説明

低NOx燃焼制御方法および還元処理物の製造方法

【課題】RHFにおいてNOxを低減化させ得るようにする。
【解決手段】被加熱物を回転床炉に供給し、回転床炉の炉内に燃焼用空気を供給するとともに前記炉内に設けられたバーナーにより被加熱物から発生する可燃性ガスを燃焼させて被加熱物を加熱・還元し、その還元処理物を前記回転床炉の炉出口から回収して行う低NOx燃焼制御方法であって、NOx値、バーナーの空気比、燃焼用空気の予熱温度および炉出口の酸素濃度との間の関係式を予め求めておき、その関係式と、この関係式のパラメータの各実測値とに基づき予測NOx値を求め、求めた予測NOx値と予め設定された設定NOx値との大小を比較し、求めた予測NOx値が設定NOx値以上の場合には、前記関係式を用いて予測NOx値を設定NOx値以下とするバーナーの空気比の適正値を算出し、その算出適正値に基づいて燃焼制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物と石炭等との混合物を含む被加熱物を加熱・還元するロータリーハースファーネス(RHF;回転床炉)において、低NOxで燃焼を行うように制御する低NOx燃焼制御方法および還元処理物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記RHFを含む燃焼装置において低NOx燃焼を実現するには、燃焼装置内に局所的な高温部を作らずに、低空気比で運転することが重要である。そして、低NOx燃焼を達成する燃焼制御方法としては、脱硝設備の省略化が可能であるため、数多く提案されている。例えば、排ガス中の酸素濃度などの測定値に基づき単純にフィードバックする燃焼制御方法、操作量と測定値とから重回帰分析して或いはNOx生成量を反応速度から計算して、燃焼条件を決定する方法(例えば特許文献1、2、3参照)、または操作量と測定値とから経験的に予め求めた式を用いて燃焼制御する方法(例えば特許文献4、5参照)などが提案されている。
【特許文献1】特開平11−132413号公報
【特許文献2】特開昭61−245826号公報
【特許文献3】特開昭61−180829号公報
【特許文献4】特開平2−302503号公報
【特許文献5】特開昭59−41713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した各種の燃焼制御方法は、各提案方法の燃焼炉の形態が上記RHFとは異なっていて、上記RHFにおいて燃焼制御を行っても十分にNOx値を低減できないでいた。
【0004】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、RHFにおいてNOxを低減化させ得る低NOx燃焼制御方法、およびその低NOx燃焼制御方法を用いる還元処理物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1の低NOx燃焼制御方法は、金属酸化物と石炭等との混合物を含む被加熱物を回転床炉に供給し、前記回転床炉の炉内に燃焼用空気を供給するとともに前記炉内に設けられたバーナーにより前記被加熱物から発生する可燃性ガスを燃焼させて前記被加熱物を加熱・還元し、その還元処理物を前記回転床炉の炉出口から回収して行う還元処理物の製造に用いる低NOx燃焼制御方法であって、前記回転床炉から排出されるNOx値、前記バーナーの空気比および前記燃焼用空気の予熱温度の間の関係式を予め求めておく工程と、前記関係式と、前記バーナーの空気比および前記燃焼用空気の予熱温度の各実測値とに基づき予測NOx値を求める予測NOx値算出工程と、予測NOx値算出工程で求めた予測NOx値と予め設定された設定NOx値との大小を比較する比較工程と、求めた前記予測NOx値が前記設定NOx値以上の場合には、前記関係式を用いて予測NOx値を設定NOx値以下とするバーナーの空気比の適正値を算出し、算出した前記バーナーの空気比の適正値に基づいて燃焼制御を行う燃焼制御工程とを含むことを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2の低NOx燃焼制御方法は、金属酸化物と石炭