説明

位置検出装置および変換器

【課題】
本発明の課題は、直流2線式近接スイッチを交流電源にも適用可能として、無駄の無い低価格の位置検出装置を提供することにある。
【解決手段】
課題を解決するための第一の手段は、可動部による機械的接触なしに動作する位置検出装置であって、次の(1)及び(2)の構成を有するものである。
(1)誘導形近接スイッチ、静電容量形近接スイッチ、超音波形近接スイッチ、光電形近接スイッチおよび磁気形近接スイッチのうち、いずれかひとつの形式からなる直流2線式位置検出スイッチ。
(2)交流電源および負荷を接続する一対の交流側端子と、直流2線式位置検出スイッチを接続する一対の直流側端子と、交流側端子から入力された交流電流を整流して直流側端子へ出力する交流直流変換回路と、直流2線式位置検出スイッチの開閉に基づいて交流端子間を開閉する開閉手段と、を有する変換器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動部による機械的接触なしに動作する位置検出装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の第2図に示されている誘導形近接スイッチは、交流電源でも直流電源でも動作するものである(特許文献1の明細書第4〜5ページ参照)。このような交直両用の近接スイッチは、交流電源および直流電源の両方が配備された工場等において生産設備にしばしば適用されている。というのも、使用中の近接スイッチに万が一故障が発生するとその生産設備の稼動が停止してしまうが、なるべく早期に稼動再開させるべく、どの設備にも即座に適用できる交換用の近接スイッチが必要とされるからである。もし、交流用設備には交流専用の近接スイッチを用い、直流用設備には直流用の近接スイッチを用いていると、故障時の交換作業の際にあわてて交流用と直流用とを間違えて取り付けてしまう可能性がある。それぞれの交換品の在庫管理にも手間がかかる。ただし、交直両用の近接スイッチは整流用の電気部品を内蔵しているので、直流専用の近接スイッチよりも高価である。
【特許文献1】実開昭59−5854号公報
【非特許文献1】社団法人日本電気制御機器工業会発行「制御機器の基礎知識 選び方・使い方 センサ編」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年では工場内で直流電源を使用する設備が増加し、交流電源を使用する設備が極めて少なくなってきている。このような状況において、少数の交流設備への対応を考慮して多数の直流設備にも交直両用の近接スイッチを搭載することは、無駄が多く割高であるという問題が生じている。そこで、本発明の課題は、直流2線式近接スイッチを交流電源にも適用可能として、無駄の無い低価格の位置検出装置を提供することにある。
【0004】
また、第一の課題が解決された際には、ひとつの工場の中で直流2線式近接スイッチが統一的に使用されることになる。しかし、直流2線式近接スイッチには微弱な漏れ電流が常に流れているという欠点があり、場合によってはこの漏れ電流によって負荷が起動してしまうという問題がある。そこで、本発明のさらなる課題は、直流2線式近接スイッチを直流3線式近接スイッチのように取り扱えるようにして、総合的に無駄の無い低価格の位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題を解決するための第一の手段は、可動部による機械的接触なしに動作する位置検出装置であって、次の(1)及び(2)の構成を有するものである。
(1)誘導形近接スイッチ、静電容量形近接スイッチ、超音波形近接スイッチ、光電形近接スイッチおよび磁気形近接スイッチのうち、いずれかひとつの形式からなる直流2線式位置検出スイッチ。
(2)交流電源および負荷を接続する一対の交流側端子と、直流2線式位置検出スイッチを接続する一対の直流側端子と、交流側端子から入力された交流電流を整流して直流側端子へ出力する交流直流変換回路と、直流2線式位置検出スイッチの開閉に基づいて交流端子間を開閉する開閉手段と、を有する変換器。
【0006】
課題を解決するための第二の手段は、上記第一の手段における変換器自体である。
【0007】
課題を解決するための第三の手段は、可動部による機械的接触なしに動作する位置検出装置であって、次の(1)及び(2)の構成を有するものである。
(1)誘導形近接スイッチ、静電容量形近接スイッチ、超音波形近接スイッチ、光電形近接スイッチおよび磁気形近接スイッチのうち、いずれかひとつの形式からなる直流2線式位置検出スイッチ。
