説明

低温治療装置

【課題】 脳組織だけを局所的に短時間で冷却できる、新たな低温治療装置を提供する。
【解決手段】 カテーテル(14)を患者(P)に挿入し、カテーテル(14)内を流れる冷媒(M)と患者(P)の血管(V)内を流れる血液との間で熱を交換することにより血液を冷却する低温治療装置である。この低温治療装置は、互いに接続された冷媒供給通路(52,116)と冷媒回収通路(54,118)を備えたカテーテル(14)と、冷媒供給通路(52,116)と冷媒回収通路(54,118)に接続され、冷媒供給通路(52,116)と冷媒回収通路(54,118)と共に冷媒循環用の閉回路(70、130)を構成する輸送管(68、128)と、閉回路(70、130)に収容された冷媒(M)と、閉回路(70,130)を流れる冷媒(M)を冷却して冷媒供給通路(52,116)に供給する冷却供給手段(72,132)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に虚血性脳梗塞の治療に利用できる、低温治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
虚血性脳梗塞は、脳の細動脈に血栓、凝固塊、脂肪塊、石灰片、腫瘍塊などが詰まって血流を止めてしまい、脳から酸素が奪われることにより起こる病気であり、脳梗塞に対する急性期の治療法として、組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)という血栓溶解剤を用いた血栓溶解療法が知られている。しかし、組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)は脳梗塞を発症してから約3時間以内に投与しないと効果が得られなし、誤って出血性脳卒中の患者に投与すると出血がひどくなって死亡に至る危険性があることから使用するか否かを慎重に判断しなければならない、という問題がある。そのような事情から、近年、虚血性脳梗塞の治療方法として、幾つかの脳低温療法が提案され、その有効性も実証されている(特許文献1)。
【0003】
従来から提案されている脳低温療法は、水冷ブランケットを用いて全身を冷やす体幹冷却法、水冷マフラーを用いて頚部を冷却する頚部冷却法、冷却ヘルメットを用いた頭部冷却法に分類できる。しかし、これらの冷却法はいずれも非侵襲性であるという点で好ましいものであるものの、体外から脳を冷やそうとするものであることから、脳組織温度を適正温度(具体的には、摂氏32〜34度)まで冷却するには長時間を要する。特に、ブラケットを用いた体幹冷却法は、装置が大型で利用場所に制限があるし、体温の低下によって感染と出血の危険が高まる、という問題がある。
【特許文献1】特開2002−119586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、従来から提案されている脳低温療法に代わり、脳組織だけを局所的に短時間で冷却できる、新たな低温治療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため、本発明の低温治療装置は、カテーテル(14)を患者(P)に挿入し、上記カテーテル(14)内を流れる冷媒(M)と上記患者(P)の血管(V)内を流れる血液との間で熱を交換することにより上記血液を冷却するものであり、互いに接続された冷媒供給通路(52,116)と冷媒回収通路(54,118)を備えたカテーテル(14)と、上記冷媒供給通路(52,116)と冷媒回収通路(54,118)に接続され、上記冷媒供給通路(52,116)と冷媒回収通路(54,118)と共に冷媒循環用の閉回路(70、130)を構成する輸送管(68、128)と、上記閉回路(70、130)に収容された冷媒(M)と、上記閉回路(70,130)を流れる冷媒(M)を冷却して上記冷媒供給通路(52,116)に供給する冷却供給手段(72,132)を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
