説明

体重管理のための分枝アルファ−グルカン

少なくとも10Daの平均モル重量を有する高度に分枝したα−グルカンを、好ましくは食物タンパク質と一緒に液体栄養的もしくは製薬学的組成物中にα−グルカンを導入することにより、ヒト又は動物における満腹及び/又は飽満の誘導もしくは強化のために用いることができる。α−グルカンはpHが低下すると粘度上昇を誘導する。α−グルカンの分枝度は少なくとも8%である。そのようなα−グルカンは、例えばスクロース基質へのグルコシルトランスフェラーゼ活性を有する乳酸菌株の発酵により得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は体重管理の分野にある。特に本発明は、人間の消費に適した液体製品中への満腹−誘導化合物の導入により、満腹感を誘導するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
肥満−関連疾患の罹患率は開発国住民(developed populations)の中で継続的に上昇しており、世界中で約2億5千万人の人々を冒し、年間に2桁増加している(with a double digit growth)。過剰体重に関する率も増加しており、世界中で8億人の人々に広まっている。
【0003】
西洋の住民の中での肥満の全世界的な健康の問題に関する有効な解答を求める研究において、製薬産業及び食物産業の両方が、消費者のために満腹感を誘導するか又は延長する(extending)ためのいくつかの概念を開発した。
【0004】
製薬産業は、消化酵素の標的化された特異的阻害剤、脂肪置換物質又は燃焼物質の開発を目的としてきた。シブトラミン(sibutramine)(Roche)のように満腹感に、及びオルリスタット(Orlistat)(Knoll/BASF)又はアカルボース(Acarbose)(Bayer,特許文献1)のように消化酵素に影響する製薬学的活性化合物の例。これらの活性化合物のための通常の投薬形態は粉剤及び錠剤である。
【0005】
食物産業は、満腹−誘導成分、エネルギーが減少した成分及び又燃焼物質を含有する食事置換物及びサプリメント(supplements)の開発に焦点を当ててきた。食物産業により市販されている食事置換物の例はスリムファスト(Slimfast)(Unilever)、プロフィエル(Profiel)(Numico)、エンシュア(Ensure)(Abbott)及びモジファスト(Modifast)(Novartis)である。これらの製品は固体形態、例えば食物棒、粉末ブレンド、パン屋製品において、あるいは栄養飲料のような液体形態において提供される。
【0006】
食品中で、しかしサプリメント中でも用いられる燃焼物質は、例えばエネルギー代謝を増加させるエフェドリンと組み合わされたカフェインである。食品中で用いられるエネルギーが減少した成分の例は、オレストラ(Olestra)のようなスクロースエステル、食物繊維及び脂肪が減少した製品である。食物繊維は胃を空にするのを遅らせること及び遅い栄養の吸収を誘導することもできる。
【0007】
提供される市販の製品の組み合わせ明細表(combined portfolio)は、食物及び薬品市場におけるいくつかの例外を以って、人間のボランティアの研究において体重の管理にほとんど有効でないようであった。特に食事置換物の場合、ほとんど原理の証明は示されなかった(非特許文献1)。
【0008】
当該技術分野において既知の満腹誘導のための解答は、例えば、CCK生産に関するフィード−バック機構を誘導すると主張されるプロテイナーゼ阻害剤を記載している特許文献2に言及されている。CCKは飽満に関連することが知られている。Pacific Health Laboratories(特許文献3)によりそのサティエトロール製品ライン(Satietrol product line)において行なわれるように、満腹感への最大の効果を得るために、満腹及び飽満に影響することが既知の通常の食物成分を組み合わせることもできる。製品は、コレシストキニン(CCK)の生産に影響すると主張されるタンパク質、長鎖脂肪酸、カルシウムならびに可溶性及び不溶性繊維を含有する。特許文献4は、やはり体によるCCK生産を刺激すると主張される高いフェニルアラニン含有率を有する配合物を記載している。
【0009】
直接満腹感に影響すると主張される他の活性化合物は、特許文献5(GLP−2 ペプチド)、特許文献6(GLP−1 ペプチド)、特許文献7(レプチン)、特許文献8(α−リポ酸)、特許文献9(コチニン)、特許文献10(シュード−エフェドリン)及び特許文献11(植物化学物質)に記載されている。
