説明

低誘電率低屈折率ナノコンポジット材料

【課題】本発明は、絶縁樹脂において特殊な構造の導入を必要とせず、低誘電率,低屈折率を実現可能なシリカ樹脂ナノコンポジット材料とその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】シリカ微粒子,有機樹脂,有機溶剤から形成される物理ゲル化したオルガノゲルを加熱によりゲル化物から有機溶剤を除去することにより、有機樹脂中に直径100nm以下の気泡を有するナノポーラス構造を有する低誘電率低屈折率率シリカ樹脂ナノコンポジット材料を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機樹脂中に直径が100nm以下のナノポーラス構造を有するポリマー/セラミックナノコンポジット材料に関し、多層配線の低誘電率層間絶縁材料,各種ディスプレイの低反射膜,導波路用クラッド材として広く応用できる。
【背景技術】
【0002】
電子材料用絶縁樹脂としてエポキシ樹脂が幅広く使用されている。エポキシ樹脂は、室温で液状のものから固体のものまであり汎用溶剤にも可溶であるため作業性に優れている。また、アミン系,無水酸系,フェノール系の各種硬化剤あるいは光開始剤により容易に硬化し成形性も優れている。硬化物の接着性,機械物性,耐熱性,電気特性等の各種特性も優れたバランスの良い樹脂である。電子材料用絶縁樹脂は、伝送速度向上の観点から誘電率の低減が強く望まれている。しかしながら、電子材料用エポキシ樹脂が有するエポキシ基、硬化剤となるアミノ基,フェノールあるいは、硬化後に生成する水酸基やカルボキシル基等の極性基の影響で誘電率の低減には限界がある。さらに、各種ディスプレイの低反射膜,導波路クラッド等への応用範囲の拡大が検討されている。しかしながら、誘電率の場合と同様に、分子構造中に有する極性基の影響で低屈折率化には限界があった。エポキシ樹脂の低誘電率は、耐熱骨格として導入されている芳香族基の代わりに脂環式構造を導入する。あるいは、硬化剤としてアミノ基やフェノール基等の極性基が極力少なく、且つ硬化過程で水酸基が生成しない方法により行われる。エポキシ樹脂は上述したように、接着性,耐熱性等の特性の優れたバランスのとれた樹脂であるが極性基を減らすことにより接着性が損なわれる。脂環式構造の導入や嵩高いアルキル基の導入は、耐熱性を犠牲にせざるを得なくなる問題がある。さらに、特殊な構造の導入は、合成コストが高くなることも問題である。また、ポリテトラフロロエチレンの多孔質材料を補強材として用いる材料もあるが、特殊な補強材料を使用する必要があるための使用上の制約がある。また、不透明材料になる問題もある。
【0003】
一方、ナノポーラス構造を有するシリカ微粒子をエポキシ樹脂中に分散する方法がある(例えば、特許文献1)。この方法は、特殊な方法で製造された約10Å(1nm)から約100Å(10nm)の範囲にわたる大きさの空隙を有するシリカ中空球体を用いる方法である。シリカ球体そのものの大きさは約10nmから約1,000nm の範囲のものができる。この方法によれば、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂に上述の特殊なシリカ中空球体を分散させることにより誘電率が3.0 以下の樹脂を得ることができる。この方法によれば、シリカ中空球体の分散量によるがエポキシ樹脂等の一般特性を損なわずに低誘電率化が図れる可能性がある。
【0004】
この他、かご状シルセスキオキサンを用いて分子構造中にある分子レベルの空隙を利用した低屈折率コンポジットも検討されている(例えば、特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開平5−182518号公報
【特許文献2】特開2000−334881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、引用文献1に記載のシリカ中空球体を得る為には、室温から300℃、300℃から600℃、600℃から800℃の温度で、酸素雰囲気あるいは塩素/アルゴンガス雰囲気下で長時間の熱処理が必要であり、最終的には約800℃から約1200℃の範囲でのフラッシュ焼結が必要である。また、空隙含有率のコントロールも難しい等の問題がある。
【0007】
また、引用文献2では、かご状シルセスキオキサンの合成,分子量の制御,特性の安定化等で課題を残している。
【0008】
