位置検出システム
【課題】建物内の床面と天井面との間の既知距離を用いることで、誤差を考慮して位置を検出することにより求めた位置の信頼性を高める。
【解決手段】送信装置1は、建物内で床面上を移動する移動体に搭載され、疎密波を間欠的に送波する疎密波送波部11を備える。受信装置2は、天井面の定位置に設置され、疎密波を受波する疎密波受波部21を備える。位置演算部24は、疎密波受波部21で受波した疎密波の到来方向を求め、さらに到来方向の誤差範囲から送信装置1が移動する平面内での送信装置1の位置の誤差範囲を求める。送信装置1の位置の誤差範囲の中心座標を送信装置1の座標位置として求め、さらに、誤差範囲の中で当該座標位置からの最大距離を最大誤差として求める。
【解決手段】送信装置1は、建物内で床面上を移動する移動体に搭載され、疎密波を間欠的に送波する疎密波送波部11を備える。受信装置2は、天井面の定位置に設置され、疎密波を受波する疎密波受波部21を備える。位置演算部24は、疎密波受波部21で受波した疎密波の到来方向を求め、さらに到来方向の誤差範囲から送信装置1が移動する平面内での送信装置1の位置の誤差範囲を求める。送信装置1の位置の誤差範囲の中心座標を送信装置1の座標位置として求め、さらに、誤差範囲の中で当該座標位置からの最大距離を最大誤差として求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒質の圧力変化を周期的に繰り返す超音波や媒質の圧力変化が単発的であるいわゆる圧力波のような疎密波を利用して検出対象の位置を検出する位置検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、位置検出の検出対象である移動体に超音波を送波する送信装置(超音波発信機)を設け、建物内の天井面に設置された少なくとも3個の受信装置(超音波受信機)で送信装置からの超音波を受波し、送信装置から送波された超音波が受信装置に受信されるまでの時間を用いて位置演算部(演算処理手段)により移動体の位置を求める位置検出システムが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の位置検出システムでは、受信装置から送信装置に対して赤外線を伝送媒体とする許可信号を送信し、送信装置では許可信号を受け取ると超音波を送波する。したがって、受信装置では許可信号を送信してから超音波を受波するまでの時間を計測することで、送信装置までの距離を算出することができ、3個の受信装置において送信装置までの距離を算出するから、3個の受信装置の既知の位置に基づいて送信装置の位置を特定することができる構成になっている。
【特許文献1】特開2003−279640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、各受信装置ではそれぞれ送信装置との相対距離を検出するから、送信装置の座標位置を特定するには、3箇所の受信装置の座標位置を正確に特定しなければならない。つまり、受信装置を設置する際に3箇所の各設置場所の座標位置を正確に計測することが必要であって、受信装置の設置施工に手間がかかるという問題を有している。
【0005】
また、この種の位置検出システムでは検出した位置に誤差が含まれるが、特許文献1に記載の構成では、誤差については考慮されていないから、求めた位置の信頼性が保証できない。
【0006】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、最小構成では受信装置と送信装置とを1台ずつ用いるだけで位置を検出することができるようにして設置施工の手間を省き、しかも、建物内の既知の高さ寸法を用いることで、誤差を考慮して位置を検出することにより求めた位置の信頼性を高めた位置検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、建物内で床面上を移動する移動体に搭載され疎密波を間欠的に送波する疎密波送波部を有した送信装置と、床面の上方である天井面の定位置に設置され送信装置から送波された疎密波を受波することにより送信装置が存在する相対位置を検出する受信装置とを備え、受信装置は、疎密波送波部から送波された疎密波を受波するとともに受波した疎密波を電気信号である受波信号に変換する受波素子を複数個配列したアレイセンサからなる疎密波受波部と、疎密波受波部の各受波素子による疎密波の受波時刻の時間差と各受波素子の配置位置とに基づいて送信装置の位置を受信装置に設定した三次元の直交座標における座標位置として求める送信位置演算部とを備え、送信位置演算部は、前記直交座標における一つの座標軸に直交する平面内で送信装置の座標位置を求めるように前記直交座標を設定してあり、前記座標軸と他の座標軸の各一方とをそれぞれ含む2平面内で疎密波の到来方向をそれぞれ求めるとともに、疎密波受波部の角度分解能を到来方向の誤差範囲として用いることにより送信装置の座標位置の誤差範囲を求め、当該誤差範囲の中心座標を送信装置の座標位置として求めることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、建物内で床面と天井面との高さ寸法を既知寸法に用いることで、受信装置に設定した直交座標において送信装置からの疎密波の到来方向を角度の2成分で表すとともに、各角度成分ごとの角度分解能から座標位置の誤差範囲を求め、送信装置の存在する平面内における誤差範囲の中心位置を求めているから、送信装置の座標位置を誤差を考慮して適正に求めることができる。その結果、求めた位置の信頼性を高めることができる。なお、送信装置の座標位置は疎密波の到来方向として求めた角度に対応する位置として求めることが可能であるが、このようにして求めた座標位置は、角度分解能の範囲から得られる誤差範囲の中心の座標位置ではないから、求めた座標位置に対して誤差範囲が非対称になるのに対して、角度分解能を到来方向の誤差範囲として用い、その誤差範囲に対応する座標位置の誤差範囲を求め、当該誤差範囲の中心座標を送信装置の座標位置と定めることで、求めた送信装置の座標位置を中心として誤差範囲を対称的にすることができ、誤差を低減することができる。
【0009】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記送信装置について求めた誤差範囲のうち中心座標からの最大距離を、送信装置の座標位置の最大誤差として求めることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、最大誤差を評価する値を得ることができるから、求めた送信装置の座標位置に対する信頼性を評価することができる。
【0011】
請求項3の発明では、請求項1または請求項2の発明において、前記疎密波送波部は、媒質の圧力変化が単発的に生じる圧力波を送波することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、疎密波の送波間隔を短くすることが可能であり、移動体の位置を細かく計測することができる。
【0013】
請求項4の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明において、前記疎密波受波部は、複数個の前記受波素子を二次元的に配列してあることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、1つの疎密波受波部において直交座標系の2平面内における疎密波の到来方向を求めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構成によれば、既知の高さ寸法を用いることにより、床面の上での二次元座標における送信装置の座標位置を信頼性よく求めることができ、また求めた座標位置に対して誤差範囲を対称的にすることができ、誤差を低減することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施形態1)
本実施形態では、位置検出システムとして、図2に示すように、建物内で床面FL上を移動する移動体(たとえば、ショッピングカート)を位置検出の検出対象Obとし、検出対象Obが移動した位置を追跡する動線計測システムを例示する。
【0017】
検出対象Obの位置を追跡するために、検出対象Obの上面には疎密波を送波する送信装置1を搭載し、床面FLの上方である天井面CLの定位置には疎密波を受波する受信装置2を設置する。本実施形態では、疎密波として媒質(空気)の圧力変化が単発的に生じる圧力波を用いる。
【0018】
送信装置1は、図1に示すように、疎密波を送波する疎密波送波部11と、電磁波(赤外線または電波)を伝送媒体としたワイヤレス信号を送信するトリガ送信部12および識別情報送信部13とを備える。疎密波送波部11、トリガ送信部12、識別情報送信部13は、それぞれドライバ14〜16を介して制御部10からの指示を受けて動作する。制御部10はワンチップマイコンからなり、CPU、RAM、ROM、シリアル通信用インターフェイスを包含している。疎密波送波部11からは疎密波を間欠的に送波し、トリガ送信部12は疎密波の送信と同時にトリガ信号としてのワイヤレス信号(以下では、単に「トリガ信号」という)を送信する。また、識別情報送信部13は識別データを含むワイヤレス信号(以下では、「識別情報信号」という)をトリガ信号に引き続いて送信する。識別データは制御部10に設定されており、送信装置1ごとに固有の識別データが設定される。疎密波の送波タイミング、トリガ信号の送信タイミング、識別情報信号の送信タイミングは制御部10において制御される。疎密波とトリガ信号と識別情報信号とは所定の時間間隔で間欠的に出力される。上述した送信装置1の機能は制御部10を構成しているワンチップマイコンに適宜のプログラムを搭載することにより実現される。
【0019】