(2)直流電源を接続する一対の電源側端子と、この電源側端子のいずれか一方との間に負荷を接続する負荷接続端子と、直流2線式位置検出スイッチを接続する一対の検出側端子と、電源側端子から入力された直流電流を検出側端子へ出力する出力回路と、直流2線式位置検出スイッチの開閉に基づいて負荷接続端子と交流端子との間を開閉する開閉手段と、を有する変換器。
【0008】
課題を解決するための第四の手段は、上記第三の手段における変換器自体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安価な直流用の位置検出スイッチを交流電源にも適用可能とすることができる。したがって、万が一の故障に備えて直流用の位置検出スイッチのみを準備しておけばよく、交換作業において取り付け間違いも生じず、在庫管理の手間もかからない。
【0010】
もうひとつの本発明によれば、直流2線式近接スイッチを直流3線式近接スイッチのように取り扱えるようにして、漏れ電流による負荷の起動を防止できる。そのため、第一の発明と併せれば、ひとつの工場内で使用される位置検出スイッチを安価な直流用のものに統一できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の第一の実施例について図1及び3を参照しつつ説明する。図1の回路図は、本発明の位置検出装置1と、これに接続された負荷2および電源3とを示すものである。位置検出装置1は直流2線式位置検出スイッチ4および変換器5からなる。直流2線式位置検出スイッチ4としては、JIS規格(JIS C 8201−5−2)に定義された誘導形近接スイッチ、静電容量形近接スイッチ、超音波形近接スイッチおよび光電形近接スイッチが適用される。これに加えて磁気形近接スイッチも適用される。ここでいう近接スイッチとは、可動部による機械的接触なしに動作する位置検出スイッチのことである。誘導形近接スイッチとは、半導体開閉素子を備え検出領域内に磁界を発生させる近接スイッチのことである。静電容量形近接スイッチとは、半導体開閉素子を備え検出領域内に電界を発生させる近接スイッチのことである。超音波形近接スイッチとは、半導体開閉素子を備え検出領域内で超音波を送・受波する近接スイッチのことである。光電形近接スイッチとは、半導体開閉素子を備え可視、不可視光線の反射または遮光のいずれかにより物体を検出する近接スイッチのことである。磁気形近接スイッチとは、半導体開閉素子を備え、磁気検出素子と磁石(静磁界)の組み合わせにより検出体が接近したときの磁束変化を利用して検出する近接スイッチのことである。詳細については上述の非特許文献1を参照されたい。要するに、直流2線式位置検出スイッチ4の近接スイッチ主回路401が検出体(可動部)を検出するための動作原理として、ここに述べた方式のいずれを採用することも可能である。
【0012】
直流2線式位置検出スイッチ4の主な構成および機能は次の通りである。接続端子404,405は着脱可能なコネクタを形成している。近接スイッチ主回路401と接続端子404,405との間は2本の導線402,403によってそれぞれ接続されている。この2本の導線402,403の間には、開閉用半導体(トランジスタ)406のコレクタ端子およびエミッタ端子が接続され、さらにトランジスタ406保護用のツェナーダイオード407が接続されている。導線402,403には後述する変換器5からの直流電力が接続端子404,405を介して供給される。この電力供給を受けて、近接スイッチ主回路401は図示しない検出体の近接を検出し、それに基づいて開閉用半導体(トランジスタ)406のベース端子へ開閉指示信号を与えるように動作する。トランジスタ406は、開閉指示信号に応じて導線402と403との間を導通(閉状態)または非導通(開状態)にする。この開閉状態に応じて動作表示灯408が点滅する。なお、近接スイッチ主回路401が作動するのに必要な消費電流は極めて小さいものである。
【0013】
変換器5の主な構成および機能は次の通りである。接続端子501,502は、その間に外部の交流電源および負荷が直列に接続されるものである。負荷の接続位置は、接続端子501と交流電源との間、接続端子502と交流電源との間、のいずれでも構わない。接続端子501,502は整流用のダイオードブリッジ503の入力側にそれぞれ導線で接続されている。ダイオードブリッジ503の出力側はAC/DC変換回路504の入力側にそれぞれ導線505,506で接続されている。すなわち、導線505,506には、ダイオードブリッジ503によって交流が全波整流された結果としての脈流が流れる。この導線505と506との間には開閉用半導体(サイリスタ)507のアノード端子およびカソード端子が接続されている。AC/DC変換回路504の出力側は接続端子508,509にそれぞれ導線で接続されており、直流2線式位置検出スイッチ4へと安定した直流電力が供給される。接続端子508,509は着脱可能なコネクタを形成しており、直流2線式位置検出スイッチ4の接続端子404,405とそれぞれ接続している。AC/DC変換回路504は、接続端子508,509の間の開閉状態に応じてサイリスタ507のゲート端子にトリガ信号を与える。サイリスタ507はトリガ信号に応じて導線402と403との間を導通(閉状態)させる。すなわち、サイリスタ507はダイオードブリッジ503を介して端子501と502との間を実質的に導通させる。
