説明

低温環境下における無人搬送車両のバッテリ保温方法

【課題】 無人搬送車両の稼働運転に何らの影響を与えることなく実施することができる低温環境下における無人搬送車両のバッテリ保温方法を提供する。
【解決手段】 無人搬送車両50が通過する無人搬送車両の走行経路の一箇所または複数個所に高周波電源6Eによって駆動する誘導コイル6Fを設置するとともに、無人搬送車両50に搭載するバッテリB…は、誘導コイル6Fの高周波磁束に発熱反応する金属製のバッテリ保温容器5Kに収納しておく。無人搬送車両50が走行経路に設置した誘導コイル6Fの近傍を通過する際に誘導コイル6Fに通電し、IHヒータの原理によってバッテリ保温容器5Kを非接触で誘導加熱し、収納されているバッテリB…を所定温度範囲内に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷倉庫、その他の低温施設内で磁気誘導手段や遠隔操作手段等によって無人運転される無人搬送車両のバッテリ保温方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍食品関連施設、低温処理工程を含む化学施設、生物学的製剤関連施設、汎用保冷倉庫施設等においても、人件費削減等の観点からのFA化の必要性に迫られている。また、食品や医薬品関連の低温施設におけるFA化は、単に、人件費削減の観点からのみではなく、不特定の細菌等が偏在する外部環境と衛生状態が確保された内部環境との分離性を高める必要性からも要求されることが多い。
【0003】
低温環境を安定に維持する必要上、特に、衛生上の観点から外部環境と内部環境との分離独立性を維持しなければならない低温施設においては、より高度の要求に基づき、安易な人の出入りを制限する必要がある。しかし、単純に人の出入りを制限するのみでは、施設の利用価値が低下してしまう。そこで、このような低温施設においては、無人搬送車両が利用される。無人搬送車両の利用形態は多様であるが、例えば、保冷倉庫のような施設においては、人の出入りを制限した状態での必要な物資の入出庫作業が可能になる。また、無人搬送車両は、作業員の長時間労働が困難であるような極低温環境においても長時間稼働することができる。
【0004】
しかし、低温環境内における無人搬送車両については、業界において従来から指摘されている懸案事項として、バッテリの保温の問題がある。すなわち、無人搬送車両用の電源としては、一般的に鉛蓄電池が使用されている。これは、低温施設内の清浄環境を維持する上でも、また、コストや放電容量、耐久性の観点からのトータルなバランスが良いためであるが、温度依存性の高い化学反応によって充放電作用を営む鉛蓄電池は、低温環境に弱いという構造上の問題点を有するのである。このため、低温環境における鉛蓄電池の能力は、実質的容量および瞬間最大放電電流ともに、定格よりも大幅に減少することとなる。
【0005】
無人搬送車両に搭載すべきバッテリの容量については、低温施設等の単位操業時間内に追加充電を必要としないという観点から定められることになるのであるが、低温環境用途の無人搬送車両については、常温環境用途のものに比べて、大幅に大容量のバッテリを搭載することで対応しているのが現状である。つまり、これが鉛蓄電池が低温環境に弱いという業界懸案問題に対する現状の対応策であり、この結果、低温環境下で使用される無人搬送車両は、過大なバッテリの重量負荷を背負いながら稼働しなければならないという、2次的な問題をも発生させているのである。
【0006】
なお、乗用電気自動車の技術分野においては、搭載しているバッテリにヒータを付設しておき、外部電源を利用しての充電時にヒータに通電するようにしてバッテリを暖機する方法が提案されているが(下記、特許文献1参照)、低温施設の搬送手段の一部として、他の装置類との作業連携下に置かれる無人搬送車両においては、荷物の移載時等の作業上必要な一時停止以外に単位操業時間内において停止することは許容されないのであり、このような方法は、到底採用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−40536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、低温環境下で稼働する無人搬送車両のバッテリに関する上記のような問題を解決する方法を提供するものである。最終的には、常温環境で使用される無人搬送車両における所要バッテリ容量と同等のバッテリ容量で、常温環境で使用される無人搬送車両と同等の連続稼働時間を達成することである。
