説明

低温液化ガスの流量計測システム

【課題】 流量計測用各機器に必要な断熱性能を保持しながらも、計器類のメンテナンスや校正を行い易い流量計測システムを提供する。
【解決手段】 低温液化ガスの供給用貯蔵槽(1)から受液容器に低温液化ガスを液体の状態で移送する低温液化ガス移送路(2)内に介装される流量計測システムである。移送中の低温液化ガスを過冷却処理する過冷却処理装置(4)と、流量計(5)、及び流量制御ユニット(6)とを配管類とともに開閉可能に構成された真空断熱構造のコールドチャンバー(7)内に収納する。前記過冷却処理装置(4)を浸漬容器(8)とその浸漬容器(8)の内部に収容される熱交換部(9)とで構成し、コールドチャンバー(7)内で低温液化ガス移送路(2)から分岐した分岐路(10)を過冷却処理装置(4)の浸漬容器(8)内に連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温液化ガスの流量計測技術に関し、特に、圧力容器などの液化ガス貯留部から払出される加圧・低温保持下の液化ガスの払出し流動中において高精度に流量計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
低温で保持される液化ガスの流量を計測する場合、重量による計測が一般的である。それは、液化ガスの場合高い精度で計測できる流量計測手法がなかったからであり、そのために重量計測に頼っていたが、重量計測機器は設備上大掛かりとなり、また流量計測されていない場合が多々あった。このため、精度の高い流量計で液化ガスを計測することが望まれている。しかしながら、低温で保持される液化ガスの流量計測は、液化ガス供給路内を流れる間での気化に起因する気液混相流の影響で大きな測定誤差を生じるため実用化されていなかった。
【0003】
即ち、低温保持を求められる液化ガスは、貯蔵容器の払出し口から使用個所までの供給配管を流すだけで、外部からの入熱や圧力降下により気泡が発生し、供給配管内を流れる流体が気液混相流の状態で流量計測を行うと、その計測メカニズム上大きな測定誤差を生じる。また、ポンプやガス等を用いて液化ガスを急速加圧することにより、気泡の発生を防止する手段も考えられるが、その場合でも、ポンプの駆動エネルギーの問題や、貯蔵槽での内圧を調整することなど、実情にそぐわない面があり、実用化はされていなかった。
【0004】
そこで本出願人は、圧力による物性の違いを利用した熱交換による過冷却効果と流量計測部の入熱を抑える構造を併せ持ち、大気圧状態に保った当該液化ガスにより被測定液化ガスを過冷却し、かつ、計測部を入熱より保護することにより、計測機器内の気泡の発生を抑えて流量を計測するシステムを提案した。(特許文献1)
【特許文献1】特開2006−200553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記従来提案したのものでは、断熱処理した浸漬容器に液払出路の熱交換部と流量計とを配置し、液化ガス貯蔵容器から払出した直後の液化ガスを低温保持下で前記浸漬容器内に供給して、浸漬容器内を大気圧状態に保持し、この浸漬容器内での液化ガス気化に伴う過冷却で、液払出路内及び流量計内を流れる液化ガスを冷却して気泡の発生を抑えるようにしている。このような設備においては、外気からの熱浸入を抑制するために真空断熱を施しているが、このような設備での真空断熱は真空二重配管を溶接固定構造で行なうのが一般的である。この為、施工後の取り外しは困難な構造となる。
【0006】
ところが、流量計の使用に際しては、一定期間ごとのメンテナンス・校正が必要であるが、前記従来提案したのものでは、前述のように溶接固定構造であることから、流量計のメンテナンスや校正を行いにくいという問題があるうえ、配管構造の改造も面倒であるという問題があった。
【0007】
本発明はこのような点に着目してなされたもので、流量計測用の各機器に必要な断熱性能を保持しながらも、計器類のメンテナンスや校正を行い易い流量計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために請求項1に記載した本発明は、低温液化ガスの供給用貯蔵槽から受液容器に低温液化ガスを液体の状態で移送する低温液化ガス移送路内に介装される流量計測システムであって、移送中の低温液化ガスを過冷却処理する過冷却処理装置と流量計及び流量制御ユニットとをこれらの機器類を連通接続している配管類とともに開閉可能に構成された真空断熱構造のコールドチャンバー内に収納し、低温液化ガスの供給用貯蔵槽からコールドチャンバーまでの低温液化ガス移送路及びコールドチャンバーから受液容器までの低温液化ガス移送路を断熱配管し、前記過冷却処理装置を浸漬容器とその浸漬容器の内部に収容される熱交換部とで構成し、コールドチャンバー内で低温液化ガス移送路から分岐した分岐路を過冷却処理装置の浸漬容器内に連通することを特徴としている。
【0009】
また、請求項2に記載した本発明は請求項1に記載した発明の低温液化ガスを液体水素としたものであり、請求項3に記載した本発明は請求項2に記載した発明の受液容器を自動車に搭載されている燃料用ガス貯蔵容器としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、移送中の低温液化ガスを過冷却処理する過冷却処理装置と流量計及び流量制御ユニットとをコールドチャンバー内に収納し、過冷却処理装置内で被移送液化ガスの一部を沸点差を利用して過冷却状態にして液相流とした状態でコールドチャンバー内に配置されて低温状態を維持している流量計により移送路を流れる低温液化ガスの流量を計測するようにしているので、液相状態での流量を測定でき、精度の高い流量検出を行うことができる。
【0011】