【0010】
例えば両方とも活性物質のための担体として場合により架橋されていることができるウロン酸含有多糖類を用いる特許文献12及び特許文献13、飢餓感を抑制するために栄養の吸収を遅らせる配合物を用いる特許文献14ならびに回腸において活性物質を送達するためにpH感受性コーティングを用いる特許文献15のように、特定の活性成分を消化管に標的化して送達するためのいくつかの担体システムが記載されている。
【0011】
消化酵素の阻害を目的とする戦略は特許文献16(α−アミラーゼ)及びリパーゼ阻害剤(Orlistat)に記載されている。
【0012】
人間の消化管によるグルコース吸収を妨げるための別の経路は特許文献17に記載されており、それは消化可能な糖類を捕獲し、且つこれらを消化不可能な多糖類に変換するためにL.レウテリ(L.reuteri)のような共生微生物を用いることを主張している。共生微生物は、好ましくは小腸において微生物を放出するように設計される腸溶コーティングされたカプセルにおいて投薬される。
【0013】
最後に、胃を空にすること又は遅れた栄養の吸収に影響する戦略は特許文献18(キサンタン−イナゴマメゴムブレンド)、特許文献7(アミノ酸の遅れた吸収のためのゲル化タンパク質粒子)及び特許文献19(胃充填剤の放出のための二重ゼラチン層)に記載されている。
【0014】
当該技術分野において記載されている解答は、主に、満腹感に直接影響する化合物、阻害剤、遅延放出化合物又は燃焼物質のいずれかである活性化合物のための固体投薬形態物を用いて開発された。他方、液体調製物は限られており、特定の活性物質の送達に焦点を当てているか、あるいはそれらはスリムファスト又はエンシュアのようにデザイナー飲料(designer drinks)のような食事置換物質の一部である。液体配合物のためには、飲料の好ましい感覚的特質に影響せずに液体製品中で配合され得る活性化合物を得ることが非常に望ましい。この活性化合物は、好ましくは液体製品中で過剰の増粘又はゲル化の性質を示してはならない。しかしながら、この化合物が胃中に入った後に飽満を生ずることもできたら、液体の体重管理配合物の開発に関する新規な概念を得られるようになる。
【0015】
満腹−誘導効果を有すると主張される化合物の周知の例は固体配合物中に導入されるヒドロコロイドであり、胃中で有意な増粘又はゲル化効果を生ずる。これは満腹感に導き、回腸への栄養又は他の活性化合物の送達を管理する可能性を与える。液体製品中で用いられるヒドロコロイドは0.01〜1重量%の範囲の用量の低いレベルを有し、ヒドロコロイドを含有しない製品に対し、胃に入った後の粘度における上昇を示さないであろう。この通則への理論的例外は、特に低いメチル化ペクチンにより形成され、それは酸性度が向上する場合に粘度が上昇することができる。実際にはこの概念は、粘度への酸の効果を破壊するカルシウムカチオンに関するこの型のペクチンの高い感度のために用いることができない(非特許文献2)。
【0016】
コムギ繊維又はリンゴ繊維のような不溶性食物繊維も、液体製品中で用いられると飽満感を生ずるのに有効であることが知られている。これらの不溶性繊維の欠点は、液体製品における不安定化効果又は液体製品の望ましくない外観の故の、液体製品中における用量の限られたレベルである。これらの望ましくない外観には繊維の沈殿及び曇りが含まれる。
【0017】
さらに、固体製品と対照的に液体製品を介して与えられる(dosed)場合、食物繊維の水結合効果は限られている。さらに他の活性化合物が不溶性食物繊維に不可逆的に結合し、それらの栄養的有効性を低下させ得る。
【0018】
記載した当該技術分野における限界は、望ましくない外観、テキスチュア(texture)における望ましくない変化、消費者にとって非許容の問題、カロリー含有の問題なしで、且つ胃における滞留時間を延長する能力を以って、液体製品を安定化させるのに用いることができる多糖の必要性を生じた。本発明は、発明の記述において説明される通り、この必要性に対する解答を与える。
【特許文献1】米国特許第4,062,950号明細書
【特許文献2】国際公開第01/30231号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6,207,638号明細書
【特許文献4】米国特許第4,833,128号明細書
【特許文献5】国際公開第97/31943号パンフレット
