説明

位置適否判定方法及び位置適否判定装置

【課題】位置の適否を簡易に判定するための新たな手法を提案すること。
【解決手段】測位システム1において、携帯型電話機2は、天気予報表示処理、店舗検索処理及び時刻修正処理を行い、天気予報提供サーバ4、店舗情報提供サーバ5及び標準時提供サーバ6から、それぞれ天気予報、店舗情報及び標準時を受信する。詳細には、携帯型電話機2は、基地局3から取得した初期位置の信頼度が所定の許容値以下であると判定した場合は、初期位置を判定対象位置としたドップラーチェック処理を行うことで、初期位置が携帯型電話機2の実在位置から所定の距離以内の位置か否かを判定する。また、許容値を超えていると判定した場合は、初期位置を用いて反復回数を1回に制限した測位演算処理を行い、得られた演算位置を判定対象位置としたドップラーチェック処理を行うことで、演算位置が携帯型電話機2の実在位置から所定の距離以内の位置か否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置適否判定方法及び位置適否判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測位用信号を利用した測位システムとしては、GPS(Global Positioning System)が広く知られており、携帯型電話機やカーナビゲーション装置等に内蔵された測位装置に利用されている。GPSでは、自機の位置を示す3次元の座標値と、時計誤差との4つのパラメータの値を、複数のGPS衛星の位置や各GPS衛星から自機までの擬似距離等の情報に基づいて求める測位演算を行うことで、自機の現在位置を測位する。
【0003】
GPSによる測位では、正確性の高い位置の算出を実現するために、最小二乗法等を用いて繰り返し収束演算を行う手法が広く用いられている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−71460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているような収束演算では、収束演算の反復回数が多いほど計算量が増加するという問題がある。正確性の高い測位を実現するためには、ある程度の反復回数を確保する必要があるが、測位結果を利用するアプリケーションの中には、それほど高い正確性が要求されないものもある。
【0005】
例えば、携帯型電話機等の電子機器において天気予報を表示するアプリケーションを例に挙げた場合、一般に天気予報は市町村等の地域単位でなされるものであるため、携帯型電話機の所在地が属する地域における天気予報が表示されればユーザにとっては十分である。ゆえに、測位結果が数十km以内といったある程度信頼できるものであれば、測位演算の反復回数を少なくするなどして、プロセッサの計算量をできる限り削減したいという要請がある。このためには、位置の適否を簡易に判定するための機構が必要となる。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みて為されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するための第1の発明は、測位衛星から衛星信号を受信して、前記衛星信号の受信位置における当該衛星信号のドップラー周波数を計測することと、判定対象位置と前記測位衛星の軌道情報とを用いて、前記判定対象位置で前記衛星信号を受信した場合のドップラー周波数を算出することと、前記計測されたドップラー周波数と前記算出されたドップラー周波数との差に基づいて、前記判定対象位置が前記受信位置から所定の距離以内の位置か否かを判定することと、を含む位置適否判定方法である。
【0008】
また、他の発明として、測位衛星から衛星信号を受信して、前記衛星信号の受信位置における当該衛星信号のドップラー周波数を計測する計測部と、判定対象位置と前記測位衛星の軌道情報とを用いて、前記判定対象位置で前記衛星信号を受信した場合のドップラー周波数を算出する算出部と、前記計測されたドップラー周波数と前記算出されたドップラー周波数との差に基づいて、前記判定対象位置が前記受信位置から所定の距離以内の位置か否かを判定する判定部と、を備えた位置適否判定装置を構成してもよい。
【0009】
この第1の発明等によれば、測位衛星から衛星信号を受信して、衛星信号の受信位置における当該衛星信号のドップラー周波数を計測する。そして、判定対象位置と測位衛星の軌道情報とを用いて、判定対象位置で衛星信号を受信した場合のドップラー周波数を算出し、計測したドップラー周波数と算出したドップラー周波数との差に基づいて、判定対象位置が受信位置から所定の距離以内の位置か否かを判定する。
【0010】
判定対象位置が衛星信号の受信位置と一致するか近接していれば、判定対象位置で衛星信号を受信した場合のドップラー周波数と、受信位置で計測したドップラー周波数とは近似した値となるはずである。そのため、この2つのドップラー周波数の差を用いることで、判定対象位置が受信位置から所定の距離以内の位置か否かを簡易に判定することができる。
【0011】
また、第2の発明として、第1の発明の位置適否判定方法であって、前記計測することは、複数の測位衛星から受信した衛星信号についてドップラー周波数を計測することであり、前記算出することは、前記複数の衛星信号について前記判定対象位置で受信した場合のドップラー周波数を算出することであり、前記判定することは、前記複数の衛星信号について、前記計測されたドップラー周波数と前記算出されたドップラー周波数との差に基づいて、前記判定対象位置が前記受信位置から所定の距離以内の位置か否かを判定することである位置適否判定方法を構成してもよい。
【0012】
この第2の発明によれば、複数の測位衛星から受信した衛星信号についてドップラー周波数を計測し、複数の衛星信号について判定対象位置で受信した場合のドップラー周波数を算出する。そして、複数の衛星信号について、計測されたドップラー周波数と算出されたドップラー周波数との差に基づいて、判定対象位置が受信位置から所定の距離以内の位置か否かを判定する。複数の衛星信号について算出したドップラー周波数の差を用いることで、判定対象位置の判定の確実性を高めることができる。
【0013】
また、第3の発明として、第2の発明の位置適否判定方法であって、前記判定することは、前記計測されたドップラー周波数と前記算出されたドップラー周波数との差の分布範囲が所定の閾値条件を満たすか否かによって、前記判定対象位置が前記受信位置から所定の距離以内の位置か否かを判定することである位置適否判定方法を構成してもよい。
【0014】
この第3の発明によれば、計測されたドップラー周波数と算出されたドップラー周波数との差の分布範囲が所定の閾値条件を満たすか否かによって、判定対象位置が受信位置から所定の距離以内の位置か否かを判定する。例えば、ドップラー周波数の差が“0”の近傍に分布している場合には、判定対象位置が受信位置から所定の距離以内の位置であると判断することができる。
