説明

住宅外壁用目地材及びこれを備える住宅外壁目地構造

【課題】退色及び変色を長期に亘って防止することができる住宅外壁用目地材及びこれを備える住宅外壁目地構造を提供する。
【解決手段】住宅外壁用目地材100、架橋ゴム(エチレン−プロピレン−ジエン架橋ゴム等)からなる基材と、基材の頭頂部11の意匠面111に直接又は他層を介して形成された塗膜2と、を備え、架橋ゴムは、シリル基を有するエチレン−プロピレン−ジエン架橋ゴムであり、塗膜は、アクリルシリコーン樹脂及び/又はアクリルウレタン樹脂、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等)並びに光安定剤(ヒンダードアミン系光安定剤等)を含有する。また、住宅外壁目地構造は、この住宅外壁用目地材を外壁用パネル間に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅外壁用目地材に関する。更に詳しくは、本発明は、退色及び変色を長期に亘って防止することができる住宅外壁用目地材及びこの目地材を外壁用パネル間に備える住宅外壁目地構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユニットの組み合わせにより施工されるユニット住宅が増加している。従来、パネル間の隙間を埋めるには、コーキング材を充填することが多かったが、コーキング材の施工は熟練を要し、雨天時には施工が困難である等の問題がある。また、充填されたコーキング材が劣化した場合、隙間に固着し、劣化しているコーキング材を除去するには、隙間から掘り出さなければならず、これは容易な作業ではない。そこで、最近では、住宅外壁用目地材として、乾式目地材が多用されるようになってきている。この乾式目地材としては、架橋ゴムからなるものが多く、十分な耐候性を有するとともに、弾性材であるため、容易に隙間に押入し、配設することができる。更に、目地材を除去する際も、隙間から容易に引き出すことができ、除去することができる。
【0003】
目地材として用いられる架橋ゴムとしては、クロロプレンゴム、シリコーンゴム及びエチレン−プロピレン−ジエンゴム等を架橋させた架橋ゴム等があるが、クロロプレンゴムでは、火事等により燃焼したときに有毒な塩素ガスが発生するという問題がある。また、シリコーンゴム(例えば、特許文献1参照。)では、表面が平滑面となるため、所謂、てかりという光沢を生じ、落ち着きのある色調が好まれる住宅外壁で、特に目地部のみが光沢を有するというのは好ましくない。
【0004】
更に、エチレン−プロピレン−ジエンゴムは、燃焼時の有害ガスの発生及びてかりの問題がないため、近年、多用されており、このゴムは、通常、硫黄又はパーオキサイドを用いて架橋されている(例えば、特許文献2参照。)。また、目地材の表面は、外壁面の一部を構成するものであり、外壁面の外観の観点で、パネルの外表面である壁体面と同系色であることが好ましく、架橋ゴムからなる基材の意匠面に壁体面と同系色の塗膜が形成された目地材が提供されている。この場合、壁体面及び目地材の意匠面の塗膜の形成に同一の塗料を用いることが一般的であり、これにより、目地部のみが目立つことのない、一体感のある外観を有する外壁面が形成される。
【0005】
ユニット住宅等の住宅には、従来、10年程度の耐久性が必要とされていたが、近年、これが30年程度に延びてきており、外壁面の塗装も同程度の耐久性を有するものとなり、パネル間の隙間を埋める目地材についても、同様に30年程度の耐久性が求められている。特に、長期間経過後も退色及び変色のない目地材が必要とされている。そこで、架橋ゴム、特にエチレン−プロピレン−ジエン架橋ゴムからなる基材の意匠面に、壁体面と同じ塗装を施すことにより、目地部も含め、全体として十分な耐久性を有する外壁面とすることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−170378号公報
【特許文献2】特開2009−1737号公報
【特許文献3】特開平7−247654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、硫黄又はパーオキサイドを用いて架橋されたエチレン−プロピレン−ジエン架橋ゴムでは、硫黄又はパーオキサイドから生成したラジカルの残渣が、経時とともに目地材の基材の意匠面に形成された塗膜へと移行する。その結果、塗膜の主成分である樹脂の耐候性を向上させるために配合してある紫外線吸収剤及び光安定剤が劣化し、塗膜が退色及び変色してしまい、優れた耐久性を有する塗膜を形成することができる塗料を用いたにもかかわらず、目地部の退色、変色により、外壁面全体の外観が低下してしまうという問題がある。
【0008】
また、基材の意匠面に、壁体面と同色に着色した、例えば、クロロスルホン化ポリエチレンゴムからなるゴム層を設けた目地材も知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、特許文献3に記載された目地材では、退色及び変色は抑えることができるものの、ゴム層であるため、壁体面と目地部とで外観が異なる外壁面となってしまうため好ましくない。
【0009】
本発明は、上記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、住宅の外壁面の退色及び変色を長期に亘って防止することができ、特に、30年程度の耐久性が必要されている住宅の外壁面の退色及び変色を、目地部も含めて、長期に亘って防止することができる住宅外壁用目地材及びこの目地材を外壁用パネル間に備える住宅外壁目地構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
紫外線吸収剤及び光安定剤は、硫黄等の存在下では、樹脂の紫外線劣化を十分に抑制することができない。例えば、硫黄又はパーオキサイドを用いて架橋された架橋ゴムからなる目地材では、硫黄又はパーオキサイドから生成したラジカルの残渣等が塗膜に移行した場合、硫黄と光安定剤との拮抗作用などにより、光安定剤等が本来有する作用が十分に発現されず、塗膜に含有される樹脂の劣化を十分に防止することができない。一方、ヒドロシリコーン架橋では、架橋速度が大きいばかりでなく、硫黄又はパーオキサイドを用いた架橋ゴムの場合と違って、塗膜に含有される紫外線吸収剤及び光安定剤が本来有する作用が十分に発現され、優れた耐久性を有する住宅外壁用目地材及び住宅外壁目地構造とすることができる。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
