説明

低反射部材

【課題】 低反射性、経済性に優れ、かつ導電性、耐磨耗性、防汚性をバランスよく機能させることのできる低反射部材を提供する。
【解決手段】 透光性基体上に、少なくともハードコート層、高屈折率層、低屈折率層を順次積層し、高屈折率層は、導電性無機超微粒子を含有する放射線硬化型樹脂組成物が含有され、硬化後の屈折率が1.6〜1.8であり、低屈折率層は、含フッ素ポリシロキサンが含有され、硬化後の屈折率が1.36〜1.42であり、高屈折率層に含まれる導電性無機超微粒子が、酸化錫、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛から選ばれる少なくとも一つからなり、導電性無機超微粒子の重量比率が75%以上であることを特徴とする低反射部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LCDやPDP等のディスプレイ表面に設ける反射防止材料に関し、特に塗工により安価に供給することが出来る低反射部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LCDやPDP等のディスプレイが発達し、携帯電話から大型TVまで、数多くの用途に様々なサイズの製品が製造・販売されるようになってきた。これらのディスプレイでは、視認性をより高めるために一般にその表面に反射防止機能を有する層を設けてある。この反射防止技術を大別すると、外光の映り込みを防止するための防眩、いわゆるAnti−Glare(以下、「AG」という。)と、光の干渉効果を利用して反射率自体を低く抑えるための反射防止、いわゆるAnti−Reflection(以下、「AR」という。)がある。
【0003】
従来、AGについては、サンドブラスト法やエンボス法等により基材表面を直接粗面化する方法、基材表面にフィラーを含有させたハードコート層を設ける方法及び基材表面に海島構造による多孔質膜を形成する方法等で反射防止材料表面に凹凸を形成し、ARについてはスパッタリング等により形成する方法が主であった。しかしながら、後者のスパッタリング等の真空成膜方法は、コストが高く、プラスチックフィルムとの密着性が不十分で、また大面積に均一な成膜を行うことが難しいことから、最近ではウェットコーティングにより屈折率の異なる複数の層を積層することが行われてきた。スパッタリングで作製されたARの反射率は0.3%以下が普通であるが、このウェットコーティングで作製された膜の反射率はこれよりも高く1.0%前後のものが多いため、ARと区別してLow Reflection(以下、「LR」という。)と呼ばれている。
【0004】
ウェットコーティングにより作製されるLRフィルムは、基体上に高屈折率層、低屈折率層を順次積層したものが基本的な構成であり、必要に応じて基体と高屈折率層との間、高屈折率層と低屈折率層との間、低屈折率層上、に任意の層を設けることができる。なお、ここで高屈折率、低屈折率というのは絶対的な屈折率を規定するものではなく、2つの層の屈折率を相対的に比較して高い低いと称しているものであり、両者が下記式1の関係を有する時に最も反射率が低くなるとされている。
【0005】
=(n1/2・・・(式1)
(nは高屈折率層の屈折率、nは低屈折率層の屈折率)
【0006】
ウェットコーティングにより作製されるLRフィルムの高屈折率層材料としては、屈折率を高めるために、塩素や臭素、硫黄等の元素を含有する有機高分子を使用したり、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の高屈折率の金属酸化物超微粒子を層中に分散させたりすることが一般的である。また低屈折率層では、含フッ素系の有機高分子や低屈折率のシリカ、フッ化マグネシウム等を使用したり、微粒子を堆積させて空孔を設け空気の混入による低屈折率化を図る等が行われている。
【0007】
ところで、近年大型TV用途のディスプレイの需要が大幅に伸びてきたことから、このウェットコーティングにより作製されるLRフィルムの需要も高まっている。LRフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という。)やトリアセチルセルロース(以下、「TAC」という。)等の透明フィルム上に、高屈折率層としての機能を兼ねるハードコート層、低屈折率層を順次積層した2層系や、ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層を順次積層した3層系の構成を有するものが一般に製造販売されている。このLRフィルムには、低反射率であることの他に、高い耐磨耗性や耐薬品性、防汚性等が求められ、最近ではその表面に帯電防止性を持たせることが求められるようにもなってきた。このことは、帯電による埃付着を防ぐと共に、付着した埃の拭き取り性を向上させたいという市場の要求から発生したもので、表面抵抗として10〜1011Ω/□が必要とされている。なお、Ω/□は、表面抵抗率の単位であり、□は単位面積を意味し、Ω/sqと表記する場合もある。
【0008】
反射防止材料の表面に帯電防止性を持たせるためには、上記LRフィルムの場合と同様、ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層のいずれか、または複数の層に帯電防止性を付与する必要がある。この帯電防止性を付与するための材料としては、界面活性剤、導電性高分子、導電性無機微粒子等が挙げられるが、特に導電性無機微粒子を塗膜中に分散させる方法が、低抵抗実現に有効なため、多く利用されている。
【0009】
導電性無機微粒子は、帯電防止の観点から最表面に配置されることが好ましいが、これらの材料は一般に屈折率が高いため、反射防止性を考慮すると低屈折率層の下側の層に含有させ、導電性と共に高屈折率も付与する方が好ましいとされている。
【0010】
この例としては、特許文献1では、2層系(導電層/低屈折率層)、3層系(導電層/高屈折率層/低屈折率層)の導電層中に分散される金属酸化物の透明導電性超微粒子としてアンチモンドープ酸化錫、アルミドープ酸化亜鉛の針状もしくは球状の微粒子を使用する記載がある。また、特許文献2では、導電性微粒子(A成分)、屈折率2.0以上の誘電体微粒子(B成分)、およびバインダー(C成分)からなり、その組成がA成分100重量部に対して、B成分5〜100重量部、C成分5〜100重量で構成される高屈折率導電性材料組成物が開示されており、導電性微粒子として酸化インジウム錫、酸化錫、酸化アンチモン錫、酸化亜鉛アルミニウムから選択されるとの記載がある。さらに、特許文献3では、プラズマ法で製造された正方晶系酸化錫微粒子とアクリレート化合物とアルコール系溶剤で構成される紫外線硬化型透明導電性塗料組成物が開示されている。
