低電力のガスプラズマ源
【解決手段】本発明は、4分の1波長アンテナを構成する第1のロッド(3) を備えたプラズマ源に関しており、第1のロッド(3) は、第1のロッドと略同一の長さを有し基準電圧に設定されたカプラ(6,7,8) を構成する少なくとも1本の平行なロッドに囲まれており、カプラを構成するロッドは、第1のロッドの周りに4分の1波長の約5分の1乃至20分の1の距離を置いてラジアル方向に均一に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスプラズマ源に関し、特には、高周波電磁放射と低圧ガスとの相互作用によってプラズマが得られるプラズマ源に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁放射を低圧ガスに適用することによって、ガスがイオン化され、高周波電磁場の強度が十分である領域にプラズマを生成することが知られている。プラズマ点火を行い、条件(パッシェン(Paschen )条件)を維持するには、一般的に比較的強力な高周波源を用いる必要があり、マグネトロンが一般に用いられている。マグネトロンは、相応なコストで(約10乃至100 ワットrms 以上の)大きな電力を供給可能であるという利点を有しており、このため、点火条件に達することがより容易になる。しかしながら、マグネトロンとプラズマの生成が望まれている領域との間でこの電力を搬送して適合させるために、導波管、冷却システム、真空処理装置等の寸法のような重大な寸法的及び技術的制約が伴う。
【0003】
更に、トランジスタ発振器を用いた(周波数が0.4 乃至10GHz でありセンチメートル波の電磁場の)高周波源が知られている。携帯電話及びWIFI通信システムの分野で広く使用されているこのような高周波源は現在、電力が10ワット未満である(例えば、0.2 乃至5ワットの範囲内である)場合にコスト効率が良く、小さな寸法になる。
【0004】
プラズマ源が利用可能であると、多くの適用がこのようなプラズマ源を用いて可能になる。例えば、プラズマ生成領域のすぐ近くに配置された材料の処理のためにプラズマ源が有効に使用されてもよい。また、プラズマ源が光源として使用されてもよい。更に、プラズマ源が、プラズマ生成領域から抽出されるイオンのイオン源として使用されてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5936352号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、既存の装置の不利点の少なくとも一部を回避するプラズマ源の作製を目的とする。
【0007】
本発明の実施形態の更に具体的な目的は、高周波トランジスタ発振器により励起され得るプラズマ源を提供することである。
【0008】
本発明の実施形態の別の目的は、小さな寸法のプラズマ源を作製することである。
【0009】
本発明の実施形態の別の目的は、拡張性プラズマ源を作製することである。
【0010】
本発明の実施形態の別の目的は、表面積が大きなプラズマ源を作製するために、パネルに組み立てられ得るプラズマ源を作製することである。
【0011】
本発明の実施形態の別の目的は、特には光源の作製に十分適したプラズマ源を作製することである。
【0012】
本発明の実施形態の別の目的は、特にはイオン源の作製に十分適したプラズマ源を作製することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これら及び他の目的の全て又は一部を達成するために、本発明の実施形態は、4分の1波長アンテナを構成する第1のロッドを備えており、高周波信号により励起されるプラズマ源であって、前記第1のロッドは、該第1のロッドと略同一の長さを有し基準電圧に設定されたカプラを構成する少なくとも1本の平行なロッドに囲まれており、前記カプラを構成するロッドは、前記第1のロッドの周りに4分の1波長の約半分乃至20分の1の距離を置いてラジアル方向に規則的に配置されていることを特徴とするプラズマ源を提供する。
【0014】
本発明の実施形態によれば、前記プラズマ源は、高周波トランジスタ発振器から構成されている0.4 乃至10GHz の範囲内の高周波発生器に関連付けられている。
【0015】
本発明の実施形態によれば、前記プラズマ源は、光源の作製に使われており、3本のカプラを備えている。
【0016】
本発明の実施形態によれば、前記プラズマ源は、透明な導電性筐体に囲まれている。
【0017】
本発明の実施形態によれば、前記プラズマ源は、導電性メッシュで覆われた絶縁性筐体に囲まれている。
【0018】
本発明の実施形態によれば、前記プラズマ源は、プラズマが存在する状態での基板の打込みに使われており、前記ロッドの端部が軸方向の磁場に配置されており、前記プラズマ源は前記基板から短距離の位置に配置されており、プラズマ中での生成が望まれている原子種に応じて選択された真空雰囲気に、組立体が囲まれている。
【0019】
本発明の実施形態によれば、前記プラズマ源は、イオン注入装置の作製に使われており、3本のロッドを囲むチャンバが金属製のチャンバであり、該チャンバは、前記ロッドの端部に平行であり開口部を有して加速電極に対向して配置された面を有している。
【0020】
本発明の実施形態によれば、並設された上記の複数の基本的なプラズマ源の組立体を備えた拡張性プラズマ源が設けられており、各基本的なプラズマ源は、高周波トランジスタ発振器に関連付けられている。
【0021】
本発明の実施形態によれば、前記拡張性プラズマ源では、隣接した基本的なプラズマ源に同一の磁石が軸方向の磁場を加える。
【0022】
本発明の前述及び他の目的、特徴及び利点を、添付図面を参照して本発明を限定するものではない具体的な実施形態について以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】光源として使用される本発明の実施形態に係るプラズマ源を示す斜視図である。
【図1B】光源として使用される本発明の実施形態に係るプラズマ源を示す正面図である。