【0015】
また、第4の発明として、第3の発明の位置適否判定方法であって、情報提供基準位置に応じた情報を提供する複数のアプリケーションのうちの何れかのアプリケーションを選択することと、前記選択されたアプリケーションに応じて前記所定の閾値条件を変更することと、前記判定対象位置が前記受信位置から所定の距離以内の位置と判定された場合に、前記判定対象位置を前記情報提供基準位置として前記選択されたアプリケーションを実行することと、を含む位置適否判定方法を構成してもよい。
【0016】
この第4の発明によれば、情報提供基準位置に応じた情報を提供する複数のアプリケーションの中からアプリケーションを選択し、選択したアプリケーションに応じて、ドップラー周波数の差の分布範囲の閾値条件を変更する。そして、判定対象位置が受信位置から所定の距離以内の位置と判定された場合に、判定対象位置を情報提供基準位置として、選択したアプリケーションを実行する。必要とされる位置の正確性は、アプリケーションの種類や目的によって異なる。そのため、ドップラー周波数の差の分布範囲の閾値条件をアプリケーションに応じて変更することにしたものである。
【0017】
また、第5の発明として、第3又は第4の発明の位置適否判定方法であって、前記分布範囲に基づいて前記判定対象位置が前記受信位置に近似する度合を判定することを含む位置適否判定方法を構成してもよい。
【0018】
この第5の発明によれば、ドップラー周波数の差の分布範囲に基づいて、判定対象位置が受信位置に近似する度合を判定する。
【0019】
また、第6の発明として、第1〜第5の何れかの発明の位置適否判定方法であって、前記衛星信号を用いて測位演算することを含み、前記算出することは、前記測位演算によって求められた測位位置を前記判定対象位置としてドップラー周波数を算出することである位置適否判定方法を構成してもよい。
【0020】
この第6の発明によれば、衛星信号を用いた測位演算によって求めた測位位置を判定対象位置としてドップラー周波数を算出する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に好適な実施形態の一例を説明する。但し、本発明を適用可能な実施形態がこれに限定されるわけではない。
【0022】
1.システム構成
図1は、本実施形態における測位システム1の概略構成を示す図である。測位システム1は、測位装置を備え、位置適否判定装置としても機能する電子機器の一種である携帯型電話機2と、携帯型電話機の基地局3と、天気予報提供サーバ4と、店舗情報提供サーバ5と、標準時提供サーバ6と、複数のGPS衛星SV(SV1,SV2,SV3,SV4,・・・)とを備えて構成される。天気予報提供サーバ4と、店舗情報提供サーバ5と、標準時提供サーバ6とは、例えばインターネット網などの無線の通信路で構成されるネットワークNを介して携帯型電話機2と通信接続される。
【0023】
携帯型電話機2は、ユーザが通話やメールの送受信等を行うための電子機器であり、基地局3と基地局通信を行うことで、通話やメールの送受信といった携帯電話としての本来の機能を発揮する他、GPS衛星SVから受信したGPS衛星信号に基づいて測位する測位機能を有している。
【0024】
携帯型電話機2は、前回測位した日時から長時間が経過している場合に、測位演算を行う際の初期位置を基地局3に要求する。そして、初期位置と、当該初期位置の信頼度(初期位置が携帯型電話機2の真位置から最大でどの程度離れている可能性があるかを示す指標値)とを基地局3から取得し、取得した初期位置を用いた所定の測位演算を行うことで、携帯型電話機2の位置を計測する。
【0025】
また、携帯型電話機2は、ユーザ操作に従って、各種アプリケーションプログラムを実行する。具体的には、選択されたアプリケーションプログラムを実行することで、天気予報提供サーバ4や店舗情報提供サーバ5、標準時提供サーバ6に通信接続し、これらのサーバから、天気予報や店舗情報、標準時を受信する。そして、天気予報及び店舗情報についてはディスプレイに表示する処理を行うとともに、受信した標準時で携帯型電話機2の時刻を修正する処理を行う。
【0026】
基地局3は、携帯型電話機のサービス事業者が設置する無線基地局であり、携帯型電話機2に対して基地局信号を送信し、携帯型電話機2との間で基地局通信を行うことで、携帯型電話機2が通話やメールの送受信等の機能を発揮することを可能にする。基地局3は、携帯型電話機2の要求を受けて、携帯型電話機2の初期位置と、当該初期位置の信頼度とを算出して、要求元の携帯型電話機2に提供する。尚、初期位置及びその信頼度の算出方法については公知の手法を適用することができるため、詳細な説明を省略する。
【0027】
天気予報提供サーバ4は、天気予報を携帯型電話機2に提供するサーバである。天気予報提供サーバ4は、例えば気象庁から定期的に各地域の天気予報を取得して、天気予報データベースに蓄積記憶している。そして、携帯型電話機2から、当該携帯型電話機2の位置情報である情報提供基準位置を含む天気予報要求信号を受信した場合に、当該情報提供基準位置が属する地域を判定する。そして、判定した地域の天気予報を天気予報データベースから抽出して、要求元の携帯型電話機2に送信する。
【0028】
店舗情報提供サーバ5は、店舗情報を携帯型電話機2に提供するサーバである。店舗情報提供サーバ5は、例えば飲食店に関する情報を蓄積記憶した店舗情報データベースを有している。そして、携帯型電話機2から、店舗の検索条件及び当該携帯型電話機2の位置情報である情報提供基準位置を含む店舗情報要求信号を受信した場合に、当該店舗情報要求信号に含まれる検索条件に合致する飲食店の店舗情報を店舗情報データベースから検索する。そして、検索した店舗情報の中から、受信した店舗情報要求信号に含まれる情報提供基準位置から距離が近い順に所定件数(例えば30件)の店舗情報を抽出して、要求元の携帯型電話機2に送信する。
【0029】
標準時提供サーバ6は、標準時を携帯型電話機2に提供するサーバである。標準時提供サーバ6は、各国の各地域における標準時を管理している。標準時とは、ある国や地域が共通で使う時刻であり、共通の標準時を使う地域はタイムゾーンとして知られている。そして、携帯型電話機2から、当該携帯型電話機2の位置情報である情報提供基準位置を含む標準時要求信号を受信した場合に、当該情報提供基準位置が属する国及び地域を判定する。そして、判定した国及び地域における標準時を、要求元の携帯型電話機2に送信する。
【0030】
2.機能構成