等との混合物を含む被加熱物を回転床炉に供給し、前記回転床炉の炉内に燃焼用空気を供給するとともに前記炉内に設けられたバーナーにより前記被加熱物から発生する可燃性ガスを燃焼させて前記被加熱物を加熱・還元し、その還元処理物を前記回転床炉の炉出口から回収して行う還元処理物の製造に用いる低NOx燃焼制御方法であって、前記回転床炉から排出されるNOx値、前記バーナーの空気比および前記燃焼用空気の予熱温度の間の関係式を予め求めておく工程と、前記関係式と、前記バーナーの空気比および前記燃焼用空気の予熱温度の各実測値とに基づき予測NOx値を求める予測NOx値算出工程と、予測NOx値算出工程で求めた予測NOx値と予め設定された設定NOx値との大小を比較する比較工程と、求めた予測NOx値が前記設定NOx値以上の場合には、前記関係式を用いて予測NOx値を設定NOx値以下とする燃焼用空気の予熱温度の適正値を算出し、算出した燃焼用空気の予熱温度の適正値に基づいて燃焼制御を行う燃焼制御工程とを含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3の低NOx燃焼制御方法は、金属酸化物と石炭等との混合物を含む被加熱物を回転床炉に供給し、前記回転床炉の炉内に燃焼用空気を供給するとともに前記炉内に設けられたバーナーにより前記被加熱物から発生する可燃性ガスを燃焼させて前記被加熱物を加熱・還元し、その還元処理物を前記回転床炉の炉出口から回収して行う還元処理物の製造に用いる低NOx燃焼制御方法であって、前記回転床炉から排出されるNOx値、前記バーナーの空気比および前記燃焼用空気の予熱温度の間の関係式を予め求めておく工程と、前記関係式と、前記バーナーの空気比および前記燃焼用空気の予熱温度の各実測値とに基づき予測NOx値を求める予測NOx値算出工程と、予測NOx値算出工程で求めた予測NOx値と予め設定された設定NOx値との大小を比較する比較工程と、求め−た予測NOx値が前記設定NOx値以上の場合には、前記関係式を用いて予測NOx値を設定NOx値以下とするバーナーの空気比の適正値と、燃焼用空気の予熱温度の適正値とを算出し、算出した両適正値に基づいてバーナーの空気比を制御するとともに燃焼を制御する空気比・燃焼制御工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4の低NOx燃焼制御方法は、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の低NOx燃焼制御方法において、前記関係式は炉内温度を含んだものであって、前記予測NOx値算出工程は、その関係式と、前記炉内温度、前記バーナーの空気比および前記燃焼用空気の予熱温度の各実測値とに基づいて前記予測NOx値を求め、かつ、前記比較工程は、求めた予測NOx値と予め炉内温度を加味して設定された設定NOx値とを比較することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5の低NOx燃焼制御方法は、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の低NOx燃焼制御方法において、前記関係式に、下記1式を用いることを特徴とする。
【0010】
【数1】

【0011】
但し、Z:予測NOx値[ppm]
Ta:予熱空気温度[℃]
A,B:補正係数[ppm]
a:閾値[℃]
α:定数
M:複数の領域を有する回転床炉における1または2以上の領域での空気比に関す
る項であって、或る領域iにおいて(mi/di)δiを定義したときの任意
の1つの領域での(mi/di)δiまたは任意の2以上の領域での(mi/
di)δiの積で表される。
【0012】
mi:バーナー空気比
di:閾値[−]
δi:領域iに関する定数

本発明の請求項6の低NOx燃焼制御方法は、請求項4に記載の低NOx燃焼制御方法において、前記関係式に、下記2式を用いることを特徴とする。
【0013】
【数2】

【0014】
但し、Z:予測NOx値[ppm]
Ta:予熱空気温度[℃]
Tf:回転床炉内平均温度[℃]
A,B:補正係数[ppm]
a、b:閾値[℃]
