説明

低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法及び製造触媒

【課題】ベンゼン類及びC2類(エタン、エチレン等)を優先的に製造する。
【解決手段】
触媒金属を担持したメタロシリケート(メタン直接改質触媒3)と水素吸蔵物質4にメタンを接触反応させて低級炭化水素及び芳香族化合物製造する。触媒反応を行う際、メタン直接改質触媒3と水素吸蔵物質4を混合したものを反応管2に充填してメタンと接触反応させればよい。また、反応管2にメタン直接改質触媒3の層と水素吸蔵物質4の層を交互に充填してメタンを接触反応させても同様の効果を得ることができる。水素吸蔵物質4としては、金属チタン、炭化チタン等が例示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメタンを主成分とする天然ガス、バイオガス、メタンハイドレートの高度利用に関する。天然ガス、バイオガス、メタンハイドレートは地球温暖化対策として最も効果的なエネルギー資源と考えられ、その利用技術に関心が高まっている。メタン資源はそのままクリーン性を活かして次世代の新しい有機資源、燃料電池用の水素資源として注目されている。
【0002】
本発明はメタンからプラスチック類などの化学製品原料であるベンゼンを主成分とする芳香族化合物とエタン、エチレンなどC2化合物を効率よく製造するための触媒化学変換技術及びその触媒製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
メタン等の低級炭化水素からベンゼン等の芳香族化合物と水素とを製造する方法としては触媒の存在下に低級炭化水素を反応させる方法が知られている。この際の触媒としてはZSM−5系のゼオライトに担持されたモリブデンが有効とされている(非特許文献1)。
【0004】
これらの反応では、芳香族化合物としてベンゼンやトルエン、ナフタレンが多く生成する。
【0005】
メタンからベンゼン等の芳香族化合物と水素を製造する反応では、下記の式(1)、(2)のような反応が進行する。
6CH4 → C66 + 9H2 …(1)
10CH4 → C108 + 16H2 …(2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−249983号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】JOURNAL OF CATALYSIS、1997、pp.165、pp.150−161
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、メタンから直接的にエタンやエチレンなどを選択的に製造する反応の報告例は少ない。また、メタンから直接的にエタンやエチレンを製造する場合、副反応としてベンゼンよりも分子量が大きいナフタレンが生成してしまうという問題があった。ナフタレンは常温で固体であるので取扱いが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明に係る低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法は、触媒金属を担持したメタロシリケートと、水素吸蔵物質に、メタンを接触させて低級炭化水素及び芳香族化合物を製造することを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法は、上記低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法において、前記水素吸蔵物質がチタン、若しくは炭化チタンのいずれかであることを特徴としている。
【0011】
そして、本発明に係る低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法は、上記低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法において、前記メタロシリケートと前記水素吸蔵物質を混合したものにメタンを接触させることを特徴としている。
【0012】
さらに、本発明に係る低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法は、上記低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法において、前記メタロシリケートの層と前記水素吸蔵物質の層を交互に配置したものにメタンを接触させることを特徴としている。
【0013】
また、上記課題を解決する本発明に係る低級炭化水素及び芳香族化合物製造触媒は、メタンを接触反応させて、低級炭化水素及び芳香族化合物を製造する触媒であって、触媒金属を担持したメタロシリケートと、水素吸蔵物質を混合してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