図2は、本実施形態における携帯型電話機2の機能構成を示すブロック図である。携帯型電話機2は、GPSアンテナ10と、GPS受信部20と、TCXO(Temperature Compensated Crystal Oscillator)40と、ホストCPU(Central Processing Unit)50と、操作部60と、表示部70と、時計部75と、携帯電話用アンテナ80と、携帯電話用無線通信回路部90と、ROM(Read Only Memory)100と、フラッシュROM110と、RAM(Random Access Memory)120とを備えて構成される。
【0031】
GPSアンテナ10は、GPS衛星SVから発信されているGPS衛星信号を含むRF(Radio Frequency)信号を受信するアンテナであり、受信した信号をGPS受信部20に出力する。尚、GPS衛星信号は、衛星毎に異なる拡散符号の一種であるPRN(Pseudo Random Noise)コードで直接スペクトラム拡散方式により変調された1.57542[GHz]の通信信号である。PRNコードは、コード長1023チップを1PNフレームとする繰返し周期1msの擬似ランダム雑音符号である。
【0032】
GPS受信部20は、GPSアンテナ10から出力された信号に基づいて携帯型電話機2の現在位置を測位する測位回路であり、いわゆるGPS受信機に相当する機能ブロックである。GPS受信部20は、RF(Radio Frequency)受信回路部21と、ベースバンド処理回路部30とを備えて構成される。尚、RF受信回路部21と、ベースバンド処理回路部30とは、それぞれ別のLSI(Large Scale Integration)として製造することも、1チップとして製造することも可能である。
【0033】
RF受信回路部21は、RF信号の処理回路ブロックであり、TCXO40により生成された発振信号を分周或いは逓倍することで、RF信号乗算用の発振信号を生成する。そして、生成した発振信号を、GPSアンテナ10から出力されたRF信号に乗算することで、RF信号を中間周波数の信号(以下、「IF(Intermediate Frequency)信号」と称す。)にダウンコンバートする。そして、IF信号を増幅等した後、A/D(Analog Digital)変換器でデジタル信号に変換して、ベースバンド処理回路部30に出力する。
【0034】
ベースバンド処理回路部30は、RF受信回路部21から出力されたIF信号に対して相関処理等を行ってGPS衛星信号を捕捉・抽出し、データを復号して航法メッセージや時刻情報等を取り出して測位演算を行う回路部である。ベースバンド処理回路部30は、演算制御部31と、ROM35と、RAM37とを備えて構成される。また、演算制御部31は、メジャメント取得演算部33を備えて構成される。
【0035】
メジャメント取得演算部33は、RF受信回路部21から出力された受信信号(IF信号)から、GPS衛星信号の捕捉を行う回路部であり、相関演算部331を備えて構成されている。メジャメント取得演算部33は、捕捉したGPS衛星信号のコード位相やドップラー周波数の情報をメジャメント実測値として取得して、ホストCPU50に出力する。
【0036】
相関演算部331は、受信信号に含まれるPRNコードとレプリカコードとの相関を示す相関値を、例えばFFT(Fast Fourier Transform)演算を用いて算出し積算する相関演算処理を行って、GPS衛星信号を捕捉する。レプリカコードとは、擬似的に発生させた捕捉しようとするGPS衛星信号に含まれるPRNコードを模擬した信号である。
【0037】
捕捉しようとするGPS衛星信号が間違いなければ、そのGPS衛星信号に含まれるPRNコードとレプリカコードとは一致し(捕捉成功)、間違っていれば一致しない(捕捉失敗)。そのため、算出された積算相関値のピークを判定することによってGPS衛星信号の捕捉が成功したか否かを判定でき、レプリカコードを次々に変更して、同じ受信信号との相関演算を行うことで、GPS衛星信号を捕捉することが可能となる。
【0038】
また、相関演算部331は、上述した相関演算処理を、レプリカコードの発生信号の周波数、及び、レプリカコードの位相を変更しつつ行っている。レプリカコードの発生信号の周波数と受信信号の周波数とが一致し、且つ、レプリカコードの位相と受信信号に含まれるPRNコードの位相とが一致した場合に、積算相関値が最大となる。
【0039】
より具体的には、捕捉対象のGPS衛星信号に応じた所定の周波数及び位相の範囲をサーチ範囲として設定する。そして、このサーチ範囲内で、PRNコードの開始位置(コード位相)を検出するための位相方向の相関演算と、周波数を検出するための周波数方向の相関演算とを行う。サーチ範囲は、周波数についてはGPS衛星信号の搬送波周波数である1.57542[GHz]を中心とする所定の周波数掃引範囲、位相についてはPRNコードのチップ長である1023チップのコード位相範囲内に定められる。
【0040】
TCXO40は、所定の発振周波数で発振信号を生成する温度補償型水晶発振器であり、生成した発振信号をRF受信回路部21及びベースバンド処理回路部30に出力する。
【0041】
ホストCPU50は、ROM100に記憶されているシステムプログラム等の各種プログラムに従って携帯型電話機2の各部を統括的に制御するプロセッサである。ホストCPU50は、操作部60からの操作入力に従ってアプリケーションを選択し、選択したアプリケーションを実行する。本実施形態では、測位アプリケーション、天気予報アプリケーション、店舗検索アプリケーション及び時刻修正アプリケーションを実行する。
【0042】
操作部60は、例えばタッチパネルやボタンスイッチ等により構成される入力装置であり、押下されたキーやボタンの信号をホストCPU50に出力する。この操作部60の操作により、通話要求やメールの送受信要求等の各種指示入力がなされる。
【0043】
表示部70は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成され、ホストCPU50から入力される表示信号に基づいた各種表示を行う表示装置である。表示部70には、ナビゲーション画面や時刻情報、天気予報、店舗情報等が表示される。
【0044】
時計部75は、不図示の発振器により生成される発振信号に基づいて、携帯型電話機2の時刻を計時する計時回路であり、計時時刻をホストCPU50に出力する。時計部75が計時している時刻は、ホストCPU50により修正される。
【0045】
携帯電話用アンテナ80は、携帯型電話機2の通信サービス事業者が設置した無線基地局との間で携帯電話用無線信号の送受信を行うアンテナである。
【0046】
携帯電話用無線通信回路部90は、RF変換回路、ベースバンド処理回路等によって構成される携帯電話の通信回路部であり、携帯電話用無線信号の変調・復調等を行うことで、通話やメールの送受信等を実現する。
【0047】
ROM100は、ホストCPU50が携帯型電話機2を制御するためのシステムプログラムや、ナビゲーション機能を実現するための各種プログラムやデータ等を記憶している。
【0048】
