説明

低減された減衰RF技術を使用する、オブジェクト追跡中のマルチパス緩和のための方法およびシステム

広範囲の無線周波数(RF)基準でオブジェクトを同定し、追跡し、および位置探知する方法およびシステム。方法およびシステムは、RF位置探知信号の伝搬損失と精度損失とを最小限にする、低周波帯域のVHFを含む、狭帯域幅レンジング信号を使用する。方法とシステムは、追跡、位置探知精度をさらに改善する、狭帯域幅レンジング信号マルチパス緩和プロセッサを含む。信号は、マスターユニットからタグへと送信される。信号移動時間は、記録され、マスターとタグの間の距離が計算される。方法とシステムは、長距離のRF狭帯域幅レンジング信号貫通と、狭帯域幅レンジング信号マルチパス緩和プロセッサと併用してVHF帯を使用することによる改善された精度と、の達成を可能にする。デジタル信号処理とソフトウェア定義無線の技術が使用される。無線機によって送受信された実際の波形は、ソフトウェアによって定義される。マスターユニットとタグの役割は、逆にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RTLS(リアル・タイム位置探知サービス)を含む、オブジェクトの、無線周波数(RF)基準の同定、追跡、位置探知のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
個人を追跡するのと同様に、単一のオブジェクト、又は、一群のオブジェクトを追跡するため、オブジェクトの、相対的な又は地理学的位置の測定のためのRF基準同定および位置特定システムが、一般に使用されている。従来の位置特定システムは、開いた屋外環境の中での位置測定に使用されていた。RF基準の、全地球測位システム(GPS)、および支援されたGPSが、典型的に使用される。しかしながら、屋外と同様に、閉じた(すなわち、屋内)環境で、オブジェクトの位置探知を行うとき、従来の位置特定システムは、一定の不正確さに悩まされる。
【0003】
屋内および屋外の位置探知の不正確さは、主に、RF伝搬物理学、特に、RF信号の損失/減衰、信号散乱、および反射に起因するものである。損失/減衰および散乱といった問題点は、狭帯域レンジング信号を採用し、例えば、VHF範囲またはそれより低い範囲で、より低いRF周波数で操作することによって、解決され得る(同時継続中の出願番号11/670,595を参照)。
【0004】
VHFおよびより低い周波数での、マルチパス現象(例えばRFエネルギー反射)は、UHFおよびより高い周波数でのものほどひどくないが、位置特定精度へのマルチパス現象の影響は、位置測定を、産業によって必要とされるよりも、確かでなく、正確でないものにする。従って、狭帯域レンジング信号を使用しているRF基準同定および位置特定システムにおいてRFエネルギー反射(すなわちマルチパス現象)の影響を緩和するための方法およびシステムの必要がある。
【0005】
概して、従来のRF基準同定および位置特定システムは、マルチパス緩和用に、例えば、広帯域信号性質を活用する等、広帯域幅レンジング信号を用いることによって、マルチパスを緩和する(例えば、下記非特許文献1を参照)。さらには、空間ダイバーシチ及び/又はアンテナダイバーシチ技術は、幾つかの場合において使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】S. Salous等による論文、"Indoor and Outdoor UHF Measurements with a 90 MHz Bandwidth", IEEE Colloquium on Propagation Characteristics and Related System Techniques for Beyond Line-of-Sight Radio, 1997年, pp. 8/1-8/6
【0007】
しかしながら、空間のダイバーシチは、必要とされるインフラストラクチャーの増加につながるので、空間のダイバーシチは、多くの追跡-位置特定アプリケーションのオプションとはなれない。同様に、より低い動作周波数(例えばVHF)では、アンテナ・サブシステムの物理的寸法が大きくなりすぎるので、アンテナダイバーシチは、制限値を有している。この点については、オブジェクト、人、ペットおよび個人の物を位置探知するためのシステムおよび方法が記述されている、米国特許第6,788,199号がある。
【0008】
提案されているシステムは、マルチパスを緩和するためにアンテナアレイを使用する。システムは、902〜926MHzの周波数帯のUHFで作動する。アンテナの長さ寸法は、動作周波数の波長に比例することは周知である。また、アンテナアレイでは、アンテナが1/4または1/2波長によって通常分離されるので、アンテナアレイのエリアは、直線的寸法比率の立方体に対する、正方形および容量に比例する。したがって、VHFおよびより低い周波数では、アンテナアレイのサイズは、装置可搬性にかなり影響するだろう。
【0009】
他方、非常に制限された周波数スペクトルのために、狭帯域幅レンジング信号は、従来のRF基準同定および位置特定システムによって現在使用されているマルチパス緩和技術に、それ自体役に立つものではない。というのは、マルチパスによって引き起こされる範囲のレンジング信号歪み(すなわち、信号内での変化)は、雑音がある状態での確かな検波/処理には小さすぎる、からである。また帯域幅が制限されているため、狭帯域幅の受信器は、レンジング信号の直接視野(DLOS)パスと、小さな遅れによって分離されるときの、遅延されたレンジング信号パスとの間を識別することができない。というのは、狭帯域幅の受信機は、受信機の帯域幅に比例する、要求される時間分解能を欠いているためである(例えば、狭帯域幅は、入力されてくる信号を統合する作用を有している)。
【0010】
従って、技術分野において、狭帯域幅レンジング信号を使用し、UHF帯域周波数およびそれを超える周波数と同様に、VHSまたはそれより低い周波数で作動する、オブジェクトの同定と位置特定のための、マルチパス緩和方法とシステムに対する必要が、ある。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、関連する技術の1以上の欠点を実質的に除去する、リアル・タイム位置探知サービス(RTLS)を含む、オブジェクトの無線周波数(RF)基準同定、追跡および位置探知のための、方法およびシステムに関する。提案された方法およびシステムは、狭帯域幅レンジング信号を使用する。典型的な実施形態によれば、RF基準追跡および位置探知は、VHF帯で実行されるが、UHF帯およびより高い周波数と同様により低い帯域(HF、LFおよびVLF)上でも実行される。それは、技術およびアルゴリズムを含んでいるマルチパス緩和方法を使用する。提案されたシステムは、ソフトウェア実行型デジタル信号処理と、ソフトウェア定義無線技術と、を用いることができる。デジタル信号処理は、同様に使用することができる。
【0012】
典型的な実施形態のシステムは、装置とシステム全体にほんのわずかな増分費用で、標準FPGAおよび規格信号処理ハードウェアおよびソフトウェアを使用して構築することができる。同時に、狭帯域幅レンジング信号を使用しているRF基準同定および位置特定システムの正確さは、かなり改善される。
【0013】
例えば、VHFの、狭帯域幅のレンジング/位置探知信号用の送信器および受信機は、人またはオブジェクトの位置を同定するのに使用される。デジタル信号処理(DSP)およびソフトウェア定義無線(SDR)技術は、マルチパス緩和アルゴリズム実行と同様に、狭帯域幅レンジング信号を生成し、受け取り、かつ処理するために使用され得る。狭帯域幅レンジング信号は、ヒト又はオブジェクトを、操作の半二重モード、全二重モードまたはシンプレックスモードでの、人またはオブジェクトを同定し、位置探知し、追跡するために使用される。デジタル信号処理(DSP)およびソフトウェア定義無線(SDR)技術は、マルチパス緩和アルゴリズムを実行するためにマルチパス緩和プロセッサの中で使用される。
【0014】
本発明の追加の特性および利点は、続く記載において明らかにされ、部分的には記載から明らかになるか、本発明の実行によって習得されてもよい。本発明の利点は、添付された図面と同様に、本発明の記載とその請求の範囲において、特に抽出される構造によって実現され、獲得されるだろう。
【0015】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、例示的及び説明的なものであって、請求の範囲の本発明のさらなる説明を与えることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
添付の図面(それらは本発明についてのさらなる理解を与えるために、この明細書に含まれ、組み入れられ、明細書の一部を構成する)は、本発明の実施形態を示し、記載とともに本発明の原理について説明する役目をはたす。各図面は、以下の通りである。
【図1】典型的な実施形態に従う、狭帯域幅レンジング信号周波数コンポーネントを示す。
【図1A】典型的な実施形態に従う、狭帯域幅レンジング信号周波数成分を示す。
【図2】典型的な広帯域幅レンジング信号周波数コンポーネントを示す。
【図3A】典型的な実施形態に従う、RFモバイル追跡および位置探知システムの、マスターユニットとスレーブユニットとのブロックダイアグラムを示す。
【図3B】典型的な実施形態に従う、RFモバイル追跡および位置探知システムの、マスターユニットとスレーブユニットとのブロックダイアグラムを示す。
【図3C】典型的な実施形態に従う、RFモバイル追跡および位置探知システムの、マスターユニットとスレーブユニットとのブロックダイアグラムを示す。
【図4】広帯域ベースバンド・レンジング信号を典型的に合成させたものを示す。
【図5】典型的な実施形態に従う、取り消しによる信号前駆体(precursor)の消去を示す。
【図6】典型的な実施形態に従う、より少数の搬送波による前駆体取り消しを示す。
【図7】一方向の伝達関数の位相を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい実施形態が今詳細に言及されるだろう。それらの実施例は、添付の図面に示されている。
【0018】
本発明は、RTLSを含む、オブジェクトのRF基準同定、追跡および位置探知のための方法およびシステムに関する。典型的な実施形態に従って、方法とシステムは、狭帯域幅レンジング信号を使用する。典型的な実施形態は、VHF帯で作動するが、UHF帯およびより高い周波数と同様に、HF、LFおよびVLF帯で作動することができる。それはマルチパス緩和プロセッサを使用する。マルチパス緩和プロセッサの使用は、システムによって実行される追跡および位置探知の正確さを増す。
【0019】
典型的な実施形態は、ユーザが多数の人およびオブジェクトを追跡し、位置探知し、監視することを可能にする、小さく、非常にポータブルなベースユニットを含む。各ユニットは、自らのIDを有している。各ユニットは、そのIDと共にRF信号を放送する。また、ユニットは、それぞれ帰還信号を送り返すことができる。それは音声、データおよび追加情報と同様に、そのIDも含むことができる。各ユニットは、他のユニットから送り返されてくる信号を処理し、そして、三角測量または三側方定位及び/又は使用される他の方法に依存して、相対的な及び/又は実際の位置を、継続的に測定する。好ましい実施形態は、GPS装置、スマートフォン、送受信兼用の無線機およびPDAのような製品に容易に統合することができる。結果として生じる製品は、そのホストの既存のディスプレイ、センサ(高度計、GPS、加速度計およびコンパスなど)および処理能力にてこ入れする間、独立の装置の機能をすべて有する。例えば、本明細書に記載の装置技術を備えるGPS装置は、群の他の部材の位置をマッピングすると同様に、地図上のユーザの位置を与えることができる。
【0020】
集積回路技術が進歩するので、FPGA実施に基づいた好ましい実施形態のサイズは、ほぼ2x4x1インチと2x2x0.5インチの間、またはより小さい。使用される周波数によって、アンテナは、装置へ統合されるか、または装置囲い壁を通って突き出るだろう。装置のASIC(特定用途向けIC)ベースのバージョンは、FPGAの機能、およびユニットまたはタグの他の電子部品のほとんどのものに、組み入れられ得る。ASIC基準の独立版の製品は、1x0.5x0.5インチあるいはより小さな装置サイズを結果として生じるだろう。アンテナサイズは、使用される周波数によって測定され、また、アンテナの一部は、囲い壁へと統合することができる。ASIC基準の実施形態は、まさにチップセットから成る製品へと統合されるように設計されている。マスターまたはタグのユニット間の任意の本質的な物理的寸法差は、ないはずである。
【0021】
装置は、マルチパス緩和アルゴリズムの処理用に、多数の周波数範囲(バンド)で作動する基準システム要素(既製の要素)を使用することができる。デジタル信号処理およびソフトウェア定義無線用のソフトウェアが、使用され得る。最小のハードウェアと組み合わせた信号処理ソフトウェアは、ソフトウェアによって定義された送受信波形を有する無線機を組み立てることを可能にする。
【0022】
同時係属中の出願第11/670,595号は、狭帯域幅レンジング信号システムを開示する。それによれば狭帯域幅レンジング信号は、(幾つかの低い帯域幅のチャネルは、数十キロヘルツに広がるが)わずか数キロヘルツ幅の音声チャネルを、例えば使用して、低い帯域幅のチャネルに入るように設計されている。これは、何百キロヘルツから何十メガヘルツの範囲のチャネルを使用する従来の位置特定システムと対照的である。
【0023】
この狭帯域幅レンジング信号システムの利点は以下のとおりである。即ち、
1)より低い動作周波数/帯では、従来の位置特定システム・レンジング信号帯域幅は搬送波(オペレーティング)周波数値を超過する。したがって、そのようなシステムは、HFを含む、LF/VLFおよび他のより低い周波数バンドで配備されることができない。従来の位置特定システムと異なり、そのレンジング信号帯域幅がはるかに搬送周波数値を下回るので、同時係属中の出願第11/670,595号に述べられていた狭帯域幅レンジング信号システムは、成功裏にLF、VLFおよび他のバンド上に配備することができる。
2)RFスペクトル(幾つかのVLF、LF、HFおよびVHF帯)の(例えばUHF帯までの)より低い端の部分では、(従来のレンジング信号を使用することを不可能にする)FCCは、許容可能なチャネルバンド幅(12―25kHz)を、厳しく制限するので、従来の位置特定システムは、使用することができない。従来の位置特定システムと異なり、狭帯域幅レンジング信号システムのレンジング信号帯域幅は、FCC規則の調整および他の国際的なスペクトル規制団体に完全に順守する。および、
3)(MRIを参照:原理は、Ray H. Hashemi, William G. Bradley ... - 2003年による)動作周波数/帯と無関係に、広帯域幅信号と比較して、狭帯域幅信号は、本質的により高いSNR(信号対雑音比)を有している。これは、それがUHF帯を含めて、操作する周波数/帯と無関係に狭帯域幅のレンジング信号位置特定システムの動作範囲を増加させる。
【0024】
したがって、従来の位置特定システムと異なり、狭帯域幅レンジング信号位置特定システムは、RFスペクトルのより低い端の部分に配備されることができる。RFスペクトルのより低い端の部分は、例えば、VHFおよびより低い周波数帯であって、マルチパス現象がそれほど顕著でない、LF/VLF帯までである。同時に、狭帯域幅レンジング位置特定システムは、また、UHF帯およびそれを越えるところに配備され、レンジング信号SNRを改善し、結果、位置特定システム動作範囲を増加することができる。
【0025】
マルチパス(例えばRFエネルギー反射)を最小限にするために、VLF/LF帯で動作することは望ましい。しかしながら、これらの周波数では、ポータブル/モバイルアンテナの効率は、非常に低い(RF波長に対する小さなアンテナ長(サイズ)により、約0.1%以下)。さらに、これらの低周波で、自然および人造の原因からの雑音のレベルは、(例えばVHFの)より高い周波数/帯よりも、はるかに高い。同時に、これらの2つの現象は、位置特定システムの適用可能性、例えば、その動作範囲および/または移動度/可搬性を制限し得る。それ故、動作範囲および/または移動度/可搬性が非常に重要な特定のアプリケーションのために、より高いRF、例えば、HF、VHF、UHFおよびUWBの周波数/帯は、使用され得る。
【0026】
VHFとUHF帯では、自然および人造の原因からの雑音のレベルは、VLF、LFおよびHF帯と比べて、かなり低く、そしてVHFとHF周波数で、マルチパス現象(例えばRFエネルギー反射)は、UHFおよびより高い周波数でそれほど顕著でない。また、VHFでは、アンテナ効率は、HFおよびより低い周波数でのものよりも、はるかによく、そして、VHFでは、RF貫通力は、UHFでのものよりも、かなりよい。したがって、VHF帯は、モバイル/ポータブル適用によい妥協点を与える。他方、VHF周波数(あるいはより低い周波数)が電離層を貫通できない(またはそらされ/反射される)、例えばGPS用の、幾つかの特別なケースでは、UHFはよい選択になり得る。しかしながら、何れの場合(またすべての場合/用途)でも、狭帯域幅レンジング信号システムは、従来の広帯域幅レンジング信号位置特定システムに対する利点を有している。
【0027】
実際の用途が、正確な技術仕様(電力、放射、帯域幅および動作周波数/帯など)を決定するだろう。狭帯域幅レンジングは、ユーザに、許可を受け取るか許可免除を受けることを可能にし、あるいはFCC(連邦通信委員会)で述べられるような無認可の周波数帯を使用可能にする。というのは、狭帯域レンジングは、最も厳密な狭帯域幅:FCCで述べられた、6.25kHz、11.25kHz、12.5kHz、25kHzおよび50kHzを含む、様々な帯域幅/周波数に対する動作を可能にし、適切なセクションに対応する技術的要求事項を満たす、からである。その結果、多数のFCCのセクションおよびそのようなセクション内の適用除外部分は、適用可能になるだろう。適用可能な主要なFCCの規則は次のとおりである:「47 CFR Part 90-Private Land Mobile Radio Services」、「47 CFR Part 94 personal Radio Services」、「47 CFR Part 15 Radio Frequency Devices」。
(比較すれば、このコンテキスト中の広帯域信号は、数百kHzから10−20MHzまでのものである。)
【0028】
典型的には、「Part 90」および「Part 94」については、VHF実施は、特定の適用除外(実施例である低消費電力無線サービス)の下でユーザが100mWまでの装置を操作することを可能にする。特定の用途については、VHF帯で許容送信電力は、2〜5ワット間にある。900MHz(UHF帯)については、1Wである。160kHz―190kHzの周波数(LF帯)においては、許容送信電力は、1ワットである。
【0029】
狭帯域レンジングは、異なる周波数域許容の全てで無い場合でも、多くのものを満たし、正確なレンジングを可能にする一方で、依然として、最も厳密な規定要件を満たしている。これは、FCCのためだけでなく、ヨーロッパ、日本および韓国を含む世界の至る所での周波数範囲の使用を規制する他の国際組織に当てはまる。
【0030】
下記は、使用される共通周波数のリストであり、典型的な電力消費および距離で、タグが実際の世界環境で別のリーダにより通信することができるものである(「Indoor Propagation and Wavelength」、Dan Dobkinによる論文、WJ Communications, V 1.4 7/10/02を参照):
915MHz 100 mW 150フィート
2.4GHz 100 mW 100フィート
5.6GHz 100 mW 75フィート。
【0031】
提案システムは、VHF周波数で作動し、RF信号を送信し処理するための、プロプラエタリな(所有権を主張し得る)方法を使用する。より具体的には、それは、VHF周波数で狭帯域幅要求事項の制限を克服するためにDSP技術およびソフトウェア定義無線(SDR)を使用する。
【0032】
より低い(VHF)周波数で動作することは、散乱を低減し、かなりよい壁貫通を与える。最終結果は、一般に用いられている周波数以上の範囲で、およそ10倍の増加である。
例えば、上に列挙されたRFID技術の範囲に対して、プロトタイプの測定された範囲を比較する:216MHz 100 mW 700フィート
【0033】
狭帯域レンジング技術の利用によって、一般に用いられている周波数の範囲は、タグ交信距離が実際の世界環境の別のリーダと通信可能となるような典型的な電力消費および距離で、かなり増加する。
利用前:利用後:
915MHz 100mW 150フィートから500フィート
2.4GHz 100mW 100フィートから450フィート
5.6GHz 100mW 75フィートから400フィート
【0034】
バッテリ消費は、設計、送信電力および装置のデューティサイクル(例えば連続する2つの距離(位置)測定間の時間間隔)の関数である。多くのアプリケーションでは、デューティサイクルは、10Xから1000Xの大きさである。大きなデューティサイクル(例えば100X)での適用では、100mWの電力を送信するFPGAバージョンは、およそ3週間の動作可能時間を有するだろう。ASICベースのバージョンは、10Xだけ動作可能時間を増加させると予想される。また、ASICは、本質的により低い雑音のレベルを有している。したがって、ASICベースのバージョンは、また、動作範囲を約40%増加させ得る。
【0035】
当業者は、典型的な実施形態がシステムの長時間の動作範囲を損なわない一方で、無線通信を試みる環境(例えば建物、都市の廊下など)下で、位置特定精度をかなり増加する、ことを認識するだろう。
【0036】
典型的には、追跡および位置探知システムは、追跡-位置特定-ナビゲート方法を使用する。これらの方法は、到着時間(TOA)、到着時間差(DTOA)、およびTOAとDTOAの組合せ、を含む。距離測量技術としての到着時間(TOA)は、米国特許第5,525,967号に一般に記載されている。TOA/DTOA基準システムは、RFレンジング信号直接視野(DLOS)飛行時間(例えば、時間遅れ)を測定する。その後、飛行時間は、通達距離に変換される。
【0037】
RF反射(例えばマルチパス)の場合では、様々な遅延時間を伴うRFレンジング信号の複数のコピーは、DLOS RFレンジング信号上に重畳される。狭帯域幅レンジング信号を使用する、追跡-位置探知システムは、DLOS信号とマルチパス緩和のない反射信号とを識別できない。その結果、これらの反射信号は、推定されたレンジング信号DLOS飛行時間におけるエラーを誘発する。前記飛行時間は、次に、レンジ推定精度に影響を与える。
【0038】
典型的な実施形態は、DLOS信号および反射信号を分離するために、有利なようにマルチパス緩和プロセッサを使用する。したがって、典型的な実施形態は、推定されたレンジング信号DLOS飛行時間におけるエラーをかなり低下させる。提案されたマルチパス緩和方法は、すべてのRF帯で使用することができる。また、それは広帯域幅レンジング信号位置特定システムで使用することができる。また、それは、DSS(直接のスペクトル拡散)およびFH(周波数ホッピング)など、スペクトル拡散技術を含む、様々な変調/復調技術をサポートすることができる。
【0039】
さらに、ノイズ低減方法は、さらに方法の正確さを改善するために適用することができる。これらのノイズ低減方法は、干渉性の合計、非干渉性の合計、マッチトフィルタリング、一時的なダイバーシチ技術などを含むことができるが、これらに限定されない。マルチパス干渉エラーの残りは、最大尤推定法(ビタビアルゴリズム)、カーマン・フィルタリング(カーマンアルゴリズム)などの、ポストプロセッシング技術の適用によりさらに低減することができる。
【0040】
典型的な実施形態は、シンプレックスモード、半二重モード、全二重モードの動作モードによってシステムで用いられ得る。全二重動作は、RFトランシーバ上の複雑さ、コストおよびロジスティックスの点で非常に過酷な要求をする。それはポータブル/モバイル・デバイス実施でシステム動作範囲を制限する。半二重動作モードでは、リーダ(しばしば「マスター」と呼ばれる)およびタグ(また時々「スレーブ」または「ターゲット」と呼ばれる)は、マスターまたはスレーブが任意の与えられた時間で送信することを単に可能にするプロトコルによって制御される。
【0041】
送信することおよび受信することの交番は、単一の周波数が距離測定で使用されることを可能にする。そのような配置は、全二重システムと比較したシステムのコストおよび複雑さを減らす。シンプレックスモードの動作は、概念的により単純であるが、レンジング信号列の開始を含む、マスターとターゲットユニット間のイベントのより正確な同期を必要とする。
【0042】
本発明では、狭帯域幅レンジング信号マルチパス緩和プロセッサは、レンジング信号帯域幅を増加させない。それは狭帯域幅レンジング信号の伝搬を可能にするために、異なる周波数コンポーネントを有利に使用する。さらにレンジング信号処理は、周波数領域で、超分解能スペクトルの推定アルゴリズム(MUSIC、rootMUSIC、ESPRIT)及び/又はRELAXのような、統計アルゴリズムを使用する方法によって、または、時間領域で、比較的大きな帯域幅で合成レンジング信号を組み立て、およびこの信号にさらなる処理を適用することによって、実行され得る。狭帯域幅レンジング信号の異なる周波数コンポーネントは、疑似的に任意に選択され得る。それは、周波数において隣接し、間隔を置いて配置された部分でもあり得るもので、および、それは周波数において均一及び/又は不均一間隔を有し得るものである。
【0043】
実施形態は、マルチパス緩和技術を発展させる。狭帯域レンジングのための信号モデルは、(本明細書の何れかで導入されたような)復素指数関数である。その周波数は、遅れがマルチパスに対する遅延時間によって定義される同類項を加えた範囲によって定義された遅延に直接正比例する。モデルは、信号の構造(例えばステップ周波数、線形周波数変調など)の実際の実施に依存しない。
【0044】
ダイレクトパスとマルチパス間の周波数分離は、ごくわずかで非常に小さい。また、基準周波数領域処理は、ダイレクトパスレンジを予測するのには十分ではない。例えば、30メートルのレンジ(100.07ナノ秒の遅延)で5MHzを超える、100kHzステップレートのステップ周波数レンジング信号は、結果として、0.062875ラジアン/秒の周波数を生じる。35メートルのパス(経路)長さでの多重反射は、0.073355の周波数を結果として生じる。分離は、0.0104792である。50のサンプルオブザーバブルの周波数分解は、0.12566Hzの固有の周波数分解能を有している。従って、反射パスからのダイレクトパスの分離のため、従来の周波数推定技術を使用すること、および、ダイレクトパスの正確な推定を行うことは、できない。
【0045】
この制限を克服するために、本発明は、部分空間分解高分解能スペクトル推定方法論およびマルチモーダルのクラスター分析の実施の独自の組合せを使用する。部分空間分解技術は、2つの直交の部分空間、雑音部分空間および信号部分空間へ、得られたデータの推定される分散行列を分類することに依存する。部分空間分解方法論の背後にある理論は、雑音部分空間上へのオブザーバブルの投射が雑音のみから成り、および信号部分空間上へのオブザーバブルの投射が信号のみから成る、ということである。
【0046】
超高分解能スペクトル推定アルゴリズムおよびRELAXアルゴリズムは、雑音がある状態でのスペクトル内で接近して置かれた周波数(正弦波)を識別することができる。信号を調和して周波数を関連づける必要はない。また、デジタル・フーリエ変換(DFT)と異なり、信号モデルは、何の人工周期性も導入しない。与えられた帯域幅については、これらのアルゴリズムは、フーリエ変換よりもかなり高い分解能を与える。したがって、直接視野(DLOS)は、高精度で、他のマルチパス(MP)から確実に識別することができる。同様に、後で説明される、閾値方法を、人為的に生成された合成のより広帯域幅のレンジング信号に適用することは、高精度で、DLOSと他のパスを確実に区別することを可能にする。
【0047】
典型的な実施形態に従って、デジタル信号処理(DSP)は、DLOSと他のMPパスを確実に区別するためにマルチパス緩和プロセッサによって使用され得る。様々な超分解能アルゴリズム/技術は、スペクトル分析(スペクトルの推定)技術に存在する。実施例は、部分空間基準方法を含む:多重信号特性記述(MUSIC)アルゴリズムまたはroot−MUSICアルゴリズム、回転不変性技術による信号パラメーターの推定(ESPRIT)アルゴリズム、ピサレンコ高調波分解(PHD)アルゴリズム、RELAXアルゴリズムなど。
【0048】
上述の超分解能アルゴリズムの全部では、入ってくる(すなわち、受け取られた)信号は、周波数の、復素指数関数およびそれらの複素振幅の一次結合としてモデル化される。マルチパスの場合には、受信信号は、以下のとおりである:

