説明

低抽出性フィルム包装のための水性の放射線硬化組成物

【課題】
【解決手段】水性組成物を表面に塗布し、水の存在下で光化学線により該表面を照射して、硬化フィルムを形成することにより行なわれ、均一な水性の光化学硬化組成物から低抽出性フィルム包装を製造する方法であって、少なくとも1つのα,β−エチレン系放射線重合性の不飽和基と水とを有する水溶性化合物を必須成分として含み、食品類似物により抽出可能な水溶性化合物またはその残留成分は50ppb未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、現在係属中の2000年3月29日に出願された出願番号第09/538,024号の一部継続出願である。
【背景技術】
【0002】
本発明は、包装材料を製造するための水性の放射線硬化組成物およびプリントインクに関する。より特定すると、本発明は、抽出可能な成分のレベルが低い臭気の少ない食品包装材料を製造するための放射線硬化性組成物およびプリントインクに関する。
【0003】
エネルギー硬化性、低粘性インクおよびコーティングは、通常、アクリル化オリゴマーおよびモノマーの混合物からなる。通常、モノマーは、フレキソグラフ、グラビア、ローラーおよびタワープリントおよびコーティング用のインクもしくはコーティング調合物の粘度を調整するために用いられている。しかし、希釈モノマーは、紫外線(UV)もしくは電子線(EB)を照射した際の重合の間に完全に反応しない。そのような未反応のモノマーは乾燥したプリントインクまたはコーティングフィルム中に残留成分として残り、吸収並びに表面接触によって移行する。この残留成分の移行は、特に食品、飲料、タバコ、香水等の容器のような「臭気」や「異味」に敏感な包装にプリントやコーティングする場合、および、医薬およびヘルスケア包装などの硬化プリントインクまたはコーティングからの抽出物の量が無視できる量であることが必要なこのような用途においては問題となる。さらに、ときには低粘度のコーティングを形成するために溶剤が用いられることがある。
【0004】
溶剤をベースとするコーティングの例はMerillらの(特許文献1)に記載されており、これはアクリレート官能基を有するイソブチレンコポリマーと、所望により充填材を含む、過酸化物および放射線(エネルギー)硬化性組成物を開示している。この開示されたコポリマーは、炭素原子数4〜7のイソオレフィンとパラアルキルスチレンコモノマーのアクリレート改質コポリマーである。Merrillは、硬化した組成物からの抽出物の比率は無視でき、硬化した組成物は医薬およびヘルスケア産業に用いられる様々な高純度ゴム製品の製造用に用いることに適していることを開示している。Merrillはさらに、この組成物を、コンデンサー包装、食品と接触する材料、ワイヤケーブル絶縁材料として、および高純度ホースの製造に用いることができることを開示している。Merrillは、このコポリマーを主要溶媒としてのトルエンに溶解することによってコーティングを製造することを開示している。
【0005】
現在入手可能なUV/EBプリントインクおよびコーティングの臭気、異味および残留抽出物から生じる問題により、エネルギー硬化性製品は大規模な包装市場に参入できず、硬化前に溶剤もしくは水を除去することが必要な従来の溶剤もしくは水ベースのフレキソプリントインクおよびコーティングによっていまだに広く提供されている。アクリル化オリゴマーは通常、低粘性コーティング、および特にプリントインクの製造用にそれのみで(すなわちモノマー希釈材を用いることなく)用いるには粘度が高すぎる。
【0006】
しかし、木材および床コーティング用のUV/EB硬化性アクリル化オリゴマーの混合物用に希釈材として水を用いることは、(特許文献2)に開示されている。この調合物は、光に当てる前に非吸収性基材上で水を前もって蒸発または移行させることが必要な分散液もしくは乳濁液である。
【0007】
臭気、異味、および/または抽出性成分が僅かである硬化フィルムを生成する、モノマーおよび溶剤を含まない、均一なUV/EB硬化性水性プリントインクおよびコーティング調合物が要望されている。
【特許文献1】米国特許第5,824,717号明細書
【特許文献2】米国特許第6,011,078号明細書
【特許文献3】欧州特許出願第126341号明細書
【特許文献4】欧州特許出願第279303号明細書
【特許文献5】米国特許第4,946,508号明細書
【特許文献6】米国特許第4,946,509号明細書
【特許文献7】米国特許第5,024,894号明細書
【特許文献8】米国特許第5,062,894号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも1つのα,β−エチレン系放射線重合性の不飽和基と水とを含む水溶性化合物を含む、改良された均一な水性の放射線硬化組成物であり、ここでの改良とは、表面を前記組成物でコーティングし、水の存在下で有効量の光化学線に曝した場合に、硬化フィルムが形成され、ここで硬化フィルム1平方インチあたり10mlの擬似液体中に浸漬し加熱した場合にそれから抽出可能な非硬化残渣は50ppb未満であることが含まれる。
【0009】
本発明のさらなる態様は、少なくとも1つのα,β−エチレン系不飽和光化学線重合性基と水とを含む水溶性化合物を含む均一な水性の光化学硬化組成物を提供し、前記の均一な水性組成物を包装材料の表面上に塗布し、前記表面を水の存在下で光化学線により効率的に照射し、これによりフィルムを形成し、市販の食料品または医薬が前記フィルムと直接接触するように前記の包装材料で前記の食料品または医薬を包装するステップを含む、前記の市販食料品または医薬を包装する方法である。
【0010】
本発明の別の態様は、市販食料品と直接接触している表面を有する包装材料中の市販食料品であり、前記表面は、少なくとも1つのα,β−エチレン系不飽和光化学線重合性基と水とを含む水溶性化合物を含む均一な水性の光化学硬化組成物を提供し、前記の均一な水性組成物を前記の包装フィルムの表面上に塗布し、水の存在下で前記表面を光化学線により効率的に照射することを含む方法により製造されたフィルムによりコーティングされている。
【0011】
本発明の別の態様は、基材、および、2つ以上のアクリル基を含む水溶性オリゴマーと水から本質的になる均一な水性組成物を提供することにより得られた前記基材表面に接着した硬化フィルムを含む包装材料であり、ここで、均一な水性組成物を基材に塗布し、水の存在下で光化学線により硬化させ、これにより硬化フィルム1平方インチあたり10mlの擬似液体中に浸漬し加熱した場合に硬化フィルムから抽出可能なオリゴマー残渣は50ppb未満である。
【0012】
本発明の別の態様は、市販食品または医薬の包装に関する政府の要件を満たしたフィルムを用いて市販食料品または医薬を包装するための改良された方法であり、ここでの改良とは、前記フィルムとして、少なくとも1つのα,β−エチレン系不飽和放射線重合性二重結合基と水とを含む水溶性化合物を含む均一な水性の光化学硬化組成物を使用することが含まれる。
【0013】
本発明のさらにまた他の態様は、少なくとも1つのα,β−エチレン系不飽和光化学線重合性基と水とを含む水溶性化合物を含む均一な水性の光化学硬化組成物を提供し、前記の均一な水性組成物を表面上に塗布し、水の存在下で前記表面を光化学線で効率的に照射し、硬化フィルム1平方インチあたり10mlの擬似液体中に浸漬し加熱した場合に硬化フィルムから抽出可能なオリゴマー残渣は50ppb未満である、硬化フィルムを生成するステップを含む、低抽出性のFDAの規格に準拠した硬化フィルムを製造する方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、少なくとも1つのα,β−エチレン系放射線重合性の不飽和基と水とを含む水溶性化合物を含む、新規で均一な水性の放射線硬化組成物に関する。好ましくは、前記水溶性化合物は、2つ以上のアクリル基を含む水溶性オリゴマーであり、前記組成物はまた光重合系を含んでいてもよい。本明細書で使用した「低抽出性フィルム」なる語句は、以下に記載の溶剤抽出試験において溶剤にさらされた際に溶剤抽出可能なオリゴマー(すなわち50ppb未満)もしくは残留成分を実質的に含まない硬化フィルム組成物を意味するものとする。本発明の硬化性組成物は、染料や顔料のような着色剤を含んでもよい。そのような着色された組成物はプリント操作のプリントインクとしてまたは単に着色コーティングの形成に用いることができる。本明細書で使用した「プリントインク」なる語句はその従来の意味を有し、すなわち液体ビヒクルに分散された着色体、通常は固体顔料、から構成される着色された液体を意味する。特に本発明の放射線硬化性プリントインクは顔料または液体ビヒクルを含む。この均一な水性硬化性組成物は抽出物の量が制限された多くの用途に用いることができるが、この組成物は特に包装産業、より具体的には硬化したコーティングおよび/またはプリントされた物体が大気中および/または加工条件において食物製品と接触する食品包装産業において特に有用である。本発明の硬化した組成物は、食品、飲料、化粧品、医薬、ならびに医学およびヘルスケアおよび手術に使用される材料などの、硬化した組成物と接触する製品に実質的に全く汚染を与えない。特に、本発明の硬化した組成物は、臭気が僅かであるか全くなく、硬化した組成物と接触する食物製品にも実質的に全く異味を与えない。
【0015】
均一な水性硬化性組成物