本発明は、上述の問題を鑑みなされたもので、絶縁樹脂において、特殊な構造の導入を必要とせず、低誘電率,低屈折率を実現可能なシリカ樹脂ナノコンポジット材料とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、シリカ微粒子,有機樹脂,有機溶剤から形成される物理ゲル化したオルガノゲルを利用することにより、有機樹脂中に直径100nm以下の気泡を有するナノポーラス構造を有する低誘電率低屈折率材料が得られることを確認した。有機溶剤に分散させた粒径が5nmから100nmのシリカ微粒子をエポキシ樹脂に分散させた後、物理ゲル化状態にする。この後、加熱によりゲル化物から有機溶剤を除去する方法である。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、有機樹脂中にシリカ微粒子が分散した低誘電率低屈折率シリカ樹脂ナノコンポジット材料であって、前記有機樹脂が直径100nm以下の気泡を有する低誘電率低屈折率シリカ樹脂ナノコンポジット材料を特徴とする。
【0011】
また、本発明は、シリカ微粒子を分散した有機樹脂と溶剤からなる溶液を、室温で放置して物理ゲルとした後、加熱により溶剤を除去し、前記シリカ微粒子が分散した前記有機樹脂中に直径100nm以下の気泡を形成する低誘電率低屈折率シリカ樹脂ナノコンポジット材料の製造方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ナノ粒子特有の現象である溶剤を取り込んだ物理ゲル現象を利用するため特別な装置や薬品を必要とせず安価に、比誘電率が2.0〜3.0の低誘電率のシリカ樹脂ナノコンポジット材料を得ることができ、例えば、配線板の層間絶縁膜に適用した場合、信号伝送速度の大幅な改善を図ることができる。また、本発明のシリカ樹脂ナノコンポジット材料は、無色透明な樹脂板となり光の屈折率も低減され、各種ディスプレイの反射防止膜,導波路用クラッド材として応用範囲が大きく広がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の低誘電率低屈折率シリカ樹脂ナノコンポジット材料は、有機溶剤に分散させた粒径が5nmから100nmのシリカ微粒子をエポキシ樹脂に分散させた後、物理ゲル化状態にする。この後、加熱によりゲル化物から有機溶剤を除去する方法により作成される。この加熱過程で溶剤は除去されるが、コンポジット樹脂の形状,体積共にほとんど変化しない。コンポジット樹脂は、無色透明であり溶剤が除去された後の空隙のサイズは100nm以下である。最終的に、エポキシ樹脂は加熱により硬化するため空隙は独立気泡となるため、吸水等の問題もない。空隙となる気泡の含有率としては体積で5から40%で作製される。ここで、ゲルとは三次元網目が多量の溶媒を含んだ状態を言い、水を含むゲルをハイドロゲル、有機溶媒を含むゲルをオルガノゲル、気体を含むゲルをエアロゲルという。また、化学結合(共有結合)によるゲルを化学ゲル、物理的な架橋(非共有結合)によるゲルを物理ゲルという。本発明では、物理的な架橋によるゲルで多量の溶剤を含んだオルガノゲルを利用している。本発明では、シリカ微粒子,有機樹脂,有機溶剤で形成された物理ゲル化状態のオルガノゲルから有機溶剤を除去してコンポジットの有機樹脂中に均一に気泡を形成させる。従って、中空シリカを用いる方法と異なり、気泡含有率は、有機溶剤の量と溶剤乾燥プロセスの条件により気泡量及びサイズをコントロールできる。また、できる気泡も均一に分散されたシリカ微粒子間の有機樹脂中に形成されるため、直径10nmから100nmのサイズで均一に存在する。
【0014】
本発明では、有機溶剤に1次粒子レベルで分散した疎水牲オルガノシリカゾルを用いることが有効であるが、界面活性剤等での表面処理を施し有機溶剤への分散性を高めたシリカ微粒子でも同じ効果が得られる。また、有機樹脂は、エポキシ樹脂,ポリイミド樹脂,シアネート樹脂,フェノール樹脂,メタクリレート樹脂,不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂全般に適用可能であるが、溶剤に可溶なポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂でも適用可能である。特に、エポキシ樹脂に適用した場合、その効果が顕著である。
【0015】
シリカ微粒子の平均粒径は5nmから200nmの範囲が適用可能であるが、特に、5nmから100nmの範囲が高い効果を示す。溶剤としては、テトラヒドロフラン,アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン、2−メトキシエタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が使用できるが、エポキシ樹脂が硬化する前にコンポジット樹脂から除去できる沸点の低い方が好ましい。
