説明

位置推定方法及び位置推定システム並びに無線通信端末

【課題】位置推定を行う範囲、リファレンス端末数の増加に伴い、通信量が増加する問題を軽減し、同時に高精度な位置推定を可能とする位置推定システムを得る。
【解決手段】無線信号から位置推定に必要な情報を取得し、少なくとも、取得した位置推定に必要な情報と、リファレンス端末20の位置と、複数の無線機間の距離とに基づき複数の無線機それぞれの推定位置を求め、複数の無線機それぞれの推定位置に基づき、ターゲット端末10の位置を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信した無線信号を基に無線端末の位置を推定する位置推定システムに関し、特に、高精度な位置推定に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の位置推定システムは、例えば、「…前記基地局は、前記無線通信端末から送信される無線信号を各々受信し、受信した信号の受信信号強度を測定して、前記情報サーバに送信し、前記情報サーバは、前記基地局から前記受信信号強度を受信し、前記受信信号強度を用いて、各受信信号強度に対応する前記無線通信端末の存在し得る範囲を求め、各範囲の重なりから前記無線通信端末の存在位置を検出する…」ようなものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、例えば、「位置が既知の装置(112−118、134−138、224−228)と位置が未知の装置(120−130,222)の間で送信する信号と、一組の位置が未知の装置(120−130,222)間と送信される信号とを測定し、複数の第一部分式と予測測定信号が実測定信号と等しい時極値を持つ複数の信号測定予測部分式とを有するグラフ関数に測定信号を入力し、グラフ関数を最適化することにより、複数の装置(112−130)の位置探索のためのシステム。」が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、例えば、ターゲット端末が信号を送信し、リファレンス端末はターゲット端末から信号を受信すると、受信信号強度を位置推定サーバへ送信する。位置推定サーバは各リファレンス端末から送られる受信信号強度を用いて、各ターゲット端末の最も確からしい位置を推定する。無線伝搬路環境は反射や回折の影響および、周辺の人間の移動などにより、ターゲット端末の移動が伴わない場合であっても変動する。無線伝搬環境を確率モデル化することによって、前述の問題を考慮した上で位置推定を行う方式が提案されている(例えば、非特許文献1〜4参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−112482号公報(請求項1)
【特許文献2】特表2005−507070号公報(要約)
【非特許文献1】柳原健太郎、他7名、「センサネットワークにおける受信信号電力を用いた最尤位置測定法」、技術報告、電子情報通信学会、IN2004-327、pp.409-414
【非特許文献2】柳原健太郎、他6名、「IEEE802.15.4を用いた室内位置推定実験」、技術報告、電子情報通信学会、SN2005-8、pp.33-38
【非特許文献3】柳原健太郎、他6名、「センサネットワークにおける位置推定データトラフィックの削減手法」、ソサイエティ大会講演論文集、電子情報通信学会、A-21-20
【非特許文献4】柳原健太郎、他6名、「IEEE802.15.4を用いた室内位置推定実験〜歩行者と受信感度のばらつきが及ぼす影響〜」、ソサイエティ大会講演論文集、電子情報通信学会、A-21-22
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の位置推定システムでは、位置推定の対象となる面積が増加すると、リファレンス端末の数を増加させる必要がある。リファレンス端末を多数設置するとシステムのコスト増大を招く。さらに設置環境によっては物理的に大量の端末設置が不可能な状況も想定される。また、位置推定精度を上げるためには、リファレンス端末を高密度に設置し、多くの情報を位置推定装置に集める必要があるが、リファレンス端末が増加すると位置推定のための通信量が増加する。位置推定のための通信量の増加は、通信の品質を劣化させる可能性がある。したがって、位置推定を行う範囲、リファレンス端末数の増加に伴い、通信量が増加する問題を軽減し、同時に高精度な位置推定を可能とする位置推定システムが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る位置推定方法は、複数の無線機を有し、各無線機間の距離が既知であるターゲット端末と、既知の位置に複数配置されるリファレンス端末とが無線信号を授受し、無線信号とリファレンス端末の位置とに基づきターゲット端末の位置を推定する位置推定方法であって、無線信号から位置推定に必要な情報を取得し、少なくとも、取得した位置推定に必要な情報と、リファレンス端末の位置と、複数の無線機間の距離とに基づき複数の無線機それぞれの推定位置を求め、複数の無線機それぞれの推定位置に基づき、ターゲット端末の位置を推定するものである。
【0008】
また、複数の無線機を有し、各無線機間の距離が既知であるターゲット端末と、既知の位置に複数配置され、ターゲット端末と無線信号を授受するリファレンス端末と、無線信号とリファレンス端末の位置と各無線機間の距離とに基づきターゲット端末の位置を推定する位置推定装置とを備え、位置推定装置は、無線信号から位置推定に必要な情報を取得し、少なくとも、取得した位置推定に必要な情報と、リファレンス端末の位置と、複数の無線機間の距離とに基づき複数の無線機それぞれの推定位置を求め、複数の無線機それぞれの推定位置に基づき、ターゲット端末の位置を推定するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、無線信号から位置推定に必要な情報を取得し、少なくとも、取得した位置推定に必要な情報と、リファレンス端末の位置と、複数の無線機間の距離とに基づき複数の無線機それぞれの推定位置を求め、複数の無線機それぞれの推定位置に基づき、ターゲット端末の位置を推定することにより、リファレンス端末を増加させることなく、ターゲット端末の推定位置の精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1における位置推定システムの構成を示す図である。図1において、位置推定システムは、ターゲット端末10と、複数のリファレンス端末20により構成される。尚、図1に示す点線は送信相手を特定せず、周辺の全端末に対する送信(ブロードキャスト)を示す。リファレンス端末20は、予め位置が分かっている端末で、位置推定要求信号を送信する。ターゲット端末10は、位置推定の対象となる端末で、リファレンス端末20が送信した位置推定要求信号の受信電力を測定し、当該ターゲット端末10の位置を推定する。
【0011】
図2は本発明の実施の形態1におけるリファレンス端末の構成を示す図である。図2において、リファレンス端末20は、アンテナ201、送信回路202、送信データ生成部203により構成されている。アンテナ201は、無線信号を送信するためのアンテナである。送信データ生成部203は、当該リファレンス端末固有の識別符号を含めた位置推定要求信号を生成する。送信回路202は、送信データ生成部203で生成された位置推定要求信号を無線信号に変換しアンテナ201へ出力する。
【0012】
図3は本発明の実施の形態1におけるターゲット端末の構成を示す図である。図3において、ターゲット端末10は、アンテナ101、受信回路102、受信データ処理部103により構成される無線機である複数の受信機104と、データ集約部105と、位置推定装置である位置推定処理部106により構成されている。アンテナ101は、無線信号を受信するためのアンテナである。受信回路102は、アンテナ101により受信された無線信号が入力され、無線信号を処理しデジタル情報に変換し、受信データとして受信データ処理部103に出力する。また、受信回路102は、入力された無線信号の受信電力値S1を測定し、測定した受信電力値S1の情報を、位置推定に必要な情報として、受信データ処理部103に出力する。受信データ処理部103は、受信回路102より入力された受信データを処理し、受信データがリファレンス端末20から送られた位置推定要求信号の場合に、位置推定要求信号に含まれる情報及び、受信回路102により測定された受信電力値S1の情報並びに、当該受信機固有の識別符号を含めた情報をデータ集約部105に出力する。データ集約部105は、複数の受信機104から入力された情報を収集し、位置推定処理部106に出力する。位置推定処理部106は、データ集約部105から入力された複数の情報に基づき、後述する動作により、当該ターゲット端末10の位置を推定する。尚、各無線機間の距離である各受信機104のアンテナ101間の位置関係は既知であり、例えば、ターゲット端末10の製造時に得られる各アンテナ101間の距離を用いる。このように構成された本実施の形態1の動作について図4により説明する。
【0013】
図4は本発明の実施の形態1におけるターゲット端末の位置推定動作を示すフローチャートである。まず、各リファレンス端末20は、当該リファレンス端末20固有の識別符号(以下、送信端末符号という)を含めた位置推定要求信号を送信する。ターゲット端末10の各受信機104は、各リファレンス端末20から送信された位置推定要求信号を受信し、受信した位置推定要求信号の受信電力値S1を計測し、受信電力値S1の情報及び、送信端末符号の情報並びに、当該受信機の識別符号の情報をデータ集約部105へ出力する(S1)。データ集約部105は、複数の受信機104から入力された情報を収集し、位置推定処理部106へ出力する。位置推定処理部106は、データ集約部105から入力された情報に基づき、受信機104のアンテナ101の位置を当該受信機104の推定位置とする第1の推定位置を求める第1推定段階を実行する(S2)。
