説明

低い表面張力、低い液体粘度および高い固体含量を有するフルオロイオノマー分散体

本発明は、特に、フッ素化および極性溶媒による処理のうちの少なくとも1つを含む、特定の(パー)フルオロイオノマー液体組成物の製造方法、この方法による固体含量/表面張力/液体粘度の共存性が改善された液体組成物、複合膜の製造へのその使用およびそれにより得られる複合膜に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年6月12日に出願された欧州特許出願第09162625.9号の優先権を主張するものであり、この欧州特許出願の内容全体が、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、低い表面張力、低い液体粘度および高い固体含量を有するフルオロイオノマー分散体の製造方法、前記フルオロイオノマー分散体、複合膜の製造へのそれらの使用およびそれによる複合膜に関する。
【背景技術】
【0003】
(パー)フッ素化イオン交換ポリマーの液体組成物は、イオン交換膜の製造、および場合によりその修復への使用、伝導性および非伝導性粒子を含有する膜コーティングへの使用、ならびに多くの他の使用が知られている。このような組成物は、溶液と呼ばれることもあるが、一般に、ポリマー粒子の分散体(言い換えると、コロイド懸濁液)であると認識されている。
【0004】
液体組成物は、通常、適切な水性媒体または水性アルコール媒体中に、(パー)フッ素化イオン交換ポリマーを溶解/懸濁させることによって調製される。このような液体分散体を得るのに有用な方法は、(特許文献1)(DUPONT DE NEMOURS)21/02/1984、(特許文献2)(DU PONT)23/08/1972、(特許文献3)(AUSIMONT S.P.A.)31/05/2000および(特許文献4)(DUPONT DE NEMOURS)21/11/2000に特に教示されている。
【0005】
それにもかかわらず、前記液体組成物は、一般に、液体粘度、表面張力および固体含量の間の共存性が低い。実際に、多孔性担体の最適な含浸を得るためには:
−担体の孔に液体を浸透させる能力を最大限にし、その膜の厚さを抑えるように、液体粘度を低減し;
−低い表面張力の担体、通常ePTFEに対する湿潤性を高めるように、表面張力を低減し;
−溶媒蒸発後の多孔性担体構造に残っている、(パー)フルオロイオノマーの被覆/含浸量を最大限にするように、固体含量を増加させる
ことが重要であることが一般に理解される。
【0006】
分散体の上記の要件を全て同時に満たすことができないと、通常、最終的な含浸工程において、フルオロイオノマー分布が不均一な多孔性担体が得られる。
【0007】
通常、先行技術の液体組成物では、表面張力の低減が、極性有機溶媒(例えばアルコール)または界面活性剤の添加によって得られるものの:この添加は、通常、液体粘度の増加を同時に引き起こし、これは含浸プロセスに有害であるとともに、固形分が同時に増加するのを妨げ、この後者のパラメータは、液体粘度のさらなる増加の原因になる。
【0008】
また、特に燃料電池動作における特定の性能を向上させるための特定の処理を(パー)フルオロイオノマーに行うための複数の技術が知られている。
【0009】
したがって、(特許文献5)(DU PONT DE NEMOURS)27/11/2008および(特許文献6)(DU PONT DE NEMOURS)8/05/2008には、特定のフルオロイオノマー分散体の製造方法が開示されており、この方法は、(特許文献1)(DUPONT DE NEMOURS)21/02/1984に記載されるように、特に、フルオロイオノマーをフッ素化する工程と、前記フッ素化フルオロイオノマーを水/アルコール混合物に分散させる工程とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4433082号明細書
【特許文献2】英国特許第1286859号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1004615 A号明細書
【特許文献4】米国特許第6150426号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2008292935号明細書
【特許文献6】国際公開第2008/054420号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それにもかかわらず、そのように得られた分散体は、表面張力/液体粘度/固体含量の共存性の改善を提供できないため、多孔性担体の厚さを通してフルオロイオノマーの均一な含量を有する複合膜を製造するのに適していない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ここで、本出願人は、液体組成物の製造に特定の技術を採用することによって、上記の要件を満たし、したがって、多孔性担体の全厚を通しての(パー)フルオロイオノマーの均一な分布および担体の孔に含まれるフルオロイオノマーの高い含量を有する複合膜を製造するのに適した(パー)フルオロイオノマー分散体を得ることができることを見出した。
【0013】
また、本発明の(パー)フルオロイオノマー分散体は、単一工程の含浸プロセスによる複合膜の製造に適していることが分かっており、これにより、好適な生産性の高い連続プロセスによってこれらの膜を製造することが可能になる。
【0014】
したがって、組成物の総重量に対して少なくとも9重量%の(パー)フルオロイオノマー含量を有する(パー)フルオロイオノマー液体組成物の製造方法が、本発明の第1の目的であり、前記方法は:
−(パー)フルオロイオノマー(I)を提供する工程と;
−前記(パー)フルオロイオノマー(I)に、以下:
(A)フッ素元素によるフッ素化;
(B)極性有機溶媒[溶媒(S)]による処理;
のうちの少なくとも1つを行い、
精製された(パー)フルオロイオノマー(I)を回収するために、前記(パー)フルオロイオノマー(I)を分離させる工程と;
−水性組成物を得るために、少なくとも150℃の温度で、有機溶媒を実質的に含まない水性媒体中に前記(パー)フルオロイオノマー(I)を分散させる工程と;
−前記組成物に、少なくとも1種の極性有機溶媒[溶媒(S’)]を添加する工程と
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のプロセスの特定の実施態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の趣旨での「(パー)フルオロイオノマー(I)」という用語は:
−少なくとも1つのフッ素原子を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー(以後、フッ素化モノマー)から誘導される繰返し単位;および
−少なくとも1つの陽イオン交換基またはその前駆体を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー(以後、官能性モノマー)から誘導される実質的な量の繰返し単位
を含む任意のポリマーを表すことが意図される。
【0017】
「少なくとも1つのフッ素原子を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー[フッ素化モノマー]」という用語は、フルオロイオノマーが、1つまたは2つ以上のフッ素化モノマーから誘導される繰返し単位を含み得ることを意味することが理解される。
本明細書の残りの部分において、「フッ素化モノマー」という表現は、本発明の趣旨では、複数および単数で理解される。
【0018】
フッ素化モノマーは、1つ以上のハロゲン原子(Cl、Br、I)をさらに含み得る。フッ素化モノマーが水素原子を含まない場合、それはパー(ハロ)フルオロモノマーと表される。フッ素化モノマーが少なくとも1つの水素原子を含む場合、それは水素含有フッ素化モノマーと表される。
【0019】
フッ素化モノマーの非限定的な例は、特に、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VdF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、およびそれらの混合物である。
【0020】
任意選択的に、(パー)フルオロイオノマー(I)は、上記のフッ素化モノマーである1つの第1のモノマー、および少なくとも1つの他のモノマー[以後、コモノマー(CM)]から誘導される繰返し単位を含んでいてもよい。
【0021】
以後、コモノマー(CM)という用語は、1つのコモノマーおよび2つ以上のコモノマーの両方を含むことが意図されるべきである。
【0022】
コモノマー(CM)は、特に、水素化コモノマー(すなわち、フッ素原子を含まない)[以後、コモノマー(HCM)]またはフッ素化コモノマー(すなわち、少なくとも1つのフッ素原子を含有する)[以後、コモノマー(FCM)]のいずれかであり得る。
【0023】
好適な水素化コモノマー(HCM)の非限定的な例は、特に、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどのビニルモノマー、メチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸およびヒドロキシエチルアクリレートのようなアクリルモノマー、ならびにスチレンおよびp−メチルスチレンのようなスチレンモノマーである。
【0024】
好適なフッ素化コモノマー(FCM)の非限定的な例は、特に以下のものである:
−ヘキサフルオロプロペン、ペンタフルオロプロピレン、およびヘキサフルオロイソブチレンなどのC〜Cフルオロ−および/またはパーフルオロオレフィン;
−フッ化ビニルなどのC〜C水素化モノフルオロオレフィン;
−1,2−ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデンおよびトリフルオロエチレン;
−式CH=CH−Rf0(式中、Rf0がC〜Cパーフルオロアルキルである)で表されるパーフルオロアルキルエチレン;
−クロロトリフルオロエチレンのような、クロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−C〜Cフルオロオレフィン;
−式CF=CFORf1(式中、Rf1がC〜Cフルオロ−またはパーフルオロアルキル、例えば−CF、−C、−Cである)で表されるフルオロアルキルビニルエーテル;
−式CF=CFOX(式中、Xが、パーフルオロ−2−プロポキシ−プロピルのような、1つ以上のエーテル基を有するC〜C12オキシアルキル、またはC〜C12(パー)フルオロオキシアルキルである)で表されるフルオロ−オキシアルキルビニルエーテル;
−式CF=CFOCFORf2(式中、Rf2が、C〜Cフルオロ−またはパーフルオロアルキル、例えば−CF、−C、−Cまたは−C−O−CFのような、1つ以上のエーテル基を有するC〜C(パー)フルオロオキシアルキルである)で表されるフルオロアルキル−メトキシ−ビニルエーテル;
−式のフルオロジオキソール:
【化1】