【0011】
【特許文献1】特開2003−294904号公報
【特許文献2】特開2002−167576号公報
【特許文献3】特開2001−302945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
低反射部材の帯電防止と高屈折率に関し、この他にも多数の特許出願がされているが、低反射性、帯電防止性、耐磨耗性、耐薬品性、耐汚染性等においてバランスの取れた特性を有する低反射部材は未だ実現していない。
【0013】
また、低反射性、帯電防止性、耐磨耗性、耐薬品性、防汚性というこれら機能を同時に付与する方法として、多層に積層した膜の開発が進められているが、多層化、つまり複数回基材上に塗工する工程が必要となりコストが多く掛かる。また、多層化による各層間のバランスを調整することが難しく、実際には使用する目的に応じてこれらの機能の一部を選択・実現しているに過ぎない。
【0014】
このような状況に鑑み、本発明は、透明基体上にハードコート層、高屈折率層と低屈折率層を設けることで、低反射性、経済性に優れ、かつ導電性、耐磨耗性、防汚性をバランスよく機能させることのできる低反射部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の低反射部材は、透光性基体上に、少なくともハードコート層、高屈折率層、低屈折率層を順次積層し、高屈折率層は、導電性無機超微粒子を含有する放射線硬化型樹脂組成物が含有され、硬化後の屈折率が1.6〜1.8であり、低屈折率層は、含フッ素ポリシロキサンが含有され、硬化後の屈折率が1.36〜1.42であり、高屈折率層に含まれる導電性無機超微粒子が、酸化錫、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛から選ばれる少なくとも一つからなり、導電性無機超微粒子の重量比率が75%以上であることを特徴とする。
【0016】
本発明の低反射部材の低屈折率層表面で測定する表面抵抗は、1011Ω/□未満であることを特徴とする。
【0017】
本発明の低反射部材の平均反射率は、1%以下、全光線透過率が90%以上、かつヘイズが2%以下であることを特徴とする。
【0018】
本発明の低反射部材のスチールウールによる耐磨耗性試験後のヘイズの変化量は、0.5%以下であることを特徴とする。
【0019】
本発明の低反射部材のハードコート層は、透光性樹脂微粒子を含有し、上記ハードコート層表面に微細な凹凸を有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の低反射部材のハードコート層は、硬化後の屈折率が1.45〜1.55であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の低反射部材は、透光性基体上にハードコート層、高屈折率層と低屈折率層を形成することで、低反射特性、導電性、耐磨耗性、防汚性のバランスに優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に使用される透光性基体としては、石英ガラスやソーダガラス等のガラスも使用可能であるが、PET、TAC、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド等の各種樹脂フィルムを好適に使用することができる。なお、PDP、LCDに用いる場合は、PET、TACフィルムがより好ましい。
【0023】
これら透光性基体の透明性は高いものほど良好であるが、光線透過率(JIS K7361−1)としては80%以上、より好ましくは90%以上が良い。また、透明基体の厚さとしては、軽量化の観点からは薄い方が好ましいが、その生産性やハンドリング性を考慮すると、1〜700μmの範囲のもの、好ましくは25〜250μmを使用することが好適である。
【0024】
また、透光性基体に、アルカリ処理、コロナ処理、プラズマ処理、スパッタ処理等の表面処理や、界面活性剤、シランカップリング剤等の塗布、またはSi蒸着などの表面改質処理を行うことにより、透光性基体とハードコート層との密着性を向上させることができる。
【0025】
本発明でいうハードコート層とは、鉛筆硬度試験(JIS K5400)で、H以上の高度を示すものをいう。また、本発明でいう高屈折率、低屈折率とは互いに隣接する層の相対的な屈折率の高低をいう。
【0026】
本発明のハードコート層を構成する樹脂としては、放射線、熱の何れかもしくは組み合わせにより硬化する樹脂を用いることができる。放射線硬化型樹脂としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等重合性不飽和結合を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマーを適宜混合した組成物が用いられる。モノマーの例としては、スチレン、アクリル酸メチル、メチルメタクリレート、メトキシポリエチレンメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等を挙げることができる。オリゴマー、プレポリマーとしては、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アルキットアクリレート、メラミンアクリレート、シリコンアクリレート等のアクリレート、不飽和ポリエステル、エポキシ系化合物等を挙げることができる。これらは単独、もしくは複数混合して使用してもよい。モノマーは硬化膜の可撓性が要求される場合は少な目にし、さらに架橋密度を低くするためには、1官能、2官能のアクリレート系モノマーを使用することが好ましく、逆に、硬化膜に耐熱性、耐磨耗性、耐溶剤性等過酷な耐久性を要求される場合は、モノマーの量を増やし、3官能以上のアクリレート系モノマーを使用することが好ましい。
【0027】
