説明

低酸素応答を制御する物質のスクリーニング方法及び低酸素応答を制御する医薬組成物

【課題】低酸素状態が関連する疾患、例えば癌や虚血性疾患において、DEC1が関与する低酸素応答を解析し、それらの疾患の予防又は治療用の医薬組成物を提供する。
【解決手段】本発明のDEC1介在性物質スクリーニング方法、又はDEC1非介在性物質スクリーニング方法により、低酸素応答の関連する疾患の治療又は予防に効果のある物質を容易にスクリーニングすることができる。またスクリーニングされた物質、又はDEC1の機能を促進又は抑制する物質を含む医薬組成物により、癌や虚血性疾患の治療又は予防が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低酸素応答を制御する物質のスクリーニング方法及び低酸素応答を制御する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの細胞にとって低酸素状態は異常な状態であるが、多くの疾患において、組織や細胞が低酸素状態に曝されることがある。例えば、虚血性疾患である脳卒中、脳梗塞、虚血性心筋症、心筋梗塞症、虚血性心不全、閉塞性動脈硬化症等において、組織は低酸素状態におかれる。また、固形腫瘍の内部は血管の形成が不十分であり、低酸素状態にあることが知られている。特に悪性度の高い腫瘍組織では低酸素の程度が高く、それらの腫瘍細胞は、低酸素に対して抵抗性を示す性質を獲得している。
【0003】
このような低酸素状態における生体内の細胞の分子レベルの解析により、例えば、エリスロポエチン(Epo)や血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)、carbonic anhydrase IX(以下、CA9と称する)などの、低酸素状態で活性化される多くの低酸素応答遺伝子やタンパク質が発見されてきており、これらの遺伝子やタンパク質の発現が、低酸素状態の関連する前記の疾患の病態に関連すると考えられている。更 一方、時計遺伝子の一つとして発見されたDEC1も、低酸素状態で誘導されることが報告されている(非特許文献1)。DEC1は、bHLH転写因子であると考えられており、前記の低酸素応答遺伝子やタンパク質の転写に関与している可能性が考えられる。しかしながら、DEC1と他の低酸素応答遺伝子やタンパク質との関連は、全く知られておらず、その他の低酸素応答を制御する遺伝子との関連もわかっていなかった。
【非特許文献1】「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biologicl Chmistry)」(米国)2001年、第276巻、p.15306−15
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、低酸素状態においてDEC1遺伝子が、低酸素応答遺伝子をどのように制御しているかについて鋭意研究した結果、DEC1遺伝子のノックアウトマウス、又はDEC1ノックアウト細胞を解析することにより、転写因子DEC1が、多くの低酸素応答遺伝子の発現を促進していることを見いだし、また、驚くべきことに、転写因子DEC1が、多くの低酸素応答遺伝子の発現を抑制していることを解明した。
また、本発明者は、DEC1ノックアウトマウス、又はDEC1ノックアウト細胞を用いることにより、DEC1が制御する分子をスクリーニングすることが可能であり、更に、DEC1介在性、又はDEC1非介在性の低酸素応答を制御する物質のスクリーニングが可能であることを見出した。そして、DEC1に作用する化合物、例えば、DEC1のmRNAを標的とするsiRNAにより、DEC1のmRNAの発現を特異的に抑制し、このような化合物を含む医薬組成物によって、癌及び虚血性疾患の治療又は予防をすることができることを見出した。
本発明はこうした知見に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明は、DEC1ノックアウト動物、又はDEC1ノックアウト細胞を用いることを特徴とする、DEC1が制御する分子のスクリーニング方法に関する。
本発明によるDEC1が制御する分子のスクリーニング方法の好ましい態様においては、(a)DEC1ノックアウト細胞及びDEC1発現細胞を培養する工程、(b)培養したDEC1ノックアウトマウス細胞及びDEC1発現細胞のタンパク質又はそのmRNAの発現を測定する工程、及び(c)工程(b)で測定したDEC1ノックアウトマウス細胞及びDEC1発現細胞のタンパク質又はそのmRNAの発現量を比較し、DEC1が制御するタンパク質を判定する工程、を含むものである。
本発明によるDEC1が制御する分子のスクリーニング方法の別の好ましい態様においては、前記工程(a)を低酸素下、又は放射線照射下で行う。
【0006】
また、本発明はDEC1介在性の低酸素応答を促進又は抑制する物質のスクリーニング方法であって、(a)低酸素下でDEC1発現細胞及びDEC1ノックアウト細胞に、被検物質を接触させる工程、(b)前記DEC1発現細胞及びDEC1ノックアウト細胞における、DEC1が制御するタンパク質又はそのmRNAの発現を測定する工程、及び(c)前記タンパク質又はそのmRNAの発現量を比較し、被検物質の接触による発現量の変化がDEC1ノックアウト細胞より、DEC1発現細胞において大きい被検物質を判定する工程、を含む前記スクリーニング方法にも関する。
本発明によるDEC1介在性の低酸素応答を促進又は抑制する物質のスクリーニング方法の好ましい態様においては、前記DEC1が制御するタンパク質が、CA9、Slc2a1、Vegfa、Eno2、Lrp2bp、Ndrl、Hif1a及びHif2aからなる群から選択されたタンパク質である。
また、本発明はDEC1非介在性の低酸素応答を促進又は抑制する物質のスクリーニング方法であって、(a)低酸素下でDEC1ノックアウト細胞に被検物質を接触させる工程、(b)前記DEC1ノックアウト細胞における、低酸素応答タンパク質又はそのmRNAの発現を測定する工程、及び(c)被検物質の接触による前記低酸素応答タンパク質又はそのmRNAの発現量の変化より、低酸素応答を促進又は抑制する被検物質を判定する工程、を含む前記スクリーニング方法にも関する。
本発明によるDEC1非介在性の低酸素応答を促進又は抑制する物質のスクリーニング方法の好ましい態様においては、前記低酸素応答タンパク質が、CA9、Slc2a1、Vegfa、Eno2、Lrp2bp、Ndrl、Hif1a及びHif2aからなる群から選択されたタンパク質である。
【0007】
更に、本発明はDDEC1の発現を抑制する化合物を有効成分として含むことを特徴とする、癌の予防又は治療用、あるいは癌の転移抑制用の医薬組成物にも関する。
本発明による医薬組成物の好ましい態様においては、前記化合物がDEC1のmRNAを、RNA干渉を介して開裂することのできるsiRNAである。
本発明による医薬組成物の別の好ましい態様においては、前記RNA干渉の標的mRNA領域が、配列番号2で表される塩基配列における第405番目〜第425番目の塩基配列、又は第455番目〜第475番目の塩基配列からなるmRNAであり、前記siRNAの二重鎖RNA部分の長さが15〜40ヌクレオチドであり、特には、前記siRNAの二重鎖RNA部分のアンチセンスRNA鎖が、配列番号4又は配列番号6で表される塩基配列からなるRNAである。
