説明

体液を解析する手持ち式の解析デバイスおよび該解析デバイスを制御する制御方法

本発明は、体液を解析するための手持ち式の解析デバイス(10)に関するとともに、この解析デバイス(10)を制御する制御方法に関する。本発明の方法によれば、少なくとも1つの使い捨ての検査手段(44)が、連続する測定サイクルにおいて制御デバイス(16)によって自動的に供給される。各測定サイクルは、制御デバイス(16)の測定操作における始動動作によってトリガされる。本発明によれば、所与の制御的介入によって制御デバイス(16)を保守操作モードに切り替える。保守操作モードにおいて、検査手段(44)の自動供給が停止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液を解析するため、とくに血糖検査のために手持ち式解析デバイスを制御する制御方法に関する。解析デバイスに実装された制御デバイスによって、少なくとも1つの使い捨ての検査手段が連続的な測定サイクルで各解析ごとに自動供給される。制御デバイスの測定モードにおける各測定サイクルは、始動動作によってトリガされる。さらに本発明は、体液を解析する手持ち式解析デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
このような方法は特許文献1に開示されていて、個々の検査片が解析目的のために交換可能なドラム形マガジンから供給されている。ここでは、マガジン識別器にカウンタ読取作業を割り当てることによって解析デバイスによる消費量が記録されていてマガジンに書き込まれないので、部分的に使用されたマガジンの任意の使用を容易にする。
【0003】
システムの統合をさらに進めるためのものとして、例えば特許文献2によって開示されたものがある。これは、個々の検査片の代わりに、手持ち式デバイスにおける検査手段として互いに離間する解析テスト領域部を備えた巻き取られた検査テープを使用するというものである。この場合、テープを移送する間に移動した距離を登録するために、テスト領域部の正確な位置決めを可能にする標識部が形成されている。このような概念から、全体の寸法および要求される操作工程の数を最小限に抑えることがとくに難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1770395号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1739432号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに鑑みて、本発明の目的は、従来技術として公知の方法および製品をさらに発展させて、検査手段の最適な利用とともに簡易な手段を用いた方法の利用し易さおよび信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
特許請求の範囲の独立項に記載された特徴の組合せがこの目的を達成するために提案される。本発明の有利な実施形態およびさらなる発展型は従属項により得られる。
【0007】
本発明は、手持ち式デバイスにおいて解析検査手段が提供されると、通常、検査の質を損なうことなくこれを格納できなくなる点を考慮してされたものである。この問題は、フィルムがカメラ内にセットされているときにフィルムカメラを単純に開けるべきではない点が従来のフィルムカメラに類似している。本発明により提案されている手法にしたがって、所与の制御的介入により、解析デバイスに実装されたプログラム制御される制御デバイスを保守モードに切り替える。この保守モードにおいて、解析デバイスに交換して提供される検査手段の自動供給が停止される。このようにして通常の測定操作の処理を損ねることなく不意の検査損失が防がれる。
【0008】
始動動作の場合であっても、保守モードにおいては測定サイクルの開始を妨げるのが有利である。これにより、測定モードにおいては測定を開始させてしまうであろう操作工程が実行可能になる。
【0009】
保守モードは、不意の検査の提供に起因する検査手段の損失なく、解析デバイスの洗浄または検査手段の交換或いは解析デバイスからの検査手段の間欠的な取出しが可能になるように便宜上設定されている。
【0010】
構造上の複雑さを低減するために、電子制御デバイスのソフトウェアメニューを介してユーザによって保守モードが選択されるようにすると有利である。これは、特定の簡易な方法によって達成可能であり、保守モードが手動操作のスイッチ、とくにソフトキーによって開始されると有利である。
【0011】
別の有利な実施形態において、デバイス構成要素の所定の操作が制御デバイスによって始動動作として認識される。これにより要求される操作工程の数が減り、迅速な利用が実現可能になる。この点に関し、始動動作および/または検査手段の交換がセンサによってモニタされるとともに、センサ信号が保守モードにおいて無視されるようにされても有利である。
【0012】
検査手段は、手持ち式の解析デバイスのハウジング内において高度の信頼性を保証するために環境の影響、とくに湿気の侵入から保護されると有利である。
操作し易さに関する別の改善は、手持ち式解析デバイスの保護カバーを開けることによって測定サイクルがトリガされ、その後に検査手段がユーザによってアクセスされるために供給されることによってなされる。
【0013】
とくにマガジンに格納されている検査手段が使用されるときに、測定モードにおいて検査手段が移送デバイスによって少なくとも1つの所定の位置まで移送されるとともに、検査手段の自動移送が保守モードにおいて中断されると有利である。特定の実施形態において、それぞれの検査手段は検査手段の格納部から付与箇所まで移送される。また、任意に測定サイクルの間に検査手段廃棄部まで移送される。
【0014】
とくに有利な適用例は、複数の解析検査領域部および/またはランセット要素を備えた検査テープを検査手段として使用して、検査テープが断面に巻きつけられて検査手段を提供したものからなる。検査手段を好ましくはマガジンまたはカセットの形態として解析デバイスの区画内において交換可能とするとともに、始動動作によって有効になっていた検査手段が、測定モードにおいてデバイスの区画が開けられたら無効にされるようにすることによってさらなる改善が達成される。
【0015】