上記のような放射線硬化型樹脂を硬化するためには、例えば、紫外線、電子線、X線、などの放射線を照射すれば良いが、必要に応じて適宜重合開始剤を添加することができる。重合開始剤としては、熱、または可視光線、紫外線等のエネルギー線等で活性ラジカルやカチオンを発生するものであれば特に制限なく使用することができる。熱で活性ラジカルを発生する重合開始剤の例としては、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物をあげることができる。エネルギー線で活性ラジカルを発生する重合開始剤の例としては、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン等のアセトフェノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル4’−メチル−ジフェニルサルファイド、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムプロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類、2,4ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類、2,4,6トリメチルベンゾイルジフェニルベンゾイルオキサイド等を挙げることができる。また、カチオンを発生するカチオン重合開始剤としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート等をあげることができる。
【0028】
これらは単独もしくは複数、混合して使用することができる。また、促進剤(増感剤)として、N,N−ジメチルパラトルイジン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等アミン系化合物を混合し、使用することもできる。重合開始剤の含有量としては、放射線硬化型樹脂に対し、0.1〜10重量%の範囲が、好ましくは3〜7重量%の範囲が良い。重合開始剤が多すぎる場合、未反応の重合開始剤の分解物が層の強度の低下や樹脂の着色の原因となることがあり、逆に少なすぎる場合には、樹脂が固まらなくなる。また、可視光線、紫外線等のエネルギー線により活性ラジカルを発生する重合開始剤においては、照射エネルギー線の波長域に吸収を持つフィラーを使用する場合は、重合開始剤の比率を上げる必要がある。更にまた、ハイドロキノン、p−ベンゾキノン、t−ブチルハイドロキノン等の安定化剤(熱重合禁止剤)を添加しても良く、この場合は、添加量は樹脂に対し、0.1〜5.0重量%の範囲が好ましい。
【0029】
上記放射線硬化型樹脂を使用したハードコート層の硬化に伴う体積収縮率(下記方法より算出)は、20%以下が望ましい。体積収縮率が20%より大きくなると、透明基体がフィルムの場合はカールが著しくなり、また基材がガラス等のリジットな材料系の場合はハードコート層の密着性が低下する。
【0030】
体積収縮率:D=(S−S’)/S×100・・・(式2)
S:硬化前の比重
S’:硬化後の比重
(比重はJIS K−7112のB法ピクノメーター法により測定)
【0031】
なお、本発明におけるハードコート層には、放射線硬化型樹脂に対し、ハイドロキノン、p−ベンゾキノン、t−ブチルハイドロキノン等の安定化剤(熱重合禁止剤)を添加しても良い。添加量は、放射線硬化型樹脂に対し、0.1〜5.0重量%の範囲が好ましい。
【0032】
ハードコート層に使用することのできる熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、ケトン・ホルムアルデヒド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらは単独もしくは複数混合して使用しても良い。透明基体がプラスチックフィルムである場合は、熱硬化温度を高く設定することができない。特に、PET、TACを使用する場合には、使用する熱硬化樹脂は、100℃以下で硬化できることが望ましい。
【0033】
ハードコート層に用いられる硬化型樹脂の透明性は高いほど良く、光線透過率(JIS K−7361−1)としては、透明基体同様、80%以上、好ましくは90%以上である。ハードコート層の屈折率は1.45〜1.55の範囲が好ましい。これら範囲を越えると好適な反射防止効果が得られない。
【0034】
本発明において、透明基体の片面または両面に、直接または他の層を介してハードコート層を設ける方法としては、上記で述べた樹脂中に、必要に応じてフィラーや水または有機溶剤を混合し、これをペイントシェーカー、サンドミル、パールミル、ボールミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散機、ジェットミル、高速衝撃ミル、超音波分散機等によって分散して塗料またはインキとし、これをエアドクターコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、電着コーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティングやフレキソ印刷等の凸版印刷、ダイレクトグラビア印刷、オフセットグラビア印刷等の凹版印刷、オフセット印刷等の平版印刷、スクリーン印刷等の孔版印刷等の印刷手法により透明基体の片面または両面上に単層もしくは多層に分けて設け、溶媒を含んでいる場合は、熱乾燥工程を経て、放射線(紫外線の場合、光重合開始剤が必要)照射等により塗工層もしくは印刷層を硬化させることによって得る方法が挙げられる。なお、放射線が電子線による場合は、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000KeVのエネルギーを有する電子線等が使用され、紫外線の場合は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。
【0035】
塗料、インクの塗工適性または印刷適性を向上させるために、必要に応じ、シリコーンオイル等のレベリング剤、ポリエチレンワックス、カルナバワックス、高級アルコール、ビスアマイド、高級脂肪酸等の油脂、イソシアネート等の硬化剤、炭酸カルシウムやシリカゾル、合成雲母等0.1μm以下の超微粒子等の添加剤を適宜使用することができる。