【0009】
なお、上記目標は、言うまでもなく、無人搬送車両が使用される低温施設における単位操業時間に無人搬送車両を停止させることなく、かつ、無人搬送車両に充電用の外部電源を供給する電気配線等を引きずらせることなく、また、集電トロリーのような無人搬送車両の走行経路を制限するような周辺設備を必要とすることなく達成することが条件とされる。このような安易な解決手段を採用した場合には、コンベヤ等の固定搬送手段に代えて無人搬送車両を利用することのメリットが損なわれるからである。
【0010】
ここで、低温環境下で使用される無人搬送車両と常温環境で使用される無人搬送車両の作業条件上の相違点は、温度差のみである。また、環境温度は、低温設備等における必要に応じて設定されているのであるから、操作することは許されない。
【0011】
すなわち、本発明は、上記最終的目標を達成するために、より具体的に、無人搬送車両に搭載されているバッテリを無人搬送車両の作業行動中に非接触で常温環境におけると同等の適切な温度範囲内に維持する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は次のような構成を採用する。
【0013】
(解決手段1)
本発明の低温環境下における無人搬送車両のバッテリ保温方法は、搭載したバッテリによって駆動される無人搬送車両が反復通過する無人搬送車両の走行経路の一箇所または複数個所に高周波電源によって駆動する誘導コイルを設置するとともに、バッテリを誘導コイルの高周波磁束に発熱反応する金属製のバッテリ保温容器に収納して無人搬送車両に搭載し、無人搬送車両が走行経路に設置した誘導コイルの近傍を通過する際に誘導コイルに通電することによってバッテリ保温容器を誘導加熱し、バッテリを所定温度範囲内に維持すること特徴とする。
【0014】
上記解決手段1について説明する。高周波電源によって駆動される誘導コイルは、無人搬送車両の走行経路の一箇所または複数個所に設置され、通電時には、高周波磁束を発生させることができる。一方、無人搬送車両には、高周波磁束に発熱反応する金属製のバッテリ保温容器に収納したバッテリが搭載されている。したがって、無人搬送車両が走行経路に設置した誘導コイルの近傍を反復通過する際に誘導コイルに通電することによってバッテリ保温容器を誘導加熱し、バッテリを所定温度範囲内に維持することができる。この際、誘導コイルに対する通電タイミングを適切に制御することによって、バッテリ保温容器のみを集中的に加熱することができるので、低温環境に対する温度影響を最低限に抑えることができる。このような、加熱方式は、身近な電気製品の例でいえば、IHクッキングヒータと同じ原理に基づくものであって、非接触で実現されるのであり、無人搬送車両の走行に何ら影響を与えない。
【0015】
(解決手段2)
本発明の低温環境下における無人搬送車両のバッテリ保温方法は、解決手段1に記載の発明を基本発明として、誘導コイルを無人搬送車両の走行経路の路面に設置するとともに、バッテリ保温容器を無人搬送車両に上下動自在に搭載し、無人搬送車両が走行経路の路面に設置した誘導コイル上を通過する際にバッテリ保温容器を一時下降させて誘導コイルとバッテリ保温容器との間隔を狭めることを特徴とする。
【0016】
上記解決手段2について説明する。上記構成においては、バッテリを収納したバッテリ保温容器は、無人搬送車両に上下動自在に搭載され、このバッテリ保温容器は、無人搬送車両が走行経路の路面に設置した誘導コイル上を通過する際に一時的に下降するように制御される。この結果、誘導コイルに対する通電時には、誘導コイルとバッテリ保温容器とが接近することとなり、低出力の誘導コイルによって加熱の実効を挙げることが可能になる。また、このことにより、誘導コイルとバッテリ保温容器との距離的制限が解消されるので、誘導コイルを路面と同一レベルに設置し、路面のフラット化を実現することができるとともに、無人搬送車両のロードクリアランスについても、自由に設定することが可能である。また、この構成は、誘導コイルに通電する際に、バッテリ保温容器以外の部分を加熱しないようにすることにも寄与することができる。
【0017】
(解決手段3)