【図1C】光源として使用される本発明の実施形態に係るプラズマ源を示す図1Bの線CCに沿った断面図である。
【図2A】プラズマ生成用のガスが絶縁材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図2B】プラズマ生成用のガスが絶縁材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図2C】プラズマ生成用のガスが絶縁材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図2D】プラズマ生成用のガスが絶縁材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図2E】プラズマ生成用のガスが絶縁材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図2F】プラズマ生成用のガスが絶縁材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図3A】プラズマ生成用のガスが導電材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図3B】プラズマ生成用のガスが導電材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図3C】プラズマ生成用のガスが導電材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図3D】プラズマ生成用のガスが導電材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図3E】プラズマ生成用のガスが導電材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図3F】プラズマ生成用のガスが導電材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図4】プラズマ発生器として使用される本発明の実施形態に係るプラズマ源を簡略化して示す正面図である。
【図5】イオン源として使用される本発明の実施形態に係るプラズマ源を簡略化して示す正面図である。
【図6A】本発明の実施形態に係るプラズマ源の組立体を簡略化して示す断面図である。
【図6B】本発明の実施形態に係るプラズマ源の組立体を簡略化して示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1A,1B,1Cはプラズマ源を示しており、プラズマ源は、対象とした周波数、例えば約2.4 乃至5.8GHzの周波数で略4分の1波長アンテナを構成する中心ロッド3 を真空の筐体内の支持体1 に備えている。従って、周波数が約2.4GHzである場合、4分の1波長λ/4が、中心ロッド3 の長さに相当する約3cmの値を有する。この中心ロッド3 は、領域4 によって支持体1 から離れており、高周波電圧UHF により励起される。中心ロッド3 は、等距離で規則的に配置された3本のロッド6,7,8 に囲まれており、ロッド6,7,8 は、中心ロッド3 と略同一の長さを有しており、カプラとして機能する。これら3本のロッド6,7,8 は、D.C.基準電圧、例えば支持体1 によって形成された接地面に接続されている。尚、図1Bの表示では、ロッド7 の後ろに配置されたロッド8 は見えない。一例としてこのプラズマ源は、光源を作製するために、例えば石英製の透明な筐体9 に配置されているとして図示されている。
【0025】
カプラを構成する夫々のロッド6,7,8 とアンテナを構成する中心ロッド3 との間のラジアル距離は、4分の1波長と比較して小さく、例えば、4分の1波長より約5分の1乃至15分の1小さく、好ましくは4分の1波長より約10分の1小さい。従って、4分の1波長が3cmである例では、カプラを構成する複数のロッドの夫々とアンテナを構成するロッドとの間のラジアル距離として、例えば約3mmが選択される。
【0026】
このような構造では、アンテナを構成するロッドが励起されると、点線の輪郭によって略画定されるプラズマ領域10にプラズマが生成されることが認識され得る(図1B及び1C参照)。プラズマ領域10は、支持体1 の反対側にあるロッドの端部近くに置かれ、主に中心ロッド3 からカプラを構成する3本のロッド6,7,8 に延びている。これは、高周波電磁場がこのプラズマ領域10に集中していることを示している。この電磁場の局所的な特性により、比較的低い電力がプラズマの点火及び条件の維持のために使用されてもよい。一方で、一般的にはプラズマ生成条件(パッシェン条件)に達するために、約5乃至15ワットの高周波電力が、通常放射の4分の1波長アンテナに加えられなければならないが、ここでは、比較的低い0.5 乃至2ワットの電力があれば十分プラズマを点火することが可能であり、プラズマが1ワット未満の電力で維持されることが認識され得る。2.5 mmに亘って20kV/mの電場が、磁場が存在しない状態での水素のための一般的な点火閾値であるとみなされている。
【0027】
従って、このような構造は重要な利点を有しており、すなわち、アンテナは、携帯電話に現在使用されているタイプの、高周波トランジスタ発振器のような比較的低い電力源に励起されてもよい。その結果、プラズマ源及びその励起システムは、体積及び寸法が小さくてもよい。これにもかかわらず、プラズマ領域では、プラズマは非常に強く、非常に明るい光源が得られる。
【0028】
光源としての作動では、アルゴン/水銀又はキセノン/水銀又は重水素のようなガスが使用されてもよい。本発明のこの実施形態の利点は、励起のための高周波源及びランプが、低消費のランプのように冷却無しで作動されてもよいということである。
【0029】
より一般的には、本発明は、4分の1波長アンテナを備えたプラズマ発生システムの提供を目的としており、前記4分の1波長アンテナは、該4分の1波長アンテナから短距離の位置に配置された一又は複数のカプラに関連付けられている。
【0030】
