説明

低いクリープ傾向を有する可塑剤含有フィルムを有する合わせガラス

本発明は、合わせガラスラミネートを製造するための僅かなクリープ傾向を有する、18質量%未満のポリビニルアセタール中のポリビニルアルコール割合を有する、可塑剤含有の、ポリビニルアセタールをベースとするフィルムの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、低いクリープ傾向を有するポリビニルアセタールをベースとする可塑剤含有フィルムを使用しての合わせガラスの製造に関する。
【0002】
技術水準
合わせ安全ガラスは、一般に2枚のガラス板と、そのガラス板を結合する中間フィルムとからなる。フィルム材料として、主に可塑剤含有の部分アセタール化ポリビニルアルコール(ポリビニルアセタール)、特にポリビニルブチラール(PVB)が使用される。
【0003】
合わせ安全ガラス(VSG)は、例えば自動車分野においてウィンドシールドまたはサイドガラスパネルとして、ならびに建築分野において安全ガラスとして使用される。
【0004】
このようなPVBフィルム用の好ましい可塑剤として、トリ−またはテトラエチレングリコールの脂肪族ジエステルが確立している。特に頻繁に、可塑剤として3G7、3G8または4G7が使用され、その際、最初の数字はエチレングリコール単位の数を表わし、最後の数字はこの化合物のカルボン酸部分中の炭素原子の数を表わす。このように、3G8は、トリエチレングリコール−ビス−(2−エチルヘキサノエート)、すなわち式C49CH(CH2CH3)CO(OCH2CH232CCH(CH2CH3)C49の化合物を表わす。
【0005】
部分アセタール化ポリビニルアルコール用の可塑剤として、有利に、VSG中間層シート中で、高い透明性、低い湿分吸収、ガラスに対する良好な粘着およびフィルムの十分な冷間柔軟性を提供する化合物が使用される。更に、この化合物は、部分アセタール化ポリビニルアルコールとの十分な相容性を有していなければならない、すなわち十分な量で再び滲出することなしにこの部分アセタール化ポリビニルアルコールと混合可能でなければならない。
【0006】
一般に、可塑剤と部分アセタール化ポリビニルアルコールとの相容性は、可塑剤の極性特性の低下と共に減少する。従って、比較的高い極性の可塑剤は、比較的低い極性を有する可塑剤よりも、ポリビニルアセタールと相容性がより良好である。それとは別に、比較的低い極性の可塑剤の相容性は、アセタール化度の増加と共に、すなわちヒドロキシル基の数の減少と共に、ひいてはポリビニルアセタールの極性の減少と共に向上する。
【0007】
PVBフィルムは、大部分が工業的に可塑剤としての3G8と共に製造される。
【0008】
PVBフィルムの湿分吸収、それに関連した、長時間の使用における欠陥の発生に抗するPVBフィルムの耐性は、本質的にアセタール化度、または配合物中に使用されるPVBポリマーのポリビニルアルコール含量によって決定される。
【0009】
同時に、工業的にPVBフィルム中で利用される通常のポリビニルアルコールにおいて優勢である比較的高いポリビニルアルコール含量は、相容性の理由から、記載された比較的極性の可塑剤の使用を必要とし、この場合この可塑剤は、比較的低い分子量、ひいては比較的高い揮発性をも有する。
【0010】
それゆえに、長持ちする建築用ガラスに最適なPVBフィルムは、低いポリビニルアルコール含量を有する疎水性PVBを基礎とするのが好ましい。疎水性PVBは、僅かな極性の可塑剤と組み合わせることができ、すなわちこの可塑剤と相容性である。
【0011】
同時に、建築分野におけるPVBフィルムの使用において、PVBフィルムの機械的挙動に対する高い要求が重要性を持つ。これは、PVBフィルムの引裂き強度に関連するだけでなく、フィルムによって維持される部分的に数mmの厚さの、ひいては重質の単層ガラスだけのゆっくりとした滑り落ち(クリープ)に抗する耐性にも関連する。殊に、VSGが裏面だけでファッサード保持構造体(Fassadenhaltekonstruktion)中に貼り付けられ、かつ前面のガラス板が外から機械的に支持されていない場合には、この結果、欠陥をまねきうる。
【0012】
しかし、僅かなポリビニルアルコール含量(ひいては、改善された長時間安定性)ならびに僅かなクリープ傾向(ひいては厚手の単層ガラスの貼合せに適した)を有することができるPVBフィルムによる要求は、自明のこととして満たすことはできない。それというのも、比較的高度にアセタール化されたPVBをベースとする真っ直ぐなフィルムは、比較的高い温度でクリープ傾向を有するからである。使用範囲に応じて建築用途ならびにKfz用途のためにVSG中で60℃を上廻る持続温度が観察されうるので、通常、低いポリビニルアルコール含量を有するPVBをベースとするPVBフィルムの使用は、不可能である。
【0013】
特殊な機械的性質を有するフィルムは、例えば欧州特許出願公開第2153989号明細書A1の記載から公知である。ここでは、17〜22質量%のポリビニルアルコール含量を有するポリビニルアセタールが使用される。このポリビニルアセタールは、満足なクリープ特性を有していない。
【0014】
WO 2009/047221、WO 2009/047222およびWO 2009/047223には、可塑剤含有フィルムを有する光起電力モジュールをポリビニルアセタールから製造することが記載されている。ここで使用されるポリビニルアセタールは、同様に高いポリビニルアルコール含量を有し、したがって十分なクリープ特性を有しない。
【0015】
米国特許第2009/0250100号明細書には、光起電力モジュールのための0.8〜2g/10分(150℃、5kg)のメルトフローインデックスMFRを有するポリビニルアセタールが記載されている。この値も十分なクリープ特性を示さない。
【0016】
課題
