説明

体積型ホログラム積層体の検査方法および体積型ホログラム積層体の検査装置

【課題】体積型ホログラム層の再生光の影響を受けることなく、体積型ホログラム積層体の欠陥を精度良く安定して検出することが可能な体積型ホログラム積層体の検査方法を提供する。
【解決手段】まず照明装置41により、体積型ホログラム層11を有する体積型ホログラム積層体10に対して体積型ホログラム層11の特定波長と異なる波長の検査光L1を照射する。次に、カメラ(受光装置)42は、体積型ホログラム積層体10からの反射光L2を受光する。その後、検出装置50は、反射光L2による画像を画像処理することにより、体積型ホログラム積層体10の欠陥を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体積型ホログラム積層体の検査方法および体積型ホログラム積層体の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラムは、互いにコヒーレントな二つの光(物体光と参照光)を干渉させることにより、物体光の波面情報が干渉縞として感光材料に記録されたものであり、干渉縞記録時の参照光と同一条件の光で照明すると、干渉縞による回折現象が生じ、元の物体光と同一の波面が再生できるものである。このようなホログラムは、干渉縞の記録形態により、いくつかの種類(レリーフ型ホログラム、体積型ホログラム等)に分類される。
【0003】
ここで、上記レリーフ型ホログラムは、光の干渉によって生じる干渉縞をホログラム層表面の微細な凹凸パターンとして賦型したホログラムである。一方、上記体積型ホログラムは光の干渉によって生じる干渉縞を、ホログラム層内部の屈折率や透過率が異なる縞として厚み方向に三次元的に記録したホログラムである。
【0004】
このうちレリーフ型ホログラムの欠陥を検査する方法として、例えば特許文献1−4に記載された方法が存在する。すなわちレリーフ型ホログラムに対して光を照射して、ホログラム層の凹凸パターンが正しく賦型されたか検査する検査方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−187008号公報
【特許文献2】特開2006−105844号公報
【特許文献3】特開2006−112991号公報
【特許文献4】特開2006−145386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来、特定波長の照明光を特定角度で照射した場合のみ再生像を再生する体積型ホログラム積層体を検査する検査方法については検討されていない。
【0007】
一方、従来の検査方法を体積型ホログラム積層体の検査に用いることも考えられる。しかしながら、この場合、特定波長及び特定角度が含まれる照明光により再生される体積型ホログラム層からの再生像が欠陥として認識される、または欠陥の検出精度を低下させる原因となるため、安定した欠陥の検出ができないという問題がある。
【0008】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、体積型ホログラム積層体の欠陥を精度良く安定して検出することが可能な体積型ホログラム積層体の検査方法および体積型ホログラム積層体の検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも特定波長に対する波長選択性および特定角度に対する角度選択性を有する体積型ホログラム層を有する体積型ホログラム積層体の検査方法において、体積型ホログラム積層体に対して体積型ホログラム層の特定波長と異なる波長の検査光を照射するか、または体積型ホログラム積層体に対して体積型ホログラム層の特定角度と異なる角度で検査光を照射する工程と、体積型ホログラム積層体からの反射光を受光する工程と、反射光による画像を画像処理することにより、体積型ホログラム積層体の欠陥を検出する工程とを備えたことを特徴とする体積型ホログラム積層体の検査方法である。
【0010】
本発明は、少なくとも特定波長に対する波長選択性および特定角度に対する角度選択性を有する体積型ホログラム層を有する体積型ホログラム積層体の検査方法において、体積型ホログラム積層体に対して体積型ホログラム層の特定波長と異なる波長の検査光を体積型ホログラム層の特定角度と異なる角度で照射する工程と、体積型ホログラム積層体からの反射光を受光する工程と、反射光による画像を画像処理することにより、体積型ホログラム積層体の欠陥を検出する工程とを備えたことを特徴とする体積型ホログラム積層体の検査方法である。
【0011】
本発明は、検査光は、体積型ホログラム積層体に対して垂直に照射され、体積型ホログラム積層体からの反射光は、体積型ホログラム積層体に対して垂直に反射されることを特徴とする体積型ホログラム積層体の検査方法である。
【0012】