本発明の均一な水性放射線硬化性組成物は、必須成分として、少なくとも1つのα,β−エチレン系放射線重合性の不飽和基、好ましくは2つ以上のアクリル基を含む水溶性オリゴマー、水、および所望により紫外線などの光化学線により活性化され得る光重合系、および/または染料もしくは顔料などの着色剤を含む、水溶性化合物を含む。
【0016】
水溶性化合物
本明細書で使用した「水溶性化合物」なる語句は、大気温度においてこの化合物の水溶液を与えるに十分な、限られた数の水溶性基、例えばカルボキシル、ヒドロキシル、エーテル等を含み、さらに少なくとも1つのα,β−エチレン系放射線重合性の不飽和基を含む、放射線硬化性化合物を意味する。好ましくは、水溶性化合物はオリゴマーである。本明細書で使用した「オリゴマー」なる語句は、ポリマー主鎖を介してまたは同様の結合基を介して中心の脂肪族の主鎖もしくは芳香族の主鎖に結合した、2つ以上の末端もしくは側鎖α,β−エチレン系不飽和基を含む化合物を含むものとする。本発明に使用した水溶性化合物は、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリウレタンメタクリレート、メラミンアクリレート、またはメラミンメタクリレートであってもよい。通常、このアクリレートは芳香族もしくは脂肪族アクリレートもしくはメタクリレートであり、好ましくはこの化合物は1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルのようなアルカノールグリシジルエーテルのジアクリレートエステル、エトキシル化芳香族エポキシド、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシル化脂肪族もしくは芳香族エポキシアクリレート、エトキシル化脂肪族もしくは芳香族エポキシメタクリレート、ポリオキシエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシエチレングリコールジメタクリレートである。好ましくは、エトキシル化芳香族エポキシドは、6〜20個のエトキシ基を含む。
【0017】
適切な水溶性化合物は、脂肪族および芳香族エポキシアクリレートおよびエポキシメタクリレートであり、好ましくは脂肪族化合物が用いられる。これは、例えばアクリル酸もしくはメタクリル酸と脂肪族グリシジルエーテルとの反応生成物を含む。
【0018】
さらに適切な化合物は、ポリエーテルアクリレートおよびメタクリレート、ポリエステルアクリレートおよびメタクリレート、並びにポリウレタンアクリレートおよびメタクリレートである。これらのうち、アクリル酸もしくはメタクリル酸と、重縮合剤として記載されているポリエステロールおよびポリエーテロールとの反応生成物が好ましい。(特許文献3)および(特許文献4)に記載の放射線硬化性アクリレートが特に好ましい。ここで用いられるポリエーテロールは好ましくはアルコキシル化、特にエトキシル化および/またはプロポキシル化一、二、三もしくは多官能性アルコールである。
【0019】
他の適切な化合物は、メラミンアクリレートおよびメタクリレートである。これは、例えば樹脂の遊離メチロール基をアクリル酸もしくはメタクリル酸によってエステル化することにより、またはエーテル化メラミン化合物をヒドロキシアルキルメタクリレート、例えばヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、およびヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレートによってエステル交換することにより得られる。
【0020】
さらに他の適切な化合物は、一般に、不飽和基を含む増粘剤である。これは一方においてポリウレタン増粘剤を含み、これは上記ヒドロキシアルキルメタクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレートの混入の結果としてα,β−エチレン系不飽和二重結合を含む。これはまた、ポリアクリレート増粘剤を含み、これは例えばヒドロキシ含有ポリマーまたは酸性基を含むポリマーとエポキシド含有メタクリレート、アクリレート、例えばグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートとのポリマー類似反応により、またはヒドロキシ含有ポリマーをメタクリル酸、アクリル酸を用いてエステル化することにより、または無水メタクリル酸、無水アクリル酸との反応により、またはNCO末端メタクリレート、メタクリレート、例えばメタクリロイルイソシアネート、イソシアネートエチルメタクリレート、イソシアネートエチルアクリレート等との反応により得られる。これはさらに、例えば無水メタクリル酸、無水アクリル酸との反応により、または二重結合を含む基を有するメタクリル酸、アクリル酸によるエステル化により改質されたポリビニルアルコールを含む。最後に、これはコモノマーとして無水マレイン酸を含むコポリマーを含み、このポリマーは上記ヒドロキシアルキルメタクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレートによる、またはヒドロキシビニルエーテル、例えば二重結合を有するブタンジオールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等による無水物の開環により改質される。
【0021】
特に好ましい水溶性化合物は、アルカノールグリシジルエーテル(このアルカノールは2〜3個のヒドロキシ基を有する)のジアクリレートエステル、例えば1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルのジアクリレート、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテルのトリアクリレート、またはこれらの混合物、およびエトキシル化アクリルオリゴマー(エトキシル化オリゴマーは9〜12個のエトキシ基を含む)、例えばエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパンジアクリレート、またはこれらの混合物を含む。特に好ましい水溶性化合物は、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルのジアクリレートエステルであり、これはノースカロライナ州シャーロットにあるBASF社からLaromer LR8765脂肪族エポキシアクリレートとして入手可能である。
【0022】
本発明の均一な水性放射線硬化性コーティング組成物は、水溶性放射線硬化性化合物を約0.1〜約95重量%、好ましくは少なくとも1つのα,β−エチレン系不飽和放射線硬化性二重結合からなる水溶性放射線硬化性化合物を75〜95重量%含む。好ましくは、均一な水性硬化性組成物は水を約5重量%〜約50重量%含む。通常、この水溶性化合物は75〜95重量%の固体含有率を達成するに十分な量でコーティング組成物に添加される。
【0023】
光重合系
均一な水性放射線硬化性組成物を電子線硬化に用いるように特に配合しない限り、本発明の均一な水性放射線硬化性コーティングは所望により、200〜420nmの波長のUVを照射した際にフリーラジカルを発生する付加重合光重合剤を含んでもよい。従って、本発明の均一な水性放射線硬化性コーティング組成物は、所望により、光重合系を0〜約10重量%含む。このような光重合系は、紫外線により活性化された際にフリーラジカルを直接与える1種類以上の化合物を有する。この光重合系はまた、近紫外線、可視光線および近赤外線領域にスペクトル応答を広げる増感剤を含んでいてもよい。紫外線により硬化されると、このコーティング組成物は、通常、約0.05〜約20重量%、好ましくは0.05〜10重量%、特に0.1〜5重量%の光重合系を有する。重合後の系の成分もしくはその残留物が、硬化したフィルムから移行しないまたは実質的に漏出しない限り、様々な光重合系を用いることができる。この種の有効な光重合剤は、B.M.MonroeおよびG.C.Weedにより「Photoinitiators for Free−Radical−Initiated Photoimaging Systems」、Chem.Rev.1993、93、435−448と題した文献に記載されている。単独でもしくは組み合わせて使用できる光重合剤は、ベンゾフェノン、アルキルベンゾフェノン、例えば4−メチルベンゾフェノン、ハロメチル化ベンゾフェノン、ミヒラーケトン(4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン)、ハロゲン化ベンゾフェノン、例えば4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロ−ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン(9,10−ジヒドロ−9−アントラセノン)、ベンゾイン、イソブチルベンゾインエーテル、ベンジルおよびベンジル誘導体、例えばベンジルジメチルケタール、および酸化ホスフィンもしくは硫化ホスフィン、例えばビスアシルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等を含む。単独でまたは他のものと組み合わせて用いることができる好ましい光重合剤は、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−ケトン、イソプロピル−チオキサントン等である。
【0024】