建築分野における合わせガラスラミネートには、部分的に20年を上廻る品質保証が為されなければならないにも拘わらず、高められた温度で十分に低いクリープ傾向の減少された湿分吸収および可塑剤放出を有する中間層フィルムを準備するという必要性が存在した。
【0017】
意外なことに、18質量%未満のポリビニルアルコール含量を有するPVBをベースとするPVBフィルムのクリープ傾向は、所定のアセタール化度における温度負荷下に合成の際に基礎となる原料および反応実施の種類によって主に決定され、二次的にのみPVBの可塑剤含量によって決定されることが見い出された。
【0018】
殊に、ポリビニルアセタールをベースとする可塑剤含有フィルムのクリープ傾向は、温度負荷下に該フィルムのポリビニルアルコール含量、分子量、架橋度または製造におけるアセタール化条件に決定的に依存することが見い出された。
【0019】
発明の開示
従って、本発明の対象は、可塑剤含有ポリビニルアセタールからなる少なくとも1つの介在されたフィルムを有する少なくとも2つのガラス板からの1つの積層体からなる合わせガラスラミネートであり、この場合このフィルムは、12〜16質量%のポリビニルアルコール割合を有するポリビニルアセタールを含有し、およびフロートガラス3mm/フィルム0.76mm/フロートガラス3mmの構造を有するラミネートで測定した、100℃の温度で7日後の5mm未満のクリープ傾向を有する。
【0020】
従って、この種のフィルムは、3mmを上廻る、有利に4mmを上廻る、殊に5mmを上廻るかまたは8mmを上廻る厚さを有する少なくとも1つのガラス板を有する本発明による合わせガラスラミネートを製造するために特に好適である。
【0021】
好ましくは、ポリビニルアセタールをベースとする可塑剤含有フィルムのクリープ傾向は、以下に正確に記載された測定方法で3mm未満、特に2mm未満、大抵の場合に有利に1mm未満であることができる。
【0022】
既に記載したように、十分に低いポリビニルアルコール含量は、フィルムの湿分吸収に直接に作用を及ぼすだけでなく、そのために強く非極性の可塑剤がポリビニルアセタールに対する良好な相容性を有することを前提とし、したがってこのような可塑剤の選択によって湿分減少に対して付加的に貢献することができる。
【0023】
前記の理由から本発明により使用されるフィルムには、18.0質量%未満のポリビニルアルコール含量を有するポリビニルアセタールが使用される。本発明により使用されるポリビニルアセタールは、有利に12〜16質量%、殊に13〜15質量%のポリビニルアルコール割合を有する。ポリビニルアルコール割合は、それによって製造されたフィルムの高すぎる固有粘着性およびもはや十分ではない機械的性質のために10質量%を下廻るべきではなかった。
【0024】
本発明の第1の変法において、前記フィルムの製造のために、分子量Mwの質量平均が110000g/molを上廻り、有利にMw120000g/molを上廻り、および/または溶液粘度が80mPasを上廻り、有利に90mPasを上廻るポリビニルアセタールが使用される。分子量Mwまたは溶液粘度は、実施例中の記載と同様にゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定されるか、またはエタノール中のポリビニルアセタールの5%の溶液で測定される。
【0025】
ポリビニルアセタールの押出能を劣化させないために、ポリビニルアセタールの分子量Mwは、500000g/mol以下であるべきであり、および/または溶液粘度は、300mPas以下であるべきであった。
【0026】
分子量Mwまたは溶液粘度は、使用されるポリビニルアセタールについて巨視的に測定された値である。従って、分子量Mwまたは溶液粘度がそれぞれ規定の限界値を上廻ってもよいし、下廻ってもよい複数のポリビニルアセタールからの混合物が使用されてもよい。分子量Mwまたは溶液粘度について記載された下限値を有する混合物を得ながらの複数のポリビニルアセタールの混合は、当業者に公知である。
【0027】
高められた分子量または高められた溶液粘度は、ポリビニルアセタールの製造のために相応するポリビニルアルコールを使用することによって達成されうる。好ましくは、ポリビニルアセタールの製造に使用されるポリビニルアルコールは、4%水溶液として測定した、35mPasを上廻る溶液粘度を有する。このポリビニルアルコールは、本発明の範囲内で、純粋なポリビニルアルコールとして、または多様な重合度または加水分解度を有するポリビニルアルコールの混合物として使用することができる。ポリビニルアルコールの混合物を使用する場合には、このポリビニルアルコールの混合物の溶液粘度は、本発明によれば、35mPasを上廻る。
【0028】
更に、分子量Mwまたは溶液粘度について記載された規格値を有するポリビニルアセタールを含有するフィルムは、さらに望ましい性質、例えば高い光学的透明度に関連して同じポリビニルアルコール含量で110000g/mol未満の分子量Mwまたは80mPas未満の溶液粘度を有するポリビニルアセタールをベースとするフィルムと比較して実際に等価である。
【0029】
本発明により使用されるフィルムの製造に必要とされるポリビニルアセタールは、公知方法により、相応する分子量および残留アセテート含量を有するポリビニルアルコールを1つまたはそれ以上のアルデヒドと反応させることによって得られる。
【0030】
ポリビニルアルコールとして、本発明の範囲内で、ビニルアルコールと酢酸ビニルとからなるコポリマーと共に、加水分解された酢酸ビニル/エチレンコポリマーからなるターポリマーも使用することができる。この化合物は、一般に98%超が加水分解されており、およびエチレンをベースとする単位を1〜10質量%含有する(例えばKuraray Europe GmbH社のタイプ「Exceval」)。
【0031】
