情報を送信することができる。代わりに、またはさらに、この通信を使用して、システムがシステム設定を変更できるようにすることができる。例えば、送信機は、物体に関連したタグを含み、通信を使用して、タグ更新レートなどのシステム設定を変更することができる。
【0156】
機器は、パルスシーケンスの送信を行うための、かつ送信機と受信機の間の通信を行うために使用されるコンポーネントを含むことができる。
例えば、位置決定で使用される信号を伝送する場合と、伝達情報を伝送する場合とで伝送周波数が類似または同じである場合、ほぼ同じコンポーネントをどちらの伝送にも使用することができる。これには、システムのサイズと複雑さを大幅に低減させる潜在的な利点がある。
【0157】
本発明によれば、物体に関する位置情報を決定するためのシステムで使用される機器であって、物体の位置を決定するのに使用される信号を送信するための送信機を含み、かつ受信機に伝達情報を送信するための送信機をさらに含み、信号を送信するための送信機のコンポーネントが、伝達情報を送信するための送信機と共通である機器が提供される。
【0158】
好ましくは、2つ以上のコンポーネントが送信機に共通である。アンテナ、または信号生成回路、またはフロントエンドのいずれか、またはすべてを共通とすることができる。
本発明によれば、物体に関する位置情報を決定するためのシステムで使用される機器であって、物体の位置を決定するのに使用される信号を受信するための受信機を含み、かつ送信機から伝達情報を受信するための受信機をさらに含み、信号を受信するための受信機のコンポーネントが、伝達情報を受信するための受信機と共通である機器が提供される。
【0159】
好ましくは、2つ以上のコンポーネントが受信機に共通である。アンテナ、または信号受信回路、またはフロントエンドのいずれか、またはすべてを共通コンポーネントとすることができる。
【0160】
好ましくは、信号および通信は、ほぼ同じ周波数、好ましくは無線周波数である。
好ましくは、信号は、好ましくは、場合によってはパルス繰返し周波数変調によって信号を符号化または変調した、好ましくは物体の、識別子を含む。好ましくは、識別子はMACアドレスである。
【0161】
好ましくは、信号および通信はUWBである。好ましくは、通信では標準通信プロトコルを使用する。そのようなプロトコルの例には現在、DSRCおよびIEEE 802.11Aが含まれる。好ましくは、通信は両方向である。
【0162】
上述の機器のいずれにおいても、送信機と受信機の間の距離は、好ましくは100m未満である。
本明細書に記載の技法は、受信機と送信機装置を含めた物体の間の距離がそれほど大きくない場合に、特に有用である。好ましくは、距離は、50m未満、好ましくは20m未満である。
【0163】
この機器は、データを受信し、他の送受信機または受信機の特性を検出し、その特性に応じてそれらにデータを選択的に送信するように適合された送受信機を含むことができる。好ましくは、その特性は位置である。
【0164】
本発明のこの態様は独立して提供することができ、物体に関する位置情報を決定するためのシステムで使用される機器であって、データを受信し、他の送受信機または受信機の特性を検出し、その特性に応じてそれらにデータを選択的に送信するように適合された送受信機を含む機器が提供される。好ましくは、その特性は位置である。
【0165】
例えば、高速道路の1車線上の車両に搭載された送受信機は、道路の該当する側の車両とのみ、道路工事に関するデータを送受信することができる。
送信機および/または受信機は、車両に搭載することができる。
【0166】
記載の技法は、車両の位置および方位の決定に対して具体的に適用され、それを使用することにより、例えば、車両間、車両から固定の沿道システムに、および/または固定の沿道システムから車両に、情報を転送することもできる。
【0167】
この機器は、車両の特性に関するデータを送信するように適合させることもできる。
例えば、物体が車両であり、車両に送信機が搭載されている場合、送信機は、車両に関する情報、例えば駆動性能、または例えば急ブレーキをかけているとの情報を送信することができる。この情報を、例えばその情報を送信する車両に近い他の車両で使用して、駆動方針、例えばブレーキ方針または事故回避方針を決定することができる。
【0168】
送信機を道路に設置し、受信機を車両に搭載することもできる。車両のレーダシステムは、それによって道路端の場所を決定することができ、この情報を使用して、車両の駆動方針を変更することができる。
【0169】
この機器は、送信機の位置に局部的な特性に関するデータを送信するように適合させることができる。例えば、送信機は、交通状況、天気状況、ローカルラジオ局、などに関する情報を送信することができる。
【0170】
本発明によれば、車両に関する位置情報を決定するのに使用される機器であって、車両の位置を決定するのに使用される信号を受信するための受信機を含み、かつ車両と関連した送信機から、車両の特性に関する情報に関係した伝達情報を受信するための受信機をさらに含み、受信情報を使用して駆動方針を決定するための制御システムをさらに含む機器がさらに提供される。
【0171】
本発明によれば、送信機が包装品を位置決定するために使用され、送信機が包装品の特性に関するデータを送信するように適合される、上記の機器を含む在庫管理システムであって、その機器が、受信データを使用して商品をどこに格納すべきか、またはいつそれらを取り出すべきかを決定するための制御システムをさらに含む在庫管理システムがさらに提供される。
【0172】
本発明によれば、物体に関する位置情報を決定するための方法であって、パルスシーケンスを生成すること、データを送信するためにパルスシーケンスの特性を変化させること、およびシステムの受信機によって検出されるパルスシーケンスを送信することを含む方法がさらに提供される。
【0173】
本発明によれば、上記の方法を実施するように適用されるコンピュータプログラム製品、およびコンピュータプログラム製品を有形に実施するコンピュータ可読媒体が提供される。
【0174】
本発明によれば、上記の機器または方法で使用される信号が提供される。
本発明の上記のありとあらゆる態様において、例えば位置情報を決定するための、識別子を伝送するための、および通信するための、いくつかまたはすべての伝送は、超広帯域でよい。
【0175】
本発明の他の態様においては、上記の任意の方法を実施し、上記の任意の機器を実装するように適合されるコンピュータプログラム製品が提供される。本発明では「コンピュータプログラム製品」という語は、好ましくは、(マイクロプロセッサ、DSP、カスタム集積回路、マイクロコントローラなどの)プロセッサで実行されたときに、該当する方法が実施されるようにする、コンピュータ可読形態のデータを意味する。この語は、好ましくは、(JAVAなどの)インタープリタ言語、(コンパイルされるC++などの)コンパイル言語、および機械語を含む。
【0176】
本発明の他の態様においては、上記のコンピュータプログラム製品を有形に実施するコンピュータ可読媒体が提供される。
本発明のさらに他の態様においては、上記のコンピュータプログラム製品を有形に実施する信号が提供される。
【0177】
本発明は、実質上、添付の図面に即して本明細書に記載される方法および/または機器を包含する。
本発明の1つの態様における任意の特徴は、任意の適切な組合せで、本発明の他の態様に適用することができる。具体的には、方法の態様は、機器の態様に適用することができ、その逆も同様である。
【0178】
本発明の好適な特徴を対応する図面を参照して、純粋に例示として、以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】位置決めシステムの第1の実施形態の概要図である。
【図2】3つ以上の受信ユニットが使用される位置決めシステムの略図である。
【図3】図2で示されているコンポーネントの相互接続を示す略図である。
【図4】位置決めシステムの第2の実施形態の略図である。
【図5】位置決めシステムの第3の実施形態の略図である。
【図6】位置決めシステムにおける能動物体の概要図である。
【図7】図6の物体をより詳細に示す略図である。
【図8】位置決めシステムにおける受信ユニットの概要図である。
【図9】図8の受信ユニットをより詳細に示す略図である。
【図10】図9の受信ユニットにおける4つの受信機チャネルのうちの1つの略図である。
【図11】位置決めシステムにおける制御ユニットの略図である。
【図12】位置決めシステムにおける受信ユニットのための例示的なタイミングを示すタイミング図である。
【図13】位置決めシステムにおける受信ユニットのための代替の例示的なタイミングを示すタイミング図である。
【図14】送信機から等距離にある受信機のための異なる3つの信号検出シナリオを示すタイミング図である。
【図15】図14の1つの検出サイクルにおけるRx1受信ユニットのサンプリング動作を示すタイミング図である。
【図16】受信ユニットにおけるセンサアレイの平面図である。
【図17】送信機コンポーネントを含む、図16のシステムの一変形形態を示す図である。
【図18】動作時におけるセンサアレイの側面図である。
【図19】整合フィルタの動作を示す様々な信号の図である。
【図20】整合フィルタの動作を示す様々な信号の図である。
【図21】整合フィルタの動作を示す様々な信号の図である。
【図22】整合フィルタの動作を示す様々な信号の図である。
【図23】整合フィルタの動作を示す様々な信号の図である。
【図24】整合フィルタの動作を示す様々な信号の図である。
【図25】整合フィルタを使用した、1つのセンサからのデータに対する処理を示す図である。
【図26】受動モードの動作で送信されるパルスの例である。
【図27】受動モードの動作で送信されるパルスの例である。
【図28】位置決定と通信が組み合わされたシステムの一例を示す図である。
【図29】位置決めシステムにおいて受信ユニットで使用するための検出アルゴリズムの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0180】
能動物体(つまり、送信機、すなわち「タグ」が組み込まれている物体)の位置を決定するためのシステムについて、以下に説明する。いくつかの実施形態においては、このシステムを使用して、受動物体(すなわち、送信機が組み込まれていない物体)の位置を決定することができる。
【0181】
システムの構成についてまず説明してから、受信ユニット(タグ信号を検出するのに使用されるセンサ)、送信物体(タグ自体)、および制御ユニットについて説明する。
その後、システムコンポーネントの相対タイミングに関する情報、受信ユニットの較正、および送信信号のチャネル化を含めた、位置決めシステムの設計の根底となる原則について説明する。
【0182】
さらにその後、制御ユニットにおける信号の処理(具体的には、整合フィルタリングプロセス)、差動タイミングセンサアレイの構成、受動モードでのシステムの動作、および位置決めシステムの可能なアプリケーションの説明に関してより詳細に説明する。次に、適切な検出アルゴリズムの実装に関して詳細に説明する。最後に、検出アルゴリズムの代替機能についていくらか論じる。
【0183】
まず、位置決めシステムの概要について説明する。
位置決めシステムの構成
図1は、位置決めシステムの第1の実施形態の概要図である。図1を参照すると、位置決めシステム100は、位置決定すべき物体102、物体102と関連しまたはそれに含まれ、信号106を出力する送信機104、および1対の受信機器200、202、および制御ユニット300を含む。受信機器200、202は、データリンク302、304によって制御ユニット300に接続されている。より詳細に後で論じるように、このシステムの諸変形形態は受動モードで動作させることができ、その場合、送信機は物体から離れて配置され、受信機で受信される信号は、送信された信号の物体からの反射である。
【0184】
受信機器200、202は、リンク302、304を介して制御ユニット300に、受信ユニットで受信された信号106を表すデータを渡す。次いで制御ユニットは、受信ユニットから受信したデータを処理し、その結果、各受信ユニットに関して物体の角位置が決定される。角位置は、方位角および仰角で測定される。最後に、制御ユニットは、受信ユニットの場所を知っており、角位置を三角測量し、その結果、物体102の3次元位置が算出される。その後の3次元位置の用途は、後述するように、システムの具体的アプリケーションに依存する。
【0185】
角位置情報を使用して物体の変移(例えば、3次元位置)を計算するには、(2対の方位角および仰角など)単に2つの角位置測定が必要とされ、したがって、単に2つの受信ユニットが必要とされる(図1参照のこと)。さらに、いくつかの改良を行った場合(以下参照)、1つの受信ユニットだけ必要である。ただし、2つ以上の受信ユニットを使用すれば、システムの精度および到達距離を改善することができる。
【0186】
図2は、2つ以上の受信ユニットが使用される位置決めシステムの略図である。図2においては、4つの受信ユニット200、202、204、206が、およそ一辺10メートルの正方形である検出区域108内に配置されている。検出区域において2つの能動物体102、110が示されている。受信ユニット200、202、204、206の有効到達距離は10メートルである。物体と受信ユニットの間に破線が示されており、その破線は、受信ユニットとその検出距離内に各物体が配置されていることを示している。