所望により、光重合系は、相乗剤、好ましくは第3級アミンをさらに含んでよい。適切な相乗剤の例は、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノアクリレート、例えばアミン改質ポリエーテルアクリレート、例えばBASF Laromer(登録商標)グレードLR8956、LR8889、LR8894、PO83F、およびPO84F、並びにこれらの混合物である。純粋な第3級アミンの場合、それはコーティング組成物の全量に対して5重量%までの量で用いられ、アミノアクリレートの場合、コーティング組成物の全量中に存在するアミノ基の数に対応する等量で用いられる。
【0025】
着色剤
本発明の均一な水性放射線硬化性組成物は、0〜50重量%の着色剤、例えば染料もしくは顔料をさらに含んでよい。好ましくは、そのような染料もしくは顔料は、硬化性組成物に可溶であるかまたは分散性であり、コートされた硬化組成物において永久的、非移行性成分を形成する。放射線硬化性インクとして用いる場合、均一な水性コーティング溶液は通常、そこに分散した1種以上の固体顔料を含む。この顔料は、あらゆる従来の有機もしくは無機顔料、例えば硫化亜鉛、Pigment White 6、Pigment Yellow 1、Pigment Yellow 3、Pigment Yellow 12、Pigment Yellow 13、PigmentYellow 14、Pigment Yellow 17、Pigment Yellow 63、Pigment Yellow 65、Pigment Yellow 73、Pigment Yellow 74、Pigment Yellow 75、Pigment Yellow 83、Pigment Yellow 97、Pigment Yellow 98、Pigment Yellow 106、Pigment Yellow 114、Pigment Yellow 121、Pigment Yellow 126、Pigment Yellow 127、Pigment Yellow 136、Pigment Yellow 174、Pigment Yellow 176、Pigment Yellow 188、Pigment Orange 5、Pigment Orange 13、Pigment Orange 16、Pigment Orange 34、Pigment Red 2、Pigment Red 9、Pigment Red 14、Pigment Red 17、Pigment Red 22、Pigment Red 23、Pigment Red 37、Pigment Red 38、Pigment Red41、Pigment Red 42、Pigment Red 57、Pigment Red 112、Pigment Red 122、Pigment Red 170、Pigment Red 210、Pigment Red 238、Pigment Blue 15、Pigment Blue 15:1、Pigment Blue 15:2、Pigment Blue 15:3、Pigment Blue 15:4、Pigment Green 7、Pigment Green 36、Pigment Violet 19、Pigment Violet 23、Pigment Black 7等であってよい。着色剤はまた、Federal Food Drag and Cosmetics Actにより使用が認可されている染料または顔料から選択してもよく、FD&C Red No.3、D&C Red No.6、D&C Red No.7、D&C Red No.9、D&C Red No.19、D&C Red No.21、D&C Red No.22、D&C Red No.27、D&C Red No.28、D&C Red No.30、D&C Red No.33、D&C Red No.34、D&C Red No.36、D&C Red No.40、D&C Orange No.5、FD&C Yellow No.5、D&C Yellow No.6、D&C Yellow No.10、FD&C Blue No.1、酸化鉄イエロー、酸化鉄ブラウン、酸化鉄レッド、酸化鉄ブラック、フェロシアン化鉄アンモニウム、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、酸化クロムグリーン、酸化クロム水和物グリーン、二酸化チタンが含まれる。本発明のエネルギー硬化性インクにおいて有用である顔料組成物は、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)、および(特許文献8)に記載され、その各々を参照することにより本明細書に引用する。このような顔料組成物は、顔料とポリ(アルキレンオキシド)グラフト顔料のブレンドである。着色剤を含む均一な水性硬化性組成物は、フレキソグラフ、グラビアレタープレス、ドライオフセットおよびリソグラフプリントのような従来のプリントにおいて使用するための放射線硬化性プリントインクの調整に特に有用である。これらのプリント操作の各々は特別な粘度範囲のような特別な特性を有するプリントインクが必要であるが、このような特性は、顔料およびオリゴマーを含む固体と水の比を調整することによって実現される。
【0026】
他の助剤
均一な水性硬化性組成物は、この組成物の必須特性に実質的に影響を与えずかつ重合後に助剤またはその残渣が硬化したフィルムから移行せず、実質的に漏出しない限り、他の助剤を含んでもよい。従って、本発明の均一な水性放射線硬化性組成物およびインクは、硬化したコーティングまたはプリントされたインクの流動性、表面張力および光沢を調整するための通常の助剤を含んでよい。インクもしくはコーティングに含まれるそのような助剤は、通常、表面活性剤、ワックス、充填材、艶消剤、またはこれらの組み合わせである。これらの助剤は、均展剤、湿潤剤、分散剤、消泡剤または液体中空気除去剤として機能し、または追加の助剤を特定の機能を与えるために添加してもよい。好ましい助剤は、フルオロカーボン界面活性剤、例えば3M社の製品であるFC−430、シリコン、例えばDow Chemical社の製品であるDC57、ポリエチレンワックス、ポリアミドワックス、パラフィンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス等を含む。
【0027】
均一な水性硬化性コーティング組成物は、約0〜約50重量%、好ましくは約1〜50重量%の充填材を含んでよい。適切な充填材の例は、四塩化ケイ素を加水分解することにより得られるシリケート(DegussaのAerosil(登録商標))、珪藻土、タルク、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムナトリウム、ケイ酸マグネシウム等である。コーティング組成物は、0〜20重量%の保護コロイドおよび/または乳化剤も含んでよい。適切な乳化剤は、Houben−Weyl、Methoden der Organischen Chemie、Volume XIV/1、Makromoleculare Stoffe、Georg−Thieme−verlag、Stuttgart、1961、pp.411−420に記載されているような、当業者に周知かつ水性乳化重合における分散剤として一般に用いられているものである。適切な保護材料は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(polyvinypyrrolidone)、セルロース、セルロース誘導体、スターチ、スターチ誘導体、ゼラチン、ゼラチン誘導体等を含む。
【0028】
低抽出性硬化フィルムの製造
本発明の一態様は低抽出性フィルムの形成方法である。この方法において、上記の均一な水性組成物を基材の表面に塗布し、水を実質的に除去することなく塗布した均一な水性組成物に、水の存在下で高エネルギー電子または紫外線を照射し、硬化フィルムを形成する。均一な水性組成物は従来の任意のコーティング技術を用いて均一なコーティングとして基材表面に塗布してよい。従って、この組成物をスピンコート、バーコート、ローラーコート、カーテンコートしてよく、またはブラシ、スプレー等によって塗布してよい。また、この均一な水性組成物を任意の従来のプリント技術を用いてプリントインクのようにイメージとして基材表面に塗布してよい。この均一な水性コーティング組成物を基材表面に塗布すると、高エネルギー電子もしくは紫外線のいずれかを用いて、水を前もって除去する前にすぐに1ステップで硬化する。通常、この高エネルギー電子は50〜200kV電子、好ましくは85〜180kV電子を有し、通常高エネルギー電子装置によって生成される。この高エネルギー電子の量は約2〜約4メガラド(Mrad)、好ましくは2.7〜3.5Mradである。紫外線は、約200〜約420nmのスペクトル領域で放出する任意の従来の非接触式照射装置を用いて行ってよい。コートされた組成物中の水は、非吸収性表面においてさえも、硬化工程に影響を与えず、むしろ抽出性オリゴマーをほとんどもしくはまったく残すことなく、完全に硬化したフィルムもしくはイメージへのオリゴマーの完全な硬化を促進する。水は硬化工程と同時におよび/またはその後に基材の処理の間に除去されると考えられている。本明細書で使用した「硬化フィルム」なる語句は、連続硬化フィルム組成物並びに不連続硬化インクイメージ組成物を含む。いずれの意味においても、硬化フィルムは基材に接着し、外部「硬化表面」を有し、これは以下に完全に記載した抽出手順に用いる表面領域を規定する。
【0029】
基材