更に、ポリビニルアルコールとして、本発明の範囲内で、酢酸ビニルと少なくとも1つの他のエチレン性不飽和モノマーとからなる加水分解されたコポリマーも使用することができる。
【0032】
2〜10個の炭素原子を有するアルデヒド、有利にアセトアルデヒド、ブチルアルデヒドまたはバレルアルデヒドでのアセタール化を実施することは、可能である。
【0033】
更に、本発明の第2の変法において、本発明により使用されるポリビニルアセタールは、カルボキシル基を介する架橋により、ポリアルデヒド、グルタルジアルデヒドまたはグリオキシル酸によって高められた分子量および高められた溶液粘度を有する。
【0034】
架橋されたポリビニルアセタールは、例えばカルボキシル基置換されたポリビニルアセタールを分子内架橋することによって得ることができる。この架橋されたポリビニルアセタールは、例えば、ポリビニルアルコールと、ポリアルデヒド、グルタルジアルデヒドまたはグリオキシル酸との部分アセタール化(Coacetalisierung)によって、製造することができる。特に好ましくは、こうして得られたポリビニルアセタールは、分子量Mwまたは溶液粘度についての既述された下限値を有する。好ましくは、もともとポリビニルアセタール中に含まれているOH基の0.001〜1%の架橋により、反応が停止する。架橋されたポリビニルアセタールは、架橋されていないポリビニルアセタールと同様の溶解挙動を有するはずである。
【0035】
ポリビニルアセタールのために適した架橋可能性は、例えば、欧州特許第1527107号明細書B1およびWO 2004/063231 A1(熱による、カルボキシ基含有ポリビニルアセタールの自己架橋)、欧州特許出願公開第1606325号明細書A1(ポリアルデヒドにより架橋されたポリビニルアセタール)、欧州特許出願公開第1622946号明細書A1(グルタルジアルデヒドにより架橋されたポリビニルアセタール)およびWO 03/020776A1(グリオキシル酸により架橋されたポリビニルアセタール)中に記載されている。これらの特許出願の開示内容については、引用を以てその全体が本願に組み込まれるものとする。ポリビニルアセタールの架橋は、高められた分子量ならびにエタノール性溶液の高められた粘度により巨視的に捉えられる。
【0036】
本発明の第3の変法において、本発明により使用されるポリビニルアセタールの性質は、当該ポリビニルアセタールの製造におけるアセタール化条件によって調節される。ポリビニルアセタールの製造においては、通常、ポリビニルアルコールとアルデヒドまたはポリビニルアルコールと酸、例えばHClとの混合物が予め装入され、および酸またはアルデヒドを0〜20℃の温度で添加することによってポリビニルアセタールの沈殿下に反応される(沈殿段階)。沈殿段階は、最後の成分(酸またはアルデヒド)の添加と共に開始され、一般に60〜360分間、有利に60〜240分間継続される。沈殿段階は、最終温度への加熱の開始と共に終結する。
【0037】
加熱の開始は、加熱段階の出発である。引続き、反応は、30〜80℃の最終温度で完結され、その後に反応混合物は、冷却され、ポリビニルアセタールは、分離および後処理される。加熱段階は、冷却の開始と共に終結し、一般に30〜300分間継続される。
【0038】
次の工程:
ポリビニルアルコールおよび少なくとも1つのアルデヒドの水溶液を予め装入し、
酸をポリビニルアセタールの沈殿下に低い温度で添加し(沈殿段階)、この場合この沈殿段階は、60〜360分間、有利に60〜240分間継続されること
を有する方法で製造された、ポリビニルアセタールは、本発明による合わせガラスラミネートに特に好適である。
【0039】
それとは別に、沈殿段階は、次のように実施されてもよい:
ポリビニルアルコールおよび酸の水溶液を予め装入し、
少なくとも1つのアルデヒドをポリビニルアセタールの沈殿下に低い温度で添加し(沈殿段階)、この場合この沈殿段階は、60〜360分間、有利に60〜240分間継続される。
【0040】
酸およびアルデヒドの添加は、2つの変法で一度にかまたは部分量で行なうことができる。
【0041】
2つの変法において、その後に次の処理過程が実施される(加熱段階):
反応混合物を高められた温度に加熱し、
高められた温度で後加熱し、この場合全ての加熱段階は、30〜300分間継続される。
【0042】
本発明に適したポリビニルアセタールのために、例えばドイツ連邦共和国特許第28388025号明細書、米国特許第5187217号明細書、欧州特許第1384731号明細書、WO 2004/005358、欧州特許第0211819号明細書、特許第01318009号またはWO 2005/070669に記載されたように、加熱段階に比較して明らかに時間的に長い沈殿段階を用いて製造される。これらの特許出願の開示内容については、引用を以てその全体が本願に組み込まれるものとする。特に好ましくは、こうして得られたポリビニルアセタールは、分子量Mwまたは溶液粘度についての既述された下限値を有する。
【0043】
本発明にとって特に好適なポリビニルアセタールは、本発明の第4の変法において、製造プロセスを架橋反応を有する第3の変法におけるような長い沈殿段階と組み合わせることによって、例えばカルボキシル基含有ポリビニルアセタールの熱による自己架橋、ポリアルデヒド、グルタルジアルデヒドまたはグリオキシル酸でのポリビニルアセタールの架橋によって得られる。架橋反応は、ポリビニルアセタールの製造中(すなわち、ポリビニルアルコールとアルデヒドとの反応中)にアルデヒドと架橋剤とを同時に添加することによって、または別々の反応工程においても、例えば可塑剤含有フィルムの押出物中への架橋剤の添加によって行なうことができる。特に好ましくは、こうして得られたポリビニルアセタールは、分子量Mwまたは溶液粘度についての既述された下限値を有する。
【0044】
