説明

位置検出装置

【課題】センサ自体の故障か、又は断線故障かを容易に判定することが可能な位置検出装置を提供すること。
【解決手段】シフトレバー8の下端部に連結される多極マグネット板16と、前記多極マグネット板16の下方に該多極マグネット板16と対向するように配置された矩形状の非磁性体からなる基板18と、前記基板18の上面に配置された第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4と、前記基板18に設けられ前記第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4中の少なくともいずれか一つのセンサ出力信号を反転させる信号反転回路20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動変速機のシフトレバーを移動操作したときのシフト位置等を検出することが可能な位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される自動変速機のシフト装置において、近年、装置の小型化や操作力の低減化を図るために、いわゆるシフト・バイ・ワイヤ方式のシフト装置が提案されている。このシフト・バイ・ワイヤ方式のシフト装置は、運転者がシフトレバーを操作したときのシフト位置をセンサによって検出し、その検出信号に基づいて駆動されるアクチュエータで自動変速機(オートマチックトランスミッション:AT)のレンジを切り換えるという、電気的制御によってATのレンジ(レンジポジション)を切り換える構成が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このようなシフト・バイ・ワイヤ方式のシフト装置に関し、特許文献2には、シフトレバーの下端に設けられたマグネット板に対向する位置に、検出した磁束密度の強弱に対応してオン/オフ信号を出力するON/OFFセンサ(S1、S3)と、検出した磁束密度の大きさに対応した出力値を出力するリニアセンサ(R2)とを備えた自動変速機のシフト装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−341542号公報
【特許文献2】特開2006−347314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シフト位置中において、シフトレバーを操作したときのシフト位置を検出する複数のセンサが全て同一出力信号を出力するシフト位置が存在する場合、前記複数のセンサからの検出信号に基づいてアクチュエータを駆動させる制御装置(ECU)は、例えば、カプラーが外れた断線故障であるか否かを判定することが困難である。
【0005】
例えば、特許文献2の図5を参照すると、右上の「R位置」(リバースレンジ)では、全ての磁気センサ(S1〜S4、R1、R2)がマグネット板のS極領域に存在するため、各磁気センサの出力信号は、全てオフ信号となる。ここで、断線故障に起因して、全ての磁気センサ(S1〜S4、R1、R2)がオフ信号を出力する場合があり、各磁気センサからの検出信号に基づいてシフト位置を判断する制御装置では、この出力信号が「R位置」と同様の出力信号であると判定し、常に、「R位置」にあると看做されることにより、シフト位置検出手段が故障していることを判定することが困難となる。
【0006】
この場合、各磁気センサの配置を変更することで、全ての磁気センサがオフ信号を出力しないようにすることが考えられるが、基板上における各磁気センサのレイアウトの問題や、磁気センサの個数が現状よりも増加して部品点数が増大する等、全ての磁気センサがオフ信号を出力しないようにすることは容易でない。
【0007】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、センサ自体の故障か、又は断線故障かを容易に判定することが可能な位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、操作移動される操作部材と、前記操作部材の移動に対応して移動自在に設けられる被検出部と、前記被検出部の移動位置を検出する複数の検出部とを備え、前記複数の検出部の全てが前記移動位置の少なくとも一つで同様の状態を検出する操作部材の位置検出装置において、前記複数の検出部は、前記検出部が検出した位置情報を反転させる反転手段を有する少なくとも一つの検出部と、前記検出部が検出した位置情報をそのまま出力する他の検出部とを共に備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、複数の検出部の全てが操作部材の移動位置の少なくとも一つで同様の状態を検出するものにおいて、複数の検出部の中に、反転手段によって位置情報(出力信号)が反転される少なくとも1個の検出部が含まれるため、例えば、断線故障等によってある移動位置のときに複数の検出部が全て同一の位置情報(出力信号)を出力する場合と比較して、断線故障の場合と異なる位置情報パターン(出力信号パターン)を出力して峻別することができる。この結果、センサ自体の故障か、又は断線故障かを容易に判定することができる。
