説明

位置教示機能備え付け物品の認証システム及び認証方法

【課題】携帯端末に位置教示機能を搭載しても、物品盗難に対するセキュリティ性を高くすることができる位置教示機能備え付け物品の認証システム及び認証方法を提供する。
【解決手段】車両1には、電子キー3のカーファインダボタン38が操作されたときに、車両1と電子キー3とが通信し合い、車両の位置を電子キー3に表示することにより車両位置をユーザに教示するカーファインダシステム33が設けられている。また、車両1には、カーファインダシステム33(カーファインダ機能)の使用有無に応じて、車両使用時においてそのときの車両使用者に科す本人認証の認証レベルを切り換える認証レベル変更システム42が設けられている。認証レベル変更システム42は、カーファインダ機能が使用されていないとき、本人認証のレベルを低レベルに設定し、カーファインダ機能が使用されたとき、本人認証のレベルを高レベルに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば物品の位置を見失ったユーザに、携帯端末により対象物位置を教える位置教示機能を持った物品に使用され、この物品の使用に際して本人認証を行う位置教示機能備え付け物品の本人認証システム及び本人認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各地において郊外型の大型ショッピング施設が多く建設され、このような郊外型の大型ショッピング施設では、多数の客が訪れる関係上、非常に広大な敷地面積の駐車場を完備しているところが多い。よって、このショッピング施設に車両で訪れた客の中には、買い物を終えて帰宅の途に付く際に、駐車場に駐車しておいた車両の位置を忘れてしまう人もいる。よって、このような状況になっても簡単に車両を見つけ出せるようにするために、駐車車両の位置の発見を手助けするシステムとして、今日ではカーファインダシステムというものが開発されている。このカーファインダシステムの一例は、例えば特許文献1,2等に開示されている。
【0003】
これら文献に開示される一般的なカーファインダシステムでは、ユーザが所持する携帯端末として車両キーや携帯電話等が使用される。そして、カーファインダシステムを動作させる要求操作が携帯端末で行われると、その操作に対応した操作信号が携帯端末から車両に無線発信され、車両がこの操作信号を受信すると、車両と携帯端末との間の位置関係を割り出し、携帯端末に車両の駐車位置を表示させる。よって、ユーザは携帯端末の表示位置を見れば車両の駐車位置が確認可能となるので、広大な敷地面積の駐車場において自車両の位置が分からなくなっても、携帯端末の案内によって自車両を簡単に発見することが可能となる。
【特許文献1】特開2006−347291号公報
【特許文献2】特開2007−241472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このカーファインダ機能を備え持つ携帯端末をユーザが何かの不意で気付かずに落としてしまい、落としたこの携帯端末が第三者に拾われる場合も想定される。このとき、携帯端末を拾った第三者は、カーファインダ機能を使用すれば、拾った携帯端末がどの車両のものかを簡単に割り出すことが可能である。よって、携帯端末を拾った第三者に車両を探され、この第三者によって車両が盗難に遭う可能性も否めないことから、車両−車両キーの間にこの種のカーファインダシステムを搭載しても、車両盗難に対する高いセキュリティ性を備える技術開発が要望されていた。
【0005】
本発明の目的は、携帯端末に位置教示機能を搭載しても、物品盗難に対するセキュリティ性を高くすることができる位置教示機能備え付け物品の認証システム及び認証方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明では、物品に位置教示を要求する要求操作が携帯端末で実行された際、当該携帯端末と前記物品との間の位置関係を割り出し、前記携帯端末上でユーザに物品位置を教示する位置教示機能を持った物品に使用され、物品使用者が前記物品を使用する際に当該物品使用者との間で本人認証を行うとともに当該認証が成立すれば前記物品の使用を許可する位置教示機能備え付け物品の認証システムにおいて、前記位置教示機能の使用有無を監視する監視手段と、前記位置教示機能の使用有無に応じて、前記認証のレベルの高低を切り換える切換手段とを備えたことを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、物品を使用する際には、携帯端末による物品との間の認証が必要であり、この認証の成立を以て、物品の使用が許可又は実行される。また、この携帯端末には、物品の位置をユーザに教示する位置教示機能が備え付けられている。よって、もし仮にユーザが物品の位置を忘れてしまったとしても、この位置教示機能を使用すれば、携帯端末により物品の位置がユーザに教示されるので、ユーザは位置が分からなくなってしまった物品の位置を容易に知ることが可能となる。
【0008】
ところで、位置教示機能が使用されずに携帯端末による認証行為が行われる場合、このときの認証行為者は位置教示機能を使用しなくとも物品位置が分かるということなので、正規ユーザである可能性が高い。一方、位置教示機能を使用した後に携帯端末による認証行為が行われる場合、このときの認証行為者は位置教示機能を使用しなければ物品位置が分からないので、例えば携帯端末を拾って物品の盗難行為を働くべく物品を探し当てようとしている第三者である可能性も否定できない。
【0009】
しかしながら、本構成の場合、物品の使用に際して位置教示機能が使用されたか否かが監視手段により監視され、この位置教示機能の使用有無に応じて、切換手段により認証のレベル高低が切り換えられる。このため、例えば位置教示機能が使用されたとき、ユーザに科す認証レベルを、位置教示機能を使用しなかったときよりも高く設定すれば、携帯端末を拾って位置教示機能により物品の位置を知り得た第三者に、勝手に物品を使用される状況が発生し難くなる。よって、携帯端末に位置教示機能を搭載しても、物品盗難に対する高いセキュリティ性を確保することが可能となる。
【0010】
本発明では、前記切換手段は、前記位置教示機能の使用を経た後の認証の場合、前記物品使用者に複数の認証を科し、前記位置教示機能の使用を経ていない後の認証の場合、前記物品使用者に科す認証個数を、前記位置教示機能の使用を経た後の認証のときよりも少なくすることにより、前記認証の強弱レベルを切り換えることを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、物品の使用者に科す認証の個数を変えるという簡単な方法により、認証レベルの高低を切り換えることが可能となる。
