説明

作業ライン用コンベヤ設備

【課題】搬送用台車上の作業用床面では低くて作業者が積載ワークに対する作業が行い難くなる特定作業区間での作業性を、設備コストを低く抑えながら改善する。
【解決手段】ワーク搬送経路に沿って走行する搬送用台車1と、ワーク搬送経路中の一定区間に並設された作業者用コンベヤ9とを備え、搬送用台車1は、支持するワークWより横側方に張り出す作業用床面7を有し、作業者用コンベヤ9は、搬送用台車1の前記作業用床面7の上側に重なるように地上側に支持され、この作業者用コンベヤ9には、前記搬送用台車1の作業用床面7に当接して摩擦駆動される摩擦従動輪23aが軸支され、この摩擦従動輪23aと作業者用コンベヤ9の作業者搭乗面17aを形成するコンベヤベルト17とが、前記作業者搭乗面17aが前記作業用床面7と同一速度で移動するように連動連結された構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク搬送用コンベヤに支持されて搬送されるワークの移動経路の横側方に、前記ワーク搬送用コンベヤと同期して駆動される作業者用コンベヤを並設して成る作業ライン用コンベヤ設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業ライン用コンベヤ設備において、作業ライン上を定速で搬送されるワーク、例えば自動車車体に対して部品取付け作業などを作業者が行う場合、当該ワークの左右両側横巾よりも十分に巾広のワーク搬送用コンベヤを使用し、作業者がワークの横側方でワーク搬送用コンベヤ上に搭乗することにより、ワークと作業者との間に相対速度が生じないので、作業は安全且つ容易に行えると考えられるのであるが、例えばワークの比較的高い部位に対して作業を行う場合には、ワーク搬送用コンベヤ上の水平移動面に直接立つことになる作業者では作業が行い難いことになる。そこでワークの移動経路の横側方に、前記ワーク搬送用コンベヤと同期して駆動される作業者用コンベヤを、当該ワーク搬送用コンベヤの上側に並設して、作業者の立つレベルを高くすることが考えられたのであるが、従来のこの種の作業ライン用コンベヤ設備に組み込むことが出来る作業者用コンベヤは、特許文献1にも記載されるように、この作業者用コンベヤ専用に設けられたモーターによって駆動されるもので、ワーク搬送用コンベヤとの制御盤間の相互インターロックにより、作業者用コンベヤをワーク搬送用コンベヤに同期させて駆動するように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−22663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
即ち、従来の作業者用コンベヤは、ワーク搬送用コンベヤの制御盤より運転信号を取り込んでワーク搬送用コンベヤと同一速度で運転されるように制御されるものであって、制御システムが複雑になるばかりでなく、専用の動力源を必要とするので省エネにならない。又、ワーク搬送用コンベヤとは慣性重量が異なるため、その停止・発進を完全同期させることが出来ない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできる作業ライン用コンベヤ設備を提案するものであって、請求項1に記載の本発明に係る作業ライン用コンベヤ設備は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、ワーク搬送経路(作業ライン(L))に沿って設けられたワーク搬送用コンベヤ(搬送用台車(1))と、ワーク搬送経路(作業ライン(L))中の一定区間(特定作業区間(D))に並設された作業者用コンベヤ(9)とを備え、ワーク搬送用コンベヤ(搬送用台車(1))は、支持するワーク(W)より横側方に張り出す作業用床面(7)を有し、作業者用コンベヤ(9