フラッシュROM110は、読み書き可能な不揮発性の記憶装置であり、ROM100と同様に、ホストCPU50が携帯型電話機2を制御するための各種プログラムやデータ等を記憶している。フラッシュROM110に記憶されているデータは、携帯型電話機2の電源を切断しても失われない。
【0049】
RAM120は、ホストCPU50により実行されるシステムプログラム、各種処理プログラム、各種処理の処理中データ、処理結果などを一時的に記憶するワークエリアを形成している。
【0050】
3.データ構成
図3は、ROM100に格納されたデータの一例を示す図である。ROM100には、ホストCPU50により読み出され、メイン処理(図7参照)として実行されるメインプログラム101が記憶されている。また、メインプログラム101には、各種アプリケーションプログラムがサブルーチンとして記憶されている。
【0051】
具体的には、天気予報表示処理(図8及び図9参照)として実行される天気予報表示プログラム1011と、店舗検索処理(図10及び図11参照)として実行される店舗検索プログラム1012と、時刻修正処理(図12及び図13参照)として実行される時刻修正プログラム1013と、ドップラーチェック処理(図14参照)として実行されるドップラーチェックプログラム1014とがサブルーチンとして含まれている。これらの処理については、フローチャートを用いて詳細に後述する。
【0052】
図4は、フラッシュROM110に格納されたデータの一例を示す図である。フラッシュROM110には、初期位置111と、初期位置信頼度112と、前回測位日時113と、衛星軌道データ114とが記憶される。
【0053】
初期位置111は、測位演算をする際に使用する携帯型電話機2の初期位置である。また、初期位置信頼度112は、初期位置111が携帯型電話機2の実在位置に近似する度合を示す指標値であり、初期位置111に含まれる誤差の大きさとして表される。例えば、初期位置信頼度112が「10km」といったときは、初期位置111には最大で10kmの誤差が含まれ得ることを意味している。
【0054】
ホストCPU50は、前回測位日時113から所定時間以上が経過している場合は、基地局3と通信を行って携帯型電話機2の初期位置111及び初期位置信頼度112を取得し、フラッシュROM110に更新記憶させる。
【0055】
前回測位日時113は、前回測位を行った日時であり、測位時に時計部75により計時されている時刻が記憶される。
【0056】
衛星軌道データ114は、例えばアルマナックやエフェメリスといった各GPS衛星SVの衛星軌道が記憶されたデータである。衛星軌道データ114は、ベースバンド処理回路部30により捕捉されたGPS衛星信号をデコードすることで取得される。
【0057】
図5は、RAM120に格納されるデータの一例を示す図である。RAM120には、
メジャメントデータ121と、ドップラー残差幅122と、信頼度許容値123と、残差幅許容値124と、収束演算回数125と、判定対象位置126とが記憶される。
【0058】
図6は、メジャメントデータ121のデータ構成の一例を示す図である。メジャメントデータ121には、各捕捉対象衛星1211それぞれについて、コード位相及びドップラー周波数でなるメジャメント実測値1213が記憶される。ホストCPU50は、メジャメント取得演算部33から各衛星のメジャメント実測値1213を取得し、捕捉対象衛星1211と対応付けてメジャメントデータ121に記憶させる。
【0059】
ドップラー残差幅122は、各捕捉対象衛星それぞれについて、判定対象位置126及び衛星軌道データ114を用いて算出したドップラー周波数の理論値と、メジャメント取得演算部33により演算されたドップラー周波数の実測値との差(以下、「ドップラー残差」と称す。)の幅である。より具体的には、各捕捉対象衛星について算出されたドップラー残差のうち、最大値から最小値を減算した値がドップラー残差幅122である。ドップラー残差の分布範囲と言える。
【0060】
判定対象位置が携帯型電話機2の実在位置と一致又は近接していれば、ドップラー周波数の理論値と実測値とは近似した値となり、ドップラー残差は“0”に近い値となるはずである。それぞれのGPS衛星SVに係るドップラー残差が“0”に近い値となることは、判定対象位置が携帯型電話機2の実在位置に近いことを意味する。このため、ドップラー残差の分布範囲に対する閾値判定を行うことで、判定対象位置が携帯型電話機2の実在位置から所定の距離以内の位置か否か(実在位置と同視可能な位置か否か)を判定することができる。
【0061】
信頼度許容値123は、初期位置信頼度112の許容値であり、天気予報表示処理、店舗検索処理及び時刻修正処理における初期位置信頼度112の閾値となる値である。後述するように、信頼度許容値123には、天気予報表示処理、店舗検索処理及び時刻修正処理においてそれぞれ異なる値が設定される。すなわち、アプリケーションの種類に応じて、初期位置信頼度112の閾値条件が変更される。
【0062】
残差幅許容値124は、ドップラー残差幅122の許容値であり、天気予報表示処理、店舗検索処理及び時刻修正処理におけるドップラー残差幅122の閾値となる値である。後述するように、残差幅許容値124には、天気予報表示処理、店舗検索処理及び時刻修正処理においてそれぞれ異なる値が設定される。すなわち、アプリケーションの種類に応じて、ドップラー残差幅122の閾値条件が変更される。
【0063】
収束演算回数125は、測位演算における収束演算の回数(反復回数)であり、収束演算を1回行うごとに“1”が加算される。収束演算回数125が多いほど、測位の正確性は向上するが、計算量は増加する。
【0064】
判定対象位置126は、ドップラーチェック処理において、携帯型電話機2の実在位置から所定の距離以内の位置か否かの判定対象とする位置である。初期位置信頼度112が信頼度許容値123以下である場合には、初期位置111が判定対象位置126とされ、初期位置信頼度112が信頼度許容値123を超えている場合には、測位演算処理(位置収束演算)を行うことで得られた演算位置が判定対象位置126とされる。
【0065】
4.処理の流れ
図7は、ROM100に記憶されているメインプログラム101がホストCPU50により読み出されて実行されることで、携帯型電話機2において実行されるメイン処理の流れを示すフローチャートである。
【0066】
メイン処理は、ホストCPU50が、操作部60を介してユーザにより電源投入操作がなされたことを検出した場合に実行を開始する処理である。また、特に説明しないが、以下のメイン処理の実行中は、GPSアンテナ10によるRF信号の受信や、RF受信回路部21によるRF信号のIF信号へのダウンコンバージョンが行われ、ベースバンド処理回路部30によるIF信号からのGPS衛星信号の捕捉・抽出や、メジャメント取得演算部33によるメジャメント実測値の演算が随時なされる状態にあるものとする。
【0067】