【0016】
シリカ微粒子の配合量は特に限定はされないが、各種特性のバランスを考慮した場合、5wt%から30wt%の範囲が好ましい。例えば、特開平6−316407号公報等に記載のように、アルキルシリケートをアルカリ触媒で加水分解することにより得られるシリカゾルの製造方法で粒子径3nmから100nmの範囲で粒子径のそろった球状シリカが得られる。本発明では、このようにして得られたシリカ微粒子が適用できる。当然のことながら、他の製造方法で得られたシリカ微粒子でも、同じ効果が得られる。このようにして得られた親水性コロイド状シリカをジシロキサン化合物あるいはモノアルコキシシラン化合物等のシリル化剤で疎水化処理されたシリカ微粒子を用いる方法が好ましい。勿論、シリカ微粒子の表面をシラン系カップリング剤により疎水化して有機溶剤への分散性を高める方法あるいは界面活性剤により分散性を高める方法で表面処理したシリカ微粒子を適用することも可能である。
【0017】
ナノコンポジット材料の作製手順としては、まずシリカ微粒子を分散したメチルエチルケトンのような低沸点溶剤にエポキシ樹脂,硬化剤、必要に応じて硬化促進剤を溶解させたワニスを用意する。次に、このワニスを基板上に均一に塗布する。この塗布基板を密閉容器中に保管すると数時間から2,3日で塗布膜が物理ゲルとなり固化する。この物理ゲルを加熱処理することにより溶剤を除去する。この加熱処理で塗布膜は溶剤が除去される分、軽くなるが、形状及び体積はほとんど変化なく、且つ透明性は増す、即ち屈折率が小さくなる。溶剤除去のための加熱処理は、窒素のような不活性ガス雰囲気中、あるいは減圧雰囲気下で行うことが好ましい。この後、用途にもよるが窒素等の不活性ガス雰囲気下で、加熱してコンポジット樹脂を硬化させる。光硬化の場合は、UV露光により硬化させた後、加熱による後硬化を実施するが、溶媒除去のための加熱処理は露光前に行っても、露光後に行ってもかまわない。
【0018】
以下、本発明の低誘電率低屈折率ナノコンポジット材料について具体的な実施例で説明する。
【0019】
(実施例1)
脂環式エポキシ樹脂(セロキサイド2021,ダイセル化学工業製,エポキシ当量176),3or4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸(HN−5500,日立化成工業製)をモル比1:1.5 の割合で混合した。さらに、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾールCN(2E4MZ−CN,四国化成製)0.2 重量部(エポキシ,酸無水物に対し)を加え液状樹脂混合物を作製した。この液状樹脂混合物に、平均粒径12nmの疎水性シリカ30wt%が分散されたメチルエチルケトンスラリ(日産化学MEK−ST)を混合してシリカフィラ分散ワニスを調整した。硬化剤,硬化促進剤を含むエポキシ樹脂分85重量部に対してMEK−STを50重量部の割合で調整した。このワニスを、電極を形成したガラス板の上にドクターブレードで塗布し厚さ10μmの塗布膜とした。この後、密閉ガラス容器中で24時間保管して物理ゲル状の塗布膜を得た。この物理ゲル状の塗布膜を90℃で減圧下、30分加熱して塗布膜中に残存するメチルエチルケトンを乾燥除去する。次に、この試料を130℃で1時間、170℃で2時間加熱して硬化させた。物理ゲル化した塗布膜断面と加熱硬化後の試料断面の高分解能SEM写真(日立の走査型電子顕微鏡S−900で観察)を図1に示す。物理ゲルではシリカが均一に分散しており樹脂と溶剤を抱え込んだネットワーク構造を形成しているように観察される。これを熱処理すると30nmから50nmの空隙が全面に観察される。これは、シリカ微粒子ネットワークを保持したまま溶剤が除去され、樹脂が硬化するため溶剤の除去部が極めて小さい空隙として残る構造になると推定される。硬化後、無色透明,低屈折率の塗布膜となる。なお、得られたナノポーラス構造硬化膜の空隙率は25vol% であった。この試料の表面に、アルミニウムの蒸着により厚さ約500Å,1cm2 の円形の電極を形成して誘電特性の評価用試料とした。
【0020】
LFインピーダンスアナライザ(ヒューレットパッカード杜製4192F型)を用いて周波数1MHzの誘電率を測定した結果、誘電率は2.5 を示した。また、同時に作製したフィルムの屈折率は、測定波長633nmで1.39 であった。
【0021】
(実施例2)