)は、ワーク搬送用コンベヤ(搬送用台車(1))の前記作業用床面(7)の上側に重なるように地上側に支持され、この作業者用コンベヤ(9)には、前記ワーク搬送用コンベヤ(搬送用台車(1))の作業用床面(7)に当接して摩擦駆動される摩擦従動輪(23a,23b)が軸支され、この摩擦従動輪(23a,23b)と作業者用コンベヤ(9)の作業者搭乗面(17a)を形成する無端掛張回動体(コンベヤベルト(17))とが、前記作業者搭乗面(17a)が前記作業用床面(7)と同一速度で移動するように連動連結された構成になっている。
【0006】
上記本発明を実施する場合、具体的には請求項2に記載のように、前記作業者用コンベヤ(9)は、前記ワーク搬送用コンベヤ(搬送用台車(1))から横側方に張り出す外側辺をこの作業者用コンベヤ長さ方向と平行な水平支軸(32)の周りに起伏自在に軸支し、前記作業者用コンベヤ(9)の内側辺に、前記ワーク搬送用コンベヤ(搬送用台車(1))の作業用床面(7)に当接して従動回転する複数個の支持用車輪(23a,23b,27)をこの作業者用コンベヤ長さ方向適当間隔おきに軸支し、この複数の支持用車輪の内の少なくとも1つを前記摩擦従動輪(23a,23b)に兼用させることが出来る。
【0007】
尚、前記ワーク搬送用コンベヤは、スラットコンベヤなど如何なる形式のコンベヤであっても良いが、当該ワーク搬送用コンベヤが縦列状態で走行する複数台の搬送用台車(1)によって構成されている場合、請求項3に記載のように、前記作業者用コンベヤ(9)の摩擦従動輪(23a,23b)は、1台の前記搬送用台車(1)の移動方向の全長と一致しない間隔で前後一対軸支し、この前後一対の摩擦従動輪(23a,23b)を、作業者用コンベヤ(9)の前記無端掛張回動体(コンベヤベルト(17))を掛張する前後一対の回転体(16a,16b)に夫々連動連結させ、当該前後一対の摩擦従動輪(23a,23b)の中間位置には、前記搬送用台車(1)上の作業用床面(7)に当接して従動回転する少なくとも1つの支持用車輪(27)を軸支することが出来る。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の本発明の構成によれば、ワーク搬送経路中の一定区間、即ち、ワーク搬送用コンベヤの作業用床面の上側に重なるように作業者用コンベヤが設けられた一定区間では、作業者はワーク搬送用コンベヤの作業用床面上から前記作業者用コンベヤの作業者搭乗面上に乗り移ることにより、当該ワーク搬送用コンベヤの作業用床面と作業者用コンベヤの作業者搭乗面との間の段差分だけ当該作業者の立つレベルが高くなる。そして作業者用コンベヤの作業者搭乗面は、ワーク搬送用コンベヤの作業用床面と同一速度で移動しているので、ワーク搬送用コンベヤの作業用床面上から作業者用コンベヤの作業者搭乗面上への乗り移りが安全且つ容易に行えるだけでなく、ワーク搬送用コンベヤで支持搬送されるワークと作業者用コンベヤ上の作業者との間には相対速度差が無いので、作業者用コンベヤ上の作業者は、ワーク搬送用コンベヤの作業用床面上に立っている場合よりも前記段差分だけワークに対して高い目線から所要の作業を安全且つ容易に行うことが出来る。しかも本発明の構成によれば、作業者用コンベヤを駆動する専用の動力源が不要であり、ワーク搬送用コンベヤと作業者用コンベヤを同期駆動するための制御機器も一切不要であるから、設備コストの大幅な削減と省エネ効果が期待出来る。
【0009】
前記作業者用コンベヤは、ワーク搬送用コンベヤの作業用床面の上側に水平に位置するように地上側の架台に固定しても良いが、請求項2に記載の構成によれば、チエンブロックなどの簡単な楊重手段を併用するなどして作業者用コンベヤの内側辺を持ち上げ、当該作業者用コンベヤをワーク搬送用コンベヤの横外側位置で起立姿勢にしたり、可能ならば倒伏姿勢に切り換えることも出来るので、ワーク搬送用コンベヤや作業者用コンベヤの保守点検作業が必要になったような場合に好都合である。勿論、前記作業者用コンベヤを、ワーク搬送用コンベヤの作業用床面に重なる進出位置とワーク搬送用コンベヤの横外側方に位置する後退位置との間で水平に出退移動自在に支持させることも出来る。
