体液を抽出してその体液中の分析物を監視するためのシステム
体液試料(例えば、間質液(ISF)試料)を抽出してその試料中の分析物を監視するためのシステムであって、使い捨てカートリッジとローカル制御モジュールを含む。この使い捨てカートリッジは、体液試料を抽出するように適合されたサンプリングモジュールと、体液試料中の分析物(例えば、グルコース)を測定するように適合された分析モジュールとを含む。ローカル制御モジュールは、使い捨てカートリッジに電子的に接続され、分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように適合されている。ISF抽出装置は、使用者の皮膚層の標的部位に刺入されそこに留まり、続いてそこからISF試料を抽出するように構成された刺入部材を含む。この装置はまた、標的部位近傍の使用者の皮膚に圧力を加えるように適合された圧力リングを含む。この装置は、圧力リングが往復動方式で圧力を加えて、刺入部材によって抽出されるISF試料の遅延を緩和できるように構成されている。ISFを抽出する方法は、刺入部材及び圧力リングを備えたISF試料抽出装置を用意するステップを含む。次いで、圧力リングを使用者の皮膚層に接触させて、刺入部材を皮膚層に刺入する。次いで、圧力リングによって往復動方式で圧力が加えられている間に、ISF試料を使用者の皮膚層から抽出する。振動する圧力が、抽出されるISF試料のISFグルコース遅延を緩和する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は医療装置及びその使用方法に関し、詳細には、体液を抽出し、その抽出物中の分析物を監視するための装置、システム、及び方法に関する。
【0002】
関連分野の説明
近年、体液(例えば、血液や間質液)中の分析物(例えば、グルコース)を監視するための医療装置では、使用者の不快感及び/または苦痛が低減され、監視方法が単純化された装置及び方法の開発、並びに連続的または半連続的な監視を可能にする装置及び方法の開発に力が注がれてきた。監視方法を単純化すれば、医療専門家の助けを借りなくても家庭や他の場所で、使用者が分析物を自己監視することができる。使用者の不快感及び/または苦痛の低減により、使用者が頻繁かつ定期的に使用し易くなるため、この低減は家庭用にデザインされた装置及び方法で特に重要である。血中グルコース監視装置及びその方法における苦痛が殆どなければ、使用者は、苦痛がある場合よりも血中グルコースレベルの監視を頻繁かつ定期的に行うようになるであろう。
【0003】
血中グルコース監視では、連続的または半連続的な監視装置及び方法が、血中グルコース濃度の傾向、血中グルコース濃度に対する食物及び薬物の影響、及び使用者の全体的な血糖管理をよく観察できるという点で有利である。しかしながら、実際には、連続的または半連続的な監視装置には欠点がある。例えば、標的部位(例えば、使用者の皮膚層の標的部位)からの間質液(ISF)試料の抽出中にISFの流速が時間経過により低下し得る。更に、数時間の連続的なISF抽出の後、使用者の苦痛及び/または不快感が著しく増大し、標的部位に斑点が長い間残る。
【0004】
従って、使用方法が簡単で、使用者の不快感及び/または苦痛が殆どなく、過度に使用者の苦痛を増大させたり持続的な斑点を生じさせないで連続的または半連続的な監視を容易にする体液(例えば、ISF)中の分析物(例えば、グルコース)を監視するための装置及びその方法が当分野で要望されている。
【0005】
発明の要約
本発明の実施形態に従った、体液試料を抽出してその試料中の分析物を監視するためのシステムは、使用が簡単で、使用者に与える苦痛及び/または不快感が比較的少なく、使用者の苦痛や持続的な斑点を過度に増大させないで連続的及び半連続的に容易に監視できる。加えて、本発明に従ったISF抽出装置もまた、使用者に与える苦痛及び/または不快感が比較的少なく、使用者の苦痛や持続的な斑点を過度に増大させないで連続的及び半連続的に容易に監視できる。更に、本発明に従った方法は、使用者の苦痛や持続的な斑点を過度に増大させないで連続的及び半連続的に容易に監視できる。
【0006】
本発明の例示的な実施形態に従った、体液試料を抽出してその試料中の分析物を監視するためのシステムは、使い捨てカートリッジ及びローカル制御モジュールを含む。使い捨てカートリッジは、体から体液試料(例えば、ISF試料)を抽出できるように適合されたサンプリングモジュール、及びその体液試料中の分析物(例えば、グルコース)を測定するように適合されたサンプリングモジュールを含む。加えて、ローカル制御モジュールは、使い捨てカートリッジに電気的に接続されており、分析モジュールから測定データ(例えば、電流信号)を受け取って保存するように適合されている。
【0007】
本発明の実施形態に従ったシステムのサンプリングモジュールは、使用者の皮膚層の標的部位に刺入でき、刺入後にその皮膚層に留まってISF試料をその皮膚層から抽出できるように構成された刺入部材を含むこともできる。別法では、サンプリングモジュールが、微小透析、限外濾過、レーザー、逆イオン導入、電気穿孔、及び/または超音波技術を利用して、使用者の標的部位から試料(例えば、ISF試料)を抽出することができる。
【0008】
サンプリングモジュールはまた、刺入部材が使用者の皮膚層に留置された状態で、使用者の標的部位の近傍に圧力を加えることができるように適合された少なくとも1つの圧力リングを含む。加えて、所望に応じて、圧力リングが往復動方式で使用者の皮膚層に圧力を加えて、刺入部材によって抽出されるISF試料のISFグルコース遅延を緩和できるように、サンプリングモジュールを構成することができる。
【0009】
往復動方式で圧力を加えることができる圧力リングに加えて或いは別法として、他のISFグルコース遅延を緩和する方法を本発明の実施形態に利用することができる。このようなISFグルコース遅延緩和法には、遅延を緩和させる化学物質の使用、または熱、超音波、非往復動の機械的処置、真空、電位、及びこれらの組合せを用いたISFグルコース遅延の緩和が含まれる。
【0010】
本発明に従った使い捨てカートリッジレンダーシステムの使い捨ては使用が簡単である。加えて、圧力リングが本発明に従った往復動方式で動作する場合、連続的及び半連続的な監視が容易になると同時に、使用者の苦痛及び持続的な斑点の生成が抑制される。
【0011】
本発明の一実施形態に従った使用者のISF中の分析物(グルコースなど)を監視するシステムは、カートリッジと、そのカートリッジに電子的に接続されたローカル制御モジュールを含む。このカートリッジは、分析物を測定するための分析モジュールを含み、ローカル制御モジュールは、分析モジュールからの測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されている。加えて、分析モジュールは、使用者の標的部位に少なくとも部分的に埋め込むように構成された分析センサ(例えば、グルコースセンサ)と、その標的部位の近傍に圧力を加えるように適合された少なくとも1つの圧力リングを含む。更に、分析モジュールは、圧力リングが往復動方式で圧力を加えてISFグルコース遅延を緩和するように構成されている。
【0012】
本発明の一実施形態に従った間質液(ISF)抽出装置は、使用者の皮膚層の標的部位に刺入でき、刺入後にその皮膚層に留まってその皮膚層からISF試料を抽出できるように構成された刺入部材(例えば、壁部が薄い孔がある針)を含む。ISF抽出装置はまた、刺入部材が使用者の皮膚層に留置された状態で、使用者の皮膚層の標的部位近傍に圧力を加えることができるように適合された少なくとも1つの圧力リング(例えば、同心円上に配置された3つの圧力リング)を含む。ISF抽出装置は、圧力リングが往復動方式で圧力を加えることができるように構成されており、これにより、刺入部材によって抽出されるISF試料のISFグルコース遅延が緩和される。
【0013】
本発明の実施形態に従ったISF抽出装置は、その刺入部材がISF試料の抽出中に使用者の皮膚層に留まることができるため使用が簡単である。加えて、ISF抽出装置は、往復動方式で圧力を加えることができるように構成されているため、連続的及び半連続的な監視が容易になると共に、使用者の苦痛及び持続的な斑点の生成が抑制される。圧力リングによる往復動方式での圧力の適用はまた、標的部位近傍への血液の流れを促進し、ISFグルコース遅延を緩和する。
【0014】
本発明の一実施形態に従った間質液(ISF)を抽出するための方法は、刺入部材及び少なくとも1つの圧力リングを備えたISF抽出装置を用意するステップを含む。次いで、圧力リングを使用者の皮膚層に接触させ、刺入部材を刺入する。次いで、圧力リングを用いて使用者の皮膚層に往復動方式で圧力を加えながら、刺入部材で使用者の皮膚層からISF試料を抽出する。圧力を加えるこの往復動方式により、刺入部材で抽出されるISF試料のISFグルコース遅延が緩和され、かつ/または長期に亘った(例えば、1時間〜24時間の範囲)ISF試料の連続的または半連続的な抽出が容易になる。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明の原理に従った例示的な実施形態を添付の図面を用いて説明する以下の詳細な記載から、本発明の特徴及び利点をより良く理解できるであろう。
【0016】
図1を参照すると、本発明の例示的な実施形態に従った、体液試料(例えば、ISF試料)を抽出してその中の分析物(例えば、グルコース)を監視するためのシステム10が例示されている。このシステム10は、使い捨てカートリッジ12(破線で示されている部分)、ローカル制御モジュール14、及びリモート制御モジュール16を含む。
【0017】
システム10において、使い捨てカートリッジ12は、体(B、例えば、使用者の皮膚層)から体液試料(すなわちISF試料)を抽出するためのサンプリングモジュール18と、その体液中の分析物(すなわちグルコース)を測定するための分析モジュール20を含む。サンプリングモジュール18及び分析モジュール20は、当分野で周知のあらゆる好適なサンプリングモジュール及び分析モジュールとすることができる。しかしながら、本発明に従ったシステムの実施形態が、別法として使い捨てではないカートリッジ(「使い捨てカートリッジ」に対して単に「カートリッジ」と呼ぶ)を利用できることにも留意されたい。
【0018】
サンプリングモジュール18は、限定するものではないが、後述する刺入部材(例えば、針)、微小透析法、限外濾過法、レーザー法、逆イオン導入法、電気穿孔法、超音波法、及びこれらの組合せを含む任意の好適な方法で体液試料を抽出することができる。
【0019】
本発明の実施形態のサンプリングモジュール(サンプリングモジュール18を含む)に使用できる体液試料(例えば、ISF)を抽出する方法として、微小透析法及び限外濾過法がある。微小透析法及び限外濾過法は、例えば、第1の端部、第2の端部、及び孔を有するチューブ状の半透過性の膜を用いることができる。この孔により、低分子量化合物(例えば、グルコース)が拡散する或いは他の方法で半透過性の膜を通過できる。しかしながら、この孔は、高分子量化合物(例えば、タンパク質)が半透過性膜を拡散または通過するのを防止するために所定の大きさ及び/またはジオメトリを有する。
【0020】
好適な半透過性膜の材料として、限定するものではないが、ポリアクリロニトリル、キュプロファン(cuprophan)、再生セルロース、ポリカーボネート、及びポリスルホンを挙げることができる。使用の際、チューブ状半透過性膜は、例えば使用者の皮下層に埋め込まれる。
【0021】
微小透析法では、チューブの内部に潅流液が流れるように潅流液が第1の端部から注入され、半透過性の膜を透過した様々な低分子量化合物(グルコースなど)が潅流液に混ざる。次いで、潅流液は第2の端部に流れる。この潅流液及び様々な低分子量化合物を分析モジュール20に移送して分析することができる。
【0022】
限外濾過法では、第1の端部及び第2の端部の両方に比較的低い圧力(負圧)をかけて、体液(例えば、ISF)を半透過性の膜を通して濾過し、チューブの第1の端部及び第2の端部に向かって流すことができる。得られた限外濾液(例えば、ISF限外濾液)を分析モジュール20に移送して分析することができる。
【0023】
所望に応じて、チューブ状の半透過性の膜をカテーテルまたはカニューレと一体にして挿入及び操作を容易にすることができる。微小透析法及び限外濾過法についての更なる詳細は、言及することを以って本明細書の一部とする米国特許第5,002,054号、同第5,706,806号、及び同第5,174,291号に開示されている。
【0024】
サンプリングモジュール18に用いることができるISFを抽出する別の方法としてレーザーがある。レーザーを使用することによって、大きな苦痛を伴うことなく皮膚組織に小さな孔または局所侵食を形成できることを含め、様々な利点が得られる。例えば、小さく集束されたレーザーを用いて、使用者の皮膚層をアブレーションしてその皮膚層に微小孔を形成し、ISFを流出させることができる。アブレーションの深さをレーザーで正確に制御することができるため、理論上は、ISFの抽出過程は無痛で、ISFが有意に血液を含まない。アブレーションの効率が上がるように、レーザーの出力レベル、波長範囲、光学特性、及びパルス周波数を調整することができる。ISF採取におけるレーザーの使用についての詳細は、言及することを以って本明細書の一部とする米国特許第5,165,418号及び国際公開第97/07734号に開示されている。
【0025】
逆イオン導入法を用いて、イオン導入されたISF試料をサンプリングモジュール18によって抽出することができる。この方法は、加えられた電位または電流によって使用者の皮膚層を通るISF及びグルコースの移動に依存する。イオン導入法では、例えば、互いに離間して使用者の皮膚層に取り付けられる一対のイオン導入電極(ヒドロゲルでコーティングされている)が用いられる。例えば約0.01mA/cm2〜0.5mA/cm2の電流密度が2つの電極間に加えられる。通常は、加えられる電流の極性は、使用者の皮膚層を通るイオン導入されたISF試料の流動を増大させるために約10分毎に切り替えられる。電流が加えられることにより、電気浸透力のため使用者の皮膚層からイオン導入されたISF試料が流出する。イオン導入電極の近傍に、イオン導入されたISF試料を収集するためのレザバーが設けられ、これにより続いて分析モジュール20でこのISF試料を分析できる。逆イオン導入法の使用についての詳細は、言及することを以って本明細書の一部とする米国特許第6,233,471号及び同第6,272,364号に開示されている。
【0026】
サンプリングモジュール18に用いることができるISFを抽出する更に別の方法として電気穿孔法がある。電気穿孔法では、まず、使用者の皮膚層の所定深さまで少なくとも1つの微小孔を形成する。少なくとも1つの微小孔の形成には、レーザーや加熱ワイヤを用いることができる。次いで、微小孔に電機的に接続された電極と離間した電極との間に電圧を加える。
【0027】
微小孔が形成された使用者の皮膚層に電圧を加えることにより、毛細管などの皮下の組織構造に対して電気穿孔を行い、生体液の抽出を著しく改善することができる。電気穿孔によって抽出したISF試料を分析モジュール20で分析できるようにISF試料を収集及び移送する手段を設けることができる。電気穿孔法についての更なる詳細は、言及することを以って本明細書の一部とする米国特許第6,022,316号に開示されている。
【0028】
サンプリングモジュール18に用いることができるISFを抽出する更に別の方法として超音波がある。この方法では、使用者の皮膚層の小さな領域に超音波ビームを集束させる。超音波が当たる部位内の痛み受容器の数は、超音波衝当部位の面積を小さくするほど減少する。従って、極めて小さな領域に超音波を当てれば苦痛が少ないため、苦痛や不快感を殆ど与えることなく超音波及び/またはその局所効果を強く適用することができる。局所的に大きな力を加えて、空洞化、皮膚の機械的な振動、及び皮膚表面付近に大きな局所的な剪断力を得ることができる。超音波プローブは、超音波によって生成される大きな対流と呼ばれるアコースティックストリーミングを生成することができる。これにより、ISFの抽出速度が促進される。超音波についての更なる詳細は、言及することを以って本明細書の一部とする米国特許第6,234,990号に開示されている。
【0029】
しかしながら、図2に示されているように、システム10のサンプリングモジュール18は、体Bの標的部位(TS)に刺入してISF試料を抽出する刺入部材22、発射機構24、及び少なくとも1つの圧力リング28を含む。ISFサンプリングモジュール18は、ISF試料中の分析物(グルコースなど)の監視(例えば、濃度測定)のために、ISFを連続的または半連続的に分析モジュール20に供給するように適合されている。
【0030】
システム10を使用する場合、発射機構24の動作により刺入部材22を標的部位に挿入する(すなわち、標的部位に刺入する)。使用者の皮膚層からISF試料を抽出するために、刺入部材22を、例えば、1.5mm〜3mmの範囲で最大挿入深さまで挿入することができる。加えて、刺入部材22は、連続的または半連続的な方式でISF試料の抽出を最適化するように構成することができる。これに関連して、刺入部材22は、例えば、曲げ先端を備えた壁部が薄いステンレス鋼針(図1及び図2には図示せず)である25G注射針を含むことができる。この先端部の曲げの支点は、針の先端部と針のヒール部との間に位置する。本発明に従った刺入部材に好適な針の例が、米国特許出願公開第2003/0060784 A1パンフレット(出願番号10/185,605)に開示されている。
【0031】
発射機構24は、刺入部材22を取り囲むハブ(図1及び図2には図示せず)を含むこともできる。このようなハブは、標的部位への刺入部材22の挿入深さを制御するように構成されている。挿入深さの制御は、使用者の皮膚層の比較的深い部位にある毛細血管への意図しなかった刺入を防止し、これにより抽出したISF試料の汚染、刺入部材の目詰まり、血液による分析モジュールの目詰まりを排除することができ、ISF試料の抽出の際に有用である。挿入深さの制御はまた、システム10の使用中の患者の苦痛及び/または不快感を最小化するのに役立つ。
【0032】
挿入深さを制御するのに加えて、このようなハブは、刺入部材を発射した後に圧力リングに固定して(一体にする)、圧力リングの付属物として機能させることができる。別法では、ハブ自体を、刺入深さ制御手段及び刺入部材発射後の圧力リングの両方として機能するように構成することができる。
【0033】
図2には発射機構24がサンプリングモジュール18内に含まれているが、発射機構24は、システム10の使い捨てカートリッジ12またはローカル制御モジュール14に含めることもできる。更に、使用者によるシステム10の配置を容易にするために、サンプリングモジュール18は、分析モジュール20の一体部分として形成することができる。
【0034】
標的部位から体液(例えば、ISF)を抽出するのを容易にするために、刺入部材22を少なくとも1つの圧力リング28内に同心円上に配置することができる。圧力リング28は、限定するものではないが環状を含め、あらゆる好適な形状とすることができる。加えて、圧力リング28は、刺入部材が使用者の皮膚層に留まった状態で、標的部位近傍に往復運動する機械的な力(例えば、圧力)を加えることができるように構成することができる。このような往復運動は、ばねや保持ブロックなどの付勢要素(図1及び図2には図示せず)を用いて達成することができる。本発明に従ったサンプリングモジュール(及びISF抽出装置)における圧力リングの構造及び機能については、図9〜図12を用いて後に詳述する。
【0035】
システム10を使用する場合、刺入部材22を標的部位に刺入する前に、圧力リング28を標的部位TSの近傍に配置して使用者の皮膚層が張るようにする。このように皮膚層を張ることにより、使用者の皮膚層が安定し、刺入部材を刺入する際の皮膚層の弛みを防止できる。別法では、刺入部材を刺入する前の使用者の皮膚層の安定化は、サンプリングモジュール18に含まれた刺入深さ制御要素(図示せず)によって達成することができる。このような刺入深さ制御要素は、使用者の皮膚層の表面上またはその上方に延在しており、刺入深さ(挿入深さとも呼ぶ)を制御するためのリミッターとして役割を果たす。刺入深さ制御要素及びその使用方法の例が、言及することを以ってその内容の全てを本明細書の一部とする米国特許出願第10/690,083号に開示されている。所望に応じて、圧力リングを使用者の皮膚層に配置すると同時に刺入部材が発射されるようにして発射機構を単純にすることができる。
【0036】
刺入部材22を発射して標的部位TSに刺入すると、刺入部材22の針(図1及び図2には図示せず)は、例えば、使用者の皮膚層の表面から内部へ約1.5mm〜3mmの挿入深さに達する。圧力リング28が使用者の皮膚層を押圧すると(図2の下向きの矢印の方向)、標的部位近傍のISFに圧力がかかる。圧力リング28による皮下の圧力勾配により、ISFが針からサンプリングモジュールを経て分析モジュールに流れる(図2の曲がった矢印に示されている)
【0037】
刺入部材の針を流れるISFは、時間が経過すると標的部位近傍のISFの欠乏と圧力リング28の下側の使用者の皮膚層の弛緩によって減少する傾向がある。しかしながら、本発明に従ったシステムでは、ISFの流れが減少しないように、刺入部材が使用者の皮膚層に留まった状態で、圧力リング28を往復運動(例えば、ISFの流速の測定及びフィードバックによって制御される所定の圧力リングのサイクル動作を用いる)するように使用者の皮膚層に配置することができる。加えて、往復動方式で圧力を加える際、圧力リングによって加えられる圧力が変化し、局所圧力勾配がなくなって使用者の皮膚層からのISFの正味の流れが停止する時間が発生し得る。
【0038】
更に、標的部位近傍の使用者の皮膚層に対して複数の圧力リングを代わる代わる適用することにより、サンプリングモジュール及び分析モジュールを流れるISFの流れを制御することができ、かつ使用者の皮膚層の所定部分に圧力がかかる時間を制限することができる。往復動方式の圧力の適用はまた、使用者の皮膚層が回復できるようにすることで、使用者の皮膚の斑点や使用者の苦痛及び/または不快感を低減することができる。往復動方式で圧力リング28を適用する更なる利点は、ISFグルコース遅延(すなわち、使用者のISFグルコース濃度と使用者の血中グルコース濃度との差)が減少することである。
【0039】
当業者であれば、本開示を読めば、ISFグルコース遅延、使用者の苦痛/不快感、及び/または持続的な皮膚の斑点の発生を低減する様々な圧力リングのサイクル動作を考案できるであろう。例えば、圧力リング28を30秒〜3時間の間、配置(すなわち、標的部位近傍の使用者の皮膚層に圧力が加わる位置)し、次いで圧力リング28を30秒〜3時間の間、引き戻した状態に維持することができる(すなわち、使用者の皮膚層に圧力が加わらないような位置)。更に、圧力を加える時間(すなわち、少なくとも1つの圧力リングが配置されている時間)が約30秒〜約10分の範囲で、圧力をかけていない時間(すなわち、少なくとも1つの圧力リングが引き戻されている時間)が約5分〜約10分の範囲の場合、ISFグルコース遅延及び使用者の苦痛/不快感を大幅に低減することができる。ある有用な圧力リングのサイクル動作には、1分間の圧力の適用と10分間の圧力の解除が含まれる。圧力の適用と圧力の解除の時間が異なっているため、このようなサイクルを不均等圧力リングサイクルと呼ぶ。
【0040】
圧力リングのサイクル動作は、(i)所望の量の体液を抽出するのに十分な時間に亘って圧力リングを配置すること、(ii)ISFグルコース遅延を緩和する生理反応を引き起こすこと、(iii)使用者の不快感及び持続的な斑点の発生を抑えることの3つがバランスするように工夫することができる。加えて、圧力リングのサイクル動作は、例えば、15分毎の半連続的な分析物の測定を行えるように工夫することもできる。
【0041】
圧力リング28は、当業者に周知の任意の好適な材料から形成することができる。例えば、圧力リング28は、限定するものではないが、ABS樹脂プラスチック材料、射出成形用プラスチック材料、ポリスチレン材料、金属、またはそれらの組合せを含む比較的硬質の材料から形成することができる。圧力リング28はまた、限定するものではないが、弾性材料、ポリマー材料、ポリウレタン材料、ラテックス材料、シリコン材料、またはそれらの組合せを含む比較的弾性変形可能な材料から形成することもできる。
【0042】
圧力リング28によって画定される内部開口は、限定するものではないが、円形、正方形、長方形、C型、U型、六角形、八角形、及び鋸壁形を含む任意の好適な形状とすることができる。
【0043】
ISFの流れの減少を最小に抑え、かつ/またはサンプリングモジュール及び分析モジュールを流れるISFの流れを制御するために圧力リング28が用いられる場合、圧力リングが使用されている間、刺入部材22を使用者の皮膚層の標的部位に留めておく。しかしながら、ISFグルコース遅延を緩和するために圧力リング28が用いられる場合は、刺入部材22が使用者の皮膚層に断続的に位置するようにすることができる。このような刺入部材22の断続的な配置は、圧力リング28による圧力の適用に合わせて、または別に行うことができる。
【0044】
ISFグルコース遅延を緩和するための圧力リングの使用に加えて或いは別法として、本発明に従った様々な実施形態は、例えば、化学手段(すなわち、遅延緩和化学物質)、超音波、機械的手段、熱、真空、電位、またはこれらの組合せなどのISFグルコース遅延を緩和する他の手段を利用することができる。一般に、ISFグルコース遅延を緩和するためのこのような手段が、ISFグルコース遅延の緩和に用いられる手段の近傍における血液及び/またはISFの潅流を増大させると仮説を立てることができる。体液の局所的な循環を増大させることにより、血液とISFとの間のグルコースの平衡速度を改善することができる。
【0045】
化学手段を用いてグルコース遅延を緩和することができる。このような化学手段では、循環を促進するために標的部位(例えば、使用者の皮膚層)に遅延緩和化学物質を適用する。この機能を果たすことができる化合物の例として、限定するものではないが、カプサイシン、ヒスタミン、天然胆汁酸塩、コール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸塩(taurodeoxycholate)、グルココール酸ナトリウム(sodium glucocholate)、またはこれらの組合せを挙げることができる。加えて、米国特許第6,251,083号及び同第5,139,023号に開示されている全ての皮膚浸透促進剤及びそれらの組合せが好適な候補である。化学手段は乳剤またはゲルに混ぜて、単に直接適用できるようにすることができる。加えて、フリースなどの吸収材を用いて適用する化学手段を増量させることができる。
【0046】
ISFグルコース遅延を緩和する別の手段として超音波を使用する。超音波遅延緩和法では、標的部位(例えば、使用者の皮膚層)の近傍に超音波プローブを配置して標的部位に超音波を当てる。第1の所定量の超音波を標的部位に当てて局所加熱し、ISFグルコース遅延を緩和することができる。ある実施形態では、グルコース遅延を緩和した後、超音波プローブで第1の所定量よりも多い第2の所定量の超音波を当ててISFの抽出を促進する。このような実施形態では、超音波プローブは、グルコース遅延の緩和及びISF抽出の両方の機能を果たす。超音波法の更なる詳細は、言及することを以って本明細書の一部とする米国特許第5,231,975号及び同第5,458,140号に開示されている。
【0047】
ISFグルコース遅延を緩和する別の手段として非往復運動の機械的処置がある。このような機械的処置には、標的部位を引張るまたはピンチすること、引張って標的部位を伸ばす接着剤、及び使用者の皮膚層に振動を与える装置(例えば、圧電トランスデューサ)が含まれる。標的部位を処置する機械的な手段については、言及することを以ってその開示の全てを本明細書の一部とする米国特許第6,332,871号及び同第6,319,210号に開示されている。
【0048】
グルコース遅延を緩和する別の手段として熱の利用がある。このような手段では、加熱プローブ(例えば、抵抗ヒーター)を標的部位(使用者の皮膚など)に当てて体液の循環を促進する。別法では、熱源として赤外線(IR)を用いることもできる。このような実施形態では、温度プローブを用いて、使用者の皮膚層に好適な量の熱を確実に加え、熱処置の時間を比較的短い間隔(例えば、5分未満)とすることができる。通常は、加える熱は37℃よりも高くなければなないが、使用者の皮膚層が焦げる程高くはしない。標的部位への加熱についての詳細は、言及することを以ってその開示の全てを本明細書の一部とする米国特許第6,240,306号及び同第6,155,992号に開示されている。
【0049】
ISFグルコース遅延を緩和するための別の手段として真空の利用がある。例えば、真空により標的部位(使用者の皮膚層など)を伸ばしてISFグルコース遅延を緩和することができる。加えて、真空により、標的部位からのISFの抽出を促進できる負圧源を提供することができる。標的部位への真空の適用についての詳細は、言及することを以ってその開示の全てを本明細書の一部とする米国特許第6,155,992号に開示されている。