図2A乃至2Fは、プラズマ生成用のガスが絶縁材料製の筐体内に封入されている場合の様々なプラズマ源の構成のための等電位線を示している。このため、プラズマ発生システムは開放していると言われる。このようなプラズマ発生システムは非共振である。略4分の1波長アンテナ3 と4分の1波長ロッドの形態の0,1,2,3,4,8 本のカプラを夫々関連付けた構成を検討している。カプラが、設けられている場合にはアンテナの4分の1波長の約10分の1のラジアル距離(λ/40)にある場合を検討している。電場に関して、一方では、カプラが設けられている場合にはアンテナからカプラの方向にλ/80の距離に設けられたポイントM1で検討して、他方では、プラズマ生成用であってもよいガスを封入するために用いられるハウジング上のポイントM2で検討している。この例では、ポイントM2はアンテナから約λ/10のラジアル距離にある。
【0031】
図2A乃至2Fは、直径が夫々2.5mm であり高さが夫々27mmであるアンテナ及びカプラの端部から2mm離れた面における断面図に相当する。夫々の場合で、アンテナが2.45GHz の周波数且つ5ワットの電力で励起されているとみなされる。
【0032】
図2A乃至2Fの夫々では、20kV/mの電界線が点線で示されており、これは、点線の輪郭内では電場が20kV/mより大きいことを意味している。以下の表Iは、夫々の場合におけるポイントM1及びポイントM2での電場の値をkV/mで示している。
【0033】
【表1】
【0034】
効率的な光源を得るために、最大電場を、プラズマを点火可能とすべく十分高く(約2.5 mmに亘って20kV/mより大きく)する必要があり、ポイントM2を超えて筐体外に放射される電磁場のために、電磁放射基準を順守すべく可能な限り低くする必要がある。
【0035】
従って、一方では、3本のカプラによって画定された三角形内に略設けられた20kV/mを越える強力な電場領域がそこに存在し、他方では、筐体内の電場は0.3 kV/m未満と非常に低いことを考慮すると、1本のアンテナ及び3本のカプラを備えたプラズマ発生システムは可能な最良の折衷案の内の1つであると認識され得る。逆に、ランプを作製するために、カプラは光放射を可能な限り小さく遮らなければならず、これは、3本のカプラのみが使用される場合に相当する。
【0036】
図3A乃至3Fは、アンテナが0,1,2,3,4,8 本のカプラと夫々関連付けられている構造を示している。ここでは、導電性領域が筐体に配置されているか、筐体を構成しているか、又は筐体内に存在している。この導電性領域は、カプラのように接地されていることが好ましい。この場合、筐体の外側の電場は0である。このようなプラズマ発生システムは閉じていると言われ、共振である。
【0037】
図3A乃至3Fは、印加電力がわずか1ワットであり、周波数が略2.45GHz である場合に相当する。尚、プラズマ発生システムが、3本のカプラを備えている場合にこの2.45GHz の周波数に関して共振する場合、1,2,4,8 本のカプラを備えたプラズマ発生システムは、2.51,2.48,2.42,2.39 GHz の周波数に関して夫々共振する。
【0038】
ここでも、図3A乃至3Fの夫々には、20kV/mの電界線が点線で示されている。電場は開放型システムの場合より更に集中し、点火閾値は1ワットであるか、又は0.2 ワットでもよい。
【0039】
上記の結果として、光源を作製するために、中央のアンテナ及び3本の周辺のカプラを備えており、これら全てが高周波印加電圧(UHF )に関して略4分の1波長を有するシステムが好ましい。この構造は導電性筐体に配置されていることが好ましい。従って、光源を作製するために、透明な導電性筐体、例えば、接地電圧に設定されたITO のような透明な導電層で覆われた石英の筐体を使用することが好ましい。また、接地される周囲の導電体は、光の伝播を妨げないメッシュ又は網であってもよい。
【0040】
しかしながら、このような構成は、プラズマ源を囲む筐体が導電性である場合に調整される必要がある。実際にはこの場合、カプラの1本以上の数が何であれ、アンテナ及びカプラの略4分の1波長の値と周波数が略一致する場合、アンテナに関して通常計算される周波数に(10%以内で)非常に近い共振周波数が常に見つけられる。共振周波数は、最初に選択された周波数付近で周波数を単に変えることにより、実験的且つ当業者による試行錯誤無しで容易に決定されてもよい。カプラの数が何であれ、3本のカプラを備えたシステムに関して得られる電場と略同一の電場が得られる。更に、本発明の光源、直流プラズマ源又はイオン源として使われる場合を以下に述べる。実際には、使用方法に応じて、特定のプラズマ形状を有することが利点であり、例えば、多くのカプラが設けられている場合に得られるような拡張性プラズマ、又は中央のアンテナの周りに配置されたD.C.カプラリングが得られる。
【0041】
3本のカプラのみが使用される場合の本発明の使用例を、説明及び図面を簡略化して以下に説明するが、特にプラズマ発生システムが閉鎖型システムである(すなわち、導電性媒体に囲まれている)場合には任意の数のカプラが用いられてもよい。
【0042】
図4に図示されているように、非常に概略的に示されたプラズマ源は、アンテナ3 及び3本のカプラ6,7,8 の周りに金属製の筐体12を備えてもよく、支持体1 の反対側にあるロッドの端部の側で開放してもよい。そのため、特にロッドの方向と平行な磁場B が磁石システム13によって生成される場合、ロッドの端部を越えて延びるプラズマ領域14が生成される。プラズマ領域14は、ロッドの自由端部の前に設けられた基板(不図示)に作用するために従来通り使用されてもよい。
【0043】
図5は、イオン源の作製へのプラズマ源の使用を非常に概略的に示している。図5の最上部は、図4と同一である。しかしながら、ここでは、キャビティが、開口部22を有する伝導板21により、アンテナ3 及びカプラ6,7,8 の端部の側で閉じられている。加速電極23,24 が、対象物26に向いたビーム25内のイオンを抽出すべく設けられている。言うまでもなく、組立体は閉じられて、イオンビームの生成が望まれる低圧ガス又はガス種で充填されている。更に、従来通りに、対象物の射突が望まれる種を分離することを意図したモノクロメータ、例えばウィーンフィルタが、イオンビームの行程内に挿入される。