本発明による医薬組成物の別の好ましい態様においては、前記siRNAの二重鎖RNA部分において、(a)二重鎖RNA部分を形成する2つのRNA鎖が、ヘアピンループを形成することのできるRNA部分によって結合しているshRNA、(b)二重鎖RNA部分の末端が平滑である二本鎖ヌクレオチド、又は(c)二重鎖RNA部分を形成する2つのRNA鎖の一方又は両方の3‘末端に、デオキシリボヌクレオチド及び/又はリボヌクレオチドが結合し、突出末端を形成している二本鎖オリゴヌクレオチド、
である。
【0008】
また、本発明はDEC1の発現を促進する化合物を有効成分として含むことを特徴とする、虚血性疾患の治療用医薬組成物にも関する。
本発明による虚血性疾患の治療用医薬組成物の好ましい態様においては、前記虚血性疾患が、貧血、脳卒中、脳梗塞、虚血性心筋症、心筋梗塞症、虚血性心不全、閉塞性動脈硬化症である。
本明細書において「低酸素応答」とは、通常の大気の酸素濃度21%より低い状態になった場合に、生体や細胞に起こる応答、例えば、遺伝子及び/又はタンパク質の発現の促進又は抑制を意味する。また、「低酸素応答遺伝子」及び「低酸素応答タンパク質」とは、通常の大気の酸素濃度21%より低い状態になった場合に、生体や細胞において、発現が促進又は抑制される遺伝子又はタンパク質を意味する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、DEC1が制御している遺伝子及び/又はタンパク質をスクリーニングすることが可能であり、更に、DEC1介在性又はDEC1非介在性の低酸素応答を促進又は抑制する物質を、容易にスクリーニングすることが可能である。
また、本発明によれば、bHLH転写因子であるDEC1の発現を制御することにより、低酸素応答遺伝子の発現を抑制、又は促進することが可能であり、例えば、DEC1のmRNAの発現を抑制するsiRNAを含む本発明の医薬組成物により、低酸素応答に関連する疾患、癌及び虚血性疾患の治療及び予防を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
1.DEC1が制御する分子のスクリーニング方法
本発明のDEC1が制御する分子のスクリーニング方法において、DEC1ノックアウト動物、又はDEC1ノックアウト細胞を用いることが可能である。
【0011】
DEC1ノックアウト動物は、ブタ、ヒツジ、又はげっ歯類などの非ヒト動物で作製することが可能であるが、好ましくは、マウス又はラットである。ノックアウトマウスの作成法は、例えば村松正實・山元雅編、実験医学別冊 新遺伝子工学ハンドブック改定第3版、羊土社、1999年9月10日発行、p.239−245に記載されている。
例えば、以下のように、DEC1ノックアウトマウスを作成することができる。ターゲットベクターを作製するために、DEC1遺伝子の一部又は全部を、例えばネオマイシン耐性遺伝子等マーカー遺伝子で置換し、3’末端側にジフテリアトキシンAフラグメント(DT−A)遺伝子等を導入する。この作製されたターゲティングベクターを制限酵素で切断し、線状化した後に、エレクトロポレーション法によって受精卵やES細胞に導入する。この受精卵又はES細胞をG418等の抗生物質を用いて培養し、相同的組換えを起こした細胞を選択する。選択した組換えES細胞をマイクロインジェクション法等によりマウスの胚盤胞内に導入し、仮親の子宮に戻すことによってキメラマウスを得ることができる。このキメラマウスを交配することにより、DEC1ノックアウトマウスを得ることができる。DEC1遺伝子がノックアウトされているかどうかは、例えば、得られたマウスの血清細胞からRNAを単離してノザンブロット法等により調べるか、又はマウスのDEC1タンパク質の発現をウエスタンブロット法等により調べることにより判定することができる。
【0012】
ノックアウト細胞は、例えばヒューらの報告に従って作成することが可能である(Hu, Y.ら (1999) Science 284:316-320; Li, Q.ら (1999) Genes Dev 13:1322-1328; Takeda, K.ら, Science 284:313-316;Gene targeting-a practical approach (2000) 第2編, Oxford University Press)。具体的には、DEC1ノックアウト細胞は、前記のDEC1ノックアウトマウスから作製することが可能であり、DEC1ノックアウトマウス組織などから細胞を単離し、培養細胞として樹立することができる。例えば、DEC1ノックアウトマウスの14.5日胚から線維芽細胞を単離し、DEC1ノックアウト細胞として用いることが可能である。また、その他の細胞として、株化細胞のDEC1遺伝子サイレンシングによりノックダウン細胞を得ることもできる。
【0013】
本発明のDEC1が制御する分子のスクリーニング方法(以下、DEC1制御分子スクリーニング方法と称することがある)の好ましい態様においては、
(a)DEC1ノックアウト細胞及びDEC1発現細胞を培養する工程、
(b)培養したDEC1ノックアウトマウス細胞及びDEC1発現細胞のタンパク質又はそのmRNAの発現を測定する工程、及び
(c)工程(b)で測定したDEC1ノックアウトマウス細胞及びDEC1発現細胞のタンパク質又はそのmRNAの発現量を比較し、DEC1が制御するタンパク質を判定する工程を含む。
【0014】
工程(a)で用いるこことのできるDEC1発現細胞は、正常なDEC1の遺伝子を有している細胞であれば、特に限定されるものではないが、DEC1の発現の有無を除いては、前記DEC1ノックアウト細胞と遺伝的な背景が同じものが好ましい。本発明のスクリーニング方法において、DEC1以外の要因を除くことができるからである。例えば、DEC1ノックアウト細胞として、DEC1ノックアウトマウスの14.5日胚から線維芽細胞を用いる場合は、DEC1ノックアウトマウスと同じ系統の野生型マウスの14.5日胚から作製した線維芽細胞を用いることが好ましい。また、株化細胞のDEC1遺伝子サイレンシングにより得られたDEC1ノックアウト細胞を用いる場合には、DEC1遺伝子サイレンシングされていない親株の細胞を用いることが好ましい。
【0015】
工程(b)において測定されるDEC1ノックアウトマウス細胞及びDEC1発現細胞のタンパク質又はそのmRNAとしては、任意のタンパク質又はそのmRNAを測定することができる。特定のタンパク質又はそのmRNAを測定することによって、DEC1の関与する分子を決定することも可能であるし、網羅的にタンパク質又はそのmRNAを測定することによって、DEC1の関与する分子を決定することも可能である。
【0016】
タンパク質の測定方法は、公知の方法であれば特に限定されるものではないが、網羅的なタンパク質の測定方法としては、例えば、プロテインチップ、プロテインアレイなどの方法を挙げることができる。また、特定のタンパク質の発現を測定する方法としては、ウエスタンブロット法ドットブロット法、スロットブロット法、又は固相酵素免疫定量法(ELISA法)を用いることも可能である。
【0017】