【0050】
ISFグルコース遅延を緩和するための更に別の手段として電位の利用がある。このような場合、例えば一対の電極を用いて標的部位(使用者の皮膚層など)に電流を流す。電流が神経細胞及び組織を刺激して、体液の循環を促進しISFグルコース遅延を緩和する。
【0051】
図3を参照すると、システム10の分析モジュール20が、分配リング302、複数のミクロ流体ネットワーク304、及び複数の電気接点306を含む。ミクロ流体ネットワーク304はそれぞれ、第1の受動バルブ308、グルコースセンサ310、廃棄タンク312、第2の受動バルブ314、レリーフバルブ316を含む。ミクロ流体ネットワーク304は、断面寸法が、例えば、30μm〜500μmの流路を含む。流れているISF試料のグルコースを監視(すなわち監視)するために、複数の実質的に同一のミクロ流体ネットワーク304(センサブランチ304とも呼ぶ)を分析モジュール20に含めることができる。分配リング302、第1の受動バルブ308、廃棄タンク312、第2の受動バルブ314、及びレリーフバルブ316は、分析モジュール20を流れるISFを制御するように構成されている。
【0052】
当業者に周知の任意の好適なグルコースセンサを、本発明に従った分析モジュールに用いることができる。グルコースセンサ310は、例えば、酵素と酸化還元活性成分すなわちメディエータを含む酸化還元試薬系を含むことができる。このようなメディエータとして、フェリシアニド、フェナジンエトサルフェート、フェナジンメトサルフェート、フェイレンジアミン(pheylenediamine)、1−メトキシフェナジンメトサルフェート、2,6−ジメチル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジクロロ−ベンゾキノン、フェロセン誘導体、オスミウムビピリジル錯体、及びルテニウム錯体を挙げることができる。全血中のグルコースアッセイに好適な酵素として、限定するものではないが、グルコースオキシダーゼ及びデヒドロゲナーゼ(共に、NAD系及びPQQ系)を挙げることができる。酸化還元系に含めることができる他の物質には、緩衝剤(例えば、シトラコネート(citraconate)、クエン酸塩、リンゴ酸、マレイン酸、リン酸バッファー)、2価陽イオン(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム)、界面活性剤(例えば、トリトン(Triton)、マコル(Macol)、テトロニック(Tetronic)、シルウェット(Silwet)、ゾニル(Zonyl)、プルロニック(Pluronic))、及び安定剤(例えば、アルブミン、スクロース、トレハロース、マンニトール、ラクトース)がある。
【0053】
グルコースセンサ310が電気化学系グルコースセンサの場合、グルコースセンサ310は、ISF試料中のグルコースの存在に応答して電流信号を生成することができる。次いで、ローカル制御モジュール14が電気接点306を介してその電流信号を受け取り、その信号をISFグルコース濃度に変換する。
【0054】
システム10は、8時間またはそれ以上の時間に亘ってISF試料中のグルコースの連続的及び/または半連続的な測定に用いることができる。しかしながら、経済的に大量生産することができる従来のグルコースセンサでは、正確な測定信号を提供できるのは僅か30分程度である。このセンサの寿命の問題を解決するために、同一のグルコースセンサ310を含む複数のミクロ流体ネットワーク304を分析モジュール20内に設けている。これらの各グルコースセンサを連続的に用いて、1時間以上に亘る連続的及び/または半連続的な監視を実現できる。
【0055】
複数の同一のグルコースセンサ(それぞれについて、例えば1時間)の連続的な使用により、連続的または半連続的なグルコースの測定が可能となる。同一のグルコースセンサを連続的に使用するには、まず、サンプリングモジュールからグルコースセンサ310へのISFの流入を所定時間案内し、次いでそのグルコースセンサへのISFの流れを遮断して別のグルコースセンサに切り替える。この連続的なグルコースセンサの使用は、分析モジュール内の全てのグルコースセンサを使い終わるまで繰り返すことができる。
【0056】
連続するグルコースセンサへのISFの流れの切り替えは、例えば、次の方法で実施することができる。分析モジュール20の使用開始時に、サンプリングモジュール18からのISF試料を分配リング302でn個のセンサブランチ304に分配する。しかしながら、ISFの流れは、各センサブランチの第1の受動バルブ308によって各センサブランチの入口で止められる。グルコースの測定を開始するには、選択したセンサブランチのレリーフバルブ316を開けてセンサブランチを作動させる。選択したレリーフバルブを開けるプロセスは、電気接点306を介して分析モジュール20と通信するローカル制御モジュール14で電気的に制御することができる。レリーフバルブ316が開くと、初めに初めにセンサブランチ304に存在するガス(例えば、空気)がそのセンサブランチ304の出口から排出され、ISFがそのセンサブランチ304内に流入する。他のセンサブランチ304のレリーフバルブ316が閉じているため、ISFはその選択されたセンサブランチ304のみに流入することができる。
【0057】
ISFの圧力は、第1の受動バルブを通過するのに十分であるため、グルコースセンサ310に向かって流れる。次いで測定信号がグルコースセンサ310によって生成され、図3の破線の矢印で示されているように電気接点306を介してローカル制御モジュール14に電気的に送られる。続いてISFは廃棄タンク312に流入する。廃棄タンク312の容量は、グルコースセンサの寿命に必要な量と等量のISFを受容できるように予め定められている。例えば、平均流速が約50nL/分で、グルコースセンサの寿命が1時間では、廃棄タンク312の容量は約3μLとなる。第2の受動バルブ314が、廃棄タンク312の終端部に配置されている。第2の受動バルブ314は、ISFの流れを止めるように構成されている。
【0058】
次いで、別のセンサブランチ304のレリーフバルブ316が開けられる。このレリーフバルブ316が選択的に開けられると(ローカル制御モジュール14による通信を介して行うことできる)、ISFが、対応するセンサブランチに配置された第1の受動バルブ308を通過してセンサブランチ304に流入する。次いで、そのセンサブランチのグルコースセンサ310が測定信号を分析モジュール20に供給する。
【0059】
分析モジュール20の全てのセンサブランチ304が使用されるまでこの手順が繰り返される。約8時間の連続的なグルコースの監視を提供するシステムの場合、分析モジュール20に約8個のセンサブランチ304が必要である。しかしながら、当業者であれば明らかなように、使い捨てカートリッジ12の分析モジュール20は8個のセンサに限定されるものではなく、8時間以上に亘ってISFグルコースレベルを測定するようにシステムをデザインすることができる。
【0060】
体Bの外部にある分析モジュール20について詳述することに留意されたい。本発明に従ったシステムの代替実施形態では、サンプリングモジュールを使用しない。しかしながら、分析モジュール20の一部(例えば、グルコースセンサを含む)を少なくとも部分的に体内(例えば、体Bの皮下層)に埋め込むことができる。好適な連続グルコースセンサとして、言及することを以ってその開示の全てを本明細書の一部とする米国特許第6,514,718号、同第6,329,161号、同第6,702,857号、及び同第6,558,321号に開示されているグルコースセンサを挙げることができる。
【0061】
このようなグルコースセンサは、動作電極にオスミウムレドックスポリマーと共に固定されるグルコースオキシダーゼまたはデヒドロゲナーゼなどの酵素を利用することができる。エポキシドまたはアジリジンなどの2官能性架橋剤を用いて、この酵素とポリマーを共に電極面に固定することができる。このようなグルコースセンサは、自由に拡散する試薬を添加しないでグルコースを測定して、グルコース濃度をその濃度に比例した電流レベルまたは電位に変換することができる。
【0062】
他のグルコースセンサは、動作電極に固定されたグルコースオキシダーゼなどの酵素を利用することができる。通常は、グルタルアルデヒドなどの2官能性架橋剤を用いて、この酵素を動作電極に固定することができる。このようなグルコースセンサでは、過酸化水素濃度がグルコース濃度に比例するように酸素を過酸化水素に変換する。次いで、過酸化水素が動作電極で酸化されるため、電流の大きさを測定してISF中のグルコースレベルを決定することができる。
【0063】
更に別のグルコースセンサは、皮下層に埋め込むことができる改良ビーズ(ラテックスビーズなど)を利用し、グルコースを監視するために蛍光共鳴エネルギー転位法(FRET)を用いる。このようなグルコースの監視についての詳細は、言及することを以ってその開示の全てを本明細書の一部とする米国特許第6,232,130号及び同第6,040,194号に開示されている。
【0064】
図4に、ローカル制御モジュール14が簡易ブロックの形態で示されている。ローカル制御モジュール14は、機械制御部402、第1の電子制御部404、第1のデータ表示装置406、ローカル制御アルゴリズム408、第1のデータ記憶要素410、及び第1の高周波リンク412を含む。
【0065】
ローカル制御モジュール14は、使い捨てカートリッジ12に電気的及び機械的に接続できるように構成されている。機械的な接続により、使い捨てカートリッジ12をローカル制御モジュール14に(例えば、挿入して)取り外し可能に取り付けることができる。ローカル制御モジュール14及び使い捨てカートリッジ12は、使用者の皮膚に組合体として固定される方式で、例えば、ストラップで使用者の皮膚に取り付けできるように構成されている。
【0066】
システム10が使用されている間、第1の電子制御部404が、上記した分析モジュール20の測定サイクルを制御する。ローカル制御モジュール14と使い捨てカートリッジ12の通信は、分析モジュール20の電気接点306(図3を参照)を介して行われる。電気接点306は、ローカル制御モジュール14の接触ピン(図7を参照)と接触することができる。電気信号が、例えば、レリーフバルブ316を選択的に開けるために、ローカル制御モジュール14によって分析モジュール20に送られる。次いで、ISF試料のグルコース濃度を表わす電気信号が、分析モジュールによってローカル制御モジュールに送られる。第1の電子制御部404が、ローカル制御アルゴリズム408を用いてこれらの信号を解釈し、測定データを第1のデータ表示装置406(好ましくは、使用者が読めるように)に表示する。加えて、測定データ(例えば、ISFグルコース濃度データ)が第1のデータ記憶要素410に保存される。
【0067】
使用する前に、未使用の使い捨てカートリッジ12をローカル制御モジュール14内に挿入する。この挿入により、使い捨てカートリッジ12とローカル制御モジュール14との電気通信が可能となる。ローカル制御モジュール14の機械制御部402が、システム10の使用中、使い捨てカートリッジ12を所定の位置にしっかりと保持する。
【0068】
ローカル制御モジュールと使い捨てカートリッジの組合体を使用者の皮膚へ取り付けた後、使用者から起動信号を受け取ると測定サイクルが第1の電子制御部404によって開始される。この開始時に、刺入部材22が使用者の皮膚層内に発射され、ISFサンプリングが始まる。この発射は、第1の電子制御部404によって、または使用者による機械的相互作用によって実現することができる。
【0069】
ローカル制御モジュール14の第1の高周波リンク412は、図1及び図4のギザギザの矢印によって示されているように、ローカル制御モジュールとリモート制御モジュール16との双方向通信を可能とするように構成されている。ローカル制御モジュールには、システムの現状を示す表示装置(例えば、多色LED)が組み込まれている。
【0070】
ローカル制御モジュール14は、使い捨てカートリッジ12と双方向通信して測定データを受け取り、保存できるように構成されている。例えば、ローカル制御モジュール14は、分析モジュール20からの測定信号をISFグルコース濃度値または血中グルコース濃度値に変換するように構成することができる。
【0071】
図5は、システム10のリモート制御モジュール16を示す簡易ブロック図である。リモート制御モジュール16は、第2の電子制御部502、第2の高周波リンク504、第2のデータ記憶要素506、第2のデータ表示装置508、推定アルゴリズム510、アラーム512、血中グルコース測定システム(血中グルコースストリップ516を用いて血中グルコースを測定するように適合されている)、及びデータ保持要素518を含む。
【0072】
第2の電子制御部502は、リモート制御モジュール16の様々な構成部品を制御するように適合されている。第2の高周波リンク504は、ローカル制御モジュール14と双方向通信できるように構成されている(例えば、第2の高周波リンク504は、ローカル制御モジュール14からISFグルコース濃度関連データを受け取ることができる)。第2の高周波リンク504を介して受け取ったデータは、第2の電子制御部502で検査・確認することができる。更に、このように受け取ったデータは、第2の電子制御部502で処理及び分析され、後の使用(例えば、使用者による後のデータの検索や、推定アルゴリズム510での使用)に備えて第2のデータ記憶要素506に保存することができる。リモート制御モジュール16の第2のデータ表示装置508は、例えば、使用者に便利な形式の測定データ、並びに後のデータ管理のための使用が簡単なインターフェイスを表示するように構成されたグラフィックLCD表示装置とすることができる。
【0073】
ローカル制御モジュール14は、第2の高周波リンク504を介してリモート制御モジュール16と通信できるように適合されている。リモート制御モジュール16の機能には、使用者に見易く便利な形態にグルコース測定データを表示、保存、及び処理することが含まれる。リモート制御モジュール16は、有害なグルコース濃度を使用者に警告するためにアラーム512によって警報(音響、視覚、振動)を発することができる。リモート制御モジュール16の更なる機能は、血中グルコース測定システム514及び1回用の血中グルコース測定ストリップ516を用いて使用者の血中グルコース濃度を測定することである。血中グルコース測定システム514で測定された血中グルコース値を用いて、推定アルゴリズム510で算出された血中グルコース値を検証することができる。リモート制御モジュール16はまた、入力して解析される使用者の特有のデータ(例えば、事象タグ、心の状態、医療データ)を提供するように構成することができる。
【0074】
リモート制御モジュール16は、ポータブルユニットとして、ローカル制御モジュール14と通信できるように構成することができる(例えば、ローカル制御モジュール14からグルコース測定データを受信する)。従って、リモート制御モジュール16は、グルコース監視関連データの管理(例えば、グルコース関連データの保存、表示、及び処理)についての簡便なプラットフォームを使用者に提供する。これを用いて、的確な治療(すなわち、インスリン投与)を行うことができる。リモート制御モジュール16の機能には、ISFグルコースデータの収集、保存、及び処理、並びにISFグルコースデータから求められた血中グルコース値の表示が含まれる。このような機能をリモート制御モジュール16に含めることにより、ローカル制御モジュール14が小さく単純になる。しかしながら、所望に応じて、リモート制御モジュールの代わりにローカル制御モジュールが上記した機能を果たすことができる。
【0075】
血液試料(BS)における血中グルコースレベルの測定を容易にするために、血中グルコース測定システム514が、リモート制御モジュール16と一体に設けられている。血中グルコース測定システム514は、血液試料(例えば、血液の滴)が導入された血中グルコースストリップ516を用いて測定する。得られた血中グルコース測定値を、推定アルゴリズム510によって求められたグルコース値と比較することができる。
【0076】
リモート制御モジュール16は、場合によってはシリアル通信ポート(図5には図示せず)などの通信ポートを含むこともできる。当分野では、例えば、RS232(IEEE標準)及びUSBなどの好適な通信ポートが知られている。このような通信ポートは、保存されたデータを外部データ管理システムに送信するように容易に適合することができる。リモート制御モジュール16はまた、通信ポートを介してプログラムすることができる再プログラム可能なフラッシュメモリ部分などのプログラム可能なメモリ部分(図5には図示せず)を含むことができる。このようなメモリ部分の目的は、通信ポートを介した通信によってリモート制御モジュールのオペレーティングシステム及び/または他のソフトウエア部分の更新を容易にすることにある。
【0077】
更に、リモート制御モジュール16は、データ保持要素518を受容して、そのデータ保持要素と通信するための通信スロットを含むことができる。データ保持要素518は、「スマートチップ」とも呼ばれるSIMデータ保持要素などの当分野で周知のあらゆる好適なデータ保持要素とすることができる。
【0078】
データ保持要素518は、使い捨てカートリッジ12に設けることができ、キャリブレーションデータやロット識別番号などの使い捨てカートリッジの生産ロットに固有のデータを含むことができる。リモート制御モジュール16は、データ保持要素518に保持されているデータを読むことができ、このようなデータを、ローカル制御モジュール14から受け取ったISFグルコースデータの解釈に用いることができる。別法では、データ保持要素518のデータを、第2の高周波リンク504によってローカル制御モジュールに送信することができ、このデータをローカル制御モジュール14によるデータ分析に用いることができる。
【0079】
リモート制御モジュール16の第2の電子制御部502は、データの解釈及び様々なアルゴリズムを実行するように構成されている。1つのアルゴリズムは、近い将来(30分〜1時間以内)のグルコースレベルを推定するための推定アルゴリズム510である。使用者の血中グルコース濃度の変化とその使用者のISFグルコース濃度の対応する変化との間には時間差が存在するため、推定アルゴリズム510は、個人の遅延時間の関係を反映する使用者固有のパラメータを考慮するべく、保存されたデータに対して実施される一連の数学的処理を用いる。推定アルゴリズム510の結果は、ISFグルコースレベルに基づいた血中グルコースレベル推定値である。推定アルゴリズム510が低いグルコースレベルを推定すると、信号が生成され、アラーム512が作動して、低血糖症や昏睡の危険などの推定される生理現象を使用者に警告する。当業者であれば理解できるように、アラーム512は、使用者を直接或いは使用者の健康管理者に警告を与える音響信号、視覚信号、または振動信号を含むあらゆる好適な信号から構成することができる。低血糖症の症状の使用者を目覚めさせることができるように音響信号が好ましい。
【0080】
任意の同じ時間におけるISFグルコース値(濃度)と血中グルコース値(濃度)の差をISFグルコース遅延と呼ぶ。ISFグルコース遅延は、生理的原因と機構的原因の両方によると考えられる。ISFグルコース遅延の生理的な原因は、使用者の皮膚層の血液から間質への拡散に要する時間に関係する。遅延の機構的原因は、ISF試料の採取に用いる装置及び方法に関係する。
【0081】
本発明に従った装置、システム、及び方法の実施形態は、使用者の皮膚層の標的領域への血液の流れを促進する往復動方式で使用者の皮膚層に対して圧力を適用及び解除して、生理的な原因によるISFグルコース遅延を緩和(低減、または最小化)する。詳細を後述する本発明に従った圧力リングを含むISF抽出装置は、この方式で圧力を適用及び解除する。ISFグルコースの遅延を考慮する別の方法は、測定したISFグルコース濃度に基づいて血中グルコース濃度を推定するアルゴリズム(例えば、推定アルゴリズム510)を用いる。
【0082】
推定アルゴリズム510は、例えば、一般的な形、すなわち「推定血中グルコース=f(ISFik,ratej ,man ratemp,交互作用項)」とすることができる。ここで、iは0〜3の整数値であり、j、n、及びmは1〜3の整数値であり、k及びpは1または2の整数値である。ISFiは、測定したISFグルコース値であって、下付き文字(i)はどのISF値が用いられたかを示す。例えば、(i)が0の場合は現在の値のISF値を指し、1の場合は1つ前の値を指し、2の場合は2つ前の値を指し、以下同様に続く。ratej は、近い2つのISF値の間の変化率であって、下付き文字(j)は、変化率を計算するためにどの近い2つのISF値が用いられたかを示す。例えば、(j)が1の場合は、現在のISF値とその前のISF値との間の変化率を指し、(j)が2の場合は、1つ前のISF値と2つ前のISF値との間の変化率を指し、以下同様に続く。man ratem は、ISF値の各群の近い平均値間の移動平均率を示し、下付き文字の(n)は、移動平均値に含まれるISF値の数を指し、(m)は、現在の値に対して近い移動平均値の時間位置を指す。
【0083】
推定アルゴリズムの一般的な形は、全ての許容される項と可能な交差項の一次結合であり、項及び交差項の係数は、ISF試料採取時に測定されたISF値と血中グルコース値の回帰分析によって決定される。本発明に従ったシステムに適した推定アルゴリズムの更なる詳細は、言及することを以って本明細書の一部とする米国特許出願第10/652,464号に開示されている。
【0084】
当業者には明らかなように、推定アルゴリズムの結果を用いて、インスリン供給ポンプなどの医療装置を制御することができる。アルゴリズムの結果に基づいて決定できるパラメータの典型的な例は、ある時点における使用者に瞬時大量投与するインスリンの量である。
【0085】
ローカル制御モジュール14と使い捨てカートリッジ12の組合体を、使用者の皮膚に取り付けることができるように構成して、使用者の皮膚層から抽出されるISFのサンプリング及び監視を容易にすることができる(図6〜図8を参照)。
【0086】
図1〜図10に示されているシステムの実施形態の使用中は、使い捨てカートリッジ12が、ローカル制御モジュール14内に配置され、そのローカル制御モジュールによって制御される。加えて、使い捨てカートリッジ12とローカル制御モジュール14の組合体を、使用者、好ましくは使用者の腕の上部または前腕に装着できるように構成することができる。ローカル制御モジュール14は、測定管理のため及び分析モジュールから測定データを受け取るために使い捨てカートリッジ12に電気的に接続されている。
【0087】
図6を参照すると、ローカル制御モジュール14は、第1のデータ表示装置406と、ローカル制御モジュール14を使用者の腕に取り付けるための一対のストラップ602を含む。図6にはまた、ローカル制御モジュール14を挿入する前の使い捨てカートリッジ12が示されている。
【0088】
図7に、ローカル制御モジュール14に設けられた挿入キャビティ704内に使い捨てカートリッジ12を挿入する前のローカル制御モジュール14の底面図が示されている。使い捨てカートリッジ12及びローカル制御モジュール14は、使い捨てカートリッジ12が機械的な力によって挿入キャビティ704内に固定されるように構成されている。加えて、使い捨てカートリッジ12及びローカル制御モジュール14は、使い捨てカートリッジ12に設けられた一連の成形接触パッド706によって電気的に接続される。これらの成形接触パッド706は、使い捨てカートリッジが挿入キャビティ704内に挿入されると、ローカル制御モジュール14の挿入キャビティ704内に設けられた一連の接触ピン708に整合する。
【0089】
図8に、使い捨てカートリッジ12がローカル制御モジュール14内に挿入され、使い捨てカートリッジとローカル制御モジュールの組合体が使用者の腕に取り付けられた後のローカル制御モジュール14が示されている。図8はまた、ローカル制御モジュール14の高周波通信範囲内にあるリモート制御モジュール16を示している。
【0090】
図9に、本発明の例示的な一実施形態に従った間質液(ISF)抽出装置900の側断面図が示されている。ISF抽出装置900は、刺入部材902、圧力リング904、第1の付勢部材906(すなわち第1のばね)、及び第2の付勢部材908(すなわち第2のばね)を含む。
【0091】
刺入部材902は、使用者の皮膚層の標的部位に刺入して、そこからISFを抽出できるように構成されている。刺入部材902はまた、ISFの抽出中に使用者の皮膚層に維持されるように構成されている。刺入部材902は、例えば、1時間以上に亘って使用者の皮膚層に留めることができ、これにより連続的または半連続的なISFの抽出が可能となる。当業者であれば本開示を読めば、刺入部材を使用者の皮膚層に8時間以上に亘って留めることができることを理解できよう。
【0092】
圧力リング904は、配置された状態と引き戻された後退状態との間で往復するように構成されている。圧力リング904が配置された位置にある場合は、(i)使用者の皮膚層からISFの抽出を促進するため、及び(ii)ISF抽出装置900から上記したような分析モジュールなどへのISFの流れを制御するために、刺入部材が使用者の皮膚層に留まったまま、圧力リング904が標的部位の周りの使用者の皮膚層に圧力を加える。圧力リング904が引き戻された位置にある場合は、圧力リングは標的部位の周りの使用者の皮膚に全く或いは殆ど圧力を加えない。圧力リング904が配置された位置と後退位置との間で往復運動できるため、使用者の皮膚層の所定部分に圧力が加えられる時間を制御して、使用者の皮膚層を回復させ、苦痛や斑点を低減することができる。
【0093】
圧力リング904は通常、0.08インチ〜0.56インチ(約2.03mm〜約14.22mm)の範囲の外径、及び0.02インチ〜0.04インチ(約0.51mm〜約1.02mm)の範囲の側壁(図9のA)を有する。
【0094】
刺入部材902は、圧力リング904から独立して動くように構成したり、圧力リング904に固定することができる。刺入部材902が圧力リング904に固定される場合、刺入部材902は圧力リング904と共に動く。しかしながら、標的部位の一部(例えば、標的部位の皮膚)と刺入部材902との間に生じる摩擦で標的部位が「テント」構造を形成するため、刺入部材902が圧力リングと共に引き戻されても刺入部材が標的部位内に留まる恐れがある。従って、刺入部材を圧力リングに固定する利点は、デザインが単純になることである。
【0095】
第1の付勢要素906は、使用者の皮膚層に対して圧力リング904を押圧し(すなわち、圧力リングを配置状態にし)、圧力リング904を引き戻すように構成されている。第2の付勢要素908は、刺入部材902が標的部位に刺入するようにその刺入部材を発射できるように構成されている。
【0096】
圧力リングによって使用者の皮膚層に加えられる圧力(力)は、例えば、約1psi〜150psi(約6.9kPa〜約1034.3kPa)(psiは、圧力リングの断面積当たりの力として計算)の範囲とすることができる。これに関連して、約50psi(約344.8kPa)の圧力が、使用者の苦痛/不快感を最小にすると共にISFの十分な流れを得るのに有利であることが分かった。
【0097】
図9の実施形態では、刺入部材902は、往復動圧力リング904の凹部内に部分的に受容され、その凹部の深さによって刺入部材902の最大刺入深さが決まる。図9には明確には示されていないが、刺入部材902及び往復運動する圧力リング904は、互いに対して移動することができ、使用者の皮膚層に別々に適用することができる。
【0098】
ISF抽出装置900の使用中に、往復動圧力リング904を使用者の皮膚層を安定させるために配置して、標的領域の部分を分離及び加圧し、従って正味の正の圧力を加えて、刺入部材902を通るISFの流れを促進することができる。
【0099】
所望に応じて、ISF抽出装置900は、刺入時の針の刺入深さを制限及び制御するための刺入深さ制御要素(図示せず)を含むことができる。好適な刺入深さ制御要素及び使用方法の例が、言及することを以ってその内容の全てを本明細書の一部とする米国特許出願第10/690,083号に開示されている。
【0100】
ISF抽出装置900を使用する場合、ISF抽出装置900を含むシステムを、圧力リング904を皮膚に向けて(例えば、図8を参照)使用者の皮膚層に配置する。圧力リング904を皮膚に押圧して皮膚を隆起させる。次いで、その隆起した部分に刺入部材902を刺入する(例えば、突く)。次いで、刺入部材902が皮膚内に完全にまたは部分的に留まった状態で、ISF試料を隆起部から抽出する。
【0101】
抽出されるISF試料の流速は、当初は比較的速いが、通常は時間と共に低下する。約3秒〜3時間後に、圧力リング904を引き戻して、皮膚が回復するようにその状態を約3秒〜3時間維持する。次いで、圧力リング904を再び、約3秒〜3時間配置し、次いで圧力リング904を引き戻し、その状態を約3秒〜3時間維持する。ISFの抽出を終了するまで、この圧力リング904の配置と引き戻しのプロセスを繰り返す。この配置と引き戻しのサイクルは、それぞれのサイクルが異なる時間であるため不均等である。
【0102】