(式中、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6の各々が互いに等しいかまたは異なっており、独立して、フッ素原子、任意選択的に1つ以上の酸素原子を含むC〜Cフルオロ−またはパー(ハロ)フルオロアルキル、例えば−CF、−C、−C、−OCF、−OCFCFOCFである)。
【0025】
本明細書における上記の定義における「実質的な量」という用語は、ポリマーの特性を変性するのに有効な官能性モノマーから誘導される繰返し単位の量を表すことが意図される。一般に、実質的な量は、繰返し単位の総モル数を基準にして少なくとも1モル%の量である。
【0026】
本明細書において使用される際の「陽イオン交換基」という用語は、有機化学において意図される一般的な意味を有し、エチレン性不飽和モノマーの炭素骨格に結合される原子または原子の組合せを含み、陽イオン交換基は、前記エチレン性不飽和モノマーに、イオン交換と呼ばれるプロセスにおいて陽イオンを捕捉および放出(すなわち交換)する能力を与える。一般に、陽イオン交換基は、負の電荷を帯びた部分である。前記陽イオン交換基の前駆体は、本発明の枠の範囲内で、加水分解の際に、前記陽イオン交換基を提供する基である。
【0027】
陽イオン交換基およびその前駆体の非限定的な例は、特に、以下の式で表されるものである:
− −SOX(式中、Xが、ハロゲン(Cl、F、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択される);
− −COY(式中、Yが、ハロゲン(Cl、F、Br、I);−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである);−ORHy(ここで、RHyがC〜C炭化水素基である);−ORHf(ここで、RHfが、C〜Cフッ化炭素またはパー(ハロ)フッ化炭素基である);−N(RHy*(ここで、RHyが、出現するごとに等しいかまたは異なっており、水素またはC〜C炭化水素基である)、またはそれらの混合物の中から選択される);
− −POZ(式中、Zが、ハロゲン(Cl、F、Br、I);−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである);−ORHy(ここで、RHyがC〜C炭化水素基である)、および−ORHf’(ここで、RHf’が、C〜Cフッ化炭素またはパー(ハロ)フッ化炭素基である)、またはそれらの混合物の中から選択される)。
【0028】
官能性モノマーが、[官能基に任意選択的に含まれるフッ素原子に加えて]官能基に含まれない少なくとも1つのフッ素原子を含む場合、それはフッ素化官能性モノマーと表される。官能性モノマーが、官能基に任意選択的に含まれるもの以外のフッ素原子を含まない場合、それは水素化官能性モノマーと表される。
【0029】
フッ素化モノマーおよびフッ素化官能性モノマーは、同じモノマーであっても、または異なるモノマーであってもよく、すなわち、(パー)フルオロイオノマー(I)は、フッ素化官能性モノマーのホモポリマーであり得、あるいは1つまたは2つ以上のフッ素化モノマーおよび1つまたは2つ以上のフッ素化または水素化官能性モノマーのコポリマーであり得る。
【0030】
好ましくは、(パー)フルオロイオノマー(I)は、以下のもの:
(M1)式(M1)のスルホン化パーフルオロオレフィン:
【化2】

(式中、nが、0〜6の整数であり、X’が、ハロゲン(Cl、F、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択され、好ましくはX’=−Oであり;好ましくはスルホン化パーフルオロオレフィンが、式(M1−A)および(M1−B):
【化3】

で表されるものであり、式中、X’が、上で定義したのと同じ意味を有する);
(M2)式(M2)のスルホン化パーフルオロビニルエーテル:
【化4】

(式中、mが、1〜10の整数であり、X’が、ハロゲン(Cl、F、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択され、好ましくはX’=−Oであり;好ましくは、式(M2−A)、(M2−B)および(M2−C)のスルホン化パーフルオロビニルエーテル:
【化5】

であり、式中、X’が、上で定義したのと同じ意味を有し;最も好ましくは、スルホン化パーフルオロビニルエーテルは、式(M2−D)のパーフルオロ−5−スルホニルフルオリド−3−オキサ−1−ペンテン(「SFVE」としても知られている):
【化6】

であり、これは、その−SOF形態または、好ましくは、上で詳述した−SOX’形態のいずれか、より好ましくはその−SOH形態であり得る)
(M3)式(M3)のスルホン化パーフルオロアルコキシビニルエーテル:
【化7】

(式中、wが、0〜2の整数であり、RFおよびRFが、互いにおよび出現するごとに等しいかまたは異なっており、独立して、−F、−Cl、または任意選択的に1つ以上のエーテル酸素で置換されたC1〜10パーフルオロアルキル基であり、yが、0〜6の整数であり、X’が、ハロゲン(Cl、F、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択され;好ましくはX’が−Oであり;好ましいスルホン化パーフルオロアルコキシビニルエーテルが、本明細書における上記の式(M3)で表され、ここで、wが1であり、RFが−CFであり、yが1であり、RFが−Fであり、X’がF[式(M3−A)、「PSEPVE」(パーフルオロ−2−(2−フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル)とも呼ばれる]:
【化8】

であり、これは、その−SOF形態または、好ましくは、上で詳述した−SOX’形態のいずれか、より好ましくはその−SOH形態であり得る)
(M4)式(M4)のパーフルオロアルコキシビニルエーテルカルボキシレート:
【化9】

(式中、w、y、RFおよびRFが、上で定義したのと同じ意味を有し、RH§が、C1〜10アルキルまたはフルオロアルキル基であり;好ましいパーフルオロアルコキシビニルエーテルカルボキシレートが、本明細書における上記の式(M4)で表され、ここで、wが0であり、yが2であり、RH§がメチルであり、RFが−F[式(M4−A)]:
【化10】

である)
(M5)式(M5)のスルホン化芳香族(パー)フルオロオレフィン:
【化11】

(式中、Arが、C3〜15芳香族または複素環式芳香族部分であり、X’が、ハロゲン(Cl、F、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択され、好ましくはX’=−Oである);
および
(M6)それらの混合物
の中から選択される少なくとも1つのフッ素化官能性モノマーから誘導される繰返し単位を含む。
【0031】
任意選択的に、フッ素化モノマーおよび官能性モノマーから誘導される繰返し単位に加えて、(パー)フルオロイオノマー(I)は、以下の式:
(OF−1)
【化12】

(式中、jが、2〜10の整数、好ましくは4〜8の整数であり、R1、R2、R3、R4が、互いに等しいかまたは異なっており、H、FまたはC1〜5アルキルまたは(パー)フルオロアルキル基である);
(OF−2)
【化13】

(式中、Aの各々が、互いにおよび出現するごとに等しいかまたは異なっており、独立して、F、Cl、およびHから選択され;Bの各々が、互いにおよび出現するごとに等しいかまたは異なっており、独立して、F、Cl、HおよびORから選択され、ここで、Rが、部分的に、実質的にまたは完全にフッ素化または塩素化され得る分枝状または直鎖状アルキル基であり;Eが、任意選択的にフッ素化され、エーテル結合が挿入されていてもよい、2〜10個の炭素原子を有する二価基であり;好ましくは、Eが−(CF−基であり、mが、3〜5の整数であり;(OF−2)タイプの好ましいビス−オレフィンが、FC=CF−O−(CF−O−CF=CFである)
(OF−3)
【化14】