【0187】
図3は、図2で示されているコンポーネントの相互接続を示す略図である。図3を参照すると、第1の物体102および関連する送信機104、第2の物体110および関連する送信機112、4つの受信ユニット200、202、204、206、およびデータリンク302、304、306、308を介して4つの受信ユニット200、202、204、206にそれぞれ接続されている制御ユニット300が示されている。
【0188】
受信ユニットおよび物体の幾何形状により、第1のオブジェクト102は、4つの受信ユニット200、202、204、206すべてから検出され、第2のオブジェクト110は、3つの受信ユニット200、202、204だけから検出される。どちらの場合も、少なくとも1つの角位置測定が冗長であり、それを使用して、位置決め測定全体の精度を向上させることができる。
【0189】
受信ユニットのその他の数および構成も、もちろん可能である。
再び図1を参照すると、受信ユニット200、202を制御ユニット300に接続するデータリンク302、304は、電線である。第1の実施形態の一変形形態においては、データリンク302、304は、受信ユニット200、202と制御ユニット300の間の無線リンクによって構成されるが、他の組合せも、もちろん可能である。
【0190】
図4は、位置決めシステムの第2の実施形態の略図であり、その場合、受信ユニットおよび制御ユニットが代替構成で相互接続されている。図4では、第1の受信ユニット200が、追加の受信ユニット202、204、206と制御ユニット300の間の通信ハブとして働く。第1の受信ユニット200および追加の受信ユニット202、204、206および第1の受信ユニット200と制御ユニット300との間のデータリンク302の間のデータリンク310、312、314は、上記と同様に、電線、無線リンク、またはその他の方法でよい。
【0191】
図5は、位置決めシステムの第3の実施形態の略図である。図5では、制御ユニット300が第1の受信ユニット200内に配置され、その受信ユニット200は、上記と同様に、データリンク310、312、314を介して追加の受信ユニット202、204、206に接続されている。
【0192】
制御ユニットおよび受信ユニットの動作については、さらに後で説明する。まず、図6および7を参照して、能動物体102についてより詳細に説明する。
能動物体の説明
図6は、位置決めシステムにおける能動物体の概要図である。図6では、物体102は、信号発生ユニット120に結合された送信機ユニット104を含み、これらのユニットが一緒に信号106を生成する。
【0193】
図7は、図6の物体をより詳細に示す略図である。図7を参照すると、送信機ユニット(すなわち「タグ」)104は、1つのアンテナ118を含み、1つの信号発生ユニット120は、水晶発振器122、フェーズロックループ(PLL)回路124、パルス繰返し周波数(PRF)セレクタおよび電力インターフェース126、プログラマブルディバイダ128、パルス発生器130、フィルタ132、およびパルス繰返し周波数(PRF)出力ユニット134を含む。プログラマブルディバイダ128は、PLLセレクタおよび電力インターフェース126から供給されるPRF周波数に従って、水晶発振器122によって(PLL回路124を介して)駆動され、次にはパルス発生器130を駆動し、その出力がフィルタ132によってフィルタリングされ、その後、アンテナから送信される。PRF出力ユニット134は、物体に、その現在のPRF設定を報告する手段を提供する。好ましい実施形態においては、PRF出力ユニット134は使用されず、省略することができる。
【0194】
好ましい実施形態においては、物体102は、例えば在庫品や会社のスタッフの一員などの対象アイテムに取り付けられる。したがって、使用時に、接着剤や機械的取付け具などの任意の適切な手段によって、物体102をそのようなアイテムに取り付けることができる。あるいは、物体102は、そのようなアイテムを含むことができる。また、物体102は、他の(おそらく関係した)目的で、追加の回路を含むこともできる。
【0195】
送信機ユニット104および信号生成ユニット120(および具体的にはPRFの使用)の動作については、後で説明する。まず、受信ユニット200について、図8および9を参照して、より詳細に説明する。
【0196】
受信ユニットの説明
図8は、位置決めシステムにおける受信ユニットの概要図である。図8では、受信ユニット200は、送信信号106を受信するための受信機コンポーネント210、信号106を検出するための、受信機コンポーネントに結合された検出器コンポーネント230、および信号を処理し、処理結果をデータリンク302を介して制御ユニット300(図示せず)に出力するための受信機側処理ユニット260を含んでいる。
【0197】
図9は、図8の受信ユニットをより詳細に示す略図である。図9では、受信ユニット200中の受信機コンポーネント210は、注意深く選択され間隔の空いた場所における送信信号106を受信するための4つのアンテナ212、214、216、218を含み、検出器コンポーネント230は、アンテナ212、214、216、218に結合された送信機ユニット232と、送信機ユニット232と受信機側処理ユニット260に結合されたタイムベースユニット234とを含み、その受信機側処理ユニット260はデータリンク302に接続されている。
【0198】
後でより詳細に説明するように、差動タイミング技法を使用して送信物体の角位置を計算する。送信物体の信号が受信ユニットで受信されると、受信ユニットは複数の受信信号を分析する必要がある。したがって、アンテナ212、214、216、218は、検出器コンポーネント230によって各アンテナごとに別々の出力が提供されるように、検出器コンポーネント230においてそれぞれ自分の別個のチャネルを有する。
【0199】
好ましい実施形態の諸変形形態においては、互いに異なるシステムを使用して、物体の角位置を検出する。そのような一変形形態では、検出空間を継続的に走査させる指向性アンテナが提供される。
【0200】
図10は、4つの受信機チャネルのうちの1つの略図である。図10を参照すると、受信機コンポーネント210、送信機ユニット232、およびタイムベースユニット234におけるチャネル240は、アンテナ212と、それに直列に接続された、無線周波数(RF)バンドパスフィルタ(BPF)242、低ノイズアンプ(LNA)244、追加の無線周波数バンドパスフィルタ246、サンプラ248、音声バッファアンプ250、音声帯域フィルタ(BPF)252、音声アンプ254、追加の音声帯域フィルタ256、サンプルアンドホールド段258、および受信機側処理ユニット260とを含む。タイムベース制御ユニット262は、受信パルス繰返し周波数(PRF)クロック264、および受信システムクロック266によって駆動され、サンプラ248、サンプルアンドホールド段258、および受信機側処理ユニット260に接続されている。
【0201】
好ましい実施形態の一変形形態においては、1つのクロック源が、PRFクロック264および受信システムクロック266を置き換え、その場合、クロック分割回路を使用して、各該当段階で必要なクロック周波数を得る。
【0202】
動作においては、アンテナ212に到着する無線周波数信号が音声周波数デジタル信号に変換され、データリンク302によって制御ユニット300に出力される。制御ユニット300が、受信ユニット200のシステムステータスを問い合わせること、および必要に応じてシステム管理作業を実施することを可能にするために、主データリンク302に加えて低帯域幅制御データリンク(図示せず)が提供される。
【0203】
受信機側処理ユニット260は、各チャネル240のサンプルアンドホールド段258に接続され、かつ(高速マイクロコントローラおよび関連メモリなどの)処理回路にも接続されたアナログ−デジタル変換器(ADC)を含んでいる。処理回路は、4つのチャネルから4つの出力を受け取り、各アンテナ、すなわち212、214、216、218から受信した信号に関する該当する処理を行って、検出された信号源に関する方位角および仰角を決定する。処理ユニット260は、検出された角度のデジタル表現をデータリンク302を介して制御ユニット300に送り、他の受信機202、204、206から送られた同様のデータに関連する追加の処理を行う。
【0204】
好ましい実施形態の一変形形態においては、受信機側処理ユニット260が省略され、その代わりに、サンプルアンドホールド段258からのアナログ信号が、リンク302を介して制御ユニット300に含まれているアナログ−デジタル変換器(ADC)に送られる。ADCは、タイムベース制御ユニット262からのタイミング信号によって、または制御ユニット300で生成されたタイミング信号によって、駆動することができる。この変形形態では、制御ユニット300は、すべての受信機に対する、すべての方位角および仰角処理を行う。
【0205】
他の変形形態においては、受信機側処理ユニット260は、基本的に単なるアナログ−デジタル変換器(ADC)を含み、その結果、各アンテナ212、214、216、218で受信された信号を表す信号が、デジタル化された形式で制御ユニットに送られる。
【0206】
位置決めシステムの様々な諸態様についてさらに説明する前に、図11を参照して、制御ユニット300についてより詳細に説明する。
制御ユニットの説明
図11は、位置決めシステムにおける制御ユニットの略図である。図11では、入出力インターフェース320が、データリンク302、304を介して2つの受信ユニット(図示せず)に接続されている。入出力インターフェース320は、コンピュータ330に結合されている。
【0207】
好ましい実施形態においては、コンピュータ330は、中央処理装置(CPU)および記憶媒体(ハードディスクおよび/またはメモリの組合せ)および入出力インターフェース320への接続を含んでいる。該当する処理が、CPUによってカスタム処理ソフトウェアを使用して実行され、その処理の結果が、画像表示で、あるいはコンピュータ可読形式で利用可能になる。
【0208】
低コストで実装するのに適した、好ましい実施形態の一変形形態においては、コンピュータ330は、標準PCであり、入出力インターフェース320は、2×4チャネルのアナログデータ収集PCIカードであり、このPCIカードは、例えば受信ユニット(上記参照)に必要とされるデータリンクのタイプに依存する出力機能を、有しても、有さなくてもよい。いくつかの変形形態における処理は、基本的にPC上で走る(例えば、MATLABプログラム上で走るプログラムなどのインタープリタ型プログラム、またはコンパイルされたスタンドアロンプログラムなどの)数理計画法ソフトウェアによって実行することができる。他の組合せも、もちろん可能である。異なる数の受信ユニットを有する構成では、より多くの数の入力を有するデータ収集カード、および/またはより多くの数のデータ収集カードを使用することができる。好ましい実施形態の諸変形形態においては、受信ユニットが、該当する情報を多重化し、かつ/またはそれをPCに送り、したがって、制御ユニット300への物理入力の数を低減することができる。他の諸変形形態においては、受信ユニットの出力がアナログ領域で多重化され、制御ユニット300内で逆多重化される。
【0209】
好ましい実施形態の他の一変形形態においては、コンピュータ330は、ASICチップなどの専用ハードウェアまたはマイクロコントローラチップと、1つまたは複数の受信機ユニットから受信された情報を処理するための関連する回路とを含む。例えば、コンピュータ330を使用して、1つまたは複数の物体の変位を決定し、かつ/または追加のアプリケーション固有のタスクを実行することができ、受信機ユニット200の受信機側処理ユニット260において、角位置が決定される。
【0210】
好ましい実施形態においては、処理の結果を適切なコンテキストで共用することを可能にするために、コンピュータ330は、追加のコンピュータおよび/またはネットワークに接続される。
【0211】
4つの受信機/検出器チャネルの出力を送信するインターフェースに加えて、受信ユニットにおいて、また制御ユニットにおいても通信インターフェースが提供され、その結果、(クロック信号(以下参照)などの)制御信号を、制御ユニットと受信ユニットの間で受け渡すことが可能になる。通信インターフェースは単純なRS232シリアルリンクであるが、好ましい実施形態の諸変形形態においては、イーサネット、Bluetooth(および、その他の無線プロトコル)、および並列接続などの、プロトコルおよびシステムが使用される。
【0212】
次に、位置決めシステム設計の根底をなす基本原理について、以下で論じる。
位置決めシステムの設計の根底をなす原理
このシステムは、能動物体(すなわち「タグ」)の最大検出距離が10mであるように設計されている。(30m以上など)より長い検出距離も可能であるが、より高い出力およびより複雑さが必要となり得るので、コストが増大し複雑化するという犠牲を伴う。
【0213】
効率上および性能上の理由により、タグは、自分の位置をパルスを使用して通知し、そのパルスの相対帯域幅(すなわち、パルス周波数と比べた場合のパルス帯域幅のサイズ)は、例えば10%よりも大きく、(20%、30%、40%、またはそれ以上など)さらに大きくてもよい。そのようなパルスの伝播特性は、例えば、いわゆる狭帯域パルスでは伝播性能が低くかつ/または予測が非常にしづらいことがある場合にも、屋内用途において比較的好ましくなり得る。パルスは、特性パルス繰返し周波数(PRF)で放射される。等価なパルス繰返し時間(PRP)は、PRFの逆数であり、連続したパルス間の遅延を定義する。