【0011】
本発明は以下のとおりである。
1.架橋ゴムからなる基材と、該基材の意匠面に直接又は他層を介して形成された塗膜と、を備える住宅外壁用目地材であって、上記架橋ゴムは、シリル基を有するエチレン−プロピレン−ジエン架橋ゴムであり、上記塗膜は、アクリルシリコーン樹脂及び/又はアクリルウレタン樹脂、紫外線吸収剤並びに光安定剤を含有することを特徴とする住宅外壁用目地材。
2.上記架橋ゴムは、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、シリル基を有する化合物からなる架橋剤、触媒及び反応抑制剤を反応させてなる上記1.に記載の住宅外壁用目地材。
3.上記塗膜は、上記基材の上記意匠面に直接又は他層を介して形成された中塗層と、該中塗層の表面に形成されたクリアー層と、を有する上記1.又は2.に記載の住宅外壁用目地材。
4.上記クリアー層に、上記紫外線吸収剤及び上記光安定剤が含有されている上記3.に記載の住宅外壁用目地材。
5.上記紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である上記1.乃至4.のうちのいずれか1項に記載の住宅外壁用目地材。
6.上記光安定剤は、ヒンダードアミン系光安定剤である上記1.乃至5.のうちのいずれか1項に記載の住宅外壁用目地材。
7.上記他層が設けられ、該他層はプライマー層であり、該プライマー層は、アクリルグラフト塩素化ポリプロピレンを含有する上記1.乃至6.のうちのいずれか1項に記載の住宅外壁用目地材。
8.上記1.乃至7.のうちのいずれか1項に記載の住宅外壁用目地材を外壁用パネル間に備えることを特徴とする住宅外壁目地構造。
9.上記塗膜は、上記外壁用パネルの外表面に形成された壁体面の塗膜と一体に設けられている上記8.に記載の住宅外壁目地構造。
【発明の効果】
【0012】
本発明の住宅外壁用目地材は、シリル基を有するエチレン−プロピレン−ジエン架橋ゴム(以下、エチレン−プロピレン−ジエンゴムを「EPDM」と略記することもある。)からなる基材と、基材の意匠面に直接又は他層を介して形成され、特定の樹脂、紫外線吸収剤及び光安定剤を含有する塗膜と、を備えるため、目地部の退色及び変色を長期に亘って防止することができる。そのため、同様に長期に亘って退色及び変色しない壁体面とともに、全面が退色及び変色のない優れた外観の外壁面を構成することができる。
また、架橋ゴムが、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、シリル基を有する化合物からなる架橋剤、触媒及び反応抑制剤を反応させてなる場合は、目地材の退色及び変色を長期に亘って十分に防止することができ、優れた外観の外壁面とすることができる。
更に、塗膜が、基材の意匠面に直接又は他層を介して形成された中塗層と、中塗層の表面に形成されたクリアー層(上塗層、トップコート層とも称される。)と、を有する場合は、顔料が配合され、所定の色調を有する中塗層がクリアー層により保護され、外壁面の優れた外観がより長期に亘って維持される。
また、クリアー層に、紫外線吸収剤及び光安定剤が含有されている場合は、塗膜に含有される樹脂の劣化が十分に抑えられ、目地材の退色及び変色を長期に亘って十分に防止することができ、優れた外観の外壁面とすることができる。
更に、紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である場合、及び光安定剤が、ヒンダードアミン系光安定剤である場合は、目地部分の退色及び変色を、より安定して、且つ長期に亘って防止することができ、優れた外観の外壁面とすることができる。
また、他層が設けられ、他層がプライマー層であり、プライマー層が、アクリルグラフト塩素化ポリプロピレンを含有する場合は、特定の樹脂を含有する塗膜を、EPDM架橋ゴムからなる基材に、十分に強固に接合させることができる。
本発明の住宅外壁目地構造は、本発明の住宅外壁用目地材を外壁用パネル間に備えるため、本発明の住宅外壁用目地材と同様の作用効果が奏される。
また、塗膜が、外壁用パネルの外表面に形成された壁体面の塗膜と一体に設けられている場合は、外壁面の全面が全く同一の外観を有することになり、優れた意匠性を有する外壁面とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の住宅外壁用目地材の一例の横断面の模式的な説明図である。
【図2】基材の一部の模式的な斜視図である。
【図3】図1の符号Aの円内を拡大した模式図である。
【図4】図1の住宅外壁用目地材を、住宅外壁のパネル間の隙間に挿入し、配設した様子の横断面の模式的な説明図である。
【図5】本発明の住宅外壁目地構造の一例の横断面の模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の住宅外壁用目地材は、架橋ゴムからなる基材と、基材の意匠面に直接又は他層を介して形成された塗膜と、を備え、架橋ゴムは、シリル基を有するエチレン−プロピレン−ジエン架橋ゴムであり、塗膜は、アクリルシリコーン樹脂及び/又はアクリルウレタン樹脂、紫外線吸収剤並びに光安定剤を含有する。
【0015】
[1]住宅外壁用目地材の構成及びその使用方法
(1)基材
上記「基材」は、住宅外壁を構成する外壁用パネル間の隙間に挿入され、配設されて、内部への水の侵入を防止する止水材等として機能する。基材は、所定の断面形状を有し、且つ外壁用パネルと略同じ長さのゴム成形体であり、その断面形状は特に限定されないが、隙間に挿入し易く、且つ配設後は容易に脱落しない形状である必要がある。一例として、図1の断面形状を有する基材1(図2の斜視図参照)が挙げられる。この基材1は、配設された状態で外方を向く頭頂部11、外壁用パネルの厚さ方向に延びる本体部12、本体部12から長さ方向(外壁用パネルの厚さ方向)に所定間隔をおいて頭頂部11方向に斜めに突出して設けられているリブ13、及び配設された状態で内方を向く基底部14を有する。この基材の断面方向の寸法は特に限定されず、外壁用パネルの寸法及び外壁用パネル間の隙間の寸法等に応じて設計される。