【0010】
また、本発明によれば、検出部が、被検出部の移動位置に対応してオン信号又はオフ信号を出力する磁気センサによって構成され、各磁気センサのオン信号の数とオフ信号の数とが操作部材の各移動位置の全てで複数となり、且つ各移動位置同士の各磁気センサの出力状態を比較したときに各磁気センサの出力が複数異なるように反転手段を有する磁気センサと前記反転手段を有さない磁気センサとがそれぞれ配置されるとよい。
【0011】
このように配置されることにより、本発明では、操作部材の移動位置のすべての位置において、位置情報パターンにおけるオン信号の数とオフ信号の数を複数とすることができ、複数の検出部のオン状態での故障又はオフ状態での故障の両方の場合に冗長性を持たせることができる。
【発明の効果】
【0012】
センサ自体の故障か、又は断線故障かを容易に判定することが可能な位置検出装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るシフト位置検出装置が組み込まれた自動変速機のシフト装置の概略構成図、図2は、前記自動変速機のシフト装置の斜視図、図3は、本実施形態に係るシフト位置検出装置の概略縦断面図である。
【0014】
図1に示されるように、自動変速機(以下、ATと略称する)1には、制御装置(ECU)2を介してシフト装置3が電気的に接続されている。このAT1は、トルクコンバータ4を介してエンジン5の図示しないエンジン出力軸に連結されている。AT1の油圧制御部6には、AT1のレンジ切り換えを行うための電動アクチュエータ7が設けられている。油圧制御部6及び電動アクチュエータ7は、制御装置2からの制御信号に基づいて駆動制御される。
【0015】
制御装置2は、図示しない車両の車室内に設けられたシフト・バイ・ワイヤ方式のシフト装置3と電気的に接続されている。シフト装置3には、シフトレバー(操作部材)8(図2参照)のシフト位置を検出し、前記シフト位置に対応した検出信号を出力するシフト位置検出装置(位置検出装置)10が設けられる。前記シフト位置検出装置10から出力された検出信号は、前記制御装置2に入力される。前記制御装置2は、前記検出信号に基づいて、油圧制御部6及び電動アクチュエータ7に制御信号を出力して両者を駆動制御する。
【0016】
AT1のシフトレンジは、本実施形態において、P(パーキング)レンジ、R(リバース)レンジ、N(ニュートラル)レンジ、D(ドライブ)レンジ、H(ホームポジション)レンジを有している。なお、AT1がNレンジに選択された場合には、AT1のエンジン5側と駆動輪側との回転駆動力の伝達が遮断された中立状態に設定され、また、Pレンジに選択された場合には、エンジン5側と駆動輪側との回転駆動力の伝達が遮断された中立状態に設定されると共に、図示しないパーキングロック機構が作動してAT1の出力軸1aを機械的にロックする。
【0017】
図2に示されるように、シフト装置3は、ケーシング3aと、前記ケーシング3aの上部側開口部を閉塞するアッパカバー3bとによって構成される。前記アッパカバー3bには、シフトパターンを形成するシフト溝9が設けられており、このシフト溝9には、シフトレバー8が挿通されて前記シフト溝9に沿って変位可能に設けられている。なお、図2に示されるシフト溝9は、後記する右ハンドル仕様を例示したものである(図4(a)参照)。また、シフト装置3は、例えば、運転席近傍の図示しないフロアの上面や、運転席と助手席との間の図示しないインストルメントパネル(センタパネル)であって運転席近傍の傾斜面に配置されている。
【0018】
シフト溝9は、車両の前後方向(ケーシング3aの長手方向)に沿って延在する直線状の第1長溝9aと、前記第1長溝9aの中央部から略直交する方向に分岐する第2長溝9bと、前記第2長溝9bの終端部に連続し前記第1長溝9aと所定間隔離間して略平行に延在する第3長溝9cとを有する。
【0019】
