説明

低電圧エレクトロルミネッセンス装置用有機素子

カソード、発光層及びアノードをその順序で含み、且つ前記カソードと前記発光層との間に配置される、2−(2−ヒドロキシフェニル)フェナントロリン誘導体のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含有する更なる層を有するOLED装置。かかる装置は、良好な輝度を保持しつつ、低減された駆動電圧を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2005年10月26日に出願され、現在放棄された米国出願第11/259,290号の一部継続出願である2006年8月9日に出願された米国出願第11/501,336号の継続出願である2007年4月30日に出願された米国出願第11/796,953号の一部継続出願であり、それらの各々は、それらの全てを参照することによって本明細書中に援用される。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、発光層、及び発光層とカソードとの間のシクロメタル化2−(2−ヒドロキシフェニル)フェナントロリンを含有する層を有する有機発光ダイオード(OLED)エレクトロルミネッセンス(EL)装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[発明の背景]
有機エレクトロルミネッセンス(EL)装置は20年以上にわたって知られているが、その性能の制限は、多くの望ましい用途にとって障害となっていた。最も単純な形態において、有機EL装置は、正孔注入用のアノードと、電子注入用のカソードと、これらの電極間に挟まれ、発光を生じる電荷再結合を支援する有機媒体とから構成される。また、これらの装置は、有機発光ダイオード又はOLEDとも一般に称される。より初期の有機EL装置の代表例が、Gurneeらの米国特許第3,172,862号(1965年3月9日発行);Gurneeの米国特許第3,173,050号(1965年3月9日発行);Dresner、「Double Injection Electroluminescence in Anthracene」、RCA Review、第30巻、322頁、1969年;および、Dresnerの米国特許第3,710,167号(1973年1月9日発行)である。これらの装置における有機層は、通常、多環芳香族炭化水素から構成されており、非常に厚かった(1μmをはるかに超えていた)。結果として、動作電圧が非常に高く、多くの場合には100Vを超えていた。
【0004】
より近年の有機EL装置は、極めて薄い層(例えば、1.0μm未満)からなる有機EL素子をアノードとカソートとの間に含む。本明細書中において、用語「有機EL素子」は、アノードとカソートとの間の層を包含する。厚さを小さくすることは、有機層の抵抗を低下させ、かつ、はるかに低い電圧で作動する装置を可能にする。基本的な2層EL装置構造(これは米国特許第4,356,429号に最初に記載された)において、アノードに隣接するEL素子の一方の有機層が、正孔を輸送するために特に選択されており、従って、これは正孔輸送層と呼ばれ、もう一方の有機層は、電子を輸送するために特に選択されており、電子輸送層と呼ばれる。有機EL装置内における注入された正孔及び電子の再結合により、効率的なエレクトロルミネセンスがもたらされる。
【0005】
これらの初期の発明以降、例えば、米国特許第5,061,569号、同第5,409,783号、同第5,554,450号、同第5,593,788号、同第5,683,823号、同第5,908,581号、同第5,928,802号、同第6,020,078号及び同第6,208,077号などに開示されているように、装置材料の更なる改良が、色、安定性、発光効率及び製造可能性などの特性における改善された性能をもたらした。
【0006】
米国特許第6,653,654号は、発光ドーパントとしてビス−2,9−(2−ヒドロキシフェニル)フェナントロリンの第10族金属錯体をもつOLEDを開示する。
【0007】
米国特許第6,468,676号は、発光層とカソードとの間に配置される電子注入層のために、フェナントロリン錯体などの有機アルカリ金属錯体の使用を教示する。
【0008】
米国特許第6,396,209号は、電子輸送有機化合物と、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン又は希土類金属イオンの少なくとも1つを2−(ヒドロキシフェニル)ピリジンと共に含有する有機金属錯体化合物との混合層を含むOLED構造を記載する。同様に、米国特許第6,703,180号及び米国特許第7,198,859号もまた、カソード側の発光層に隣接する層における2−(ヒドロキシフェニル)ピリジンの金属錯体を教示する。国際公開第2004/081017号は、電子輸送層において2−(ヒドロキシフェニル)ピリジンのアルミニウム錯体をもつOLEDを開示する。
【0009】
米国特許公開第2004/0207318号は、電子輸送層における有機金属錯体、及び電子注入層における電子輸送物質と有機金属塩(LiQなど)との混合物をもつOLED装置を開示する。
【0010】
キノリン酸リチウム(リチウム8−ヒドロキシキノレート、リチウム8−キノレート、8−キノリノラトリチウム又はLiqとしても知られる)などの有機金属錯体は、EL装置において使用されている(例えば、国際公開第0032717号及び米国特許公開第2005/0106412号参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、これらの装置は、低駆動電圧と組み合わせた高輝度の点において、所望の全てのEL特性を有していない。したがって、これらの発展にも関らず、良好な輝度を保持しつつ、OLED装置の駆動電圧を低減する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[発明の概要]
本発明の1つの実施形態は、カソード、発光層及びアノードをその順序で含み、且つ前記カソードと前記発光層との間に配置される、2−(2−ヒドロキシフェニル)フェナントロリン誘導体のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含有する更なる層を有するOLED装置を提供する。他の実施形態において、前記更なる層は、アントラセン又はテトラセンから選択される縮合環芳香族化合物を10体積%よりも多く更に含有する。
【0013】
また他の実施形態において、前記更なる層は前記発光層に直接隣接しており、前記更なる層と前記カソードとの間に配置される、有機アルカリのシクロメタル化錯体又はアルカリ土類金属錯体を含有する追加層が存在する。或いは、前記更なる層は前記カソードに直接隣接しており、前記更なる層と前記発光層との間に配置される追加層が存在する。
【発明の効果】
【0014】
このような装置は、良好な輝度を保持しつつ、低減された駆動電圧を示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の装置の1つの実施形態の概略断面図である。
【図2】比較及び本発明の装置の動作(輝度及び電圧)寿命データを示すグラフである。
【図3】比較及び本発明の装置の動作(輝度及び電圧)寿命データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の全ての態様におけるOLED装置は、カソード、発光層及びアノードをその順序で含む。本明細書で使用される場合、1つの層が他の層と並べて配置され且つ共通の境界を共有するなら、2つの層は「隣接する」。
【0017】
本発明の目的のため、「錯体」、「有機錯体」、及び「シクロメタル化錯体」という用語は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属と有機分子との配位結合又は供与結合を介した錯体形成を表す。配位子として働く分子は本質的に単座、二座、三座又は多座であり得るが、これは配位子中に存在し得る配位原子の数を示す。金属イオンの周囲の配位子の数は、錯体を電気的に中性とするのに十分である必要があることを理解すべきである。また、錯体は種々の結晶形態で存在する場合があり、形態に応じて2つ以上の金属イオンが存在し、錯体を電気的に中性とするのに十分な配位子が存在し得ることを理解すべきである。
【0018】
配位結合又は供与結合の定義は、Grant & Hackh’s Chemical Dictionaryの91頁に見ることができる。要するに、配位結合又は供与結合は、O又はNなどの電子の豊富な原子が、Al又はBなどの電子不足の原子に電子対を供与する場合に形成される。かかる例の1つは、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(Alqとも称される)において見られるが、この場合、キノリン部分にある窒素が、その孤立電子対をアルミニウム原子に供与することで複素環又はシクロメタル化環(錯体と呼ばれる)が形成され、その結果Alqに合計で3つの縮合環が生じる。同じことがLiqにも当てはまる。
【0019】
本明細書中及び本願全体を通して使用される場合、「炭素環」及び「複素環」又は「炭素環基」及び「複素環基」という用語は、一般に、Grant & Hackh’s Chemical Dictionary, 第5版, McGraw-Hill Book Companyによって定義されるようなものである。炭素環は、炭素原子のみを含有する任意の芳香環系又は非芳香環系であり、複素環は、炭素原子と、窒素(N)、酸素(O)、硫黄(S)、リン(P)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、ホウ素(B)、ベリリウム(Be)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び環系を形成するのに有用な、周期表に見られる他の元素等の非炭素原子との両方を含有する任意の芳香環系又は非芳香環系である。また、本発明の態様の目的上、配位結合又は供与結合を含む環も複素環の定義に含まれる。
【0020】
本発明の第1の実施形態において、更なる層は、2−(2−ヒドロキシフェニル)フェナントロリン誘導体のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含有する。2−(2−ヒドロキシフェニル)置換基及びフェナントロリン核は、さらに置換されていてもよく、縮合環を含んでもよい。アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、アニオン性水酸基に対して配位結合及びフェナントロリンの窒素の1つ又は両方に対して供与結合を形成するカチオンである。当該金属は、好ましくはアルカリ金属であり、最も好ましくはリチウムである。
【0021】
望ましくは、2−(2−ヒドロキシフェニル)フェナントロリン誘導体は、式(MC)に従う。
【0022】
【化1】

【0023】
式中、Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり;R1及びR2は置換基であり;並びにnは0〜7及びpは0〜4である。式(MC)中、Mは、アニオン性水酸基に対して配位結合及びフェナントロリンの窒素の1つ又は両方に対して供与結合を形成する。
【0024】
置換基R1及びR2は、任意の置換基であってよく、好ましくはアルキル又はアリールである。アリールとしては、フェニル、ビフェニル及びナフチルなどの芳香族炭素環式化合物、並びにピリジニル、チオフェニル及びベンズイミダゾイルなどの芳香族複素環式化合物を挙げることができる。任意の2つの隣接するR1置換基又は任意の2つの隣接するR2置換基は、結合して縮合環系を形成してもよい。好ましくは、nは0又は1であるが、pは0又は1のいずれかである。最も好ましいのは、n及びpの両方が0の場合である。
【0025】
本発明の2−(2−ヒドロキシフェニル)フェナントロリン誘導体のいくつかの具体例は以下の通りである。
【0026】
【化2】

【0027】
【化3】

【0028】
【化4】

【0029】
本発明の第2の実施形態において、更なる層は、式(MC)の有機錯体に加えて、テトラセン又はアントラセンから選択される炭素環式縮合環芳香族化合物を10体積%よりも多く含む。好ましくは、炭素環式縮合環芳香族化合物は、更なる層の10%、20%、40%、或いは50%以上含まれる。このような場合において、式(MC)の有機錯体は、当該層の90%未満、80%、60%、或いは50%未満含まれる。しかしながら、式(MC)の有機錯体は、本発明の層の10〜90体積%、一般に25〜80体積%含まれることが最も望ましい。
【0030】
適切には、炭素環式縮合環芳香族化合物は、式(1)により表されるテトラセンであり得る。
【0031】
【化5】

【0032】
式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は、水素又は置換基として独立して選択され、但し、示された置換基のいずれかは結合して更なる縮合環を形成してもよい。1つの望ましい実施形態において、R1、R4、R7及びR10は水素を表し、R5、R6、R11及びR12は、独立して選択される芳香環基を表す。
【0033】
更なる実施形態において、テトラセンは、式(2)により更に表され得る。
【0034】
【化6】

【0035】
式(2)において、Ar1〜Ar4は、独立して選択される芳香族基、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基、4−ビフェニル基又は4−t−ブチルフェニル基を表す。1つの適切な実施形態において、Ar1及びAr4は同じ基を表し、Ar1及びAr4、Ar2及びAr3が独立して同じ基である。R1〜R4は、水素又は置換基(メチル基、t−ブチル基又はフルオロ基など)を独立して表す。1つの実施形態において、R1及びR4は水素ではなく、同じ基を表す。
【0036】
有用なテトラセンのいくつかの具体例は以下の通りである。
【0037】
【化7】