【0016】
(2)塗膜及びプライマー層
基材1の頭頂部11の意匠面111には、図3のように、プライマー層P(必須ではないが、通常、形成される。)と、このプライマー層Pの表面に形成された塗膜2とが形成される。また、塗膜2は、プライマー層Pの表面に形成された中塗層21を有し、通常、中塗層21の表面に形成されたクリアー層22を併せて有する。更に、塗膜2には紫外線吸収剤及び光安定剤が含有されており、塗膜2に含有される樹脂の劣化が抑えられている。紫外線吸収剤及び光安定剤は、中塗層21及びクリアー層22のうちのいずれに含有されていてもよいが、クリアー層22が形成されている場合は、紫外線吸収剤、光安定剤ともにクリアー層22に含有されていることが好ましい。更に、クリアー層22に紫外線吸収剤及び光安定剤が含有されておれば、中塗層21には含有させる必要はないが、中塗層21にも、紫外線吸収剤及び光安定剤、特に光安定剤を含有させることができる。また、クリアー層22が形成されていない場合は、紫外線吸収剤及び光安定剤は中塗層21に含有される。プライマー層P、中塗層21及びクリアー層22の各々の厚さは特に限定されないが、いずれも15〜45μm、特に20〜40μmとすることができる。
【0017】
(3)使用方法
本発明の住宅外壁用目地材100は、図4のように、住宅外壁を構成する外壁用バネル3間の隙間に挿入され、配設されて用いられ、配設された状態では、外部からは塗膜2のみが外壁面の一部として視認される。また、頭頂部11の側面が外壁用パネル3の内壁面31に密接し、且つ挿入される方向とは斜め逆方向に突出して設けられているリブ13が、配設時に本体部12に向かって変形し、外壁用パネル3の内壁面31に圧接された状態となる。これにより、住宅外壁用目地材100は、挿入方向と逆方向には容易に移動しないように外壁用パネル3間に固定され、外壁用パネル3間から脱落することはない。更に、リブ13が外壁用パネル3の内壁面31に圧接されることにより、水等が内部、即ち、外壁用パネル3間に侵入することが防止される。このようにして、住宅外壁用目地材100は、長期に亘って住宅外壁の一部を構成することになる。
【0018】
[2]基材、塗膜及びプライマー層の材質
(1)基材
本発明の住宅外壁用目地材の基材は、シリル基を有するEPDM架橋ゴムの成形体からなる。
上記「シリル基を有するEPDM架橋ゴム」は、EPDMをヒドロシリコーン架橋させることによるヒドロシリル化反応によって生成し、EPDMの分子間がシロキサン結合により架橋されたゴムである。従って、長期間経過後も、塗膜に含有される紫外線吸収剤及び光安定剤が劣化することがなく、長期に亘って塗膜が退色及び変色しない住宅外壁用目地材とすることができる。
【0019】
尚、基材全体がシリル基を有するEPDM架橋ゴムにより構成される必要はなく、塗膜2が形成される頭頂部11の側がシリル基を有するEPDM架橋ゴムにより構成され、他部は硫黄又はパーオキサイド架橋EPDMゴムにより構成されていてもよい。例えば、図1及び2のように、複数のリブ13を有する場合、頭頂部11並びに頭頂部11に直近のリブ13及び対応する本体部12がシリル基を有するEPDM架橋ゴムにより構成され、他部が硫黄又はパーオキサイド架橋EPDMゴムにより構成された2色成形体とすることもできる。これにより、塗膜2と硫黄又はパーオキサイド架橋EPDMゴムにより構成される他部とが十分に離間され、ラジカル残渣の塗膜2への移行が防止される。また、このような構成とすれば基材のコスト低減の面でも好ましい。
【0020】
EPDMとしては、エチレン、プロピレン及び非共役ジエンを共重合させてなる共重合ゴムを特に限定されることなく用いることができる。非共役ジエンとしては、5−ビニル−2−ノルボルネン、エチリデンノルボルネン、4−エチリデン−1,6−オクタジエン、7−メチル−4−エチリデン−1,6−オクタジエン、7−メチル−4−エチリデン−1,6−ノナジエン、7−エチル−4−エチリデン−1,6−ノナジエン、6,7−ジメチル−4−エチリデン−1,6−オクタジエン、6,7−ジメチル−4−エチリデン−1,6−ノナジエン、4−エチリデン−1,6−デカジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、1,7−オクタジエン、1,17−オクタデカジエン、ジシクロペンタジエン等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく、2種以上を用いてもよいが、少なくとも5−ビニル−2−ノルボルネンを用いることが架橋速度が大きくなるという観点で好ましい。この5−ビニル−2−ノルボルネンの割合は、非共役ジエンの全量を100モル%とした場合に、50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上であり、非共役ジエンの全量が5−ビニル−2−ノルボルネンであってもよい。
【0021】
シリル基を有するEPDM架橋ゴムは、EPDMと、シリル基を有する化合物からなる架橋剤と、触媒と、反応抑制剤と、を反応させて生成させることができる。
架橋剤は、シリル基を有し、架橋剤として作用する化合物であればよく、従来、ヒドロシリコーン架橋に用いられている化合物を、特に限定されることなく使用することができる。
【0022】
架橋剤となる化合物は、1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上のケイ素原子に直結した水素原子を有している。即ち、少なくとも2個、好ましくは3個以上のSi−H基を有している。このようなSi−H基を有する化合物としては、例えば、下記の一般式で表される化合物が挙げられる。
HbSiO(4−a−b)/2