この場合、第1長溝9aの略中央部であって第2長溝9bに連結される部位がN(ニュートラル)位置、前記第1長溝9aの下方側の一端部がD(ドライブ)位置、前記第1長溝9aの上方側の他端部がR(リバース)位置、前記第2長溝9bに連続する側と反対側であって第3長溝9cの終端部がH(ホームポジション)位置である。前記N、D、R、Hの各位置に対応して、アッパカバー3bの上面には、「N」、「D」、「R」、「H」の記号が表示されている。なお、前記シフト溝9における前記「N」、「D」、「R」、「H」の各位置は、前記AT1のNレンジ、Dレンジ、Rレンジ、Hレンジにそれぞれ対応するように設けられている。
【0020】
また、前記Rレンジに近接するアッパカバー3bの上部側には、プッシュボタン方式のP(パーキング)操作ボタン11が設けられている。
【0021】
シフト装置3のケーシング3a内には、シフトレバー8をシフト溝9(第1〜第3長溝9a〜9c)に沿って摺動自在に支持する図示しない摺動支持機構と、前記シフトレバー8を第1長溝9a内のいずれかの位置に操作した後、操作者がシフトレバー8から手を放すことにより、中立位置であるH位置に自動的に復帰させる図示しない復帰機構とが設けられている。なお、このとき、シフトレバー8がH位置に復帰した状態であっても、AT1は、Nレンジ、Dレンジ又はRレンジに保持されている。
【0022】
P操作ボタン11を押すP(パーキング)時には、シフトレバー8がH位置に保持されている。
【0023】
また、図2及び図3に示されるように、シフト装置3のケーシング3a内には、シフトレバー8の移動操作によるシフト位置(シフトポジション)を検出するためのシフト位置検出装置10が設けられている。
【0024】
このシフト位置検出装置10は、図3に示されるように、マグネット支持部材12の凹部14内に固定支持された被検出部としての四角形状の多極マグネット板16と、前記多極マグネット板16の下方に該多極マグネット板16と対向するように配置された矩形状の非磁性体からなる単一の基板18と、前記基板18の上面に配置された複数の検出部としての複数の第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4(図5参照)と、前記基板18に設けられ、前記第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4中の少なくともいずれか一つのセンサ出力信号を反転させる信号反転回路20を備える。
【0025】
前記信号反転回路20は、検出部(第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4)が検出した位置情報(センサ出力信号)を反転させる反転手段として機能するものであり、本実施形態では、第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4からなる4個のセンサ中、後記するように、少なくとも任意の一つのセンサ出力信号が反転されるように設けられている(図7参照)。
【0026】
なお、信号反転回路20は、公知のノット回路(論理回路)によって構成され、出力信号が反転される任意のセンサと制御装置2との間で電気的に接続される。
【0027】
前記信号反転回路20の作用を例示すると、例えば、第1オン/オフセンサS1からオン信号(「1」)が出力されたとき、信号反転回路20によって前記オン信号(「1」)がオフ信号(「0」)に反転され、前記反転されたオフ信号(「0」)が第1オン/オフセンサS1の出力信号として制御装置2に入力される。一方、前記とは逆に、第1オン/オフセンサS1からオフ信号(「0」)が出力されたとき、信号反転回路20によって前記オフ信号(「0」)がオン信号(「1」)に反転され、前記反転されたオン信号(「1」)が第1オン/オフセンサS1の出力信号として制御装置2に入力される。
【0028】
図3に示されるように、マグネット支持部材12の上面に設けられた連結部12aには、シフトレバー8の下端部が連結されている。また、マグネット支持部材12には、ガイド部材21の下面に摺動自在に配置され、マグネット支持部材12の内側に固定された前記多極マグネット板16は、シフトレバー8のシフト操作に対応し基板18に対して平行状態(対向状態)で移動自在に設けられる。なお、前記連結部12aには、シフトレバー8の下端部に設けられた図示しない球状部が摺動自在に挿入される筒状孔部(図示せず)が形成され、前記球状部と筒状孔部との摺動構造によってシフトレバー8の揺動運動を平行移動に変換することができる。
【0029】
図4(a)は、右ハンドル仕様の車両に用いられるシフト溝パターンの平面図、図4(b)は、左ハンドル仕様の車両に用いられるシフト溝パターンの平面図である。
【0030】