【0214】
しかしながら、比較的低い空間分解能が許容される好ましい実施形態の諸変形形態においては、パルスを、こうした「狭帯域」周波数に限定することができる。このような場合、パルスの相対帯域幅は、例えば、実質上10%未満(およびさらには1%未満)とすることができる。
【0215】
差動タイミング検出システムは、送信機におけるパルスの送信と受信機におけるパルスの受信の間の時間遅延(この遅延は、送信機と受信機の間の距離を示すことになる)を考慮する必要がないが、その代わりに、個々のパルスの受信の相対タイミング(この相対タイミングにより、送信機の角位置を決定することが可能になる)を考慮する必要がある。各センサに関して異なるタイミング検出器を使用して物体の角位置を計算し、次いで測定された角位置の三角測量を行うことにより、一般的なシステムにおいては約60〜80cmの精度まで、物体の変位を決定することができ(ただしこれは、受信ユニットの数と近さ、周波数誤差の大きさ、および受信された信号の信号対雑音比などの要因に従って変わり得る)、これは多くの追跡作業にとって十分な分解能である。
【0216】
しかし、システム中の各受信ユニットを同期させることによってシステムの精度を向上させ、したがって、各受信機ユニットにおける複数の受信機チャネル間の受信パルスの差動タイミングを測定することに加えて、個々の受信機ユニット間の受信パルスの差動タイミングを測定することができる。受信ユニット(以下参照)を同期させるために、どのパルスがどの受信ユニットによって受信されたかに関するあいまいさを回避すべく、送信機PRFに制約が課される。
【0217】
そのようなあいまいさを回避するために、パルス繰返し周波数(PRF)の逆数であるパルス繰返し時間(PRP)が、パルスの到着時間の最大差の2倍を越える必要があり、この場合、パルスの到着時間の最大差は、最大検出距離を進むパルスにかかる時間である(すなわち、m/c。ただし、mは最大検出距離、cは光の速度)。
【0218】
システムの最大検出距離が10メートルの場合、2つの受信機間の信号の到着時間の最大差は、約33ナノ秒(ns)であり、したがって、解決される到達距離のあいまいさを回避するために、その送信機のパルス繰返し時間(PRP)を、66nsよりも大きくする必要がある。
【0219】
システムの最大検出距離がより大きい、例えば30メートル以上の場合、2つの受信機間の信号の到着時間がより長くなり(到達距離30メートルの場合、約100ナノ秒)、その結果、PRPを大きくする必要がある(例えば、到達距離30メートルの場合、少なくとも200ns)。PRPに応じて同様の変更を計算に加えることにより、本明細書で論じる原理を、そうしたより大きな最大到達距離にも適用することができる。
【0220】
システムコンポーネントの相対タイミング
図12は、位置決めシステムにおける受信ユニットのための例示的なタイミングを示すタイミング図である。図12では、送信パルス400、対応する受信パルス410、および受信機PRFクロックパルス420が、時間に対して描画されている。送信パルス402、404、406は、PRP430だけ隔てられている。受信パルス412、414、416は、送信パルス402、404、406に対して、時間オフセット432で受信される。可能性のある到達距離のあいまいさ434も示されている。下方の描画は、受信機の走査を開始するのに使用される受信機PRFクロックの出力を示す。送信機PRFクロックと受信機PRFクロックの間が非同期の関係であるので、受信機PRFクロックは、送信機クロックに対して任意の時間オフセット436をもつ。PRFクロックパルス422、424、426が送信され、同じパルス412、414、416が受信される間に、時間オフセット438が経過する。
【0221】
図12では、受信機が掃引を開始した後、(時間において)最近のパルスが受信され、到達距離遅延(すなわち、送信機と受信機の間の到達距離に比例する、パルスの送信と受信の間の遅延)432が、測定時間438と時間オフセット436の和(すなわち、実距離=測定+オフセット)に等しくなることが見てとれる。
【0222】
図13は、位置決めシステムにおける受信ユニットのための代替の例示的なタイミングを示すタイミング図である。図13は、(時間において)最近のパルスが受信された後、受信機が掃引を開始することを除き、図12と同じ構成をもつ受信ユニットのためのタイミング図を示している。図13では、送信パルス400、対応する受信パルス410、および受信機PRFクロックパルス420が、時間に対して再度描画されている。この場合、到達距離遅延(すなわち、送信機と受信機の間の到達距離に比例する、パルスの送信と受信の間の遅延)432が、測定時間438と時間オフセット436の和からPRPを引いたもの(すなわち、実距離=測定+オフセット−PRP)に等しくなることが見てとれる。
【0223】
受信ユニットが同期化されている場合、制御ユニットは、複数の受信ユニットから受信した情報を使用して、各受信ユニットごとに、当該ユニットにおけるパルスの送信とパルスの受信の間の遅延(つまり、タイムオフセット438、すなわち上式中の「オフセット」)を決定する。次に、この情報を使用して、上式に従って、可能な2つの到達距離遅延432(「実距離」)が計算される。PRPに課された制約(上記参照)があるので、計算された到達距離遅延432のうちの1つは、最大可能遅延(この例では33ns)を超過し、排除することができる。(あいまいではなくなった)計算された到達距離遅延432を光の速度で乗算して、該当する受信ユニットと送信機の間の距離の測定値を得る。到達距離測定値を使用して、角位置情報を用いて生成された位置推定値を修正することにより、システムの分解能が、約1〜2センチメートルの精度まで高まる。
【0224】
精度を高めることを可能にするために、連続した受信信号間の遅延を測定することにより、追加の情報を導き出すことができる。したがって、サンプリングされたデータ内に少なくとも2つの受信パルスが含まれるように、サンプリング時間を選択する。
【0225】
好ましい実施形態では、マージンを十分にとるために、83nsのPRPが得られる12MHzの最大パルス繰返し周波数(PRF)が使用される。送信機の相対タイミングがわからないので(受信ユニットが同期化されていない場合)、受信機は、送信機のPRF時間全体を(上記のように、少なくとも2つのパルスをカバーするために)2回掃引し、かつ、送信パルスの一部が失われないようにするために小さな重複部分を掃引する必要がある。したがって、230nsの時間掃引が選択される。各時間掃引後、検出コンポーネントに回復時間を与えるために、検出コンポーネントは、周波数3MHz(すなわち、333nsのPRPに等価である)で動作する。ただし、好ましい実施形態の諸変形形態においては、検出コンポーネントは、信号PRFと同じ周波数で作動し、あるいは信号PRFの異なる倍数、例えば、信号PRFの2分の1、3分の1、または5分の1(など)で作動する。
【0226】
図14は、送信機から等距離の受信機のための、異なる3つの信号検出シナリオを示すタイミング図である。図14では、送信パルス400、送信機から等距離の3つの受信ユニットRx1、Rx2、Rx3で同時に受信される対応するパルス410、および3つの異なる受信ユニットのサンプリング状態の表現450、452、454が、時間に対して描画されている。送信パルス402、404、406は、PRP(図示せず)によって隔てられており、上記のとおりその長さは83nsである。受信パルス412、414、416は、送信パルス402、404、406に対して、時間オフセット432で受信される。受信ユニットの描画450、452、454は、走査開始(SoS)位置(各受信機ごとに最初の2つの走査開始位置460、462、464、466、468、470が含まれる)を示し、各走査の持続時間を上り傾斜として表す。(サンプル走査中に発生することから)受信パルスを検出できるいくつかの点が、マーカ480、482、484、486で示されている。また、単一スキャン490の長さおよび単一サンプリングサイクル492の長さも図に示されている。
【0227】
サンプル走査中、3つの信号検出シナリオのそれぞれで、少なくとも2つのパルスが検出されることが見てとれる。各230nsのサンプル掃引で、段階的に増やすことで(230ns×c(光の速度)から導出される)距離69メートルを事実上走査することになり、そのような各段階をレンジビンと呼ぶ。
【0228】
図15は、1つの検出サイクルの過程にわたって(すなわち、制御ユニットに出力するための1組のデータを生成する過程にわたって)、図14のRx1受信ユニットのサンプリング動作を示すタイミング図である。図15では、受信ユニットのサンプラの状態の表現450が示されており、(走査開始(SoS)からの時間オフセットから導出される)走査範囲500が描画されている。描画中に示した高さ502は、あるレンジビンに対応する。上記と同様に、走査の掃引が、捜査開始(SoS)位置460、462、および傾斜を定義する走査位置504(等々)の最後で示されている。サンプル掃引508の持続時間(この場合、上記のように230ns)およびサンプル掃引時間510(この場合、上記のように333ns)が示されている。また、ドウェル時間512および全掃引時間514も示されている。
【0229】
上記のように、センサが走査しサンプルする空間内の到達距離が、レンジビンに分割される。受信ユニットは、各サンプルに小さな時間オフセットを加えることによってこの到達距離を走査し、受信機ユニットのPRFクロックが事実上オフセットされ、到達距離が走査される速度がこのオフセットによって決定される。センサの更新速度は40Hzである。
【0230】
タイムベース制御262は、図10に示したサンプラ248コンポーネントおよびサンプルアンドホールド258コンポーネントのタイミングを制御し(また、受信機側処理ユニット260にサンプルパルスも提供し)、上記の必要なクロック調整を実施する。
【0231】
検出器出力の帯域幅は40kHz(音声周波数と同じ次元の大きさ)である。サンプル出力帯域幅は、走査速度、受信機と送信機のクロック差(これは1ppm(百万分率)内に抑えることができる)、および受信ユニットに相対的な送信機の移動によって生じる任意のドップラー周波数偏移によって決まる。
【0232】
送信機と受信機の間の最大相対速度を毎秒10メートルと仮定すると(適用例の大多数にとって安全な仮定である)、単に400Hzのドップラー周波数偏移が生じることになり、無視することが可能である。また、サンプル出力帯域幅は、各レンジビンで費やされた時間−ドウェル時間、または1つのレンジビンでとられたサンプル数によっても決まる。好ましい実施形態では、1レンジビンあたり36サンプルに対応するドウェル時間12μsを使用するが、他のドウェル時間を使用することもできる。
【0233】
サンプル出力帯域幅の選択に影響を与える残りの要因である、受信機と送信機の間のクロック差について、次に論じる。
タグの周波数精度(すなわち、受信機クロックと送信機クロックの間の整合の近さ)により、とりわけ、良好な信号対雑音比(SN比)を得るために所与の帯域幅信号に必要とされる処理量が決まる。SN比が高いと、精度が高まり、システムの検出距離が増大する可能性があり、一方、SN比が低いと、システムに累進的な誤差を生じさせる可能性がある。
【0234】
調査の後、10メートルの検出距離を実現するのに十分な高SN比を実現し提供するためには、1ppm(百万分率)未満の受信機と送信機の間の周波数差が可能であることが判明した。公称12MHzのパルス繰返し周波数(PRF)では、1ppmの周波数差により、6GHzで6kHzの周波数誤差が生じる。周波数誤差の影響により、受信機のサンプラがレンジ「ビン」にいる時間中(すなわち、12μsのドウェル時間全体であり、その間36のサブサンプルがとられる)、受信された(無線周波数範囲の)信号の位相が変化し、サンプラ出力が事実上変調される。
【0235】
例えば、信号がサンプルアンドホールドされる際の12μsの「統合時間」中、6GHzの入力信号の位相は、約26°変化している。位相が変化することによる主な影響は、システムのSN比が悪化する過程で、検出信号の振幅が減少することであるが、12μsのドウェル時間にわたる26°の位相変化による振幅減少は、許容可能であることが判明している。例えばドウェル時間の増大によって生じる著しく大きい位相変化があると、信号がほとんど検出されなくなる程、SN比を悪化させる可能性がある。
【0236】
周波数ずれによって生じる別の結果は、距離誤差である。この距離誤差は、送信タグが一方のセンサに近く、他方から離れているときに明らかとなる。この距離誤差は、受信機の逐次時間サンプリングによって生じる。(10メートルの到達距離に対応する)33nsの時間差を測定するのにかかる時間は、3.5ミリ秒(ms)である。この時間中、短距離受信機に対して、タグが3.5ns(3.5msの百万分の一)だけずれてしまうことになり、1メートルの距離誤差が生じる。この距離誤差は、目的によっては許容可能であるが、そうはいかないものもある。しかし、この誤差は、受信機データに現在存在する情報から送信機および受信機のPRFの差を正確に測定することによって、補償することができる。これは、24msの1掃引における1nsよりも良好に測定することができ、0.02ppmの周波数誤差および1.4cmの距離誤差となる。
【0237】