上記一般式において、Rは脂肪族不飽和結合を除く、炭素数1〜10、好ましくは1〜8の置換又は非置換の1価炭化水素基である。このような1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、iso−ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基が挙げられる。この他、フェニル基、ハロゲン置換されたアルキル基、例えば、トリフロロプロピル基等が挙げられる。この1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基が好ましく、メチル基、フェニル基がより好ましい。また、aは、0≦a<3、好ましくは0.6<a<2.2、特に好ましくは1.5≦a≦2であり、bは、0<b≦3、好ましくは0.002≦b<2、特に好ましくは0.01≦b≦1であって、且つa+bは、0<a+b≦3、好ましくは1.5<a+b≦2.7である。
【0023】
Si−H基を有する化合物としては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサン、1,3,5,7,8−ペンタメチルペンタシクロシロキサン等のシロキサンオリゴマー、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0024】
触媒は付加反応型触媒であり、この触媒により、EPDMのアルケニル基と、Si−H基を有する化合物のSi−H基との付加反応(アルケンのヒドロシリル化反応)が促進される。触媒としては、白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族元素を有する付加反応触媒を用いることができる。この付加反応触媒としては、白金属元素と、ビニル基及び/又はカルボニル基を有する化合物との錯体を用いることが好ましく、白金族元素としては、白金が特に好ましい。
【0025】
ビニル基を有する化合物と白金との錯体としては、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金−ジビニルテトラエチルジシロキサン錯体、白金−ジビニルテトラプロピルジシロキサン錯体、白金−ジビニルテトラブチルジシロキサン錯体、白金−ジビニルテトラフェニルジシロキサン錯体等が挙げられる。また、カルボニル基を有する化合物と白金との錯体としては、例えば、白金−カルボニル錯体、白金−オクタナル錯体、白金−カルボニルブチル環状シロキサン錯体、白金−カルボニルフェニル環状シロキサン錯体等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これらの触媒は、EPDM100質量部に対して、0.1〜10000質量ppm、好ましくは1〜5000質量ppmの割合で用いられる。この範囲の割合で触媒を用いた場合、適度な架橋密度を有し、且つ優れた強度及び伸び等を有する架橋ゴムとすることができ、耐久性の高い基材とすることができる。
【0026】
反応抑制剤としては、アセチレンアルコール、ベンゾトリアゾール、エチニルシクロヘキサノール等のエチル基を有するアルコール、アクリロニトリル、N,N−ジアリルアセトアミド、N,N−ジアリルベンズアミド、N,N,N’,N’−テトラアリル−o−フタル酸ジアミド、N,N,N’,N’−テトラアリル−m−フタル酸ジアミド、N,N,N’,N’−テトラアリル−p−フタル酸ジアミド等のアミド化合物、硫黄、硫黄化合物、リン、リン化合物、スズ、スズ化合物、アミン化合物、テトラメチルテトラビニルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物などが挙げられる。これらのうち、硫黄、硫黄化合物は塗膜に含有される光安定剤と拮抗作用を起こすため好ましくなく、有機過酸化物はラジカルが発生し、塗膜に含有される紫外線吸収剤を劣化させるため好ましくない。更に、アミン化合物は塗膜を汚染するため好ましくなく、アクリロニトリル、フタル酸系化合物、リン、リン化合物、スズ、スズ化合物は環境面、特に人体へ悪影響を及ぼす可能性があり好ましくない。そのため、エチル基を有するアルコールが好ましく、アセチレンアルコールが特に好ましい。このアセチレンアルコールとしては、1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これらの反応抑制剤は、EPDMを100質量部とした場合に、0.0001〜50質量部、好ましくは0.0001〜10質量部、より好ましくは0.0001〜5質量部の割合で用いられる。
尚、反応抑制剤は必須ではないが、架橋速度を低下させて基材を製造し易くするため、通常、用いられる。
【0027】
(2)塗膜
上記「塗膜」は、基材の意匠面に直接又はプライマー層等の他層を介して形成された中塗層を有し、通常、中塗層の表面に形成されたクリアー層を併せて有する。
中塗層には、上記「アクリルシリコーン樹脂及び/又はアクリルウレタン樹脂」が含有される。このアクリルシリコーン樹脂及び/又はアクリルウレタン樹脂は、中塗層を100質量%とした場合に、30〜90質量%、好ましくは40〜80質量%含有される。また、中塗層には、上記の樹脂の他、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、分散剤、造膜助剤、消泡剤、レベリング剤等の各種の添加剤が含有される。この中塗層の厚さは特に限定されないが、15〜45μm、好ましくは20〜40μmである。
【0028】
クリアー層にも、アクリルシリコーン樹脂及び/又はアクリルウレタン樹脂が含有される。このアクリルシリコーン樹脂及び/又はアクリルウレタン樹脂は、クリアー層を100質量%とした場合に、50〜90質量%、好ましくは60〜80質量%含有される。また、クリアー層には、上記の樹脂の他、紫外線吸収剤、光安定剤、造膜助剤、艶消し剤、防藻・防黴剤、消泡剤、レベリング剤等の各種の添加剤が含有される。更に、クリアー層には顔料が含有されていてもよい。このクリアー層は必須ではないが、中塗層を、紫外線劣化及び他物品等との接触による損傷等から保護するため、通常、中塗層の表面に形成される。このクリアー層の厚さは特に限定されないが、15〜45μm、好ましくは20〜40μmである。
尚、中塗層及びクリアー層にアクリルシリコーン樹脂及び/又はアクリルウレタン樹脂が含有されているため、目地材をパネル間に挿入するときに塗装面が折れ曲がるように取り扱っても、塗膜に亀裂等が生じることはない。
【0029】
