位置検出装置、位置検出方法
【課題】基地局から送信される電波の途絶地点を利用して、移動体の位置を精度よく検出することができる位置検出装置及び位置検出方法を提供すること。
【解決手段】電波の強度に基づき移動体の位置を検出する位置検出装置10であって、電波の強度を検出する電波強度検出手段12と、電波強度検出手段12により検出された電波が途絶した地点で移動体の位置を検出する位置検出手段15aと、を有することを特徴とする。
【解決手段】電波の強度に基づき移動体の位置を検出する位置検出装置10であって、電波の強度を検出する電波強度検出手段12と、電波強度検出手段12により検出された電波が途絶した地点で移動体の位置を検出する位置検出手段15aと、を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の位置を検出する位置検出装置及び位置検出方法に関し、特に、基地局からの電波強度を利用して位置を検出する位置検出装置及び位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のセンサ類では検出が困難な見通し範囲外の車両や歩行者の情報、道路固有の交通規制情報等を取得して、運転者に運転支援を行うインフラ協調システムが検討されている。運転者は、車両単独では検出が困難な前方の落下物、湾曲道路における渋滞末尾位置など、見通しが困難な事象に関する情報を予め取得することができ、事象に対する適切な対応が可能となる。
【0003】
そしてさらに、赤信号の交差点や落下物の手前で運転者が回避操作を取らない場合には車両が自動的に制動等を加える等、インフラ協調システムを利用した介入制御が検討されている。しかしながら、介入制御を実現するには、車両の位置を精度よく(例えば誤差にして数メートル以内)検出することが必要となるが、車載されているGPS(Global Positioning System)装置等よる測位は誤差が大きいため(例えば、10〜30m以上)、介入制御に利用することは困難である。また、トンネル内などではGPS衛星からの電波が遮断されてしまうため、自律航法により位置推定を継続しても更に誤差が大きくなってしまう。
【0004】
ところで、位置を検出する方法として無線基地局からの電波強度を利用した三角測量が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1では、予め、格子状に設けた各地点の位置情報に各無線基地局から送信される電波の電波強度を対応づけた記憶した電波強度マップを移動局に備え、移動局が複数の無線基地局から受信する電波の電波強度及び無線基地局の識別符号に基づき電波強度マップを参照して、移動局の位置を検出する。
【特許文献1】特開平11−178045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような三角測量により検出される位置であっても介入制御を行うには誤差大きい。
【0006】
そこで、基地局からの電波到達範囲を逸脱した時に生じる電波の途絶に基づき位置を検出することが考えられている。基地局が発信する電波の強度は一定であるため電波が途絶する位置もほぼ一定であり、かつ、電波の途絶地点では電波強度が速やかに低減するため、比較的小さい誤差で途絶位置を検出することができる。
【0007】
しかしながら、一方、電波の途絶が電波到達範囲の逸脱以外の地点で生じた場合、例えば、大型車両による遮蔽や近くの建築物の影響により途絶するような場合は、誤った途絶地点で位置を検出してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、基地局から送信される電波の途絶地点を利用して、移動体の位置を精度よく検出することができる位置検出装置及び位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、電波の強度に基づき移動体の位置を検出する位置検出装置であって、電波の強度を検出する電波強度検出手段(例えば、受信レベル検出回路12)と、電波強度検出手段により検出された電波が途絶した地点で移動体の位置を検出する位置検出手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、基地局からの電波の途絶地点を利用して、移動体の位置を精度よく検出することができる。
【0011】
また、本発明の一形態において、電波の強度分布を示す電波強度テンプレートを記憶したテンプレート記憶手段、を有し、位置検出手段は、電波強度検出手段が検出した前記電波の強度と前記電波強度テンプレートとを比較して、電波強度テンプレートと相違する電波の途絶を検出した場合、位置を検出しないことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、何らかの理由により電波が途絶しても、位置を誤検出することを防止できる。
【発明の効果】
【0013】
基地局から送信される電波の途絶地点を利用して、移動体の位置を精度よく検出することができる位置検出装置及び位置検出方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【0015】
図1は、狭域通信における基地局2と電波強度3の関係を示す図である。基地局2は、例えばDSRC(Dedicated Short Range Communication)による路車間通信のための電波を発信する。DSRCは、数メートル〜数10メートル程度の狭い範囲において受信可能な電波を送信する通信システムである。車両1は、基地局2から送信される電波を受信する受信装置(位置検出装置10)を備え、所定以上の電波強度の通信エリアに入ると基地局2の電波を受信可能となる。
【0016】
図1(b)は、通信エリア及び電波強度3の一例を示す図である。受信可能な電波強度は規格や設計等より異なるが、例えば、電波強度が「通信領域の下限値」以上のエリアを通信エリアと定めることで、基地局2からの電波の受信開始位置及び受信終了位置(以下、途絶地点という場合がある)を決定することができる。「通信領域の下限値」以下の電波強度は、電波の飛びすぎや電波漏洩を防止するための無応答領域(電波を受信可能であっても受信しない)として適宜設計されている。
【0017】
DSRCのように所定の規格の通信システムでは、基地局2が送信する電波の強度は全国的に一定であるので、電波強度3の分布もほぼ一定である。したがって、受信開始位置又は受信終了位置が検出されれば、基地局2の位置に基づき車両1の位置を評定することができる。なお、「評定」としたのは座標等により指定される絶対位置がそのまま検出されるものではないためであるが、付加的な情報を利用することで絶対位置を検出できる。
【0018】
図1(b)に示すようにDSRCでは受信終了位置の電波強度が速やかに低減しているため、受信終了位置の方が受信開始位置よりも誤差が少ない。そこで、本実施形態では受信終了位置に基づき車両1の位置を評定する。
【0019】
なお、本実施形態ではDSRCを対象にして位置検出を説明するが、電波強度が速やかに低減するスポット型の通信システム(例えば、光ビーコン等)であれは好適に適用できる。
【実施例1】
【0020】
図2は、位置検出装置10の概略ブロック図を示す。本実施形態の位置検出装置10は、DSRCの受信装置にわずかな変更を加えて構成可能であるため、DSRCの通信システムに好適に適用可能である。
【0021】
