説明

体液採取装置

【課題】少なくとも以下の要求性能を満たす体液採取装置を提供すること。
(1)穿刺に対する心理的障壁が低減されており、穿刺に伴う痛みの、被験者による能動的かつ自主的制御が可能である。
(2)穿刺手段によって体内から取り出された体液を装置側に特別な吸引手段や吸引機構を設けることなく簡便な構成で装置内に搬送可能である。
【解決手段】筺体の壁の一部を生体の体液採取面への押圧部とし、筺体内の押圧部に対応する位置に穿刺手段を配置して体液採取装置を構成し、押圧部を指先などの体液採取面によって押圧した際に、押圧部に対応して設けられた穿刺手段により押圧部を貫通するとともに体液採取面を刺通して血液等の体液を滲出させ、押圧部から体液採取面を離す動作とともの筺体内部領域に発生する負圧により効率よく体液を筺体内へ導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液やリンパ液、細胞間液等の体液中に含まれる成分の分析や定量を行うための体液採取装置に関する。より詳細には、体液の自己採取を行う場合においても、より簡便で正確、且つ夾雑物の混入が少ないといった、被験者に対するメリットの高い体液採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会的な健康に対する意識の高まりや食生活や生活形態の変化による生活習慣病の増加に伴い、検査手法の進展も相まって、健康診断や人間ドックの重要性が高まっている。一方、少子高齢化に基づく医療費の増大から、自分の健康状態は自分で把握する機運が高まりつつある。実際、血糖値の測定はもとより、その他の肝機能検査等の生化学検査、感染症や腫瘍マーカーといった免疫検査等も郵送健診等の名目で、自己で血液を採取し、しかるべき検査機関へ郵送するシステムが実働し始めている。
【0003】
更に、微細加工技術や微少流体制御技術を駆使して、自己で採取した体液をその場で検査するためのデバイスの開発も進められてきている。このような検査用マイクロデバイスに関し、体液の採取や採取した体液試料に関連する技術の例として以下の技術が開示されている。
【0004】
特開2002-263085号公報には、採取機構を指などで採血部位の皮膚表面に押しつけるのみで、一連の採血作業が完了可能な構成の微量血液の採取方法ならびにその装置が開示されている。特開2003-083958号公報には、シリンジの外周を、気密性を保つようにシリンダで囲い、シリンダ内を陰圧にして皮膚を吸引し、皮膚を凸型に盛り上がらせる作用で針を穿刺することによる血液採取方法が開示されている。同公報では、かかる穿刺方法により、シリンジの位置決め、固定を確実に行うことが可能であるとされている。特開2000-185034号公報には、微小な針形状にシリコーンを成形した鉢本体の内部に空洞部を備える採血針と、ポンプ部と、分析部を同一基板に配設するように構成するような採血分析装置が開示されている。
【特許文献1】特開2002-263085号公報
【特許文献2】特開2003-083958号公報
【特許文献3】特開2000-185034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来技術における体液採取装置では、採取された血液等の体液が外界に触れないよう、液体搬送素子、更には分析素子と採取針のような穿刺手段とが連動し、かつ体液試料が少量で済むように工夫されている。しかしながら、これらの装置では、基本的に穿刺手段が生体の皮膚或いは粘膜表面に接近して穿刺を行い、かつ、穿刺後に体内より取り出された体液を装置側に設けられた特別な機構により吸引するための構成を必要とし、装置の構成が複雑となる場合が多い。そこで、少なくとも以下の要求性能を満たす体液採取装置を提供することが極めて有益であると考えられる。
(1)穿刺に対する心理的障壁が低減されており、穿刺に伴う痛みの、被験者による能動的かつ自主的制御が可能である。
(2)穿刺手段によって体内から取り出された体液を装置側に特別な吸引手段や吸引機構を設けることなく簡便な構成で装置内に搬送可能である。
【0006】
本発明の目的は、かかる要求性能を満たす構成を有する体液採取装置及び体液分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の体液採取装置は、生体の体液採取面より体液を採取するための体液採取装置であって、
密閉し得る内部領域を有する筺体と、
前記内部領域を外部と仕切る仕切壁の一部に設けられた前記体液採取面への押圧部と、
前記内部領域に配置され、前記体液採取面を刺通して該体液採取面に体液を滲出させるための穿刺手段と、
前記内部領域に負圧を発生させるための負圧発生手段と、
を有し、
前記穿刺手段が、前記押圧部への前記体液採取面の押圧により、前記押圧部を貫通して貫通孔を形成し、更に前記体液採取面を刺通可能である位置に設けられており、