【0036】
ハードコート層の厚さは1.0〜10.0μmの範囲が、好ましくは1〜5μmの範囲が良い。ハードコート層が1.0μmより薄い場合は、ハードコート層の耐磨耗性が低下したり、紫外線硬化型樹脂を使用した場合等に酸素阻害により硬化不良を起こしたりする。10μmより厚い場合は、樹脂の硬化収縮によりカールが発生したり、ハードコート層にマイクロクラックが発生したり、さらに、透明基体との密着性が低下したりする。
【0037】
本発明では、以上説明したハードコート層中に透光性樹脂微粒子を分散・含有せしめて、ハードコート層表面に微細な凹凸を形成し、いわゆるAGを作製することができる。ここで使用される透光性樹脂微粒子としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン系樹脂等よりなる有機透光性粒子を使用することができる。透光性樹脂微粒子の屈折率は、1.40〜1.75が好ましく、屈折率が1.40未満または1.75より大きい場合は、透光性基体或いはハードコート層との屈折率差が大きくなり過ぎ、透過率が低下する。透光性粒子の粒径は0.3〜10μmの範囲のものが好ましく、1〜5μmがより好ましい。粒径が0.3μm以下の場合はAG性が低下するため、また10μm以上の場合は、ギラツキを発生すると共に、表面凹凸の程度が大きくなり過ぎて表面が白っぽくなってしまうため好ましくない。
【0038】
反射防止効果をより向上させるために、ハードコート層と低屈折率層の間に高屈折率層を設けることができる。ここでいう高屈折率層の屈折率は、隣接するハードコート層、および低屈折率層の屈折率よりも高いことを意味する。
【0039】
本発明の高屈折率層は、直上に形成される低屈折率層より屈折率を高くする必要があり、その屈折率は1.60〜1.80の範囲にあることが好ましい。1.60未満では、十分な低反射効果を得ることが難しく、また1.80以上では製膜性が困難になる傾向がある。
【0040】
高屈折率層の厚みは、可視光波長と同じ厚み、またはそれ以下の厚みが好ましい。例えば、可視光線に反射防止効果を付与する場合は、高屈折率層の厚さはn・dが500≦4n・d(nm)≦750を満たすように設計される。ここで、nは高屈折率層の屈折率、dは層の厚みである。本発明では高屈折率層がこのように薄膜のため、十分なハードコート性を得ることができない。したがって、高屈折率層と透明基体との間にハードコート層を設ける必要がある。
【0041】
本発明の高屈折率層に含有される導電性無機超微粒子としては、酸化錫、リンドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、五酸化アンチモンが挙げられ、特に好ましいのは酸化錫、ITO、酸化亜鉛であり、これらはいずれも屈折率が2.0近傍と高いため、導電性だけでなくこれを含有する高屈折率層の屈折率を高める働きも担うことが出来る。
【0042】
これらの導電性無機超微粒子の粒径は、1〜300nmの範囲であることが好ましく、より好ましいのは5〜100nm、更に好ましいのは5〜50nmである。導電性無機超微粒子の粒径が1nm未満では均一な分散が困難になり、一方300nmを超えると透明性が低下するという不都合を生じるからである。
【0043】
本発明の高屈折率層に使用される放射線硬化型樹脂組成物としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等のラジカル重合性官能基や、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基等のカチオン重合性官能基を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマーを単独で、または適宜混合した組成物が用いられる。モノマーの例としては、アクリル酸メチル、メチルメタクリレート、メトキシポリエチレンメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等を挙げることができる。オリゴマー、プレポリマーとしては、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アルキットアクリレート、メラミンアクリレート、シリコーンアクリレート等のアクリレート化合物、不飽和ポリエステル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルや各種脂環式エポキシ等のエポキシ系化合物、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル等のオキセタン化合物を挙げることができる。これらは単独、もしくは複数混合して使用することができる。
【0044】
上記放射線硬化型樹脂組成物は、そのままで電子線照射により硬化可能であるが、紫外線照射による硬化を行う場合は、光重合開始剤の添加が必要である。光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のラジカル重合開始剤、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物等のカチオン重合開始剤を単独または適宜組み合わせて使用することが出来る。
【0045】
本発明では、上記放射線硬化型樹脂組成物に加えて、その重合硬化を妨げない範囲で高分子樹脂を添加使用することが出来る。この高分子樹脂は、後述するハードコート層塗料に使用される有機溶剤に可溶な熱可塑性樹脂であり、具体的にはアクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、これらの樹脂中には、導電性無機超微粒子との親和性を増すために、カルボキシル基やリン酸基、スルホン酸基等の酸性官能基を有することが好ましい。
【0046】
また、本発明では、導電性無機超微粒子を上記の放射線硬化型樹脂組成物中に安定に分散させるために導電性無機超微粒子の表面を、必要に応じて各種カップリング剤により修飾することができる。このカップリング剤としては、シランカップリング剤、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム等の金属アルコキシド、脂肪酸等の有機酸およびその塩、リン酸化合物等が挙げられる。
【0047】