本発明は、少なくとも特定波長に対する波長選択性および特定角度に対する角度選択性を有する体積型ホログラム層を有する体積型ホログラム積層体の検査装置において、体積型ホログラム積層体に対して体積型ホログラム層の特定波長と異なる波長の検査光を照射するか、または体積型ホログラム積層体に対して体積型ホログラム層の特定角度と異なる角度で検査光を照射する照明装置と、体積型ホログラム積層体からの反射光を受光する受光装置と、受光装置へ入射した反射光による画像を画像処理することにより、体積型ホログラム積層体の欠陥を検出する検出装置とを備えたことを特徴とする体積型ホログラム積層体の検査装置である。
【0013】
本発明は、少なくとも特定波長に対する波長選択性および特定角度に対する角度選択性を有する体積型ホログラム層を有する体積型ホログラム積層体の検査装置において、体積型ホログラム積層体に対して体積型ホログラム層の特定波長と異なる波長の検査光を体積型ホログラム層の特定角度と異なる角度で照射する照明装置と、体積型ホログラム積層体からの反射光を受光する受光装置と、受光装置へ入射した反射光による画像を画像処理することにより、体積型ホログラム積層体の欠陥を検出する検出装置とを備えたことを特徴とする体積型ホログラム積層体の検査装置である。
【0014】
本発明は、照明装置からの検査光は、体積型ホログラム積層体に対して垂直に照射され、体積型ホログラム積層体からの反射光は、体積型ホログラム積層体に対して垂直に反射されることを特徴とする体積型ホログラム積層体の検査装置である。
【0015】
本発明は、体積型ホログラム積層体は、支持シート上に保持された状態で搬送され、照明装置および受光装置の前工程側に、体積型ホログラム積層体を保持する支持シートを巻出す巻出し部が設けられ、照明装置および受光装置の後工程側に、体積型ホログラム積層体を保持する支持シートを巻取る巻取り部が設けられていることを特徴とする体積型ホログラム積層体の検査装置である。
【0016】
本発明は、照明装置および受光装置の後工程側に、欠陥除去部が設けられ、検出装置により体積型ホログラム積層体に欠陥が検出された場合、支持シート上の当該体積型ホログラム積層体が欠陥除去部まで自動で搬送され、当該体積型ホログラム積層体を支持シートから剥離するため、体積型ホログラム積層体を保持する支持シートの搬送を一時停止することを特徴とする体積型ホログラム積層体の検査装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、体積型ホログラム積層体に対して体積型ホログラム層の特定波長と異なる波長の検査光を照射し、または体積型ホログラム積層体に対して体積型ホログラム層の特定角度と異なる角度で検査光を照射する。このことにより、体積型ホログラム層の再生光の影響を受けることなく、体積型ホログラム積層体の欠陥を精度良く安定して検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、体積型ホログラム積層体を示す概略断面図。
【図2】図2(a)(b)は、それぞれ体積型ホログラム層の波長選択性および角度選択性を説明する図。
【図3】図3は、体積型ホログラム層の光学特性を示す概略図。
【図4】図4は、本発明の一実施の形態による体積型ホログラム積層体の検査装置を示す概略平面図。
【図5】図5は、本発明の一実施の形態による体積型ホログラム積層体の検査装置のうち検査ユニットを拡大して示す図。
【図6】図6は、体積型ホログラム積層体に垂直に照射された検査光および体積型ホログラム積層体で反射した反射光を示す概略図。
【図7】図7は、検査ユニットおよび検出装置により体積型ホログラム積層体の欠陥を検出するステップを示すフロー図。
【図8】図8(a)−(c)は、カメラにより撮像されたグレー画像を示す図。
【図9】図9は、本発明の一実施の形態による体積型ホログラム積層体の検査装置の変形例を示す図。
【図10】図10は、本発明の一実施の形態による体積型ホログラム積層体の検査装置の他の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について、図1乃至図10を参照して説明する。
【0020】
体積型ホログラム積層体の構成
まず、図1および図2により、本実施の形態による検査装置により検査される体積型ホログラム積層体について説明する。ここで、図1は、体積型ホログラム積層体を示す概略断面図であり、図2(a)(b)は、それぞれ体積型ホログラム層の波長選択性および角度選択性を説明するための図である。図3は、体積型ホログラム層の光学特性を示す概略図である。
【0021】
図1に示すように、体積型ホログラム積層体10は、体積型ホログラム層11と、体積型ホログラム層11上に設けられた保護層12とを備えている。また体積型ホログラム層11のうち保護層12の反対側には、体積型ホログラム層11側から順に、第1基材層13、第1粘着層14、第2基材層15、第2粘着層16が設けられている。また体積型ホログラム積層体10は、第2粘着層16により、シート状の支持シート20に剥離可能に貼着されている。この支持シート20上には複数の体積型ホログラム積層体10が配置されており、隣接する体積型ホログラム積層体10同士の間には切れ込み17が形成されている。