【0038】
【化8】

【0039】
【化9】

【0040】
【化10】

【0041】
【化11】

【0042】
第2の実施形態の他の態様において、炭素環式縮合環芳香族化合物はアントラセン基である。特に有用な化合物は、式(3)のものである。
【0043】
【化12】

【0044】
式(3)において、W9及びW10は、独立して選択される芳香族炭素環式基及び芳香族複素環式基を表す。好ましくは、W9及びW10は、フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基から独立して選択される。例えば、W9及びW10は、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、2−ビフェニル及び3−ビフェニルなどの基を表し得る。W1〜W8は、独立して選択される水素、アルキル基、芳香族炭素環式基及び芳香族複素環式基であり、好ましくは水素、第3級アルキル基及びアリール基である。本発明の特に有用な実施形態は、W9及びW10が芳香族炭素環式基、W7及びW3が水素、アルキル基及びアリール基から独立して選択される場合である。最も好ましくは、W7が水素、第3級アルキル基又はアリール基、W3が水素である。
【0045】
有用であるアントラセンのいくつかの具体例は以下の通りである。
【0046】
【化13】

【0047】
【化14】

【0048】
【化15】

【0049】
【化16】

【0050】
【化17】

【0051】
【化18】

【0052】
更なる層は発光しない。決して該層が相当量の光を生じることを意味しているわけではない。適切には、この層は、全ての光の5%未満、或いは該光の1%未満を発光し、望ましくは全く発光しない。最も一般的な場合において、式(5)などの式(MC)ではない有機金属錯体を含む縮合環芳香族化合物以外の他の電子輸送物質が存在してもよい。このような場合において、式(MC)は10体積%以上で存在することが好ましい。それがカソードと発光層との間の層のみである場合、更なる層の厚さは、一般に0.5〜200nm、適切には2〜100nm、望ましくは5〜50nmであり得る。
【0053】
本発明の他の実施形態において、更なる層は、カソードに直接隣接して接触し、更なる層と発光層との間に配置される追加層を含有する。望ましくは、追加層はアントラセンを含む。追加層のための適切なアントラセンは、更なる層における使用のために記載したものと同じである。追加層は、アントラセンに加えて、有機金属錯体を含む他の電子輸送物質、好ましくは、式(MC)、式(4’)又は式(5)によるものを含有してもよい。追加層は、少なくとも50%以上のアントラセンを含有することが望ましい。
【0054】
この出願に関し、2−(2−ヒドロキシフェニル)フェナントロリン誘導体のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を持つ更なる層の厚さは薄くあるべきであり、一般に0.5〜50nm、適切には1〜10nm、望ましくは5nm以下である。
【0055】
本発明の更に他の実施形態において、更なる層は、発光層に直接隣接し、且つ更なる層とカソードとの間に配置される、式(4’)により表される有機アルカリのシクロメタル化錯体又はアルカリ土類金属錯体を含有する追加層を更に含む。
【0056】
【化19】

【0057】
式中、Z及び破線の弧は、2又は3個の原子を表し、Mと5又は6員環を完成するのに必要な結合を表し;各Aは、H又は置換基を表し、各Bは、Z原子上の独立して選択される置換基を表し、ただし、2つ以上の置換基は結合して縮合環又は縮合環系を形成してもよく;jは0〜3及びkは1又は2であり;Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表し;m及びnは、錯体に中性電荷を与えるように選択される、独立して選択される整数である。
【0058】
式(4’)に従う1つの好ましい物質は、式(MC)に従う2−(2−ヒドロキシフェニル)フェナントロリン誘導体である。更なる層及び追加層の両方において同じ2−(2−ヒドロキシフェニル)フェナントロリン誘導体が存在し得るか、又はそれらは各層において異なる誘導体であってもよい。式(4’)に従う他の好ましい物質は、式(5)により表されるものである。
【0059】
【化20】

【0060】
式(5)において、Mは前述のようにアルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。1つの望ましい実施形態において、MはLi+を表す。ra及びrbは各々、独立して選択される置換基を表すが、ただし2つの置換基が結合して縮合環基を形成してもよい。かかる置換基の例としては、メチル基、フェニル基、フルオロ置換基、及び2つの置換基が結合して形成される縮合ベンゼン環基が挙げられる。式(5)において、tは1〜3であり、sは1〜3であり、nは1〜6の整数である。
【0061】
式(5)の特に望ましい錯体は、MC−1(Liq)である。Liqは、キノリン酸リチウム錯体(リチウム8−キノレートとしても知られるが、Liqと称されることもある)を与える、Li+と8−ヒドロキシキノリネートとの錯体である。Liqは、単一種として、又はLi66及びLinnなどの他の形態で存在し得る。式中、nは整数であり、qは8−ヒドロキシキノレート配位子又は誘導体である。
【0062】
式(4’)の金属錯体のいくつかの具体例は、式(MC)に含まれるものと同じであると共に、以下の通りである。
【0063】
【化21】

【0064】
【化22】

【0065】
【化23】

【0066】
【化24】

【0067】
【化25】

【0068】
本発明の全ての態様のOLED装置の構造は、装置が青色、緑色、赤色又は白色光を発光させ得るように、ホスト及びドーパント(発光物質としても知られている)の細心の選択によって構成され得る。さらに、当該装置は、2つ以上の発光層(例えば、白色光を生じるタンデム型EL装置など)を含み得る。本発明の全ての記載した態様において、本発明の層、更なる層及び追加層を、蛍光及びリン光の両方によって発光するOLED装置に適用することが理解されるべきである。すなわち、OLED装置は、本質的に三重項状態(triple)又は一重項状態(singlet)であり得る。本発明の利点は、蛍光装置及びリン光装置の両方を用いて実現し得る。
【0069】
本発明の他の態様において、本発明の層は、仕事関数が4.2eV未満の金属元素も含む。仕事関数の定義は、CRC Handbook of Chemistry and Physics、第70版,1989−1990、CRCプレス社、F−132頁に見ることができ、様々な金属の仕事関数の一覧はE−93頁及びE−94頁に見ることができる。かかる金属の典型的な例としては、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、La、Sm、Gd、Ybが挙げられる。1つの望ましい実施形態において金属はLiである。層に含まれる場合、金属元素は、層の全物質の0.1体積%〜15体積%の量、一般に0.1体積%〜10体積%の量、しばしば1〜5体積%の量で存在することが多い。
【0070】
特に言及しない限り、「置換された」又は「置換基」という用語の使用は、水素以外の任意の基又は原子を意味する。さらに、「基」という用語を用いる場合、置換基が置換可能な水素を含有するのであれば、置換基の置換されていない形態だけでなく、本明細書中に言及される任意の置換基(複数可)でさらに置換された形態も、装置の有用性に必要とされる性質をその置換基が失わせない限りは包含することも意図されることを意味する。必要なら、置換基は、記載された置換基で1回以上さらに置換されたものであってもよい。使用される特定の置換基は、特定の用途のための所望の特性を実現するために当業者によって選択されてよく、例えば、電子吸引基、電子供与基及び立体基(steric groups)が挙げられる。分子が2つ以上の置換基を有してもよい場合、置換基は、特段の定めのない限り、結合して縮合環などの環を形成してもよい。一般に、上記基及びその置換基としては、48個以下の炭素原子、典型的に1〜36個の炭素原子、通常24個未満の炭素原子を有するものが挙げられるが、選択される特定の置換基に応じて、より大きな数が可能である。
【0071】
<一般的な装置の構造>
本発明は、小分子材料、オリゴマー材料、ポリマー材料、又はこれらの組み合わせを用いた多くのEL装置構成で利用することができる。このような構成には、単一のアノードとカソードとを含む非常に単純な構造から、より複雑な装置(例えば、画素を形成するアノードとカソードとの直交配列から構成されるパッシブマトリクスディスプレイ、及び各画素が例えば薄膜トランジスタ(TFT)によって独立して制御されるアクティブマトリクスディスプレイ)までが含まれる。
【0072】
本発明を首尾よく実施することができる有機層の構成は多数ある。OLEDの必須の要件は、アノード、カソード、及びアノードとカソードとの間に配置される有機発光層である。下記にさらに十分に説明するように追加層を使用してもよい。
【0073】
小分子装置に特に有用な本発明による典型的な構造を図1に示すが、該構造は基板101、アノード103、正孔注入層105、正孔輸送層107、発光層109、電子輸送層111、電子注入層112、及びカソード113から構成される。これらの層を下記に詳しく説明する。基板101を代替的にカソード113に隣接させて配置してもよいこと、又は基板101が実際にアノード103若しくはカソード113を構成し得ることに留意されたい。アノード103とカソード113との間の有機層は、便宜上、有機EL素子と称される。また、有機層を合計した厚さは、望ましくは500nm未満である。装置がリン光材料を含む場合、発光層と電子輸送層との間に配置される正孔ブロック層が存在してもよい。
【0074】
OLEDのアノード103及びカソード113は、導体160を介して電圧/電流源150と接続される。アノード103とカソード113との間に、アノード103がカソード113よりも正の電位となるように電位を印加することによってOLEDが動作する。正孔はアノード103から有機EL素子に注入され、電子はカソード113で有機EL素子に注入される。ACモードではACサイクル中に電位バイアスが逆転して電流が流れない期間があるため、OLEDをACモードで動作させるときに装置の安定性向上を実現することができる場合もある。AC駆動のOLEDの例は、米国特許第5,552,678号に記載されている。
【0075】
<基板>
本発明のOLED装置は、典型的には支持基板101上に設けられるが、ここでカソード113又はアノード103のいずれかが基板と接触していてもよい。基板101と接触する電極は、便宜上、底面電極と称される。従来、底面電極はアノード103であるが、本発明はその構成に限定されない。基板101は、意図される発光の方向に応じて光透過性であっても、又は不透明であってもよい。基板101を通してEL発光を見るには光透過性が望ましい。このような場合には、透明なガラス又はプラスチックが一般に使用される。基板101は複数の材料層を含む複雑な構造であってもよい。これは典型的には、OLED層の下側にTFTが設けられるアクティブマトリックス基板の場合に当てはまる。基板101が少なくとも発光画素化領域において、概ね透明な材料(ガラス又はポリマー等)から構成されることがさらに必要とされる。EL発光を上部電極を通して見る用途においては、底面支持体の光透過性は重要ではなく、したがって、基板は光透過性であっても、光吸収性であっても、又は光反射性であってもよい。この場合に使用される基板としては、ガラス、プラスチック、半導体材料(ケイ素、セラミックス等)、及び回路基板材料が挙げられるが、これらに限定されない。この場合もやはり、基板101は、アクティブマトリクスTFT設計において見られるような複数の材料層を含む複雑な構造であってもよい。これらの装置構成においては、光透明性の上部電極を設けることが必要とされる。
【0076】
<アノード>
所望のエレクトロルミネッセンス発光(EL)をアノードを通して見る場合には、アノード103は、対象となる発光に対して透明であるか、又は実質的に透明である必要がある。本発明で用いられる透明なアノード用の一般的な材料は、インジウム−スズ酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、及びスズ酸化物であるが、他の金属酸化物(アルミニウムをドープした亜鉛酸化物、インジウムをドープした亜鉛酸化物、マグネシウム−インジウム酸化物、及びニッケル−タングステン酸化物が挙げられるが、これらに限定されない)も有効である。これらの酸化物に加え、金属窒化物(例えば、窒化ガリウム)、金属セレン化物(例えば、セレン化亜鉛)、及び金属硫化物(例えば、硫化亜鉛)をアノード103として用いることができる。EL発光をカソード113のみを通して見るような用途ではアノード103の透光特性は重要でないため、透明、不透明又は反射性の任意の導電性材料を使用することができる。この用途での導体の例としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、及び白金が挙げられるが、これらに限定されない。典型的なアノード用材料は、光透過性であろうとそうでなかろうと、仕事関数が4.1eV以上である。望ましいアノード用材料は、一般に、任意の適切な方法(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、又は電気化学的手段)で堆積させる。アノードは、既知のフォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることができる。任意で、アノードを研磨した後に他の層を塗布することで表面粗度を小さくして、短絡を最少にすること、又は反射性を向上させることができる。
【0077】
<カソード>
アノード103のみを通して発光を見る場合には、本発明において使用されるカソード113は、ほぼ任意の導電性材料から構成され得る。望ましい材料は、下にある有機層との良好な接触を確実にする良好な膜形成特性を有し、低電圧で電子の注入を促進し、良好な安定性を有する。有用なカソード材料は、仕事関数が小さな(4.0eV未満)金属又は金属合金を含有することが多い。有用なカソード材料の1つは、米国特許第4,885,221号に記載されるようなMg:Ag合金(銀の割合は1%〜20%の範囲内である)から構成される。別の適切な種類のカソード材料としては、カソード及び有機層(例えば、電子輸送層(ETL))に接触する薄い電子注入層(EIL)を含み、カソードがより厚い導電性金属層で覆われる二重層が挙げられる。ここで、EILは仕事関数が小さな金属又は金属塩を含んでいることが好ましく、そのような場合には、より厚い被覆層が小さな仕事関数を有する必要はない。かかるカソードの1つは、米国特許第5,677,572号に記載されているように、LiFの薄層と、その上に載るより厚いAl層から構成される。有用なEILの別の例は、アルカリ金属をドープしたETL材料、例えばLiドープAlqである。他の有用なカソード材料の組としては、米国特許第5,059,861号、同第5,059,862号、及び同第6,140,763号に開示されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
カソードを通して発光を見る場合、カソード113は透明であるか、又はほぼ透明である必要がある。かかる用途のためには、金属を薄くするか、又は透明な導電性酸化物を使用するか、又はこれらの材料の組み合わせを使用する必要がある。光学的に透明なカソードは、米国特許第4,885,211号、米国特許第5,247,190号、特許第3,234,963号公報、米国特許第5,703,436号、米国特許第5,608,287号、米国特許第5,837,391号、米国特許第5,677,572号、米国特許第5,776,622号、米国特許第5,776,623号、米国特許第5,714,838号、米国特許第5,969,474号、米国特許第5,739,545号、米国特許第5,981,306号、米国特許第6,137,223号、米国特許第6,140,763号、米国特許第6,172,459号、欧州特許第1076368号、米国特許第6,278,236号、及び米国特許第6,284,3936号により詳細に記載されている。カソード材料は、蒸着、スパッタリング、又は化学蒸着等の任意の適切な方法によって典型的に堆積される。必要に応じて、多くの既知の方法(スルーマスク蒸着、米国特許第5,276,380号及び欧州特許第0732868号に記載されるような一体化シャドーマスキング(integral shadow masking)、レーザーアブレーション、及び選択的化学蒸着が挙げられるが、これらに限定されない)によってパターニングを行なうことができる。
【0079】
<正孔注入層(HIL)>
本発明の態様に応じて、装置は、本発明のHIL、又は当該技術分野で既知のHIL、或いは両方を含み得る。正孔注入層105をアノード103と正孔輸送層107との間に設けてもよい。正孔注入層は、続く有機層の膜形成特性を向上させ、正孔輸送層107への正孔の注入を促進する役割を果たし得る。正孔注入層105に使用するのに適切な材料としては、米国特許第4,720,432号に記載されるようなポルフィリン化合物、米国特許第6,208,075号に記載されるようなプラズマ堆積フルオロカーボンポリマー、及びいくつかの芳香族アミン(例えば、MTDATA(4,4’,4’’−トリス[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン))が挙げられるが、これらに限定されない。有機EL装置において有用であることが報告されている代替的な正孔注入材料は、欧州特許出願公開第0891121号及び欧州特許出願公開第1029909号に記載されている。正孔注入層は本発明において使用するのが好都合であり、望ましくはプラズマ堆積フルオロカーボンポリマーである。プラズマ堆積フルオロカーボンポリマーを含有する正孔注入層の厚さは、0.2nm〜15nmの範囲内であり得るが、適切には0.3nm〜1.5nmの範囲内である。
【0080】
<正孔輸送層(HTL)>
必ずしも必要な訳ではないが、正孔輸送層をOLED装置に加えることが有用であることが多い。有機EL装置の正孔輸送層107は、少なくとも1つの正孔輸送化合物(例えば、芳香族第三級アミン)を含有する。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香環の成員である)のみに結合する少なくとも1つの三価窒素原子を含有する化合物であると理解される。1つの形態において、芳香族第三級アミンはアリールアミン(例えば、モノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、又は高分子アリールアミン)であり得る。単量体トリアリールアミンの例は、Klupfelらの米国特許第3,180,730号に示されている。少なくとも1つの活性水素含有基を含む、1つ以上のビニルラジカルで置換された適切なトリアリールアミンは、Brantleyらの米国特許第3,567,450号及び米国特許第3,658,520号に開示されている。
【0081】
より好ましい種類の芳香族第三級アミンは、米国特許第4,720,432号及び米国特許第5,061,569号に記載されるように、少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。かかる化合物としては、構造式(A)により表されるものが挙げられる。
【0082】
【化26】