(式中、E、AおよびBが、上で定義したのと同じ意味を有し;R5、R6、R7が、互いに等しいかまたは異なっており、H、FまたはC1〜5アルキルまたは(パー)フルオロアルキル基である)
で表されるものの中から選択される少なくとも1つのビス−オレフィンから誘導される繰返し単位をさらに含むことができる。
【0032】
(パー)フルオロイオノマー(I)が、上で定義したビス−オレフィンから誘導される繰返し単位を含む場合、フルオロイオノマーの全ての繰返し単位に対して0.01〜5モル%の範囲の量で前記繰返し単位を含むのが有利である。
【0033】
好ましくは、(パー)フルオロイオノマー(I)は、上で規定されたビス−オレフィンから誘導される繰返し単位を含まない。
【0034】
(パー)フルオロイオノマー(I)は、好ましくはパー(ハロ)フルオロイオノマーである。
【0035】
本発明の趣旨での「パー(ハロ)フルオロイオノマー」という用語は、水素原子を実質的に含まないフルオロイオノマーを表すことが意図される。
【0036】
「水素原子を実質的に含まない」という用語は、パー(ハロ)フルオロイオノマーが:
−少なくとも1つのフッ素原子を含み、水素原子を含まない1つまたは2つ以上のエチレン性不飽和モノマー(以後、パー(ハロ)フルオロモノマー)から誘導される繰返し単位;および
−少なくとも1つのフッ素原子および少なくとも1つのイオン交換基を含み、水素原子(任意選択的にイオン交換基に含まれるものを除く)を含まない1つまたは2つ以上のエチレン性不飽和モノマー(以後、官能性パー(ハロ)フルオロモノマー)から誘導される繰返し単位
から本質的になることを意味することが理解される。
【0037】
パー(ハロ)フルオロモノマーおよび官能性パー(ハロ)フルオロモノマーは、同じモノマーであっても、または異なるモノマーであってもよく、すなわち、パー(ハロ)フルオロイオノマーは、官能性パー(ハロ)フルオロモノマーのホモポリマーであり得、あるいは1つまたは2つ以上のパー(ハロ)フルオロモノマーおよび1つまたは2つ以上の官能性パー(ハロ)フルオロモノマーのコポリマーであり得る。
【0038】
好ましいフルオロイオノマー(I)は:
−C〜Cパーフルオロオレフィン、好ましくはテトラフルオロエチレン(TFE)および/またはヘキサフルオロプロピレン(HFP);
−クロロトリフルオロエチレン(CTFE)および/またはブロモトリフルオロエチレンのような、クロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−C〜Cパー(ハロ)フルオロオレフィン;
−式CF=CFORf1(式中、Rf1が、C〜Cパーフルオロアルキル、例えば−CF、−C、−Cである)で表されるパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE);
−式CF=CFOX(式中、Xが、パーフルオロ−2−プロポキシ−プロピルのような、1つ以上のエーテル基を有するC〜C12パーフルオロオキシアルキルである)で表されるパーフルオロ−オキシアルキルビニルエーテル
の中から選択される少なくとも1つの官能性パー(ハロ)フルオロモノマーおよび少なくとも1つのパー(ハロ)フルオロモノマーから誘導される繰返し単位を含む(この繰返し単位から本質的になるのが好ましい)パー(ハロ)フルオロイオノマーの中から選択される。
【0039】
より好ましい(パー)フルオロイオノマー(I)は、上で定義した少なくとも1つの官能性パー(ハロ)フルオロモノマーから誘導される繰返し単位を含む(この繰返し単位から本質的になるのが好ましい)テトラフルオロエチレン(TFE)コポリマーの中から選択される。
【0040】
好ましい官能性パー(ハロ)フルオロモノマーは、特に、上で詳述した式(M2)のスルホン化パーフルオロビニルエーテルおよび上で詳述した式(M3)のスルホン化パーフルオロアルコキシビニルエーテル、およびそれらの混合物である。
【0041】
さらにより好ましい(パー)フルオロイオノマー(I)は、−SOFまたは−SOX”形態(ここで、X”が、ハロゲン(Cl、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択される)における、PSEPVE(本明細書における上記の式M3−A)および/またはSFVE(本明細書における上記の式M2−D)から誘導される繰返し単位を含む(この繰返し単位から本質的になるのが好ましい)TFEコポリマーの中から選択される。
【0042】
さらに一層好ましい(パー)フルオロイオノマー(I)は:
− −SOFまたは−SOX”形態(ここで、X”が、ハロゲン(Cl、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択される)における、PSEPVEおよび/またはSFVEから誘導される5〜30モル%の繰返し単位;および
− TFEから誘導される95〜70モル%の繰返し単位
を含む(これらの繰返し単位から本質的になるのが好ましい)TFEコポリマーの中から選択される。
【0043】
本発明の好ましい実施形態によれば、(パー)フルオロイオノマー(I)は、上記のTFEコポリマーの中から選択され、ここで、官能性モノマーが、その−SOFまたは−SOX”形態におけるSFVEであり、ここで、X”が、ハロゲン(Cl、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択される。
【0044】
本発明の方法は、前記(パー)フルオロイオノマー(I)に、以下:
(A)フッ素元素によるフッ素化;
(B)極性有機溶媒[溶媒(S)]による処理;
のうちの少なくとも1つを行い、
精製された(パー)フルオロイオノマー(I)を通常は乾燥形態で回収するために、前記(パー)フルオロイオノマー(I)を分離させる工程
を含む。
【0045】
前記(パー)フルオロイオノマー(I)のフッ素化は、当該技術分野で公知の標準的な技術にしたがって行われ得る。好適な技術の中でも、欧州特許出願公開第1635412 A号明細書(旭硝子株式会社)15/03/2006、欧州特許出願公開第1666508 A号明細書(旭化成ケミカルズ株式会社)7/06/2006、米国特許第7214740号明細書(3M INNOVATIVE PROPERTIES CO)9/11/2006、欧州特許出願公開第1256591 A号明細書(AUSIMONT SPA)に記載されるものが挙げられる。
【0046】
好ましくは、フッ素化(A)は、少なくとも50℃の温度で、上で詳述した(パー)フルオロイオノマー(I)をフッ素と接触させることによって行われる。
【0047】
一般に、(パー)フルオロイオノマー(I)は、1〜1000μm、好ましくは5〜800μm、より好ましくは10〜500μmの平均粒径を有する粉末の形態で前記フッ素化(A)に用いられる。前記粉末は、一般に、マイクロエマルジョンを含むエマルジョンなどの水性重合、分散重合などからの(パー)フルオロイオノマー(I)の重合されたままのラテックスの凝集から得られる。
【0048】
通常、前記(パー)フルオロイオノマー(I)は、反応容器中で、フッ素を含む気体流に曝される。フッ素から本質的になる気体流を使用することができるが、フッ素と、特に、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの好適な不活性ガスとの混合物を使用するのが一般に好ましく、混合物F/Nが、通常好ましい。
【0049】
通常、圧力が、0.1〜5バール、好ましくは0.5〜2.5バール、より好ましくは1〜1.5バールに保たれる。
【0050】
一般に、精製された(パー)フルオロイオノマー(I)は、未反応のフッ素を放出し、任意選択的に、不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム、好ましくは窒素)の流れでパージすることによって、フッ素化(A)から回収される。
【0051】
任意選択的に、上で詳述したフッ素化(A)からの精製された(パー)フルオロイオノマー(I)は、フッ素化の際に場合により形成されるHFまたは他の水溶性フッ化物を取り除くために、水でさらにすすぐことができる。乾燥形態で(パー)フルオロイオノマー(I)を得るために、標準的な乾燥技術を適用することができる。
【0052】
(パー)フルオロイオノマー(I)が、式−SOX(式中、Xが、ハロゲン(Cl、F、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択される)の陽イオン交換基を有する場合、前記(パー)フルオロイオノマー(I)は、その−SOF形態において、工程(A)のフッ素化を行うのが好ましい。
【0053】
上で詳述した極性有機溶媒[溶媒(S)]による処理(B)にしたがって、(パー)フルオロイオノマー(I)は、1〜1000μm、好ましくは5〜800μm、より好ましくは10〜500μmの平均粒径を有する粉末の形態で、前記溶媒(S)と接触されるのが有利である。
【0054】
前記粉末は、マイクロエマルジョンを含むエマルジョンなどの水性重合、分散重合などからの(パー)フルオロイオノマー(I)の重合されたままのラテックスの凝集から一般に得られる。
【0055】