上記したように、本発明の実施形態に用いられる圧力リング(例えば、図9の圧力リング904)を用いてISFグルコース遅延を緩和(すなわち低減)することができる。拘束するものではないが、このような緩和が、ISF試料が抽出される部位の近傍または分析モジュールが少なくとも部分的に埋め込まれる領域で潅流が促進されるためであると仮説を立てることができる。所望に応じて、潅流を促進してISF遅延を緩和する他の好適な手段をこのような圧力リングに組み合わせることができる。例えば、図9の圧力リング904を加熱して潅流を増大させることができる。このような加熱は、例えば、圧力リング904に埋め込まれた抵抗材料に電流を流して、或いは圧力リング904内のキャビティ内に加熱流体を循環させて実現することができる。潅流を促進する(そしてISFグルコース遅延を低下させる)ための好適な化学物質を用いた手段には、例えば、ISF試料が抽出される部位の近傍または分析モジュールが少なくとも部分的に埋め込まれる領域に局所血管拡張剤(例えばヒスタミン)を適用することが含まれる。更に、潅流を増大させるように構成された超音波トランスデューサを用いた装置及び/または潅流を増大させるように構成された電気刺激を用いた装置を圧力リング904に組み込むことができる。
【0103】
本発明の別の例示的な実施形態に従ったISF抽出装置950の斜視図及び断面図のそれぞれが図10及び図11に示されている。ISF抽出装置950は、刺入部材952と、同心円上に配置された複数の圧力リング954A、954B、及び954Cを含む。ISF抽出装置950はまた、使用者の皮膚層に対して圧力リング954A、954B、及び954Cのそれぞれを押圧するための複数の第1の付勢要素956A、956B、及び956Cと、刺入部材952を発射するための第2の付勢要素958と、刺入深さ制御要素960を含む。所望に応じて、刺入深さ制御要素960を圧力リング954Cと一体にして一体型の刺入深さ制御/圧力リング要素を形成することができる。
【0104】
使用する際は、圧力リング954A、954B、及び954Cが使用者の皮膚層を向くようにISF抽出装置950を配置する。これは、例えば、上記したように体液を抽出するためのシステムのサンプリングモジュールのISF抽出装置950を利用して、このシステムを使用者の皮膚層に配置して達成することができる。
【0105】
次いで、圧力リング954Aが付勢要素956Aによって使用者の皮膚層に押圧され、これにより、刺入部材952が突き刺される(刺入される)使用者の皮膚層に隆起部が形成される。圧力リング954Aが使用すなわち配置されている間、圧力リング954B及び圧力リング954Cをそれぞれ、付勢要素956B及び付勢要素956Cによって後退位置に維持することができる。
【0106】
刺入部材952が使用者の皮膚層の中に完全にまたは部分的に留置された状態で、使用者の皮膚層に形成された隆起部からISFを抽出することができる。約3秒〜3時間後に、圧力リング954Aを引き戻して、約3秒〜3時間の間、使用者の皮膚層を回復させることができる。圧力リング954Aを引き戻した後、圧力リング954Bを配置して使用者の皮膚層に圧力を加えることができる。圧力リング954Bが使用すなわち配置されている間、圧力リング954A及び圧力リング954Cをそれぞれ、付勢要素956A及び付勢要素956Cによって後退位置に維持することができる。約3秒〜3時間後に、圧力リング954Bを引き戻して約3秒〜3時間維持し、続いて圧力リング954Cを配置することができる。圧力リング954Cを、約3秒〜3時間の間、使用者の皮膚層に押圧した状態に維持し、次いで、約3秒〜3時間の間、引き戻した状態に維持する。圧力リング954Cが使用すなわち配置されている間、圧力リング954A及び圧力リング954Bをそれぞれ、付勢要素956A及び付勢要素956Bによって後退位置に維持することができる。圧力リング954A、954B、及び954Cの配置と引き戻しのこのサイクルは、流体の抽出が終了するまで続けることができる。図9に示されている実施形態と同様に、図10及び図11に示されている複数の圧力リングの実施形態の配置と引き戻しのサイクルも、それぞれのサイクルの時間が異なり、不均等であるのが好ましい。
【0107】
当業者であれば、本発明に従ったISF抽出装置の複数の圧力リングを任意の順序で配置することができ、上記した配置と引き戻しの順序に限定されるものではないことを理解できよう。例えば、圧力リング954Aを配置する前に、圧力リング954Bまたは圧力リング954Cを配置する順序も可能である。更に、2つ以上の圧力リングを同時に配置することもできる。例えば、図10及び図11に示されている実施形態では、3つの圧力リングが単一の圧力リングとして機能するように、同時に3つ全ての圧力リングを配置することもできる。
【0108】
図10及び図11に示されている実施形態では、それぞれの圧力リングによって使用者の皮膚に加える圧力は、例えば、約0.1psi〜150psi(約0.7kPa〜約1034.3kPa)の範囲とすることができる。更に、当業者であれば、本発明に従った実施形態が、使用中に標的部位に対して一定の力(例えば、約0.91kg(約2ポンド)の力)または一定の圧力(例えば、約138Pa〜207Pa(20psi〜30psi)を加える圧力リングを用いることができることに気づくであろう。場合によっては、圧力または力を、圧力を加えるサイクル内またはそのサイクルの間で変動させることができる。例えば、圧力を1分の抽出サイクル内で約138Pa〜207Pa(20psi〜30psi)の範囲で変動させることができる。
【0109】
圧力リング954A、954B及び954Cの外径はそれぞれ、例えば、0.08インチ〜0.560インチ(2.032mm〜14.224mm)、0.1インチ〜0.9インチ(2.54mm〜22.86mm)、及び0.16インチ〜0.96インチ(4.064mm〜24.384mm)の範囲とすることができる。それぞれの圧力リングの壁部の厚みは、例えば、0.02インチ〜0.04インチ(0.508mm〜1.016mm)の範囲とすることができる。
【0110】
本発明の代替の実施形態に従った抽出装置の最も内側の圧力リングは、無視できるほど小さな圧力を加えてその領域への血液の流れを維持したまま、使用者の皮膚層に針を維持するために、所望に応じて平坦なリング(図14を参照)とすることができる。図14に、本発明の代替の例示的な実施形態に従った間質液(ISF)抽出装置970の一部の側断面図が示されている。ISF抽出装置970は、刺入部材972、圧力リング974、平坦な圧力リング975、圧力リング974を付勢するための第1の付勢部材976(すなわち第1のばね)、及び平坦な圧力リング975を付勢するための第2の付勢部材978(すなわち第2のばね)を含む。
【0111】
この代替の実施形態では、平坦な圧力リングが針(すなわち刺入部材972)を取り囲み、針がちょうど通過できる大きさの孔を有する。平坦な圧力リングは、好ましくは0.02インチ〜0.56インチ(0.508mm〜14.224mm)の直径を有する。
【0112】
本発明に従った抽出装置に少なくとも1つの圧力リングに設けることで、複数の利点が得られる。第1に、配置位置と引き戻された位置との間の圧力リングの往復運動は、ISFグルコース遅延を緩和する(すなわち減少させる)役割を果たす。圧力リングが引き戻されると使用者の皮膚層に対する圧力が解放され、使用者の体は、標的部位に血流を増大させる反応をする。この現象は、反応性充血として知られており、圧力リングの往復運動により標的部位にISFが有利に補給される機構であると推測できる。このようなISFの補充は、ISFグルコース値と全血グルコース値との間の時間的ずれを緩和するのに役立つ。
【0113】
本発明に従ったISF抽出装置の別の利点は、圧力リングの往復運動により、圧力が加えられる皮膚が回復すると共に、使用者の苦痛、不快感、及び持続的な斑点の発生が低減される。
【0114】
更に、複数の圧力リングを備えた抽出装置(例えば、図10及び図11の実施形態)では、少なくとも1つの圧力リングがISFの収集を促進するべく固着され、他の圧力リングが配置された状態と引き戻された状態との間で往復運動して、任意の時間に使用者の皮膚層の別の領域に圧力を加えることができる。このような固着された圧力リングと往復動圧力リングとの組合せは、使用者の苦痛/不快感を更に減少させるのに役立つ。
【0115】
本実施形態に従ったISF抽出装置の別の利点は、圧力リングを用いて、抽出したISF試料のグルコース測定が行われる状態を制御することができる。例えば、電気化学グルコースセンサは、そのセンサを流れるISF試料の流速が一定または静止している場合は極めて正確である。本発明に従ったISF抽出装置の圧力リングにより、抽出したISF試料の流れを制御することができる。例えば、圧力リングを引き戻してISF試料の流れを0.1秒〜60分の間停止し、グルコースの濃度測定を可能にすることができる。グルコースの濃度測定が終了したら、1または複数の圧力リングを再配置してISFの抽出を続けることができる。この方式で、半連続的なISF試料の抽出を行うことができる。
【0116】
当業者であれば本開示を読めば、本発明に従ったISF抽出装置を、限定するものではないが、上記したように体液試料を抽出し、その中の分析物を監視するシステムを含め、様々なシステムに適用できることを理解できよう。例えば、ISF抽出装置は、このようなシステムのサンプリングモジュールに用いることができる。
【0117】
図13に示されているように、本発明の例示的な実施形態に従った使用者の皮膚層からISF試料を連続的に収集するための方法100は、ステップ1010に示されているようにISF流体抽出装置を用意することを含む。このISF流体抽出装置は、刺入部材、及び少なくとも1つの圧力リング(例えば、単一圧力リング、または同心円上の3つの圧力リング)を含む。刺入部材及び圧力リングは、本発明に従ったISF抽出装置及びシステムを用いて説明した刺入部材及び圧力リングとすることができる。
【0118】
次に、ステップ1020に示されているように、圧力リングを使用者の皮膚層の標的部位(例えば、指先の被包組織標的部位、四肢の標的部位、腹部標的部位、またはISF試料を抽出する他の標的部位)の近傍に接触させる。例えば、本発明に従ったシステム及び装置の実施形態を用いて説明した技術を含め、あらゆる好適な技術を用いて圧力リングを使用者の皮膚層に接触させることができる。
【0119】
次に、ステップ1030に示されているように、使用者の皮膚層の標的部位に刺入部材を刺入する。次に、ステップ1040に示されているように、抽出するISFの遅延を緩和する往復動方式で使用者の皮膚層に圧力を加えながら、刺入部材で使用者の皮膚層からISFを抽出する。本発明に従った方法における圧力を加える様々な往復動方式は、図1〜図12を用いて既に説明した。
【0120】
次の例は、本発明に従った装置、システム、及び方法の様々な実施形態の利点を例証する。
【0121】
例1:往復動圧力リング内の領域における血液潅流に対する往復動圧力リングの影響
患者の前腕に取り付けられた圧力リングの内側のほぼ中心の0.25cm2 の領域から半規則的な間隔でレーザードップラーイメージ潅流データを収集した。圧力リングは、0.53インチ(13.462mm)の直径及び0.03インチ(0.762mm)の壁部の厚みを有する。患者の皮膚層に圧力リングを配置する前に基準データを収集した。0.5ポンド(約227.3g)のばねの力で皮膚層に対して圧力リングを10分間配置してから皮膚層から30分間離し、この配置と引き戻しのサイクルを繰り返した。続いて圧力リングを皮膚層に対して5時間配置し、皮膚層から1時間離し、最後に10分間皮膚に配置した。0.25cm2 の測定領域における平均潅流を図12に示した。
【0122】
図12から分かるように、圧力リングの配置により、圧力リングによって囲まれた領域の血液潅流が基準血液潅流に比べて減少した(すなわち、圧力を加えることにより血液潅流が減少した)。しかしながら、圧力リングを離すとこの現象が元に戻るだけでなく、実際には基準を越えて潅流が増大した。
【0123】
例2:ISFグルコース遅延に対する往復動圧力リングの影響
本発明の例示的な実施形態に従った往復動圧力リングを使用した場合のISFグルコース値に対する血流の影響を決定するために試験を行った。20人の糖尿病患者において、患者の前腕の掌側及び背側に対する基準血液潅流測定を行った。次いで、これらの患者に対して、指の血液試料、コントロールISF試料、及び往復動処理ISF試料を、3時間〜6時間に亘って15分毎に収集した。コントロールISF試料は、患者の皮膚層は何も操作しないで患者の前腕から採取し、往復動処理ISF試料は、患者の皮膚層に対して往復動圧力リングを往復動させて採取した。3時間〜6時間の試験時間における、電子レンジで解凍した食物や、インスリン及び経口血糖降下剤を含む糖尿病用薬物の摂取による影響により、殆どの患者の血中グルコース濃度が増減する。
【0124】
往復動処理ISF試料は、30秒間はサンプリングしないで圧力リングで約150psi(約1034kPa)の圧力を加えて生成し、続いてサンプリング標的部位に血液が流入するように5分間待った。コントロールISF試料及び往復動処理ISF試料を得る直前に、ムーア・レーザー・ドップラー・イメージ(Moor Laser Doppler Imager)(英国、デボン(Devon))で血液潅流測定を行った。レーザードップラーによる映像化は、ISFサンプリング標的部位の中心の2cm2 に対して行った。
【0125】
ISFグルコース測定値は、改良したOne Touch(登録商標)Ultra(登録商標)グルコース計及び検査ストリップシステムを用いて行った。約1μlのISF試料を、針で患者の皮膚層の真皮から抽出し、検査ストリップの測定領域に自動的に留置した。改良していないOne Touch(登録商標)Ultra(登録商標)グルコース計及びストリップシステムを用いて、指から全血グルコース値を決定した。
【0126】
各患者についての遅延時間(分)及び潅流測定値を下表1に示した。
【表1】
【0127】
表1のデータから、ISFグルコース遅延が、往復動圧力リングにより平均で21.7分短くなったことが分かる。すなわち、平均30.3分(12.8SD)から平均8.7分(6.6SD)に短縮された。この遅延時間の短縮は、患者の皮膚層に対して圧力を加えたり解放したりして、ISFサンプリング領域における局所血液潅流をコントロールサンプリング領域に対して平均で2.3倍(0.6SD)上昇させて達成した。
【0128】
例3:較正法及びそのISFグルコースセンサの精度に対する影響の評価
様々な較正法及びそれらのシステムに対する影響を評価するために検査を実施した。糖尿病患者で、5.5時間に亘って15分間隔(すなわち測定サイクル)で同時に採取した3種類の試料のグルコースを測定した。この検査の間、75gのブドウ糖液の経口摂取により血糖を上げた。
【0129】
グルコース測定のために採取した3種類の試料は、指の血液試料、コントロールISF試料、及び往復動処理ISF試料である。指の毛細管血液(FCB)とも呼ぶ指血液試料は標準的な指のランス(lancing)で採取した。コントロールISF試料(CISF)は、皮膚層を何も処置しないで患者の腕から採取し、往復動処理ISF試料(TISF)は、皮膚層が往復動圧力リングで処置される患者の他方の腕から採取した。全ての試料採取時間をコンピュータ打刻で記録して、同じ種類のそれぞれのデータ対(すなわち、測定サイクル番号とグルコース濃度)を得ることができる。[G]FCBと短縮するFCBのグルコース濃度は、2つのOne Touch(登録商標)Ultra血中グルコース測定器/検査ストリップ(カリフォルニア州ミルピタス(Milpitas)に所在のライフスキャン(LifeScan))でそれぞれ測定した。記録される値は、それぞれの試料における2つの測定値の平均である。
【0130】
2種類のISF試料の採取方法は異なる。CISFは、それぞれの時間によって背前腕の異なった部位からサンプリングする要領で患者の一方の腕から採取した。圧力リング、細い針、及びグルコース検査ストリップのインターフェイスとなるアダプターを含むサンプリングモジュールを用いる。30ゲージの針を約2mmの深さまで皮膚層に刺入して約1μLのISFを採取した。直径が5.5mmの圧力リングによって約15Nの力を皮膚に加えて、CISFの採取を促進した(平均採取時間は3.0秒)。次いで、このCISFは、改良されたOne Touch(登録商標)Ultraグルコース測定ストリップの測定ゾーンに導入した。ストリップの入口部を、サンプリングモジュールのアダプターとインターフェイスするように物理的に改変し、CISFをストリップの測定ゾーンに直接導入できるようにした。
【0131】
TISFは、CISFに用いたサンプリングモジュールとは若干異なるサンプリングモジュールで採取した。このサンプリングモジュールを患者の背前腕に取り付けた。具体的には、TISFは、CISFの採取に用いられない方の前腕で採取した。CISFの採取とは異なり、TISFはそれぞれの時間で同じ部位から採取した。このサンプリングモジュールは、医療用接着パッチでアームに接着され、約2mmの深さまで皮膚に刺入するようにデザインされた25ゲージの針、及びその針を取り囲む圧力リングを含む。この圧力リングは、TISFを採取するために皮膚に向かって押し出される。サンプリングモジュールは更に、TISFを集積するためのレザバーを含む。この検査では、レザバーとして、針の排出量に一致する320nLが収集される0.5μLガラス毛管(ペンシルバニア州のブルーモール(Broomall)に所在のドラモンド・サイエンティフィック(Drammond Scientific))を用いた。必要な量のISFを採取したら、毛管を取り外して、TISFを異なった種類の改良されたOne Touch(登録商標)Ultraグルコース測定ストリップに移送した。この第2のストリップの改良により、毛管により直接TISFを測定ゾーンに導入することができ、これによりCISFに用いるストリップよりも少量で測定できるようになった。この第2のスリップの改良では、2つの動作電極ではなく唯1つの動作電極を用いて、比較的少量の試料に対応できるように動作/基準電極の面積を小さくした。試料を320nL採取する間、通常は約85秒間、圧力を加えることを理解されたい。必要量を採取したら、針が皮膚内に留まる圧力リングが引き戻された状態にする。15分間の残りの間は、更なる圧力を加えない。
【0132】
表2に、22の測定サイクルで糖尿病患者から採取した3種類の試料についてのデータが示されている。FCB試料の結果は、mg/dL単位のグルコース濃度(すなわち、[G]FCB)として示されている。CISF及びTISFの結果は、ナノアンペアの単位の電流として、それぞれiCISF及びiTISFと短縮されて示されている。データの形式を単純化するために、iCISF及びiTISFを電極面積の差に対して標準化し、これらを直接比較でき、同じ較正の式を利用できるようにした。加えて、iCISF及びiTISFの値は、既に求めた較正の式を用いて一連のグルコース濃度に変換した。CISF及びTISFのグルコース濃度は、mg/dLの単位で示し、[G]CISF及び[G]TISFとそれぞれ短縮した。
【表2】
【0133】
CISF及びTISFのグルコース測定のために、それぞれの改良された測定ストリップをそれぞれ代理ISFで較正して、CISF及びTISFの実際のグルコース濃度を決定できるようにした。代理ISFは、ISFに似るようにした血漿由来の液体である。較正で代理ISFを使用するのは、比較的多量(例えば、約1mL)のISFを採取するのが困難なためである。この較正には、複数の較正液(通常は6つ)を用意しなければならないため比較的多くの量が必要である。代理ISFは、等張食塩水で1:2(500μL+500μL)に希釈した血漿を用いて調製した。好適な量の1M グルコース溶液を代理ISFに加えて、グルコース濃度が2.5mM、5mM、10mM、20mM、及び30mMの6つ較正液を調製した。それぞれの較正液のグルコース濃度について、少なくとも5回測定し、5秒で平均電流値を算出した。一般線形回帰を用いて、電流をグルコース濃度に変換する較正の式に用いるために傾き及び切片を算出した。iCISF及びiTISFが電極面積に対して標準化されているため、同様の較正の式、すなわち式1A:[G]CISF=0.3×iCISF−7.6nA及び式1B:[G]TISF=0.3×iTISF−7.6nAをそれぞれ、[G]CISF及び[G]TISFの計算に用いることができる。
【0134】
このタイプの較正は、大抵は検査ストリップの製造業者によって実施されることに留意されたい。
【0135】
本発明に従ったシステムで半連続的または連続的なグルコースセンサを用いてISF中のグルコースを正確に測定するために異なった種類の較正法について説明する。この種の較正は、大抵は半連続的または連続的なグルコースセンサを用いて実施される。例えば、較正は、One Touch(登録商標)Ultraグルコース測定ストリップなどの1回用のグルコース測定ストリップとFCBでの唯1回のグルコース測定値を用いて実施することができる。このような場合、FCBを用いた[G]CISFの推定([G]CISF,FCBと短縮)を単純な比例で計算することができる。任意の時間間隔として測定サイクル6を用いて、FCBを用いた1点較正を実施した。測定サイクル6は、[G]FCBが時間と共に上昇している状態を表し、遅延の緩和がない場合に較正間隔が問題であることを示しているが、使用者が選択できる可能な時間間隔を表していることを理解されたい。単純な比例を用いて、較正の式を式2として次のように表すことができる。
【数1】
【0136】
式2では、[G]FCB,6は、6回目の測定サイクルでの指の毛細血管血グルコース濃度を表し、iCISF,6は、6回目の測定サイクルでのCISF試料の測定電流を表している。ISF中のグルコース濃度がFCB中のグルコース濃度よりも遅れる傾向にあるため、FCB較正を利用することによって、将来のISFのグルコース濃度を効果的に予測することができる。
【0137】
単純にするために、表2の一部の分析についてのみ、この例及び続く例で説明する。測定サイクル5、12、及び21について更に分析し、それぞれ「上昇」、「安定」、及び「下降」と呼ぶことにする。表3に、上記した測定サイクルについての[G]CISF,FCBと[G]CISFの比較を示す。このデータは、1点FCB較正を用いたISFグルコースセンサ測定CISFと6つの代理ISFの較正液を用いた工場較正との間に比較的大きな絶対誤差があることを示している。
【表3】
【0138】
CISFに加えて、TISFも、1点FCB較正を用いてそのグルコース濃度を分析した。このような場合、FCBを用いたTISFのグルコース濃度の推定([G]TISF,FCBと短縮)のために式3を導出することができる。
【数2】
【0139】
式2と同様に、式3もFCBでの較正のために測定サイクル6を用いた。表4に、3つの測定サイクルについての[G]TISF,FCBと[G]CISFの比較を示す。1点FCB較正を用いたISFグルコースセンサ測定TISFと6つの代理ISF較正液を用いた工場較正との絶対誤差(14mg/dL〜18mg/dL)が表3に示されている全体の絶対誤差(83mg/dL〜175mg/dL)よりも小さい。従って、表3と表4が、将来のISFグルコース濃度の推定のためにFCBを用いてISFグルコースセンサを較正する場合のISFグルコース遅延緩和の有用性を実証している。
【表4】
【0140】
ISFグルコース濃度測定値を用いて、FCBのグルコース濃度を推定することができる。一般に医師は、病状を抑制するための好適な治療を決定する場合の基準としてFCBのグルコース濃度を好むであろう。なぜなら、これが従来の方法だからである。しかしながら、市販されている或いは市販の準備がされている低侵襲性の連続的なグルコースセンサの多くは血液ではなくISFを主に使用する。従って、連続的または半連続的なISFグルコースセンサを用いて毛細管血のグルコース濃度を推定する必要がある。
【0141】
表5に、3つの測定サイクルについての[G]CISF,FCBと[G]FCBの比較を示す。データは、FCBで較正されたCISF測定値を用いてFCBのグルコース濃度を推定する場合に絶対誤差が比較的大きいことを示している。
【表5】
【0142】
表6に、3つの測定サイクルについての[G]CISF,TISFと[G]FCBの比較を示す。[G]CISF,TISFは、TISF試料及びFCB試料を用いて較正したCISF試料のグルコース濃度を表す。以下に示す式4は、[G]CISF,TISFを求める式である。
【数3】
【表6】
【0143】
表5と表6との比較から、ISFセンサをTISF及びFCBで較正する場合に、CISFのグルコース測定値で毛細管血グルコース濃度を良好に推定できることが分かる。TISF試料及びFCB試料を用いた場合、表6の「安定」及び「降下」の測定サイクルでの絶対誤差が表5のFCB試料のみを用いた場合に比べて小さい。表6の「上昇」の測定サイクルでは絶対誤差がより大きい。しかしながら、全体の平均誤差は、遅延緩和を用いる表6のケースの方が小さい(表5の142mg/dLに対して、表6では74mg/dL)。従って、たとえ遅延緩和なしでCISFを採取して検査する場合であっても、ISFセンサをTISF及びFCBの両方で較正すれば、毛細管血グルコース濃度の推定を改善することができる。
【0144】
表7に、3つの測定サイクルについての[G]TISFと[G]FCBの比較を示す。データは、共にFCBを用いて較正したCISF試料(表5の84mg/dL〜185mg/dL)の代わりにTISF試料(表7の0mg/dL〜35mg/dL)を用いたFCBのグルコース濃度の推定で絶対誤差が小さいことを示している。従って、遅延緩和を使用することにより、ISFグルコースセンサを用いて毛細管血グルコース濃度を推定する場合に明らかに精度が高くなる。
【表7】
【0145】
この例3ではISFグルコース測定に使い捨て検査ストリップを用いて説明したが、ここで説明した較正の概念は、あらゆるISFグルコース測定センサ、特に半連続的及び連続的なグルコースセンサに適用することができる。前記した較正方法は、較正の前に遅延緩和を用いることによってCISF、TISF、または毛細管血のグルコース濃度推定の精度を改善することができる。従って、当業者であれば、本開示を読めば、この例3で説明した較正のアルゴリズム(較正の式)を本発明の実施形態に従ったシステムに利用できることを理解できよう。例えば、較正アルゴリズムをサンプリングモジュールまたは分析モジュールに用いて、ISF測定データに基づいて毛細管血のグルコース濃度を計算することができる。
【0146】
例4.圧力リングの往復動によるISFグルコース遅延緩和方法
22人の糖尿病患者(男性12人、女性10人:タイプ1が9人、タイプ2が13人:平均年齢が53.5歳:平均BMI(肥満度指数)が25.4:発症からの平均経過年数が18.0年)が倫理委員会が承認した検査に参加した。この検査では、5時間〜6時間に亘って15分間隔(測定サイクル)で採取した3つの試料からグルコースを測定する。
【0147】
検査の際、75gのブドウ糖液の経口摂取(12人の患者、「75g摂取患者」と呼ぶ)または通常の食事(他の10人の患者、「NEH患者」と呼ぶ)で血糖を上げた。患者は、処方されたインスリン注射または経口投与で摂取を管理した。
【0148】
グルコース測定用の3つの試料は、標準的な指のランス(lancing)で採取した指の毛細管血と、患者のそれぞれ別の腕から採取した2つのISF試料(後述するようにコントロールISF及び試験ISF)である。全ての試料採取時間をコンピュータ打刻で記録して、それぞれの測定間隔におけるそれぞれの試料のデータ対(時間とグルコース)を得ることができる。指毛細管血グルコース濃度は、2つのOne Touch(登録商標)Ultra血中グルコース測定器(カリフォルニア州ミルピタス(Milpitas)に所在のライフスキャン(LifeScan))でそれぞれ測定した。ここで記録されるグルコース値は、それぞれの試料における2つの測定値の平均である。
【0149】
それぞれの腕からのISF試料の採取は異なる方法で行った。コントロールISF用の一方の腕(自由選択)では、それぞれのISF試料は、背前腕のそれぞれ異なる部位から採取した。小径の針を皮膚層に最大2mmまで刺入して約1μLのISFを採取した。直径5.5mmの圧力リングで最大15Nの力を皮膚に加えてISF試料を採取し易くした(平均採取時間は3.0秒、N=553)。次いで、このISF試料を、改良されたOne Touch(登録商標)Ultraグルコース測定ストリップの測定ゾーンに導入した。ストリップは、ISFを直接採取してこのストリップの測定ゾーンに導入できるように、ISFサンプリングシステムのアダプターとインターフェイスするように改良したものである。
【0150】
試験ISF用の他方の腕では、一般的な連続的ISF採取装置を背前腕に取り付けた。この装置は、医療用接着パッチで接着され、皮膚に約2mmの深さまで刺入する小径の針と、その針を取り囲む圧力リングからなる。この圧力リングは、TISFを採取するために皮膚に向かって押し出される。この検査では、針の排出量に等しい320nLのISF試料を0.5μLガラス毛管(ペンシルバニア州のブルーモール(Broomall)に所在のドラモンド・サイエンティフィック(Drammond Scientific))に採取した。