高屈折率層中に占める導電性無機超微粒子の割合は、重量比率で75%以上であり、好ましくは重量比率で75〜95%であり、より好ましくは80〜90%である。この割合が75%未満では良好な導電性が得られにくく、95%を超えると、ヘイズ値が上昇すると共に高屈折率層の耐磨耗性が低下するといった問題が生じやすい。
【0048】
高屈折率層は、主に上述の導電性無機超微粒子と放射線硬化型樹脂組成物の硬化物により構成されるが、その形成方法は、導電性無機超微粒子と放射線硬化型樹脂組成物と有機溶剤からなる塗料を塗工し、有機溶剤を揮発させた後に電子線または紫外線照射により硬化せしめるものである。ここで使用される有機溶剤としては、放射線硬化型樹脂組成物を溶解すると共に、導電性無機超微粒子の分散に適したものを選ぶ必要がある。具体的には、基材への濡れ性、粘度、乾燥速度といった塗工適性を考慮して、アルコール系、エステル系、ケトン系、エーテル系、芳香族炭化水素から選ばれた単独または混合溶剤を使用することができる。
【0049】
本発明の高屈折率層までの段階の表面抵抗は、10〜10Ω/□であることが好ましい。帯電防止性であればこれ以上低い表面抵抗は必要なく、また10Ω/□を超えるようであれば、その上に低屈折率層を設けた際の最表面の表面抵抗が1011Ω/□以上になってしまい、十分な帯電防止性を発揮できないので好ましくない。また、高屈折率層の表面硬度は、鉛筆硬度試験(JIS K5600−5−4)で、H以上の硬度であり、2H以上もしくは3H以上の硬度がより好ましい。
【0050】
本発明の高屈折率層上に設ける低屈折率層は、含フッ素ポリシロキサンで構成される。この含フッ素ポリシロキサンは、加水分解性シラン化合物及び/またはその加水分解物と硬化促進剤とを少なくとも含有する混合物が硬化したものであり、この加水分解性シラン化合物としては、下記一般式[1]〜[3]で示されるシラン化合物の少なくとも1種類と、一般式[4]、[5]で示される含フッ素シラン化合物の少なくとも1種類との混合物が使用される。
【0051】
【化1】

(XはCl、Br、NCO、ORのいずれかを示す。YはHまたは炭素数が1〜20の有機基を示す。R、R、R、Rは炭素数が1〜20の有機基を示す。RとRは少なくともひとつのフッ素原子を含む有機基を示す。nは1〜30の整数を示す。)
【0052】
加水分解性シラン化合物の具体例としては、ケイ素原子が4個の加水分解基を有するシラン化合物が挙げられ、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(1−プロポキシ)シラン、テトラ(2−プロポキシ)シラン、テトラ(1−ブトキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトライソシアナートシラン、ジメトキシシロキサンオリゴマー、ジエトキシシロキサンオリゴマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、含フッ素シラン化合物としては、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリプロポキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリクロロシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリイソシアナートシラン、1H,1H,2H,2H−テトラヒドロパーフルオロヘキシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−テトラヒドロパーフルオロヘキシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−テトラヒドロパーフルオロヘキシルトリプロポキシシラン、1H,1H,2H,2H−テトラヒドロパーフルオロヘキシルトリクロロシラン、1H,1H,2H,2H−テトラヒドロパーフルオロヘキシルトリイソシアナートシラン、1H,1H,2H,2H−テトラヒドロパーフルオロノニルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−テトラヒドロパーフルオロノニルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−テトラヒドロパーフルオロノニルトリプロポキシシラン、1H,1H,2H,2H−テトラヒドロパーフルオロノニルトリクロロシラン、1H,1H,2H,2H−テトラヒドロパーフルオロノニルトリイソシアナートシラン、1H,1H,2H,2H−テトラヒドロパーフルオロデシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−テトラヒドロパーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−テトラヒドロパーフルオロデシルトリプロポキシシラン、1H,1H,2H,2H−テトラヒドロパーフルオロデシルトリクロロシラン、1H,1H,2H,2H−テトラヒドロパーフルオロデシルトリイソシアナートシラン、1−ヘプタフルオロイソプロポキシプロピルトリメトキシシラン、1−ヘプタフルオロイソプロポキシプロピルトリエトキシシラン、1−ヘプタフルオロイソプロポキシプロピルトリプロポキシシラン、1−ヘプタフルオロイソプロポキシプロピルトリクロロシラン、1−ヘプタフルオロイソプロポキシプロピルトリイソシアナートシラン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)−2,2,3,3−テトラフルオロブタン、1,5−ビス(トリメトキシシリル)−2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタン等が挙げられる。中でも、屈折率、反応性、溶媒溶解性の観点から1H,1H,2H,2H−テトラヒドロパーフルオロデシルトリエトキシシランが好適である。
【0053】