このような構成を採用した低温治療装置によれば、カテーテルを例えば頸動脈に挿入又は頸動脈に隣接して設置することにより、患者の体温を正常に維持しながら、カテーテル内を流れる冷媒によって頸動脈を通じて脳組織に供給される血液を直接冷やすことができることから、患者にダメージを与えることなく、脳障害を治療できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して本発明に係る低温治療装置の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、図面に表された各部の場所・方向を説明するために、「上」、「下」、「右」、「左」の用語を適宜使用するが、それらの使用は発明の理解を容易にするためであって、それ以外の目的、例えば発明の技術的範囲を定めるうえで利用されるべきものでない。
【0008】
《実施形態1》
図1は、本発明に係る低温治療装置の外観を示す。図示するように、低温治療装置(脳温制御装置)10は、メインユニット(本体)12と、脳低温療法を必要とする患者の体内に挿入される冷却ユニット14と、メインユニット12と冷却ユニット14を接続するチューブユニット16を有する。
【0009】
メインユニット12は、実施形態では箱形のハウジング18を有する。ハウジング18は、好ましくは操作部20と表示部22を備えている。操作部20と複数の入力ボタン又は入力スイッチを有し、表示部22は一つ又は複数の表示画面(例えば、液晶ディスプレイ)を有する。
【0010】
図2を参照すると、冷却ユニット14は、脳低温療法を必要とする患者(例えば、虚血性脳障害患者)の血管に挿入される冷却カテーテル(冷却チューブ)24を有する。カテーテル24は外管26を有する。実施の形態では、外管26は、頸動脈(総頸動脈、外頸動脈、または内頸動脈)に挿入できる大きさと形状を有する(図3参照)。具体的、実施形態の外管26は、約6〜9mmの外径φ、約10〜15cmの長さLを有する。実際には、カテーテル24の挿入部位(総頸動脈、外頸動脈、または内頸動脈等)に対応して種々の大きさ(外径、長さ)のものが用意されており、患者の体型や挿入部位に応じて適当な大きさのものが選択される。
【0011】
外管26は、頸動脈に挿入する際の抵抗を少なくするとともに頸動脈の損傷を防止するために、閉鎖末端部28は滑らかな曲線からなる球形(半球状、弾頭状)とする。外管26の開放基端部30は、チューブユニット16と着脱可能に接続されるコネクタ32が固定されている。
【0012】
外管26は、生体適合性を有する金属(例えば、ステンレス又はその合金、チタン又はその合金)または樹脂(例えば、ポリテトラフロオロエチレン)で形成することができる。外管26の外表面に血液が凝固して血管を閉塞することを防止するため、金属にはチタン又はその合金が好適に用いられる。また、金属又は樹脂のいずれからなる外管の場合でも、血液の凝固を阻害する材料(抗凝固薬:例えば、ヘパリン)を外管の外周面に塗布することが好ましい。
【0013】
外管26の内部には、内管34が収容されている。図4に示すように、内管34の外径は、外管26の内径よりも小さく、外管26の内周面と内管34の外周面との間に、流体(実際には冷媒M)の流れる外側通路36が形成されている。実施形態では、図示するように、内管34の開放末端部38は外管26の末端部28から図上右側に後退しており、この開放末端部38の前方(図上左側)に冷媒噴射空間40が形成されている。
【0014】
外側通路36を安定して形成するために、図4,5に示すように、軸方向に所定の間隔をあけて、内管34の外側にリング状のスペーサ40を外装し固定することが好ましい。当然のことであるが、スペーサ40は、冷媒Mが外側通路36を移動できるように、複数の開口部42が形成されている。
【0015】
内管34の末端部38は、例えば外管末端部28と同様に半球状に加工されており、その中央に冷媒噴射孔(ノズル)46が形成されている。図面には一つの冷媒噴射孔しか示していないが、軸対称に複数の冷媒噴射孔を形成してもよい。図示するように、冷媒噴射孔46の内径は、内管34の内側に形成されている内側通路48の内径よりも小さくしてあり、図4の右側から左側に向かって内側通路48を供給された冷媒Mが、冷媒噴射孔46から冷媒噴射空間40に勢いよく噴射されるようになっている。