【0151】
必要量のISFを採取したら、毛管を取り外して、このISFを改良されたOne Touch(登録商標)Ultraグルコース測定ストリップに導入した。この第2のストリップの改良により、毛管からISF試料を直接測定ゾーンに導入することができ、これにより通常のストリップよりも少量でも測定することができる。両方のISFグルコース測定のために、コントロールISF試料及び試験ISF試料の両方のISFグルコースを直接決定できるように、改良された測定ストリップを代理ISFでそれぞれ較正した。
【0152】
試験ISF試料を採取する際、320nLの試料の採取の間だけ圧力を加えた(平均採取時間は85秒、N=530)。必要量の試料を採取したら、針の周りのリングへの加圧は止めるが、針は皮膚に刺したままである。それぞれの15分サイクル間隔の残りの時間は圧力を加えなかった。
【0153】
時間ベースでのISFグルコース値と血中グルコース値の比較のために、それぞれの試料を体から採取する時間をそのグルコース値に一致させるのが望ましい。つまり、試験ISF試料の場合は、前の採取サイクルのため、サイクル中に実際に採取される320nLのISF試料が針の中に留まる(デッドボリューム320nL)ことから時間軸を1サイクルずらして調節した。このようにして、生理学的な遅延の正確な測定を、同じ相対時間で採取した指血液試料に対して実施することができる。
【0154】
図15に、1人の患者についての例示的な経時変化プロットが示されている。これは、時間に対してプロットされた3つの試料のグルコース測定値の結果を示している。試験ISFの時間軸を1サイクルずらしたため、時間軸は、3つの試料が体から採取された時間を正確に表している。試験ISFの場合に時間軸を1サイクルずらすのは、その試料が体から採取されてもカニューレの320nLの孔に留まり、次の時点の測定まで毛管に押し出されるのを待っているためである。従って、このプロットはISF試料と血液試料との間の生理学的なグルコース遅延を正確に反映している。
【0155】
22人の患者から収集した全てのデータの比較が図16A及び図16Bに示され、クラーク・エラー・グリッド(Clarke Error Grid)に重ね合わされた方法比較プロットを示している。表8に、クラーク・エラー・グリッド統計、回帰統計(傾き、切片、相関係数R)、血液値とISF値との標準誤差(Sy.x)、平均偏り(%)、及び基準指血液グルコース値とISFグルコース値との間の平均絶対誤差(%)(MPAE)を示す。
【表8】
【0156】
試験ISF測定値における有意な系統的な偏りが存在し得ることに留意されたい。図17に、両方のISF測定値について基準指血液値に対するISF測定値の偏りのプロットを示す。このプロットは、検査中の試料採取時間に対するものであって、0時間は各検査の開始である。このプロットは、12人の75g摂取患者のデータを示す。なぜなら、75g摂取患者の方が、NEH患者よりも血糖の範囲及び傾きが大きく、プロットを例示するのに適しているためである。コントロールISF測定値のほぼ正弦波の偏りパターンは、経時変化プロットを映している。すなわち、血中グルコース上昇中は負に偏り、血中グルコースが下降する検査の最後に向かって概ね正の偏りに変わっている。しかしながら、試験ISFは、検査時間に対して概ね平坦な偏り応答であって、平均偏りは10.7%である(全ての患者を含む全体で10.0%、表8を参照)。この平坦な偏り応答は、全ての試験ISF値から10%を減じて容易に補正できる単純な較正オフセットの可能性を示している。
【0157】
図18は、この偏り補正を実施した基準指血液グルコースに対する試験ISFグルコースの回帰プロットである。表9は、この平均中心化偏り補正(mean centering bias correction)を試験ISF測定値(表8から10%偏り補正)及びコントロールISF測定値(表8から4.9%偏り補正)の両方に対して実施した場合のクラーク・エラー・グリッド、回帰、及び誤差統計を示す。このコントロールISFの偏り補正は全体の精度に殆ど影響を与えない。しかしながら、この偏り補正を行うと試験ISFの全体の精度が有意に改善される。つまり、試験ISF測定値の誤差の大部分が、より厳密な更正法によって解決できる単純な較正誤差である可能性が高い。
【表9】
【0158】
コントロールISF測定値が殆ど影響を受けないことは(表8と表9のコントロールISFの結果の比較から分かる)、あらゆる較正誤差がこれらの測定値の誤差の小さな部分であることを示唆している。この結果は、ISFサンプリング領域に対して圧力リングの遅い往復動などの処置を実施した場合に、指血液グルコース測定値に対するISFグルコース測定値が改善される可能性を示している。
【0159】
直接採取したコントロールISF試料の遅延と比べた場合に連続的ISF抽出装置によって達成された遅延緩和の量を決定して、それぞれのISF試料と基準指血液試料の間の平均グルコース遅延時間をそれぞれの患者について計算した。ISFグルコースと血液グルコースとの間の遅延は、ISF測定値の時間軸を血液測定値の時間軸に対してスライドさせて、これらの測定値間の最小誤差を見つけて求めた。最小誤差にするために時間軸をスライドさせた距離(時間)が、特定の患者の得られた平均遅延である。この方法は、57人の糖尿病患者に対する25分の平均コントロールISF遅延時間を求めるために既に用いた。この方法を、複合データセットの計算用から個人の患者の計算用に変更した。例えば、図19A及び図19Bはそれぞれ、時間に対する誤差のプロットを示す。このプロットを用いて、この検査の1人の患者の平均コントロールISF遅延時間及び平均試験ISF遅延時間を決定する。
【0160】
表10は、各患者の指血液グルコースに対する2つのISF試料のそれぞれの平均遅延時間の要約を示す。患者22人のうち15人だけをここに示した。他の7人の患者(75g摂取群の1人とNEH患者の6人)は、計算に利用できるデータが不十分であった、または有意な遅延決定に必要な十分な血糖範囲の変化を示さなかった。表10に示すように、それぞれの患者において、遅延時間がコントロールISF試料に比べて試験ISF試料で著しく減少している。平均すると、遅延が35.8分も短縮され、平均遅延が38.3分から2.5分に短縮され、生理学的遅延が95%短縮された。
【表10】
【0161】
興味深いことに、ISFグルコースと血液グルコースとの自然の偏りが、ここに記載した検査に適用した往復動圧力リングなど血液の潅流を増大させる方法によって著しく減少したことが明らかである。従って、往復動圧力リングをこの検査に適用してISFサンプリング部位周囲の血液の潅流を増大させて、生理学的遅延(すなわちISFグルコース遅延)を著しく緩和できるという仮説を立てることができる。
【0162】
本発明の好適な実施形態を図面を用いて説明してきたが、当業者であれば、このような実施形態が例示目的であることを理解できよう。当業者は、本発明から逸脱することなく様々な変更形態、変形形態、及び置換形態に想到するであろう。
【0163】
使用者の間質液(ISF)中の分析物を監視するためのシステムであって、使用者の間質液中の分析物を測定するための分析モジュールを含むカートリッジと、そのカートリッジに電子的に接続されたローカル制御モジュールとを含み、このローカル制御モジュールが、分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されており、この分析モジュールが、使用者の標的部位に少なくとも部分的に埋め込むように構成された分析センサを含み、この分析モジュールが、標的部位の近傍の体に圧力を加えるように適合された少なくとも1つの圧力リングを含み、この分析モジュールが、圧力リングが往復動方式で圧力を加えてISFグルコース遅延を緩和できるように構成されている。このシステムの分析モジュールは、ISFグルコース遅延を更に緩和するために遅延緩和化学物質を利用することもできる。この分析モジュールは、ISFグルコース遅延を更に緩和するために超音波を利用することもできる。この分析モジュールは、ISFグルコース遅延を更に緩和するために熱を利用することもできる。この分析モジュールは、ISFグルコース遅延を更に緩和するために真空を利用することもできる。この分析モジュールは、ISFグルコース遅延を更に緩和するために電位を利用することもできる。この分析モジュールは、ISFグルコース遅延を更に緩和するために非往復動方式の体の機械的処置を利用することもできる。
【0164】
体液試料を抽出してその試料中のグルコースを監視するためのシステムであって、体から体液試料を抽出するためのサンプリングモジュール及びその体液試料中のグルコースを測定するための分析モジュールを有する使い捨てカートリッジと、その使い捨てカートリッジに電子的に接続されたローカル制御モジュールとを含み、このローカル制御モジュールが、分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されており、これら分析モジュール及びローカル制御モジュールの少なくとも一方が、毛細管血の測定グルコース濃度と分析モジュールからの測定データに依存する較正アルゴリズムを利用する。この段落のこのシステムでは、体液試料はISF試料であり、分析モジュールからの測定データはISFグルコース遅延緩和で得られる。このシステムのサンプリングモジュールは、少なくとも1つの圧力リングを含む。このサンプリングモジュールはまた、圧力リングが往復動方式で圧力を加えてISFグルコース遅延を緩和できるように構成されている。このサンプリングモジュールはまた、刺入部材と、往復動方式で圧力を加えてISFグルコース遅延を緩和できる少なくとも1つの圧力リングとを含む。
【0165】
使用者の体液中の分析物を監視するためのシステムであって、体液試料中の分析物を測定するための分析モジュールを有する使い捨てカートリッジと、その使い捨てカートリッジに電子的に接続されたローカル制御モジュールとを含み、このローカル制御モジュールが、分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されており、これら分析モジュール及びローカル制御モジュールの少なくとも一方が、毛細管血の測定グルコース濃度と分析モジュールからの測定データに依存する較正アルゴリズムを利用する。この段落のこのシステムでは、体液試料はISF試料であり、分析モジュールからの測定データはISFグルコース遅延緩和で得られる。このシステムのサンプリングモジュールは、少なくとも1つの圧力リングを含む。このシステムのサンプリングモジュールはまた、圧力リングが往復動方式で圧力を加えてISFグルコース遅延を緩和できるように構成されている。このシステムのサンプリングモジュールはまた、刺入部材と、往復動方式で圧力を加えてISFグルコース遅延をできる少なくとも1つの圧力リングとを含む。
【0166】
体液試料を抽出してその試料中の分析物を監視するためのシステムであって、体から体液試料を抽出するためのサンプリングモジュール及びその体液試料中の分析物を測定するための分析モジュールを有する使い捨てカートリッジと、その使い捨てカートリッジに電子的に接続されたローカル制御モジュールとを含み、このローカル制御モジュールが、分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されており、このサンプリングモジュールが、微小透析を用いた試料抽出法を利用する。この段落のこのシステムのサンプリングモジュールは、間質液(ISF)試料を抽出してそのISF試料中のグルコースを測定するように構成され、ISFグルコース遅延を緩和するための手段を含む。このシステムのISFグルコース遅延を緩和するための手段は、遅延緩和化学物質を利用することができる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために超音波を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために熱を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために真空を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために電位を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために体の機械的処置を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために化学物質、超音波、熱、真空、電位、及び体の機械的な処置の少なくとも2つを組み合わせることもできる。
【0167】
体液試料を抽出してその試料中の分析物を監視するためのシステムであって、体から体液試料を抽出するためのサンプリングモジュール及びその体液試料中の分析物を測定するための分析モジュールを有する使い捨てカートリッジと、その使い捨てカートリッジに電子的に接続されたローカル制御モジュールとを含み、このローカル制御モジュールが、分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されており、このサンプリングモジュールが、限外濾過を用いた試料抽出法を利用する。この段落のこのシステムのサンプリングモジュールは、間質液(ISF)試料を抽出してそのISF試料中のグルコースを測定するように構成され、ISFグルコース遅延を緩和するための手段を含む。このシステムのISFグルコース遅延を緩和するための手段は、ISFグルコース遅延緩和化学物質を利用することができる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために超音波を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために熱を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために真空を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために電位を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために体の機械的処置を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために化学物質、超音波、熱、真空、電位、及び体の機械的処置の少なくとも2つを組み合わせることもできる。
【0168】
体液試料を抽出してその試料中の分析物を監視するためのシステムであって、体から体液試料を抽出するためのサンプリングモジュール及びその体液試料中の分析物を測定するための分析モジュールを有する使い捨てカートリッジと、その使い捨てカートリッジに電子的に接続されたローカル制御モジュールとを含み、このローカル制御モジュールが、分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されており、このサンプリングモジュールが、レーザーを用いた試料抽出法を利用する。この段落のこのシステムのサンプリングモジュールは、間質液(ISF)試料を抽出してそのISF試料中のグルコースを測定するように構成され、ISFグルコース遅延を緩和するための手段を含む。このシステムのISFグルコース遅延を緩和するための手段は、遅延緩和化学物質を利用することができる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために超音波を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために熱を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために真空を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために電位を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために体の機械的処置を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために化学物質、超音波、熱、真空、電位、及び体の機械的処置の少なくとも2つを組み合わせることもできる。
【0169】
体液試料を抽出してその試料中の分析物を監視するためのシステムであって、体から体液試料を抽出するためのサンプリングモジュール及びその体液試料中の分析物を測定するための分析モジュールを有する使い捨てカートリッジと、その使い捨てカートリッジに電子的に接続されたローカル制御モジュールとを含み、このローカル制御モジュールが、分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されており、このサンプリングモジュールが、逆イオン導入を用いた試料抽出法を利用する。この段落のこのシステムのサンプリングモジュールは、間質液(ISF)試料を抽出してそのISF試料中のグルコースを測定するように構成され、ISFグルコース遅延を緩和するための手段を含む。このシステムのISFグルコース遅延を緩和するための手段は、遅延緩和化学物質を利用することができる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために超音波を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために熱を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために真空を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために電位を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために体の機械的処置を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために化学物質、超音波、熱、真空、電位、及び体の機械的処置の少なくとも2つを組み合わせることもできる。
【0170】
体液試料を抽出してその試料中の分析物を監視するためのシステムであって、体から体液試料を抽出するためのサンプリングモジュール及びその体液試料中の分析物を測定するための分析モジュールを有する使い捨てカートリッジと、その使い捨てカートリッジに電子的に接続されたローカル制御モジュールとを含み、このローカル制御モジュールが、分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されており、このサンプリングモジュールが、電気穿孔を用いた試料抽出法を利用する。この段落のこのシステムのサンプリングモジュールは、間質液(ISF)試料を抽出してそのISF試料中のグルコースを測定するように構成され、ISFグルコース遅延を緩和するための手段を含む。このシステムのISFグルコース遅延を緩和するための手段は、遅延緩和化学物質を利用することができる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために超音波を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために熱を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために真空を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために電位を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために体の機械的処置を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために化学物質、超音波、熱、真空、電位、及び体の機械的処置の少なくとも2つを組み合わせることもできる。
【0171】
体液試料を抽出してその試料中の分析物を監視するためのシステムであって、体から体液試料を抽出するためのサンプリングモジュール及びその体液試料中の分析物を測定するための分析モジュールを有する使い捨てカートリッジと、その使い捨てカートリッジに電子的に接続されたローカル制御モジュールとを含み、このローカル制御モジュールが、分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されており、このサンプリングモジュールが、超音波を用いた試料抽出法を利用する。この段落のこのシステムのサンプリングモジュールは、間質液(ISF)試料を抽出してそのISF試料中のグルコースを測定するように構成され、ISFグルコース遅延を緩和するための手段を含む。このシステムのISFグルコース遅延を緩和するための手段は、遅延緩和化学物質を利用することができる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために超音波を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために熱を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために真空を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために電位を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために体の機械的処置を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために化学物質、超音波、熱、真空、電位、及び体の機械的処置の少なくとも2つを組み合わせることもできる。
【0172】
使用者の体液中の分析物を監視するためのシステムであって、体液試料中の分析物を測定するための分析モジュールを有する使い捨てカートリッジと、その使い捨てカートリッジに電子的に接続されたローカル制御モジュールとを含み、このローカル制御モジュールが、分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されており、この分析モジュールが、使用者に少なくとも部分的に埋め込むように構成された分析センサを含む。この段落のこのシステムの分析センサは、ISFグルコース分析センサであり、分析モジュールは更にグルコース遅延を緩和するための手段を含む。このシステムのISFグルコース遅延を緩和するための手段は、分析センサが使用者に少なくとも部分的に埋め込まれた状態で、その使用者に圧力を加えるように適合された少なくとも1つの圧力リングを含む。
【0173】
ここに記載した本発明の実施形態の様々な代替形態を用いて本発明を実施できることを理解されたい。添付の特許請求の範囲が本発明を規定するものであり、これらの請求項及び相当物の範囲に含まれる方法及び構造も本発明に包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】本発明の例示的な実施形態に従った、体液試料を抽出しその抽出物中の分析物を監視するシステムの簡易ブロック図である。
【図2】使用者の皮膚層に配置された本発明の実施形態に従ったISFサンプリングモジュールの簡易模式図であって、一点鎖線の矢印が機械的な相互作用を示し、実線の曲がった矢印がISFの流れを示し、要素28の実線の矢印が圧力を示している。
【図3】本発明の例示的な実施形態に従った分析モジュール及びローカル制御モジュールの簡易ブロック図である。
【図4】本発明の例示的な実施形態に従った分析モジュール、ローカル制御モジュール、及びリモート制御モジュールの簡易ブロック図である。
【図5】本発明の例示的な実施形態に従ったリモート制御モジュールの簡易ブロック図である。
【図6】本発明の例示的な実施形態に従った使い捨てカートリッジ及びローカル制御モジュールの上からの斜視図である。
【図7】図6の使い捨てカートリッジ及びローカル制御モジュールの底面からの斜視図である。
【図8】使い捨てカートリッジ及びローカル制御モジュールが使用者の腕に取り付けられた、本発明の別の例示的な実施形態に従ったシステムの斜視図である。
【図9】本発明の例示的な実施形態に従った抽出装置の簡易側断面図である。
【図10】本発明の別の例示的な実施形態に従った抽出装置の一部の斜視図である。
【図11】図10の抽出装置の簡易側断面図である。
【図12】図9の抽出装置を用いて実施した試験の潅流を時間の関数として示すグラフである。
【図13】本発明の例示的な一実施形態に従ったプロセスの一連のステップを例示するフローチャートである。
【図14】本発明の更なる実施形態に従った抽出装置の一部の簡易側断面図である。
【図15】指の毛細管血、コントロールISF試料、及び試験ISF試料から決定したグルコースプロフィールを示す、時間に対するグルコース濃度の経時変化プロットである。
【図16A】指の毛細管血グルコースに対するコントロールISFグルコースに対してクラーク・エラー・グリッド(Clarke Error Grid)に重ねられた回帰を示す図である。
【図16B】指の毛細管血グルコースに対する試験ISFグルコースに対してクラーク・エラー・グリッドに重ねられた回帰を示す図である。
【図17】試験ISFグルコース測定値とコントロールISFグルコース測定値の両方についての相対的時間に対する偏り(%)のプロットである。
【図18】指の毛細管血グルコースに対する偏りが補正された試験ISFグルコースに対してクラーク・エラー・グリッドに重ねられた回帰を示す図である。
【図19A】コントロールISFの遅延に対するRMS(%)(CV)として誤差を示す図である。
【図19B】試験ISFの遅延に対するRMS(%)(CV)として誤差を示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は医療装置及びその使用方法に関し、詳細には、体液を抽出し、その抽出物中の分析物を監視するための装置、システム、及び方法に関する。
【0002】
関連分野の説明
近年、体液(例えば、血液や間質液)中の分析物(例えば、グルコース)を監視するための医療装置では、使用者の不快感及び/または苦痛が低減され、監視方法が単純化された装置及び方法の開発、並びに連続的または半連続的な監視を可能にする装置及び方法の開発に力が注がれてきた。監視方法を単純化すれば、医療専門家の助けを借りなくても家庭や他の場所で、使用者が分析物を自己監視することができる。使用者の不快感及び/または苦痛の低減により、使用者が頻繁かつ定期的に使用し易くなるため、この低減は家庭用にデザインされた装置及び方法で特に重要である。血中グルコース監視装置及びその方法における苦痛が殆どなければ、使用者は、苦痛がある場合よりも血中グルコースレベルの監視を頻繁かつ定期的に行うようになるであろう。
【0003】
血中グルコース監視では、連続的または半連続的な監視装置及び方法が、血中グルコース濃度の傾向、血中グルコース濃度に対する食物及び薬物の影響、及び使用者の全体的な血糖管理をよく観察できるという点で有利である。しかしながら、実際には、連続的または半連続的な監視装置には欠点がある。例えば、標的部位(例えば、使用者の皮膚層の標的部位)からの間質液(ISF)試料の抽出中にISFの流速が時間経過により低下し得る。更に、数時間の連続的なISF抽出の後、使用者の苦痛及び/または不快感が著しく増大し、標的部位に斑点が長い間残る。
【0004】
従って、使用方法が簡単で、使用者の不快感及び/または苦痛が殆どなく、過度に使用者の苦痛を増大させたり持続的な斑点を生じさせないで連続的または半連続的な監視を容易にする体液(例えば、ISF)中の分析物(例えば、グルコース)を監視するための装置及びその方法が当分野で要望されている。
【0005】
発明の要約
本発明の実施形態に従った、体液試料を抽出してその試料中の分析物を監視するためのシステムは、使用が簡単で、使用者に与える苦痛及び/または不快感が比較的少なく、使用者の苦痛や持続的な斑点を過度に増大させないで連続的及び半連続的に容易に監視できる。加えて、本発明に従ったISF抽出装置もまた、使用者に与える苦痛及び/または不快感が比較的少なく、使用者の苦痛や持続的な斑点を過度に増大させないで連続的及び半連続的に容易に監視できる。更に、本発明に従った方法は、使用者の苦痛や持続的な斑点を過度に増大させないで連続的及び半連続的に容易に監視できる。
【0006】
本発明の例示的な実施形態に従った、体液試料を抽出してその試料中の分析物を監視するためのシステムは、使い捨てカートリッジ及びローカル制御モジュールを含む。使い捨てカートリッジは、体から体液試料(例えば、ISF試料)を抽出できるように適合されたサンプリングモジュール、及びその体液試料中の分析物(例えば、グルコース)を測定するように適合されたサンプリングモジュールを含む。加えて、ローカル制御モジュールは、使い捨てカートリッジに電気的に接続されており、分析モジュールから測定データ(例えば、電流信号)を受け取って保存するように適合されている。
【0007】
本発明の実施形態に従ったシステムのサンプリングモジュールは、使用者の皮膚層の標的部位に刺入でき、刺入後にその皮膚層に留まってISF試料をその皮膚層から抽出できるように構成された刺入部材を含むこともできる。別法では、サンプリングモジュールが、微小透析、限外濾過、レーザー、逆イオン導入、電気穿孔、及び/または超音波技術を利用して、使用者の標的部位から試料(例えば、ISF試料)を抽出することができる。