【0049】
ここで、

は、送信された信号であり、fは動作周波数であり、Lはマルチパスコンポーネントの数であり、および

およびτは、それぞれK番目のパスの複雑な減衰および伝播遅延である。マルチパスコンポーネントは、インデックスを付けられ、その結果、伝播遅延は、昇順で考慮される。その結果、このモデルでは、τは、DLOSパスの伝播遅延を表示する。明らかに、τ値は、すべてのτのなかで最も小さな値であるので、最も所望する値である。位相θは、均一の確率密度関数U(0.2π)を用いて、1つの測定周期から別の測定周期まで通常ランダムに想定される。したがって、我々は、α=const(すなわち定数)を想定する。
【0050】
パラメーターαおよびτは、建物内および周辺での人々および装置の運動を反映するランダムな時変関数である。しかしながら、測定時間間隔と比較して、それらの変化の速度が非常に遅いので、これらのパラメータは、与えられた測定周期内の時間不変確率変数として扱うことができる。
【0051】
それらが透過係数と反射係数等の無線信号特性と関係があるので、すべてのこれらのパラメーターは、周波数依存性のものである。しかしながら、典型的な実施形態内では、動作周波数は、ほとんど変化しない。したがって、上述のパラメーターは、周波数に依存していないと仮定することができる。
【0052】
方程式(1)は、次のような周波数領域で示すことができる:

ここで:A(f)は、受信信号の複素振幅であり、(2π×τ)は、超分解能アルゴリズムによって推定される人工の「周波数」であり、および動作周波数fは、独立変数であり、αは、K番目のパス振幅である。
【0053】
方程式(2)では、(2π×τ)の超分解能推定と、次のτ値は、連続周波数に基づく。実際には、有限数の測定値がある。したがって、変数fは、連続変数ではなくむしろ離散変数になるだろう。従って、複素振幅A(f)は以下のように計算することができる:

【0054】
ここで、

は、離散周波数fで離散複素振幅推定値(すなわち測定値)である。
【0055】
方程式(3)では、

は、それがマルチパス・チャネルを通って伝播した後の周波数fの正弦波信号の振幅と位相として理解することができる。スペクトルの推定基準超分解能アルゴリズムは、すべて、複素入力データ(すなわち複素振幅)を必要とすることに注意する。
【0056】
幾つかの場合では、実部信号データ(例えば

)を複素信号(例えば分析的な信号)に変換することが可能である。例えば、そのような変換は、ヒルベルト変換または他の方法の使用によって遂行することができる。しかしながら、短距離の場合、値τが非常に小さい。それは非常に低い(2π×τ)「周波数」を結果として生じる。
【0057】
これらの低い「周波数」は、ヒルベルト変換(あるいは他の方法)の実施についての問題を引き起こす。加えて、もし振幅値(例えば

)が使用されるのであれば、その後、推定される周波数の数が(2π×τ)「周波数」だけでなく、それらの組合せも含むだろう。概して、未知の周波数の数を増加させることは、超分解能アルゴリズムの正確さに影響を与える。したがって、他のマルチパス(MP)パスからの、DLOSパスの確実で正確な分離は、複素振幅推定を要求する。
【0058】
下記は、マルチパスがある状態で複素振幅

を得るタスクの間の、方法およびマルチパス緩和プロセッサ動作の記載である。
記載が半二重の動作モードに着目している一方で、全二重モードのために容易にそれを拡張することができる、ことに注意する。シンプレックスの動作モードは、半二重のモードのサブセットであるが、追加のイベント同期を必要とする。
【0059】
半二重の動作モードでは、リーダ(しばしば「マスター」と呼ばれる)およびタグ(また「スレーブ」または「ターゲット」と呼ばれる)は、マスターまたはスレーブが任意の与えられた時間で送信することのみを可能にするプロトコルによって制御される。この動作モードでは、タグ(ターゲット装置)はトランスポンダーとして役立つ。タグは、リーダ(マスター装置)からレンジング信号を受け取り、メモリにそれを記憶し、次に、一定時間(遅延)の後、マスターに信号を再転送する。
【0060】
レンジング信号の一例は、図1および図1Aに示されている。典型的なレンジング信号は、隣接の異なる周波数コンポーネントを使用する。疑似ランダムで、周波数及び/又は時間の間隔を置おいて、または、直交する、などを含む他の波形は、レンジング信号帯域幅が狭いままである限り、また使用することができる。図1では、あらゆる周波数コンポーネントに関する持続時間Tは、レンジング信号狭帯域幅プロパティを得る程に十分に長い。
【0061】
異なる周波数コンポーネントでのレンジング信号の別の変化は、図2に示されている。それは、個々の周波数の狭帯域を作るため、長期間にわたり送信された、多数の周波数(F、F、f、f、f)を含む。そのような信号は、より効率的であるが、それは広い帯域幅を占める。また、広帯域幅レンジング信号は、SNRに影響を与え、それは、次に動作範囲を低減する。また、そのような広帯域幅レンジング信号は、VHF帯またはより低い周波数帯にかかるFCCの要求事項に反するだろう。
【0062】
マスター装置とタグ装置は、同一で、マスターまたはトランスポンダー・モードのいずれかで動作することができる。すべての装置は、データ/リモート・コントロール・コミュニケーションチャネルを含む。装置は、情報を交換することができる。また、マスター装置は、遠隔でタグ装置を制御することができる。図1に描かれたこの実施例では、マスター(すなわちリーダ)のマルチパス緩和プロセッサの動作が、レンジング信号をタグへと発信している間、そして、特定の遅延の後、マスター/リーダは、タグから繰り返されるレンジング信号を受け取る。
【0063】
その後、マスターのマルチパス緩和プロセッサは、受信レンジング信号をマスターからもともと送信されたものと比較し、および、あらゆる周波数コンポーネントfのための、振幅および位相の形式の

推定値を測定する。方程式(3)では、

は、一方向のレンジング信号トリップのために定義されていることに注意する。典型的な実施形態では、レンジング信号は、ラウンドトリップを形成する。言いかえれば、レンジング信号は、下記両方向を行き来する。すなわち、マスター/リーダからターゲット/スレーブまで、およびターゲット/スレーブからマスター/リーダにもどる両方向。したがって、このラウンドトリップ信号複素振幅(それは、マスターによって戻ってきたものが受信される)は、以下のように計算することができる:

【0064】
例えば、整合フィルタ

および

を含む複素振幅および位相値の推定に利用可能な、多くの技術がある。典型的な実施形態に従って、複素振幅測定は、マスター及び/又はタグ受信機RSSI(受信信号強度指標)値に由来した

値に基づく。
位相値、

は、リーダ/マスターによって受信されて戻ってきたベースバンド・レンジング信号位相と、オリジナル(すなわち、リーダ/マスターによって送信された)ベースバンド・レンジング信号位相とを比較することによって得られる。加えて、マスターとタグ装置が独立したクロックシステムを有するので、装置動作の詳細な説明は、位相推定誤差へ影響する時計精度の分析によって、増補される。上記の記載が示すように、一方向の振幅

値は、ターゲット/スレーブ装置から直接得られる。しかしながら、一方向の位相

値は、直接測定することができない。
【0065】
典型的な実施形態では、レンジング・ベースバンド信号は、図1に描かれたものと同様のものである。しかしながら、簡単化のため、レンジング・ベースバンド信号が、異なる周波数:FとFの余弦波または正弦波の多数の周期を各々含んでいる2つの周波数コンポーネントのみから成る、ということが本明細書では想定されている。F=f、F=fに注意する。第1の周波数コンポーネント中の周期の数は、Lである。また、第2の周波数コンポーネント中の周期の数はPである。T=定数に関して、各周波数コンポーネントは、異なる数の周期を有し得るため、LがPと等しくなり得、または、等しく無くなり得る、ことに注目する。また、各周波数コンポーネント間に時間差はなく、そしてF、Fは両方とも、ゼロの初期位相から始まる。
【0066】
図3A、3Bおよび3Cは、RFのモバイル追跡および位置探知システムのマスターまたはスレーブ装置(タグ)のブロック図を示す。FOSCは、装置システムクロック(図3Aの水晶発振器20)の周波数を指す。装置内で生成された全ての周波数は、このシステムクロック水晶発振器から生成された。以下の定義が使用される:
Mは、マスター装置(ユニット)である;
AMは、タグ(ターゲット)装置(ユニット)である。
タグ装置は、トランスポンダー・モードで動作しており、トランスポンダー(AM)ユニットという。
【0067】
好ましい実施形態では、装置は、RFフロントエンド、RFバックエンド、ベースバンドおよびマルチパス緩和のプロセッサから成る。RFバックエンド、ベースバンドおよびマルチパス緩和のプロセッサは、FPGA150で実現される(図3Bおよび3Cを参照)。システムクロック発生器20(図3Aを参照)は、次の発振を行う:
OSC=20MHz;あるいはωOSC=2π×20×10である。
実際の装置では、システムクロック周波数が20MHzと必ずしも等しいとは限らないので、これは理想的な周波数である:



【0068】
20MHz以外のFOSC周波数は、システム性能への何の影響もなく使用できることに注意する。
【0069】
両方のユニットの(マスターとタグ)電子構成は、同一である。そして、異なる動作モードは、ソフトウェアによってプログラム可能である。ベースバンド・レンジング信号は、マスターのFPGA150のブロック155−180(図2Bを参照)によって、デジタル形式で生成される。それは、異なる周波数の余弦または正弦波の多数の周期を各々含んでいる2つの周波数コンポーネントから成る。始め、t=0では、マスター装置(図3B)のFPGA150は、I/Q DAC 120および125を介して、そのアップコンバータ50へとデジタル・ベースバンド・レンジング信号を出力する。FPGA150は、F周波数で始動し、および時間Tの後、Tの期間だけ、F周波数を生成し始める。
【0070】
水晶発振器の周波数が20MHzと異なるかもしれないので、FPGAによって生成された実際の周波数は、FγとFγになるだろう。また、時間Tは、Tβになるだろう。また、時間Tは、Tβになるだろう。また、Fγ*Tβ=FおよびFγ*Tβ=Fとなるように、T、T、F、Fは設定され、ここで、Fと、Fとは、ともに整数であると、想定される。それは、FおよびFの初期位相は、ゼロに等しいことを意味する。
【0071】
全ての周波数がシステム水晶発振器20クロックから生成されるので、マスター・ベースバンドI/Q DAC120、125の出力は、以下のとおりである:F=γ20×10×KF、およびF=γ20×10×KF2である。ここで、KF1とKF2は、一定の係数である。同様に、周波数シンセサイザ25(ミキサー50および85用のLO信号)からの出力周波数TX_LOおよびRX_LOは、一定の係数によって示すことができる。これらの一定の係数は、マスター(M)およびトランスポンダー(AM)ようのものと同様であり、違いは、各装置のシステム水晶発振器20クロック周波数にある。
【0072】
マスター(M)およびトランスポンダー(AM)は、半二重のモードで動作する。マスターRFのフロントエンドは、直交アップコンバータ(すなわちミキサー)50を使用するマルチパス緩和プロセッサによって、生成されたベースバンド・レンジング信号をアップコンバートし、このアップコンバートされた信号を送信する。ベースバンド信号の送信後、マスターが、RFフロントエンドのTX/RXスイッチ15を使用して、TXからRFモードへと切り替える。トランスポンダーは、バック信号を受信し、そしてRFのフロントエンドの(第1のIFを生成する)ミキサー85および(第2IFを生成する)ADC140を使用して、受信したバック信号をダウンコンバートする。
【0073】
その後、この第2IF信号は、デジタルフィルタ190を使用するトランスポンダーRFバックエンドプロセッサでデジタル式でフィルタ処理され、さらに、RFバックエンド直交ミキサー200、デジタルI/Qフィルタ210、230、デジタル直交発振器220および加算器270を使用して、ベースバンド・レンジング信号にダウンコンバートされる。このベースバンド・レンジング信号は、ラム・データバス・コントローラ195および制御ロジック180を使用するトランスポンダーのメモリ170に記憶される。
【0074】
次に、トランスポンダーは、RFフロントエンドスイッチ15を使用して、RXからTXモードへと切り替え、一定の遅延tRTXの後に、記憶されたベースバンド信号を再送信し始める。遅延は、AM(トランスポンダー)システムクロックで測定されることに注意する。すなわち、

である。
マスターは、トランスポンダー送信信号を受け取り、およびRFバックエンド直交ミキサー200、デジタルIQフィルタ210、230、およびデジタル直交オシレータ220(図3Cを参照)を使用して、受信バック信号をベースバンド信号へとダウンコンバートする。
【0075】
その後、マスターは、マルチパス緩和プロセッサarctanブロック250と位相比較ブロック255を使用して、受信(すなわち、回復された)ベースバンド信号中のFとFの間の位相差を計算する。振幅値は、RFバックエンドRSSIブロック240より得られる。
【0076】
推定精度の改善のために、ブロック240からの振幅推定、およびブロック255からの位相差推定のSNRを改善することは、常に望ましい。好ましい実施形態では、マルチパス緩和プロセッサは、レンジング信号周波数コンポーネント持続時間(T)にわたる多くのタイムインスタンスの振幅と位相差の推定を計算する。これらの値は、平均された時、SNRを改善する。SNR改善は、N1/2に比例する位数になり得る。ここで、Nは、振幅と位相差値が得られた(すなわち、測定された)時のインスタンスの数である。
【0077】
SNR改善への別のアプローチは、1つの期間にわたる整合フィルタ技術の適用により、振幅と位相差値を測定することである。しかし、別のアプローチは、受信(すなわち、回復された)ベースバンド・レンジング信号周波数コンポーネントをサンプリングし、I/Q様式で、オリジナル(すなわち、マスター/リーダによって送信された)ベースバンド・レンジング信号周波数コンポーネントを期間T≦Tにわたって積分することによって、前期受信ベースバンド・レンジング信号周波数コンポーネントの位相と振幅を推定することであろう。積分は、I/Q様式での、振幅と位相の多数のインスタンスの平均値算出の効果を有している。その後、位相と振幅値は、I/Q様式から

および

様式に変換することができる。
【0078】
マスターのマルチパス・プロセッサ制御下での、t=0で、マスター・ベースバンドプロセッサ(FPGA150の両方)は、ベースバンド・レンジング・シーケンスを始めと、仮定する。


マスターのDAC120、125出力の位相は、以下のとおりである:

DAC120、125は、システムクロックに依存しない内部伝播遅延(

)を有していることに注意する。
【0079】
同様に、送信器回路コンポーネント15、30、40および50は、システムクロックに依存しない追加遅延(

)を導入するだろう。
【0080】
その結果、マスターによって送信されたRF信号の位相は以下のように計算することができる:

【0081】
マスター(M)からのRF信号は、マスターとタグの間のマルチパス現象の関数である位相シフトφMULTIに反応する。
【0082】
φMULTI値は、送信周波数、例えばF、Fに依存する。トランスポンダー(AM)受信機のものは、受信機のRF部分の制限された(すなわち狭い)帯域幅のため、各パスを分解することができない。したがって、一定時間、例えば(〜300メートルの飛行と等価な)1μ秒後に、すべての反射信号が受信機アンテナに到着したとき、下記式を適用する:

【0083】
第1のダウンコンバータ、構成要素85、出力、例えば第1のIFのAM(トランスポンダー)受信機内での信号の位相は、以下のとおりである:

【0084】
受信機RF部(要素15および60乃至85)内での伝播遅延

は、システムクロックに依存しないことに注意する。RFのフロントエンドのフィルタおよびアンプ(構成要素95乃至110と125)を通った後、第1のIF信号は、RFバックエンドADC140によってサンプリングされる。ADC140は、入力信号(例えば第1のIF)をアンダーサンプリングしていると仮定されている。したがって、ADCは、また、第2のIFを生産するダウンコンバータのように作用する。第1のIFフィルタ、アンプおよびADCは、伝播遅延時間を加える。ADC出力(第2のIF)で:

【0085】
FPGA150では、(ADC出力からの)第2のIF信号は、RFバックエンド・デジタルフィルタ190によってフィルタ処理され、さらに、第3のダウンコンバータ(すなわち直交ミキサー200、デジタルフィルタ230、210、ならびにデジタル直交オシレータ220)によってベースバンド・レンジング信号にさらにダウンコンバートされ、加算器270で加算され、そしてメモリ170に記憶される。第3のダウンコンバータ出力(すなわち直交ミキサー)で:

【0086】
FIRセクション190中の伝播遅延

は、システムクロックに依存しないことに注意する。
【0087】
RX->TX遅延の後、マスター(M)からの(メモリ170に)記憶されたベースバンド・レンジング信号は、再送達される。RX->TX遅延は、

であることに注意する。

【0088】
トランスポンダーからの信号が、マスターの(M)受信器アンテナまで、トランスポンダー(AM)からのRF信号は、マルチパスの関数である別の位相シフトφMULTIに反応する。上に議論されたように、この位相シフトは、すべての反射信号がマスターの受信アンテナに到着した一定時間後に起こる:

【0089】
マスター受信機では、トランスポンダーからの信号は、トランスポンダー受信機でのように、同じダウンコンバート処理を経る。結果として得られるものは、マスターによってはじめに送信された、回復されたベースバンド・レンジング信号である。第1の周波数コンポーネントFについて:

【0090】
第2の周波数コンポーネントFについて:

【0091】
置換え:

ここで、TD_M−AMは、マスター(M)およびトランスポンダー(AM)回路を通じての伝播遅延である。

ここで:φBB_M-AM(0)は、ADCを含む、マスター(M)およびトランスポンダー(AM)周波数ミキサーからの、時間t=0での、LO位相シフトである。
また:

【0092】
第1の周波数コンポーネントF

【0093】
第1の周波数コンポーネントFは、引き続き:

【0094】
第2の周波数コンポーネントF

【0095】
第2の周波数コンポーネントFは、引き続き:

【0096】
さらに置換えると:

ここで、αは、定数である。
【0097】
その後の、最終段階の方程式は、次のとおりである:

【0098】
方程式(5)から、

ここで、i=2、3、4……………;
また、



と等しい。
【0099】
例えば、タイムインスタンスTおよびTでの違い

は:

【0100】

の違いを知るために、我々は、TD_M_AMを知る必要がある:

ここで、TLB_MとTLB_AMは、マスター(M)およびトランスポンダー(AM)TXおよびRX回路を通る伝搬遅延であり、該回路は、ループバック・モードで置く装置によって測定される。マスターおよびトランスポンダー装置は、TLB_MとTLB_AMを自動的に測定できることに注意する;また、我々は、tRTX値を既知である。
【0101】
上記の式およびtRTX値から、TD_M_AMは、測定され得、従って、与えられたTおよびTについては、

値は、以下のように見出され得る:


あるいは、β=βAM=1と仮定すると:

【0102】
方程式(6)から、動作周波数において、レンジング信号複素振幅値は、帰還ベースバンド・レンジング信号の処理から見出され得る、ことが結論付けられ得る。
【0103】
部分空間アルゴリズムは、一定の位相オフセットに感受性でないので、初期位相値

は、ゼロに等しいと仮定することができる。必要ならば、


値(位相初期値)は、同時係属中の出願番号第11/670,595号に記載されているような狭帯域幅レンジング信号方法を使用して、TOA(到着時間)を測定することによって、見出し得る。前記出願は、全て引用することによって本明細書に組み入れられる。この方法は、レンジング信号ラウンドトリップ遅延を推定する。それは

に等しく、

値は、以下の方程式から見出され得る:

または:

【0104】
好ましい実施形態では、帰還ベースバンド・レンジング信号の位相値

は、マルチパス・プロセッサのarctanブロック250によって計算される。SNRを改善するために、マルチパス緩和プロセッサの位相比較ブロック255は、方程式(6A)を使用し、

を計算し、その後、SNRを改善するためにそれらの平均を求める。

に注意する。
【0105】
方程式5および6から、回復された(すなわち、受信された)ベースバンド・レンジング信号は、マスターによって送信されたオリジナルベースバンド信号と同じ周波数を有していることが、明らかになる。したがって、マスター(M)およびトランスポンダー(AM)システムクロックが異なり得るという事実にもかかわらず、周波数変換はない。ベースバンド信号は、いくつかの周波数コンポーネントから成り、各コンポーネントは、正弦波の多数の周期から成るので、対応するオリジナル(すなわち、マスターによって送信された)ベースバンド信号の個々の周波数コンポーネントによって、受信ベースバンド信号の個々のコンポーネント周波数をサンプリングし、およびT≦Tの周期で結果として生じる信号を積分することによって、受信レンジング信号の位相および振幅を推定することも可能である。
【0106】
この動作(演算)は、I/Q様式での受信レンジング信号の複素振幅値

を生成する。マスターによって送られた各ベースバンド信号の個々の周波数コンポーネントは、TD_M_AMによって時間内でシフトされなければならないことに注意する。積分動作は、(例えば、SNRを増加させて)振幅および位相の多数のインスタンスを平均する効果をもたらす。位相と振幅値は、I/Q様式から

および

様式に変換できることに注意する。
【0107】
サンプリングし、T≦Tの周期の間積分し、次に、I/Q様式から

および

様式へ変換するこの方法は、図3Cの位相比較ブロック255で実現され得る。したがって、ブロックの255の設計および実行に依存して、このセクションに記載されていた方程式(5)に基づいた好ましい実施形態の方法、代替方法のいずれかが、使用され得る。
【0108】
レンジング信号帯域幅は狭いが、周波数差f−fは、例えば、数メガヘルツの位数において、比較的大きくなり得る。その結果、受信機の帯域幅は、f:fレンジング信号周波数コンポーネントをすべて通すように十分に広くしておかれなければならない。この広帯域受信機の帯域幅は、SNRに影響を与える。受信機有効帯域幅を低減し、かつSNRを改善するために、受信レンジング信号ベースバンド周波数コンポーネントは、受信ベースバンド・レンジング信号の個々の周波数コンポーネントのために調整されたデジタル狭帯域幅フィルタによって、FPGA150内でRFバックエンドプロセッサによってフィルタ処理される。しかしながら、この多量のデジタルフィルタ(個々の周波数コンポーネント、nの数に等しい数のフィルタの数)は、FPGAリソースに追加の負担をおき、そのコスト、サイズおよび電力消費を増加させる。
【0109】
好ましい実施形態では、2つの狭帯域幅デジタルフィルタのみが使用される:1つのフィルタは、f周波数コンポーネントのために常に調整される。また、別のフィルタは他のすべての周波数コンポーネント:f:fのために調整され得る。レンジング信号の多数のインスタンスはマスターによって送信される。各インスタンスは、2つの周波数のみから成る:

また、同様の方策は、可能である。
【0110】
また、ベースバンド・レンジング信号コンポーネントを、周波数シンセサイザの調節(例えばKSYNを変更する)によって、周波数コンポーネントの残りを生成する、2つだけ(あるいは1つであっても)に、維持することが完全に可能であることに注意する。アップコンバータおよびダウンコンバータ・ミキサー用のLO信号がダイレクトデジタル合成(DDS)技術を使用して生成されることは望ましい。高いVHF帯周波数については、これは、トランシーバ/FPGAハードウェア上の望まれない負担を提示し得る。しかしながら、より低い周波数については、これは有用なアプローチかもしれない。アナログ周波数シンセサイザも使用することができるが、周波数が変更された後安定させるための付加時間を要するかもしれない。また、アナログ・シンセサイザーの場合には、同じ周波数の2つの測定が、アナログ・シンセサイザーの周波数を変更した後に起きるかもしれない位相オフセットを取消すために、なされなければならないだろう。
【0111】
上記の方程式の中で使用される実際のTD_M−AMは、両方で測定される:マスター(M)およびトランスポンダー(AM)システム・クロック、例えば、TLB_AMおよびtRTXは、トランスポンダー(AM)クロックで計算される。また、TLB_Mはマスター(M)クロックで計算される。
しかしながら、

は、両方に計算されるとき:TLB_AMとtRTXは、マスター(M)クロックで測定(計算)される。
これはエラーを導入する:

【0112】
位相推定誤差(7)は、正確さに影響を与える。それ故、この誤差を最小限にすることが必要である。β=βAM、言いかえれば、全てのマスターおよびトランスポンダー(タグ)システムクロックが同期されたとき、tRTX時間からの関与が除去される。
【0113】
好ましい実施形態では、マスターおよびトランスポンダーユニット(装置)は、任意の装置の同期化クロックであり得る。例えば、マスター装置は、基準として役立つ。クロック同期は、リモート・コントロール通信チャネルの使用によって達成される。これによって、FPGA150制御の下で、温度補償型水晶発振器TCXO20の周波数は調節される。選択されたトランスポンダー装置が搬送波信号を送信している間、周波数差は、マスター装置の加算器270の出力で測定される。
【0114】
その後、マスターは、TCXO周波数を増加/減少するために、トランスポンダーにコマンドを送信する。この手続きは、加算器270出力で周波数を最小にすることによって、より高い精度を達成するために数回繰り返され得る。理想的な場合では、加算器270出力の周波数がゼロに等しくなるべきであることに注意する。代替方法は、周波数差を測定し、トランスポンダーのTCXO周波数を調節せずに、推定位相の補正を行うことである。
【0115】
β=βAMは、かなり減少され得る一方で、β≠1のとき、位相推定誤差がある。この場合、ある程度の誤差は、基準装置(通常マスター(M))クロック発振器の長期間安定度に依存する。加えて、クロック同期のプロセスは、特に技術分野の多くのユニットで、かなりの時間を要する。同期プロセス中、追跡-位置探知システムは、部分的にまたは完全に作動不能になる。それはシステム準備および性能に負の影響を与える。この場合、トランスポンダーのTCXO周波数の調節を要求しない上述の方法が好ましい。
【0116】
市販の(既成の)TCXOコンポーネントは、高い精度と安定を有している。具体的には、GPS商用アプリケーション用のTCXOコンポーネントは、非常に正確である。これらの装置による、位置探知精度への位相誤差影響は、頻繁なクロック同期の必要なしで、1メートル未満であり得る。
【0117】
狭帯域幅レンジング信号マルチパス緩和プロセッサが、帰還狭帯域幅レンジング信号複素振幅

を得た後、さらなる処理(すなわち超分解能アルゴリズムの実行))が、マルチパス緩和プロセッサの部品である、ソフトウェア基準コンポーネントで実現される。このソフトウエア・コンポーネントは、マスター(リーダ)のホストコンピュータCPU及び/又はFPGA150(図示せず)に組み込まれているマイクロプロセッサーで実現することができる。好ましい実施形態では、マルチパス緩和アルゴリズム・ソフトウエアコンポーネントは、マスター・ホストコンピュータCPUによって実行される。
【0118】
超分解能アルゴリズムは、(2π×τ)「周波数」(例えばτ値)の推定をもたらす。最終工程では、マルチパス緩和プロセッサは、最も小さな値(すなわちDLOS遅延時間)のτを選択する。
【0119】
レンジング信号狭帯域幅要求事項が多少緩められる特定の場合では、DLOSパスは、連続的な(時間で)チャープの使用によって、MPパスから分離され得る。好ましい実施形態では、この連続的なチャープは、線形周波数変調(LFM)である。しかしながら、他のチャープ波形も使用することができる。
【0120】
マルチパス緩和プロセッサ制御下で、帯域幅Bおよび持続時間Tのチャープが送信されると仮定する。それは、

ラジアン/秒のチャープ速度を与える。多くのチャープは、送信され、再度受信される。チャープ信号は、同じ位相で始められた各チャープによりデジタルで生成されることに注意する。
【0121】
マルチパス・プロセッサでは、各受信シングルチャープは、位置を調整され、その結果、帰還チャープは、所望の領域の中心からのものになる。チャープ波形方程式は、次のとおりである:

ここで、ωは、0〈t〈Tの間、初期周波数である。単一の遅延ラウンドトリップτ(例えばマルチパスでないもの)については、帰還信号(チャープ(cirp))はs(t−τ)である。
【0122】
その後、マルチパス緩和プロセッサは、もともと送信されたチャープを伴う複素共役ミックスを実行することによって、s(t−τ)を「脱傾斜(deramp)」する。結果として生じる信号は、複素正弦波である:

ここで、

は振幅で、2βτは周波数で、0≦t≦Tである。末項は位相で、それが無視できることに注意する。
【0123】
マルチパスの場合、合成脱傾斜信号は、多くの複素正弦波から成る:

ここで、Lは、DLOSパスを含む、0≦t≦Tの、レンジング信号パスの数である。
【0124】
多くのチャープは、送信され処理される。上に記述されるように、各チャープは、個々に扱われ/処理される。その後、マルチパス緩和プロセッサは、個々のチャープ処理の結果を集める:

ここで、Nは、チャープの数であり、

は、2つの連続チャープ間の不感時間帯(dead time zone)である;2βτは、人工遅延「周波数」である。
再び、最も所望のものは(DLOS経路遅延に相当する)最低「周波数」である。
【0125】
方程式(10)では、

は、複素正弦波の合計のNサンプルと時に見なすことができる:

したがって、サンプル数は、多数のN(例えばαN;α=1.2.…)になりえる。
【0126】
方程式(10)から、マルチパス緩和プロセッサは、さらなる処理(すなわち超分解能アルゴリズムの実行)の中で使用される、時間領域のαN複素振幅サンプルを生成する。このさらなる処理は、マルチパス緩和プロセッサの部品である、ソフトウエアコンポーネントで実現される。このソフトウエアコンポーネントは、マスター(リーダ)ホストコンピュータCPUによって、及び/又は、FPGA150(図示せず)に組み込まれているマイクロプロセッサーによって、または両方によって、実行され得る。好ましい実施形態では、マルチパス緩和アルゴリズム・ソフトウェアは、マスターホストコンピュータCPUによって実行される。
【0127】
超分解能アルゴリズムは、2βτ「周波数」(例えばτ値)の推定を生成する。最終工程では、マルチパス緩和プロセッサは、最も小さな値(すなわちDLOS遅延時間)を伴うτを選択する。
【0128】
説明は、「閾値技術」と呼ばれる特殊処理方法によって与えられる。それは超分解能アルゴリズムに選択肢を与えるものである。言いかえれば、それは、人為的に生成された合成の広帯域幅レンジング信号を使用する、他のMPパスからDLOSパスを区別する際の信頼性と正確さを向上させるために使用される。
【0129】
図1および図1Aに示される周波数領域ベースバンド・レンジング信号は、時間領域ベースバンド信号s(t)に変換され得る:

容易に確認されることであるが、S(t)は、周期的な期間1/Δtを備え、および任意の整数kでは、s(k/Δt)=2N+1は、信号のピーク値である。ここで、図1および図1Aでn=Nである。
【0130】
図4は、N=11およびΔf=250kHzの場合のs(t)の2つの周期を示す。信号は、1/Δf=4μ秒で分離された高さ2N+1=23の一連のパルスとして現われる。パルス間では、可変振幅と2Nのゼロとを伴う正弦波波形である。信号の広帯域幅は、高いパルスの狭さが原因であり得る。帯域幅は、ゼロ周波数からNΔf=2.75MHzまで及ぶことがわかるだろう。
【0131】
好ましい実施形態の中で使用される閾値方法の根本概念は、他のMPパスからDLOSパスを区別する際の、人為的に生成された合成のより広い帯域幅レンジングの信頼性および正確さを向上させることである。閾値方法は、広帯域のパルスのリーディングエッジの始まりの部分が受信機に到着する時を検知するものである。送信器と受信機内でフィルタ処理を行うため、リーディングエッジは、瞬間的に上昇しないが、滑らかに増加する傾斜を伴って雑音から上昇する。リーディングエッジのTOAは、リーディングエッジが前もって定義されている閾値Tと交差する時を検知することによって測定される。
【0132】
小さな閾値が望ましい。というのは、閾値がより早く交差され、パルスの正確な始まりと閾値交差との間のエラー遅延τが小さいからである。したがって、レプリカの始まりの部分がτより大きな遅延を有している場合、マルチパスにより到着する任意のパルス・レプリカは、何の影響も有さない。しかしながら、雑音の存在は、閾値Tがどれくらい小さくなりえるかに制限を設ける。遅延τを減少させる1つの方法では、導関数がより速く上昇するので、パルス自体の代わりに受信パルスの導関数を使用する。二次導関数は、さらに速く上昇する。高位導関数は、使用され得るが、しかしそれらは、実際には、承諾しがたい値に雑音レベルをあげるので、閾値化された二次導関数が使用される。
【0133】
図4に描かれた2.75MHzの広帯域信号は、適正な広帯域幅を有しているが、それは上述の方法による範囲測定には適していない。その方法は、各々ゼロ信号前駆体を有している送信パルスを要求する。しかしながら、パルス間の正弦波波形が本質的に取消されるように、信号を変えることにより、その目標を達成することは可能である。好ましい実施形態では、それは、高いパルス間の選ばれた間隔上の信号にぴたりと接近する波形を構築し、次に、オリジナル信号からそれを引くことにより行われる。
【0134】
技術は、図1内での信号に適用することによって、示し得る。波形に示された2つの黒色ドットは、第1の2つのパルス間で中心にある間隔Iの端点である。最良の結果を与えるために実験的に測定された、間隔Iの左・右の端点は、それぞれ次のようなものである:

【0135】
この間隔上で本質的に信号のs(t)を取消すが、間隔の外側の害をあまり引き起こさない関数g(t)を生成する試みが、行なわれる。s(t)が1/sinπΔftによって変調された正弦波形状のsinπ(2N+1)Δftであることを、式(11)が示すので、まず、間隔I上の1/sinπΔftにぴたりと接近する関数h(t)が見出され、そしてその後、製品としてのg(t)が形成される:

h(t)は、以下の合計によって生成される:

ここで

そして、係数akは、最小自乗誤差を最小限にするために選ばれる。

間隔Iにわたる。
【0136】
その解は、aに対してJの偏導関数を取り入れること、および、それらをゼロに等しく設定することによって容易に得られる。結果はM+1方程式の線形システムである。

【0137】
これは、aについて解くことができ、このとき、

【0138】
その後、

である。
【0139】
(12)によって与えられる関数φ(t)の定義を用いて、

である。
【0140】
g(t)をs(t)から引くことで関数r(t)が得られ、これは本質的に間隔I上でs(t)取り消すはずのものである。付録(Appendix)で示されるように、方程式(20)での総和の上限Mに対する適切な選択は、M=2N+1である。この値と付録からの結果を用いて、

であり、このとき、

である。
【0141】
方程式(17)から、所望の信号r(t)を得るために、(ゼロ周波数DC項を含む)2N+3周波数の合計が必要とされるということが分かる。図5は、図1で示されるオリジナル信号s(t)に関して結果として生じる信号のr(t)を示し、このとき、N=11である。この場合、r(t)の構築は、(DC項bを含む)25の搬送波を必要とする。
【0142】
上のように構築されるr(t)の重要な特性は以下のとおりである:
【0143】
1.(14)から分かるように、最低周波数は0Hzであり、最高周波数は、(2N+1)ΔfHzである。したがって、全帯域幅は、(2N+1)ΔfHzである。
【0144】
2.搬送波はすべて、1つの搬送波を除いて、Δfを間隔をおいて配した(DCを含む)余弦関数であり、それは周波数

に配された正弦関数である。
【0145】
3.オリジナル信号s(t)は周期1/Δfを有するが、r(t)は周期2/Δfを有する。r(t)の各周期の第1の半期はs(t)の全周期であるが、信号の取り消された部分を含み、r(t)の第2の半期は大きく振動するセグメントである。したがって、前駆体の取り消しは、s(t)のあらゆる他のすべて周期にのみ生じる。
【0146】
これが生じるのは、取り消す関数g(t)がs(t)の他のすべての周期で実際にs(t)を強化するためである。その理由は、g(t)がs(t)のすべてのピークでその極性を逆にする一方で、s(t)はそうしないためである。処理利得を3dB増加させるために、s(t)のすべての周期に取り消された部分を含ませる方法が以下に記載される。
【0147】
4.s(t)の取り消された部分の長さは、1/Δfの約80−90%である。したがって、Δfは、マルチパスによってr(t)の以前のゼロでない部分からの任意の残留信号を除去するのに十分なほどにこの長さを長くするために、十分に小さいものである必要がある。
【0148】
5.r(t)の各ゼロ部分の直後に来るのは、振動する部分の第1の周期である。好適な実施形態において、上記のようなTOA測定法では、この周期の第1半期はTOA、特にその上昇の開始を測定するために使用される。この第1半期の周期のピーク値(それは主ピークと呼ばれるだろう)が、ほぼ同じ時点にあるs(t)の対応するピークより多少大きいことに注目することは面白い。第1の半期の幅は、NΔfにおよそ反比例する。
【0149】
6.大量の処理利得は、以下のことによって達成することができる:
【0150】
(a)r(t)が周期2/Δfによって周期的であるので、信号r(t)の反復を使用すること。同様に、さらに3dBの処理利得が、後に記載される方法によって可能である。
【0151】
(b)狭帯域フィルタ処理。2N+3搬送波の各々が狭帯域信号であるので、信号の占有周波数帯幅は、全ての割当周波数帯域を横切って広げられた広帯域信号よりもはるかに小さい。
【0152】
図5に示される信号r(t)に関して、N=11で、Δf=250kHzの場合、s(t)の取り消された部分の長さは、約3.7マイクロ秒または1,110メートルである。これはマルチパスによってr(t)の以前のゼロでない部分からの任意の残留信号を除去するのに十分なほどである。主ピークは、およそ35の値を有し、前駆体(すなわち、取り消し)領域における最大の大きさは約0.02であり、これは主ピークを下回る65dBである。これは、上記のようなTOA測定閾値技術を使用して、優れた性能を得るために望ましい。
【0153】
より少ない搬送波の使用が図6に描写されている。該図は、2N+3=9搬送波のみの合計に関して、Δf=850kHz、N=3、および、M=2N+1=7を用いて生成される信号を示す。この場合、信号の周期は、周期が8マイクロ秒である図5での信号と比較して、わずか

マイクロ秒である。この実施例は単位時間当たりより多くの周期を有するため、より多くの処理利得を達成可能であると予測される。
【0154】
しかしながら、より少ない搬送波が使用されるので、主ピークの振幅は以前の約1/3の大きさであり、それは予期された過剰な処理利得を取り消す傾向がある。同様に、ゼロの信号前駆体セグメントの長さはさらに短く、約0.8マイクロ秒または240メートルである。これは、マルチパスによってr(t)の以前のゼロでない部分からの任意の残留信号を除去するのにまだ十分なものでなければならない。(2N+1)Δf=5.95MHzの全帯域幅が以前と同様であり、主ピークの半周期の幅も同様にほぼ同じであることに注目されたい。より少ない搬送波が使用されるため、各搬送波が受信機で狭帯域にフィルタ処理される際には、いくらかの過剰な処理利得がなければならない。さらに、前駆体(すなわち、取り消し)領域における最大の大きさは、主ピークを下回る約75dBであり、先の実施例から10dB改善されている。
【0155】
RF周波数での送信:この時点まで、r(t)は、簡略化の目的のために、ベースバンド信号として記載されている。しかしながら、それはRFにまで変換されて、送信され、受信され、その後、受信機でベースバンド信号として再構築されることが可能である。説明するために、インデックスj(ラジアン/秒周波数は表記上の簡略化のために使用される)を有するマルチパス伝搬路のうちの1つを介して移動する、ベースバンド信号r(t)内の周波数コンポーネントωkの1つに何が起こるかを考える:

【0156】
送信器と受信機が周波数同期されるということをここで想定する。パラメータbは、r(t)に関する式(21)におけるk番目の係数である。パラメータτおよびφは、それぞれ(反射器の誘電特性による)j番目の伝搬路のパス遅延および位相シフトである。パラメータθは、受信機内でのベースバンドに対するダウンコンバートで生じる位相シフトである。同様の一連の関数は、方程式(21)の正弦波コンポーネントのために示すことができる。
【0157】
r(t)におけるゼロの信号前駆体が最大の大幅な伝搬遅延よりも著しく大きな長さを有する限り、方程式(20)における最終的なベースバンド信号が、依然としてゼロの信号前駆体を有するということに注目することが重要である。もちろん、すべてのパス(インデックスj)上の周波数コンポーネント(インデックスk)をすべて組み合わせる際には、受信機のベースバンド信号は、位相シフトをすべて含むr(t)の歪みのあるバージョンになるだろう。
【0158】
連続的な搬送波と信号の再構築は、図1と図1Aで示されている。送信器と受信機が時間と周波数とに同期していると考えられており、2N+3送信された搬送波を同時に送信する必要はない。実施例として、そのベースバンド表現が図1Aおよび図6のそれである信号の送信を考慮する。
【0159】
図6において、N=3であり、1ミリ秒の9つの周波数コンポーネントの各々は連続して送信されると想定する。各送信周波数の始まりと終わりの時間は、受信機で知られている。したがって、その周波数送信は、それらのそれぞれの時に、各周波数コンポーネントのその受信を連続して開始および終了することができる。信号伝播時間が1ミリ秒(それは、対象とする用途では、通常、数マイクロ秒未満であるだろう)と比較して非常に短いので、各受信周波数コンポーネントの一部は無視されるはずのもので、受信機は容易にそれを消すことができる。
【0160】
9つの周波数コンポーネントを受信する全工程は、処理利得を増加させるために、9ミリ秒ブロックの追加の受信で繰り返されることができる。1秒の総受信時間には、利得の処理に利用可能な約111のそのような9ミリ秒ブロックがあるだろう。さらに、各ブロック内には、

の主ピークから利用可能な追加の処理利得があるだろう。
【0161】
一般的に、信号の再構築を非常に経済的に行うことができ、あらゆる可能な処理利得を本質的に許可するであろうということに注目する価値がある。2N+3受信周波数の各々に関して:
1.その周波数に対応する記憶されたベクトル(位相ベクトル)列を形成するために、その周波数の各1ミリ秒の受信の位相と振幅を測定する。
2.その周波数のための記憶されたベクトルを平均化する。
3.最後に、持続時間2/Δfを有するベースバンド信号の1つの周期を再構築するために2N+3周波数の2N+3ベクトルの平均を使用し、および、信号のTOAを予測するために再構築を使用する。
【0162】
この方法は、1ミリ秒の送信信号に制限されず、送信信号の長さは増加または減少し得る。しかしながら、すべての送信信号のための総時間は、受信機または送信器の任意の運動を凍結するのに十分なほど短いものでなければならない。
【0163】
r(t)の代わりの半周期で取り消しを得ること:取り消す関数g(t)の極性を単に逆にすることによって、s(t)のピーク間の取り消しは、r(t)が以前は振動したところで可能である。しかしながら、s(t)のすべてのピークの間の取り消しを得るために、関数g(t)とその極性が逆にされたバージョンが、受信機に適用されなければならず、これは、受信機での係数の重み付けを含む。
【0164】
受信機での係数の重み付け:所望の際に、方程式(21)の係数bは、送信器でr(t)の構築に使用され、その代わりに受信機で導入されてもよい。これは、bが最初の工程の代わりに最後の工程で導入される際に、最終的な信号が同じである方程式(20)内での信号のシーケンスを考慮することで容易に見られる。雑音を無視すると、値は以下のとおりである:

【0165】
その後、送信器は同じ振幅での周波数をすべて送信することができ、それによってその設計を単純化する。この方法が、同様に各周波数で雑音に重みを加え、その影響が考慮されなければならないということに注目されたい。係数の重み付けは、2倍分の使用可能な主ピークを得るg(t)の極性反転に影響を与えるために、受信機で行われなければならないということにも注目されたい。
【0166】
チャネル内の中心周波数に対するΔfのスケーリング:VHFまたはより低い周波数でFCCの要件を満たすために、一定のチャネル間隔を有するチャネル送信が必要とされるであろう。割り当てられた全帯域と比べて小さな一定のチャネル間隔を有するチャネル伝送帯域(VHFおよびより低い周波数帯域の場合)では、Δfに対する少しの調整は、必要な場合には、元々の設計値による性能を変化させることなく、送信されるすべての周波数がチャネルの中心にくるようにすることが可能である。先に示されたベースバンド信号の2つの実施例において、周波数コンポーネントはすべてΔf/2の倍数であり、したがって、チャネル間隔がΔf/2を分ける場合、最も低いRF伝搬周波数は1本のチャンネルに集中することができ、他のすべての周波数はチャネルの中心に落ちる。
【0167】
距離測定機能を行うことに加えて、いくつかの無線周波数(RF)基準の同定、追跡、および、位置探知システムにおいて、マスター装置とタグ装置(tag unit)の両方は、音声、データおよび制御通信機能を実行する。同様に、好適な実施形態において、マスター装置とタグの両方は、距離測定機能に加えて、音声、データおよび制御通信機能を実行する。
【0168】
好適な実施形態によって、レンジング信号は、マルチパス軽減を含む広範囲の洗練された信号処理技術を受ける。しかしながら、これらの技術は、音声、データおよび制御信号には役立たない。その結果、提案されたシステム(他の現存システムと同様に)の動作範囲は、距離を確実かつ正確に測定するその能力によっては限定されず、音声および/またはデータおよび/または制御通信の間に範囲から外れることによって限定されることもある。
【0169】
他の無線周波数(RF)基準の同定、追跡、および、位置探知システムにおいて、距離測定機能は、音声、データおよび制御通信機能から分離される。これらのシステムでは、別々のRFトランシーバは、音声、データおよび制御通信機能を実行するために使用される。この手法の欠点は、システムの費用、複雑さ、サイズなどが増えることである。
【0170】
好適な実施形態において、前述の欠点を回避するために、狭帯域幅レンジング信号またはベースバンド狭帯域幅レンジング信号のいくつかの個々の周波数コンポーネントは、同一のデータ/制御信号によって変調され、および、音声の場合には、デジタル音声パケットデータで変調される。受信機で、最も高い信号強度を有する個々の周波数コンポーネントは復調され、得られた情報信頼度は、「ヴォーティング(voting)」を行なうことによって、または、情報の冗長を利用する他の信号処理技術によって、さらに高められる。
【0171】
この方法は、「ゼロ」現象を回避することができ、このとき、多数のパスからの入力RF信号は、DLOSパスを互いに破壊的に結合し、こうして、受信信号の強度を著しく弱め、それをSNRと関連付ける。さらに、そのような方法は、多数のパスからの入力信号がDLOSパスと互いに構造的に結合している1セットの周波数を見つけることができ、こうして受信信号の強度を高めて、それをSNRと関連付ける。
【0172】
先に言及されるように、スペクトル推定に基づいた超分解能アルゴリズムは、一般的に、同じモデルを使用する:復素指数関数とそれらの周波数の複素振幅との一次結合。この複素振幅は、上記の方程式3によって与えられる。
【0173】
スペクトル推定に基づいた超分解能アルゴリズムはすべて、多くの復素指数関数、すなわち、多くのマルチパス)の演繹的な知識を要求する。この多くの復素指数関数はモデルサイズと呼ばれ、方程式1乃至3で示されるように、マルチパスコンポーネントLの数によって測定される。しかしながら、(RF追跡-位置探知用途のための場合である)パス遅延を推定する際、この情報は利用できない。これは、別の次元、すなわち、モデルサイズの推定を、超分解能アルゴリズムによるスペクトルの推定プロセスに加える。
【0174】
モデルサイズの過小評価の場合に、周波数推定の正確さは影響を受け、モデルサイズが過大評価されると、アルゴリズムは疑似の(例えば、存在しない)周波数を生成するということが示されている(Kei Sakaguchi et al.,Influence of the Model Order Estimation Error in the ESPRIT Based High Resolution Techniques)。AIC(赤池情報量基準)、MDL(最小記述長)などのモデルサイズ推定の既存の方法は、信号(復素指数関数)間の相関性に対して高い感度を有する。しかし、RFマルチパスの場合には、これは常にそうである。例えば、前後の平滑化アルゴリズムが適用された後でさえ、相関性の残差量が常にあるであろう。
【0175】
Sakaguchiの文献において、これらの信号電力(振幅)を推定すること、次に、非常に低い電力で信号を拒絶することによって、過大評価されたモデルと、疑似周波数(信号)とは区別する実際の周波数(信号)を使用することが示唆されている。この方法は既存の方法を改善したものであるが、保証されてはいない。本発明者は、Kei Sakaguchiらによる方法を実行し、より大きなモデルサイズを用いるさらに複雑な場合のシミュレーションを行った。いくつかの場合には、擬似信号が実際の信号振幅に非常に近い振幅を有することもあることが観察された。
【0176】
すべてのスペクトル推定に基づいた超分解能アルゴリズムは、入力信号複素振幅データを2つの部分空間:雑音部分空間および信号部分空間に分割することによって動作する。これらの部分空間が適切に定義される(分離される)場合、モデルサイズは信号の部分空間サイズ(次元)と等しい。
【0177】
本発明の1つの実施形態では、モデルサイズの推定は、「F」統計値を用いて達成される。例えば、ESPRITアルゴリズムについて、(前後の相関性の平滑化による)分散行列の推定の特異値分解は、昇順で命じられる。その後、割り算が行われ、それによって(n+1)固有値がn番目の固有値によって割られる。この比率は「F」確率変数である。最悪の場合は、自由度(1と1)の「F」確率変数である。自由度(1と1)の「F」確率変数についての95%の信頼区間は、161である。閾値としてその値を設定することで、モデルサイズを測定する。同様に、雑音部分空間については、固有値が雑音電力の推定を表わすことに注目する。
【0178】
固有値の比率に「F」統計値を適用するこの方法は、モデルサイズを推定するより正確な方法である。「F」統計値における他の自由度は、閾値計算と、その結果としてのモデルサイズ推定とに使用することができるということに注目する。
【0179】
それにもかかわらず、場合によっては、2以上の非常に近接して(時間内に)間隔を置いた信号が、現実世界の測定欠陥のために1つの信号に縮退することがある。その結果、上記の方法は、信号(すなわち、モデルサイズ)の数を過小評価するだろう。モデルサイズの過小評価が周波数の推定精度を低くするため、特定の数を加えることによってモデルサイズを増加させることは賢明である。この数は、実験的に測定可能であり、および/または、シミュレーションから測定可能である。しかしながら、信号が近接に間隔を置かれない際には、モデルサイズが過大評価されるだろう。
【0180】
そのような場合、疑似の(すなわち、存在しない)周波数が現われることもある。先に述べたように、いくつかの場合では、擬似信号が実際の信号振幅に非常に近い振幅を有すると観察されたため、擬似信号の検出のために信号振幅を使用することは、必ずしも機能するとは限らない。それ故、振幅弁別に加えて、フィルタ処理は、疑似周波数の消去確率を改善するために実行されることができる。
【0181】
超分解能アルゴリズムによって推定される周波数は人工周波数(方程式2)である。実際に、これらの周波数は、マルチパス環境の個々のパス遅延である。その結果、負の周波数は存在するはずがなく、超分解能アルゴリズムによって生成される負の周波数はすべて、拒絶される疑似周波数である。
【0182】
さらに、DLOS距離範囲は、超分解能方法とは異なる方法を用いる測定中に得られた複素振幅

値から推定されることができる。これらの方法は精度が低い一方で、この手法は、遅延、すなわち、周波数を識別するために使用される範囲を確立する。
【0183】
例えば、信号振幅

が最大(すなわち、ゼロを回避する)に近いΔf間隔における

の比率は、DLOS遅延範囲を与える。実際のDLOS遅延が2倍まで大きくなったり小さくなったりすることがあるが、これは疑似の結果を拒否するのを助ける範囲を定義する。
【0184】
典型的な実施形態において、レンジング信号はラウンドトリップをなす。言いかえれば、それは両方向に:マスター/リーダからターゲット/スレーブまで、および、ターゲット/スレーブからマスター/リーダまで移動する。
【0185】
マスターは音:

を送信し、このとき、ωは動作帯域内の動作周波数であり、αは音信号振幅である。
【0186】
ターゲットの受信機では、受信信号(一方向)は以下のとおりである:

【0187】
このとき:Nはマルチパス環境中の信号パスの数であり;K0とτは、DLOS信号の振幅および飛行時間である;

は正でも負でもあり得る。

【0188】
このとき:

は、周波数領域の一方向のマルチパスRFチャネル伝達関数であり、A(ω)≧0である。
【0189】
ターゲットは受信信号を再送信する:

【0190】
マスター受信機では、ラウンドトリップ信号は以下のとおりである:

【0191】
あるいは:

である。
【0192】
他方で、方程式(26)および(28)から、

である。
【0193】
このとき:

は、周波数領域中のラウンドトリップマルチパスRFチャネル伝達関数である。
【0194】
方程式29から、ラウンドトリップマルチパスチャネルは、一方向のチャネルマルチパスよりも多くのパスを有する。これは、例えば、

パス遅延に加えて、

の式が、これらのパス遅延、例えば、

の組み合わせを含むためである。
【0195】
これらの組み合わせは、信号(復素指数関数)の数を劇的に増加させる。従って、非常に接近して間隔を置いた(時間内で)信号の可能性も同様に高め、重大なモデルサイズの過小評価をもたらすこともある。したがって、一方向のマルチパスRFチャネル伝達関数を得ることは望ましい。
【0196】
好適な実施形態において、一方向の振幅値、

は、ターゲット/スレーブ装置から直接得ることができる。しかしながら、一方向の位相値

は、直接測定することができない。ラウンドトリップ位相測定観察から一方向の位相を測定することは可能である:

【0197】
しかしながら、ωの各値に対して、位相α(ω)の2つの値があることで、以下のようになる。
【0198】
eJα(ω)=ejβ(ω)である。
【0199】
この曖昧さを解決する詳細な記載が以下に示される。レンジング信号の異なる周波数コンポーネントが互いに接近している場合、大部分については、一方向の位相は、ラウンドトリップ位相を2で割ることによって見出されることができる。例外は、「ゼロ」に接近している領域を含み、該領域では、位相は、小さな周波数ステップによってさえ、重大な変更を遂げることができる。注:「ゼロ」現象は、多数のパスからの入力RF信号がDLOSパスと互いに破壊的に結合している場所であり、したがって、受信信号強度を著しく弱めて、それとSNRを関連付ける。
【0200】
h(t)を通信チャネルの一方向のインパルス応答にする。周波数領域において対応する伝達関数は、以下の通りである。

【0201】
このとき、A(ω)≧0が大きさであり、α(ω)は伝達関数の位相である。一方向のインパルス応答が、受信されるときと同じチャネルを戻って再送信される場合、結果として生じる双方向の伝達関数は、以下の通りである。

【0202】
このとき、β(ω)≧0である。双方向の伝達関数G(ω)が、いくつかの開かれた周波数間隔(ω、ω)のすべてのωで既知のものであると仮定する。G(ω)を生成した(ω、ω)上で定義された一方向の伝達関数H(ω)を測定することは可能であろうか。
【0203】
双方向の伝達関数の大きさが一方向の大きさの二乗であるため、

ということは明らかである。
【0204】
しかしながら、G(ω)についての観察から一方向の伝達関数の位相を回復しようとすると、状況はますますとらえどころがない。ωの各値に対して、位相α(ω)の2つの値があることで、以下のようになる。

【0205】
多くの異なる解は、各々の異なる周波数ωについて2つの可能な位相値のうちの1つを独立して選択することによって生成されることもある。
【0206】
以下の定理は、任意の一方向の伝達関数がすべての周波数で連続的であると仮定するものであるが、この状況を解決するのを助ける。
【0207】
定理1:Iを、双方向の伝達関数

のゼロを一つも含まない周波数ωの開区間とする。

をI上の連続関数とし、このとき、β(ω)=2γ(ω)である。その後、J(ω)と−J(ω)は、I上でG(ω)を生成する一方向の伝達関数であり、他のものはなにもない。
【0208】
証明:一方向の伝達関数のための解の1つは、I上で連続的な関数

である。なぜなら、それは、I上で微分可能であるからであり、このとき、β(ω)=2α(ω)である。I、H(ω)およびJ(ω)上の

は、I上で非ゼロである。このとき、

である。
【0209】
H(ω)とJ(ω)は、I上で連続的であり、非ゼロであり、それらの比率はI上で連続的である。したがって、(34)の右側はI上で連続的である。状態β(ω)=2α(ω)=2γ(ω)は、各々の

について、α(ω)−γ(ω)が0またはπのいずれかであることを示唆する。しかしながら、α(ω)−γ(ω)が、(34)の右側で不連続を引き起こすことなく、これらの2つの値を切り替えることはできない。したがって、すべての

に関するα(ω)−γ(ω)=0か、または、すべての

に関するα(ω)−γ(ω)=πのいずれかである。第1の場合、J(ω)=H(ω)が得られ、第2の場合は、J(ω)=−H(ω)が得られる。
【0210】
この定理は、伝達関数

のゼロを一つも含まない任意の開間隔I上で一方向の解を得るために、関数

を作って、J(ω)を連続的にするような方法でβ(ω)=2γ(ω)を満たすγ(ω)の値を選択する。この特性(すなわち、H(ω))を有する解があることは知られているので、これを行うことは常に可能である。
【0211】
一方向の解を見つけるための代替手順は、以下の定理に基づく:
【0212】
定理2:

を一方向の伝達関数にし、Iを、H(ω)のゼロを含まない周波数の開区間とする。その後、H(ω)の位相関数α(ω)は、I上で連続的でなければならない。
【0213】
証明:ωを間隔I内の周波数とする。図7において、複素数値H(ω)は、複素平面中の点として計画され、仮説によって、

である。ε>0を任意に小さな実数とし、図7で示される測定値εの2つの角度も、2つの放射線OAおよびOBの接線、および、H(ω)に中心がある円も考慮する。仮定によって、H(ω)はすべてのωに連続的である。したがって、ωがωに十分に接近しているとき、複素数値H(ω)は円にあり、

であることが分かる。ε>0は任意に選択されたため、その



として完結させることによって、その結果、位相関数α(ω)はωで連続的である。
【0214】
定理3:Iを、双方向の伝達関数

のゼロを含まない周波数ωの開区間とする。

をI上の関数とし、このとき、β(ω)=2γ(ω)およびγ(ω)は連続的である。そのとき、J(ω)と−J(ω)は、I上でG(ω)を生成する一方向の伝達関数であり、他のものはない。
【0215】
証明:証明は定理1の証明に類似する。一方向の伝達関数のための解の1つが、関数