本実施形態では、図4(a)に示される右ハンドル仕様のシフト溝パターンに沿って説明しているが、図4(b)に示される左ハンドル仕様のシフト溝パターンにも適用できることは勿論である。この場合、右ハンドル仕様と左ハンドル仕様とでは、第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4がそれぞれ所定位置に配置された同一の基板18が用いられ、右ハンドル仕様の場合と左ハンドル仕様の場合とで前記同一の基板18を周方向に沿って180度だけ回転させて使用することができる。
【0031】
なお、図4において、右ハンドル仕様の場合、ホームポジションを「HR」と表示し、左ハンドル仕様の場合、ホームポジションを「HL」と表示している。また、「H2」、「H3」は、それぞれ、H(HR、HL)位置とN位置との間の中間位置をそれぞれ示している。前記中間位置では、シフトレバー8が「H2」位置及び「H3」位置で保持されることがなく、図示しない復帰機構の弾性力によってホームポジションであるH位置に戻されるように構成されている。
【0032】
図5(a)は、本実施形態における第1〜第4オン/オフセンサの配置状態を示す平面図、図5(b)は、本実施形態における多極マグネット板のN極とS極の配置状態を示す透過平面図である。
【0033】
図5(a)に示されるように、本実施形態では、4個の第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4が略田型状に近接配置されている。すなわち、第1オン/オフセンサS1と第3オン/オフセンサS3、及び、第2オン/オフセンサS2と第4オン/オフセンサS4は、それぞれ、車幅方向(図5(a)中の左右横方向)に沿って近接配置されると共に、第1オン/オフセンサS1と第2オン/オフセンサS2、及び、第3オン/オフセンサS3と第4オン/オフセンサS4は、車両の前後方向(図5(a)中の上下縦方向)に沿って近接配置されている。
【0034】
また、図5(b)に示されるように、多極マグネット板16は、シフトレバー8側から見た透過図において、時計回り方向に四角形状の4つのマグネット16a〜16dのそれぞれの一角部が一点で略接するようにマグネット支持部材12に接着されている。板状で四角形状からなる4つのマグネット16a〜16dは、それぞれ、図5(b)中の左上のS極から時計回り方向に沿ってN極、S極、N極の順に配置されている。
【0035】
第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4は、それぞれ、検出した磁石(マグネット)のN極又はS極の磁束密度の強弱に対応してオン/オフ信号を出力するスイッチ動作タイプの公知のホールセンサ(磁気センサ)からなる。本実施形態では、多極マグネット板16のS極領域(網点領域参照)が対向位置にあって、S極の磁束密度が所定値よりも強い場合にオン信号(「1」)を出力する。一方、多極マグネット板16のS極領域が対向位置になくN極領域(白地領域参照)が対向位置にあるとき、S極の磁束密度が所定値よりも弱いか若しくは略零の場合にオフ信号(「0」)を出力する(図7参照)。この場合、第1〜第4オン/オフセンサ(検出部)S1〜S4の全てが、シフトレバー8の移動位置の少なくとも1つで同様の状態を検出するとは、前記シフトレバー8の各シフト位置(R、N、H、Dの各位置)のそれぞれにおいて、検出した磁石(マグネット)のN極又はS極の磁束密度の強弱に対応して、第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4が、オン/オフ信号をそれぞれ出力する中で、少なくとも1つの移動位置で第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4の全てがオン信号又はオフ信号をそれぞれ出力することをいう。
【0036】
なお、第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4は、それぞれ、検出した磁石のN極又はS極の磁束密度の強さに対応した出力電圧をリニアに出力する公知のホールセンサ(磁気センサ)を用いてもよい。この場合、多極マグネット板16のS極領域が対向位置にあるとき、出力電圧に対応してH(ハイ)信号(「1」)を出力し、一方、多極マグネット板16のS極領域が対向位置になくN極領域が対向位置にあるとき、出力電圧に対応してL(ロー)信号(「0」)を出力するようにしてもよい。
【0037】