【0010】
更に、ワーク搬送用コンベヤが縦列状態で走行する複数台のワーク支持搬送用台車によって構成されている場合には、請求項3に記載の構成の採用により、仮に前後に隣接するワーク支持搬送用台車間に隙間や凹溝部が形成される状況であっても、作業者用コンベヤ側の前後一対の摩擦従動輪の何れか一方は必ずワーク支持搬送用台車の作業用床面上に当接して従動回転することになり、作業者用コンベヤ(無端掛張回動体)の同期駆動を確実に行わせることが出来る。勿論、前後一対の摩擦従動輪と中間位置の支持用車輪の内、少なくとも2つはワーク支持搬送用台車の作業用床面上にあって、作業者用コンベヤが安定的に支持されるので、摩擦従動輪の1つが前後に隣接するワーク支持搬送用台車間の隙間や凹溝部に落ち込んで、作業者にショックを与える恐れも無い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、ワーク支持搬送用台車を使用したワーク搬送経路を説明する一部切欠き平面図である。
【図2】図2は、作業者用コンベヤが設けられた一定区間を示す正面図である。
【図3】図3は、片側の作業者用コンベヤを示す平面図である。
【図4】図4は、片側の作業者用コンベヤを示す内側面図である。
【図5】図5は、作業者用コンベヤのテークアップ側端部の詳細を示す縦断側面図である。
【図6】図6は、作業者用コンベヤのテークアップ側端部の詳細を示す横断平面図である。
【図7】図7は、片側の作業者用コンベヤのテークアップ側端部位置での縦断背面図である。
【図8】図8は、片側の作業者用コンベヤの据付け位置での縦断背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び図2において、1は搬送用台車であって、床面上に敷設された左右一対の支持用ガイドレール2上を転動可能な車輪3と、床面上に敷設された位置決め用ガイドレール4に嵌合する位置決め用ガイドローラー5とを底部に備えると共に、上面中央部にワークWを支持するワーク支持手段6が設けられ、このワーク支持手段6の前後左右の全周囲の台車上面が平坦な作業用床面7となっている。尚、ワーク支持手段6は、位置固定の支持台や支持高さ調整自在なリフター形式のもの、或いは搬送用台車1上に対して前後方向に位置調整可能で且つ当該搬送用台車1に対して前後方向に乗り降り自在なワーク支持用子台車で構成されたものなど、如何なる構成のものであっても良い。
【0013】
上記搬送用台車1は、地上側の推進用チエンコンベヤのプッシャーで推進されるもの、当該搬送台車1の下側に入り込める低床構造の牽引用自走台車で牽引駆動されるもの、或いは図示のように、走行方向と平行な摩擦駆動面1a,1bの一方に圧接する摩擦駆動輪8aと他方に圧接するバックアップローラー8bとから成る摩擦駆動装置8A〜8Dによって推進されるものなど、その走行駆動形式は問わないが、図1に示すように、地上側のガイドレール2,4によって形成される走行経路中には、各搬送用台車1が前後突き合い状態で縦列走行する直線状の作業ラインLが形成されている。この作業ラインLの手前には、搬送用台車1のワーク支持手段6上にワークWを移載するワーク積み込みステーションSが設定され、このワーク積み込みステーションSでワークWが積み込まれた搬送用台車1が送込み用摩擦駆動装置8Aによって作業ラインL内に順次送り込まれる。そして作業ラインLでは、入口脇の定速送込み用摩擦駆動装置8Bと出口脇の定速送出し用摩擦駆動装置8Cとによって、各搬送用台車1が前後突き合い状態で定速縦列走行する。この作業ラインLの出口から定速送出し用摩擦駆動装置8Cによって送り出された搬送用台車1は、高速送出し用摩擦駆動装置8Dに引き継がれて高速で退出走行する。