であり、このとき、β(ω)=2α(ω)であることを我々は知っている。I、H(ω)およびJ(ω)上の

は、I上で非ゼロである。このとき、

である。
【0216】
仮説によって、γ(ω)はI上で連続的であり、定理2によって、α(ω)は、同様にI上で連続的である。したがって、α(ω)−γ(ω)はI上で連続的である。状態β(ω)=2α(ω)=2γ(ω)は、各

について、
α(ω)−γ(ω)が0またはπのいずれかであることを示唆する。しかしながら、α(ω)−γ(ω)は、I上で不連続になることなく、これらの2つの値を切り替えることはできない。したがって、すべての

のためのα(ω)−γ(ω)=0、または、すべての

のためのα(ω)−γ(ω)=πのいずれかである。第1の場合、J(ω)=H(ω)が得られ、第2の場合、J(ω)=−H(ω)が得られる。
【0217】
定理3は、我々に、伝達関数

のゼロを含まない任意の開区間上で一方向の解を得るように命じる。位相関数γ(ω)を連続的にするような方法でβ(ω)=2γ(ω)を満たすγ(ω)の値を選択し、単に関数

を作る。この特性、すなわち、H(ω)を有する解があることが知られているので、これを行うことは常に可能である。
【0218】
上記の定理は、双方向の関数G(ω)を生成する2つの一方向の伝達関数を再構築する方法を示しているが、それらは、G(ω)のゼロを含んでいない周波数間隔I上でのみ有用である。一般的に、G(ω)は、ゼロを含み得る周波数間隔(ω、ω)上で認められるであろう。以下は、この問題を回避する方法であり、(ω、ω)にG(ω)の有限数のゼロのみがあるとともに、一方向の伝達関数は、(ω、ω)上のすべての順序の導関数を有し、その全てが任意の所定の周波数ωで0であるというわけではないと仮定している。
【0219】
H(ω)を間隔(ω、ω)上でG(ω)を生成する一方向の関数とし、G(ω)が(ω、ω)上に少なくとも1つのゼロを有すると仮定する。G(ω)のゼロは、(ω、ω)を、有限数の隣接する開かれた周波数間隔J、J、…Jに分けるだろう。各々のそのような間隔上において、定理1または定理3のいずれかを使用して、解H(ω)または−H(ω)が見出されるだろう。我々はこれらの解を「まとめる(stitich together)」必要があり、その結果、まとめられた解が、(ω、ω)のすべてにわたってH(ω)または−H(ω)のいずれかになるようにする。これを行うためには、1つの部分区間から次の部分区間に移動する際に、H(ω)から−H(ω)に、または、−H(ω)からH(ω)に切り替えないように、2つの隣接する部分区間中の解をペアにする方法を知る必要がある。
【0220】
第1の2つの隣接した開かれた部分区間JおよびJで始まる、まとめる手続きを示す。これらの部分区間は、G(ω)のゼロである周波数ωで隣接するだろう(もちろん、ωはいずれの部分区間にも含まれていない)一方向の伝達関数の特性に関する上記の仮定によって、

となるように、最小の正整数nが存在しなければならず、このとき、上付き文字(n)はn番目の導関数を表示する。その後、左から

としてJにおける一方向の解のn番目の導関数の極限は、J内での我々の解がH(ω)または−H(ω)であるかどうかによって、

または

のいずれかになるだろう。同様に、右から

としてJにおける一方向の解のn番目の導関数の極限は、Jにおける我々の解がH(ω)または−H(ω)であるかどうかによって、

または

のいずれかになるだろう。

であるので、JとJの解が両方ともH(ω)または両方とも−H(ω)である時かつその時に限り、2つの極限は等しくなるであろう。左右の極限値が不等であるとき、部分区間Jにおける解を逆にする。そうでなければ、そのようにはしない。
【0221】
(必要ならば)部分区間Jにおける解を逆にした後に、部分区間JとJ3のために同一の手続きを行って、(必要ならば)部分区間J3における解を逆にする。このやり方を継続して、最終的には区間(ω、ω)上で完全解を作り上げる。
【0222】
H(ω)の高次導関数が上記の再構築手順では必要ではないことが望ましい。というのも、それらは雑音存在下では正確に計算するのが難しいためである。G(ω)のうちの任意のゼロでは、H(ω)の一次導関数が非ゼロになる可能性が高いように思われるため、このような問題が起こる可能性は少なく、そして、そうでなければ、二次導関数は非ゼロになる可能性が高いだろう。
【0223】
実際的なスキームでは、双方向の伝達関数G(ω)は離散周波数で測定され、該離散周波数はG(ω)のゼロの近くの導関数を合理的に正確に計算することを可能にするほどに十分にともに接近していなければならない。
【0224】
RF基準距離測定に関して、演繹的な既知の形状を備えたレンジング信号の、未知数の、近接して間隔を置いたエコー、オーバーラップするエコー、および、雑音の多いエコーを解決することが必要である。レンジング信号が狭帯域であると仮定すると、周波数領域では、このRF現象は、多くの正弦波の和として記載(モデル化)可能であり、その各々はマルチパスコンポーネントごとにあり、および、各々はパスの複素減衰と伝搬遅延に伴う。
【0225】
上記の和のフーリエ変換を行うことで、時間領域中のこのマルチパスモデルを表すだろう。この時間領域式での可変時間と可変周波数の役割を交換すると、このマルチパスモデルは高調波信号スペクトルとなり、この高調波信号スペクトルにおいて、パスの伝搬遅延は高調波信号に変形される。
【0226】
超(高)分解能スペクトル推定法は、スペクトル中の近接に配された周波数を識別するために設計され、多数の高調波信号(例えば、パス遅延)の個々の周波数を推定するために使用される。その結果、パス遅延は正確に推定することができる。
【0227】
超分解能スペクトル推定は、ベースバンド・レンジング信号サンプルの分散行列の固有の構造と、分散行列の固有の特性を利用することによって、個々の周波数(例えば、パス遅延)の基本的な推定に解を与える。固有の構造特性のうちの1つは、固有値を組み合わせることができ、その結果として、直交の雑音と信号の固有ベクトル(aka部分空間)に分けることができるということである。別の固有の構造特性は、回転不変量信号の部分空間特性である。
【0228】
部分空間分解技術(MUSIC、rootMUSIC、ESPRITなど)は、測定値の推定される分散行列を、2つの直交する部分空間、雑音部分空間と信号部分空間に分けることに依存する。部分空間分解の方法論の背後にある理論は、雑音部分空間上へのオブザーバブルの投影が、雑音のみからなり、信号の部分空間上へのオブザーバブルの投影は信号のみからなるというものである。
【0229】
スペクトル推定方法は、信号が狭帯域であり、高調波信号の数も知られており、すなわち、信号の部分空間のサイズを知る必要があると仮定する。信号の部分空間のサイズはモデルサイズと呼ばれる。一般的に、該サイズを任意に詳細に知ることはできず、環境が変わると−特に屋内で−急速に変わることができる。任意の部分空間分解アルゴリズムを適用する際の最も困難で最も巧妙な問題のうちの1つは、存在する周波数コンポーネントの数として得ることができる信号の部分空間の大きさであり、その数は、ダイレクトパスとマルチパス反射の数である。現実世界の測定欠陥のために、モデルサイズの推定における誤差は常にあり、該誤差は回り回って周波数推定(すなわち、距離)の正確さを失う結果をもたらすであろう。
【0230】
距離測定精度を改善するために、本発明の1つの実施形態は、部分空間分解の高分解能推定の方法論における最高水準を発展させる6つの特徴を含む。遅延パス測定の曖昧さをさらに減らす異なる固有の構造特性を使用することによって、個々の周波数を推定する2つ以上のアルゴリズムを組み合わせることが含まれる。
【0231】
rootMusicは個々の周波数を見つけ、オブザーバブルが雑音の部分空間上に投影される際に、投影のエネルギーを最小化する。 Espritアルゴリズムは、回転演算子から個々の周波数を測定する。さらに、多くの点において、この演算は、周波数を見つけ、オブザーバブルが信号の部分空間上に投影される際に、投影のエネルギーを最大化にするという点で、Musicの共役である。
【0232】
モデルサイズは、これらのアルゴリズム両方の鍵となるもので、実際には、屋内のレンジングで見られるような複素信号環境で鍵となるもので、MusicとEspritにもっとも優れた性能を提供するモデルサイズは、一般的には等しくない。理由については以下で議論する。
【0233】
Musicについては、分解の基礎要素を「信号の固有値」(第1種過誤)として認識する側で誤ることが望ましい。これは、雑音の部分空間上で投影される信号エネルギーの量を最小化し、精度を改善するだろう。Espritに関しては−逆のことが正しいのだが−分解の基礎要素を「雑音固有値」として認定する側で誤ることが望ましい。これは再び第1種過誤である。これは、信号の部分空間上に投影されるエネルギーへの雑音の影響を最小化するだろう。したがって、Musicのためのモデルサイズは、一般的に、Espritのためのモデルサイズより多少大きくなる。
【0234】
第2に、複素信号環境下では、強く反射され、かつ、ダイレクトパスが事実上マルチパス反射のうちのいくつかよりはるかに弱いという可能性をはらむなか、モデルサイズが十分な統計信頼性を以って推定するのが難しくなる状況が生じる。この問題には、MusicとEspritの両方のための「基礎」モデルサイズを推定すること、および、各々に関するベース・モデルサイズによって定義されたモデルサイズのウィンドウにおいてMusicとEspritを使用するオブザーバブルデータを処理することによって対処する。このことは各測定の複数測定をもたらす。
【0235】
実施形態の第1特徴は、モデルサイズを推定するためにF統計値を使用することである(上記参照)。第2の特徴は、MusicとEspritのためのF統計値における異なる第1種過誤率を使用することである。これは、上記のようなMusicとEsprit間の第1種過誤差を満たす。3番目の特徴は、ダイレクトパスを検知する可能性を最大限にするために、ベース・モデルのサイズとウィンドウを使用することである。
【0236】
物理的および電子環境を急に変更する可能性があるため、すべての測定はしっかりとした回答を示すとは限らないだろう。これは、ロバストレンジ推定を与えるために、多重測定でクラスター分析を使用することによって、対処される。実施形態の4番目の特徴は、多重測定を使用することである。
【0237】
多重測定に由来する多数の回答の確率分布は、各々がMusicとEspritの両方の実施による多数のモデルサイズを使用するものであるが、現在、多重測定が存在するため、この確率分布はマルチモーダルである。従来のクラスター分析はこの用途に十分ではないだろう。5番目の特徴は、投影されたマルチパスコンポーネントの直接的な範囲と同等の範囲を推定するために、マルチモーダルのクラスター分析を展開することである。6番目の特徴は、クラスター分析(範囲および標準偏差)によって提供される範囲推定の統計の分析、および、統計的に等しいこれらの推定を組み合わせることである。これはさらに正確なレンジ推定をもたらす。
【0238】
前述の方法も広帯域幅レンジング信号位置特定システムで使用することができる。
【0239】
システムと方法の異なる実施形態についてこのように記載してきたため、上記方法と装置の一定の利点が獲得されたことは当業者には明らかなはずである。特に、オブジェクトを追跡および位置探知するためのシステムが、ごく少額の追加コストで、FGPAまたはASIC、および、標準信号処理ソフトウエア/ハードウェアの組み合わせを使用して、組み立てられることができるということは、当業者によって評価されるべきである。そのようなシステムは、様々な用途、例えば、屋内または屋外環境下で、過酷で敵対的な環境下などで、人を位置探知することなどに役に立つ。
【0240】
様々な変更、適応、および、その代替の実施形態が、本発明の範囲と精神の範囲内でなされ得るということを同様に認識されたい。本発明は、以下の請求項によってさらに定義される。
【0241】
付録:閾値法におけるr(t)の微分:
【0242】
式(20)から始めると、以下を得る。

【0243】
このとき、三角関数の公式

が使用される。
【0244】
を除いて、係数aは、kに対してさえもゼロである。この理由は、間隔I上で、h(t)によって近似させようとしている関数1/sinπΔftはIの中心に近い偶数であるが、偶数のk、

のための基底関数sinkπΔftは、Iの中心に近い奇数であり、したがって、I上の1/sinπΔftに直交である。こうして、置き換えk=2n+1を作ることができ、Mを、奇数の正整数にする。実際に、M=2N+1とするであろう。この選択は、間隔I内のばらつきの相当な量の取り消しを与えるために実験的に測定された。