【0008】
サンプリングモジュールはまた、刺入部材が使用者の皮膚層に留置された状態で、使用者の標的部位の近傍に圧力を加えることができるように適合された少なくとも1つの圧力リングを含む。加えて、所望に応じて、圧力リングが往復動方式で使用者の皮膚層に圧力を加えて、刺入部材によって抽出されるISF試料のISFグルコース遅延を緩和できるように、サンプリングモジュールを構成することができる。
【0009】
往復動方式で圧力を加えることができる圧力リングに加えて或いは別法として、他のISFグルコース遅延を緩和する方法を本発明の実施形態に利用することができる。このようなISFグルコース遅延緩和法には、遅延を緩和させる化学物質の使用、または熱、超音波、非往復動の機械的処置、真空、電位、及びこれらの組合せを用いたISFグルコース遅延の緩和が含まれる。
【0010】
本発明に従った使い捨てカートリッジレンダーシステムの使い捨ては使用が簡単である。加えて、圧力リングが本発明に従った往復動方式で動作する場合、連続的及び半連続的な監視が容易になると同時に、使用者の苦痛及び持続的な斑点の生成が抑制される。
【0011】
本発明の一実施形態に従った使用者のISF中の分析物(グルコースなど)を監視するシステムは、カートリッジと、そのカートリッジに電子的に接続されたローカル制御モジュールを含む。このカートリッジは、分析物を測定するための分析モジュールを含み、ローカル制御モジュールは、分析モジュールからの測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されている。加えて、分析モジュールは、使用者の標的部位に少なくとも部分的に埋め込むように構成された分析センサ(例えば、グルコースセンサ)と、その標的部位の近傍に圧力を加えるように適合された少なくとも1つの圧力リングを含む。更に、分析モジュールは、圧力リングが往復動方式で圧力を加えてISFグルコース遅延を緩和するように構成されている。
【0012】
本発明の一実施形態に従った間質液(ISF)抽出装置は、使用者の皮膚層の標的部位に刺入でき、刺入後にその皮膚層に留まってその皮膚層からISF試料を抽出できるように構成された刺入部材(例えば、壁部が薄い孔がある針)を含む。ISF抽出装置はまた、刺入部材が使用者の皮膚層に留置された状態で、使用者の皮膚層の標的部位近傍に圧力を加えることができるように適合された少なくとも1つの圧力リング(例えば、同心円上に配置された3つの圧力リング)を含む。ISF抽出装置は、圧力リングが往復動方式で圧力を加えることができるように構成されており、これにより、刺入部材によって抽出されるISF試料のISFグルコース遅延が緩和される。
【0013】
本発明の実施形態に従ったISF抽出装置は、その刺入部材がISF試料の抽出中に使用者の皮膚層に留まることができるため使用が簡単である。加えて、ISF抽出装置は、往復動方式で圧力を加えることができるように構成されているため、連続的及び半連続的な監視が容易になると共に、使用者の苦痛及び持続的な斑点の生成が抑制される。圧力リングによる往復動方式での圧力の適用はまた、標的部位近傍への血液の流れを促進し、ISFグルコース遅延を緩和する。
【0014】
本発明の一実施形態に従った間質液(ISF)を抽出するための方法は、刺入部材及び少なくとも1つの圧力リングを備えたISF抽出装置を用意するステップを含む。次いで、圧力リングを使用者の皮膚層に接触させ、刺入部材を刺入する。次いで、圧力リングを用いて使用者の皮膚層に往復動方式で圧力を加えながら、刺入部材で使用者の皮膚層からISF試料を抽出する。圧力を加えるこの往復動方式により、刺入部材で抽出されるISF試料のISFグルコース遅延が緩和され、かつ/または長期に亘った(例えば、1時間〜24時間の範囲)ISF試料の連続的または半連続的な抽出が容易になる。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明の原理に従った例示的な実施形態を添付の図面を用いて説明する以下の詳細な記載から、本発明の特徴及び利点をより良く理解できるであろう。
【0016】
図1を参照すると、本発明の例示的な実施形態に従った、体液試料(例えば、ISF試料)を抽出してその中の分析物(例えば、グルコース)を監視するためのシステム10が例示されている。このシステム10は、使い捨てカートリッジ12(破線で示されている部分)、ローカル制御モジュール14、及びリモート制御モジュール16を含む。
【0017】
システム10において、使い捨てカートリッジ12は、体(B、例えば、使用者の皮膚層)から体液試料(すなわちISF試料)を抽出するためのサンプリングモジュール18と、その体液中の分析物(すなわちグルコース)を測定するための分析モジュール20を含む。サンプリングモジュール18及び分析モジュール20は、当分野で周知のあらゆる好適なサンプリングモジュール及び分析モジュールとすることができる。しかしながら、本発明に従ったシステムの実施形態が、別法として使い捨てではないカートリッジ(「使い捨てカートリッジ」に対して単に「カートリッジ」と呼ぶ)を利用できることにも留意されたい。
【0018】
サンプリングモジュール18は、限定するものではないが、後述する刺入部材(例えば、針)、微小透析法、限外濾過法、レーザー法、逆イオン導入法、電気穿孔法、超音波法、及びこれらの組合せを含む任意の好適な方法で体液試料を抽出することができる。
【0019】
本発明の実施形態のサンプリングモジュール(サンプリングモジュール18を含む)に使用できる体液試料(例えば、ISF)を抽出する方法として、微小透析法及び限外濾過法がある。微小透析法及び限外濾過法は、例えば、第1の端部、第2の端部、及び孔を有するチューブ状の半透過性の膜を用いることができる。この孔により、低分子量化合物(例えば、グルコース)が拡散する或いは他の方法で半透過性の膜を通過できる。しかしながら、この孔は、高分子量化合物(例えば、タンパク質)が半透過性膜を拡散または通過するのを防止するために所定の大きさ及び/またはジオメトリを有する。
【0020】
好適な半透過性膜の材料として、限定するものではないが、ポリアクリロニトリル、キュプロファン(cuprophan)、再生セルロース、ポリカーボネート、及びポリスルホンを挙げることができる。使用の際、チューブ状半透過性膜は、例えば使用者の皮下層に埋め込まれる。
【0021】
微小透析法では、チューブの内部に潅流液が流れるように潅流液が第1の端部から注入され、半透過性の膜を透過した様々な低分子量化合物(グルコースなど)が潅流液に混ざる。次いで、潅流液は第2の端部に流れる。この潅流液及び様々な低分子量化合物を分析モジュール20に移送して分析することができる。
【0022】
限外濾過法では、第1の端部及び第2の端部の両方に比較的低い圧力(負圧)をかけて、体液(例えば、ISF)を半透過性の膜を通して濾過し、チューブの第1の端部及び第2の端部に向かって流すことができる。得られた限外濾液(例えば、ISF限外濾液)を分析モジュール20に移送して分析することができる。
【0023】
所望に応じて、チューブ状の半透過性の膜をカテーテルまたはカニューレと一体にして挿入及び操作を容易にすることができる。微小透析法及び限外濾過法についての更なる詳細は、言及することを以って本明細書の一部とする米国特許第5,002,054号、同第5,706,806号、及び同第5,174,291号に開示されている。
【0024】
サンプリングモジュール18に用いることができるISFを抽出する別の方法としてレーザーがある。レーザーを使用することによって、大きな苦痛を伴うことなく皮膚組織に小さな孔または局所侵食を形成できることを含め、様々な利点が得られる。例えば、小さく集束されたレーザーを用いて、使用者の皮膚層をアブレーションしてその皮膚層に微小孔を形成し、ISFを流出させることができる。アブレーションの深さをレーザーで正確に制御することができるため、理論上は、ISFの抽出過程は無痛で、ISFが有意に血液を含まない。アブレーションの効率が上がるように、レーザーの出力レベル、波長範囲、光学特性、及びパルス周波数を調整することができる。ISF採取におけるレーザーの使用についての詳細は、言及することを以って本明細書の一部とする米国特許第5,165,418号及び国際公開第97/07734号に開示されている。
【0025】
逆イオン導入法を用いて、イオン導入されたISF試料をサンプリングモジュール18によって抽出することができる。この方法は、加えられた電位または電流によって使用者の皮膚層を通るISF及びグルコースの移動に依存する。イオン導入法では、例えば、互いに離間して使用者の皮膚層に取り付けられる一対のイオン導入電極(ヒドロゲルでコーティングされている)が用いられる。例えば約0.01mA/cm2〜0.5mA/cm2の電流密度が2つの電極間に加えられる。通常は、加えられる電流の極性は、使用者の皮膚層を通るイオン導入されたISF試料の流動を増大させるために約10分毎に切り替えられる。電流が加えられることにより、電気浸透力のため使用者の皮膚層からイオン導入されたISF試料が流出する。イオン導入電極の近傍に、イオン導入されたISF試料を収集するためのレザバーが設けられ、これにより続いて分析モジュール20でこのISF試料を分析できる。逆イオン導入法の使用についての詳細は、言及することを以って本明細書の一部とする米国特許第6,233,471号及び同第6,272,364号に開示されている。
【0026】
サンプリングモジュール18に用いることができるISFを抽出する更に別の方法として電気穿孔法がある。電気穿孔法では、まず、使用者の皮膚層の所定深さまで少なくとも1つの微小孔を形成する。少なくとも1つの微小孔の形成には、レーザーや加熱ワイヤを用いることができる。次いで、微小孔に電機的に接続された電極と離間した電極との間に電圧を加える。
【0027】
微小孔が形成された使用者の皮膚層に電圧を加えることにより、毛細管などの皮下の組織構造に対して電気穿孔を行い、生体液の抽出を著しく改善することができる。電気穿孔によって抽出したISF試料を分析モジュール20で分析できるようにISF試料を収集及び移送する手段を設けることができる。電気穿孔法についての更なる詳細は、言及することを以って本明細書の一部とする米国特許第6,022,316号に開示されている。
【0028】
サンプリングモジュール18に用いることができるISFを抽出する更に別の方法として超音波がある。この方法では、使用者の皮膚層の小さな領域に超音波ビームを集束させる。超音波が当たる部位内の痛み受容器の数は、超音波衝当部位の面積を小さくするほど減少する。従って、極めて小さな領域に超音波を当てれば苦痛が少ないため、苦痛や不快感を殆ど与えることなく超音波及び/またはその局所効果を強く適用することができる。局所的に大きな力を加えて、空洞化、皮膚の機械的な振動、及び皮膚表面付近に大きな局所的な剪断力を得ることができる。超音波プローブは、超音波によって生成される大きな対流と呼ばれるアコースティックストリーミングを生成することができる。これにより、ISFの抽出速度が促進される。超音波についての更なる詳細は、言及することを以って本明細書の一部とする米国特許第6,234,990号に開示されている。
【0029】
しかしながら、図2に示されているように、システム10のサンプリングモジュール18は、体Bの標的部位(TS)に刺入してISF試料を抽出する刺入部材22、発射機構24、及び少なくとも1つの圧力リング28を含む。ISFサンプリングモジュール18は、ISF試料中の分析物(グルコースなど)の監視(例えば、濃度測定)のために、ISFを連続的または半連続的に分析モジュール20に供給するように適合されている。
【0030】
システム10を使用する場合、発射機構24の動作により刺入部材22を標的部位に挿入する(すなわち、標的部位に刺入する)。使用者の皮膚層からISF試料を抽出するために、刺入部材22を、例えば、1.5mm〜3mmの範囲で最大挿入深さまで挿入することができる。加えて、刺入部材22は、連続的または半連続的な方式でISF試料の抽出を最適化するように構成することができる。これに関連して、刺入部材22は、例えば、曲げ先端を備えた壁部が薄いステンレス鋼針(図1及び図2には図示せず)である25G注射針を含むことができる。この先端部の曲げの支点は、針の先端部と針のヒール部との間に位置する。本発明に従った刺入部材に好適な針の例が、米国特許出願公開第2003/0060784 A1パンフレット(出願番号10/185,605)に開示されている。
【0031】
発射機構24は、刺入部材22を取り囲むハブ(図1及び図2には図示せず)を含むこともできる。このようなハブは、標的部位への刺入部材22の挿入深さを制御するように構成されている。挿入深さの制御は、使用者の皮膚層の比較的深い部位にある毛細血管への意図しなかった刺入を防止し、これにより抽出したISF試料の汚染、刺入部材の目詰まり、血液による分析モジュールの目詰まりを排除することができ、ISF試料の抽出の際に有用である。挿入深さの制御はまた、システム10の使用中の患者の苦痛及び/または不快感を最小化するのに役立つ。
【0032】
挿入深さを制御するのに加えて、このようなハブは、刺入部材を発射した後に圧力リングに固定して(一体にする)、圧力リングの付属物として機能させることができる。別法では、ハブ自体を、刺入深さ制御手段及び刺入部材発射後の圧力リングの両方として機能するように構成することができる。
【0033】
図2には発射機構24がサンプリングモジュール18内に含まれているが、発射機構24は、システム10の使い捨てカートリッジ12またはローカル制御モジュール14に含めることもできる。更に、使用者によるシステム10の配置を容易にするために、サンプリングモジュール18は、分析モジュール20の一体部分として形成することができる。
【0034】
標的部位から体液(例えば、ISF)を抽出するのを容易にするために、刺入部材22を少なくとも1つの圧力リング28内に同心円上に配置することができる。圧力リング28は、限定するものではないが環状を含め、あらゆる好適な形状とすることができる。加えて、圧力リング28は、刺入部材が使用者の皮膚層に留まった状態で、標的部位近傍に往復運動する機械的な力(例えば、圧力)を加えることができるように構成することができる。このような往復運動は、ばねや保持ブロックなどの付勢要素(図1及び図2には図示せず)を用いて達成することができる。本発明に従ったサンプリングモジュール(及びISF抽出装置)における圧力リングの構造及び機能については、図9〜図12を用いて後に詳述する。
【0035】
システム10を使用する場合、刺入部材22を標的部位に刺入する前に、圧力リング28を標的部位TSの近傍に配置して使用者の皮膚層が張るようにする。このように皮膚層を張ることにより、使用者の皮膚層が安定し、刺入部材を刺入する際の皮膚層の弛みを防止できる。別法では、刺入部材を刺入する前の使用者の皮膚層の安定化は、サンプリングモジュール18に含まれた刺入深さ制御要素(図示せず)によって達成することができる。このような刺入深さ制御要素は、使用者の皮膚層の表面上またはその上方に延在しており、刺入深さ(挿入深さとも呼ぶ)を制御するためのリミッターとして役割を果たす。刺入深さ制御要素及びその使用方法の例が、言及することを以ってその内容の全てを本明細書の一部とする米国特許出願第10/690,083号に開示されている。所望に応じて、圧力リングを使用者の皮膚層に配置すると同時に刺入部材が発射されるようにして発射機構を単純にすることができる。
【0036】
刺入部材22を発射して標的部位TSに刺入すると、刺入部材22の針(図1及び図2には図示せず)は、例えば、使用者の皮膚層の表面から内部へ約1.5mm〜3mmの挿入深さに達する。圧力リング28が使用者の皮膚層を押圧すると(図2の下向きの矢印の方向)、標的部位近傍のISFに圧力がかかる。圧力リング28による皮下の圧力勾配により、ISFが針からサンプリングモジュールを経て分析モジュールに流れる(図2の曲がった矢印に示されている)
【0037】
刺入部材の針を流れるISFは、時間が経過すると標的部位近傍のISFの欠乏と圧力リング28の下側の使用者の皮膚層の弛緩によって減少する傾向がある。しかしながら、本発明に従ったシステムでは、ISFの流れが減少しないように、刺入部材が使用者の皮膚層に留まった状態で、圧力リング28を往復運動(例えば、ISFの流速の測定及びフィードバックによって制御される所定の圧力リングのサイクル動作を用いる)するように使用者の皮膚層に配置することができる。加えて、往復動方式で圧力を加える際、圧力リングによって加えられる圧力が変化し、局所圧力勾配がなくなって使用者の皮膚層からのISFの正味の流れが停止する時間が発生し得る。
【0038】
更に、標的部位近傍の使用者の皮膚層に対して複数の圧力リングを代わる代わる適用することにより、サンプリングモジュール及び分析モジュールを流れるISFの流れを制御することができ、かつ使用者の皮膚層の所定部分に圧力がかかる時間を制限することができる。往復動方式の圧力の適用はまた、使用者の皮膚層が回復できるようにすることで、使用者の皮膚の斑点や使用者の苦痛及び/または不快感を低減することができる。往復動方式で圧力リング28を適用する更なる利点は、ISFグルコース遅延(すなわち、使用者のISFグルコース濃度と使用者の血中グルコース濃度との差)が減少することである。
【0039】
当業者であれば、本開示を読めば、ISFグルコース遅延、使用者の苦痛/不快感、及び/または持続的な皮膚の斑点の発生を低減する様々な圧力リングのサイクル動作を考案できるであろう。例えば、圧力リング28を30秒〜3時間の間、配置(すなわち、標的部位近傍の使用者の皮膚層に圧力が加わる位置)し、次いで圧力リング28を30秒〜3時間の間、引き戻した状態に維持することができる(すなわち、使用者の皮膚層に圧力が加わらないような位置)。更に、圧力を加える時間(すなわち、少なくとも1つの圧力リングが配置されている時間)が約30秒〜約10分の範囲で、圧力をかけていない時間(すなわち、少なくとも1つの圧力リングが引き戻されている時間)が約5分〜約10分の範囲の場合、ISFグルコース遅延及び使用者の苦痛/不快感を大幅に低減することができる。ある有用な圧力リングのサイクル動作には、1分間の圧力の適用と10分間の圧力の解除が含まれる。圧力の適用と圧力の解除の時間が異なっているため、このようなサイクルを不均等圧力リングサイクルと呼ぶ。
【0040】
圧力リングのサイクル動作は、(i)所望の量の体液を抽出するのに十分な時間に亘って圧力リングを配置すること、(ii)ISFグルコース遅延を緩和する生理反応を引き起こすこと、(iii)使用者の不快感及び持続的な斑点の発生を抑えることの3つがバランスするように工夫することができる。加えて、圧力リングのサイクル動作は、例えば、15分毎の半連続的な分析物の測定を行えるように工夫することもできる。
【0041】
圧力リング28は、当業者に周知の任意の好適な材料から形成することができる。例えば、圧力リング28は、限定するものではないが、ABS樹脂プラスチック材料、射出成形用プラスチック材料、ポリスチレン材料、金属、またはそれらの組合せを含む比較的硬質の材料から形成することができる。圧力リング28はまた、限定するものではないが、弾性材料、ポリマー材料、ポリウレタン材料、ラテックス材料、シリコン材料、またはそれらの組合せを含む比較的弾性変形可能な材料から形成することもできる。
【0042】
圧力リング28によって画定される内部開口は、限定するものではないが、円形、正方形、長方形、C型、U型、六角形、八角形、及び鋸壁形を含む任意の好適な形状とすることができる。
【0043】
ISFの流れの減少を最小に抑え、かつ/またはサンプリングモジュール及び分析モジュールを流れるISFの流れを制御するために圧力リング28が用いられる場合、圧力リングが使用されている間、刺入部材22を使用者の皮膚層の標的部位に留めておく。しかしながら、ISFグルコース遅延を緩和するために圧力リング28が用いられる場合は、刺入部材22が使用者の皮膚層に断続的に位置するようにすることができる。このような刺入部材22の断続的な配置は、圧力リング28による圧力の適用に合わせて、または別に行うことができる。
【0044】
ISFグルコース遅延を緩和するための圧力リングの使用に加えて或いは別法として、本発明に従った様々な実施形態は、例えば、化学手段(すなわち、遅延緩和化学物質)、超音波、機械的手段、熱、真空、電位、またはこれらの組合せなどのISFグルコース遅延を緩和する他の手段を利用することができる。一般に、ISFグルコース遅延を緩和するためのこのような手段が、ISFグルコース遅延の緩和に用いられる手段の近傍における血液及び/またはISFの潅流を増大させると仮説を立てることができる。体液の局所的な循環を増大させることにより、血液とISFとの間のグルコースの平衡速度を改善することができる。
【0045】
化学手段を用いてグルコース遅延を緩和することができる。このような化学手段では、循環を促進するために標的部位(例えば、使用者の皮膚層)に遅延緩和化学物質を適用する。この機能を果たすことができる化合物の例として、限定するものではないが、カプサイシン、ヒスタミン、天然胆汁酸塩、コール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸塩(taurodeoxycholate)、グルココール酸ナトリウム(sodium glucocholate)、またはこれらの組合せを挙げることができる。加えて、米国特許第6,251,083号及び同第5,139,023号に開示されている全ての皮膚浸透促進剤及びそれらの組合せが好適な候補である。化学手段は乳剤またはゲルに混ぜて、単に直接適用できるようにすることができる。加えて、フリースなどの吸収材を用いて適用する化学手段を増量させることができる。
【0046】
ISFグルコース遅延を緩和する別の手段として超音波を使用する。超音波遅延緩和法では、標的部位(例えば、使用者の皮膚層)の近傍に超音波プローブを配置して標的部位に超音波を当てる。第1の所定量の超音波を標的部位に当てて局所加熱し、ISFグルコース遅延を緩和することができる。ある実施形態では、グルコース遅延を緩和した後、超音波プローブで第1の所定量よりも多い第2の所定量の超音波を当ててISFの抽出を促進する。このような実施形態では、超音波プローブは、グルコース遅延の緩和及びISF抽出の両方の機能を果たす。超音波法の更なる詳細は、言及することを以って本明細書の一部とする米国特許第5,231,975号及び同第5,458,140号に開示されている。
【0047】
ISFグルコース遅延を緩和する別の手段として非往復運動の機械的処置がある。このような機械的処置には、標的部位を引張るまたはピンチすること、引張って標的部位を伸ばす接着剤、及び使用者の皮膚層に振動を与える装置(例えば、圧電トランスデューサ)が含まれる。標的部位を処置する機械的な手段については、言及することを以ってその開示の全てを本明細書の一部とする米国特許第6,332,871号及び同第6,319,210号に開示されている。
【0048】
グルコース遅延を緩和する別の手段として熱の利用がある。このような手段では、加熱プローブ(例えば、抵抗ヒーター)を標的部位(使用者の皮膚など)に当てて体液の循環を促進する。別法では、熱源として赤外線(IR)を用いることもできる。このような実施形態では、温度プローブを用いて、使用者の皮膚層に好適な量の熱を確実に加え、熱処置の時間を比較的短い間隔(例えば、5分未満)とすることができる。通常は、加える熱は37℃よりも高くなければなないが、使用者の皮膚層が焦げる程高くはしない。標的部位への加熱についての詳細は、言及することを以ってその開示の全てを本明細書の一部とする米国特許第6,240,306号及び同第6,155,992号に開示されている。
【0049】
ISFグルコース遅延を緩和するための別の手段として真空の利用がある。例えば、真空により標的部位(使用者の皮膚層など)を伸ばしてISFグルコース遅延を緩和することができる。加えて、真空により、標的部位からのISFの抽出を促進できる負圧源を提供することができる。標的部位への真空の適用についての詳細は、言及することを以ってその開示の全てを本明細書の一部とする米国特許第6,155,992号に開示されている。
【0050】
ISFグルコース遅延を緩和するための更に別の手段として電位の利用がある。このような場合、例えば一対の電極を用いて標的部位(使用者の皮膚層など)に電流を流す。電流が神経細胞及び組織を刺激して、体液の循環を促進しISFグルコース遅延を緩和する。
【0051】
図3を参照すると、システム10の分析モジュール20が、分配リング302、複数のミクロ流体ネットワーク304、及び複数の電気接点306を含む。ミクロ流体ネットワーク304はそれぞれ、第1の受動バルブ308、グルコースセンサ310、廃棄タンク312、第2の受動バルブ314、レリーフバルブ316を含む。ミクロ流体ネットワーク304は、断面寸法が、例えば、30μm〜500μmの流路を含む。流れているISF試料のグルコースを監視(すなわち監視)するために、複数の実質的に同一のミクロ流体ネットワーク304(センサブランチ304とも呼ぶ)を分析モジュール20に含めることができる。分配リング302、第1の受動バルブ308、廃棄タンク312、第2の受動バルブ314、及びレリーフバルブ316は、分析モジュール20を流れるISFを制御するように構成されている。
【0052】
当業者に周知の任意の好適なグルコースセンサを、本発明に従った分析モジュールに用いることができる。グルコースセンサ310は、例えば、酵素と酸化還元活性成分すなわちメディエータを含む酸化還元試薬系を含むことができる。このようなメディエータとして、フェリシアニド、フェナジンエトサルフェート、フェナジンメトサルフェート、フェイレンジアミン(pheylenediamine)、1−メトキシフェナジンメトサルフェート、2,6−ジメチル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジクロロ−ベンゾキノン、フェロセン誘導体、オスミウムビピリジル錯体、及びルテニウム錯体を挙げることができる。全血中のグルコースアッセイに好適な酵素として、限定するものではないが、グルコースオキシダーゼ及びデヒドロゲナーゼ(共に、NAD系及びPQQ系)を挙げることができる。酸化還元系に含めることができる他の物質には、緩衝剤(例えば、シトラコネート(citraconate)、クエン酸塩、リンゴ酸、マレイン酸、リン酸バッファー)、2価陽イオン(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム)、界面活性剤(例えば、トリトン(Triton)、マコル(Macol)、テトロニック(Tetronic)、シルウェット(Silwet)、ゾニル(Zonyl)、プルロニック(Pluronic))、及び安定剤(例えば、アルブミン、スクロース、トレハロース、マンニトール、ラクトース)がある。
【0053】
グルコースセンサ310が電気化学系グルコースセンサの場合、グルコースセンサ310は、ISF試料中のグルコースの存在に応答して電流信号を生成することができる。次いで、ローカル制御モジュール14が電気接点306を介してその電流信号を受け取り、その信号をISFグルコース濃度に変換する。
【0054】
システム10は、8時間またはそれ以上の時間に亘ってISF試料中のグルコースの連続的及び/または半連続的な測定に用いることができる。しかしながら、経済的に大量生産することができる従来のグルコースセンサでは、正確な測定信号を提供できるのは僅か30分程度である。このセンサの寿命の問題を解決するために、同一のグルコースセンサ310を含む複数のミクロ流体ネットワーク304を分析モジュール20内に設けている。これらの各グルコースセンサを連続的に用いて、1時間以上に亘る連続的及び/または半連続的な監視を実現できる。
【0055】
複数の同一のグルコースセンサ(それぞれについて、例えば1時間)の連続的な使用により、連続的または半連続的なグルコースの測定が可能となる。同一のグルコースセンサを連続的に使用するには、まず、サンプリングモジュールからグルコースセンサ310へのISFの流入を所定時間案内し、次いでそのグルコースセンサへのISFの流れを遮断して別のグルコースセンサに切り替える。この連続的なグルコースセンサの使用は、分析モジュール内の全てのグルコースセンサを使い終わるまで繰り返すことができる。
【0056】
連続するグルコースセンサへのISFの流れの切り替えは、例えば、次の方法で実施することができる。分析モジュール20の使用開始時に、サンプリングモジュール18からのISF試料を分配リング302でn個のセンサブランチ304に分配する。しかしながら、ISFの流れは、各センサブランチの第1の受動バルブ308によって各センサブランチの入口で止められる。グルコースの測定を開始するには、選択したセンサブランチのレリーフバルブ316を開けてセンサブランチを作動させる。選択したレリーフバルブを開けるプロセスは、電気接点306を介して分析モジュール20と通信するローカル制御モジュール14で電気的に制御することができる。レリーフバルブ316が開くと、初めに初めにセンサブランチ304に存在するガス(例えば、空気)がそのセンサブランチ304の出口から排出され、ISFがそのセンサブランチ304内に流入する。他のセンサブランチ304のレリーフバルブ316が閉じているため、ISFはその選択されたセンサブランチ304のみに流入することができる。