α、β:定数
M:複数の領域を有する回転床炉における1または2以上の領域での空気比に関す
る項であって、或る領域iにおいて(mi/di)δiを定義したときの任意
の1つの領域での(mi/di)δiまたは任意の2以上の領域での(mi/
di)δiの積で表される。
【0015】
mi:バーナー空気比
di:閾値[−]
δi:領域iに関する定数

本発明の請求項7の低NOx燃焼制御方法は、請求項1乃至6のいずれか1つに記載の低NOx燃焼制御方法において、前記関係式に、前記炉出口の酸素濃度をパラメータとして含み、かつ予測NOx値算出工程において前記炉出口の酸素濃度の実測値又は計算値を用いることを特徴とする。
【0016】
本発明の還元処理物の製造方法は、金属酸化物と石炭等との混合物を含む被加熱物を回転床炉に供給し、該回転床炉の炉内に燃焼用空気を供給するとともに前記炉内に設けられたバーナーにより上記被加熱物から発生する可燃性ガスを燃焼させて前記被加熱物を加熱・還元し、その還元処理物を前記回転床炉の炉出口から排出して回収する還元処理物の製造方法であって、請求項1乃至7のいずれかに記載の低NOx燃焼制御方法を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の本発明に係る低NOx燃焼制御方法による場合には、RHFのNOx値に対して影響を与えるバーナーの空気比、燃焼用空気の予熱温度および炉出口の酸素濃度のうち、特に影響度合いが高いバーナーの空気比について設定NOx値を達成し得る適正値を求め、そのバーナーの空気比の適正値に基づいてRHFの燃焼制御を行うので、設定NOx値に効率よく近づけることが可能になり、低NOxで燃焼制御を行い得る。
【0018】
また、請求項2の本発明に係る低NOx燃焼制御方法による場合には、RHFのNOx値に対して影響を与えるバーナーの空気比、燃焼用空気の予熱温度および炉出口の酸素濃度のうち、特に影響度合いが高い燃焼用空気の予熱温度について設定NOx値を達成し得る適正値を求め、その燃焼用空気の予熱温度の適正値に基づいてRHFの燃焼制御を行うので、設定NOx値に効率よく近づけることが可能になり、低NOxで燃焼制御を行い得る。
【0019】
また、請求項3の本発明に係る低NOx燃焼制御方法による場合には、RHFのNOx値に対して影響を与えるバーナーの空気比、燃焼用空気の予熱温度および炉出口の酸素濃度のうち、特に影響度合いが高いバーナーの空気比と燃焼用空気の予熱温度とについて設定NOx値を達成し得る適正値を求め、それら両適正値に基づいてRHFの燃焼制御を行うので、設定NOx値に効率よく近づけることが可能になり、低NOxで燃焼制御を行い得る。
【0020】
また、請求項4の本発明に係る低NOx燃焼制御方法による場合には、RHFにおいてNOxの低減化に影響度合いが、バーナーの空気比や燃焼用空気の予熱温度に次いで高い炉内温度をパラメータとして含む関係式を用いるので、より精度よく設定NOx値に近づけることが可能になり、低NOxでRHFの燃焼制御を行い得る。
【0021】
また、請求項8の本発明に係る還元処理物の製造方法による場合には、RHFにおいて低NOxの燃焼状態で被加熱物を加熱・還元して還元処理物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明に係る低NOx燃焼制御方法を用いた還元処理物の製造方法につき説明する。
【0023】
図1はRHFの内部構成を示す平面図で、図2は図1のRHFの内部構成を展開して示す側面図である。
【0024】
RHF1は、ドーナツ状の炉床2が回転する燃焼装置であり、炉床2の上方にある被加熱物供給装置3により炉床2の上に、金属酸化物と石炭等との混合物を含むペレット状の被加熱物4を装入し、複数の領域、図示例では4つの領域1、領域2、領域3および領域4を、炉床2の回転により順次通過した後に、炉出口に設けられた被加熱物回収装置5により回収される。領域2と領域3の間には煙道6が設けられている。
【0025】
上記各領域1〜4は、図1および図3に示すように炉床2の上方に仕切壁7が設けられることで分割されている。この仕切壁7はその下端が炉床2から浮いた状態で設けられた構成である。