【0016】
図2に示すように、内管34の基端部50はコネクタ32に連結されて固定されている。コネクタ32の内部には、軸方向に伸びる2つの通路−冷媒供給通路52と冷媒回収通路54−が形成されており、冷媒供給通路52が内管34(内側通路48)の基端部に接続され、冷媒回収通路54が外側通路36の基端部に接続されている。
【0017】
図1に示すように、チューブユニット16は、樹脂又は金属からなるフレキシブルな保護チューブ56を有する。図2に示すように、保護チューブ56の内部には、樹脂又は金属からなるフレキシブルな冷媒供給チューブ58と冷媒回収チューブ60が収容されている。保護チューブ56の末端にはコネクタ62が固定されている。コネクタ62の内部には、軸方向に伸びる2つの通路―冷媒供給通路64と冷媒回収通路66―が形成されており、冷媒供給チューブ58の末端が冷媒供給通路64に接続され、冷媒回収チューブ60の末端が冷媒回収通路66に接続されている。
【0018】
コネクタ32,62は、油圧機器又は油圧ホースの接続に利用されるコネクタように、ワンタッチで連結と分離が可能であって、コネクタ32,62が分離されている状態ではそれぞれの冷媒供給通路52,64及び冷媒回収通路54,66の端部を閉鎖し、コネクタ32,62が連結された状態で冷媒供給通路52と64及び冷媒回収通路54と66が互いに接続されるものが好ましい。
【0019】
図6に示すように、冷媒供給チューブ58と冷媒回収チューブ60の基端側は、メインユニット12に配置されている冷媒輸送管68の両端に接続されており、上述した冷媒供給チューブ58、内側通路48、外側通路36、冷媒回収チューブ60が、冷媒輸送管68とともに冷媒循環回路(閉回路)70を形成している。なお、チューブユニット16をメインユニット12から着脱できるように、チューブユニット16の基端部とメインユニット12の対応接続部との接続には、コネクタ32,62と同様のコネクタを利用することが好ましい。
【0020】
図6を参照すると、メインユニット12のハウジング18には、圧縮器72と凝縮器74が収容されており、これらが上述した冷媒循環回路70に接続されている。圧縮器72は、制御部76と電気的に接続されており、制御部76から出力される制御信号に基づいて、圧縮器72が調整できるようにしてある。制御部76はまた、操作部20は操作部20、表示部22に接続されている。制御部76はさらに、患者の体温を検出する体温計78と接続されている。体温計には、例えば耳式体温計が好適に利用される。
【0021】
脳の冷却効果を確認し制御するその他の手段として、図4,6に示すように、カテーテル24、例えば外管26の外側又は内側に一つ又は複数の温度センサ(例えば、熱電対)80を設け、これら温度センサ80の出力を制御部76で検出することが好ましい。この場合、温度センサ80と制御部76を電気的に繋ぐ電気配線82(図4から省略されている。)は、例えば、外管26の外面又は内面に電気的に絶縁された状態で配置される。また、コネクタ32,62には電気接続部又は接点(図示せず)が設けられ、コネクタ32,62を接続することによって、電気配線82が制御部76に電気的に接続されるように構成されている。
【0022】
以上の構成を備えた低温治療装置10の動作を説明する。まず、図3に示すように、血管内手術と同様にして、虚血性脳障害患者Pの頸動脈Vにカテーテル24を挿入する。このとき、患者Pの頸部に経皮的に穿刺し、シース(管)を頸動脈に挿入し、シースを介してカテーテル24を頸動脈内に挿入する。次に、血管のカテーテル挿入口を止血し、適当な留置手段を用いてカテーテル24を頸部に固定する。また、体温計78が患者に装着される。さらに、従来のセルディンガー法に準じて、大腿動脈又は上腕動脈から温度計付カテーテルを挿入し、この温度計からの出力を制御部76に入力してもよい。
【0023】