【0014】
位置検出装置1(直流2線式位置検出スイッチ4、変換器5)と、これに接続された負荷2および電源3とを含む全体の動作を説明する。近接スイッチ主回路401が検出体を検出していない場合、近接スイッチ主回路401はトランジスタ406へ閉信号を与えないので、トランジスタ406は非導通状態であり、接続端子404,405から見た直流2線式位置検出スイッチ4の内部抵抗は極めて大きくなっている。導線402,403には近接スイッチ主回路401の微弱な消費電流(漏れ電流)のみが流れている。この状態ではAC/DC変換回路504はトリガ信号を出力しないので、サイリスタ507が導通せず、接続端子501,502から見た変換器5の内部インピーダンスは極めて大きくなっている。負荷2、ダイオードブリッジ503、導線505,506、AC/DC変換回路504には、上述の近接スイッチ主回路401の消費電流のみが流れている。この程度の微弱な電流では負荷2は起動しない。
【0015】
近接スイッチ主回路401が検出体を検出した場合、近接スイッチ主回路401はトランジスタ406へ閉信号を与えるので、トランジスタ406は導通状態になる。すると、AC/DC変換回路504はトランジスタ406の導通状態を検出してサイリスタ507へトリガ信号を与える。サイリスタ507が導通し、接続端子501,502から見た変換器5の内部インピーダンスは極めて小さくなり、負荷2、ダイオードブリッジ503、導線505,506に大電流が流れて負荷2が起動する。再び、近接スイッチ主回路401が検出体を検出しなくなった場合、AC/DC変換回路504はサイリスタ507へのトリガ信号を与えなくなる。サイリスタ507にはダイオードブリッジ503からの脈流が流れており、トリガ信号が消滅した後に最初に電流がゼロになった時点で、サイリスタ507は非導通状態に戻る。
【0016】
次に、本発明の第二の実施例について図2及び3を参照しつつ説明する。直流2線式位置検出スイッチ4は上述の実施例1と同一物なので説明を省略する。変換器6の主な構成および機能は次の通りである。接続端子601,602は、その間に外部の直流電源7および負荷8が直列に接続されるものである。負荷8の接続位置は、接続端子601と直流電源との間、接続端子602と直流電源との間、のいずれでも構わない。接続端子610は制御回路604に電力を供給するために専用に設けられた端子である。直流電源7の一方の極に、負荷8と並列に接続される。接続端子601,602,610は着脱可能なコネクタを形成している。接続端子602,610はそれぞれ制御回路604の電源入力端子に接続されている。開閉用半導体(トランジスタ)607のコレクタ端子は接続端子601に、エミッタ端子は接続端子602にそれぞれ接続しており、一般にオープンコレクタと呼ばれる接続形式を採っている。制御回路604の出力側は接続端子508,509にそれぞれ導線で接続されており、直流2線式位置検出スイッチ4へと安定した直流電力が供給される。接続端子608,609は着脱可能なコネクタを形成しており、直流2線式位置検出スイッチ4の接続端子404,405とそれぞれ接続している。制御回路604は、接続端子608,609の間の開閉状態に応じてトランジスタ607のベース端子に開閉信号を与える。トランジスタ607は開閉信号に応じて接続端子601と602との間を導通(閉状態)させる。
【0017】
位置検出装置1’(直流2線式位置検出スイッチ4、変換器6)と、これに接続された負荷2および電源3とを含む全体の動作を説明する。近接スイッチ主回路401が検出体を検出していない場合、近接スイッチ主回路401はトランジスタ406へ閉信号を与えないので、トランジスタ406は非導通状態であり、接続端子404,405から見た直流2線式位置検出スイッチ4の内部抵抗は極めて大きくなっている。導線402,403には近接スイッチ主回路401の微弱な消費電流(漏れ電流)のみが流れている。この状態では制御回路604は閉信号を出力しないので、トランジスタ607がオンせず、接続端子601,602から見た変換器6の内部インピーダンスは極めて大きくなっている。そのため、負荷8には電流が全く流れない。