「極性有機溶媒[溶媒(S)]」という表現は、少なくとも15の誘電率を有する有機溶媒を表すことが意図される。溶媒(S)は、プロトン性または非プロトン性であり得、すなわち、酸性水素を含んでいてもまたは含んでいなくてもよい。
【0056】
本発明の工程(B)に好適な極性非プロトン性有機溶媒の中でも、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン、酢酸メチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、酢酸エチルのようなエステル、アセトニトリルのようなニトリル、ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドのようなアミドが特に挙げられる。
【0057】
本発明の工程(B)に好適な極性プロトン性有機溶媒の中でも、プロパノール、エタノール、メタノールなどのアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのポリオール;ギ酸のようなカルボン酸;ホルムアミドなどのアミドが特に挙げられる。
【0058】
水と完全に混和性である溶媒(S)が一般に好ましい。
【0059】
(パー)フルオロイオノマー(I)を、2種以上の溶媒(S)の混合物または水と溶媒(S)との混合物と接触させる工程(B)を行うことができることも理解される。
【0060】
通常、(パー)フルオロイオノマー(I)は、撹拌下で溶媒(S)と接触される。
【0061】
溶媒(S)を液体状態に保つことができる限り、温度は特に限定されない。通常、処理(B)は、室温を含む、0〜150℃の温度で行われる。
【0062】
(パー)フルオロイオノマー(I)が、式−SOX(式中、Xが、ハロゲン(Cl、F、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択される)の陽イオン交換基を有する場合、前記(パー)フルオロイオノマー(I)は、その−SOF形態において、工程(B)の処理を行うのが好ましい。
【0063】
このような好ましい実施形態によれば、溶媒(S)が水と組み合わせて用いられるとき、3未満のpHを設定するために酸が通常添加される。これらの条件下で、上で詳述した基−SOFは、加水分解に対して安定であるのが有利である。
【0064】
精製された(パー)フルオロイオノマー(I)の、溶媒(S)からの分離は、ろ過、遠心分離、沈殿などを含む標準的な技術を用いて行われる。
【0065】
また、工程(B)後に前記精製された(パー)フルオロイオノマー(I)を水とさらに接触させるのが一般に好ましく;水による洗浄により、通常、溶媒(S)の残渣から(パー)フルオロイオノマー(I)を精製することが有利に可能になる。乾燥形態で(パー)フルオロイオノマー(I)を得るために、標準的な乾燥技術を適用することができる。
【0066】
本発明の方法にしたがって、(パー)フルオロイオノマー(I)に、上で詳述した処理(A)および(B)のうちの少なくとも1つを行う。また、(パー)フルオロイオノマー(I)は、フッ素化(A)または溶媒(S)(B)との接触のいずれかによって処理され得るが、(パー)フルオロイオノマー(I)に本発明に係る両方の処理を行うことができることも理解される。
【0067】
それにもかかわらず、本発明の方法が、場合により溶媒(S)処理(B)と組み合わせて、(パー)フルオロイオノマー(I)のフッ素化(A)を含む場合、本方法による液体組成物の達成される粘度についてより良好な結果が得られることが一般に理解される。この後者の実施形態において、(パー)フルオロポリマー(I)に、まず、上で詳述した溶媒(S)処理(B)を行い、次に、そのように得られた(パー)フルオロイオノマー(I)にフッ素化(A)を行うのが一般に好ましい。
【0068】
本発明の方法は、水性組成物を得るために、処理(A)および/または(B)からの前記精製された(パー)フルオロイオノマー(I)を、少なくとも150℃の温度で、有機溶媒を実質的に含まない水性媒体に分散させる工程をさらに含む。
【0069】
前記分散/溶解は、少なくとも150℃、好ましくは少なくとも200℃、より好ましくは少なくとも230℃の温度で行われる。この分散体/溶解は、一般に、オートクレーブ中で、撹拌下で行われる。
【0070】
そのように得られた水性組成物は、一般に、溶解された形態または分散された形態の(パー)フルオロイオノマー(I)を含む。「溶解された形態」という用語は、(パー)フルオロイオノマー(I)の「真」溶液を表すことが意図される。「分散された形態」という用語は、本明細書において、一般に500nm未満の平均粒径を有するフルオロイオノマーの粒子が、平静な状態に置かれたときに沈殿現象を起こさずに安定に懸濁される(パー)フルオロイオノマーのコロイド懸濁液を表すことが意図される。
【0071】
分散された形態の場合、(パー)フルオロイオノマー(I)は、1〜500nm、好ましくは1〜250nm、さらにより好ましくは1〜100nmの平均粒径を有するのが有利である。
【0072】
「有機溶媒を実質的に含まない」という表現は、(水性媒体の総重量に対して)1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、最も好ましくは0.01重量%以下の有機溶媒を含む水性媒体を表すことが意図される。
【0073】
上で詳述した処理(A)および/または(B)の後、塩形成形態(salified form)の(パー)フルオロイオノマーを提供するために、予備加水分解工程が行われるのが一般に好ましい。誤解を避けるために、本発明の文脈における「塩形成形態」という表現は、Hと異なる陽イオンが、(パー)フルオロイオノマー(I)の陽イオン交換基に結合されることを意味することが意図される。(パー)フルオロイオノマー(I)が、式−SOX(式中、Xが、ハロゲン(Cl、F、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択される)の陽イオン交換基を含む場合、本明細書において、塩形成形態のこれらの陽イオン交換基は、式−SO(ここで、Mが、NH、K、Li、Na、またはそれらの混合物の中から選択される陽イオンである)で表されるのが好ましい。
【0074】
本発明の方法は、前記水性組成物に、少なくとも1種の極性有機溶媒[溶媒(S’)]を添加する工程をさらに含む。
【0075】
「極性有機溶媒[溶媒(S’)]」という表現は、少なくとも15の誘電率を有する有機溶媒を表すことが意図される。溶媒(S)および溶媒(S’)は、同じ溶媒であり得、または異なる溶媒であり得る。
【0076】
溶媒(S’)の中でも、プロトン性溶媒が好ましい。ヒドロキシル基含有溶媒(S’)が用いられるのがより好ましい。
【0077】
より好ましい溶媒(S’)の中でも、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、およびそれらの混合物が挙げられ、最も好ましい溶媒(S’)は、1−プロパノール、2−プロパノール、およびそれらの混合物である。
【0078】
非常に有効な溶媒(S’)は、1−プロパノールと2−プロパノールとの混合物である。
【0079】
液体媒体中の溶媒(S’)の量は、特に限定されない。一般に、90/10〜10/90、より好ましくは80/20〜40/60、より好ましくは75/25〜50/50の範囲の水/溶媒(S’)重量比が用いられる。
【0080】
通常、本発明の方法は、組成物の総重量に対して少なくとも9重量%の最終的な(パー)フルオロイオノマー(I)含量を達成するために、液体組成物を濃縮する(upconcentrating)工程をさらに含む。
【0081】
本方法が濃縮工程を含む場合、これは、一般に、蒸発、逆浸透などを含む標準的な技術によって行われる。この濃縮工程は、一般に、溶媒(S’)の添加の前または後のいずれかに行われる。
【0082】
それにもかかわらず、溶媒(S’)を添加する前に液体組成物を濃縮するのが一般に好ましい。この好ましい実施形態によれば、濃縮工程は、水を蒸発させることを含む。少なくとも30℃、好ましくは少なくとも40℃、より好ましくは50℃の温度で蒸発させることによって水を除去することができる。蒸発は、場合により減圧下で行われ得る。代案として、乾燥不活性ガス、通常、空気または窒素の流れを用いて、水を蒸発させることができる。
【0083】
任意選択的に、本発明の方法は、液体組成物に、1つ以上のさらなる成分を添加する工程をさらに含むことができる。
【0084】
本発明の方法において製造される液体組成物に導入され得る成分の中でも、TRITON(登録商標)界面活性剤、TERGITOL(登録商標)界面活性剤のような非イオン性界面活性剤;トリエチレンホスフェート(TEP)、N−メチル−ピロリドン、炭酸エチレン(EC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)のような高沸点有機添加剤が挙げられる。
【0085】
さらに、本発明の目的は、25℃で測定される際に15〜30mN/mの表面張力を有する水性液体組成物であり、前記組成物は:
−液体組成物の総重量に対して少なくとも9重量%の量における、上記の少なくとも1つの(パー)フルオロイオノマー(I);