製造方法および架橋とは無関係に、本発明により使用されるポリビニルアセタールは、アセタール単位と共に、酢酸ビニルおよびビニルアルコールから生じる単位を有し、ならびに場合によっては他のコモノマーを有する。
【0045】
本発明により使用されるポリビニルアセタールのポリビニルアセテート割合は、有利に14質量%未満、特に有利に10質量%未満、または5質量%未満、殊に2質量%未満である。
【0046】
ポリビニルアルコール割合および残留アセタート含有量から、アセタール化度を計算により算出することができる。
【0047】
本発明により使用されるフィルムは、有利に湿潤条件下でもVSGの縁部範囲内で最大2.3質量%、最大2.0質量%、最大1.8質量%、特に有利に最大1.5質量%の湿分または含水量を有し、それによって層剥離に抗する改善された耐性および減少されたフィルム混濁傾向が生じる。
【0048】
好ましくは、フィルムは、18〜32質量%の範囲内、有利に20〜30質量%の範囲内、特に有利に22〜28質量%の範囲内、殊に24〜27質量%の範囲内の可塑剤含量を有する。本発明により使用されるフィルムは、1つまたは複数の可塑剤を含有することができる。
【0049】
本発明によれば、式100×O/(C+H)によって示された極性が9.4以下である可塑剤は、特に好適であり、この場合、O、CおよびHは、それぞれの分子中の酸素原子、炭素原子および水素原子の数を表わす。次の表は、本発明により使用可能な可塑剤および式100×O/(C+H)による当該可塑剤の極性値を示す。
名称 略符号 100×O/(C+H)
ジ−2−エチルヘキシルセバケート (DOS) 5.3
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル (DINCH) 5.4
ジ−2−エチルヘキシルアジペート (DOA) 6.3
ジ−2−エチルヘキシルフタレート (DOP) 6.5
ジヘキシルアジペート (DHA) 7.7
ジブチルセバケート (DBS) 7.7
ジ−2−ブトキシエチルセバケート (DBES) 9.4
トリエチレングリコール−ビス−2−エチルヘキサノエート (3G8) 9.4
【0050】
次の可塑剤は、あまり適当ではない。
名称 略符号 100×O/(C+H)
トリエチレングリコール−ビス−n−ヘプタノエート 3G7 10.3
テトラエチレングリコール−ビス−n−ヘプタノエート 4G7 10.9
ジ−2−ブトキシエチルアジペート DBEA 11.5
ジ−2−ブトキシエトキシアジペート DBEEA 12.5
【0051】
特に好ましくは、本発明により使用されるフィルムは、シクロヘキサンジカルボン酸エステル、殊にDINCHを可塑剤として含有する。DINCHは、単独の可塑剤として、または少なくとも1つの他の非極性または極性の、添加可塑剤としても適当な可塑剤と1〜40%の割合で組み合わせて使用することができる。
【0052】
好ましくは、前記フィルムは、10〜40質量%、14〜34質量%、16〜32質量%、18〜30質量%、殊に22〜28質量%の範囲内の、フィルム中の全可塑剤含有量、すなわち全ての可塑剤の割合を有する。
【0053】
シクロヘキサンジカルボン酸エステル可塑剤の混合物の場合には、この可塑剤の割合は、この混合物に対して10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、または90%超であることができる。
【0054】
特に好ましくは、本発明によるフィルムは、アジペートジアルキルエステル、例えばジイソノニルアジペートまたはジノニルアジペートと核水素化アルキルフタレートおよび/または核水素化アルキルテレフタレートとの質量比20:80〜80:20、特に有利に30:70〜70:30、殊に40:60〜60:40または50:50での可塑剤混合物を含有する。特に好ましくは、アジペートジアルキルエステルとしてジイソノニルアジペートまたはジノニルアジペート(DINA)が、および核水素化フタレートとしてDINCHが記載された質量比で使用される。
【0055】
記載された可塑剤または可塑剤組合せ物を使用して、特にわずかな可塑剤放出を有するフィルムを製造することが可能であり、このことは、後加工の際に、低減した臭気的負担または可塑剤エアゾールの発生確率の利点をもたらし、完成されたVSGにおいて高められた貯蔵性の利点を提供する。
【0056】
好ましくは、本発明により使用されるフィルムの可塑剤放出量(次に定義したような)は、全体のフィルムに対してそれぞれ4質量%未満、有利に3質量%未満、特に有利に2質量%未満、最も有利に1質量%未満である。
【0057】
本発明により使用されるフィルムは、高められた温度で低いクリープ傾向を有する。しかし、同時に溶融挙動は、気泡不含の完全に接着されたラミネートを得ようとするためには合わせガラスラミネートへの加工において十分である。従って、本発明による合わせガラスラミネートは、好ましくは340mg/10分以下、特に有利に260mg/10分の100℃/21.6kgでのISO 1133によるメルトフローインデックス(MFR)を有する可塑剤含有ポリビニルアセタールからのフィルムを含む。100℃/21.6kgでのISO 1133によるメルトフローインデックス(MFR)は、可塑剤としてのDINCH26質量%を有するポリビニルアセタールからの混合物について測定される。本発明により使用されるポリビニルアセタールは、70mg/10分未満の150℃/5kgでのメルトフローインデックスMFRを有する。
【0058】
ガラスへのポリビニルアセタールフィルムの付着能は、通常、付着調整剤、例えばWO 03/033583A1中に開示された、有機酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩を添加することによって調節される。酢酸カリウムおよび/または酢酸マグネシウムは、特に好適であることが判明した。その上、ポリビニルアセタールは、製造プロセスから、しばしば無機酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩、例えば塩化ナトリウムを含有する。
