説明

低圧配電線のインピーダンス算出装置

【課題】手間がかからず簡単な方法で低圧配電線のインピーダンスを算出できる低圧配電線のインピーダンス算出装置。
【解決手段】配電系統電源1に入力端子が接続され送電端から末端までの間の複数地点に負荷が接続された低圧配電線2bの送電端に出力端子が接続された電圧調整装置2に必要な低圧配電線のインピーダンスを算出するインピーダンス算出装置5であり、最大負荷容量と最大負荷容量時の低圧配電線の電圧降下と負荷力率と低圧配電線の抵抗分とリアクタンス分との比率とを入力する入力部51と、入力部で入力された最大負荷容量と最大負荷容量時の低圧配電線の電圧降下と負荷力率と低圧配電線の抵抗分とリアクタンス分との比率とに基づいて低圧配電線のインピーダンスを算するインピーダンス算出部52とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電力を負荷に配電する低圧配電線の電圧を調整する電圧調整装置に必要な低圧配電線のインピーダンスを算出する低圧配電線のインピーダンス算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配電系統電源(柱上変圧器)から負荷までの低圧配電線が長い場合、負荷の軽重に応じて低圧配電線の電圧変動(線路電圧変動)も大きくなる。このため、系統電源側に設けられた電圧調整装置が低圧配電線の電圧を調整して、電力供給における電圧を安定化させている。
【0003】
この電圧調整装置は、低圧配電線の電圧降下を算出し、低圧配電線の送電端から末端までの電圧を調整している。低圧配電線の電圧降下を算出するにあたっては、低圧配電線のインピーダンスを予め調査して入力しておく必要がある。
【0004】
また、従来の技術として、特許文献1が知られている。特許文献1に記載されたインピーダンス簡易測定装置は、通電状態の低圧配電線路に接続した負荷回路と、負荷回路に予め設定した入力電流を流す電流供給手段と、低圧配電線路と負荷回路との間に接続し、検出した電圧と電流および電力により力率を算出する力率計と、力率計で算出した力率に基づき低圧配電線路のインピーダンスの絶対値を得る演算手段とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−304453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電圧調整装置では、低圧配電線のインピーダンスを予め調査して入力するため、非常に手間がかかるという課題を有していた。
【0007】
本発明は、手間がかからず簡単な方法で低圧配電線のインピーダンスを算出することができる低圧配電線のインピーダンス算出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、配電系統電源に入力端子が接続され送電端から末端までの間の複数地点に負荷が接続された低圧配電線の送電端に出力端子が接続された電圧調整装置に必要な前記低圧配電線のインピーダンスを算出するインピーダンス算出装置であって、最大負荷容量と前記最大負荷容量時の前記低圧配電線の電圧降下と負荷力率と前記低圧配電線の抵抗分とリアクタンス分との比率とを入力する入力部と、前記入力部で入力された前記最大負荷容量と前記最大負荷容量時の前記低圧配電線の電圧降下と負荷力率と前記低圧配電線の抵抗分とリアクタンス分との比率とに基づいて前記低圧配電線のインピーダンスを算出するインピーダンス算出部とを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、前記電圧調整装置は、前記低圧配電線の送電端に流れる電流を検出する電流検出器と、前記低圧配電線の送電端の電圧を検出する電圧検出器と、前記電流検出器からの検出電流と前記電圧検出器からの検出電圧と前記インピーダンス算出部で算出された前記低圧配電線のインピーダンスとに基づき前記低圧配電線の送電端から末端までの電圧が規定値内になるように補償量を調整することにより前記低圧配電線の送電端の電圧を調整する電圧調整装置本体とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、最大負荷容量と最大負荷容量時の低圧配電線の電圧降下と負荷力率と低圧配電線の抵抗分とリアクタンス分との比率とに基づいて低圧配電線のインピーダンスを算出するので、手間がかからず簡単な方法で低圧配電線のインピーダンスを算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1の低圧配電線のインピーダンス算出装置及び電圧調整装置の回路構成図である。