受信装置2は、送信装置1に設けた疎密波送波部11から送波された疎密波を受波する疎密波受波部21を備え、疎密波受波部21は疎密波を受波すると電気信号である受波信号を出力する。つまり、疎密波受波部21は疎密波を受波信号に変換する。また、受信装置2は、送信装置1に設けたトリガ送信部12から送信されたトリガ信号を受信するトリガ受信部22と、識別情報送信部13から送信された識別情報信号を受信する識別情報受信部23とを備える。トリガ受信部22ではトリガ信号を波形整形し、識別情報受信部23は識別情報信号からキャリアを除去する。トリガ受信部22の出力は受信装置の動作開始のタイミングを指示し、受信装置2に設けた位置演算部24およびタイマ部25を起動する。また、識別情報受信部23から出力されるパルス列からなる識別データはメモリ26に格納される。タイマ部25は現在時刻を計時する時計機能も備え、トリガ受信部22でトリガ信号を受信した時刻がメモリ26に格納される。
【0020】
位置演算部24は、トリガ受信部22の出力が発生した時点で待機状態から受信状態に移行し、受信状態において得られる疎密波受波部21の出力を用いて送信装置1の位置を算出する。受信状態はあらかじめ定めた一定時間継続する。
【0021】
疎密波受波部21の出力を用いて得られる送信装置1の位置は、受信装置2に対する送信装置1の相対位置であり、図3に示すように受信装置2に設定された直交座標の座標位置として求められる。ここに、本実施形態では床面FLから天井面CLまでの高さは一定とみなしている。したがって、検出対象Obの移動する空間において送信装置1の高さ位置は変化しないから、直交座標を送信装置1を含む床面FLに平行な平面内の二次元座標として扱う。位置演算部24は、直交座標での送信装置1の座標位置を求める送信位置演算部の機能を有する。送信位置演算部の動作については後述する。
【0022】
メモリ26には、位置演算部24で求めた送信装置1の座標位置と、当該座標位置に位置していたときの時刻(トリガ受信部22がトリガ信号を受信した時刻)と、当該送信装置1の識別データとが対応付けられて1レコードとして格納される。メモリ26に格納されたデータは制御部20において必要に応じて読み出され、出力部27を通して外部の管理装置などに出力される。制御部20はマイクロコンピュータを主構成要素としており、CPU、RAM、ROM、シリアル通信インターフェイスを包含している。また、出力部27は出力用のインターフェイスであって、TIA/EIA−232−EやUSBなどの仕様のシリアルインターフェイスのほかSCSIのような仕様のパラレルインターフェイスなどが採用される。出力部27から取り出された検出結果は、別に設けた管理装置において利用され、本実施形態では、検出対象Obが移動した経路を追跡することにより動線を計測する。
【0023】
受信装置2の各部の構成をさらに詳しく説明する。疎密波受波部21は、複数個の受波素子を配列したアレイセンサであって、位置演算部24では各受波素子による疎密波の受波時刻の時間差と受波素子の配列位置とに基づいて疎密波の到来方向、すなわち検出対象Obの存在する方向を求める。疎密波の到来方向は、図3に示すように、直交座標におけるxz平面とyz平面との各角度として求められる。以下では、xz平面内での角度をθx、yz平面内での角度をθyと記述する。つまり、到来方向は(θx,θy)の対で表される。
【0024】
疎密波の到来方向(θx,θy)を求めるには、疎密波を受波した受波素子での受波時刻の時間差を含む情報が必要であるから、疎密波受波部21から出力される受波信号をA/D変換器24aをデジタル信号である受波データに変換した後、各受波素子に対応する出力を一時記憶するデータ格納部24bに格納する。疎密波受波部21は到来する疎密波を常時受波しているが、位置演算部24での処理はトリガ受信部22の出力が得られてから一定時間である受波ゲート期間に制限される。
【0025】
データ格納部24bに格納された受波データは受波ゲート期間の終了後に処理部24cに読み込まれ、各受波素子での受波時刻の時間差に相当する時間を求めるために、隣接する受波素子に対応する受波データを時間軸方向に既定した時間分だけシフトして加算する。処理部24cはマイクロコンピュータを主構成要素とする。
【0026】
この処理について簡単に説明する。いま、疎密波受波部21において受波素子40が図4に示すように同一平面上において一次元的に等間隔で配列されているものとする(実際には二次元的に配列されている)。受波素子40が配列された面に対する疎密波の波面の角度がθ0であるとき、疎密波の到来方向もθ0になる。疎密波の速度をc、受波素子40の配列ピッチ(中間間の距離)をLとすれば、到来方向がθ0である疎密波の波面が隣接する受波素子40に到達する際の時間差ΔT0は、ΔT0=L・sinθ0/cである。すなわち、θ0=sin−1(ΔT0・c/L)であって、時間差ΔT0を求めると到来方向θ0を求めることができる。
【0027】
以上の関係から、各受波素子40で受波した疎密波に対応する受波信号を到来方向θ0に対応した時間差ΔT0分だけ遅延させると、時間軸方向において受波信号の位置を一致させることができることがわかる。たとえば、隣り合う3個の受波素子40から図5(a)〜(c)のような受波信号が出力され、隣接する受波素子40から出力される受波信号が時間差ΔT0を有しているものとする。この場合、隣接する受波素子40から得られる受波信号を、適宜の遅延手段によって互いにΔT0だけ遅延させる。つまり、図5(c)の受波信号を2ΔT0だけ遅延させ、図5(b)の受波信号をΔT0だけ遅延させると、両受波信号は時間軸方向において図5(a)の受波信号の位置に一致する。各受波素子40の出力である受波信号の時間軸方向における位置が一致していれば、これらの受波信号を加算したときに加算結果は大きな振幅になる。言い換えると、加算結果の振幅が大きければ、疎密波の到来方向θ0は当該遅延時間ΔT0に対応しているといえる。
【0028】
本実施形態では、受信信号を時間軸方向に偏移させるのではなく、受波データを時間軸方向に偏移させる構成を採用しているが、到来方向θ0を算出する目的においては差異はない。しかして、処理部24cではデータ格納部24bに格納された受波データに対して、あらかじめ設定した複数種類の遅延時間を適用して遅延させた後に加算し、加算結果が最大になるときの遅延時間を求める。この遅延時間は時間差ΔT0に対応するから、遅延時間にあらかじめ到来方向θ0を対応付けておくことにより、疎密波の到来方向をただちに求めることができる。遅延時間は、たとえば到来方向を2度刻みで検出することができるように設定される。この場合、図4において受波素子40が配列された方向の角度分解能は2度になる。上述のように受波データを時間軸方向に偏移させた後に加算する処理を遅延加算処理と呼ぶ。遅延加算処理は処理部24cに設定したプログラムにより実現される。
【0029】
図4の例では説明を簡単にするために受波素子40を一直線上に配列した例で説明したが、疎密波受波部21は、実際には、一平面上においてx方向とy方向とに複数個ずつの受波素子40をたとえば十文字状に配列した二次元配列を有している。この構成により、xz平面内での到来方向θxと、yz平面内での到来方向θyとを同時に求めることができる。つまり、疎密波の到来方向を(θx,θy)の組合せで求めることができる。
【0030】
トリガ信号と疎密波とは同時に出力され、トリガ送信部12からのトリガ信号の送信とトリガ受信部22でのワイヤレス信号の受信とは実質的に同時とみなせるから、トリガ受信部22でのトリガ信号の受信時刻と、疎密波受波部21での疎密波の受波時刻との時間差は、実質的に疎密波が媒質中を伝播する時間とみなすことができる。したがって、ワイヤレス信号を受信してから疎密波を受波するまでの時間によって受信装置2に対する送信装置1の相対的な距離を知ることができる。つまり、送信装置1の方向と距離とを知ることができるから、受信装置2では送信装置1の三次元位置を求めることができる。ただし、上述したように本実施形態では床面FLの上の二次元座標での座標位置を求める。つまり、三次元位置に対して既知の高さ寸法を用いることにより床面FLの上での二次元座標を求めることができる。なお、この演算は処理部24cにおいて行う。
【0031】
以上説明したように、受信装置2では送信装置1からのトリガ信号を受信すると、受波ゲート期間の制限内で受波信号を待ち受け、受波ゲート期間内に受波した疎密波のみを用いて疎密波の到来方向および送信装置1までの距離を算出し、検出対象Obの床面FLの上の二次元座標(直交座標)での座標位置を求める。また、トリガ信号を受信した時刻およびトリガ信号に対応する識別データをメモリ26に格納する。
【0032】
なお、データ格納部24bの容量は、受波素子40の素子数と受波ゲート期間とA/D変換器24aのサンプリング周期とに依存する。たとえば、受波素子40を8素子とし、A/D変換器24aのサンプリング周期を1μs、受波ゲート期間を30ms(送信装置1までの距離が約10mの範囲内)とし、1データを1ワードで保存するとすれば(つまり、A/D変換器24aの分解能が8ビットであるとすれば)、30kワード×8素子=240kワードの容量が必要になる。この程度の容量であれば、256kbyteの容量を有するSRAMを用いることができる。
【0033】
上述した処理によって直交座標での送信装置1の座標位置を求めることができる。すなわち、位置演算部24のうちA/D変換部24a、データ格納部24b、処理部24cにより直交座標での送信装置1の座標位置を求める送信位置演算部が構成される。
【0034】
ところで、疎密波受波部21における到来方向(θx,θy)の角度分解能を、各角度θx,θyについてそれぞれΔθとすると、疎密波受波部21で受波した疎密波から得られる到来方向(θx,θy)は、各角度θx,θyについてそれぞれ最大でΔθ/2の誤差を持つ。つまり、得られた到来方向(θx,θy)は、実際には(θx±Δθ/2,θy±Δθ/2)の範囲で誤差を含む可能性がある(この範囲を到来方向の誤差範囲という)。したがって、位置演算部24において求めた送信装置1の座標位置は、到来方向(θx,θy)の角度分解能に起因する誤差を含んでいる可能性がある。そこで、本実施形態では、以下の演算によって送信装置1の座標位置を求めている。
【0035】