【特許文献6】国際公開第98/20895号パンフレット
【特許文献7】国際公開第00/22937号パンフレット
【特許文献8】国際公開第99/55331号パンフレット
【特許文献9】国際公開第95/29676号パンフレット
【特許文献10】英国特許第2165452号明細書
【特許文献11】国際公開第01/20991号パンフレット
【特許文献12】国際公開第01/17377号パンフレット
【特許文献13】独国特許第19942417号明細書
【特許文献14】国際公開第93/24113号パンフレット
【特許文献15】米国特許第5,753,253号明細書
【特許文献16】米国特許第5,726,291号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2002/0037577号明細書
【特許文献18】米国特許第4,689,219号明細書
【特許文献19】欧州特許第0471217号明細書
【非特許文献1】Critical reviews in food science and nutrition,41(1),2001年,45−70
【非特許文献2】Gilsenan,P.M.,thermally reversible acid induced gelation of low−methoxy pectin,41,1999年,339−349
【発明の開示】
【0019】
発明の記述
ヒトの消費のための液体製品中に高度に分枝したα−グルカンを導入することにより、満腹感を誘導できることが見出された。ヒトにより消費されると、液体製品の粘度は、胃の低いpH状態により引き金を引かれて非常に上昇する。方法は、例えば合計液体タンパク質−含有製品に基づいて1〜10重量%の範囲の種々のレベルのグルカンを、特にタンパク質の存在下で用いると有効である。かくして、本発明は、ヒトにおける飽満(satiation)又は満腹の強化に適した栄養的もしくは製薬学的組成物の調製のための分枝α−グルカンの使用に関する。
【0020】
特定の分子量と組み合わされたある高い分枝度を有するα−グルカンが、特にタンパク質の存在下で、製品において酸性度が向上した場合に驚くべきことに増粘効果を誘導することが観察された。この効果は、好ましい感覚的特質及び外観に影響することなく、飲料における安定化及びテキスチュアリング(texturising)機能が増した液体製品の配合に好ましい。pHの低下の後、有意な増粘効果が起こり、活性化合物として多糖類を用いる現存する液体製品配合物と対照的に、延長され且つ強化された飽満及び満腹感に導く。
【0021】
本発明に従って用いられるべきα−グルカンは、少なくとも8%の分枝度を有していなければならない。分枝度は、分子のAGUの合計数に対する分枝無水グルコース単位(AGU)、すなわち3個の他の単位に結合しているAGUの合計数として定義される。分枝度は、イソアミラーゼを用いる選択的加水分解、続くヨウ素を用いる電量滴定あるいは多糖のメチル化、続く加水分解及びガスクロマトグラフィー分析のような当該技術分野において既知の方法により決定することができる。好ましい最小分枝度は10%、より好ましくは少なくとも12%であり、最高で例えば24%である。
【0022】
一般に、分枝多糖は3つの型の単位、(a)1個の別の単位のみに結合している末端単位、(b)2個の別の単位に結合している鎖単位及び(c)3個の別の単位に結合している分枝単位から成る。分枝単位の合計数は、末端単位の合計数マイナス2に等しい。かくしてある長さ(例えば約1,000単位を超える、すなわち160,000を超えるモル重量を有する)の多糖類において、分枝単位のパーセンテージは末端単位のパーセンテージに大体等しくなる。
【0023】
分枝及び末端単位の正確な割合を決定する方法は、片方の方法と他方の方法でわずかに異なる値を生ずるので、分枝単位のパーセンテージプラス末端端のパーセンテージ割る2として分枝度を定義することもできる。
【0024】
本発明に従って用いられるべきグルカンは、それらの分枝性の結果として、1個のAGUを別のAGUに結合する少なくとも2つの型を含有する。型は1,2−結合、1,3−結合、1,4−結合又は1,6−結合であり得る。本発明のグルカンは少なくとも1,6−結合を含有する。好ましくは、分枝α−グルカンは1,4−結合及び1,6−結合の両方を含有し、分枝単位は1,4,6−結合しており、少なくともAGUの8%の量である。グルカンは、国際公開第03/008618号パンフレットに記載されているようなムタン−型(mutan−type)グルカンのように1,3及び1,6結合を含有することもできる。グルカンは少なくとも10Da、好ましくは少なくとも5・10Da、より好ましくは少なくとも2.5・10Da、最高で例えば10、特に最高で10Daの平均分子量を有することができる。グルカンは好ましくは非−イオン性であり、より好ましくは誘導体化されていないが、約5%までの例えばアシル基、カルボキシル基、ヒドロキシアルキル基による置換度は許容され得るであろう。