【0057】
ISFの圧力は、第1の受動バルブを通過するのに十分であるため、グルコースセンサ310に向かって流れる。次いで測定信号がグルコースセンサ310によって生成され、図3の破線の矢印で示されているように電気接点306を介してローカル制御モジュール14に電気的に送られる。続いてISFは廃棄タンク312に流入する。廃棄タンク312の容量は、グルコースセンサの寿命に必要な量と等量のISFを受容できるように予め定められている。例えば、平均流速が約50nL/分で、グルコースセンサの寿命が1時間では、廃棄タンク312の容量は約3μLとなる。第2の受動バルブ314が、廃棄タンク312の終端部に配置されている。第2の受動バルブ314は、ISFの流れを止めるように構成されている。
【0058】
次いで、別のセンサブランチ304のレリーフバルブ316が開けられる。このレリーフバルブ316が選択的に開けられると(ローカル制御モジュール14による通信を介して行うことできる)、ISFが、対応するセンサブランチに配置された第1の受動バルブ308を通過してセンサブランチ304に流入する。次いで、そのセンサブランチのグルコースセンサ310が測定信号を分析モジュール20に供給する。
【0059】
分析モジュール20の全てのセンサブランチ304が使用されるまでこの手順が繰り返される。約8時間の連続的なグルコースの監視を提供するシステムの場合、分析モジュール20に約8個のセンサブランチ304が必要である。しかしながら、当業者であれば明らかなように、使い捨てカートリッジ12の分析モジュール20は8個のセンサに限定されるものではなく、8時間以上に亘ってISFグルコースレベルを測定するようにシステムをデザインすることができる。
【0060】
体Bの外部にある分析モジュール20について詳述することに留意されたい。本発明に従ったシステムの代替実施形態では、サンプリングモジュールを使用しない。しかしながら、分析モジュール20の一部(例えば、グルコースセンサを含む)を少なくとも部分的に体内(例えば、体Bの皮下層)に埋め込むことができる。好適な連続グルコースセンサとして、言及することを以ってその開示の全てを本明細書の一部とする米国特許第6,514,718号、同第6,329,161号、同第6,702,857号、及び同第6,558,321号に開示されているグルコースセンサを挙げることができる。
【0061】
このようなグルコースセンサは、動作電極にオスミウムレドックスポリマーと共に固定されるグルコースオキシダーゼまたはデヒドロゲナーゼなどの酵素を利用することができる。エポキシドまたはアジリジンなどの2官能性架橋剤を用いて、この酵素とポリマーを共に電極面に固定することができる。このようなグルコースセンサは、自由に拡散する試薬を添加しないでグルコースを測定して、グルコース濃度をその濃度に比例した電流レベルまたは電位に変換することができる。
【0062】
他のグルコースセンサは、動作電極に固定されたグルコースオキシダーゼなどの酵素を利用することができる。通常は、グルタルアルデヒドなどの2官能性架橋剤を用いて、この酵素を動作電極に固定することができる。このようなグルコースセンサでは、過酸化水素濃度がグルコース濃度に比例するように酸素を過酸化水素に変換する。次いで、過酸化水素が動作電極で酸化されるため、電流の大きさを測定してISF中のグルコースレベルを決定することができる。
【0063】
更に別のグルコースセンサは、皮下層に埋め込むことができる改良ビーズ(ラテックスビーズなど)を利用し、グルコースを監視するために蛍光共鳴エネルギー転位法(FRET)を用いる。このようなグルコースの監視についての詳細は、言及することを以ってその開示の全てを本明細書の一部とする米国特許第6,232,130号及び同第6,040,194号に開示されている。
【0064】
図4に、ローカル制御モジュール14が簡易ブロックの形態で示されている。ローカル制御モジュール14は、機械制御部402、第1の電子制御部404、第1のデータ表示装置406、ローカル制御アルゴリズム408、第1のデータ記憶要素410、及び第1の高周波リンク412を含む。
【0065】
ローカル制御モジュール14は、使い捨てカートリッジ12に電気的及び機械的に接続できるように構成されている。機械的な接続により、使い捨てカートリッジ12をローカル制御モジュール14に(例えば、挿入して)取り外し可能に取り付けることができる。ローカル制御モジュール14及び使い捨てカートリッジ12は、使用者の皮膚に組合体として固定される方式で、例えば、ストラップで使用者の皮膚に取り付けできるように構成されている。
【0066】
システム10が使用されている間、第1の電子制御部404が、上記した分析モジュール20の測定サイクルを制御する。ローカル制御モジュール14と使い捨てカートリッジ12の通信は、分析モジュール20の電気接点306(図3を参照)を介して行われる。電気接点306は、ローカル制御モジュール14の接触ピン(図7を参照)と接触することができる。電気信号が、例えば、レリーフバルブ316を選択的に開けるために、ローカル制御モジュール14によって分析モジュール20に送られる。次いで、ISF試料のグルコース濃度を表わす電気信号が、分析モジュールによってローカル制御モジュールに送られる。第1の電子制御部404が、ローカル制御アルゴリズム408を用いてこれらの信号を解釈し、測定データを第1のデータ表示装置406(好ましくは、使用者が読めるように)に表示する。加えて、測定データ(例えば、ISFグルコース濃度データ)が第1のデータ記憶要素410に保存される。
【0067】
使用する前に、未使用の使い捨てカートリッジ12をローカル制御モジュール14内に挿入する。この挿入により、使い捨てカートリッジ12とローカル制御モジュール14との電気通信が可能となる。ローカル制御モジュール14の機械制御部402が、システム10の使用中、使い捨てカートリッジ12を所定の位置にしっかりと保持する。
【0068】
ローカル制御モジュールと使い捨てカートリッジの組合体を使用者の皮膚へ取り付けた後、使用者から起動信号を受け取ると測定サイクルが第1の電子制御部404によって開始される。この開始時に、刺入部材22が使用者の皮膚層内に発射され、ISFサンプリングが始まる。この発射は、第1の電子制御部404によって、または使用者による機械的相互作用によって実現することができる。
【0069】
ローカル制御モジュール14の第1の高周波リンク412は、図1及び図4のギザギザの矢印によって示されているように、ローカル制御モジュールとリモート制御モジュール16との双方向通信を可能とするように構成されている。ローカル制御モジュールには、システムの現状を示す表示装置(例えば、多色LED)が組み込まれている。
【0070】
ローカル制御モジュール14は、使い捨てカートリッジ12と双方向通信して測定データを受け取り、保存できるように構成されている。例えば、ローカル制御モジュール14は、分析モジュール20からの測定信号をISFグルコース濃度値または血中グルコース濃度値に変換するように構成することができる。
【0071】
図5は、システム10のリモート制御モジュール16を示す簡易ブロック図である。リモート制御モジュール16は、第2の電子制御部502、第2の高周波リンク504、第2のデータ記憶要素506、第2のデータ表示装置508、推定アルゴリズム510、アラーム512、血中グルコース測定システム(血中グルコースストリップ516を用いて血中グルコースを測定するように適合されている)、及びデータ保持要素518を含む。
【0072】
第2の電子制御部502は、リモート制御モジュール16の様々な構成部品を制御するように適合されている。第2の高周波リンク504は、ローカル制御モジュール14と双方向通信できるように構成されている(例えば、第2の高周波リンク504は、ローカル制御モジュール14からISFグルコース濃度関連データを受け取ることができる)。第2の高周波リンク504を介して受け取ったデータは、第2の電子制御部502で検査・確認することができる。更に、このように受け取ったデータは、第2の電子制御部502で処理及び分析され、後の使用(例えば、使用者による後のデータの検索や、推定アルゴリズム510での使用)に備えて第2のデータ記憶要素506に保存することができる。リモート制御モジュール16の第2のデータ表示装置508は、例えば、使用者に便利な形式の測定データ、並びに後のデータ管理のための使用が簡単なインターフェイスを表示するように構成されたグラフィックLCD表示装置とすることができる。
【0073】
ローカル制御モジュール14は、第2の高周波リンク504を介してリモート制御モジュール16と通信できるように適合されている。リモート制御モジュール16の機能には、使用者に見易く便利な形態にグルコース測定データを表示、保存、及び処理することが含まれる。リモート制御モジュール16は、有害なグルコース濃度を使用者に警告するためにアラーム512によって警報(音響、視覚、振動)を発することができる。リモート制御モジュール16の更なる機能は、血中グルコース測定システム514及び1回用の血中グルコース測定ストリップ516を用いて使用者の血中グルコース濃度を測定することである。血中グルコース測定システム514で測定された血中グルコース値を用いて、推定アルゴリズム510で算出された血中グルコース値を検証することができる。リモート制御モジュール16はまた、入力して解析される使用者の特有のデータ(例えば、事象タグ、心の状態、医療データ)を提供するように構成することができる。
【0074】
リモート制御モジュール16は、ポータブルユニットとして、ローカル制御モジュール14と通信できるように構成することができる(例えば、ローカル制御モジュール14からグルコース測定データを受信する)。従って、リモート制御モジュール16は、グルコース監視関連データの管理(例えば、グルコース関連データの保存、表示、及び処理)についての簡便なプラットフォームを使用者に提供する。これを用いて、的確な治療(すなわち、インスリン投与)を行うことができる。リモート制御モジュール16の機能には、ISFグルコースデータの収集、保存、及び処理、並びにISFグルコースデータから求められた血中グルコース値の表示が含まれる。このような機能をリモート制御モジュール16に含めることにより、ローカル制御モジュール14が小さく単純になる。しかしながら、所望に応じて、リモート制御モジュールの代わりにローカル制御モジュールが上記した機能を果たすことができる。
【0075】
血液試料(BS)における血中グルコースレベルの測定を容易にするために、血中グルコース測定システム514が、リモート制御モジュール16と一体に設けられている。血中グルコース測定システム514は、血液試料(例えば、血液の滴)が導入された血中グルコースストリップ516を用いて測定する。得られた血中グルコース測定値を、推定アルゴリズム510によって求められたグルコース値と比較することができる。
【0076】
リモート制御モジュール16は、場合によってはシリアル通信ポート(図5には図示せず)などの通信ポートを含むこともできる。当分野では、例えば、RS232(IEEE標準)及びUSBなどの好適な通信ポートが知られている。このような通信ポートは、保存されたデータを外部データ管理システムに送信するように容易に適合することができる。リモート制御モジュール16はまた、通信ポートを介してプログラムすることができる再プログラム可能なフラッシュメモリ部分などのプログラム可能なメモリ部分(図5には図示せず)を含むことができる。このようなメモリ部分の目的は、通信ポートを介した通信によってリモート制御モジュールのオペレーティングシステム及び/または他のソフトウエア部分の更新を容易にすることにある。
【0077】
更に、リモート制御モジュール16は、データ保持要素518を受容して、そのデータ保持要素と通信するための通信スロットを含むことができる。データ保持要素518は、「スマートチップ」とも呼ばれるSIMデータ保持要素などの当分野で周知のあらゆる好適なデータ保持要素とすることができる。
【0078】
データ保持要素518は、使い捨てカートリッジ12に設けることができ、キャリブレーションデータやロット識別番号などの使い捨てカートリッジの生産ロットに固有のデータを含むことができる。リモート制御モジュール16は、データ保持要素518に保持されているデータを読むことができ、このようなデータを、ローカル制御モジュール14から受け取ったISFグルコースデータの解釈に用いることができる。別法では、データ保持要素518のデータを、第2の高周波リンク504によってローカル制御モジュールに送信することができ、このデータをローカル制御モジュール14によるデータ分析に用いることができる。
【0079】
リモート制御モジュール16の第2の電子制御部502は、データの解釈及び様々なアルゴリズムを実行するように構成されている。1つのアルゴリズムは、近い将来(30分〜1時間以内)のグルコースレベルを推定するための推定アルゴリズム510である。使用者の血中グルコース濃度の変化とその使用者のISFグルコース濃度の対応する変化との間には時間差が存在するため、推定アルゴリズム510は、個人の遅延時間の関係を反映する使用者固有のパラメータを考慮するべく、保存されたデータに対して実施される一連の数学的処理を用いる。推定アルゴリズム510の結果は、ISFグルコースレベルに基づいた血中グルコースレベル推定値である。推定アルゴリズム510が低いグルコースレベルを推定すると、信号が生成され、アラーム512が作動して、低血糖症や昏睡の危険などの推定される生理現象を使用者に警告する。当業者であれば理解できるように、アラーム512は、使用者を直接或いは使用者の健康管理者に警告を与える音響信号、視覚信号、または振動信号を含むあらゆる好適な信号から構成することができる。低血糖症の症状の使用者を目覚めさせることができるように音響信号が好ましい。
【0080】
任意の同じ時間におけるISFグルコース値(濃度)と血中グルコース値(濃度)の差をISFグルコース遅延と呼ぶ。ISFグルコース遅延は、生理的原因と機構的原因の両方によると考えられる。ISFグルコース遅延の生理的な原因は、使用者の皮膚層の血液から間質への拡散に要する時間に関係する。遅延の機構的原因は、ISF試料の採取に用いる装置及び方法に関係する。
【0081】
本発明に従った装置、システム、及び方法の実施形態は、使用者の皮膚層の標的領域への血液の流れを促進する往復動方式で使用者の皮膚層に対して圧力を適用及び解除して、生理的な原因によるISFグルコース遅延を緩和(低減、または最小化)する。詳細を後述する本発明に従った圧力リングを含むISF抽出装置は、この方式で圧力を適用及び解除する。ISFグルコースの遅延を考慮する別の方法は、測定したISFグルコース濃度に基づいて血中グルコース濃度を推定するアルゴリズム(例えば、推定アルゴリズム510)を用いる。
【0082】
推定アルゴリズム510は、例えば、一般的な形、すなわち「推定血中グルコース=f(ISFik,ratej ,man ratemp,交互作用項)」とすることができる。ここで、iは0〜3の整数値であり、j、n、及びmは1〜3の整数値であり、k及びpは1または2の整数値である。ISFiは、測定したISFグルコース値であって、下付き文字(i)はどのISF値が用いられたかを示す。例えば、(i)が0の場合は現在の値のISF値を指し、1の場合は1つ前の値を指し、2の場合は2つ前の値を指し、以下同様に続く。ratej は、近い2つのISF値の間の変化率であって、下付き文字(j)は、変化率を計算するためにどの近い2つのISF値が用いられたかを示す。例えば、(j)が1の場合は、現在のISF値とその前のISF値との間の変化率を指し、(j)が2の場合は、1つ前のISF値と2つ前のISF値との間の変化率を指し、以下同様に続く。man ratem は、ISF値の各群の近い平均値間の移動平均率を示し、下付き文字の(n)は、移動平均値に含まれるISF値の数を指し、(m)は、現在の値に対して近い移動平均値の時間位置を指す。
【0083】
推定アルゴリズムの一般的な形は、全ての許容される項と可能な交差項の一次結合であり、項及び交差項の係数は、ISF試料採取時に測定されたISF値と血中グルコース値の回帰分析によって決定される。本発明に従ったシステムに適した推定アルゴリズムの更なる詳細は、言及することを以って本明細書の一部とする米国特許出願第10/652,464号に開示されている。
【0084】
当業者には明らかなように、推定アルゴリズムの結果を用いて、インスリン供給ポンプなどの医療装置を制御することができる。アルゴリズムの結果に基づいて決定できるパラメータの典型的な例は、ある時点における使用者に瞬時大量投与するインスリンの量である。
【0085】
ローカル制御モジュール14と使い捨てカートリッジ12の組合体を、使用者の皮膚に取り付けることができるように構成して、使用者の皮膚層から抽出されるISFのサンプリング及び監視を容易にすることができる(図6〜図8を参照)。
【0086】
図1〜図10に示されているシステムの実施形態の使用中は、使い捨てカートリッジ12が、ローカル制御モジュール14内に配置され、そのローカル制御モジュールによって制御される。加えて、使い捨てカートリッジ12とローカル制御モジュール14の組合体を、使用者、好ましくは使用者の腕の上部または前腕に装着できるように構成することができる。ローカル制御モジュール14は、測定管理のため及び分析モジュールから測定データを受け取るために使い捨てカートリッジ12に電気的に接続されている。
【0087】
図6を参照すると、ローカル制御モジュール14は、第1のデータ表示装置406と、ローカル制御モジュール14を使用者の腕に取り付けるための一対のストラップ602を含む。図6にはまた、ローカル制御モジュール14を挿入する前の使い捨てカートリッジ12が示されている。
【0088】
図7に、ローカル制御モジュール14に設けられた挿入キャビティ704内に使い捨てカートリッジ12を挿入する前のローカル制御モジュール14の底面図が示されている。使い捨てカートリッジ12及びローカル制御モジュール14は、使い捨てカートリッジ12が機械的な力によって挿入キャビティ704内に固定されるように構成されている。加えて、使い捨てカートリッジ12及びローカル制御モジュール14は、使い捨てカートリッジ12に設けられた一連の成形接触パッド706によって電気的に接続される。これらの成形接触パッド706は、使い捨てカートリッジが挿入キャビティ704内に挿入されると、ローカル制御モジュール14の挿入キャビティ704内に設けられた一連の接触ピン708に整合する。
【0089】
図8に、使い捨てカートリッジ12がローカル制御モジュール14内に挿入され、使い捨てカートリッジとローカル制御モジュールの組合体が使用者の腕に取り付けられた後のローカル制御モジュール14が示されている。図8はまた、ローカル制御モジュール14の高周波通信範囲内にあるリモート制御モジュール16を示している。
【0090】
図9に、本発明の例示的な一実施形態に従った間質液(ISF)抽出装置900の側断面図が示されている。ISF抽出装置900は、刺入部材902、圧力リング904、第1の付勢部材906(すなわち第1のばね)、及び第2の付勢部材908(すなわち第2のばね)を含む。
【0091】
刺入部材902は、使用者の皮膚層の標的部位に刺入して、そこからISFを抽出できるように構成されている。刺入部材902はまた、ISFの抽出中に使用者の皮膚層に維持されるように構成されている。刺入部材902は、例えば、1時間以上に亘って使用者の皮膚層に留めることができ、これにより連続的または半連続的なISFの抽出が可能となる。当業者であれば本開示を読めば、刺入部材を使用者の皮膚層に8時間以上に亘って留めることができることを理解できよう。
【0092】
圧力リング904は、配置された状態と引き戻された後退状態との間で往復するように構成されている。圧力リング904が配置された位置にある場合は、(i)使用者の皮膚層からISFの抽出を促進するため、及び(ii)ISF抽出装置900から上記したような分析モジュールなどへのISFの流れを制御するために、刺入部材が使用者の皮膚層に留まったまま、圧力リング904が標的部位の周りの使用者の皮膚層に圧力を加える。圧力リング904が引き戻された位置にある場合は、圧力リングは標的部位の周りの使用者の皮膚に全く或いは殆ど圧力を加えない。圧力リング904が配置された位置と後退位置との間で往復運動できるため、使用者の皮膚層の所定部分に圧力が加えられる時間を制御して、使用者の皮膚層を回復させ、苦痛や斑点を低減することができる。
【0093】
圧力リング904は通常、0.08インチ〜0.56インチ(約2.03mm〜約14.22mm)の範囲の外径、及び0.02インチ〜0.04インチ(約0.51mm〜約1.02mm)の範囲の側壁(図9のA)を有する。
【0094】
刺入部材902は、圧力リング904から独立して動くように構成したり、圧力リング904に固定することができる。刺入部材902が圧力リング904に固定される場合、刺入部材902は圧力リング904と共に動く。しかしながら、標的部位の一部(例えば、標的部位の皮膚)と刺入部材902との間に生じる摩擦で標的部位が「テント」構造を形成するため、刺入部材902が圧力リングと共に引き戻されても刺入部材が標的部位内に留まる恐れがある。従って、刺入部材を圧力リングに固定する利点は、デザインが単純になることである。
【0095】
第1の付勢要素906は、使用者の皮膚層に対して圧力リング904を押圧し(すなわち、圧力リングを配置状態にし)、圧力リング904を引き戻すように構成されている。第2の付勢要素908は、刺入部材902が標的部位に刺入するようにその刺入部材を発射できるように構成されている。
【0096】
圧力リングによって使用者の皮膚層に加えられる圧力(力)は、例えば、約1psi〜150psi(約6.9kPa〜約1034.3kPa)(psiは、圧力リングの断面積当たりの力として計算)の範囲とすることができる。これに関連して、約50psi(約344.8kPa)の圧力が、使用者の苦痛/不快感を最小にすると共にISFの十分な流れを得るのに有利であることが分かった。
【0097】
図9の実施形態では、刺入部材902は、往復動圧力リング904の凹部内に部分的に受容され、その凹部の深さによって刺入部材902の最大刺入深さが決まる。図9には明確には示されていないが、刺入部材902及び往復運動する圧力リング904は、互いに対して移動することができ、使用者の皮膚層に別々に適用することができる。
【0098】
ISF抽出装置900の使用中に、往復動圧力リング904を使用者の皮膚層を安定させるために配置して、標的領域の部分を分離及び加圧し、従って正味の正の圧力を加えて、刺入部材902を通るISFの流れを促進することができる。
【0099】
所望に応じて、ISF抽出装置900は、刺入時の針の刺入深さを制限及び制御するための刺入深さ制御要素(図示せず)を含むことができる。好適な刺入深さ制御要素及び使用方法の例が、言及することを以ってその内容の全てを本明細書の一部とする米国特許出願第10/690,083号に開示されている。
【0100】
ISF抽出装置900を使用する場合、ISF抽出装置900を含むシステムを、圧力リング904を皮膚に向けて(例えば、図8を参照)使用者の皮膚層に配置する。圧力リング904を皮膚に押圧して皮膚を隆起させる。次いで、その隆起した部分に刺入部材902を刺入する(例えば、突く)。次いで、刺入部材902が皮膚内に完全にまたは部分的に留まった状態で、ISF試料を隆起部から抽出する。
【0101】
抽出されるISF試料の流速は、当初は比較的速いが、通常は時間と共に低下する。約3秒〜3時間後に、圧力リング904を引き戻して、皮膚が回復するようにその状態を約3秒〜3時間維持する。次いで、圧力リング904を再び、約3秒〜3時間配置し、次いで圧力リング904を引き戻し、その状態を約3秒〜3時間維持する。ISFの抽出を終了するまで、この圧力リング904の配置と引き戻しのプロセスを繰り返す。この配置と引き戻しのサイクルは、それぞれのサイクルが異なる時間であるため不均等である。
【0102】
上記したように、本発明の実施形態に用いられる圧力リング(例えば、図9の圧力リング904)を用いてISFグルコース遅延を緩和(すなわち低減)することができる。拘束するものではないが、このような緩和が、ISF試料が抽出される部位の近傍または分析モジュールが少なくとも部分的に埋め込まれる領域で潅流が促進されるためであると仮説を立てることができる。所望に応じて、潅流を促進してISF遅延を緩和する他の好適な手段をこのような圧力リングに組み合わせることができる。例えば、図9の圧力リング904を加熱して潅流を増大させることができる。このような加熱は、例えば、圧力リング904に埋め込まれた抵抗材料に電流を流して、或いは圧力リング904内のキャビティ内に加熱流体を循環させて実現することができる。潅流を促進する(そしてISFグルコース遅延を低下させる)ための好適な化学物質を用いた手段には、例えば、ISF試料が抽出される部位の近傍または分析モジュールが少なくとも部分的に埋め込まれる領域に局所血管拡張剤(例えばヒスタミン)を適用することが含まれる。更に、潅流を増大させるように構成された超音波トランスデューサを用いた装置及び/または潅流を増大させるように構成された電気刺激を用いた装置を圧力リング904に組み込むことができる。
【0103】
本発明の別の例示的な実施形態に従ったISF抽出装置950の斜視図及び断面図のそれぞれが図10及び図11に示されている。ISF抽出装置950は、刺入部材952と、同心円上に配置された複数の圧力リング954A、954B、及び954Cを含む。ISF抽出装置950はまた、使用者の皮膚層に対して圧力リング954A、954B、及び954Cのそれぞれを押圧するための複数の第1の付勢要素956A、956B、及び956Cと、刺入部材952を発射するための第2の付勢要素958と、刺入深さ制御要素960を含む。所望に応じて、刺入深さ制御要素960を圧力リング954Cと一体にして一体型の刺入深さ制御/圧力リング要素を形成することができる。
【0104】
使用する際は、圧力リング954A、954B、及び954Cが使用者の皮膚層を向くようにISF抽出装置950を配置する。これは、例えば、上記したように体液を抽出するためのシステムのサンプリングモジュールのISF抽出装置950を利用して、このシステムを使用者の皮膚層に配置して達成することができる。
【0105】
次いで、圧力リング954Aが付勢要素956Aによって使用者の皮膚層に押圧され、これにより、刺入部材952が突き刺される(刺入される)使用者の皮膚層に隆起部が形成される。圧力リング954Aが使用すなわち配置されている間、圧力リング954B及び圧力リング954Cをそれぞれ、付勢要素956B及び付勢要素956Cによって後退位置に維持することができる。
【0106】
刺入部材952が使用者の皮膚層の中に完全にまたは部分的に留置された状態で、使用者の皮膚層に形成された隆起部からISFを抽出することができる。約3秒〜3時間後に、圧力リング954Aを引き戻して、約3秒〜3時間の間、使用者の皮膚層を回復させることができる。圧力リング954Aを引き戻した後、圧力リング954Bを配置して使用者の皮膚層に圧力を加えることができる。圧力リング954Bが使用すなわち配置されている間、圧力リング954A及び圧力リング954Cをそれぞれ、付勢要素956A及び付勢要素956Cによって後退位置に維持することができる。約3秒〜3時間後に、圧力リング954Bを引き戻して約3秒〜3時間維持し、続いて圧力リング954Cを配置することができる。圧力リング954Cを、約3秒〜3時間の間、使用者の皮膚層に押圧した状態に維持し、次いで、約3秒〜3時間の間、引き戻した状態に維持する。圧力リング954Cが使用すなわち配置されている間、圧力リング954A及び圧力リング954Bをそれぞれ、付勢要素956A及び付勢要素956Bによって後退位置に維持することができる。圧力リング954A、954B、及び954Cの配置と引き戻しのこのサイクルは、流体の抽出が終了するまで続けることができる。図9に示されている実施形態と同様に、図10及び図11に示されている複数の圧力リングの実施形態の配置と引き戻しのサイクルも、それぞれのサイクルの時間が異なり、不均等であるのが好ましい。
【0107】
当業者であれば、本発明に従ったISF抽出装置の複数の圧力リングを任意の順序で配置することができ、上記した配置と引き戻しの順序に限定されるものではないことを理解できよう。例えば、圧力リング954Aを配置する前に、圧力リング954Bまたは圧力リング954Cを配置する順序も可能である。更に、2つ以上の圧力リングを同時に配置することもできる。例えば、図10及び図11に示されている実施形態では、3つの圧力リングが単一の圧力リングとして機能するように、同時に3つ全ての圧力リングを配置することもできる。
【0108】