【0059】
ガラスに対する望ましい粘着を調節するために、本発明によるフィルムは、アルカリ金属イオンを単独で、または組合せで、0〜300ppm、有利に0〜200ppm、有利に0〜100ppm、有利に0〜50ppmの量範囲内で含むことができる。アルカリ土類金属イオンまたは亜鉛イオンは、単独で、または組合せで、0〜150ppm、有利に5〜100ppm、有利に10〜65ppmの量で含まれていてよい。アルカリ金属イオンの僅かな含量は、ポリビニルアセタールの相応する洗浄法によって、および特に良好に作用する粘着防止剤、例えば当業者に公知の有機酸のマグネシウム塩、カルシウム塩および/または亜鉛塩(例えば、酢酸塩)の使用によって実現させることができる。
【0060】
好ましくは、本発明により使用されるフィルムは、2〜100、有利に5〜70、有利に5〜50の範囲内にある、アルカリタイターとして表わされる、或る程度の塩基度を有する。100の最大アルカリタイターを上回らないのが好ましい。このアルカリタイターは、次に記載するように、フィルムの逆滴定により測定され、かつ塩基性物質、例えば1〜15個の炭素原子を有する有機カルボン酸の金属塩、特にアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、例えば酢酸マグネシウムまたは酢酸カリウムの添加により調節することができる。この塩基性の化合物は、通常、全体の混合物に対して、0.005〜2質量%、特に0.05〜1質量%の濃度で使用される。
【0061】
更に、フィルムの含水量に依存する、ガラスの粘着力は、熱分解法珪酸の添加によって影響を及ぼされうる。好ましくは、可塑剤含有の、ポリビニルアセタールをベースとするフィルムは、熱分解法SiO2を0.001〜15質量%、有利に0.5〜5質量%含有する。
【0062】
ポリビニルアセタールをベースとするフィルムの原理的製造および組成は、例えば欧州特許第185863号明細書B1、欧州特許第1118258号明細書B1、WO 02/102591A1、欧州特許第1118258号明細書B1または欧州特許第387148号明細書B1中に記載されている。
【0063】
可塑剤含有ポリビニルアセタールをベースとするフィルムの厚さは、0.15〜2.5mmである。
【0064】
こうして得られた積層体の貼合せのために、一時的なラミネートの先行する製造を行なうかまたは行わずに当業者に通常の方法が使用されてよい。
【0065】
このように記載されたオートクレーブプロセスは、約10〜15barの高めた圧力および130〜145℃の温度で、約2時間に亘り実施される。例えば、欧州特許第1235683号明細書B1に記載の真空バッグ法または真空リング法は、約200ミリバールおよび130〜145℃で作業される。
【0066】
特に、本発明による合わせガラスラミネートを製造するために、真空ラミネータが使用される。この真空ラミネータは、加熱可能かつ排気可能な室からなり、この室内で合わせガラスを30〜60分内で貼り合わせることができる。0.01〜300ミリバールの減圧および100〜200℃、特に130〜160℃の温度は、実地において有効であることが証明された。
【0067】
これとは別に、上記の1つにされた積層体は、少なくとも1つのロール対の間で60〜150℃の温度で圧縮され、本発明による合わせ安全ガラスに変えることができる。この種の装置は、太陽電池モジュールの製造のために公知であり、通常は、2つのプレス機構を有する装置において最初のプレス機構の前方または後方で少なくとも1つの加熱トンネルが使用される。
【0068】
本発明による合わせガラスラミネートは、ファッサード構造部材、屋根設備、冬期庭園用グランドカバー(Wintergartenabdeckung)、防音壁、バルコニーまたは手すり部材として、窓面の構成部材として、または車両用ガラスとして使用することができる。
【0069】
測定方法:
前記フィルムのガラス転移温度は、DIN 53765による動的示差走査熱量測定(DSC)により10K/分の昇温速度を使用して−50℃〜150℃の温度間隔で測定される。第1の加熱勾配、続いて冷却勾配、続いて第2の加熱勾配が起こる。ガラス転移温度の状態は、第2の加熱勾配に属する測定曲線についてDIN 51007により測定される。このDIN測定点(Tg DIN)は、測定曲線で半分の段階高さの水平線の切断点として定義される。この段階高さは、ガラス転移前および後での測定曲線のベースラインで中央接線の両方の切断点の垂直方向の距離により定義される。
【0070】
前記フィルムの流動挙動は、ISO 1133によるメルトフローインデックス(流体質量:MFR)として相応する装置、例えばGoettfert社の型式MI2で測定される。MFR値は、例えば100℃および140℃の相応する温度で2mmのノズルを用いて21.6kgの質量負荷の際に10分間当たりのグラム数(g/10分)で規定される。
【0071】
ポリビニルアセタールのポリビニルアルコール含有量およびポリビニルアルコールアセテート含有量は、ASTM D 1396−92により測定された。
【0072】
金属イオン含有量の分析は、原子吸光分析(AAS)によって行なった。
【0073】
ポリビニルアセタールの分子量Mw(=質量平均)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により氷酢酸中でRI検出器を使用して測定された。検出器の較正は、PVB較正標準により行なわれ、検出器の絶対値は、ランダムな光散乱により算出された。
【0074】