【0014】
第1推定段階は、当該受信機104が受信した位置推定要求信号の受信電力値S1の情報及び送信端末符号並びにリファレンス端末20の位置とに基づき、各受信機104のアンテナ101の推定位置を求める。推定位置は、例えば、各リファレンス端末20と当該受信機104間で授受された情報とリファレンス端末20の位置から、当該受信機104のアンテナ101が存在すると考えられる各地点における存在確率を計算する。次に最尤推定法等の手法を用いて、当該アンテナ101の存在確率が最も高い点を探索し、該当点を当該アンテナ101の推定位置とする。また例えば、受信電力値S1と距離との関係を示すテーブルを参照し、予め位置が分かっている複数のリファレンス端末20と当該受信機104のアンテナ101との距離を得ることにより推定位置を求める。尚、推定位置の取得方法はこれに限らず、他の方法を用いて推定位置を求めても良い。上記、第1推定段階(S2)を全ての受信機104のアンテナ101に対して実行する(S3)。
【0015】
次に、上記第1推定段階(S2)で求めた、各受信機104の第1の推定位置と、各アンテナ101間のそれぞれの位置関係とに基づき、受信機104のアンテナ101の位置を当該受信機104の推定位置とする第2の推定位置を求める第2推定段階を実行する。まず、位置推定の対象とする任意のアンテナ101を選択する(S4)。ここで選択したアンテナ101以外の各アンテナ101は、上述の第1の推定位置に存在すると仮定する。次に、選択したアンテナ101に対し第2推定段階(S5)を実行する。
【0016】
第2推定段階は、各リファレンス端末20と当該受信機104で授受された情報とリファレンス端末20の位置及び、当該ターゲット端末10の他の受信機104のアンテナ101の第1の推定位置並びに、各アンテナ101間の距離情報から、当該受信機104のアンテナ101が存在する確率が最も高い点を探索し、該当点を当該受信機104の推定位置とする。推定位置は、例えば、(1)中心座標を当該ターゲット端末10の他の受信機104の推定位置とする。(2)半径を当該受信機104と当該ターゲット端末10の他の受信機104との距離とした円を描く。(3)次に円周上の各点における当該受信機104の存在確率を求め、確率の最も高い点を当該受信機104の推定位置とする。ただし、当該ターゲット端末10の他の受信機104の推定位置は誤差を含んでおり、演算が収束しなくなる可能性がある。この場合、確率の最も高い点を求める範囲を円周上ではなく、半径に幅を持たせたドーナツ状の領域上を推定位置としても良い。なお、推定位置の取得方法はこれに限らず、他の方法を用いて推定位置を求めても良い。このようにして求められた第2の推定位置は、第1推定段階で求めた第1の推定位置と比較して、受信機104間の情報を利用しているため、推定誤差が少なくなる。以上の動作を全てのターゲット端末10の全ての受信機104に対して繰り返し実行する(S6)。
【0017】
第2推定段階の実行によって、受信機104の推定位置は第1の推定位置から第2の推定位置に変更される。受信機104の推定位置を他の受信機104の位置推定に用いているため、受信機104の推定位置の変更は、他の受信機104の位置推定に影響を与える。そこで、受信機104の推定位置が変更された場合には、他の受信機104の位置推定を再度行う。即ち、第2の推定位置を第1の推定位置として、当該受信機104以外の他の全受信機104に関して、第2推定段階を繰り返し実行する(S4〜S7)。第2推定段階の繰り返しを続けるか否かは全ての受信機104に関して、位置推定の結果が収束した場合、もしくは計算時間等の制約によって判断する(S7)。
【0018】
尚、第2推定段階を繰り返す過程(S4〜S7)で、受信機104の位置関係によっては推定位置の更新が互いに影響を及ぼしあうことで、位置推定の結果が収束しなくなる可能性がある。例えば、第2推定段階を繰り返し行うと、2つの受信機が、2つの推定位置を交互に推定し、位置推定が収束しない可能性がある。
【0019】
従って、位置推定処理部106は、推定位置を更新する場合に得られた推定位置と過去の推定位置とを比較し、状況に応じて推定位置を補正する機能を持たせる。例えば、更新後の推定位置と更新前の推定位置が大きく異なる場合には、更新前の推定位置と更新後の推定位置を結ぶ線分上の位置を更新後の推定位置とする。また例えば、位置推定処理部106で過去の推定位置を記録し、更新後の推定位置が過去の推定位置と同一である場合には、処理を中止する。
【0020】
尚、同一の信号を複数の受信機104が同時に受信する性質を用いて、各受信機104によって得られた情報の差異をデータ集約部105において利用しても良い。例えば、得られた情報の差異が所定の規定値を超えた場合に受信電力値S1の小さいデータの信頼性が低いと判断してデータを破棄しても良い。
【0021】
尚、ターゲット端末10の位置推定処理部106において、位置推定を行う際に、過去に得られた情報を合わせて利用することも可能である。即ち、受信データ処理部103、位置推定処理部106に時刻を計測する機能を付加することによって、データの取得時刻を保持する機能を付加し、位置推定処理部106での位置推定において、過去のデータを利用する際に、現在からの経過時間に応じて、過去の情報に対する重みを変化させる構成を取ることも可能である。過去のデータは現在のデータと比較して信頼性が低いと考えられるため、古いデータほど重みを下げる手法が考えられる。例えば、過去のデータに対しては、現在の時間との差分の逆数を重みとして乗算する手法などが考えられる。
【0022】
また、ターゲット端末10に、当該端末の移動を検出する機能を有する移動検出手段を付加することによって、過去の情報を利用する際に、当該端末の移動の有無及び移動量に応じて、過去の情報に対する重みを変化させる構成を取ることも可能である。即ち、ターゲット端末10の受信データ処理部103及び、位置推定処理部106に時刻を計測する機能を付加し、さらに、位置推定処理部106に端末の移動を検出する機能を有する移動検出手段を付加し、過去の情報を利用する際に、端末の移動の有無及び移動量、および現在からの経過時間に応じて、過去の情報に対する重みを変化させる構成を取ることも可能である。
【0023】
また、受信データ処理部103において、過去の情報等を保持し、得られた情報の信頼性を判断し、信頼性の低いデータをデータ集約部105へ通知しないことで、位置推定の精度の改善を行う構成を取ることも可能である。
【0024】
以上のように、ターゲット端末10に具備した複数の受信機104で受信した情報を、位置推定処理部106で他の受信機104の位置推定結果を相互に利用し、推定を繰り返し行うことで、リファレンス端末20の数が少ない状況であっても、より精度の高い位置推定を実現することができ、通信量の増加を軽減できる。
【0025】
また、ターゲット端末10における各受信機104の相対的な位置関係を固定しておくと、各受信機104の位置を推定した結果、ターゲット端末10の方向、回転を検出することが可能となる。具体的には移動体の左側と右側に受信機を設置する方法や、人間の向いている方向を検出するためにメガネ、ヘルメット、衣服などの左右に受信機を装着する方法などが考えられる。
【0026】
尚、本実施形態においては、ターゲット端末10に位置推定処理部106が内蔵されている場合を示したが、本発明はこれに限らず、位置推定処理部106をターゲット端末10から分離し、位置推定処理部106を別の位置推定装置として、データ集約部105と位置推定装置との間を何らかの通信手段でデータを送受する構成を取ることも可能である。このような構成にすることで、複数のターゲット端末10の位置推定を単一の位置推定装置で行うことが可能となる。
【0027】
尚、本実施形態においては、受信機104により受信電力値の計測及び受信機の識別符号の出力などを行ったが、本発明はこれに限らず、受信電力値の計測及び受信機の識別符号の出力などを、他の構成部を設けて行っても良い。
【0028】
尚、本実施の形態においては、複数のアンテナ101間の距離として既知の距離を用いたが、本発明はこれに限らず、複数のアンテナ101間の距離を、任意の距離として、即ち、実際の距離と異なる距離を用いても良い。これは位置推定を2次元で行う場合には、位置推定を実行する平面への写像上でのアンテナ間距離を用いることが必要となるためである。例えば、位置推定を2次元で行っている場合に、位置推定平面である複数のアンテナ101が位置推定を行う平面と鉛直となる直線上に設置されていればアンテナ間距離は計算上では0となる。従って、この場合はアンテナ間距離を0として位置推定を行う。このような位置推定を実行する平面上でのアンテナ間距離について図5により説明する。
【0029】
図5は本発明の実施の形態1における位置推定平面上でのアンテナ間距離を示す図である。図5は、ターゲット端末10−a及び10−bが、2本のアンテナ101をそれぞれ備え、位置推定を実行する平面である推定平面500上に配置された状態を示している。ターゲット端末10−a及び10−bのアンテナ間距離は、図5に示すように、いずれもDである。しかし、推定平面500への写像を取ると、アンテナ間距離は、ターゲット端末10−aの場合はDであるが、ターゲット端末10−bの場合は0となる。