基材およびその表面は、任意の通常の基材材料、例えばポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリナフテレンテレフタレート、ポリアクリレート、ポリアクリルなどのプラスチック、金属、複合体、ガラス、紙等で構成されていてよく、基材上の硬化したコーティングは、基材による汚染が少ないもしくは全くないことが必要な様々な用途に用いることができる。好ましくは、基材は、シート材料から形成された食品包装材料、瓶もしくは缶などの容器、または類似物である。より好ましくは、食品包装材料は、ポリオレフィン、金属化ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、または金属から選択され、より好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、アルミニウムホイル、または金属用器から選択される。または、包装材料は、化粧品、生物学的材料、例えばタンパク質もしくは標本、医薬などを含めるのに使用されていてもよい。
【0030】
抽出性成分
健康の安全性問題が生じる用途の大半は、食品、美容化粧品、医薬、薬物、および子供の玩具と直接接触する用途のプラスチックフィルムに関する。しかし、用途の大半は包装であり、簡潔にするために、全ての接触状況を包含するために「包装」なる語句を使用する。食品包装は、プラスチックフィルム包装における明らかに最大の用途である。消費者は包装された食品に関して心配し、プラスチック業者は包装された食品の健康の安全性に責任がある。食品の品質の多くの他の側面も、包装により影響を受ける。それ故、消費者による食品の支持を評価するために、相互効果の総合的結果を評価することは必須である。加工食品は、保存期間を延ばし腐敗を低減するために、調合(例えば添加剤を加える)または加工(例えば脱水)されていることが多い。他方で、このような異なる食品の混合または組合せによりさらに他の反応が起こる可能性もある。従って、食物はほぼ常に時間の経過と共に通常は悪くなる方向へと変化している。従って、プラスチックフィルムと接触している食品の包装に関連した健康リスクを評価することが必要である。
【0031】
健康の安全性の科学的根拠を評価するために、あらゆる食品包装状況(または実際にあらゆる食品接触状況)をその要素に分解する標準化モデル系を設定することが必要である。通常の要素は、食品とその環境の間の障壁、あるいは、成分間の相互作用から生じるあらゆる危険)と考えることができる。現実には、勿論、包装は均一ではなく、2種類以上の要素が関与している場合がある。また、規模の効果も考慮した方がよい。成分の相互作用の総合効果をより良く理解するために、モデルを使用して全体の包装を構築する。
【0032】
相互作用する成分には、食品、プラスチックフィルム、残留成分、添加剤、揮発性成分、不揮発性成分および環境が含まれる。プラスチックフィルムは、高分子量ポリマーと定義される。添加剤は、最初のポリマーの製造の後に添加される非ポリマー成分であり、加工剤、例えば加熱安定剤、および最終用途改善剤、例えばUV安定剤、帯電防止剤などを含む。残留成分は、最初の製造工程でポリマーの形成において反応せず、その後の精製によっても除去されなかったプラスチックフィルムの微量な原材料である。これらには、未反応モノマー(例えばポリスチレン中のスチレン、例えばナイロン中のカルポラクタム、および例えばポリ塩化ビニル中のVCM)が含まれるが、微量の溶剤および未変化触媒も含まれる。しかし、熱硬化性ポリマー(例えばポリウレタン)では、熱硬化が行なわれた基本的調合物の残留成分も含まれる。任意の段階で生じる分解生成物(例えばPEPからのアセトアルデヒド)を、揮発性成分または残留反応物として分類できる。環境には、プラスチックへと拡散またはプラスチックを通して拡散する可能性がある全ての臭気および非臭気成分が含まれる。注意するべき最も重要な材料は、酸素、水蒸気、および二酸化炭素であるが、特定の状況では、他の材料も意義がある場合もある(例えば滅菌を行なう塩素)。臭気成分は、食品またはプラスチックの味または匂い特性を変化させ得るものである。相互作用の中には純粋に技術的な意義を有しているものもあるが、重要ではない。しかし、いくつかは健康および安全性に関連しており、以下に列挙する。
【0033】
健康および安全性に関連した相互作用
【表1】

【0034】
放射線
滅菌のために、時に、食品、フィルム、または充填包装に慎重に放射線が当てられる。この目的における放射線の使用は、主に、医薬製品の保存および包装に限定されている。放射線の使用に際して、2点に注意を払わなければならない。第一に、法的規制により、特定の食品に関連して使用してもよい放射線の限界が定められている。第二に、強力な放射線により、多くのプラスチック、特にポリオレフィンの分解が生じる可能性があり(連鎖、切断、架橋、酸化などにより)、臭気を発生する可能性がある。有利な放射線は、主に、日光または蛍光ランプからのUV(および特定量の赤外線)であり、ここでの食品に対する効果は重大である場合があり、例えば、3時間太陽光にミルクを曝すとビタミンC含量が減少し、大幅にリボフラビン含有物が破壊される。これらの効果および他の食品に対する類似の効果は、毒性とは違う栄養に関連し、従って、健康に対する効果はほとんど深刻なものではなく、急性であることは全くない。事実、紫外線は、病原体に対するその滅菌効果から有益であることが判明している。
【0035】
透明フィルムは、販売時に食品を見えるようにするために必要とされることが多い。放射線に対する障壁を最大にする必要がある場合、最善の解決策は、特定のプラスチックを選択することではなく、プラスチックの顔料化である。全体の放射線透過度の90%超が、通常のプラスチックの着色に使用される顔料により遮断される。ある程度のUV透過度の減少は、UV吸収材を取り込むことによっても達成できる。可視光には透過であるがUVには比較的不透過である、いくつかの顔料も近年開発されている。これらは、先に述べた所望の透明度を維持しつつ、UV透過度を減少させるという課題を克服する。勿論、放射線への露出は、厚いコーティング、プリントインクにより、または、積層品における不透明成分(例えば紙)の使用により低減または消失させることができる。

【0036】
移行
移行は、プラスチックと食品の間の質量の移行(輸送)のことである。2つの様式で、すなわちプラスチックから食品へ(これは通常の意味である)または食品からプラスチックへ(「ネガティブな移行」と呼ぶ)と移行することができる。食品の特定の成分がかなりの範囲まで失われると場合、食品の栄養品質に影響を及ぼす可能性がある。主な影響は、保存剤の減少であるが、食品の特定の成分がかなりの範囲まで失われると場合、食品の栄養品質に影響を及ぼす場合もある。主な影響は保存剤の減少であるが、栄養的または感覚刺激的変化、例えばミルクの脂肪成分のポリオレフィンへの抽出などが起こる場合がある。例えば着色剤が食品から抽出されると、食品に対する影響は通常は大きくはないが、その結果として生ずるフィルムの変色(染色)は注目には値しない。
【0037】
プラスチックフィルム(または実際はあらゆるプラスチック)から食品への移行から生じる健康に対する危険性が証明されたケースは全く記録されていない。大半の法律または規制が移行および感覚刺激を網羅している。移行しない、自発的に移行、および漏出の3つの基本的な種類の移行メカニズムがある。移行しない移行とは、大半は食品、いくらかは無機残留物および少量の不活性(プラスチックに対して)な食品(例えば、塩漬けまたは砂糖漬けの食品)と接触している、高分子量ポリマー成分を含む。自発的移行とは、食品と接触していない状況下で起こり、すなわち、移行物質が、環境および食品へと拡散している。漏出は、プラスチックが食品または他の食品類似物(抽出剤)と接触している場合に起こる。移行物質の輸送メカニズムを変化させる何らかの物理的または化学的作用が存在するに違いないことは明らかであり、これは次の2つの作用であり得る。(1)移行物質はプラスチックにおいて比較的高い拡散係数を有しているが、揮発性物質ではなく、ここで接触が確立されるとすぐに、移行物質の表面層が溶解し、食品中の抽出剤の濃度が増加する。(2)食品またはその成分の1つがプラスチックを貫通し特定の深さまで到達し、プラスチック基体は実質的に変化し、これによりプラスチック中の成分の移行度は大きく増大し、成分はこの層を通り抜けて食品へと拡散する。(2)のメカニズムは、科学的解析により測定することが(1)のメカニズムより難しく、近年になって解明されてきたばかりであるが、大半の食品に接触するプラスチック中の大半の添加剤に対する関心は高いので、最も重要である。
【0038】
上述の通り、「擬似液体」は、理想的には包装される食品である必要があり、時には使用される。しかし、通常、深刻な問題が発生する。すなわち、あらゆる解析を困難とさせる食品の分解、移行物質の不均一な分布、およびフィルムが多種多様な食品に適していることを確証する必要性が生じる。それ故、解析にとって簡便であり食品の作用を模倣している液体である「食品類似物」を代わりに使用する。より現実的である可能性がある2成分混合物に基づいた一連の擬似体が開発されている。これらの成分には、テトラヒドロフラン、メタノール、水、およびクロロホルムが含まれる。一般的に使用される食品類似物には、以下が含まれる。
【0039】
【表2】

【0040】
移行試験は、一般的に、通常の加工温度で行なわれ、以下が典型的である。滅菌@115℃、パック内煮沸@100℃、熱帯環境下での保存@38℃、および一般的な冷蔵@4または5℃。より長期間の23℃での移行に匹敵する加速試験と想定されている40℃を使用することが多い。