以上の発明によれば、ベンゼン類とエタン、エチレン等のC2類を優先的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るメタン直接改質触媒及び水素吸蔵物質の充填形態を例示する図であり、(a)メタン直接改質触媒の層と水素吸蔵物質の層を交互に配置した図、(b)メタン直接改質触媒と水素吸蔵物質を混合して配置した図。
【図2】本発明に係る低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法で用いた固定床流通式反応装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法は、触媒金属を担持したメタロシリケート(例えば、ZSM−5)と水素吸蔵物質(例えば、金属チタンや炭化チタン)を共存させて、低級炭化水素を接触反応させるものである。
【0017】
そして、本発明の実施形態に係る低級炭化水素及び芳香族化合物の製造触媒は、メタンをベンゼン等の芳香族化合物に転化する触媒(以下、メタン直接改質触媒とする)と水素吸蔵物質より構成される。
【0018】
上記低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法及び製造触媒によれば、反応生成物におけるナフタレンの生成を抑制し、C2化合物(例えば、エタン、エチレン等)とベンゼンを優先的に生成することができる。
【0019】
本発明の実施形態に用いられるメタン直接改質触媒は、メタロシリケートに触媒金属を担持することにより調製される。
【0020】
メタン直接改質触媒に使用するメタロシリケートとしては、シリカ及びアルミナからなる多孔質体であるモレキュラーシーブ5A(UTA)、フォジャサイト(NaY)及びNaX、ZSM−5、H−ZSM−5のようなアルミノシリケートが例示される。また、リン酸を主成分とするALPO−5、VPI−5等の多孔質担体で、0.6nm〜1.3nmのミクロ細孔やチャンネルからなることを特徴とするゼオライト担体も触媒に使用するメタロシリケート例として挙げられる。その他、シリカを主成分とし一部アルミナを成分として含むメゾ細孔(1nm〜10nm)の筒状細孔(チャンネル)で特徴づけられるFSM−16やMCM−41などのメゾ細孔多孔質担体なども触媒に使用するメタロシリケートとして例示できる。
【0021】
一方、上記メタロシリケートに担持する触媒金属としては、モリブデン、クロム、バナジウム、レニウム、タングステン等が例示される。また、これらの触媒金属を組み合わせてメタロシリケートに担持してもよい。
【0022】
触媒金属の担持方法についてモリブデンを例示して説明する。上記触媒金属も同様の方法によりメタロシリケートに担持することができる。モリブデンをメタロシリケートに担持させる方法としては、モリブデンを含む前駆体の水溶液をメタロシリケート担体に含浸担持させた後、空気中で加熱処理する方法が一般的である。
【0023】
モリブデンを含む前駆体の例としては、パラモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸、12ケイモリブデン酸、その塩化物、臭化物等のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の鉱酸塩、炭酸塩、蓚酸塩等のカルボン酸塩等が例示できる。
【0024】
具体的な例としては、メタロシリケート担体にモリブデン酸アンモニウムを含浸担持させ、乾燥させた後、空気気流中で250℃〜800℃、好ましくは400℃〜700℃で加熱処理して、モリブデンを担持したメタン直接改質触媒を製造する方法が挙げられる。
【0025】
上記メタロシリケートに触媒金属を担持する前に、シランカップリング剤による修飾(シラン処理)を施すとよい。シラン処理を行うことにより、メタロシリケート同士の接着性が向上する。
【0026】
本発明に係るメタン直接改質触媒は、シリカ、アルミナ、粘土などのバインダーを添加して、ペレット状若しくは押出品に成形して使用することができる。
【0027】
また、本発明に係る水素吸蔵物質は、既知の水素吸蔵物質を用いればよく、Ti、Zr、V、Nb、Mg、La、Pd、Ni、Fe、Cu、Ag、Cr、Thや他の遷移金属等の水素吸蔵金属、2つ以上の前記水素吸蔵金属の組合せ等が例示される。また、1つ以上の前記水素吸蔵金属と、O、Al、Y、Ca、Mo、Co、N、Mn、B、Cの中から1つ以上選んで組合せによる合金等の水素を内部に吸蔵できる物質も水素吸蔵物質として例示できる(例えば、特許文献1)。
【0028】
これらメタン直接改質触媒及び水素吸蔵物質と反応させるメタンには、水素、他の低級炭化水素、希ガス等が含まれていてもよい。ただし、反応させる気体としては、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%のメタンを含有することが望ましい。