【0022】
体積型ホログラム層11は、一般に用いられるものであれば特に限定されるものではない。好ましい体積型ホログラム層11としては、例えば体積型で反射型のホログラム(リップマンホログラム)が挙げられる。この体積型ホログラム層11の厚みとしては、一般には0.1μm〜50μm、好ましくは5〜20μmである。
【0023】
この体積型ホログラム層11は、特定波長に対する波長選択性を有している。例えば図2(a)に示すように、体積型ホログラム層11は、特定波長領域の光(例えばG)を反射するとともに特定波長領域以外の光(例えばR、B)を透過する性質を有している。また体積型ホログラム層11は、特定角度に対する角度選択性を有している。例えば図2(b)に示すように、体積型ホログラム層11は、体積型ホログラム層11に対して特定角度α(αは0°以外の角度)で入射した再生光のみを反射し、体積型ホログラム層11正面に向けて再生像を再生する性質を有している。
【0024】
また、体積型ホログラム層11の光学特性は、分光光度計等を用いて透過率を測定し、分光透過率曲線からそれぞれ以下のようにして定義する。すなわち図3に示すように、体積型ホログラム層11の回折効率は、分光透過率のピーク透過率A及びベース透過率Bを求め、回折効率=|B−A|/B(%)として定義する。体積型ホログラム層11の半値幅は、ピーク透過率Aに回折効率の半分を加えた透過率(A+|B−A|/2)における分光透過率の左端(C)及び右端(D)を求め、半値幅=|D−C|(nm)として定義する。また、体積型ホログラム層11の中心波長は、半値幅の算出時に求めたCに半値幅の半分を加えた波長(=C+|D−C|/2)を中心波長として定義する。
【0025】
保護層12としては、ホログラム画像の視認性を悪化させないもので、体積型ホログラム層11の保護効果が得られるものであれば限定されない。このような保護層12としては、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ弗化エチレン系フィルム、ポリ弗化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン−ビニルアルコールフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリアミドフィルム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム等が例示されるが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好適に用いられる。保護層12の膜厚は、一般には2μm〜200μm、好ましくは10μm〜50μmである。
【0026】
第1基材層13は、体積型ホログラム層11を支持するとともに体積型ホログラム積層体10全体の強度を高めるために設けられる。この第1基材層13は、保護層12と同様の材料から構成することができるが、とりわけポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好適に用いられる。第1基材層13の厚みは、一般には2μm〜200μm、好ましくは10μm〜50μmである。
【0027】
第1粘着層14は、第1基材層13と第2基材層15とを接着するための層である。このような第1粘着層14の材料としては例えば、アクリル樹脂系、アクリル酸エステル樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、またはこれらの共重合体系、スチレン−ブタジエン共重合体系、天然ゴム系、カゼイン系、ゼラチン系、ロジンエステル樹脂系、テルペン樹脂系、フェノール樹脂系、クロマインデン樹脂系、ポリビニルエーテル樹脂系、シリコーン樹脂系粘着剤等が挙げられる。また、粘着剤の代わりに天然ゴム系、再生ゴム系、クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系、スチレン・ブタジエンゴム系、熱可塑性エラストマー系等のエラストマー系接着剤、また、エポキシ樹脂系、ポリウレタン系等の合成樹脂系接着剤、反応型アクリル系、シアノアクリレート系等の化学反応型接着剤、その他、UV硬化型接着剤、EB硬化型接着剤、更に、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂系、ポリアミド系、ポリエステル系、熱可塑性エラストマー系、反応ホットメルト系等のホットメルト系接着剤、また、水性接着剤である水溶性接着剤、エマルジョン系接着剤、ラテックス系接着剤、更に無機系接着剤等種々のものが挙げられる。第1粘着層14の厚みとしては、特に限定されないが、例えば4μm〜20μmが好ましい。