【0044】
尚、様々なプレートのバイアシングを適切に選択するならば、電子ビームもプラズマから抽出されてもよい。
【0045】
本発明の実施形態の様態によれば、図6A及び6Bに示されているように、拡張性プラズマ源の作製に必要なコンパクト性及び低い励起電力が利用されている。
【0046】
図6A及び6Bは、多数のプラズマセル30が並設されている組立体を夫々示す正面図及び底面図であり、各プラズマセル30は例えば図4に図示された構造を有している。各プラズマセル30は、ブロックとして参照番号31で示されたトランジスタを有する高周波生成発振器に関連付けられている。関連する寸法を考慮すると、(プラズマ点火のための)1乃至3ワットのピーク電力と略0.2 乃至0.5 ワットの定常状態の電力とを供給するトランジスタを有する高周波生成発振器を各プラズマセル30と関連付けるのに十分な空間がある。このようなセルパネル構造の利点は、プラズマ膨張場を生成するための磁石32が2つの隣接セルのための磁石として使用されるように配置されてもよいということである。
【0047】
一例として、各プラズマセル30は、直径が約1.5 乃至2.5 cmである筒状セルであってもよく、プラズマセル30は、約2乃至4cmの間隔で配置されてもよい。
【0048】
言うまでもなく、得られた拡張性プラズマ源は、プラズマ源としてそのまま使用されてもよく、又は、例えば半導体部品の作製の際のイオン注入に使用可能な拡張性イオン源を作製するために、図5に図示されたタイプの加速システムに関連付けられてもよい。
【0049】
各プラズマセルに特定の励起のための発振器を関連付ける利点は、各プラズマセルの強度を、全て等しくするために、又は逆に、選択されたプラズマ密度分布プロフィールを得るために正確に設定され得るということである。
【0050】
尚、簡略化のために、少数のプラズマセルのみが図6A及び6Bに示されているが、本発明に係る構造は、例えば約100 以上の多数のプラズマセルのタイリング(tiling)に十分適している。
【0051】
本発明は、一般的に説明されているが、多くの変形例を有することが可能である。特に、文言「ロッド」がアンテナ及び各カプラを意味するために使用されていても、これらの要素が夫々、導体要素又は導体で覆われた要素であってもよく、機械的強度が十分な場合には例えばワイヤであってもよいと理解すべきである。このようなカプラは、プラズマ領域に特定の形状を与えるため、又は光学反射機能をもたせるために、断面が非円形である筒状の要素であってもよい。
【0052】
光源を提供すべくプラズマ源に一般に使用される、キセノン、アルゴン、窒素のような様々なガスが使用されてもよい。プラズマ源自体として又はイオン源として使用されるプラズマ源の場合には、PH3,B2H6,SF6,CH4のような所望の活性種を供給することが可能な要素がガスに混合される。
【0053】
本発明の特定の実施形態が説明されている。様々な変更及び調整が当業者に想起される。特に、寸法は一例として与えられているに過ぎない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスプラズマ源に関し、特には、高周波電磁放射と低圧ガスとの相互作用によってプラズマが得られるプラズマ源に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁放射を低圧ガスに適用することによって、ガスがイオン化され、高周波電磁場の強度が十分である領域にプラズマを生成することが知られている。プラズマ点火を行い、条件(パッシェン(Paschen )条件)を維持するには、一般的に比較的強力な高周波源を用いる必要があり、マグネトロンが一般に用いられている。マグネトロンは、相応なコストで(約10乃至100 ワットrms 以上の)大きな電力を供給可能であるという利点を有しており、このため、点火条件に達することがより容易になる。しかしながら、マグネトロンとプラズマの生成が望まれている領域との間でこの電力を搬送して適合させるために、導波管、冷却システム、真空処理装置等の寸法のような重大な寸法的及び技術的制約が伴う。
【0003】
更に、トランジスタ発振器を用いた(周波数が0.4 乃至10GHz でありセンチメートル波の電磁場の)高周波源が知られている。携帯電話及びWIFI通信システムの分野で広く使用されているこのような高周波源は現在、電力が10ワット未満である(例えば、0.2 乃至5ワットの範囲内である)場合にコスト効率が良く、小さな寸法になる。
【0004】
プラズマ源が利用可能であると、多くの適用がこのようなプラズマ源を用いて可能になる。例えば、プラズマ生成領域のすぐ近くに配置された材料の処理のためにプラズマ源が有効に使用されてもよい。また、プラズマ源が光源として使用されてもよい。更に、プラズマ源が、プラズマ生成領域から抽出されるイオンのイオン源として使用されてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5936352号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、既存の装置の不利点の少なくとも一部を回避するプラズマ源の作製を目的とする。
【0007】
本発明の実施形態の更に具体的な目的は、高周波トランジスタ発振器により励起され得るプラズマ源を提供することである。
【0008】
本発明の実施形態の別の目的は、小さな寸法のプラズマ源を作製することである。
【0009】
本発明の実施形態の別の目的は、拡張性プラズマ源を作製することである。
【0010】
本発明の実施形態の別の目的は、表面積が大きなプラズマ源を作製するために、パネルに組み立てられ得るプラズマ源を作製することである。
【0011】
本発明の実施形態の別の目的は、特には光源の作製に十分適したプラズマ源を作製することである。
