説明

位置決め制御装置

【課題】 上位コントローラと、該上位コントローラからの起動信号に基づいて被搬送物を搬送するサーボモータと、該サーボモータを可変速駆動するサーボアンプとを用いて形成される位置決め制御装置の省配線を図る。
【解決手段】 フィルム1をローラ2で一定量だけ定寸送りしつつ、カッター4で裁断するときに、ローラ2を駆動するサーボモータ11を可変速制御するサーボアンプ40を位置指令生成部41、移動量メモリ部42、位置・速度・電流制御部43、位置ラッチ部44、状態監視フラグ部45、位置決め完了判定部46で形成することにより、フィルム1上に印刷されたマーク1a,1b,・・・をその都度通過したタイミングで発生する信号がオンされると状態監視フラグ部45の状態監視フラグをセットし、この状態監視フラグの状態を上位コントローラ31に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上位コントローラと、該上位コントローラからの起動信号に基づいて被搬送物を搬送するサーボモータと、該サーボモータを可変速駆動するサーボアンプとを用いて形成される位置決め制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、この種の位置決め装置の従来例を示す模式的概念構成図である。
【0003】
この図において、1は被搬送物としてのフィルム、2はフィルム1を搬送するためのローラ、4はフィルム1をガイドローラ3で支持しつつ裁断するためのカッター、5はフィルム1上に印刷されたマーク1a,1b,・・・を検知するために、例えば非接触タイプの光電スイッチなどからなるマークセンサである。
【0004】
また、図4において、11はローラ2を駆動するためのサーボモータ、12はフィルム1をローラ2とサーボモータ11とを介しての送り制御動作を行うサーボアンプ、21はカッター4を往復運動させるためのサーボモータ、22はフィルム1をカッター4とサーボモータ21とを介して裁断するための制御動作を行うサーボアンプである。さらに、30はサーボアンプ12,22に対するシーケンス動作を司るためにプログラマブルコントローラなどからなる上位コントローラである。なお、サーボモータ11およびサーボモータ21はそれぞれ位置を検出するエンコーダを有している。
【0005】
一般的に、フィルム1をローラ2で一定量だけ定寸送りしつつ、カッター4で裁断するときには、フィルム1の伸縮性を考慮して、フィルム1上に印刷されたマーク1a,1b,・・・それぞれのマークセンサ5の通過時点を基準にした補正動作をサーボアンプ12が行って裁断することにより、裁断寸法に累積誤差が生ずるのを解消させている。
【0006】
図4において、マークセンサ5はマーク1a,1b,・・・がセンサー位置を通過したタイミングでオン信号を出力し、このオン信号は配線51を介してサーボアンプ22に送信されるとともに、配線53を介して上位コントローラ30に送信される。サーボアンプ12はオン信号が入力されると、このオン信号を基準にしてサーボアンプ12の内部メモリに予め設定してある移動量分サーボモータ11を回転させて位置決めを行う。位置決めが完了するとサーボアンプ12は配線52を経由して位置決め完了信号を上位コントローラ30へ出力する。上位コントローラ30では位置決めが完了したことを確認すると、サーボアンプ22へ配線54を介して起動信号を出力し、サーボアンプ22ではこの起動信号に従ってサーボモータ22を位置決め動作することにより、カッター4を往復運動させてフィルム1をカットする。
【0007】
これら一連のタクト時間を短縮する手法として、上位コントローラ30は、マークセンサ5からのマーク1a,1b,・・・がセンサー位置を通過したタイミングのオン信号を配線53を介して受け取り、サーボアンプ12からの位置決め完了信号を受け取る手前のタイミングからサーボアンプ22へ起動信号を出力し、サーボモータ21を起動させてサーボモータ11が位置決め停止するタイミングに合わせてフィルム1をカットすることが行われている。
【0008】
このように図4に示した従来の位置決め制御装置での上位コントローラ30においては、上述のマークセンサ5からのその都度の出力信号が発せられたタイミングと、この出力信号に対応したサーボアンプ12での前記補正動作結果によるその都度の位置決め完了信号とに基づいて、サーボアンプ22を起動させた後の動作を調整しつつ、カッター4でフィルム1を裁断することが行われていた。
【0009】
なお、この種の位置決め制御装置については、下記特許文献1に記載されているものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−302122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図4に示した従来の位置決め装置においては、マークセンサ5からのその都度の出力信号が配線51,53を経由してサーボアンプ12と上位コントローラ30とにそれぞれ直接入力される構成であり、特に、上位コントローラ30への配線とその入力端子とが必要であった。その結果、この種の位置決め装置における省配線とコストダウンとを阻害する要因となっていた。