前記負圧手段は、前記体液採取面が前記押圧部から離される際の押圧力の解消に伴って前記内部領域に負圧を発生させる機構を有する
ことを特徴とする体液採取装置である。
【0008】
この体液採取装置に体液分析手段を付加することで体液採取機能付きの体液分析装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、先に挙げた要求性能(1)及び(2)を少なくとも満たす体液採取装置を提供することができる。その結果、血液等の体液を検査対象として、被験者自身により、あるいは病院や検査機関等の担当者により、感染症や健康状態、疾病状態の検査を、被験者の心理的障壁が少なくかつ簡便に実施することができるようになる。また、本発明の体液採取装置は、例えば指先から採血を行なう場合、被採血者本人の自力により穿刺を行なうため、特別な支持体を必要とせず、片手で採血処理を行なう事が可能である。この場合、予め穿刺針が収納された表面の膜上(図1の103)に採血部位をあてがい、その後に力を加えて穿刺、採血することが可能であるため、所望の部位に於いて正確に体液採取を行なうことが可能となる。更に、本発明の体液採取装置は膜(図1の103)を通じて体液採取を行なうため、体液の空気接触時間が極めて短く、体液の空気中酸素による劣化を極力最小限にする事が出来、結果として正確な検査を行なう事が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の体液採取装置の好ましい形態を、図1を用いて説明する。図1は本発明の体液採取装置の構成を模式的に示す図であり、(A)はその縦断面図であり、(B)はその平面図である。この液体採取装置は、筺体101の内部領域に、穿刺手段102を、生体の液体採取面としての体表面への押圧部を形成する膜103に対峙させて支持体104上に配置した構成を有する。更に、筺体101の一部に内部から外部への気体の流れを可能とし、外部から内部への気体の流れを阻止する逆止弁105が設置されている。
【0011】
穿刺手段102は、先端が体表面に刺通可能な突起を有するものであればよい。この穿刺手段としては針などを用いることができる。針の場合には、ステンレス製の針が最も一般的に用いられるが、穿刺するに十分な強度と安全性が確保されれば、如何なる材料の針をも用いることができる。例えば、シリコーンや場合によっては強化プラスチック製の針を用いることもできる。穿刺手段は、体表面への刺通により血液等の体液が抽出されるに十分な程度の穿刺機能をその先端に有するものであればよく、体表面に滲出した体液の筺体内部への誘導を容易とする構造を更に有しているものが好ましい。針を用いる場合には、支持体104まで貫通した孔を有する中空構造の針や、側面に支持体104まで達する連続した微小溝などの体液誘導用の構造が、針の軸(長さ)方向に施されている針が好ましい。また、針の直径、長さ、先端の構造、支持体への配置本数や配置状態は、指先などの体表面の種類、大きさ、体液の種類などに応じて適宜選択することができる。
【0012】
穿刺手段102は支持体104に支持されている。図示した例では、支持体104は導入され体液を格納する機能も同時に備えている。通常、支持体104には、穿刺手段102を支持するに十分な強度を有する硬質のスポンジ状物質或いは多孔質物質、膜状物質が用いられる。
【0013】
膜103は、筺体101の内部領域と外部を仕切る仕切壁の一部となって体表面への押圧部を形成している。膜103は、弾性体から形成されており、これを指先などの体表面で押圧すると、体表面から膜103に対して施される圧力により、膜103に撓みが生じ、かつ撓んだ状態で撓む前の状態に戻ろうとする反発力を持つ。この撓みにより、装置の内部領域に負圧を得るための動作と、体表面を穿刺手段で刺通する動作の2つの動作が同時に行われる。膜103の体表面への押圧操作は、装置及び体表面の少なくとも一方の側からの押圧により行うことができる。
【0014】
負圧を得るための動作においては、まず、膜103が装置の内部領域側へ撓むことで、内部領域側に陽圧状態が形成される。その結果、膜103の装置内部領域側への撓み分に相当する体積の気体(空気)が、内部領域から逆止弁105を通じて外部へ排出される。その状態から、膜103に圧力をかけている体表面を膜103から離していくと、膜103に体表面により負荷されていた圧力が開放され、膜103がその弾性反発力により撓む前の状態へ戻ろうとする。その際、逆止弁105は内部領域から外部への連通を可能とし、外部からの気体の内部領域への流入を阻止する機能を有するので、筺体の内部領域が陰圧となり、外部に対して負圧が発生する。
【0015】
体表面の穿刺動作においては、膜103が穿刺手段102の先端まで到達し、更なる加圧により穿刺手段102が膜103を貫通し、体表面を穿刺する。それにより体表面より血液等の体液が滲出する。