【0083】
式中、Q1及びQ2は、独立して選択される芳香族第三級アミン部分であり、Gは炭素−炭素結合の連結基(例えば、アリーレン基、シクロアルキレン基又はアルキレン基)である。1つの実施形態において、Q1又はQ2の少なくとも一方は、多環式縮合環構造(例えば、ナフタレン)を含有する。Gがアリール基である場合には、Q1又はQ2の少なくとも一方は、フェニレン部分、ビフェニレン部分又はナフタレン部分であることが好都合である。
【0084】
構造式(A)を満たし、且つ2つのトリアリールアミン部分を含有する、有用な種類のトリアリールアミンは、構造式(B)により表される。
【0085】
【化27】

【0086】
式中、R1及びR2は各々、水素原子、アリール基若しくはアルキル基を独立して表すか、又はR1及びR2は共に、シクロアルキル基を完成させる原子を表し、R3及びR4は各々、アリール基を独立して表すが、このアリール基は、構造式(C)に示されるように、ジアリール置換アミノ基によって置換されている。
【0087】
【化28】

【0088】
式中、R5及びR6は、独立して選択されるアリール基である。1つの実施形態において、R5又はR6の少なくとも一方は、多環式縮合環構造(例えば、ナフタレン)を含有する。
【0089】
別の種類の芳香族第三級アミンは、テトラアリールジアミンである。望ましいテトラアリールジアミンは、式(C)に示されるもののような、アリーレン基を介して連結した2つのジアリールアミノ基を含む。有用なテトラアリールジアミンとしては、式(D)により表されるものが挙げられる。
【0090】
【化29】

【0091】
式中、各Areは、独立して選択されるアリーレン基(例えば、フェニレン部分又はアントラセン部分)であり、nは1〜4の整数であり、Ar、R7、R8及びR9は、独立して選択されるアリール基である。
【0092】
典型的な実施形態において、Ar、R7、R8及びR9のうち少なくとも1つは、多環式縮合環構造(例えば、ナフタレン)である。
【0093】
上記の構造式(A)、(B)、(C)、(D)の様々なアルキル部分、アルキレン部分、アリール部分、及びアリーレン部分は、各々置換されていてもよい。典型的な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、及びハロゲン化物(例えば、フッ化物、塩化物及び臭化物)が挙げられる。様々なアルキル部分及びアルキレン部分は、約1個〜6個の炭素原子を典型的に含有する。シクロアルキル部分は、3個〜約10個の炭素原子を含有することができるが、5個、6個又は7個の環炭素原子を典型的に含有する(例えば、シクロペンチル環構造、シクロヘキシル環構造、及びシクロヘプチル環構造)。アリール部分及びアリーレン部分は、通常、フェニル部分及びフェニレン部分である。
【0094】
正孔輸送層は、単一の第三級アミン化合物、又はかかる化合物の混合物から形成され得る。具体的には、トリアリールアミン(例えば、式(B)を満たすトリアリールアミン)をテトラアリールジアミン(例えば、式(D)に示されるもの)と組み合わせて使用することができる。有用な芳香族第三級アミンの例は以下である。
【0095】
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン(TAPC)
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−メチルシクロヘキサン
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−3−フェニルプロパン(TAPPP)
N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’’’−ジアミノ−1,1’:4’,1’’:4’’,1’’’−クアテルフェニル
ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン
1,4−ビス[2−[4−[N,N−ジ(p−トリル(toly))アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン(BDTAPVB)
N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル(TTB)
N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル
N,N,N’,N’−テトラ−1−ナフチル−4,4’−ジアミノビフェニル
N,N,N’,N’−テトラ−2−ナフチル−4,4’−ジアミノビフェニル
N−フェニルカルバゾール
4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)
4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB)
4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]p−テルフェニル
4,4’−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(3−アセナフテニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
1,5−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ナフタレン
4,4’−ビス[N−(9−アントリル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(1−アントリル)−N−フェニルアミノ]p−テルフェニル
4,4’−ビス[N−(2−フェナントリル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(8−フルオランテニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(2−ピレニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(2−ナフタセニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(2−ペリレニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(1−コロネニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
2,6−ビス(ジ−p−トリルアミノ)ナフタレン
2,6−ビス[ジ−(1−ナフチル)アミノ]ナフタレン
2,6−ビス[N−(1−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ナフタレン
N,N,N’,N’−テトラ(2−ナフチル)−4,4’’−ジアミノ−p−テルフェニル
4,4’−ビス{N−フェニル−N−[4−(1−ナフチル)−フェニル]アミノ}ビフェニル
2,6−ビス[N,N−ジ(2−ナフチル)アミン]フルオレン
4,4’,4’’−トリス[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA)
4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(TPD)
【0096】
別の種類の有用な正孔輸送材料としては、欧州特許第1009041号に記載されるような多環芳香族化合物が挙げられる。オリゴマー材料を含む、3個以上のアミン基を有する芳香族第三級アミンを使用することができる。さらに、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、及びコポリマー(例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))等のポリマー正孔輸送材料が使用され得る。正孔輸送層は異なる組成の2つ以上の副層を含むことも可能である(各副層の組成は上記に記載されるようなものである)。正孔輸送層の厚さは10nm〜約500nmであり得るが、適切には50nm〜300nmである。
【0097】
<発光層(LEL)>
米国特許第4,769,292号及び米国特許第5,935,721号により詳しく説明されているように、有機EL素子の発光層(LEL)は、電子−正孔対が再結合する結果としてエレクトロルミネッセンスが発生する発光材料を含む。発光層は単一の材料で構成されていてもよいが、より一般的には、ゲスト発光材料をドープしたホスト材料、又は発光が主に発光材料に由来する材料から成り、任意の色であり得る。発光層中のホスト材料は、下記に規定される電子輸送材料であっても、上記に規定される正孔輸送材料であっても、又は別の材料若しくは正孔−電子再結合を支持する材料の組み合わせであってもよい。蛍光発光材料は、ホスト材料の0.01重量%〜10重量%で典型的に組み込まれる。
【0098】
ホスト材料及び発光材料は非ポリマー小分子、又はポリフルオレン及びポリビニルアリーレン(例えば、ポリ(p−フェニレンビニレン)、PPV)等のポリマー材料であり得る。ポリマーの場合、小分子発光材料をポリマーホスト中に分子状に分散させてもよく、又は微量成分をホストポリマー中に共重合させることによって発光材料を添加してもよい。ホスト材料は、膜形成特性、電気的特性、発光効率、動作寿命、又は製造容易性を向上させるために混ぜ合わせてもよい。ホストは、良好な正孔輸送特性を有する材料及び良好な電子輸送特性を有する材料を含み得る。
【0099】
ゲスト発光材料として蛍光材料を選択する上で重要な関係は、ホスト及び蛍光材料の励起一重項状態エネルギーの比較である。蛍光材料の励起一重項状態エネルギーがホスト材料の励起一重項状態エネルギーよりも低いことが非常に望ましい。励起一重項状態エネルギーは、発光一重項状態と基底状態とのエネルギーの差として規定される。非発光ホストに関しては、基底状態と同じ電子スピンの最低励起状態が発光状態と見なされる。
【0100】
有用であることが知られているホスト及び発光材料としては、米国特許第4,768,292号、米国特許第5,141,671号、米国特許第5,150,006号、米国特許第5,151,629号、米国特許第5,405,709号、米国特許第5,484,922号、米国特許第5,593,788号、米国特許第5,645,948号、米国特許第5,683,823号、米国特許第5,755,999号、米国特許第5,928,802号、米国特許第5,935,720号、米国特許第5,935,721号、及び米国特許第6,020,078号に開示されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
金属キレート化オキシノイド化合物としても知られる、8−ヒドロキシキノリン及び類似の誘導体の金属錯体(式(E))は、エレクトロルミネッセンスを支持することが可能な、有用なホスト化合物の1つの群を構成し、500nmより長い波長、例えば、緑色、黄色、橙色及び赤色の発光に特に適切である。
【0102】
【化30】