【0018】
近接スイッチ主回路401が検出体を検出した場合、近接スイッチ主回路401はトランジスタ406へ閉信号を与えるので、トランジスタ406は導通状態になる。すると、制御回路604はトランジスタ406の導通状態を検出してトランジスタ607へ閉信号を与える。トランジスタ607が導通(オン)し、接続端子601,602から見た変換器6の内部抵抗は極めて小さくなり、負荷8に電流が流れて負荷8が起動する。再び、近接スイッチ主回路401が検出体を検出しなくなった場合、制御回路604はトランジスタ607へ閉信号を与えなくなり、トランジスタ607は非導通状態(オフ)に戻る。
【0019】
本発明の第二の実施例によれば、近接スイッチ4が検出体を検出していない場合には、負荷8に電流が全く流れない。すなわち、上述の第一の実施例で説明した漏れ電流の発生がない。したがって、負荷7が微小電流で起動するもの(例えばリレー)であっても本発明を適用可能である。
【0020】
なお、上述の第一および二の実施例の外観を図3に示す。中央部分には変換器5(6)の主要な回路を内蔵した樹脂製ケースが形成されている。両端部分にはそれぞれ着脱可能なコネクタが形成されており、一方には接続端子501,502(601,602,610)が、他方には接続端子508,509(608,609)が、それぞれ外部と接続可能に設けられている。それぞれのコネクタと樹脂製ケースとの間は柔軟な樹脂被覆導線で結合されており、あたかも1本の接続ケーブルのように使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一の実施例の回路図である。
【図2】本発明の第二の実施例の回路図である。
【図3】本発明の第一及び二の実施例の外観図である。
【符号の説明】
【0022】
1 位置検出装置
1’位置検出装置
2 負荷
3 交流電源
4 直流2線式位置検出スイッチ
401 近接スイッチ主回路
402 導線
403 導線
404 接続端子
405 接続端子
406 開閉用半導体(トランジスタ)
407 ツェナーダイオード
408 動作表示灯
5 変換器
501 接続端子
502 接続端子
503 ダイオードブリッジ
504 AC/DC変換回路
505 導線
506 導線
507 開閉用半導体
508 接続端子
509 接続端子
6 変換器
601 接続端子
602 接続端子
604 AC/DC変換回路
607 開閉用半導体
608 接続端子
609 接続端子
610 接続端子
7 直流電源
8 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部による機械的接触なしに動作する位置検出装置であって、次の(1)及び(2)の構成を有するもの。
(1)誘導形近接スイッチ、静電容量形近接スイッチ、超音波形近接スイッチ、光電形近接スイッチおよび磁気形近接スイッチのうち、いずれかひとつの形式からなる直流2線式位置検出スイッチ。
(2)交流電源および負荷を接続する一対の交流側端子と、直流2線式位置検出スイッチを接続する一対の直流側端子と、交流側端子から入力された交流電流を整流して直流側端子へ出力する交流直流変換回路と、直流2線式位置検出スイッチの開閉に基づいて交流端子間を開閉する開閉手段と、を有する変換器。
【請求項2】
請求項1の位置検出装置における変換器。
【請求項3】
可動部による機械的接触なしに動作する位置検出装置であって、次の(1)及び(2)の構成を有するもの。
(1)誘導形近接スイッチ、静電容量形近接スイッチ、超音波形近接スイッチ、光電形近接スイッチおよび磁気形近接スイッチのうち、いずれかひとつの形式からなる直流2線式位置検出スイッチ。
(2)直流電源を接続する一対の電源側端子と、この電源側端子のいずれか一方との間に負荷を接続する負荷接続端子と、直流2線式位置検出スイッチを接続する一対の検出側端子と、電源側端子から入力された直流電流を検出側端子へ出力する出力回路と、直流2線式位置検出スイッチの開閉に基づいて負荷接続端子と交流端子との間を開閉する開閉手段と、を有する変換器。
【請求項4】
請求項2の位置検出装置における変換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−135714(P2006−135714A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323234(P2004−323234)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】