次に以下に述べるように、予想される距離誤差を向上させるために、受信ユニットの較正を使用することは重要である。
受信ユニットの較正
上記の距離エラーは、システムの複数の受信ユニットによって出力されるデータに現在存在する情報から、送信機および受信機のクロック位相差を決定し、次に、得られた位相差について訂正することによって、補償することができる。
【0238】
好ましい実施形態においては、検出を同期化するために、すべての受信ユニットに共通クロックが提供される。図14を参照すると、共通クロック信号によって、走査開始(SoS)460、464、468、462、466、470などの位置がそろい、その結果、異なる受信ユニットのサンプル掃引を直接比較することができる。
【0239】
好ましい実施形態の一変形形態においては、少なくとも1つの参照タグが提供され、受信ユニットが非同期となる(すなわち、共通クロック信号によってリンクされない)。参照タグは、追跡すべき物体で使用されるタイプの送信機であり、既知の参照場所に固定されている。参照タグは、能動物体が追跡されるのと同じ方法で、チャネル化されている(すなわち、それらは例えば特性PRFで送信する)。各受信ユニットは、当該物体の信号に同調するだけでなく、参照タグにも同調し、すべての情報を制御ユニットに渡す。
【0240】
制御ユニットの制御の下、参照タグと当該物体の間で切り換えるためにPRFの選択が行われるが、好ましい実施形態の諸変形形態においては、受信ユニットは、参照タグと当該物体に関する受信信号を多重化し、ほぼ同時に出力することができる。さらに他の一変形形態においては、参照タグと当該物体に関するPRFが、受信ユニットの制御の下、例えば、複数の検出経路および/または検出クロックを使用して、同時に検出される。
【0241】
クロック信号は、制御ユニットに配置された検出クロックから提供され、所望のPRF周波数の所定の倍数で設定される。次に、受信ユニット中のタイムベース回路は、その内部クロックの位相を進める(上述のように、別のレンジビンに移動する)ように、外部の検出クロックを使用し、適切に分割し、時にはパルスを無視して、内部クロックを駆動する。
【0242】
参照タグおよび受信ユニットの位置がわかるので、互いに異なる受信ユニットにおける参照タグパルスの到着の間の間隔もわかる。受信ユニットから受信したデータを使用することにより、制御ユニットは、測定された間隔を理論的な間隔と比較し、各受信ユニットにおける検出クロックの相対位相/クロックオフセットを決定することができる。
【0243】
受信ユニットを同期させるためにどちらかの較正方法を使用することにより、各受信ユニットと送信機の間のクロックオフセットのより正確な推定値を生成することができ、各受信ユニットにおける物体の送信信号の受信間の間隔を分析することによって、二次的位置推定も得ることができる。好ましい実施形態においては、各受信ユニットと物体の送信機の間のクロックオフセットは、1nsの精度で測定することができ、約0.02ppmの周波数誤差および約1.4cmの距離誤差となる。
【0244】
1〜2cm程度の位置決め精度は、約70cmの較正を使用しない精度よりも大幅に高く、大多数の用途にとって十分である。
次に、送信信号のチャネル化についてより詳細に説明する。
【0245】
送信信号のチャネル化
好ましい実施形態においては、タグ識別(すなわち、特定の物体に関連する送信機によって送信される信号の識別)は、各物体に互いに異なるパルス繰返し周波数(PRF)で信号を送信させることによって実現する。次に、受信ユニットを、制御ユニットの制御の下、タイムベース回路により、任意選択で共通クロック信号(上記参照)によって、該当するPRFに「同調」させる。
【0246】
そのPRFが受信ユニットの検出クロックのものと(異なる周波数整数倍であるが)整合する、選択された物体に対応する所望のタグ信号は、通常、上述のように受信される。互いに異なる、互換性のないPRFをもつ他のタグ信号は、整合した信号とは異なるベースバンド周波数を有し、こうした信号は、受信機の周波数フィルタリングによって除去される。
【0247】
3MHzのスペクトル線間隔が得られる、(上記説明のように、12MHzの送信機PRFの1/4となるように選択された)3MHzの受信機PRFでは、12までの異なるタグを区別することができ、各タグPRFは、250kHzの周波数分離間隔を有する。約12MHzのパルス周波数が与えられた場合、この250kHzの周波数分離間隔は、40kHzのカットオフ周波数を有する3次ローパスフィルタにとって、少なくとも48dBの除去となるように設計されている。上記のように、近くに(例えば、0.5メートルのところに)妨害タグがある(10メートルのところにある)最大到達距離タグにとって、受信機によって必要とされるダイナミックレンジは26dBである。したがって、より近いタグ間隔を選択することもできるが、SN比が犠牲になる。
【0248】
好ましい実施形態においては、図10を参照すると、送信機PRFとは無関係に、タイムベース制御262によって3MHzの固定の受信機PRFが生成される。9MHz〜12MHzのPRF周波数は、サンプリングのエイリアシングの影響により、0〜3MHzのベースバンド周波数にシフトされる。上記のように、信号は次に、音声周波数範囲にダウンサンプリングされ、当該周波数帯域に同調されている、受信ユニットの音声周波数バンドパスフィルタ252、256によって、当該信号はフィルタ除去される。
【0249】
検出信号は、バンドパスフィルタリングされた周波数範囲に入っているが、受信ユニットおよび送信機が同期していない(その結果、上記の周波数誤差が生じる)ので、その具体的な周波数は、フィルタリングされた周波数範囲内で変動し得、信号対雑音比(SN比)が低下する恐れがある。SN比(したがって性能全体)を高めるために、処理ユニットは、周波数誤差の推定値を得て、その後、処理ルーチンを予想される信号周波数に適合させることを含めた、信号のある種の前処理を行う。前処理のさらなる詳細については後述する。
【0250】
好ましい実施形態の一変形形態においては、バンドパスフィルタ252、256が今度は固定され、代わりに受信機PRFを0〜3MHzの間で変化させて、送信機PRFを適合させる。使用される周波数が高いので、これは実現がより困難となり得るが、入力周波数と整合させることによって、後段で必要とされる帯域幅を低減することができる。
【0251】
次に、信号に対して適用される処理について説明する。
信号の処理
上記のように、各受信ユニット200ごとの受信機側処理ユニット260(または、上記の変形形態においては、制御ユニット300自体)は、その入力として、各受信機チャネルに対応する(受信機ユニットのセンサアレイにおいて1アンテナごとに1つの)、サンプリングされ、フィルタリングされ、時間伸張された複数の信号をとる。受信機側処理ユニット260への各信号入力は、所望のタグ信号に対応する狭帯域の周波数を含んでいる。次に、処理を完了できるようにするために、各受信ユニット200、202(等々)によって制御ユニット300に情報が渡される。
【0252】
受信機側処理ユニット260および制御ユニット300(適宜)によって、レーダデータに検出アルゴリズムが適用され、追跡される物体の場所を指定する出力が生成される。
計算効率を高めるため、レーダデータは、同相(I)成分および直交(Q)成分に分割され、複素数の対にデインターリーブされる。これにより、到達距離掃引時間を低減することができる。
【0253】
好ましい実施形態の諸変形形態においては、シーケンス(I、Q、IN+1、QN+1、など)に対して、さらに音声周波数フィルタリングが適用される。
整合フィルタ
検出アルゴリズムの別の部分では、整合フィルタを使用して、パルス波形の検出を機能拡張する。所与の入力x[n]に対する整合フィルタの出力y[n]は以下で与えられる。
【0254】
【数1】

【0255】
ただし、h[n]は、フィルタのインパルス応答である。
インパルス応答h[n]を、予想される信号波形(すなわち、通常なら整合フィルタ原型として知られる、送信機によって送信される個々のパルスの形)の反転として設定することにより、フィルタの出力が入力信号を予想される信号波形と相互相関させたものに等しいことを示すことができる。これにより、計算的に効率的な受信パルス波形の検出方法が得られ、これを前処理方法として用いると、処理される信号の信号対雑音比が向上する。
【0256】
整合フィルタを使用するシステムがより狭帯域である程、SN比はより向上する。これにより、付加白色ガウス雑音において最適なSN比が得られる。整合フィルタのインパルス応答の長さに等しい範囲内にオフセットが存在する。狭帯域信号の場合、到達距離の解像度が、やがて2分の1に悪化し、到達距離内の分解能が半分になる。
【0257】
実際には、予想される信号波形または予想される信号波形の反転を関数に適合させることによって、整合フィルタのインパルス応答が設定される。予想される信号波形の包絡線上の特定の波形、または予想される信号波形の反転に対して、いくつかの点を、例えば10または適切な数だけ二次関数または指数関数に適合させることによって、良好な結果を得ることができる。
【0258】
整合フィルタは、各受信ユニットにおいてパルスの受信によって生成されるレーダデータに個々に適用される。各受信ユニットのレーダデータに対しては、レーダデータに対する一連のタイムシフトにおいて整合フィルタが適用され、各タイムシフトごとにフィルタの出力が比較される。フィルタの最大出力に対応するタイムシフトを見つけ出すことにより、受信パルスに対する受信時間、または位相が確認される。すなわち、フィルタの最大出力における位相成分および直交成分で比較することによって、受信パルスに対する位相が確認される。
【0259】
したがって、各受信ユニットにおける受信パルスに対する受信時間または位相が確認され、次いでそうした受信時間を使用して、上述のように、すなわち各受信機からの時間/位相のそうした時間を比較して角位置情報を決定することによって、位置情報が得られる。
【0260】
好ましい実施形態においては、異なるいくつかの整合フィルタ原型および/または対応するインパルス応答が記憶され、受信ユニットで受信されたパルスの予想される特性に応じて、適切な整合フィルタ原型またはインパルス応答が選択される。この技法は、プロトタイプの形が受信信号の形により類似して整合すれば、よりうまく機能する。
【0261】
整合フィルタリングは、システム動作の受動モードでも能動モードでも使用される。
能動モードでは、互いに異なるタグ送信機が、異なる特性をもつパルスを送信する場合、互いに異なる整合フィルタ原型は、異なるタグに対応する。
【0262】
以下により詳細に説明するように、受動モードでは、物体に向かって送信されるパルスのパルス長が変更され、具体的な実施形態においては、受信機からの物体の距離に応じて、またはシステムの具体的なアプリケーションに応じて変更される。整合フィルタ原型またはインパルス応答は、使用される具体的なパルス長に整合するように変更される。
【0263】
物体または受信機が移動している場合、いくつかの状況において、1組の測定の過程で、受信機からの物体の相対距離の変更に応じて、パルス長が変化する。対応する変更は、使用される整合フィルタ原型またはインパルス応答において行われる。
【0264】
例として、図19〜25を参照して、IおよびQでサンプリングされたシステムのレーダデータに対するいくつかの整合フィルタリングの質的影響について、次に論じる。
例示の目的で、受信パルスがIチャネルおよびQチャネルに位相が一定(例えば、周波数オフセットがゼロ)で現れるように、IQ信号がまずベースバンド化されると仮定する。次に、整合フィルタリングがIおよびQに並列に適用される。
【0265】
当例では、1つのIチャネルまたはQチャネルが考慮され、予想される信号波形の反転を、区間x=[0,1]において関数y=exp(x*a)*(x)(ただし、aおよびbは、立上り時間および立下り時間を調整することを可能にする整形定数)に適合させることにより、インパルス応答が得られる。サンプリングされたインパルス応答は、直流で0dBの利得となるように、正規化される。
【0266】
図19は、パルス中に12サイクルを有する2ns、6GHzのパルスに対して適合させた整合フィルタインパルス応答を示している。1サンプルあたり3πラジアンのサンプリングレートを用いると、ゼロの端点を含めて8点が得られた。パルスの反転は、y=exp(x*a)*(x)に適合しており、図19に描画されているように、a=−8およびb=1.3が得られた。
【0267】
図20は、パルス中に12サイクルを有する2ns、6GHzのパルスに対する、雑音のあるベースバンド化された入力信号(IまたはQ)を示し、図21は、図19の整合フィルタインパルス応答を使用して整合フィルタを適用した後の、図20の信号を示す。
【0268】
図22は、パルス中に120サイクルを有する20ns、6GHzのパルスに対して適合させた整合フィルタインパルス応答を示している。1サンプルあたり12πラジアンのサンプリングレートを用いると、ゼロの端点を含めて22点が得られた。この場合も、パルスの反転は、y=exp(x*a)*(x)に適合しており、図23に描画されているように、a=−6およびb=0.8が得られた。
【0269】
図23は、パルス中に120サイクルを有する20ns、6GHzのパルスに対する、雑音のあるベースバンド化された入力信号(IまたはQ)を示し、図24は、図22の整合フィルタインパルス応答を使用して整合フィルタを適用した後の、図23の信号を示す。