【図2】末端電圧を補償する電圧調整装置を示す図である。
【図3】低圧配電線のインピーダンスを算出する方法を示す図である。
【図4】低圧配電線を三分割し、1/3のインピーダンス及び1/3の負荷により低圧配電線のインピーダンスを算出する方法を示す図である。
【図5】低圧配電線のインピーダンスを算出する際に用いられる入力データを示す図である。
【図6】実施例1の電圧調整装置による低圧配電線の末端電圧の電圧算出を示す図である。
【図7】実施例1の電圧調整装置の具体例の全体構成図である。
【図8】図7に示す実施例1の電圧調整装置の具体例の詳細構成図である。
【図9】図7に示す実施例1の電圧調整装置のトライアックのオン/オフと補償電圧との関係を示す図である。
【図10】実施例1の低圧配電線のインピーダンス算出装置及び電圧調整装置により実現されるインピーダンス算出方法及び電圧調整方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の実施例1の低圧配電線のインピーダンス算出装置及び電圧調整装置の回路構成図である。図2は、末端電圧を補償する電圧調整装置を示す図である。
【0014】
図2において、柱上変圧器TF(例えば6.6kV/200V(100×2))のR−N相の二次電圧をVR−J、N−T相の二次電圧をVT−Jとする。配電線インピーダンスをRL、XLとし、R−N相の配電線の末端電圧をVR−M、N−T相の配電線の末端電圧をVT−Mとする。R相の負荷電流をIR、T相の負荷電流をITとする。
【0015】
低圧配電線を設計するにあたっては、最大負荷容量(MVA)とそのときの電圧降下(ΔV)と負荷力率(PF)が予め定められている。図3に示すように、負荷が最大負荷容量(MVA)時における低圧配電線のインピーダンスRL,XLによる電圧降下をΔVとする。また、低圧配電線のR成分とX成分との比率がわかっているものとする。
【0016】
配電線インピーダンス算出装置5は、データ入力部51とインピーダンス算出部52とを有する。データ入力部51は、最大負荷容量(MVA)と、最大負荷容量(MVA)時の低圧配電線の電圧降下(ΔV)と、負荷力率(PF)と、低圧配電線のR成分とX成分との比率とを入力する。
【0017】
インピーダンス算出部52は、最大負荷容量(MVA)と、最大負荷容量(MVA)時の低圧配電線の電圧降下(ΔV)と、負荷力率(PF)と、低圧配電線のR成分とX成分との比率とに基づいて低圧配電線のインピーダンス(RL(抵抗分),XL(リアクタンス分))を算出し、算出された低圧配電線のインピーダンスRL,XLを電圧調整装置2に出力する。
【0018】
電圧調整装置2は、配電線インピーダンス算出装置5で算出された低圧配電線のインピーダンスRL,XLを用いて低圧配電線の末端電圧が規定値内に入るように電圧を調整する。
【0019】
図4では、低圧配電線の途中に負荷が分散して接続されていることを想定し、低圧配電線を三分割し、1/3のインピーダンスRL/3,XL/3及び1/3の負荷により低圧配電線のインピーダンスを算出する方法を示している。
【0020】
図5は、低圧配電線のインピーダンスを算出する際に用いられる入力データを示す。図5(a)に示すように、入力項目としては、変圧器容量TVAは初期設定値が50KVAであり、最大負荷容量MVAは100%であり、最大負荷容量時の低圧配電線の電圧降下ΔVは6Vであり、平均負荷力率PFは95%で固定で、低圧配電線線径は60mm2である。図5(b)は、柱上変圧器TFのインピーダンス算出値を示している。
【0021】
図5(c)は、低圧配電線の1kmあたりのインピーダンスのRKL(抵抗分),XKL(リアクタンス分)の算出値を示している。線種がCU−OWで、線径が60mmで、RKLは313mΩ、XKLは267mΩである。なお、低圧配電線がL(m)の時のインピーダンスをRL,XLとする。
