説明

作業システム

【課題】ロボットに不具合が生じても、人手作業エリアの作業者の手が空いてしまうのを防止できる作業システムを提供すること。
【解決手段】ワーク組立てシステムは、人手作業エリアと、人手作業エリアの下流側に設けられたロボット作業エリアと、人手作業エリアとロボット作業エリアとの境界部分に設けられた第1緩衝スペースと、を備える。人手作業エリアでは、ボディを連続送りとし、ロボット作業エリアでは、ボディをタクト送りとする。緩衝スペースの長さlは、以下の式(1)で決定される。


ここで、lは、タクト送りの1タクト分の長さであり、tは、ロボットに不具合が発生した場合にワークのタクト送りによる搬送が停止する時間であり、vは、ワークの搬送速度である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業システムに関する。詳しくは、人手作業エリア、ロボット作業エリア、および緩衝スペースを備える作業システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のボディは、人手とロボットとで組み立てられる。したがって、このボディの生産ラインでは、作業者が作業するエリアと、ロボットが作業するエリアと、が混在している(特許文献1参照)。
【0003】
ここで、作業者がワークに対して作業する場合、このワークの搬送を一旦停止させる必要はないが、ロボットがワークに対して作業する場合、ワークの搬送を一旦停止させる必要がある。よって、人手作業エリアでは、ワークを連続送りとし、ロボット作業エリアでは、ワークをタクト送りとしている。
【0004】
しかしながら、上述のように、人手作業エリアとロボット作業エリアとでは搬送方法が異なるので、これらの作業エリアの境界部分に緩衝スペースを設けている。
【特許文献1】特公平6−75810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ロボットに不具合が生じた場合、ロボット作業エリアでのワークの搬送を一旦停止する必要がある。すると、ロボット作業エリアの上流側の人手作業エリア内では、連続送りを中止することになり、作業者の手が空いてしまう、という問題がある。一方、ロボット作業エリアの下流側の人手作業エリア内では、連続送りするワークが供給されないため、作業者の手が空いてしまう、という問題がある。
【0006】
本発明は、ロボットに不具合が生じても、人手作業エリアの作業者の手が空いてしまうのを防止できる作業システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の作業システム(例えば、後述のワーク組立てシステム1)は、搬送路(例えば、後述の搬送路21)に沿って設けられて複数の作業者(例えば、後述の作業者P1〜P5)が配置される人手作業エリア(例えば、後述の人手作業エリア30A)と、前記搬送路に沿って前記人手作業エリアの下流側に設けられて複数のロボット(例えば、後述のロボットR1〜R6)が配置されるロボット作業エリア(例えば、後述のロボット作業エリア40)と、前記人手作業エリアと前記ロボット作業エリアとの境界部分に設けられた緩衝スペース(例えば、後述の第1緩衝スペース50A)と、を備え、前記人手作業エリアでは、ワーク(例えば、後述のボディ10)を連続送りとし、前記ロボット作業エリアでは、前記ワークをタクト送りとする作業システムであって、前記緩衝スペースの長さlは、以下の式(1)で決定されることを特徴とする。
【数1】

[式(1)中、lは、タクト送りの1タクト分の長さであり、tは、ロボットに不具合が発生した場合にワークのタクト送りによる搬送が停止する時間であり、vは、ワークの搬送速度である。]
【0008】
この発明によれば、緩衝スペースの長さを上述の式(1)のように設定した。よって、ロボット作業エリアのロボットに不具合が発生して、ワークのタクト送りによる搬送が一時的に停止しても、ワークの搬送が再開されるまでの期間、このロボット作業エリアの上流側の緩衝スペースに、連続送りにより搬送されるワークを収容できるので、人手作業エリアの作業者の手が空いてしまうのを防止できる。
【0009】
本発明のワーク組み立てシステムは、搬送路に沿って設けられて複数の作業者が配置される人手作業エリア(例えば、後述の人手作業エリア30B)と、前記搬送路に沿って前記人手作業エリアの上流側に設けられて複数のロボットが配置されるロボット作業エリアと、前記ロボット作業エリアと前記人手作業エリアとの境界部分に設けられた緩衝スペース(例えば、後述の第2緩衝スペース50B)と、を備え、前記人手作業エリアでは、ワークを連続送りとし、前記ロボット作業エリアでは、前記ワークをタクト送りとする作業システムであって、前記緩衝スペースの長さlは、以下の式(2)で決定されることを特徴とする。
【数2】