脂環式エポキシ樹脂(セロキサイド2021,ダイセル化学工業製,エポキシ当量176)90重量部と光重合開始剤(アデカオプトマSP−170)を0.9 重量部からなる液状樹脂組成物に、平均粒径12nmの疎水性シリカ30wt%が分散されたメチルエチルケトンスラリ(日産化学MEK−ST)33重量部を混合してシリカフィラ分散ワニスを調整した。このワニスを、電極を形成したガラス板の上にドクターブレードで塗布し厚さ
10μmの塗布膜とした。この後、密閉ガラス容器中で冷暗所に24時間保管して物理ゲル状の塗布膜を得た。この物理ゲル状の塗布膜を90℃で減圧下、30分加熱して塗布膜中に残存するメチルエチルケトンを乾燥除去する。この後、UV露光(365nm,4J/cm2 )により塗布膜を硬化し、さらに100℃,1時間と170℃,1時間の加熱により硬化膜を得た。硬化後、無色透明、低屈折率の塗布膜となる。なお、得られたナノポーラス構造硬化膜の空隙率は15vol% であった。この試料の表面に、アルミニウムの蒸着により厚さ約500Å,1cm2の円形の電極を形成して誘電特性の評価用試料とした。
【0022】
LFインピーダンスアナライザ(ヒューレットパッカード杜製4192F型)を用いて周波数1MHzの誘電率を測定した結果、誘電率は2.6 を示した。また、同時に作製したフィルムの屈折率は、測定波長633nmで1.42であった。
【0023】
(実施例3)
ビスフェノール型エポキシ樹脂(エピコート828,ジャパンエポキシレジン,エポキシ当量189),3or4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸(HN−5500,日立化成工業製)をモル比1:2の割合で混合した。さらに、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾールCN(2E4MZ−CN,四国化成製)を0.2 重量都(エポキシ,酸無水物に対し)を加え液状樹脂混合物を作製した。この液状樹脂混合物に、平均粒径25nmの疎水性球状シリカ30wt%が分散されたメチルエチルケトンスラリを混合してシリカフィラ分散ワニスを調整した。硬化剤、硬化促進剤を含むエポキシ樹脂分90重量部に対して球状シリカが分散されたトルエンスラリを33重量部の割合で均一に混合した。このワニスを、電極を形成したガラス板の上にドクターブレードで塗布し厚さ20
μmの塗布膜とした。この後、密閉ガラス容器中で48時間保管して物理ゲル状の塗布膜を得た。この物理ゲル状の塗布膜を90℃で減圧下、30分加熱して塗布膜中に残存するメチルエチルケトンを乾燥除去した。次に、窒素ガス雰囲気下、このサンプルを130℃で1時間、170℃で2時間加熱して硬化させた。硬化後、無色透明,低屈折率の塗布膜となる。なお、得られたナノポーラス構造硬化膜の空隙率は10vol% であった。この試料の表面に、アルミニウムの蒸着により厚さ約500Å,1cm2 の円形の電極を形成して誘電特性の評価用試料とした。
【0024】
LFインピーダンスアナライザ(ヒューレットパッカード杜製4192F型)を用いて周波数1MHzの誘電率を測定した結果、誘電率は3を示した。また、同時に作製したフィルムの屈折率は、測定波長633nmで1.49 であった。
【0025】
(実施例4)
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エピコート152,ジャパンエポキシレジン製,エポキシ当量175),3or4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸(HN−5500日立化成工業製)をモル比1:1.5 の割合で混合した。さらに、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾールCN(2E4MZ−CN,四国化成製)を0.2 重量部(エポキシ,酸無水物に対し)を加え液状樹脂混合物を作製した。この液状樹脂混合物に、平均粒径12nmの疎水性シリカ30wt%が分散されたメチルエチルケトンスラリ
(日産化学MEK−ST)を混合してシリカフィラ分散ワニスを調整した。硬化剤,硬化促進剤を含むエポキシ樹脂分90重量部に対してMEK−STを33重量部の割合で調整した。このワニスを、電極を形成したガラス板の上にドクターブレードで塗布し厚さ10μmの塗布膜とした。この後、密閉ガラス容器中で24時間保管して物理ゲル状の塗布膜を得た。さらに、この物理ゲル状の塗布膜を90℃で減圧下、30分加熱して塗布膜中に残存するメチルエチルケトンを乾燥除去した。次に、このサンプルを130℃で1時間、170℃で2時間加熱して硬化させた。硬化後、無色透明,低屈折率の塗布膜となる。なお、得られたナノポーラス構造硬化膜の空隙率は20vol%であった。この試料の表面に、アルミニウムの蒸着により厚さ約500Å,1cm2の円形の電極を形成して誘電特性の評価用試料とした。