【0103】
式中、Mは金属を表し、nは1〜4の整数であり、且つZはどの場合も、少なくとも2つの縮合芳香環を有する核を完成する原子を独立して表す。
【0104】
金属が一価、二価、三価、又は四価の金属であり得ることが上記から明らかである。金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、若しくはカリウム等のアルカリ金属、マグネシウム若しくはカルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム若しくはガリウム等の三価金属、又は亜鉛若しくはジルコニウム等の他の金属であり得る。一般に、有用なキレート金属であることが知られる任意の一価、二価、三価、又は四価の金属を使用することができる。
【0105】
Zは、少なくとも2つの縮合芳香環(そのうち少なくとも1つはアゾール環又はアジン環である)を含有する複素環の核を完成させる。必要に応じて、追加の環(脂環及び芳香環の両方を含む)を、2つの所要の環と縮合させてもよい。機能が改善されることなく多量の分子が付加されることを回避するために、環原子の数は通常18以下に維持される。
【0106】
有用なキレート化オキシノイド化合物の例は以下である。
CO−1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO−2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8−キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO−3:ビス[ベンゾ{f}−8−キノリノラト]亜鉛(II)
CO−4:ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)
CO−5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8−キノリノラト)インジウム]
CO−6:アルミニウムトリス(5−メチルオキシン)[別名、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO−7:リチウムオキシン[別名、(8−キノリノラト)リチウム(I)]
CO−8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8−キノリノラト)ガリウム(III)]
CO−9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8−キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
【0107】
9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(式(F1))の誘導体は、エレクトロルミネッセンスを支持することが可能な、有用なホスト材料の1つの群を構成し、400nmより長い波長、例えば、青色、緑色、黄色、橙色又は赤色の発光に特に適切である。
【0108】
【化31】

【0109】
式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、各々の環上の1つ以上の置換基を表すが、ここで、各々の置換基は以下の群から個々に選択される。
第1群:水素、又は1個〜24個の炭素原子を有するアルキル、
第2群:5個〜20個の炭素原子を有するアリール又は置換アリール、
第3群:アントラセニル、ピレニル又はペリレニルの縮合芳香環を完成させるのに必要な4個〜24個の炭素原子、
第4群:フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル又は他の複素環系の縮合ヘテロ芳香環を完成させるのに必要な5個〜24個の炭素原子を有するヘテロアリール又は置換ヘテロアリール、
第5群:1個〜24個の炭素原子を有するアルコキシルアミノ、アルキルアミノ又はアリールアミノ、及び
第6群:フッ素、塩素、臭素又はシアノ。
【0110】
具体例としては、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン及び2−t−ブチル−9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセンが挙げられる。9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル]アントラセンの誘導体を含む他のアントラセン誘導体が、LELにおけるホストとして有用であり得る。
【0111】
米国特許第5,121,029号及び日本国特許第08333569号に記載されるようなスチリルアリーレン誘導体もまた、青色発光のための有用なホストである。例えば、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル]アントラセン及び4,4’−ビス(2,2−ジフェニルエテニル)−1,1’−ビフェニル(DPVBi)は青色発光のための有用なホストである。
【0112】
ベンザゾール誘導体(式G)は、エレクトロルミネッセンスを支持し得る有用なホスト材料の別の種類を構成し、400nmより長い波長、例えば、青色、緑色、黄色、橙色又は赤色の発光に特に適切である。
【0113】
【化32】

【0114】
式中、nは3〜8の整数であり;Zは、O、NR又はSであり;R及びR’は個々に、水素、1〜24個の炭素原子のアルキル(例えば、プロピル、t−ブチル、ヘプチルなど)、5〜20個の炭素原子のアリール又はヘテロ原子置換アリール(例えば、フェニル、ナフチル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、及び他の複素環系)、又はハロ(例えば、クロロ、フルオロ)、又は縮合芳香環を完成するのに必要な原子であり;Lは、アルキル、アリール、置換アルキル、又は置換アリールから成り、多数のベンザゾールを一緒に接続する結合ユニットである。Lは、多数のベンザゾールと共役していても、共役していなくてもよい。有用なベンザゾールの例は、2,2’,2’’−(1,3,5−フェニレン)トリス[1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール]である。
【0115】
有用な蛍光発光材料としては、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン及びキナクリドンの誘導体、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物及びチアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)イミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、並びにカルボスチリル化合物が挙げられるが、これらに限定されない。有用な材料の具体例としては、下記のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
【化33】