ポリビニルアセタールの溶液粘度は、DIN 53015により、20℃で、エタノール95部と水5部とから成る混合物中で測定された。粘度溶液の固体含量は、5質量%であった。
【0075】
ポリビニルアルコールの溶液粘度は、DIN 53015により、水中で20℃で測定された。粘度溶液の固体含量は、4質量%であった。
【0076】
このフィルムの含水量または湿分含量は、Karl−Fischer法を用いて質量%で測定される。湿潤条件下での湿分挙動をシミュレートするために、フィルムを先に23℃および85%の相対湿度rFで24時間貯蔵する。前記方法は、貼合されていないフィルムならびに貼合された合わせガラスについてフィルムの縁部への距離に依存して実施されうる。
【0077】
PVBフィルムからの可塑剤放出量は、実験により、例えばVSGの製造のために使用される真空ラミネータ中でのプロセス実施にならう条件下で算出される。このために、0.76mmの厚さのフィルム/サンプルから、60mmの直径を有する円形素材を切り出すかまたは製造し、65mmの直径を有する計量されたアルミニウムシャーレ(neoLab−アルミニウムシャーレ、平坦、65mm、商品番号2−1605、約2.5gの質量)中の底に平らに置く。この試料を、このシャーレ中で一晩中23℃/25%の相対湿度rFの気候中で状態調節し、引続き真空乾燥キャビネット(Heraeus社, 型式VTR 5022)中で150℃および1ミリバールで30分間放置する。再計量の前に、このシャーレを新たに23℃/25%の相対湿度rFで一晩中状態調節する。百分率で示す、フィルムの元来の試験サンプルに対する確認された質量減少率を、可塑剤放出量と定義する。
【0078】
クリープ傾向に対する試験
厚さ3mmおよび縁部寸法150×300mmのフロートガラスの2個の断片から、厚さ0.76mmでその間に貼合されたフィルムと共に、双方のガラスが長手方向に2cmのずれを互いに有するように製造される試験ラミネートにつき、フィルムのクリープ傾向を測定する(図1および2におけるA/B)。クリープ傾向について試験すべきフィルムを、ラミネートの製造前に23℃/23%の相対湿度rFの気候で一晩中状態調節する。
【0079】
2つの上方に立つガラス区間は、フィルムで被覆されておらず、すなわち貼合された中間層は、単に28cmの長さを有する。試験ラミネートをピンで2つの側から正確に向かい合うように横方向の線でマークし、この線につき後に横滑りによって生じるずれを簡単に測量することができる。(図1中のC)。試験ラミネートを加熱キャビネット中で100℃で垂直方向に、前方の、底面に接触していないガラス(図1および2中のB)が自重で自由に滑り落ちうるように載置されているかまたは固定されており、すなわち中間層フィルムによってのみ維持され、また、この接触だけを有し、したがってこの結果は、摩擦効果によって改ざんされない。試験ラミネートは、7日間(一週間)の経過後に、2つのマークの間の距離を定規で測量することにより、場合によるずれについて検査される。(図2中のCおよびC’)
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明による試験ラミネートの1つの実施形式を示す略図。
【図2】本発明による試験ラミネートの他の実施形式を示す略図。
【実施例】
【0081】

厚さ0.76mmのフィルムを次表に記載された組成の混合物を用いて製造し、ラミネートとして厚さ3mmの2枚のディスクPlaniluxの間でクリープ傾向に関連する合わせガラスラミネートを製造するための適性について試験した。
【0082】
本発明により使用されるフィルムは、良好に合わせガラスラミネートに加工することができ、低いクリープ値(=滑り落ち)によって100℃で僅かな流動能をこの温度で有し、したがって環境に対する影響および機械的影響に対して安定した合わせガラスラミネートが得られることが判明する。
【0083】
実施例B2、B9およびB17の種々の測定条件(100℃、21.6kg対150℃、5kg)におけるMFR値の比較は、本発明によるポリマーが米国特許第2009/250100号明細書中に記載されたポリビニルブチラールとは別の溶融流動特性、ひいては別のクリープ特性を有することを示す。
【0084】
記載された流動能を有するフィルムは、厚手(少なくとも3mm)の個別のガラス板を有する合わせガラスラミネートの製造に特に好適であり、それというのも、このフィルムは、接着フィルムと比較してガラス板の滑り落ちを全く示さないが、しかし、それでもなお良好に加工することができるからである。
【0085】
次の意味を有する:
DINCH 1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル、
3G8 トリエチレングリコール−ビス−2−エチルヘキサノエート、
PVB 所定のPVA含量を有するポリビニルブチラール。
【0086】
比較例1:
ポリビニルアルコール Mowiol 28−99(Kuraray Europe GmbHの市販品)100質量部を、90℃に加熱しながら、水1075質量部中に溶解した。40℃の温度で、n−ブチルアルデヒド56.8質量部を、そして12℃の温度で撹拌しながら6分以内に20%の塩酸75質量部を添加し、こうしてポリビニルブチラール(PVB)が沈殿した。その後、この混合物を撹拌しながらさらに15分間、12℃に保ち、その後80分以内に69℃に加熱し、そしてこの温度を120分間維持した。PVBを室温への冷却後に分離し、水で中和するまで洗浄し、乾燥させた。ポリビニルアルコール含量が20.2質量%であり、かつポリビニルアセテート含量が1.5質量%であるPVBが得られた。
【0087】
こうして得られたPVB290gおよび可塑剤3G8 100gおよび可塑剤DBEA 10gを実験室用混合機(製造業者:Brabender,型式826801)中で混合した。得られた混合物を、厚さ0.8mmの平面シートに押出成形した。この押出は、対向するスクリューを有し、溶融ポンプおよび幅広スリットノズルを備えた二軸押出機(製造業者:Haake、システムRhecord 90)上で行なった。押出機のシリンダー温度は220℃であり、ノズル温度は150℃であった。