【0028】
第2基材層15は、ホログラム画像の視認性を高めるための着色フィルムからなる。第2基材層15を構成する着色フィルムの色としては、例えば、黒、青、赤等が挙げられるが、記録されているホログラムが、コントラスト向上により、視認性が高められれば、どのような色を適用しても良い。材料としては、例えば着色剤として、一般の有機顔料、無機顔料、染料等が適用でき、カーボンブラックやアニリンブラック等の黒色顔料、ナフトールレッドF5RK、フタロシアニンブルー等の着色顔料、アシッドブラック、クロムブラック、リアテクティブブラック等の黒色染料、ディスパースレッド、カチオンブルー、カチオンイエロー等の染料が例示され、これらを単独または混合して使用することができる。第2基材層15を構成する材料としては一般の合成樹脂が挙げられ、例えば保護層12と同様なプラスチックフィルムが挙げられる。そしてフィルム成形時に、前記顔料・染料を混合することで、着色フィルムを作製することが可能である。この第2基材層15の厚みは、一般には2μm〜200μm、好ましくは10μm〜50μmである。また、このような着色フィルムを用いるのに代えて、第1粘着層14として顔料または染料により着色した着色粘着材を用いてもよい。この場合、第2基材層15及び第2粘着層16を必要としない。
【0029】
第2粘着層16は、体積型ホログラム積層体10と支持シート20とを接着するための層である。第2粘着層16の材料としては、第1粘着層14と同様のものを挙げることができる。第2粘着層16の厚みとしては、特に限定されないが、例えば4μm〜20μmが好ましい。
【0030】
支持シート20は、複数の体積型ホログラム積層体10を保持するためのシートであり、通常は各体積型ホログラム積層体10を貼付媒体(例えば偽造防止が必要な書類やカード)に貼付する直前に、各体積型ホログラム積層体10の第2粘着層16から剥離されるものである。この支持シート20の材料としては、例えば、保護層12と同様のプラスチックフィルム、紙等が挙げられ、その表面がワックス処理、フッ素処理、シリコーン処理されることで、離型性が付与されていることが好ましい。また支持シート20の厚みは、10μm〜500μmとすることが好ましい。
【0031】
なお、体積型ホログラム積層体10の層構成については、以上説明したものに限られるものではない。例えば、体積型ホログラム積層体10が、支持シート20上の第2粘着層16と、第2粘着層16上に設けられた体積型ホログラム層11と、体積型ホログラム層11上に設けられた保護層12とからなっていても良い。あるいは、体積型ホログラム積層体10が、支持シート20上の第2粘着層16と、第2粘着層16上に設けられた第2基材層15と、第2基材層15上に設けられた体積型ホログラム層11と、体積型ホログラム層11上に設けられた保護層12とからなっていても良い。
【0032】
体積型ホログラム積層体の検査装置の構成
次に、図4および図5により、本実施の形態による体積型ホログラム積層体の検査装置について説明する。ここで、図4は、本実施の形態による体積型ホログラム積層体の検査装置を示す概略平面図であり、図5は、本実施の形態による体積型ホログラム積層体の検査装置のうち検査ユニットを拡大して示す図である。
【0033】
図4に示すように、検査装置30は、体積型ホログラム積層体10を保持する支持シート20を巻装するとともに、この支持シート20を巻出す巻出し部31と、巻出し部31の後工程側(すなわち支持シート20の送り方向前側)に設けられた検査ユニット40と、検査ユニット40の後工程側に設けられ、支持シート20を巻取る巻取り部32とを備えている。
【0034】
このうち検査ユニット40には、体積型ホログラム積層体10、具体的には保護層12、体積型ホログラム層11、第1基材層13、第1粘着層14、および第2基材層15が形成する界面、および各層内部に発生する傷、汚れ、気泡、異物等からなる欠陥を検出する検出装置50が接続されている。この検出装置50は、後述するように、カメラ(受光装置)42からの反射光L2による画像を画像処理することにより、体積型ホログラム積層体10の欠陥を検出するものである。
【0035】
検出装置50には、検査装置30全体を制御する制御ユニット51が接続されている。この制御ユニット51は、巻出し部31および巻取り部32を駆動制御し、支持シート20の送りを開始または停止させる機能や、支持シート20の送り速度を制御する機能を有している。
【0036】
また巻出し部31と検査ユニット40との間には、支持シート20を案内する案内ローラ33、34、35が設けられている。また検査ユニット40の後工程側に、欠陥除去部36が設けられ、欠陥除去部36と巻取り部32との間に、案内ローラ37が設けられている。
【0037】