位置検出装置10は、車両1がイグニッションオンするとバッテリから電力の供給を受けて作動を開始し、以降は常に基地局2からの電波を受信する。位置検出装置10は、アンテナ9、受信回路11、復調回路13、ベースバンド処理部14,受信レベル検出回路12、制御部15、ROM16、RAM17、及び、テンプレート記憶部18を有している。また、制御部14はCAN(controller area network)など車内LANを介して他の車載装置20と通信可能となっている。
【0022】
受信回路11は、アンテナ9が受信した電波に対し、DSRC の規格に従ってフィルタ処理、増幅等の処理を施し、復調回路13へ送出する。復調回路13は、例えば直交復調回路であって、受信回路11からの信号を復調し、I/Qデータ(QPSKデータ)をベースバンド処理部14に出力する。
【0023】
ベースバンド処理部14はDSP(Digital Signal Processor)を備え、I/Qデータを受信するとこれらのデータをASK、BPSK−OFDM、QPSK−OFDM等の復号方式に従ってデータ列にデジタル複号する。
【0024】
また、受信レベル検出回路12は受信回路11が受信した電波の強度を、A/D変換した後、制御部15に出力する。制御部15は、通信エリアに侵入し電波が受信されたら、受信開始位置を基準に走行位置に対応づけて電波強度を記憶しておく。車両1の走行位置は車速センサにより検出される。
【0025】
制御部15は、RAM17を作業領域にしてROM16に格納されたプログラムを実行するマイコンとして構成される。例えば、ROM16には制御部15のCPUが実行することで位置検出手段15aを実現するプログラムが記憶されている。位置検出手段15aは、基地局2から送信される電波の途絶地点で車両1の位置を評定する。
【0026】
また、制御部15は所定のプロトコルに従って復号されたデジタルデータを解析し、必要に応じて他の車載装置20に信号を送信する。このデジタルデータは、例えば、道路固有の交通規制情報、事故情報、交差点情報等である。他の車載装置20は、GPS(Global Positioning System)等により位置を検出するナビゲーション装置、インフラ設備からの情報に協調して車両を制御するインフラ協調ECU、車両の制動を制御するブレーキECU、等である。DSRCと車内LANの通信方式の違いを吸収するゲートウェイECUを介してもよい。
【0027】
テンプレート記憶手段18は、ROMやNV(不揮発性)−RAMにより構成され、上述した図1(b)の如き電波強度3の分布のテンプレート(以下、電波強度テンプレートという)を記憶している。電波強度3の分布は同じ通信方式(本実施形態ではDSRC)では共通であるので、所定のDSRCで実際に検出又はシュミュレーション等により形成した電波強度3の分布が電波強度テンプレートとなる。基地局2が車両1に電波強度テンプレートを送信してもよい。
【0028】
基地局2は周知の構成の無線基地局であり、無線送信のためのデジタルデータをDSRCの規格に従って変調、増幅等を施し、その結果得られた信号を高周波処理してアンテナから車両1へ送信する。
【0029】
図3(a)は、受信レベル検出回路12が検出した電波強度の一例を示す図である。図3(a)では、受信終了位置を検出するため上限閾値と下限閾値を記した。上限閾値及び下限閾値は、その幅(下限閾値−上限閾値)Wが定める進行方向の幅Sが所望の精度になるよう定められる。所望の精度とは、例えば介入制御を実行するために適切な精度(例えば2.5メートル以下)である。なお、下限閾値は「通信領域の下限値」と関連なく定めることができる。
【0030】
制御部15の位置検出手段15aは、受信した電波強度が次の条件を満たした場合、受信終了位置を検出する。
条件A : 下限閾値 < 現在受信レベル < 上限閾値
この条件Aは、車両1が受信開始位置を走行した際にも満たされるが、位置検出手段15aは、電波強度が増大傾向にあることや、次述のように電波強度テンプレートを利用して受信開始位置を排除する。
【0031】
次に、電波が外濫により途絶した場合の受信終了位置の検出について説明する。図3(b)は、外濫により電波が途絶した場合の電波強度3の一例を示す図である。車載されたアンテナ9は、周辺車両や道路構造物からの電波の反射の影響を受けて急激に変動する場合がある。図3(b)では電波が変動した部分を点線で囲んだ。変動が生じた場合、電波は途絶する場合が多く、途絶すると電波強度3が条件Aを満たしてしまい、本来の受信終了位置とは異なる位置で車両1の位置を評定してしまう。
【0032】
そこで、本実施形態では、位置検出手段15aが受信レベル検出回路12が検出した電波強度3と電波強度テンプレートを比較して、電波強度テンプレートと一致しない受信終了位置では上記の条件Aを判定しない。
【0033】
図3(c)は、電波強度テンプレートと電波強度3とを比較する様子を示す図である。図3(c)に示すように、外濫により生じた途絶地点では電波の強度が電波強度テンプレートと一致しないので、位置検出手段15aはこの途絶地点では上記の条件Aを判定せず、受信終了位置を検出しない。そして、電波強度テンプレートと一致する電波の強度であって、上記の条件Aを満たす電波の強度が検出された地点で受信終了位置を検出する。
【0034】
なお、電波強度テンプレートと電波強度3が一致するか否かは、受信される電波の強度を所定のサンプリング間隔で電波強度テンプレートの値と比較して、その差分が所定以下であれば一致していると判定する。
【0035】
図4は、位置検出手段15aが受信終了位置を検出する手順を示すフローチャート図である。位置検出手段15aは、イグニションオンとなるとDSRCの基地局2からの電波を受信したか否かを判定を繰り返す(S1)。
【0036】
電波の受信を開始すると、位置検出手段15aは電波強度テンプレートと受信レベル検出回路12が検出した電波の強度を比較する(S2)。そして、電波強度テンプレートとの差異が所定以下か否かを判定し(S3)、差異が所定以下の場合、電波の強度が条件Aを満たすか否かを判定する(S4)。
【0037】
電波強度テンプレートとの差異が所定以下でない場合(S3のNo)、位置検出手段15aは条件Aを判定せずに、電波強度テンプレートと受信レベル検出回路12が検出した電波の強度の比較を継続する(S2)。したがって、差異が大きい場合は条件Aが判定されないので、受信終了位置を検出することがない。
【0038】
条件Aが満たされない場合(S4のNo)、条件Aを満たすまで、ステップS2〜S4を繰り返す。条件Aが満たされた場合は(S4のYes)、その位置を受信終了位置として検出する。
【0039】
以上のように、本実施形態の位置検出装置によれば、電波の途絶位置で車両の位置を精度よく評定することができる。
【実施例2】
【0040】
本実施例では複数車線がある道路を走行している場合に好適に用いられる位置検出装置について説明する。
【0041】
基地局2は、電波干渉を避けるため、道路左端若しくは右端の路肩に1つ、又は、道路幅員の中央部に1つのみ配設されるので、車線数が複数ある道路では走行する車線によって基地局と車両1の位置関係が変化するため、電波強度3も走行する車線により変化する。
【0042】