また、本発明の加水分解性シラン化合物として、上記の化合物の他に皮膜形成剤および帯電防止剤としての機能を有するカチオン変性シラン化合物を含有されることも出来る。カチオン変性シラン化合物の具体例としては、オクタデシルジメチル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、3−(N−スチルメチル−2−アミノエチルアミノ)−プロピルトリメトキシシラン塩酸塩、N(3−トリメトキシシリルプロピル)−N−メチル−N,N−ジアリルアンモニウムクロライド、N,N−ジデシル−N−メチル−N−(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、オクタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、テトラデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリ−n−ブチルアンモニウムクロライド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、トリメトキシシリルプロピル(ポリエチレンイミン)、ジメトキシメチルシリルプロピル変性(ポリエチレンイミン)等が挙げられる。
【0054】
低屈折率層の屈折率と塗膜強度のバランスを取るためには、以上の加水分解性シラン化合物の中で、低屈折率層の塗膜強度を向上させるためには、ケイ素原子に4個の加水分解性基を有するシラン化合物(一般式[1]においてa=0の化合物)と、含フッ素加水分解性シラン化合物とを適宜混合して使用することが好ましい。この際の混合比はシラン化合物の種類により異なるが、ケイ素原子に4個の加水分解性基を有するシラン化合物100重量部に対して、含フッ素加水分解性シラン化合物は1〜500重量部、更に好適には20〜300重量部が好ましく用いられる。
【0055】
上記の加水分解性シラン化合物は、通常アルコール溶剤に溶解して部分的に加水分解と重縮合を進行させておき、これを塗工後に加熱により重縮合を更に進めて硬化膜を形成することになる。これらの加水分解・重縮合反応を促進するために、加水分解性シラン化合物及び/またはその加水分解物100重量部に対して、1〜30重量部の範囲で硬化促進剤が添加・使用される。この硬化促進剤としては、硝酸、塩酸等の鉱酸やシュウ酸、酢酸等の有機酸、オルトリン酸、ベンゼンスルホン酸、P−トルエンスルホン酸等の酸性触媒が、またアンモニア等の塩基性触媒が挙げられる。
【0056】
これらの硬化促進成分は、シラン化合物と混合した後、直接塗布・製膜することも可能であるが、シラン化合物に予め水を加えて加水分解した後、硬化促進成分を加えて塗布・製膜しても良い。この場合、シラン化合物−水−溶剤混合物またはこれに微量の強酸(塩酸等)を加えた混合物を調整後、室温で数時間から数日放置し、塗工用の濃度に希釈して、硬化促進成分を加えて塗工・製膜する。また、水の不存在下、シラン化合物をシュウ酸等のシラン重合触媒を用いてオリゴマーにした後、硬化促進成分を加えて塗布・製膜してもよい。この場合は、シラン化合物−溶剤−カルボン酸触媒混合物を室温から100℃の範囲で加熱することで行い、他の場合と同様に希釈後、硬化促進成分を加えて使用する。
【0057】
本発明の低屈折率層塗料は以下の塗料調製、塗工、乾燥、及び重合、硬化のプロセスにより作製される。塗料は、任意の溶媒に上記シラン化合物を溶解し、必要に応じて加水分解またはオリゴマー化した後、上記硬化促進成分を混合することによって調製できる。この場合、目的とする塗工膜厚を得るためにシラン化合物の濃度を、通常0.1〜50重量%程度、好ましくは0.5〜30重量%程度に調製する。溶媒としては、少なくとも加水分解したシラン化合物を溶解できる極性溶媒を含んでいる必要がある。また乾燥時の揮発性の点で沸点が50〜150℃の溶剤が用いられる。このような溶剤としてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセロソルブ、ジエチルカルビトール等のグリコールエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド等の含窒素類、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類などが用いられるが、これらに限定されるものではない。また、上記溶媒は単独、もしくは混合して用いることができる。
【0058】
上記調製した塗料を用いて、塗工または印刷手法により透明支持基体の片面もしくは両面に低屈折率層を設けることができる。具体的には、エアドクターコーティング、ブレードコーティング、ワイヤードクターコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、マイクログラビアコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、電着コーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等の塗工手法や、フレキソ印刷等の凸版印刷、ダイレクトグラビア印刷、オフセットグラビア印刷等の凹版印刷、オフセット印刷等の平版印刷、スクリーン印刷等の孔版印刷等の印刷手法を挙げることができる。尚、上記のようにして形成される低屈折率層の厚さは、屈折率と光の波長との関係を考慮して層の厚さを適宜決定すればよく、特に限定されるものではないが、70〜120nm程度が好適である。この程度の厚さであれば、下層のハードコート層の表面抵抗を一桁程度上昇させるだけであるため、低屈折率層の表面抵抗を1011Ω/□未満に抑えることが出来る。
【0059】
低屈折率層塗膜の乾燥、及び重合、硬化は、加熱乾燥により溶媒を揮発せしめ、さらに加熱を継続して硬化を進める必要がある。加熱温度は40℃以上、好ましくは80〜120℃で行う。加熱温度の上限は使用する基体によって異なるが、一般的な透明フィルムは120℃以上では軟化して使用できなくなる。
【0060】
本発明の低屈折率層の表面抵抗は、1011Ω/□未満であることが好ましく、より好ましくは1010Ω/□以下である。1011Ω/□以上では、十分な帯電防止性を発揮できないので好ましくない。
【0061】
本発明の低反射部材におけるハードコート層、高屈折率層および低屈折率層の屈折率の関係は、ハードコート層の硬化後の屈折率が1.45〜1.55の範囲、高屈折率層の硬化後の屈折率が1.6〜1.8の範囲で、かつ低屈折率層の硬化後の屈折率が1.36〜1.42の範囲であることが望ましく、この範囲を外れると低反射機能が低下する。
【0062】