【0022】
まず、図4に示すように、低圧配電線の負荷を例えば3分割し、低圧配電線が全長の1/3毎の位置に各1/3負荷容量の負荷を配置した場合の末端最大負荷容量換算値(AVA)を以下の式により算出する。ここでは、3軒均等配線分割均等負荷容量であるものとする。
【0023】
AVA=(1×MVA/3+2/3×MVA/3+1/3×MVA/3)×TVA=0.667×TVA×MVA
この場合、係数KAは0.67となる。
【0024】
また、負荷が低圧配電線の末端に集中した場合には、係数KAは1である。KAが1である場合には、
AVA=TVA×MVA/100=50(kVA)
となる。
【0025】
そして、算出された末端最大負荷容量換算を用いて以下の式により有効電流IPを算出する。負荷力率が図5(a)に示す例のように95%の場合、
IP=0.95×AVA/0.2kV=4.75×AVA
IP=4.75×KA×TAV×MVA
次に、低圧配電線のインピーダンスの抵抗分RL,リアクタンス分XLの算出方法を説明する。
【0026】
単相3線負荷平衡時における最大負荷容量MVA時の配電線電圧降下ΔV(末端負荷容量換算)は、以下の式により算出される。
【0027】
ΔV=RL×IP+XL×IQ
なお、IQは無効電流、RLの単位はΩ、XL=(XKL/RKL)×RL、IQ=(0.312/0.95)×IPである。
【0028】
なお、0.312はSIN(cos−10.95)により求められる。
【0029】
この式を用いて低圧配電線の電圧降下ΔVを表すと、以下の式となる。
【0030】
ΔV=RL×(1+(XKL/RKL)×(0.312/0.95))×IP
=RL×(1+(XKL/RKL)×(0.312/0.95))×4.75×AVA
この式からRLは以下の式で表される。
【0031】
RL=ΔV/((1+(XKL/RKL)×(0.312/0.95))×4.75×AVA))×1000
この式において、ΔVは、図5(a)に示す例のように6Vであり、XKL/RKLは、図5(c)に示すように267/313である。AVAは、図5(a)に示すTVAとMVAとで表されるから、これらのデータを上式に代入することにより、RLは19.73mΩとなる。
【0032】
また、XL=(XKL/RKL)×RLであるから、XLは16.83mΩとなる。
【0033】
次に、低圧配電線の末端電圧を算出する。まず、図2に示す単相3線式において、R−N相末端電圧(V)は以下の式で求められる。
【0034】
VR−M=(VR−J)−KA×(RK×(IRの有効電流分)+XK×(IRの無効電流分))−KA×(RK×((IR−IT)の有効電流分)+XK×((IR−IT)の無効電流分))
T−N相末端電圧(V)は以下の式で求められる。
【0035】
VT−M=(VT−J)−KA×(RK×(ITの有効電流分)+XK×(ITの無効電流分))−KA×(RK×((IT−IR)の有効電流分)+XK×((IT−IR)の無効電流分))
ここで、RT,XTは図5(b)の例のデータによる。RK=RT+RL、XK=XT+XLである。
【0036】
このように実施例1の配電線インピーダンス算出装置5によれば、配電線路基本設計で既知である最大負荷容量(MVA)と、最大負荷容量(MVA)時の低圧配電線の電圧降下(ΔV)と、負荷力率(PF)と、低圧配電線のR成分とX成分との比率とに基づいて低圧配電線のインピーダンス(RL,XL)を算出するので、手間がかからず簡単な方法で低圧配電線のインピーダンスを算出することができる。
【0037】
次に、配電線インピーダンス算出装置5で算出された低圧配電線のインピーダンスRL,XLのデータを用いて低圧配電線の末端電圧が規定値内に入るように電圧を調整する電圧調整装置2の詳細を説明する。
【0038】
図1に示す電圧調整装置2は、第1配電線2a(電力供給線)を介して系統電源1(例えば、単相3線式交流電源)に入力端子が接続され、送電端から末端までの間の複数地点Pt1〜Pt5に複数の負荷3−1〜3−5と複数の太陽光発電装置(PV)4−1〜4−5とが接続された第2配電線2b(電力供給線)の送電端に出力端子が接続されている。