図5(a)は、車線毎の電波強度3と電波強度テンプレートの比較を示す図である。図5(a)の下側は第1車線(例えば左端の車線)を走行した際の電波強度3と電波強度テンプレートとの比較を、上側は第2車線(例えば右端の車線)を走行した際の電波強度3と電波強度テンプレートとの比較を、それぞれ示す。図5(a)に示すように、第2車線の電波強度3は電波強度テンプレートと一致しているが、第1車線の電波強度3は電波強度テンプレートと一致していない。したがって、仮に第1車線を走行した場合、受信した電波強度3が電波強度テンプレートと一致しないため、通信エリアを完全に通過しても受信終了位置を検出できないおそれがある。
【0043】
そこで、本実施例では複数車線の道路については車線数分の電波強度テンプレートを利用することとする。車線毎の電波強度テンプレートは、予めテンプレート記憶手段18に記憶しておく。
【0044】
図5(b)は車線毎に用意した電波強度テンプレートと電波強度3の比較を示す図である。車線毎に電波強度テンプレートを用意することで、走行する車線に関わらず受信する電波強度3と一致する電波強度テンプレートを利用することができる。
【0045】
図6は、車線が複数存在する通信エリアにおいて位置検出手段15aが受信終了位置を検出する手順を示すフローチャート図である。なお、図6において図4と同一ステップには同一の符号を付しその説明は簡単に行う。
【0046】
位置検出手段15aは、イグニションオンとなるとDSRCの基地局2からの電波を受信したか否かを判定を繰り返す(S1)。
【0047】
位置検出手段15aは、複数の電波強度テンプレートのうち走行している車線の電波強度3に一致するものがどれかは知らないので、DSRCからの電波を受信し始めたら、電波の強度が最も一致する電波強度テンプレートをテンプレート記憶手段18から抽出する(S20)。最も電波の強度が一致する電波強度テンプレートは受信終了位置までに決定すればよく、例えば、受信した電波の強度を所定点数サンプリングして最も差異の小さい電波強度テンプレートを抽出する。
【0048】
以降は、図4と同様である。すなわち、位置検出手段15aは抽出した電波強度テンプレートと受信レベル検出回路12が検出した電波の強度を比較する(S2)。そして、電波強度テンプレートとの差異が所定以下か否かを判定し(S3)、差異が所定以下の場合、電波の強度が条件Aを満たすか否かを判定する(S4)。条件Aが満たされた場合は(S4のYes)、その位置を受信終了位置として検出する(S5)。
【0049】
電波強度テンプレートとの差異が所定以下でない場合(S3のNo)、位置検出手段15aは条件Aを判定しないので、受信終了位置を検出することがない。
【0050】
本実施例によれば、複数車線のいずれを走行していても、電波の途絶位置を確実に検出して車両の位置を精度よく評定することができる。
【実施例3】
【0051】
実施例2では、車線数分の電波強度テンプレートを用意することで走行する車線による電波強度3の変動に対応したが、次に挙げるような要因によっても電波強度3は変動する場合がある。
・周囲の建築物の影響(反射・吸収)
・路面反射(路面の舗装の違いによる)の影響 等
このような要因に対応するため種々の電波強度テンプレートを用意することも考えられるが、一方で、市街地、路面種別等の影響を考慮した電波特性の技術的評価によれば、電波強度3の分布が無数に存在する可能性は低いと判断してよい。
【0052】
そこで、本実施例では考え得る分布の数だけ電波強度テンプレートを予め用意して車両1のテンプレート記憶手段18に記憶しておく。図7は、考え得る分布の電波強度テンプレートを識別番号に対応づけて記憶した電波強度テーブルの一例を示す。電波強度テーブルは、テンプレート記憶手段18に記憶される。
【0053】
ところで、考え得る電波強度3の分布は10パターン程度であると考えられるが、全ての電波強度テンプレートから、受信した電波強度3と一致する電波強度テンプレートを抽出するのでは、一致する電波強度テンプレートを決定するまでに時間がかかるため好ましくなく、また、時間がかかり過ぎるとインフラ協調システムの作動に影響を及ぼすおそれがある。
【0054】
ここで、所定のDSRCの電波強度3に限定して考えると、所定のDSRCでは車線数、舗装路面及び周囲の建築物は固定であるので、2〜4種類程度の電波強度テンプレートのいずれかが受信される電波強度3に一致すると予想できる。そこで、本実施例では、当該DSRCにおいて一致すると考えられる電波強度テンプレートの識別番号を基地局2が通信エリアに侵入した車両1に送信することとする。位置検出手段15aは識別番号により指定された電波強度テンプレートから一致するものを抽出するので、適切な電波強度テンプレートを用いて受信終了位置を検出することができる。
【0055】
図8は、電波強度テンプレートの識別番号を受信して、位置検出手段15aが受信終了位置を検出する手順を示すフローチャート図である。なお、図8において図6と同一ステップには同一の符号を付しその説明は簡単に行う。
【0056】
位置検出手段15aは、イグニションオンとなるとDSRCの基地局2からの電波を受信したか否かを判定を繰り返す(S1)。
【0057】
DSRCからの電波を受信し始めたら(S1のYes)、位置検出手段15aは復調回路13及びベースバンド回路14を介して入力された電波強度テンプレートの識別番号を取得する(S30)。
【0058】
ついで、位置検出手段15aは、識別番号により指定された複数又は単数の電波強度テンプレートのうち走行している車線の電波強度3に最も一致する電波強度テンプレートをテンプレート記憶手段18から抽出する(S20)。
【0059】
以降は、図6と同様である。すなわち、位置検出手段15aは抽出した電波強度テンプレートと受信レベル検出回路12が検出した電波の強度を比較する(S2)。そして、電波強度テンプレートとの差異が所定以下か否かを判定し(S3)、差異が所定以下の場合、電波の強度が条件Aを満たすか否かを判定する(S4)。条件Aが満たされた場合は(S4のYes)、その位置を受信終了位置として検出する(S5)。
【0060】
電波強度テンプレートとの差異が所定以下でない場合(S3のNo)、位置検出手段15aは条件Aを判定しないので、受信終了位置を検出することがない。
【0061】
本実施例によれば、DSRCの基地局2が設置されている種々の電波強度の分布に対応して、受信終了位置を検出し、車両1の現在位置を精度よく評定することができる。
【実施例4】
【0062】
実施例1〜3では車両1の位置を評定するために受信終了位置を検出したが、本実施例では電波強度テンプレート及び受信する電波の強度に基づき車両1の走行している車線を推定する位置検出装置について説明する。
【0063】
実施例2において説明したように、車線数が複数ある道路では走行する車線によって基地局2と車両1の位置関係が変化し電波強度3も車線により変化するが、実施例3のように考え得る電波強度テンプレートを用意しておけば、各DSRCの基地局2は、当該DSRCの各車線の電波強度3と一致する電波強度テンプレートを既知とすることができる。したがって、基地局2は電波強度テンプレートの識別番号と共に各電波強度テンプレートがどの車線に適合するかを示す車線情報を車両1に送信することができる。すなわち、本実施例では、基地局2は電波強度テンプレートの識別番号に対応づけて車線番号を通信エリアの車両1に送信する。
【0064】
車両1の位置検出手段15aは、識別番号により指定された電波強度テンプレートから、実施例3と同様に受信した電波強度3と一致する電波強度テンプレートを抽出し、識別番号に対応付けて送信された車線情報により車両1の車線を推定することができる。
【0065】
図9は、位置検出手段15aが電波強度テンプレート及び車線情報に基づき車両1の車線を推定する手順を示すフローチャート図である。なお、図9において図8と同一ステップには同一の符号を付しその説明は簡単に行う。