[式(2)中、lは、タクト送りの1タクト分の長さであり、tは、ロボットに不具合が発生した場合にワークのタクト送りによる搬送が停止する時間であり、tは、ワークの搬送を再開した後、搬送が停止していたワークを早送りして、このワークが緩衝スペースに払い出されるまでの時間であり、vは、ワークの搬送速度である。]
【0010】
この発明によれば、緩衝スペースの長さを上述の式(2)のように設定した。よって、ロボット作業エリアのロボットに不具合が発生して、ワークのタクト送りによる搬送が一時的に停止しても、ワークの搬送を再開した後、このロボット作業エリアのワークのうち先頭のものを緩衝スペースに払い出して、さらに、この払い出したワークを高速で搬送して、緩衝スペース内で前方の連続送りされるワークに追い付かせることができる。よって、連続送りするワークを途切れることなく人手作業エリアに供給でき、人手作業エリアの作業者の手が空いてしまうのを防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロボット作業エリアのロボットに不具合が発生して、ワークのタクト送りによる搬送が一時的に停止しても、ワークの搬送が再開されるまでの期間、このロボット作業エリアの上流側の緩衝スペースに、連続送りにより搬送されるワークを収容できるので、人手作業エリアの作業者の手が空いてしまうのを防止できる。また、ワークの搬送を再開した後、このロボット作業エリアのワークのうち先頭のものを緩衝スペースに払い出して、さらに、この払い出したワークを高速で搬送して、緩衝スペース内で前方のワークに追い付かせることができる。よって、連続送りするワークを人手作業エリアに確実に供給でき、人手作業エリアの作業者の手が空いてしまうのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る作業システムとしてのワーク組み立てシステム1の平面図である。
ワーク組み立てシステム1は、作業者による人手作業およびロボットによるロボット作業により、ワークとしての自動車のボディ10を組み立てるものである。
このワーク組み立てシステム1は、搬送路21に沿って自動車のボディ10を搬送する搬送装置20と、搬送路21に沿って設けられた2つの人手作業エリア30A、30Bと、搬送路21に沿って設けられたロボット作業エリア40と、を備える。
【0013】
ロボット作業エリア40には、搬送路21の上流側から順に、ボディ10を組み立てるためのロボットR1〜R6が配置される。
【0014】
人手作業エリア30A、30Bは、ロボット作業エリア40の上流側に設けられた人手作業エリア30Aと、ロボット作業エリア40の下流側に設けられた人手作業エリア30Bと、で構成される。
人手作業エリア30Aには、搬送路21の上流側から順に、ボディ10を組み立てるための作業者P1〜P3が配置される。一方、人手作業エリア30Bには、搬送路21の上流側から順に、ボディ10を組み立てるための作業者P4〜P5が配置される。
【0015】
搬送装置20は、人手作業エリア30A、30Bでは、ボディ10を停止させることなく搬送する。これに対し、搬送装置20は、ロボット作業エリア40では、ボディ10を間欠的に搬送する。つまり、搬送装置20は、人手作業エリア30A、30Bでは、ボディ10を連続送りし、ロボット作業エリア40では、ボディ10をタクト送りする。
【0016】
ここで、搬送路21の人手作業エリア30Aとロボット作業エリア40との境界部分には、第1緩衝スペース50Aが設けられる。
一方、搬送路21のロボット作業エリア40と人手作業エリア30Bとの境界部分には、第2緩衝スペース50Bが設けられる。
【0017】
これら緩衝スペース50A、50Bを設ける理由は、以下の通りである。
ボディ10の搬送速度は、人手作業エリア30A、30Bとロボット作業エリア40とで同一であるが、上述のように、ボディ10の搬送方法は、人手作業エリア30A、30Bとロボット作業エリア40とでは異なるので、人手作業エリア30A、30Bとロボット作業エリア40との境界部分に緩衝スペースを設け、この緩衝スペースの長さを、1タクト分の長さlとする。この緩衝スペースでは、ワークであるボディ10同士の間隔がゼロから1タクト分の長さlの間で変化することになるので、このlは、緩衝スペースの最低限必要な長さである。
【0018】
ところで、ロボット作業エリア40のロボットR1〜R6のいずれかに不具合が生じた場合、ロボット作業エリア40でのボディ10の搬送を一旦停止する必要がある。すると、人手作業エリア30A内では、連続送りを中止することになり、作業者の手が空いてしまう、という問題がある。
【0019】
図2(a)は、ボディ10の搬送が停止する直前の状態を示す図である。図2(b)は、ボディ10の搬送を再開した直後の状態を示す図である。
緩衝スペース50Aには人手作業エリア30Aからボディ10が連続送りで払い出されるから、図2(a)、(b)に示すように、緩衝スペースの最低限必要な長さlを、所定長さaだけ長くして、第1緩衝スペース50Aとすればよい。この所定長さaとは、第1緩衝スペース50Aにおいて、ボディ10の搬送が停止してから再開されるまでの期間、連続送りにより払い出されるボディ10の移動量である。
よって、第1緩衝スペース50Aの長さlを、以下の式(1)のように決定する。
【0020】
【数3】