【0012】
本発明の実施形態の別の目的は、特にはイオン源の作製に十分適したプラズマ源を作製することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これら及び他の目的の全て又は一部を達成するために、本発明の実施形態は、4分の1波長アンテナを構成する第1のロッドを備えており、高周波信号により励起されるプラズマ源であって、前記第1のロッドは、該第1のロッドと略同一の長さを有し基準電圧に設定されたカプラを構成する少なくとも1本の平行なロッドに囲まれており、前記カプラを構成するロッドは、前記第1のロッドの周りに4分の1波長の約半分乃至20分の1の距離を置いてラジアル方向に規則的に配置されていることを特徴とするプラズマ源を提供する。
【0014】
本発明の実施形態によれば、前記プラズマ源は、高周波トランジスタ発振器から構成されている0.4 乃至10GHz の範囲内の高周波発生器に関連付けられている。
【0015】
本発明の実施形態によれば、前記プラズマ源は、光源の作製に使われており、3本のカプラを備えている。
【0016】
本発明の実施形態によれば、前記プラズマ源は、透明な導電性筐体に囲まれている。
【0017】
本発明の実施形態によれば、前記プラズマ源は、導電性メッシュで覆われた絶縁性筐体に囲まれている。
【0018】
本発明の実施形態によれば、前記プラズマ源は、プラズマが存在する状態での基板の打込みに使われており、前記ロッドの端部が軸方向の磁場に配置されており、前記プラズマ源は前記基板から短距離の位置に配置されており、プラズマ中での生成が望まれている原子種に応じて選択された真空雰囲気に、組立体が囲まれている。
【0019】
本発明の実施形態によれば、前記プラズマ源は、イオン注入装置の作製に使われており、3本のロッドを囲むチャンバが金属製のチャンバであり、該チャンバは、前記ロッドの端部に平行であり開口部を有して加速電極に対向して配置された面を有している。
【0020】
本発明の実施形態によれば、並設された上記の複数の基本的なプラズマ源の組立体を備えた拡張性プラズマ源が設けられており、各基本的なプラズマ源は、高周波トランジスタ発振器に関連付けられている。
【0021】
本発明の実施形態によれば、前記拡張性プラズマ源では、隣接した基本的なプラズマ源に同一の磁石が軸方向の磁場を加える。
【0022】
本発明の前述及び他の目的、特徴及び利点を、添付図面を参照して本発明を限定するものではない具体的な実施形態について以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】光源として使用される本発明の実施形態に係るプラズマ源を示す斜視図である。
【図1B】光源として使用される本発明の実施形態に係るプラズマ源を示す正面図である。
【図1C】光源として使用される本発明の実施形態に係るプラズマ源を示す図1Bの線CCに沿った断面図である。
【図2A】プラズマ生成用のガスが絶縁材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図2B】プラズマ生成用のガスが絶縁材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図2C】プラズマ生成用のガスが絶縁材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図2D】プラズマ生成用のガスが絶縁材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図2E】プラズマ生成用のガスが絶縁材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図2F】プラズマ生成用のガスが絶縁材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図3A】プラズマ生成用のガスが導電材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図3B】プラズマ生成用のガスが導電材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図3C】プラズマ生成用のガスが導電材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図3D】プラズマ生成用のガスが導電材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図3E】プラズマ生成用のガスが導電材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図3F】プラズマ生成用のガスが導電材料製の筐体内に封入されている場合のプラズマ源の構成のための等電位線を示す図である。
【図4】プラズマ発生器として使用される本発明の実施形態に係るプラズマ源を簡略化して示す正面図である。
【図5】イオン源として使用される本発明の実施形態に係るプラズマ源を簡略化して示す正面図である。
【図6A】本発明の実施形態に係るプラズマ源の組立体を簡略化して示す断面図である。
【図6B】本発明の実施形態に係るプラズマ源の組立体を簡略化して示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1A,1B,1Cはプラズマ源を示しており、プラズマ源は、対象とした周波数、例えば約2.4 乃至5.8GHzの周波数で略4分の1波長アンテナを構成する中心ロッド3 を真空の筐体内の支持体1 に備えている。従って、周波数が約2.4GHzである場合、4分の1波長λ/4が、中心ロッド3 の長さに相当する約3cmの値を有する。この中心ロッド3 は、領域4 によって支持体1 から離れており、高周波電圧UHF により励起される。中心ロッド3 は、等距離で規則的に配置された3本のロッド6,7,8 に囲まれており、ロッド6,7,8 は、中心ロッド3 と略同一の長さを有しており、カプラとして機能する。これら3本のロッド6,7,8 は、D.C.基準電圧、例えば支持体1 によって形成された接地面に接続されている。尚、図1Bの表示では、ロッド7 の後ろに配置されたロッド8 は見えない。一例としてこのプラズマ源は、光源を作製するために、例えば石英製の透明な筐体9 に配置されているとして図示されている。