本発明の低温環境下における無人搬送車両のバッテリ保温方法は、解決手段1に記載の発明を基本発明として、バッテリ保温容器を無人搬送車両の走行経路の路面に上下動自在に埋設し、無人搬送車両が埋設した誘導コイルの上方を通過する際に誘導コイルを一時上昇させて誘導コイルとバッテリ保温容器との間隔を狭めることを特徴とする。
【0018】
上記解決手段3について説明する。上記構成は、上記解決手段2に記載の発明と同一の作用効果を得るための異なる手段を示している。すなわち、解決手段2においては、無人搬送車両に搭載したバッテリ保温容器を上下動させるのに対して、本構成では、誘導コイルを路面に上下動自在に埋設することによって、バッテリ保温容器を誘導加熱する際に誘導コイルと加熱対象であるバッテリ保温容器との間隔を狭めるようにしているのである。作用効果は同等であるが、無人搬送車両にバッテリ保温容器の上下動機構を搭載する必要がないので、無人搬送車両を軽量化することができるというメリットがある。
【0019】
(解決手段4)
本発明の低温環境下における無人搬送車両のバッテリ保温方法は、解決手段1に記載の発明と横並びに位置する発明である。すなわち、搭載したバッテリによって駆動される無人搬送車両が反復通過する無人搬送車両の走行経路の一箇所または複数個所に高周波電源によって駆動する誘導コイルを設置するとともに、バッテリをヒータを付設したバッテリ保温容器に収納して無人搬送車両に搭載し、無人搬送車両に誘導コイルとの相互誘導作用によって起電する受電コイルを搭載し、無人搬送車両が走行経路に設置した誘導コイルの近傍を通過する際に誘導コイルに通電し、受電コイルに発生した電力によってバッテリ保温容器に付設したヒータを駆動することによってバッテリを所定温度に維持すること特徴とする。
【0020】
上記解決手段4について説明する。上記構成には、高周波電源によって駆動する誘導コイルと、この誘導コイルとの相互誘導作用によって起電する受電コイルとの2ユニットのコイルが含まれるとともに、無人搬送車両のバッテリ保温容器には、受電コイルによって駆動されるヒータが付設されていることが特徴である。
【0021】
誘導コイルは、無人搬送車両が反復通過する無人搬送車両の走行経路の一箇所または複数個所に設置され、また、受電コイルは、無人搬送車両に搭載される。誘導コイルは、無人搬送車両がその近傍を通過した際に通電制御される。この結果、受電コイルには、相互誘導作用による起電力が生じ、これによってヒータが駆動され、バッテリ保温容器は、ヒータが発生した熱によって加温される。
【0022】
すなわち、解決手段1においては、誘導コイルが発生する高周波磁束によって直接バッテリ保温容器を加熱するのであるが、本発明では、受電コイルによって高周波磁束を一旦電力として取り出し、これによってヒータを加熱するという間接的な方法が採用されているのである。あえて、このような間接的な方法を採用するのは、電力を取り出すための専用部材である受電コイルによって誘導コイルからの高周波磁束を効率よく電力に変換することができること、受電コイルによって発生した電力を発熱専用の部材であるヒータによって効率よく熱に変換することができること、バッテリ保温容器に熱伝導率が小さく保温性に優れた軽量な非金属材料を採用することができること。さらには、受電コイルから取り出した電力によってバッテリを充電したり、持続放電特性を有する電気二重層コンデンサに蓄電して、任意の時期にヒータに供給するような有利な制御をすることができるからである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の低温環境下における無人搬送車両のバッテリ保温方法は、無人搬送車両の走行経路に高周波電源によって駆動する誘導コイルを設置するとともに、無人搬送車両には、誘導コイルの高周波磁束に発熱反応する金属製のバッテリ保温容器に収納したバッテリを搭載し、無人搬送車両が走行経路に設置した誘導コイルの近傍を通過する際に誘導コイルに通電することによって、無人搬送車両の稼働運転にいかなる支障を及ぼすことなく非接触でバッテリ保温容器を誘導加熱し、バッテリの温度を最適化することができるので、低温環境に弱いというバッテリの不可避的欠点を表面化させることなく、常温環境で使用されるバッテリと同等またはそれ以上の性能を発揮させることができる。
【0024】