【0270】
図25は、整合フィルタ290および292を使用した1つのセンサからのデータの前処理を示す。N個のセンサでは、この図がN回複製されることになる。音声周波数領域にダウンコンバートされた生データ周波数は、同相および直交形式で、局部発振器296によって局部発振器信号が供給される複素乗算器294に渡される。出力は、位相情報と振幅情報をどちらも有する、IおよびQでベースバンド化され、フィルタリングされたレーダデータである。
【0271】
好ましい実施形態の諸変形形態においては、信号受信信号に対して動作する整合フィルタは、受信信号の対の間の相互相関によって置き換えられる。1つの変形形態においては、相互相関プロセスの計算上の犠牲を制限するために、(センサアレイの幾何学的特性により測定することのできる最大間隔など)受信信号の既知の特性を用いる、打切り相互相関プロセスが使用される。
【0272】
検出アルゴリズムに関するさらなる詳細については、後で述べる。次に、差動タイミングセンサアレイの構成および動作について、より詳細に説明する。
差動タイミングセンサアレイの構成
図16は、受信ユニットにおけるセンサアレイの平面図である。図16では、アレイ基板270は、基板上に形成された4つのアンテナ272、274、276、278を含んでいる。角位置を測定するとき、より非対称な構成であるほど、あいまいさが生じる可能性が減少することに留意して、アンテナ272、274、276、278は、アレイ基板270の平面において非長方形の四辺形の形で構成されているが、それとは異なる構成も可能である。
【0273】
図17は、レーダシステムが受信モードまたは能動モード(あるいはその両モード)で動作することを可能にするための、送信機コンポーネントを含む、図16のシステムの一変形形態を示す図である。図17では、アレイ基板270は、非長方形の四辺形の形で基板上に形成された5つのアンテナ272、274、276、278、280を含んでいる。中央のアンテナ280は、専用送信アンテナとして働くが、第5の受信機として働くこともできる。あるいは、第5(またはそれ以上)の受信機を設けて、受信機モードでのみ動作させることができる(受信ユニットの複雑さが増大するが、精度も向上する)。
【0274】
図16のシステムに関して、次に、受信エレメント272、274、276、278からそれぞれRl、R2、R3、およびR4の距離に配置された物体があると仮定する。
物体がアレイ270の軸(「ボアサイト」と呼ばれることもある)上に配置されている場合、4つのアンテナ272、274、276、278のいずれからも等距離であり、その結果、4つのアンテナ272、274、276、278のいずれからも同時に到着する。
【0275】
一方、物体が軸外に、例えば方位角φおよび仰角θで配置されている場合、アレイ270の垂直方向に離隔された受信エレメントに到着する信号間には約Dv sinθ/cの時間差が生じ、アレイ270の水平方向に離隔された受信エレメントに到着する信号間には約Dh sinφ/cの時間差が生じることになる。ただし、DvおよびDhは、それぞれアレイ270の受信エレメントの間の縦および横の距離である。上記において、cは光の速度である。
【0276】
より具体的には、反射された信号が受信エレメントによって受信される時間をそれぞれTr1、Tr2、Tr3、Tr4とすると、以下のようになる。
Tr1=(2R5+(−D14sin(θ)+D12sin(φ))/2)/c
Tr2=(2R5+(−D23sin(θ)−D12sin(φ))/2)/c
Tr3=(2R5+(D23sin(θ)−D34sin(φ))/2)/c
Tr4=(2R5+(D14sin(θ)+D34sin(φ))/2)/c
ここで、Dxyは、互いに異なるセンサxおよびセンサyの間の距離であり、R5は、送信機(図示せず)とセンサアレイ270の間の距離であり、これらの計算式は、小さな角度に対する近似である。(送信機と受信ユニットの非同期性により容易に得ることのできないR5がわからなくても)上記の計算式を解いて、角度θおよびφを得ることができる。
【0277】
図18は、動作時におけるセンサアレイの側面図である。図18では、アンテナ272、276がこの場合も基板270上に搭載されており、図示されているように物体からの信号を受信する。アンテナ間の間隔282は、選択された最小検出距離に比べて十分小さく、入射信号経路は基本的に並行である。信号は、受信ユニットに対する送信物体の3次元位置に応じて、アンテナ272、274、276、278に異なる時間に到着すると考えることができる。仰角θおよび(272および276の両アンテナにおける信号の受信間の時間遅延に比例する)信号経路長の差284が示されている。
【0278】
4つ以上のエレメントのアレイ270から受信される情報には、冗長性も認められることになる。これは、選択によって、あるいは平均化プロセスまたは重みづけプロセスによって対処することができる。
【0279】
また、到来角が45度のオフボアサイトを超えると、アレイの分解能が悪化し始めることも認められる。90度のオフボアサイトでは、(システムの幾何形状から理解できるように、この位置周辺における物体の比較的大きい角度の摂動により、差動タイミングにおいて比較的小さな変化しか生じないので)角分解能が減少する。
【0280】
同様に、受信ユニットのうちの1つに対して、システムの物体が90度のオフボアサイトに近い場合、変位分解能が減少する恐れがある。この問題は、送信物体が、少なくとも2つの受信ユニットに関してできるだけ45度のオフボアサイトより大きな値に近づけるように、システムの受信ユニットを注意深く配置し方向付けることによって克服することができる。
【0281】
システムの受動モードの動作
システムは、能動および受動の2つのモードのうちの1つのモードで動作するように設計されている。能動モードでは、システムは能動物体(タグ)から送信される信号がないかどうか走査し、最低2つのセンサを使用してタグの位置を決定する。受動モードでは、これは能動モードと同時に動作可能であるが、システムは、異常な受動物体、すなわちそれらに関連した能動送信機を有さない未知の物体がないかどうか走査する。好ましい実施形態の諸変形形態においては、システムは受動モードでのみ動作する。
【0282】
受動モードにおいては、受信ユニット200のセンサアレイ270における送信エレメント280は、一連のパルスを放射する。この放射の一部は、侵入者から反射されて戻り、センサ中の受信エレメント272、274、276、278のアレイによって受信される。
【0283】
受動モードにおいて受信エレメントのアレイによって受信された放射は、能動モードにおいて受信エレメントによって受信される方法と同様の方法で処理され、角位置が同様に得られる。
【0284】
能動モードと受動モードにおけるシステム動作間の1つの大きな違いは、能動モードでは、放射が反射される物体の距離を、送信機からのパルスの送信と受信ユニットにおけるパルスの反射の受信との間の時間差から得ることができることである。受信ユニットからの物体の距離の測定値を角位置の測定値と組み合わせて、物体の位置を求めることができる。
【0285】
能動モード動作と同様に、受動モード動作でも上記の整合フィルタリングプロセスが使用される。
通常、デジタルベースバンド変換プロセスとそれに続く(デジタルローパスフィルタの形の)整合フィルタが、同相シーケンスおよび直交シーケンスに適用される。
【0286】
上述のように、予想される信号波形または予想される信号波形の包絡線を適合させることにより、整合フィルタインパルス応答が得られる。
予想される信号波形はもちろん送信信号の波形に依存し、送信信号は測定条件および検出すべき物体の特性に応じて変わることが、受動モードで動作する好ましい実施形態の特徴である。
【0287】
好ましい実施形態の諸変形形態においては、システムの様々な諸側面を変化させ、あるいは選択して、特定のアプリケーションに適合させる。そのような諸側面には、パルス長、パルス列(例えば、列の長さまたはパルス間隔)、および使用される(例えば、デジタルローパスフィルタの形の)整合フィルタが含まれる。すべてを変化させ、最適化させて、特定のレーダまたはタグ追跡の用途に適合させることができる。
【0288】
適切なパルスおよびその他のシステム特性の選択は、例えば、信号対雑音比の要件および所期の用途のための分解能に依存する。送信パルス幅を拡大しかつ(デジタルローパスフィルタの形の)整合フィルタを拡張して、平均送信電力を増大させ、有効雑音帯域幅を狭めることができ、あるいは局部発振器パルス幅を拡大して、実際のRF雑音帯域幅を狭めることもできる。
【0289】
好ましい実施形態の一変形形態においては、FIRフィルタを拡大されたパルスに適用して、応答を白色化し、受信信号の立上がりを拡大することができる。
通常、短いまたは長い送信パルスが選択され、次にそれに対応する短いまたは長い局部発振器パルスおよび互いに異なる整合フィルタインパルス応答が選択される。送信パルス、局部発振器パルス、および整合フィルタインパルス応答の選択は、用途に応じて、到達距離、分解能、および精度の点で最適な応答が得られるように行う。
【0290】
いくつかの用途では、パルス長は、受信エレメントからの物体の距離に応じて変化させる。物体が受信エレメントから比較的遠く離れている場合(すなわち、長い到達距離の場合)、より長くより高出力のパルスを使用できることがあり、物体が受信エレメントから比較的近い場合、より短くより低出力のパルスを使用できることがある。
【0291】
より長くより高出力のパルスでは、一般に信号対雑音比がより高くなるが分解能がより低くなり、より短くより低出力のパルスでは、一般に分解能がより高くなるが信号対雑音比がより低くなる。
【0292】
例えば自動車用途のケースでは、システムを駐車支援装置として使用する場合、短いパルスを選択し、約0.5m/sでの移動に適したパルス列およびローパスフィルタが使用される。事前衝突検知の場合、より長いパルスを使用して、到達距離分解能はより粗くなるが、70m/sまでの速度に対応することができる。
【0293】
使用される整合フィルタは、パルス特性の変化に応じて変更され、通常、使用する可能性のある様々なパルスに応じた様々な整合フィルタインパルス応答が記憶される。
様々な到達距離にある車両の存在を検出するための、システムの1つの具体的な用途で使用されるパルスのいくつかの例が、次の表1に示されている。
【0294】
【表1】

【0295】
システムの受動モード動作で送信されるパルスの例が、図26および27に示されている。図26は、おおよそ2ns、6GHzのパルスであり、図27は、パルス中に60サイクルを有するおおよそ10ns、6GHzのパルスである。
【0296】
次に、位置決めシステムの様々な用途について論じる。
位置決めシステムの用途
上述の位置決めシステムは、高セキュリティ環境に特に適しており、その場合、指定された区域周辺のスタッフおよび物体を追跡できる必要があることがある。スタッフおよび物体の追跡に加えて、システムが侵入者を検出する必要もある。
【0297】
上述の位置決めシステムを使用して、これらの要件を満たすことができる。このようなシステムでは、上記の設計によれば、指定された保護区域内のスタッフおよび物体にはどちらも送信タグが装備される。前に述べたように、タグは、パルスシーケンスを放射する放射エレメント104を有し、受信ユニット200、202などは、図17に示すような、送信エレメント280を組み込んでいるタイプである。
【0298】
システムは、能動および受動の2つのモードのうちの一方のモードで動作するように設計されている。能動モードでは、システムは能動物体(タグ)から送信される信号がないかどうか走査し、最低2つのセンサを使用してタグの位置を決定する。受動モードでは、これは能動モードと同時に動作可能であるが、システムは、異常な受動物体、すなわちそれらに関連した能動送信機を有さない未知の物体がないかどうか走査する。
【0299】
上記のように、受動モードにおいては、受信ユニット200のセンサアレイ270中の送信エレメント280は、パルスシーケンスを放射する。この放射の一部は、侵入者から反射されて戻り、センサ中の受信エレメント272、274、276、278のアレイによって受信される。次に、信号が処理されて、候補の物体が識別される。次いでこうした候補の物体が、受信ユニットの近傍の固定構造など既知の物体、または送信タグによって既に識別されている物体と比較される。既知の物体の一覧に対応しない物体(すなわち、侵入者として識別される物体)が検出された場合、警報が生成される。次に、例えば侵入者がとる出口経路を突き止めることができるように、受信ユニットを取り囲んでいる検出空間の周りで、その異常な物体を追跡することができる。
【0300】
2つ以上の受信ユニットからなるシステムを使用して、指定された区域をカバーし、タグおよび侵入者に関する位置情報を提供することができる。ただし、受動モードでは1つの受信ユニットだけが必要とされる。そのケースでは、送信機と受信機の同期がとられ、その結果、パルスの送信と受信の間の測定間隔に比例する擬似距離を決定することが可能になるからである。
【0301】
この例では、通信リンク上を複数のセンサが互いに通信する。この通信リンクは、各受信ユニットの具体的な場所に応じて無線または有線となる。1つの受信ユニットはマスタセンサとして働き、各受信ユニットからすべての測定情報を受信し、物体の位置を計算する。上記説明のとおり、物体タグから送信されるパルス列および受信ユニット中の送信エレメントがコード化(チャネル化)されて、他のタグとの干渉が防止される。