本発明では、前記認証には、キーが持つキーコードを物品のものと照らし合わせることにより認証を行うキー認証と、前記認証において前記キーを使用しないその他の認証とがあり、前記切換手段は、前記位置教示機能の使用を経た後の認証の場合、前記キー認証及び前記その他の認証の両方を前記認証として科し、前記位置教示機能の使用を経ない後の認証の場合、前記キー認証及び前記その他の認証のうち一方のみを前記認証として科すことを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、例えばユーザが不注意で落としてしまったキーを第三者に拾われ、この第三者がキー備え付けの位置教示機能を使用して物品位置を探し当てても、このときの物品の使用には、キーのキーコードを物品のものと照らし合わせるキー認証のみならず、キー認証以外の認証としてその他の認証も成立が必要となる。このため、もしユーザが不注意でキーを落としてこれを第三者に拾われて、物品の位置がこの第三者に特定されたとしても、物品を不正に使用されてしまう状況を生じ難くすることが可能となる。
【0013】
本発明では、前記認証には、キーが持つキーコードを物品のものと照らし合わせることにより認証を行うキー認証と、前記認証において前記キーを使用しないその他の認証とがあり、前記切換手段は、前記位置教示機能の使用を経た後の認証の場合、前記キー認証及び前記その他の認証の両方を前記認証として科し、前記位置教示機能の使用を経ない後の認証の場合、前記キー認証のみを前記認証として科すことを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、位置教示機能を使用しない場合、使用者に科す認証はキー認証だけとなるので、ユーザが位置教示機能を利用せずに物品を使用するときには、その他の認証の部品群をそれまでの待機状態から起動状態に切り換えずに済む。よって、物品の使用時に、他の認証に関係する部品群を毎回起動させずに済むので、物品に係る電源の省エネルギー効果を図ることが可能となる。また、正規ユーザに対しては、1つの操作(認証行為:例えばワイヤレス照合やスマート照合)のみで済むので、ユーザにとっては高い利便性を確保することが可能となる。
【0015】
本発明では、前記その他の認証は、前記物品使用者が身体上に持つ生体情報を使用して当該認証を行う生体認証であることを要旨とする。
この構成によれば、その他の認証は生体認証であるので、その他の認証を高い認証レベルのもので行うことが可能となる。
【0016】
本発明では、物品に位置教示を要求する要求操作が携帯端末で実行された際、当該携帯端末と前記物品との間の位置関係を割り出し、前記携帯端末上でユーザに物品位置を教示する位置教示機能を持った物品に使用され、物品使用者が前記物品を使用する際に当該物品使用者との間で本人認証を行うとともに当該認証が成立すれば前記物品の使用を許可する位置教示機能備え付け物品の認証方法において、前記位置教示機能の使用有無を監視手段により監視し、前記認証の強弱レベルを切換手段により前記位置教示機能の使用有無に応じて切り換えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、携帯端末に位置教示機能を搭載しても、物品盗難に対するセキュリティ性を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した位置教示機能備え付け物品の認証システム及び認証方法の一実施形態を図1〜図5に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、車両1の使用者に対して科す本人認証システム2の一システムとして、車両キーに電子キー3を使用する電子キーシステム4が搭載されている。この電子キーシステム4には、実際のキー操作を伴わずにドアロック施解錠やエンジン始動停止等の車両操作を行うことが可能なキー操作フリーシステム5が搭載されている。キー操作フリーシステム5は、同システム5の電子キーである電子キー3からのIDコード(キーコード)のコード発信をユーザの意志によらず自動で行わせ、車両1と電子キー3との間でIDコードを照らし合わせてID照合を実行し、両IDコードが一致してキー認証が成立すれば、ドアロック施解錠やエンジン始動が許可又は実行される。なお、車両1が物品に相当し、電子キー3が携帯端末(キー)に相当する。
【0019】
キー操作フリーシステム5には、ドアロック施解錠操作の際にキー操作を必要としない機能としてスマートエントリーシステムがある。このようなスマートエントリーシステムでは、車両1に、電子キー3との間でID照合を行うコントローラとして照合ECU6が設けられている。また、車両1には、車外にLF帯(約130KHz)の信号を発信可能な車外LF発信機7と、車内に同じLF帯の信号を発信可能な車内LF発信機8と、電子キー3が発信する低RF帯(約312MHz)の信号を受信可能なRF受信機9とが設けられている。また、照合ECU6には、ドアロック施解錠を制御するドアECU10が車内LAN11を介して接続されている。このドアECU10には、ドアロック施解錠時の駆動源としてドアロックモータ12が接続されている。
【0020】
また、電子キー3には、電子キー3の各種動作を統括制御する通信制御部13が設けられている。この通信制御部13は、CPU14やメモリ15等の各種デバイスを持ち、電子キー3が持つ固有のキーコードとしてIDコードがメモリ15に登録されている。通信制御部13には、LF帯の無線信号を受信可能なLF受信機16と、低RF帯(約312MHz)の無線信号を発信可能なRF発信機17とが接続されている。通信制御部13は、LF受信機16でどの種の無線信号を受け付けたか否かを逐次監視するとともに、RF発信機17からの信号発信の動作を管理する。
【0021】