【0025】
好ましくは、用いられるべきグルカンをスクロースから、例えばL.レウテリ(国際公開第01/90372号パンフレット)のような食品認可微生物により発現されるグルコシルトランスフェラーゼ活性により(新規合成(de novo synthesis))得ることができる。あるいはまた、不十分な分枝度を有する−デンプン、アミロペクチン又はグリコーゲンのような−通常入手可能なグルカンの、所望の分枝度を生ずることができる適した微生物又はそれらの分枝酵素(EC 2.4.1.18)を用いる改変により、高度に分枝したα−グルカンを誘導することができる。適した分枝酵素の例はα−(1,4)−D−グルカン:α(1,4)グルカン6−グリコシルトランスフェラーゼ及びα−(1,4)−D−グルカン:オルトホスフェートα−グリコシル−トランスフェラーゼ(EC 2.4.1.1)である。異なる高度に分枝したα−グルカンのブレンドを用いることもできる。
【0026】
グルコース又は(リン酸化)グルコース誘導体から、グルカン合成酵素及び分枝酵素の組み合わせを用いて新規合成により、あるいはアミロスクラーゼ及び分枝酵素の組み合わせを用いるスクロースからの合成により、高度に分枝したグルカンを製造することもできる。例えばアミロスクラーゼ及び場合により改変された作物において発現されることができるα−(1,4)−D−グルカン:α(1,4)グルカン6−グリコシルトランスフェラーゼの組み合わされた作用により、スクロースから高度に分枝したα(1,4)(1,6)グルカンを得ることができる。欧州特許出願公開第1117802号明細書(国際公開第00/22140号パンフレット,PlanTec)に記載されている通り、最高で35%の分枝度を得ることができる。
【0027】
グリコーゲンは、高級生物及び特定のバクテリアにおける豊富な内在性エネルギー貯蔵分子であり、約8〜12%の分枝度を有する(Voet and Voet著,Biochemistry,John Wiley & Sons,1990年)。グリコーゲンは、基質として活性化グルコースを用いてグルコシルトランスフェラーゼにより合成され、工業的目的には経済的に魅力のない方法である。高度に分枝したα(1,4)(1,6)グルカンを得る他の手段はいくつかの酵素的経路を介して与えられる(欧州特許出願公開第1117802号明細書に例示されている通り、微生物又はその酵素を用いて植物内(in planta)で又はその場で)。
【0028】
国際公開第01/90372号パンフレットに記載されているようなスクロースへのグルコシルトランスフェラーゼの作用により得られる高度に分枝したα−グルカンは、SEC−MALLS−RI(Van Geel,I.et al.著,Appl.Environ.Microbiol.65,1999年,3008−3014)により決定される少なくとも10の分子量を有し、非常に密な配置を有する。それらは「レウテラン(reuteran)」と呼ばれる。このコンパクトネス(compactness)はギレーション(giration)の半径により示され、わずか35nmのレベルを示す。これらの特定のグルカンの場合、分枝度は15%を超えることができる。塩酸を用いるpH低下の関数としてレウテランに関して示される増粘効果を、Collins(Collins,K.D.Washabaugh,M.W.著,Quart.Rev.Biophys.,18,1985年,323)により概説されているHofmeister効果により説明することができる。水構造を分裂させるクロリドイオン濃度における増加は、多糖レウテランによるより良い水結合を生ずる。助長された水結合は、観察される粘度上昇を生ずると思われ、それは胃の状態に当てはまる。対照的に、クエン酸塩のような水構造を助長する電解質が用いられると、下記の実施例において示される通り、レウテランはその水結合能力を奪われるであろう。
【0029】