また、過冷却処理装置と流量計及び流量制御ユニットなどの機器類をコールドチャンバーに収容し、このコールドチャンバーを開閉可能な構造としていることから、コールドチャンバー内に収容されている流量計などの機器類を断熱構造にしておかなくてもよく、流量計などの機器類のメンテナンス作業や校正作業を容易に行うことができるうえ、配管変更等も容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図は本発明の一実施形態を示す低温液化ガスの流量計測システムの概略構成図であり、この低温液化ガスの流量計測システムは、低温液化ガスの供給用貯蔵槽(1)と低温液化ガスの受液容器(図示略)とを断熱仕様の低温液化ガス移送路(2)で連通接続し、この低温液化ガス移送路(2)の途中に液化ガスディスペンサー(3)が配置してある。
【0013】
液化ガスディスペンサー(3)は、移送中の低温液化ガスを過冷却処理する過冷却処理装置(4)、流量計(5)、流量制御ユニット(6)と、これら機器類を配管群とともに真空断熱構造のコールドチャンバー(7)内に収容することで構成してある。
【0014】
過冷却処理装置(4)は、浸漬容器(8)とその浸漬容器(8)内にコイル状に配管した熱交換部(9)とで構成してあり、該熱交換部(9)の両端部を低温液化ガス移送路(2)に連通接続するとともに、コールドチャンバー(7)内で低温液化ガス移送路(2)から分岐導出した分岐路(10)を浸漬容器(8)内に開放している。このため、浸漬容器(8)内は液化ガスの液相部分と気相部分とが形成され、液相部分に熱交換部(9)が浸漬するとともに、気相部分が連通路(11)でコールドチャンバー外に連通している。また、コールドチャンバー内空間(12)は真空状態に保持されている。
【0015】
したがって、浸漬容器(8)の内部圧力は大気圧に保持されることになるから、浸漬容器(8)内での液温は大気圧下での沸点温度になっている。一方、熱交換部(9)内を流れる低温液化ガスの温度は、低温液化ガス貯蔵槽(1)での気液平衡圧に応じた温度であることから、熱交換部(9)内を流れる間に浸漬容器内での液相部分と熱交換して低温液化ガスが過冷却状態となり、コールドチャンバー内の低温液化ガス移送路(2)では液相流となって、液相流を測定する流量計(5)でその流量を高精度に検出することができることになる。
【0016】
これにより、コールドチャンバー(7)の内部に収容されているこれらの機器類や配管類を断熱構造にする必要がなくなり、機器類や配管類に対して外部からの入熱を充分抑制することができることになるから、機器類や配管類の内部で液化ガスを過冷却の状態で流通させることができ、流量計で液体単一流として計測することができるから、高い精度でその流量を測定することができる。
【0017】
なお、低温液化ガスの流し始めは、配管・流量計・流量制御ユニットの温度が高く液化ガスが気化し気液混相流となり正確な流量が測定できないので、この気液混相状態の液化ガスをガス返送路(14)を通して浸漬容器(8)に返送する。流量制御ユニット(6)にて温度・圧力のモニターを行い、低温液化ガスの圧力に対応する沸点より低温液化ガスの温度が低下したら、浸漬容器(8)への返送を中止する。
【0018】
前記コールドチャンバー(7)は胴部(7a)と蓋体(7b)とで構成してあり、この蓋体(7b)と胴部(7a)との結合を解除することで、コールドチャンバー(7)内を開放できるように構成してある。このように構成することで、流量計(5)のメンテナンスや校正作業あるいは配管換え作業を容易に行うことができる。
【0019】
上述の構成からなる流量計測システムは、液体水素を液体状態で供給する液体水素供給配管系に使用することができ、特に、液体水素を燃料源としている水素エンジン自動車の燃料供給設備での流量計測システムとして好適である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、液化ガスを液体単一流として、その流量を計測するものに使用することができ、特に、自動車燃料としての液体水素を供給するステーションでの流量計測システムとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態を示す低温液化ガスの流量計測システムの概略構成図である。
【符号の説明】
【0022】
1…低温液化ガス供給用貯蔵槽、2…低温液化ガス移送路、4…過冷却処理装置、5…流量計、6…流量制御ユニット、7…コールドチャンバー(7a…胴部、7b…蓋体)、8…浸漬容器、9…熱交換部、10…分岐路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液化ガスの供給用貯蔵槽(1)から受液容器に低温液化ガスを液体の状態で移送する低温液化ガス移送路(2)内に介装される流量計測システムであって、
移送中の低温液化ガスを過冷却処理する過冷却処理装置(4)と、流量計(5)、及び流量制御ユニット(6)とをこれらの機器類を連通接続している配管類とともに開閉可能に構成された真空断熱構造のコールドチャンバー(7)内に収納し、低温液化ガスの供給用貯蔵槽(1)からコールドチャンバー(7)までの低温液化ガス移送路(2)及びコールドチャンバー(7)から受液容器までの低温液化ガス移送路(2)を断熱配管し、前記過冷却処理装置(4)を浸漬容器(8)とその浸漬容器(8)の内部に収容される熱交換部(9)とで構成し、コールドチャンバー(7)内で低温液化ガス移送路(2)から分岐した分岐路(10)を過冷却処理装置(4)の浸漬容器(8)内に連通することを特徴とする低温液化ガスの流量計測システム。
【請求項2】
低温液化ガスが液体水素である請求項1に記載した低温液化ガスの流量計測システム。
【請求項3】
受液容器が自動車に搭載されている燃料用ガス貯蔵容器である請求項2に記載した低温液化ガスの流量計測システム。

【図1】
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【公開番号】特開2008−291872(P2008−291872A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136073(P2007−136073)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000158312)岩谷産業株式会社 (137)
【出願人】(000110099)トキコテクノ株式会社 (264)
【Fターム(参考)】