先ず、ホストCPU50は、操作部60を介してなされた指示操作を判定し(ステップA1)、指示操作が通話指示操作であると判定した場合は(ステップA1;通話指示操作)、通話処理を行う(ステップA3)。具体的には、携帯電話用無線通信回路部90に基地局3との間の基地局通信を行わせ、携帯型電話機2と他機との間の通話を実現する。
【0068】
また、ステップA1において指示操作がメール送受信指示操作であると判定した場合は(ステップA1;メール送受信指示操作)、ホストCPU50は、メール送受信処理を行う(ステップA5)。具体的には、携帯電話用無線通信回路部90に基地局通信を行わせ、携帯型電話機2と他機との間のメールの送受信を実現する。
【0069】
また、ステップA1において指示操作が測位指示操作であると判定した場合、すなわち、測位アプリケーションの実行がユーザにより指示された場合は(ステップA1;測位指示操作)、ホストCPU50は、測位処理を行う(ステップA7)。具体的には、メジャメント取得演算部33により演算されたコード位相を基に算出される携帯型電話機2とGPS衛星SV間の擬似距離と、初期位置の位置座標及びGPS衛星SVの位置座標から算出される距離(以下、「幾何学的距離」と称す。)との差を用いて、例えば最小二乗法を利用した収束演算を行う。この場合の収束演算の反復回数は、「6回〜10回」程度とすれば好適である。
【0070】
また、ステップA1において指示操作が天気予報表示指示操作であると判定した場合、すなわち、天気予報表示アプリケーションの実行がユーザにより指示された場合は(ステップA1;天気予報表示指示操作)、ホストCPU50は、ROM100に記憶されている天気予報表示プログラム1011を読み出して実行することで、天気予報表示処理を行う(ステップA9)。
【0071】
図8及び図9は、天気予報表示処理の流れを示すフローチャートである。
先ず、ホストCPU50は、天気予報用信頼度を信頼度許容値123として、RAM120に記憶させる(ステップB1)。天気予報用信頼度は、例えば市町村単位の天気予報では「10km」や「20km」といった数十kmのオーダーの値とすることができ、都道府県単位の天気予報では「100km」や「200km」といった数百kmのオーダーの値とすることができる。
【0072】
これは、天気予報は地域ごとになされるものであるため、初期位置に数十km〜数百km程度の誤差が含まれていたとしても、携帯型電話機2の実在位置と初期位置における天気予報は一致する可能性が高いため、数十km〜数百km程度の誤差は許容範囲内であると考えられるためである。
【0073】
また、ホストCPU50は、天気予報用残差幅を残差幅許容値124として、RAM120に記憶させる(ステップB3)。天気予報用残差幅は、天気予報用信頼度に応じた値を設定することができる。すなわち、天気予報用信頼度が数十km〜数百kmのオーダーの値であるため、ドップラー残差幅の閾値も、距離に換算して数十km〜数百kmのオーダーの値となるような周波数に設定する。
【0074】
その後、ホストCPU50は、収束演算回数125を“0”として、RAM120に記憶させる(ステップB5)。次いで、ホストCPU50は、フラッシュROM110に記憶されている前回測位日時113から所定時間以上が経過しているか否かを判定し(ステップB7)、まだ経過していないと判定した場合は(ステップB7;No)、ステップB11へと処理を移行する。また、経過していると判定した場合は(ステップB7;Yes)、通信基地局3から携帯型電話機2の初期位置111及び初期位置信頼度112を取得して、フラッシュROM110に更新記憶させる(ステップB9)。
【0075】
その後、ホストCPU50は、フラッシュROM110に記憶されている初期位置111及び衛星軌道データ114を用いて、捕捉対象衛星判定処理を行う(ステップB11)。より詳細には、時計部75で計時されている現在時刻において、初期位置111の天空に位置するGPS衛星SVを衛星軌道データ114から判定して捕捉対象衛星とする。
【0076】
次に、ホストCPU50は、フラッシュROM110に記憶されている初期位置信頼度112がRAM120に記憶されている信頼度許容値123以下であるか否かを判定する(ステップB13)。そして、信頼度許容値123以下であると判定した場合は(ステップB13;Yes)、フラッシュROM110に記憶されている初期位置111を判定対象位置126として、RAM120に更新記憶させる(ステップB15)。
【0077】
そして、ホストCPU50は、ROM100に記憶されているドップラーチェックプログラム1014を読み出して実行することで、ドップラーチェック処理を行う(ステップB17)。
【0078】
図14は、ドップラーチェック処理の流れを示すフローチャートである。
先ず、ホストCPU50は、各捕捉対象衛星について、ループAの処理を実行する(ステップE1〜E11)。ループAでは、ホストCPU50は、RAM120に記憶されている判定対象位置126とフラッシュROM110に記憶されている衛星軌道データ114とを用いて、判定対象位置126で当該捕捉対象衛星のGPS衛星信号を受信した場合のドップラー周波数を算出して、第1ドップラー周波数とする(ステップE3)。
【0079】
次いで、ホストCPU50は、衛星捕捉制御処理を行って、ベースバンド処理回路部30に当該捕捉対象衛星の捕捉を行わせる(ステップE5)。そして、ホストCPU50は、メジャメント取得演算部33により演算された当該捕捉対象衛星のドップラー周波数を、第2ドップラー周波数とする(ステップE7)。
【0080】
次いで、ホストCPU50は、第1ドップラー周波数と第2ドップラー周波数との差の絶対値を算出してドップラー残差とする(ステップE9)。そして、ホストCPU50は、次の捕捉対象衛星へと処理を移行する。
【0081】
全ての捕捉対象衛星についてステップE3〜E9の処理を行った後、ホストCPU50は、ループAの処理を終了する(ステップE11)。ループAの処理を終了した後、ホストCPU50は、ドップラー残差の最大値と最小値との差(ドップラー残差の分布範囲)を算出してドップラー残差幅122とし、RAM120に更新記憶させる(ステップE13)。
【0082】
次いで、ホストCPU50は、RAM120に記憶されているドップラー残差幅122が残差幅許容値124以下であるか否かを判定する(ステップE15)。そして、残差幅許容値124以下であると判定した場合は(ステップE15;Yes)、ドップラーチェックOKと判定する(ステップE17)。そして、ホストCPU50は、ドップラーチェック処理を終了する。
【0083】
また、ステップE15において残差幅許容値124を超えていると判定した場合は(ステップE15;No)、ホストCPU50は、ドップラーチェックNGと判定する(ステップE19)。そして、ホストCPU50は、ドップラーチェック処理を終了する。
【0084】