いま、直交座標のz軸方向における送信装置1と受信装置2との距離が既知であるものとする。この距離は実質の距離であって、送信装置1において疎密波を送波する面と、受信装置2において疎密波を受波する面との距離を意味する。受信装置2に設定する直交座標は、xy平面に平行な平面上で送信装置1が移動するように設定される。つまり、送信装置1と受信装置2とのz軸方向における距離は一定であって、送信装置1と受信装置2との高さ位置の差ΔH(図3参照)になる。受信装置2で得られる疎密波の到来方向(θx,θy)は、上述のように、(θx±Δθ/2,θy±Δθ/2)の誤差範囲を有しているから、図6に示すように、送信装置1を含むxy平面に沿った平面内で、送信装置1の位置の誤差範囲は、x=ΔH・tan(θx±Δθ/2)、y=ΔH・tan(θy±Δθ/2)として求めることができる。
【0036】
このようにして、送信装置1の誤差範囲が求まれば、誤差範囲の中心座標(xc,yc)を送信装置1の座標位置として採用する。中心座標(xc,yc)は以下のように求めることができる。
xc=ΔH{tan(θx+Δθ/2)+tan(θx−Δθ/2)}/2
yc=ΔH{tan(θy+Δθ/2)+tan(θy−Δθ/2)}/2
いま、ΔH=4.5m、(θx,θy)=(43°,28°)、Δθ=2°とすれば、中心座標(xc、yc)=(4.199,2.394)になる。なお、受信装置2から送信装置1までの距離は6.602mになる。また、誤差が最大になるときの座標位置と中心座標(xc,yc)との距離(座標位置の最大誤差)は0.179mになる。座標位置の誤差範囲と中心座標(xc,yc)と座標位置の最大誤差とは、到来方向(θx,θy)と差ΔHとによって一意に決まり、差ΔHは乗算するだけであるから、到来方向(θx,θy)の組ごとに差ΔHを乗じる前の値をデータテーブルとしてもたせておけば、これらの値を求めるのが容易になる。
【0037】
位置演算部24における上述の手順を図7にまとめて示す。まず、疎密波の到来方向(θx,θy)が求まると(S1)、角度分解能に基づいて到来方向の誤差範囲を求める(S2)。つまり、求めた到来方向(θx,θy)を中心にして角度分解能の角度幅を有する範囲を到来方向の誤差範囲とする。ここまでの演算の結果は、あらかじめデータテーブルとして登録しておいてもよい。次に、送信装置1を含む平面内で誤差範囲を求める(S3)。xy平面に平行な面内での誤差範囲がもとまれば、その中心座標を送信装置1の座標位置として採用する(S4)。また、誤差範囲に含まれ中心座標からもっとも遠い点と中心座標との距離を最大誤差として求める(S5)。
【0038】
ところで、送信装置1における疎密波送波部11を構成している送波素子には、圧電素子からなる超音波振動子を用いてもよいが、圧電素子は一般にせん鋭度(Q値)が100を越えるから残響時間が比較的長く、残響時間を考慮すると疎密波を送波する時間間隔が長くなる。つまり、送信装置1を搭載する検出対象が移動体であるときには、移動体の位置を細かく計測することができない。
【0039】
そこで、疎密波送波部11には、図8に示す構造を有した残響時間の短い送波素子30を用いるのが望ましい。この送波素子30は、単結晶のp形のシリコン基板からなる支持基板31の一表面(図8における上面)側に多孔質シリコン層からなる熱絶縁層32が形成され、熱絶縁層32上に金属薄膜(たとえば、タングステン薄膜)からなる発熱体層33が形成され、さらに、支持基板31の上記一表面側に発熱体層33と電気的に接続された一対の電極パッド34が形成されている。支持基板31の平面形状は長方形状であって、熱絶縁層32、発熱体層33も平面形状はそれぞれ長方形状に形成される。
【0040】
この送波素子30は熱励起式であって、発熱体層33に温度変化が生じるように発熱体層33に通電し、発熱体層33に接触している媒質の膨張収縮を促すことによって疎密波を発生させる。つまり、発熱体層33の両端の電極パッド34間に通電し発熱体層33に温度変化を生じさせることで、発熱体層33に接触している媒質である空気に温度変化を生じさせる。発熱体層33に接触している空気は、発熱体層33の温度上昇時には膨張し発熱体層33の温度下降時には収縮するから、発熱体層33への通電を制御することによって空気中を伝搬する疎密波を発生させることができるのである。
【0041】
圧電素子からなる送波素子はせん鋭度(Q値)が大きいものであるから、疎密波を瞬間的に発生させたとしても、圧電素子の駆動を停止した後も図9(b)に示すように、共振によって残響が継続する。これに対して、図8に示した熱励起式の送波素子30は、せん鋭度が小さく、実質的に共振周波数を持たないものである。熱励起式の送波素子30では、上述したように、一対の電極パッド34を介した発熱体層33への通電に伴う発熱体層33の温度変化に伴って疎密波を発生する。
【0042】
つまり、発熱体層33へ与える駆動電圧ないし駆動電流の波形が正弦波形状であるときには、当該正弦波形の2倍の周波数の疎密波を発生させることができる。したがって、電極パッド34に印加する駆動電圧の波形を、正弦波の半周期に相当する孤立波とすれば、図9(a)に示すような正弦波形の1周期分の疎密波を発生させることができる。しかも、熱励起式の送波素子30は実質的に共振周波数を持たないから残響時間はごく短くなる。また、圧電素子は固有の共振周波数を有するので発生可能な疎密波の周波数範囲が狭いが、熱励起式の送波素子30は実質的に共振周波数を持たないので発生可能な疎密波の周波数範囲が広範囲になる。しかも、駆動電圧もしくは駆動電流の波形を孤立波とすれば、図9(a)に示すように1周期程度の疎密波を発生させることができる。
【0043】
上述した熱励起式の送波素子30は、支持基板31としてp形のシリコン基板を用いており、熱絶縁層32を多孔度が60〜80%(望ましくは略70%)の多孔質シリコン層により構成している。これは、多孔度が60%未満では断熱効果が小さくなり、多孔度が80%を越えると構造的に脆くなるからである。この熱絶縁層32は、支持基板31として用いるシリコン基板の一部をフッ化水素水溶液とエタノールとの混合液からなる電解液中で陽極酸化処理することにより形成することができる。ここに、陽極酸化処理の条件(たとえば、電流密度、通電時間など)を適宜設定することにより、熱絶縁層32となる多孔質シリコン層の多孔度や厚みそれぞれを所望の値とすることができる。
【0044】
多孔質シリコン層は、多孔度が高くなるにつれて熱伝導率および熱容量が小さくなることが知られている。たとえば、熱伝導率が148W/(m・K)、熱容量が1.63×106J/(m3・K)の単結晶のシリコン基板を陽極酸化し、多孔度が60%の多孔質シリコン層を形成すると、この多孔質シリコン層は、熱伝導率が1W/(m・K)、熱容量が0.7×106J/(m3・K)になる。本実施形態では、上述のように多孔度が略70%の多孔質シリコン層により熱絶縁層32を形成してあり、熱絶縁層32の熱伝導率が0.12W/(m・K)、熱容量が0.5×106J/(m3・K)になっている。
【0045】
なお、熱伝導度および熱容量について熱絶縁層32を支持基板31に比べて小さくし、熱伝導度と熱容量との積についても熱絶縁層32を支持基板31に比べて十分に小さくすることにより、発熱体層33の温度変化を空気に効率よく伝達することができ、発熱体層33と空気との間で効率よく熱交換させることができる。しかも、支持基板31が熱絶縁層32からの熱を効率よく受け取るから熱絶縁層32の熱を逃がすことができ発熱体層33からの熱が熱絶縁層32に蓄積されるのを防止することができる。
【0046】
発熱体層33は、高融点金属の一種であるタングステンにより形成してあり、熱伝導率が174W/(m・K)、熱容量が2.5×106J/(m3・K)となっている。発熱体層33の材料はタングステンに限らず、たとえば、タンタル、モリブデン、イリジウムなどを採用してもよい。
【0047】
上述の熱励起式の送波素子30は、支持基板31の厚さを525μm、熱絶縁層32の厚さを10μm、発熱体層33の厚さを50nm、各電極パッド34の厚さを0.5μmとしてある。ただし、これらの厚さは一例であり、とくに限定する主旨ではない。また、支持基板31の材料としてSiを採用しているが、支持基板31の材料はSiに限らず、たとえば、Ge,SiC,GaP,GaAs,InPなどの陽極酸化処理による多孔質化が可能な他の半導体材料でもよい。
【0048】
ところで、受信装置2の疎密波受波部21に用いる受波素子40は、疎密波を受波するとともに受波した疎密波を電気信号である受波信号に変換するものであり、疎密波受波部21には1枚の基板(図示せず)に複数個の受波素子40を配列して構成してある。ここでは、受波素子40を二次元的に配列したアレイセンサを構成しているものとする。アレイセンサにおいて、受波素子40の中心間距離(配列ピッチ)は疎密波送波部11から発生させる疎密波の波長程度(たとえば、疎密波の波長の0.5〜5倍程度)に設定することが望ましい。これは、疎密波の波長の0.5倍よりも小さいと疎密波の波面が隣り合う受波素子40にそれぞれ到達する時刻の時間差が小さくなり、時間差の検出が困難になるからである。受波素子40として、圧電素子を用いることが可能であるが、疎密波送波部11と同様に、残響の少ない構成が望ましい。したがって、疎密波の圧力(音圧)を静電容量の変化に変換する静電容量式の受波素子40を用いることが望ましい。
【0049】
この種の受波素子40は、図10に示す構成のものがある。図示する受波素子40は、マイクロマシンニング技術により形成され、シリコン基板に厚み方向に貫通する窓孔41aを設けることで形成された矩形枠状のフレーム41と、フレーム41の一表面側において窓孔41aを囲む四辺のうちの一辺に固定されるとともに窓孔41aを覆う形に配置されたカンチレバー型の受圧板42とを備える。フレーム41の上記一表面には熱酸化膜45を介してシリコン酸化膜46が積層され、さらにシリコン酸化膜46の表面はシリコン窒化膜47で覆われる。受圧板42の一端部は熱酸化膜45を介してフレーム41に固定され、受圧板42の他端部はシリコン基板の厚み方向においてシリコン酸化膜46に対向する。シリコン酸化膜46における受圧板42の他端部との対向面には金属薄膜(たとえば、クロム膜など)からなる固定電極43aが形成され、受圧板42の他端部において固定電極43aと対向している部位であって固定電極43aとの対向面の背面側には金属薄膜(たとえば、クロム膜など)からなる可動電極43bが形成される。フレーム41の他表面にはシリコン窒化膜48が形成される。ここに、受圧板42は、各シリコン窒化膜47,48とは別工程で形成されるシリコン窒化膜により構成される。