【0041】
移行に関する全体的または国際的制限に関する法律が数多くあり、この制限は、食品中の濃度で(50〜60ppmが一般的である)または単位面積あたりの移行で規定される。制限の正当化に関する議論は、毒性危険物からの保護、不純物混和からの保護、および解析試験必要条件の低減である場合、国際的な移行限度を下回るレベルで移行する健康危険物に関する抽出物は試験する必要がないからである。
【0042】
食品包装を導く方法論は、いくつかの変化によって、多くの重要性を主に、薬物、医薬、化粧品、および美容化粧品の包装に応用される。主な差異は、毒性試験が、皮膚または他の身体表面と接触しているか、または噴霧剤の場合には吸入であることである。公衆衛生を守るために設計された、食品と接触するプラスチックフィルムの規制制度を考案することは、複雑な科学的問題である。包装およびプラスチックフィルムの使用の両方が、過去数十年間で爆発的に増大してきており、従って、関連する規制制度は、進歩に追いつくのにある程度の困難さを経験しており、絶えず再検討され変化する。米国では、例えば、包装材料は、Department of Health,Education and WelfareのFDAの管轄下である。FDA規制には、ベースポリマーおよび添加剤の詳細を示す莫大なリストが含まれる。プラスチックおよびその成分の使用は、食品の種類、温度、適用型(例えばフィルム、成形、またはポリマー組成物)の項目で認可されている。多くの場合、米国の規制は、詳細な方針または法律のない外国から容認されており、米国の規制への準拠が要求されることが多い。
【0043】
感覚刺激
食料品を選択する際に、消費者は、通常、基本的に、例えばタンパク質に対して肉または鶏肉、炭水化物に対してじゃがいも、米、またはパン、野菜、果物などの種類を決める。しかし、バーゲン前のどの製品を実際に購入するか選択する場合、記載の栄養価または含量が左右する場合がある。しかし、主な要因は、視覚、聴覚、触覚、味覚、および嗅覚の5つの主要な感覚によって知覚することに関連する。これらは、感覚刺激効果と呼ばれ、総合的に感覚刺激である。包装において、それらは主に嗅覚および味覚に限定される。
【0044】
食品に接触するプラスチックフィルムは、例えば、通常、食品の味または匂いを与える必要はない。逆に、通常、与えないことが必要とされる。食品の味または匂い特性がいずれにしても変化した場合、結果は、ほぼ常に好ましくないと判断される。変化が十分に不快である場合、結果は「異臭」、「異味」又は「腐敗」と呼ばれる。これらは、食品とプラスチックまたは環境との相互作用から生じるという点で、毒性危険物と同様の力学的原理を有する。稀な例外を除いて、大半の高分子量ポリマーは無味無臭であり、従って、全ての市販のプラスチックフィルムの大半の成分は、いかなる食品の異味または異臭を引き起こさない。これは、全ての包装材料にあてはまらない顕著な一般化である。プラスチックから食品へと拡散しやすい揮発性物質は、製造工程に由来する残留物質(残留反応物も含む)、転化工程中に形成される分解生成物、および添加剤に分類される。転化工程中に形成される分解生成物については、これらは、通常、重合化により生じる。プラスチックの中には加熱時に僅かに分解するものもある。ポリスチレンおよびナイロンなどのいくつかの場合では、主な反応は脱重合であり、副生成物はモノマーまたはオリゴマーである。大半の場合、生成物は、明らかであるものではない。
【0045】
臭気または味の試験に信頼性をもって使用できる機械的装置は依然として存在しない。また、動物も、特殊な場合には時折使用されることもあるが、動物はプラスチックの試験には適していない。結果として、ヒト群を使用しなければならず、ヒトパネルメンバーが、異臭または異味の性質示度を与えなければならない。自明の必須事項ではないが、パネルの個体を選択する際に、同定した特定の刺激に対するその感覚反応を調べておくことが望ましい。
【0046】
低抽出性フィルム
本発明の均一な水性放射線硬化性組成物は、表面上に組成物をコーティングし、水の存在下で高エネルギー電子または紫外線により硬化すると、硬化フィルムを形成し、抽出可能な水溶性オリゴマーまたは残留成分は50ppbの未満の、このフィルムから、本願明細書に記載したような抽出試験下で擬似液体によりユニークな特徴を有する。本明細書に使用した「擬似液体」という用語は、意図される使用条件下で硬化フィルムと接触すると考えられる物質を非常に擬似した、液体または溶剤を意味する。従って、例えば硬化フィルムを食品包装材料に取り込むと、擬似液体は、加工および保存中において包装された食品を擬似する必要がある。この場合、擬似液体は、好ましくは、「食品類似物」である。
【0047】
食品類似物を使用した抽出手順は、Office of Premarket Approval(OPA)、HFS−215、Center of Food Safety&Applied Nurtrition(CFSAN)、FDA、200C.St.、S.W.ワシントンDC20204から入手可能な、「Guidance for Industry Preparation of Premarket Notifications for Food Contact Substances:Chemistry Recommendations」、1999年9月と題した文献に記載されている。FDA手順によれば、硬化フィルムの試料を、通常の加工、保存および使用の最中に硬化フィルムと接触する食品品種を擬似した食品類似物(すなわち溶剤または溶剤混合物)に浸漬する。
【0048】
抽出に使用される食品類似物の量は、硬化フィルムの露出表面積から決定される。従って、硬化フィルム1平方インチ(6.45cm)あたり、10mlの食品類似物を抽出に使用する。本発明に使用するに適した食品類似物の例には、10%エタノール/水溶液、50%エタノール/水溶液、95%エタノール/水溶液、食用油、240〜270℃の範囲の沸点を有し、飽和C(50〜65%)およびC10(30〜45%)のトリグリセリドからなるヤシ油、合成C10、C12、およびC14トリグリセリドの混合物などが含まれる。1つの抽出試験において、浸漬した試料を少なくとも40℃で240時間加熱する。より厳しい抽出試験においては、浸漬した試料を、最初に、約121℃で2時間加熱し、その後、約40℃で238時間加熱する。
【0049】
硬化フィルムが、缶または飲料瓶などの容器の内表面上に形成されると、適切な量の食品類似物を容器に加えて試験してもよい。通常、硬化フィルムは、移行セルを使用して試験し、ここでは既知の表面積の標本が、既知の容量の食品類似物により抽出される。使用してもよい通常の移行セルは、Snyder,R.C.and Breder,C.V.、J.Assoc.Off.Anal.Chem.68(4)、770−777、1985に記載の2面移行セルである。このような移行セルは、以下の特徴を含む必要がある。既知の表面積および厚さを有する硬化フィルムを含む試料プラークは、ガラスビーズなどの不活性スペーサーにより分離され、これにより、擬似液は、各プラークの周囲に自由に流動し、上部にできた空間は最小限にすべきであり、特に移行物質が揮発性物質である場合、ガス密閉および液体密閉の封を維持すべきであり、セルは穏やかに攪拌して、食品類似物中の質量移行の抵抗となり得るあらゆる局在する溶解度低下を最小限にすべきである。任意の従来の分析法を使用して、食品類似物に存在する抽出されたオリゴマーまたは残留成分の量を決定することができる。従って、抽出物の性質は、適切な化学的または物理的試験、例えばNMR、UV−可視分光計、原子吸収分光計、FTIR分光計、質量分析、ガスまたは液体クロマトグラフィーなどにより決定することができる。
【0050】
本発明において、抽出物のレベルは、感覚刺激臭気試験および分析装置法の2つの方法を使用して決定する。一般に、硬化フィルムの残留臭気は、コーティング中を移行し通常は漏出性である、コーティング中の残留未反応材料に関連している可能性があることが認められている。この未反応材料もまた抽出でき分析技術により定量できる。臭気は主観的な測定であるが、臭気が不快なものである場合かまたは食品および飲料の混入および/または望ましくない生理的応答、例えばアレルギー反応、皮膚炎などを引き起こす可能性のある漏出性成分が示唆される場合には、消費者用製品には非常に重要である。
【0051】
残留臭気試験
コーティング組成物は#3メイヤーバーにより紙板およびアルミニウムホイルに塗布し、組成物に応じて120〜500mJ/cmのUVエネルギーを送達するUV光により硬化させ(UV硬化組成物)、または、165kV電子による3Mradの電子線条件で硬化する。同じ寸法の硬化被覆された紙板およびホイル試料を切り取り、ねじ式の密封ふたを取り付けた1リットルのガラス瓶の内部に入れる。試料を含むこの瓶を60℃のオーブンに30分入れる。その後、数人検査官(少なくとも5人)が各瓶を開き、臭気を1〜5のスケールで評価する。ここで、「1」は最も臭気が弱いことを示し、「5」は最も臭気が強いことを意味する。その後、各試料の平均スコアを記録する。残留臭気は未反応材料または抽出物の量に依存する。
【0052】
溶剤摩擦試験
硬化フィルムの試料を、平坦な硬質表面の上に、この硬化フィルムを置く。次いで硬化フィルム表面を、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール等のような溶剤で飽和させたアプリケーターパッドで繰り返し擦る。このアプリケーターパッドは通常コットン、柔らかな布帛もしくは紙製品の束であり、通常の手の圧力で繰り返し擦る。フィルム表面が劣化(例えば溶出、軟化、磨耗等)するまでのフィルム表面を擦った回数を硬化フィルムの耐溶剤性の値とする。通常、選択された溶剤において、硬化フィルムを、劣化が観察されるまでに10回以上、好ましくは20〜75回、もしくはそれ以上擦った場合に耐溶剤性があると考えられる。