また、mRNAの測定法としては、その発現量を測定できる測定法であれば、特に限定されるものではなく、当業者に公知の方法を用いることが可能である。具体的には、mRNAを直接測定するノザンブロット分析、ドットブロット法、及びRNAseプロテクション法並びにmRNAからcDNAを合成し分析するRT−PCR法(例えば、リアルタイムPCR法)、DNAマイクロアレイ法、DNAチップ法、ノザンブロット分析法を挙げることができる。更に、サブトラクション法、ディファレンシャル・ディスプレイ法、ディファレンシャル・ハイブリダイゼーション法、及びクロスハイブリダイゼーション法等をmRNAの発現の解析に用いることも可能であるが、最も好ましくは、RT−PCR法、DNAマイクロアレイ法、及びDNAチップ法である。
【0018】
以下に、mRNAの発現解析の方法として、RT−PCR法を例として説明する。まず、mRNAの解析のためには、RNAの抽出を行う。mRNAの抽出は、公知の方法を用いることが可能であり、例えば、塩酸グアニジンフェノールクロロホルム(AGPC)法やAGPC変法、或いはRNAが結合するカラムを用いた市販のRNA抽出用キットなどを用いることが可能である。また、市販のRNA抽出キットとしては、TRIZOL Reagent(Invitrogen社)、ISOGEN(ニッポンジーン社)などを用いることもできる。
【0019】
抽出したmRNAはRT−PCR法で測定することが可能である。RT−PCR法は、cDNA合成後に、PCRを行ってもよいが、リアルタイムPCR(例えば、TaqMan PCR法、及びサイバーグリーン法)で、mRNAから直接測定することも可能であり、微量なDNAを高感度かつ定量的に検出できるという点で好ましい。目的のタンパク質をコードする遺伝子のmRNAを逆転写し、これらの遺伝子を特異的に増幅するプライマーを用い、PCRにより増幅する。増幅産物は、電気泳動等により分離し、定量することができる。また、リアルタイムPCR法、例えば、TaqMan PCR法を用いる場合には、5’端を蛍光色素(レポーター)で、3’端を蛍光色素(クエンチャー)で標識した、目的遺伝子の特定領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブを用いて検出を行う。前記プローブは、通常の状態ではクエンチャーによってレポーターの蛍光が抑制されている。この蛍光プローブを目的遺伝子に完全にハイブリダイズさせた状態で、その外側に設定したプライマーによってTaq DNAポリメラーゼを用いてPCRを行う。TaqDNAポリメラーゼによる伸長反応が進むと、そのエキソヌクレアーゼ活性により蛍光プローブが5’端から加水分解され、レポーター色素が遊離し、蛍光を発する。リアルタイムPCR法は、この蛍光強度をリアルタイムでモニタリングすることにより、鋳型DNAの初期量を正確に定量することができる。
【0020】
前記工程(c)では、DEC1ノックアウトマウス細胞及びDEC1発現細胞のタンパク質又はそのmRNAの発現量を比較する。DEC1ノックアウトマウス細胞における発現が、DEC1発現細胞における発現より低いタンパク質、又はそのmRNAはDEC1により、発現が促進されている分子であると考えられる。一方、DEC1ノックアウトマウス細胞における発現が、DEC1発現細胞における発現より高いタンパク質、又はそのmRNAはDEC1により、発現が抑制されている分子であると考えられる。
【0021】
本発明のDEC1が制御する分子のスクリーニング方法の好ましい態様においては、前記工程(a)を低酸素下、又は放射線の照射下で行うことができる。特には、低酸素下で培養を行うことによって、DEC1が制御する低酸素応答タンパク質及び/又は低酸素応答遺伝子をスクリーニングすることができる。低酸素状態は、大気圧の酸素濃度である21%より低ければ特に限定されないが、20〜0.01%であり、好ましくは10〜0.1%であり、より好ましくは5〜1%であり、最も好ましくは1%である。
【0022】
本発明のDEC1制御分子スクリーニング方法により、通常の酸素濃度(21%)において、DEC1によりそのmRNAの発現が促進されているタンパク質として、CA9、enolase 2(以下、Eno2と称する)、solute carrier family 2(facilitated glucose transporter)、member 1(以下、Slc2a1と称する)、LRP2 binding protein(以下、Lrp2bpと称する)、Vegfa、hypoxia-inducible factor 1, alpha subunit(以下、Hif1aと称する)を挙げることができる。また、通常の酸素濃度(21%)において、DEC1によりそのmRNAの発現が抑制されているタンパク質として、hypoxia-inducible factor 2, alpha subunit(以下、Hif2aと称する)を挙げることができる。また、通常の酸素濃度(21%)では、DEC1により、そのmRNAの発現が影響されないタンパク質としてN-myc downstream regulated-like(以下、NdrIと称する)を挙げることができる。
【0023】
本発明のDEC1制御分子スクリーニング方法により、低酸素状態(例えば、1%)において、DEC1によりそのmRNAの発現が促進されているタンパク質として、CA9、Slc2a1、Lrp2bp、Vegfa、Hif1aを挙げることができる。また、低酸素状態(例えば、1%)において、DEC1によりそのmRNAの発現が抑制されているタンパク質として、Eno2、Ndr1、及びHif2aを挙げることができる。
【0024】
2.DEC1介在性の低酸素応答を促進又は抑制する物質のスクリーニング方法
本発明のDEC1介在性の低酸素応答を促進又は抑制する物質のスクリーニング方法(以下、DEC1介在性物質スクリーニング方法と称することがある)は、前記DEC1ノックアウト動物及びDEC1の発現が正常な野生型動物を比較すること、又はDEC1ノックアウト細胞及びDEC1の発現が正常なDEC1発現細胞を比較することによって行うことができるが、操作の容易性などから、DEC1ノックアウト細胞及びDEC1の発現が正常なDEC1発現細胞を用いることが好ましい。
DEC1介在性物質スクリーニング方法は、
(a)低酸素下でDEC1発現細胞及びDEC1ノックアウト細胞に、被検物質を接触させる工程、
(b)前記DEC1発現細胞及びDEC1ノックアウト細胞における、DEC1が制御するタンパク質又はそのmRNAの発現を測定する工程、及び
(c)前記タンパク質又はそのmRNAの発現量を比較し、被検物質の接触による発現量の変化がDEC1ノックアウト細胞より、DEC1発現細胞において大きい被検物質を判定する工程を含むことができる。
【0025】
本明細書において、DEC1介在性の低酸素応答とは、DEC1の制御を介して起きる低酸素応答を意味する。一方、後述のDEC1非介在性の低酸素応答とは、DEC1の制御を介さずに起きる低酸素応答を意味する。
【0026】
前記工程(a)における低酸素下とは、DEC1制御分子スクリーニング方法における低酸素状態と同じ条件を用いることができる。前記低酸素状態で、DEC1発現細胞及びDEC1ノックアウト細胞に被検物質を接触させることができる。被検物質の接触は、細胞と被検物質が接触するものであれば特に、その方法も時間も限定されるものではないが、例えば、培養細胞に被検試料を接触させることにより実施することができ、具体的には培養細胞の培養液中に被検試料を添加すればよい。また、被検物質の効果を判定するために、被検物質と接触しない対照の細胞を設定しておくことが好ましい。これによって、被検物質の効果を明確に判断することができる。