【0117】
【化34】

【0118】
【化35】

【0119】
【化36】

【0120】
【化37】

【0121】
リン光発光材料をEL装置において使用してもよい。便宜上、リン光錯体ゲスト材料は本明細書中ではリン光材料と称することができる。リン光材料は、1つ以上の配位子、例えば、sp2炭素及びヘテロ原子を介して金属に配位することができる一価アニオン性配位子を典型的に含む。配位子は、フェニルピリジン(ppy)又はその誘導体若しくは類似体であるのが都合がよい。いくつかの有用なリン光有機金属材料の例としては、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2)イリジウム(III)(アセチルアセトネート)、及びビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)白金(II)が挙げられる。多くのリン光有機金属材料が、スペクトルの緑色領域において発光すること、すなわち、その発光極大が510nm〜570nmの範囲内であることが有用である。
【0122】
リン光材料は、単独又は他のリン光材料と同じ層若しくは異なる層において組み合わせて使用することができる。リン光材料及び適切なホストは、国際公開第00/57676号、国際公開第00/70655号、国際公開第01/41512号、国際公開第02/15645号、米国特許出願公開第2003/0017361号、国際公開第01/93642号、国際公開第01/39234号、米国特許第6,458,475号、国際公開第02/071813号、米国特許第6,573,651号、米国特許出願公開第2002/0197511号、国際公開第02/074015号、米国特許第6,451,455号、米国特許出願公開第2003/0072964号、米国特許出願公開第2003/0068528号、米国特許第6,413,656号、米国特許第6,515,298号、米国特許第6,451,415号、米国特許第6,097,147号、米国特許出願公開第2003/0124381号、米国特許出願公開第2003/0059646号、米国特許出願公開第2003/0054198号、欧州特許第1239526号、欧州特許第1238981号、欧州特許第1244155号、米国特許出願公開第2002/0100906号、米国特許出願公開第2003/0068526号、米国特許出願公開第2003/0068535号、特開2003−073387号公報、特開2003−073388号公報、米国特許出願公開第2003/0141809号、米国特許出願公開第2003/0040627号、特開2003−059667号公報、特開2003−073665号公報、及び米国特許出願公開第2002/0121638号に記載されている。
【0123】
IrL3タイプ及びIrL2L’タイプのシクロメタル化Ir(III)錯体、例えば、緑色発光fac−トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)及びビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(アセチルアセトネート)の発光波長は、シクロメタル化配位子L上の適切な位置で電子供与基又は電子求引基を置換することにより、又はシクロメタル化配位子Lによって異なる複素環を選択することによりシフトし得る。発光波長は、補助配位子L’の選択によってもシフトし得る。赤色エミッタの例は、ビス(2−(2’−ベンゾチエニル)ピリジナト−N,C3’)イリジウム(III)(アセチルアセトネート)及びトリス(2−フェニルイソキノリナト−N,C)イリジウム(III)である。青色発光の例は、ビス(2−(4,6−ジフルオロフェニル)−ピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(ピコリネート)である。
【0124】
ビス(2−(2’−ベンゾ[4,5−a]チエニル)ピリジナト−N,C3)イリジウム(アセチルアセトネート)[Btp2lr(acac)]をリン光材料として用いた赤色電気リン光が報告されている(C. Adachi, S. Lamansky, M. A. Baldo, R. C. Kwong, M. E. Thompson, and S. R. Forrest, App. Phys. Lett., 78, 1622-1624 (2001))。
【0125】
他の重要なリン光材料としては、cis−ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)白金(II)、cis−ビス(2−(2’−チエニル)ピリジナト−N,C3’)白金(II)、cis−ビス(2−(2’−チエニル)キノリナト−N,C5’)白金(II)、又は(2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’)白金(II)(アセチルアセトネート)等のシクロメタル化Pt(II)錯体が挙げられる。2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン白金(II)等のPt(II)ポルフィリン錯体も有用なリン光材料である。
【0126】
有用なリン光材料の更に他の例としては、Tb3+及びEu3+等の三価ランタニドの配位錯体が挙げられる(J. Kido et al., Appl. Phys. Lett., 65, 2124 (1994))。
【0127】
リン光材料に適切なホスト材料は、ホスト材料からリン光材料への三重項励起子の移動が効率的に起こり得るが、リン光材料からホスト材料への三重項励起子の移動が効率的には起こり得ないように選択しなくてはならない。したがって、リン光材料の三重項エネルギーは、ホストの三重項エネルギーより低いことが非常に望ましい。一般的に言えば、大きな三重項エネルギーは光学バンドギャップが大きいことを示唆する。しかしながら、ホストのバンドギャップは、発光層への電荷キャリアの注入に対する許容し難い障壁、及びOLEDの駆動電圧の許容し難い上昇の原因となるほど大きくならないように選択しなくてはならない。適切なホスト材料は、国際公開第00/70655号、国際公開第01/39234号、国際公開第01/93642号、国際公開第02/074015号、国際公開第02/15645号、及び米国特許出願公開第2002/0117662号に記載されている。適切なホストとしては、或る特定のアリールアミン、トリアゾール、インドール、及びカルバゾール化合物が挙げられる。望ましいホストの例は、4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル又はCBPとしても知られる)、4,4’−N,N’−ジカルバゾール−2,2’−ジメチル−ビフェニル(2,2’−ジメチル−4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル又はCDBPとしても知られる);1,3−ビス(N,N’−ジカルバゾール)ベンゼン(1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼンとしても知られる)、及びポリ(N−ビニルカルバゾール)である(これらの誘導体を含む)。
【0128】
望ましいホスト材料は、連続膜を形成することができる。
【0129】
<正孔ブロック層(HBL)>
リン光材料を使用するOLED装置では多くの場合、励起子及び再結合現象をホスト及びリン光材料を含む発光層に局限するのを助けるために、適切なホストに加えて少なくとも1つの正孔ブロック層を電子輸送層111と発光層109との間に配置する必要がある。この場合、ホストから正孔ブロック層への正孔の移動に対するエネルギー障壁がなくてはならず、一方で電子が正孔ブロック層からホスト及びリン光材料を含む発光層へと容易に受け渡される必要がある。第1の要件では、正孔ブロック層のイオン化ポテンシャルが発光層109のイオン化ポテンシャルよりも大きいこと、望ましくは0.2eV以上大きいことが必要とされる。第2の要件では、正孔ブロック層の電子親和力が、発光層109の電子親和力を大きく上回らないこと、望ましくは発光層の電子親和力より小さいか、又は発光層の電子親和力を約0.2eV以上上回らないことが必要とされる。
【0130】
特有の発光が緑色である電子輸送層(例えば、下記に記載されるようなAlq含有電子輸送層)と共に使用される場合、正孔ブロック層の材料の最高被占分子軌道(HOMO)及び最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーに関する要件は、電子輸送層の波長よりも短い波長での正孔ブロック層の特有の発光、例えば、青色発光、紫色発光、又は紫外発光をもたらすことが多い。したがって、正孔ブロック層の材料の特有の発光は青色、紫色、又は紫外であることが望ましい。必ずしも必要というわけではないが、正孔ブロック材料の三重項エネルギーがリン光材料の三重項エネルギーより大きいことがさらに望ましい。適切な正孔ブロック材料は、国際公開第00/70655号、及び国際公開第01/93642号に記載されている。有用な正孔ブロック材料の2つの例は、バトクプロイン(BCP)及びビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(BAlq)である。BCPの特有の発光は紫外領域にあり、BAlqの発光は青色である。米国特許出願公開第2003/0068528号に記載されるように、BAlq以外の金属錯体も正孔及び励起子を遮断することが知られている。また、米国特許出願公開第2003/0175553号は、fac−トリス(1−フェニルピラゾラト−N,C2’)イリジウム(III)(Irppz)をこの目的で使用することを記載している。
【0131】
正孔ブロック層を使用する場合、その厚さは2nm〜100nm、適切には5nm〜10nmであり得る。
【0132】
<電子輸送層(ETL)>
電子輸送層は、発光層とカソードとの間に配置される。1つの実施形態において、本発明の層は、装置の電子輸送層として機能する。他の実施形態において、下記するような追加の電子輸送層を有することが望ましいことがある。
【0133】
有機EL装置の電子輸送層を形成する際に使用される望ましい薄膜形成材料は、オキシン自体のキレートを含む金属キレート化オキシノイド化合物(一般に、8−キノリノール又は8−ヒドロキシキノリンとも称される)である。かかる化合物は、電子の注入及び輸送、高レベルの性能の発揮の助けとなり、容易に薄膜の形態に製造される。意図されるオキシノイド化合物の例は、先述した構造式(E)を満たすものである。
【0134】
電子輸送層における使用に適切な他の電子輸送材料としては、米国特許第4,356,429号に開示されているような様々なブタジエン誘導体、及び米国特許第4,539,507号に記載されているような様々な複素環光学的光沢剤が挙げられる。構造式(G)を満たすベンザゾールも有用な電子輸送材料である。トリアジンも電子輸送材料として有用であることが知られている。
【0135】
正孔ブロック層及び電子輸送層111の両方が使用される場合、電子が電子輸送層111から正孔ブロック層へと容易に受け渡される必要がある。したがって、電子輸送層111の電子親和力は正孔ブロック層の電子親和力を大きく上回ってはならない。電子輸送層の電子親和力は正孔ブロック層の電子親和力より小さいか、又は正孔ブロック層の電子親和力を約0.2eV以上上回らないことが望ましい。
【0136】
電子輸送層が使用される場合、その厚さは2nm〜100nmであり得るが、適切には5nm〜20nmである。
【0137】
<電子注入層(EIL)>
電子注入層は、カソードに隣接して配置される。1つの実施形態において、本発明の層は、装置の電子注入層として機能する。他の実施形態において、下記するような追加の電子注入層を有することが望ましいことがある。電子注入層としては、米国特許第5,608,287号、同第5,776,622号、同第5,776,623号、同第6,137,223号、及び同第6,140,763号に教示されるものが挙げられる。電子注入層は、一般に、仕事関数が4.2eV未満の電子注入材料、又は仕事関数が4.2eV未満の金属の塩から成る。仕事関数が小さなアルカリ金属又はアルカリ土類金属(例えば、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Mg、Sr、及びBa)を含有する薄膜を使用することができる。また、これらの仕事関数の小さな金属をドープした有機材料も、電子注入層として効果的に使用することができる。例は、Li又はCsをドープしたAlqである。1つの適切な実施形態において、電子注入層は、アルカリ金属無機塩及びアルカリ土類金属無機塩(それらの酸化物を含む)を含む。また、アルカリ金属有機塩及びアルカリ土類金属有機塩及び錯体も含まれる。実際は、装置において還元され、その遊離金属を遊離体又は過渡種のいずれかとして放出することのできる任意の金属塩又は化合物が電子注入層において有用である。例としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化セシウム(CsF)、酸化リチウム(Li2O)、リチウムアセチルアセトネート(Liacac)、安息香酸リチウム、安息香酸カリウム、酢酸リチウム、ギ酸リチウムが挙げられる。実際には、電子注入層は、0.1〜10.0nmの範囲、より典型的には0.1〜5.0nmの範囲の適切な厚さに堆積される薄い界面層であることが多い。この厚さの範囲内にある界面電子注入層は、本発明の層又は更なる層への効率的な電子注入を与えるであろう。任意に、電子注入層は、本発明から除かれてもよい。
【0138】
<他の有用な有機層及び装置構造>
場合によっては、層109〜層111を任意で発光及び電子輸送の両方を支持する機能を果たす単一の層にまとめることができる。正孔ブロック層が存在する場合、正孔ブロック層及び層111も、正孔又は励起子を遮断し、電子輸送を支持するように機能する単一の層にまとめることができる。また、正孔輸送層107中に発光材料が含まれていてもよいことが当該技術分野で知られている。その場合、正孔輸送材料はホストとして機能し得る。例えば、青色発光材料及び黄色発光材料、青緑色発光材料及び赤色発光材料、又は赤色発光材料、緑色発光材料及び青色発光材料を組み合わせることによって白色発光OLEDを作製するために、複数の材料を1つ以上の層に添加してもよい。白色発光装置は、例えば、欧州特許第1187235号、米国特許出願公開第20020025419号、欧州特許第1182244号、米国特許第5,683,823号、米国特許第5,503,910号、米国特許第5,405,709号、及び米国特許第5,283,182号に記載されており、カラー発光(color emission)を得るために適切なフィルタ装置を備えることができる。
【0139】
本発明は、例えば米国特許第5,703,436号及び米国特許第6,337,492号に教示されるような、いわゆる積層装置構造で使用され得る。
【0140】
<有機層の堆積>
上記の有機材料は、昇華によって適切に堆積されるが、膜の形成を改善するために任意の結合剤を用いて溶媒から堆積させることもできる。材料がポリマーである場合には、溶媒堆積が通常は好ましい。昇華によって堆積させる材料は、例えば、米国特許第6,237,529号に記載されるように、タンタル材料で構成されることの多い昇華「ボート」(sublimator "boat")から蒸発させるか、又は最初にドナーシートにコーティングし、次いで基板のより近くで昇華させることができる。材料の混合物を含む層では、別個の昇華ボートを用いるか、又は材料を予め混合し、単一のボート若しくはドナーシートからコーティングすることができる。パターニング堆積は、シャドーマスク、一体化シャドーマスク(米国特許第5,294,870号)、ドナーシートからの空間的に限定された染料熱転写(米国特許第5,851,709号及び米国特許第6,066,357号)、インクジェット法(米国特許第6,066,357号)を利用して実現することができる。
【0141】
本発明の材料を堆積させる好ましい方法の1つは、米国特許出願公開第2004/0255857号及び米国特許出願第10/945,941号に記載されているが、この場合、本発明の材料の各々を蒸発させるために異なる蒸発源(source evaporators)が使用される。第2の好ましい方法は、温度制御された材料供給経路に沿って材料が計量供給される(metered)フラッシュ蒸発を利用する。このような好ましい方法は、以下の本願と同一譲受人に譲渡された特許出願に記載されている:米国特許出願第10/784,585号、米国特許出願第10/805,980号、米国特許出願第10/945,940号、米国特許出願第10/945,941号、米国特許出願第11/050,924号、及び米国特許出願第11/050,934号。この第2の方法を用いる場合、各々の材料を異なる蒸発源を用いて蒸発させても、又は固体材料を混合した後に、同一の蒸発源を用いて蒸発させてもよい。
【0142】
<封止>
大抵のOLED装置は、水分又は酸素、又はその両方に敏感であるため、一般に不活性雰囲気(例えば、窒素又はアルゴン)中で、乾燥剤(例えば、アルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、クレイ、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、又は金属ハロゲン化物及び金属過塩素酸塩)と共に密封される。封止及び乾燥のための方法としては、米国特許第6,226,890号に記載される方法が挙げられるが、これに限定されない。また、SiOx、テフロン(登録商標)、及び無機/ポリマー交互層等の障壁層が封止に関して当該技術分野で知られている。これらの密封又は封止及び乾燥の方法はいずれも、本発明に従って構築されるEL装置に使用することができる。
【0143】
<光学的最適化>
本発明のOLED装置では、その発光特性の向上を望むのであれば、既知の様々な光学的効果を利用することができる。これには、層の厚さを最適化して光の透過を最大にすること、誘電体ミラー構造を設けること、反射性電極の代わりに光吸収性電極にすること、グレア防止用若しくは反射防止用コーティングをディスプレイ上に設けること、偏光媒体をディスプレイ上に設けること、又は色フィルタ、減光フィルタ、若しくは色変換フィルタをディスプレイ上に設けること等がある。フィルタ、偏光板、及びグレア防止用又は反射防止用コーティングは、EL装置の上に、又はEL装置の一部として特に設けることができる。
【0144】
本発明の実施形態によって、より高い発光収率、より低い駆動電圧、及びより高い電力効率、より長い動作寿命、又は製造容易性等の有利な特徴がもたらされ得る。本発明において有用な装置の実施形態によって、白色光(直接又はフィルタを介して多色ディスプレイを提供する)の発光に有用な色相を含む広範囲の色相がもたらされ得る。本発明の実施形態は、エリア照明装置も提供することができる。
【0145】
本発明及びその利点を以下の具体例によりさらに説明する。
【実施例】
【0146】
「パーセンテージ」又は「パーセント」という用語、及び「%」という記号は、層中の全材料及び装置の他の成分における特定の第1化合物又は第2化合物の体積パーセント(又は薄膜厚モニターで測定した厚さの比率)を表す。また、2つ以上の第2化合物が存在するなら、第2化合物の全体積は、本発明の相中の全材料におけるパーセンテージとして表すことができる。
【0147】
<実施例A:MC−20の合成>
Halcrowら、Journal of the Chemical Society (1946), 155-7に従い、1,10−フェナントロリンから2−クロロ−1,10−フェナントロリンを調製した。全体の収率は約50%であった。
【0148】
40mLのEtOH及び300mLのトルエン中、25gの2−メトキシフェニルボロン酸、165mLの2M炭酸ナトリウム(250mLの水中、62gの一水和物)の混合物に29.5gの2−クロロフェナントロリンを加え、1Lの3つ口RBフラスコ中、機械的に攪拌しながら窒素を用いて30分間脱気した。5gのPd(Ph3P)4を加えて加熱し、一晩還流した。カップリング反応のためのこれらの条件は、McKillopら、Tetrahedron, 1992, pp 8117-8126に基づいている。室温まで冷却した後、300mLのトルエンを加え、EtOACで洗浄されたセライト(登録商標)を通して溶液を濾過した。有機相を分離し、水で1回洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶液を濾過し、濃縮して褐色油を得た。これを80mLのCH2Cl2に溶解して1Lのジエチルエーテルで希釈した。25mLの(20mLの濃HCl+30mLのEtOH)を、機械的に攪拌しながら滴下して加え、鮮黄色の沈殿物を形成させた。これを室温で1時間攪拌して濾過し、ジエチルエーテルで洗浄した。次に、粗固体を1Lのアセトニトリルから再結晶した。室温で真空乾燥した後の収量は34.1gであり、理論の77%であった。
【0149】
次に、2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,10−フェナントロリンを以下のようにして合成した。N2下、ディーンスタークとラップを備えた1Lの3つ口RBフラスコ中で機械的に攪拌しながら、320mLのピリジンを380mLの濃HClに滴下して加えた。反応温度を100℃に上昇させた。混合物を220℃の最終温度に更に加熱した。252mLの液体をトラップ中で収集した。混合物を攪拌することなく一晩かけて室温まで冷却し、白色固体を得た。60.5gの2(2−メトキシフェニル)−1,10−フェナントロリンを固体上部に加え、混合物を約2時間にわたって220℃に再加熱した(固体が溶解した後、攪拌した。)追加の7mLの液体をトラップ中で収集した。混合物を100℃に冷却し、200mLの水を滴下して加えた。次に、得られた混合物を攪拌しながら室温まで更に冷却し、1600mLの水に注いだ。水溶液を泡立てながら炭酸ナトリウムを用いてpH8超過に中和した。得られた黄色沈殿物を濾過して取り除き、空気乾燥させた。1600mLのアセトニトリルからの再結晶は、42.5gの褐色/黄色プレート(plates)を与えた。アセトニトリル再結晶からの濾液を約300mLに濃縮して冷却し、追加の5.8gの固体を収集した。合計収量(2回の生成量)は48.3g(室温での真空乾燥後)であり、理論の95%であった。
【0150】
18gの上記物質を300mLのTHFに溶解し、5gのリチウムt−ブトキシドを一部で室温にて加えた。黄色沈殿物が直ぐに形成した。1時間の各反語、黄色固体を濾過してエーテルで洗浄した。乾燥後、16.75gのMC−20を得た。
【0151】
<実施例9:装置8−1〜8−6の作製>
(1)アノードとして、85nmのインジウム−スズ酸化物(ITO)の層でコーティングしたガラス基板を、順に、市販の洗剤中で超音波処理し、脱イオン水でリンスし、トルエン蒸気中で脱脂し、約1分間酸素プラズマに曝露した。
(2)米国特許第6,208,075号に記載されるようなCHF3のプラズマ支援堆積によって、ITO上に1nmのフッ化炭素(CFx)正孔注入層(HIL1)を堆積させた。
(3)次に、正孔輸送材料4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)の層を75nmの厚さに堆積させた。
(4)次に、35nmのAlq3の発光層(LEL)を堆積させた。
(5)Alq3又はCpd−1(ルブレン)とMC−20との混合物(テーブル8参照)の35nmの電子輸送層(ETL)をLEL上に真空蒸着させた。
(6)次に、0.5nmのフッ化リチウム層をETL上に真空蒸着させた後、150nmのアルミニウム層を蒸着させてカソード層を形成した。
【0152】
上記の手順によってEL装置の堆積が完了した。次に、装置を周囲環境から保護するため、乾燥グローブボックス中で密封包装した。
【0153】
このように形成した装置を、20mA/cm2の動作電流で駆動電圧及び発光効率を試験した。その結果をテーブル8に報告する。
【0154】
【表1】