車両1が駐車状態(エンジン停止及びドアロック施錠状態)の際、照合ECU6は、車外LF発信機7からLF帯のリクエスト信号Srqを断続的に発信させ、車両周辺にリクエスト信号Srqの車外通信エリアを形成して、無線通信(以降、スマート通信と記す)の成立を試みる。電子キー3がこの車外通信エリアに入り込んでリクエスト信号Srqを受信すると、電子キー3はリクエスト信号Srqに応答する形で、自身のメモリ15に登録されたIDコードを乗せたID信号Sidを低RF帯の信号で返信する。照合ECU6は、RF受信機9でID信号Sidを受信してスマート通信が確立すると、自身のメモリ18に登録されたIDコードと電子キー3のIDコードとを照らし合わせてID照合、いわゆるスマート照合(車外照合)を行う。照合ECU6は、この車外照合が成立したことを認識すると、メモリ18に車外照合フラグを一定時間の間において立てて、車外ドアハンドルノブ19に埋設されたタッチセンサ20をその期間の間において起動させる。照合ECU6は、ドアロック施錠時に車外ドアハンドルノブ19がタッチ操作されたことを起動中のタッチセンサ20で検出すると、ドアロック解錠要求をドアECU10に出力する。ドアECU10は、ドアロック施錠時にこのドアロック解錠要求を受け付けると、ドアロックモータ12を駆動して施錠状態のドアロックを解錠する。
【0022】
一方、車両1が停止状態(エンジン停止及びドアロック解錠状態)の際、照合ECU6は、車外ドアハンドルノブ19に設けられたロックボタン21が押し操作されたことを検出すると、車外LF発信機7からリクエスト信号Srqを発信させる。照合ECU6は、このリクエスト信号Srqを受けて電子キー3が返信してきたID信号Sidにおいて車外照合が成立したことを認識すると、ドアECU10にドアロック施錠要求を出力する。ドアECU10は、ドアロック解錠時にこのドアロック施錠要求を受け付けると、ドアロックモータ12を駆動して解錠状態のドアロックを施錠する。
【0023】
また、キー操作フリーシステム5には、エンジン始動停止操作の際に実際の車両キー操作を必要とせずに単なるスイッチ操作のみでエンジン22の始動停止操作を行うことが可能な機能としてワンプッシュエンジンスタートシステムがある。このようなワンプッシュエンジンスタートシステムにおいては、車両1の運転席に、車両1の電源状態(電源ポジション)を切り換える際の操作系としてプッシュモーメンタリ式のエンジンスイッチ23が設けられている。車両1には、エンジン22の点火制御及び燃料噴射制御を行うエンジンECU24と、車載電装品の電源管理を行う電源ECU25とが設けられている。これらECU24,25は、車内LAN11を通じて照合ECU6等の各種ECUに接続されている。電源ECU25には、各種車載アクセサリに繋がるACCリレー26と、エンジンECU24に繋がるIGリレー27と、エンジン22のスタータモータに繋がるスタータリレー28とが接続されている。
【0024】
照合ECU6は、車外照合が成立してドアロックが解錠された後、例えばカーテシスイッチ29でドアが開けられて運転者が乗車した事を認識すると、車内LF発信機8からリクエスト信号Srqを発信して車内全域に車内通信エリアを形成する。照合ECU6は、電子キー3がこの車内通信エリアに入り込んで返信してきたID信号SidをRF受信機9で受信すると、自身に登録されたIDコードと電子キー3のIDコードとを照らし合わせてID照合、いわゆるスマート照合(車内照合)を行う。照合ECU6は、この車内照合が成立すると、メモリ18に車内照合成立フラグを立てて車内照合成立を認識する。
【0025】
電源ECU25は、エンジン22が停止している際にブレーキペダルが踏み込み操作された状態でエンジンスイッチ23が押圧操作された事を検出すると、車内照合成立を条件として、停止状態のエンジン22を始動すべく3つのリレー26〜28をオンしつつ、エンジンECU24に起動信号を出力する。電源ECU25は、車内照合成立確認の際にこれが成立していなければ、照合ECU6に車内照合を再実行させ、車内照合成立の有無を今一度確認する。起動信号を受け付けたエンジンECU24は、車内照合結果の確認と、照合ECU6が自身とペアを成すものかを確認するペアリングとを暗号化通信により行う。これら両条件の確認を済ませたエンジンECU24は、点火制御及び燃料噴射制御を開始してエンジン22を始動する。一方、電源ECU25は、エンジン22が稼働中の際にエンジンスイッチ23が押圧操作された事を検出すると、車両1が停止(車速「0」)していることを条件に3つのリレー26〜28を全てオフ状態にして、エンジン22を停止状態にする。
【0026】
一方、電源ECU25は、エンジン22が停止している際にブレーキペダルが踏み込み操作されずにエンジンスイッチ23のみが押圧操作された事を検出すると、車内照合成立を条件としつつ、しかもシフトレバーがPレンジ位置にあれば、エンジンスイッチ23が押される度に、操作一回りの間において電源状態をオフ状態→ACCオン状態→IGオン状態の間で順に切り換える。
【0027】
また、電子キーシステム4には、ドアロックの施解錠要求の発信を電子キー3のボタン操作により行うワイヤレスキーシステム30がある。ワイヤレスキーシステム30では、車両1が駐車状態にある際に電子キー3のアンロックボタン31が操作されると、電子キー3から解錠要求Sulが低RF帯の信号で発信される。照合ECU6は、この解錠要求SulをRF受信機9で受信すると、解錠要求Sul内のIDコードが正しければ、この解錠要求Sulに沿ってドアロックを解錠する。また、車両1が停車状態にある際に電子キー3のロックボタン32が操作されると、電子キー3から施錠要求Slkが低RF帯の信号で発信される。照合ECU6は、この施錠要求SlkをRF受信機9で受信すると、施錠要求Slk内のIDコードが正しければ、この施錠要求Slkによってドアロックを施錠する。
【0028】
車両1には、電子キー3を持つ車両ユーザに車両1の位置(駐車位置)を教示するシステムとしてカーファインダシステム33が設けられている。このカーファインダシステム33では、車両1に、カーファインダシステム33のコントロールユニットとしてカーファインダECU34が設けられている。このカーファインダECU34は、車内LAN11を介して照合ECU6等の他ECUに接続され、これらECUとデータやり取りが可能となっている。また、カーファインダECU34には、高RF帯(約数GHz)の信号を受信可能なRF受信機35と、高RF帯(約数GHz)の信号を発信可能なRF発信機36とが接続されている。車両1には、車両1の進行向きを割り出す車両用コンパス37が搭載されている。車両用コンパス37は、車両1がその都度とる方位に関連する情報としてコンパス情報をカーファインダECU34に出力する。
【0029】