また、本発明は、使い捨ての検査手段を連続的な測定サイクルにおいて自動的に提供する制御デバイスを利用する提供方法を実施する特定のデバイスに関する。ここで、各測定サイクルは制御デバイスの測定モードにおける始動動作によってトリガされ、所与の制御的介入により制御デバイスは保守モードに切り替えられうる。保守モードにおいては検査手段の自動提供が停止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】検査テープカセットを使用する携帯型血糖測定デバイスの斜視図である。
【図2】図1の測定デバイスの長手部分の断面図である。
【図3】血糖測定デバイスの測定モードおよび保守モードを説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に概略的に図示された実施例に基づいて本発明をさらに説明する。
図1および図2に示された携帯型血糖測定デバイス10は、概ね自動化された測定方法により、ユーザがユーザ本人の血糖レベルをその場で測定できる。これに関連して、交換可能で使い捨てのものとしてテープカセット12の形態を有する複数の解析検査手段が、複雑な操作を介さずに相当数の検査を実行するために小型のデバイスハウジング14に挿入可能となっている。測定デバイスの保守において、制御ソフトウェアを備えた測定デバイス10の電子制御デバイス16による有利な方法の制御によって検査手段の不意の損失が防がれる。
【0018】
図1に示されるように、手動で作動させるための種々の制御ボタン18,20がハウジング14の上面に配列されている。スクリーン22は操作メニュー24および測定結果を表示できる。ハウジング14内に保護されているテープカセット12は、保護カバー26を開けることによって血液サンプルを付与するための付与箇所においてアクセス可能である。血液サンプルを収集するためのランセット補助具(図示せず)は、ハウジング14の側部においてホルダ28にフランジ取り付けできる。
【0019】
図2は測定デバイス内部を通る断面を示している。測定デバイスは、挿入されたテープカセット12、制御デバイス(制御盤16)、テープ駆動ユニット30、測定ユニット31およびエネルギー供給部(電池32)を備えている。カセット区画34に格納されたカセット12は、ハウジングの底部においてカバー36を介して消耗品として交換可能である。測定デバイスの種々のアクセス箇所の位置はセンサによって登録されている。例として保護カバー26用のスイッチ37が示されている。
【0020】
カセット12は、検査テープ38と、外方に対してシールされ、未使用の検査テープを送り出すための供給スプール40と、使用済みの検査テープを巻き取るための巻取りスプール42とを具備している。検査用化学物質で被覆された検査領域部44は、検体(グルコース)を検出する検査手段として、互いに離間して検査テープ38に取り付けられている。代替的または付加的に、図示されていないランセット要素を皮膚穿刺のために移動体テープに格納してもよい。検査テープ38は、検査ユニット20が血液サンプルを付与する付与箇所46に連続して提供されるように駆動ユニット30によって速巻きされうる。ここで、上記付与箇所(46)は保護カバー26が揺れ戻っても被覆されない。そしてグルコース測定値は、色変化に基づいて血液が付与される検査領域部44の背方側から反射率測定法によって得られうる。
【0021】
図3に示される方法の制御は単純な手法を利用しており、測定と保守とを切り替えるモードを可能にしつつ、要求される操作工程およびユーザ動作を減らすことにより、検査手段の損失が大幅に防がれる。
【0022】
図3の図の左側部分に示されるように、測定サイクルはユーザが先端保護部(保護カバー26)を開けることによって、追加の開始ボタンを操作する必要なく開始されうる。これにより非常に迅速にシステムが利用できるようになる。しかしながら、代替的な始動動作として操作ボタン18,20を介してメニュー選択の「測定」が選択されてもよい。
【0023】
未使用の検査領域部44は、光、湿気、供給スプール40の汚れなどの環境的な影響から保護されたままである。なお、供給スプール40は、測定サイクルが開始されるまでの間、外部に対して保護されている。付与箇所46における検査領域部の位置はテープ移送部によって制御される。テープ移送部において、初期段階の間に所与のテープの前進を可能にするために検査テープ38に付与される制御マークが登録される。この場合には巻戻しが可能なようにはなっていない。これは、装置が複雑化して検査手段が不確実な状態なりうるためである。続いて次のユーザの動作として、血液が測定先端部を越えて位置する検査領域部44に付与される。そして測定ユニット31によって得られた測定結果がディスプレイ22に表示されうる。測定サイクルはユーザが先端の保護部26を閉じることによって簡単に終了する。その後に、さらにテープを移送して使用済み検査領域部44が巻取りスプール42に処理され、測定デバイスのスイッチが切られる。このような測定サイクルは、カセットの交換が必要になるまでは格納されたすべての検査領域44が使用されるまで繰り返し行われうる。
【0024】
測定モードにおいて、予定外であるもののモニタされていた測定デバイスがアクセスされた場合、とくにカセット区画34が開けられた場合、制御デバイスは現在の検査を安全上の理由から無効にして誤った測定値を得る可能性を排除している。この場合、この測定デバイスは専門家以外によっても操作されるように設計される必要があるとともに、誤った測定結果が深刻な誤診につながりうることに留意する必要がある。
【0025】
これは、必要なデバイス内部に対するアクセスとは区別される必要がある。なぜなら、デバイスを洗浄したり、または他のサービス機能を実行するため、或いは実演をするためである。このような場合、検査手段または検査領域の不利な損失が避けられるべきである。この目的のために、図3の右側部分に示されるように、制御デバイスが所与の制御的介入によって保守モードに切り替えられる。
【0026】
制御的介入は、操作キー20を利用してユーザが簡単に選択可能なソフトウェアメニューのメニュー項目「洗浄」によって実現される。この操作キーは「ソフトキー」として設計されており、画面の表示に応じて異なる機能を実行できる。
【0027】