本発明の低反射部材は、以上の材料およびその組み合わせを最適化することにより、平均反射率を1%以下に、全光線透過率を90%以上、ヘイズを2%以下にすることができる。また、表面のスチールウールによる耐磨耗性試験では、ヘイズの変化量を0.5%以下に抑えることができるものである。
【0063】
以下、本発明を実施例によって説明する。なお、「部」は重量部を意味するものとする。
【実施例】
【0064】
[ハードコート層作製]
100μm厚さのPETフィルム(商品名:A4300、東洋紡績社製)に、下記ハードコート塗料をリバースコーティングにて塗布し、100℃で1分間乾燥後、窒素雰囲気中で120W/cm集光型高圧水銀灯1灯で紫外線照射を行い(照射距離10cm、照射時間30秒)、塗工膜を硬化させた。このようにして、厚さ2.5μm、屈折率1.52のハードコート層を形成した。
[ハードコート塗料の配合]
・紫外線硬化型ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:UV7600B、日本合成化学工業社製 固形分濃度100%) 38部
・光重合開始剤(商品名:イルガキュアー184、チバガイギー社製) 2部
・メチルエチルケトン 36部
・シクロヘキサノン 24部
【0065】
[高屈折率層の作製]
上記ハードコート層上に、下記高屈折率塗料をリバースコーティングにて塗布し、100℃で1分間乾燥後、窒素雰囲気中で120W/cm集光型水銀灯1灯で紫外線照射を行い(照射距離10cm、照射時間30秒)、塗工膜を硬化させた。このようにして、厚さ0.1μm、屈折率1.64の高屈折率層を形成した。
[高屈折率塗料の配合]
・イソフタル酸及びアジピン酸からなる多塩基酸と、ネオペンチルグリコールを反応させることにより生成する、重量平均分子量65000、酸価7mgKOH/g、不揮発分60%のポリエステル樹脂 7部
・ジペンタエリストールテトラアクリレート 1.8部
・平均一次粒子径0.05μm、Inに対するSn含有量が5モル%となるITO粉末
34部
・n−ブタノール/キシレンの重量比が4/6となる混合溶媒 57.2部
上記材料とガラスビーズ50ccを250cc容器に入れペイントシェーカーにて5時間分散した。分散後、光重合開始剤(商品名:イルガキュアー907、チバガイギー社製)0.2部を溶解させ高屈折率塗料を作製した。
【0066】
[低屈折率層作製]
上記高屈折率層上に、下記低屈折率塗料をリバースコーティングにて塗布し、100℃で1分間乾燥し塗工膜を硬化させた。
[低屈折率塗料の配合]
・含フッ素ポリシロキサン(商品名:LR204−1、日産化学工業社製 固形分濃度 6.46%) 7.9部
・メチルイソブチルケトン 12.1部
その後、低屈折率層の硬化のため、60℃で120時間キュアーし、厚さ0.1μm、屈折率1.38、反射率0.57%の本発明の低反射部材を得た。
【0067】
<比較例1>
[ハードコート層作製]
100μm厚さのPETフィルム(商品名:A4300、東洋紡績社製)に、実施例と同配合のハードコート塗料をリバースコーティングにて塗布し、100℃で1分間乾燥後、窒素雰囲気中で120W/cm集光型高圧水銀灯1灯で紫外線照射を行い(照射距離10cm、照射時間30秒)、塗工膜を硬化させた。このようにして、厚さ2.5μm、屈折率1.52のハードコート層を形成した。
【0068】
[高屈折率層作製]
上記ハードコート層上に、下記高屈折率塗料をリバースコーティングにて塗布し、100℃で1分間感想後、窒素雰囲気中で120W/cm集光型高圧水銀灯1灯で紫外線照射を行い(照射距離10cm、照射時間30秒)、塗工膜を硬化させた。このようにして、厚さ0.1μm、屈折率1.64の高屈折率層を形成した。
[高屈折率塗料の配合]
・酸化ジルコニア含有紫外線硬化型樹脂(商品名:KZ7391、JSR社製 固形分濃度42% 固形分中のZrO含率68.0%)
【0069】
[低屈折率層作製]
上記高屈性率層上に、実施例と同配合の低屈折率塗料をリバースコーティングにて塗布し、100℃で1分間乾燥し塗工膜を硬化させた。
その後、低屈折率層の硬化のため、60℃で120時間キュアーし、厚さ0.1μm、屈折率1.38、反射率0.62%の低反射部材を得た。
【0070】
<比較例2>
[ハードコート層作製]
100μm厚さのPETフィルム(商品名:A4300、東洋紡績社製)に、実施例と同配合のハードコート塗料をリバースコーティングにて塗布し、100℃で1分間乾燥後、窒素雰囲気中で120W/cm集光型高圧水銀灯1灯で紫外線照射を行い(照射距離10cm、照射時間30秒)、塗工膜を硬化させた。このようにして、厚さ2.5μm、屈折率1.52のハードコート層を形成した。
【0071】
[低屈折率層作製]
上記ハードコート層上に、実施例と同配合の低屈折率塗料をリバースコーティングにて塗布し、100℃で1分間乾燥し塗工膜を硬化させた。
その後、低屈折率層の硬化のため、60℃で120時間キュアーし、厚さ0.1μm、屈折率1.38、反射率2.13%の低反射部材を得た。
【0072】
<比較例3>
[ハードコート層作製]
100μm厚さのPETフィルム(商品名:A4300、東洋紡績社製)に、実施例と同配合のハードコート塗料をリバースコーティングにて塗布し、100℃で1分間乾燥後、窒素雰囲気中で120W/cm集光型高圧水銀灯1灯で紫外線照射を行い(照射距離10cm照射時間30秒)、塗工膜を硬化させた。このようにして、厚さ2.5μm、屈折率1.52のハードコート層を形成した。
【0073】
[高屈折率層作製]
上記ハードコート層上に、実施例と同配合の高屈折率塗料をリバースコーティングにて塗布し、100℃で1分間乾燥後、窒素雰囲気中で120W/cm集光型高圧水銀灯1灯で紫外線照射を行い(照射距離10cm、照射時間30秒)、塗工膜を硬化させた。このようにして、厚さ0.1μm、屈折率1.64の高屈折率層を形成した。
【0074】
[低屈折率層作製]
上記高屈折率層上に、下記低屈折率塗料をリバースコーティングにて塗布し、100℃で1分間乾燥し塗工膜を硬化させた。
[低屈折率塗料の配合]
・シリカゾル(粒子径15nmでSiOとして30重量%のシリカ超微粒子を含有するエタノール分散液) 10部
・皮膜形成剤(テトラエトキシシランの加水分解物 SiOとして計算して固形分濃度6% 15部
・エタノール 53部