【0050】
図10に示す静電容量式の受波素子40では、受圧板42に疎密波の圧力(音圧)が作用すると、疎密波の圧力に応じて固定電極43aと可動電極43bとの距離が変化するから、固定電極43aと可動電極43bとの間の静電容量を検出することにより、疎密波の圧力を検出することができる。したがって、固定電極43aと可動電極43bとの間に直流バイアス電圧を印加しておけば、固定電極43aと可動電極43bとの間には疎密波の圧力に応じた電圧変化が生じ、疎密波の音圧を電気信号に変換することができる。この種の静電容量式の受波素子40はせん鋭度が圧電素子よりも小さいから、圧電素子を用いる場合よりも受波できる疎密波の周波数帯域幅を広くとることができる。
【0051】
なお、受波素子40は図10の構造に限定されるものではなく、たとえば、シリコン基板などをマイクロマシンニング技術などにより加工して形成され疎密波の圧力を受けるダイヤフラム部からなる可動電極と、ダイヤフラム部に対向する背板部からなる固定電極との間の静電容量を検出する構成を採用してもよい。この構成では、疎密波の圧力が作用していない状態でのダイヤフラム部と背板部とのギャップ長を規定する絶縁膜からなるスペーサ部を設け、背板部には複数の排気孔を貫設する。
【0052】
図8に示した熱励起式の送波素子30のせん鋭度(Q値)は1程度であり、図10に示した静電容量式の受波素子40のせん鋭度は3〜4程度であって、圧電素子に比較するとせん鋭度が大幅に小さい。したがって、送波素子および受波素子に圧電素子を用いる場合に比較すると、疎密波送波部11から送波される疎密波に含まれる残響成分の割合が少なくなり、疎密波受波部21から出力される受波信号に含まれる残響成分の割合が少なくなる。つまり、送波時には疎密波の送波間隔を短くすることができ、受波時には短い時間間隔で疎密波を受波しても疎密波に対応する受波信号が重複しないように分離することができる。その結果、複数台の送信装置1からの疎密波を次々に受信することが可能であり、受信装置1の検知エリア内に比較的多くの送信装置1が存在していても、各別に分離して位置を求めることが可能になる。なお、送波素子30および受波素子40のせん鋭度(Q値)はいずれも10以下が望ましく、さらに望ましくは5以下とする。
【0053】
(実施形態2)
実施形態1では、到来方向(θx,θy)の誤差が最大である場合の座標位置の平均を送信装置1の座標位置の中心座標として求めているが、本実施形態では、到来方向(θx,θy)だけではなく、受信装置2から送信装置1までの距離dも用いて送信装置1の座標位置の中心座標を求める例について説明する。なお、距離dは疎密波の伝播時間を用いて求めるほか、z方向の高さ位置の差ΔHが既知であるから、図3を見ればわかるように、差ΔHと到来方向(θx,θy)とを用いて距離dを求めることもできる。
【0054】
実施形態1において説明したように、受信装置2では送信装置1までの距離dを求めることができるから、図3に示した関係から明らかなように、送信装置1と受信装置2との高さ位置の差ΔHと距離dとの関係から、z軸を中心とし送信装置1の座標位置(x,y)を通る円の半径rを次式で求めることができる。
r2=L2−ΔH2
また、座標位置(x,y)と半径rとには次の関係もある。
r2=x2+y2
したがって、座標位置(x,y)の一方の成分と距離dとを用いることによって、座標位置(x,y)の他方の成分を求めることができる。
x2=(L2−ΔH2)−y2
y2=(L2−ΔH2)−x2
たとえば、実施形態1と同じ値を用いると、xの最小値は4.137、xの最大値は4.252、yの最小値は2.109、yの最大値は2.630になる。実施形態1の手順で求めた場合には、xの最小値は4.052、xの最大値は4.346、yの最小値は2.293、yの最大値は2.494であるから、xについては距離dを用いて求めたほうが誤差範囲が狭くなり、yについては距離dを用いずに求めたほうが誤差範囲が狭くなることがわかる。
【0055】
そこで、本実施形態では、距離dを用いる場合と用いない場合との両方について送信装置1の座標位置(x,y)の誤差範囲を求め、座標位置(x,y)の各成分のうち誤差範囲が小さいほうを採用して中心座標(xc,yc)を求める。すなわち、上述した例では座標位置(x,y)のうち、x成分については距離dを用いるほうが誤差範囲が小さく、y成分については距離dを用いないほうが誤差範囲が小さいから、これらの値を用いて送信装置1の中心座標(xc,yc)を求めると、(xc,yc)=(4.199,2.394)になる。なお、誤差が最大になるときの座標位置と中心座標(xc,yc)との距離は0.116mになる。つまり、本実施形態の手順を採用すれば、中心座標(xc,yc)の誤差を実施形態1よりも小さくすることができる。
【0056】
距離dを用いた場合に、座標位置(x,y)のどちらの成分の誤差範囲が、距離dを用いない場合よりも小さくなるかは、到来方向(θx,θy)における各成分θx,θyの絶対値の大小関係によって決まり、|θx|≧|θy|の関係が成立する領域では、x成分については距離dとy成分とを用いるほうが誤差範囲が小さくなり、それ以外の領域ではy成分については距離dとx成分とを用いるほうが誤差範囲が小さくなる。
【0057】
本実施形態の位置演算部24での処理手順を図11にまとめて示す。まず、疎密波の到来方向(θx,θy)が求まると(S1)、角度分解能に基づいて到来方向の誤差範囲を求める(S2)。次に、送信装置1を含む平面内で誤差範囲を求め第1の誤差範囲とする(S3)。ここまでは実施形態1の手順と同様である。
【0058】
第1の誤差範囲を求めた後、第1の誤差範囲のx成分とy成分との一方と距離dとを用いてx成分とy成分との他方の誤差範囲を求め、このようにして求めた誤差範囲を第2の誤差範囲とする(S4)。第1の誤差範囲と第2の誤差範囲とについて、x成分とy成分との範囲を比較し、範囲の狭いほうを採用し、その中心座標を送信装置1の座標位置として採用する(S5)。また、誤差範囲に含まれ中心座標からもっとも遠い点と中心座標との距離を最大誤差として求める(S6)。他の構成および動作は実施形態1と同様である。
【0059】
(実施形態3)
実施形態1、2においては送信装置1を検出対象Obである移動体に設け、受信装置2を天井面CLなどの定位置に固定する例を示したが、図12に示すように、送信装置1を天井面CLなどの定位置に固定し、受信装置2を検出対象Obに搭載する構成を採用してもよい。この構成の場合も受信装置2に設定した直交座標では実施形態1、2と同様の関係が成立するから、同様の演算によって直交座標における送信装置1の中心座標(xc,yc)を求めることができる。
【0060】
なお、検出対象Obが移動体であって受信装置2を移動体に搭載する場合には、移動体の向きに応じて受信装置2に設定した直交座標がz軸の回りに回転するから、受信装置2にジャイロセンサのような方向センサを設け、移動体の向きを検出することによってz軸回りの回転を補正するのが望ましい。他の構成および動作は実施形態1、2と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施形態1を示すブロック図である。
【図2】同上の使用例を示す概略構成図である。
【図3】同上の原理説明図である。
【図4】同上の動作説明図である。
【図5】同上の動作説明図である。
【図6】同上の原理説明図である。
【図7】同上における位置演算部の処理手順を示す動作説明図である。
【図8】同上に用いる送波素子の一例を示す断面図である。
【図9】同上の動作説明図である。
【図10】同上に用いる受波素子の一例を示し、(a)は一部破断した斜視図、(b)は断面図である。
【図11】実施形態2における位置演算部の処理手順を示す動作説明図である。
【図12】実施形態3の使用例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0062】
1 送信装置
2 受信装置
10 制御部
11 疎密波送波部
12 トリガ送信部
20 制御部
21 疎密波受波部
22 トリガ受信部
24 位置演算部
24a A/D変換器
24b データ格納部
24c 処理部(送信位置演算部)
40 受波素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒質の圧力変化を周期的に繰り返す超音波や媒質の圧力変化が単発的であるいわゆる圧力波のような疎密波を利用して検出対象の位置を検出する位置検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、位置検出の検出対象である移動体に超音波を送波する送信装置(超音波発信機)を設け、建物内の天井面に設置された少なくとも3個の受信装置(超音波受信機)で送信装置からの超音波を受波し、送信装置から送波された超音波が受信装置に受信されるまでの時間を用いて位置演算部(演算処理手段)により移動体の位置を求める位置検出システムが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の位置検出システムでは、受信装置から送信装置に対して赤外線を伝送媒体とする許可信号を送信し、送信装置では許可信号を受け取ると超音波を送波する。したがって、受信装置では許可信号を送信してから超音波を受波するまでの時間を計測することで、送信装置までの距離を算出することができ、3個の受信装置において送信装置までの距離を算出するから、3個の受信装置の既知の位置に基づいて送信装置の位置を特定することができる構成になっている。
【特許文献1】特開2003−279640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、各受信装置ではそれぞれ送信装置との相対距離を検出するから、送信装置の座標位置を特定するには、3箇所の受信装置の座標位置を正確に特定しなければならない。つまり、受信装置を設置する際に3箇所の各設置場所の座標位置を正確に計測することが必要であって、受信装置の設置施工に手間がかかるという問題を有している。