以上のようにして準備が完了すると、操作部20の治療開始スイッチ(図示せず)をオンする。制御部76は、治療開始スイッチのオン信号を受信すると、制御部76(記憶部)に記憶されている脳温管理プログラム(図示せず)に基づいて圧縮器72を起動する。その結果、冷媒循環回路70に充填されている冷媒Mが圧縮される。圧縮された冷媒Mは、凝縮器74で凝縮される。凝縮した冷媒Mは、チューブユニット16の冷媒供給チューブ58を介してカテーテル24の内側通路48に供給された後、内管34の末端にある冷媒噴射孔46を介して冷媒噴射空間40に噴射する。このとき、冷媒噴射孔46から噴射された冷媒Mは、断熱膨張して低温冷媒になる。そして、冷媒噴射空間40及びそこから外側通路36に流れる低温冷媒Mが、カテーテル24の周囲を流れる血液から吸熱する。吸熱した冷媒Mは、カテーテル24の外側通路36から冷媒回収チューブ60、冷媒輸送管68を介して、圧縮器72に回収される。このようにして冷媒が冷媒循環回路70を繰り返し循環されることにより、脳以外の部位は正常な体温を維持しつつ、頸動脈、特に内頸動脈を脳に向かって流れる血液だけを直接冷やし、虚血性脳障害の進行を止めて、脳組織が深刻なダメージを受けることを防止できる。
【0024】
脳温の管理は、頸動脈を流れる血液の温度を検出している温度センサ80、体温計(耳式体温計)78、大腿動脈又は上腕動脈からに挿入されたカテーテルの温度計からの出力をもとに制御部76が圧縮器72の駆動を制御することにより行われる。なお、脳温及びその変化(グラフ)は、表示部22の液晶ディスプレイに表示される。
【0025】
《変形例》
上述した実施形態において、カテーテル24の血管内挿入を容易に行うために、図7,8に示すよう、カテーテル外管26の周壁に、カテーテル24の基端近傍から末端まで伸びる軸方向のガイド孔82を形成し、このガイド孔82に挿入されたガイドワイヤ84によってカテーテル24を確実に頸動脈に挿入することが好ましい。この場合、例えば、図示するように、外管26の周囲を生体適合性の樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)で被覆を形成し、その被覆86内に直接ガイド孔82を形成してもよいし、または図9に示すように、被覆86内にシース管88を配置し、このシース管88の内部をガイド孔82として利用してもよい。
【0026】
また、上述した実施形態では、外管26は直線状の管で構成したが、必要な箇所(例えば、基端側部分)を多少湾曲させてもよい。
【0027】
さらに、上述した実施形態では、外管26は一様な横断面を有する直管で構成したが、図10に示すように、外管26に金属管を用いる場合、外管26のほぼ全体に又は部分的に、山部88と谷部90を交互に連接した変形可能部92を形成してもよい。他方、外管26をポリテトラフルオロエチレン等の樹脂管を用いる場合、図11に示すように、外管26のほぼ全体に又は部分的に、外管26の外周面に所定の間隔をあけて山部94を形成し、これにより変形可能部94を形成してもよい。これらの場合、外管26と血液との接触面積が著しく大きくなり、外管26から血液への伝熱が効率良く行われ、より短時間に脳組織を冷やすことができる。
【0028】
さらにまた、外管26の外周面には、軸方向に伸びる複数の溝96を、周方向に一定の間隔をあけて、形成してもよい。この場合、外管26と血液との接触面積が著しく大きくなり、外管26から血液への伝熱が効率良く行われ、より短時間に脳組織を冷やすことができる。
【0029】
なお、以上の実施形態では、カテーテルは血管の中に挿入するものとしたが、血管の外周面に接触させ、血管の外側から血管中の血液を冷却することもできる。この場合、血管とカテーテルとの接触面積を出来るだけ大きくするために、図13に示すように、カテーテル外管26の横断面形状はアーチ状、円弧状、半円形状、U字形状としてもよい。
【0030】
また、冷媒循環回路からの冷媒の漏れを検出するため、冷媒循環回路の適宜箇所に圧力検出手段として圧力センサを取り付けてもよい。
【0031】
さらに、以上の説明では、図3はカテーテルを内頸動脈V2に挿入した状態を示しているが、カテーテルは総頸動脈V1に挿入してもよい。この場合、外頸動脈V3から総頸動脈V1に向けてカテーテルを挿入(逆行挿入)することもできる。
【0032】
さらにまた、頸動脈に挿入されたカテーテル及びその周囲の血流を超音波診断装置で検出し、内頸動脈から脳に向かって流れる血液の流れを確認してもよい。また、頸動脈へカテーテルの挿入を確実に行うために、超音波診断装置で穿刺状態を確認することもできる。