【0026】
領域1、領域2、領域3および領域4のそれぞれには炉内と炉外とを仕切る炉壁にバーナー9が設けられ、領域1、領域2および領域3の前記炉壁に二次燃焼用空気供給ノズル10が設けられている。上記バーナー9には、本発明の低NOx燃焼制御に用いる燃焼用空気(後述するバーナー用空気)が供給される。一方、二次燃焼用空気供給ノズル10から二次燃焼用空気が各領域1〜3の内部に供給される(二次燃焼用空気はどの領域に入れてもよい)。なお、上記バーナー9としては、サイドバーナーを用いているが、軸流バーナーを用いてもよい。その軸流バーナーは、例えば炉内天井部に設けられる。
【0027】
図4は、このように構成されたRHF1における制御系を示すブロック図である。
【0028】
RHF1には、RHF内の平均の炉内温度(Tf)を測定する温度計21が設けられており、温度計21により測定された炉内温度(Tf)は演算制御部20に与えられる。RHF1の排ガスは、前記煙道6を介しその出口の煙突6aから外部へ排出されるようになっていて、煙道6に設けた排ガス分析計22は排ガス中の酸素濃度、つまり炉出口の酸素濃度(Co)を分析し、その分析結果を演算制御部20へ与える。また、煙道6の途中には、熱交換器23が設けられている。
【0029】
また、燃焼空気ブロア24により送風された燃焼用空気は、配管25aを介して熱交換器23へ供給され、熱交換器23を経た空気は配管25bを介してRHF1のバーナー用空気供給装置11に供給される。前記配管25bに供給された燃焼用空気の一部は、流量調整弁26を介して大気中へ開放される。また、バーナー用空気供給装置11に供給された燃焼用空気(以下、バーナー用空気と言う。)は、上述したように本発明の低NOx燃焼制御に用いる燃焼用空気であり、バーナー用空気供給装置11に設けられた流量調整弁27により流量調整されてバーナー9に供給される。
【0030】
配管25bにはバーナー用空気の予熱温度を計測する温度計29が設けられており、温度計29により計測されたバーナー用空気の予熱温度は演算制御部20へ与えられる。バーナー用空気の温度は、例えば配管25bに冷却用空気を供給したり、或いは燃焼用空気の一部を、熱交換器23に通す回数を調整したりすることにより制御される。上記温度計29よりも下流側は、上記4つの領域1〜4に対応して4つに分岐していて、4つのバーナー用空気供給装置11となっている。
【0031】
各バーナー用空気供給装置11には、それぞれ流量調整弁27が設けられていて、この流量調整弁27によりバーナー用空気の流量が調整され、調整されたバーナー用空気が各領域1〜4にノズル11aから供給される。また、各バーナー用空気供給装置11には、バーナー用空気の供給量を計測する流量計30が設けられている。ここで、各バーナー用空気供給装置11における流量計30を、30a〜30dとし、流量調整弁27を、27a〜27dとする。
【0032】
また、各領域1〜4に配されたバーナー9には燃料管32を介して送られてきた燃料ガスがノズル12aから供給されるようになっていて、燃焼ガス量は流量調整弁28により調整される。燃料管32には、燃料ガス量を計測する流量計31が設けられている。ここで、各領域1〜4ごとの燃料管32、流量調整弁28および流量計31のそれぞれを、32a〜32d、28a〜28d、31a〜31dとする。
【0033】
上記流量計30a〜30dにより計測されたバーナー用空気の供給量と、流量計31a〜31dにより計測された燃料ガス量とは、演算制御部20に与えられる。
【0034】
上記演算制御部20は、図5に示すように、制御部20Aと演算部20Bと記憶部20Cとを有する。記憶部20Cには、下記3式と、表1に示す3式中のパラメータの値と、後述する設定NOx値(H)とが入力設定されている。これらデータは演算部20Bにより適宜読み出されるようになっている。
【0035】
【数3】

【0036】
【表1】

【0037】