上記の各種の添加剤のうち、紫外線吸収剤及び光安定剤は、必須の添加剤として塗膜に含有される。紫外線吸収剤及び光安定剤は、中塗層及びクリアー層のうちのいずれに含有されていてもよいが、クリアー層が形成されている場合は、紫外線吸収剤及び光安定剤ともに、保護層としての作用を有するクリアー層に含有されていることが好ましい。クリアー層には、通常、顔料が含有されないため、紫外線吸収剤及び光安定剤等を、クリアー層により均一に分散させ易くなり、紫外線をより効率よく吸収させることができる。また、中塗層及びクリアー層が形成されている場合、紫外線吸収剤及び光安定剤のうち、特に光安定剤は中塗層に含有されることもあるが、クリアー層に十分に含有されておれば、特にその必要はない。一方、クリアー層が形成されていないときは、紫外線吸収剤及び光安定剤は、中塗層に含有される。
【0030】
上記「紫外線吸収剤」は、紫外線を吸収し、赤外線及び可視光線等に変換し、放出する作用を有し、この紫外線吸収剤が含有されることにより、塗膜の紫外線劣化が防止される。紫外線吸収剤は特に限定されず、樹脂に配合して用いられる各種の紫外線吸収剤を使用することができる。この紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、トリアジン系等の紫外線吸収剤が挙げられ、これらのうちでは、塗膜からブリードアウトし難いベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
【0031】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。これらは1種のみ含有されていてもよく、2種以上が含有されていてもよい。また、紫外線吸収剤の含有量は特に限定されないが、アクリルシリコーン樹脂及び/又はアクリルウレタン樹脂を100質量部とした場合に、0.3〜3質量部とすることができ、0.5〜2質量部、特に0.7〜1.5質量部であることが好ましい。
【0032】
上記「光安定剤」は、塗膜の劣化の原因となる光酸化によるラジカルの発生を抑制する作用を有する。また、紫外線吸収剤と併用することによって、より効率よく塗膜の退色及び変色を防止することができる。即ち、紫外線吸収剤がラジカルを発生させる原因となる紫外線を吸収するが、完全に吸収することはできず、ラジカルが発生したとしても、光安定剤によって、それを捕捉することができる。
【0033】
光安定剤は特に限定されないが、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)が、特に優れたラジカル捕捉の作用を有するため好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤のヒンダードアミンの部分は、N−H型、N−OR型、N−CH型の3種類があるが、酸性物との拮抗作用を考慮すると、N−CH型が好ましい。このヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート等が挙げられる。光安定剤は1種のみ含有されていてもよく、2種以上が含有されていてもよい。また、光安定剤の含有量は特に限定されないが、アクリルシリコーン樹脂及び/又はアクリルウレタン樹脂を100質量部とした場合に、0.3〜3質量部とすることができ、0.5〜2質量部、特に0.7〜1.5質量部であることが好ましい。
【0034】
(3)プライマー層
塗膜は基材の意匠面に直接形成してもよいが、基材と塗膜とを強固に接合させるため、通常、基材と塗膜との間にプライマー層が設けられる。即ち、基材の意匠面にプライマー層が形成され、プライマー層の表面に塗膜が形成される。このプライマー層の材質は特に限定されないが、少なくともアクリルグラフト塩素化ポリプロピレンが含有されることが好ましい。また、このプライマー層には、塩素化ポリプロピレン、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が含有されていてもよく、二酸化チタン、カーボンブラック等の顔料が含有されていてもよい。また、プライマーとしての作用を有するアクリルグラフト塩素化ポリプロピレンの含有量は特に限定されないが、プライマー層を100質量%とした場合に、通常、2〜25質量%、好ましくは3〜20質量%含有される。プライマー層の厚さも特に限定されないが、15〜45μm、好ましくは20〜40μmである。
【0035】
[3]住宅外壁用目地材の製造
本発明の住宅外壁用目地材の製造方法は特に限定されないが、例えば、下記の方法により製造することができる。
(1)基材の作製
未架橋のEPDM組成物を、押出機に連続的に供給し、ダイスから押し出し、所定の横断面形状を有する未架橋の基材を成形し、その後、この未架橋の基材を、高周波架橋槽に導入し、次いで、熱風架橋槽に導入し、180〜220℃、好ましくは190〜210℃で、3〜7分間、好ましくは4〜6分間加熱し、架橋させる。その後、空冷又は水冷等、好ましくは空冷により冷却し、必要に応じて所定長さに裁断して、例えば、図1のような横断面形状を有する基材を作製する。
【0036】
(3)塗膜の形成
塗膜は、通常、基材の意匠面又はプライマー層の表面に形成された中塗層と、中塗層の表面に形成されたクリアー層とを有する。
塗膜は、公知の方法により基材の意匠面に予め形成してもよく、外壁用パネル間に挿入された基材の意匠面に壁体面の塗装とともに形成してもよい。塗膜を基材の意匠面に予め形成する場合、架橋後、同一ラインで塗装する、所謂、インライン塗装法が好ましい。また、プライマー層も、塗膜の形成方法に従って、いずれかの方法により形成される。
【0037】
中塗層は、媒体に、所定量のアクリルシリコーン樹脂粉末及び/又はアクリルウレタン樹脂粉末の他、光安定剤、顔料、分散剤及び造膜助剤等の各種の添加剤が溶解又は分散されてなる中塗層用組成物を、基材の意匠面又はプライマー層の表面に塗布し、その後、乾燥させ、媒体を除去して形成する。この中塗層は、1層塗りでもよく、2層塗り、3層塗り等の多層塗りでもよく、斑点状のスパッタ塗装であってもよい。更に、クリアー層も、媒体に、所定量のアクリルシリコーン樹脂粉末及び/又はアクリルウレタン樹脂粉末の他、紫外線吸収剤、光安定剤、造膜助剤、艶消し剤、防藻・防黴剤、消泡剤、レベリング剤等の各種の添加剤が溶解又は分散されてなるクリアー層用組成物を、中塗層の表面に塗布し、その後、乾燥させ、媒体を除去して形成する。