【0014】
而して、上記の作業ラインL内では、各搬送用台車1のワークWの周囲の作業用床面7上に作業者が搭乗した状態で、各搬送用台車1上に積み込まれているワークWに対する所要の作業を、搬送用台車1が定速走行している状態で行うことが出来るが、この作業ラインLでのワークWに対する作業には、例えばワークWが自動車車体である場合の当該自動車車体の各ウインドウ高さに対する部品取付け作業のように、搬送用台車1の作業用床面7上に立った作業者では作業対象箇所が高くて作業がし辛くなる作業が含まれる。このワークWに対する作業対象箇所が高くなる特定作業区間Dが作業ラインLに組み込まれている場合、図1及び図2に示すように、当該特定作業区間Dに作業者用コンベヤ9が配設される。
【0015】
図示の特定作業区間Dの長さは、1台の搬送用台車1の全長とほぼ同一長さであり、従って、1台の搬送用台車1の全長とほぼ同一長さの2台の作業者用コンベヤ9が、作業ラインLにおけるワークWの移動経路を左右両側から挟むように、即ち、搬送用台車1のワークWの左右両側に張り出している作業用床面7の上側に重なるように、並設されている。両作業者用コンベヤ9は左右対称構造のものであるから、以下、片側の作業者用コンベヤ9についてその構造を図3〜図8に基づいて説明する。
【0016】
作業者用コンベヤ9は、所要長さのベルトコンベヤ本体10と、その長さ方向の両端に突設された作業者上り下り用のスロープ部材11a,11bから構成されている。ベルトコンベヤ本体10は、左右一対の側枠部材12a,12bを、両端連結板材13と長さ方向中間の複数個所に位置する連結棒状部材14とで連結一体化して成るフレーム15、このフレーム15の両端近傍位置に軸支された前後一対の回転体16a,16b、両回転体16a,16b間に掛張されたコンベヤベルト(無端掛張回動体)17から構成されている。スロープ部材11a,11bは、フレーム15の両端(両端連結板材13)に取り付けられ、このスロープ部材11a,11bの上端からコンベヤベルト17の上側往行経路部の両端部分をカバーするカバープレート18a,18bがフレーム15の両端上側に敷設されている。
【0017】
更に詳述すると、コンベヤベルト17の作業者搭乗面17aを形成する上側往行経路部は、この上側往行経路部の長さ方向適当間隔おきの位置でフレーム15に軸支架設された支持用ローラー19と、この各支持用ローラー19間及び両端の支持用ローラー19と両端の回転体16a,16bとの間でフレーム15に架設された固定支持盤20とによって支持され、コンベヤベルト17の下側復行経路部は、この下側復行経路部の長さ方向適当間隔おきの位置でフレーム15に軸支架設された支持用ローラー21によって支持されている。そしてコンベヤベルト17を掛張する両端の回転体16a,16bの外側下方に隣り合う位置には、フレーム15を横断する回転軸22a,22bが支承され、この各回転軸22a,22bの一端、即ち、作業者用コンベヤ9のワークWの移動経路に隣り合う内側辺側の端部には、フレーム15の外側において摩擦従動輪23a,23bが取り付けられている。
【0018】
各摩擦従動輪23a,23bは、その周囲の一部分がフレーム15より下側に突出する外径を有するもので、各摩擦従動輪23a,23bを取り付けた各回転軸22a,22bの他端、即ち、作業者用コンベヤ9のワークWの移動経路に隣り合う内側辺とは反対側の外側辺側の端部と、これら各回転軸22a,22bに隣り合う回転体16a,16bが取り付けられた駆動軸24a,24bの同一側の端部とは、摩擦駆動輪23a,23bの周速度とコンベヤベルト17の移動速度とが等しくなるように互いに逆転連動させる伝動手段25a,25bによって連動連結されている。図示例の各伝動手段25a,25bは、各回転軸22a,22bの端部と駆動軸24a,24bの端部に取り付けられて互いに咬合する一対の平歯車26a,26bから構成されている。更に、前後一対の摩擦従動輪23a,23b間には、作業者用コンベヤ9の長さ方向の複数箇所においてフレーム15の内側辺の外側に軸支された複数個の支持用車輪27が設けられている。