次に図5により、検査ユニット40の構成について更に説明する。図5に示すように、検査ユニット40は、体積型ホログラム積層体10に対して検査光L1を照射する照明装置41と、体積型ホログラム積層体10からの反射光L2を受光するカメラ(受光装置)42とを有している。
【0038】
このうち照明装置41は、体積型ホログラム層11の特定波長と異なる波長の検査光L1を体積型ホログラム積層体10に向けて照射する照明装置であり、複数のLED光源43と、ハーフミラー44とを有している。なお図5において、照明装置41は同軸落射照明装置からなっている。
【0039】
このうち複数のLED光源43は、支持シート20に水平な方向に検査光L1を照射するようになっている。この検査光L1は体積型ホログラム層の中心波長から半値幅の2倍の波長域に含まれない波長の光であることが好ましい。このLED光源43は、例えば体積型ホログラム層11が発振波長532nmのレーザを用いて記録されたものである場合、特定波長の光(すなわち波長532nmの光(G))以外の光、例えば赤色光またはUV光を発光する光源からなることが好ましい。
【0040】
またハーフミラー44は、LED光源43からの検査光L1をその内部で反射させ、検査光L1を体積型ホログラム積層体10に対して垂直に照射させるとともに、体積型ホログラム積層体10で垂直に反射した反射光L2を透過してカメラ42に入射させるようになっている。
【0041】
ところで、本実施の形態において、体積型ホログラム層11は、上述したように0°以外の特定角度αに対する角度選択性を有している(図2(b)参照)。したがって、照明装置41からの検査光L1は、体積型ホログラム積層体10に対して体積型ホログラム層11の特定角度αと異なる角度(すなわち0°)で照射される。
【0042】
なお、外乱光による影響を避けるため、検査対象の体積型ホログラム層11、照明装置41、およびカメラ42を遮蔽体45によって取り囲むことが好ましい。
【0043】
体積型ホログラム積層体の検査方法
次に、本実施の形態による体積型ホログラム積層体の検査方法について、図4乃至図8を用いて説明する。具体的には、検査装置30を用いて、体積型ホログラム積層体10の保護層12、体積型ホログラム層11、第1基材層13、第1粘着層14、および第2基材層15が形成する界面、および各層内部の欠陥を検出する方法について説明する。ここで図6は、体積型ホログラム積層体に垂直に照射された検査光および体積型ホログラム積層体で反射した反射光を示す概略図であり、図7は、検査ユニットおよび検出装置により体積型ホログラム積層体の欠陥を検出するステップを示すフロー図であり、図8(a)−(c)は、それぞれカメラにより撮像されたグレー画像を示す図である。
【0044】
まず、制御ユニット51によって制御されることにより、巻出し部31から支持シート20と、支持シート20上に保持された体積型ホログラム積層体10とが送り出される(図4参照)。次に、支持シート20上に保持された体積型ホログラム積層体10は、案内ローラ33、34、35を順次介して、検査ユニット40近傍の位置に到達する。次いで、検査ユニット40により、以下のようにして体積型ホログラム積層体10の検査が行われる。
【0045】
まず照明装置41のLED光源43により、体積型ホログラム層11の特定波長(例えば波長532nm(G))以外の光(例えば赤色光またはUV光)からなる検査光L1が照射される(図5参照)。この検査光L1は、ハーフミラー44で反射し、体積型ホログラム積層体10に垂直に照射される。すなわち検査光L1は、体積型ホログラム積層体10に対して体積型ホログラム層11の特定角度αと異なる角度(0°)で照射される。
【0046】
この際、図6に示すように、体積型ホログラム積層体10に垂直に照射された検査光L1のうち一部は保護層12で反射され、これが反射光L2として体積型ホログラム積層体10に対して垂直に反射される(図6の符号L−1)。
【0047】
検査光L1のうち保護層12で反射されなかった光は、体積型ホログラム層11に達する。ここで、上述したように、検査光L1は、体積型ホログラム層11の特定波長(例えば波長532nm(G))以外の光からなっている。また検査光L1は、体積型ホログラム積層体10に対して体積型ホログラム層11の特定角度αと異なる角度(0°)で照射される。したがって、検査光L1のうち一部は保護層12との界面で反射され、反射光L2として体積型ホログラム積層体10に対して垂直に反射される。反射されなかった検査光L1は、体積型ホログラム層11に記録されたホログラム像を再生することなく、体積型ホログラム層11を透過する。ただし、体積型ホログラム層11に欠陥が存在する場合、欠陥部に照射された検査光L1は反射され、反射光L2として体積型ホログラム積層体10に対して垂直に反射される(図6の符号L−2)。
【0048】