【0033】
《実施形態2》
図14〜図16は、実施形態2の低温治療装置100を示す。低温治療装置100は、冷却カテーテル112を有する。カテーテル112の本体114は、生体適合性の金属又は樹脂からなるロッドで構成されており、軸方向に伸びる複数の冷媒循環用通路−冷媒供給通路116、冷媒回収通路118−を備えている。カテーテル112の末端部120はチャンバ(内腔)122が形成されており、そこに本体114に形成された複数の冷媒供給通路116、冷媒回収通路118が接続されている。
【0034】
カテーテル本体114の末端部には、冷媒冷却ユニット124が連結されている。冷却ユニット124は、カテーテル本体114の末端に固定されたハウジング126を有する。ハウジング126の内部には、冷媒供給通路116と冷媒回収通路118の末端部に接続された冷媒輸送管128が接続されており、これにより冷媒供給通路116、チャンバ、冷媒回収通路118、冷媒輸送管128を繋ぐ冷媒循環路(閉鎖ループ)130が形成されている。冷媒輸送管128は冷媒輸送用のポンプ132が接続されており、ポンプ132の駆動に基づいて、冷媒循環路134を冷媒M(図16参照)が循環輸送されるようになっている。なお、ポンプ132には、小型のマイクロポンプを使用することが好ましい。
【0035】
冷却ユニット124はまた、冷却器又は冷却コイル134を備えている。実施形態では、冷却コイル134は冷媒輸送管128に巻回されており、冷却コイル132の中を流れる冷媒と冷媒輸送管128の中を流れる冷媒Mとの間で効率的に熱交換が行われるようにすることが好ましい。
【0036】
冷却コイル134は、上述した実施形態1の低温治療装置10のメインユニット12と同様の構成を有するメインユニット136に接続されており、制御部の指令に基づいて冷却コイル134に輸送する冷媒の温度、量が制御されている。
【0037】
なお、図示しないが、実施形態1と同様に複数の温度(脳温)検出手段(体温計78、温度センサ80、温度計と同様のもの)が用意される。また、ポンプ132は制御部と電気的に接続されており、制御部からの指令に基づいて駆動するようにしてある。
【0038】
このように構成された実施形態2の低温治療装置100によれば、実施形態1と同様に、カテーテル112が頸動脈に挿入された状態で、冷媒循環路130の冷媒Mは、ポンプ132の駆動に基づいて冷媒循環路130を循環する。このとき、メインユニット136から冷却コイル134に供給される冷媒によって、冷媒循環路130の冷媒Mが冷却される。冷却された冷媒Mは冷媒供給通路116、末端部チャンバ122、冷媒回収通路118を移動し、実施形態1と同様に、頸動脈を流れる血液を冷却する。また、温度検出センサで検出された血流温度、体温計で計測された体温等に基づいて、制御部は、脳温管理プログラムに従って、ポンプ132、圧縮器の駆動を制御する。
【0039】
なお、実施形態1に関連して説明した種々の変形例はすべて実施形態2の低温治療装置にも適用可能である。
【0040】
また、本発明は、上述した低温治療装置を用いた低温治療方法を含むものであり、この治療方法は、カテーテル(14)を患者(P)の頸動脈又はその他の動脈に挿入し、上記カテーテル(14)内を流れる冷媒(M)と上記患者(P)の血管(V)内を流れる血液との間で熱を交換することにより上記血液を冷却することを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る低温治療装置の全体を示す斜視図。
【図2】図1に示す低温治療装置の実施形態1に係るカテーテルを示す正面図。
【図3】図2に示すカテーテルを患者の頸動脈に挿入した状態を示す図。
【図4】図2に示すカテーテルの部分拡大断面図。
【図5】図2のカテーテルのV-V線断面図。
【図6】図1に示す低温治療装置のブロック図。
【図7】他の形態のカテーテルの正面図。
【図8】図7に示すカテーテルのVIII-VIII線断面図。
【図9】図7に示すカテーテルのVIII-VIII線断面図。
【図10】他の形態に係るカテーテル外管の部分拡大側面図。
【図11】他の形態に係るカテーテル外管の部分拡大側面図。