【0030】
また、上述したターゲット端末10に、移動検出手段を付加して位置推定を行う場合において、アンテナ101が当該ターゲット端末10の移動方向と鉛直となる直線上に設置されている場合は、移動検出手段が検出する移動量は、各アンテナ101で同一と見なされる。したがってこの場合もアンテナ間距離を0として位置推定を行っても良い。
【0031】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、各受信機104のアンテナ101毎に位置推定を行ったが、本実施の形態2では、複数のアンテナ101のうち任意の1本を基準アンテナとし、他のアンテナ101は基準アンテナからの相対位置に基づいて位置を推定する。尚、位置推定システムの構成及びターゲット端末10並びにリファレンス端末20の構成は上記実施の形態1と同様である。
【0032】
図6は本発明の実施の形態2におけるターゲット端末の位置推定動作を示すフローチャートである。ターゲット端末10の各受信機104は、各リファレンス端末20から送信された位置推定要求信号を受信し、受信した位置推定要求信号の受信電力値S1を計測し、受信電力値S1の情報及び、送信端末符号の情報並びに、当該受信機の識別符号の情報をデータ集約部105へ出力する(S11)。データ集約部105は、複数の受信機104から入力された情報を収集し、位置推定処理部106へ出力する。位置推定処理部106は、データ集約部105から入力された情報に基づき、受信機104の推定位置を求める推定演算を実行する(S2)。ここで、位置推定処理部106は、当該ターゲット端末10の持つ複数のアンテナ101のうち任意の1本を基準アンテナとし、他のアンテナ101は基準アンテナからの距離の情報を持つ。ターゲット端末10が3本以上のアンテナ101を持つ場合には、第1のアンテナと第2のアンテナを結ぶ直線と当該アンテナと第1のアンテナとを結ぶ直線とのなす角度の情報を合わせて持つ。このような情報により、基準アンテナ以外のアンテナ101の位置は、基準アンテナの位置と第1のアンテナと第2のアンテナとを結ぶ直線と、基準座標軸とのなす角度、即ち、端末の回転を示すパラメータで表すことができる。この表記形式を用いることにより、位置推定処理部106は、複数アンテナ101から得られた情報から位置を推定する際に繰り返し演算を行う必要なく位置推定が可能となる。例えば、2次元平面上での位置推定を例に挙げると、通常の推定では2次元平面上で位置推定関数値が最も高くなる点を推定位置としていたが、本実施形態では、第1のアンテナと第2のアンテナを結ぶ直線が、位置推定平面の基準線となす角度を含めた3次元空間内で位置推定関数値が最も高くなる点を求める。求めた結果はすべてのアンテナから得られた情報と制約条件を踏まえた上で、すべてのアンテナが最も存在する確率の高い位置を示している。
【0033】
次に、上述した基準アンテナからの相対位置の情報を用いた位置推定について説明する。図7は、本発明の実施の形態2における基準アンテナからの相対位置を示す図である。各受信機104の位置推定は、当該受信機104が受信した位置推定要求信号の受信電力値S1の情報及び送信端末符号、リファレンス端末20の位置、各アンテナ101間の距離、並びにアンテナ101が3本以上存在する場合には、各アンテナがなす角度(3本目以上に関しては1本目、2本目を結ぶ直線と当該アンテナと1本目を結ぶ直線がなす角度)とに基づき、各受信機104のアンテナ101の推定位置を求める。以下に推定方法の例を示す。以下、アンテナ101の1本目を基準アンテナ、2本目以降を付加アンテナと記載する。また、i本目のアンテナと基準アンテナ間の距離をDi、上記各アンテナがなす角度をθi(i>2)とする。尚、θ2=0である。
図7において、例えば、基準アンテナの推定位置を(x,y)とすると、2本目以降の推定位置は、(x+Disin(α+θi),y+Dicos(α+θi))となる。αは1本目と2本目を結ぶ直線が位置推定座標におけるx軸となす角度、即ち、ターゲット端末10全体の回転を示している。即ち、x,y,αを決定すると、すべてのアンテナ101の位置を決定することができる。
基準アンテナの推定位置x,yを仮定し、回転角αを仮定すると、全アンテナ101の位置を仮定することができる。このとき、各リファレンス端末20と各受信機104間で授受された情報と、リファレンス端末20の位置から、仮定したx,y,αにおけるターゲット端末10の存在確率を計算することができる。
さらに最尤推定法などの手法を用いて、当該ターゲット端末10の存在確率が最も高い点(x,y,α)を探索し、当該点を当該ターゲット端末10の推定位置とする。
【0034】
以上のように、本実施の形態2では、上記実施の形態1の効果に加え、各受信機104の各アンテナ101間の位置に関する情報により全てのアンテナ101の位置を推定することができ、位置を推定する際に繰り返し演算を行う必要なく位置推定の算出時間が短縮できる。
【0035】
実施の形態3.
図8は本発明の実施の形態3における位置推定システムの構成を示す図である。図8において、本実施形態の位置推定システムは、ターゲット端末10、リファレンス端末20、位置推定装置30により構成されている。ターゲット端末10は、位置推定の対象である端末で、位置推定要求信号を送信する。リファレンス端末20は、予め位置が分かっている端末で、位置推定要求信号を受信すると、位置推定に必要な情報を位置推定情報信号として送信する。位置推定装置30は、集められた位置推定情報信号から各送信機114の位置を推定し、最終的に各ターゲット端末10の位置を推定する。尚、図中の点線は送信相手を特定せず、周辺の全端末に対する送信(ブロードキャスト)、実線は矢印が示す端末へ向けた送信(ユニキャスト)であることを示す。
【0036】
図9は本発明の実施の形態3におけるターゲット端末の構成を示す図である。図9において、ターゲット端末10は、アンテナ111、送信回路112、送信データ生成部113により構成される無線機である複数の送信機114と、送信管理部115により構成されている。送信管理部115は、各送信機114から送信される送信信号が干渉することを避けると共に、各リファレンス端末20での処理遅延などを考慮した上で、各送信機114に対して位置推定要求信号の送信命令を出力する。各送信機114の送信データ生成部113は、送信管理部115からの指示を受けるとターゲット端末固有の識別符号及び、各送信機114に固有の識別符号を含む位置推定要求信号を生成し、送信回路112へ出力する。送信回路112は、送信データ生成部113で生成された位置推定要求信号を無線信号に変換しアンテナ111へ出力する。アンテナ111は、入力された無線信号を送信する。
【0037】
図10は本発明の実施の形態3におけるリファレンス端末の構成を示す図である。図10において、リファレンス端末20は、アンテナ211、送信回路212、送信データ生成部213、受信回路214、受信データ処理部215により構成されている。アンテナ211、送信回路212、受信回路214は、上述の実施の形態1におけるアンテナ201、送信回路202、受信回路102と同一の機能を持つ。送信データ生成部213は、受信データ処理部215により入力された、位置推定に必要な情報である受信電力値S1を位置推定装置30に送信するための位置推定情報信号を生成する。受信データ処理部215は、受信回路214から入力された受信データを処理し、受信データがターゲット端末10から送られてきた位置推定要求信号であった場合に、送信データ生成部213に対して、受信回路214により測定された受信電力値S1の情報及び位置推定要求信号に含まれるターゲット端末固有の識別符号及び、各送信機114に固有の識別符号を含めた送信データの生成を指示する。
【0038】
このように構成された本実施の形態3の動作について説明する。まず、ターゲット端末10の各送信機114は、当該ターゲット端末10固有の識別符号及び各送信機114固有の識別符号を含めた位置推定要求信号を各送信機114のアンテナ111より周辺の全端末に送信する。位置推定要求信号を受信したリファレンス端末20の受信回路214は、得られた情報を受信データ処理部215に入力し、受信データ処理部215は、受信した信号が位置推定に用いることが適切であると判断した場合には送信データ生成部213に対して位置推定情報信号の生成が指示する。位置推定情報信号には、受信した位置推定要求信号に含まれるターゲット端末10の識別符号及び、送信機114の識別符号及び、受信した位置推定要求信号の受信電力値S1並びに、当該リファレンス端末20固有の識別符号を含む。送信回路212は、位置推定情報信号を位置推定装置30へ送信する。
位置推定装置30は、リファレンス端末20から受信した位置推定情報信号に含まれるターゲット端末10の識別符号と送信機114の固有の識別符号毎にデータを集約し、上述した実施の形態1と同様の動作により、各ターゲット端末10の各送信機114の位置を推定する。尚、本実施形態では、ターゲット端末10の推定結果は他のターゲット端末10に影響を及ぼさないため、位置推定装置30における処理は単純な並列処理である。
【0039】
本実施形態においても、上述した実施の形態1の場合と同様に、反復計算の過程で、送信機の位置関係によっては推定位置の更新が互いに影響を及ぼしあうことで、位置推定の結果が収束しなくなる可能性がある。従って位置推定装置30は、推定位置を更新する場合に得られた推定位置と過去の推定位置を比較し、状況に応じて推定位置を補正する機能を持たせる。
【0040】