また、無人搬送車両の走行経路に誘導コイルを設置するとともに、無人搬送車両に受電コイルとヒータを備えるバッテリ保温容器を搭載し、誘導コイルとの相互誘導作用によって受電コイルに発生する電力でヒータを駆動することによってバッテリを保温する方法は、上記、バッテリ保温容器を直接誘導加熱する方法と同様に、稼働運転中の無人搬送車両に搭載されているバッテリを無停車かつ非接触で適温に維持することができる他、効率よく受電コイルに発生した電力を蓄電しておいて任意の時期にバッテリの充電や保温に使用することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のバッテリ保温方法の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】上記バッテリ保温方法における動作説明図である。
【図3】本発明のバッテリ保温方法の他の実施の形態を示す平面図である。
【図4】本発明のバッテリ保温方法の他の実施の形態を示す側面図である。
【図5】本発明のバッテリ保温方法の他の実施の形態を示す側面図である。
【図6】本発明のバッテリ保温方法の他の実施の形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を引用しながら本発明の低温環境下における無人搬送車両のバッテリ保温方法の実施の形態を説明する。説明に際しては、先ず、本発明のバッテリ保温方法が使用される対象や周辺環境について前提的な説明をする。
【0027】
無人搬送車両50は、使用される用途に特化した一種の搬送ロボットであり、その形態は、搬送対象物に応じてきわめて多様である。本実施の形態に示す無人搬送車両50は、ボディ5Bの上面に中継コンベヤ5Cを搭載し(図1)、上流コンベヤC1と下流コンベヤC2との間を往来する、いわば、移動式中継コンベヤ装置ともいえる構成である(図3)。このような形態の無人搬送車両50は、例えば、上流コンベヤC1上に間欠的に供給されるワークの供給間隔が長く、連続したコンベヤを設置することが合理的でないような場合に多用される。
【0028】
無人搬送車両50のボディ5Bの裏面側の四隅には、走行輪5W…が配設され、走行輪5W…は、搭載するバッテリB…を電源として駆動される(図1,図2)。無人搬送車両50の走行経路の路面R1には、誘導ライン5Lが敷設され、無人搬送車両50は、誘導ライン5Lをセンサによってトレースしながら誘導ライン5Lによって定まる走行経路を反復して自動走行することができる。すなわち、無人搬送車両50の走行経路とは、特定の物体を指称するものではないが、誘導ライン5lが走行経路を代表していると言うことができる。
【0029】
無人搬送車両50に搭載された複数個のバッテリB…は、必要な結線をしてバッテリ保温容器5Kに収納され、大容量のバッテリパックを形成している。バッテリ保温容器5Kは、側面と底面とが構造用鋼板からなる蓋付きの箱状に形成され、バッテリB…は、任意の蓄熱材料や断熱材料によって包装した状態でバッテリ保温容器5K内に収納されている。このバッテリ保温容器5Kの金属部分は、適度な電気抵抗値を有し、高周波磁束に曝露された際に金属内部に生じる渦電流によって発熱反応することができる。
【0030】
バッテリ保温容器5Kは、必要なロードクリアランスを維持するように設定されたボディ5Bの底面に形成した角孔を塞ぐ態様で、つまり、ボディ5Bの裏面から見える状態で搭載され、バッテリ保温容器5Kの前方と後方とには、光学式のセンサS1,S2が下向きに配設されている。
【0031】
一方、誘導ライン5Lによって定まる無人搬送車両50の走行経路の路面R1には、誘導コイル6Fと、これを駆動するための高周波電源6Eを主体とするコイルユニット60が埋設されている。
【0032】
誘導コイル6Fは、リング状の空芯コイルであり、中心軸を上下方向に向けた水平姿勢で設置されている。この誘導コイル6Fは、電動シリンダ6Jによって上下動自在に支持され、非使用時には、ほぼ路面R1レベルに位置決めされている。誘導コイル6Fの上面は、強化ガラス等の非磁性体の保護板によって覆われ、重量物の通過に耐える設計がなされている。また、コイルユニット60の前後方向には、無人搬送車両5に取り付けられたセンサS1,S2に対応する光学式のセンサS3,S4が上向きに設置されている。誘導コイル6Fを支持している電動シリンダ6Jは、これらのセンサS1…S4の信号に基づいて制御される。
【0033】