本発明に従って用いられるべきグルカンは、例えばデンプンと比較して低下した消化性、すなわち腸酵素による分解への向上した抵抗性を有していなければならない。好ましくは、消化性(例えば小腸に関するTNO胃−腸モデル:Minekus et al.著,Alternatives to Laboratory Animals(ATLA)23:197−209における空腸及び回腸におけるパーセンテージグルコース放出として表される)は、本来のデンプンに比較して30%未満でなければならない。かくしてグルカンは、栄養的繊維特性(nutritional fibre characteristics)を有する。
【0030】
高度に分枝したグルカンを医学的、栄養学的及び食物用途のために用いられる製品、特に好ましくはタンパク質性化合物も含有する液体製品における成分として用いることができる。グルカンを製品全体に基づいて0.5から10重量%まで、好ましくは1〜8重量%(w/w)の範囲のレベルで、好ましくは0から15%(w/w)までの範囲のレベルで存在する食品もしくは薬品銘柄のタンパク質と組み合わせて添加する(dosed)ことができる。
【0031】
本発明の好ましい態様において、高度に分枝したα(1,4)(1,6)グルカンは、好ましくはタンパク質も含有する液体製品、例えば飲料又は飲物中で用いられる。より好ましくは、この飲料は風味付けられた、又は発酵した乳飲料、例えばヨーグルト−様飲料である。有利には、飲料にスクロース基質と組み合わされた乳酸菌、例えば該グルコシルトランスフェラーゼ活性を発現するラクトバシルス・レウテリ(Lactobacillus reuteri)を接種することができる。飲料は可溶性α(1,4)(1,6)−グルカンにより安定化され且つ質感構成され、同時に胃の酸性条件に入った後に有意な増粘効果が得られる。本発明の液体組成物の他の適した形態には果実飲料、他の乳製品、スープ、ソース又は特別に設計される溶液もしくは分散液が含まれる。本明細書で液体組成物又は液体製品と言及される場合、これは当然、同じ重量比のその成分を有するが異なる(すなわちより低い)溶媒含有率を有する非−液体もしくは半−液体製品に拡張される。かくして液体製品は、適した希釈又は水もしくは他の水性溶媒及びおそらくさらに別の成分の添加の後に、使用の準備ができた液体組成物を与える濃厚物又は乾燥形態も包含する。
【0032】
本発明の液体組成物は、好ましくはタンパク質も含有し、それはpH3〜6において優れた安定性及び溶解性を示すいずれの食品もしくは薬品銘柄タンパク質であることもできる;そのようなタンパク質は本明細書で「食物タンパク質」と呼ばれる。適した食物タンパク質には乳タンパク質、例えばカゼインならびに乳漿タンパク質、ダイズ、えんどう豆、菌・カビ、卵タンパク質及びゼラチンあるいはそれらの加水分解産物が含まれる。タンパク質は例えば100g当たり0.5〜15g、好ましくは2〜10重量%のレベルで液体組成物中に導入することができる。α−グルカンとタンパク質の間の好ましい重量比は0.02〜10、好ましくは0.2〜5である。
【0033】
有利には、組成物はさらに別の栄養繊維、例えば可溶性の発酵可能な、もしくは発酵不可能な繊維、例えばペクチン、アラビアゴム、イヌリン、アラビナン、ガラクトマンナン又はオリゴ糖類ならびに/あるいは不溶性繊維、例えばセルロース、他のβ−グルカン及びヘミセルロースも、例えば100g当たり0.5〜5gのレベルで含有することができる。本発明に従って用いられるべき消化性の劣った分枝α−1,6結合−含有グルカンと他の栄養繊維の間の重量比は、好ましくは19〜0.2、より好ましくは9〜0.5である。組成物はさらに脂肪、脂肪置換物質、他の体重管理成分、乳化剤、増粘剤、安定剤、風味剤、着色剤、塩、ビタミン及び他の食物成分、例えば果実、ナッツ、穀類などを含有することができる。
【0034】
本発明は、上記の分枝α−グルカンを好ましくはタンパク質の存在下で、典型的には例えば1〜10重量%のレベルでα−グルカンを含有する飲料の形態で投与することにより、特に体重管理目的又は肥満の予防もしくは治療のために、必要のある人間に満腹を誘導する方法にも関する。必要な満腹及びさらに別のそれぞれの必要性及び患者の状態に、用量を適応させることができる。例えば1回の服用又は好ましくは1日に2〜4回に及んで分けられた服用における、1日当たり1gから1日当たり例えば250gまでの量を投与することができる。好ましい量は1日当たり5〜50gのα−グルカンである。有利には、グルカンは例えば少なくとも7日かもしくはそれより長期間の規則的な繰り返しに基づいて投与される。
【0035】