−上記の少なくとも1種の極性有機溶媒[溶媒(S’)];および
−水
を含み、
ここで、前記分散体は、100秒−1のせん断速度で25℃で測定される際に:
−(パー)フルオロイオノマー(I)の濃度が、液体組成物の総重量に対して15重量%以下であるとき、100センチポアズ未満;
−(パー)フルオロイオノマー(I)の濃度が、液体組成物の総重量に対して15重量%より高く30重量%以下であるとき、150センチポアズ未満;
−(パー)フルオロイオノマー(I)の濃度が、液体組成物の総重量に対して30重量%より高いとき、200センチポアズ未満
の液体粘度を有する。
【0086】
本出願人は、低い表面張力、高い固体含量および低い液体粘度の特定の組合せが、これらの液体組成物を、不活性多孔性担体に含浸し、単一工程の含浸において、複合膜の全厚を通しての含浸された(パー)フルオロイオノマー(I)の非常に均一な分布および担体の孔における高い(パー)フルオロイオノマー含量を有する、均一な複合物を得るのに特に適したものにすることを見出した。
【0087】
本発明の水性液体組成物は、上記の方法によって製造されるのが有利である。
【0088】
本発明の液体組成物の表面張力は、ASTM D 1331 −89規格、方法Aに準拠して測定される。
【0089】
本発明の水性液体組成物は、25℃で測定される際に、好ましくは18〜28mN/m、好ましくは22〜27.5mN/m、より好ましくは23〜26mN/mの表面張力を有する。
【0090】
本発明の水性液体組成物の粘度は、通常、動的機械式レオメータ(例えばRheometric RFS III)を用いて、25℃の温度で一定速度のスイープモードで「クエット(couette)」形状(すなわち同心円状に組み立てられた円筒形)を用いて測定される。本明細書において言及される液体粘度の値は、100秒−1のせん断速度で測定される値である。
【0091】
本発明のさらに別の目的は、前記水性液体組成物を用いて、複合膜を製造するための方法である。
【0092】
特に、本発明の方法は、上で詳述した水性液体組成物を、多孔性担体を含浸するのに使用することを含む。
【0093】
本発明の方法に有用な本発明の水性液体組成物は、通常、フィルム形成特性を有するさらなる熱可塑性フルオロポリマーをさらに含み得る。水性液体組成物において(パー)フルオロイオノマー(I)と組み合わせて用いられ得る熱可塑性フルオロポリマーの中でも、PFA、ETFE、PCTFE、PDVF、ECTFEなどが挙げられる。
【0094】
多孔性担体の選択は、特に限定されない。最終的な複合膜動作条件下で一般に不活性である多孔性担体が選択されることになる。
【0095】
複合膜に好適な機械的特性を与えることができる多孔性不活性材料の中でも、織物または不織物ポリオレフィン膜、特にポリエチレン膜、および(パー)フルオロポリマー多孔性担体が挙げられる。(パー)フルオロポリマーの多孔性担体は、化学的慣性が高いため、一般に好ましい。二軸延伸されたPTFE多孔性担体(またはePTFE膜として知られている)が好ましい担体の1つである。これらの担体は、特に、GORE−TEX(登録商標)、TETRATEX(登録商標)の商品名で市販されている。
【0096】
本発明の方法は、多孔性担体が上で詳述した液体組成物と接触される1つまたは2つ以上の含浸工程を含み得る。
【0097】
本発明の方法は、通常、少なくとも1つの乾燥工程および/または少なくとも1つのアニーリング工程を含む。
【0098】
乾燥工程は、通常、含浸された担体から過剰な水性液体媒体を除去することが意図される。この工程は、一般に、通常20〜100℃、好ましくは25〜90℃、より好ましくは30〜80℃の温度で行われる。空気または不活性ガス(例えば窒素)流れが、一般に、この工程の際に含浸された担体と接触される。
【0099】
本方法が複数の含浸工程を含む場合、それらの各々の後に乾燥工程を行ってから、さらなる含浸工程のために、上で詳述した水性液体組成物と多孔性担体を再度接触させることが一般に理解される。
【0100】
通常、含浸された多孔性担体を固めて(consolidating)、それによって最終的な複合膜を得るために考えられるアニーリング工程は、一般に、少なくとも120℃、好ましくは少なくとも150℃、より好ましくは少なくとも180℃の温度で行われる。多孔性担体および(パー)フルオロイオノマー(I)がこれらの条件下で安定した状態に保たれる限り、最高温度は特に限定されない。したがって、アニーリングは、270℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは220以下の温度で行われることが一般に理解される。本発明の方法は、通常、(全ての)一連の含浸/乾燥が完了してから一般に行われる単一のアニーリング工程を含む。
【0101】
本出願人は、本発明の液体組成物を用いることによって、簡単な単一工程の含浸手順を用いて、得られる膜の全厚を通しての(パー)フルオロイオノマー(I)の均一な分布を有する複合膜を得ることが有利にも可能であることを意外にも見出した。
【0102】
したがって、本発明の好ましい実施形態によれば、前記複合膜の製造方法は、単一の含浸工程を含むのが有利である。
【0103】
前記含浸工程は、上で詳述した水性液体組成物を含む含浸容器中に多孔性担体を浸漬することによって行うことができ、あるいは多孔性担体の各側に同時にまたは後続のコーティング工程において、鋳造、コーティング、噴霧、ブラシ塗布などの周知のコーティング技術によって、好適な量の水性液体組成物を塗布することによって行うことができる。それにもかかわらず、水性液体組成物を含む容器中に浸漬することによる含浸が、最良の結果を提供する技術であることが一般に理解される。
【0104】
本発明のこの好ましい実施形態に係る方法は連続プロセスであるのが有利である。この連続プロセスにより、複合膜ロールの製造が可能になるのが有利である。また、好ましくは、このプロセスは、上で定義した蒸発およびアニーリング工程を担体に行う前に、含浸された担体をキャリアフィルム上に組み立てる工程を含むのが有利である。
【0105】
キャリアフィルムは、一般に、最終的な複合膜においてより優れた寸法安定性が得られるように、蒸発/アニーリング段階の際に含浸された多孔性フィルムを寸法安定性条件下に保つのに用いられることが意図される。また、この技術は、多孔性担体におけるピンホールまたは他の欠陥から生じる複合膜における欠陥または不完全性を最小限に抑えることが分かっており;実際に、キャリアフィルムの存在が、多孔性担体がキャリアフィルムに付着されずに、例えば、フレームの周囲に固着されるときに通常見られるような、乾燥およびアニーリング段階における破損の発生を最小限に抑えることが分かっている。キャリアフィルムの例は、特に、PTFE、ETFE、KAPTON(登録商標)フィルム、ガラス繊維PTFE含浸フィルムなどである。
【0106】
このプロセスの特定の実施形態が、図1に示され、図中、(1)および(2)はそれぞれ、キャリアフィルムのロールおよび多孔性担体のロールである。多孔性担体(4)は、上で詳述した液体組成物を含む含浸容器(3)に浸漬させられる。含浸された多孔性担体(5)は、キャリアフィルム(7)に付着させられ、そのように組み立てられた構成要素(entity)(7)が、2つの別個の部分(9)および(10)(前者は、含浸された担体を乾燥させるための第1の温度T1に保たれ、後者は、アニーリングを行うための第2の温度T2に保たれる)でできた連続オーブン(8)に入れられる。乾燥され、アニーリングされた組立体(11)は、次に、キャリアフィルム(12)と複合膜(13)とに分割され、キャリアフィルム(12)は、その後、ロール(14)として巻き取られて、再利用され、複合膜(13)も巻かれて、複合膜のロール(15)が得られる。この最後の工程は、複合膜製造の際に行うことができ、または複合膜を使用する前に別個のデバイスにおいて行うことができる。
【0107】
複合膜(13)には、特に、有機汚染物質をさらに除去するためのすすぎ工程、陽イオン交換基をその酸形態に転化するための酸加水分解工程などを含むさらなる工程をさらに行うことができる。
【0108】
本発明の方法から得られる複合膜は、本発明のさらなる目的である。
【0109】
したがって、本発明は:
−多孔性担体(上で詳述した)と;
−その中に含浸された(パー)フルオロイオノマー(I)(上で定義した)と
を含む複合膜にも関し、前記(パー)フルオロイオノマーは、式−SOX(式中、Xが、ハロゲン(Cl、F、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択される)の陽イオン交換基を有し、
ここで、前記複合膜は、多孔性担体を実質的に含まない2つの外部周辺領域と、多孔性担体および(パー)フルオロイオノマー(I)の両方を実質的に含む内部領域とを含み、前記周辺領域の各々は、第1の平均厚さ(Tout)を有し、エネルギー分散型X線分光法(EDS)によって分析される際、硫黄に対する信号の第1の平均強度(Iout)をもたらし、前記内部領域は、第2の平均厚さ(Tin)を有し、EDSによって分析される際、硫黄に対する信号の第2の平均強度(Iin)をもたらし、
ここで、比率:
【数1】