上記(3)式は、RHFの排出NOx値を予測するために予め求めたもので、バーナー用空気に関する予熱空気温度[℃](Ta)、RHFの炉内温度[℃](Tf)、RHFの炉出口の酸素濃度[%](Co)および各領域1、2、3、4のバーナー空気比(m1、m2、m3、m4)をRHFの操作因子(パラメータ)として、これらRHFの操作因子と、その閾値との比、つまり操作因子を閾値で除した値を、その影響の大きさに起因する指数関数で表してその積をとり、補正係数A'、Bで指数化することで、予測NOx値(Z)を求める式である。また、この式は、式左辺の予測NOx値(Z)を設定NOx値(H)に置き換え、その設定NOx値(H)を満足させる各領域1〜4におけるバーナー空気比の適正値m1A、m2A、m3A、m4Aを求める式でもある。なお、上記RHFの炉内温度は全領域1、2、3、4の温度の平均値である(必ずしも平均温度でなくてもよく、効果の大きい領域の炉内温度でよい。)。また、上記補正係数A'は、上記3式がRHFの炉出口の酸素濃度(Co)の項を含むため、課題を解決するための手段の欄におけるRHFの炉出口の酸素濃度(Co)の項を含まない前記1式や2式の補正係数Aとは異ならせてある。
【0038】
演算部20Bは、流量計31から与えられる燃料ガス量を燃料供給量とし、流量計30から与えられるバーナー用空気の供給量を空気供給量として、各領域1〜4ごとの空燃比(空気供給量/燃料供給量)Mを求め、その空燃比Mの理論空燃比Mstに対する比、つまり空気比(M/Mst)を各領域1〜4ごとに算出する。
【0039】
また、演算部20Bは、上記(3)式と、算出したバーナーの空気比m1、m2、m3、m4と、温度計29からの予熱空気温度(Ta)と、排ガス分析計22からの炉出口の酸素濃度(Co)と、温度計21からの炉内温度(Tf)とに基づいて予測NOx値(Z)を算出し、算出した予測NOx値(Z)と、記憶部20Cから読み出した設定NOx値(H)とを比較する。そして、演算部20Bは、予測NOx値(Z)が設定NOx値(H)よりも小の場合には、そのままの制御を維持する指令を制御部20Aに与え、制御部20Aはそれまでの制御を維持する。一方、演算部20Bは、予測NOx値(Z)が設定NOx値(H)以上であれば、上記(3)式と、温度計29からの予熱空気温度(Ta)と、排ガス分析計22からの炉出口の酸素濃度(Co)と、温度計21からの炉内温度(Tf)とに基づいて、各領域1〜4におけるバーナーの空気比の適正値m1A〜m4Aを算出する。そして、制御部20Aは、演算部20Bが算出したバーナーの空気比の適正値m1A〜m4Aに基づき、各領域1〜4における流量調整弁27、28の開度を調整する。また、制御部20Aは、温度計29からの予熱空気温度(Ta)を、予め設定した所定値とすべく熱交換器23の熱交換率を調整する。
【0040】
次に、このように構成されたRHF1およびその制御系において、本発明の一実施形態に係る低NOx燃焼制御方法を、図6のフローチャートに基づいて説明する。なお、本実施形態における燃焼制御は、1時間ピッチで行う場合について述べる。
【0041】
所定時間に達すると、上記演算制御部20は、上記3式の予測NOx値(Z)を算出する(ステップS1)。なお、上記3式については、燃焼制御に先だって予め求めておく。
【0042】
次に、ステップS2に進み、その算出した予測NOx値(Z)が設定NOx値(H)よりも小さいか否かを判定し、予測NOx値(Z)が設定NOx値(H)よりも小さい場合は、現状のままで燃焼制御を行うとともに、その予測NOx値(Z)を、例えばRHF1の作業室に設けられた表示画面に表示する(ステップS3)。
【0043】
一方、ステップS2において、予測NOx値(Z)が設定NOx値(H)以上である場合には、警告の表示を前記表示画面に表示し(ステップS4)、続いて演算制御部20は、上記3式の左辺の予測NOx値(Z)を設定NOx値(H)に置き換え、その設定NOx値(H)を満足させる各領域1〜4のバーナー空気比の適正値m1A〜m4Aを計算する(ステップS5)。
【0044】
その後、算出したバーナー空気比の適正値m1A〜m4Aとなるように各領域1〜4において流量調整弁27a〜27dによりバーナー用空気の供給量を調整するとともに、各領域1〜4において流量調整弁28a〜28dにより燃料ガス量を調整する(ステップS6)。なお、本発明におけるバーナー空気比の算出には、二次燃焼用空気流量は用いず、バーナーに燃料とともに入れるバーナー用空気流量のみを用いる。バーナー用空気のみを用いるのは、二次燃焼用空気はNOx濃度へ及ぼす影響が小さいためである。