【0016】
滲出した体液は、体表面と膜103の外表面との間に保持される。一方、押圧時に膜103を穿刺手段102の先端が貫通することで膜103には貫通孔が開けられており、この貫通孔を介して体液が装置内に上記のようにして発生した負圧により効果的に誘導される。すなわち、装置の内部領域が陰圧となり、その圧力を補償するために膜103に穿刺手段102により開けられた貫通孔を介して外部の空気が流入する際に、体表面より滲出した体液が同時に装置内部に送り込まれる。
【0017】
穿刺手段102として、中空構造を有する針を使用した場合には、針の側面と膜103との間の隙間と、針の中空部の両方から体液を装置内に効率よく導入可能である。また、側面に軸方向に連続的に伸びる微小溝を有する針を用いた場合には、針の側面と膜103との隙間に、体液の微小通路を設けることができ、この微小通路により体液を装置内へ効果的に誘導可能となる。更に、膜103が弾性体で形成されていることで、体表面、膜103及び穿刺手段102の接触部に滲出してきた体液を良好に保持でき、滲出した体液の装置内への導入を確実に行うことが可能となる。
【0018】
以上のように、膜103の押圧操作により、以下の(1)及び(2)の現象が一瞬の間に生じるものとなる。
(1)膜103を押圧した際に押圧した分だけ逆支弁105から内部の空気が抜ける。
(2)押圧を解消すると膜103が戻ると同時に穿刺手段102により形成された膜103の微小孔から外気と同時に穿刺により滲出した体液が内部に導入される。
【0019】
膜103を構成する弾性体としては、シリコーンゴムのような弾力性を有するゴム状材料を好適に用いることができる。
【0020】
また、支持体104をスポンジなどの多孔質体で形成しておくことで、装置の内部領域に導入された体液を支持体内に容易に回収可能である。体液採取後、この支持体104ごと装置外に取り出して、各種検査用の試料として用いることができる。
【0021】
体液採取装置内に体液分析手段を配置することで、体液採取機能付きの体液分析装置とすることができる。図2にそのような分析装置の好ましい例を示す。図2(A)は分析装置の縦断面図であり、図2(B)は分析装置の平面図である。この装置も、穿刺手段202、膜203、支持体204及び逆止弁205を有し、これらの機能は図1のものと同様である。この装置では、更に、支持体204に、検体となる体液試料に血液を用いる場合に対応するために、穿刺手段202を支持するに十分な強度に加えて、血球を分離するフィルタ機能が付加されている。このフィルタ機能付き支持体を構成するための具体的な材料としては、血球が通過しない程度のサブミクロンサイズの微細孔が施されており、体液の通路を形成し得るものであれば、如何なる構造体や材質でのものでも良い。通常は、多孔質シリカ材料やガラスフィルタのような無機材料、セルロース誘導体やポリスルホンろ過フィルタのような有機材料が用いられる。またこれら材料の表面は検体となる体液中の検査対象物質の吸着が起こらないよう、親水性ポリマー等でコーティングする場合もある。
【0022】
ろ過フィルタを兼ねた支持体204に到達し、ろ過された体液(体液試料が血液であれば血漿)は、毛細管現象により液体搬送路206中に移動し、反応/検出部207と接触する。図2においては、反応/検出部207は液体搬送路206とは個別の部材として記載したが、例えば一般的なイムノクロマトグラフィーのような、液体搬送路206と反応/検出部207が一体化されている方式もあり得る。反応/検出部207が液体搬送路206とは個別の部材として構成されている場合は、液体搬送路206は、直径が数百マイクロメートルから数十マイクロメートルの微小液体搬送路となる。一般的なイムノクロマトグラフィーのような、液体搬送路206と反応/検出部207が一体化されている構成であれば、液体搬送路206は、所謂テストストリップ用フィルタ(ろ紙や高分子フィルム)となる。
【0023】
反応/検出部207は、分析対象物により様々に構成することが可能であり、且つ、液体搬送路206中に複数設けることが可能である。例えば、体液中の腫瘍マーカータンパク(AFPやPSA、CEA等)をターゲットとして分析する場合には、サンドイッチイムノアッセイ法を用いることができる。その場合には、支持体204から反応/検出部207の間に標識二次抗体を配置しておく。このように標識二次抗体を配置しておくことにより、体液が液体搬送路206を移動し、反応/検出部207に達して、反応/検出部207上に固定された一次抗体の部分で、一次抗体−ターゲット−二次抗体の複合体が形成される。二次抗体の標識が酵素であれば、不図示の方法で酵素基質を与え、当該酵素により変換された基質を光学的に検出する、酵素免疫(EIA或いはELISA)装置として用いることができる。二次抗体の標識が酵素或いは触媒であって、酵素の基質、或いは触媒が作用する前駆体が当該酵素或いは触媒により変換されて生じる産生物が発光を生じる場合であれば化学発光免疫法(CLIA)装置として用いることができる。標識として蛍光性材料を用いた場合には、不図示の光源より生じる励起光により生じた傾向を測定することで分析を行う蛍光免疫法(FIA)装置として用いることができる。また、標識としてルテニウムトリビピリジンのようなルテニウム錯体を標識とし、電極上で電解反応により発光を生じさせる方法により分析を行う電気化学発光免疫法(ECLIA)装置として用いることができる。