【0027】
前記工程(b)においては、被検物質と接触したDEC1発現細胞及びDEC1ノックアウト細胞におけるDEC1に制御されるタンパク質又はそのmRNAを測定する。DECが制御するタンパク質として、例えば、低酸素下においてDEC1がその発現を促進するタンパク質としては、CA9、Slc2a1、Lrp2bp、Vegfa、Hif1aを挙げることができ、また、そのmRNAの発現が抑制されているタンパク質として、Eno2、Ndr1、及びHif2aを挙げることができる。これらのタンパク質又はそのmRNAを測定することにより、被検物質の効果を判断することが可能である。タンパク質又はそのmRNAの測定方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができるが、具体的には、前記DEC1制御分子スクリーニング方法において用いることのできる方法を挙げることができる。
【0028】
DEC1介在性物質スクリーニング方法においては、前記工程(c)で、被検物質の接触による発現量の変化がDEC1ノックアウト細胞より、DEC1発現細胞において大きい被検物質を選択することが好ましい。DEC1ノックアウト細胞ではDEC1が機能していないため、被検物質によって前記のタンパク質又はそのmRNAの発現が変化した場合は、DEC1を介さずに被検物質が直接、低酸素応答遺伝子や低酸素応答タンパク質に作用していると考えられるためである。従って、被検物質の接触によるタンパク質又はそのmRNAの発現量の変化がDEC1ノックアウト細胞より、DEC1発現細胞において大きい被検物質を選択することによって、DEC1介在性の低酸素応答に関連する被検物質をスクリーニングすることができる。
【0029】
3.DEC1非介在性の低酸素応答を促進又は抑制する物質のスクリーニング方法
本発明のDEC1非介在性の低酸素応答を促進又は抑制する物質のスクリーニング方法(以下、DEC1非介在性物質スクリーニング方法と称することがある)は、前記DEC1ノックアウト動物、又はDEC1ノックアウト細胞を用いることによって行うことができるが、操作の容易性などから、DEC1ノックアウト細胞を用いる方法が好ましい。
前記DEC1非介在性物質スクリーニング方法は、
(a)低酸素下でDEC1ノックアウト細胞に被検物質を接触させる工程、
(b)前記DEC1ノックアウト細胞における、低酸素応答タンパク質又はそのmRNAの発現を測定する工程、及び
(c)被検物質の接触による前記低酸素応答タンパク質又はそのmRNAの発現量の変化より、低酸素応答を促進又は抑制する被検物質を判定する工程、
を含むことができる。前記のように、DEC1非介在性の低酸素応答とは、DEC1の制御を介さずに起きる低酸素応答を意味する。
【0030】
前記工程(a)における低酸素下とは、DEC1制御分子スクリーニング方法における低酸素状態と同じ条件を用いることができる。前記低酸素状態で、DEC1ノックアウト細胞に被検物質を接触させることができる。被検物質の接触は、細胞と被検物質が接触するものであれば特に、その方法も時間も限定されるものではないが、例えば、培養細胞に被検試料を接触させることにより実施することができ、具体的には培養細胞の培養液中に被検試料を添加すればよい。また、被検物質の効果を判定するために、被検物質と接触しない対照の細胞を設定しておくことが好ましい。これによって、被検物質の効果を明確に判断することができる。
【0031】
前記工程(b)においては、被検物質と接触したDEC1ノックアウト細胞における低酸素応答タンパク質又はそのmRNAを測定する。低酸素応答タンパク質として、例えば、Epo、CA9、Slc2a1、Lrp2bp、Vegfa、Hif1a、Eno2、Ndr1、及びHif2aを挙げることができる。これらのタンパク質又はそのmRNAを測定することにより、被検物質の効果を判断することが可能である。タンパク質又はそのmRNAの測定方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができるが、具体的には、前記DEC1制御分子スクリーニング方法において用いることのできる方法を挙げることができる。
【0032】
前記工程(c)において、低酸素応答タンパク質又はそのmRNAの発現量の変化より、DEC1非介在性の低酸素応答を促進又は抑制する被検物質を判定することができる。DEC1ノックアウト細胞においては、DEC1が発現していないため、DEC1が介在しない低酸素応答に関連するタンパク質やmRNAの変化を特異的に検出することが可能である。
【0033】
3.本発明の医薬組成物
本発明の医薬組成物は、有効成分として本発明のDEC1介在性物質スクリーニング方法、又はDEC1非介在性物質スクリーニング方法で得ることのできる物質を有効成分として含むことができる。また、DEC1のmRNAの発現又はDEC1タンパク質の発現を抑制又は促進することのできる、siRNA、抗体、ベクターを含むことができる。以下に、siRNAを含む医薬組成物について、具体的に説明する。
【0034】
ヒトDEC1タンパク質のcDNAの塩基配列を配列表の配列番号1に、マウスDEC1タンパク質のcDNAの塩基配列を配列表の配列番号2に示す。RNA干渉の標的は、RNA干渉を介して開裂することのできるDEC1のmRNAであれば特に限定されるものではないが、配列番号2で表される塩基配列における第405番目〜第425番目の塩基配列、又は第455番目〜第475番目の塩基配列を含むmRNA領域であることが好ましく、第405番目〜第425番目の塩基配列、又は第455番目〜第475番目目の塩基の塩基配列からなるRNA領域(以下、標的mRNA領域と称する)であることが、最も好ましい。
【0035】
二重鎖RNA部分の長さは、塩基として、15〜40塩基、好ましくは15〜30塩基、より好ましくは15〜25塩基、更に好ましくは19〜25塩基、最も好ましくは19〜21塩基である。二重鎖RNA部分には、そのままsiRNAとして機能するものも含まれるが、細胞内でDicerにより切断されて、siRNAとしてRNA干渉を誘導することのできる二重鎖RNA部分も含むことができる。
【0036】
二重鎖RNA部分のアンチセンスRNA鎖は、DEC1のmRNAに細胞内でハイブリダイズできるものであれば、限定されず、前記標的mRNA領域の塩基配列に相補的な塩基配列からなるRNA部分(以下、標的相補RNA部分と称する)の塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換、若しくは付加された塩基配列からなるRNA部分からなるRNA部分を含むRNAであることができるが、好ましくは、DEC1のmRNAの標的mRNAに対して、完全に相補的な5‘−UAGUAAGUUUGAGAUGUUCGG−3’(配列番号4)又は5‘−UCGUUAAUCCGGUCACGUCUCG−3’(配列番号6)で表される塩基配列からなるRNA部分を含むRNA鎖であり、最も好ましくは、配列番号4又は配列番号6で表される塩基配列からなるRNA鎖である。
【0037】