【0053】
直接溶剤抽出
100cmの各硬化フィルムを小さな正方形に切り取り、16mlのバイアルに入れる。10mlの溶剤(アセトニトリルもしくは塩化メチレン)を加え、室温で24時間試料を放置する。24時間後、3mlの溶液を取り出し、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン濾紙に通してろ過し、オートサンプラーバイアルに入れて分析する。次いで高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて抽出物を分析する。移動相は50%水/50%メタノールであり、大気温度において0.8ml/分の速さで均一濃度で流す。溶出液を205nmでモニターするホトダイオードアレイ検出器(PDA)を用いて分析する。カラムはPhenomenex(登録商標)LUNA C18カラム、4.6mm×250mm、5μ粒度、3400psi高圧限界である。
【0054】
食品類似物による背面の抽出
使用する食品類似物(抽出溶液)は、(容量基準で)95%のエタノールおよび5%の水を含む水/エタノール溶液である。本願明細書で擬似した手順には、10gの食品を、1平方インチの包装フィルムに露出させるようにと記載されている。従って、1mlの抽出溶液を20mlバイアルに加える。UV硬化フィルムのプリントされていない側を、バイアル開口部の上に乗せ、テフロン(登録商標)ライニングキャップを使用してそれに封をする。3つのバイアルの表面積(開口部)は1.1平方インチであり、15ml(3バイアル×5ml)の抽出溶液の重量は11gである。逆さにしたバイアルをオーブンに入れ、40℃で10日間加熱する。検出範囲を拡大するために、12個のバイアルの抽出溶液を合わせ、蒸発させて1ml未満とし、次いでアセトニトリルで希釈して容量を増やす。この手順により、4.4平方インチの全抽出面積を得た。次いで溶液を分析する。濃縮試料を、直接抽出法に上記と同じHPLC法により分析する。
【0055】
本発明の均一な水性放射線硬化性組成物を、以下の実施例により説明するが、これにより限定されるものではない。
【実施例1】
【0056】
80部の脂肪族エポキシアクリレート(BASF製のLaromer LR8765)、19.5部の水、および0.5部のアクリル化シリコン(Tego製のRad 2500)を混合し、安定なコーティング材を作製した。この組成物を巻ワイヤロッドにより3〜6μmの厚さに塗布し、165kV電子の3Mradの電子線によって硬化させる。得られたコーティング材は70以上の光沢を有し、前記の溶剤摩擦試験を、すなわちメチルエチルケトン(MEK)摩擦を30回以上呈してによって示されているように、完全に硬化させた。
【実施例2】
【0057】
77部の脂肪族エポキシアクリレート(BASF製のLaromer LR8765)、19.5部の水、および3部の光重合剤(Ciba製のIrgacure 2959)、および0.5部のアクリル化シリコン(Tego製のRad 2500)を混合し、安定なコーティングを製造した。この組成物を巻ワイヤロッドにより3〜6μmの厚さに塗布し、少なくとも120mJ/cmの紫外線によって硬化させる。得られたコーティングは>70の光沢を有し、前記の溶剤摩擦試験、すなわち20回を超えるMEK往復摩擦によって示されるように、完全に硬化した。
【実施例3】
【0058】
30部の高エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(15モルEO、Sartomer製のSR9035)、47部の脂肪族エポキシアクリレート(BASF製のLaromerLR8765)、19.5部の水、および0.5部のアクリル化シリコン(Tego製のRad 2500)を混合し、安定なコーティングを製造した。この組成物を巻ワイヤロッドにより3〜6μmの厚さに塗布し、165kV電子の3Mradの電子線によって硬化させる。得られたコーティングは>70の光沢を有し、前記の溶剤摩擦試験、すなわち18回を超えるMEK往復摩擦によって示されるように、完全に硬化した。
【実施例4】
【0059】
30部のエトキシル化ビスフェノールAジアクリレート(Sartomer製のSR602)、47部の脂肪族エポキシアクリレート(BASF製のLaromar LR8765)、19.5部の水、3部の光重合剤(Ciba製のIrgacure 2959)および0.5部のアクリル化シリコン(Tego製のRad 2500)を混合し、安定なコーティングを製造した。この組成物を巻ワイヤロッドにより3〜6μmの厚さに塗布し、少なくとも120mJ/cmの紫外線によって硬化させた。得られたコーティングは>82の光沢を有し、前記の溶剤摩擦試験、すなわち40回を超えるMEK往復摩擦によって示されるように、完全に硬化した。
【実施例5】
【0060】
70部のグリセロールベースポリエーテルアクリレート(BASF製のLaromer 8982)、10部のエポキシアクリレート(Reichhold製の91−275)、15部の水、3部の光重合剤(Ciba製のIrgacure 2959)、および2部のシリコン(Witco製のL−7602)を混合し、安定なコーティングを製造した。この組成物を巻ワイヤロッドにより3〜6μmの厚さに塗布し、少なくとも120mJ/cmの紫外線によって硬化させた。得られたコーティングは>90の光沢を有し、前記の溶剤摩擦試験、すなわち15回を超えるMEK往復摩擦によって示されるように、完全に硬化した。
【実施例6】
【0061】
この例は、本発明に従って配合した赤プリントインクを説明する。40部の赤色着色剤水性分散液(Sun Chemical Pigments Division製のSunsperse RHD6012)、50部の脂肪族エポキシアクリレート(BASF製のLaromer LR8765)、5部の水、5部の光重合剤(CibaのIrgacure 2959)を混合し、1〜2μmの厚さまでフレキソハンドプルーファー(インチアニロックスあたり300ライン)で塗布し、少なくとも250mJ/cmの紫外線によって硬化させた。得られたインクは前記の溶剤摩擦試験、すなわち10回を超えるIPA往復摩擦によって示されるように、完全に硬化した。
【実施例7】
【0062】
この例は、本発明に従って配合した青プリントインク材について説明する。30部のPigment Blue 15:3(Sun Chemical製のフタロシアニンブルー)および70部の高エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(15モルEO、Sartomer製のSR9035)を3本ロールミルで粉砕して2/0の粉砕物を含む濃縮基材を形成した。このベース20部を40部のポリエチレングリコール(400)ジアクリレート(Sartomer製のSR344)、10部の光重合剤(Ciba製のIrgacure 2959)、10部の高エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(15モルEO、Sartomer製のSR9035)および40部の水と混合し青色インクを形成し、これを約1〜2μmの厚さまでフレキソハンドプルーファー(インチのアニロックスロールあたり300ライン)で塗布し、少なくとも250mJ/cmの紫外線によって硬化させた。得られたインクは前記の溶剤摩擦試験、すなわちIPA往復摩擦を12回呈して、完全に硬化した。
【実施例8】
【0063】
実施例1の電子線硬化水性組成物の残留臭気を、前記の「残留臭気試験」を使用して、従来の電子線硬化組成物(組成物B)と比較した。
【0064】
組成物B:30部のエトキシル化トリメトイルプロパントリアクリレート(Cognis製のPhotomer 4149)、30部のトリプロピレングリコールジアクリレート(UCB Radcure製のTRPGDA)、30部のエポキシアクリレート(Reichhold製のEpotuf 91−275)、7.5部のベンゾエート可塑剤(Velsicol製のBenzoflex9−88)、1部のポリオキシプロピレンステレート(Lambent Technologies製のProlam MR−216)、2部のポリジメチルシリコン(Witco製のL7602)、1部のシリコン(Dow Corning製のDC−57)、および0.5部のワックス化合物(Carroll Scientific製のBarecoワックス化合物)をよく混合し、安定なコーティング組成物を得る。
【0065】
「残留臭気試験」手順で前記したように、各コーティング組成物は、ワイヤーロッドにより、紙板およびアルミニウムホイルに3〜6μmの厚さに塗布し、165kV電子の3Mradの電子線により硬化させた。手順に記載したように、試料の臭気を評価し、結果を、以下の表に開示する。
【0066】
【表3】

【実施例9】
【0067】
実施例1の電子線硬化水性組成物の残留臭気および全抽出物を、前記の「残留臭気試験」手順および直接抽出手順を使用して、従来の電子線硬化組成物(組成物C)と比較した。
【0068】