また、上記実施の形態1と同様に、ターゲット端末10に複数のアンテナ111を装備し、各送信機114の位置を推定することによって、端末の方向、回転を検出することが可能となる。方向、回転を検出するためには過去の推定結果との比較を行う必要がある。
【0041】
さらに、本実施の形態では同じターゲット端末10の異なる送信機114、即ち、ほぼ同一位置から複数の信号が送信される。リファレンス端末20の受信データ処理部215において、これらの複数の信号から得られる情報の差異を求め、利用しても良い。例えば、得られた情報の差異が所定の規定値を超えた場合に受信電力値S1の小さいデータの信頼性が低いと判断してデータを破棄しても良い。
【0042】
尚、位置推定装置30において、位置推定を行う際に、過去に得られた情報を合わせて利用する形態を持つことも可能である。即ち、受信データ処理部215、位置推定装置30に時刻を計測する機能を付加することによって、データの取得時刻を保持する機能を付加し、位置推定装置30での位置推定において、過去のデータを利用する際に、現在からの経過時間に応じて、過去の情報に対する重みを変化させる構成を取ることも可能である。
【0043】
また、ターゲット端末10の送信データ生成部113若しくは、送信管理部115に、当該端末の移動を検出する機能を有する移動検出手段を付加し、検出した情報を位置推定要求信号に含めて送信し、位置推定情報信号にも端末の移動情報を含めることによって、過去の情報を利用する際に、端末の移動の有無及び移動量に応じて、過去の情報に対する重みを変化させる構成を取ることも可能である。即ち、受信データ処理部215及び、位置推定装置30に時刻を計測する機能を付加し、送信データ生成部113若しくは、送信管理部115に、端末の移動を検出する機能を有する移動検出手段を付加し、過去の情報を利用する際に、端末の移動の有無及び移動量、および現在からの経過時間に応じて、過去の情報に対する重みを変化させる構成を取ることも可能である。
【0044】
また、受信データ処理部215において、過去の情報等を保持し、得られた情報の信頼性を判断し、信頼性の低い情報を位置推定装置30へ通知しないことで、位置推定の精度の改善を行う構成を取ることも可能である。
【0045】
尚、本実施の形態では、ターゲット端末10の各アンテナ111から送信される信号は同時に送信されないため、各アンテナ間の距離の信頼性は低下する。従って、本実施の形態を用いる場合には、計算に用いるアンテナ間の距離に幅を持たせて推定位置の計算を行っても良い。
【0046】
また、計算に用いるアンテナ間の距離は、実際のアンテナ間の距離と無関係に決定しても良い。即ち、アンテナ間の距離として任意の距離を用いても良い。これは位置推定を2次元で行う場合には、推定に用いる平面への写像上でのアンテナ間距離を用いることが必要となるためである。例えば、位置推定を2次元で行っている場合、複数のアンテナが、位置推定を行う平面と鉛直をなす直線上に設置されている場合には、アンテナ間の距離は計算上では0となる。従ってこの場合は、アンテナ間の距離を0として推定位置の計算を行っても良い。
【0047】
以上のように、本実施の形態3では、上記実施の形態1の効果に加え、位置推定装置30を設けた構成にすることにより、複数のターゲット端末10の推定位置を単一の位置推定装置30で行うことができる。また、ターゲット端末10に位置推定装置を設ける必要が無くターゲット端末10の回路規模を小さくすることができる。また、実施の形態1と同様に、ターゲット端末10内での送信機114の設置位置から、ターゲット端末10の向きや回転を検出することが可能となる。
【0048】
尚、本実施形態においては、送信機114により位置推定要求信号の送信命令及び位置推定要求信号を生成などを行ったが、本発明はこれに限らず、位置推定要求信号の送信命令及び位置推定要求信号を生成などを、他の構成部を設けて行っても良い。
【0049】
実施の形態4.
上記実施の形態3では、ターゲット端末10の各送信機114毎にアンテナ111を設けたが、本実施の形態4では、単一の送信機に複数のアンテナを設け、送信信号を送出するアンテナを切替えることによりアンテナ111の位置を推定する。尚、位置推定システムの構成及びリファレンス端末20の構成は上記実施の形態3と同様である。
【0050】
図11は本発明の実施の形態4におけるターゲット端末の構成を示す図である。図11において、ターゲット端末10は、複数のアンテナ111と、無線部を構成する送信回路112、送信データ生成部113、送信管理部115及び、切替スイッチ116により複数の無線機が構成されている。アンテナ111及び、送信回路112は、上述した実施の形態3のターゲット端末10の構成と同一の機能を持つ。送信データ生成部113は、送信管理部115から指示を受けると、当該ターゲット端末10固有の識別符号及び、各アンテナ111に固有の識別符号を含む位置推定要求信号を生成し、送信回路112に出力する。同時に生成した信号に含めたアンテナ111の識別符号に該当するアンテナ111から送信信号が送信されるように切替スイッチ116を操作する。切替スイッチ116は、送信データ生成部113からの指示に従い、送信回路112が生成する送信信号を送信するアンテナ111を切り替える。送信管理部115は、各リファレンス端末20での処理遅延などを考慮し、各アンテナ111からの位置推定要求信号の送信を決定し、送信データ生成部113に送信命令を出力する。このような構成により、上述の実施の形態3と同様の動作によりターゲット端末10のアンテナ111の位置を推定する。
【0051】
以上のように、本実施の形態4では、上記実施の形態3の効果に加え、ターゲット端末10において、複数のアンテナ111を切り替えて用いることで、ターゲット端末10の構成を大幅に単純化することができ、ターゲット端末10の低コスト化を図り、さらに、回路構成の単純化に伴う長寿命化に大きく貢献することができる。
【0052】
実施の形態5.
図12は本発明の実施の形態5における位置推定システムの構成を示す図である。図12において、本実施の形態の位置推定システムは、ターゲット端末10、リファレンス端末20、位置推定装置30により構成されている。ターゲット端末10は、位置推定の対象である端末で、位置推定要求信号を送信する。また、他のターゲット端末10からの位置推定要求信号を受信すると、位置推定に必要な情報を位置推定情報信号として送信する。リファレンス端末20は、予め位置が分かっている端末で、位置推定要求信号を受信すると、位置推定に必要な情報を位置推定情報信号として送信する。位置推定装置30は、集められた位置推定情報信号から各送受信機124の位置を推定し、最終的に各ターゲット端末10の位置を推定する。尚、リファレンス端末20の構成及び位置推定装置30の構成は上記実施の形態3と同様である。尚、図中の点線は送信相手を特定せず、周辺の全端末に対する送信(ブロードキャスト)、実線は矢印が示す端末へ向けた送信(ユニキャスト)であることを示す。
【0053】
図13は本発明の実施の形態5におけるターゲット端末の構成を示す図である。図13のおいて、ターゲット端末10は、アンテナ121、受信回路122、受信データ処理部123により構成される無線機である複数の送受信機124と、送信管理部125と、切替スイッチ126と、送信回路127と、送信データ生成部128とにより構成されている。アンテナ121は、無線信号を送受信するためのアンテナである。受信回路122は、アンテナ121により受信された無線信号が入力され、無線信号を処理しデジタル情報に変換し、受信データとして受信データ処理部123に出力する。また、受信回路122は、入力された無線信号の受信電力値S1を測定し、測定した受信電力値S1の情報を、位置推定に必要な情報として受信データ処理部123に出力する。受信データ処理部123は、受信データを処理し、受信データが他のターゲット端末10から送られてきた位置推定要求信号であった場合に、送信管理部125に対して、測定した受信電力の送信データ作成を指示する。この際、位置推定要求信号を送信したターゲット端末10及び送受信機124の識別符号を合わせて通知する。送信管理部125は、各受信データ処理部123から入力された他のターゲット端末10から受信した位置推定要求信号により得られたデータを基に、位置推定情報信号を生成し、位置推定装置30への送信を行う。加えて、各送受信機124からの送信信号が干渉することを避け、また各ターゲット端末10及びリファレンス端末20での処理遅延などを考慮した上で、各送受信機124に対して位置推定要求信号の送信命令を出す。送信データ生成部128は、送信管理部125からの指示に従い、位置推定要求信号、位置推定情報信号を生成し、送信回路127へ出力する。同時に生成した信号に含めた送受信機124の識別符号に該当する送受信機124のアンテナ121から送信信号が送信されるように切替スイッチ126を操作する。切替スイッチ126は、送信データ生成部128からの指示に従い、送信回路127が生成する送信信号を送信するアンテナ111を切り替える。尚、各送受信機124間の位置関係は既知であり、例えば、ターゲット端末10の製造時に得られる各送受信機124間の距離を用いる。
【0054】