【0029】
本発明の実施形態に係る低級炭化水素及び芳香族炭化水素の製造方法は、回分式あるいは流通式の反応形式で実施することが可能である。特に、固定床、移動床または流動化床等の流通式の反応形式で実施することが好ましい。
【0030】
そして、反応温度は300℃〜900℃、好ましくは450℃〜800℃とし、反応圧力は0.01MPa〜1MPa、好ましくは0.1MPa〜0.7MPaで、メタンをメタン直接改質触媒及び水素吸蔵物質と接触させ触媒反応を行う。
【0031】
本発明において、低級炭化水素とは、炭素数2から炭素数6の飽和、または不飽和炭化水素をさすものとする。炭素数が2〜6の飽和または不飽和炭化水素の例としては、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、n−ブタン、イソブタン、n−ブテン及びイソブテン等が例示できる。また、本発明において、芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が例示される。
【0032】
図1に示すように、低級炭化水素及び芳香族化合物の製造反応を行う反応管2には、メタン直接改質触媒3と水素吸蔵物質4が充填される。メタン直接改質触媒3と水素吸蔵物質4の充填形態は、図1(a)のようにメタン直接改質触媒3の層と水素吸蔵物質4の層を交互に配置する充填形態、図1(b)のようにメタン直接改質触媒3と水素吸蔵物質4を物理的に混合した混合物5を充填する充填形態等が例示される。
【0033】
後述する実施例に示されるように、本発明に係る低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法において、メタン直接改質触媒3の層と水素吸蔵物質4の層を反応管2に交互に配置しても、混合して充填しても、メタンを反応させた時の反応生成物の組成に顕著な変化が生じない。これは、本発明に係る水素吸蔵物質4が、水素または含水素化合物を吸蔵するだけでなく、この水素等の吸放出を繰り返し、さらに何らかの炭化水素の遷移体を形成しているものと考えられ、この吸放出速度とメタン直接改質触媒3の触媒反応速度の差異が少なく、十分速いために反応生成物の組成の変化が生じなかったものと考えられる。一方、前記吸放出速度と前記触媒反応速度の差異が顕著な反応条件で触媒反応を行う場合には、各充填層の条件(厚さ、層の数、充填する順番)の変化により反応性生成物の組成が変化する可能性がある。したがって、図1(a)のように、メタン直接改質触媒3の層と水素吸蔵物質4の層の厚さ、及び重ねる層の数等は、反応生成物の組成が最適になるように適宜設定すればよい。
【0034】
本発明の実施形態に係る低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法及び製造触媒について、具体的な実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明に係る低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法及び製造触媒は、この実施例に限定されるものではない。例えば、前記実施例ではモリブデンの担持量が焼成後の触媒全体量に対して6重量%となっているが、その担持量が触媒全体量に対して2〜12重量%の範囲で前述の実施例と同様な効果を奏する。
【0035】
(実施例1)
本発明の実施例1に係る低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法は、図1(a)に示すようにメタン直接改質触媒3の層と水素吸蔵物質4(金属チタン)の層を交互に重ねて反応管2に配置し、配置されたメタン直接改質触媒3と水素吸蔵物質4にメタンを接触反応させたものである。
【0036】
1.触媒の作成方法
実施例1では、メタン直接改質触媒に用いるメタロシリケートとしてアンモニウム型ZSM−5(SiO2/Al23=25〜70)を用いた。また、水素吸蔵物質としては、粒子径が45μm〜75μmの金属チタン粉末(和光純薬製)を使用した。なお、金属チタンを一旦圧縮成型して1〜2mmの顆粒状にして使用した場合でも同様の効果を得ることができる。
【0037】
(1)配合
無機成分の配合:ZSM−5(82.5重量%)、粘土(12.5重量%)、ガラス繊維(5重量%)
全体配合:前記無機成分(76.5重量%)、有機バインダー(17.3重量%)、水分(24.3重量%)
(2)成型
前記配合比率で前記無機成分と有機バインダーと水分とを配合し混練手段(ニーダ)によって混合、混練した。次に、この混合体を真空押し出し成型機によって棒状(径2.4mm×長さ5mm)に成型した。この時の成型時の押し出し圧力は2〜8MPaに設定した。
【0038】