【0155】
テーブル8の本発明例に説明されているように、装置の電子輸送層が、金属錯体MC−20、又は炭素環Cpd−1と混合された金属錯体MC−20からなる場合、比較装置(実施例8−1、Alq3(100%))と比較して、良好な発光効率を保持しつつ、装置電圧の低減を得ることができる。
【0156】
<実施例11:比較装置10−1〜10−6の作製>
一連のEL装置(10−1〜10−6)を以下の方法で組み立てた。
(1)アノードとして、85nmのインジウム−スズ酸化物(ITO)の層でコーティングしたガラス基板を、順に、市販の洗剤中で超音波処理し、脱イオン水でリンスし、トルエン蒸気中で脱脂し、約1分間酸素プラズマに曝露した。
(2)米国特許第6,208,075号に記載されるようなCHF3のプラズマ支援堆積によって、ITO上に1nmのフッ化炭素(CFx)正孔注入層(HIL1)を堆積させた。
(3)次に、正孔輸送材料4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)の層を75nmの厚さに堆積させた。
(4)次に、青色ドーパントL55を1.5体積%もつCpd−12の20nm発光層(LEL)を堆積させた。
(5)Alq3又はMC−16とCpd−12との混合物(テーブル8参照)の35nmの電子輸送層(ETL)をLEL上に真空蒸着させた。
(6)0.5nmのフッ化リチウム層をETL上に真空蒸着させた後、150nmのアルミニウム層を蒸着させてカソード層を形成した。
【0157】
上記の手順によってEL装置の堆積が完了した。次に、装置を周囲環境から保護するため、乾燥グローブボックス中で密封包装した。このように形成した装置を、20mA/cm2の動作電流で駆動電圧及び発光効率を試験した。その結果をテーブル10に報告する。
【0158】
【表2】

【0159】
<実施例12:比較装置11−1〜11−6の作製>
金属錯体MC−16をMC−3に置き換えたこと以外は、実施例11に記載されたものと同一の方法で一連のEL装置(11−1〜11−6)を組み立てた。
【0160】
このように形成した装置を、20mA/cm2の動作電流で駆動電圧及び発光効率を試験した。その結果をテーブル11に報告する。
【0161】
【表3】

【0162】
<実施例16:装置15−1〜15−6>
金属錯体MC−16をMC−20に置き換えたこと以外は、実施例11に記載されたものと同一の方法で一連のEL装置(15−1〜15−6)を組み立てた。
【0163】
このように形成した装置を、20mA/cm2の動作電流で駆動電圧及び発光効率を試験した。その結果をテーブル15に報告する。
【0164】
【表4】

【0165】
テーブル15の本発明例に説明されているように、装置の電子輸送層が、金属錯体MC−20、又は炭素環Cpd−12と混合された金属錯体MC−20からなる場合、比較例15−1、又は比較材料MC−16(テーブル10参照)若しくはMC−3(テーブル11参照)と同等以下の装置電圧の低減を得ることができる。しかしながら、本発明の実施例の発光効率及びCIE色座標は、比較装置と比較した場合、優れている。
【0166】
<実施例17:装置16−1〜16−6の作製>
炭素環Cpd−1をCpd−12に置き換えたこと以外は、実施例9に記載されたものと同一の方法で一連のEL装置(16−1〜16−6)を組み立てた。
【0167】
このように形成した装置を、20mA/cm2の動作電流で駆動電圧及び発光効率を試験した。その結果をテーブル16に報告する。
【0168】
【表5】

【0169】
テーブル16の本発明例に説明されているように、装置の電子輸送層が、金属錯体MC−20、又は炭素環Cpd−12と混合された金属錯体MC−20からなる場合、平均して、比較例16−1と同等以下の装置電圧を得ることができ、比較例16−1は、本発明の実施例と同等の発光効率及びCIE色座標をもつ。
【0170】
<実施例21:比較装置20−1〜20−5の作製>
ETL中の金属錯体MC−20をMC−28に置き換えたこと以外は、実施例9に記載されたものと同一の方法で一連のEL装置(20−1〜20−5)を組み立てた。
【0171】
このように形成した装置を、20mA/cm2の動作電流で駆動電圧及び発光効率を試験した。その結果をテーブル20に報告する。
【0172】
【表6】

【0173】
テーブル20の本発明例に説明されているように、装置の電子輸送層が、金属錯体MC−28、又は炭素環Cpd−1と混合された金属錯体MC−28からなる場合、その結果は、MC−20をもつ実施例9(テーブル8)の結果よりも劣っている。
【0174】
<実施例22:比較装置21−1〜21−5の作製>
ETL中の金属錯体MC−20をMC−30に置き換えたこと以外は、実施例9に記載されたものと同一の方法で一連のEL装置(21−1〜21−5)を組み立てた。
【0175】
このように形成した装置を、20mA/cm2の動作電流で駆動電圧及び発光効率を試験した。その結果をテーブル21に報告する。
【0176】
【表7】

【0177】
テーブル21の本発明例に説明されているように、平均して、装置の電子輸送層が、金属錯体MC−30、又は炭素環Cpd−1と混合された金属錯体MC−30からなる場合、その結果は、MC−20をもつ実施例9(テーブル8)の結果よりも劣っている。
【0178】
<実施例27:装置26−1〜26−12の作製>
一連のEL装置(26−1〜26−12)を以下の方法で組み立てた。
(1)アノードとして、85nmのインジウム−スズ酸化物(ITO)の層でコーティングしたガラス基板を、順に、市販の洗剤中で超音波処理し、脱イオン水でリンスし、トルエン蒸気中で脱脂し、約1分間酸素プラズマに曝露した。
(2)米国特許第6,208,075号に記載されるようなCHF3のプラズマ支援堆積によって、ITO上に1nmのフッ化炭素(CFx)正孔注入層(HIL1)を堆積させた。
(3)ジピラジノ[2,3−f:2’,3’−h]キノキサリンヘキサカルボニトリルの正孔注入層(HIL2)を10nmの厚さに堆積させた。
(4)次に、正孔輸送材料4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)の層を100nmの厚さに堆積させた。
(5)次に、Cpd−12中に赤色ドーパントL22(2体積%)をもつ40nmの発光層(LEL)を堆積させた。
(6)Alq3、Cpd−12、Cpd−12とMC−1との混合物、又はMC−1(テーブル26参照)の電子輸送層(ETL)をLEL上に真空蒸着させた。
(7)3.5nmのMC−20、又は0.5nmのフッ化リチウムの電子注入層(EIL)(テーブル26参照)をETL上に真空蒸着させた後、100nmのアルミニウム層を真空蒸着させてカソード層を形成した。
【0179】
ETL層及びEIL層の合計の厚さは35.5nmであった。したがって、EILがMC−20(3.5nm)である場合、ETLは32.0nmの厚さを有し、EILがフッ化リチウムである場合、ETLは35.0nmの厚さを有していた。
【0180】
上記の手順によってEL装置の堆積が完了した。次に、装置を周囲環境から保護するため、乾燥グローブボックス中で密封包装した。
【0181】
このように形成した装置を、20mA/cm2の動作電流で駆動電圧及び発光効率を試験した。その結果をテーブル26に報告する。
【0182】
【表8】