このように構成された本実施の形態5の動作について説明する。まず、ターゲット端末10が位置推定要求信号を周辺の全端末に向け送信する。位置推定要求信号には当該ターゲット端末10の識別符号及び、送信に用いた送受信機124の識別符号が含まれる。次に、位置推定要求信号を受信したリファレンス端末20又はターゲット端末10は、位置推定要求信号の受信電力値S1を計測し、位置推定情報信号を位置推定装置30へ送信する。位置推定情報信号には、受信した位置推定要求信号の受信電力値S1及び、受信した位置推定要求信号に含まれるターゲット端末10の識別符号と送受信機124の識別符号及び、位置推定情報信号を送信する当該リファレンス端末20又は当該ターゲット端末10の識別符号が含まれる。位置推定装置30は、位置推定情報信号を受信すると、位置推定要求信号を送信したターゲット端末10毎、さらに送信に用いた送受信機124毎に情報を保存し、各ターゲット端末10の位置推定に用いる。
【0055】
図14は本発明の実施の形態5における位置推定装置の位置推定動作を示すフローチャートである。図14において、位置推定装置30は、各ターゲット端末10又は各リファレンス端末20から位置推定情報信号を受信すると位置推定を開始する(S21)。位置推定の対象とする任意のターゲット端末10を選択し(S22)、選択したターゲット端末10の内、位置推定の対象とする送受信機124を選択する(S23)。次に、過去に受信し保存した位置推定情報信号の情報に基づき、当該送受信機124の第1の推定位置を求める第1推定段階(S24)を実行する。
【0056】
第1推定段階は、位置推定装置30が、各リファレンス端末20から受信した位置推定情報信号に含まれる、当該リファレンス端末20が受信した位置推定要求信号の受信電力値S1及び、受信した位置推定要求信号に含まれるターゲット端末10の識別符号と送受信機124の識別符号及び、位置推定情報信号を送信したリファレンス端末20の識別符号とリファレンス端末20の位置とに基づき、位置推定の対象とした送受信機124の推定位置を求める。推定位置の取得方法は、上記実施の形態1の動作と同様である。尚、推定位置の取得方法はこれに限らず、他の方法を用いて推定位置を求めても良い。上記、第1推定段階(S24)を全てのターゲット端末10の全ての送受信機124に対して実行する(S25,S26)。ここまでの手順ではリファレンス端末20から得られた位置推定情報信号のみを使って位置推定を行う。これはターゲット端末10間で授受された信号は、双方の位置が分からない状態では利用できないためである。
【0057】
次に、上記第1推定段階(S24)で求めた各送受信機124の第1の推定位置と、各送受信機124間のそれぞれの位置関係と、推定対象の当該ターゲット端末10以外の他のターゲット端末10から受信した位置推定要求信号の情報に基づき、送受信機124の第2の推定位置を求める第2推定段階を実行する。まず、位置推定の対象とする任意のターゲット端末10を選択し(S27)、選択したターゲット端末10の内、位置推定の対象とする送受信機124を選択する(S28)。ここで、選択した送受信機124以外の他の送受信機124に関しては、上述の第1の推定位置に存在すると仮定し、選択した送受信機124に対し第2推定段階(S29)を実行する。
【0058】
第2推定段階は、上述の第1推定段階での情報に加え、ターゲット端末10の製造時に得られる各送受信機124間の距離及び、当該ターゲット端末10が、他のターゲット端末10から位置推定要求信号を受信し、位置推定装置30に送信した位置推定情報信号から得られた、ターゲット端末10間の情報を利用して位置を推定する。推定位置の取得方法は、上述の第1推定段階の動作と同様である。尚、推定位置の取得方法はこれに限らず、他の方法を用いて推定位置を求めても良い。
【0059】
第2推定段階の実行によって、送受信機124の推定位置は第1の推定位置から第2の推定位置に変更される。送受信機124の推定位置を他の送受信機124の位置推定に用いているため、送受信機124の推定位置の変更は、他の送受信機124の位置推定に影響を与える。そこで、送受信機124の推定位置が変更された場合には、他の送受信機124の位置推定を再度行う。即ち、第2の推定位置を第1の推定位置として、当該送受信機124以外の他の全送受信機124に関して、第2推定段階を繰り返し実行する(S27〜S31)。第2推定段階の繰り返しを続けるか否かは、手順S30により当該ターゲット端末10に具備されたすべての送受信機124の推定位置が収束した場合、もしくは計算時間等の制約によって判断し、手順S31により位置推定を終了させるか否かは、すべてのターゲット端末10の推定位置が収束した場合、もしくは計算時間等の制約によって判断する。
【0060】
尚、位置推定装置30における位置推定においては、過去に得られた位置推定情報信号を利用することが可能である。例えば、現在の情報と過去の情報との差異によって、過去の情報を利用するか否かを判断する方式、過去と現在の情報の平均を取る方式などが考えられる。
【0061】
また、受信データ処理部123、位置推定装置30に時刻を計測する機能を付加することによって、データの取得時刻を保持する機能を付加し、位置推定装置30での位置推定において、過去のデータを利用する際に、現在からの経過時間に応じて、過去の情報に対する重みを変化させる構成を取ることも可能である。
【0062】
また、送信データ生成部128若しくは送信管理部125に、当該端末の移動を検出する機能を有する移動検出手段を付加し、位置推定要求信号に含めて送信し、位置推定情報信号にも端末の移動情報を含めることによって、過去の情報を利用する際に、端末の移動の有無及び移動量に応じて、過去の情報に対する重みを変化させる構成を取ることも可能である。
【0063】
また、受信データ処理部123、位置推定装置30に時刻を計測する機能を付加し、送信データ生成部128もしくは送信管理部125に、端末の移動を検出する機能を有する移動検出手段を付加し、過去の情報を利用する際に、端末の移動の有無及び移動量、および現在からの経過時間に応じて、過去の情報に対する重みを変化させる構成を取ることも可能である。
【0064】
また、受信データ処理部123において、過去の情報等を保持し、得られた情報と過去の情報を比較することで信頼性を判断し、信頼性の低い情報を位置推定装置30へ通知しないことで、位置推定制度の改善を行う構成を取ることも可能である。
【0065】
以上のように、本実施の形態5では、上記実施の形態1の効果に加え、各ターゲット端末10間の情報を用いることで、リファレンス端末20の数が少ない状況においても、より高い精度で位置推定を行うことできる。また、上記実施の形態1の場合は、位置推定に用いる送受信機の組み合わせは、リファレンス端末数×送受信機数であったが、本実施の形態5では、リファレンス端末数×送受信機数+周辺ターゲット端末数×送受信機数×送受信機数となり、1つのブロードキャストパケットを多くの送受信機間で授受することによって効率的に位置推定を行うことが可能となる。
【0066】
尚、本実施形態においては、送受信機124により受信電力値の計測及び位置推定情報信号を生成などを行ったが、本発明はこれに限らず、受信電力値の計測及び位置推定情報信号を生成などを、他の構成部を設けて行っても良い。
【0067】
実施の形態6.
本実施の形態6では、上記実施の形態5の位置推定装置の位置推定動作に、上記実施の形態2の動作を適用し、複数のアンテナ101間の位置に関する情報によりすべての送受信機124の位置を推定する。尚、位置推定システムの構成及びターゲット端末10並びにリファレンス端末20の構成は上記実施の形態5と同様である。
【0068】
図15は本発明の実施の形態6における位置推定装置の位置推定動作を示すフローチャートである。本実施の形態における位置推定装置30は、各ターゲット端末10の持つ複数のアンテナ101のうち任意の1本を基準アンテナとし、他のアンテナ101は基準アンテナからの距離の情報を持つ。基準アンテナ以外のアンテナは基準アンテナの座標と回転を示すパラメータで位置を表記する。図15において、上記実施の形態5と同様の動作により、位置推定情報信号を受信し(S41)、位置推定を行うターゲット端末10を選択する(S42)。次に、第1推定段階(S43)において、リファレンス端末20から得られた情報のみを利用して、上記実施の形態2と同様の動作により、対象ターゲット端末10のすべての送受信機124の位置を推定する。この第1推定段階を全てのターゲット端末10について行う(S44)。次に、第2推定段階を行うターゲット端末10を選択し(S45)、第2推定段階(S46)において、リファレンス端末20から得られた情報に加えて、周辺のターゲット端末10から得られた情報と、第1推定段階で得られた周辺ターゲット端末10の推定位置を利用して、上記実施の形態2と同様の動作により、対象ターゲット端末10のすべての送受信機124の位置を推定する。この第2推定段階を全てのターゲット端末10について行う(S47)。第2推定段階は、上記実施の形態5と同様に、すべてのターゲット端末10の推定位置が収束した場合、もしくは計算時間等の制約による回数を終了するまで、繰り返し実行する(S48)。
【0069】
以上のように、本実施の形態6は、上記実施の形態5の効果に加え、各送受信機124間の位置に関する情報により全ての送受信機124の位置を推定することができ、位置を推定する際に繰り返し演算を行う必要なく位置推定の算出時間が短縮できる。
【0070】
尚、上記実施の形態1〜6では、位置推定に必要な情報として、無線信号の受信電力値を用いた位置推定を行うシステムについて説明したが、本発明は、位置推定に必要な情報を無線信号の受信電力値に限るものではなく、ターゲット端末10又はリファレンス端末20で測定できる情報であれば、情報の種類によらず、例えば、遅延時間など端末間の距離を推定できる情報、複数の端末がなす角度などでも良く、その他の情報であっても良い。
【0071】
実施の形態7.