通常炭化水素を改質するために使用する触媒担体は数μmから数百μmの粒径の粒子を用いて流動床触媒として使用している。この場合の触媒担体の製造方法は触媒の担体材料と有機バインダー、無機バインダー(通常は粘土を使用)と水を混合しスラリー状としてスプレードライヤーで造粒成型(成型圧力はない)した後に焼成する。この場合、成型圧力がないため、焼成速度を確保するために焼成助材として加える粘土の添加量が40〜60重量%程度であった。ここでは触媒の成型を真空押出成型機を用いて高圧成型することにより焼成助材として加える粘土等の添加材の添加量を15〜25重量%に低減することができる。そのため触媒活性も向上させることができる。
【0039】
(3)乾燥、焼成
乾燥工程では成型工程時に添加した水分を除去するために70℃で約12時間乾燥した後、90℃で36時間乾燥した。焼成工程では空気中で550℃、5時間焼成した。焼成工程での焼成温度は550〜800℃の範囲とした。550℃以下では担体の強度低下、800℃以上では特性(活性)の低下が起こるためである。焼成工程における昇温速度及び降温速度は90〜100℃/時に設定した。このとき、成型時に添加した有機バインダーが瞬時に燃焼しないように250〜500℃の温度範囲の中に2〜6時間程度の温度キープを2回実施してバインダーを除去した。昇温速度及び降温速度が前記速度以上であってバインダーを除去するキープ時間を確保しない場合にはバインダーが瞬時に燃焼して焼成体の強度が低下するためである。
【0040】
(4)触媒金属の含浸
シラン化合物を溶解させたエタノールに所定時間メタロシリケート担体を含浸させ、これを乾燥させた後に、550℃で6時間焼成することにより前記シラン化合物でシラン処理したメタロシリケートを得た。次に、モリブデン酸アンモニウムと硝酸亜鉛(酢酸亜鉛でもよい)を担持後に所定のモル比となるように含浸水溶液を調製し、第2金属をメタロシリケート担体へ共含浸した。Mo担持量は6wt%であり、共含浸する亜鉛は金属モル比でZn:Mo=0.3:1の比率であった。含浸後の担体は、湿度と温度を管理しながら乾燥した。最後に、乾燥品を空気中で550℃、5時間焼成し、シラン修飾亜鉛/モリブデン担持ゼオライトを得た。
【0041】
2.触媒の評価
実施例1の触媒の評価法について述べる。実施例1では、メタン直接改質触媒10gと金属チタン粉末10gを用いた。メタン直接改質触媒と金属チタン粉末は、それぞれ5gずつ上記固定床流通式反応装置1に層状に重ねた。具体的な充填形態を説明すると、成型して得られたφ2.4mmの棒状担体を長さ5mmに切断して得られる含浸金属担持処理をした触媒(メタン直接改質触媒)の層と、金属チタン粉末の層を、図2に示した固定床流通式反応装置1のインコネル800H接ガス部カロライジング処理製反応管2(内径18mm)に交互に配置した。メタン直接改質触媒の層の高さは、2.5cmであり、金属チタン粉末の層の高さは、1.5cmであった。そして、メタン直接改質触媒の層と金属チタン粉末の層を2層ずつ配置したので、全層高は8cmであった。
【0042】
前処理として、メタン直接改質触媒と金属チタン粉末が充填された固定床流通式反応装置1に水素ガスを500cc/min流通させながら、100℃/hで780℃まで昇温した後、反応ガスであるメタンに切り替えて反応を行った。表1に示した反応条件に基づき固定床流通式反応装置1に対して反応ガスとして100%メタンガスを供給して、反応空間速度=3000ml/g−MFI/h(CH4gas flow base)、反応温度780℃、反応時間3時間、反応圧力0.3MPaの条件で触媒と反応ガスとを反応させた。
【0043】
【表1】

【0044】
水素、メタンは、TCD−GCで分析し、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの芳香族化合物は、FID−GCで分析した。
【0045】
(実施例2)
本発明の実施例2に係る低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法は、メタン直接改質触媒と水素吸蔵物質の充填方法が異なる以外は実施例1と同様の製造方法であるので、その詳細な説明を省略する。
【0046】
本発明の実施例2に係る低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法は、図1(b)に示すようにメタン直接改質触媒と水素吸蔵物質(金属チタン)を混合した混合物5を反応管2に充填し、この混合物5にメタンを接触反応させたものである。
【0047】
1.触媒の充填方法
実施例1の触媒作成方法(1)〜(4)で作成したメタン直接改質触媒ペレット25gと粒子径が45μm〜75μmの金属チタン粉末(和光純薬製)25gを混合し、ペレットを粉砕しながらめのう乳鉢で混合し、得られた混合粉末を圧縮機で再ペレット化した。そして、粒径1〜2mmにふるい分けして、図2に示した固定床流通式反応装置1のインコネル800H接ガス部カロライジング処理製反応管2(内径18mm)に20g充填した。