図9の天気予報表示処理に戻って、ドップラーチェック処理を行った後、ホストCPU50は、ドップラーチェックOKであるか否かを判定し(ステップB19)、ドップラーチェックOKであると判定した場合は(ステップB19;Yes)、天気予報表示アプリケーションにおける情報提供基準位置としての判定対象位置126を含めた天気予報要求信号を天気予報提供サーバ4に送信する(ステップB21)。
【0085】
携帯型電話機2から天気予報要求信号を受信した天気予報提供サーバ4は、受信した天気予報要求信号に含まれる判定対象位置126が属する地域を判定する。そして、判定した地域の天気予報を天気予報データベースから読み出して、要求元の携帯型電話機2に送信する。
【0086】
ホストCPU50は、天気予報提供サーバ4から天気予報を受信し(ステップB23)、受信した天気予報を表示部70に表示させる(ステップB25)。そして、ホストCPU50は、判定対象位置126を初期位置111として、フラッシュROM110に更新記憶させる(ステップB27)。
【0087】
また、ホストCPU50は、RAM120に記憶されているドップラー残差幅122に基づいて初期位置信頼度112を算出し、フラッシュROM110に更新記憶させる(ステップB29)。ドップラー残差幅122は周波数であるが、これを距離に換算することで、初期位置111の信頼度を推定することができる。
【0088】
そして、ホストCPU50は、時計部75が計時している現在日時を前回測位日時113としてフラッシュROM110に更新記憶させて(ステップB31)、天気予報表示処理を終了する。
【0089】
一方、ステップB13において初期位置信頼度112が信頼度許容値123を超えていると判定した場合(ステップB13;No)、又は、ステップB19においてドップラーチェックNGであると判定した場合は(ステップB19;No)、ホストCPU50は、測位演算処理を行う(ステップB33)。
【0090】
具体的には、メジャメント取得演算部33により演算されたコード位相から算出される携帯型電話機2と捕捉対象衛星間の擬似距離と、フラッシュROM110に記憶されている初期位置111の位置座標及び捕捉対象衛星の位置座標から算出される幾何学的距離との差を用いて、例えば最小二乗法を利用した収束演算を行う。この場合の収束演算の反復回数は、例えば「1回」とする。
【0091】
次いで、ホストCPU50は、RAM120に記憶されている収束演算回数125に“1”を加算する(ステップB35)。その後、ホストCPU50は、測位演算処理により得られた演算位置を判定対象位置126として、RAM120に更新記憶させる(ステップB37)。そして、ホストCPU50は、ROM100に記憶されているドップラーチェックプログラム1014を読み出して実行することで、ドップラーチェック処理を行う(ステップB39)。
【0092】
ドップラーチェック処理を行った後、ホストCPU50は、ドップラーチェックOKであるか否かを判定し(ステップB41)、ドップラーチェックOKであると判定した場合は(ステップB41;Yes)、ステップB21へと処理を移行する。
【0093】
また、ステップB41においてドップラーチェックNGであると判定した場合は(ステップB41;No)、ホストCPU50は、RAM120に記憶されている収束演算回数125が“3”を超えているか否かを判定し(ステップB43)、超えていないと判定した場合は(ステップB43;No)、ステップB33に戻り、直前の測位演算処理で得られた演算位置を用いて再び測位演算処理を行う。
【0094】
また、ステップB43において収束演算回数125が“3”を超えていると判定した場合は(ステップB43;Yes)、ホストCPU50は、RAM120に記憶されている判定対象位置126を初期位置111として、フラッシュROM110に更新記憶させる(ステップB45)。そして、ホストCPU50は、エラーメッセージを表示部70に表示させた後(ステップB47)、天気予報表示処理を終了する。
【0095】
天気予報は地域ごとになされるものであるため、携帯型電話機2の精確な位置を必要とするわけではなく、演算位置にキロメートル単位の誤差が含まれていても問題ないと考えられる。このため、天気予報表示処理では、測位演算における収束演算の反復回数を最小で1回、最大でも3回に制限して、計算量を削減することにしたものである。
【0096】
図7のメイン処理に戻って、ステップA1において指示操作が店舗検索指示操作であると判定した場合、すなわち、店舗検索アプリケーションの実行がユーザにより指示された場合は(ステップA1;店舗検索指示操作)、ホストCPU50は、ROM100に記憶されている店舗検索プログラム1012を読み出して実行することで、店舗検索処理を行う(ステップA11)。
【0097】
図10及び図11は、店舗検索処理の流れを示すフローチャートである。尚、店舗検索処理は、図8及び図9の天気予報表示処理と略同一の処理であるため、天気予報表示処理と同一のステップについては同一の符号を付して説明を省略し、天気予報表示処理とは異なる部分を中心に説明する。
【0098】
店舗検索処理では、ホストCPU50は、店舗検索用信頼度を信頼度許容値123として、RAM120に記憶させる(ステップC1)。店舗検索用信頼度は、例えば「1km」や「2km」といった数kmのオーダーの値とすることができる。これは、初期位置に数km程度の誤差が含まれていたとしても、携帯型電話機2の実在位置から距離が近い店舗と、初期位置から距離が近い店舗とは概ね一致するため、数km程度の誤差は許容範囲内であると考えられるためである。
【0099】
また、ホストCPU50は、店舗検索用残差幅を残差幅許容値124として、RAM120に記憶させる(ステップC3)。店舗検索用残差幅は、店舗検索用信頼度に応じた値を設定することができる。すなわち、店舗検索用信頼度が数kmのオーダーの値であるため、ドップラー残差幅の閾値も、距離に換算して数kmのオーダーの値となるような周波数に設定する。
【0100】
ホストCPU50は、ステップB19又はB41においてドップラーチェックOKと判定した場合は(ステップB19;Yes、又は、ステップB41;Yes)、操作部60を介してユーザにより入力された店舗検索条件、及び、店舗検索アプリケーションにおける情報提供基準位置としての判定対象位置126を含めた店舗情報要求信号を、店舗情報提供サーバ5に送信する(ステップC21)。
【0101】
携帯型電話機2から店舗情報要求信号を受信した店舗情報提供サーバ5は、受信した店舗情報要求信号に含まれる検索条件に合致する店舗の情報を、店舗情報データベースから抽出する。そして、その中から、受信した店舗情報要求信号に含まれる判定対象位置126から距離が近い順に所定件数(例えば30件)の店舗情報を選択して、要求元の携帯型電話機2に送信する。
【0102】