【0088】
比較例2:
ポリマー合成において、n−ブチルアルデヒド63.9質量部を使用した。フィルム製造において、PVB370gおよび可塑剤DINCH130gを使用した。他の手順は、比較例1に従った。
【0089】
比較例3〜4:
ポリマー合成において、n−ブチルアルデヒド66.3質量部および68.4質量部を使用した。他の手順は、比較例2に従った。
【0090】
実施例1、2および3
ポリマー合成において、ポリビニルアルコール Mowiol 56−98(Kuraray Europe GmbHの市販品)100質量部、水1333質量部およびn−ブチルアルデヒド67.9質量部、68.4質量部および69質量部を使用した。他の手順は、比較例2に従った。
【0091】
実施例4および5:
ポリマー合成において、ポリビニルアルコール Kuraray Poval 624(Kuraray Co.Ltd.の市販品)100質量部、水1333質量部、20%の塩酸100質量部およびn−ブチルアルデヒド70質量部または73質量部を使用した。他の手順は、比較例2に従った。
【0092】
比較例5:
フィルムの製造において、比較例4からのPVB333gと実施例2からのPVB37gとの混合物を使用した。他の手順は、比較例2に従った。
【0093】
実施例6:
フィルムの製造において、比較例4からのPVB259gと実施例2からのPVB111gとの混合物を使用した。他の手順は、比較例2に従った。
【0094】
実施例7:
フィルムの製造において、比較例4からのPVB185gと実施例2からのPVB185gとの混合物を使用した。他の手順は、比較例2に従った。
【0095】
実施例8:
フィルムの製造において、比較例4からのPVB185gと実施例3からのPVB185gとの混合物を使用した。他の手順は、比較例2に従った。
【0096】
実施例9〜12:
ポリマー合成において、n−ブチルアルデヒド68.4質量部ならびに付加的にグルタルアルデヒド0.02質量部、0.04質量部、0.06質量部および0.08質量部を使用した。他の手順は、比較例2に従った。
【0097】
実施例13〜14:
ポリマー合成において、ポリビニルアルコール Mowiol 30−92(Kuraray Europe GmbHの市販品)100質量部、水1075質量部、n−ブチルアルデヒド67.1質量部、20%の塩酸100質量部およびグルタルアルデヒド0.04質量部または0.08質量部を使用した。他の手順は、比較例2に従った。
【0098】
実施例15:
ポリビニルアルコール Mowiol 28−99(Kuraray Europe GmbHの市販品)100質量部を、90℃に加熱しながら、水1075質量部中に溶解した。40℃の温度で、n−ブチルアルデヒド68.4質量部を、そして12℃の温度で撹拌しながら15分以内に20%の塩酸15質量部を添加し、こうしてポリビニルブチラール(PVB)が沈殿した。その後に、この混合物を攪拌しながら12℃で60分間維持した。その後に、40分以内にさらに20%の塩酸50質量部を添加した。その後、この混合物を撹拌しながらさらに15分間、12℃に維持し、その後80分以内に69℃に加熱し、そしてこの温度を120分間維持した。他の手順は、比較例2に従った。
【0099】
実施例16〜17:
酸の第1の部分量を添加した後の停止時間は、120分または180分であった。他の手順は、実施例15に従った。
【0100】
実施例18:
ポリビニルアルコール Mowiol 28−99(Kuraray Europe GmbHの市販品)100質量部を、90℃に加熱しながら、水1075質量部中に溶解した。40℃の温度でn−ブチルアルデヒド68.4質量部およびグルタルアルデヒド0.03質量部を添加した。12℃の温度で攪拌しながら6分以内に20%の塩酸75質量部を添加し、こうしてポリビニルブチラール(PVB)が沈殿した。その後、この混合物を撹拌しながらさらに120分間、12℃に維持し、その後80分以内に69℃に加熱し、そしてこの温度を120分間維持した。他の手順は、比較例2に従った。
【0101】
実施例19:
ポリビニルアルコール Mowiol 28−99(Kuraray Europe GmbHの市販品)100質量部を、90℃に加熱しながら、水1075質量部中に溶解した。40℃の温度でn−ブチルアルデヒド68.4質量部およびグルタルアルデヒド0.03質量部を添加した。12℃の温度で攪拌しながら15分以内に20%の塩酸15質量部を添加し、こうしてポリビニルブチラール(PVB)が沈殿した。その後に、この混合物を攪拌しながら12℃で120分間維持した。その後に、40分以内に20%の塩酸50質量部を添加した。その後、この混合物を撹拌しながらさらに15分間、12℃に維持し、その後80分以内に69℃に加熱し、そしてこの温度を120分間維持した。他の手順は、比較例2に従った。
【0102】
実施例20〜21:
ポリビニルアルコール Mowiol 30−92(Kuraray Europe GmbHの市販品)100質量部を、90℃に加熱しながら、水1075質量部中に溶解した。40℃の温度でn−ブチルアルデヒド67.1質量部およびグルタルアルデヒド0.06質量部を添加した。12℃の温度で攪拌しながら6分以内に20%の塩酸100質量部を添加し、こうしてポリビニルブチラール(PVB)が沈殿した。その後、この混合物を撹拌しながらさらに60分間または120分間、12℃に維持し、その後80分以内に69℃に加熱し、そしてこの温度を120分間維持した。他の手順は、比較例2に従った。
【0103】
【表1】

【0104】
【表2】

【0105】