一方、電子キー3には、カーファインダシステム33のカーファインダ機能を動作させるときに操作するカーファインダボタン38が設けられている。また、電子キー3には、高RF帯(約数GHz)の信号を送受信可能なRF送受信機39が通信制御部13に接続された状態で設けられている。カーファインダボタン38は、プッシュモーメンタリ式のボタンからなり、電気配線を介して通信制御部13に接続されている。また、電子キー3には、電子キー3の方位を検出するキー用コンパス40が搭載されている。キー用コンパス40は、電子キー3がその都度とる方位に関連する情報をコンパス情報として通信制御部13に出力する。電子キー3には、車両1の位置をユーザに通知する表示系として表示部41が設けられている。表示部41は、通信制御部13によって表示が管理され、電子キー3から見た車両1の位置(方向や距離)を画面表示する。なお、カーファインダ機能が位置教示機能に相当し、カーファインダ機能の実行が位置教示に相当し、カーファインダボタン38の操作が要求操作に相当する。
【0030】
通信制御部13は、カーファインダボタン38が操作されたことを検出すると、カーファインダボタン38が操作されたことを車両1に伝える通知としてカーファインダ機能トリガ電波ScfをRF送受信機39から高RF帯の信号で発信させる。なお、RF送受信機39は、カーファインダシステム33用の高いRF電波を発信可能な高周波数電波発信回路と、同じくカーファインダシステム33用の高いRF電波を受信可能な高周波数電波受信回路との両方が組み込まれ、通信制御部13からの指令により、選択的に送受信の一方の動作が可能となっている。また、図2に示すように、カーファインダ機能トリガ電波Scfには、電子キー3のIDコードと、カーファインダ機能を実行させることを要求する機能コードとしてカーファインダ機能実行要求と、車両1が電子キー3の位置を推定するときに使用する位置推定信号とが含まれている。なお、位置推定信号は、特に決められたデータ内容を持つものではなく、車両1が電子キー3の位置推定を行うときに使用するための電波である。カーファインダ機能で使用する車両1及び電子キー3の間の無線通信網の通信エリアは、スマート通信やワイヤレス通信よりも広い例えば数十メートルの狭域通信となっている。
【0031】
車両1は、このカーファインダ機能トリガ電波Scfの受信機がカーファインダECU34のRF受信機35となっているので、カーファインダ機能トリガ電波ScfをRF受信機35で受信する。カーファインダECU34は、RF受信機35でこのカーファインダ機能トリガ電波Scfを受信すると、まずはこのトリガ電波Scfに含まれるIDコードを、車内LAN11を介して照合ECU6に転送する。照合ECU6は、カーファインダECU34からIDコードを受け付けると、このIDコードに関してID照合を行い、このID照合が成立することを確認すると、ID照合成立の確認結果を、車内LAN11を介してカーファインダECU34に出力する。
【0032】
カーファインダECU34は、照合ECU6からID照合成立の確認結果を受け付けると、同じ位置推定要求内に含まれるカーファインダ機能実行要求を指令として、カーファインダ機能の実行を開始する。このとき、カーファインダECU34は、RF受信機35で受信するトリガ電波Scfにおいて位置推定信号の取り込み動作に入り、車両1から見た電子キー3の位置を割り出すキー位置算出を開始する。
【0033】
このキー位置算出として、まずカーファインダECU34は、RF受信機35で受信した位置推定信号を基に、カーファインダ機能トリガ電波Scfの電波到来方向、即ち車両1から見た東西南北が対応付けられていない電子キー3の方向(相対方向)を演算する。なお、この絶対位置方向演算は、カーファインダシステム33の電波受信機であるRF受信機35としてアダプティブアレイアンテナを使用する方式(アダプティブアレイアンテナ方式)が採用されている。アダプティブアレイアンテナ方式は、複数のアンテナ素子が配列されたアレーアンテナを用い、各々のアンテナ素子で受信した受信電波の振幅と位相の差により、受信電波の電波到来方向を割り出す方式である。この演算には、例えばビームフォーマ法、Capon法、線形予測法、最小ノルム法、MUSIC法、ESPRIT法等がある。
【0034】
カーファインダECU34は、このようにして電子キー3の相対方向を割り出すと、電子キー3の相対方向情報と、車両用コンパス37から取得する方位情報とを基に、車両1から見た東西南北が対応付けられた電子キー3の方向(絶対方向)を算出する。また、カーファインダECU34は、RF受信機35で受け付けた位置推定信号を基に、車両1及び電子キー3との間の距離も演算する。この距離演算は、アダプティブアレイアンテナで受信した受信電波を逆フーリエ変換することによって割り出す演算方式が採用されている。カーファインダECU34は、先のキー位置算出として、このようにして電子キー3の絶対方向と、車両1及び電子キー3間の距離との算出を実行する。
【0035】
カーファインダECU34は、このようにして電子キー3の絶対方向と、車両1及び電子キー3間の距離とを割り出すと、これら絶対方向及び距離を電子キー3に伝える通知として推定結果通知SpsをRF発信機36から車両1に向けて発信する。図3に示すように、推定結果通知Spsには、車両1に登録された電子キー3に対応したIDコードと、絶対方向及び距離に関連する情報としてキー位置関連情報とが含まれている。この推定結果通知Spsは、例えば約数GHzの高RF帯の信号により、RF発信機36から電子キー3に向けて発信される。また、キー位置関連情報には、絶対方向に関連する情報として絶対方向情報と、距離に関連する情報として距離情報とが含まれている。
【0036】
通信制御部13は、車両1のRF発信機36から発信された推定結果通知SpsをRF送受信機39で受信すると、まずはこの推定結果通知Spsに含まれるIDコードについてID照合を行う。通信制御部13は、このID照合が成立したことを認識すると、続いてはこの推定結果通知Sps内に含まれるキー位置関連情報の読み取りに移行する。このとき、通信制御部13は、推定結果通知Spsのキー位置関連情報に含まれる絶対方向情報を基に、電子キー3から見た東西南北が対応付けられた車両1の方向(相対方向)を算出する。なお、電子キー3から見た車両1の方向は、車両1から見た電子キー3の絶対方向の180度逆向きの値で算出される。
【0037】
通信制御部13は、電子キー3から見た車両1の相対方向を算出すると、この相対方向を表示部41に矢印で表示する。また、通信制御部13は、キー位置関連情報の読み取りの際、推定結果通知Spsのキー位置関連情報に含まれる距離情報を基に、車両1及び電子キー3の間の距離も確認し、この距離も表示部41に数字で表示する。これにより、表示部41には、図1に示すように、電子キー3から見た車両1の方向と、車両1及び電子キー3の間の距離とが表示されることから、ユーザは車両1の位置を見失っても、表示部41の案内により所有車両1を簡単に見つけることが可能となる。