その後、低屈折率層の硬化のため、60℃で120時間キュアーし、厚さ0.1μm、屈折率1.38、反射率0.68%の低反射部材を得た。
【0075】
<比較例4>
[ハードコート層作製]
100μm厚さのPETフィルム(商品名:A4300、東洋紡績社製)に、実施例と同配合のハードコート塗料をリバースコーティングにて塗布し、100℃で1分間乾燥後、窒素雰囲気中で120W/cm集光型高圧水銀灯1灯で紫外線照射を行い(照射距離10cm照射時間30秒)、塗工膜を硬化させた。このようにして、厚さ2.5μm、屈折率1.52のハードコート層を形成した。
【0076】
[高屈折率層作製]
上記ハードコート層上に、下記高屈折率塗料をリバースコーティングにて塗布し、100℃で1分間乾燥後、窒素雰囲気中で120W/cm集光型高圧水銀灯1灯で紫外線照射を行い(照射距離10cm、照射時間30秒)、塗工膜を硬化させた。このようにして、厚さ0.1μm、屈折率1.61の高屈折率層を形成した。
[高屈折率塗料の配合]
・イソフタル酸及びアジピン酸からなる多塩基酸と、ネオペンチルグリコールを反応させることにより生成する、重量平均分子量65000、酸価7mgKOH/g 不揮発分60%のポリエステル樹脂 14部
・ジペンタエリストールテトラアクリレート 3.6部
・平均一次粒子0.05μm、Inに対するSn含有量が5モル%となるITO粉末
28部
・n−ブタノール/キシレンの重量比が4/6となる混合溶媒 54.4部
上記材料とガラスビーズ50ccを250cc容器に入れペイントシェーカーにて5時間分散した。分散後、光重合開始剤(商品名:イルガキュアー907、チバガイギー社製)0.2部を溶解させ高屈折率塗料を作製した。
【0077】
[低屈折率層作製]
上記高屈折率層上に、実施例と同配合の低屈折率塗料をリバースコーティングにて塗布し、100℃で1分間乾燥し塗工膜を硬化させた。
その後、低屈折率層の硬化のため、60℃で120時間キュアーし、厚さ0.1μm、屈折率1.38、反射率0.95%の低反射部材を得た。
【0078】
実施例、比較例1〜4で得られた低反射部材を用い、全光線透過率、HAZE,反射率、表面抵抗値、耐磨耗性、および防汚性を下記方法により測定、評価した。
全光線透過率およびHAZEは、HAZEメーター(商品名:NDH2000、日本電色社製)により測定した。
反射率は分光光度計(商品名:UV3100、島津製作所社製)を使用し、波長領域400〜700nmの範囲の5゜の正反射を測定し、JIS Z8701に従って視感度補正したY値で表した。なお、測定は非測定面を黒マジックで完全に黒塗りした状態で行った。
表面抵抗値は、表面抵抗値高抵抗率計(商品名:ハイレスタ・アップ、三菱化学社製)を使用し測定した。
耐磨耗性は日本スチールウール社製のスチールウール#0000を板紙耐磨耗試験機(熊谷理機工業社製)に取り付け、低反射部材の低屈折率層面を荷重250gにて10回往復させる。その後、下記式2で計算されるその部分のHAZE値の変化δHを、HAZEメーターで測定した。ここで、測定値が大きいほど耐磨耗性が悪いと見なす。
【0079】
δH=試験後のHAZE値−試験前のHAZE値・・・(式3)
【0080】
防汚性は、低屈折率層上にサラダ油をスポイトで1滴滴下した後、リグロインを含ませたワイパー(商品名:クリーンワイパー SF30C クラレ社製)で20往復ラビングし、更に拭き取った面の光学顕微鏡写真を撮影、サラダ油の付着の有無を確認した。低屈折率層にサラダ油の付着が顕著に認められる場合を×とし、まったく認められない場合を○とした。
【0081】
【表1】

【0082】
表1の結果から明らかなように、本発明の低反射部材は、高屈折率層に導電性無機微粒子を含有する放射線硬化型樹脂、また低屈折率層に含フッ素ポリシロキサンを用いることにより、低反射特性、導電性、耐磨耗性、防汚性が得られているのに対し、比較例1では、導電性、耐磨耗性が劣っており、比較例2では、低反射特性、導電性が劣っており、比較例3では耐磨耗性、防汚性が劣っており実用に耐え得るものではなかった。また、比較例4のハードコート層に含まれる導電性無機微粒子の含有量が75%未満の場合、導電性が劣り実用に耐え得るものではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基体上に、少なくともハードコート層、高屈折率層、低屈折率層を順次積層し、
上記高屈折率層は、導電性無機超微粒子を含有する放射線硬化型樹脂組成物が含有され、硬化後の屈折率が1.6〜1.8であり、
上記低屈折率層は、含フッ素ポリシロキサンが含有され、硬化後の屈折率が1.36〜1.42であり、
上記高屈折率層に含まれる導電性無機超微粒子が、酸化錫、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛から選ばれる少なくとも一つからなり、
上記導電性無機超微粒子の重量比率が75%以上であることを特徴とする低反射部材。
【請求項2】
前記低反射部材の前記低屈折率層表面で測定する表面抵抗が1011Ω/□未満であることを特徴とする請求項1に記載の低反射部材。
【請求項3】
前記低反射部材の平均反射率が1%以下、全光線透過率が90%以上、ヘイズが2%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の低反射部材。
【請求項4】
前記低反射部材表面の、スチールウールによる耐磨耗性試験後のヘイズの変化量が0.5%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の低反射部材。
【請求項5】
前記ハードコート層が透光性樹脂微粒子を含有することを特徴とする請求項1に記載の低反射部材。
【請求項6】
前記ハードコート層表面に微細な凹凸を有することを特徴とする請求項1に記載の低反射部材。
【請求項7】
前記ハードコート層の硬化後の屈折率が1.45〜1.55であることを特徴とする請求項1に記載の低反射部材。

【公開番号】特開2006−284713(P2006−284713A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101867(P2005−101867)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】