なお、本発明にいう高周波電源とは、特定の周波数を有する電源を指称するものではなく、対象物にいわゆるIHヒータと同じ原理による発熱作用を及ぼすことができる範囲の周波数を有する電源の意味である。好ましい周波数としては、20kHzないし50kHz程度である。過剰に高い周波数の電源を用いると、非鉄系金属も発熱するようになるため扱い難くなることがあるからである。
【0034】
上記のような使用環境によって、本発明のバッテリ保温方法の効用を十分に発揮させることができる。
【0035】
走行経路を往復稼働する無人搬送車両50が誘導ライン5Lに沿って矢印F1方向に進行する場合(図1,図2)、先ず、バッテリ保温容器5Kの前方側に設置されたセンサS1とコイルユニット60の一方側に設置されたセンサS3との一致によって、無人搬送車両50の通過が検出され(図2(A))、これによって電動シリンダ6Jと高周波電源6Eとに電源が投入される。この際、無人搬送車両50は停止することを要しない。
【0036】
作動した電動シリンダ6Jは、誘導コイル6Fを所定量リフトアップして誘導コイル6Fをバッテリ保温容器5Kの底面に接近させる(図2(B))。したがって、高周波電源6Eに駆動された誘導コイル6Fからの高周波磁束は、もっぱらバッテリ保温容器5Kのみを効率よく誘導加熱することができる。また、バッテリ保温容器5Kに生じた熱は、直ちにバッテリB…に伝わることなく、バッテリB…を包装している蓄熱剤等を介して持続的に伝達される。
【0037】
次いで、無人搬送車両50の移動によりバッテリ保温容器5Kの後方側のセンサS2とコイルユニット60の他方側のセンサS4とが一致し、これによって無人搬送車両50の通過完了が検出され、電動シリンダ6Jが誘導コイル6Fを路面レベルR1に下降させるとともに、高周波電源6Eの電源も切断される(図2(C))。したがって、コイルユニット60による消費電力はごく僅かに抑えられる。また、無人搬送車両50が通過した後の路面R1は、他の任意の作業に支障なく使用することができる。
【0038】
上記のように誘導コイル6Fを上下動自在とすることによって、ロードクリアランスが大きい大型の無人搬送車両50に対しても本発明を簡単に適用することができる。また、ロードクリアランスが小さい無人搬送車両50については、誘導コイル6Fの上下動機構を省略することができることは、無論である。
【0039】
上記実施の形態は、無人搬送車両50の走行経路の途中に誘導コイル6Fを設置する場合に関するが、ライン間の無人搬送車両50のように、例えば、上流コンベヤC1と下流コンベヤC2に接続した際に、作業のために一時停止する必要のある無人搬送車両50においては(図3)、一時停止位置にそれぞれ誘導コイル6F,6Fを設置しておくことによって、本発明が課題とする低温環境下におけるバッテリB…の性能低下の問題を完璧に解消することが可能である。この場合は、バッテリ保温容器5Kの誘導加熱に要する時間が不足するような事態が想定できないからである。
【0040】
バッテリ保温容器5Kを誘導加熱するに際して、バッテリ保温容器5Kと誘導コイル6Fとの間隔を狭める必要がある場合においては、無人搬送車両50に搭載したバッテリ保温容器5Kの方を上下動自在とするようにしてもよい(図4)。バッテリ保温容器5Kを上下動自在にする機械的手段は任意であるが、例えば、図示のように同期駆動する2本の電動シリンダ6J,6Jによってバッテリ保温容器5Kを支持することによって簡単に実現することができる。電動シリンダ6J,6Jは、エアーシリンダと異なり、途中停止の位置決め精度にも優れ、扱い易い。
【0041】
上記実施の形態は、いずれも誘導コイル6Fから発生する高周波磁束によって直接にバッテリ保温容器5Kを加熱する例に関するものであるが、無人搬送車両50に誘導コイル6Fとの間の相互誘導作用によって起電力を発生する受電コイル5Fを搭載し、受電コイル5Fに生じる電力を利用してバッテリ保温容器5Kを加熱するばかりでなく、必要に応じてバッテリB…に充電するようにすることもできる(図5)。
【0042】
受電コイル5Fは、無人搬送車両50のボディ5Bの底面レベルに磁気が遮断されない態様で搭載するものとし、バッテリ保温容器5Kには、ヒータ5Hが付設される。また、受電コイル5Fに発生する電力は、高周波電力であるため、これをヒータ5Hの駆動およびバッテリB…に充電するのに適する電力形態に変換するためのコントローラ5Gが搭載される。コントローラ5Gは、バッテリB…に対する充電系統とヒータ5Hに対する駆動系統との2系統の電気配線によって、それぞれバッテリB…とヒータ5Hに接続される。