ホストCPU50は、店舗情報提供サーバ5から店舗情報を受信した後(ステップC23)、受信した店舗情報を表示部70に表示させる(ステップC25)。そして、ステップB27へと処理を移行する。
【0103】
図7のメイン処理に戻って、ステップA1において指示操作が時刻修正指示操作であると判定した場合は、すなわち、時刻修正アプリケーションの実行がユーザにより指示された場合は(ステップA1;時刻修正指示操作)、ホストCPU50は、ROM100に記憶されている時刻修正プログラム1013を読み出して実行することで、時刻修正処理を行う(ステップA13)。
【0104】
図12及び図13は、時刻修正処理の流れを示すフローチャートである。尚、時刻修正処理は、図8及び図9の天気予報表示処理と略同一の処理であるため、天気予報表示処理と同一のステップについては同一の符号を付して説明を省略し、天気予報表示処理とは異なる部分を中心に説明する。
【0105】
時刻修正処理では、ホストCPU50は、時刻修正用信頼度を信頼度許容値123として、RAM120に記憶させる(ステップD1)。時刻修正用信頼度は、例えば「1000km」や「2000km」といった数千kmのオーダーの値とすることができる。これは、初期位置に数千km程度の誤差が含まれていたとしても、携帯型電話機2の実在位置と初期位置とでは標準時は一致するため、数千km程度の誤差は許容範囲内であると考えられるためである。
【0106】
また、ホストCPU50は、時刻修正用残差幅を残差幅許容値124として、RAM120に記憶させる(ステップD3)。時刻修正用残差幅は、時刻修正用信頼度に応じた値を設定することができる。すなわち、時刻修正用信頼度が数千kmのオーダーの値であるため、ドップラー残差幅の閾値も、距離に換算して数千kmのオーダーの値となるような周波数に設定する。
【0107】
ホストCPU50は、ステップB19又はB41においてドップラーチェックOKと判定した場合は(ステップB19;Yes、又は、ステップB41;Yes)、時刻修正アプリケーションにおける情報提供基準位置としての判定対象位置126を含めた標準時要求信号を、標準時提供サーバ6に送信する(ステップD21)。
【0108】
携帯型電話機2から標準時要求信号を受信した標準時提供サーバ6は、受信した標準時要求信号に含まれる判定対象位置126が属する国及び地域を判定する。そして、判定した国及び地域の標準時を標準時データベースから読み出して、要求元の携帯型電話機2に送信する。
【0109】
ホストCPU50は、標準時提供サーバ6から標準時を受信した後(ステップD23)、受信した標準時で時計部75の時刻を修正する(ステップD25)。そして、ステップB27へと処理を移行する。
【0110】
図7のメイン処理に戻って、ステップA3〜A13の何れかの処理を行った後、ホストCP50は、操作部60を介して携帯型電話機2の電源切断指示操作がなされたか否かを判定し(ステップA15)、なされなかったと判定した場合は(ステップA15;No)、ステップA1に戻る。また、電源切断指示操作がなされたと判定した場合は(ステップA15;Yes)、メイン処理を終了する。
【0111】
5.作用効果
本実施形態によれば、測位システム1において、携帯型電話機2は、天気予報表示処理、店舗検索処理及び時刻修正処理を行い、天気予報提供サーバ4、店舗情報提供サーバ5及び標準時提供サーバ6から、それぞれ天気予報、店舗情報及び標準時を受信する。詳細には、携帯型電話機2は、基地局3から取得した初期位置の信頼度が所定の許容値以下であると判定した場合は、初期位置を判定対象位置としたドップラーチェック処理を行うことで、初期位置が携帯型電話機2の実在位置から所定の距離以内の位置か否かを判定する。また、許容値を超えていると判定した場合は、初期位置を用いて反復回数を1回に制限した測位演算処理を行い、得られた演算位置を判定対象位置としたドップラーチェック処理を行うことで、演算位置が携帯型電話機2の実在位置から所定の距離以内の位置か否かを判定する。
【0112】
ドップラーチェック処理により判定対象位置が適切であると判定した場合は、携帯型電話機2は、情報提供基準位置としての判定対象位置を含めた天気予報要求信号、店舗情報要求信号及び標準時要求信号を、天気予報提供サーバ4、店舗情報提供サーバ5及び標準時提供サーバ6にそれぞれ送信する。そして、天気予報提供サーバ4からは判定対象位置が属する地域における天気予報、店舗情報提供サーバ5からは判定対象位置に近接する店舗の情報、標準時提供サーバ6からは判定対象位置が属する国及び地域における標準時をそれぞれ受信する。
【0113】
判定対象位置が携帯型電話機2の実在位置と一致するか近接していれば(所定の距離以内の位置であれば)、携帯型電話機2が判定対象位置でGPS衛星信号を受信した場合のドップラー周波数と、携帯型電話機2が実在位置で計測したドップラー周波数とは近似した値となるはずである。そのため、この2つのドップラー周波数の差に基づいたドップラーチェック処理を行うことで、判定対象位置が携帯型電話機2の実在位置から所定の距離以内の位置か否かを簡易に判定することが可能となる。
【0114】
また、本実施形態では、ドップラーチェック処理により初期位置が適切であると判定した場合は、測位演算処理を行うことなく初期位置をサーバに送信する構成としており、収束演算を全く行わなくて済むため、計算量の削減になる。また、ドップラーチェック処理により初期位置が不適であると判定された場合も、反復回数を例えば1回に制限した測位演算処理を行う構成としているため、従来のように反復回数を多くして(例えば10回)測位演算処理を行う場合と比較して、計算量を大幅に削減することができる。
【0115】
6.変形例
6−1.電子機器
上述した実施形態では、測位装置及び位置適否判定装置を備えた電子機器として携帯型電話機を例に挙げて説明したが、ノート型パソコンやPDA(Personal Digital Assistant)、カーナビゲーション装置等としてもよい。
【0116】
6−2.衛星測位システム
また、上述した実施形態では、衛星測位システムとしてGPSを例に挙げて説明したが、WAAS(Wide Area Augmentation System)、QZSS(Quasi Zenith Satellite System)、GLONASS(GLObal NAvigation Satellite System)、GALILEO等の他の衛星測位システムであってもよい。
【0117】
6−3.処理の分化
ホストCPU50が行う処理の一部又は全部を、ベースバンド処理回路部30の演算制御部31が行うことにしてもよい。例えば、上述した実施形態では、測位演算処理をホストCPU50が実行するものとして説明したが、演算制御部31がこれを実行する構成としてもよいことは勿論である。
【0118】
6−4.アプリケーション
上述した実施形態では、携帯型電話機2における天気予報表示、店舗検索及び時刻修正の3種類のアプリケーションに本願発明を適用する場合を例に挙げて説明したが、これら以外のアプリケーションであってもよいことは勿論である。