【0066】
位置検出手段15aは、イグニションオンとなるとDSRCの基地局2からの電波を受信したか否かを判定を繰り返す(S1)。
【0067】
DSRCからの電波を受信し始めたら(S1のYes)、位置検出手段15aは復調回路13及びベースバンド回路14を介して入力された識別番号及び車線情報を取得する(S40)。
【0068】
ついで、位置検出手段15aは、識別番号により指定された複数又は単数の電波強度テンプレートのうち走行している車線の電波強度3に最も一致する電波強度テンプレートをテンプレート記憶手段18から抽出する(S20)。
【0069】
一致する電波強度テンプレートが抽出されたら、該電波強度テンプレートに対応づけられていた車線情報により車両1の車線を推定する(S41)。以上で車線が推定された。さらに、ステップS20で抽出した電波強度テンプレートを用いて受信終了位置を検出してもよい。
【0070】
図10は、本実施例を適用したインフラ協調システムの応用例を示す図である。車両Aが右側の第2車線を走行しており、車両Bが左側の第1車線を走行している。そして、第1車線において車両Bの前方で事故が発生している。
【0071】
事故位置の手前に基地局2が存在しており、基地局2から送信された電波強度テンプレートの識別番号及び車線情報により車両A及びBは走行している車線をそれぞれ推定している。また、基地局2は、その本来の使命として事故があったこと及びその位置を通信エリアを走行する車両に送信するので、車両A及びBは当該道路の第1車線に事故が発生していることを検知する。
【0072】
このような場合、車両Bの制御部15は、車両Bが事故の発生した車線を走行していることを検知できるので、例えばナビゲーション装置と通信し表示装置が表示する地図上に事故の発生を示したり、スピーカから「走行中の車線の前方○○メートルに事故車両が停止しています」等のメッセージを出力する。したがって、車両Bの運転者は前方の事故の存在を把握して、車線変更する等の適切な対処をすることができる。また、事故位置の直前になっても運転者が対応しない場合、制御部15は他のECUと通信して強制的に車両Bを制動させてもよい。
【0073】
車両Aの制御部15は、車両Aが事故の発生した車線でない車線を走行していることを検知できるので、運転者に事故の発生やその位置を通知しない。したがって、車両Aの運転者は車両Aに直接は関係ない事故を通知されることがなく、煩わしさを感じることを防止できる。
【実施例5】
【0074】
本実施例では、電波強度3の受信終了位置により検出した車両の位置を利用することで、ナビゲーション装置等がGPS等により検出した自車位置の補正を可能にする自車位置補正について説明する。
【0075】
図11は、道路における車両1の位置を示す図である。車両1は交差点に向けて、GPS等により位置を検出しながら走行している。図11に示した車両1は現実に走行している位置であるが、ナビゲーション装置が検出する位置は、例えば、点線で示す程度の範囲で誤差を有するものである。したがって、車両1は点線内の範囲でしか車両1の位置を特定できない。
【0076】
ここで、車両1が交差点手前の基地局2の通信エリアを通過すると、電波の受信終了位置を検出することができる。基地局2は次の交差点までの距離Lを記憶しており、通信エリアを走行している間に距離Lを車両1に送信すれば、車両1は、受信終了位置が検出された時点で、交差点までの距離がLであることを正確に検出することができる。
【0077】
ナビゲーション装置が検出する位置は誤差を有するものの、走行している道路については既知であるので、交差点まで距離Lの位置に存在することが分かれば、その位置を真値としてGPS等による誤差を補正することができる。したがって、位置検出装置10は、DSRCを通過するたびに車両1の位置を精度よく補正することができる。距離Lは交差点までの距離でなくても、位置が既知の地物であればよい。
【0078】
なお、受信終了位置の位置情報(緯度、経度)そのものを基地局2が送信し、位置検出手段15aが受信終了位置を検出した際に、GPS等による位置の誤差を補正してもよい。
【0079】
以上のように、本実施形態の位置検出装置は、狭域通信の電波の途絶位置を検出することで、現在位置を精度よく評定することができる。電波の途絶が外濫により途絶したものでないことを、電波強度テンプレートにより検証するので電波の途絶を誤検出することがない。また、道路に複数の車線が設けられており走行車線による電波強度の違いがあっても、予め複数の電波強度テンプレートを記憶しているので、電波強度に基づき受信終了位置を検出できる。また、走行車線以外の要因により電波強度の違いがあっても、基地局2から当該DSRCに適合する電波強度テンプレートの識別情報を受信することで、電波強度に基づき受信終了位置を検出できる。また、受信した電波強度3に一致した電波強度テンプレートから車線を推定することができ、車線毎の事象情報をその車線を走行する運転者にのみ通知することができる。また、受信終了位置を利用して、GPS等の検出した位置を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】狭域通信における基地局と電波強度の関係を示す図である。
【図2】位置検出装置の概略ブロック図である。
【図3】電波強度と電波強度テンプレートの関係を説明するための図である。
【図4】制御部が受信終了位置を検出する手順を示すフローチャート図である。
【図5】車線毎の電波強度と電波強度テンプレートの比較を示す図である。
【図6】車線が複数存在する通信エリアにおいて制御部が受信終了位置を検出する手順を示すフローチャート図である。
【図7】考え得る分布の電波強度テンプレートを識別番号に対応づけて記憶した電波強度テーブルの一例である。
【図8】電波強度テンプレートの識別番号を受信して、制御部が受信終了位置を検出する手順を示すフローチャート図である。
【図9】制御部が電波強度テンプレート及び車線情報に基づき車両の車線を推定する手順を示すフローチャート図である。
【図10】インフラ協調システムの応用例を示す図である。
【図11】道路における車両の位置を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
1 車両
2 基地局
3 電波強度
10 位置検出装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の位置を検出する位置検出装置及び位置検出方法に関し、特に、基地局からの電波強度を利用して位置を検出する位置検出装置及び位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のセンサ類では検出が困難な見通し範囲外の車両や歩行者の情報、道路固有の交通規制情報等を取得して、運転者に運転支援を行うインフラ協調システムが検討されている。運転者は、車両単独では検出が困難な前方の落下物、湾曲道路における渋滞末尾位置など、見通しが困難な事象に関する情報を予め取得することができ、事象に対する適切な対応が可能となる。
【0003】