【0038】
また、図4及び図5に示すように、車両1には、カーファインダシステム33(カーファインダ機能)の使用有無に応じて、車両使用時においてそのときの車両使用者(物品使用者)に科す本人認証の認証レベルを切り換える認証レベル変更システム42が設けられている。この場合、車両1には、例えば人体の指紋や声紋等の生体情報により本人認証を行う生体認証システム44が設けられている。また、車両1には、人体の指紋や声紋を検出するセンサとして生体情報検出センサ45が設けられている。生体情報検出センサ45は、例えば車外ドアハンドルノブ19に設けられるとともに、取得した生体情報を照合ECU6に出力しつつ、これが正規のものか否かを照合ECU6に検証させる。照合ECU6は、生体情報検出センサ45から取得した生体情報が自身に登録されたものと一致した際、生体認証システム44による本人認証(生体認証)が成立したと認識する。
【0039】
さらに、カーファインダECU34には、カーファインダ機能の使用有無を監視しつつこの監視結果を照合ECU6に通知するカーファインダ使用監視部46が設けられている。本例のカーファインダ使用監視部46は、カーファインダ機能トリガ電波Scfの受信有無を見ることにより、カーファインダ機能の使用有無を監視し、車両1がカーファインダ機能トリガ電波Scfを受信した際、カーファインダ機能が使用されたと認識し、カーファインダ機能トリガ電波Scfを受信しない際、カーファインダ機能が使用されていないと認識する。カーファインダ使用監視部46は、例えばカーファインダ機能が使用されていないときには、照合ECU6に何も通知を送らず、カーファインダ機能が使用されたとき、カーファインダ機能使用通知Dscを照合ECU6に出力する。なお、カーファインダ使用監視部46が監視手段に相当する。
【0040】
また、照合ECU6には、カーファインダ使用監視部46から取得する各種通知を基に電子キーシステム4の認証レベルを設定する認証レベル設定部47が設けられている。本例の認証レベル設定部47は、カーファインダ使用監視部46からカーファインダ機能使用通知を受け付けず、カーファインダ機能が使用されていないことを認識する際、認証レベルを低レベルに設定し、本人認証の成立条件をキー認証及び生体認証のいずれか一方のみで済むように設定する。一方、認証レベル設定部47は、カーファインダ使用監視部46からカーファインダ機能使用通知を受け付けて、カーファインダ機能が使用されたことを認識する際、認証レベルを高レベルに設定し、本人認証の迫り何時条件をキー認証及び生体認証の両方に設定する。なお、認証レベル設定部47が切換手段に相当する。
【0041】
次に、本例の本人認証システム2の動作について図4及び図5に従って説明する。
まずは、図4に示すように、キー所持者が駐車車両1に乗車するときに、カーファインダ機能を使用しない場合を想定する。この場合、カーファインダ機能を使用しなくとも車両1の駐車位置が分かるということは、このときのキー所持者は正規車両ユーザである可能性が高い。即ち、言うなれば、本人認証システム2でユーザに科す認証レベルを低レベルに、つまりユーザに科す本人認証を1つのみとしても問題はない状況であると言える。
【0042】
キー所持者が車両1に近づいて電子キー3が車外LF発信機7のリクエスト信号Srqの車外通信エリアに入り込むと、電子キー3はリクエスト信号Srqを受信する状態をとり、車両1及び電子キー3は本人認証システム2による認証動作に入る。このとき、電子キー3の通信制御部13は、LF受信機16で受信したリクエスト信号Srqに応答して、キー認証を実行すべくRF発信機17からID信号Sidを返信する。車両1の照合ECU6は、RF受信機9でこのID信号Sidを受信すると、このID信号Sidによりキー認証として車外照合を実行し、ID信号Sid内のIDコードが車両1のものと一致すれば、車外照合が成立したと認識する。
【0043】
ところで、カーファインダ機能が使用されていない場合、照合ECU6はカーファインダECU34からカーファインダ機能使用通知Dscを受け付けていない。よって、照合ECU6は、本人認証システム2の認証レベルを低レベルに設定し、本人認証の成立条件を、キー認証及び生体認証の一方が成立することを条件とする。よって、照合ECU6は、車外照合(キー認証)が成立すれば、この条件成立のみを以て、本人認証の成立を認定する。このため、キー所持者が車外ドアハンドルノブ19に触れれば、このタッチ操作によって車両1のドアロックが全席解錠される。
【0044】
一方、図5に示すように、キー所持者が駐車車両を見つけ出して乗車するときに、カーファインダ機能を使用する場合を想定する。この種のカーファインダ機能は、正規車両ユーザが車両1の駐車位置が分からなくなってしまって、車両位置を知りたいときに使用することが前提であるが、例えば電子キー3を落としたときに、この電子キー3を拾った第三者が車両盗難を目的として車両1を探し当てて盗み取るために使用する可能性も否めない。よって、拾われた電子キー3でカーファインダ機能により車両1を特定されて車両1が盗難行為を受ける状況に陥っても、車両1を盗難され難くすることが本例の技術内容である。
【0045】
ユーザが電子キー3のカーファインダボタン38を押し操作すると、電子キー3はRF発信機17からカーファインダ機能トリガ電波Scfを発信する。カーファインダECU34は、カーファインダ機能トリガ電波Scfに含まれるIDコードのID照合が成立すれば、同じカーファインダ機能トリガ電波Scfに含まれる位置推定信号を用い、アレーアンテナ方式に沿って電子キー3の電波到来方向を演算しつつ、この演算により割り出した電波到来方向と、車両用コンパス37から取得するコンパス情報とを基に電子キー3の絶対方向を算出する。カーファインダECU34は、電子キー3の絶対方向を算出すると、この絶対方向に関連する情報として推定結果通知SpsをRF発信機36から電子キー3に向けて発信する。
【0046】
電子キー3は、この推定結果通知SpsをRF送受信機39で受信すると、受け付けた推定結果通知Spsと、キー用コンパス40から取得するコンパス情報とを基に、車両1の駐車方向を算出する。また、電子キー3は、車両1の駐車方向の算出とともに、RF送受信機39で受信した推定結果通知Spsに含まれる距離情報から、車両1及び電子キー3の間の距離を確認する。そして、電子キー3は、車両1の駐車方向と、車両1及び電子キー3間の距離とを表示部41に表示し、駐車車両1を見失ったユーザに対して、その車両1の駐車位置を方向及び距離により教示する。
【0047】