【図12】他の形態に係るカテーテル外管の部分拡大断面図。
【図13】他の形態に係るカテーテルの部分拡大断面図。
【図14】実施形態2に係る低温治療装置の正面図。
【図15】図14に示すカテーテルのXV-XV線横断面図。
【図16】図14に示すカテーテルの拡大縦断面図。
【符号の説明】
【0042】
10:低温治療装置、12:メインユニット、14:冷却ユニット、16:チューブユニット、18:ハウジング、20:操作部、22:表示部、24:冷却カテーテル、26:外管、28:末端部、30:基端部、32:コネクタ、34:内管、36:外側通路、38:末端部、40:冷媒噴射空間、42:スペーサ、44:開口部、46:冷媒噴射孔(ノズル)、48:内側通路、50:基端部、52:冷媒供給通路、54:冷媒回収通路、
56:保護チューブ、58:冷媒供給チューブ、60:冷媒回収チューブ、62:コネクタ、64:冷媒供給通路、66:冷媒回収通路、68:冷媒輸送管、70:冷媒循環回路(閉回路)、72:圧縮器、74:凝縮器、76:制御部、78:体温計、80:温度センサ、82:ガイド孔、84:ガイドワイヤ、86:被覆、88:山部、90:谷部、92:変形可能部、94:変形可能部、100:低温治療装置、112:カテーテル、114:本体、116:冷媒供給通路、118:冷媒回収通路、120:末端部、122:チャンバ、124:冷却ユニット、126:ハウジング、128:冷媒輸送管、130:冷媒循環路、132:ポンプ、134:冷却コイル、136:メインユニット、P:患者、V:頸動脈、M:冷媒。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル(14)を患者(P)に挿入し、上記カテーテル(14)内を流れる冷媒(M)と上記患者(P)の血管(V)内を流れる血液との間で熱を交換することにより上記血液を冷却する低温治療装置であって、
互いに接続された冷媒供給通路(52,116)と冷媒回収通路(54,118)を備えたカテーテル(14)と、
上記冷媒供給通路(52,116)と冷媒回収通路(54,118)に接続され、上記冷媒供給通路(52,116)と冷媒回収通路(54,118)と共に冷媒循環用の閉回路(70、130)を構成する輸送管(68、128)と、
上記閉回路(70、130)に収容された冷媒(M)と、
上記閉回路(70,130)を流れる冷媒(M)を冷却して上記冷媒供給通路(52,116)に供給する冷却供給手段(72,132)を備えたことを特徴とする低温治療装置。
【請求項2】
上記カテーテル(14)が人間の血管に挿入できる大きさと形状の断面を有することを特徴とする請求項1の低温治療装置。
【請求項3】
上記カテーテル(14)が、上記血管内の血液の温度を検出する温度検出器(80)を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の低温治療装置。
【請求項4】
上記冷却供給手段が圧縮器(72)を備えており、上記温度検出器(80)が検出した温度に基づいて上記圧縮器(72)を制御する制御部(76)を備えていることを特徴とする請求項3に記載の低温治療装置
【請求項5】
上記冷却供給手段がポンプ(132)を備えており、上記温度検出器(80)が検出した温度に基づいて上記ポンプ(132)を制御する制御部(76)を備えていることを特徴とする請求項3に記載の低温治療装置
【請求項6】
上記冷却供給手段が、上記輸送管(128)の近傍に配置された冷却コイル(134)と、上記冷却コイル(134)に第2の冷媒を供給する圧縮器(72)を備えており、上記温度検出器(80)が検出した温度に基づいて上記圧縮器(72)を制御する制御部(76)を備えていることを特徴とする請求項3に記載の低温治療装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−154751(P2008−154751A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346150(P2006−346150)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】