【0119】
6−5.測位演算処理
上述した実施形態では、測位演算処理において、収束演算の回数を最小で1回、最大でも3回に制限するものとして説明したが、この収束演算の回数は適宜設定可能である。例えば、収束演算を1回行った結果ドップラーチェックNGと判定された場合は、2回目以降の収束演算を行わず、エラーメッセージを表示させて処理を終了することとしてもよい。この場合は、エラーの発生率は高まるが、計算量は削減することができる。
【0120】
また、各種アプリケーションにおいて必要とされる測位の正確性に応じて、測位演算処理を行う際の収束演算の反復回数を可変にすることにしてもよい。天気予報表示処理と、店舗検索処理と、時刻修正処理とを比較すると、必要とされる測位の正確性は、店舗検索処理が最も高く(数kmのオーダー)、天気予報表示処理が次に高く(数十km〜数百kmのオーダー)、時刻修正処理(数千kmのオーダー)が最も低い。そのため、例えば、店舗検索処理における反復回数を「3回」、天気予報表示処理における反復回数を「2回」、時刻修正処理における反復回数を「1回」としてもよい。
【0121】
6−6.分布範囲
上述した実施形態では、複数の捕捉対象衛星について算出したドップラー周波数の残差の最大値と最小値との差(ドップラー残差の分布範囲)を用いて判定対象位置の適否を判定するものとして説明したが、他には、例えば複数の捕捉対象衛星について算出したドップラー周波数の差の平均や分散を用いて判定対象位置の適否を判定することとしてもよい。この場合は、ドップラー周波数の差の平均や分散が所定の許容値以下であるか否かを判定する。そして、許容値以下である場合は、判定対象位置は適切であると判定し、許容値を超えている場合には、判定対象位置は不適であると判定することにすればよい。勿論、アプリケーションの目的や種類に応じて許容値を変更することにすれば好適である。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】測位システムの概略構成を示す図。
【図2】携帯型電話機の機能構成を示すブロック図。
【図3】携帯型電話機のROMに格納されたデータの一例を示す図。
【図4】携帯型電話機のフラッシュROMに格納されたデータの一例を示す図。
【図5】携帯型電話機のRAMに格納されるデータの一例を示す図。
【図6】メジャメントデータのデータ構成の一例を示す図。
【図7】メイン処理の流れを示すフローチャート。
【図8】天気予報表示処理の流れを示すフローチャート。
【図9】天気予報表示処理の流れを示すフローチャート。
【図10】店舗検索処理の流れを示すフローチャート。
【図11】店舗検索処理の流れを示すフローチャート。
【図12】時刻修正処理の流れを示すフローチャート。
【図13】時刻修正処理の流れを示すフローチャート。
【図14】ドップラーチェック処理の流れを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0123】
1 測位システム 、 2 携帯型電話機、 3 基地局、 10 GPSアンテナ、 20 GPS受信部、 21 RF受信回路部、 30 ベースバンド処理回路部、 31 演算制御部、 33 メジャメント取得演算部、 35 ROM、
37 RAM、 40 TCXO、 50 ホストCPU、 60 操作部、
70 表示部、 75 時計部、 80 携帯電話用アンテナ、
90 携帯電話用無線通信回路部、 100 ROM、 110 フラッシュROM、
120 RAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位衛星から衛星信号を受信して、前記衛星信号の受信位置における当該衛星信号のドップラー周波数を計測することと、
判定対象位置と前記測位衛星の軌道情報とを用いて、前記判定対象位置で前記衛星信号を受信した場合のドップラー周波数を算出することと、
前記計測されたドップラー周波数と前記算出されたドップラー周波数との差に基づいて、前記判定対象位置が前記受信位置から所定の距離以内の位置か否かを判定することと、
を含む位置適否判定方法。
【請求項2】
前記計測することは、複数の測位衛星から受信した衛星信号についてドップラー周波数を計測することであり、
前記算出することは、前記複数の衛星信号について前記判定対象位置で受信した場合のドップラー周波数を算出することであり、
前記判定することは、前記複数の衛星信号について、前記計測されたドップラー周波数と前記算出されたドップラー周波数との差に基づいて、前記判定対象位置が前記受信位置から所定の距離以内の位置か否かを判定することである、
請求項1に記載の位置適否判定方法。
【請求項3】
前記判定することは、前記計測されたドップラー周波数と前記算出されたドップラー周波数との差の分布範囲が所定の閾値条件を満たすか否かによって、前記判定対象位置が前記受信位置から所定の距離以内の位置か否かを判定することである、
請求項2に記載の位置適否判定方法。
【請求項4】
情報提供基準位置に応じた情報を提供する複数のアプリケーションのうちの何れかのアプリケーションを選択することと、
前記選択されたアプリケーションに応じて前記所定の閾値条件を変更することと、
前記判定対象位置が前記受信位置から所定の距離以内の位置と判定された場合に、前記判定対象位置を前記情報提供基準位置として前記選択されたアプリケーションを実行することと、
を含む請求項3に記載の位置適否判定方法。
【請求項5】
前記分布範囲に基づいて前記判定対象位置が前記受信位置に近似する度合を判定することを含む請求項3又は4に記載の位置適否判定方法。
【請求項6】
前記衛星信号を用いて測位演算することを含み、
前記算出することは、前記測位演算によって求められた測位位置を前記判定対象位置としてドップラー周波数を算出することである、
請求項1〜5の何れか一項に記載の位置適否判定方法。
【請求項7】
測位衛星から衛星信号を受信して、前記衛星信号の受信位置における当該衛星信号のドップラー周波数を計測する計測部と、
判定対象位置と前記測位衛星の軌道情報とを用いて、前記判定対象位置で前記衛星信号を受信した場合のドップラー周波数を算出する算出部と、
前記計測されたドップラー周波数と前記算出されたドップラー周波数との差に基づいて、前記判定対象位置が前記受信位置から所定の距離以内の位置か否かを判定する判定部と、
を備えた位置適否判定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−60301(P2010−60301A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223129(P2008−223129)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】