【0025】
カプラを構成する夫々のロッド6,7,8 とアンテナを構成する中心ロッド3 との間のラジアル距離は、4分の1波長と比較して小さく、例えば、4分の1波長より約5分の1乃至15分の1小さく、好ましくは4分の1波長より約10分の1小さい。従って、4分の1波長が3cmである例では、カプラを構成する複数のロッドの夫々とアンテナを構成するロッドとの間のラジアル距離として、例えば約3mmが選択される。
【0026】
このような構造では、アンテナを構成するロッドが励起されると、点線の輪郭によって略画定されるプラズマ領域10にプラズマが生成されることが認識され得る(図1B及び1C参照)。プラズマ領域10は、支持体1 の反対側にあるロッドの端部近くに置かれ、主に中心ロッド3 からカプラを構成する3本のロッド6,7,8 に延びている。これは、高周波電磁場がこのプラズマ領域10に集中していることを示している。この電磁場の局所的な特性により、比較的低い電力がプラズマの点火及び条件の維持のために使用されてもよい。一方で、一般的にはプラズマ生成条件(パッシェン条件)に達するために、約5乃至15ワットの高周波電力が、通常放射の4分の1波長アンテナに加えられなければならないが、ここでは、比較的低い0.5 乃至2ワットの電力があれば十分プラズマを点火することが可能であり、プラズマが1ワット未満の電力で維持されることが認識され得る。2.5 mmに亘って20kV/mの電場が、磁場が存在しない状態での水素のための一般的な点火閾値であるとみなされている。
【0027】
従って、このような構造は重要な利点を有しており、すなわち、アンテナは、携帯電話に現在使用されているタイプの、高周波トランジスタ発振器のような比較的低い電力源に励起されてもよい。その結果、プラズマ源及びその励起システムは、体積及び寸法が小さくてもよい。これにもかかわらず、プラズマ領域では、プラズマは非常に強く、非常に明るい光源が得られる。
【0028】
光源としての作動では、アルゴン/水銀又はキセノン/水銀又は重水素のようなガスが使用されてもよい。本発明のこの実施形態の利点は、励起のための高周波源及びランプが、低消費のランプのように冷却無しで作動されてもよいということである。
【0029】
より一般的には、本発明は、4分の1波長アンテナを備えたプラズマ発生システムの提供を目的としており、前記4分の1波長アンテナは、該4分の1波長アンテナから短距離の位置に配置された一又は複数のカプラに関連付けられている。
【0030】
図2A乃至2Fは、プラズマ生成用のガスが絶縁材料製の筐体内に封入されている場合の様々なプラズマ源の構成のための等電位線を示している。このため、プラズマ発生システムは開放していると言われる。このようなプラズマ発生システムは非共振である。略4分の1波長アンテナ3 と4分の1波長ロッドの形態の0,1,2,3,4,8 本のカプラを夫々関連付けた構成を検討している。カプラが、設けられている場合にはアンテナの4分の1波長の約10分の1のラジアル距離(λ/40)にある場合を検討している。電場に関して、一方では、カプラが設けられている場合にはアンテナからカプラの方向にλ/80の距離に設けられたポイントM1で検討して、他方では、プラズマ生成用であってもよいガスを封入するために用いられるハウジング上のポイントM2で検討している。この例では、ポイントM2はアンテナから約λ/10のラジアル距離にある。
【0031】
図2A乃至2Fは、直径が夫々2.5mm であり高さが夫々27mmであるアンテナ及びカプラの端部から2mm離れた面における断面図に相当する。夫々の場合で、アンテナが2.45GHz の周波数且つ5ワットの電力で励起されているとみなされる。
【0032】
図2A乃至2Fの夫々では、20kV/mの電界線が点線で示されており、これは、点線の輪郭内では電場が20kV/mより大きいことを意味している。以下の表Iは、夫々の場合におけるポイントM1及びポイントM2での電場の値をkV/mで示している。
【0033】
【表1】
【0034】
効率的な光源を得るために、最大電場を、プラズマを点火可能とすべく十分高く(約2.5 mmに亘って20kV/mより大きく)する必要があり、ポイントM2を超えて筐体外に放射される電磁場のために、電磁放射基準を順守すべく可能な限り低くする必要がある。
【0035】
従って、一方では、3本のカプラによって画定された三角形内に略設けられた20kV/mを越える強力な電場領域がそこに存在し、他方では、筐体内の電場は0.3 kV/m未満と非常に低いことを考慮すると、1本のアンテナ及び3本のカプラを備えたプラズマ発生システムは可能な最良の折衷案の内の1つであると認識され得る。逆に、ランプを作製するために、カプラは光放射を可能な限り小さく遮らなければならず、これは、3本のカプラのみが使用される場合に相当する。
【0036】
図3A乃至3Fは、アンテナが0,1,2,3,4,8 本のカプラと夫々関連付けられている構造を示している。ここでは、導電性領域が筐体に配置されているか、筐体を構成しているか、又は筐体内に存在している。この導電性領域は、カプラのように接地されていることが好ましい。この場合、筐体の外側の電場は0である。このようなプラズマ発生システムは閉じていると言われ、共振である。
【0037】
図3A乃至3Fは、印加電力がわずか1ワットであり、周波数が略2.45GHz である場合に相当する。尚、プラズマ発生システムが、3本のカプラを備えている場合にこの2.45GHz の周波数に関して共振する場合、1,2,4,8 本のカプラを備えたプラズマ発生システムは、2.51,2.48,2.42,2.39 GHz の周波数に関して夫々共振する。
【0038】
ここでも、図3A乃至3Fの夫々には、20kV/mの電界線が点線で示されている。電場は開放型システムの場合より更に集中し、点火閾値は1ワットであるか、又は0.2 ワットでもよい。