本実施形態に係るシフト位置検出装置10は、以上のように構成され、シフトレバー8をシフト操作したときの各シフト位置(R、N、H、Dの各位置)における第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4と多極マグネット板16(マグネット16a〜16d)との相対的な位置関係は、図6に示されるようになる。なお、シフトレバー8の下端部に設けられた多極マグネット板16は、シフトレバー8の中間部に設けた揺動自在な図示しない摺動支持機構によってシフト操作方向と逆方向に移動する。
【0038】
すなわち、図6に示されるように、シフトレバー8のH(HR)位置を基準にすると、シフトレバー8のN位置では、第1オン/オフセンサS1が多極マグネット板16の左下のN極領域(白地領域)に位置し、第2オン/オフセンサS2が左上のS極領域(網点領域)に位置し、第3オン/オフセンサS3が右下のS極領域(網点領域)に位置し、第4オン/オフセンサS4が右上のN極領域(白地領域)に位置する。
【0039】
シフトレバー8のD位置では、第1及び第2オン/オフセンサS1、S2が、共に左下のN極領域(白地領域)に位置し、第3及び第4オン/オフセンサS3、S4が、共に右下のS極領域(網点領域)に位置する。シフトレバー8のR位置では、第1及び第2オン/オフセンサS1、S2が、共に左上のS極領域(網点領域)に位置し、第3及び第4オン/オフセンサS3、S4が、共に右上のN極領域(白地領域)に位置する。シフトレバー8のH(HR)位置では、第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4の全てが、右下のS極領域(網点領域)に位置する。なお、図6中では、第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4が配置された基板18を省略して、第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4と多極マグネット板16との相対的な位置関係を示している。
【0040】
これにより、シフトレバー8をシフト操作したときの各シフト位置(R、N、D、H)における第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4からの出力信号は、図7(b)に示されるようになる。なお、図7のセンサ出力において、前記したように、「1」はオン信号、「0」はオフ信号をそれぞれ示している。
【0041】
ここで、図7(a)は、信号反転回路20を設けることがなく、第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4の出力信号をそのままの状態で出力した信号パターンの参考例を便宜的に示したものである。
【0042】
参考までに図7(a)の信号パターンを概略説明すると、センサ出力信号を反転させないでそのまま出力した場合、例えば、シフトレバー8のシフト位置がD位置のとき、第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4は、出力信号(「0」、「0」、「1」、「1」)を制御装置2に出力し、また、シフト位置がN位置のとき、第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4は、出力信号(「0」、「1」、「1」、「0」)を制御装置2に出力する(図6中における網点領域がオン信号「1」、白地領域がオフ信号「0」となる)。制御装置2は、入力されるこれらの検出信号に基づいてシフト位置がD位置又はN位置であると認識することができる。
【0043】
図7(b)は、信号反転回路20によって、4個の第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4中の少なくとも一つのセンサの出力信号を反転させた場合の信号パターンを示したものである。図7(b)中において、「反転センサ」とは、第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4中のどのセンサの出力信号を反転させたかをそれぞれ示したものである。以下、図7(a)と対比しながら、図7(b)の信号パターンについて説明する。
【0044】
先ず、4個の第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4中、任意の1個のセンサ出力信号のみを反転させた場合について説明する。
【0045】