体積型ホログラム層11を透過した検査光L1のうち一部は、第1基材層13(図6の符号L−3)または第2基材層15(図6の符号L−4)で反射し、それぞれ反射光L2として体積型ホログラム積層体10表面から垂直に出射される。さらに検査光L1のうち一部は、体積型ホログラム積層体10内部に吸収される(図6の符号L−5)。
【0049】
続いて、体積型ホログラム積層体10から垂直に反射された反射光L2は、カメラ42によって受光され、反射光L2に基づく画像が形成される。次に、カメラ42から検出装置50に対して反射光L2による画像が送信される。続いて検出装置50は、カメラ42からの反射光L2による画像を画像処理することにより、体積型ホログラム積層体10の保護層12、体積型ホログラム層11、第1基材層13、第1粘着層14、および第2基材層15が形成する界面、および各層内部の欠陥を検出する。
【0050】
この間、検査ユニット40のカメラ42は、体積型ホログラム積層体10からの反射光の光強度に基づいて数値化した(例えば0〜255の256階調)グレー画像として撮像し、このグレー画像を検出装置50に送信する(図7のステップS1、S2、S3)。
【0051】
次に、検出装置50は、予め定められた所定の閾値(上限閾値および下限閾値)を基準として、グレー画像の光強度の数値がこの範囲に入るかを判断する(図7のステップS4)。すなわちグレー画像のうち、光強度の数値が上限閾値(例えば200)を上回る部分(白色部分)が存在するか、または光強度の数値が下限閾値(例えば50)を下回る部分(黒色部分)が存在するか否かを判定する。
【0052】
ところで、上述したように、検査光L1は、体積型ホログラム層11の特定波長以外の光からなっている。また検査光L1は、体積型ホログラム積層体10に対して体積型ホログラム層11の特定角度αと異なる角度で照射される。したがって、体積型ホログラム層11の図柄の有無や形状等にかかわらず、カメラ42からのグレー画像に特定の図柄は存在しない。すなわち、仮に体積型ホログラム積層体10の保護層12、体積型ホログラム層11、第1基材層13、第1粘着層14、および第2基材層15が形成する界面、および各層内部に欠陥が存在しない場合、カメラ42からのグレー画像は全体として略一定の光強度を有することになる(図8(a)参照)。
【0053】
これに対して、仮に体積型ホログラム積層体10の保護層12、体積型ホログラム層11、第1基材層13、第1粘着層14、および第2基材層15が形成する界面、および各層内部の一部に欠陥が生じている場合、グレー画像の一部に、その周囲より暗い部分または明るい部分が生じる。例えば、保護層12、体積型ホログラム層11、第1基材層13、第1粘着層14、および第2基材層15が形成する界面、および各層内部の一部にキズや汚れ等の欠陥が生じている場合、検査光は当該欠陥部分D1で拡散し、カメラ42に受光される反射光の光強度が低下するため、グレー画像のうち当該欠陥部分D1がその周囲より黒く表示される(図8(b)参照)。他方、保護層12、体積型ホログラム層11、第1基材層13、第1粘着層14、および第2基材層15が形成する界面、および各層内部の一部に気泡等の欠陥が生じている場合、検査光は当該欠陥部分D2が生じている層と空気層との屈折率差により周辺と比較して反射率が増加し、カメラ42に受光される反射光の光強度が高くなるため、当該欠陥部分D2がその周囲より白く表示される(図8(c)参照)。
【0054】
このようにして、検出装置50は、グレー画像のうち光強度の数値が上限閾値(例えば200)を上回る部分(白色)または下限閾値(例えば50)を下回る部分(黒色)がいずれも存在しない場合(図8(a))、体積型ホログラム積層体10の保護層12、体積型ホログラム層11、第1基材層13、第1粘着層14、および第2基材層15が形成する界面、および各層内部に欠陥が生じていないとして、OK判定を行う(図7のステップS5)。他方、検出装置50は、グレー画像のうち光強度の数値が上限閾値(例えば200)を上回る部分(白色)または下限閾値(例えば50)を下回る部分(黒色)が存在する場合(図8(b)(c))、体積型ホログラム積層体10の保護層12、体積型ホログラム層11、第1基材層13、第1粘着層14、および第2基材層15が形成する界面、または各層内部に欠陥が生じているとして、NG判定を行う(図7のステップS6)。
【0055】
このうち検出装置50がOK判定を行った場合(図7のステップS5)、すなわち検出装置50により体積型ホログラム積層体10に欠陥が検出されなかった場合、制御ユニット51により引き続き支持シート20が搬送され、次の体積型ホログラム積層体10の検査が行われる。そして検査後の体積型ホログラム積層体10は、欠陥除去部36を通過して、支持シート20とともに巻取り部32により巻取られる。
【0056】