【0021】
式(1)中、lは、タクト送りの1タクト分の長さであり、tは、ロボットR1〜R6に不具合が発生した場合にボディ10のタクト送りによる搬送が停止する時間であり、vは、ボディ10の搬送速度である。
【0022】
ここで、搬送が停止する時間tとは、ロボットの軽微な不具合を修理して、ロボットが復旧するまでの時間、または、ロボットの不具合が重大であると判断して、このロボットを完全に停止して、このロボットによる作業を生産ラインから外すまでの時間である。
【0023】
一方、ロボット作業エリア40のロボットR1〜R6のいずれかに不具合が生じて、ロボット作業エリア40でのボディ10の搬送を一旦停止した場合、人手作業エリア30Bではボディ10の搬送が継続しているので、人手作業エリア30Bで連続送りするボディ10が供給されず、作業者の手が空いてしまう、という問題がある。
【0024】
図3(a)は、ボディ10の搬送が停止する直前の状態を示す図である。図3(b)は、ボディ10の搬送を再開した直後の状態を示す図である。図3(c)は、搬送を再開した後、ロボット作業エリア40のボディ10のうち先頭のものが第2緩衝スペース50B内に払い出された直後の状態を示す図である。
人手作業エリア30Bにボディ10を途切れることなく供給する必要があるから、図3(a)〜(c)に示すように、最低限必要な緩衝スペースの長さlを、所定長さbだけ長くすればよい。この所定長さbとは、ロボット作業エリア40でボディ10の搬送を停止してから、搬送を再開して、ロボット作業エリア40のボディ10のうち先頭のものが第2緩衝スペース50B内に払い出されるまでの期間、連続送りにより搬送されるボディ10の移動量である。
よって、第2緩衝スペース50Bの長さlを、以下の式(2)のように決定する。
【0025】
【数4】

【0026】
式(2)中、lは、タクト送りの1タクト分の長さであり、tは、ロボットR1〜R6に不具合が発生した場合にボディ10のタクト送りによる搬送が停止する時間である。また、tは、ボディ10の搬送を再開した後、搬送が停止していたボディ10を早送りして、このボディ10が第2緩衝スペース50Bに払い出されるまでの時間であり、vは、ボディ10の搬送速度である。
【0027】
以下、第1緩衝スペース50Aおよび第2緩衝スペース50Bの具体例について説明する。
例えば、搬送装置20の連続送りおよびタクト送りの搬送速度を、50秒で6mとし、タクト送りの1タクトの長さを6mとする。また、停止時間を60秒とする。
すると、第1緩衝スペース50Aの長さlは、以下の式(3)のようになる。
【0028】
【数5】