アンチセンスRNA鎖は、前記標的相補RNA部分以外のRNA部分を含むことができ、そのRNA部分は、特に限定されるものではないが、DEC1のmRNAであって、標的mRNA領域以外のDEC1のmRNAの塩基配列に相補的な塩基配列からなるRNA部分が好ましい。また、アンチセンスRNA鎖の塩基配列は、標的mRNA領域における塩基配列に対して85%、好ましくは90%、より好ましくは95%、最も好ましくは100%の相同性を有する。また、アンチセンスRNA部分は、siRNAの全体のGC含量が70%以下、好ましくは30〜70%、30〜60%程度となるように設計されるのが好ましい。
【0038】
二重鎖RNA部分のセンスRNA鎖は、アンチセンスRNA鎖と細胞内でハイブリダイズすることのできるRNAであれば、限定されず、例えば、アンチセンスRNAの塩基配列に相補的な塩基配列からなる塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換、若しくは付加された塩基配列からなるRNA鎖であることができ、好ましくは、アンチセンスRNAの塩基配列に対して、完全に相補的な5‘−GAACAUCUCAAACUUACUACU−3’(配列番号3)又は5‘−GACGUGACCGGAUUAACGAGU−3’(配列番号5)で表される塩基配列からなるRNA部分を含むRNA鎖であり、最も好ましくは、配列番号3又は配列番号5で表される塩基配列からなるRNA鎖である。
【0039】
また、センスRNA鎖は、前記標的RNA部分以外のRNA部分を含むことができ、そのRNA部分は、特に限定されるものではないが、DEC1のmRNAであって標的mRNA領域以外のDEC1のmRNA塩基配列からなるRNA部分が好ましい。
【0040】
本発明のsiRNAの態様の1つとして、二重鎖のRNA部分の末端が平滑である二本鎖ヌクレオチドも含まれ、このようなsiRNAは十分なRNAi活性を示す。
【0041】
また、本発明のsiRNAの態様の1つとして、二重鎖のRNA部分と、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖の3’末端のオーバーハングとからなり、突出末端を形成する二本鎖オリゴヌクレオチドも含まれる。前記オーバーハング部分は、それぞれ、5塩基以下の任意のヌクレオチド(リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド)であるが、2塩基のヌクレオチドが好ましい。siRNAの3’側オーバーハングを構成するリボヌクレオチドとしては、例えば、u(ウリジン)、a(アデノシン)、g(グアノシン)、又はc(シチジン)のヌクレオチドを用いることができ、3’側のオーバーハングを構成するデオキシリボヌクレオチドとしては、例えば、dt(チミジン)、da(デオキシアデノシン)、dg(デオキシグアノシン)、又はdc(デオキシシチジン)のヌクレオチドを用いることができる。
【0042】
前記オーバーハングとしては、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖の3’末端に、それぞれ独立して、1又は2塩基のu又はdtが付加されたオーバーハングが好ましく、センス鎖及びアンチセンス鎖の3’末端に、それぞれ独立して、1又は2塩基のu又はdtが付加されたオーバーハングがより好ましく、センス鎖及びアンチセンス鎖の3’末端に、2塩基のu又はdtが付加されたオーバーハングが特に好ましい。更に、具体的なオーバーハングとしては、例えばcu−3’、gg−3’、gu−3’、ug−3’uc−3’、uu−3’、tg−3’、tt−3’などの塩基配列が挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0043】
本発明のsiRNAの態様の1つとして、二重鎖RNA部分を形成する2つのRNA鎖が、ヘアピンループを形成することのできるRNA部分によって結合しているショートヘアピンRNA(short hairpin RNA;以下、shRNAと称する)が含まれる。shRNAは、二重鎖RNA部分を形成する前記センスRNA鎖とアンチセンス鎖が、ヘアピンループを形成することのできるRNA部分によって結合し、前記センスRNA鎖とアンチセンス鎖が二本鎖構造を形成している。ヘアピンループを形成するRNA部分の鎖長及び塩基配列は、ヘアピンループを形成することができるものである限り、限定されるものではないが、鎖長は好ましくは3〜23であり、例えば、UUCAAGAGA、CUUCCUGUCA(配列番号26)、CCACC、CUCGAG、CCACACC、UUCAAGAGA、AUG、CCC及びUUCGからなる群より選択される少なくともひとつの塩基配列からなるRNAを挙げることができる。
【0044】
siRNAは、公知の製造方法、例えば、化学合成、又は酵素合成法により製造することもできるし、あるいは、後述するように適当な発現ベクターに挿入し、遺伝子工学的に製造することもできる。ベクターは、哺乳動物細胞内でDEC1のmRNAの発現を抑制することのできるsiRNAを発現させるためのベクターであり、前記細胞内で効率良くsiRNAを発現できるものであれば、骨格となるベクターは、特に限定されるものではない。前記骨格となるベクターとしては、例えば、プラスミドベクター、直鎖状2本鎖DNAベクター並びに、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクター等のウイルスベクターを挙げることができる。
【0045】
本発明のsiRNA及びベクターは、医薬組成物として、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法、又はカチオン脂質法を用いて目的の組織、又は細胞内に導入することが可能である。骨格となるベクターとして、ウイルスベクターを用いる場合は、目的の細胞へのウイルスベクターの感染によってsiRNAを導入することが可能である。
【0046】
前記siRNA、あるいはsiRNAを投与対象内で発現可能なベクターは、それ単独で、あるいは、好ましくは薬剤学的又は獣医学的に許容することのできる通常の担体又は希釈剤と共に、DEC1が関与する疾患、例えば癌の治療のために、動物、好ましくは哺乳動物(特にはヒト)に、有効量で投与することができる。前記siRNA、あるいは、本発明のsiRNAを投与対象内で発現可能なベクターは、それ単独で、あるいは、好ましくは薬剤学的又は獣医学的に許容することのできる通常の担体又は希釈剤と共に、DEC1の発現細胞の増殖を抑制することにより、癌を治療又は予防することができる。
【0047】
本発明の医薬組成物の治療又は予防の対象である癌の種類は、特に限定されることはないが、例えば、膀胱癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、小細胞肺癌、食道癌、胆嚢癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、子宮頸部癌、甲状腺癌、前立腺癌、扁平上皮癌、皮膚癌、骨癌、リンパ腫、白血病及び脳腫瘍を挙げることができる。また、本発明の医薬組成物は、癌の転移抑制のために用いることができる。
【0048】
また、本発明の医薬組成物の治療又は予防の対象である虚血性疾患は特に限定されるものではないが、例えば、貧血、脳卒中、脳梗塞、虚血性心筋症、心筋梗塞症、虚血性心不全、閉塞性動脈硬化症、及び出血性ショックに伴う虚血性臓器障害を挙げることができるが、特には、脳梗塞及び虚血性心疾患に効果がある。