第1オン/オフセンサS1の出力信号のみを信号反転回路20によって反転させた場合、シフトレバー8のシフト位置がD位置のとき、第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4は、出力信号(「1」、「0」、「1」、「1」)を制御装置2に出力する。参考例である図7(a)の信号パターンと比較して諒解されるように、第1オン/オフセンサS1の出力信号のみがオフ信号(「0」)からオン信号(「1」)に反転されている(「0→1」、「0」、「1」、「1」)。
【0046】
また、第1オン/オフセンサS1の出力信号のみを信号反転回路20によって反転させた場合であって、シフトレバー8のシフト位置がN位置のとき、第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4は、出力信号(「1」、「1」、「1」、「0」)を制御装置2に出力する。参考例である図7(a)の信号パターンと比較して諒解されるように、第1オン/オフセンサS1の出力信号のみがオフ信号(「0」)からオン信号(「1」)に反転されている(「0→1」、「1」、「1」、「0」)。
【0047】
同様にして、第2オン/オフセンサS2、第3オン/オフセンサS3、又は、第4オン/オフセンサS4の各出力信号のみを信号反転回路20によって反転させ、シフトレバー8の各シフト位置に対応した出力信号が出力される(「S2反転」の欄、「S3反転」の欄、「S4反転」の欄参照)。
【0048】
続いて、4個の第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4中、任意の2個のセンサ出力信号を反転させた場合について説明する。この場合、「S1−S2反転」、「S1−S3反転」、「S1−S4反転」、「S2−S3反転」、「S2−S4反転」、「S3−S4反転」の6通りの組み合わせが考えられる。なお、4個中の任意の3個のセンサ出力信号を反転させる場合は、前述した任意の1個のセンサ出力反転させる場合と同一の信号パターンとなる。
【0049】
第1オン/オフセンサS1及び第3オン/オフセンサS3の出力信号をそれぞれ信号反転回路20によって反転させた場合(太枠、且つ網点領域の欄参照)、シフトレバー8のシフト位置がD位置のとき、第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4は、出力信号(「1」、「0」、「0」、「1」)を制御装置2に出力する。参考例である図7(a)の信号パターンと比較して諒解されるように、第1オン/オフセンサS1の出力信号がオフ信号(「0」)からオン信号(「1」)に反転されると共に、第3オン/オフセンサS3の出力信号がオン信号(「1」)からオフ信号(「0」)に反転されている(「0→1」、「0」、「1→0」、「1」)。
【0050】
また、第2オン/オフセンサS2及び第4オン/オフセンサS4の出力信号をそれぞれ信号反転回路20によって反転させた場合(太枠、且つ網点領域の欄参照)、シフトレバー8のシフト位置がD位置のとき、第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4は、出力信号(「0」、「1」、「1」、「0」)を制御装置2に出力する。参考例である図7(a)の信号パターンと比較して諒解されるように、第2オン/オフセンサS2の出力信号がオフ信号(「0」)からオン信号(「1」)に反転されると共に、第4オン/オフセンサS4の出力信号がオン信号(「1」)からオフ信号(「0」)に反転されている(「0」、「0→1」、「1」、「1→0」)。
【0051】
本実施形態では、第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4の全てのセンサがシフトレバー8の各シフト位置の少なくとも一つで同様の状態を検出するものにおいて、複数の第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4中に、信号反転回路20によって出力信号が反転される少なくとも1個のセンサが含まれるため、例えば、断線故障等によってあるシフト位置のときに第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4が全て同一の出力信号(「0」、「0」、「0」、「0」)を出力する場合と比較して、図7(b)に示されるような断線故障の場合と異なる信号パターンを出力して峻別することができる。この結果、制御装置2は、センサ自体の故障か、又は断線故障かを容易に判定することができる。
【0052】