そしてさらに、赤信号の交差点や落下物の手前で運転者が回避操作を取らない場合には車両が自動的に制動等を加える等、インフラ協調システムを利用した介入制御が検討されている。しかしながら、介入制御を実現するには、車両の位置を精度よく(例えば誤差にして数メートル以内)検出することが必要となるが、車載されているGPS(Global Positioning System)装置等よる測位は誤差が大きいため(例えば、10〜30m以上)、介入制御に利用することは困難である。また、トンネル内などではGPS衛星からの電波が遮断されてしまうため、自律航法により位置推定を継続しても更に誤差が大きくなってしまう。
【0004】
ところで、位置を検出する方法として無線基地局からの電波強度を利用した三角測量が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1では、予め、格子状に設けた各地点の位置情報に各無線基地局から送信される電波の電波強度を対応づけた記憶した電波強度マップを移動局に備え、移動局が複数の無線基地局から受信する電波の電波強度及び無線基地局の識別符号に基づき電波強度マップを参照して、移動局の位置を検出する。
【特許文献1】特開平11−178045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような三角測量により検出される位置であっても介入制御を行うには誤差大きい。
【0006】
そこで、基地局からの電波到達範囲を逸脱した時に生じる電波の途絶に基づき位置を検出することが考えられている。基地局が発信する電波の強度は一定であるため電波が途絶する位置もほぼ一定であり、かつ、電波の途絶地点では電波強度が速やかに低減するため、比較的小さい誤差で途絶位置を検出することができる。
【0007】
しかしながら、一方、電波の途絶が電波到達範囲の逸脱以外の地点で生じた場合、例えば、大型車両による遮蔽や近くの建築物の影響により途絶するような場合は、誤った途絶地点で位置を検出してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、基地局から送信される電波の途絶地点を利用して、移動体の位置を精度よく検出することができる位置検出装置及び位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、電波の強度に基づき移動体の位置を検出する位置検出装置であって、電波の強度を検出する電波強度検出手段(例えば、受信レベル検出回路12)と、電波強度検出手段により検出された電波が途絶した地点で移動体の位置を検出する位置検出手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、基地局からの電波の途絶地点を利用して、移動体の位置を精度よく検出することができる。
【0011】
また、本発明の一形態において、電波の強度分布を示す電波強度テンプレートを記憶したテンプレート記憶手段、を有し、位置検出手段は、電波強度検出手段が検出した前記電波の強度と前記電波強度テンプレートとを比較して、電波強度テンプレートと相違する電波の途絶を検出した場合、位置を検出しないことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、何らかの理由により電波が途絶しても、位置を誤検出することを防止できる。
【発明の効果】
【0013】
基地局から送信される電波の途絶地点を利用して、移動体の位置を精度よく検出することができる位置検出装置及び位置検出方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【0015】
図1は、狭域通信における基地局2と電波強度3の関係を示す図である。基地局2は、例えばDSRC(Dedicated Short Range Communication)による路車間通信のための電波を発信する。DSRCは、数メートル〜数10メートル程度の狭い範囲において受信可能な電波を送信する通信システムである。車両1は、基地局2から送信される電波を受信する受信装置(位置検出装置10)を備え、所定以上の電波強度の通信エリアに入ると基地局2の電波を受信可能となる。
【0016】
図1(b)は、通信エリア及び電波強度3の一例を示す図である。受信可能な電波強度は規格や設計等より異なるが、例えば、電波強度が「通信領域の下限値」以上のエリアを通信エリアと定めることで、基地局2からの電波の受信開始位置及び受信終了位置(以下、途絶地点という場合がある)を決定することができる。「通信領域の下限値」以下の電波強度は、電波の飛びすぎや電波漏洩を防止するための無応答領域(電波を受信可能であっても受信しない)として適宜設計されている。
【0017】
DSRCのように所定の規格の通信システムでは、基地局2が送信する電波の強度は全国的に一定であるので、電波強度3の分布もほぼ一定である。したがって、受信開始位置又は受信終了位置が検出されれば、基地局2の位置に基づき車両1の位置を評定することができる。なお、「評定」としたのは座標等により指定される絶対位置がそのまま検出されるものではないためであるが、付加的な情報を利用することで絶対位置を検出できる。
【0018】
図1(b)に示すようにDSRCでは受信終了位置の電波強度が速やかに低減しているため、受信終了位置の方が受信開始位置よりも誤差が少ない。そこで、本実施形態では受信終了位置に基づき車両1の位置を評定する。
【0019】
なお、本実施形態ではDSRCを対象にして位置検出を説明するが、電波強度が速やかに低減するスポット型の通信システム(例えば、光ビーコン等)であれは好適に適用できる。
【実施例1】
【0020】
図2は、位置検出装置10の概略ブロック図を示す。本実施形態の位置検出装置10は、DSRCの受信装置にわずかな変更を加えて構成可能であるため、DSRCの通信システムに好適に適用可能である。
【0021】
位置検出装置10は、車両1がイグニッションオンするとバッテリから電力の供給を受けて作動を開始し、以降は常に基地局2からの電波を受信する。位置検出装置10は、アンテナ9、受信回路11、復調回路13、ベースバンド処理部14,受信レベル検出回路12、制御部15、ROM16、RAM17、及び、テンプレート記憶部18を有している。また、制御部14はCAN(controller area network)など車内LANを介して他の車載装置20と通信可能となっている。
【0022】
受信回路11は、アンテナ9が受信した電波に対し、DSRC の規格に従ってフィルタ処理、増幅等の処理を施し、復調回路13へ送出する。復調回路13は、例えば直交復調回路であって、受信回路11からの信号を復調し、I/Qデータ(QPSKデータ)をベースバンド処理部14に出力する。
【0023】
ベースバンド処理部14はDSP(Digital Signal Processor)を備え、I/Qデータを受信するとこれらのデータをASK、BPSK−OFDM、QPSK−OFDM等の復号方式に従ってデータ列にデジタル複号する。
【0024】
また、受信レベル検出回路12は受信回路11が受信した電波の強度を、A/D変換した後、制御部15に出力する。制御部15は、通信エリアに侵入し電波が受信されたら、受信開始位置を基準に走行位置に対応づけて電波強度を記憶しておく。車両1の走行位置は車速センサにより検出される。
【0025】
制御部15は、RAM17を作業領域にしてROM16に格納されたプログラムを実行するマイコンとして構成される。例えば、ROM16には制御部15のCPUが実行することで位置検出手段15aを実現するプログラムが記憶されている。位置検出手段15aは、基地局2から送信される電波の途絶地点で車両1の位置を評定する。
【0026】