【0026】
LFインピーダンスアナライザ(ヒューレットパッカード杜製4192F型)を用いて周波数1MHzの誘電率を測定した結果、誘電率は2.7 を示した。また、同時に作製したフィルムの屈折率は、測定波長633nmで1.49であった。
【0027】
(比較例1)
脂環式エポキシ樹脂(セロキサイド2021,ダイセル化学工業製,エポキシ当量176),3or4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸(HN−5500,日立化成工業製)をモル比1:1.5 の割合で混合した。さらに、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾールCN(2E4MZ−CN,四国化成製)を0.2 重量部(エポキシ,酸無水物に対し)を加え液状樹脂混合物を作製した。このワニスを、電極を形成したガラス板の上にドクターブレードで塗布し厚さ10μmの塗布膜とした。次に、この試料を130℃で1時間、170℃で2時間加熱して硬化させた。この試料の表面に、アルミニウムの蒸着により厚さ約500Å,1cm2 の円形の電極を形成して誘電特性の評価用試料とした。
【0028】
LFインピーダンスアナライザ(ヒューレットパッカード杜製4192F型)を用いて周波数1MHzの誘電率を測定した結果、誘電率は3.3 を示した。また、同時に作製したフィルムの屈折率は、測定波長633nmで1.51であった。
【0029】
(比較例2)
実施例1の密閉ガラス容器中で24時間保管して物理ゲル状の塗布膜を得る工程を省略した以外は、実施例1と全く同様にして試料を作製した。誘電率は3.4、屈折率は1.48を示した。
【0030】
比較例1のマトリクスレジンと比較して、屈折率は、わずかに低減したが1MHzでの誘電率は少し高くなる結果となった。
【0031】
(比較例3)
脂環式エポキシ樹脂(セロキサイド2021,ダイセル化学工業製,エポキシ当量176)90重量部と光重合開始剤(アデカオプトマSP−170)を0.9 重量部からなる液状樹脂組成物を調整した。このワニスを、電極を形成したガラス板の上にドクターブレードで塗布し厚さ10μmの塗布膜とした。この後、UV露光(365mm,4J/cm2)により塗布膜を硬化し、さらに120℃、2時間と180℃、2時間の加熱により無色透明の硬化膜を得た。この試料の表面に、アルミニウムの蒸着により厚さ約500Å,1cm2 の円形の電極を形成して誘電特性の評価用試料とした。
【0032】
LFインピーダンスアナライザ(ヒューレットパッカード社製4192F型)を用いて周波数1MHzの誘電率を測定した結果、誘電率は3.1 を示した。また、同時に作製したフィルムの屈折率は、測定波長633nmで1.49であった。
【0033】
(比較例4)
実施例2の密閉ガラス容器中で24時間保管して物理ゲル状の塗布膜を得る工程を省略した以外は、実施例2と全く同様にして試料を作製した。誘電率は3.3、屈折率は1.47を示した。比較例3のマトリクスレジンと比較して、屈折率は、わずかに低減したが1
MHzでの誘電率は少し高くなる結果となった。
【0034】
(比較例5)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコ一ト828,ジャパンエポキシレジン,エポキシ当量189),3or4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸(HN−5500,日立化成工業製)をモル比1:2の割合で混合した。さらに、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾールCN(2E4MZ−CN,四国化成製)を0.2 重量部(エポキシ,酸無水物に対し)を加え液状樹脂混合物を作製した。このワニスを、電極を形成したガラス板の上にドクターブレードで塗布し厚さ20μmの塗布膜とした。次に、窒素ガス雰囲気下、このサンプルを130℃で1時間、170℃で2時間加熱して硬化させ、無色透明の塗布膜を得た。この試料の表面に、アルミニウムの蒸着により厚さ約500Å,1cm2の円形の電極を形成して誘電特性の評価用試料とした。
【0035】
LFインピーダンスアナライザ(ヒューレットパッカード杜製4192F型)を用いて周波数1MHzの誘電率を測定した緒果、誘電率は3.4 を示した。また、同時に作製したフィルムの屈折率は、測定波長633nmで1.54であった。