が少なくとも0.3であり、
ここで、比率:
【数2】

が少なくとも0.4である。
【0110】
本出願人は、本発明の水性液体組成物を用いただけで、RおよびRの上記の要件を同時に満たしながら、複合膜を製造することが実際に可能であることを見出した。
【0111】
前記複合膜は、本発明の方法によって、特に上で定義した液体組成物を用いて、製造され得る。
【0112】
「多孔性担体を実質的に含まない周辺領域」という表現は、本発明の趣旨では、含浸材料のみが実質的に存在する表面層(すなわち、上記の1つ以上の熱可塑性フルオロポリマーと場合により組み合わせた、上で詳述した(パー)フルオロイオノマー(I))を表すことが意図され、すなわち、前記材料が、この層の少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも99重量%を占める。上で詳述した周辺領域は、通常、少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも99重量%の量の(パー)フルオロイオノマー(I)を含む。通常、前記層は、(パー)フルオロイオノマー(I)のみから本質的になり、すなわち、何らかの他の成分が存在する場合、前記他の成分は、この層の特性を実質的に変性しない。
【0113】
内部領域は、実際に、多孔性担体およびその孔に一般に存在する(パー)フルオロイオノマー(I)を含む(通常、(パー)フルオロイオノマー(I)から本質的になる)含浸材料が同時に見られる領域である。したがって、担体の孔は、通常、少なくとも部分的に前記(パー)フルオロイオノマー(I)で満たされている。
【0114】
上記のRおよびRという2つのパラメータは、実際に、薄い周辺領域および複合膜の全厚にわたる(パー)フルオロイオノマー(I)の実質的に均質で均一な分布を有するものとして複合膜をみなすことが理解される。
【0115】
比率Rの上記の範囲は、本発明の複合膜において、内部領域が、複合膜の全厚のかなりの割合を占めることを規定することが意図される。本発明の複合膜は、好ましくは少なくとも0.40、より好ましくは少なくとも0.55のR値を有する。したがって、多孔性担体の厚さを所与として、Rの高い値は、低い膜の全厚に相当し、これは、通常、より低い抵抗降下、より高い輸送速度を得るのに好ましい。また、この値は、膜のコスト全体の最小化に相当し得る。これは、膜表面の単位当たり、(パー)フルオロイオノマー(I)に帰する負担が、実際に最も大きいものと考えられるためである。
【0116】
特に、上で定義した比率Rは、内部領域における(パー)フルオロイオノマーの濃度と周辺領域における(パー)フルオロイオノマーの濃度との間の比率に正比例する。本発明の複合膜は、好ましくは少なくとも0.45、より好ましくは少なくとも0.50のR値を有する。これは、実際に、本発明の複合膜において、内部領域が、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも45重量%、より好ましくは少なくとも50重量%の量の(パー)フルオロイオノマーを含むことを意味する。本出願人は、Rパラメータの(ひいては内部層における(パー)フルオロイオノマー(I)の濃度の)値が高くなるほど、膜伝導性の値が増加する(これは、実際に、燃料電池を含む電気化学的デバイスに前記膜を使用するために非常に有益な特性である)ことを見出した。
【実施例】
【0117】
調製実施例1−一般的な手順−様々な方法によるイオノマーラテックスの製造および後続の後処理(work−up)
国際公開第2008/077894号パンフレット(SOLVAY SOLEXIS SPA [IT])7/03/2008の実施例1に記載されるように、当量=800g/eq(滴定によって測定される)を有するイオノマーラテックスを得た。ラテックスを16時間窒素バブリング下に保って、重合から残りのモノマーを取り除き、次にプラスチックタンク中で48時間凍らせた。水の溶融の後、凝固されたイオノマーを、脱塩水で数回洗浄し、オーブン中で80℃で48時間乾燥させて、イオノマー前駆体の乾燥粉末を得た。以下の様々な処理経路にしたがって、等量の5つの分量にポリマーを分けた:
(a)対照試料、追加の処理なし。
(b)未処理の(native)イオノマー前駆体を、閉じた反応器中で穏やかに撹拌しながら(ポリマー1Kg当たり8リットルのアセトニトリル)、周囲温度で30分間、極性溶媒(アセトニトリル)と接触させた。次に、ポリマーを、水で数回洗浄し、換気されたオーブン中で80℃で24時間乾燥させた。
(c)未処理のイオノマー前駆体を、MONEL反応器中で、80℃および大気圧で、5Nl/時のガス流量で10時間、窒素とフッ素ガスとの混合物(50/50)と接触させ、次に、80℃で24時間、換気されたオーブンに入れておいた。
(d)未処理のイオノマー前駆体を、(b)に記載されるのと同じ手順で処理し、次に、(c)に記載されるのと同じ手順で処理した。
(e)未処理のイオノマー前駆体を、溶融押出機を用いて、280℃でペレット化した。
【0118】
調製実施例2−一般的な手順−実施例1のイオノマーからの、−SOH形態のイオノマー分散体の製造
項(a)、(b)、(c)、(d)に基づいて、実施例1に記載されるように得られたイオノマーを、NaOH溶液(10重量%のNaOH、ポリマー1Kg当たり10リットルの溶液)中80℃で10時間個々に処理し、次に、水のpHが9未満になるまで脱塩水で数回洗浄した。実施例1で得られたポリマー(e)を、同様のNaOH溶液中で100時間別個に処理して、SOFからSONaへの転化を完了させた。次に、−SONa形態のポリマーを、換気されたオーブン中、150℃で24時間乾燥させた。各試料について、650gの量の乾燥ポリマーを、2100gの脱塩水を含むAISI316オートクレーブに入れ、240℃で3時間、穏やかな撹拌(120RPM)下に保った。冷却した後、溶解されていないポリマー画分を除去するために、得られた分散体を、10000RPM(HEMRLE Z36 HK)で遠心分離した。AISI304フィルタに、1000gのSOH形態のパーフルオロスルホン酸ポリマー粉末(当量=870g/eq)を充填してから、フィルタを閉じ、ポリマーを湿らせるために脱塩水を供給し、最終的な漏出量を調べた。系において、2バールのゲージ(gauge)で調節されたフィルタ入口の前に逃がし弁を挿入した。フィルタに含まれるポリマー粉末が、上から下への配置で接触され得るように、蠕動ポンプ(Masterflex L/S Cole&Palmer)を用いて、50cc/分の流量で注入することによって、ポリマー(a)、(b)、(c)、(d)、(e)から得られたポリマー分散体をフィルタに供給した。各々の分散体の後、分散体の残渣をフィルタから除去するために500ccの脱塩水を供給し、2リットルの20%の硝酸溶液、次に3リットルの脱塩水をフィルタに供給することによって、含まれるポリマーを再生した。SOH形態に転化されたポリマー分散体を、フィルタから回収すると、結果として部分的に希釈されたことが分かり;過剰な水を除去することによって、20%のポリマー濃度に達するように、撹拌されるガラス容器において、60℃で蒸発を行った。そのように得られた未処理の分散体(配合前)に、レオメータ(ロータ/カップを備えたHAAKE Viscotester 550 NVシリーズ)における粘度測定およびLauda Pt−ring張力計を用いた表面張力測定を行った。得られたデータは、表1にまとめられている。
【0119】
【表1】