【0005】
また、この種の位置検出システムでは検出した位置に誤差が含まれるが、特許文献1に記載の構成では、誤差については考慮されていないから、求めた位置の信頼性が保証できない。
【0006】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、最小構成では受信装置と送信装置とを1台ずつ用いるだけで位置を検出することができるようにして設置施工の手間を省き、しかも、建物内の既知の高さ寸法を用いることで、誤差を考慮して位置を検出することにより求めた位置の信頼性を高めた位置検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、建物内で床面上を移動する移動体に搭載され疎密波を間欠的に送波する疎密波送波部を有した送信装置と、床面の上方である天井面の定位置に設置され送信装置から送波された疎密波を受波することにより送信装置が存在する相対位置を検出する受信装置とを備え、受信装置は、疎密波送波部から送波された疎密波を受波するとともに受波した疎密波を電気信号である受波信号に変換する受波素子を複数個配列したアレイセンサからなる疎密波受波部と、疎密波受波部の各受波素子による疎密波の受波時刻の時間差と各受波素子の配置位置とに基づいて送信装置の位置を受信装置に設定した三次元の直交座標における座標位置として求める送信位置演算部とを備え、送信位置演算部は、前記直交座標における一つの座標軸に直交する平面内で送信装置の座標位置を求めるように前記直交座標を設定してあり、前記座標軸と他の座標軸の各一方とをそれぞれ含む2平面内で疎密波の到来方向をそれぞれ求めるとともに、疎密波受波部の角度分解能を到来方向の誤差範囲として用いることにより送信装置の座標位置の誤差範囲を求め、当該誤差範囲の中心座標を送信装置の座標位置として求めることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、建物内で床面と天井面との高さ寸法を既知寸法に用いることで、受信装置に設定した直交座標において送信装置からの疎密波の到来方向を角度の2成分で表すとともに、各角度成分ごとの角度分解能から座標位置の誤差範囲を求め、送信装置の存在する平面内における誤差範囲の中心位置を求めているから、送信装置の座標位置を誤差を考慮して適正に求めることができる。その結果、求めた位置の信頼性を高めることができる。なお、送信装置の座標位置は疎密波の到来方向として求めた角度に対応する位置として求めることが可能であるが、このようにして求めた座標位置は、角度分解能の範囲から得られる誤差範囲の中心の座標位置ではないから、求めた座標位置に対して誤差範囲が非対称になるのに対して、角度分解能を到来方向の誤差範囲として用い、その誤差範囲に対応する座標位置の誤差範囲を求め、当該誤差範囲の中心座標を送信装置の座標位置と定めることで、求めた送信装置の座標位置を中心として誤差範囲を対称的にすることができ、誤差を低減することができる。
【0009】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記送信装置について求めた誤差範囲のうち中心座標からの最大距離を、送信装置の座標位置の最大誤差として求めることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、最大誤差を評価する値を得ることができるから、求めた送信装置の座標位置に対する信頼性を評価することができる。
【0011】
請求項3の発明では、請求項1または請求項2の発明において、前記疎密波送波部は、媒質の圧力変化が単発的に生じる圧力波を送波することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、疎密波の送波間隔を短くすることが可能であり、移動体の位置を細かく計測することができる。
【0013】
請求項4の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明において、前記疎密波受波部は、複数個の前記受波素子を二次元的に配列してあることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、1つの疎密波受波部において直交座標系の2平面内における疎密波の到来方向を求めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構成によれば、既知の高さ寸法を用いることにより、床面の上での二次元座標における送信装置の座標位置を信頼性よく求めることができ、また求めた座標位置に対して誤差範囲を対称的にすることができ、誤差を低減することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施形態1)
本実施形態では、位置検出システムとして、図2に示すように、建物内で床面FL上を移動する移動体(たとえば、ショッピングカート)を位置検出の検出対象Obとし、検出対象Obが移動した位置を追跡する動線計測システムを例示する。
【0017】
検出対象Obの位置を追跡するために、検出対象Obの上面には疎密波を送波する送信装置1を搭載し、床面FLの上方である天井面CLの定位置には疎密波を受波する受信装置2を設置する。本実施形態では、疎密波として媒質(空気)の圧力変化が単発的に生じる圧力波を用いる。
【0018】
送信装置1は、図1に示すように、疎密波を送波する疎密波送波部11と、電磁波(赤外線または電波)を伝送媒体としたワイヤレス信号を送信するトリガ送信部12および識別情報送信部13とを備える。疎密波送波部11、トリガ送信部12、識別情報送信部13は、それぞれドライバ14〜16を介して制御部10からの指示を受けて動作する。制御部10はワンチップマイコンからなり、CPU、RAM、ROM、シリアル通信用インターフェイスを包含している。疎密波送波部11からは疎密波を間欠的に送波し、トリガ送信部12は疎密波の送信と同時にトリガ信号としてのワイヤレス信号(以下では、単に「トリガ信号」という)を送信する。また、識別情報送信部13は識別データを含むワイヤレス信号(以下では、「識別情報信号」という)をトリガ信号に引き続いて送信する。識別データは制御部10に設定されており、送信装置1ごとに固有の識別データが設定される。疎密波の送波タイミング、トリガ信号の送信タイミング、識別情報信号の送信タイミングは制御部10において制御される。疎密波とトリガ信号と識別情報信号とは所定の時間間隔で間欠的に出力される。上述した送信装置1の機能は制御部10を構成しているワンチップマイコンに適宜のプログラムを搭載することにより実現される。
【0019】
受信装置2は、送信装置1に設けた疎密波送波部11から送波された疎密波を受波する疎密波受波部21を備え、疎密波受波部21は疎密波を受波すると電気信号である受波信号を出力する。つまり、疎密波受波部21は疎密波を受波信号に変換する。また、受信装置2は、送信装置1に設けたトリガ送信部12から送信されたトリガ信号を受信するトリガ受信部22と、識別情報送信部13から送信された識別情報信号を受信する識別情報受信部23とを備える。トリガ受信部22ではトリガ信号を波形整形し、識別情報受信部23は識別情報信号からキャリアを除去する。トリガ受信部22の出力は受信装置の動作開始のタイミングを指示し、受信装置2に設けた位置演算部24およびタイマ部25を起動する。また、識別情報受信部23から出力されるパルス列からなる識別データはメモリ26に格納される。タイマ部25は現在時刻を計時する時計機能も備え、トリガ受信部22でトリガ信号を受信した時刻がメモリ26に格納される。
【0020】
位置演算部24は、トリガ受信部22の出力が発生した時点で待機状態から受信状態に移行し、受信状態において得られる疎密波受波部21の出力を用いて送信装置1の位置を算出する。受信状態はあらかじめ定めた一定時間継続する。
【0021】
疎密波受波部21の出力を用いて得られる送信装置1の位置は、受信装置2に対する送信装置1の相対位置であり、図3に示すように受信装置2に設定された直交座標の座標位置として求められる。ここに、本実施形態では床面FLから天井面CLまでの高さは一定とみなしている。したがって、検出対象Obの移動する空間において送信装置1の高さ位置は変化しないから、直交座標を送信装置1を含む床面FLに平行な平面内の二次元座標として扱う。位置演算部24は、直交座標での送信装置1の座標位置を求める送信位置演算部の機能を有する。送信位置演算部の動作については後述する。
【0022】
メモリ26には、位置演算部24で求めた送信装置1の座標位置と、当該座標位置に位置していたときの時刻(トリガ受信部22がトリガ信号を受信した時刻)と、当該送信装置1の識別データとが対応付けられて1レコードとして格納される。メモリ26に格納されたデータは制御部20において必要に応じて読み出され、出力部27を通して外部の管理装置などに出力される。制御部20はマイクロコンピュータを主構成要素としており、CPU、RAM、ROM、シリアル通信インターフェイスを包含している。また、出力部27は出力用のインターフェイスであって、TIA/EIA−232−EやUSBなどの仕様のシリアルインターフェイスのほかSCSIのような仕様のパラレルインターフェイスなどが採用される。出力部27から取り出された検出結果は、別に設けた管理装置において利用され、本実施形態では、検出対象Obが移動した経路を追跡することにより動線を計測する。
【0023】
受信装置2の各部の構成をさらに詳しく説明する。疎密波受波部21は、複数個の受波素子を配列したアレイセンサであって、位置演算部24では各受波素子による疎密波の受波時刻の時間差と受波素子の配列位置とに基づいて疎密波の到来方向、すなわち検出対象Obの存在する方向を求める。疎密波の到来方向は、図3に示すように、直交座標におけるxz平面とyz平面との各角度として求められる。以下では、xz平面内での角度をθx、yz平面内での角度をθyと記述する。つまり、到来方向は(θx,θy)の対で表される。