操作モードが開始されるとすぐに、先端保護部26またはカセット区画34が開けられたときに生成されるセンサ信号が無視されるようになるか、または始動動作として解釈されなくなる。これにより自動的なテープ移送が行われなくなる。したがって、測定サイクルの開始が妨げられて検査手段の不意の損失が防がれる。
【0028】
ユーザは、スクリーン22を介して特定の動作を実行するように促されてもよい。先端保護部26およびカセット区画のカバー36が開けられた後は、測定デバイスのスイッチが切られる。ユーザは、カセット12の取外し、測定デバイス内部、とくに測定光学部31の洗浄、カセットの交換およびカセット区画および先端保護部の再閉止をできるようになる。そして測定デバイス10は測定モードに備えてスタンバイ状態になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
とくに血糖検査のために体液を解析する手持ち式解析デバイス(10)を制御する制御方法であって、前記解析デバイスに実装された制御デバイス(16)によって、少なくとも1つの使い捨ての検査手段(44)が連続する測定サイクルで各解析ごとに自動的に供給され、前記制御デバイス(16)の測定モードにおける各測定サイクルが始動動作によってトリガされる制御方法において、
前記制御デバイス(16)が所与の制御的介入によって保守モードに切り替わり、該保守モードにおいて検査手段(44)の自動供給が停止されることを特徴とする、制御方法。
【請求項2】
始動動作がなされる場合であっても、前記保守モードにおいては測定サイクルの開始が妨げられることを特徴とする、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記保守モードにおいて、検査手段の損失なく前記解析デバイスが洗浄可能であるか、または検査手段が交換可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記保守モードが、前記電子制御デバイス(16)のソフトウェアメニュー(24)を介してユーザによって選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の制御方法。
【請求項5】
前記保守モードが、手動操作のスイッチ(20)、とくにソフトキーによって開始されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の制御方法。
【請求項6】
デバイス構成要素の所定の操作が、前記制御デバイス(16)によって始動動作として認識されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の制御方法。
【請求項7】
前記始動動作および/または検査手段(44)の交換がセンサ(37)によってモニタされ、該センサの信号は前記保守モードにおいて無視されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の制御方法。
【請求項8】
検査手段(44)が、前記手持ち式解析デバイスのハウジング(14)内において環境的な影響、とくに湿気の侵入に対して保護されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の制御方法。
【請求項9】
前記測定サイクルが前記手持ち式解析デバイスの保護カバー(26)を開けることによってトリガされ、その後に検査手段(44)がユーザによってアクセスされるように供給されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の制御方法。
【請求項10】
前記測定モードにおいて、前記検査手段(44)が移送デバイス(30)によって少なくとも1つの所定の位置に移送されるとともに、前記保守モードにおいて検査手段の前記自動移送が中断されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の制御方法。
【請求項11】
測定サイクルの間に、前記検査手段(44)の各々が検査手段の格納部(40)から付与箇所(46)まで移送され、任意に検査手段廃棄部(42)に移送されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の制御方法。
【請求項12】
検査手段(44)として複数の解析検査領域および/またはランセット要素が備え付けられた検査テープ(38)が使用され、該検査テープ(38)が断面に巻かれていて前記検査手段(44)を提供することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の制御方法。
【請求項13】
前記検査手段(44)が、好ましくはマガジンまたはカセット(12)の形態の前記解析デバイスの区画(34)において交換可能であるとともに、前記測定モードにおいて前記解析デバイスの区画(34)が開いているときに、始動動作によって有効になった検査手段(44)が無効にされることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の制御方法。
【請求項14】
体液を解析するため、とくに血糖検査のための手持ち式解析デバイスであって、連続する測定サイクルにおいて、使い捨ての検査手段(44)を自動的に供給する制御デバイス(16)を具備し、各測定サイクルが前記制御デバイス(16)の測定モードにおいて始動動作によってトリガされる解析デバイスにおいて、
前記制御デバイス(16)が所与の制御的介入によって保守モードに切り替わりうるとともに、該保守モードにおいて検査手段(44)の自動供給が停止されることを特徴とする、解析デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−525627(P2011−525627A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515325(P2011−515325)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057666
【国際公開番号】WO2009/156343
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】