【0039】
第2配電線2bの配電線インピーダンスZは、上記より算出した抵抗が%Rであり、リアクタンスが%Xである。第2配電線2bの地点Pt1には、負荷3−1および太陽光発電装置4−1が接続され、地点Pt2には、負荷3−2および太陽光発電装置4−2が接続され、地点Pt3には、負荷3−3および太陽光発電装置4−3が接続され、地点Pt4には、負荷3−4および太陽光発電装置4−4が接続され、地点Pt5には、負荷3−5および太陽光発電装置4−5が接続されている。
【0040】
なお、太陽光発電装置は、地点Pt1〜Pt5の全てに設ける必要はなく、例えば、地点Pt1〜Pt5の少なくとも1地点に設けられても良い。
【0041】
電圧調整装置2は、検出用太陽電池21、電流検出器22、電圧検出器23、電圧調整装置本体24を有している。
【0042】
検出用太陽電池21は、各太陽光発電装置4−1〜4−5の各発電容量を予測するために設けられ、太陽光を受けて発電し、その発電量を太陽電池発電量として電圧調整装置本体24に出力する。ここで、検出用太陽電池21および各太陽光発電装置4−1〜4−5の各太陽電池は、太陽からの日射量がほぼ等しく届くように配置されている。また、電圧調整装置2には各地点Pt1〜Pt5における各太陽光発電装置4−1〜4−5の各定格発電容量が予め入力されている。
【0043】
電流検出器22は、第2配電線2bの送電端に流れる電流を検出する。電圧検出器23は、第2配電線2bの送電端の電圧を検出する。電圧調整装置本体24は、検出用太陽電池21からの太陽電池発電量と電流検出器22からの検出電流と電圧検出器23からの検出電圧とに基づき第2配電線2bの送電端から末端までの電圧を規定値内に調整する。
【0044】
より詳細には、電圧調整装置2は、当該装置2(第2配電線2bの送電端)から第2配電線2bの末端までの上記算出した配電線インピーダンスZ(%R,%X)を予め算出値として入力するとともに、電流検出器22の検出電流と電圧検出器23の検出電圧とに基づき有効電流と無効電流とを演算し、太陽光発電装置4−1〜4−5による第2配電線2bの末端電圧の電圧上昇を計算する。
【0045】
また、電圧調整装置2は、検出用太陽電池21からの太陽電池発電量に基づき、第2配電線2bの送電端から末端までの間に取付けた各太陽光発電装置4−1〜4−5の各発電容量を予測計算する。具体的には、電圧調整装置2は、検出用太陽電池21からの太陽電池発電量が定格太陽電池発電量(100%)に対して何%かを求める。これをAo%とする。また、電圧調整装置2に予め入力されている各地点Pt1〜Pt5における各太陽光発電装置4−1〜4−5の各定格発電容量(各定格電流)をIpv1T〜Ipv5Tとすると、各太陽光発電装置4−1〜4−5の実際の発電による有効電流Ipv1(又はIpv2,Ipv3,Ipv4,Ipv5)は、
Ipv1(又はIpv2,Ipv3,Ipv4,Ipv5)=Ipv1T(又はIpv2T,Ipv3T,Ipv4T,Ipv5T)×Ao
として各地点毎に求められる。
【0046】
図6は実施例1の電圧調整装置2による配電線の末端電圧の電圧算出を示す図である。ここでは、説明を簡単にするために、地点Pt0、Pt1、Pt2のみとし、地点Pt0が第2配電線2bの送電端で電圧調整装置2の出力端子の位置とし、地点Pt2が第2配電線2bの末端に相当する。
【0047】
P1は地点Pt1の負荷3−1の有効電力、Q1は無効電力、Ip1は有効電流、Iq1は無効電流、PV1は太陽光発電装置4−1の有効電力、Ipv1は有効電流である。P2は地点Pt2の負荷3−2の有効電力、Q2は無効電力、Ip2は有効電流、Iq2は無効電流、PV2は太陽光発電装置4−2の有効電力、Ipv2は有効電流である。算出した地点Pt0、Pt1間の配電線インピーダンスは、抵抗r1,リアクタンスx1、地点Pt1、Pt2間の配電線インピーダンスは、抵抗r2,リアクタンスx2である。
【0048】
電圧調整装置2を第2配電線2bの送電端側に設置し、電圧調整装置2は、第2配電線2bの送電端に流れる電流および第2配電線2bの送電端の電圧を検出して、第2配電線2bの末端の電圧を算出し、第2配電線2bの送電端電圧から末端電圧までの電圧が規定値内になるように電圧調整装置2の出力電圧(送電端電圧)を調整する。