【0036】
(比較例6)
実施例3の密閉ガラス容器中で48時間保管して物理ゲル状の塗布膜を得る工程を省略した以外は、実施例3と全く同様にして試料を作製した。誘電率は3.5、屈折率は1.52を示した。比較例5のマトリクスレジンと比較して、屈折率は、わずかに低減したが1
MHzでの誘電率は少し高くなる結果となった。
【0037】
(比較例7)
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エピコート152,ジャパンエポキシレジン製,エポキシ当量175),3or4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸(HN−5500日立化成工業製)をモル比1:1.5 の割合で混合した。さらに、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾールCN(2E4MZ−CN,四国化成製)を0.2 重量部(エポキシ,酸無水物に対し)を加え液状樹脂混合物を作製した。このワニスを、電極を形成したガラス板の上にドクターブレードで塗布し厚さ10μmの塗布膜とした。次に、このサンプルを130℃で1時間、170℃で2時間加熱して硬化させ、無色透明の塗布膜を得た。この試料の表面に、アルミニウムの蒸着により厚さ約500Å,1cm2 の円形の電極を形成して誘電特性の評価用試料とした。
【0038】
LFインピーダンスアナライザ(ヒューレットパッカード杜製4192F型)を用いて周波数1MHzの誘電率を測定した結果、誘電率は3.4 を示した。また、同時に作製したフィルムの屈折率は、測定波長633mで1.59であった。
【0039】
(比較例8)
実施例4の密閉ガラス容器中で24時間保管して物理ゲル状の塗布膜を得る工程を省略した以外は、実施例4と全く同様にして試料を作製した。誘電率は3.5、屈折率は1.57を示した。比較例7のマトリクスレジンと比較して屈折率はわずかに低減したが1MHzでの誘電率は少し高くなる結果となった。
【0040】
以上の実施例及び比較例の条件と結果をまとめて表1,2に示す。比較例1,3,5,7は、実施例1〜4のマトリクス樹脂の評価結果である。実施例ではいずれも、大幅な低誘電率化,低屈折率化が実現している。また、比較例2,4,6,8は、実施例1〜4の、物理ゲル化のプロセスを削除した場合であるが、ポーラス構造が実現しないため、顕著な低誘電率化,低屈折率化は認められなかった。次に、多層配線板,反射防止膜,光導波路への実施例を用いてその効果を説明する。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
(実施例5)
図2に示す工程で本発明のナノコンポジット材を絶縁層に適用した多層配線板を作製した。以下、詳細を説明する。両面に厚さ12μmの銅配線1が形成された厚さ0.2mm のエポキシ積層板(FR−5)2の上下に実施例2で作製した疎水性シリカ配合のエポキシワニスを厚さ25μmの物理ゲル化した塗布膜3を形成した。この物理ゲル状の塗布膜を90℃で減圧下、加熱して塗布膜中に残存するメチルエチルケトンを乾燥除去する。この後、UV露光波長(365nm,4J)により塗布膜を硬化し、さらに120℃、2時問と170℃、2時間の加熱により硬化膜を得た。この後、レーザーによりブラインドビア4を形成した後、無電解銅めっきと電解銅めっきにより厚さ18μmの銅5を全面に形成させた。次に、外層の配線となる部分をレジストで覆い、配線部以外の銅をエッチングにより除去して外層の配線とビアの導通部,パッド部6を形成した。このプロセスで、上下2層に誘電率2.6の低誘電率絶縁層7を有する4層配線の多層配線板8を得た。
【0044】
(実施例6)
脂環式エポキシ樹脂(セロキサイド2021,ダイセル化学工業製,エポキシ当量176)90重量部と光重合開始剤(アデカオプトマSP−170)を0.9 重量部からなる液状樹脂組成物に、平均粒径12nmの疎水性シリカ30wt%が分散されたメチルエチルケトンスラリ(日産化学MEK−ST)33重量部を混合してシリカフィラ分散ワニスを調整した。作製した上記ワニスをBK7ガラス(屈折率1.52,波長633nm)基板上にスプレーコートにより塗布し、厚さ550nmの塗布膜とした。この後、密閉ガラス容器中で冷暗所に6時間保管して物理ゲル状の塗布膜を得た。この物理ゲル状の塗布膜を70℃で減圧下、30分加熱して塗布膜中に残存するメチルエチルケトンを乾燥・除去する。この後、UV露光(365nm,4J/cm2)により塗布膜を硬化し、さらに100℃、