【0245】
ここで、第1の和でk=N−nの置き換えを行い、第2の和でk=N+n+1の置き換えを行って、

を得る。
【0246】
s(t)からg(t)を引くと以下を得る。

【0247】
以下のようにする。

【0248】
その後、(A4)は以下のように書くことができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
RF基準のオブジェクトを追跡、位置探知するためのシステムであって、
RFトランシーバを有しており、タグに対する距離を測定するタグに接続するのに適したマスターユニットと、
RFトランシーバを有しており、マスターユニットに接続するのに適したタグと、
を含んでおり、
ここで、マスターユニットのRFトランシーバおよびタグのRFトランシーバは、レンジング信号を送受信するように構成されており、
ここで、マスターユニットのRFトランシーバは、レンジング信号を送信するように構成されており、
タグのRFトランシーバは、レンジング信号を受信するように構成されており、
レンジング信号は、異なる周波数で多くのパルスを含んでおり、
ここで、レンジング信号は、マスタ装置とタグの間の距離の測定のために使用され、および、ここで、高分解能スペクトル推定分析は、多くのマルチパス周波数コンポーネントのモデルサイズを推定することと、周波数コンポーネントの分布に基づく距離計算を含む、距離測定の空間の曖昧さを低減するために使用される、ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
レンジング信号は、広帯域幅信号であることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項3】
システムは、レンジング信号およびベースバンド・レンジング信号を生成するため、異なる個々の周波数コンポーネントを使用する、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
1以上のマスターユニットと1以上のタグユニット間のシステムクロック同期は、各ユニットクロック周波数の調節によって周期的に遠隔で実行され、ここで、各マスターユニットは、そのシステムクロック周波数と他のユニットクロック周波数間の差を計算し記憶し、および、ここで、各マスターユニットは、そのシステムクロック周波数と他のユニットのシステムクロック周波数間の差のための複素振幅測定を調節する、ことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項5】
レンジング信号は、狭帯域幅信号である、ことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項6】
レンジング信号およびベースバンド・レンジング信号の異なる周波数コンポーネントは、擬似乱数的に選択されており、コンポーネントは、周波数において、近接しており、および/または、間隔があけられている、ことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項7】
マスターとタグの受信機は、帰還レンジング信号およびベースバンド・レンジング信号の複素振幅を測定し、
ここで、多数の帰還レンジング信号/ベースバンド・レンジング信号の個々の周波数コンポーネントサンプルの複素振幅サンプルは、信号対雑音比を増加させることによって、複素振幅測定精度を改善するために平均化される、ことを特徴とする請求項6記載のシステム。
【請求項8】
多数の帰還レンジング信号の複素振幅値は、整合フィルタ処理技術を使用して測定される、ことを特徴とする請求項7記載のシステム。
【請求項9】
多数の帰還レンジング信号の複素振幅値は、帰還レンジング信号/ベースバンド・レンジング信号の個々の周波数コンポーネントRSSI値、および帰還レンジング信号およびベースバンド・レンジング信号の個々の周波数コンポーネントの位相値から計算される、ことを特徴とする請求項7記載のシステム。
【請求項10】
帰還レンジング信号およびベースバンド・レンジング信号の個々の周波数コンポーネント位相値は、帰還レンジング信号の個々の周波数コンポーネント位相値と送信された(オリジナルの)レンジング信号の個々の周波数コンポーネント位相値との比較を介して計算される、ことを特徴とする請求項9記載のシステム。
【請求項11】
多数の帰還レンジング信号/ベースバンド・レンジング信号の個々の周波数コンポーネントの複素振幅値は、ラウンドトリップ値から一方向の複素振幅値へと変換される、ことを特徴とする請求項9記載のシステム。
【請求項12】
多数の帰還レンジング信号/ベースバンド・レンジング信号の個々の周波数コンポーネント複素振幅値は、帰還ベースバンド信号の個々のコンポーネント周波数を対応する出力のベースバンド信号の個々のコンポーネント周波数によってサンプリングし、ベースバンド信号の個々のコンポーネント周波数の時間分以下である期間にわたり、結果として生じる信号を積分することによって得られる、ことを特徴とする請求項9記載のシステム。
【請求項13】
多数の帰還レンジング信号/ベースバンド・レンジング信号の個々の周波数コンポーネント複素振幅値は、より大きな帯域幅での合成レンジング信号へと集められる、ことを特徴とする請求項9記載のシステム。
【請求項14】
合成レンジング信号は、選択された間隔の信号にぴたりと接近する波形を構築し、次に、オリジナルの合成レンジング信号からそれを引くことによって取消された、合成レンジング信号の正弦波波形の前駆体を有している、ことを特徴とする請求項13記載のシステム。
【請求項15】
帰還レンジング信号およびベースバンド・レンジング信号の個々の周波数コンポーネントは、2つのディジタルフィルタのみによってフィルタ処理され、ここで、1つのフィルタは、第1の周波数コンポーネントのために常に調整され、また、他のフィルタは、全ての他の周波数コンポーネントのためにダイナミックに調整され、および、ここで、レンジング信号の多数のインスタンスは、マスターユニットによって送信され、および、各インスタンスは、2つの周波数、第1の周波数f1および第2の周波数fiのみから成り、ここで、

である、ことを特徴とする請求項9記載のシステム。
【請求項16】
受信レンジング信号およびベースバンド・レンジング信号の個々の周波数コンポーネントは、マスターユニットおよびタグ・ユニットのRFトランシーバの周波数シンセサイザ/動作周波数の調節によって、周波数コンポーネントの残りを生成することによって、ダイナミックフィルタの調節なしに、ディジタルフィルタによりフィルタ処理される、ことを特徴とする請求項15記載のシステム。
【請求項17】
同じ周波数の2つの測定は、シンセサイザーの周波数を変更した後に生じる位相オフセットを取消すためになされる、ことを特徴とする請求項16記載のシステム。
【請求項18】
高分解能スペクトル推定分析は、MUSIC/rootMUSICおよびESPRITアルゴリズムを使用する、ことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項19】
高分解能スペクトル推定分析は、レンジング信号反射の数を推定するために、F統計値を使用する、ことを特徴とする請求項18記載のシステム。
【請求項20】
高分解能スペクトル推定分析は、さらにダイレクトパス遅延および他の経路遅延の測定曖昧さを低減するために、異なる固有構造特性を使用することによって、個々の周波数を推定する2つ以上のアルゴリズムを組み合わせる、ことを特徴とする請求項19記載のシステム。
【請求項21】
高分解能スペクトル分析は、F統計値を使用して、高分解能スペクトル推定アルゴリズム特性に依存して、各モデルのモデル・サイズを調節する、ことを特徴とする請求項20記載のシステム。
【請求項22】
高分解能スペクトル推定分析は、ダイレクトパス信号を検知する可能性を最大限にするために、モデル・サイズのウィンドウを使用することを特徴とする請求項21記載のシステム。
【請求項23】
高分解能スペクトル推定分析は、2以上のスペクトル推定アルゴリズムからの多数のモデル・サイズのウィンドウから生成された、帰還信号およびデータの多数の測定値を使用し、距離推定を行うために、多数の測定値とデータのクラスタ分析を実行することを特徴とする請求項22記載のシステム。
【請求項24】
クラスタ分析は、帰還マルチパス・コンポーネントの等価範囲を推定するマルチモーダルのクラスタ分析を含むことを特徴とする請求項23記載のシステム。
【請求項25】
高分解能スペクトル分析は、範囲推定のマルチモーダルの分析によって、帰還データ上で動作し、より高い範囲推定精度を達成するために、統計的に同一の推定を組み合わせる、ことを特徴とする請求項24記載のシステム。
【請求項26】
高分解能スペクトル分析に加えて、パラメータ推定分析は、個々の周波数コンポーネント複素振幅値を使用して、高精度で、信号の直接視野(DLOS)パスを他のマルチパスから区別するために使用される、ことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項27】
レンジング信号の変調は、スペクトル拡散、チャープ・スペクトル拡散および周波数ホップ処理の何れかを含む、ことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項28】
レンジング信号は、離散的または連続的なチャープであり、ここで、各チャープは、同じ位相で始められ、および、1つ以上のチャープは、マスターユニットによって送受信される、ことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項29】
プロセッサは、各受信された個々のチャープを位置調節し、その結果、帰還チャープは、所望の領域の中心からのもので、その後、各個々の帰還チャープを“脱傾斜(deramps)”する、ことを特徴とする請求項26記載のシステム。
【請求項30】
プロセッサは、個々に“脱傾斜”されたチャープの結果を集め、時間領域における複素振幅サンプル/値を生成する、ことを特徴とする請求項27記載のシステム。
【請求項31】
レンジング信号は、デジタル信号処理(DSP)およびソフトウェア定義無線(SDR)を使用して処理される、ことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項32】
レンジング信号は、VHF帯ほど高くない、ことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項33】
レンジング信号は、UHF帯、およびより高い周波数帯にある、ことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項34】
マスターユニットのうちの1つは、単一の発信リーダ・モードで動作し、他のマスターユニットは、サテライトモードおよびマスター対マスターの距離測定モードで動作する、ことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項35】
各タグは、第1、第2レンジング信号シーケンスを受信し、第1レンジング信号シーケンスは、発信マスターユニットによって生成され、第2レンジング信号シーケンスは、周辺のマスターユニットによって再送信され、および
ここで、各レンジング信号シーケンスは、タグによって別々に処理され、距離測定中の時間遅延が測定され、および各タグは、各レンジング信号用に飛行時間の演算を行う、ことを特徴とする請求項34記載のシステム。
【請求項36】
第1と第2レンジング信号の飛行時間の違いは、マスターユニットに対するタグの位置測定のために使用され、
ここで、マスター・タグおよびマスタ・マスター距離測定は、到着の時間差(DTOA)、および、DTOAと仮想三角測定および逆の仮想三角測定の組合せ、の何れかを使用して行なわれる、ことを特徴とする請求項35記載のシステム。
【請求項37】
マスター・タグまたはマスタ・マスター距離測定は、到着時間(TOA)、およびTOAと仮想三角測定および逆の仮想三角測定の組合せ、の何れかを使用して行なわれる、ことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項38】
高分解能スペクトル推定分析は、ベースバンド・レンジング信号サンプルの分散行列の固有値を利用し、
ここで、分散行列は、パス遅延の提示である個々の周波数の推定を与え、
ここで、固有値は、直交の雑音および信号の固有ベクトル(部分空間)へ分離され、個々の周波数は、雑音部分空間上にオブザーバブルな帰還信号を投射し、投射エネルギーを最小限にすることによって、測定され、
ここで、回転演算子は回転不変信号の部分空間特性から測定され、個々の周波数は、回転演算子から推定される、ことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項39】
マスターとマスター、及び/又は、マスターとタグの間の通信は、全二重かまたは半二重である、ことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項40】
マスターとマスター、及び/又は、マスターとタグの間の通信はシンプレックスであり、
オブジェクトをRF基準で追跡し、位置探知するためのシステムであって、
RFトランシーバを有しており、タグに対する距離を測定するために、タグに接続するのに適しているマスターユニットと、
RFトランシーバを有しており、マスターユニットに接続するのに適したタグと、
を含んでおり、
マスターユニットのRFトランシーバおよびタグのRFトランシーバは、レンジング信号を送受信するように構成されており、
マスターユニットのRFトランシーバは、レンジング信号を送信するように構成されており、
および、タグのRFトランシーバは、レンジング信号を受信するように構成されており、ここで、レンジング信号は、異なる周波数で多数のパルスを含み、レンジング信号は、マスターユニットとタグの間の距離の測定のために使用され、および、ここで、システムは、受信レンジング信号の複素振幅を計算する、ことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項41】
オブジェクトをRF基準で追跡し、位置特定するためのシステムであって、
RFトランシーバを有しており、タグに対する距離を測定するタグに接続するのに適したマスターユニットと、
RFトランシーバを有しており、マスターユニットに接続するのに適したタグと、
を含んでおり、
マスターユニットのRFトランシーバ、およびタグのRFトランシーバは、UHF帯で狭帯域幅レンジング信号を送受信するように構成されており、
および、マスターユニットのRFトランシーバは、UHF帯で狭帯域幅レンジング信号を送信するように構成されており、
タグのRFトランシーバは、UHF帯で狭帯域幅レンジング信号を受信するように構成されており、ここで、狭帯域幅レンジング信号は、異なる周波数で1つ以上の多数のパルスを含み、ここで、狭帯域幅レンジング信号は、同じ周波数で1つ以上の多数のパルスを含み、レンジング信号は、(a)多数の周波数での1つのパルス、(b)単一の周波数での多数のパルス、および(c)異なる周波数での多数のパルス、の何れかを含み、ここで狭帯域幅レンジング信号、を含むことを特徴とするシステム。
【請求項42】
オブジェクトをRF基準で追跡し、位置探知するシステムであって、
RFトランシーバを有しており、タグに対する距離を測定するタグに接続するのに適したマスターユニットと、
およびRFトランシーバを有しており、マスターユニットに接続するのに適したタグと、
を含んでおり、
ここで、マスターユニットのRFトランシーバおよびタグのRFトランシーバは、レンジング信号を送受信するように構成されており、ここで、マスターユニットのRFトランシーバは、レンジング信号を送信するように構成されており、タグのRFトランシーバは、レンジング信号を受信するように構成されており、レンジング信号は(a)多数の周波数での1つのパルス、(b)単一の周波数での多数のパルス、および(c)異なる周波数での多数のパルスの何れかを含んでおり、ここで、高分解能スペクトル推定分析は、多くのマルチパス周波数コンポーネントのためのモデル・サイズを推定することと、周波数コンポーネントの分布に基づいた距離の計算と、を含む距離測定中の空間の曖昧さを低減するために使用される、システム。
【請求項43】
オブジェクトをRF基準で追跡し、位置探知するシステムであって、
RFトランシーバを有しており、タグ及び/又は別のマスターユニットに対する距離を測定するため、タグ及び/又は別のマスターユニットに接続するのに適したマスターユニットと、
およびRFトランシーバを有しており、マスターユニットに接続するのに適したタグ及び/又は別のマスターユニットと、
を含んでおり、
ここで、マスターユニットは、RFトランシーバを有しており、別のマスターユニットに接続するのに適しており、ここで、マスターユニットのRFトランシーバおよびタグのRFトランシーバは、レンジング信号を送受信するように構成されており、
ここで、マスターユニットのRFトランシーバは、レンジング信号を送信するように構成されており、タグのRFトランシーバは、レンジング信号を受信するように構成されており、
ここで、レンジング信号は、(a)多数の周波数での1つのパルス、(b)単一の周波数での多数のパルス、および(c)異なる周波数での多数のパルスの何れかを含み、
ここで、レンジング信号は、マスターユニットとタグの間の距離の測定のために使用され、
ここで、レンジング信号は、多数のマスターユニットの間の距離の測定のために使用され、
ここで、システムは、マスターとタグ、および/またはマスターとマスター間の距離を測定するため、受信レンジング信号の複素振幅を計算する、ことを特徴とするシステム。
【請求項44】
オブジェクトをRF基準で追跡し、位置探知するシステムであって、
RFトランシーバを有しており、タグに対する距離を測定するため、タグに接続するのに適したマスターユニットと、
および、RFトランシーバを有しており、マスターユニットに接続するのに適したタグと、
を含んでおり、
ここで、マスターユニットのRFトランシーバおよびタグのRFトランシーバは、レンジング信号を送受信するように構成されており、
ここで、マスターユニットのRFトランシーバは、レンジング信号を送信するように構成されており、タグのRFトランシーバは、レンジング信号を受信するように構成されており、レンジング信号およびベースバンド・レンジング信号の異なる周波数コンポーネントは、擬似乱数的に選択されており、
ここで(a)コンポーネントは、周波数中で近接するかまたは間隔を置かれ、(b)コンポーネントは、同時に生成され、および/または、時間内に間隔をあけて生成され、または(c)(a)と(b)の組合せ、であることを特徴とするシステム。

【図1A】
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【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−513014(P2012−513014A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530285(P2011−530285)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/059472
【国際公開番号】WO2010/134933
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511085389)インヴィジトラック,インク. (1)
【Fターム(参考)】