【0045】
ここで、本実施形態において、バーナー空気比の適正値m1A〜m4Aにより予測NOx値(Z)を設定NOx値(H)に近づけるようにしているのは、上記表1に示したようにバーナー空気比(m1、m2、m3、m4)の指数関数が大きく、予測NOx値(Z)の制御に大きい影響度を持つからである。
【0046】
したがって、本実施形態の低NOx燃焼制御方法による場合には、NOxの低減化に影響度合いが高いバーナーの空気比の適正値に基づいて燃焼制御を行うので、設定NOx値に効率よく近づけることが可能になり、低NOxで燃焼制御を行い得る。また、このような低NOx燃焼制御方法を用いた、本実施形態の還元処理物の製造方法による場合には、低NOxの燃焼状態で還元処理物を製造することができる。
【0047】
図7は、以上のようにして低NOx燃焼制御を実行した場合の結果であり、NOx実測値と予測NOx値(Z)とを比較している。なお、NOx実測値を実線、予測NOx値(Z)を破線でそれぞれ示している。また、表2は、以上のようにして低NOx燃焼制御を実行し、1時間平均でのNOx実測値と予測NOx値(Z)とを比較している。
【0048】
【表2】

【0049】
これら図7および表2より理解されるように、NOx実測値は予測NOx値(Z)に対して概ね±6%の範囲内にあり、予測できていると認められる。
【0050】
なお、上述した実施形態では、NOxの低減化に影響度合いが高いバーナーの空気比の適正値に基づいて燃焼制御を行うようにしているが、本発明はこれに限らない。例えば、表1より理解されるように、NOxの低減化に予熱空気温度(Ta)も影響度合いが高いため、その予熱空気温度(Ta)の適正値を算出し、その算出した予熱空気温度(Ta)の適正値に基づいて燃焼制御することで、設定NOx値に効率よく近づけるようにしてもよい。或いは、バーナーの空気比の適正値と予熱空気温度(Ta)の適正値の両方を算出し、これら算出した両適正値に基づいて燃焼制御することで、設定NOx値に効率よく近づけるようにしてもよい。
【0051】
また、上述した実施形態では炉内温度をパラメータとして含む(3)式を用いているが、本発明はこれに限らない。例えば、NOxの低減化に影響度合いがあまり高くないRHF内温度[℃](Tf)を、3式から省略した式を用いてもよく、概ね上述した実施形態と同様な結果が得られることが実験により判っている。
【0052】
更に、上述した実施形態ではRHFの炉出口の酸素濃度を排ガス分析計22により実測し、その実測値を用いてNOx制御を行っているが、本発明はこれに限らず、RHFの炉出口の酸素濃度の実測値に代えて、RHFの炉出口の酸素濃度の計算値を用いてもよい。或いは、前述した3式中の補正係数A'に代えて、RHFの炉出口の酸素濃度の計算値を加味した補正係数Aを用いることにより、前記1式や2式のようにRHFの炉出口の酸素濃度の実測値や計算値を省略してもよい。
【0053】
更にまた、上述した実施形態では4つの領域1〜4の全てを対象として、バーナーの空気比の適正値を算出し、かつ燃焼制御を行うようにしているが、本発明はこれに限らない。例えば、上述した実施形態のように4つの領域1〜4を有する場合に、上記3式中のm1のパラメータ[(m1/0.5)δ1]〜m4のパラメータ[(m4/0.5)δ4]のうちの任意の1つのパラメータを用いてバーナーの空気比の適正値を算出し、又は任意の2以上のパラメータの積によりバーナーの空気比の適正値を算出し、燃焼制御を行うようにしてもよい。より好ましくは、上流側の領域1(m1のパラメータ)または上流側の領域1、2(m1、m2の各パラメータ)または上流側の領域1、2、3(m1、m2、m3の各パラメータ)を対象として、バーナーの空気比の適正値を算出し、かつ燃焼制御を行うようにしてもよい。その理由は、上流側の領域の方が下流側の領域よりも被加熱物を加熱するために投入するエネルギーが大きく、換言すると多くの燃料を供給するからである。
【0054】