【0183】
テーブル26の本発明例に説明されているように、装置の電子注入層が金属錯体MC−20を含む場合、比較装置と比べて、改善された駆動電圧と共に増大した発光効率が得られる。電子輸送層中にCpd−12とMC−1との混合物をもつ本発明例26−7は、実施例26−4に示されるような如何なる色変化を受けることなく、駆動電圧のより一層の改善及び増大した発光効率を示す。
【0184】
<実施例28:装置27−1〜27−10の作製>
一連のEL装置(27−1〜27−10)を以下の方法で組み立てた。
(1)アノードとして、85nmのインジウム−スズ酸化物(ITO)の層でコーティングしたガラス基板を、順に、市販の洗剤中で超音波処理し、脱イオン水でリンスし、トルエン蒸気中で脱脂し、約1分間酸素プラズマに曝露した。
(2)米国特許第6,208,075号に記載されるようなCHF3のプラズマ支援堆積によって、ITO上に1nmのフッ化炭素(CFx)正孔注入層(HIL1)を堆積させた。
(3)ジピラジノ[2,3−f:2’,3’−h]キノキサリンヘキサカルボニトリルの正孔注入層(HIL2)を10nmの厚さに堆積させた。
(4)次に、正孔輸送材料4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)の層を85nmの厚さに堆積させた。
(5)次に、Cpd−12中に青色ドーパントL55(1.5体積%)をもつ20nmの発光層(LEL)を堆積させた。
(6)Alq3、Cpd−12、Cpd−12とMC−1との混合物、MC−1、Cpd−12とMC−20との混合物、又はMC−20(テーブル27参照)の電子輸送層(ETL)をLEL上に真空蒸着させた。装置27−1は、ETL中にAlq3のみを含有した。
(7)3.5nmのMC−20、又は0.5nmのフッ化リチウムの電子注入層(EIL)(テーブル27参照)をETL上に真空蒸着させた後、100nmのアルミニウム層を真空蒸着させてカソード層を形成した。
【0185】
ETL層及びEIL層の合計の厚さは35.5nmであった。したがって、EILがMC−20(3.5nm)である場合、ETLは32.0nmの厚さを有し、EILがフッ化リチウムである場合、ETLは35.0nmの厚さを有していた。
【0186】
上記の手順によってEL装置の堆積が完了した。次に、装置を周囲環境から保護するため、乾燥グローブボックス中で密封包装した。
【0187】
このように形成した装置を、20mA/cm2の動作電流で駆動電圧及び発光効率を試験した。その結果をテーブル27に報告する。
【0188】
【表9】

【0189】
テーブル27の本発明例に説明されているように、装置の電子注入層又は電子輸送層が金属錯体MC−20を含む場合、比較装置と比べて、改善された駆動電圧と共に増大した発光効率が得られる。電子輸送層中にCpd−12とMC−20との混合物又はMC−1をもつ本発明例27−3及び27−7は、駆動電圧のより一層の改善及び増大した発光効率を示す。
【0190】
<実施例29:装置28−1〜28−12の作製>
一連のEL装置(28−1〜27−12)を以下の方法で組み立てた。
(1)アノードとして、85nmのインジウム−スズ酸化物(ITO)の層でコーティングしたガラス基板を、順に、市販の洗剤中で超音波処理し、脱イオン水でリンスし、トルエン蒸気中で脱脂し、約1分間酸素プラズマに曝露した。
(2)米国特許第6,208,075号に記載されるようなCHF3のプラズマ支援堆積によって、ITO上に1nmのフッ化炭素(CFx)正孔注入層(HIL1)を堆積させた。
(3)ジピラジノ[2,3−f:2’,3’−h]キノキサリンヘキサカルボニトリルの正孔注入層(HIL2)を10nmの厚さに堆積させた。
(4)次に、正孔輸送材料4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)の層を85nmの厚さに堆積させた。
(5)次に、Cpd−12中に青色ドーパントL55(1.5体積%)をもつ20nmの発光層(LEL)を堆積させた。
(6)Alq3、Cpd−12、Cpd−12とMC−1との混合物、又はMC−1(テーブル28参照)の電子輸送層(ETL)をLEL上に真空蒸着させた。
(7)3.5nmのMC−20、又は0.5nmのフッ化リチウムの電子注入層(EIL)(テーブル28参照)をETL上に真空蒸着させた後、100nmのアルミニウム層を真空蒸着させてカソード層を形成した。
【0191】
ETL層及びEIL層の合計の厚さは35.5nmであった。したがって、EILがMC−20(3.5nm)である場合、ETLは32.0nmの厚さを有し、EILがフッ化リチウムである場合、ETLは35.0nmの厚さを有していた。
【0192】
上記の手順によってEL装置の堆積が完了した。次に、装置を周囲環境から保護するため、乾燥グローブボックス中で密封包装した。このように形成した装置を、20mA/cm2の動作電流で駆動電圧及び発光効率を試験した。その結果をテーブル28に報告する。
【0193】
【表10】

【0194】
テーブル28の本発明例に説明されているように、装置の電子注入層又は電子輸送層が金属錯体MC−20を含む場合、比較装置と比べて、改善された駆動電圧と共に増大した発光効率が得られる。電子輸送層中にCpd−12とMC−1との混合物をもつ本発明例28−7は、実施例28−4に示されるような色変化なしに、駆動電圧のより一層の改善及び増大した発光効率を示す。
【0195】
<実施例31:装置30−1〜30−12の作製>
一連のEL装置(30−1〜30−12)を以下の方法で組み立てた。
(1)アノードとして、85nmのインジウム−スズ酸化物(ITO)の層でコーティングしたガラス基板を、順に、市販の洗剤中で超音波処理し、脱イオン水でリンスし、トルエン蒸気中で脱脂し、約1分間酸素プラズマに曝露した。
(2)米国特許第6,208,075号に記載されるようなCHF3のプラズマ支援堆積によって、ITO上に1nmのフッ化炭素(CFx)正孔注入層(HIL1)を堆積させた。
(3)ジピラジノ[2,3−f:2’,3’−h]キノキサリンヘキサカルボニトリルの正孔注入層(HIL2)を10nmの厚さに堆積させた。
(4)次に、正孔輸送材料4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)の層を134nmの厚さに堆積させた。
(5)次に、L5中にドーパントL46(1.5体積%)をもつ20nmの発光層(LEL)を堆積させた。
(6)Alq3、Cpd−12、Cpd−12とMC−1との混合物、又はCpd−12とMC−20との混合物(テーブル30参照)の電子輸送層(ETL)をLEL上に真空蒸着させた。
(7)3.5nmのMC−20、又は0.5nmのフッ化リチウムの電子注入層(EIL)(テーブル30参照)をETL上に真空蒸着させた後、100nmのアルミニウム層を真空蒸着させてカソード層を形成した。
【0196】
ETL層及びEIL層の合計の厚さは40nmであった。したがって、EILがMC−20(3.5nm)である場合、ETLは36.5nmの厚さを有し、EILがフッ化リチウムである場合、ETLは39.5nmの厚さを有していた。
【0197】
上記の手順によってEL装置の堆積が完了した。次に、装置を周囲環境から保護するため、乾燥グローブボックス中で密封包装した。このように形成した装置を、20mA/cm2の動作電流で駆動電圧及び発光効率を試験した。その結果をテーブル30に報告する。
【0198】
【表11】

【0199】
テーブル30の本発明例に説明されているように、装置の電子注入層が金属錯体MC−20を含む場合、比較装置と比べて、改善された駆動電圧と共に増大した発光効率が得られる。電子輸送層中にCpd−12とMC−1との混合物又はMC−20をもつ本発明例30−7及び30−10は、駆動電圧のより一層の改善及び増大した発光効率を示す。
【0200】
<実施例32:装置31−1〜31−4の作製>
一連のEL装置(31−1〜31−4)を以下の方法で組み立てた。
(1)アノードとして、20nmのインジウム−スズ酸化物(ITO)の層でコーティングしたガラス基板を、順に、市販の洗剤中で超音波処理し、脱イオン水でリンスし、トルエン蒸気中で脱脂し、約1分間酸素プラズマに曝露した。
(2)米国特許第6,208,075号に記載されるようなCHF3のプラズマ支援堆積によって、ITO上に1nmのフッ化炭素(CFx)正孔注入層(HIL1)を堆積させた。
(3)ジピラジノ[2,3−f:2’,3’−h]キノキサリンヘキサカルボニトリルの正孔注入層(HIL2)を10nmの厚さに堆積させた。
(4)次に、正孔輸送材料4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)の層を134nmの厚さに堆積させた。
(5)次に、発光層(LEL)を堆積させた。使用されるLELについてはテーブル31参照。赤色LELは、L5中に赤色ドーパントL46(0.5体積%)をもつ40nmの厚さであった。青色LELは、Cpd−12中に青色ドーパントL55(1.5体積%)をもつ20nmの厚さであった。
(6)Cpd−12とMC−1との50/50混合物(体積による)の電子輸送層(ETL)をLEL上に真空蒸着させた。
(7)MC−20の電子注入層(EIL)をETL上に真空蒸着させた後、100nmのアルミニウム層を真空蒸着させてカソード層を形成した。
【0201】
ETL層及びEIL層の合計の厚さは35nmであった。したがって、EILがMC−20(3.5nm)である場合、ETLは31.5nmの厚さを有していた。
【0202】
上記の手順によってEL装置の堆積が完了した。次に、装置を周囲環境から保護するため、乾燥グローブボックス中で密封包装した。このように形成した装置を、20mA/cm2の動作電流で駆動電圧及び発光効率を試験した。その結果をテーブル31に報告する。
【0203】
【表12】

【0204】
テーブル31の本発明例に説明されているように、装置の電子注入層が金属錯体MC−20及びアントラセンを含む場合、比較装置と比べて、改善された駆動電圧と共に増大した発光効率が得られる。
【0205】
<実施例33:装置32−1〜32−4の作製>
一連のEL装置(32−1〜32−4)を以下の方法で組み立てた。
(1)アノードとして、20nmのインジウム−スズ酸化物(ITO)の層でコーティングしたガラス基板を、順に、市販の洗剤中で超音波処理し、脱イオン水でリンスし、トルエン蒸気中で脱脂し、約1分間酸素プラズマに曝露した。
(2)米国特許第6,208,075号に記載されるようなCHF3のプラズマ支援堆積によって、ITO上に1nmのフッ化炭素(CFx)正孔注入層(HIL1)を堆積させた。
(3)ジピラジノ[2,3−f:2’,3’−h]キノキサリンヘキサカルボニトリルの正孔注入層(HIL2)を10nmの厚さに堆積させた。
(4)次に、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)中にCpd−9(30体積%)及びCpd−3(2体積%)を有する発光層(LEL)を20nmの厚さに堆積させた。
(5)次に、Cpd−12中にL55(1.5体積%)を有する第2発光層(LEL)を20nmの厚さに堆積させた。
(6)Cpd−12、Bphen又はAlq3とMC−20との50/50混合物(体積による)の電子輸送層(ETL)(テーブル32参照)をLEL上に31.5nmの厚さで真空蒸着させた。
(7)MC−20の電子注入層(EIL)をETL上に35nmの厚さで真空蒸着させた。
【0206】
上記の手順によってEL装置の堆積が完了した。次に、装置を周囲環境から保護するため、乾燥グローブボックス中で密封包装した。このように形成した装置を、20mA/cm2の動作電流で駆動電圧及び発光効率を試験した。その結果をテーブル32に報告する。
【0207】
【表13】