【0019】
以上のように構成された作業者用コンベヤ9は、作業ラインLを走行する搬送用台車1の左右両側辺より外側に張り出す外側辺側が、これら作業者用コンベヤ9の長さ方向の前後2箇所において支持手段28a,28bにより地上側床面に支持されている。各支持手段28a,28bは同一構造のものであって、フレーム15の外側辺に固着突設された前後一対の軸受け部材29a,29b、これら前後一対の軸受け部材29a,29bの内側に隣接するように、地上側床面に設置された基板30に突設された前後一対の支持部材31a,31b、及びこれら軸受け部材29a,29bと支持部材31a,31bとを作業者用コンベヤ9の長さ方向に貫通して、作業者用コンベヤ9を上下揺動起伏自在に支持する水平支軸32から構成されている。勿論、前後一対の支持手段28a,28bの各水平支軸32は互いに同心状に位置している。尚、フレーム15と各支持手段28a,28bの前後一対の軸受け部材29a,29bとは、これら両者を作業者用コンベヤ9の左右巾方向に貫通横断する補強用軸状部材33a,33bによって互いに連結されている。
【0020】
又、ベルトコンベヤ本体10のコンベヤベルト17にはテークアップ手段が必要であるが、この図示例では、コンベヤベルト17を掛張する前後一対の回転体16a,16bの内、作業ラインLにおける搬送用台車1の走行方向の上手側の回転体16bに併設された左右一対のテークアップ手段34が使用されている。この左右一対のテークアップ手段34は左右対称構造のものであって、図5〜図7に示すように、フレーム15の側枠部材12a,12bの外側に取り付けられた固定基台35、これら固定基台35の外側に長孔36と締結ボルト37とによってベルトコンベヤ本体10の長さ方向に位置調整自在に取り付けられた可動板38、及びこの可動板38をコンベヤベルト緊張方向に押圧移動させる調整ボルト39から構成され、左右一対の前記可動板38の外側に取り付けられた軸受け40,41に、回転体16bが取り付けられた前記駆動軸24bの両端とこの駆動軸24bに並列する前記回転軸22bの両端が夫々支承されている。勿論、駆動軸24b及び回転軸22bの両端部が貫通する側枠部材12a,12b及び固定基台35の貫通孔42,43は、可動板38の位置調整を可能にするためにベルトコンベヤ本体10の長さ方向に長い長孔となっており、更に、前記駆動軸24bの両端が貫通する側枠部材12a,12b及び固定基台35の貫通孔42と、可動板38の貫通孔38aは、コンベヤベルト17の内側に配置した回転体16bを駆動軸24bと共に左右一対の側枠部材12a,12b間に落とし込めるように、上端が開放されたL字形に形成されている。
【0021】
上記構成の左右一対のテークアップ手段34によれば、締結ボルト37を緩めた状態で調整ボルト39を螺進させ、可動板38をコンベヤベルト緊張方向に押圧移動させることにより、駆動軸24bを介して回転体16bの位置をコンベヤベルト緊張方向に移動させ、以て、前後一対の回転体16a,16b間に掛張されたコンベヤベルト17を適度に緊張させることが出来る。コンベヤベルト17の張力調整後は、締結ボルト37を締め付けて可動板38を固定基台35に固定しておく。この左右一対のテークアップ手段34の特徴は、コンベヤベルト17の張力調整のために回転体16bの位置を調整したとき、当該回転体16bの駆動軸24bに伝動手段25bを介して連動連結された摩擦従動輪23bの回転軸22bも当該駆動軸24bと一体に位置調整され、両軸間の伝動手段25bに影響が及ばないように構成している点にある。