図10及び図11に示されている実施形態では、それぞれの圧力リングによって使用者の皮膚に加える圧力は、例えば、約0.1psi〜150psi(約0.7kPa〜約1034.3kPa)の範囲とすることができる。更に、当業者であれば、本発明に従った実施形態が、使用中に標的部位に対して一定の力(例えば、約0.91kg(約2ポンド)の力)または一定の圧力(例えば、約138Pa〜207Pa(20psi〜30psi)を加える圧力リングを用いることができることに気づくであろう。場合によっては、圧力または力を、圧力を加えるサイクル内またはそのサイクルの間で変動させることができる。例えば、圧力を1分の抽出サイクル内で約138Pa〜207Pa(20psi〜30psi)の範囲で変動させることができる。
【0109】
圧力リング954A、954B及び954Cの外径はそれぞれ、例えば、0.08インチ〜0.560インチ(2.032mm〜14.224mm)、0.1インチ〜0.9インチ(2.54mm〜22.86mm)、及び0.16インチ〜0.96インチ(4.064mm〜24.384mm)の範囲とすることができる。それぞれの圧力リングの壁部の厚みは、例えば、0.02インチ〜0.04インチ(0.508mm〜1.016mm)の範囲とすることができる。
【0110】
本発明の代替の実施形態に従った抽出装置の最も内側の圧力リングは、無視できるほど小さな圧力を加えてその領域への血液の流れを維持したまま、使用者の皮膚層に針を維持するために、所望に応じて平坦なリング(図14を参照)とすることができる。図14に、本発明の代替の例示的な実施形態に従った間質液(ISF)抽出装置970の一部の側断面図が示されている。ISF抽出装置970は、刺入部材972、圧力リング974、平坦な圧力リング975、圧力リング974を付勢するための第1の付勢部材976(すなわち第1のばね)、及び平坦な圧力リング975を付勢するための第2の付勢部材978(すなわち第2のばね)を含む。
【0111】
この代替の実施形態では、平坦な圧力リングが針(すなわち刺入部材972)を取り囲み、針がちょうど通過できる大きさの孔を有する。平坦な圧力リングは、好ましくは0.02インチ〜0.56インチ(0.508mm〜14.224mm)の直径を有する。
【0112】
本発明に従った抽出装置に少なくとも1つの圧力リングに設けることで、複数の利点が得られる。第1に、配置位置と引き戻された位置との間の圧力リングの往復運動は、ISFグルコース遅延を緩和する(すなわち減少させる)役割を果たす。圧力リングが引き戻されると使用者の皮膚層に対する圧力が解放され、使用者の体は、標的部位に血流を増大させる反応をする。この現象は、反応性充血として知られており、圧力リングの往復運動により標的部位にISFが有利に補給される機構であると推測できる。このようなISFの補充は、ISFグルコース値と全血グルコース値との間の時間的ずれを緩和するのに役立つ。
【0113】
本発明に従ったISF抽出装置の別の利点は、圧力リングの往復運動により、圧力が加えられる皮膚が回復すると共に、使用者の苦痛、不快感、及び持続的な斑点の発生が低減される。
【0114】
更に、複数の圧力リングを備えた抽出装置(例えば、図10及び図11の実施形態)では、少なくとも1つの圧力リングがISFの収集を促進するべく固着され、他の圧力リングが配置された状態と引き戻された状態との間で往復運動して、任意の時間に使用者の皮膚層の別の領域に圧力を加えることができる。このような固着された圧力リングと往復動圧力リングとの組合せは、使用者の苦痛/不快感を更に減少させるのに役立つ。
【0115】
本実施形態に従ったISF抽出装置の別の利点は、圧力リングを用いて、抽出したISF試料のグルコース測定が行われる状態を制御することができる。例えば、電気化学グルコースセンサは、そのセンサを流れるISF試料の流速が一定または静止している場合は極めて正確である。本発明に従ったISF抽出装置の圧力リングにより、抽出したISF試料の流れを制御することができる。例えば、圧力リングを引き戻してISF試料の流れを0.1秒〜60分の間停止し、グルコースの濃度測定を可能にすることができる。グルコースの濃度測定が終了したら、1または複数の圧力リングを再配置してISFの抽出を続けることができる。この方式で、半連続的なISF試料の抽出を行うことができる。
【0116】
当業者であれば本開示を読めば、本発明に従ったISF抽出装置を、限定するものではないが、上記したように体液試料を抽出し、その中の分析物を監視するシステムを含め、様々なシステムに適用できることを理解できよう。例えば、ISF抽出装置は、このようなシステムのサンプリングモジュールに用いることができる。
【0117】
図13に示されているように、本発明の例示的な実施形態に従った使用者の皮膚層からISF試料を連続的に収集するための方法100は、ステップ1010に示されているようにISF流体抽出装置を用意することを含む。このISF流体抽出装置は、刺入部材、及び少なくとも1つの圧力リング(例えば、単一圧力リング、または同心円上の3つの圧力リング)を含む。刺入部材及び圧力リングは、本発明に従ったISF抽出装置及びシステムを用いて説明した刺入部材及び圧力リングとすることができる。
【0118】
次に、ステップ1020に示されているように、圧力リングを使用者の皮膚層の標的部位(例えば、指先の被包組織標的部位、四肢の標的部位、腹部標的部位、またはISF試料を抽出する他の標的部位)の近傍に接触させる。例えば、本発明に従ったシステム及び装置の実施形態を用いて説明した技術を含め、あらゆる好適な技術を用いて圧力リングを使用者の皮膚層に接触させることができる。
【0119】
次に、ステップ1030に示されているように、使用者の皮膚層の標的部位に刺入部材を刺入する。次に、ステップ1040に示されているように、抽出するISFの遅延を緩和する往復動方式で使用者の皮膚層に圧力を加えながら、刺入部材で使用者の皮膚層からISFを抽出する。本発明に従った方法における圧力を加える様々な往復動方式は、図1〜図12を用いて既に説明した。
【0120】
次の例は、本発明に従った装置、システム、及び方法の様々な実施形態の利点を例証する。
【0121】
例1:往復動圧力リング内の領域における血液潅流に対する往復動圧力リングの影響
患者の前腕に取り付けられた圧力リングの内側のほぼ中心の0.25cm2 の領域から半規則的な間隔でレーザードップラーイメージ潅流データを収集した。圧力リングは、0.53インチ(13.462mm)の直径及び0.03インチ(0.762mm)の壁部の厚みを有する。患者の皮膚層に圧力リングを配置する前に基準データを収集した。0.5ポンド(約227.3g)のばねの力で皮膚層に対して圧力リングを10分間配置してから皮膚層から30分間離し、この配置と引き戻しのサイクルを繰り返した。続いて圧力リングを皮膚層に対して5時間配置し、皮膚層から1時間離し、最後に10分間皮膚に配置した。0.25cm2 の測定領域における平均潅流を図12に示した。
【0122】
図12から分かるように、圧力リングの配置により、圧力リングによって囲まれた領域の血液潅流が基準血液潅流に比べて減少した(すなわち、圧力を加えることにより血液潅流が減少した)。しかしながら、圧力リングを離すとこの現象が元に戻るだけでなく、実際には基準を越えて潅流が増大した。
【0123】
例2:ISFグルコース遅延に対する往復動圧力リングの影響
本発明の例示的な実施形態に従った往復動圧力リングを使用した場合のISFグルコース値に対する血流の影響を決定するために試験を行った。20人の糖尿病患者において、患者の前腕の掌側及び背側に対する基準血液潅流測定を行った。次いで、これらの患者に対して、指の血液試料、コントロールISF試料、及び往復動処理ISF試料を、3時間〜6時間に亘って15分毎に収集した。コントロールISF試料は、患者の皮膚層は何も操作しないで患者の前腕から採取し、往復動処理ISF試料は、患者の皮膚層に対して往復動圧力リングを往復動させて採取した。3時間〜6時間の試験時間における、電子レンジで解凍した食物や、インスリン及び経口血糖降下剤を含む糖尿病用薬物の摂取による影響により、殆どの患者の血中グルコース濃度が増減する。
【0124】
往復動処理ISF試料は、30秒間はサンプリングしないで圧力リングで約150psi(約1034kPa)の圧力を加えて生成し、続いてサンプリング標的部位に血液が流入するように5分間待った。コントロールISF試料及び往復動処理ISF試料を得る直前に、ムーア・レーザー・ドップラー・イメージ(Moor Laser Doppler Imager)(英国、デボン(Devon))で血液潅流測定を行った。レーザードップラーによる映像化は、ISFサンプリング標的部位の中心の2cm2 に対して行った。
【0125】
ISFグルコース測定値は、改良したOne Touch(登録商標)Ultra(登録商標)グルコース計及び検査ストリップシステムを用いて行った。約1μlのISF試料を、針で患者の皮膚層の真皮から抽出し、検査ストリップの測定領域に自動的に留置した。改良していないOne Touch(登録商標)Ultra(登録商標)グルコース計及びストリップシステムを用いて、指から全血グルコース値を決定した。
【0126】
各患者についての遅延時間(分)及び潅流測定値を下表1に示した。
【表1】
【0127】
表1のデータから、ISFグルコース遅延が、往復動圧力リングにより平均で21.7分短くなったことが分かる。すなわち、平均30.3分(12.8SD)から平均8.7分(6.6SD)に短縮された。この遅延時間の短縮は、患者の皮膚層に対して圧力を加えたり解放したりして、ISFサンプリング領域における局所血液潅流をコントロールサンプリング領域に対して平均で2.3倍(0.6SD)上昇させて達成した。
【0128】
例3:較正法及びそのISFグルコースセンサの精度に対する影響の評価
様々な較正法及びそれらのシステムに対する影響を評価するために検査を実施した。糖尿病患者で、5.5時間に亘って15分間隔(すなわち測定サイクル)で同時に採取した3種類の試料のグルコースを測定した。この検査の間、75gのブドウ糖液の経口摂取により血糖を上げた。
【0129】
グルコース測定のために採取した3種類の試料は、指の血液試料、コントロールISF試料、及び往復動処理ISF試料である。指の毛細管血液(FCB)とも呼ぶ指血液試料は標準的な指のランス(lancing)で採取した。コントロールISF試料(CISF)は、皮膚層を何も処置しないで患者の腕から採取し、往復動処理ISF試料(TISF)は、皮膚層が往復動圧力リングで処置される患者の他方の腕から採取した。全ての試料採取時間をコンピュータ打刻で記録して、同じ種類のそれぞれのデータ対(すなわち、測定サイクル番号とグルコース濃度)を得ることができる。[G]FCBと短縮するFCBのグルコース濃度は、2つのOne Touch(登録商標)Ultra血中グルコース測定器/検査ストリップ(カリフォルニア州ミルピタス(Milpitas)に所在のライフスキャン(LifeScan))でそれぞれ測定した。記録される値は、それぞれの試料における2つの測定値の平均である。
【0130】
2種類のISF試料の採取方法は異なる。CISFは、それぞれの時間によって背前腕の異なった部位からサンプリングする要領で患者の一方の腕から採取した。圧力リング、細い針、及びグルコース検査ストリップのインターフェイスとなるアダプターを含むサンプリングモジュールを用いる。30ゲージの針を約2mmの深さまで皮膚層に刺入して約1μLのISFを採取した。直径が5.5mmの圧力リングによって約15Nの力を皮膚に加えて、CISFの採取を促進した(平均採取時間は3.0秒)。次いで、このCISFは、改良されたOne Touch(登録商標)Ultraグルコース測定ストリップの測定ゾーンに導入した。ストリップの入口部を、サンプリングモジュールのアダプターとインターフェイスするように物理的に改変し、CISFをストリップの測定ゾーンに直接導入できるようにした。
【0131】
TISFは、CISFに用いたサンプリングモジュールとは若干異なるサンプリングモジュールで採取した。このサンプリングモジュールを患者の背前腕に取り付けた。具体的には、TISFは、CISFの採取に用いられない方の前腕で採取した。CISFの採取とは異なり、TISFはそれぞれの時間で同じ部位から採取した。このサンプリングモジュールは、医療用接着パッチでアームに接着され、約2mmの深さまで皮膚に刺入するようにデザインされた25ゲージの針、及びその針を取り囲む圧力リングを含む。この圧力リングは、TISFを採取するために皮膚に向かって押し出される。サンプリングモジュールは更に、TISFを集積するためのレザバーを含む。この検査では、レザバーとして、針の排出量に一致する320nLが収集される0.5μLガラス毛管(ペンシルバニア州のブルーモール(Broomall)に所在のドラモンド・サイエンティフィック(Drammond Scientific))を用いた。必要な量のISFを採取したら、毛管を取り外して、TISFを異なった種類の改良されたOne Touch(登録商標)Ultraグルコース測定ストリップに移送した。この第2のストリップの改良により、毛管により直接TISFを測定ゾーンに導入することができ、これによりCISFに用いるストリップよりも少量で測定できるようになった。この第2のスリップの改良では、2つの動作電極ではなく唯1つの動作電極を用いて、比較的少量の試料に対応できるように動作/基準電極の面積を小さくした。試料を320nL採取する間、通常は約85秒間、圧力を加えることを理解されたい。必要量を採取したら、針が皮膚内に留まる圧力リングが引き戻された状態にする。15分間の残りの間は、更なる圧力を加えない。
【0132】
表2に、22の測定サイクルで糖尿病患者から採取した3種類の試料についてのデータが示されている。FCB試料の結果は、mg/dL単位のグルコース濃度(すなわち、[G]FCB)として示されている。CISF及びTISFの結果は、ナノアンペアの単位の電流として、それぞれiCISF及びiTISFと短縮されて示されている。データの形式を単純化するために、iCISF及びiTISFを電極面積の差に対して標準化し、これらを直接比較でき、同じ較正の式を利用できるようにした。加えて、iCISF及びiTISFの値は、既に求めた較正の式を用いて一連のグルコース濃度に変換した。CISF及びTISFのグルコース濃度は、mg/dLの単位で示し、[G]CISF及び[G]TISFとそれぞれ短縮した。
【表2】
【0133】
CISF及びTISFのグルコース測定のために、それぞれの改良された測定ストリップをそれぞれ代理ISFで較正して、CISF及びTISFの実際のグルコース濃度を決定できるようにした。代理ISFは、ISFに似るようにした血漿由来の液体である。較正で代理ISFを使用するのは、比較的多量(例えば、約1mL)のISFを採取するのが困難なためである。この較正には、複数の較正液(通常は6つ)を用意しなければならないため比較的多くの量が必要である。代理ISFは、等張食塩水で1:2(500μL+500μL)に希釈した血漿を用いて調製した。好適な量の1M グルコース溶液を代理ISFに加えて、グルコース濃度が2.5mM、5mM、10mM、20mM、及び30mMの6つ較正液を調製した。それぞれの較正液のグルコース濃度について、少なくとも5回測定し、5秒で平均電流値を算出した。一般線形回帰を用いて、電流をグルコース濃度に変換する較正の式に用いるために傾き及び切片を算出した。iCISF及びiTISFが電極面積に対して標準化されているため、同様の較正の式、すなわち式1A:[G]CISF=0.3×iCISF−7.6nA及び式1B:[G]TISF=0.3×iTISF−7.6nAをそれぞれ、[G]CISF及び[G]TISFの計算に用いることができる。
【0134】
このタイプの較正は、大抵は検査ストリップの製造業者によって実施されることに留意されたい。
【0135】
本発明に従ったシステムで半連続的または連続的なグルコースセンサを用いてISF中のグルコースを正確に測定するために異なった種類の較正法について説明する。この種の較正は、大抵は半連続的または連続的なグルコースセンサを用いて実施される。例えば、較正は、One Touch(登録商標)Ultraグルコース測定ストリップなどの1回用のグルコース測定ストリップとFCBでの唯1回のグルコース測定値を用いて実施することができる。このような場合、FCBを用いた[G]CISFの推定([G]CISF,FCBと短縮)を単純な比例で計算することができる。任意の時間間隔として測定サイクル6を用いて、FCBを用いた1点較正を実施した。測定サイクル6は、[G]FCBが時間と共に上昇している状態を表し、遅延の緩和がない場合に較正間隔が問題であることを示しているが、使用者が選択できる可能な時間間隔を表していることを理解されたい。単純な比例を用いて、較正の式を式2として次のように表すことができる。
【数1】
【0136】
式2では、[G]FCB,6は、6回目の測定サイクルでの指の毛細血管血グルコース濃度を表し、iCISF,6は、6回目の測定サイクルでのCISF試料の測定電流を表している。ISF中のグルコース濃度がFCB中のグルコース濃度よりも遅れる傾向にあるため、FCB較正を利用することによって、将来のISFのグルコース濃度を効果的に予測することができる。
【0137】
単純にするために、表2の一部の分析についてのみ、この例及び続く例で説明する。測定サイクル5、12、及び21について更に分析し、それぞれ「上昇」、「安定」、及び「下降」と呼ぶことにする。表3に、上記した測定サイクルについての[G]CISF,FCBと[G]CISFの比較を示す。このデータは、1点FCB較正を用いたISFグルコースセンサ測定CISFと6つの代理ISFの較正液を用いた工場較正との間に比較的大きな絶対誤差があることを示している。
【表3】
【0138】
CISFに加えて、TISFも、1点FCB較正を用いてそのグルコース濃度を分析した。このような場合、FCBを用いたTISFのグルコース濃度の推定([G]TISF,FCBと短縮)のために式3を導出することができる。
【数2】
【0139】
式2と同様に、式3もFCBでの較正のために測定サイクル6を用いた。表4に、3つの測定サイクルについての[G]TISF,FCBと[G]CISFの比較を示す。1点FCB較正を用いたISFグルコースセンサ測定TISFと6つの代理ISF較正液を用いた工場較正との絶対誤差(14mg/dL〜18mg/dL)が表3に示されている全体の絶対誤差(83mg/dL〜175mg/dL)よりも小さい。従って、表3と表4が、将来のISFグルコース濃度の推定のためにFCBを用いてISFグルコースセンサを較正する場合のISFグルコース遅延緩和の有用性を実証している。
【表4】
【0140】
ISFグルコース濃度測定値を用いて、FCBのグルコース濃度を推定することができる。一般に医師は、病状を抑制するための好適な治療を決定する場合の基準としてFCBのグルコース濃度を好むであろう。なぜなら、これが従来の方法だからである。しかしながら、市販されている或いは市販の準備がされている低侵襲性の連続的なグルコースセンサの多くは血液ではなくISFを主に使用する。従って、連続的または半連続的なISFグルコースセンサを用いて毛細管血のグルコース濃度を推定する必要がある。
【0141】
表5に、3つの測定サイクルについての[G]CISF,FCBと[G]FCBの比較を示す。データは、FCBで較正されたCISF測定値を用いてFCBのグルコース濃度を推定する場合に絶対誤差が比較的大きいことを示している。
【表5】
【0142】
表6に、3つの測定サイクルについての[G]CISF,TISFと[G]FCBの比較を示す。[G]CISF,TISFは、TISF試料及びFCB試料を用いて較正したCISF試料のグルコース濃度を表す。以下に示す式4は、[G]CISF,TISFを求める式である。
【数3】
【表6】
【0143】
表5と表6との比較から、ISFセンサをTISF及びFCBで較正する場合に、CISFのグルコース測定値で毛細管血グルコース濃度を良好に推定できることが分かる。TISF試料及びFCB試料を用いた場合、表6の「安定」及び「降下」の測定サイクルでの絶対誤差が表5のFCB試料のみを用いた場合に比べて小さい。表6の「上昇」の測定サイクルでは絶対誤差がより大きい。しかしながら、全体の平均誤差は、遅延緩和を用いる表6のケースの方が小さい(表5の142mg/dLに対して、表6では74mg/dL)。従って、たとえ遅延緩和なしでCISFを採取して検査する場合であっても、ISFセンサをTISF及びFCBの両方で較正すれば、毛細管血グルコース濃度の推定を改善することができる。
【0144】
表7に、3つの測定サイクルについての[G]TISFと[G]FCBの比較を示す。データは、共にFCBを用いて較正したCISF試料(表5の84mg/dL〜185mg/dL)の代わりにTISF試料(表7の0mg/dL〜35mg/dL)を用いたFCBのグルコース濃度の推定で絶対誤差が小さいことを示している。従って、遅延緩和を使用することにより、ISFグルコースセンサを用いて毛細管血グルコース濃度を推定する場合に明らかに精度が高くなる。
【表7】
【0145】
この例3ではISFグルコース測定に使い捨て検査ストリップを用いて説明したが、ここで説明した較正の概念は、あらゆるISFグルコース測定センサ、特に半連続的及び連続的なグルコースセンサに適用することができる。前記した較正方法は、較正の前に遅延緩和を用いることによってCISF、TISF、または毛細管血のグルコース濃度推定の精度を改善することができる。従って、当業者であれば、本開示を読めば、この例3で説明した較正のアルゴリズム(較正の式)を本発明の実施形態に従ったシステムに利用できることを理解できよう。例えば、較正アルゴリズムをサンプリングモジュールまたは分析モジュールに用いて、ISF測定データに基づいて毛細管血のグルコース濃度を計算することができる。
【0146】
例4.圧力リングの往復動によるISFグルコース遅延緩和方法
22人の糖尿病患者(男性12人、女性10人:タイプ1が9人、タイプ2が13人:平均年齢が53.5歳:平均BMI(肥満度指数)が25.4:発症からの平均経過年数が18.0年)が倫理委員会が承認した検査に参加した。この検査では、5時間〜6時間に亘って15分間隔(測定サイクル)で採取した3つの試料からグルコースを測定する。
【0147】
検査の際、75gのブドウ糖液の経口摂取(12人の患者、「75g摂取患者」と呼ぶ)または通常の食事(他の10人の患者、「NEH患者」と呼ぶ)で血糖を上げた。患者は、処方されたインスリン注射または経口投与で摂取を管理した。
【0148】
グルコース測定用の3つの試料は、標準的な指のランス(lancing)で採取した指の毛細管血と、患者のそれぞれ別の腕から採取した2つのISF試料(後述するようにコントロールISF及び試験ISF)である。全ての試料採取時間をコンピュータ打刻で記録して、それぞれの測定間隔におけるそれぞれの試料のデータ対(時間とグルコース)を得ることができる。指毛細管血グルコース濃度は、2つのOne Touch(登録商標)Ultra血中グルコース測定器(カリフォルニア州ミルピタス(Milpitas)に所在のライフスキャン(LifeScan))でそれぞれ測定した。ここで記録されるグルコース値は、それぞれの試料における2つの測定値の平均である。
【0149】
それぞれの腕からのISF試料の採取は異なる方法で行った。コントロールISF用の一方の腕(自由選択)では、それぞれのISF試料は、背前腕のそれぞれ異なる部位から採取した。小径の針を皮膚層に最大2mmまで刺入して約1μLのISFを採取した。直径5.5mmの圧力リングで最大15Nの力を皮膚に加えてISF試料を採取し易くした(平均採取時間は3.0秒、N=553)。次いで、このISF試料を、改良されたOne Touch(登録商標)Ultraグルコース測定ストリップの測定ゾーンに導入した。ストリップは、ISFを直接採取してこのストリップの測定ゾーンに導入できるように、ISFサンプリングシステムのアダプターとインターフェイスするように改良したものである。
【0150】
試験ISF用の他方の腕では、一般的な連続的ISF採取装置を背前腕に取り付けた。この装置は、医療用接着パッチで接着され、皮膚に約2mmの深さまで刺入する小径の針と、その針を取り囲む圧力リングからなる。この圧力リングは、TISFを採取するために皮膚に向かって押し出される。この検査では、針の排出量に等しい320nLのISF試料を0.5μLガラス毛管(ペンシルバニア州のブルーモール(Broomall)に所在のドラモンド・サイエンティフィック(Drammond Scientific))に採取した。
【0151】
必要量のISFを採取したら、毛管を取り外して、このISFを改良されたOne Touch(登録商標)Ultraグルコース測定ストリップに導入した。この第2のストリップの改良により、毛管からISF試料を直接測定ゾーンに導入することができ、これにより通常のストリップよりも少量でも測定することができる。両方のISFグルコース測定のために、コントロールISF試料及び試験ISF試料の両方のISFグルコースを直接決定できるように、改良された測定ストリップを代理ISFでそれぞれ較正した。
【0152】
試験ISF試料を採取する際、320nLの試料の採取の間だけ圧力を加えた(平均採取時間は85秒、N=530)。必要量の試料を採取したら、針の周りのリングへの加圧は止めるが、針は皮膚に刺したままである。それぞれの15分サイクル間隔の残りの時間は圧力を加えなかった。
【0153】
時間ベースでのISFグルコース値と血中グルコース値の比較のために、それぞれの試料を体から採取する時間をそのグルコース値に一致させるのが望ましい。つまり、試験ISF試料の場合は、前の採取サイクルのため、サイクル中に実際に採取される320nLのISF試料が針の中に留まる(デッドボリューム320nL)ことから時間軸を1サイクルずらして調節した。このようにして、生理学的な遅延の正確な測定を、同じ相対時間で採取した指血液試料に対して実施することができる。
【0154】
図15に、1人の患者についての例示的な経時変化プロットが示されている。これは、時間に対してプロットされた3つの試料のグルコース測定値の結果を示している。試験ISFの時間軸を1サイクルずらしたため、時間軸は、3つの試料が体から採取された時間を正確に表している。試験ISFの場合に時間軸を1サイクルずらすのは、その試料が体から採取されてもカニューレの320nLの孔に留まり、次の時点の測定まで毛管に押し出されるのを待っているためである。従って、このプロットはISF試料と血液試料との間の生理学的なグルコース遅延を正確に反映している。
【0155】
22人の患者から収集した全てのデータの比較が図16A及び図16Bに示され、クラーク・エラー・グリッド(Clarke Error Grid)に重ね合わされた方法比較プロットを示している。表8に、クラーク・エラー・グリッド統計、回帰統計(傾き、切片、相関係数R)、血液値とISF値との標準誤差(Sy.x)、平均偏り(%)、及び基準指血液グルコース値とISFグルコース値との間の平均絶対誤差(%)(MPAE)を示す。
【表8】
【0156】
試験ISF測定値における有意な系統的な偏りが存在し得ることに留意されたい。図17に、両方のISF測定値について基準指血液値に対するISF測定値の偏りのプロットを示す。このプロットは、検査中の試料採取時間に対するものであって、0時間は各検査の開始である。このプロットは、12人の75g摂取患者のデータを示す。なぜなら、75g摂取患者の方が、NEH患者よりも血糖の範囲及び傾きが大きく、プロットを例示するのに適しているためである。コントロールISF測定値のほぼ正弦波の偏りパターンは、経時変化プロットを映している。すなわち、血中グルコース上昇中は負に偏り、血中グルコースが下降する検査の最後に向かって概ね正の偏りに変わっている。しかしながら、試験ISFは、検査時間に対して概ね平坦な偏り応答であって、平均偏りは10.7%である(全ての患者を含む全体で10.0%、表8を参照)。この平坦な偏り応答は、全ての試験ISF値から10%を減じて容易に補正できる単純な較正オフセットの可能性を示している。
【0157】
図18は、この偏り補正を実施した基準指血液グルコースに対する試験ISFグルコースの回帰プロットである。表9は、この平均中心化偏り補正(mean centering bias correction)を試験ISF測定値(表8から10%偏り補正)及びコントロールISF測定値(表8から4.9%偏り補正)の両方に対して実施した場合のクラーク・エラー・グリッド、回帰、及び誤差統計を示す。このコントロールISFの偏り補正は全体の精度に殆ど影響を与えない。しかしながら、この偏り補正を行うと試験ISFの全体の精度が有意に改善される。つまり、試験ISF測定値の誤差の大部分が、より厳密な更正法によって解決できる単純な較正誤差である可能性が高い。
【表9】
【0158】
コントロールISF測定値が殆ど影響を受けないことは(表8と表9のコントロールISFの結果の比較から分かる)、あらゆる較正誤差がこれらの測定値の誤差の小さな部分であることを示唆している。この結果は、ISFサンプリング領域に対して圧力リングの遅い往復動などの処置を実施した場合に、指血液グルコース測定値に対するISFグルコース測定値が改善される可能性を示している。
【0159】