他方、検出装置50がNG判定を行った場合、すなわち検出装置50により体積型ホログラム積層体10に欠陥が検出された場合(図7のステップS6)、以下のように制御が行われる。まず、制御ユニット51により、支持シート20上の欠陥が発見された体積型ホログラム積層体10が欠陥除去部36まで自動で搬送される(図7のステップS7)。続いて、当該体積型ホログラム積層体10が欠陥除去部36に到達した際、制御ユニット51は、当該体積型ホログラム積層体10を支持シート20から剥離するため、体積型ホログラム積層体10を保持する支持シート20の搬送を一時停止する(図7のステップS8)。次に、オペレータが、欠陥が生じている体積型ホログラム積層体10を支持シート20から剥離する(図7のステップS9)。その後、オペレータが制御ユニット51を操作することにより、支持シート20の搬送が再開され、体積型ホログラム積層体10の検査が続けられる(図7のステップS10)。
【0057】
このように本実施の形態によれば、体積型ホログラム積層体10に対して体積型ホログラム層11の特定波長と異なる波長の検査光L1を照射し、かつ体積型ホログラム積層体10に対して体積型ホログラム層11の特定角度αと異なる角度で検査光L1を照射する。このことにより、体積型ホログラム層11の図柄に関わらず、体積型ホログラム層11の再生光の影響を受けずに体積型ホログラム積層体10の欠陥を検出することができる。したがって、体積型ホログラム積層体10の欠陥を精度良く安定して検出することができる。
【0058】
また本実施の形態によれば、検査装置30内に特殊な光学系が必要とされることがないので、検査装置30の構成を簡単なものとすることができる。
【0059】
また本実施の形態によれば、体積型ホログラム積層体10を保持する支持シート20を巻出す巻出し部31と、体積型ホログラム積層体10を保持する支持シート20を巻取る巻取り部32を設け、この巻出し部31と巻取り部32との間に配置された検査ユニット40により体積型ホログラム積層体10の検査を行う。これにより、支持シート20上に配置された複数の体積型ホログラム積層体10を効率良く短時間で検査することができる。
【0060】
また本実施の形態によれば、検出装置50により体積型ホログラム積層体10に欠陥が検出された場合、支持シート20上の当該体積型ホログラム積層体10を欠陥除去部36まで自動で搬送し、当該体積型ホログラム積層体10を支持シート20から剥離するため、体積型ホログラム積層体10を保持する支持シート20の搬送を一時停止する。このことにより、体積型ホログラム積層体10の検査を省力化することができる。
【0061】
ところで本実施の形態において、検査光L1は、体積型ホログラム積層体10に対して垂直に照射され、体積型ホログラム積層体10からの反射光L2は、体積型ホログラム積層体10に対して垂直に反射される。しかしながら、検査光L1が体積型ホログラム積層体10に対して体積型ホログラム層11の特定角度αと異なる角度で照射されれば、これに限られるものではない。例えば、体積型ホログラム層11の特定角度αが約0°である場合、以下のように構成しても良い。すなわち図9に示すように、LED光源43およびカメラ42をそれぞれ体積型ホログラム積層体10に対して斜めに配置する。そして、LED光源43からの検査光L1を体積型ホログラム積層体10に対して入射角度β(0°<β<90°)で入射させ、体積型ホログラム積層体10からの反射光L2を体積型ホログラム積層体10に対して反射角度β(0°<β<90°)で反射させて、この反射光L2をカメラ42で受光しても良い。
【0062】
また本実施の形態において、検査光L1は、体積型ホログラム層11の特定波長以外の光からなり、かつ検査光L1は、体積型ホログラム積層体10に対して体積型ホログラム層11の特定角度αと異なる角度で照射される。しかしながら、これに限らず、このうち一方の条件のみを満たしていれば、上述した作用効果を得ることができる。すなわち、検査光L1が体積型ホログラム層11の特定波長以外の光からなるとともに、検査光L1が体積型ホログラム積層体10に対して体積型ホログラム層11の特定角度αと略同一の角度で照射されても良い。あるいは、検査光L1が体積型ホログラム層11の特定波長と略同一波長の光からなるとともに、検査光L1が体積型ホログラム積層体10に対して体積型ホログラム層11の特定角度αと異なる角度で照射されても良い。
【0063】
また本実施の形態において、検査光L1を体積型ホログラム積層体10の特定角度αとは異なる角度から入射させ、体積型ホログラム積層体10からの反射光L2をカメラ42で受光する。しかしながら、これに限らず、検査光L1を体積型ホログラム積層体10の特定角度αとは異なる角度から入射させ、その反射光L2の反射角度とは異なる任意の角度の位置に配置したカメラ42により、欠陥部分から拡散された光L3を受光しても良い(図10参照)。この場合、グレー画像のうち、欠陥部分からの拡散した光がその周囲より白く表示される。
【符号の説明】
【0064】