【0302】
位置決めシステムを使用する別の例は、車両の場合である。このケースでは、技術および機能的動作は、前の例と基本的に同じである。ただし、このシステムでは、後進支援として、または侵入検出システムとしてセンサが使用される。
【0303】
この例では、センサは受動モードで動作して(すなわち、送信機を組み込まない物体を検出する)、車両の移動中、車両の周囲の物体を追跡する。動作の第2のモードでは、これは第1のモードと同時に動作可能であるが、センサはキーホルダなどの能動タグを検出する。このケースでは、車両が駐車されており、タグを携えた運転者がその車両に近づいていることが考えられる。運転者がその車両に関する指定された区域内に入ると、車両に搭載された受信ユニットは、キーホルダの位置を検出し、それにより運転者を認証して、運転者に最も近いドアを開錠するなどの一連の機能を有効化することができる。
【0304】
位置決めシステムには、それだけには限らないが、場所ベースの情報送達システム、移動性ベースの商取引システム、測量および測定用の精密測定システムを含めた、さらに多くの潜在的な用途がある。また、システムは、距離ゲート制御を行い、クラッタ除去を有し、高分解能を有し、貫通結果を得、また画像装置としてもセンサとしても機能することのできる、携帯式高性能高分解能レーダシステムを可能にすることもできる。
【0305】
さらなる用途には、壁貫通センシング、移動を追跡するレーダセキュリティシステム、ロボット制御用の産業用センシング、衝突回避センサ用の自動車センシング、および家庭用および産業用セキュリティシステム用のモノスタティックおよびバイスタティックな安全区域などがある。
【0306】
さらに、受動物体および能動物体の両方に関する位置情報を決定する必要がある場合、具体的には物体と受信ユニットを接続するケーブル配線がないとき、特に受信機と送信機が非同期のときに、このシステムを使用することができる。
【0307】
この位置決めシステムは、システムの受信ユニット内の複数のタグおよび/または送信機など複数の送信エレメントを用いる環境で、到達距離のあいまいさを解決できる必要があるときに、使用することもできる(例えば、合成角と差動タイミング測定値を合成できるため)。別記のように、最も簡単な形態では、システムは、送信機と受信機がすべて互いに非同期して動作している能動物体の位置を解決することができる。受信機と受信機ならびに送信機と受信機の間の相対タイミングオフセットを知る必要はない。
【0308】
タグを用いた通信
このセクションの説明においては、いくつかの用語が他のセクションの説明とは異なる意味で使用される。位置情報が所望されるエレメントは、「物体」ではなく「タグ」と呼ばれる。位置を計算する装置は、「制御ユニット」と同様に「基地局」とも呼ばれ、「基地局」には他のセクションの説明の「受信ユニット」の機能が組み込まれている。
【0309】
本明細書に記載されるようなタグまたは能動物体の位置の決定に加えて、多くのケースでは、タグとの通信を確立する際に、タグとセンサ/基地局の間でメッセージを転送することができるという利点が生じる。この通信は、いくつかのケースではメッセージの片方向通信でよいが、多くの用途では、両方向通信を提供することができる。
【0310】
1つの用途においては、システムは、複数のタグと、UWB送信機および受信機を装備したセンサを含む基地局とを含んでいる。UWB送信機の送信は、時分割多重化することができる。そうすることにより、チャネル密度を高め、かつ/またはタグの電池消費電力を節約することができる。
【0311】
そのようなケースでは、基地局または制御ユニットは、メッセージをタグに送信することができる。そのようなメッセージは、例えば、タグが起動し、アイドル状態になり、またはPRFを変更するためのコマンドを含むことができる。
【0312】
別の用途においては、タグを、データ、例えばタグ送信機に関連した物体に関するデータを収集するように適合されたセンサと関連付けることができる。例えば、タグを患者が着用することができる。タグは、患者に関する心電図情報を収集する装置と関連付けることができる。このECG情報は、上述の方法を用いて、中央監視システムに中継することができる。
【0313】
基地局は、メッセージをタグに定期的に送信するように適合させることができ、そのメッセージは、タグがECGセンサから遠隔地に情報を送信するための命令を含んでいる。例えば、ECGデータは、基地局に、あるいは別個の制御/データ収集ユニットに、無線で送信することができる。
【0314】
他の用途においては、互いに異なるタグまたは制御ユニットの間の通信が所望される。この通信は、タグ、タグ制御情報、および/またはリアルタイム音声/映像データに適合したセンサから収集されたデータからなってよい。
【0315】
以上その他の用途では、通信を行うことを可能にするために、タグと受信機の間または1つのタグと別のタグの間の無線リンクが提供されることになる。
これを実現する1つの方法は、必要に応じてタグおよび受信ユニットまたは制御ユニットに、別個の無線送信機を適合させるようにすることである。この送信機は、位置情報を決定するのに使用されるUWB送信機とは無関係に動作することができる。用途に応じて、この送信機は、簡単なアナログ無線を含むことも、あるいは例えばBluetoothやZigBee技術を使用した、より複雑なデジタル無線システムを含むこともできる。この二次送信機を使用して、すべてのデータの流れ、ならびにタグと制御ユニットの間の通信を管理することができる。その間、(制御ユニットに接続された)UWB送信機および受信機は、タグの検出、タグの位置の決定、および/またはタグの追跡を続行することになる。
【0316】
したがって、上述の例においては、タグを患者が着用し、タグがECGまたは他の生理学的センサと関連付けられているが、患者の場所に関する情報および患者のECG情報の両方を得ることができる。
【0317】
変調または符号化を使用したUWBシステムでのデータ送信
別個の無線送受信機を使用してタグとセンサ/制御ユニットの間の通信を実現するための好ましい一代替手法においては、UWB送信機および受信機は無線リンクとしても使用される。そのような手法では、UWB無線システムは、タグ位置決め機能とタグ追跡機能をどちらも提供し、タグと制御ユニットの間の通信を可能にする。この利点は、1つの無線標準だけが必要とされ、したがって、ハードウェアの複雑さ、タグのサイズ、コスト、および/または電力消費が低減されることである。通信が両方向である場合、タグには、UWB送信機に加えてUWB受信機が必要となる。
【0318】
− PRF変調の使用
UWB無線システムを使用してタグと制御ユニットの間の通信を実現するには、送信機からのUWB放射が変調される。第1の例では、パルス繰返し周波数変調技法が使用されている。
【0319】
PRF変調技法を使用する場合、2つ以上のPRFが使用される。2つのパルス繰返し周波数を使用することにより、UWB送信機で、「0」または「1」を一度に1ビットずつ送信することができる。さらに、4つのPRFを使用することにより、2ビットを一度に送信することができる。そのようなケースでは、PRF1は「0」を表すことができ、PRF2は「1」を表すことができる。
【0320】
例えば、データ信号に応答して、UWB送信機はPRF1またはPRF2の速度でトリガされ、したがって「0」を送信するとき、UWB送信機は、PRF1によって決まる速度でn回トリガされることになる。1ビットおよびそのPRFに対して送信機がトリガされる回数nにより、データ速度が決まる。必ずしもそうとは限らないが一般に、2.5MHzのPRFを有すると、100kHzのデータ速度をサポートすることができる。
【0321】
− 代替方法
UWB無線システムを使用してタグと制御ユニットの間の通信を実現する一代替方法においては、タグ(および/または制御ユニット)が、周期的に中断されるパルスシーケンスを送信する。上記と同様に、送信されたパルスシーケンスから位置情報を決定することができるが、送信されたパルスシーケンスから得られる方位情報に加えて、パルスシーケンス中の中断パターンを分析することによって他の情報も得ることができる。
【0322】
例えば、10パルスの放射と、それに続く20パルスに対応する期間の無送信と、それに続くさらに10パルスの放射などを含む特定のシーケンスでパルスを送信するように、タグ送信機を構成する。制御ユニットは、タグから送信される1000パルスの期間をサンプルして、物体の位置を追跡する。この例においては、制御ユニットは、タグから送信され、位置情報を決定することのできる最初の10パルスを受信し、その後20パルスに対応する期間何も検出されず、その後さらに10パルスが検出され、その際にさらなる位置情報を決定することができる。
【0323】
したがって、位置情報の決定に加えて、パルスと無パルスのパターンを解析することによって追加の情報を決定することができる。このケースでは、10パルス、20無パルス、10パルスのパターンにより情報を提供することができる。例えば、情報には、例えばタグの識別に関するアドレスコードを含めることができる。
【0324】
別の例においては、タグはまず開始ビットと、それに続く8パルスを連続して送信する。8パルスの分析から、パルス間の時間に関して正確に決定することができる。
その後、タグは、(パルス間の時間があらかじめ決まった)連続した2パルスが「1」を示し、連続した2つの欠落パルス(無パルス)が「0」を示すパルスシーケンスを送信する(すなわち、2パルスがオンを示し、2つがオフを示すように切り換える)。
【0325】
この代替方法によれば、名目パルス周波数は一定のままでよい。
こうした様々な方法により、タグと制御ユニットの間で情報を伝送することができる。
こうした方法の1つを使用してタグからその付近に存在し得る受信機への通信を可能にする情報の重要な一部分が、タグの識別に関するものである。したがって、タグは、その位置およびそのIDをどちらも決定できるようにするパルスシーケンスを送信するように、適合させることができる。
【0326】
典型的な識別子は、MACアドレスまたはIEEE 802.11Aアドレスである。そのようなプロトコルを使用して通信する各装置は、個別の識別子を有する。これらの個別の識別子は、上述の方法を使用して決定することができる。
【0327】
そのような識別子のケースおよびその他の例においては、RF伝送の変調または符号化を使用して通信される情報は、タグ符号化プロセス自体によって必要とされる分解能よりも、便利なことに量が大幅に少ない。したがって、RFパルス繰返し速度と比べて遅い速度で情報を変調または符号化することはしばしば有用であるが、もちろんそれでもその速度は、該当する情報を送信するのに十分高速である。
【0328】
MACアドレスは、システムが「ローカリゼーションモード」の場合に有用である。「ローカリゼーションモード」では、例えば、タグがUWB信号を送信していて、制御ユニットのレーダユニットが受信モードとなっており、したがって、タグの場所を正確に決定することができる。タグから送信されるUWBレーダ信号は同時に、タグに関する識別子を送信するために使用される。このような理由で、信号がどこから来たかを、したがってタグの場所を、非常に正確に決定することができ、またタグに対する識別子を有することもでき、したがって、後でブロードキャストメッセージがそのタグから受信される。ただし、タグの位置は、そのメッセージから決定することができず、MACアドレスを使用してメッセージ源を識別することができる。
【0329】
メッセージングおよび位置決め
概要においては、符号化(例えば上述のPRF符号化)方法を使用して、送信装置の識別情報、例えばMACアドレスを受信装置に送信する。受信装置は、MACアドレスを含む送信を受信し、その後、その情報が復号化されて、送信装置のMACアドレスが決定される。
【0330】
送信装置は、MACアドレスに関する情報を送信した後、それ自体を通信モード、例えば標準DSRCモードに切り換え、送信装置に関する情報と共に、情報を受信装置にブロードキャストする。DSRCは狭域通信を表す。これは5.850〜5.925GHzの帯域におけるスペクトルのブロックであり、輸送システムの安全性および生産性を向上させるためにUSFCCによって割り当てられている。
【0331】
この例によれば、次の異なる2つの動作モードが存在する。
1)送信装置(タグ)の位置およびそのMACアドレスを決定することのできる、UWBローカリゼーションモード。
【0332】
2)送信装置からメッセージを送信することのできる、標準通信モード。
標準通信モードでは、(DSRCやIEEE 802.11Aなどの)標準通信プロトコルを使用することができる。プロトコルは、UWBローカリゼーションモードで使用される信号と同じスペクトルで使用される。そのようなプロトコルは、上記で提案されているPRF符号化とは異なる符号化を使用する。
【0333】
実装
一例においては、図28に車両用途として図示されているが、短距離レーダ700は、送信機702および多重チャネル受信機704を含んでおり、その視野内の物体によって散乱した信号を検出する。
【0334】
受信機はまた、同じ周波数帯域内で放射器706(タグ)の方向を測定することもできる。ただし、放射器706(タグ)は送信機と整合して動作していないことがある。このようにして、レーダ自体の動作とは無関係に、キータグを検出し、その方向を推定することができる。レーダの動作は、そのようなタグの存在によって中断することもできる。
【0335】