1時間と180℃、2時間の加熱により透明な硬化膜を得た。作製した基板に対して垂直方向からHe−Neレーザー光(波長633mm)を入射し、反射率を測定したところ反射率は1.9%と大幅に低減し、作製した低屈折率層は著しい反射防止効果を示した。
【0045】
(比較例9)
BK7ガラス基板に対して垂直方向からHe−Neレーザー光(波長633nm)を入射し、反射率を測定したところ反射率は4.5%であった。
【0046】
(比較例10)
脂環式エポキシ樹脂(セロキサイド2021,ダイセル化学工業製,エポキシ当量176)90重量部と光重合開始剤(アデカオプトマSP−170)を0.9 重量部からなる液状樹脂組成物を調整した。このワニスを、電極を形成したガラス板の上にスプレーコートで塗布,乾燥後、UV露光(365m,4J/cm2)により塗布膜を硬化し、さらに100℃、1時間と180℃、2時間の加熱により厚さ550nmの無色透明の硬化膜を得た。作製した基板に対して垂直方向からHe−Neレーザー光(波長633m)を入射し、反射率を測定したところ反射率は4.0%であった。
【0047】
(実施例7)
実施例6と同様のプロセスにより、BK7ガラス基板上に厚さ100μmの低屈折率のアンダークラッドを形成した。但し、塗布にドクターブレード法を用いた。その後、比較例10で用いたワニスを上記アンダークラッド上に、ドクターブレードを用いて塗布し、比較例10と同様のプロセスにより厚さ40μmのコアを形成した。再度、実施例6と同様のプロセスにより、コア上に低屈折率のオーバークラッドを形成し、スラブ型の光導波路を形成した。光導波路単面よりHe−Neレーザー光を入射したところ、導波光が確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】物理ゲル化した塗布膜断面と加熱硬化後の試料断面の高分解能SEM写真。
【図2】多層配線板の作製工程を示す図。
【符号の説明】
【0049】
1…銅配線、2…エポキシ積層板、3…塗布膜、4…ブラインドビア、5…銅、6…パッド部、7…低誘電率絶縁層、8…多層配線板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機樹脂中にシリカ微粒子が分散した低誘電率低屈折率シリカ樹脂ナノコンポジット材料であって、前記有機樹脂が直径100nm以下の気泡を有することを特徴とする低誘電率低屈折率シリカ樹脂ナノコンポジット材料。
【請求項2】
請求項1において、前記気泡の含有率が体積で5〜40%であることを特徴とする低誘電率低屈折率シリカ樹脂ナノコンポジット材料。
【請求項3】
請求項1において、前記シリカ微粒子の平均粒径が5nm〜100nmであることを特徴とする低誘電率低屈折率シリカ樹脂ナノコンポジット材料。
【請求項4】
シリカ微粒子,有機樹脂,有機溶剤から形成される物理ゲルを加熱することで得られた請求項1に記載の低誘電率低屈折率シリカ樹脂ナノコンポジット材料。
【請求項5】
請求項4において、前記シリカ微粒子が有機溶剤に一次粒子レベルで分散可能な疎水性シリカであることを特徴とする低誘電率低屈折率シリカ樹脂ナノコンポジット材料。
【請求項6】
シリカ微粒子を分散した有機樹脂と溶剤からなる溶液を、室温で放置して物理ゲルとした後、加熱により溶剤を除去し、前記シリカ微粒子が分散した前記有機樹脂中に直径100nm以下の気泡を形成することを特徴とする低誘電率低屈折率シリカ樹脂ナノコンポジット材料の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、前記溶液中のシリカ微粒子の配合量が5wt%〜30wt%であることを特徴とする低誘電率低屈折率シリカ樹脂ナノコンポジット材料の製造方法。
【請求項8】
絶縁層と配線層とを有する配線基板において、前記絶縁層に請求項1に記載の低誘電率シリカ樹脂ナノコンポジット材料を用いたことを特徴とする配線基板。
【請求項9】
請求項1に記載の低屈折率シリカ樹脂ナノコンポジット材料を基材に塗布した反射防止膜。
【請求項10】
請求項1に記載の低屈折率シリカ樹脂ナノコンポジット材料をクラッド材に用いたことを特徴とする光導波路。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−308544(P2007−308544A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137217(P2006−137217)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】