換言すると、断線故障した場合、第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4からの出力信号が(「0」、「0」、「0」、「0」)となるが、本実施形態では、信号反転回路20を設けて少なくとも一つのセンサの出力信号が反転されることにより、図7(b)の信号パターンから諒解されるように、第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4からの出力信号が(「0」、「0」、「0」、「0」)となる信号パターンが皆無となる。なお、シフトレバー8がシフト位置ではなく、シフト途中の中間位置にあるH2位置及びH3位置のときは、除かれる。この結果、制御装置2は、断線故障を確実且つ容易に判別することができる。
【0053】
なお、図7(b)の信号パターンに示されるように、「S1−S2反転」のシフト位置がR位置のとき、「S2−S3反転」のシフト位置がN位置のとき、及び、「S3−S4反転」のシフト位置がD位置のとき、第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4からの出力信号がそれぞれ同一で、(「0」、「0」、「0」、「0」)となり、この場合も除かれる。
【0054】
図8は、図7(b)に示されるような信号パターンにおいて、任意の1個又は2個のセンサの出力信号を反転させた場合において、シフトレバー8の各シフト位置における信号数(オン信号の数)を表示したものである。
【0055】
例えば、第1オン/オフセンサS1の出力信号を反転させたD位置では、オン信号(「1」)の数が3つ(「1」、「0」、「1」、「1」)であり、N位置ではその数が3つ(「1」、「1」、「1」、「0」)、R位置ではその数が1つ(「0」、「1」、「0」、「0」)、H(HR)位置ではその数が3つ(「0」、「1」、「1」、「1」)である。
【0056】
また、4個の第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4中、第1オン/オフセンサS1の出力信号及び第3オン/オフセンサS3の出力信号をそれぞれ反転させた場合(「S1−S3反転」の欄参照)、H2、H3の中間位置を除いたシフト位置において、各シフト位置の信号数(オン信号の数)がオール2となっている。
【0057】
さらに、4個の第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4中、第2オン/オフセンサS2の出力信号及び第4オン/オフセンサS4の出力信号をそれぞれ反転させた場合(「S2−S4反転」の欄参照)、H2、H3の中間位置を除いたシフト位置において、各シフト位置の信号数(オン信号の数)がオール2となっている。
【0058】
このように、本実施形態では、4個の第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4中、第1オン/オフセンサS1の出力信号及び第3オン/オフセンサS3の出力信号をそれぞれ反転させた場合(「S1−S3反転」の欄参照)や、第2オン/オフセンサS2の出力信号及び第4オン/オフセンサS4の出力信号をそれぞれ反転させた場合(「S2−S4反転」の欄参照)のように、シフトレバー8のシフト位置のすべての位置において、出力信号のオン信号(「1」)の数とオフ信号(「0」)の数を複数とすることができ、第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4のオン状態での故障又はオフ状態での故障の両方の場合に冗長性を持たせることができる。
【0059】
換言すると、信号反転回路20を用いて任意のセンサの出力信号を反転させた場合、その出力信号のオン信号数とオフ信号数とに偏りがあると(何れか一方が単数であると)、信号数が少ない側の故障判定に冗長性を持たせることができなくなるため、第1〜第4S1〜S4のオン信号数とオフ信号数とがシフトレバー8のシフト位置の全てにおいて複数となり、且つ各シフト位置同士における各オン/オフセンサの出力状態を比較したときに各オン/オフセンサの出力が複数異なるように設定されるとよい。
【0060】
さらに、本実施形態では、4個の第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4中の任意の1個のセンサが仮に故障した場合であっても、その信号パターンの組み合わせが他の信号パターンにないため、制御装置2は、複数のセンサ中、任意の1個のセンサ自体の故障を確実且つ容易に判定することができる。
【0061】