また、本発明は4つの領域を有するRHFに限らず、1または2以上の領域を有するRHFに対しても同様に適用することが可能である。
【0055】
更に、被加熱物はペレット、ブリケット等の塊成化物にして回転床炉に装入する場合もあるが、必ずしも塊成化する必要はない。
【0056】
更にまた、ここで「石灰等」は金属酸化物の還元剤となるもので、石灰の他、コークス、木炭や木材から製造したチャー、炭化させたバイオマス、高炉ダスト等、炭素を含む物質であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】RHFの内部構成を示す平面図である。
【図2】図1のRHFの内部構成を展開して示す側面図である。
【図3】各領域に分割する仕切壁の1つの形態を示す図である。
【図4】RHFにおける制御系を示すブロック図である。
【図5】演算制御部の構成を示す図である。
【図6】本発明の低NOx燃焼制御方法の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の低NOx燃焼制御方法によるNOx実測値と予測NOx値(Z)とを比較して示すグラフである。
【符号の説明】
【0058】
1 RHF(ロータリーハースファーネス;回転床炉)
2 炉床
4 被加熱物
5 被加熱物回収装置(炉出口)
9 バーナー
20 演算制御部
27、28 流量調整弁
Tf 炉内温度
Co 炉出口の酸素濃度
Ta 予熱空気温度
m1、m2、m3、m4 バーナー空気比
m1A、m2A、m3A、m4A バーナー空気比の適正値
M/Mst 空気比
M 空燃比
Mst 理論空燃比

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物と石炭等との混合物を含む被加熱物を回転床炉に供給し、前記回転床炉の炉内に燃焼用空気を供給するとともに前記炉内に設けられたバーナーにより前記被加熱物から発生する可燃性ガスを燃焼させて前記被加熱物を加熱・還元し、その還元処理物を前記回転床炉の炉出口から回収して行う還元処理物の製造に用いる低NOx燃焼制御方法であって、
前記回転床炉から排出されるNOx値、前記バーナーの空気比および前記燃焼用空気の予熱温度の間の関係式を予め求めておく工程と、
前記関係式と、前記バーナーの空気比および前記燃焼用空気の予熱温度の各実測値とに基づき予測NOx値を求める予測NOx値算出工程と、
予測NOx値算出工程で求めた予測NOx値と予め設定された設定NOx値との大小を比較する比較工程と、
求めた前記予測NOx値が前記設定NOx値以上の場合には、前記関係式を用いて予測NOx値を設定NOx値以下とするバーナーの空気比の適正値を算出し、算出した前記バーナーの空気比の適正値に基づいて燃焼制御を行う燃焼制御工程とを含むことを特徴とする低NOx燃焼制御方法。
【請求項2】
金属酸化物と石炭等との混合物を含む被加熱物を回転床炉に供給し、前記回転床炉の炉内に燃焼用空気を供給するとともに前記炉内に設けられたバーナーにより前記被加熱物から発生する可燃性ガスを燃焼させて前記被加熱物を加熱・還元し、その還元処理物を前記回転床炉の炉出口から回収して行う還元処理物の製造に用いる低NOx燃焼制御方法であって、
前記回転床炉から排出されるNOx値、前記バーナーの空気比および前記燃焼用空気の予熱温度の間の関係式を予め求めておく工程と、
前記関係式と、前記バーナーの空気比および前記燃焼用空気の予熱温度の各実測値とに基づき予測NOx値を求める予測NOx値算出工程と、
予測NOx値算出工程で求めた予測NOx値と予め設定された設定NOx値との大小を比較する比較工程と、
求めた予測NOx値が前記設定NOx値以上の場合には、前記関係式を用いて予測NOx値を設定NOx値以下とする燃焼用空気の予熱温度の適正値を算出し、算出した燃焼用空気の予熱温度の適正値に基づいて燃焼制御を行う燃焼制御工程とを含むことを特徴とする低NOx燃焼制御方法。
【請求項3】
金属酸化物と石炭等との混合物を含む被加熱物を回転床炉に供給し、前記回転床炉の炉内に燃焼用空気を供給するとともに前記炉内に設けられたバーナーにより前記被加熱物から発生する可燃性ガスを燃焼させて前記被加熱物を加熱・還元し、その還元処理物を前記回転床炉の炉出口から回収して行う還元処理物の製造に用いる低NOx燃焼制御方法であって、