【0049】
本発明の医薬の投与剤型としては、特に限定がなく、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エキス剤、若しくは丸剤等の経口剤、又は注射剤、外用液剤、軟膏剤、坐剤、局所投与のクリーム、若しくは点眼薬などの非経口剤を挙げることができる。
これらの経口剤は、例えば、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳糖、ぶどう糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、大豆レシチン、ショ糖、脂肪酸エステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸、又は合成ケイ酸アルミニウムなどの賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安定化剤、保湿剤、防腐剤、又は酸化防止剤等を用いて、常法に従って製造することができる。
【0050】
非経口投与方法としては、注射(皮下、静脈内等)、又は直腸投与等が例示される。これらのなかで、注射剤が最も好適に用いられる。
例えば、注射剤の調製においては、有効成分の他に、例えば、生理食塩水若しくはリンゲル液等の水溶性溶剤、植物油若しくは脂肪酸エステル等の非水溶性溶剤、ブドウ糖若しくは塩化ナトリウム等の等張化剤、溶解補助剤、安定化剤、防腐剤、懸濁化剤、又は乳化剤などを任意に用いることができる。
また、本発明の医薬は、徐放性ポリマーなどを用いた徐放性製剤の手法を用いて投与してもよい。例えば、本発明の医薬をエチレンビニル酢酸ポリマーのペレットに取り込ませて、このペレットを治療又は予防すべき組織中に外科的に移植することができる。
【0051】
本発明の医薬は、これに限定されるものではないが、0.01〜99重量%、好ましくは0.1〜80重量%の量で、有効成分を含有することができる。
本発明の医薬を用いる場合の投与量は、例えば、使用する有効成分の種類、病気の種類、患者の年齢、性別、体重、症状の程度、又は投与方法などに応じて適宜決定することができ、経口的に又は非経口的に投与することが可能である。
また、投与形態も医薬品に限定されるものではなく、種々の形態、例えば、機能性食品や健康食品(飲料を含む)、又は飼料として飲食物の形で与えることも可能である。
【実施例】
【0052】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0053】
《実施例1:DEC1ノックアウトマウスの作製》
DEC1ノックアウトマウスは、クラボウへの委託で作製した。
(1)ターゲティングベクターの構築
DEC1をコードする内在性遺伝子を相同組換えにより不活性化(ノックアウト)するためのターゲティングベクターを構築した。
【0054】
(2)ターゲティングベクターのES細胞への導入
15%ウシ胎児血清を含有するDMEM培地中で培養したマウス胚性幹細胞(ES細胞)をトリプシンで処理して単一細胞とした後、リン酸緩衝液で3回洗浄して細胞濃度を1×10細胞/mLに調製した。細胞懸濁液1mLあたり25μgの前記ターゲティングベクターを加え、エレクトロポレーションを行った。10cmシャーレに1×10細胞のES細胞を播種し、維持培地中で1日培養した後、培地をG418(250μg/mL)及び2μMのガンシクロビルを含有する選択培地に交換した。以後2日毎に培地交換を行い培養した。ターゲティングベクター導入から10日目に、マイクロピペットを用いて、顕微鏡下でネオマイシン耐性ES細胞クローンを取得した。得られたES細胞クローンを、Feeder細胞を敷いた24穴プレートで培養することにより、ネオマイシン耐性ES細胞のレプリカを取得した。
【0055】
(3)ノックアウトES細胞のスクリーニング
得られたネオマイシン耐性ES細胞について、相同組換えによるDEC1をコードする遺伝子の破壊が起こっているか否かをPCRにより確認した。PCRには、ネオマイシン耐性遺伝子の配列に基づいて設計、合成したプライマーを用いた。ネオマイシン耐性ES細胞について、ゲノミックDNAを抽出し、それらを鋳型とし、ネオマイシン耐性プライマーを用いてPCRを行った。
【0056】
試験したES細胞クローンのうち、目的のPCR産物が得られたクローンについてゲノミックサザンブロッティングを行い、更に選抜及び確認をした。ゲノミックDNAを抽出し、制限酵素BamHIで消化後、アガロースゲルで電気泳動を行った。これをナイロンメンブランにトランスファーし、DEC1のゲノミックDNA配列により作製したプローブを用いて、ハイブリダイゼーションを行った。前記プローブは、相同組み換えが起こる部位より外側の配列であって、変異型ゲノムと通常型ゲノムをサイズ的に見分けられるような部位の配列を基に設計した。その結果、変異型と通常型の2本のバンドが確認されたES細胞クローンを下記に述べるノックアウトマウスの作製に用いた。
【0057】
(4)ノックアウトマウスの作製
DEC1をコードする内在性遺伝子が相同組換えによりノックアウトされたES細胞を、C57BL6マウス(日本チャールズリバー製)の雄雌を交配して得た胚盤胞に1胚あたり15個ずつ注入(マイクロインジェクション)した。注入直後に、偽妊娠処理してから2.5日目の仮親ICRマウス(日本クレア製)の子宮に子宮の片側あたり約10個ずつの胚盤胞を移植した。その結果、毛色への貢献度が80%以上のキメラマウスが得られた。得られたキメラマウスを正常C57BL6マウスと交配し、ES細胞由来の毛色遺伝子によるアグーチ(agouti)色のマウスを得た
【0058】
《実施例2:DEC1ノックアウト細胞による低酸素応答性遺伝子のスクリーニング》
【0059】
(A)DEC1ノックアウト細胞及びDEC1発現細胞(野生型)の作製
DEC1ノックアウトマウスの14.5日目の胎仔を取り出し、頭部と内臓を除いた後にトリプシン/EDTAで30分処理した後にメッシュで濾過した。それを3継代培養してDEC1ノックアウト細胞を樹立した。
【0060】
(B)DEC1ノックアウト細胞及びDEC1発現細胞の培養
前記(A)で作製したDEC1ノックアウト細胞及びDEC1発現細を21%酸素条件及び1%酸素条件で培養した。DMEM培地を用い、CO10%、37℃で、24時間培養した。
(C)トータルRNA抽出
それぞれの細胞、約35万個をトライゾールで処理して回収し、トータルRNA7μgを回収した。得られたトータルRNAを用いて、リアルタイムPCRを行った。
【0061】
(D)リアルタイムPCRによるmRNAの発現量の測定
RNA0.5μgを用いて、ロッシュUniversal Probe Libraryキットの説明書に従って、CA9、Slc2a1、Lrp2bp、Vegfa、Hif1a、Eno2、Ndr1、Hif2aについて、リアルタイムRT−PCRを行った。それぞれの測定に用いたプライマーは以下のとおりである。TaqMan probeは、以下に記載のキットに添付のものを用いた。
CA9センスプライマー:5‘−gctgtcccatttggaagaaa−3’(配列番号7)
CA9アンチセンスプライマー:5‘−tccaaacctgggatctcaat−3’(配列番号8)
Universal ProbeLibrary probe #69