【0038】
また、中塗層用組成物及びクリアー層用組成物は、アクリルシリコーンエマルジョン及び/又はアクリルウレタンエマルジョンに、それぞれ所要の各種の添加剤が溶解又は分散されてなる溶液又は分散体であることが好ましい。更に、塗膜を基材の意匠面に予め形成する場合、中塗層用組成物及びクリアー層用組成物は、壁体面の塗装に用いる組成物と同じでもよく、異なっていてもよいが、同じ組成物であることが好ましい。また、媒体は、水でもよく、有機溶媒でもよく、水と有機溶媒との混合媒体でもよいが、水系媒体であることが好ましい。即ち、アクリルシリコーンエマルジョン及び/又はアクリルウレタンエマルジョンの媒体は、水系媒体であることが好ましい。
【0039】
水系媒体は、水のみからなる媒体でもよく、水を主成分とし、メタノール、エタノールが混合された混合媒体でもよいが、水のみからなる媒体がより好ましい。また、有機溶媒としてはエチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン、及びメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、エチレングリコール等のアルコールを用いることができる。尚、媒体は、中塗層用組成物を100質量%とした場合に、45〜85質量%とすることができ、好ましくは45〜75質量%であり、クリアー層用組成物を100質量%とした場合に、50〜90質量%とすることができ、好ましくは50〜80質量%である。
【0040】
(2)プライマー層の形成
プライマー層は必須ではないが、前記のように、通常、プライマー層が形成される。
このプライマー層は、媒体に、所定量のアクリルグラフト塩素化ポリプロピレンの他、塩素化ポリプロピレン等の樹脂及び顔料等が溶解又は分散されてなるプライマー組成物を、基材の頭頂部の意匠面に塗布し、その後、乾燥させ、溶媒を除去して形成する。プライマー組成物におけるアクリルグラフト塩素化ポリプロピレンの含有量は、プライマー組成物を100質量%とした場合に、1〜30質量%とすることができ、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%である。尚、媒体は、プライマー組成物を100質量%とした場合に、55〜80質量%とすることができ、好ましくは60〜75質量%である。媒体は、水でもよく、有機溶媒でもよく、水と有機溶媒との混合媒体でもよいが、水系媒体であることが好ましい。この媒体としては、上記の塗膜の場合と同様の媒体を用いることができる。
【0041】
[4]住宅外壁目地構造
本発明の住宅外壁目地構造は、本発明の住宅外壁用目地材を外壁用パネル間に備える。
この住宅外壁目地構造では、図5のように、塗膜2は、通常、外壁用パネル3間に挿入された基材の意匠面に壁体面の塗装とともに形成され、壁体面の塗膜4と一体に設けられる。従って、図5では、基材の意匠面上の塗膜を塗膜2、外壁用パネルの外表面上の塗膜を塗膜4としているが、これらの塗膜は一体に連続的に形成された同一の材質の塗膜である。
【0042】
住宅外壁目地構造における基材の材質及び形状、寸法、並びに塗膜2及び塗膜4の材質等については、住宅外壁用目地材における前記の各々の記載をそのまま適用することができる。また、基材の意匠面と塗膜2との間、及び外壁用パネルの外表面と塗膜4との間に、通常、プライマー層が設けられることは前記の住宅外壁用目地材の場合と同様であり、このプライマー層の材質については前記の住宅外壁用目地材における前記の記載をそのまま適用することができる。
【0043】
本発明の住宅外壁目地構造では、住宅外壁を構成する外壁用バネル3間の隙間に基材を挿入し、この基材の意匠面と外壁用パネルの外表面とに同時に塗装を施し、塗膜2及び塗膜4(図5参照)を一体に形成する。基材は、前記の住宅外壁用目地材の場合と同様に、頭頂部の側面が外壁用パネルの内壁面に密接し、且つ挿入される方向とは斜め逆方向に突出して設けられているリブが、挿入時に本体部に向かって変形し、外壁用パネルの内壁面31に圧接された状態となる。これにより、基材が挿入方向と逆方向には容易に移動しないように外壁用パネル間に固定される。また、この住宅外壁目地構造では、挿入された基材及び一体に設けられた塗膜により水等の外壁用パネル間への侵入がより確実に防止される。
【0044】
住宅外壁目地構造は、外壁用パネル間に基材を挿入し、基材の意匠面と外壁用パネルの外表面とに、前記の中塗層用組成物を塗布し、その後、乾燥させ、媒体を除去して中塗層を形成し、次いで、中塗層の表面にクリアー層用組成物を塗布し、その後、乾燥させ、媒体を除去してクリアー層を形成することにより、構築することができる。更に、住宅外壁用目地材の場合と同様に、基材の意匠面と外壁用パネルの外表面とに、プライマー層を形成し、このプライマー層の表面に塗膜を形成してもよい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1
(1)基材を模した架橋ゴム成形体の作製
混練機(トーシン社製、型式「TD3−10MDX」)により、未架橋EPDM(三井化学社製、商品名「EX−046H」)100質量部、補強材(カーボンブラック、旭カーボン社製、商品名「旭#60G」)100質量部、可塑剤(出光興産社製、商品名「PS−430」)35質量部、触媒(信越化学工業社製、商品名「X−93−1410」)0.2質量部、及び反応抑制剤(信越化学工業社製、商品名「X−93−1036」)0.2質量部を、室温(20〜25℃)で投入し、混練し、練り上がり温度100℃でゴム組成物を調製した。その後、ゴム組成物に架橋剤(信越化学工業社製、商品名「X−93−1346」)4質量部をロールにて配合し、圧縮成形機により、160℃で12分間、加熱、加圧し、架橋させ、縦120mm×横110mm×厚さ2mmの基材を模したシート状の架橋ゴム成形体を作製した。
【0046】
(2)プライマー層の形成