10 体積型ホログラム積層体
11 体積型ホログラム層
12 保護層
13 第1基材層
14 第1粘着層
15 第2基材層
16 第2粘着層
20 支持シート
30 検査装置
31 巻出し部
32 巻取り部
36 欠陥除去部
40 検査ユニット
41 照明装置
42 カメラ(受光装置)
43 LED光源
44 ハーフミラー
50 検出装置
51 制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも特定波長に対する波長選択性および特定角度に対する角度選択性を有する体積型ホログラム層を有する体積型ホログラム積層体の検査方法において、
体積型ホログラム積層体に対して体積型ホログラム層の特定波長と異なる波長の検査光を照射するか、または体積型ホログラム積層体に対して体積型ホログラム層の特定角度と異なる角度で検査光を照射する工程と、
体積型ホログラム積層体からの反射光を受光する工程と、
反射光による画像を画像処理することにより、体積型ホログラム積層体の欠陥を検出する工程とを備えたことを特徴とする体積型ホログラム積層体の検査方法。
【請求項2】
少なくとも特定波長に対する波長選択性および特定角度に対する角度選択性を有する体積型ホログラム層を有する体積型ホログラム積層体の検査方法において、
体積型ホログラム積層体に対して体積型ホログラム層の特定波長と異なる波長の検査光を体積型ホログラム層の特定角度と異なる角度で照射する工程と、
体積型ホログラム積層体からの反射光を受光する工程と、
反射光による画像を画像処理することにより、体積型ホログラム積層体の欠陥を検出する工程とを備えたことを特徴とする体積型ホログラム積層体の検査方法。
【請求項3】
検査光は、体積型ホログラム積層体に対して垂直に照射され、体積型ホログラム積層体からの反射光は、体積型ホログラム積層体に対して垂直に反射されることを特徴とする請求項1または2記載の体積型ホログラム積層体の検査方法。
【請求項4】
少なくとも特定波長に対する波長選択性および特定角度に対する角度選択性を有する体積型ホログラム層を有する体積型ホログラム積層体の検査装置において、
体積型ホログラム積層体に対して体積型ホログラム層の特定波長と異なる波長の検査光を照射するか、または体積型ホログラム積層体に対して体積型ホログラム層の特定角度と異なる角度で検査光を照射する照明装置と、
体積型ホログラム積層体からの反射光を受光する受光装置と、
受光装置へ入射した反射光による画像を画像処理することにより、体積型ホログラム積層体の欠陥を検出する検出装置とを備えたことを特徴とする体積型ホログラム積層体の検査装置。
【請求項5】
少なくとも特定波長に対する波長選択性および特定角度に対する角度選択性を有する体積型ホログラム層を有する体積型ホログラム積層体の検査装置において、
体積型ホログラム積層体に対して体積型ホログラム層の特定波長と異なる波長の検査光を体積型ホログラム層の特定角度と異なる角度で照射する照明装置と、
体積型ホログラム積層体からの反射光を受光する受光装置と、
受光装置へ入射した反射光による画像を画像処理することにより、体積型ホログラム積層体の欠陥を検出する検出装置とを備えたことを特徴とする体積型ホログラム積層体の検査装置。
【請求項6】
照明装置からの検査光は、体積型ホログラム積層体に対して垂直に照射され、体積型ホログラム積層体からの反射光は、体積型ホログラム積層体に対して垂直に反射されることを特徴とする請求項4または5記載の体積型ホログラム積層体の検査装置。
【請求項7】
体積型ホログラム積層体は、支持シート上に保持された状態で搬送され、
照明装置および受光装置の前工程側に、体積型ホログラム積層体を保持する支持シートを巻出す巻出し部が設けられ、
照明装置および受光装置の後工程側に、体積型ホログラム積層体を保持する支持シートを巻取る巻取り部が設けられていることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項記載の体積型ホログラム積層体の検査装置。
【請求項8】
照明装置および受光装置の後工程側に、欠陥除去部が設けられ、検出装置により体積型ホログラム積層体に欠陥が検出された場合、支持シート上の当該体積型ホログラム積層体が欠陥除去部まで自動で搬送され、当該体積型ホログラム積層体を支持シートから剥離するため、体積型ホログラム積層体を保持する支持シートの搬送を一時停止することを特徴とする請求項7記載の体積型ホログラム積層体の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−261744(P2010−261744A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110827(P2009−110827)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】