【0049】
各負荷および各太陽光発電装置の各発電容量が第2配電線2bに対して、均等に配置され、かつ負荷が力率負荷である場合には、配電線インピーダンス(%R,%X)<<負荷インピーダンス(RL、XL)の条件で、配電線一線当り(一相当り)、
配電線電圧降下=有効電流×配電線抵抗r+無効電流×配電線リアクタンスxと見なせる。このため、第2配電線2bの末端電圧は、
末端電圧=送電端電圧−係数K×(有効電流×配電線抵抗%R+無効電流×配電線リアクタンス%X)
で求められる。
【0050】
係数Kは、%Rと抵抗値、%Xとリアクタンス値、配電線のインピーダンスおよび配電線の送電端に流れる有効電流の均等から配置された負荷量を求めるための換算から求められる。
【0051】
次に、配電線電圧降下、末端電圧の算出をより具体的に説明する。各配電線電圧降下は、配電線インピーダンス(%R、%X)<<負荷インピーダンス(RL、XL)の条件で、配電線一線当り(一相当り)以下のようになる。
【0052】
地点Pt1、Pt2間の電圧降下V1-2は、
V1-2=r2×(Ip2−Ipv2)+x2×Iq2
となる。
【0053】
地点Pt0、Pt1間の電圧降下V0-1は、
V0-1=r1×(Ip1+Ip2−Ipv1−Ipv2)+x1×(Iq1+Iq2)
となる。
【0054】
地点Pt0、Pt2間の電圧降下V0-2は、
r1=r2、x1=x2として
V0-2=r1×(Ip1+2×Ip2−Ipv1−2×Ipv2)+x1×(Iq1+2×Iq2)となる。
【0055】
P1=P2、Q1=Q2と仮定すると、
V0-2=r1×(3×Ip2−Ipv1−2×Ipv2)+x1×(3×Iq2)
地点Pt2の電圧(末端電圧)V2は、
P1=P2、Q1=Q2と仮定すると
V2=V0−r1×(3×Ip2−Ipv1−2×Ipv2)+x1×(3×Iq2)
さらに、PV1=PV2と仮定すると
V0-2=r1×(3×Ip2−3×Ipv2)+x1×(3×Iq2)
地点Pt2 の電圧は
V2=V0−r1×(3×Ip2−3×Ipv2)+x1×(3×Iq2)
さらに、負荷力率100%とした場合、
V0-2=r1×(3×Ip2−3×Ipv2)
地点Pt2の電圧は
VPt2 =V0−r1×(3×Ip2−3×Ipv2)
となる。
【0056】
図7は実施例1の電圧調整装置の具体例の全体構成図である。図8は図7に示す実施例1の電圧調整装置の具体例の詳細構成図である。
【0057】
図7に示す電圧調整装置2は、単相3線式の配電線において、入力端子R1,N1,T1に単相3線式交流が入力され、出力端子R2,N2,T2から単相3線式交流が出力される。電圧調整装置2は、検出用太陽電池21、出力端子R2に接続される配電線の送電端に流れる電流を検出する電流検出器22a、出力端子T2に接続される配電線の送電端に流れる電流を検出する電流検出器22b、出力端子R2,N2,T2の電圧を検出する電圧検出器23、電圧調整部24a,24b、制御回路25、ゲート回路26a,26bを有する。制御回路25は、メモリ25aを有する。
【0058】
メモリ25aは、算出し入力した各地点間の配電線インピーダンスと各地点における各太陽光発電装置4−1〜4−5の各定格発電容量(各定格電流)とを記憶する。制御回路25は、検出用太陽電池21、電流検出器22a,22b、および電圧検出器23の検出信号とメモリ25aからの各地点間の配電線インピーダンスと各地点における各太陽光発電装置4−1〜4−5の各定格発電容量(各定格電流)とに基づき、第2配電線2bの末端電圧を算出する。
【0059】
ゲート回路26a,26bは、制御回路25からの末端電圧に基づき、電圧調整部24a,24bにゲート信号を送出する。
【0060】
電圧調整部24aは、R−N相側に設けられ、電圧調整部24bは、N−T相側に設けられている。電圧調整部24a,24bは、ゲート回路26a,26bからのゲート信号に基づき、第2配電線2bの末端電圧が規定値内になるように交流半導体スイッチからなるトライアックTRC1〜TRC5をオンまたはオフさせることにより補償電圧を変えて、末端電圧の電圧上昇対策および電圧降下対策を行う。
【0061】