【0120】
調製実施例3:溶媒による未処理の分散体の配合
実施例2に詳述したように得られたイオノマー(a)、(b)、(c)、(d)および(e)からの未処理の分散体に以下の処理を行った:
−過剰な水を除去することによって、25%のポリマー濃度に達するまで、撹拌されるガラス容器中60℃で蒸発させる。
−以下の基準値:
イオノマー含量:15重量%
液体媒体の組成:水:55%/1−プロパノール:23%/2−プロパノール:22%
に達するように、(大気圧で穏やかな撹拌下で)溶媒を添加する。
【0121】
そのように配合された分散体の液体粘度および表面張力測定を行った。結果は、表2にまとめられている。
【0122】
【表2】

【0123】
生成物を、閉じられた反応器中、60℃で6時間保つことによって、生成物の老化を加速させるように、ポリマー(a)および(c)から調製された各分散体の1つの試料を処理した。冷却した後、上記の試験と同じ条件で粘度を確認したところ、結果は以下のとおりであった。
【0124】
【表3】

【0125】
実施例4:ポリマー(a)、(c)および希釈された試料からの分散体を用いた複合膜の製造
実施例3(膜MaおよびMcのそれぞれが得られる)から得られた分散体(a)および(c)、ならびに、7重量%のイオノマー含量、62センチポアズの粘度、および25.9mN/mの表面張力が得られる(Maが得られる)まで同じ溶媒系(55%の水、23%の1−プロパノール、22%の2−プロパノール)で希釈した後、(a)から得られたさらなる分散体(a)を用いて、単一工程の含浸プロセスによって複合膜を製造するのに、38μmの厚さを有する、Donaldson製のTETRATEX(登録商標)#3101延伸PTFE多孔性担体を用いた。
【0126】
含浸プロセスは以下の工程を含んでいた:
−ePTFE多孔性担体の層(10×10cm)をPTFEフレームに装着し;
−多孔性担体/フレーム組立体を、垂直位置に保ちながら、分散体中に120秒間浸漬し;
−次に、過剰な液体分散体を重力によって除去するために、前記含浸された組立体を、周囲温度で5分間、垂直位置に保ち、
−次に、前記組立体を、換気されたオーブン中、まず80℃で30分間(溶媒蒸発工程)、次に170℃で30分間(アニーリング工程)保ち、
−組立体を最後にオーブンから取り出し、冷却し、組立体から複合膜を切り取った。
【0127】
アニーリングの前に複数の含浸工程を適用し;第1の蒸発工程の後、含浸された組立体を再度、分散体中に120秒間浸漬し、次に、5分間、垂直位置に保ち、溶媒を再度、換気されたオーブン中で蒸発させた以外は、同様に、第4の膜(Ma**)を、希釈された分散体aを用いて調製した。5回の後続の含浸工程まで複数の工程プロセスを繰り返し;5回目の蒸発の後、上記のアニーリング熱処理ならびに上で詳述した後処理を行った。調製された全ての膜は、白色/不透明部分が少しもなく完全に透明に見えた。
【0128】
SEM(走査型電子顕微鏡)およびEDS(エネルギー分散分光法)によってRおよびRを測定するための一般的な方法
膜の全厚、内部層(含浸された多孔性担体)の厚さおよび2つの周辺層の厚さを測定するために、膜の断面(液体窒素中で低温破断)をSEM顕微鏡で分析した。ここで、RT値を、内部領域の平均厚さと複合膜の全厚との間の比率として求めた。Oxford製のINCA EDS Microanalysis Systemを備えた走査型電子顕微鏡(SEM)(従来のWフィラメントを備えたモデルCambridge S200)を用いた微量分析によってRの測定を行った。EDSスペクトル中の硫黄最大ピーク強度を記録し、背景を補正した。周辺領域の平均値および内部領域の平均値を求め、RS値を評価するのに用いた。膜(Ma)、(Mc)、(Ma)および(Ma**)について得られた結果は、本明細書において以下にまとめられている。
【0129】
【表4】

【0130】
本発明の液体組成物を用いただけで、全厚に対してかなりの厚さの含浸された担体および前記内部領域における高濃度の(パー)フルオロイオノマーを同時に有する複合膜を得ることが実際に可能であることが概説され得る。
【0131】
実施例5:実施例2において調製された分散体(c)を用いた支持膜ロールの作製
実施例3から得られたように、分散体(c)を用いた単一工程の含浸プロセスによって複合膜を製造するのに、38μmの厚さを有する、Donaldson製のTETRATEX(登録商標)#3101延伸PTFE多孔性担体を用いた。ここで、多孔性ePTFE(幅400mm)のロールをほどいて、15リットルのイオノマー分散体を含む容器中に移した。含浸容器に含まれる分散体を、周囲温度で、再循環ポンプによって、プロセスの際に十分に混合された状態を保った。キャリアフィルム(幅500mm)、すなわち、Taconic International(アイルランド)製のTac Cast 10,600g/m、公称厚さ0.275mmを、含浸された多孔性担体に付着させ、組立体を4cm/分の一定の速度で移動させた。2つのエンジン(キャリアフィルムをほどいたラインの始めにおいては前者、オーブンの後のラインの最後においては後者)が、キャリアフィルム/含浸された担体の組立体を4cm/分という所要の速度および所望の張力に保った。次に、組立体をオーブン中に移動し、2つの部分に分割し、第1の部分を空気再循環しながら80℃に保ち(溶媒の蒸発のため)、第2の部分を190℃に保った(膜のアニーリングのため)。次に、膜を担体から分割し、測定された平均厚さは22μmであった。膜は完全に透明に見え、可視欠陥はなかった。100リニアメートルの強化された膜のロールを製造した。
【0132】
TETRATEX(登録商標)#1326の17μmの厚さのロールを用いて、同じプロセスを同様に繰り返して、最終的な厚さが8μmで、完全に透明で、可視欠陥のない膜を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の総重量に対して少なくとも9重量%の(パー)フルオロイオノマー含量を有する(パー)フルオロイオノマー液体組成物の製造方法であって:
−(パー)フルオロイオノマー(I)を提供する工程と;
−前記(パー)フルオロイオノマー(I)に、以下:
(A)フッ素元素によるフッ素化;
(B)極性有機溶媒[溶媒(S)]による処理;
のうちの少なくとも1つを行い、精製された(パー)フルオロイオノマー(I)を回収するために、前記(パー)フルオロイオノマー(I)を分離させる工程と;
−水性組成物を得るために、少なくとも150℃の温度で、有機溶媒を実質的に含まない水性媒体中に前記(パー)フルオロイオノマー(I)を分散させる工程と;
−前記組成物に、少なくとも1種の極性有機溶媒[溶媒(S’)]を添加する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記フルオロイオノマー(I)が、以下のもの:
(M1)式(M1)のスルホン化パーフルオロオレフィン:
【化1】

(式中、nが、0〜6の整数であり、X’が、ハロゲン(Cl、F、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択される):
(M2)式(M2)のスルホン化パーフルオロビニルエーテル:
【化2】