上記(1)で作製した架橋ゴム成形体の表面にプライマー組成物(組成物を100質量%とし場合に、アクリルグラフト塩素化ポリプロピレンを1.37質量%、塩素化ポリプロピレンを5.22質量%含有する、日本ビー・ケミカル社製、商品名「RB116」)を、エアースプレーを用いて塗布し、その後、80℃で30分間加熱し、乾燥させて、厚さ30μmのプライマー層を形成した。
【0047】
(3)塗膜の形成
上記(2)で形成したプライマー層の表面に、中塗層とクリアー層とからなる塗膜を形成した。
プライマー層の表面に、アイボリー色の中塗層用組成物1[組成物を100質量%とした場合に、アクリルシリコーン樹脂を20質量%、光安定剤(以下、「HALS」という。)を0.5質量%、顔料を13.3質量%、増粘剤等の添加剤を7.25質量%含有し、残部は水を主体とした媒体である。]を、エアースプレーを用いて塗布し、その後、80℃で30分間加熱し、乾燥させて、厚さ30μmの中塗層を形成した。次いで、中塗層の表面に、艶消し無色透明のクリアー層用組成物(a)(組成物を100質量%とした場合に、アクリルシリコーン樹脂を28質量%、紫外線吸収剤を0.5質量%、HALSを0.4質量%、艶消し剤及び増粘剤等の添加剤を10.75質量%含有し、残部は水を主体とした媒体である。)を、エアースプレーを用いて塗布し、その後、80℃で30分間加熱し、乾燥させて、クリアー層を形成し、住宅外壁用目地材を模した試験体を作製した。
【0048】
実施例2
実施例1におけるプライマー組成物に代えて、アクリルグラフト塩素化ポリプロピレンを5.47質量%、塩素化ポリプロピレンを5.44質量%含有するプライマー組成物(日本ビー・ケミカル社製、商品名「RB167」)を用いた他は、実施例1と同様にして試験体を作製した。
実施例3
実施例1におけるプライマー組成物に代えて、アクリルグラフト塩素化ポリプロピレンを18.0質量%含有するプライマー組成物(日本ビー・ケミカル社製、商品名「RB357」)を用いた他は、実施例1と同様にして試験体を作製した。
【0049】
実施例4
実施例1における中塗層用組成物1に代えて、アイボリー色の中塗層用組成物2[アクリルウレタン樹脂を26.1質量%、顔料を4.1質量%、粘度調製剤等の添加剤を3.9質量%含有し、残部は有機溶剤である(尚、HALS及び紫外線吸収剤は含有されていない。)。]を用いた他は、実施例1と同様にして試験体を作製した。
実施例5
実施例4におけるプライマー層用組成物に代えて、前記のプライマー層用組成物(日本ビー・ケミカル社製、商品名「RB167」)を用いた他は、実施例4と同様にして試験体を作製した。
実施例6
実施例4におけるプライマー層用組成物に代えて、前記のプライマー層用組成物(日本ビー・ケミカル社製、商品名「RB357」)を用いた他は、実施例4と同様にして試験体を作製した。
以上、実施例1〜6の各々の組成物及び架橋剤を表1に記載する。
【0050】
【表1】

【0051】
比較例1
実施例1における架橋剤に代えて、パーオキサイド(化薬アクゾ社製、商品名「カヤクミルD−40MB」)を用いて架橋させた他は、実施例1と同様にして試験体を作製した。
比較例2
比較例1におけるプライマー層用組成物に代えて、前記のプライマー層用組成物(日本ビー・ケミカル社製、商品名「RB167」)を用いた他は、比較例1と同様にして試験体を作製した。
比較例3
比較例1におけるプライマー層用組成物に代えて、前記のプライマー層用組成物(日本ビー・ケミカル社製、商品名「RB357」)を用いた他は、比較例1と同様にして試験体を作製した。
【0052】
比較例4
比較例1における架橋剤に代えて、硫黄架橋するための架橋剤(東洋化学社製、硫黄)を用いて架橋させた他は、比較例1と同様にして試験体を作製した。
比較例5
比較例2における架橋剤に代えて、硫黄架橋するための架橋剤(東洋化学社製、硫黄」)を用いて架橋させた他は、比較例2と同様にして試験体を作製した。
比較例6
比較例3における架橋剤に代えて、硫黄架橋するための架橋剤(東洋化学社製、硫黄」)を用いて架橋させた他は、比較例3と同様にして試験体を作製した。
【0053】
比較例7
比較例1における中塗層用組成物1に代えて、前記の中塗層層用組成物2を用いた他は、比較例1と同様にして試験体を作製した。
比較例8
比較例2における中塗層用組成物1に代えて、前記の中塗層層用組成物2を用いた他は、比較例2と同様にして試験体を作製した。
比較例9
比較例3における中塗層用組成物1に代えて、前記の中塗層層用組成物2を用いた他は、比較例3と同様にして試験体を作製した。
【0054】
比較例10
比較例7における架橋剤に代えて、硫黄架橋するための架橋剤(東洋化学社製、硫黄」)を用いて架橋させた他は、比較例7と同様にして試験体を作製した。
比較例11
比較例8における架橋剤に代えて、硫黄架橋するための架橋剤(東洋化学社製、硫黄」)を用いて架橋させた他は、比較例8と同様にして試験体を作製した。
比較例12
比較例9における架橋剤に代えて、硫黄架橋するための架橋剤(東洋化学社製、硫黄」)を用いて架橋させた他は、比較例9と同様にして試験体を作製した。
以上、比較例1〜12の各々の組成物及び架橋剤を表2に記載する。
尚、表2における「PO」は、架橋剤として「カヤクミルD−40MB」を用いたことを意味する。
【0055】
【表2】

【0056】
上記のようにして得られた試験体を用いて耐候性(退色、変色の程度)を評価した。
(1−1)試験方法
試験設備として、ダイブラ・ウィンテス社製のメタルウェザー計を使用し、波長295nm〜450nmの光を75mW/cmの光強度で5時間照射し、その後、純水を1時間噴霧し、吹き付ける操作を1サイクルとして、51サイクル及び85サイクル繰り返した後の試験前との色差を判定した。黒体の温度は63℃とした。また、色差は、JIS K−5600に準拠し、コニカミノルタ社製の色差計(型式「CR−200」、光源;C光源、測定モード;L)により測定した。
評価結果は、◎;変色なく外観良好、○;変色少なく外観良好、×;塗膜表面にクラック発生、及び著しい変色あり、である。
結果を表1、2に併記する。
【0057】
(1−2)試験結果