すなわち、図7(b)に示される信号パターンにおいて、例えば、「S1−S3反転」が選択されたとき、つまり、「S1−S3反転」という信号反転回路20の設定でシフト位置検出装置10が構成されたとき、仮に、第1オン/オフセンサS1が故障した場合、その出力信号は、(「0」、「0」、「0」、「1」)となるが、この「S1−S3反転」の各シフト位置における信号パターンにおいて(「0」、「0」、「0」、「1」)の信号パターンが他に存在しないため(「S1−S3反転」の横欄参照)、制御装置2は、第1オン/オフセンサS1の故障と判定することができる。この結果、本実施形態では、センサ自体が故障しているのか、又は断線故障しているのかのいずれかを判断し、制御装置2がセンサ自体の故障であると判定した後、さらに、センサ自体の故障であっても、複数のセンサ中、任意の1個のセンサの故障を判定(特定)することができる。しかも、任意の1個のセンサが故障していても、シフトレバー8の各シフト位置を検出することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、第1〜第4オン/オフセンサS1〜S4からなる4個のセンサを用いて説明しているが、これに限定されるものではなく、複数のセンサ(検出部)であって、信号反転回路20によって出力信号が反転される少なくとも一つのセンサ(検出部)と出力信号が反転されることがなくそのまま出力信号が出力される他のセンサ(他の検出部)とによって構成されていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態に係るシフト位置検出装置が組み込まれた自動変速機のシフト装置の概略構成図である。
【図2】前記自動変速機のシフト装置の斜視図である。
【図3】本実施形態に係るシフト位置検出装置の概略縦断面図である。
【図4】(a)は、右ハンドル仕様の車両に用いられるシフト溝パターンの平面図、(b)は、左ハンドル仕様の車両に用いられるシフト溝パターンの平面図である。
【図5】(a)は、本実施形態における第1〜第4オン/オフセンサの配置状態を示す平面図、(b)は、本実施形態における多極マグネット板のN極とS極の配置状態を示す透過平面図である。
【図6】シフトレバーの各シフト位置における第1〜第4オン/オフセンサと多極マグネット板との相対的な位置関係を示す透過平面図である。
【図7】(a)は、信号反転回路を設けることがなく、第1〜第4オン/オフセンサの出力信号をそのままの状態で出力した信号パターンの参考例を示す説明図、(b)は、信号反転回路によって、第1〜第4オン/オフセンサ中の少なくとも一つのセンサの出力信号を反転させた場合の信号パターンを示す説明図である。
【図8】図8は、図7(b)に示されるような信号パターンにおいて、任意の1個又は2個のセンサの出力信号を反転させた場合において、シフトレバーの各シフト位置における信号数(オン信号の数)を表示した説明図である。
【符号の説明】
【0064】
8 シフトレバー(操作部材)
10 シフト位置検出装置(位置検出装置)
16 多極マグネット板(被検出部)
20 信号反転回路(反転手段)
S1〜S4 第1〜第4オン/オフセンサ(検出部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作移動される操作部材と、前記操作部材の移動に対応して移動自在に設けられる被検出部と、前記被検出部の移動位置を検出する複数の検出部とを備え、前記複数の検出部の全てが前記移動位置の少なくとも一つで同様の状態を検出する操作部材の位置検出装置において、
前記複数の検出部は、前記検出部が検出した位置情報を反転させる反転手段を有する少なくとも一つの検出部と、前記検出部が検出した位置情報をそのまま出力する他の検出部とを共に備えることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の位置検出装置において、
前記検出部は、前記被検出部の移動位置に対応してオン信号又はオフ信号を出力する磁気センサからなり、各磁気センサのオン信号の数とオフ信号の数とが前記操作部材の各移動位置の全てで複数となり、且つ前記各移動位置同士の前記磁気センサの出力状態を比較したときに前記各磁気センサの出力が複数異なるように前記反転手段を有する磁気センサと前記反転手段を有さない磁気センサとがそれぞれ配置されることを特徴とする位置検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−107376(P2010−107376A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280089(P2008−280089)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】