【0024】
疎密波の到来方向(θx,θy)を求めるには、疎密波を受波した受波素子での受波時刻の時間差を含む情報が必要であるから、疎密波受波部21から出力される受波信号をA/D変換器24aをデジタル信号である受波データに変換した後、各受波素子に対応する出力を一時記憶するデータ格納部24bに格納する。疎密波受波部21は到来する疎密波を常時受波しているが、位置演算部24での処理はトリガ受信部22の出力が得られてから一定時間である受波ゲート期間に制限される。
【0025】
データ格納部24bに格納された受波データは受波ゲート期間の終了後に処理部24cに読み込まれ、各受波素子での受波時刻の時間差に相当する時間を求めるために、隣接する受波素子に対応する受波データを時間軸方向に既定した時間分だけシフトして加算する。処理部24cはマイクロコンピュータを主構成要素とする。
【0026】
この処理について簡単に説明する。いま、疎密波受波部21において受波素子40が図4に示すように同一平面上において一次元的に等間隔で配列されているものとする(実際には二次元的に配列されている)。受波素子40が配列された面に対する疎密波の波面の角度がθ0であるとき、疎密波の到来方向もθ0になる。疎密波の速度をc、受波素子40の配列ピッチ(中間間の距離)をLとすれば、到来方向がθ0である疎密波の波面が隣接する受波素子40に到達する際の時間差ΔT0は、ΔT0=L・sinθ0/cである。すなわち、θ0=sin−1(ΔT0・c/L)であって、時間差ΔT0を求めると到来方向θ0を求めることができる。
【0027】
以上の関係から、各受波素子40で受波した疎密波に対応する受波信号を到来方向θ0に対応した時間差ΔT0分だけ遅延させると、時間軸方向において受波信号の位置を一致させることができることがわかる。たとえば、隣り合う3個の受波素子40から図5(a)〜(c)のような受波信号が出力され、隣接する受波素子40から出力される受波信号が時間差ΔT0を有しているものとする。この場合、隣接する受波素子40から得られる受波信号を、適宜の遅延手段によって互いにΔT0だけ遅延させる。つまり、図5(c)の受波信号を2ΔT0だけ遅延させ、図5(b)の受波信号をΔT0だけ遅延させると、両受波信号は時間軸方向において図5(a)の受波信号の位置に一致する。各受波素子40の出力である受波信号の時間軸方向における位置が一致していれば、これらの受波信号を加算したときに加算結果は大きな振幅になる。言い換えると、加算結果の振幅が大きければ、疎密波の到来方向θ0は当該遅延時間ΔT0に対応しているといえる。
【0028】
本実施形態では、受信信号を時間軸方向に偏移させるのではなく、受波データを時間軸方向に偏移させる構成を採用しているが、到来方向θ0を算出する目的においては差異はない。しかして、処理部24cではデータ格納部24bに格納された受波データに対して、あらかじめ設定した複数種類の遅延時間を適用して遅延させた後に加算し、加算結果が最大になるときの遅延時間を求める。この遅延時間は時間差ΔT0に対応するから、遅延時間にあらかじめ到来方向θ0を対応付けておくことにより、疎密波の到来方向をただちに求めることができる。遅延時間は、たとえば到来方向を2度刻みで検出することができるように設定される。この場合、図4において受波素子40が配列された方向の角度分解能は2度になる。上述のように受波データを時間軸方向に偏移させた後に加算する処理を遅延加算処理と呼ぶ。遅延加算処理は処理部24cに設定したプログラムにより実現される。
【0029】
図4の例では説明を簡単にするために受波素子40を一直線上に配列した例で説明したが、疎密波受波部21は、実際には、一平面上においてx方向とy方向とに複数個ずつの受波素子40をたとえば十文字状に配列した二次元配列を有している。この構成により、xz平面内での到来方向θxと、yz平面内での到来方向θyとを同時に求めることができる。つまり、疎密波の到来方向を(θx,θy)の組合せで求めることができる。
【0030】
トリガ信号と疎密波とは同時に出力され、トリガ送信部12からのトリガ信号の送信とトリガ受信部22でのワイヤレス信号の受信とは実質的に同時とみなせるから、トリガ受信部22でのトリガ信号の受信時刻と、疎密波受波部21での疎密波の受波時刻との時間差は、実質的に疎密波が媒質中を伝播する時間とみなすことができる。したがって、ワイヤレス信号を受信してから疎密波を受波するまでの時間によって受信装置2に対する送信装置1の相対的な距離を知ることができる。つまり、送信装置1の方向と距離とを知ることができるから、受信装置2では送信装置1の三次元位置を求めることができる。ただし、上述したように本実施形態では床面FLの上の二次元座標での座標位置を求める。つまり、三次元位置に対して既知の高さ寸法を用いることにより床面FLの上での二次元座標を求めることができる。なお、この演算は処理部24cにおいて行う。
【0031】
以上説明したように、受信装置2では送信装置1からのトリガ信号を受信すると、受波ゲート期間の制限内で受波信号を待ち受け、受波ゲート期間内に受波した疎密波のみを用いて疎密波の到来方向および送信装置1までの距離を算出し、検出対象Obの床面FLの上の二次元座標(直交座標)での座標位置を求める。また、トリガ信号を受信した時刻およびトリガ信号に対応する識別データをメモリ26に格納する。
【0032】
なお、データ格納部24bの容量は、受波素子40の素子数と受波ゲート期間とA/D変換器24aのサンプリング周期とに依存する。たとえば、受波素子40を8素子とし、A/D変換器24aのサンプリング周期を1μs、受波ゲート期間を30ms(送信装置1までの距離が約10mの範囲内)とし、1データを1ワードで保存するとすれば(つまり、A/D変換器24aの分解能が8ビットであるとすれば)、30kワード×8素子=240kワードの容量が必要になる。この程度の容量であれば、256kbyteの容量を有するSRAMを用いることができる。
【0033】
上述した処理によって直交座標での送信装置1の座標位置を求めることができる。すなわち、位置演算部24のうちA/D変換部24a、データ格納部24b、処理部24cにより直交座標での送信装置1の座標位置を求める送信位置演算部が構成される。
【0034】
ところで、疎密波受波部21における到来方向(θx,θy)の角度分解能を、各角度θx,θyについてそれぞれΔθとすると、疎密波受波部21で受波した疎密波から得られる到来方向(θx,θy)は、各角度θx,θyについてそれぞれ最大でΔθ/2の誤差を持つ。つまり、得られた到来方向(θx,θy)は、実際には(θx±Δθ/2,θy±Δθ/2)の範囲で誤差を含む可能性がある(この範囲を到来方向の誤差範囲という)。したがって、位置演算部24において求めた送信装置1の座標位置は、到来方向(θx,θy)の角度分解能に起因する誤差を含んでいる可能性がある。そこで、本実施形態では、以下の演算によって送信装置1の座標位置を求めている。
【0035】
いま、直交座標のz軸方向における送信装置1と受信装置2との距離が既知であるものとする。この距離は実質の距離であって、送信装置1において疎密波を送波する面と、受信装置2において疎密波を受波する面との距離を意味する。受信装置2に設定する直交座標は、xy平面に平行な平面上で送信装置1が移動するように設定される。つまり、送信装置1と受信装置2とのz軸方向における距離は一定であって、送信装置1と受信装置2との高さ位置の差ΔH(図3参照)になる。受信装置2で得られる疎密波の到来方向(θx,θy)は、上述のように、(θx±Δθ/2,θy±Δθ/2)の誤差範囲を有しているから、図6に示すように、送信装置1を含むxy平面に沿った平面内で、送信装置1の位置の誤差範囲は、x=ΔH・tan(θx±Δθ/2)、y=ΔH・tan(θy±Δθ/2)として求めることができる。
【0036】
このようにして、送信装置1の誤差範囲が求まれば、誤差範囲の中心座標(xc,yc)を送信装置1の座標位置として採用する。中心座標(xc,yc)は以下のように求めることができる。
xc=ΔH{tan(θx+Δθ/2)+tan(θx−Δθ/2)}/2
yc=ΔH{tan(θy+Δθ/2)+tan(θy−Δθ/2)}/2
いま、ΔH=4.5m、(θx,θy)=(43°,28°)、Δθ=2°とすれば、中心座標(xc、yc)=(4.199,2.394)になる。なお、受信装置2から送信装置1までの距離は6.602mになる。また、誤差が最大になるときの座標位置と中心座標(xc,yc)との距離(座標位置の最大誤差)は0.179mになる。座標位置の誤差範囲と中心座標(xc,yc)と座標位置の最大誤差とは、到来方向(θx,θy)と差ΔHとによって一意に決まり、差ΔHは乗算するだけであるから、到来方向(θx,θy)の組ごとに差ΔHを乗じる前の値をデータテーブルとしてもたせておけば、これらの値を求めるのが容易になる。
【0037】
位置演算部24における上述の手順を図7にまとめて示す。まず、疎密波の到来方向(θx,θy)が求まると(S1)、角度分解能に基づいて到来方向の誤差範囲を求める(S2)。つまり、求めた到来方向(θx,θy)を中心にして角度分解能の角度幅を有する範囲を到来方向の誤差範囲とする。ここまでの演算の結果は、あらかじめデータテーブルとして登録しておいてもよい。次に、送信装置1を含む平面内で誤差範囲を求める(S3)。xy平面に平行な面内での誤差範囲がもとまれば、その中心座標を送信装置1の座標位置として採用する(S4)。また、誤差範囲に含まれ中心座標からもっとも遠い点と中心座標との距離を最大誤差として求める(S5)。
【0038】
ところで、送信装置1における疎密波送波部11を構成している送波素子には、圧電素子からなる超音波振動子を用いてもよいが、圧電素子は一般にせん鋭度(Q値)が100を越えるから残響時間が比較的長く、残響時間を考慮すると疎密波を送波する時間間隔が長くなる。つまり、送信装置1を搭載する検出対象が移動体であるときには、移動体の位置を細かく計測することができない。
【0039】