送信機は、送信機パルスを、パルス繰返し周波数に応じて、おそらくは(上述の)擬似ランダムシーケンスに変調することにより、送信機パルスシーケンスを、例えば遅延して変調する方法で、動作させることができる。
【0336】
擬似ランダムシーケンスがタグ送信機のシーケンスとは整合しない場合、タグが存在すると、その結果、符号の長さおよびタグ送信機の電力に応じて雑音が増加することになり、実際には、擬似ランダムシーケンスが受信される。
【0337】
擬似ランダムシーケンスが整合する場合、出力が整合することになり、したがって実際には、相関シーケンスが受信され、タグの方向を有する出力が受信機から提供されることになる。これはその後、識別および方向付け用に使用することができる。具体的には、IDは媒体アクセス制御アドレス(MACアドレス)でよく、その結果、システムがDSRCなどのプロトコルを介して通信することが可能になる。
【0338】
識別が行われた後、タグ送信機の(通常、異なるタイプの)次の(例えば振幅での)変調を使用して、メッセージを送信することができる。変調は、DSRC通信またはIEEE 802.11A通信の形でよく、これは、例えば車両用の標準通信プロトコルである。送信機はそれでもまだ、位置情報を決定し、識別メッセージを送信するステップと基本的に同じ搬送周波数で送信することができる。したがって、こうしたステップのすべてについて同じ送信機を使用することができ、したがって、機器は、少なくとも同じフロントエンドおよびアンテナを使用して、こうしたステップのすべてを実行することができる。これには、機器に必要とされるコンポーネント数が低減される利点があり、そのことが特に有利である。
【0339】
DSRCプロトコルでは、通信の両当事者がMACアドレスを提供する必要があり、したがって、自分のアドレスを他方の当事者に送信するために、両当事者が送信機を含む必要がある。したがって、そうした例では、タグ構成と基地局構成はどちらも送信機と受信機を含む。他の例では、通信は片方向であり、受信側は送信機を必要としない。
【0340】
DSRCの例を挙げると、レーダは、(a)システムの干渉の影響を最小限に抑え、(b)システムと通信するよう、構成することができる。
(a)システムの相互作用を最小限に抑えるために、レーダのパルス繰返し速度を、正確に5MHzに調整する。これにより、あいまいでない到達距離が30メートルに制限される。
【0341】
(b)DSRCは、5MHzの高調波においてスペクトル零位を有する信号で動作し、レーダ信号は、固定PRFで動作するとき、PRFの高調波における超狭帯域を占有する。この方法で、DSRCにとって十分な分離を実現することができる。
【0342】
DSRCと相互運用するために、レーダアレイは、DSRC送信機の方向において零位に合わせるように動作させる。2つのアンテナエレメントは、同じ信号であるが、方向に応じて異なる位相だけシフトされた信号を受信する。位相を変更することにより、「零位に合わせる」と呼ばれる、そこで信号を合計するとそれらを事実上ゼロにする位相および振幅を見つけ出すことが可能となる。これにより、通常ならアレイと送信機が干渉することになるが、その干渉が除去され、分離が改善される。
【0343】
位相の変更は、後処理で行われる。別個の処理チャネルを動作させて、DSRC信号を復調/出力し、DSRCオンボードユニットを制御して、DSRCトランザクションを完了することができる。
【0344】
タグが2つの多重チャネル受信機によって同時に観測される場合、3次元の位置決めを行うことができ、別記のように、三角測量できる2つの方向が独立して得られる。車両用システムのコンテキストにおいては、多重チャネル受信機は、例えば車両のフロントバンパー上および車両の側部上でよい。好ましい諸構成においては、受信機は、車両の4つの角にそれぞれ配置される。
【0345】
3次元の位置決めおよび両方向メッセージングを行うために、タグには、レーダ送信機を検出し、それをロックオンする受信機が装備される。ロックは、タグが送信機からのパルスを受信するときとそれが自分のパルスを送信するときの間の遅延を変調することによって提供される。その遅延を変調することにより、受信機に信号を送信し、またその逆を行うことが可能になる。
【0346】
タグ送信機は、レーダと同じ擬似ランダム符号を使用することができ、メッセージングの前に確実な識別を行うことができる。あるいは、パルス繰返し周波数で符号化せずに、タグおよびレーダを動作させることもできるが、ロックされた後は、遅延変調を使用して、IDを確立する(または認識なしの)メッセージを転送することができる。
【0347】
メッセージングおよび位置決め情報システムの使用例
上述の方法は、受信機と送信装置を含む物体との間の距離が大きくない場合に、具体的には距離が数十メートルまでの場合に、特に効果的である。
【0348】
好ましい具体的な1つの適用例が、車両に関するものである。最初の車両の受信機は、送信機および受信機エレメントのアレイが組み込まれ、例えば欧州特許出願公開第0 853 768号に記載されているように位置情報を決定するように構成された、UWBレーダシステムを含んでいる。第2の車両は、タグ/送信機装置を含んでいる。
【0349】
以下のステップが実行される。
1.タグを検出する
第1の車両のUWBレーダシステムは、第2の車両のタグ/送信機からの信号を受信する。
【0350】
2.タグの位置を測定する
第1の車両のレーダシステムは次に、本明細書に記載の技法を使用して、第2の車両のタグの位置を決定する。
【0351】
3.識別情報を変調して送信し、受信し、確認する
第2の車両のタグによって送信された信号は、タグのPRFに周波数変調されたメッセージングを含んでいる。第1の車両のシステムは、タグからの信号を分析して、第2の車両のタグのMACアドレスを決定する。
【0352】
4.通信モードに変更する
第1の車両のレーダシステムは次いで、第2の車両のタグに、タグが標準DSRCまたはIEEE 802.11Aモードに切り換わるよう求める要求を送信する。
【0353】
5.例えばDSRCまたはIEEE 802.11Aプロトコルを介した通信を確立する
第1の車両のレーダシステムの要求があり次第、第2の車両のタグは、第2の車両の挙動に関する標準情報を第1の車両のレーダシステムに送信する。この情報には、例えば、車両の速度、ブレーキ状態、車両の性能、およびその他の情報に関する情報が含まれ得る。受信機システムはしたがって、DSRCチャネルを介して受信される第2の車両に関する情報を、位置決定から得られる方位情報および位置情報と相関させることができる。したがって、第1の車両に関して、車両の挙動を調整することによるブレーキ方針および事故回避方針を開発する場合に、この情報を考慮することができる。
【0354】
6.PDA、サービス情報などを同期化する
車両は、携帯電話、携帯情報端末、コンピュータなどに送信された情報を複製し、それにより、任意の関連したデータベースに保持されたデータを同期化することができる。例えば車両のタイヤがパンクした、あるいは車両がいじられたとの情報であった場合、適切な人員に警報することができる。
【0355】
7.位置決めモードに戻る
これは、第1の車両のレーダシステムからの要求によって開始する、あるいは、例えばDSRCモードにおける所定の時間後に、自動的に行わせることができる。
【0356】
車両に関する具体的な一例においては、レーダシステムによって前方の車両の存在が検出されるようになる。また、レーダシステムは、前方の車両のタグから、例えばその車両が急ブレーキをかけているということを示す緊急メッセージを受信することもできる。前方の車両の位置、ならびに2台の車両の相対速度および/またはその他の情報を知ることにより、緊急事態にどのように対応するのが最善であるかに関する方針を公式化することができる。
【0357】
他の例においては、タグが道路の縁部に搭載される。車両のレーダシステムは、タグの位置、したがって道の端の位置を決定する。また、沿道にあるタグは、車両のシステムに情報を送信するように適合させることもできる。そのような情報には、例えば、天気情報、交通情報、道路状況に関する情報、温度情報、および/またはその他の情報が含まれ得る。
【0358】
他の使用例は、車両またはその他の運搬体を、指向性中継器として使用することに関するものである。本明細書に記載の方法を使用して車両の位置を正確に決定することができるので、メッセージをいくつかの方向にまたはいくつかのモードで中継し、それ以外は中継しないようにすることが効果的に行える。例えば、高速道路上のこれより先の交通状況に関する情報を、高速道路の1つの車線に沿って中継し、情報が該当しない他の車線上には中継しないようにすることができる。この方法により、1つの車両が別の車両と通信し、次に他の車両と通信し、以下同様にすることができる。したがって、各車両が中継器になる。例えば、DSRCビーコンを沿道に配置して、例えば、天気、温度、交通状況、または渋滞報告に関する交通警報を提供させることができる。ビーコンは一般的なメッセージを生成し、各車両は中継器となり、その結果、メッセージが道に沿って車両に送信されることになる。また、ビーコンは、道の端がどこであるかを識別する方法も含むことができる。
【0359】
他の使用例は、物流に関するものである。タグ式システムを、例えば倉庫内の品目に関してタグが配置されている倉庫で使用することができる。タグは、IEEE 802.11Aプロトコルにしたがって、レーダシステムを含む検出装置にメッセージを送信するように適合されている。品目は、この方法によって、特に密集した区域でより効率的に配置することができる。品目のタグは、例えば、要求があり次第、自分のIDまたはその他の特性に関する情報を検出装置に送信するように適合させることができる。例えば、倉庫内の品目が生鮮食料品を含む場合、食品種別の各群にタグを関連付けることができる。検出システムを使用することにより、食品種別の位置だけでなく、各群に関する情報、例えばその「賞味期限」日付を容易に決定することができる。この方法を用いて、生鮮食料品の効率的な在庫管理を実現することができる。また、タグ式システムを、品目を検索するためだけでなく、品目を検索してから、その品目に関する情報を更新するために使用するように、システムを構成することもできる。802.11などのメッセージングシステムを使用して、高度に複雑なメッセージをタグに送信することができる。この技法を用いると、必要な品目を容易に検索することができる。
【0360】
他の使用例は、病院環境における、例えば患者の血圧またはECG(ならびに患者の位置)を監視し、それを基地局に中継する場合である。
上記のシステムにおいては、情報の取得に関して時間の制約がある場合に、特に利点がある。本明細書に記載の方法は、一般に時間および位置がクリティカルな状況に対して適用可能である。いくつかの例においては、メッセージングモード(例えばDSRCモード)と場所決定モードを高速に切り換えることが可能であり、情報を送信エレメントと受信エレメントの間で、必要なら中断できる情報のパケットで送信することができるように、システムを構成することができる。
【0361】
次に、図29を参照して、制御ユニット300(または処理ユニットと等価物)によって使用される検出アルゴリズムについて説明する。
検出アルゴリズム
図29は、上述の位置決めシステムで使用するための検出アルゴリズム600を構成するコンポーネントの、階層リストである。検出アルゴリズムは、共通/中核機能602、検出アルゴリズム本体604、および較正機能606、を含んでおり、すべて「メインループ」機能608の下にグループ化されている。
【0362】
次に、検出アルゴリズムの各要素について説明する。
機能608は、初期設定の、永続的に実行するタイプの、プログラムのメインループである。
【0363】
共通/中核機能602は、以下のとおりである。
機能610は、特定のレーダタイプを指定する1つの引数をとり、レーダに対する基本的なシステムパラメータをすべて含むレコードを返す。
【0364】
機能612は、xの関数であるyのデータに、二次方程式を適合させる。データxおよびyが±1の平方に正規化されて、広範囲の入力にわたる良好な数値的挙動が確保される。
【0365】
機能614は、予想される生データパルス包絡線(一般に、約10サンプル)の近似値を返す。この近似の生データパルス包絡線は、タグパルスの存在を検出するために整合フィルタによって使用される、整合フィルタの原型である。
【0366】
機能616は、レーダからの最新の走査を返す。各走査は、(一般に)N行×4列のマトリックスであり、最上部から走査が開始される。この機能は、レーダ走査の際に直流バイアスがあればそれを検出し除去する前処理ステップを含む。
【0367】
機能616は事実上、検出アルゴリズムと入出力インターフェース320または受信機側処理ユニット260(図示せず)のデータ取得システムとの間のインターフェースである。
【0368】
主検出アルゴリズムのコンポーネントは、以下のとおりである。
上位の機能618は、機能616によって提供される生レーダ掃引を入力としてとり、検出アルゴリズムの結果全体を含む実装固有の結果を返す。この機能は、中核の検出アルゴリズム機能をカプセル化し、後述の特定の検出機能の多くを呼び出す。
【0369】