また、制御部15は所定のプロトコルに従って復号されたデジタルデータを解析し、必要に応じて他の車載装置20に信号を送信する。このデジタルデータは、例えば、道路固有の交通規制情報、事故情報、交差点情報等である。他の車載装置20は、GPS(Global Positioning System)等により位置を検出するナビゲーション装置、インフラ設備からの情報に協調して車両を制御するインフラ協調ECU、車両の制動を制御するブレーキECU、等である。DSRCと車内LANの通信方式の違いを吸収するゲートウェイECUを介してもよい。
【0027】
テンプレート記憶手段18は、ROMやNV(不揮発性)−RAMにより構成され、上述した図1(b)の如き電波強度3の分布のテンプレート(以下、電波強度テンプレートという)を記憶している。電波強度3の分布は同じ通信方式(本実施形態ではDSRC)では共通であるので、所定のDSRCで実際に検出又はシュミュレーション等により形成した電波強度3の分布が電波強度テンプレートとなる。基地局2が車両1に電波強度テンプレートを送信してもよい。
【0028】
基地局2は周知の構成の無線基地局であり、無線送信のためのデジタルデータをDSRCの規格に従って変調、増幅等を施し、その結果得られた信号を高周波処理してアンテナから車両1へ送信する。
【0029】
図3(a)は、受信レベル検出回路12が検出した電波強度の一例を示す図である。図3(a)では、受信終了位置を検出するため上限閾値と下限閾値を記した。上限閾値及び下限閾値は、その幅(下限閾値−上限閾値)Wが定める進行方向の幅Sが所望の精度になるよう定められる。所望の精度とは、例えば介入制御を実行するために適切な精度(例えば2.5メートル以下)である。なお、下限閾値は「通信領域の下限値」と関連なく定めることができる。
【0030】
制御部15の位置検出手段15aは、受信した電波強度が次の条件を満たした場合、受信終了位置を検出する。
条件A : 下限閾値 < 現在受信レベル < 上限閾値
この条件Aは、車両1が受信開始位置を走行した際にも満たされるが、位置検出手段15aは、電波強度が増大傾向にあることや、次述のように電波強度テンプレートを利用して受信開始位置を排除する。
【0031】
次に、電波が外濫により途絶した場合の受信終了位置の検出について説明する。図3(b)は、外濫により電波が途絶した場合の電波強度3の一例を示す図である。車載されたアンテナ9は、周辺車両や道路構造物からの電波の反射の影響を受けて急激に変動する場合がある。図3(b)では電波が変動した部分を点線で囲んだ。変動が生じた場合、電波は途絶する場合が多く、途絶すると電波強度3が条件Aを満たしてしまい、本来の受信終了位置とは異なる位置で車両1の位置を評定してしまう。
【0032】
そこで、本実施形態では、位置検出手段15aが受信レベル検出回路12が検出した電波強度3と電波強度テンプレートを比較して、電波強度テンプレートと一致しない受信終了位置では上記の条件Aを判定しない。
【0033】
図3(c)は、電波強度テンプレートと電波強度3とを比較する様子を示す図である。図3(c)に示すように、外濫により生じた途絶地点では電波の強度が電波強度テンプレートと一致しないので、位置検出手段15aはこの途絶地点では上記の条件Aを判定せず、受信終了位置を検出しない。そして、電波強度テンプレートと一致する電波の強度であって、上記の条件Aを満たす電波の強度が検出された地点で受信終了位置を検出する。
【0034】
なお、電波強度テンプレートと電波強度3が一致するか否かは、受信される電波の強度を所定のサンプリング間隔で電波強度テンプレートの値と比較して、その差分が所定以下であれば一致していると判定する。
【0035】
図4は、位置検出手段15aが受信終了位置を検出する手順を示すフローチャート図である。位置検出手段15aは、イグニションオンとなるとDSRCの基地局2からの電波を受信したか否かを判定を繰り返す(S1)。
【0036】
電波の受信を開始すると、位置検出手段15aは電波強度テンプレートと受信レベル検出回路12が検出した電波の強度を比較する(S2)。そして、電波強度テンプレートとの差異が所定以下か否かを判定し(S3)、差異が所定以下の場合、電波の強度が条件Aを満たすか否かを判定する(S4)。
【0037】
電波強度テンプレートとの差異が所定以下でない場合(S3のNo)、位置検出手段15aは条件Aを判定せずに、電波強度テンプレートと受信レベル検出回路12が検出した電波の強度の比較を継続する(S2)。したがって、差異が大きい場合は条件Aが判定されないので、受信終了位置を検出することがない。
【0038】
条件Aが満たされない場合(S4のNo)、条件Aを満たすまで、ステップS2〜S4を繰り返す。条件Aが満たされた場合は(S4のYes)、その位置を受信終了位置として検出する。
【0039】
以上のように、本実施形態の位置検出装置によれば、電波の途絶位置で車両の位置を精度よく評定することができる。
【実施例2】
【0040】
本実施例では複数車線がある道路を走行している場合に好適に用いられる位置検出装置について説明する。
【0041】
基地局2は、電波干渉を避けるため、道路左端若しくは右端の路肩に1つ、又は、道路幅員の中央部に1つのみ配設されるので、車線数が複数ある道路では走行する車線によって基地局と車両1の位置関係が変化するため、電波強度3も走行する車線により変化する。
【0042】
図5(a)は、車線毎の電波強度3と電波強度テンプレートの比較を示す図である。図5(a)の下側は第1車線(例えば左端の車線)を走行した際の電波強度3と電波強度テンプレートとの比較を、上側は第2車線(例えば右端の車線)を走行した際の電波強度3と電波強度テンプレートとの比較を、それぞれ示す。図5(a)に示すように、第2車線の電波強度3は電波強度テンプレートと一致しているが、第1車線の電波強度3は電波強度テンプレートと一致していない。したがって、仮に第1車線を走行した場合、受信した電波強度3が電波強度テンプレートと一致しないため、通信エリアを完全に通過しても受信終了位置を検出できないおそれがある。
【0043】
そこで、本実施例では複数車線の道路については車線数分の電波強度テンプレートを利用することとする。車線毎の電波強度テンプレートは、予めテンプレート記憶手段18に記憶しておく。
【0044】
図5(b)は車線毎に用意した電波強度テンプレートと電波強度3の比較を示す図である。車線毎に電波強度テンプレートを用意することで、走行する車線に関わらず受信する電波強度3と一致する電波強度テンプレートを利用することができる。
【0045】
図6は、車線が複数存在する通信エリアにおいて位置検出手段15aが受信終了位置を検出する手順を示すフローチャート図である。なお、図6において図4と同一ステップには同一の符号を付しその説明は簡単に行う。
【0046】
位置検出手段15aは、イグニションオンとなるとDSRCの基地局2からの電波を受信したか否かを判定を繰り返す(S1)。
【0047】
位置検出手段15aは、複数の電波強度テンプレートのうち走行している車線の電波強度3に一致するものがどれかは知らないので、DSRCからの電波を受信し始めたら、電波の強度が最も一致する電波強度テンプレートをテンプレート記憶手段18から抽出する(S20)。最も電波の強度が一致する電波強度テンプレートは受信終了位置までに決定すればよく、例えば、受信した電波の強度を所定点数サンプリングして最も差異の小さい電波強度テンプレートを抽出する。
【0048】