本発明の利点は、その消費者にとっての向上した満腹感、より良い製品の外観、より低いカロリー含有量、より低い配合コストにより、また成分を用いる標的食品に関する小さい立法的障害及びクリーンなラベル表示(clean labelling)の故に生ずる。
【0036】
標的とされる用途のためにこれらの化合物を用いることにおける追加の利点は、顆粒状アミロペクチンデンプンの場合のように、成分を機能性とするために熱処理を施す必要がないこと、ならびに結局劣化現象は観察されず、安定性の向上に導くことに見出される。また、増粘効果へのヒトの内在性アミラーゼ活性の悪影響はレウテランの場合に観察されず、それは低い血糖指数にも導く。
【0037】
試験管内実験は、このpHが引き金を引く増粘効果が粘度の即時の上昇を生ずることを示した。この粘度効果は、製品の開発者が胃から回腸への持続的な放出を必要とする他の活性成分を飲料中に導入する機会を作る。
【0038】
高度に分枝したα−グルカンにより与えられる他の利点は、小腸を通過する間の限られた分解であり、製品の血糖指数を低下させる。これはそれを、糖尿病患者により使用される配合物のための非常に適した成分ともする。
【0039】
本発明の他の態様は、やはり胃において粘性化効果を生ずる固体もしくは半−個体製品の配合物中における高度に分枝したα−グルカンの使用である。飼料又はペットフードにおける適用も本発明の一部である。
【実施例1】
【0040】
レウテランの製造
国際公開第01/90372号パンフレットに記載されている通りに株Lb 35−5を生産し、続いて濃縮し、0.1M酢酸緩衝液を用いる遠心により洗浄した。細胞を終夜攪拌下に、150g/l スクロース0.1M酢酸緩衝液pH5.5中に嫌気的に懸濁させた。翌日、遠心により細胞を除去し、150kDa限外濾過装置におけるダイアフィルトレーションを用い、未反応スクロースがもう検出され得なくなるまでレウテランを洗浄した。レウテランを凍結−乾燥し、得られるレウテランをさらなる実験に用いた。
【実施例2】
【0041】
水及び乳飲料中における物理的性質
実施例1に従って記載される通りに得られるレウテランを5重量%のレベルで、4のpHを有する市販の乳飲料(Friesland Coberco Dairy Foods:糖非添加Fristy,多果実風味)に加えた。最初の乳飲料及びレウテランを含有する乳飲料を、時間及びHClの濃度の関数としてのそれらの粘度に関して評価した。この目的のために、Couette DIN幾何学を有するRheometrics RFSII動的レオメーターを用い、37の温度において飲料の粘度を測定した。参照として、0.2621g/lのCaCl.2HOのカルシウムレベルを有する水中の7.5重量%レウテラン溶液も6.8のpHで調製した。各試料を、酸性化される試料に加えられる4M HClの体積に関して補償した。最初に10rad/秒における時間掃引(酸性化試料の場合)又は0.1〜100rad/秒の周波数掃引(frequency sweep)(最初の溶液の場合)に関する直線領域における変形を選択するために、乳飲料に関して10rad/秒において0.1〜100%で歪掃引(strain sweep)を行なった。測定は試料の調製の直後に行なわれた。
【0042】
表1は、最初の乳飲料ならびに5重量%のレウテランを含有する乳飲料に関する、HCl濃度における変化及び時間の関数としての増粘効果を示す。pHの低下により引き金を引かれる増粘効果はレウテランにより非常に増幅される。レウテランを含有する乳飲料は、生理学的に適切なレベルでのHCl濃度の増加の故の非常に有用な増粘効果を示す。水中の純粋なレウテラン溶液も、図1(2つの異なるpH値における水(10DH)中の7.5重量%レウテラン溶液に関する周波数掃引)において集められている周波数掃引から誘導され得る通り、明白なHCl濃度の増加の故の増粘効果を示す。10rad/秒における得られる粘度はpH6.8において0.24であり、pH低下(pH2)後に0.86である。
【0043】
【表1】

【実施例3】
【0044】
分枝度の関数としての増粘効果
分枝度の重要性を示すために、以下の実験を設計した。16%のα(1,4,6)結合AGUのレベルを有するレウテラン(Mw 3.5・10)(van Geel I.et al.著,Appl.Environ.Microbiol.65,1999年,3008−3014)及び8%のα(1,4,6)結合AGUのレベルを有するMerckから得られるグリコーゲン(オーダー番号4202)(Mw 0.27〜3.5・10)である2種の分枝α−グルカンを選択した。標準として31%のα(1,6)結合AGUを含有するプルラン(Mw 3.5・10)(非−分枝)も調べた。