また、カーファインダ使用監視部46は、カーファインダ機能が使用されたことを認識すると、車内LAN11を介して照合ECU6にカーファインダ機能使用通知Dscを出力し、カーファインダ機能が使用されたことを照合ECU6に通知する。照合ECU6は、カーファインダ使用監視部46からカーファインダ機能使用通知Dscを受け付けると、例えば自身のメモリ18に高レベル設定フラグを立てるなどして、本人認証システム2の認証レベルを高レベルに設定する。よって、このときの本人認証システム2の本人認証の成立条件は、キー認証及び生体認証の両方の成立が条件とされる。照合ECU6は、本人認証に基づく車両動作(ドアロック解錠等)が実行されるまで高レベル設定フラグを立てた状態にして、高レベル設定状態を維持する。
【0048】
カーファインダ機能の案内により車両1を見つけたユーザが車外LF発信機7の車外通信エリアに入り込むと、車両1及び電子キー3の間で車外照合が実行される。そして、このときのキー所持者が正規ユーザであって、電子キー3から発信されるIDコードが車両1のものと一致すれば、車外照合が成立する。しかし、カーファインダ機能を使用した際の本人認証システム2の認証レベルは高レベルに設定されているので、照合ECU6は車外照合成立の条件だけでは車両1のドアロックの解錠を許可しない。よって、車外照合が成立した状況下のみで車外ドアハンドルノブ19に触れても、車両1のドアロックは解錠されない。
【0049】
駐車車両1の横まで来たキー所持者は、車外ドアハンドルノブ19に備え付けてある生体情報検出センサ45に生体情報を入力する。ここで、例えば生体情報検出センサ45が指紋センサであれば、同センサをタッチ操作する。生体情報検出センサ45は、生体情報を入力すると、この生体情報を照合ECU6に出力する。照合ECU6は、生体情報検出センサ45から生体情報を取得すると、この生体情報が正しいか否かを見る生体認証を実行する。照合ECU6は、生体情報検出センサ45から取得した生体情報と、自身のメモリ18に登録された生体情報と一致することを確認すると、生体認証が成立したことを認識する。
【0050】
照合ECU6は、高レベル設定状態の動作状態をとる際、キー認証及び生体認証の両方の成立可否を見ることで本人認証の成立を判断するので、この例のようにキー認証及び生体認証の両方が成立したことを確認すると、本人認証が成立したと認識する。照合ECU6は、本人認証が成立したことを確認すると、ドアECU10にドアロック解錠要求を出力する。ドアECU10は、ドアロックが施錠状態の際にこのドアロック解錠要求を受け付けると、ドアロックモータ12を駆動して施錠状態のドアロックを解錠する。これにより、キー所持者は車両ドアを開けて車内に乗車可能となる。なお、照合ECU6は、ドアECU10からドアロック解錠完了通知を受け付けると、自身のメモリ18に立てていた高レベル設定フラグをクリアし、本人認証システム2の高レベル設定状態を解除する。
【0051】
また、もし仮にユーザが落とした電子キー3が第三者に拾われて、この第三者が車両盗難を目的として、拾った電子キー3の対応車両を特定すべく、カーファインダ機能を使用した場合を想定する。このとき、第三者がカーファインダ機能で車両1を特定したとき、車両1の本人認証システム2は高レベル設定状態に設定される。よって、このときの第三者に科される本人認証はキー認証の成立のみならず生体認証の成立も必要となるので、第三者は車両1を特定できても、生体認証を成立させることまではできないので、本人認証を成立させられない。よって、第三者が電子キー3により車両ドアロックを解錠しようとしても、ドアロックが施錠状態を維持するので、第三者により車両ドアを不法に解錠させられずに済む。このため、第三者に勝手に車内に入られずに済むので、車両1が盗難行為に遭う可能性も低く抑えられる。
【0052】
なお、キー認証は、必ずしもキー操作フリーシステム5に準じたキー照合に限らず、例えばワイヤレスキーシステム30に準じたキー照合でもよい。この場合は、ワイヤレスキーシステム30によるキー照合が成立したとき、その成立認識を一定時間の間で保持しておくか、或いはワイヤレスキー操作よりも先に生体認証を実行する場合には、生体認証の成立を一定時間の間、保持しておく処理が必要となる。この場合であっても、カーファインダ使用時には複数の認証成立をユーザに科すことになるので、車両盗難に対するセキュリティ性を高いものとすることが可能となる。
【0053】
さて、車両使用者が車両1を使用する際に科される本人認証は、カーファインダ機能を使用しなかったとき、認証成立条件がキー認証及び生体認証の一方の成立とされて、認証レベルが低レベルに設定され、カーファインダ機能が使用されたとき、認証成立条件がキー認証及び生体認証の両方の成立とされて、認証レベルが高レベルに設定される。このため、もしユーザが落とした電子キー3を第三者に拾われ、この第三者が車両盗難を企てて電子キー3のカーファインダ機能により車両1を見つけ出しても、第三者では生体認証まで成立させられないので、本人認証が成立しない。よって、第三者に車両ドアロックを勝手に解錠させられずに済むので、車両盗難に対するセキュリティ性を高いものとすることが可能となる。
【0054】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)カーファインダ機能の使用有無に応じて、本人認証システム2の認証レベルが切り換えられるので、電子キー3を拾ってそのカーファインダ機能により車両1を見つけ出された第三者に、車両1を不正に使用させずに済む。よって、電子キー3にカーファインダ機能を搭載していても、車両盗難に対するセキュリティレベルを高いものとすることができる。
【0055】
(2)本人認証システム2の認証レベル切り換えは、キー認証及び生体認証の一方の成立を条件とすることで低レベルに設定し、キー認証及び生体認証の両方の成立を条件とすることで高レベルに設定するように、成立を科す認証の個数を切り換えることにより実行する。このため、認証成立を科す認証個数を変えるという簡単な方式により、本人認証システム2の認証レベルの高低切り換えを行うことができる。
【0056】
(3)キー認証以外に車両使用者に科すその他の認証として生体認証を使用したので、キー以外の認証を、生体認証という非常に認証レベルの高い形式によって実行することができる。
【0057】
(4)正規ユーザに対しては、ワイヤレス照合やスマート照合の1つの操作のみの認証行為で済むので、ユーザにとっては高い利便性を確保することができる。