図8では、電圧調整部24aの詳細構成を示す。なお、電圧調整部24bも電圧調整部24aと同一構成である。ここでは、電圧調整部24aの構成を説明する。
【0062】
図8において、トランスT1aの一次巻線T1apは、入力端子R1と出力端子R2との間に接続され、トランスT1aの二次巻線T1asの一端は、トライアックTRC1,TRC2の一端に接続されている。トランスT1aの二次巻線T1asの他端は、リアクトルL1を介してトライアックTRC3,TRC4,TRC5の一端に接続されている。
【0063】
トライアックTRC1の他端は、トライアックTRC5の他端およびトランスT3の二次巻線T3sの一端に接続されている。トライアックTRC2の他端は、トライアックTRC3の他端に接続されるとともに、ヒューズF1を介してトランスT3の二次巻線T3sの他端に接続されている。トライアックTRC4の他端は、ヒューズF2を介してトランスT3の二次巻線T3sの中点端に接続されている。トランスT3の一次巻線T3pの一端はトランスT1aの一次巻線T1apの一端に接続されている。トランスT3は、誘導雷などによる半導体素子の破損を防止する。
【0064】
図9はトライアックTRC1〜TRC5のオン/オフと補償電圧との関係を示す図である。ゲート回路26aは、トライアックTRC1〜TRC5のゲート端子にゲート信号を出力する。
【0065】
トライアックTRC1〜TRC5は、ゲート信号に基づき、図9のテーブルに示すようにオン又はオフして、例えば、補償電圧を+5V,+2.5V,0V,−2.5V,−5Vとすることにより、トランスT1aの一次巻線T1apの両端電圧が補償される。
【0066】
第2配電線2bの末端電圧が規定電圧以上であれば、最初に補償電圧を−2.5Vとし、まだ末端電圧が規定電圧以上であれば、補償電圧を−5Vとする。末端電圧が規定電圧未満であれば、最初に補償電圧を+2.5Vとし、まだ末端電圧が規定電圧未満であれば、補償電圧を+5Vとする。
【0067】
また、例えば、図1(b)に示すように、第2配電線2bの末端電圧が200Vラインから上昇した場合には、トライアックTRC2,TRC5をオンさせることにより、補償電圧が−5Vとなる。交流入力が200Vであり、補償電圧が−5Vであるので、交流出力、即ち、地点(送電端)Pt0の電圧は195Vとなり、200Vラインから下降する。
【0068】
同様にして、T−N相の電圧調整部24bにトライアックTRC6〜TRC10を設け、トライアックTRC6〜TRC10をオン又はオフすることにより、R−N相、T−N相を独立に制御でき、不平衡負荷対策も行える。
【0069】
図10は実施例1の配電線インピーダンス算出装置及び電圧調整装置2により実現される配電線インピーダンス算出方法及び電圧調整方法を示すフローチャートである。図10を参照しながら、配電線インピーダンス算出方法及び電圧調整方法を説明する。
【0070】
まず、配電線インピーダンス算出装置5において、対象配電線の最大負荷容量(MVA)とその時の低圧配電線の電圧降下(ΔV)とを入力する(ステップS10)。
【0071】
次に、配電線インピーダンス算出装置5において、既知の負荷力率と低圧配電線のRとXとの比とを入力し、最大負荷容量(MVA)とその時の低圧配電線の電圧降下(ΔV)と負荷力率と低圧配電線のRとXとの比とに基づいて、低圧配電線のインピーダンスRL,XLを算出する(ステップS11)。
【0072】
次に、送電端である第2配電線2bの地点Pt0の電流、電圧を電流検出器22、電圧検出器23により検出する。また、太陽電池発電量を検出用太陽電池21により検出する(ステップS12)。
【0073】
電圧調整装置本体24内の制御回路25は、検出用太陽電池21からの太陽電池発電量と各太陽光発電装置4−1,4−2の各定格発電容量(各定格電流)とから各太陽光発電装置4−1,4−2の実際の発電による各有効電流Ipv1,Ipv2を算出する(ステップS13)。
【0074】
制御回路25は、電流検出器22からの検出電流と電圧検出器23からの検出電圧とから有効電流、無効電流を求め、各有効電流Ipv1,Ipv2との差から各負荷3−1,3−2の有効電流Ip1,Ip2、無効電流Iq1,Iq2とを求める(ステップS15)。
【0075】