【0029】
また、早送り時間を8秒とすると、第2緩衝スペース50Bの長さlは、以下の式(4)のようになる。
【0030】
【数6】

【0031】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)第1緩衝スペース50Aの長さlを上述の式(1)のように設定したので、 ロボットR1〜R6のいずれかに不具合が発生して、ボディ10のタクト送りによる搬送が一時的に停止しても、ボディ10の搬送が再開されるまでの期間、この第1緩衝スペース50Aに、連続送りにより搬送されるボディ10を収容できるので、ロボット作業エリア40の上流側の人手作業エリア30Aの作業者の手が空いてしまうのを防止できる。
【0032】
(2)第2緩衝スペース50Bの長さlを上述の式(2)のように設定したので、ロボットR1〜R6のいずれかに不具合が発生して、ボディ10のタクト送りによる搬送が一時的に停止しても、ボディ10の搬送を再開した後、このロボット作業エリア40のボディ10のうち先頭のものを第2緩衝スペース50Bに払い出して、さらに、この払い出したボディ10を高速で搬送して、この第2緩衝スペース50B内で、前方の連続送りされるボディ10に追い付かせることができる。よって、連続送りするボディ10を途切れることなく人手作業エリアに供給でき、人手作業エリア30Bの作業者の手が空いてしまうのを防止できる。
【0033】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る作業システムの構成を示すブロック図である。
【図2】前記実施形態に係る作業システムのロボットエリア上流側の緩衝スペースについて、ワークの位置の経時変化を示す図である。
【図3】前記実施形態に係る作業システムのロボットエリア下流側の緩衝スペースについて、ワークの位置の経時変化を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 ワーク組み立てシステム(作業システム)
10 ボディ(ワーク)
21 搬送路
30A、30B 人手作業エリア
40 ロボット作業エリア
50A 第1緩衝スペース
50B 第2緩衝スペース
P1〜P5 作業者
R1〜R6 ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路に沿って設けられて複数の作業者が配置される人手作業エリアと、前記搬送路に沿って前記人手作業エリアの下流側に設けられて複数のロボットが配置されるロボット作業エリアと、前記人手作業エリアと前記ロボット作業エリアとの境界部分に設けられた緩衝スペースと、を備え、
前記人手作業エリアでは、ワークを連続送りとし、前記ロボット作業エリアでは、前記ワークをタクト送りとする作業システムであって、
前記緩衝スペースの長さlは、以下の式(1)で決定されることを特徴とする作業システム。
【数1】

[式(1)中、lは、タクト送りの1タクト分の長さであり、tは、ロボットに不具合が発生した場合にワークのタクト送りによる搬送が停止する時間であり、vは、ワークの搬送速度である。]
【請求項2】
搬送路に沿って設けられて複数の作業者が配置される人手作業エリアと、前記搬送路に沿って前記人手作業エリアの上流側に設けられて複数のロボットが配置されるロボット作業エリアと、前記ロボット作業エリアと前記人手作業エリアとの境界部分に設けられた緩衝スペースと、を備え、
前記人手作業エリアでは、ワークを連続送りとし、前記ロボット作業エリアでは、前記ワークをタクト送りとする作業システムであって、
前記緩衝スペースの長さlは、以下の式(2)で決定されることを特徴とする作業システム。
【数2】

[式(2)中、lは、タクト送りの1タクト分の長さであり、tは、ロボットに不具合が発生した場合にワークのタクト送りによる搬送が停止する時間であり、tは、ワークの搬送を再開した後、搬送が停止していたワークを早送りして、このワークが緩衝スペースに払い出されるまでの時間であり、vは、ワークの搬送速度である。]

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−220231(P2009−220231A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68525(P2008−68525)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】