(式中、mが、1〜10の整数であり、X’が、ハロゲン(Cl、F、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択される);
(M3)式(M3)のスルホン化パーフルオロアルコキシビニルエーテル:
【化3】

(式中、wが、0〜2の整数であり、RFおよびRFが、互いにおよび出現するごとに等しいかまたは異なっており、独立して、−F、−Cl、または任意選択的に1つ以上のエーテル酸素で置換されたC1〜10パーフルオロアルキル基であり、yが、0〜6の整数であり、X’が、ハロゲン(Cl、F、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択される);
(M4)式(M4)のパーフルオロアルコキシビニルエーテルカルボキシレート:
【化4】

(式中、w、y、RFおよびRFが、上で定義したのと同じ意味を有し、RH§が、C1〜10アルキルまたはフルオロアルキル基である);
(M5)式(M5)のスルホン化芳香族(パー)フルオロオレフィン:
【化5】

(式中、Arが、C3〜15芳香族または複素環式芳香族部分であり、X’が、ハロゲン(Cl、F、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択される);
および
(M6)それらの混合物
の中から選択される少なくとも1つのフッ素化官能性モノマーから誘導される繰返し単位を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記(パー)フルオロイオノマー(I)が:
−式(M3−A)のパーフルオロ−2−(2−フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル(PSEPVE):
【化6】

および/または、式(M2−D)のパーフルオロ−5−スルホニルフルオリド−3−オキサ−1−ペンテン(SFVE):
【化7】

の−SOFまたは−SOX”形態(ここで、X”が、ハロゲン(Cl、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択される)から誘導される5〜30モル%の繰返し単位;ならびに
−テトラフルオロエチレン(TFE)から誘導される95〜70モル%の繰返し単位
を含むTFEコポリマーの中から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記(パー)フルオロイオノマー(I)のフッ素化(A)を、溶媒(S)処理(B)と組み合わせて含む方法であって、前記(パー)フルオロポリマー(I)に、まず、前記溶媒(S)処理(B)を行い、次に、フッ素化(A)を行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
15〜30mN/mの表面張力を有する水性液体組成物であって、25℃で測定される際に、前記組成物が:
−前記液体組成物の総重量に対して少なくとも9重量%の量の少なくとも1つの(パー)フルオロイオノマー(I)と;
−少なくとも1種の極性有機溶媒[溶媒(S’)]と;
−水と
を含み、前記分散体が、100秒−1のせん断速度で25℃で測定される際に:
−前記(パー)フルオロイオノマー(I)の濃度が、前記液体組成物の総重量に対して15重量%以下であるとき、100センチポアズ未満;
−前記(パー)フルオロイオノマー(I)の濃度が、前記液体組成物の総重量に対して15重量%より高く30重量%以下であるとき、150センチポアズ未満;
−前記(パー)フルオロイオノマー(I)の濃度が、前記液体組成物の総重量に対して30重量%より高いとき、200センチポアズ未満
の液体粘度を有する、組成物。
【請求項6】
前記(パー)フルオロイオノマー(I)が、以下のもの:
(M1)式(M1)のスルホン化パーフルオロオレフィン:
【化8】

(式中、nが、0〜6の整数であり、X’が、ハロゲン(Cl、F、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択される):
(M2)式(M2)のスルホン化パーフルオロビニルエーテル:
【化9】

(式中、mが、1〜10の整数であり、X’が、ハロゲン(Cl、F、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択される);
(M3)式(M3)のスルホン化パーフルオロアルコキシビニルエーテル:
【化10】

(式中、wが、0〜2の整数であり、RFおよびRFが、互いにおよび出現するごとに等しいかまたは異なっており、独立して、−F、−Cl、または任意選択的に1つ以上のエーテル酸素で置換されたC1〜10パーフルオロアルキル基であり、yが、0〜6の整数であり、X’が、H、ハロゲン(Cl、F、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択される);
(M4)式(M4)のパーフルオロアルコキシビニルエーテルカルボキシレート:
【化11】

(式中、w、y、RFおよびRFが、上で定義したのと同じ意味を有し、RH§が、C1〜10アルキルまたはフルオロアルキル基である);
(M5)式(M5)のスルホン化芳香族(パー)フルオロオレフィン:
【化12】

(式中、Arが、C3〜15芳香族または複素環式芳香族部分であり、X’が、ハロゲン(Cl、F、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択される);
および
(M6)それらの混合物
の中から選択される少なくとも1つのフッ素化官能性モノマーから誘導される繰返し単位を含む、請求項5に記載の水性液体組成物。
【請求項7】
前記(パー)フルオロイオノマー(I)が:
−式(M3−A)のパーフルオロ−2−(2−フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル(PSEPVE):
【化13】

および/または式(M2−D)のパーフルオロ−5−スルホニルフルオリド−3−オキサ−1−ペンテン(SFVE):
【化14】

の−SOFまたは−SOX”形態(ここで、X”が、ハロゲン(Cl、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択される)から誘導される5〜30モル%の繰返し単位;ならびに
−テトラフルオロエチレン(TFE)から誘導される95〜70モル%の繰返し単位
を含むTFEコポリマーの中から選択される、請求項6に記載の水性液体組成物。
【請求項8】
前記溶媒(S’)が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコールおよびそれらの混合物からなる群から、好ましくは1−プロパノール、2−プロパノールおよびそれらの混合物から選択される、請求項5〜7のいずれか一項に記載の水性液体組成物。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか一項に記載の液体組成物を用いて、複合膜を製造するための方法。
【請求項10】
単一の含浸工程を含み、連続して操作される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記含浸された担体を、蒸発およびアニーリング工程に供する前に、キャリアフィルム上に組み立てる工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
−多孔性担体と;
−その中に含浸された(パー)フルオロイオノマー(I)と
を含む複合膜であって、前記(パー)フルオロイオノマーが、式−SOX(式中、Xが、ハロゲン(Cl、F、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択される)の陽イオン交換基を有し、
ここで、前記複合膜が、多孔性担体を実質的に含まない2つの外部周辺領域と、多孔性担体および(パー)フルオロイオノマー(I)の両方を実質的に含む内部領域とを含み、前記周辺領域の各々が、第1の平均厚さ(Tout)を有し、エネルギー分散型X線分光法(EDS)によって分析される際、硫黄に対する信号の第1の平均強度(Iout)をもたらし、前記内部領域が、第2の平均厚さ(Tin)を有し、EDSによって分析される際、硫黄に対する信号の第2の平均強度(Iin)をもたらし、
ここで、比率:
【数1】

が少なくとも0.3であり、
ここで、比率:
【数2】

が少なくとも0.4である、複合膜。
【請求項13】
−多孔性担体と;
−その中に含浸された(パー)フルオロイオノマー(I)(上で定義した)と
を含む複合膜であって、前記(パー)フルオロイオノマーが、式−SOX(式中、Xが、ハロゲン(Cl、F、Br、I)、−O(ここで、Mが、H、NH、K、Li、Naの中から選択される陽イオンである)、またはそれらの混合物の中から選択される)の陽イオン交換基を有し、
ここで、前記複合膜が、多孔性担体を実質的に含まない2つの外部周辺領域と、多孔性担体および(パー)フルオロイオノマー(I)の両方を実質的に含む内部領域とを含み、前記周辺領域の各々が、第1の平均厚さ(Tout)を有し、エネルギー分散型X線分光法(EDS)によって分析される際、硫黄に対する信号の第1の平均強度(Iout)をもたらし、前記内部領域が、第2の平均厚さ(Tin)を有し、EDSによって分析される際、硫黄に対する信号の第2の平均強度(Iin)をもたらし、
ここで、比率:
【数3】

が少なくとも0.3であり、
ここで、前記内部領域が、少なくとも40重量%の量の前記(パー)フルオロイオノマー(I)を含む、複合膜。

【図1】
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【公表番号】特表2012−529549(P2012−529549A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514476(P2012−514476)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058182
【国際公開番号】WO2010/142772
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(508305960)ソルヴェイ・スペシャルティ・ポリマーズ・イタリー・エッセ・ピ・ア (53)
【Fターム(参考)】