上記実施の形態1では、ターゲット端末10の各アンテナ101間の距離を用いて位置推定を行ったが、本実施の形態7では、複数のアンテナ101が同一の地点に存在するとみなして位置推定の計算を行う。即ち、アンテナ101間の距離を0として位置推定の計算を行う。尚、位置推定システムの構成、ターゲット端末10及びリファレンス端末20の構成は上記実施の形態1と同様である。
【0072】
本実施の形態7におけるターゲット端末10の受信データ処理部103は、受信回路102より入力された受信データを処理し、受信データがリファレンス端末20から送られた位置推定要求信号の場合に、位置推定要求信号に含まれる情報及び受信回路102により測定された受信電力値S1の情報を含めた情報をデータ集約部105に出力する。つまり、上述した実施の形態1では当該受信機104固有の識別符号の情報をデータ集約部105へ出力したが、本実施の形態では不要である。このような構成による本実施の形態における位置推定の動作を次に説明する。
【0073】
図16は本発明の実施の形態7におけるターゲット端末の位置推定動作を示すフローチャートである。まず、各リファレンス端末20は、当該リファレンス端末20の送信端末符号を含めた位置推定要求信号を送信する。ターゲット端末10の各受信機104は各リファレンス端末20から送信された位置推定要求信号を受信し、受信した位置推定要求信号の受信電力値S1を計測し、受信電力値S1の情報及び送信端末符号の情報をデータ集約部105に出力する(S51)。次に、データ集約部105は、複数の受信機104から入力された情報を入力された受信機104の区別をせずに収集し、位置推定処理部106へ出力する。位置推定処理部106は、データ集約部105から入力された情報に基づき、以下の手順に従って当該ターゲット端末10の推定位置を求める(S52)。
【0074】
具体的には、各受信機104が受信した位置推定要求信号の受信電力値S1の情報及び送信端末符号並びにリファレンス端末20の位置に基づき、当該ターゲット端末10の推定位置を求める。推定位置は、例えば、各リファレンス端末20と任意の受信機104間で授受された情報とリファレンス端末20の位置から、当該ターゲット端末10が存在すると考えられる各地点における存在確率を計算する。次に最尤推定法などの手法を用いて、当該ターゲット端末10の存在確率が最も高い点を探索し、該当点を当該ターゲット端末10の推定位置とする。また例えば、受信電力値S1と距離との関係を示すテーブルを参照し、予め位置が分かっている複数のリファレンス端末20と当該ターゲット端末10との距離を求めることにより推定位置を求める。尚、推定位置の取得方法はこれに限らず、他の方法を用いて推定位置を求めてもよい。
【0075】
以上のように本実施の形態7では、上記実施の形態1の効果に加え、複数のアンテナ101の位置を同一とみなしたために位置推定処理部106の推定位置の計算処理が簡素になり、推定計算の所要時間を短縮することができる。
【0076】
実施の形態8.
上記実施の形態3及び4では、ターゲット端末10の各アンテナ101間の距離を用いて位置推定を行ったが、本実施の形態8では、ターゲット端末10の複数のアンテナ111が同一の地点に存在するとみなして位置推定の計算を行う。即ち、アンテナ101間の距離を0として位置推定の計算を行う。尚、位置推定システムの構成、ターゲット端末10、リファレンス端末20及び位置推定装置30の構成は上記実施の形態3と同様である。
【0077】
本実施の形態8における各送信機114の送信データ生成部113は、送信管理部115からの指示を受けると、ターゲット端末固有の識別符号を含む位置推定要求信号を生成し、送信回路112へ出力する。つまり、上述した実施の形態3では、各送信機114の識別符号を含む位置推定要求信号を生成したが、本実施の形態ではターゲット端末10固有の識別符号のみであるので位置推定要求信号及び位置推定情報信号に含まれる情報が異なる。このような構成による本実施の形態における位置推定の動作を次に説明する。
【0078】
まず、ターゲット端末10の各送信機114は、当該ターゲット端末10固有の識別符号の識別符号を含めた位置推定要求信号を各送信機114のアンテナ111より周辺の全端末に送信する。位置推定要求信号を受信したリファレンス端末20の受信回路214は、得られた情報を受信データ処理部215に入力し、受信データ処理部215は、受信した信号が位置推定に用いることが適切であると判断した場合には送信データ生成部213に対して位置推定情報信号の生成を指示する。位置推定情報信号には、受信した位置推定要求信号に含まれるターゲット端末10の識別符号及び受信した位置推定要求信号の受信電力値S1、並びに当該リファレンス端末20固有の識別符号を含む。送信回路212は、位置推定情報信号を位置推定装置30へ送信する。位置推定装置30は、リファレンス端末20から受信した位置推定情報信号に含まれるターゲット端末10の識別符号毎にデータを集約し、上述した実施の形態7と同様の動作により、各ターゲット端末10の位置を推定する。尚、本実施の形態では、ターゲット端末10の推定結果は他のターゲット端末10の推定に影響を及ぼさないため、位置推定装置30における各端末の推定演算は単純な並列処理である。
【0079】
尚、上記実施の形態4の構成において、上述した本実施の形態8のターゲット端末10の動作を適応しても良い。この場合、ターゲット端末10の各アンテナ111から送信する位置推定要求信号にアンテナ111固有の識別符号を含めないことにより、本実施の形態と同様の動作により位置推定が可能である。
【0080】
以上のように本実施の形態8では、上記実施の形態3の効果に加え、位置推定装置30における計算量を削減することができる。これによってより多くのターゲット端末10の位置推定を単一の位置推定装置30で実行することが可能となる。さらにターゲット端末10から送信する位置推定要求信号の情報量を削減することができる。
【0081】
さらに、実施の形態4に本実施の形態8を適応した場合には、上記実施の形態4の効果に加え、切替スイッチ116によって複数のアンテナ111から全く同一の信号を送信することになり、ターゲット端末10の構成を単純にすることが可能となる。
【0082】
実施の形態9.
上記実施の形態5では、ターゲット端末10の各アンテナ101間の距離を用いて位置推定を行ったが、本実施の形態9では、ターゲット端末10の複数のアンテナ121が同一の地点に存在するとみなして位置推定を行う。即ち、アンテナ101間の距離を0として位置推定の計算を行う。尚、位置推定システムの構成、ターゲット端末10、リファレンス端末20及び位置推定装置30の構成は上記実施の形態5と同様である。
【0083】
本実施の形態9における各送信機124の受信データ処理部123は、受信データが他のターゲット端末10から送られてきた位置推定要求信号であった場合に、送信管理部125に対して、測定した受信電力の送信データ作成を指示する。この際、位置推定要求信号を送信したターゲット端末10の識別符号を合わせて通知する。つまり、上述した実施の形態5では、各送信機124の識別符号を含む位置推定要求信号を通知したが、本実施の形態ではターゲット端末10の識別符号のみであるので位置推定要求信号及び位置推定情報信号に含まれる情報が異なる。このような構成による本実施の形態における位置推定の動作を次に説明する。
【0084】
ターゲット端末10が位置推定要求信号を周辺の全端末に送信する。位置推定要求信号には当該ターゲット端末10の識別符号が含まれる。次に、位置推定要求信号を受信したターゲット端末10及びリファレンス端末20は、位置推定要求信号の受信電力値S1を計測し、位置推定情報信号を位置推定装置30へ送信する。位置推定情報信号には、受信した位置推定要求信号の受信電力値S1及び受信した位置推定要求信号に含まれるターゲット端末10の識別符号、並びに位置推定情報信号を送信する当該ターゲット端末10又は当該リファレンス端末20の識別符号が含まれる。位置推定装置30は、位置推定情報信号を受信すると、位置推定要求信号を送信したターゲット端末10毎に情報を保存し、各ターゲット端末10の位置推定に用いる。
【0085】
図17は本発明の実施の形態9における位置推定装置の位置推定動作を示すフローチャートである。上述した実施の形態5と同様に、位置推定装置30は、各ターゲット端末10又は各リファレンス端末20から位置推定情報信号を受信すると位置推定を開始し(S61)、位置推定の対象とする任意のターゲット端末10を選択する(S62)。次に、受信し保存した位置推定情報信号の情報に基づき、当該ターゲット端末10の推定位置を求める推定演算を実行する(S63)。
【0086】
推定演算は、位置推定装置30が、各リファレンス端末20から受信した位置推定情報信号に含まれる、当該リファレンス端末20が受信した位置推定要求信号の受信電力値S1及び、受信した位置推定要求信号に含まれるターゲット端末10の識別符号及び、位置推定情報信号を送信したリファレンス端末20の識別符号とリファレンス端末20の位置とに基づき、位置推定の対象としたターゲット端末10の推定位置を求める。推定位置の取得方法は、上記実施の形態1の動作と同様である。上記推定演算(S63)を全てのターゲット端末10に対して実行する(S64)。全てのターゲット端末の推定位置が収束するか予め設定した繰り返し回数に達するまでS62〜S64の手順を繰り返し行う(S65)。これはターゲット端末10の推定位置が変化すると、当該端末と位置推定要求信号を授受した端末の位置推定結果に影響を及ぼすためである。
【0087】