以降は、図4と同様である。すなわち、位置検出手段15aは抽出した電波強度テンプレートと受信レベル検出回路12が検出した電波の強度を比較する(S2)。そして、電波強度テンプレートとの差異が所定以下か否かを判定し(S3)、差異が所定以下の場合、電波の強度が条件Aを満たすか否かを判定する(S4)。条件Aが満たされた場合は(S4のYes)、その位置を受信終了位置として検出する(S5)。
【0049】
電波強度テンプレートとの差異が所定以下でない場合(S3のNo)、位置検出手段15aは条件Aを判定しないので、受信終了位置を検出することがない。
【0050】
本実施例によれば、複数車線のいずれを走行していても、電波の途絶位置を確実に検出して車両の位置を精度よく評定することができる。
【実施例3】
【0051】
実施例2では、車線数分の電波強度テンプレートを用意することで走行する車線による電波強度3の変動に対応したが、次に挙げるような要因によっても電波強度3は変動する場合がある。
・周囲の建築物の影響(反射・吸収)
・路面反射(路面の舗装の違いによる)の影響 等
このような要因に対応するため種々の電波強度テンプレートを用意することも考えられるが、一方で、市街地、路面種別等の影響を考慮した電波特性の技術的評価によれば、電波強度3の分布が無数に存在する可能性は低いと判断してよい。
【0052】
そこで、本実施例では考え得る分布の数だけ電波強度テンプレートを予め用意して車両1のテンプレート記憶手段18に記憶しておく。図7は、考え得る分布の電波強度テンプレートを識別番号に対応づけて記憶した電波強度テーブルの一例を示す。電波強度テーブルは、テンプレート記憶手段18に記憶される。
【0053】
ところで、考え得る電波強度3の分布は10パターン程度であると考えられるが、全ての電波強度テンプレートから、受信した電波強度3と一致する電波強度テンプレートを抽出するのでは、一致する電波強度テンプレートを決定するまでに時間がかかるため好ましくなく、また、時間がかかり過ぎるとインフラ協調システムの作動に影響を及ぼすおそれがある。
【0054】
ここで、所定のDSRCの電波強度3に限定して考えると、所定のDSRCでは車線数、舗装路面及び周囲の建築物は固定であるので、2〜4種類程度の電波強度テンプレートのいずれかが受信される電波強度3に一致すると予想できる。そこで、本実施例では、当該DSRCにおいて一致すると考えられる電波強度テンプレートの識別番号を基地局2が通信エリアに侵入した車両1に送信することとする。位置検出手段15aは識別番号により指定された電波強度テンプレートから一致するものを抽出するので、適切な電波強度テンプレートを用いて受信終了位置を検出することができる。
【0055】
図8は、電波強度テンプレートの識別番号を受信して、位置検出手段15aが受信終了位置を検出する手順を示すフローチャート図である。なお、図8において図6と同一ステップには同一の符号を付しその説明は簡単に行う。
【0056】
位置検出手段15aは、イグニションオンとなるとDSRCの基地局2からの電波を受信したか否かを判定を繰り返す(S1)。
【0057】
DSRCからの電波を受信し始めたら(S1のYes)、位置検出手段15aは復調回路13及びベースバンド回路14を介して入力された電波強度テンプレートの識別番号を取得する(S30)。
【0058】
ついで、位置検出手段15aは、識別番号により指定された複数又は単数の電波強度テンプレートのうち走行している車線の電波強度3に最も一致する電波強度テンプレートをテンプレート記憶手段18から抽出する(S20)。
【0059】
以降は、図6と同様である。すなわち、位置検出手段15aは抽出した電波強度テンプレートと受信レベル検出回路12が検出した電波の強度を比較する(S2)。そして、電波強度テンプレートとの差異が所定以下か否かを判定し(S3)、差異が所定以下の場合、電波の強度が条件Aを満たすか否かを判定する(S4)。条件Aが満たされた場合は(S4のYes)、その位置を受信終了位置として検出する(S5)。
【0060】
電波強度テンプレートとの差異が所定以下でない場合(S3のNo)、位置検出手段15aは条件Aを判定しないので、受信終了位置を検出することがない。
【0061】
本実施例によれば、DSRCの基地局2が設置されている種々の電波強度の分布に対応して、受信終了位置を検出し、車両1の現在位置を精度よく評定することができる。
【実施例4】
【0062】
実施例1〜3では車両1の位置を評定するために受信終了位置を検出したが、本実施例では電波強度テンプレート及び受信する電波の強度に基づき車両1の走行している車線を推定する位置検出装置について説明する。
【0063】
実施例2において説明したように、車線数が複数ある道路では走行する車線によって基地局2と車両1の位置関係が変化し電波強度3も車線により変化するが、実施例3のように考え得る電波強度テンプレートを用意しておけば、各DSRCの基地局2は、当該DSRCの各車線の電波強度3と一致する電波強度テンプレートを既知とすることができる。したがって、基地局2は電波強度テンプレートの識別番号と共に各電波強度テンプレートがどの車線に適合するかを示す車線情報を車両1に送信することができる。すなわち、本実施例では、基地局2は電波強度テンプレートの識別番号に対応づけて車線番号を通信エリアの車両1に送信する。
【0064】
車両1の位置検出手段15aは、識別番号により指定された電波強度テンプレートから、実施例3と同様に受信した電波強度3と一致する電波強度テンプレートを抽出し、識別番号に対応付けて送信された車線情報により車両1の車線を推定することができる。
【0065】
図9は、位置検出手段15aが電波強度テンプレート及び車線情報に基づき車両1の車線を推定する手順を示すフローチャート図である。なお、図9において図8と同一ステップには同一の符号を付しその説明は簡単に行う。
【0066】
位置検出手段15aは、イグニションオンとなるとDSRCの基地局2からの電波を受信したか否かを判定を繰り返す(S1)。
【0067】
DSRCからの電波を受信し始めたら(S1のYes)、位置検出手段15aは復調回路13及びベースバンド回路14を介して入力された識別番号及び車線情報を取得する(S40)。
【0068】
ついで、位置検出手段15aは、識別番号により指定された複数又は単数の電波強度テンプレートのうち走行している車線の電波強度3に最も一致する電波強度テンプレートをテンプレート記憶手段18から抽出する(S20)。
【0069】
一致する電波強度テンプレートが抽出されたら、該電波強度テンプレートに対応づけられていた車線情報により車両1の車線を推定する(S41)。以上で車線が推定された。さらに、ステップS20で抽出した電波強度テンプレートを用いて受信終了位置を検出してもよい。
【0070】
図10は、本実施例を適用したインフラ協調システムの応用例を示す図である。車両Aが右側の第2車線を走行しており、車両Bが左側の第1車線を走行している。そして、第1車線において車両Bの前方で事故が発生している。
【0071】
事故位置の手前に基地局2が存在しており、基地局2から送信された電波強度テンプレートの識別番号及び車線情報により車両A及びBは走行している車線をそれぞれ推定している。また、基地局2は、その本来の使命として事故があったこと及びその位置を通信エリアを走行する車両に送信するので、車両A及びBは当該道路の第1車線に事故が発生していることを検知する。
【0072】