【0024】
また、反応/検出部207表面に金や銀といったプラズモン共鳴が生じる金属の薄膜、パターンを配置し、当該薄膜、或いはパターン上にターゲットに対する抗体のような捕捉体を固定化した分析手段を配置する構成とすることも可能である。このような構成とすることにより、プラズモン共鳴法装置として用いることもできる。このプラズモン共鳴を利用する分析装置では、ターゲット(検出対象物質)を含む体液を金属上の捕捉体に接触させることにより、その量或いは濃度を光学的に検出することが可能となる。
【0025】
また、例えば、体液中のカリウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンといったイオンを対象物にする場合は、それぞれのイオンのイオン選択性電極を液体搬送路206の当該領域207に配置し、その電気信号の変化により分析を行う。
【0026】
また、体液中のグルコースや乳酸等の有機低分子化合物を検出対象物にする場合は、グルコースオキシダーゼやグルコースデヒドロゲナーゼ、或いは乳酸デヒドロゲナーゼのような酸化還元酵素を電極基板上に固定化して搭載した酵素電極を配置する。酵素電極を用いた構成とすることで、電極上の電子の授受を電流値で分析する方法を一般的に用いることが可能である。また、固定化する酵素がALPやγ−GTPのような酵素であればその基質が変換された生成物を光学的に検出する方法を用いることが可能である。
【0027】
一方、液体回収部208は、反応/検出の終了した液体を回収する部分であり、単なる中空の容器であっても良いし、液体吸収材を設けても良い。液体搬送路206を先に説明したようなサイズのキャピラリー構造としておくことで、液体回収部208方向への液体搬送可能である。更に、膜203が押圧された際に逆支弁205から空気が抜けて膜203が元の状態に戻る際に、筺体の左側が区切られているため、左側部分において若干負圧が大きくなり、液体搬送路206から液体回収部208までの廃液を、更に効果的に行うことが可能となると考えられる。また、廃液を効果的に行うために、液体回収部208を密閉し、一部のみ開口を設けてその部分に逆支弁を設ける等、液体回収部208内部が支持体204内部よりも圧力が低くなる手段を設けても良い。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
図1及び図4(フローチャート)を用いて、本発明の体液採取装置の、血液採取の場合の実施例につき説明を行う。まず、人差し指あるいは中指を図1に示す体液採取装置の膜103上にあてる。この時装置の底面は机等の上に固定されていても良いし、親指で支持する方法もある。次に、膜103上にあてた指を強く押し付ける。押し付けの程度及び時間は、穿刺手段(この場合は穿刺針)102が膜103を貫通し、更に指先の皮膚を貫通して採血の目的に叶うに十分な量の血液が滲出するような程度(変位量)及び時間である。その時、逆止弁105からは、指先が押し付けられ膜103が変形した量だけ装置内部の空気が外部に放出される。十分な血液量が確保された後、膜103に押し付けた指先をゆっくりと元に戻す。指先を元に戻す事により変形していた膜103がその弾性反発力で元の状態に戻る際に内部負圧が生じる。この内部負圧により、指先より滲出した血液が穿刺針102により施された貫通孔を通って装置内部に送入され、支持体104に達しする。支持体104に、体液が浸潤することで体液(血液)採取操作が完了する。
【0029】
(実施例2)
図2、図3及び図5(フローチャート)を用いて、本発明の体液分析装置の、血液分析の場合の実施例につき説明を行う。本実施例では、血液中の酵素成分としての肝機能の指標となるγ-GTP(γ-グルタミルトランスペプチターゼ)の分析を行う事とする。γ-GTPの分析には、基質としてL−γ−グルタミル−p−ニトロアニライド及びグリシルグリシンを用いる。これらを基質とし、γ-GTPにより反応して生成したL−グルタミルグリシルグリシンとp−ニトロアニリンのうちのp−ニトロアニリンを440nmの吸収を光学的に測定することでγ-GTPの分析が実施される。よって、本実施例における筐体209は検出用の波長を含む光に対して透光性であり、かつ400nm付近に吸収の無い材料、例えばガラスを用いて形成されている。
【0030】