【0043】
上記のようなバッテリ保温方法は、直接バッテリ保温容器5Kを誘導加熱する場合に比べて一見迂遠な方法のように考えられるが、全体としての効率が良いことが特徴となる。これは受電コイル5Fが誘導コイル6Fからエネルギーを受け取るための専用部材であり、さらに、ヒータ5Hは、電気エネルギーを熱に変換するための専用部材であるからに他ならない。
【0044】
上記実施の形態は、いずれも誘導コイル6Fを無人搬送車両50の走行経路の路面R1に設置する場合に関するものであるが、誘導コイル6Fは、無人搬送車両50の走行経路に属する限り、無人搬送車両50の側面側に設置することも、また、無人搬送車両50の態様や使用現場状況によっては、無人搬送車両50の上方に設置することも可能である。つまり、誘導コイル6Fから発生する高周波磁束が無人搬送車両50に搭載されたバッテリ保温容器5K、または受電コイルに5Fに一定の強さを維持して及べばよいのである。
【0045】
このような考え方によれば、本発明のバッテリ保温方法は、例えば、上流コンベヤC1と下流コンベヤC2との間を往来するライン間中継用の無人搬送車両50において、バッテリ保温容器5Kを無人搬送車両50ボディ5Bの側面側に寄せて搭載するとともに、その無人搬送車両50の2箇所の作業停止位置の側方にそれぞれ誘導コイル6F,6Fを内蔵したコイルユニット60,60を設置することによっても有効に実施することができる(図6)。
【符号の説明】
【0046】
B バッテリ
R1 路面
50 無人搬送車両
5L 誘導ライン
5K バッテリ保温容器
5F 受電コイル
5H ヒータ
60 コイルユニット
6F 誘導コイル
6E 高周波電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載したバッテリによって駆動される無人搬送車両が反復通過する無人搬送車両の走行経路の一箇所または複数個所に高周波電源によって駆動する誘導コイルを設置するとともに、バッテリを前記誘導コイルの高周波磁束に発熱反応する金属製のバッテリ保温容器に収納して無人搬送車両に搭載し、無人搬送車両が走行経路に設置した前記誘導コイルの近傍を通過する際に前記誘導コイルに通電することによって前記バッテリ保温容器を誘導加熱し、バッテリを所定温度範囲内に維持すること特徴とする低温環境下における無人搬送車両のバッテリ保温方法。
【請求項2】
前記誘導コイルを無人搬送車両の走行経路の路面に設置するとともに、前記バッテリ保温容器を無人搬送車両に上下動自在に搭載し、無人搬送車両が走行経路の路面に設置した前記誘導コイル上を通過する際に前記バッテリ保温容器を一時下降させて前記誘導コイルと前記バッテリ保温容器との間隔を狭めることを特徴とする請求項1に記載の低温環境下における無人搬送車両のバッテリ保温方法。
【請求項3】
前記バッテリ保温容器を無人搬送車両の走行経路の路面に上下動自在に埋設し、無人搬送車両が埋設した前記誘導コイルの上方を通過する際に誘導コイルを一時上昇させて前記誘導コイルと前記バッテリ保温容器との間隔を狭めることを特徴とする請求項1に記載の低温環境下における無人搬送車両のバッテリ保温方法。
【請求項4】
搭載したバッテリによって駆動される無人搬送車両が反復通過する無人搬送車両の走行経路の一箇所または複数個所に高周波電源によって駆動する誘導コイルを設置するとともに、バッテリをヒータを付設したバッテリ保温容器に収納して無人搬送車両に搭載し、無人搬送車両に前記誘導コイルとの相互誘導作用によって起電する受電コイルを搭載し、無人搬送車両が走行経路に設置した前記誘導コイルの近傍を通過する際に前記誘導コイルに通電し、前記受電コイルに発生した電力によって前記バッテリ保温容器に付設したヒータを駆動することによってバッテリを所定温度に維持すること特徴とする低温環境下における無人搬送車両のバッテリ保温方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−204259(P2012−204259A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69655(P2011−69655)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(597069741)株式会社ブイオーシーダイレクト (16)
【Fターム(参考)】