Slc2a1センスプライマー:5‘−atggatcccagcagcaag−3’(配列番号9)
Slc2a1アンチセンスプライマー:5‘−ccagtgttatagccgaactgc−3’(配列番号10)
Universal ProbeLibrary probe #52
Vegfaセンスプライマー:5‘−aaaaacgaaagcgcaagaaa−3’(配列番号11)
Vegfaアンチセンスプライマー:5‘−tttctccgctctgaacaagg−3’(配列番号12)
Universal ProbeLibrary probe #1
Eno2センスプライマー:5‘−cactaacgtgggggatgaa−3’(配列番号13)
Eno2アンチセンスプライマー:5‘−caccagctccaaggcttc−3’(配列番号14)
Universal ProbeLibrary probe #80
Lrp2bpセンスプライマー:5‘−ggccaactctattttgaagagg−3’(配列番号15)
Lrp2bpアンチセンスプライマー:5‘−tcctagctgataaattgcttgatg−3’(配列番号16)
Universal ProbeLibrary probe #2
Ndrlセンスプライマー:5‘−ggtagttggagacaactctcctg−3’(配列番号17)
Ndrlアンチセンスプライマー:5‘−ttcgttgggtccaatttagaa−3’(配列番号18)
Universal ProbeLibrary probe #89
Hif1aセンスプライマー:5‘−catgatggctccctttttca−3’(配列番号19)
Hif1aアンチセンスプライマー:5‘−gtcacctggttgctgcaata−3’(配列番号20)
Universal ProbeLibrary probe #18
Hif2aセンスプライマー:5‘−gagcaactacctgttcaccaaa−3’(配列番号21)
Hif2aアンチセンスプライマー:5‘−tcatcgaagttctggcttcc−3’(配列番号22)
Universal ProbeLibrary probe #63
それぞれのmRNAの発現の結果を図1〜図8に示す。mRNAの発現量は、DEC1ノックアウト細胞及びDEC1発現細胞を21%酸素条件、及び1%酸素条件の4種類の条件における一番低いmRNAの発現量を1としたときの相対的な値で示した。
【0062】
酸素濃度21%では、DEC1発現細胞において、DEC1ノックアウト細胞より発現が高いmRNAは、CA9、Slc2a1、Lrp2bp、Vegfa、Hif1a、Eno2であり、DEC1発現細胞とDEC1ノックアウト細胞で発現が影響されないmRNAはNdr1であり、DEC1発現細胞において、DEC1ノックアウト細胞より発現が低いmRNAは、Hif2aであった。
また、酸素濃度1%では、DEC1発現細胞において、DEC1ノックアウト細胞より発現が高いmRNAは、CA9、Slc2a1、Lrp2bp、Vegfa、Hif1aであり、DEC1発現細胞において、DEC1ノックアウト細胞より発現が低いmRNAは、Eno2、Ndr1、及びHif2aであった。特に、低酸素条件においてDEC1ノックアウト細胞と比較してDEC1発現細胞においてCA9の発現が高く、CA9の発現は、DEC1によって促進されているものと考えられた。
《実施例3:siRNAによるDEC1のmRNAの発現抑制》
【0063】
(A)siRNAの作製
以下のsiRNAを合成した(株式会社RNAiに委託)
mDEC1−1センス:5‘−GAACAUCUCAAACUUACUACU−3’(配列番号3)
mDEC1−1アンチセンス:5‘−UAGUAAGUUUGAGAUGUUCGG−3’(配列番号4)
mDEC1−2センス:5‘−GACGUGACCGGAUUAACGAGU−3’(配列番号5)
mDEC1−2アンチセンス:5‘−UCGUUAAUCCGGUCACGUCUC−3’(配列番号6)
コントロールのsiRNAは、Qiagen社のNegative Control siRNAを使用した。
それぞれ、mDEC1−1センス及びmDEC1−1アンチセンス、mDEC1−2センス及び
mDEC1−2アンチセンス、並びにコントロールセンス及びコントロールアンチセンスを、アニーリングし、2本鎖のsiRNAとした。
得られたsiRNA25 pmolを、Lipofectamine 2000を用いて、前記実施例2の(A)で作製したDEC1発現細胞(繊維芽細胞)にトランスフェクションによって導入した。48時間培養後に、前記実施例2の(C)の操作を繰り返し、細胞からトータルRNAを抽出した。プライマーとして、以下のDEC1のmRNAを測定するプライマーを用いたことを除いては、前記実施例2の(D)の操作を繰り返し、DEC1のmRNAの発現を測定した。
DEC1センスプライマー:5‘−ATCAGCCTCCTTTTTGCCTTC−3’(配列番号23)
DEC1アンチセンスプライマー:5‘−AGCATTTCTCCAGCATAGGCAG−3’(配列番号24)
TaqMan プローブ:5’FAM-TTCTATCTCATCCCACCATCGGCCAC-TAMRA-3’(配列番号25)
【0064】
その結果、mDEC1−1をトランスフェクションした細胞では、コントロールであるsiRNAと比較すると、DEC1のmRNA量が有意に減少していた(図9)。同様に、mDEC1−2をトランスフェクションした細胞では、コントロールに比べてDEC1のmRNA量が有意に減少していた(図9)。
【0065】
《比較例1》
また、比較例として4種類のDEC1に対するsiRNAの効果を調べた。siRNAとして、以下の配列のsiRNAを用いたことを除いては、前記実施例3の操作を繰り返し、DEC1のmRNAの発現の抑制効果を測定した。
mDEC1aセンス:5‘−AGAGACGUGACCGGAUUAATT−3’(配列番号27)
mDEC1aアンチセンス:5‘−UUAAUCCGGUCACGUCUCUTT−3’(配列番号28)
mDEC1bセンス:5‘−GACAGCAAGGAAACUUACATT−3’(配列番号29)
mDEC1bアンチセンス:5‘−UGUAAGUUUCCUUGCUGUCTT−3’(配列番号30)
mDEC1cセンス:5‘−AAGAGACGUGACCGGAUUATT−3’(配列番号31)
mDEC1cアンチセンス:5‘−UAAUCCGGUCACGUCUCUUTT−3’(配列番号32)
mDEC1dセンス:5‘−GCCGUGGACUUGAAAGAGATT−3’(配列番号33)
mDEC1dアンチセンス:5‘−UCUCUUUCAAGUCCACGGCTT−3’(配列番号34)
結果を図10に示す。実施例3で用いたsiRNAと比較して、これらのsiRNAは、DEC1のmRNAの発現抑制効果が見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のDEC1制御分子スクリーニング方法により、DEC1が制御するタンパク質をスクリーニングすることが可能である。また、DEC1介在性物質スクリーニング方法、又はDEC1非介在性物質スクリーニング方法により、低酸素応答性に関与する物質のスクリーニングが可能である。またスクリーニングされた物質、又はDEC1の機能を促進又は抑制する物質を含む医薬組成物により、癌や虚血性疾患の治療又は予防が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】酸素濃度21%と酸素濃度1%(低酸素条件)において、DEC1ノックアウト細胞及びDEC1発現細胞を培養した場合の、CA9のmRNAの発現をリアルタイムPCRで測定した結果である。