【0048】
2.触媒の評価
前処理として、メタン直接改質触媒と金属チタン粉末が充填された固定床流通式反応装置1に水素ガスを500cc/min流通させながら、100℃/hで780℃まで昇温した後、反応ガスであるメタンに切り替えて反応を行った。表1に示した反応条件に基づき固定床流通式反応装置1に対して反応ガスとして100%メタンガスを供給して、反応空間速度=3000ml/g−MFI/h(CH4gas flow base)、反応温度780℃、反応時間3時間、反応圧力0.3MPaの条件で触媒と反応ガスとを反応させた。
【0049】
水素、メタンは、TCD−GCで分析し、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの芳香族化合物は、FID−GCで分析した。
【0050】
(実施例3)
本発明の実施例3に係る低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法は、水素吸蔵物質の種類が異なる以外は実施例1で説明した製造方法と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0051】
本発明の実施例3に係る低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法は、水素吸蔵物質4として炭化チタンを用い、図1(a)に示すようにメタン直接改質触媒3の層と水素吸蔵物質4の層を交互に反応管2に配置し、配置されたメタン直接改質触媒3と水素吸蔵物質4にメタンを接触反応させたものである。
【0052】
1.触媒の充填方法
実施例1の触媒作成方法(1)〜(4)で作成したメタン直接改質触媒ペレット10gと粒子径が45μm〜75μmの炭化チタン粉末(和光純薬製)10gを、それぞれ5gずつ固定床流通式反応装置1に層状に重ねて配置した。具体的な充填形態を説明すると、成型して得られたφ2.4mmの棒状担体を長さ5mmに切断して得られた含浸金属担持処理をした触媒(メタン直接改質触媒)の層と、炭化チタン粉末の層を、図2に示した固定床流通式反応装置1のインコネル800H接ガス部カロライジング処理製反応管2(内径18mm)に交互に配置した。メタン直接改質触媒の層の高さは、2.5cmであり、炭化チタン粉末の層の高さは、2cmであった。そして、メタン直接改質触媒層と金属チタン粉末層を2層ずつ配置したので、全層高は9cmであった。
【0053】
2.触媒の評価
前処理として、メタン直接改質触媒と炭化チタン粉末が充填された固定床流通式反応装置1に水素ガスを500cc/min流通させながら、100℃/hで780℃まで昇温した後、反応ガスであるメタンに切り替えて反応を行った。表1に示した反応条件に基づき固定床流通式反応装置1に対して反応ガスとして100%メタンガスを供給して、反応空間速度=3000ml/g−MFI/h(CH4gas flow base)、反応温度780℃、反応時間3時間、反応圧力0.3MPaの条件で触媒と反応ガスとを反応させた。
【0054】
水素、メタンは、TCD−GCで分析し、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの芳香族化合物は、FID−GCで分析した。
【0055】
(比較例1)
本発明の比較例1に係る低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法は、メタン直接改質触媒のみを低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法に用いた以外は実施例1と同様の製造方法であるので、その詳細な説明を省略する。
【0056】
本発明の比較例1に係る低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法は、メタン直接改質触媒のみを反応管2に充填し、充填されたメタン直接改質触媒にメタンを接触反応させたものである。
【0057】
1.触媒の充填方法
実施例1の触媒作成方法(1)〜(4)で作成したメタン直接改質触媒ペレット10gを、固定床流通式反応装置1のインコネル800H接ガス部カロライジング処理製反応管2(内径18mm)に充填した。
【0058】
2.触媒の評価
前処理として、メタン直接改質触媒が充填された固定床流通式反応装置1に水素ガスを500cc/min流通させながら、100℃/hで780℃まで昇温した後、反応ガスであるメタンに切り替えて反応を行った。表1に示した反応条件に基づき固定床流通式反応装置1に対して反応ガスとして100%メタンガスを供給して、反応空間速度=3000ml/g−MFI/h(CH4gas flow base)、反応温度780℃、反応時間3時間、反応圧力0.3MPaの条件で触媒と反応ガスとを反応させた。