【0039】
上記の結果として、光源を作製するために、中央のアンテナ及び3本の周辺のカプラを備えており、これら全てが高周波印加電圧(UHF )に関して略4分の1波長を有するシステムが好ましい。この構造は導電性筐体に配置されていることが好ましい。従って、光源を作製するために、透明な導電性筐体、例えば、接地電圧に設定されたITO のような透明な導電層で覆われた石英の筐体を使用することが好ましい。また、接地される周囲の導電体は、光の伝播を妨げないメッシュ又は網であってもよい。
【0040】
しかしながら、このような構成は、プラズマ源を囲む筐体が導電性である場合に調整される必要がある。実際にはこの場合、カプラの1本以上の数が何であれ、アンテナ及びカプラの略4分の1波長の値と周波数が略一致する場合、アンテナに関して通常計算される周波数に(10%以内で)非常に近い共振周波数が常に見つけられる。共振周波数は、最初に選択された周波数付近で周波数を単に変えることにより、実験的且つ当業者による試行錯誤無しで容易に決定されてもよい。カプラの数が何であれ、3本のカプラを備えたシステムに関して得られる電場と略同一の電場が得られる。更に、本発明の光源、直流プラズマ源又はイオン源として使われる場合を以下に述べる。実際には、使用方法に応じて、特定のプラズマ形状を有することが利点であり、例えば、多くのカプラが設けられている場合に得られるような拡張性プラズマ、又は中央のアンテナの周りに配置されたD.C.カプラリングが得られる。
【0041】
3本のカプラのみが使用される場合の本発明の使用例を、説明及び図面を簡略化して以下に説明するが、特にプラズマ発生システムが閉鎖型システムである(すなわち、導電性媒体に囲まれている)場合には任意の数のカプラが用いられてもよい。
【0042】
図4に図示されているように、非常に概略的に示されたプラズマ源は、アンテナ3 及び3本のカプラ6,7,8 の周りに金属製の筐体12を備えてもよく、支持体1 の反対側にあるロッドの端部の側で開放してもよい。そのため、特にロッドの方向と平行な磁場B が磁石システム13によって生成される場合、ロッドの端部を越えて延びるプラズマ領域14が生成される。プラズマ領域14は、ロッドの自由端部の前に設けられた基板(不図示)に作用するために従来通り使用されてもよい。
【0043】
図5は、イオン源の作製へのプラズマ源の使用を非常に概略的に示している。図5の最上部は、図4と同一である。しかしながら、ここでは、キャビティが、開口部22を有する伝導板21により、アンテナ3 及びカプラ6,7,8 の端部の側で閉じられている。加速電極23,24 が、対象物26に向いたビーム25内のイオンを抽出すべく設けられている。言うまでもなく、組立体は閉じられて、イオンビームの生成が望まれる低圧ガス又はガス種で充填されている。更に、従来通りに、対象物の射突が望まれる種を分離することを意図したモノクロメータ、例えばウィーンフィルタが、イオンビームの行程内に挿入される。
【0044】
尚、様々なプレートのバイアシングを適切に選択するならば、電子ビームもプラズマから抽出されてもよい。
【0045】
本発明の実施形態の様態によれば、図6A及び6Bに示されているように、拡張性プラズマ源の作製に必要なコンパクト性及び低い励起電力が利用されている。
【0046】
図6A及び6Bは、多数のプラズマセル30が並設されている組立体を夫々示す正面図及び底面図であり、各プラズマセル30は例えば図4に図示された構造を有している。各プラズマセル30は、ブロックとして参照番号31で示されたトランジスタを有する高周波生成発振器に関連付けられている。関連する寸法を考慮すると、(プラズマ点火のための)1乃至3ワットのピーク電力と略0.2 乃至0.5 ワットの定常状態の電力とを供給するトランジスタを有する高周波生成発振器を各プラズマセル30と関連付けるのに十分な空間がある。このようなセルパネル構造の利点は、プラズマ膨張場を生成するための磁石32が2つの隣接セルのための磁石として使用されるように配置されてもよいということである。
【0047】
一例として、各プラズマセル30は、直径が約1.5 乃至2.5 cmである筒状セルであってもよく、プラズマセル30は、約2乃至4cmの間隔で配置されてもよい。
【0048】
言うまでもなく、得られた拡張性プラズマ源は、プラズマ源としてそのまま使用されてもよく、又は、例えば半導体部品の作製の際のイオン注入に使用可能な拡張性イオン源を作製するために、図5に図示されたタイプの加速システムに関連付けられてもよい。
【0049】
各プラズマセルに特定の励起のための発振器を関連付ける利点は、各プラズマセルの強度を、全て等しくするために、又は逆に、選択されたプラズマ密度分布プロフィールを得るために正確に設定され得るということである。
【0050】
尚、簡略化のために、少数のプラズマセルのみが図6A及び6Bに示されているが、本発明に係る構造は、例えば約100 以上の多数のプラズマセルのタイリング(tiling)に十分適している。
【0051】
本発明は、一般的に説明されているが、多くの変形例を有することが可能である。特に、文言「ロッド」がアンテナ及び各カプラを意味するために使用されていても、これらの要素が夫々、導体要素又は導体で覆われた要素であってもよく、機械的強度が十分な場合には例えばワイヤであってもよいと理解すべきである。このようなカプラは、プラズマ領域に特定の形状を与えるため、又は光学反射機能をもたせるために、断面が非円形である筒状の要素であってもよい。
【0052】
光源を提供すべくプラズマ源に一般に使用される、キセノン、アルゴン、窒素のような様々なガスが使用されてもよい。プラズマ源自体として又はイオン源として使用されるプラズマ源の場合には、PH3,B2H6,SF6,CH4のような所望の活性種を供給することが可能な要素がガスに混合される。
【0053】
本発明の特定の実施形態が説明されている。様々な変更及び調整が当業者に想起される。特に、寸法は一例として与えられているに過ぎない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号により励起されるプラズマ源において、