表1によれば、実施例1〜3では、プライマー層用組成物の種類にかかわらず、51サイクル及び85サイクルのいずれの場合も、色差は1.5以下であり、変色がなく、外観良好であり、塗膜表面のクラックもみられなかった。これは、シリル基を有する架橋EPDMからなる基材と、特定の樹脂、紫外線吸収剤及び光安定剤を含有する塗膜との組み合わせによる極めて優れた耐候性を裏付けるものである。また、実施例4〜6では、塗膜にアクリルウレタン樹脂が含有されており、51サイクル及び85サイクルのいずれの場合も、色差は5以下と、変色が僅かであり、十分な実用性を有していることが分かる。
【0058】
一方、表2によれば、比較例1〜3及び7〜12では、パーオキサイド架橋した基材を用いており、51サイクルで、いずれも色差が7.0以上であり、特に塗膜がアクリルウレタン樹脂を含有する比較例7〜12では、色差が8.0以上であった。また、85サイクルでは、一部の塗膜表面にクラックの発生もみられた。更に、比較例4〜6及び10〜12は、硫黄架橋した基材を用いており、プライマー層、塗膜の種類によらず、塗膜の表面にクラックが発生していた。
【0059】
また、上記のようにして得られた試験体を用いて、塗膜密着性及びその他の物性を評価した。
(2)塗膜密着性評価
各々の試験体を、100℃の沸騰した水中に、3時間浸漬し、その後、取り出し、室温(20〜30℃)にまで降温させ、塗膜の密着性を評価した。結果を表1、2に併記する。表1、2によれば、実施例1〜6及び比較例1〜12では、いずれの試験体にも塗膜の剥離は全くみられなかった。
【0060】
(3)その他の物性
架橋方法が異なる実施例1、比較例1及び比較例4に用いた基材(架橋ゴム成形体)について、以下の方法により、硬さ、引張り強さ、伸び及び圧縮永久歪を測定し、比較した。各々の物性の測定方法は以下のとおりである。
硬さ;JIS K 6253により測定したタイプA硬さ
引張強さ及び伸び;JIS K 6251(ダンベル形状;3号形)により測定
圧縮永久歪;試験体を25%圧縮し、70℃で22時間静置し、その後、開放したときの歪の残留割合(JIS K 6262に準拠)により評価
圧縮永久歪(%)=[(圧縮前の厚さ−開放後の厚さ)/圧縮前の厚さ]×100
硬さ、引張強さ及び伸びの測定には、前記のシート状の架橋ゴム成形体から打ち抜いたダンベル形状の試験片を用いた。また、圧縮永久歪の測定には、JIS K 6262に準拠し、直径29mm、厚さ12.5mmの円筒状のテストピースを160℃で20分プレスして作製した試験片を用いた。
結果を表3に記載する。
尚、表3における「Si−H」は、架橋剤として「X−93−1346」を用いたことを意味する。また、「PO」は、架橋剤として「カヤクミルD−40MB」を用いたことを意味する。
【0061】
【表3】

【0062】
表3によれば、硬さ、引張り強さについては、Si−H架橋(実施例1)、PO架橋(比較例1)、硫黄架橋(比較例4)の、いずれの場合も略同一である。また、伸びは、実施例1では、比較例1、4より低いが、十分な伸びであり、実用上は全く問題はない。更に、圧縮永久歪は、実施例1と比較例1は同等、比較例4では劣っている。これらの結果から、Si−H架橋した基材を用いた場合、前記のように、優れた耐候性を有し、且つ物性面でもPO架橋及び硫黄架橋のときと同等であり、優れた耐久性を有する住宅外壁用目地材とし得ることが推察される。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、住宅外壁用目地材及び住宅外壁目地構造の技術分野において利用可能であり、特に、住宅外壁の塗膜と同様に30年の耐久性が要求されるときでも対応可能である。
【符号の説明】
【0064】
100;住宅外壁用目地材、1;基材、11;頭頂部、111;意匠面、12;本体部、13;リブ、14;基底部、2;塗膜、21;中塗層、22;クリアー層、P;プライマー層、3;外壁用パネル、31;隙間を形成している各々の外壁用パネルの側面、4;壁体面の塗膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋ゴムからなる基材と、該基材の意匠面に直接又は他層を介して形成された塗膜と、を備える住宅外壁用目地材であって、
上記架橋ゴムは、シリル基を有するエチレン−プロピレン−ジエン架橋ゴムであり、上記塗膜は、アクリルシリコーン樹脂及び/又はアクリルウレタン樹脂、紫外線吸収剤並びに光安定剤を含有することを特徴とする住宅外壁用目地材。
【請求項2】
上記架橋ゴムは、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、シリル基を有する化合物からなる架橋剤、触媒及び反応抑制剤を反応させてなる請求項1に記載の住宅外壁用目地材。
【請求項3】
上記塗膜は、上記基材の上記意匠面に直接又は他層を介して形成された中塗層と、該中塗層の表面に形成されたクリアー層と、を有する請求項1又は2に記載の住宅外壁用目地材。
【請求項4】
上記クリアー層に、上記紫外線吸収剤及び上記光安定剤が含有されている請求項3に記載の住宅外壁用目地材。
【請求項5】
上記紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の住宅外壁用目地材。
【請求項6】
上記光安定剤は、ヒンダードアミン系光安定剤である請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の住宅外壁用目地材。
【請求項7】
上記他層が設けられ、該他層はプライマー層であり、該プライマー層は、アクリルグラフト塩素化ポリプロピレンを含有する請求項1乃至6のうちのいずれか1項に記載の住宅外壁用目地材。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちのいずれか1項に記載の住宅外壁用目地材を外壁用パネル間に備えることを特徴とする住宅外壁目地構造。
【請求項9】
上記塗膜は、上記外壁用パネルの外表面に形成された壁体面の塗膜と一体に設けられている請求項8に記載の住宅外壁目地構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−242350(P2010−242350A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91195(P2009−91195)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】