次に、制御回路25は、配電線インピーダンス(r,x)のデータを用いて、所定の電圧計算により第2配電線2bの末端電圧を算出する(ステップS17)。所定の電圧計算とは、第2配電線2bに接続される負荷が力率負荷の場合の計算式である。ゲート回路26a,26bは、制御回路25からの末端電圧に基づきゲート信号を生成する。
【0076】
次に、電圧調整部24a,24bは、ゲート回路26a,26bからのゲート信号に基づき、末端電圧が規定値内になるようにトライアックTRC1〜TRC10をオン又はオフさせて、補償量(補償電圧)を調整し決定する(ステップS19)。
【0077】
ゲート回路26a,26bは、制御回路25からの末端電圧および送電端電圧が規定値内かどうかを判定し、末端電圧および送電端電圧が規定値内でない場合には、ゲート信号を生成してステップS19に戻る。
【0078】
一方、末端電圧および送電端電圧が規定値内である場合には、ステップS19で決定された補償量により、電圧調整装置2で補償し(ステップS23)、地点Pt0の補償結果を確認する(ステップS25)。
このように、実施例1の電圧調整装置2によれば、例えば、太陽光発電量が負荷量を上回り、末端電圧が上昇した場合には、複数地点の各太陽光発電量を算出し、送電端の電流・電圧を検出し、逆潮流を含む有効電力、無効電力を算出し、これらと配電線インピーダンスから末端電圧を算出し、送電端電圧、末端電圧および各地点電圧が規定値内となるように電圧調整装置2の電圧を調整することができる。
【0079】
なお、電圧調整装置2の接続位置は、送電端のみならず中間点および複数点でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、配電設備などに適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 配電系統電源
2 電圧調整装置
3−1〜3−5 負荷
4−1〜4−5 太陽光発電装置(PV)
5 配電線インピーダンス算出装置
21 検出用太陽電池
22,22a,22b 電流検出器
23 電圧検出器
25 制御回路
26a,26b ゲート回路
25a メモリ
51 データ入力部
52 インピーダンス算出部
Z 配電線インピーダンス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電系統電源に入力端子が接続され送電端から末端までの間の複数地点に負荷が接続された低圧配電線の送電端に出力端子が接続された電圧調整装置に必要な前記低圧配電線のインピーダンスを算出するインピーダンス算出装置であって、
最大負荷容量と前記最大負荷容量時の前記低圧配電線の電圧降下と負荷力率と前記低圧配電線の抵抗分とリアクタンス分との比率とを入力する入力部と、
前記入力部で入力された前記最大負荷容量と前記最大負荷容量時の前記低圧配電線の電圧降下と負荷力率と前記低圧配電線の抵抗分とリアクタンス分との比率とに基づいて前記低圧配電線のインピーダンスを算出するインピーダンス算出部と、
を備えることを特徴とする低圧配電線のインピーダンス算出装置。
【請求項2】
前記電圧調整装置は、
前記低圧配電線の送電端に流れる電流を検出する電流検出器と、
前記低圧配電線の送電端の電圧を検出する電圧検出器と、
前記電流検出器からの検出電流と前記電圧検出器からの検出電圧と前記インピーダンス算出部で算出された前記低圧配電線のインピーダンスとに基づき前記低圧配電線の送電端から末端までの電圧が規定値内になるように補償量を調整することにより前記低圧配電線の送電端の電圧を調整する電圧調整装置本体と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の低圧配電線のインピーダンス算出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−237573(P2012−237573A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105015(P2011−105015)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【Fターム(参考)】