直接採取したコントロールISF試料の遅延と比べた場合に連続的ISF抽出装置によって達成された遅延緩和の量を決定して、それぞれのISF試料と基準指血液試料の間の平均グルコース遅延時間をそれぞれの患者について計算した。ISFグルコースと血液グルコースとの間の遅延は、ISF測定値の時間軸を血液測定値の時間軸に対してスライドさせて、これらの測定値間の最小誤差を見つけて求めた。最小誤差にするために時間軸をスライドさせた距離(時間)が、特定の患者の得られた平均遅延である。この方法は、57人の糖尿病患者に対する25分の平均コントロールISF遅延時間を求めるために既に用いた。この方法を、複合データセットの計算用から個人の患者の計算用に変更した。例えば、図19A及び図19Bはそれぞれ、時間に対する誤差のプロットを示す。このプロットを用いて、この検査の1人の患者の平均コントロールISF遅延時間及び平均試験ISF遅延時間を決定する。
【0160】
表10は、各患者の指血液グルコースに対する2つのISF試料のそれぞれの平均遅延時間の要約を示す。患者22人のうち15人だけをここに示した。他の7人の患者(75g摂取群の1人とNEH患者の6人)は、計算に利用できるデータが不十分であった、または有意な遅延決定に必要な十分な血糖範囲の変化を示さなかった。表10に示すように、それぞれの患者において、遅延時間がコントロールISF試料に比べて試験ISF試料で著しく減少している。平均すると、遅延が35.8分も短縮され、平均遅延が38.3分から2.5分に短縮され、生理学的遅延が95%短縮された。
【表10】
【0161】
興味深いことに、ISFグルコースと血液グルコースとの自然の偏りが、ここに記載した検査に適用した往復動圧力リングなど血液の潅流を増大させる方法によって著しく減少したことが明らかである。従って、往復動圧力リングをこの検査に適用してISFサンプリング部位周囲の血液の潅流を増大させて、生理学的遅延(すなわちISFグルコース遅延)を著しく緩和できるという仮説を立てることができる。
【0162】
本発明の好適な実施形態を図面を用いて説明してきたが、当業者であれば、このような実施形態が例示目的であることを理解できよう。当業者は、本発明から逸脱することなく様々な変更形態、変形形態、及び置換形態に想到するであろう。
【0163】
使用者の間質液(ISF)中の分析物を監視するためのシステムであって、使用者の間質液中の分析物を測定するための分析モジュールを含むカートリッジと、そのカートリッジに電子的に接続されたローカル制御モジュールとを含み、このローカル制御モジュールが、分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されており、この分析モジュールが、使用者の標的部位に少なくとも部分的に埋め込むように構成された分析センサを含み、この分析モジュールが、標的部位の近傍の体に圧力を加えるように適合された少なくとも1つの圧力リングを含み、この分析モジュールが、圧力リングが往復動方式で圧力を加えてISFグルコース遅延を緩和できるように構成されている。このシステムの分析モジュールは、ISFグルコース遅延を更に緩和するために遅延緩和化学物質を利用することもできる。この分析モジュールは、ISFグルコース遅延を更に緩和するために超音波を利用することもできる。この分析モジュールは、ISFグルコース遅延を更に緩和するために熱を利用することもできる。この分析モジュールは、ISFグルコース遅延を更に緩和するために真空を利用することもできる。この分析モジュールは、ISFグルコース遅延を更に緩和するために電位を利用することもできる。この分析モジュールは、ISFグルコース遅延を更に緩和するために非往復動方式の体の機械的処置を利用することもできる。
【0164】
体液試料を抽出してその試料中のグルコースを監視するためのシステムであって、体から体液試料を抽出するためのサンプリングモジュール及びその体液試料中のグルコースを測定するための分析モジュールを有する使い捨てカートリッジと、その使い捨てカートリッジに電子的に接続されたローカル制御モジュールとを含み、このローカル制御モジュールが、分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されており、これら分析モジュール及びローカル制御モジュールの少なくとも一方が、毛細管血の測定グルコース濃度と分析モジュールからの測定データに依存する較正アルゴリズムを利用する。この段落のこのシステムでは、体液試料はISF試料であり、分析モジュールからの測定データはISFグルコース遅延緩和で得られる。このシステムのサンプリングモジュールは、少なくとも1つの圧力リングを含む。このサンプリングモジュールはまた、圧力リングが往復動方式で圧力を加えてISFグルコース遅延を緩和できるように構成されている。このサンプリングモジュールはまた、刺入部材と、往復動方式で圧力を加えてISFグルコース遅延を緩和できる少なくとも1つの圧力リングとを含む。
【0165】
使用者の体液中の分析物を監視するためのシステムであって、体液試料中の分析物を測定するための分析モジュールを有する使い捨てカートリッジと、その使い捨てカートリッジに電子的に接続されたローカル制御モジュールとを含み、このローカル制御モジュールが、分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されており、これら分析モジュール及びローカル制御モジュールの少なくとも一方が、毛細管血の測定グルコース濃度と分析モジュールからの測定データに依存する較正アルゴリズムを利用する。この段落のこのシステムでは、体液試料はISF試料であり、分析モジュールからの測定データはISFグルコース遅延緩和で得られる。このシステムのサンプリングモジュールは、少なくとも1つの圧力リングを含む。このシステムのサンプリングモジュールはまた、圧力リングが往復動方式で圧力を加えてISFグルコース遅延を緩和できるように構成されている。このシステムのサンプリングモジュールはまた、刺入部材と、往復動方式で圧力を加えてISFグルコース遅延をできる少なくとも1つの圧力リングとを含む。
【0166】
体液試料を抽出してその試料中の分析物を監視するためのシステムであって、体から体液試料を抽出するためのサンプリングモジュール及びその体液試料中の分析物を測定するための分析モジュールを有する使い捨てカートリッジと、その使い捨てカートリッジに電子的に接続されたローカル制御モジュールとを含み、このローカル制御モジュールが、分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されており、このサンプリングモジュールが、微小透析を用いた試料抽出法を利用する。この段落のこのシステムのサンプリングモジュールは、間質液(ISF)試料を抽出してそのISF試料中のグルコースを測定するように構成され、ISFグルコース遅延を緩和するための手段を含む。このシステムのISFグルコース遅延を緩和するための手段は、遅延緩和化学物質を利用することができる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために超音波を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために熱を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために真空を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために電位を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために体の機械的処置を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために化学物質、超音波、熱、真空、電位、及び体の機械的な処置の少なくとも2つを組み合わせることもできる。
【0167】
体液試料を抽出してその試料中の分析物を監視するためのシステムであって、体から体液試料を抽出するためのサンプリングモジュール及びその体液試料中の分析物を測定するための分析モジュールを有する使い捨てカートリッジと、その使い捨てカートリッジに電子的に接続されたローカル制御モジュールとを含み、このローカル制御モジュールが、分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されており、このサンプリングモジュールが、限外濾過を用いた試料抽出法を利用する。この段落のこのシステムのサンプリングモジュールは、間質液(ISF)試料を抽出してそのISF試料中のグルコースを測定するように構成され、ISFグルコース遅延を緩和するための手段を含む。このシステムのISFグルコース遅延を緩和するための手段は、ISFグルコース遅延緩和化学物質を利用することができる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために超音波を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために熱を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために真空を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために電位を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために体の機械的処置を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために化学物質、超音波、熱、真空、電位、及び体の機械的処置の少なくとも2つを組み合わせることもできる。
【0168】
体液試料を抽出してその試料中の分析物を監視するためのシステムであって、体から体液試料を抽出するためのサンプリングモジュール及びその体液試料中の分析物を測定するための分析モジュールを有する使い捨てカートリッジと、その使い捨てカートリッジに電子的に接続されたローカル制御モジュールとを含み、このローカル制御モジュールが、分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されており、このサンプリングモジュールが、レーザーを用いた試料抽出法を利用する。この段落のこのシステムのサンプリングモジュールは、間質液(ISF)試料を抽出してそのISF試料中のグルコースを測定するように構成され、ISFグルコース遅延を緩和するための手段を含む。このシステムのISFグルコース遅延を緩和するための手段は、遅延緩和化学物質を利用することができる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために超音波を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために熱を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために真空を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために電位を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために体の機械的処置を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために化学物質、超音波、熱、真空、電位、及び体の機械的処置の少なくとも2つを組み合わせることもできる。
【0169】
体液試料を抽出してその試料中の分析物を監視するためのシステムであって、体から体液試料を抽出するためのサンプリングモジュール及びその体液試料中の分析物を測定するための分析モジュールを有する使い捨てカートリッジと、その使い捨てカートリッジに電子的に接続されたローカル制御モジュールとを含み、このローカル制御モジュールが、分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されており、このサンプリングモジュールが、逆イオン導入を用いた試料抽出法を利用する。この段落のこのシステムのサンプリングモジュールは、間質液(ISF)試料を抽出してそのISF試料中のグルコースを測定するように構成され、ISFグルコース遅延を緩和するための手段を含む。このシステムのISFグルコース遅延を緩和するための手段は、遅延緩和化学物質を利用することができる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために超音波を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために熱を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために真空を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために電位を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために体の機械的処置を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために化学物質、超音波、熱、真空、電位、及び体の機械的処置の少なくとも2つを組み合わせることもできる。
【0170】
体液試料を抽出してその試料中の分析物を監視するためのシステムであって、体から体液試料を抽出するためのサンプリングモジュール及びその体液試料中の分析物を測定するための分析モジュールを有する使い捨てカートリッジと、その使い捨てカートリッジに電子的に接続されたローカル制御モジュールとを含み、このローカル制御モジュールが、分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されており、このサンプリングモジュールが、電気穿孔を用いた試料抽出法を利用する。この段落のこのシステムのサンプリングモジュールは、間質液(ISF)試料を抽出してそのISF試料中のグルコースを測定するように構成され、ISFグルコース遅延を緩和するための手段を含む。このシステムのISFグルコース遅延を緩和するための手段は、遅延緩和化学物質を利用することができる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために超音波を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために熱を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために真空を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために電位を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために体の機械的処置を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために化学物質、超音波、熱、真空、電位、及び体の機械的処置の少なくとも2つを組み合わせることもできる。
【0171】
体液試料を抽出してその試料中の分析物を監視するためのシステムであって、体から体液試料を抽出するためのサンプリングモジュール及びその体液試料中の分析物を測定するための分析モジュールを有する使い捨てカートリッジと、その使い捨てカートリッジに電子的に接続されたローカル制御モジュールとを含み、このローカル制御モジュールが、分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されており、このサンプリングモジュールが、超音波を用いた試料抽出法を利用する。この段落のこのシステムのサンプリングモジュールは、間質液(ISF)試料を抽出してそのISF試料中のグルコースを測定するように構成され、ISFグルコース遅延を緩和するための手段を含む。このシステムのISFグルコース遅延を緩和するための手段は、遅延緩和化学物質を利用することができる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために超音波を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために熱を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために真空を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために電位を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために体の機械的処置を利用することもできる。ISFグルコース遅延を緩和するためのこの手段は、ISFグルコース遅延を緩和するために化学物質、超音波、熱、真空、電位、及び体の機械的処置の少なくとも2つを組み合わせることもできる。
【0172】
使用者の体液中の分析物を監視するためのシステムであって、体液試料中の分析物を測定するための分析モジュールを有する使い捨てカートリッジと、その使い捨てカートリッジに電子的に接続されたローカル制御モジュールとを含み、このローカル制御モジュールが、分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されており、この分析モジュールが、使用者に少なくとも部分的に埋め込むように構成された分析センサを含む。この段落のこのシステムの分析センサは、ISFグルコース分析センサであり、分析モジュールは更にグルコース遅延を緩和するための手段を含む。このシステムのISFグルコース遅延を緩和するための手段は、分析センサが使用者に少なくとも部分的に埋め込まれた状態で、その使用者に圧力を加えるように適合された少なくとも1つの圧力リングを含む。
【0173】
ここに記載した本発明の実施形態の様々な代替形態を用いて本発明を実施できることを理解されたい。添付の特許請求の範囲が本発明を規定するものであり、これらの請求項及び相当物の範囲に含まれる方法及び構造も本発明に包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】本発明の例示的な実施形態に従った、体液試料を抽出しその抽出物中の分析物を監視するシステムの簡易ブロック図である。
【図2】使用者の皮膚層に配置された本発明の実施形態に従ったISFサンプリングモジュールの簡易模式図であって、一点鎖線の矢印が機械的な相互作用を示し、実線の曲がった矢印がISFの流れを示し、要素28の実線の矢印が圧力を示している。
【図3】本発明の例示的な実施形態に従った分析モジュール及びローカル制御モジュールの簡易ブロック図である。
【図4】本発明の例示的な実施形態に従った分析モジュール、ローカル制御モジュール、及びリモート制御モジュールの簡易ブロック図である。
【図5】本発明の例示的な実施形態に従ったリモート制御モジュールの簡易ブロック図である。
【図6】本発明の例示的な実施形態に従った使い捨てカートリッジ及びローカル制御モジュールの上からの斜視図である。
【図7】図6の使い捨てカートリッジ及びローカル制御モジュールの底面からの斜視図である。
【図8】使い捨てカートリッジ及びローカル制御モジュールが使用者の腕に取り付けられた、本発明の別の例示的な実施形態に従ったシステムの斜視図である。
【図9】本発明の例示的な実施形態に従った抽出装置の簡易側断面図である。
【図10】本発明の別の例示的な実施形態に従った抽出装置の一部の斜視図である。
【図11】図10の抽出装置の簡易側断面図である。
【図12】図9の抽出装置を用いて実施した試験の潅流を時間の関数として示すグラフである。
【図13】本発明の例示的な一実施形態に従ったプロセスの一連のステップを例示するフローチャートである。
【図14】本発明の更なる実施形態に従った抽出装置の一部の簡易側断面図である。
【図15】指の毛細管血、コントロールISF試料、及び試験ISF試料から決定したグルコースプロフィールを示す、時間に対するグルコース濃度の経時変化プロットである。
【図16A】指の毛細管血グルコースに対するコントロールISFグルコースに対してクラーク・エラー・グリッド(Clarke Error Grid)に重ねられた回帰を示す図である。
【図16B】指の毛細管血グルコースに対する試験ISFグルコースに対してクラーク・エラー・グリッドに重ねられた回帰を示す図である。
【図17】試験ISFグルコース測定値とコントロールISFグルコース測定値の両方についての相対的時間に対する偏り(%)のプロットである。
【図18】指の毛細管血グルコースに対する偏りが補正された試験ISFグルコースに対してクラーク・エラー・グリッドに重ねられた回帰を示す図である。
【図19A】コントロールISFの遅延に対するRMS(%)(CV)として誤差を示す図である。
【図19B】試験ISFの遅延に対するRMS(%)(CV)として誤差を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間質液(ISF)試料を抽出してその試料中の分析物を監視するためのシステムであって、
体の標的部位からISF試料を抽出するためのサンプリングモジュール、及び前記ISF試料中の分析物を測定するための分析モジュールを有するカートリッジと、
前記カートリッジに電子的に接続された、前記分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されたローカル制御モジュールとを含み、
前記サンプリングモジュールが、前記体の前記標的部位の近傍に圧力を加えるように構成された少なくとも1つの圧力リングを含み、
前記サンプリングモジュールが、前記圧力リングが往復動方式で圧力を加えて前記サンプリングモジュールによって抽出される前記ISF試料のISFグルコース遅延を緩和できるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記圧力リングが、約15分のサンプリングサイクルの約85秒間、圧力を加えるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記サンプリングモジュールが更に、刺入深さ制御要素を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記刺入深さ制御要素が、前記サンプリングモジュールの前記少なくとも1つの圧力リングと一体であることを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記サンプリングモジュールが、前記少なくとも1つの圧力リングから独立して移動可能な刺入部材を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記サンプリングモジュールが、前記少なくとも1つの圧力リングに固定された刺入部材を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記サンプリングモジュールが、前記ISFグルコース遅延を更に緩和するために遅延緩和化学物質を利用することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記遅延緩和化学物質がヒスタミンであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記サンプリングモジュールが、前記ISFグルコース緩和を更に緩和するために超音波を利用することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記サンプリングモジュールが、前記ISFグルコース遅延を更に緩和するために熱を利用することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記サンプリングモジュールが、前記ISFグルコース遅延を更に緩和するために真空を利用することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記サンプリングモジュールが、前記ISFグルコース遅延を更に緩和するために電位を利用することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記サンプリングモジュールが、前記ISFグルコース遅延を更に緩和するために、前記体の非往復動機械的処置を利用することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項1】
間質液(ISF)試料を抽出してその試料中の分析物を監視するためのシステムであって、
体の標的部位からISF試料を抽出するためのサンプリングモジュール、及び前記ISF試料中の分析物を測定するための分析モジュールを有するカートリッジと、
前記カートリッジに電子的に接続された、前記分析モジュールから測定データを受け取りそのデータを保存するように構成されたローカル制御モジュールとを含み、
前記サンプリングモジュールが、前記体の前記標的部位の近傍に圧力を加えるように構成された少なくとも1つの圧力リングを含み、
前記サンプリングモジュールが、前記圧力リングが往復動方式で圧力を加えて前記サンプリングモジュールによって抽出される前記ISF試料のISFグルコース遅延を緩和できるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記圧力リングが、約15分のサンプリングサイクルの約85秒間、圧力を加えるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記サンプリングモジュールが更に、刺入深さ制御要素を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記刺入深さ制御要素が、前記サンプリングモジュールの前記少なくとも1つの圧力リングと一体であることを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記サンプリングモジュールが、前記少なくとも1つの圧力リングから独立して移動可能な刺入部材を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記サンプリングモジュールが、前記少なくとも1つの圧力リングに固定された刺入部材を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記サンプリングモジュールが、前記ISFグルコース遅延を更に緩和するために遅延緩和化学物質を利用することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記遅延緩和化学物質がヒスタミンであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記サンプリングモジュールが、前記ISFグルコース緩和を更に緩和するために超音波を利用することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記サンプリングモジュールが、前記ISFグルコース遅延を更に緩和するために熱を利用することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記サンプリングモジュールが、前記ISFグルコース遅延を更に緩和するために真空を利用することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記サンプリングモジュールが、前記ISFグルコース遅延を更に緩和するために電位を利用することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記サンプリングモジュールが、前記ISFグルコース遅延を更に緩和するために、前記体の非往復動機械的処置を利用することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【公表番号】特表2006−527020(P2006−527020A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509083(P2006−509083)
【出願日】平成16年6月7日(2004.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/018144
【国際公開番号】WO2004/107977
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(596159500)ライフスキャン・インコーポレイテッド (100)
【氏名又は名称原語表記】Lifescan,Inc.
【住所又は居所原語表記】1000 Gibraltar Drive,Milpitas,California 95035,United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月7日(2004.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/018144
【国際公開番号】WO2004/107977
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(596159500)ライフスキャン・インコーポレイテッド (100)
【氏名又は名称原語表記】Lifescan,Inc.
【住所又は居所原語表記】1000 Gibraltar Drive,Milpitas,California 95035,United States of America
【Fターム(参考)】
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