前記回転床炉から排出されるNOx値、前記バーナーの空気比および前記燃焼用空気の予熱温度の間の関係式を予め求めておく工程と、
前記関係式と、前記バーナーの空気比および前記燃焼用空気の予熱温度の各実測値とに基づき予測NOx値を求める予測NOx値算出工程と、
予測NOx値算出工程で求めた予測NOx値と予め設定された設定NOx値との大小を比較する比較工程と、
求めた予測NOx値が前記設定NOx値以上の場合には、前記関係式を用いて予測NOx値を設定NOx値以下とするバーナーの空気比の適正値と、燃焼用空気の予熱温度の適正値とを算出し、算出した両適正値に基づいてバーナーの空気比を制御するとともに燃焼を制御する空気比・燃焼制御工程とを含むことを特徴とする低NOx燃焼制御方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の低NOx燃焼制御方法において、
前記関係式は炉内温度を含んだものであって、
前記予測NOx値算出工程は、その関係式と、前記炉内温度、前記バーナーの空気比および前記燃焼用空気の予熱温度の各実測値とに基づいて前記予測NOx値を求め、
かつ、前記比較工程は、求めた予測NOx値と予め炉内温度を加味して設定された設定NOx値とを比較することを特徴とする低NOx燃焼制御方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の低NOx燃焼制御方法において、
前記関係式に、下記1式を用いることを特徴とする低NOx燃焼制御方法。
【数1】


但し、Z:予測NOx値[ppm]
Ta:予熱空気温度[℃]
A,B:補正係数[ppm]
a:閾値[℃]
α:定数
M:複数の領域を有する回転床炉における1または2以上の領域での空気比に関す
る項であって、或る領域iにおいて(mi/di)δiを定義したときの任意
の1つの領域での(mi/di)δiまたは任意の2以上の領域での(mi/
di)δiの積で表される。
mi:バーナー空気比
di:閾値[−]
δi:領域iに関する定数

【請求項6】
請求項4に記載の低NOx燃焼制御方法において、
前記関係式に、下記2式を用いることを特徴とする低NOx燃焼制御方法。
【数2】


但し、Z:予測NOx値[ppm]
Ta:予熱空気温度[℃]
Tf:回転床炉内平均温度[℃]
A,B:補正係数[ppm]
a、b:閾値[℃]
α、β:定数
M:複数の領域を有する回転床炉における1または2以上の領域での空気比に関す
る項であって、或る領域iにおいて(mi/di)δiを定義したときの任意
の1つの領域での(mi/di)δiまたは任意の2以上の領域での(mi/
di)δiの積で表される。
mi:バーナー空気比
di:閾値[−]
δi:領域iに関する定数

【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載の低NOx燃焼制御方法において、
前記関係式に、前記炉出口の酸素濃度をパラメータとして含み、かつ予測NOx値算出工程において前記炉出口の酸素濃度の実測値又は計算値を用いることを特徴とする低NOx燃焼制御方法。
【請求項8】
金属酸化物と石炭等との混合物を含む被加熱物を回転床炉に供給し、該回転床炉の炉内に燃焼用空気を供給するとともに前記炉内に設けられたバーナーにより上記被加熱物から発生する可燃性ガスを燃焼させて前記被加熱物を加熱・還元し、その還元処理物を前記回転床炉の炉出口から排出して回収する還元処理物の製造方法であって、
請求項1乃至7のいずれかに記載の低NOx燃焼制御方法を用いることを特徴とする還元処理物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−186072(P2009−186072A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25451(P2008−25451)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】