組成物C:40部のエトキシル化トリメトイルプロパントリアクリレート(Cognis製のEOTMPTA、Photomer4149)、26部のトリプロピレングリコールジアクリレート(UCB Radcure製のTRPGDA)、25部のエポキシアクリレート(Reichhold製のEpotuf91−275)、6.3部のベンゾエート可塑剤(Velsicol製のBenzoflex9−88)、0.7部のポリオキシプロピレンステレート(Lambent Technologies製のProlam MR−216)、および2部のポリジメチルシリコン(Witco製のL7602)をよく混合し、安定なコーティング組成物を得る。
【0069】
「残留臭気試験」手順で前記したように、各コーティング組成物を、巻ワイヤロッドにより、アルミニウムホイル上に3〜6μmの厚さに塗布し、165kV電子の3Mradの電子線により硬化させた。「残留臭気試験」手順で記載したように、試料の臭気を評価した。各々の硬化させた組成物が被覆した残留抽出物は、溶剤が塩化メチレンである「直接溶剤抽出」手順で記載したように決定される。各試験の結果を、以下の表に開示する。
【表4】

【0070】
残留臭気試験
前記の実施例1〜9を、5人の検査官が残留臭気試験し、結果を以下の表3に示す。
【表5】

【実施例10】
【0071】
本発明のUV硬化水性組成物(組成物D)の残留抽出物を、上記の「食品類似物による背面の抽出」手順(ここでの溶媒は塩化メチレンである)を使用して従来のUV硬化組成物(組成物E)と比較した。
【0072】
組成物D:77部の脂肪族エポキシアクリレート(BASF製のLaromer LR8765)、19.5部の水、および3部の光重合剤(Lamberti製のKIP150)を混合し、安定なコーティング溶液を得た。
【0073】
組成物E:30部のトリメトイルプロパントリアクリレート(Cognis製のTMPTA、Photomer 4006)、25部のトリプロピレングリコールジアクリレート(UCB Radcure製のTRPGDA)、24部のエポキシアクリレート(Reichhold製のEpotuf91−275)、7.0部のベンゾフェノン光重合剤(Velsicol製)、1.0部のジメチルベンジルケタール光重合剤(Ciba製のIrgacure651)、3.0部のトリエタノールアミン(ChemCentral製)、8.0部のアクリル化アミン(BASF製のLarmoer8956)および2部のシリコン(Dow Corning製のDC57)をよく混合し、安定なコーティング組成物を得る。
【0074】
各コーティング組成物を、紙板に塗布した。巻ワイヤロッドにより厚さ3〜6μmとし、150mJ/cmの用量の紫外線により硬化させた。各々被覆硬化させた組成物に被覆された残留抽出物を、「背面の抽出」手順に記載のように決定した。各コーティング組成物の結果を、以下の表に開示する。
【表6】

【実施例11】
【0075】
本発明の実施例1のEB硬化水性組成物の残留抽出物を、前記した「食品類似物による背面の抽出」手順を使用して、従来のEB硬化組成物(組成物B)と比較した。各コーティング組成物を、巻ワイヤロッドにより、ポリオレフィンに3〜6μmの厚さに塗布し、165KeVで3Mradの用量の電子線により硬化させた。各々のコートし硬化させた組成物被覆した各残留抽出物を、「背面の抽出」手順に記載のように測定した。各コーティング組成物の結果を、以下の表に開示する。
【表7】

【実施例12】
【0076】
70部のポリエチレングリコール200ジアクリレート(Sartomer製のSR259)、29.5部の水、および0.5部のシリコン(Dow製のDC57)を混合し、安定なコーティングを製造した。この組成物を、巻ワイヤロッドにより、3〜6μmの厚さに塗布し、165kV電子および3Mradの電子線により硬化させた。得られたコーティングは、80の光沢を有し、溶剤摩擦試験(MEK往復摩擦が25回以上)を示すように、完全に効果した。
【実施例13】
【0077】
82部のポリエチレングリコール400ジアクリレート(Sartomer製のSR344)、14部の水、3部の光重合剤(Ciba製のirgacure2959)、および1.0部のアクリル化シリコン(UCB Radcure製のEbercyl)を混合し、安定なコーティング材を製造した。この組成物を、巻ワイヤロッドにより、3〜6μmの厚さに塗布し、少なくとも180mJ/cmの紫外線により硬化させた。得られたコーティング材は75の光沢を有し、溶剤摩擦試験(MEK往復摩擦が25回以上)を示すように、完全に硬化した。
【0078】
本明細書で上記した本発明の教義の利点を有する当業者は、数多くのその改変を行なうことができる。これらの改変は、本願特許請求の範囲に示されるような本発明の範囲内に包含されると捉えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良された均一な水性の放射線硬化組成物であって、
(a)少なくとも1つのα,β−エチレン系放射線重合性の不飽和基と、
(b)水
を含む水溶性化合物を含み、
改良とは、表面を前記組成物でコーティングし、
水の存在下で有効量の光化学線に曝した場合に、硬化フィルムが形成されることを含み、
非硬化残渣は、50ppb未満の硬化フィルム1平方インチあたり10mlの擬似液体中に浸漬し加熱した場合に抽出される、前記組成物。
【請求項2】
前記水溶性化合物は、オリゴマーである、請求項1の組成物。
【請求項3】
前記オリゴマーは、アクリレートである、請求項2の組成物。
【請求項4】
前記アクリレートは、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリウレタンメタクリレート、メラミンアクリレート、メラミンメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、またはポリエチレングリコールジメタクリレートからなる群より選択される、請求項3の組成物。
【請求項5】
前記アクリレートは、芳香族または脂肪族アクリレートである、請求項4の組成物。
【請求項6】
前記アクリレートは、アルカノールグリシダルエーテルのジアクリレートエステル、エトキシル化芳香族エポキシド、またはポリエチレングリコールジアクリレートである、請求項5の組成物。
【請求項7】
前記アルカノールグリシダルエーテルのジアクリレートエステルは1,4−ブタンジオールジグリシダルエーテルであるか、または、前記ジアクリレートエステルはエトキシル化芳香族エポキシドである、請求項6の組成物。
【請求項8】
前記エトキシル化芳香族エポキシドは、6〜20個のエトキシ基を含む、請求項7の組成物。
【請求項9】
前記の水は、水性組成物の重量に対して約5重量%〜約25重量%の範囲の量で存在する、請求項1の組成物。
【請求項10】
着色剤をさらに含む、請求項1の組成物。
【請求項11】
前記着色剤は、染料、顔料、またはその混合物である、請求項10の組成物。
【請求項12】
前記光化学線は、高エネルギー電子である、請求項1の組成物。
【請求項13】
紫外線により活性化される光重合系をさらに含む、請求項1の組成物。
【請求項14】
前記光化学線は、紫外線である、請求項13の組成物。
【請求項15】
前記表面は、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、金属化ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、セルロース材料、紙材料、ボール紙材料、金属、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリナフテレンテレフタレート、ポリアクリレートおよびポリアクリル酸からなる群より選択される、請求項14の組成物。
【請求項16】
前記表面は、ポリオレフィンまたは金属である、請求項15の組成物。
【請求項17】
前記ポリオレフィンは、ポリエチレンまたはポリプロピレンである、請求項16の組成物。
【請求項18】
前記金属は、アルミニウムまたは鋼鉄である、請求項16の組成物。
【請求項19】
前記擬似液体は、食品類似物である、請求項16の組成物。
【請求項20】
食品類似物は、10%エタノール/水溶液、50%エタノール/水溶液、95%エタノール/水溶液、および240〜270℃の範囲の沸点を有する食用油およびヤシ油からなる群より選択され、飽和C(50〜65%)およびC10(30〜45%)のトリグリセリド、および合成C10、C12、およびC14トリグリセリドの混合物からなる、請求項19の組成物。
【請求項21】
前記食品類似物は、塩化メチレンである、請求項19の組成物。
【請求項22】
市販食料品または医薬を包装する方法であって、
(a)均一な水性の光化学硬化組成物を提供するステップと、
(b)均一な前記の水性組成物を、包装材料の表面上に塗布するステップと、
(c)水の存在下で光化学線により前記表面を効率的に照射して、フィルムを生成するステップと、
(d)前記の市販食料品または医薬が前記フィルムと直接接触するように、前記の食料品または医薬を前記包装材料で包装するステップと、
ステップを含み、
前記均一な水性の光化学硬化組成物は、
(i)少なくとも1つのα,β−エチレン系不飽和光化学線重合性基と、
(ii)水と、を含む方法。
【請求項23】
前記水溶性化合物はオリゴマーである、請求項22の方法。
【請求項24】
前記オリゴマーはアクリレートである、請求項23の方法。
【請求項25】
前記アクリレートは、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリウレタンメタクリレート、メラミンアクリレート、メラミンメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、またはポリエチレングリコールジメタクリレートからなる群より選択される、請求項24の方法。