(5)高レベル認証のときに追加する認証機能としてドア系の認証(車両ドアロック施解錠に関する認証)を採用した場合、正規ユーザ以外を車内に入らせることを不許可とするので、車両が第三者により勝手に使用される状況を生じ難くすることができる。また、高レベル認証のときに追加する認証機能としてエンジン系の認証(エンジン始動に関する認証)を採用した場合、追加認証機能を車内に設ける構成になるので、例えば雨等に対する防水対策を講じる必要がないので、実施に際して装置が多部品化、複雑化しない。
【0058】
(6)カーファインダ機能は、アダプティブアレイアンテナ式RF受信機35、車両用コンパス37及びキー用コンパス40を用い、これら部品群から取得する各種情報を基に、電子キー3から見た車両1の方向や距離を割り出す方式である。ところで、車両1や電子キー3の位置算出は例えばGPS(Global Positioning System)を使用して割り出すことも可能であるが、GPSではビルなどの大きな建造物に影響を受け易いという欠点があるので、細かな位置算出精度を確保できない問題がある。しかし、本例のような割り出し方式を用いれば、この種のコンパス式はGPS式に比べて高い位置算出精度を持つ特性があるので、電子キー3から見た車両1の方向や距離を精度よく算出することができる。
【0059】
(7)カーファインダ機能トリガ電波Scfと推定結果通知Spsとは、約数GHzの同じ周波数の信号で発信されるので、例えば車両1が位置推定は実行できたものの、その推定結果を電子キー3に伝えることができないという状況を生じ難くすることができる。
【0060】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・ カーファインダ機能を使用しないときの本人認証システム2は、必ずしもキー認証及び生体認証の一方の成立を認証成立の条件とすることに限定されない。例えば、カーファインダ機能を使用しない場合、キー認証及び生体認証のうち生体認証は無効化し、キー認証のみにより本人認証を行うものでもよい。この場合、生体情報検出センサ45を常時起動させておかずに済むので、その分だけ車両1の電源に関して省エネルギー化を図ることができる。
【0061】
・ 本人認証システム2の認証レベルを高レベルに設定する際、このときにユーザに科す認証成立の個数は必ずしも2つに限らず、3つ以上としてもよい。
・ 本人認証システム2の認証レベル切り換えは、車両使用者に科す認証成立を1つ又は複数というように個数を変える方式に限定されない。例えば、1つの指紋センサを使用し、認証レベルが低レベルのときは指紋を簡易的に見ることにより照合を行い、認証レベルが高レベルのときは指紋を細かく見て照合を行うというように、1つの認証手段を使用して、その実行レベルを切り換える方式でもよい。
【0062】
・ その他の認証は、必ずしも生体認証に限らず、例えば例えばICカード等によるRFIDを使用する認証でもよい。
・ 車両動作は、必ずしも車両ドアロックの解錠に限定されず、例えば車両ドアロックの解錠やエンジン始動等に適用してもよい。
【0063】
・ カーファインダ機能は、アダプティブアレイアンテナ式RF受信機35、車両用コンパス37及びキー用コンパス40を用い、これら部品群から取得する各種情報を基に、電子キー3から見た車両1の方向や距離を割り出す方式に限定されない。例えば、車両1にGPSが搭載されていれば、このGPSから取得する車両位置情報を基に、車両1及び電子キー3の位置関係を割り出すものでもよい。
【0064】
・ カーファインダ機能は、車両GPSを使用するものの場合、例えば車両GPS情報(車両位置情報)を降車時(例えばエンジンオフ時)に電子キー3に登録し、同キー3で位置教示要求操作があったときに、この情報をキー上で表示する方式を使用してもよい。
【0065】
・ 電子キー3の車両1の位置表示は、必ずしも矢印に限定されない。例えば、車両1は電子キー3の位置(方向及び距離)を算出するとともに、車両1の現在位置を車載GPS等から算出しつつ、車両1及び電子キー3の位置関係を表したマップデータを作成する。そして、車両1がこのマップデータを電子キー3に発信し、このマップデータ基づく地図が電子キー3の表示部41に表示されるものでもよい。
【0066】
・ カーファインダECU34は、カーファインダ機能が使用されていないとき、例えばカーファインダ機能未使用通知を照合ECU6に出力することにより、その旨を伝えてもよい。
【0067】
・ 電子キー3は、例えばGPSを搭載していれば、キー位置情報を車両1に送って、キー位置を車両1に通知する形式のものでもよい。
・ 電子キーシステム4のRF受信機9と、カーファインダシステム33のRF受信機35とは、1つに統合されてもよい。
【0068】
・ 電子キーシステム4とカーファインダシステム33との通信エリアは、各々異なることに限定されず、これらが同じ領域をとっていてもよい。また、信号周波数は、種々の周波数を使用できることは言うまでもない。
【0069】
・ カーファインダシステム33は、電子キーシステム4に属する一機能をとることに限定されず、例えば電子キーシステム4から独立したシステムとなっていてもよい。
・ 位置推定(アダプティブアレイアンテナ方式に準ずる位置算出)は、必ずしも車両1側で行われることに限定されず、電子キー3側で行ってもよい。即ち、電子キー3にアダプティブアレイアンテナを組み込み、車両1から受け付けた電波を基に車両1の位置を推定して、この推定結果を矢印等でユーザに教示するものでもよい。
【0070】
・ 位置推定は、必ずしも位置推定信号で行うことに限定されず、IDコードや機能コードの電波で行ってもよい。
・ 携帯端末は、必ずしも電子キー3(要はキー部品)であることに限定されず、例えば携帯電話や携帯型パーソナルコンピュータ等でもよい。
【0071】
・ 車両位置の教示形式は、必ずしも単なる矢印に限らず、例えば地図画面により車両位置を表すものでもよい。
・ 表示部41における車両位置の表示(矢印及び距離表示)は、例えば一定時間において表示が行われた後に自動で消去されるものでもよいし、或いは例えばカーファインダボタン38が押されるなどの所定操作が行われると消去されるものでもよい。
【0072】
・ 位置教示は、必ずしも方向及び距離の両方を表示することに限らず、一方のみが表示されればよい。また、位置教示は、必ずしも画面表示をとることに限定されず、例えば音声報知を採用してもよい。
【0073】
・ 本人認証システム2は、必ずしも車両1に適用されることに限らず、使用時において照合を必要とする各種機器や装置に適用可能である。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0074】