そこで、疎密波送波部11には、図8に示す構造を有した残響時間の短い送波素子30を用いるのが望ましい。この送波素子30は、単結晶のp形のシリコン基板からなる支持基板31の一表面(図8における上面)側に多孔質シリコン層からなる熱絶縁層32が形成され、熱絶縁層32上に金属薄膜(たとえば、タングステン薄膜)からなる発熱体層33が形成され、さらに、支持基板31の上記一表面側に発熱体層33と電気的に接続された一対の電極パッド34が形成されている。支持基板31の平面形状は長方形状であって、熱絶縁層32、発熱体層33も平面形状はそれぞれ長方形状に形成される。
【0040】
この送波素子30は熱励起式であって、発熱体層33に温度変化が生じるように発熱体層33に通電し、発熱体層33に接触している媒質の膨張収縮を促すことによって疎密波を発生させる。つまり、発熱体層33の両端の電極パッド34間に通電し発熱体層33に温度変化を生じさせることで、発熱体層33に接触している媒質である空気に温度変化を生じさせる。発熱体層33に接触している空気は、発熱体層33の温度上昇時には膨張し発熱体層33の温度下降時には収縮するから、発熱体層33への通電を制御することによって空気中を伝搬する疎密波を発生させることができるのである。
【0041】
圧電素子からなる送波素子はせん鋭度(Q値)が大きいものであるから、疎密波を瞬間的に発生させたとしても、圧電素子の駆動を停止した後も図9(b)に示すように、共振によって残響が継続する。これに対して、図8に示した熱励起式の送波素子30は、せん鋭度が小さく、実質的に共振周波数を持たないものである。熱励起式の送波素子30では、上述したように、一対の電極パッド34を介した発熱体層33への通電に伴う発熱体層33の温度変化に伴って疎密波を発生する。
【0042】
つまり、発熱体層33へ与える駆動電圧ないし駆動電流の波形が正弦波形状であるときには、当該正弦波形の2倍の周波数の疎密波を発生させることができる。したがって、電極パッド34に印加する駆動電圧の波形を、正弦波の半周期に相当する孤立波とすれば、図9(a)に示すような正弦波形の1周期分の疎密波を発生させることができる。しかも、熱励起式の送波素子30は実質的に共振周波数を持たないから残響時間はごく短くなる。また、圧電素子は固有の共振周波数を有するので発生可能な疎密波の周波数範囲が狭いが、熱励起式の送波素子30は実質的に共振周波数を持たないので発生可能な疎密波の周波数範囲が広範囲になる。しかも、駆動電圧もしくは駆動電流の波形を孤立波とすれば、図9(a)に示すように1周期程度の疎密波を発生させることができる。
【0043】
上述した熱励起式の送波素子30は、支持基板31としてp形のシリコン基板を用いており、熱絶縁層32を多孔度が60〜80%(望ましくは略70%)の多孔質シリコン層により構成している。これは、多孔度が60%未満では断熱効果が小さくなり、多孔度が80%を越えると構造的に脆くなるからである。この熱絶縁層32は、支持基板31として用いるシリコン基板の一部をフッ化水素水溶液とエタノールとの混合液からなる電解液中で陽極酸化処理することにより形成することができる。ここに、陽極酸化処理の条件(たとえば、電流密度、通電時間など)を適宜設定することにより、熱絶縁層32となる多孔質シリコン層の多孔度や厚みそれぞれを所望の値とすることができる。
【0044】
多孔質シリコン層は、多孔度が高くなるにつれて熱伝導率および熱容量が小さくなることが知られている。たとえば、熱伝導率が148W/(m・K)、熱容量が1.63×106J/(m3・K)の単結晶のシリコン基板を陽極酸化し、多孔度が60%の多孔質シリコン層を形成すると、この多孔質シリコン層は、熱伝導率が1W/(m・K)、熱容量が0.7×106J/(m3・K)になる。本実施形態では、上述のように多孔度が略70%の多孔質シリコン層により熱絶縁層32を形成してあり、熱絶縁層32の熱伝導率が0.12W/(m・K)、熱容量が0.5×106J/(m3・K)になっている。
【0045】
なお、熱伝導度および熱容量について熱絶縁層32を支持基板31に比べて小さくし、熱伝導度と熱容量との積についても熱絶縁層32を支持基板31に比べて十分に小さくすることにより、発熱体層33の温度変化を空気に効率よく伝達することができ、発熱体層33と空気との間で効率よく熱交換させることができる。しかも、支持基板31が熱絶縁層32からの熱を効率よく受け取るから熱絶縁層32の熱を逃がすことができ発熱体層33からの熱が熱絶縁層32に蓄積されるのを防止することができる。
【0046】
発熱体層33は、高融点金属の一種であるタングステンにより形成してあり、熱伝導率が174W/(m・K)、熱容量が2.5×106J/(m3・K)となっている。発熱体層33の材料はタングステンに限らず、たとえば、タンタル、モリブデン、イリジウムなどを採用してもよい。
【0047】
上述の熱励起式の送波素子30は、支持基板31の厚さを525μm、熱絶縁層32の厚さを10μm、発熱体層33の厚さを50nm、各電極パッド34の厚さを0.5μmとしてある。ただし、これらの厚さは一例であり、とくに限定する主旨ではない。また、支持基板31の材料としてSiを採用しているが、支持基板31の材料はSiに限らず、たとえば、Ge,SiC,GaP,GaAs,InPなどの陽極酸化処理による多孔質化が可能な他の半導体材料でもよい。
【0048】
ところで、受信装置2の疎密波受波部21に用いる受波素子40は、疎密波を受波するとともに受波した疎密波を電気信号である受波信号に変換するものであり、疎密波受波部21には1枚の基板(図示せず)に複数個の受波素子40を配列して構成してある。ここでは、受波素子40を二次元的に配列したアレイセンサを構成しているものとする。アレイセンサにおいて、受波素子40の中心間距離(配列ピッチ)は疎密波送波部11から発生させる疎密波の波長程度(たとえば、疎密波の波長の0.5〜5倍程度)に設定することが望ましい。これは、疎密波の波長の0.5倍よりも小さいと疎密波の波面が隣り合う受波素子40にそれぞれ到達する時刻の時間差が小さくなり、時間差の検出が困難になるからである。受波素子40として、圧電素子を用いることが可能であるが、疎密波送波部11と同様に、残響の少ない構成が望ましい。したがって、疎密波の圧力(音圧)を静電容量の変化に変換する静電容量式の受波素子40を用いることが望ましい。
【0049】
この種の受波素子40は、図10に示す構成のものがある。図示する受波素子40は、マイクロマシンニング技術により形成され、シリコン基板に厚み方向に貫通する窓孔41aを設けることで形成された矩形枠状のフレーム41と、フレーム41の一表面側において窓孔41aを囲む四辺のうちの一辺に固定されるとともに窓孔41aを覆う形に配置されたカンチレバー型の受圧板42とを備える。フレーム41の上記一表面には熱酸化膜45を介してシリコン酸化膜46が積層され、さらにシリコン酸化膜46の表面はシリコン窒化膜47で覆われる。受圧板42の一端部は熱酸化膜45を介してフレーム41に固定され、受圧板42の他端部はシリコン基板の厚み方向においてシリコン酸化膜46に対向する。シリコン酸化膜46における受圧板42の他端部との対向面には金属薄膜(たとえば、クロム膜など)からなる固定電極43aが形成され、受圧板42の他端部において固定電極43aと対向している部位であって固定電極43aとの対向面の背面側には金属薄膜(たとえば、クロム膜など)からなる可動電極43bが形成される。フレーム41の他表面にはシリコン窒化膜48が形成される。ここに、受圧板42は、各シリコン窒化膜47,48とは別工程で形成されるシリコン窒化膜により構成される。
【0050】
図10に示す静電容量式の受波素子40では、受圧板42に疎密波の圧力(音圧)が作用すると、疎密波の圧力に応じて固定電極43aと可動電極43bとの距離が変化するから、固定電極43aと可動電極43bとの間の静電容量を検出することにより、疎密波の圧力を検出することができる。したがって、固定電極43aと可動電極43bとの間に直流バイアス電圧を印加しておけば、固定電極43aと可動電極43bとの間には疎密波の圧力に応じた電圧変化が生じ、疎密波の音圧を電気信号に変換することができる。この種の静電容量式の受波素子40はせん鋭度が圧電素子よりも小さいから、圧電素子を用いる場合よりも受波できる疎密波の周波数帯域幅を広くとることができる。
【0051】
なお、受波素子40は図10の構造に限定されるものではなく、たとえば、シリコン基板などをマイクロマシンニング技術などにより加工して形成され疎密波の圧力を受けるダイヤフラム部からなる可動電極と、ダイヤフラム部に対向する背板部からなる固定電極との間の静電容量を検出する構成を採用してもよい。この構成では、疎密波の圧力が作用していない状態でのダイヤフラム部と背板部とのギャップ長を規定する絶縁膜からなるスペーサ部を設け、背板部には複数の排気孔を貫設する。
【0052】
図8に示した熱励起式の送波素子30のせん鋭度(Q値)は1程度であり、図10に示した静電容量式の受波素子40のせん鋭度は3〜4程度であって、圧電素子に比較するとせん鋭度が大幅に小さい。したがって、送波素子および受波素子に圧電素子を用いる場合に比較すると、疎密波送波部11から送波される疎密波に含まれる残響成分の割合が少なくなり、疎密波受波部21から出力される受波信号に含まれる残響成分の割合が少なくなる。つまり、送波時には疎密波の送波間隔を短くすることができ、受波時には短い時間間隔で疎密波を受波しても疎密波に対応する受波信号が重複しないように分離することができる。その結果、複数台の送信装置1からの疎密波を次々に受信することが可能であり、受信装置1の検知エリア内に比較的多くの送信装置1が存在していても、各別に分離して位置を求めることが可能になる。なお、送波素子30および受波素子40のせん鋭度(Q値)はいずれも10以下が望ましく、さらに望ましくは5以下とする。
【0053】
(実施形態2)
実施形態1では、到来方向(θx,θy)の誤差が最大である場合の座標位置の平均を送信装置1の座標位置の中心座標として求めているが、本実施形態では、到来方向(θx,θy)だけではなく、受信装置2から送信装置1までの距離dも用いて送信装置1の座標位置の中心座標を求める例について説明する。なお、距離dは疎密波の伝播時間を用いて求めるほか、z方向の高さ位置の差ΔHが既知であるから、図3を見ればわかるように、差ΔHと到来方向(θx,θy)とを用いて距離dを求めることもできる。