【0012】
この発明の目的は、上位コントローラへの配線とその入力端子を削減しても一連のタクト時間を短縮することができる位置決め装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この第1の発明は、上位コントローラと、該上位コントローラからの起動信号に基づいて被搬送物を搬送するサーボモータと、該サーボモータを可変速駆動するサーボアンプとを用いて形成される位置決め制御装置において、
前記サーボアンプには、外部からの入力信号がオンされると状態監視フラグをセットし、所定の条件により前記状態監視フラグをリセットするとともに、この状態監視フラグの状態を前記上位コントローラに出力する状態監視フラグ部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、外部から入力される信号である前記被搬送物に備えたマークをその都度通過したタイミングで発生する信号そのものを、直接上位コントローラに入力することが不要になるとともに、外部からの入力信号を上位コントローラに入力しなくても一連のタクト時間を短縮することができるので、この種の位置決め装置において、性能を低下させることなく省配線によるコストダウンが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施例を示す位置決め制御装置の模式的概念構成図
【図2】図1の部分詳細回路構成図
【図3】図1の動作を説明する波形図。
【図4】従来例を示す位置決め制御装置の模式的概念構成図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、この発明の実施例を示す位置決め制御装置の模式的概念構成図であり、この図において、図4に示した従来例構成と同一機能を有するものには同一符号を付して、ここではその説明を省略する。
【0017】
すなわち図1に示したこの発明の位置決め制御装置では、図4に示したサーボアンプ12と上位コントローラ30とが、サーボアンプ40と上位コントローラ31とに置き換えられ、さらに、マークセンサ5から上位コントローラ31への配線を不要にしている。
【0018】
図2は、図1のサーボアンプ40の詳細回路構成図であり、位置指令生成部41、移動量メモリ部42、位置・速度・電流制御部43、位置ラッチ部44、状態監視フラグ部45、位置決め完了判定部46とから形成されている。
【0019】
図1に示した位置決め制御装置の動作を、図2の示したサーボアンプ40の詳細回路構成図と、図3に示すこの位置決め制御装置の動作説明波形図とを参照しつつ、以下に説明する。
【0020】
先ず、時刻t0 に上位コントローラ31から配線52を経由してサーボアンプ40の制御動作を開始するための「起動信号」が発せられると、これを受信したサーボアンプ40の位置指令生成部41では、位置指令生成部41に予め設定されているフィルム1の設定移動量に対応した位置指令を位置・速度・電流制御部43に送信する。
【0021】
この位置指令を受信したサーボアンプ40の位置・速度・電流制御部43では、内部で位置指令に対応したモータ速度指令を生成しつつ、このモータ速度指令に基づいた電圧・周波数の交流電圧をサーボモータ11に印加することにより、サーボモータ11は図3の「モータ速度」に示すように加速し、やがて、一定速度で回転する状態に入る。
【0022】
上述のサーボモータ11の回転に伴って、ローラ2で図示の方向に移動するフィルム1のマーク1bがマークサンサ5の設置位置を時刻t1 に通過すると、マークサンサ5がこれを検知して、「割込入力信号」として配線51を介してサーボアンプ40の位置ラッチ部44と状態監視フラグ部45とに送信する。
【0023】
この「割込入力信号」を受信した位置ラッチ部44では、サーボモータ11の出力軸に連結されたパルスゼネレータ11aが発するパルス列信号の時刻t0 から時刻t1 までの積算値をラッチ位置としてサーボアンプ40の位置指令生成部41に伝達する。また、前記「割込入力信号」を受信したサーボアンプ40の状態監視フラグ部45では、このことを「状態監視出力信号」として、配線52を介して上位コントローラ31に伝達する。
【0024】
状態監視フラグ部45は、装置外部(マークセンサ5)からの入力信号である「割込入力信号」がオンにて状態監視フラグがセットされ、上位コントローラ31は状態監視フラグ部45から出力される「状態監視出力信号」により「割込入力信号」がオンしたことを検知できる。ここで、状態監視フラグは所定のルールに従ってリセットすればよく、例えば、位置決め完了判定部46にて位置・速度・電流制御部43が出力する位置偏差が「≒0」になったこと(位置決め完了信号がオンになったこと)でリセットするルールや、上位コントローラ31からの「起動信号」がオンになったことでリセットするルール等がある。