【0059】
水素、メタンは、TCD−GCで分析し、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの芳香族化合物は、FID−GCで分析した。
【0060】
上記実施例1〜3及び比較例1の条件で低級炭化水素及び芳香族化合物を製造した時の触媒評価結果を表2に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
触媒性能を評価する指標として、以下に示す式(3)〜式(6)により算出される収率を用いた。
ベンゼン収率(%)=生成したベンゼン量/メタン改質反応に供されたメタン量×100 …(3)
C2類収率(%)=生成したC2類量/メタン改質反応に供されたメタン量×100 …(4)
C3類収率(%)=生成したC3類量/メタン改質反応に供されたメタン量×100 …(5)
ナフタレン収率(%)=生成したナフタレン量/メタン改質反応に供されたメタン量×100 …(6)
表2に示すように、同量のメタン直接改質触媒を充填した比較例1と比較すると、実施例1から3のいずれにおいてもナフタレンの生成が確認されず、C2類とベンゼン、トルエンの生成が確認された。
【0063】
また、実施例1、2の評価結果によれば、水素吸蔵物質として金属チタンを用いた場合、メタン直接改質触媒の層と水素吸蔵物質の層を交互に配置した場合(実施例1)と、メタン直接改質触媒と水素吸蔵物質を混合して配置した場合(実施例2)のいずれの充填方法においても、ベンゼン類とC2類が1対1で生成した。また、実施例1、3の評価結果によれば、炭化チタンを水素吸蔵物質として用いた場合(実施例3)では、金属チタンを水素吸蔵物質として用いた場合(実施例1)と比較すると、収率は低いものの金属チタンと同様に、ナフタレン等の生成を抑制し、C2類及びベンゼン類を選択的に生成する効果があることが確認された。
【0064】
なお、上記実施例1〜3では、反応開始から3時間後の収率により性能評価を行っているが、反応時間は3時間に限定するものではなく、適宜最適な時間を選択して反応させればよい。また、表2において、C3類とはプロパン、プロピレン等の炭素数が3の炭化水素を示す。
【0065】
以上のように、本発明に係る低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法及び製造触媒によれば、メタン直接改質触媒に水素吸蔵物質を物理的に混合する(または、メタン直接改質触媒の層と水素吸蔵物質の層を交互に配置する)だけで、反応生成物の収率が変化し、扱いにくい常温で固体のナフタレンの生成を抑制することができる。そして、化学基礎原料として有用な、ベンゼン類とC2類(エタン、エチレン等)を優先的に製造することができる。
【符号の説明】
【0066】
1…固定床流通式反応装置
2…反応管
3…メタン直接改質触媒(触媒金属を担持したメタロシリケート)
4…水素吸蔵物質
5…メタン直接改質触媒と水素吸蔵物質を混合した混合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒金属を担持したメタロシリケートと、水素吸蔵物質に、メタンを接触させて低級炭化水素及び芳香族化合物を製造する
ことを特徴とする低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法。
【請求項2】
前記水素吸蔵物質は、チタン、若しくは炭化チタンのいずれかである
ことを特徴とする請求項1に記載の低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法。
【請求項3】
前記メタロシリケートと前記水素吸蔵物質を混合したものに、メタンを接触させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法。
【請求項4】
前記メタロシリケートの層と前記水素吸蔵物質の層を交互に配置したものに、メタンを接触させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の低級炭化水素及び芳香族化合物の製造方法。
【請求項5】
メタンを接触反応させて、低級炭化水素及び芳香族化合物を製造する触媒であって、
触媒金属を担持したメタロシリケートと、水素吸蔵物質を混合してなる
ことを特徴とする低級炭化水素及び芳香族化合物製造触媒。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−116707(P2011−116707A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276070(P2009−276070)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】