【0054】
実施形態1において説明したように、受信装置2では送信装置1までの距離dを求めることができるから、図3に示した関係から明らかなように、送信装置1と受信装置2との高さ位置の差ΔHと距離dとの関係から、z軸を中心とし送信装置1の座標位置(x,y)を通る円の半径rを次式で求めることができる。
r2=L2−ΔH2
また、座標位置(x,y)と半径rとには次の関係もある。
r2=x2+y2
したがって、座標位置(x,y)の一方の成分と距離dとを用いることによって、座標位置(x,y)の他方の成分を求めることができる。
x2=(L2−ΔH2)−y2
y2=(L2−ΔH2)−x2
たとえば、実施形態1と同じ値を用いると、xの最小値は4.137、xの最大値は4.252、yの最小値は2.109、yの最大値は2.630になる。実施形態1の手順で求めた場合には、xの最小値は4.052、xの最大値は4.346、yの最小値は2.293、yの最大値は2.494であるから、xについては距離dを用いて求めたほうが誤差範囲が狭くなり、yについては距離dを用いずに求めたほうが誤差範囲が狭くなることがわかる。
【0055】
そこで、本実施形態では、距離dを用いる場合と用いない場合との両方について送信装置1の座標位置(x,y)の誤差範囲を求め、座標位置(x,y)の各成分のうち誤差範囲が小さいほうを採用して中心座標(xc,yc)を求める。すなわち、上述した例では座標位置(x,y)のうち、x成分については距離dを用いるほうが誤差範囲が小さく、y成分については距離dを用いないほうが誤差範囲が小さいから、これらの値を用いて送信装置1の中心座標(xc,yc)を求めると、(xc,yc)=(4.199,2.394)になる。なお、誤差が最大になるときの座標位置と中心座標(xc,yc)との距離は0.116mになる。つまり、本実施形態の手順を採用すれば、中心座標(xc,yc)の誤差を実施形態1よりも小さくすることができる。
【0056】
距離dを用いた場合に、座標位置(x,y)のどちらの成分の誤差範囲が、距離dを用いない場合よりも小さくなるかは、到来方向(θx,θy)における各成分θx,θyの絶対値の大小関係によって決まり、|θx|≧|θy|の関係が成立する領域では、x成分については距離dとy成分とを用いるほうが誤差範囲が小さくなり、それ以外の領域ではy成分については距離dとx成分とを用いるほうが誤差範囲が小さくなる。
【0057】
本実施形態の位置演算部24での処理手順を図11にまとめて示す。まず、疎密波の到来方向(θx,θy)が求まると(S1)、角度分解能に基づいて到来方向の誤差範囲を求める(S2)。次に、送信装置1を含む平面内で誤差範囲を求め第1の誤差範囲とする(S3)。ここまでは実施形態1の手順と同様である。
【0058】
第1の誤差範囲を求めた後、第1の誤差範囲のx成分とy成分との一方と距離dとを用いてx成分とy成分との他方の誤差範囲を求め、このようにして求めた誤差範囲を第2の誤差範囲とする(S4)。第1の誤差範囲と第2の誤差範囲とについて、x成分とy成分との範囲を比較し、範囲の狭いほうを採用し、その中心座標を送信装置1の座標位置として採用する(S5)。また、誤差範囲に含まれ中心座標からもっとも遠い点と中心座標との距離を最大誤差として求める(S6)。他の構成および動作は実施形態1と同様である。
【0059】
(実施形態3)
実施形態1、2においては送信装置1を検出対象Obである移動体に設け、受信装置2を天井面CLなどの定位置に固定する例を示したが、図12に示すように、送信装置1を天井面CLなどの定位置に固定し、受信装置2を検出対象Obに搭載する構成を採用してもよい。この構成の場合も受信装置2に設定した直交座標では実施形態1、2と同様の関係が成立するから、同様の演算によって直交座標における送信装置1の中心座標(xc,yc)を求めることができる。
【0060】
なお、検出対象Obが移動体であって受信装置2を移動体に搭載する場合には、移動体の向きに応じて受信装置2に設定した直交座標がz軸の回りに回転するから、受信装置2にジャイロセンサのような方向センサを設け、移動体の向きを検出することによってz軸回りの回転を補正するのが望ましい。他の構成および動作は実施形態1、2と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施形態1を示すブロック図である。
【図2】同上の使用例を示す概略構成図である。
【図3】同上の原理説明図である。
【図4】同上の動作説明図である。
【図5】同上の動作説明図である。
【図6】同上の原理説明図である。
【図7】同上における位置演算部の処理手順を示す動作説明図である。
【図8】同上に用いる送波素子の一例を示す断面図である。
【図9】同上の動作説明図である。
【図10】同上に用いる受波素子の一例を示し、(a)は一部破断した斜視図、(b)は断面図である。
【図11】実施形態2における位置演算部の処理手順を示す動作説明図である。
【図12】実施形態3の使用例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0062】
1 送信装置
2 受信装置
10 制御部
11 疎密波送波部
12 トリガ送信部
20 制御部
21 疎密波受波部
22 トリガ受信部
24 位置演算部
24a A/D変換器
24b データ格納部
24c 処理部(送信位置演算部)
40 受波素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内で床面上を移動する移動体に搭載され疎密波を間欠的に送波する疎密波送波部を有した送信装置と、床面から一定高さである天井面の定位置に設置され送信装置から送波された疎密波を受波することにより送信装置が存在する相対位置を検出する受信装置とを備え、受信装置は、疎密波送波部から送波された疎密波を受波するとともに受波した疎密波を電気信号である受波信号に変換する受波素子を複数個配列したアレイセンサからなる疎密波受波部と、疎密波受波部の各受波素子による疎密波の受波時刻の時間差と各受波素子の配置位置とに基づいて送信装置の位置を受信装置に設定した三次元の直交座標における座標位置として求める送信位置演算部とを備え、送信位置演算部は、前記直交座標における一つの座標軸に直交する平面内で送信装置の座標位置を求めるように前記直交座標を設定してあり、前記座標軸と他の座標軸の各一方とをそれぞれ含む2平面内で疎密波の到来方向をそれぞれ求めるとともに、疎密波受波部の角度分解能を到来方向の誤差範囲として用いることにより送信装置の座標位置の誤差範囲を求め、当該誤差範囲の中心座標を送信装置の座標位置として求めることを特徴とする位置検出システム。
【請求項2】
前記送信装置について求めた誤差範囲のうち中心座標からの最大距離を、送信装置の座標位置の最大誤差として求めることを特徴とする請求項1記載の位置検出システム。
【請求項3】
前記疎密波送波部は、媒質の圧力変化が単発的に生じる圧力波を送波することを特徴とする請求項1または請求項2記載の位置検出システム。
【請求項4】
前記疎密波受波部は、複数個の前記受波素子を二次元的に配列してあることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の位置検出システム。
【請求項1】
建物内で床面上を移動する移動体に搭載され疎密波を間欠的に送波する疎密波送波部を有した送信装置と、床面から一定高さである天井面の定位置に設置され送信装置から送波された疎密波を受波することにより送信装置が存在する相対位置を検出する受信装置とを備え、受信装置は、疎密波送波部から送波された疎密波を受波するとともに受波した疎密波を電気信号である受波信号に変換する受波素子を複数個配列したアレイセンサからなる疎密波受波部と、疎密波受波部の各受波素子による疎密波の受波時刻の時間差と各受波素子の配置位置とに基づいて送信装置の位置を受信装置に設定した三次元の直交座標における座標位置として求める送信位置演算部とを備え、送信位置演算部は、前記直交座標における一つの座標軸に直交する平面内で送信装置の座標位置を求めるように前記直交座標を設定してあり、前記座標軸と他の座標軸の各一方とをそれぞれ含む2平面内で疎密波の到来方向をそれぞれ求めるとともに、疎密波受波部の角度分解能を到来方向の誤差範囲として用いることにより送信装置の座標位置の誤差範囲を求め、当該誤差範囲の中心座標を送信装置の座標位置として求めることを特徴とする位置検出システム。
【請求項2】
前記送信装置について求めた誤差範囲のうち中心座標からの最大距離を、送信装置の座標位置の最大誤差として求めることを特徴とする請求項1記載の位置検出システム。
【請求項3】
前記疎密波送波部は、媒質の圧力変化が単発的に生じる圧力波を送波することを特徴とする請求項1または請求項2記載の位置検出システム。
【請求項4】
前記疎密波受波部は、複数個の前記受波素子を二次元的に配列してあることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の位置検出システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−218927(P2007−218927A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128510(P2007−128510)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【分割の表示】特願2005−216510(P2005−216510)の分割
【原出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【分割の表示】特願2005−216510(P2005−216510)の分割
【原出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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