以上のように本実施の形態9では、上記実施の形態5の効果に加え、位置推定装置30における計算量を削減することができる。これによってより多くのターゲット端末10の位置推定を単一の位置推定装置30で実行することが可能となる。さらに位置推定要求信号、位置推定情報信号から送受信機124の識別符号を除いたことによって、通信量が削減されており、より多くの位置推定以外の通信を行うことが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施の形態1における位置推定システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるリファレンス端末の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるターゲット端末の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1におけるターゲット端末の位置推定動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態1における位置推定平面上でのアンテナ間距離を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2におけるターゲット端末の位置推定動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態2における基準アンテナからの相対位置を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態3における位置推定システムの構成を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態3におけるターゲット端末の構成を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態3におけるリファレンス端末の構成を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態4におけるターゲット端末の構成を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態5における位置推定システムの構成を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態5におけるターゲット端末の構成を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態5における位置推定装置の位置推定動作を示すフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態6における位置推定装置の位置推定動作を示すフローチャートである。
【図16】本発明の実施の形態7におけるターゲット端末の位置推定動作を示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施の形態9における位置推定装置の位置推定動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0089】
10 ターゲット端末、20 リファレンス端末、30 位置推定装置、101 アンテナ、102 受信回路、103 受信データ処理部、104 受信機、105 データ集約部、106 位置推定処理部、111 アンテナ、112 送信回路、113 送信データ生成部、114 送信機、115 送信管理部、116 切替スイッチ、121 アンテナ、122 受信回路、123 受信データ処理部、124 送受信機、125 送信管理部、126 切替スイッチ、127 送信回路、128 送信データ生成部、201 アンテナ、202 送信回路、203 送信データ生成部、211 アンテナ、212 送信回路、213 送信データ生成部、214 受信回路、215 受信データ処理部、500 推定平面、S1 受信電力値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線機を有し、各無線機間の距離が既知であるターゲット端末と、既知の位置に複数配置されるリファレンス端末とが無線信号を授受し、前記無線信号と前記リファレンス端末の位置とに基づき前記ターゲット端末の位置を推定する位置推定方法であって、
前記無線信号から位置推定に必要な情報を取得し、少なくとも、取得した前記位置推定に必要な情報と、前記リファレンス端末の位置と、前記各無線機間の距離を含む各無線機間の相対位置関係を示す情報とから、前記複数の無線機それぞれの推定位置を求め、
前記複数の無線機それぞれの推定位置に基づき、前記ターゲット端末の位置を推定することを特徴とする位置推定方法。
【請求項2】
複数の無線機を有し、各無線機間の距離が既知であるターゲット端末と、既知の位置に複数配置されるリファレンス端末とが無線信号を授受し、前記無線信号と前記リファレンス端末の位置とに基づき前記ターゲット端末の位置を推定する位置推定方法であって、
前記無線信号から位置推定に必要な情報を取得し、少なくとも、取得した前記位置推定に必要な情報と、前記リファレンス端末の位置と、前記各無線機間の距離とから、前記複数の無線機それぞれの位置を特定する多次元空間における評価関数を作成し、
前記評価関数の値が極値を取る点を求めることで、前記複数の無線機それぞれの推定位置を求め、
前記複数の無線機それぞれの推定位置に基づき、前記ターゲット端末の位置を推定することを特徴とする位置推定方法。
【請求項3】
複数の無線機を有し、各無線機間の距離が既知であるターゲット端末と、既知の位置に複数配置されるリファレンス端末とが無線信号を授受し、前記無線信号と前記リファレンス端末の位置とに基づき前記ターゲット端末の位置を推定する位置推定方法であって、
前記無線信号から位置推定に必要な情報を取得し、少なくとも、取得した前記位置推定に必要な情報と、前記リファレンス端末の位置と、前記各無線機間の距離と、推定領域に設定した基準面と前記ターゲット端末とがなす角度と、前記複数の無線機の内、任意の無線機が有する基準アンテナの位置とを変数とする評価関数を作成し、
前記評価関数の値が極値を取る点を求めることで、前記複数の無線機それぞれの推定位置を求め、
前記複数の無線機それぞれの推定位置に基づき、前記ターゲット端末の位置を推定することを特徴とする位置推定方法。
【請求項4】
複数の無線機を有し、各無線機間の距離が既知であるターゲット端末と、既知の位置に複数配置されるリファレンス端末とが無線信号を授受し、前記無線信号と前記リファレンス端末の位置とに基づき前記ターゲット端末の位置を推定する位置推定方法であって、
前記無線信号から位置推定に必要な情報を取得し、少なくとも、取得した前記位置推定に必要な情報と、前記リファレンス端末の位置とに基づき前記複数の無線機それぞれの第1の推定位置を求め、
少なくとも、前記複数の無線機それぞれの第1の推定位置と、前記各無線機間の距離と、前記無線信号から取得した位置推定に必要な情報と、前記リファレンス端末の位置とに基づき前記複数の無線機の第2の推定位置を求め、
前記複数の無線機の第2の推定位置に基づき、前記ターゲット端末の位置を推定することを特徴とする位置推定方法。
【請求項5】
複数の無線機を有し、各無線機間の距離が既知であるターゲット端末と、
既知の位置に複数配置され、前記ターゲット端末と無線信号を授受するリファレンス端末と、
前記無線信号と前記リファレンス端末の位置と前記各無線機間の距離とに基づき前記ターゲット端末の位置を推定する位置推定装置とを備え、
前記位置推定装置は、前記無線信号から位置推定に必要な情報を取得し、
少なくとも、取得した前記位置推定に必要な情報と、前記リファレンス端末の位置と、前記各無線機間の距離を含む各無線機間の相対位置関係を示す情報とから、前記複数の無線機それぞれの推定位置を求め、
前記複数の無線機それぞれの推定位置に基づき、前記ターゲット端末の位置を推定することを特徴とする位置推定システム。
【請求項6】
前記ターゲット端末を複数備え、
前記ターゲット端末の前記複数の無線機は、該ターゲット端末固有の識別符号の情報と、該無線機固有の識別符号の情報を含む位置推定要求信号をそれぞれ送信すると共に、
当該ターゲット端末以外の前記ターゲット端末から送信された前記位置推定要求信号をそれぞれ受信し、
前記ターゲット端末は、前記複数の無線機により受信された前記位置推定要求信号から位置推定に必要な情報を測定し、測定した前記位置推定に必要な情報と、前記位置推定要求信号に含まれる前記ターゲット端末固有の識別符号及び前記無線機固有の識別符号の情報と、前記位置推定要求信号を受信した前記ターゲット端末固有の識別符号の情報とを含めた位置推定情報信号を送信し、
前記リファレンス端末は、前記ターゲット端末の前記複数の無線機から送信された前記位置推定要求信号を受信し、
受信した前記位置推定要求信号から位置推定に必要な情報を測定し、測定した前記位置推定に必要な情報と、前記位置推定要求信号に含まれる前記ターゲット端末固有の識別符号及び前記無線機固有の識別符号の情報と、前記位置推定要求信号を受信した前記リファレンス端末固有の識別符号の情報とを含めた位置推定情報信号を送信し、
前記位置推定装置は、前記ターゲット端末及び前記リファレンス端末から送信された前記位置推定情報信号を受信し、
前記リファレンス端末から受信した前記位置推定情報信号に含まれる
前記位置推定に必要な情報と、
前記ターゲット端末固有の識別符号及び前記無線機固有の識別符号の情報と、
前記リファレンス端末固有の識別符号の情報と、
前記リファレンス端末の位置と、
前記各無線機間の距離及び各無線機がなす角度と
に基づき前記複数の無線機それぞれの推定位置を求め、
前記複数の無線機の推定位置に基づき、前記ターゲット端末の位置を推定することを特徴とする請求項5記載の位置推定システム。
【請求項7】
複数の無線機を有し、各無線機間の距離が既知であるターゲット端末と、
既知の位置に複数配置され、前記ターゲット端末と無線信号を授受するリファレンス端末と、
前記無線信号と前記リファレンス端末の位置と前記各無線機間の距離とに基づき前記ターゲット端末の位置を推定する位置推定装置とを備え、
前記位置推定装置は、前記無線信号から位置推定に必要な情報を取得し、
少なくとも、取得した前記位置推定に必要な情報と、前記リファレンス端末の位置とに基づき前記複数の無線機それぞれの第1の推定位置を求め、