このような場合、車両Bの制御部15は、車両Bが事故の発生した車線を走行していることを検知できるので、例えばナビゲーション装置と通信し表示装置が表示する地図上に事故の発生を示したり、スピーカから「走行中の車線の前方○○メートルに事故車両が停止しています」等のメッセージを出力する。したがって、車両Bの運転者は前方の事故の存在を把握して、車線変更する等の適切な対処をすることができる。また、事故位置の直前になっても運転者が対応しない場合、制御部15は他のECUと通信して強制的に車両Bを制動させてもよい。
【0073】
車両Aの制御部15は、車両Aが事故の発生した車線でない車線を走行していることを検知できるので、運転者に事故の発生やその位置を通知しない。したがって、車両Aの運転者は車両Aに直接は関係ない事故を通知されることがなく、煩わしさを感じることを防止できる。
【実施例5】
【0074】
本実施例では、電波強度3の受信終了位置により検出した車両の位置を利用することで、ナビゲーション装置等がGPS等により検出した自車位置の補正を可能にする自車位置補正について説明する。
【0075】
図11は、道路における車両1の位置を示す図である。車両1は交差点に向けて、GPS等により位置を検出しながら走行している。図11に示した車両1は現実に走行している位置であるが、ナビゲーション装置が検出する位置は、例えば、点線で示す程度の範囲で誤差を有するものである。したがって、車両1は点線内の範囲でしか車両1の位置を特定できない。
【0076】
ここで、車両1が交差点手前の基地局2の通信エリアを通過すると、電波の受信終了位置を検出することができる。基地局2は次の交差点までの距離Lを記憶しており、通信エリアを走行している間に距離Lを車両1に送信すれば、車両1は、受信終了位置が検出された時点で、交差点までの距離がLであることを正確に検出することができる。
【0077】
ナビゲーション装置が検出する位置は誤差を有するものの、走行している道路については既知であるので、交差点まで距離Lの位置に存在することが分かれば、その位置を真値としてGPS等による誤差を補正することができる。したがって、位置検出装置10は、DSRCを通過するたびに車両1の位置を精度よく補正することができる。距離Lは交差点までの距離でなくても、位置が既知の地物であればよい。
【0078】
なお、受信終了位置の位置情報(緯度、経度)そのものを基地局2が送信し、位置検出手段15aが受信終了位置を検出した際に、GPS等による位置の誤差を補正してもよい。
【0079】
以上のように、本実施形態の位置検出装置は、狭域通信の電波の途絶位置を検出することで、現在位置を精度よく評定することができる。電波の途絶が外濫により途絶したものでないことを、電波強度テンプレートにより検証するので電波の途絶を誤検出することがない。また、道路に複数の車線が設けられており走行車線による電波強度の違いがあっても、予め複数の電波強度テンプレートを記憶しているので、電波強度に基づき受信終了位置を検出できる。また、走行車線以外の要因により電波強度の違いがあっても、基地局2から当該DSRCに適合する電波強度テンプレートの識別情報を受信することで、電波強度に基づき受信終了位置を検出できる。また、受信した電波強度3に一致した電波強度テンプレートから車線を推定することができ、車線毎の事象情報をその車線を走行する運転者にのみ通知することができる。また、受信終了位置を利用して、GPS等の検出した位置を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】狭域通信における基地局と電波強度の関係を示す図である。
【図2】位置検出装置の概略ブロック図である。
【図3】電波強度と電波強度テンプレートの関係を説明するための図である。
【図4】制御部が受信終了位置を検出する手順を示すフローチャート図である。
【図5】車線毎の電波強度と電波強度テンプレートの比較を示す図である。
【図6】車線が複数存在する通信エリアにおいて制御部が受信終了位置を検出する手順を示すフローチャート図である。
【図7】考え得る分布の電波強度テンプレートを識別番号に対応づけて記憶した電波強度テーブルの一例である。
【図8】電波強度テンプレートの識別番号を受信して、制御部が受信終了位置を検出する手順を示すフローチャート図である。
【図9】制御部が電波強度テンプレート及び車線情報に基づき車両の車線を推定する手順を示すフローチャート図である。
【図10】インフラ協調システムの応用例を示す図である。
【図11】道路における車両の位置を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
1 車両
2 基地局
3 電波強度
10 位置検出装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波の強度に基づき移動体の位置を検出する位置検出装置であって、
前記電波の強度を検出する電波強度検出手段と、
前記電波強度検出手段により検出された前記電波が途絶した地点で前記移動体の位置を検出する位置検出手段と、
を有することを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記電波の強度分布を示す電波強度テンプレートを記憶したテンプレート記憶手段、を有し、
前記位置検出手段は、前記電波強度検出手段が検出した前記電波の強度と前記電波強度テンプレートとを比較して、前記電波強度テンプレートと相違する前記電波の途絶を検出した場合、前記位置を検出しない、
ことを特徴とする請求項1記載の位置検出装置。
【請求項3】
電波の強度に基づき移動体の位置を検出する位置検出方法であって、
位置検出装置が、前記電波の強度を検出する電波強度検出ステップと、
前記位置検出装置が、前記電波強度検出ステップにより検出された前記電波が途絶した地点で前記移動体の位置を検出する位置検出ステップと、
を有することを特徴とする位置検出方法。
【請求項1】
電波の強度に基づき移動体の位置を検出する位置検出装置であって、
前記電波の強度を検出する電波強度検出手段と、
前記電波強度検出手段により検出された前記電波が途絶した地点で前記移動体の位置を検出する位置検出手段と、
を有することを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記電波の強度分布を示す電波強度テンプレートを記憶したテンプレート記憶手段、を有し、
前記位置検出手段は、前記電波強度検出手段が検出した前記電波の強度と前記電波強度テンプレートとを比較して、前記電波強度テンプレートと相違する前記電波の途絶を検出した場合、前記位置を検出しない、
ことを特徴とする請求項1記載の位置検出装置。
【請求項3】
電波の強度に基づき移動体の位置を検出する位置検出方法であって、
位置検出装置が、前記電波の強度を検出する電波強度検出ステップと、
前記位置検出装置が、前記電波強度検出ステップにより検出された前記電波が途絶した地点で前記移動体の位置を検出する位置検出ステップと、
を有することを特徴とする位置検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−39688(P2008−39688A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217312(P2006−217312)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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