【0045】
3種の多糖類を実施例2において用いられた通り、5重量%のレベルで乳飲料中に添加した。3種の乳飲料及び参照に関し、実施例2で記載した通りに周波数掃引を行なった。非−酸性化飲料に関する10rad/秒における粘度は、前記の通り別の周波数掃引から誘導された。
【0046】
これらの測定に関する結果を表2に集め、それは、酸性化飲料及び非−酸性化飲料に関してそれぞれに行なわれた周波数掃引から誘導される通り、10rad/秒における粘度を示している。α(1,4,6)結合AGUを含有するα−グルカンは明白なpHに引き金を引かれる増粘効果を示す。対照的に、α(1,4,6)結合AGUを有していないプルランは、pHが低下しても乳飲料における増粘効果を示さない。
【0047】
【表2】

【実施例4】
【0048】
異なる量のレウテラン(0,1,2及び5%w/w)をスリム−ファスト(商業的に入手可能)に加え、水浴中で37℃において定温に保った。4M HClの添加により試料のpHをpH2に調節した。標準のために(pH低下なし)、同量の水(10DH)を加えた。Couette DIN幾何学を有するRheometrics RFSIIを用い、37℃において試料の流動学を測定した。定温に保った後、37℃で歪掃引を行なった。pH−依存性増粘効果を表3にまとめ、それは臨界G*値(critical G* values)を示す。
【0049】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】2つの異なるpH値における水中の7.5重量%レウテラン溶液に関する周波数掃引。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
満腹及び/又は飽満を誘導するかもしくは強めるのに適した液体栄養的又は製薬学的組成物の調製のための、少なくとも10Daの平均モル重量(average molar weight)を有し且つ少なくとも8%の分枝度を有する分枝α−グルカンの使用。
【請求項2】
α−グルカンが少なくとも10%、好ましくは少なくとも12%の分枝度を有する請求項1に従う使用。
【請求項3】
α−グルカンが5・10〜10Daの平均モル重量を有する請求項1又は2に従う使用。
【請求項4】
α−グルカンがα(1,4)及びα(1,6)結合を含有する請求項1〜3のいずれか1つに従う使用。
【請求項5】
α−グルカンが非−イオン性である請求項1〜4いずれか1つに従う使用。
【請求項6】
α−グルカンがスクロースからの酵素的グルコシル転移により製造される請求項1〜5いずれか1つに従う使用。
【請求項7】
α−グルカンが1〜10(重量)%の濃度で用いられる請求項1〜6いずれか1つに従う使用。
【請求項8】
α−グルカンをタンパク質、特に加工牛乳又は大豆タンパクと組み合わせる請求項1〜7いずれか1つに従う使用。
【請求項9】
7.5重量%α−グルカンの水溶液がpH2において、10rad/秒で測定される、pH6.8における粘度と比較して少なくとも1.5倍の粘度における増加を示す請求項1〜8いずれか1つに従う使用。
【請求項10】
少なくとも10Daの平均モル重量を有し且つ少なくとも8%の分枝度を有するα−グルカンの1〜10重量%ならびに少なくとも1重量%の食物タンパク質を含有する液体食物組成物。
【請求項11】
少なくとも10Daの平均モル重量を有する分枝α−グルカンの有効量を必要のあるヒトに繰り返して投与することを含んでなる、必要のあるヒトにおける満腹及び飽満の誘導方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−508916(P2006−508916A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−533882(P2004−533882)
【出願日】平成15年9月9日(2003.9.9)
【国際出願番号】PCT/NL2003/000625
【国際公開番号】WO2004/022076
【国際公開日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(592055473)ネーデルランドセ・オルガニザテイエ・フール・テゲパスト−ナトウールベテンシヤツペリーク・オンデルツエク・テイエヌオー (5)
【Fターム(参考)】