次に、実際の血液採取から分析までの流れを説明する。まず、実施例1と同様に、人差し指あるいは中指を図2に示す体液分析装置の膜203上にあてる。この時装置の底面は机等の上に固定されていても良いし、親指で支持する方法もある。次に、膜203上にあてた指を強く押し付ける。押し付ける程度は、穿刺手段(この場合は穿刺針)202が膜203を貫通し、更に指先の皮膚を貫通して採血の目的に叶うに十分な量の血液が滲出するような程度(変位量)、時間が必要である。その時、逆止弁205からは、指先が押し付けられ膜203が変形した量だけ装置内部の空気が外部に放出される。この様態を図示したものが図3である。
【0031】
十分な血液量が確保された後、膜203に押し付けた指先をゆっくりと元に戻す。指先を元に戻す事により変形していた膜203が元の状態に戻り、指先より滲出した血液が穿刺針202により施された貫通孔を通って装置内部に送入され、支持体204に達し、浸潤することで体液(血液)採取がなされる。この時点で本分析装置を37℃の恒温槽(不図示)に入れる。なお、本分析装置は、この時点で恒温槽内に配置可能な状態となっている。
【0032】
支持体204に浸潤する血液はろ過されて血漿となり、毛細管現象現象により液体搬送路206に移動し、反応/検出部207に達する。反応/検出部207には、γ−GTPの基質であるL−γ−グルタミル−p−ニトロアニライド及びグリシルグリシンが予め担持されており、その量は一般的な血液中のγ−GTPにより反応が成されるに量に対し大過剰量である。また、反応/検出部207は一定量の血漿成分のみ保持できるように設計されている。一定時間後、本装置を吸光光度計(不図示)に装着し、440nmの吸光度を測定し、予め測定しておいた検量線からその濃度を求める事で、血液中のγ−GTP分析操作が完了する。尚、本実施例で用いた恒温槽と吸光光度計は一体型になっていても何ら問題はない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の体液採取装置の一例の構造を模式的に示す図であり、(A)はその縦断面図、(B)はその平面図である。
【図2】本発明の体液採取機能付きの分析装置の一例の構造を模式的に示す図であり、(A)はその縦断面図、(B)はその平面図である。
【図3】実施例2における体液分析装置の使用状態を示す図である。
【図4】実施例1における体液採取工程のフローチャートを示す図である。
【図5】実施例2における体液採取及び分析工程のフローチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0034】
101・・・・ガイド板
102・・・・穿刺手段(針)
103・・・・膜
104・・・・支持体
105・・・・逆止弁
201・・・・ガイド板
202・・・・穿刺手段(針)
203・・・・膜
204・・・・支持体
205・・・・逆止弁
206・・・・液体搬送路
207・・・・反応/検出部
208・・・・液体回収部
209・・・・筐体
210・・・・指先

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の体液採取面より体液を採取するための体液採取装置であって、
密閉し得る内部領域を有する筺体と、
前記内部領域を外部と仕切る仕切壁の一部に設けられた前記体液採取面への押圧部と、
前記内部領域に配置され、前記体液採取面を刺通して該体液採取面に体液を滲出させるための穿刺手段と、
前記内部領域に負圧を発生させるための負圧発生手段と、
を有し、
前記穿刺手段が、前記押圧部への前記体液採取面の押圧により、前記押圧部を貫通して貫通孔を形成し、更に前記体液採取面を刺通可能である位置に設けられており、
前記負圧手段は、前記体液採取面が前記押圧部から離される際の押圧力の解消に伴って前記内部領域に負圧を発生させる機構を有する
ことを特徴とする体液採取装置。
【請求項2】
前記押圧部が弾性を有する膜から形成され、かつ、前記内部領域と外部とを連通可能とし、前記内部領域からの気体のみを外部に流す逆止弁を前記筺体に設けることで前記負圧発生手段を構成する請求項1に記載の体液採取装置。
【請求項3】
前記穿刺手段が、前記内部領域の、前記弾性を有する膜を介して該膜を押圧する体液採取面と対峙する位置に設けられている請求項2に記載の体液採取装置。
【請求項4】
前記体液の分析手段を更に有する請求項1乃至3のいずれかに記載の体液採取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−209747(P2007−209747A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3598(P2007−3598)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】