【図2】酸素濃度21%と酸素濃度1%(低酸素条件)において、DEC1ノックアウト細胞及びDEC1発現細胞を培養した場合の、Eno2のmRNAの発現をリアルタイムPCRで測定した結果である。
【図3】酸素濃度21%と酸素濃度1%(低酸素条件)において、DEC1ノックアウト細胞及びDEC1発現細胞を培養した場合の、SLc2aのmRNAの発現をリアルタイムPCRで測定した結果である。
【図4】酸素濃度21%と酸素濃度1%(低酸素条件)において、DEC1ノックアウト細胞及びDEC1発現細胞を培養した場合の、Lrp2bpのmRNAの発現をリアルタイムPCRで測定した結果である。
【図5】酸素濃度21%と酸素濃度1%(低酸素条件)において、DEC1ノックアウト細胞及びDEC1発現細胞を培養した場合の、Ndr1のmRNAの発現をリアルタイムPCRで測定した結果である。
【図6】酸素濃度21%と酸素濃度1%(低酸素条件)において、DEC1ノックアウト細胞及びDEC1発現細胞を培養した場合の、VegfaのmRNAの発現をリアルタイムPCRで測定した結果である。
【図7】酸素濃度21%と酸素濃度1%(低酸素条件)において、DEC1ノックアウト細胞及びDEC1発現細胞を培養した場合の、Hif1aのmRNAの発現をリアルタイムPCRで測定した結果である。
【図8】酸素濃度21%と酸素濃度1%(低酸素条件)において、DEC1ノックアウト細胞及びDEC1発現細胞を培養した場合の、Hif2aのmRNAの発現をリアルタイムPCRで測定した結果である。
【図9】siRNA(mDEC1−1又はmDEC1−2)を、DEC1発現細胞に導入した場合のDEC1のmRNAの発現をリアルタイムPCRで測定した結果を示す。
【図10】siRNA(mDEC1a、mDEC1b、mDEC1c、又はmDEC1d)を、DEC1発現細胞に導入した場合のDEC1のmRNAの発現をリアルタイムPCRで測定した結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DEC1ノックアウト動物、又はDEC1ノックアウト細胞を用いることを特徴とする、DEC1が制御する分子のスクリーニング方法。
【請求項2】
(a)DEC1ノックアウト細胞及びDEC1発現細胞を培養する工程、
(b)培養したDEC1ノックアウトマウス細胞及びDEC1発現細胞のタンパク質又はそのmRNAの発現を測定する工程、及び
(c)工程(b)で測定したDEC1ノックアウトマウス細胞及びDEC1発現細胞のタンパク質又はそのmRNAの発現量を比較し、DEC1が制御するタンパク質を判定する工程、
を含む請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項3】
前記工程(a)を低酸素下で行う、請求項2に記載のスクリーニング方法。
【請求項4】
DEC1介在性の低酸素応答を促進又は抑制する物質のスクリーニング方法であって、
(a)低酸素下でDEC1発現細胞及びDEC1ノックアウト細胞に、被検物質を接触させる工程、
(b)前記DEC1発現細胞及びDEC1ノックアウト細胞における、DEC1が制御するタンパク質又はそのmRNAの発現を測定する工程、及び
(c)前記タンパク質又はそのmRNAの発現量を比較し、被検物質の接触による発現量の変化がDEC1ノックアウト細胞より、DEC1発現細胞において大きい被検物質を判定する工程、
を含む前記スクリーニング方法。
【請求項5】
前記DEC1が制御するタンパク質が、CA9、Slc2a1、Vegfa、Eno2、Lrp2bp、Ndrl、Hif1a及びHif2aからなる群から選択されたタンパク質である、請求項4に記載のスクリーニング方法。
【請求項6】
DEC1非介在性の低酸素応答を促進又は抑制する物質のスクリーニング方法であって、
(a)低酸素下でDEC1ノックアウト細胞に被検物質を接触させる工程、
(b)前記DEC1ノックアウト細胞における、低酸素応答タンパク質又はそのmRNAの発現を測定する工程、及び
(c)被検物質の接触による前記低酸素応答タンパク質又はそのmRNAの発現量の変化より、低酸素応答を促進又は抑制する被検物質を判定する工程、
を含む前記スクリーニング方法。
【請求項7】
前記低酸素応答タンパク質が、CA9、Slc2a1、Vegfa、Eno2、Lrp2bp、Ndrl、Hif1a及びHif2aからなる群から選択されたタンパク質である、請求項6に記載のスクリーニング方法。
【請求項8】
DEC1の発現を抑制する化合物を有効成分として含むことを特徴とする、癌の予防又は治療用、あるいは癌の転移抑制用の医薬組成物。
【請求項9】
前記化合物がDEC1のmRNAを、RNA干渉を介して開裂することのできるsiRNAである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記RNA干渉の標的mRNA領域が、配列番号2で表される塩基配列における第405番目〜第425番目の塩基配列、又は第455番目〜第475番目の塩基配列からなるmRNAである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記siRNAの二重鎖RNA部分の長さが15〜40ヌクレオチドである請求項9又は10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記siRNAの二重鎖RNA部分のアンチセンスRNA鎖が、配列番号4又は配列番号6で表される塩基配列からなるRNAである請求項9〜11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記siRNAの二重鎖RNA部分において、
(a)二重鎖RNA部分を形成する2つのRNA鎖が、ヘアピンループを形成することのできるRNA部分によって結合しているshRNA、
(b)二重鎖RNA部分の末端が平滑である二本鎖ヌクレオチド、又は
(c)二重鎖RNA部分を形成する2つのRNA鎖の一方又は両方の3‘末端に、デオキシリボヌクレオチド及び/又はリボヌクレオチドが結合し、突出末端を形成している二本鎖オリゴヌクレオチド、
である請求項9〜12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
DEC1の発現を促進する化合物を有効成分として含むことを特徴とする、虚血性疾患の治療用医薬組成物
【請求項15】
前記虚血性疾患が、貧血、脳卒中、脳梗塞、虚血性心筋症、心筋梗塞症、虚血性心不全、閉塞性動脈硬化症である請求項14に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−11167(P2009−11167A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173127(P2007−173127)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(503328193)株式会社ツーセル (24)
【Fターム(参考)】