機能620は、機能616によって提供される生レーダ掃引をその入力としてとる。この機能は、生レーダ掃引をとり、データを訂正しローパスフィルタリングすることによって、計算上効率的な検出機能を適用する。この機能は、レーダ掃引の左手側における最大ピークを検出し、次いでレーダ掃引の右手側における最大ピークを検出する。この技法は、送信クロックと受信クロックの間の最大誤り(例えば、百万分率で)の知識が与えられた場合、当該の2つのピークを選び出すことができる。230nsの1回の走査および83nsの送信パルス繰返し間隔の間、2つまたは3つのピークが検出される。
【0370】
機能622は、供給された記述子に基づいてxで多項式を評価する。機能612と同様に、(y,x)の値は、±1の平方(y’,x’)に正規化される。この正規化は、広範囲の入力にわたる良好な数値的挙動を実現するために行われるが、この正規化ステップは必須ではない。機能622は、曲線の当てはめ動作の際に使用することができる。
【0371】
機能624は、レーダデータに対する一般的な任意選択のいくつかの拡張を実行する。まず、レーダデータが、発振器サンプルの復調テーブルを使用して復調される。次に、このベースバンド化データが、パルス複製に対して整合フィルタリングされる。この機能の効果は、信号の信号対雑音比(SN比)が向上し、その結果、後続の検出アルゴリズムの精度が向上することである。
【0372】
機能626は、すべてのサンプル対に対してI+Qを計算することにより、フィルタリングされたレーダデータから正規化された検出機能を生成する。ここで、IおよびQは、同相サンプル対および直交サンプル対である。基本的にこれにより、後続の段階を動作させることのできる、信号の振幅の測定値が得られる。
【0373】
機能628は、機能620(上記参照)から得られた粗いピーク推定値を使用して、当該サブウィンドウ内の正規化された検出データ中の直接パスのピーク検出に焦点を合わせる。この機能は、マルチパスが存在しリングダウンが長い際に、最も可能性の高い直接パスの帰路を識別する。この機能は、サブウィンドウ内で最大値を検索しようと試み、サブウィンドウ内で右から左に動作し、しきい値を超えたと見られる最新のピーク特性を記録する。こうして、最も可能性の高い直接パスの候補が選択される。
【0374】
機能630は、アレイの幾何形状および波長情報を使用して、受信信号の到着の方位角方向(Az)を推定する。到着の仰角方向(Ez)も同様に推定される。出力は、ラジアンで得られる。この機能は基本的に、1つの受信ユニットに対する角位置情報を提供し、次いでその角位置情報は、該当する物体の変位(すなわち、2次元または3次元での場所)を決定するために、他の位置情報と組み合わされる。
【0375】
上述の方法を使用して、機能632は、好ましくは推定値を修正するために、異なる受信ユニットにおいて受信された信号の相対タイミングの知識およびその他の関連情報を使用して、角位置情報を三角測量する。
【0376】
好ましい実施形態の諸変形形態においては、機能632は、他の出力を生成し、例えば、推定値の不確実性の指示、あるいは物体の速度および/または(以前の位置測定値など追加の関連位置情報が与えられた場合)予想される将来位置の測定を提供する。他の変形形態においては、場所出力(本明細書では変位と呼ぶ)を2次元で、あるいは極座標で行うことができる。
【0377】
機能634は、チャネルの分離、信号の波長、およびチャネルの位相差を考慮して、チャネル対に対して到着の可能性のある方向を計算する。
合計2N+1の可能性のある遅延が返され、その場合、アークサイン(遅延)により、到着の方向がラジアンで得られる。遅延+1は、波面が受信機対、受信機Aおよび受信機Bの軸に沿って、例えばAからBに伝播することを表す。遅延0は、波面がこの軸に垂直に伝播することを表し、遅延−1は、波面がこの軸に沿ってBからAに伝播することを表す。「遅延領域」処理を使用して、角度計算を行う。
【0378】
機能640は較正機能であり、その入力として、便宜上、デインターリーブされた複素数の形で基本的にレーダ走査データを含むレコードをとり、(サンプル間位相差の形で)レーダデータサンプルセットの周波数の推定値を表す複素数を返す。
【0379】
要約すると、本明細書に記載の実施形態は、逆角度検出/位置決めシステム、タグの符号化、整合フィルタ、能動/受動の組合せ(好ましくは、その場合にレーダが位置決めシステムと組み合わされる)、ロックされていないレーダ中の検索、受信機の同期化/較正、UWBシステムにおけるPRF復調によるデータ送信、例えば通信目的の無線リンクタグ、ならびにメッセージングおよび位置決めの組合せを含んでいる。
【0380】
基線に対するUWB送信機の角度を測定することのできるシステムが提供され、この場合の基線は、2つの受信エレメントの間に引いた線である。符号化されたパルス列を送信してチャネル化を行うこともできるが、オフセットPRF周波数を使用するのが好ましい。
【0381】
また、受信エレメントとインパルス無線の間で既知の遅延を指定することができるが、この遅延は(各受信エレメントからパルスを時間で分離できるようにし、したがって、システムが同じ検出器回路を使用できるようにするために)各受信エレメントごとに一義的に異なるが、システムは好ましくは、受信エレメントと無線受信機の間で同じ遅延を有する。システムは、受信パルスを時間で分離する必要はない。
【0382】
他の例として、角度を測定するときに、較正技法を指定することができる。このケースでは、受信エレメントとインパルス無線の間で遅延は同様である。2つのインパルス無線が必要になり、角度を決定するために共通クロックおよびバックプレーンに接続されることがある。しかし、好ましくは、受信エレメントと検出器の間で同様の遅延が存在する。同じ受信機ユニットが、角度を決定することができる。また、同じ受信エレメントおよび検出器が同じ基板上に配置され、その場合、受信エレメントの分離がUWB波長の小さい倍数である。したがって、共通クロックが必要になることがあるが、角度だけを決定するときは、バックプレーンを必要としない。
【0383】
また、システムをレーダとして使用することができ、物体上にUWB送信機が存在しないケースにおいて、受動物体の位置を、単に1つの受信機ユニットを使用して、検出し、かつ/または追跡することができる。
【0384】
以上、本発明を純粋に例示として説明してきたが、本発明の範囲内で細部を改変することもできることが理解されよう。
本明細書、ならびに(適切な場合には)特許請求の範囲および図面で開示された各特徴は、独立して、または任意の適切な組合せで、提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機を組み込んだ物体に関する位置情報を決定するための機器であって、
単一のハウジング内あるいは共通の基板上にある複数の受信エレメントを含み、前記組み込まれた送信機によって関連する送信特性繰返し周波数で送信された信号パルスを受信するための手段と、
前記受信エレメントで受信された信号パルスを検出するための検出手段であって、受信機走査がトリガされる関連するトリガ周波数を有し、前記特性繰返し周波数が前記受信機トリガ周波数と実質的に同一又は、前記受信機トリガ周波数の実質的に整数倍であるものと、
前記受信エレメントごとに、その受信エレメントで受信される各信号パルスにプロセスを適用し、その結果、その受信エレメントで前記信号パルスが受信されたそれぞれのタイミングを得るように動作可能な処理手段と、を含み、
前記処理手段はさらに、こうして得られた前記タイミングを比較し、その結果、前記物体に関する角位置情報を取得するように動作可能な機器。
【請求項2】
前記処理手段によって適用される前記プロセスが、前記信号の特性又は、予想される特性に依存する、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記処理手段によって適用される前記プロセスが、前記物体の特性又は予想される特性に依存しかつ、好ましくは前記受信手段からの前記物体の距離、または予想される距離に依存する、前記請求項のいずれかに記載の機器。
【請求項4】
複数の可能なプロセスから、前記処理手段によって適用される前記プロセスを選択するように適合された選択手段をさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の機器。
【請求項5】
前記プロセスが整合フィルタを含む、前記請求項のいずれかに記載の機器。
【請求項6】
前記プロセスが、複数の異なる時間オフセットでフィルタを前記出力信号に適用すること、および前記フィルタからの前記出力に応じて時間オフセットを選択することを含む、請求項5に記載の機器。
【請求項7】
前記処理手段の動作が、複数の前記受信エレメントによって受信された信号の間の間隔を検出するように整合フィルタを適用し、それによって前記物体の角位置を決定することを含む、前記請求項のいずれかに記載の機器。
【請求項8】
前記物体に向けてプローブ信号を送信するための手段をさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の機器。
【請求項9】
プローブ信号を送信するための前記手段が、前記物体と関連した送信機によって送信される信号と異なる信号を送信するように適合される、請求項8に記載の機器。
【請求項10】
前記プローブ信号を符号化し、それによってプローブ信号を前記物体から受信された信号と区別することができる手段をさらに含む、請求項8または9に記載の機器。
【請求項11】
前記物体と関連した前記送信機によって送信される前記信号が、超広帯域(UWB)信号である、前記請求項のいずれかに記載の機器。
【請求項12】
前記送信された信号が特定のパルス繰返し周波数で送信され、前記機器が当該周波数のパルスを受信するための同調手段を含む、請求項1乃至10に記載の機器。
【請求項13】
前記周波数が複数の周波数分離を有する多重周波数からなる、請求項12に記載の機器。
【請求項14】
前記トリガ周波数に従って、検出手段をトリガする手段を更に含み、当該トリガ手段が、前記送信された信号の発生と独立である、請求項1乃至10、又は12乃至13に記載の機器。
【請求項15】
トリガ制御信号を受信する手段を更に含み、前記トリガ手段が、前記受信されたトリガ制御信号に従って、前記検出手段をトリガする、請求項14に記載の機器。
【請求項16】
前記トリガ手段が、前記制御信号に基づいて前記トリガ周波数で前記検出手段をトリガする、請求項15に記載の機器。
【請求項17】
前記トリガ周波数が、前記特性繰返し周波数と異なる、請求項14乃至16に記載の機器。
【請求項18】
前記整数倍数(n)が1より大きい、好ましくは2,3,4又は5より大きい、請求項1に記載の機器。
【請求項19】
更に前記処理手段と通信するための通信インターフェースを含む、請求項1乃至10又は12乃至18に記載の機器。
【請求項20】
前記通信インターフェースが前記機器で受信された信号を表わす複数の信号を出力するように適合される、請求項19に記載の機器。
【請求項21】
前記通信手段が前記処理手段から制御信号を受信するように適合される、請求項19又は20に記載の機器。
【請求項22】
前記処理手段が更なる角位置に関連して前記検出手段の出力を処理するように適合され、その結果、前記物体に関する送信機の変位を決定する、請求項1乃至10又は12乃至19に記載の機器。
【請求項23】
前記処理手段が前記検出手段から受信された複数の信号間のタイミング差を計算し、前記複数の信号の少なくとも2つの間のタイミング差に従属する角位置を決定するように適合される、請求項22に記載の機器。
【請求項24】
前記受信手段が特性パルス周波数を有するパルス列を受信するように適合され、前記検出手段が前記受信されたパルス列を表わす信号を出力するように適合される、請求項1乃至10又は12乃至23に記載の機器。
【請求項25】
前記検出手段が前記受信されたパルスの波形を表わす信号を出力するように適合される、請求項24に記載の機器。
【請求項26】
前記送信機を含む、前記請求項のいずれかに記載の機器。
【請求項27】
送信機を組み込んだ物体に関する位置情報を決定する方法であって、
単一のハウジング内あるいは共通の基板上にある複数の受信エレメントを含む受信手段で、前記組み込まれた送信機によって関連する特性繰返し周波数で送信された信号パルスを受信するステップと、
前記受信エレメントで受信された信号を、受信機走査がトリガされる関連するトリガ周波数に従って検出するステップであって、前記特性繰返し周波数が前記受信機トリガ周波数と実質的に同一又は、前記受信機トリガ周波数の実質的に整数倍であるものと、
前記受信エレメントごとに、その受信エレメントで受信される前記信号にプロセスを適用し、その結果、その受信エレメントで前記信号が受信されたそれぞれのタイミングを取得し、更にこうして得られた前記タイミングを比較し、その結果、前記物体に関する角位置情報を取得するステップと、を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−108141(P2012−108141A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−740(P2012−740)
【出願日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【分割の表示】特願2006−538922(P2006−538922)の分割
【原出願日】平成16年11月3日(2004.11.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.イーサネット
3.JAVA
4.ZIGBEE
【出願人】(500292482)ケンブリッジ コンサルタンツ リミテッド (5)
【Fターム(参考)】