(1)請求項1〜5のうちのいずれかにおいて、前記物品は、車両であり、前記物品使用者による物品操作は、前記車両のドアロック解錠操作である。この構成によれば、車両のキーである携帯端末を拾って、携帯端末の位置教示機能により車両位置を探し当てた第三者に、勝手に車内に入らせずに済むので、車両盗難に対するセキュリティ性を高いものとすることが可能となる。
【0075】
(2)請求項1〜5、前記技術的思想(1)において、前記物品は、車両であり、前記物品使用者による物品操作は、前記車両のエンジン始動操作である。この構成によれば、車両のキーである携帯端末を拾って、携帯端末の位置教示機能により車両位置を探し当てた第三者に、勝手に車両のエンジンをかけられずに済むので、車両盗難に対するセキュリティ性を高くすることが可能となる。
【0076】
(3)請求項1〜5、前記技術的思想(1),(2)のいずれかにおいて、前記携帯端末は、物品に対するキー位置付けの端末である。
(4)請求項1〜3、前記技術的思想(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記位置教示機能は、前記物品及び前記携帯端末の一方がこれらの他方から受信する高周波数の信号(電波やデータを含む)を用いて当該他方の位置を推定することにより互いの前記位置関係を割り出す。この構成によれば、位置推定に使用する無線信号に高周波の信号を使用したので、多くのデータ量を送信することが可能となる。
【0077】
(5)請求項1〜5、前記技術的思想(1)〜(4)のいずれかにおいて、前記位置教示機能は、前記物品及び前記携帯端末のうち信号受信側に受信機として複数のアンテナ素子が設けられ、前記携帯端末から発信された高周波電波を複数の前記アンテナ素子で受信すると、これら当該アンテナ素子で受信した各々の前記高周波電波が持つ受信パラメータを基に、前記携帯端末の位置推定を推定して当該位置を割り出す。
【0078】
(6)請求項1〜5、前記技術的思想(1)〜(5)のいずれかにおいて、前記位置教示機能は、前記物品が前記携帯端末から受信する無線信号を基にして、前記物品から見た前記携帯端末の位置を推定するとともに、その推定結果を前記携帯端末に送り、前記携帯端末が当該推定結果を基に当該携帯端末から見た前記物品の位置を求めることにより、当該物品との間の位置関係を割り出す。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】一実施形態におけるカーファインダシステムの概略構成を示すブロック図。
【図2】カーファインダ機能トリガ電波のデータ構造を示すデータ概念図。
【図3】推定結果通知のデータ構造を示すデータ概念図。
【図4】認証レベルが低レベルのときのカーファインダシステムを示すブロック図。
【図5】認証レベルが高レベルのときのカーファインダシステムを示すブロック図。
【符号の説明】
【0080】
1…物品としての車両、3…携帯端末(キー)としての電子キー、46…監視手段としてのカーファインダ使用監視部、47…切換手段としての認証レベル設定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に位置教示を要求する要求操作が携帯端末で実行された際、当該携帯端末と前記物品との間の位置関係を割り出し、前記携帯端末上でユーザに物品位置を教示する位置教示機能を持った物品に使用され、物品使用者が前記物品を使用する際に当該物品使用者との間で本人認証を行うとともに当該認証が成立すれば前記物品の使用を許可する位置教示機能備え付け物品の認証システムにおいて、
前記位置教示機能の使用有無を監視する監視手段と、
前記位置教示機能の使用有無に応じて、前記認証のレベルの高低を切り換える切換手段と
を備えたことを特徴とする位置教示機能備え付け物品の認証システム。
【請求項2】
前記切換手段は、前記位置教示機能の使用を経た後の認証の場合、前記物品使用者に複数の認証を科し、前記位置教示機能の使用を経ていない後の認証の場合、前記物品使用者に科す認証個数を、前記位置教示機能の使用を経た後の認証のときよりも少なくすることにより、前記認証の強弱レベルを切り換えることを特徴とする請求項1に記載の位置教示機能備え付け物品の認証システム。
【請求項3】
前記認証には、キーが持つキーコードを物品のものと照らし合わせることにより認証を行うキー認証と、前記認証において前記キーを使用しないその他の認証とがあり、
前記切換手段は、前記位置教示機能の使用を経た後の認証の場合、前記キー認証及び前記その他の認証の両方を前記認証として科し、前記位置教示機能の使用を経ない後の認証の場合、前記キー認証及び前記その他の認証のうち一方のみを前記認証として科すことを特徴とする請求項1又は2に記載の位置教示機能備え付け物品の認証システム。
【請求項4】
前記認証には、キーが持つキーコードを物品のものと照らし合わせることにより認証を行うキー認証と、前記認証において前記キーを使用しないその他の認証とがあり、
前記切換手段は、前記位置教示機能の使用を経た後の認証の場合、前記キー認証及び前記その他の認証の両方を前記認証として科し、前記位置教示機能の使用を経ない後の認証の場合、前記キー認証のみを前記認証として科すことを特徴とする請求項1又は2に記載の位置教示機能備え付け物品の認証システム。
【請求項5】
前記その他の認証は、前記物品使用者が身体上に持つ生体情報を使用して当該認証を行う生体認証であることを特徴とする請求項3又は4に記載の位置教示機能備え付け物品の認証システム。
【請求項6】
物品に位置教示を要求する要求操作が携帯端末で実行された際、当該携帯端末と前記物品との間の位置関係を割り出し、前記携帯端末上でユーザに物品位置を教示する位置教示機能を持った物品に使用され、物品使用者が前記物品を使用する際に当該物品使用者との間で本人認証を行うとともに当該認証が成立すれば前記物品の使用を許可する位置教示機能備え付け物品の認証方法において、
前記位置教示機能の使用有無を監視手段により監視し、前記認証の強弱レベルを切換手段により前記位置教示機能の使用有無に応じて切り換えることを特徴とする位置教示機能備え付け物品の認証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−39776(P2010−39776A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202117(P2008−202117)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】