【0208】
テーブル32の本発明例に説明されているように、装置の電子注入層が金属錯体MC−20を含む場合、比較装置と比べて、改善された駆動電圧と共に増大した発光効率が得られる。縮合環芳香族化合物をさらに含む電子輸送層をもつ実施例32−1及び32−2は、駆動電圧のより一層の改善及び増大した発光効率を示す。
【0209】
<実施例40:(比較例)>
従来のOLEDの調製は、次の通りである。透明なITO導電層でコーティングした約1.1mm厚のガラス基板を市販のガラス洗浄手段(scrubber tool)を用いて洗浄して乾燥させた。ITOの厚さは約25nmであり、ITOのシート抵抗は、70Ω/□である。次に、ITO表面を酸化プラズマで処理し、アノードとしての表面に調整した。RFプラズマ処理チャンバ中でCHF3ガスを分解することにより、1nm厚のCFx層をアノードバッファー層として清浄なITO上に堆積させた。次に、基板上部の他の全ての層の堆積のために、基板を真空蒸着チャンバに移動した。役10-6トールの真空下、熱ボートからの蒸発によって、下記の層を下記の順序で堆積させた。
a)Dpq−1を含む10nm厚のHIL、
b)NPBを含む100nm厚のHTL、
c)L22を1.0体積%ドープしたCpd−12を含む40nm厚のLEL、
d)Cpd−12を含む25nm厚のETL、
e)MC−1を含む2.5nm厚のEIL、及び
f)Alを含む約120nm厚のカソード
【0210】
このOLEDは、20mA/cm2を通すために約3.6Vの駆動電圧を要求する。この試験条件下、装置は、4,451cd/m2の輝度、及び約22.8cd/Aの発光効率を有する。色度座標は、CIEx=0.233及びCIEy=0.626であり、発光ピークは504nmにある。T50(5,000ニトにおける)は1,854時間である。従って、T50(1,000ニトにおける)は、24,300時間であると推定される。EL性能データをテーブル33にまとめる。初期輝度と動作時間、及び初期駆動電圧と動作時間との寿命試験曲線を図2及び3にそれぞれ示す。
【0211】
<実施例41(本発明例)>
層e)を以下のように変えたこと以外は、実施例40におけるものと同様にして、本発明に従う他のOLEDを組み立てた。
e)MC−20を含む2.5nm厚のEIL
【0212】
このOLEDは、20mA/cm2を通すために約3.5Vの駆動電圧を要求する。この試験条件下、装置は、4,603cd/m2の輝度、及び約23.0cd/Aの発光効率を有する。色度座標は、CIEx=0.234及びCIEy=0.627であり、発光ピークは504nmにある。そのT50(5,000ニトにおける)は2,174時間である。従って、T50(1,000ニトにおける)は、28,200時間であると推定される。EL性能データをテーブル33にまとめる。初期輝度と動作時間、及び初期駆動電圧と動作時間との寿命試験曲線を図2及び3にそれぞれ示す。
【0213】
EILとしてMC−20を使用することにより、動作寿命をさらに改善し、寿命にわたる電圧上昇を低減し得ることが示される。
【0214】
【表14】

【0215】
<実施例42:装置42−1〜42−9>
一連のEL装置(42−1〜42−9)を以下の方法で組み立てた。
(1)アノードとして、85nmのインジウム−スズ酸化物(ITO)の層でコーティングしたガラス基板を、順に、市販の洗剤中で超音波処理し、脱イオン水でリンスし、トルエン蒸気中で脱脂し、約1分間酸素プラズマに曝露した。
(2)米国特許第6,208,075号に記載されるようなCHF3のプラズマ支援堆積によって、ITO上に1nmのフッ化炭素(CFx)正孔注入層(HIL)を堆積させた。
(3)次に、正孔輸送材料4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)の層を75nmの厚さに堆積させた。
(4)次に、ホスト材料ルブレン(Cpd−1)及び0.5体積%のL46(89頁参照)に相当する35nmの発光層(LEL)を堆積させた。
(5)Alq、シクロメタル化錯体若しくは炭素環式化合物、又は2つの混合物(テーブルに示されるような)の35nmの電子輸送層(ETL)をLEL上に真空蒸着させた。
(6)0.5nmのフッ化リチウム層をETL上に真空蒸着させた後、150nmのアルミニウム層を真空蒸着させてカソード層を形成した。
【0216】
上記の手順によってEL装置の堆積が完了した。次に、装置を周囲環境から保護するため、乾燥グローブボックス中で密封包装した。これは、本明細書の実施例2に記載されたものと同じ一般的な装置構成である。装置が生成した光の色は、全体にわたってほとんど同じであり、平均すると、1931CIE(国際照明委員会)のCIEx、CIEy色度座標の0.65、0.35に相当した。
【0217】
【表15】

【0218】
装置42−2〜42−4の直接比較は、本発明の化合物MC−20のための駆動電圧の有意な低下を示す。リチウム錯体がテトラセン化合物と混合される装置1−5〜1−7の比較は、MC−20での駆動電圧の同様の低下を示す。装置1−8及び1−9の火かっ句は、MC−20がアントラセン誘導体と混合される場合、電圧のより一層大きな低下を示す。
【0219】
<実施例43:装置43−1〜43−10>
一連のEL装置(43−1〜43−10)を以下の方法で組み立てた。
(1)アノードとして、85nmのインジウム−スズ酸化物(ITO)の層でコーティングしたガラス基板を、順に、市販の洗剤中で超音波処理し、脱イオン水でリンスし、トルエン蒸気中で脱脂し、約1分間酸素プラズマに曝露した。
(2)米国特許第6,208,075号に記載されるようなCHF3のプラズマ支援堆積によって、ITO上に1nmのフッ化炭素(CFx)正孔注入層(HIL)を堆積させた。
(7)次に、正孔輸送材料4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)の層を75nmの厚さに堆積させた。
(8)次に、ホスト材料ルブレン(Cpd−1)及び0.5体積%のL46(89頁参照)に相当する35nmの発光層(LEL)を堆積させた。
(9)Alq、シクロメタル化錯体若しくは炭素環式化合物、又は2つの混合物(テーブルに示されるような)の35nmの電子輸送層(ETL)をLEL上に真空蒸着させた。
(10)0.5nmのフッ化リチウム層をETL上に真空蒸着させた後、150nmのアルミニウム層を真空蒸着させてカソード層を形成した。
【0220】
上記の手順によってEL装置の堆積が完了した。次に、装置を周囲環境から保護するため、乾燥グローブボックス中で密封包装した。これは、本明細書の実施例2(77頁)に記載されたものと同じ一般的な装置構成である。このように形成した装置を、20mA/cm2の動作電流で発光効率を試験した。装置が生成した光の色は、ほとんど同じであり、平均すると、1931CIE(国際照明委員会)のCIEx、CIEy色度座標の0.65、0.35に相当した。
【0221】
【表16】

【0222】
テーブル43において、MC−3は本発明ではない有機錯体である。MC−3が、本発明の有機錯体のMC−20で置き換えられたこと以外は同じである装置1−3、1−4及び1−5と対応する装置1−7、1−8及び1−9はそれぞれ、電圧における大きく且つ有意な減少を示す。
【0223】
<実施例44−1〜44−29>
テーブル44に記載した変更を除き、実施例43と同様の方法で一連のEL装置(44−1〜44−29)を組み立てた。実施例43からいくつかの比較例を加えた。
【0224】
【表17】

【0225】
【表18】

【0226】
テーブル44における結果は、本発明の金属錯体が、炭素環式縮合環芳香族化合物をもつ発光層に隣接する混合層において使用される場合に、効率が増大することを示す。本発明の金属錯体が10体積%以上で且つ90体積%未満の場合に最も良好な結果が得られる。
【0227】
<実施例45:装置45−1〜45−8(比較例)>
テーブル44に記載した変更を除き、実施例43及び44と同様の方法でMC−28をもつ一連の比較EL装置(45−1〜45−8)を組み立てた。実施例43からいくつかの比較例を加えた。
【0228】
【表19】

【0229】
テーブル45における結果は、混合ETL構造における本発明の金属錯体と非発明の金属錯体の性能を直接比較する。各場合において、本発明の錯体は、電圧、効率又は両方において、大きく且つ有意な改善を示す。
【0230】
この明細書に引用された特許及び他の文献の全ての内容は、参照することにより本明細書中に援用される。本発明は、それらの特定の好ましい実施形態に特に関連して詳細に説明されたが、本発明の精神及び範囲内で変更及び改良がなされ得ることが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0231】
101 基板
103 アノード
105 正孔注入層(HIL)
107 正孔輸送層(HTL)
109 発光層(LEL)
111 電子輸送層(ETL)
112 電子注入層(EIL)
113 カソード
150 電源
160 導体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード、発光層及びアノードをその順序で含み、且つ前記カソードと前記発光層との間に配置される、2−(2−ヒドロキシフェニル)フェナントロリン誘導体のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含有する更なる層を有するOLED装置。
【請求項2】
前記2−(2−ヒドロキシフェニル)フェナントロリン誘導体は、式(MC):
【化1】

(式中、Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり;R1及びR2は置換基であり;並びにnは0〜7及びpは0〜4である)に従う請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記2−(2−ヒドロキシフェニル)フェナントロリン誘導体の前記金属塩は、リチウムである請求項1に記載の装置。
【請求項4】
2−(2−ヒドロキシフェニル)フェナントロリン誘導体の前記金属塩は、
【化2】

である請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記更なる層は、アントラセン又はテトラセンから選択される縮合環芳香族化合物を10体積%よりも多く更に含有する請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記縮合環芳香族化合物は、式(2):
【化3】

(式中、Ar1〜Ar4は、独立して選択される芳香族基を表し;R1〜R4は、水素又は独立して選択される置換基を表す)により表されるテトラセンである請求項5に記載の装置。
【請求項7】
式(2)において、Ar1及びAr4が同じ基であり;Ar1及びAr4、Ar2及びAr3が独立して同じ基であり;R1及びR4が水素ではなく、同じ基を表す請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記縮合環芳香族化合物は、式(3):
【化4】

(式中、W9及びW10は、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基又はアントラセニル基から独立して選択され、W1〜W8は、水素、アルキル基又はフェニル基から独立して選択される)により表されるアントラセンである請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記更なる層は前記発光層に直接隣接しており、前記更なる層と前記カソードとの間に配置される、式(4’)
【化5】

(式中、Z及び破線の弧は、2又は3個の原子を表し、Mと5又は6員環を完成するのに必要な結合を表し;各Aは、H又は置換基を表し、各Bは、Z原子上の独立して選択される置換基を表し、ただし、2つ以上の置換基は結合して縮合環又は縮合環系を形成してもよく;jは0〜3及びkは1又は2であり;Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表し;m及びnは、錯体に中性電荷を与えるように選択される、独立して選択される整数である)により表される有機アルカリのシクロメタル化錯体又はアルカリ土類金属錯体を含有する追加層を更に含有する請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記追加層におけるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の前記有機錯体は、式(5):
【化6】

(式中、raおよびrbは、独立して選択される置換基を表し、ただし、2つの置換基は結合して環を形成してもよく;sは0〜3であり;tは0〜3であり;nは整数である)により表される請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記追加層におけるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の前記有機錯体は、式(MC):
【化7】

(式中、Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり;R1及びR2は置換基であり;nは0〜7及びpは0〜4である)に従う請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記更なる層は前記カソードに直接隣接しており、前記更なる層と前記発光層との間に配置される追加層を更に含有する請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記追加層はアントラセンを含有する請求項12に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−507013(P2013−507013A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533228(P2012−533228)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/051258
【国際公開番号】WO2011/044009
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(510048417)グローバル・オーエルイーディー・テクノロジー・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (95)
【氏名又は名称原語表記】GLOBAL OLED TECHNOLOGY LLC.
【住所又は居所原語表記】13873 Park Center Road, Suite 330, Herndon, VA 20171, United States of America
【Fターム(参考)】