少なくとも、前記複数の無線機それぞれの第1の推定位置と、前記各無線機間の距離と、前記無線信号から取得した位置推定に必要な情報と、前記リファレンス端末の位置とに基づき前記複数の無線機の第2の推定位置を求め、
前記複数の無線機の第2の推定位置に基づき、前記ターゲット端末の位置を推定することを特徴とする位置推定システム。
【請求項8】
前記リファレンス端末は、該リファレンス端末固有の識別符号の情報を含めた位置推定要求信号を送信し、
前記ターゲット端末の前記複数の無線機は、前記リファレンス端末から送信された前記位置推定要求信号をそれぞれ受信し、
前記ターゲット端末は、前記位置推定装置を内蔵し、前記複数の無線機により受信された前記位置推定要求信号から位置推定に必要な情報を測定し、測定した前記位置推定に必要な情報と、前記位置推定要求信号に含まれる前記リファレンス端末固有の識別符号の情報と、前記位置推定要求信号を受信した前記無線機固有の識別符号の情報とをそれぞれ前記位置推定装置に入力し、
前記位置推定装置は、前記位置推定に必要な情報と、
前記リファレンス端末固有の識別符号の情報と、
前記無線機固有の識別符号の情報と、
前記リファレンス端末の位置と
に基づき前記複数の無線機それぞれの第1の推定位置を求め、
前記複数の無線機それぞれの第1の推定位置と、
前記各無線機間の距離と、
前記位置推定に必要な情報と、
前記リファレンス端末固有の識別符号の情報と、
前記無線機固有の識別符号の情報と、
前記リファレンス端末の位置と
に基づき前記複数の無線機それぞれの第2の推定位置を求め、
前記複数の無線機の第2の推定位置に基づき、前記ターゲット端末の位置を推定することを特徴とする請求項7記載の位置推定システム。
【請求項9】
前記ターゲット端末の前記複数の無線機は、該無線機固有の識別符号の情報を含む位置推定要求信号をそれぞれ送信し、
前記リファレンス端末は、前記複数の無線機から送信された前記位置推定要求信号を受信し、受信した前記位置推定要求信号から位置推定に必要な情報を測定し、
測定した前記位置推定に必要な情報と、前記位置推定要求信号に含まれる前記無線機固有の識別符号の情報と、前記リファレンス端末固有の識別符号の情報とを含めた位置推定情報信号を送信し、
前記位置推定装置は、前記リファレンス端末から送信された前記位置推定情報信号を受信し、受信した前記位置推定情報信号に含まれる
前記位置推定に必要な情報と、
前記無線機固有の識別符号の情報と、
前記リファレンス端末固有の識別符号の情報と、
前記リファレンス端末の位置と
に基づき前記複数の無線機それぞれの第1の推定位置を求め、
前記複数の無線機それぞれの第1の推定位置と、
前記各無線機間の距離と、
前記位置推定に必要な情報と、
前記無線機固有の識別符号の情報と、
前記リファレンス端末固有の識別符号の情報と、
前記リファレンス端末の位置と
に基づき前記複数の無線機それぞれの第2の推定位置を求め、
前記複数の無線機の第2の推定位置に基づき、前記ターゲット端末の位置を推定することを特徴とする請求項7記載の位置推定システム。
【請求項10】
前記ターゲット端末を複数備え、
前記ターゲット端末の前記複数の無線機は、該ターゲット端末固有の識別符号の情報と、該無線機固有の識別符号の情報を含む位置推定要求信号をそれぞれ送信すると共に、
当該ターゲット端末以外の前記ターゲット端末から送信された前記位置推定要求信号をそれぞれ受信し、
前記ターゲット端末は、前記複数の無線機により受信された前記位置推定要求信号から位置推定に必要な情報を測定し、測定した前記位置推定に必要な情報と、前記位置推定要求信号に含まれる前記ターゲット端末固有の識別符号及び前記無線機固有の識別符号の情報と、前記位置推定要求信号を受信した前記ターゲット端末固有の識別符号の情報とを含めた位置推定情報信号を送信し、
前記リファレンス端末は、前記ターゲット端末の前記複数の無線機から送信された前記位置推定要求信号を受信し、
受信した前記位置推定要求信号から位置推定に必要な情報を測定し、測定した前記位置推定に必要な情報と、前記位置推定要求信号に含まれる前記ターゲット端末固有の識別符号及び前記無線機固有の識別符号の情報と、前記位置推定要求信号を受信した前記リファレンス端末固有の識別符号の情報とを含めた位置推定情報信号を送信し、
前記位置推定装置は、前記ターゲット端末及び前記リファレンス端末から送信された前記位置推定情報信号を受信し、
前記リファレンス端末から受信した前記位置推定情報信号に含まれる
前記位置推定に必要な情報と、
前記ターゲット端末固有の識別符号及び前記無線機固有の識別符号の情報と、
前記リファレンス端末固有の識別符号の情報と、
前記リファレンス端末の位置と、
に基づき前記複数の無線機それぞれの第1の推定位置を求め、
前記ターゲット端末及び前記リファレンス端末から受信した前記位置推定情報信号に含まれる
前記位置推定に必要な情報と、
前記位置推定要求信号を送信した前記ターゲット端末固有の識別符号及び前記無線機固有の識別符号の情報と、
前記リファレンス端末固有の識別符号の情報と、
前記ターゲット端末固有の識別符号と、
前記複数の無線機それぞれの第1の推定位置と、
前記各無線機間の距離と、
前記リファレンス端末の位置と
に基づき前記複数の無線機それぞれの第2の推定位置を求め、
前記複数の無線機の第2の推定位置に基づき、前記ターゲット端末の位置を推定することを特徴とする請求項7記載の位置推定システム。
【請求項11】
前記位置推定装置は、前記無線機の第2の推定位置を求めたとき、該無線機の第2の推定位置を第1の推定位置として、当該無線機以外の無線機の第2の推定位置を再度求めることを特徴とする請求項7〜10の何れかに記載の位置推定システム。
【請求項12】
前記ターゲット端末の前記複数の無線機は、無線信号を送受信する複数のアンテナと、前記複数のアンテナと接続される切替スイッチと、前記切替スイッチにより前記複数のアンテナの内の何れか一つのアンテナと接続される無線部とからなることを特徴とする請求項5〜11の何れかに記載の位置推定システム。
【請求項13】
前記ターゲット端末又は前記リファレンス端末は、前記無線信号の受信電力値を測定し、測定した前記受信電力値の情報を前記位置推定に必要な情報とすることを特徴とする請求項5〜12の何れかに記載の位置推定システム。
【請求項14】
前記位置推定装置は、前記無線信号の受信電力値が所定の値より大きいとき、前記受信電力値の情報を前記位置推定に必要な情報とすることを特徴とする請求項13記載の位置推定システム。
【請求項15】
前記ターゲット端末は、該ターゲット端末の移動を検出する移動検出手段を備え、
該ターゲット端末の移動に関する情報を前記位置推定情報信号に含め、
前記位置推定装置は、前記位置推定情報信号を受信する毎に、前記位置推定情報信号に含まれる情報を蓄積し、前記ターゲット端末の移動に関する情報に基づき、前記蓄積された情報を選択し、前記選択した情報を用いて、前記複数の無線機の第2の推定位置を求めることをを特徴とする請求項7〜14の何れかに記載の位置推定システム。
【請求項16】
前記位置推定装置は、前記位置推定情報信号を受信する毎に、前記位置推定情報信号に含まれる情報を蓄積し、前記位置推定情報信号の受信からの経過時間に応じて、前記蓄積された情報を選択し、前記選択した情報を用いて、前記複数の無線機の第2の推定位置を求めることを特徴とする請求項7〜14の何れかに記載の位置推定システム。
【請求項17】
前記位置推定装置は、前記ターゲット端末に対する該ターゲット端末の前記複数の無線機との相対位置の情報を有し、前記相対位置の情報と、前記複数の無線機の第2の推定位置とに基づき、前記ターゲット端末の方向を推定することを特徴とする請求項7〜14の何れかに記載の位置推定システム。
【請求項18】
前記位置推定装置は、前記位置推定情報信号を受信する毎に、前記位置推定情報信号に含まれる情報を蓄積し、前記相対位置の情報と、前記複数の無線機の第2の推定位置と、前記蓄積された情報とに基づき、前記ターゲット端末の回転を推定することを特徴とする請求項17記載の位置推定システム。
【請求項19】
請求項8又は請求項8に従属する請求項11〜18の何れかに記載の位置推定システムのターゲット端末からなることを特徴とする無線通信端末。
【請求項20】
前記各無線機間の距離を、任意の距離として、前記ターゲット端末の位置を推定することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の位置推定方法。
【請求項21】
前記各無線機間の距離を、距離を0として、前記ターゲット端末の位置を推定することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の位置推定方法。
【請求項22】
前記位置推定装置は、
前記各無線機間の距離を、任意の距離として、前記ターゲット端末の位置を推定することを特徴とする請求項5〜18の何れかに記載の位置推定システム。
【請求項23】
前記位置推定装置は、
前記各無線機間の距離を、距離を0として、前記ターゲット端末の位置を推定することを特徴とする請求項5〜18の何れかに記載の位置推定システム。
【請求項24】
前記複数の無線機は、
当該ターゲット端末の移動方向又は位置推定平面と鉛直となる直線上に配置されることを特徴とする請求項19記載の無線通信端末。
【請求項25】
前記ターゲット端末の前記複数の無線機は、無線信号を送受信するアンテナをそれぞれ備え、
前記アンテナは、
当該ターゲット端末の移動方向又は位置推定平面と鉛直となる直線上に配置されることを特徴とする請求項19記載の無線通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−306540(P2007−306540A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347956(P2006−347956)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】