【0025】
前記ラッチ位置を受信したサーボアンプ40の位置指令生成部41では、このラッチ位置の値が許容範囲内にあることを確認しつつ、サーボアンプ40の移動量メモリ部42に予め設定されているフィルム1の「割込移動量」(図3参照)を新たな位置指令として、位置・速度・電流制御部43に送信する。
【0026】
この「割込移動量」に基づく位置指令を受信したサーボアンプ40の位置・速度・電流制御部43では、内部で位置指令に対応したモータ速度指令を生成しつつ、このモータ速度指令に基づいた電圧・周波数の交流電圧をサーボモータ11に印加することにより、サーボモータ11は図3の「モータ速度」に示すように一定速度から、やがて減速する状態に入る。
【0027】
その後、時刻t2 に、フィルム1の移動量が上述の「割込移動量」に達すると、サーボアンプ40の位置・速度・電流制御部43からサーボアンプ40の位置決め完了判定部46に位置偏差としての「≒0」が伝達され、位置決め完了判定部46から「位置決め完了信号」を配線52を介して上位コントローラ32に送信すると共に、サーボアンプ40の状態監視フラグ部45にも伝達する。
【0028】
次に時刻t3 になると、上位コントローラ31では、時刻t2 に受信した「位置決め完了信号」に基づいて、先述の「起動信号」が落とされ、サーボモータ11を介したローラ2は完全な停止状態に入る。
【0029】
この時刻t3 以降に、上位コントローラ31とサーボアンプ22とサーボモータ21とカッター4とを介して、前記「状態監視出力信号」と「位置決め完了信号」とに基づいたフィルム1の切断動作が行われる。
【0030】
ここで、マーク1a,1b,・・・がセンサー位置を通過したタイミングで「割込入力信号」がマークセンサ5から配線51を介してサーボアンプ40に入力され、サーボアンプ40内の状態監視フラグ部45の状態監視フラグがセットされると、配線52を介して「状態監視出力信号」が上位コントローラ31に伝達されることにより、上位コントローラ31は「割込入力信号」がオンしたことが検知できる。「状態監視出力信号」を受け取った上位コントローラ31ではサーボアンプ40からの「位置決め完了信号」を受け取る手前のタイミングからサーボアンプ22へ起動信号を出力し、サーボモータ21を起動させてサーボモータ11が位置決め停止するタイミングに合わせてフィルム1をカットすることにより、一連のタクト時間を短縮することができる。
【0031】
上述の切断動作が終了した後の時刻t4 になると、上位コントローラ31から新たな「起動信号」が発せられ、次の位置決め動作に入ると共に、サーボアンプ40の状態監視フラグ部45および位置決め完了判定部46の出力はリセットされる。
【0032】
以上の制御動作により、フィルム1上に印刷されたマーク1a,1b,・・・をその都度通過したタイミングで発生する信号そのものを、直接上位コントローラに入力することが不要になるので、この種の位置決め装置における省配線とコストダウンとが可能になる。
【0033】
なお、上述の動作説明では、位置決め制御方法に基づく動作説明を行ったが、サーボモータ11を所定速度でジョグ送りする、いわゆるジョグ送り制御方法を用いる場合でも、この発明を適用することは容易である。
【符号の説明】
【0034】
1…フィルム、2…ローラ、3…ガイドローラ、4…カッター、5…マークセンサ、11,21…サーボモータ、12,22,40…サーボアンプ、30,31…上位コントローラ、41…位置指令生成部、42…移動量メモリ部、43…位置・速度・電流制御部、44…位置ラッチ部、45…状態監視フラグ部、46…位置決め完了判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位コントローラと、該上位コントローラからの起動信号に基づいて被搬送物を搬送するサーボモータと、該サーボモータを可変速駆動するサーボアンプとを用いて形成される位置決め制御装置において、
前記サーボアンプには、外部からの入力信号がオンされると状態監視フラグをセットし、所定の条件により前記状態監視フラグをリセットするとともに、この状態監視フラグの状態を前記上位コントローラに出力する状態監視フラグ部を備えたことを特徴とする位置決め制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置決め装置において、
前記状態監視フラグ部は、位置決め完了信号あるいは起動信号により前記状態監視フラグをリセットすることを特徴とする位置決め制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−22492(P2012−22492A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159496(P2010−159496)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】