4分の1波長アンテナを構成する第1のロッド(3) を備えており、
前記第1のロッド(3) は、該第1のロッドと略同一の長さを有し基準電圧に設定されたカプラを構成する少なくとも1本の平行なロッド(6,7,8) に囲まれており、
前記カプラを構成するロッドは、前記第1のロッドの周りに4分の1波長の約半分乃至20分の1の距離を置いてラジアル方向に規則的に配置されており、
前記アンテナ及び前記カプラは同一の方向に向いていることを特徴とするプラズマ源。
【請求項2】
高周波トランジスタ発振器から構成されている0.4 乃至10GHz の範囲内の高周波発生器に関連付けられていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項3】
光源の作製への請求項1のプラズマ源の使用方法であって、
前記プラズマ源は3本のカプラを備えていることを特徴とする使用方法。
【請求項4】
前記プラズマ源は、透明な導電性筐体に囲まれていることを特徴とする請求項3に記載の使用方法。
【請求項5】
前記プラズマ源は、導電性メッシュで覆われた絶縁性筐体に囲まれていることを特徴とする請求項3に記載の使用方法。
【請求項6】
プラズマが存在する状態での基板の打込みへの請求項1のプラズマ源の使用方法であって、
前記ロッドの端部が軸方向の磁場に配置されており、
前記プラズマ源は、前記基板から短距離の位置に配置されており、
プラズマ中での生成が望まれている原子種に応じて選択された真空雰囲気に、組立体が囲まれていることを特徴とする使用方法。
【請求項7】
イオン注入装置を作製すべく、3本のロッドを囲むチャンバが金属製のチャンバであり、該チャンバは、前記ロッドの端部に平行であり開口部を有して加速電極に対向して配置された面を有していることを特徴とする請求項6に記載の使用方法。
【請求項8】
並設された請求項1に記載の複数の基本的なプラズマ源の組立体を備えた拡張性プラズマ源であって、
各基本的なプラズマ源は、高周波トランジスタ発振器に関連付けられていることを特徴とする拡張性プラズマ源。
【請求項9】
同一の磁石が隣接した基本的なプラズマ源に軸方向の磁場を加えることを特徴とする請求項8に記載の拡張性プラズマ源。
【請求項1】
高周波信号により励起されるプラズマ源において、
4分の1波長アンテナを構成する第1のロッド(3) を備えており、
前記第1のロッド(3) は、該第1のロッドと略同一の長さを有し基準電圧に設定されたカプラを構成する少なくとも1本の平行なロッド(6,7,8) に囲まれており、
前記カプラを構成するロッドは、前記第1のロッドの周りに4分の1波長の約半分乃至20分の1の距離を置いてラジアル方向に規則的に配置されており、
前記アンテナ及び前記カプラは同一の方向に向いていることを特徴とするプラズマ源。
【請求項2】
高周波トランジスタ発振器から構成されている0.4 乃至10GHz の範囲内の高周波発生器に関連付けられていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項3】
光源の作製への請求項1のプラズマ源の使用方法であって、
前記プラズマ源は3本のカプラを備えていることを特徴とする使用方法。
【請求項4】
前記プラズマ源は、透明な導電性筐体に囲まれていることを特徴とする請求項3に記載の使用方法。
【請求項5】
前記プラズマ源は、導電性メッシュで覆われた絶縁性筐体に囲まれていることを特徴とする請求項3に記載の使用方法。
【請求項6】
プラズマが存在する状態での基板の打込みへの請求項1のプラズマ源の使用方法であって、
前記ロッドの端部が軸方向の磁場に配置されており、
前記プラズマ源は、前記基板から短距離の位置に配置されており、
プラズマ中での生成が望まれている原子種に応じて選択された真空雰囲気に、組立体が囲まれていることを特徴とする使用方法。
【請求項7】
イオン注入装置を作製すべく、3本のロッドを囲むチャンバが金属製のチャンバであり、該チャンバは、前記ロッドの端部に平行であり開口部を有して加速電極に対向して配置された面を有していることを特徴とする請求項6に記載の使用方法。
【請求項8】
並設された請求項1に記載の複数の基本的なプラズマ源の組立体を備えた拡張性プラズマ源であって、
各基本的なプラズマ源は、高周波トランジスタ発振器に関連付けられていることを特徴とする拡張性プラズマ源。
【請求項9】
同一の磁石が隣接した基本的なプラズマ源に軸方向の磁場を加えることを特徴とする請求項8に記載の拡張性プラズマ源。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【公表番号】特表2012−506116(P2012−506116A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531547(P2011−531547)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051986
【国際公開番号】WO2010/043831
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(500531141)セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク (84)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051986
【国際公開番号】WO2010/043831
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(500531141)セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク (84)
【Fターム(参考)】
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