【請求項26】
前記アクリレートは、芳香族または脂肪族アクリレートである、請求項25の方法。
【請求項27】
前記アクリレートは、アルカノールグリシダルエーテルのジアクリレートエステル、エトキシル化芳香族エポキシド、またはポリエチレングリコールジアクリレートである、請求項26の方法。
【請求項28】
前記アルカノールグリシダルエーテルのジアクリレートエステルは1,4−ブタンジオールジグリシダルエーテルであるか、または、前記ジアクリレートエステルはエトキシル化芳香族エポキシドである、請求項27の方法。
【請求項29】
前記エトキシル化芳香族エポキシドは、6〜20個のエトキシ基を含む、請求項28の方法。
【請求項30】
前記の水は、前記水性組成物の重量に対して約5重量%〜約25重量%の範囲の量で存在する、請求項22の方法。
【請求項31】
前記組成物は、10〜100,000センチポアズの粘度を有する、請求項22の方法。
【請求項32】
着色剤をさらに含む、請求項22の方法。
【請求項33】
前記着色剤は、染料、顔料、またはその混合物である、請求項32の方法。
【請求項34】
前記光化学線は、高エネルギー電子である、請求項22の方法。
【請求項35】
紫外線により活性化される光重合系をさらに含む、請求項22の方法。
【請求項36】
前記光化学線は、紫外線である、請求項35の方法。
【請求項37】
前記表面は、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、金属化ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、セルロース材料、紙材料、ボール紙材料、金属、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリナフテレンテレフタレート、ポリアクリレートおよびポリアクリル酸からなる群より選択される、請求項22の方法。
【請求項38】
前記表面は、ポリオレフィンまたは金属である、請求項37の方法。
【請求項39】
前記ポリオレフィンは、ポリエチレンまたはポリプロピレンである、請求項38の方法。
【請求項40】
前記金属は、アルミニウムまたは鋼鉄である、請求項38の方法。
【請求項41】
市販食料品と直接接触している表面を有する包装材料に包まれた市販食料品であって、前記表面は、方法により製造されたフィルムでコーティングされていて、前記方法は、
(a)均一な水性の光化学硬化組成物の提供と、
(b)前記の水性組成物を、前記包装材料の表面上への塗布と、
(c)水の存在下で光化学線により前記表面への効率的な照射と、
を含み、
前記水性の光化学硬化組成物は、
(i)少なくとも1つのα,β−エチレン系不飽和光化学線重合性基と、
(ii)水と、を含む、前記市販食料品。
【請求項42】
前記フィルムの水溶性化合物はオリゴマーである、請求項41の包装材料に包まれた市販食料品。
【請求項43】
前記オリゴマーはアクリレートである、請求項42の包装材料に包まれた市販食料品。
【請求項44】
前記アクリレートは、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリウレタンメタクリレート、メラミンアクリレート、メラミンメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、またはポリエチレングリコールジメタクリレートからなる群より選択される、請求項43の包装材料中の市販食料品。
【請求項45】
前記アクリレートは、芳香族または脂肪族アクリレートである、請求項44の包装材料中の市販食料品。
【請求項46】
前記アクリレートは、アルカノールグリシダルエーテルのジアクリレートエステル、エトキシル化芳香族エポキシド、またはポリエチレングリコールジアクリレートである、請求項45の包装材料に包まれた市販食料品。
【請求項47】
前記アルカノールグリシダルエーテルのジアクリレートエステルは1,4−ブタンジオールジグリシダルエーテルであるか、または、前記ジアクリレートエステルはエトキシル化芳香族エポキシドである、請求項46の包装材料に包まれた市販食料品。
【請求項48】
前記エトキシル化芳香族エポキシドは、6〜20個のエトキシ基を含む、請求項47の包装材料に包まれた市販食料品。
【請求項49】
前記の水は、前記水性組成物の重量に対して約5重量%〜約25重量%の範囲の量で存在する、請求項41の包装材料に包まれた市販食料品。
【請求項50】
前記組成物は、10〜100,000センチポアズの粘度を有する、請求項41の包装材料中の市販食料品。
【請求項51】
着色剤をさらに含む、請求項41の包装材料中の市販食料品。
【請求項52】
前記着色剤は、染料、顔料、またはその混合物である、請求項51の包装材料中の市販食料品。
【請求項53】
医薬と直接接触している表面を有する包装材料中の医薬品であって、前記表面は、方法により製造されたフィルムでコーティングされ、前記方法は、
(a)均一な水性の光化学硬化組成物を提供し、
(b)前記の均一な水性組成物を、前記包装フィルムの表面上に塗布し、
(c)水の存在下で光化学線により前記表面を効率的に照射することを含み、
前記水性の光化学硬化組成物は、
(i)少なくとも1つのα,β−エチレン系不飽和光化学線重合性基および
(ii)水
を含む、前記医薬品。
【請求項54】
前記フィルムの水溶性化合物はオリゴマーである、請求項53の包装材料中の医薬品。
【請求項55】
前記オリゴマーはアクリレートである、請求項54の包装材料中の医薬品。
【請求項56】
前記アクリレートは、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリウレタンメタクリレート、メラミンアクリレート、メラミンメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、またはポリエチレングリコールジメタクリレートからなる群より選択される、請求項55の包装材料中の医薬品。
【請求項57】
前記アクリレートは、芳香族または脂肪族アクリレートである、請求項56の包装材料中の医薬品。
【請求項58】
前記アクリレートは、アルカノールグリシダルエーテルのジアクリレートエステル、エトキシル化芳香族エポキシド、またはポリエチレングリコールジアクリレートである、請求項57の包装材料中の医薬品。
【請求項59】
前記アルカノールグリシダルエーテルのジアクリレートエステルは1,4−ブタンジオールジグリシダルエーテルであるか、または、前記ジアクリレートエステルはエトキシル化芳香族エポキシドである、請求項58の包装材料中の医薬品。
【請求項60】
前記エトキシル化芳香族エポキシドは、6〜20個のエトキシ基を含む、請求項59の包装材料中の医薬品。
【請求項61】
前記の水は、前記水性組成物の重量に対して約5重量%〜約25重量%の範囲の量で存在する、請求項53の包装材料中の医薬品。
【請求項62】
前記組成物は、10〜100,000センチポアズの粘度を有する、請求項53の包装材料中の医薬品。
【請求項63】
着色剤をさらに含む、請求項53の包装材料中の医薬品。
【請求項64】
前記着色剤は、染料、顔料、またはその混合物である、請求項63の包装材料中の医薬品。
【請求項65】
基材と、均一な水性組成物を提供することにより得られる、前記基材の表面に接着した硬化フィルムを含む包装材料であって、
(a)2つ以上のアクリル基を含む水溶性オリゴマーと、
(b)水から本質的に成り、
前記均一な水性組成物は基材に塗布され、水の存在下で光化学線により硬化させ、
50ppb未満であるオリゴマー残渣は、硬化フィルム1平方インチあたり10mlの擬似液体中に浸漬および加熱すると硬化フィルムから抽出される前記包装材料。
【請求項66】
市販食品または医薬の包装に関する政府からの要件を満たしたフィルムを用いて市販食料品または医薬を包装する改良された方法であって、この改良点は、前記フィルムとして、少なくとも1つのα,β−エチレン系不飽和放射線重合性二重結合基と水とを含む水溶性化合物を有する均一な光化学線硬化水性組成物を使用することを含む、前記方法。
【請求項67】
低抽出性のFDAの規格に準拠した硬化フィルムを製造する方法であって
(a)均一な水性の光化学硬化組成物を提供するステップと、
(b)均一な前記水性組成物を、表面上に塗布するステップと、
(c)水の存在下で光化学線により前記表面を効率的に照射して、これにより硬化フィルム1平方インチあたり10mlの擬似液体中に浸漬および加熱すると硬化フィルムから抽出可能なオリゴマー残渣は50ppb未満であるような硬化フィルムを製造するステップと、を含み、
前記水性の光化学硬化組成物は、
(i)少なくとも1つのα,β−エチレン系不飽和光化学線重合性基および
(ii)水
を含む。


【公表番号】特表2007−519771(P2007−519771A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545387(P2006−545387)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/042132
【国際公開番号】WO2005/066231
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(596024024)サン・ケミカル・コーポレーション (39)
【Fターム(参考)】