【表3】

【0106】
【表4】

【0107】
【表5】

【符号の説明】
【0108】
A、B フィルムのクリープ傾向の測定位置、 C、C’ 場合によるずれの検査位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑剤含有ポリビニルアセタールからなる少なくとも1つの介在されたフィルムを有する少なくとも2つのガラス板からの1つの積層体からなる合わせガラスラミネートにおいて、このフィルムが、12〜16質量%のポリビニルアルコール割合を有するポリビニルアセタールを含有し、およびフロートガラス3mm/フィルム0.76mm/フロートガラス3mmの構造を有するラミネートで測定した、100℃の温度で7日後の5mm未満のクリープ傾向を有することを特徴とする、上記合わせガラスラミネート。
【請求項2】
ポリビニルアセタールが110000g/molを上廻る分子量Mwを有する、請求項1記載の合わせガラスラミネート。
【請求項3】
ポリビニルアセタールが80mPasを上廻る溶液粘度を有する、請求項1または2記載の合わせガラスラミネート。
【請求項4】
ポリビニルアセタールがカルボキシル基を介してポリアルデヒド、グルタルアルデヒドまたはグリオキシル酸によって架橋されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載の合わせガラスラミネート。
【請求項5】
ポリビニルアセタールが次の工程:
ポリビニルアルコールおよび少なくとも1つのアルデヒドの水溶液を予め装入する工程、
酸を低い温度で添加することによりポリビニルアセタールを沈殿させる工程(沈殿段階)、
この反応混合物を高めた温度に加熱する工程(加熱段階)
を有する方法によって製造され、この場合この沈殿段階は、60〜360分間継続される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の合わせガラスラミネート。
【請求項6】
ポリビニルアセタールが次の工程:
ポリビニルアルコールおよび酸の水溶液を予め装入する工程、
少なくとも1つのアルデヒドを低い温度で添加することによりポリビニルアセタールを沈殿させる工程(沈殿段階)、
この反応混合物を高めた温度に加熱する工程(加熱段階)
を有する方法によって製造され、この場合この沈殿段階は、60〜360分間継続される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の合わせガラスラミネート。
【請求項7】
可塑剤含有ポリビニルアセタールからのフィルムが340mg/10分以下の100℃/21.6kgでのISOによるメルトフローインデックス(MFR)を有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の合わせガラスラミネート。
【請求項8】
可塑剤含有の、ポリビニルアセタールをベースとするフィルムが18〜32質量%の可塑剤含量を有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の合わせガラスラミネート。
【請求項9】
可塑剤として、式100×O/(C+H)によって示された極性が9.4以下である1つ以上の化合物が使用され、この場合、O、CおよびHは、それぞれの分子中の酸素原子、炭素原子および水素原子の数を表わす、請求項1から8までのいずれか1項に記載の合わせガラスラミネート。
【請求項10】
可塑剤としてジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジ−2−ブトキシエチルアジペート、ジヘキシルアジペート、ジブチルセバケート、ジ−2−ブトキシエチルセバケート、トリエチレングリコール−ビス−2−エチルヘキサノエート、ジイソノニルアジペート、ジノニルアジペートおよび1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルの群からの1つ以上の化合物が使用されている、請求項1から9までのいずれか1項に記載の合わせガラスラミネート。
【請求項11】
可塑剤含有の、ポリビニルアセタールをベースとするフィルムがSiO20.001〜5質量%を含有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の合わせガラスラミネート。
【請求項12】
積層体のガラス板の少なくとも1つが少なくとも3mmの厚さを有する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の合わせガラスラミネート。
【請求項13】
ポリビニルアセタールとしてポリビニルブチラールが使用されている、請求項1から12までのいずれか1項に記載の合わせガラスラミネート。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−510788(P2013−510788A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538315(P2012−538315)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067160
【国際公開番号】WO2011/058026
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512192277)クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (5)
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Philipp−Reis−Strasse 4, D−65795 Hattersheim am Main, Germany
【Fターム(参考)】