【0022】
尚、図示例では、コンベヤベルト17は、巾方向中央位置の内側に全長にわたって連続するコンベヤベルト17の長さ方向の突条部17bを備えており、従って、このコンベヤベルト17の内側に隣接する回転体16a,16b、支持用ローラー19、及び固定支持盤20には、前記突条部17bが遊嵌する溝44が形成されている。これら溝44とコンベヤベルト17の突条部17bとの嵌合により、コンベヤベルト17の作業者搭乗面17aが左右横方向に揺れ動くのを防止している。
【0023】
以上のように構成された左右一対の作業者用コンベヤ9は、支持手段28a,28bの水平支軸32の周りに内側へ回倒させて、その内側辺の前後一対の摩擦従動輪23a,23bと中間の支持用車輪27とが作業ラインL中の特定作業区間Dを走行する各搬送用台車1のワーク支持手段6の横側方に張り出す作業用床面7上に当接して、当該作業者用コンベヤ9が水平に支持されるように構成している。従って、前後一対の摩擦従動輪23a,23bは、前記特定作業区間Dを走行する搬送用台車1の作業用床面7との間の摩擦によって駆動され、その回転が回転軸22a,22bから伝動手段25a,25bの一対の平歯車26a,26bを介して、コンベヤベルト17を掛張する前後一対の回転体16a,16bの駆動軸24a,24bに伝達され、これら回転体16a,16bの回転によりコンベヤベルト17が、その上側往行経路部で形成される作業者搭乗面17aが作業ラインLを定速で走行する搬送用台車1の走行方向と同一方向に同一速度で移動するように回動することになる。
【0024】
又、前後一対の摩擦従動輪23a,23b間の間隔は、1台の搬送用台車1の全長と一致しない間隔に設定されている。図示例は、前後一対の摩擦従動輪23a,23b間の間隔が1台の搬送用台車1の全長より少し長いが、逆に少し短い間隔に構成することも出来る。この構成によれば、前後に突き合う状態の搬送用台車1間に隙間や凹溝部が形成されるような状況においても、前後一対の摩擦従動輪23a,23bの両方が同時に搬送用台車1間の隙間や凹溝部に合致して摩擦駆動力が瞬間でも途切れるというような不都合は生じない。勿論、前後一対の摩擦従動輪23a,23bの内の1つが搬送用台車1間の隙間や凹溝部に合致した瞬間といえども、作業用コンベヤ9の全体としては、前後一対の摩擦駆動輪23a,23bと支持用車輪27の内の少なくとも複数個によって安定的に支持され、作業用コンベヤ9がガタつく恐れはない。
【0025】
従って、作業ラインLを定速走行する各搬送用台車1の作業用床面7上に立って、各搬送用台車1のワーク支持手段6で支持されているワークWに対する所要の作業を行っている作業者は、搭乗している搬送用台車1が特定作業区間Dに進入するとき、当該特定作業区間Dに配設されている左右一対の作業者用コンベヤ9の作業者搭乗面17a上に乗り移り、搬送用台車1の作業用床面7上に立って作業を行っているときと同じように、搬送用台車1の走行(ワークWの移動)に合わせて連れ歩きしなくとも、搬送用台車1上のワークWに対する所要の作業を行うことが出来る。しかも、作業者用コンベヤ9の作業者搭乗面17aは搬送用台車1の作業用床面7に対して高くなっているので、この作業者用コンベヤ9の作業者搭乗面17a上に立つ作業者は、ワークWの高い位置に対する作業を容易に行うことが出来る。換言すれば特定作業区間Dは、ワークWの高い位置に対する作業を行う区間として設定されている。ワークWが搬送用台車1と共に特定作業区間Dから下手側に退出移動するときは、作業者用コンベヤ9の作業者搭乗面17a上に立つ作業者も当該作業者搭乗面17a上から下手側の搬送用台車1の作業用床面7上に乗り移れば良い。
【0026】
尚、作業者用コンベヤ9の保守点検作業や、この作業者用コンベヤ9の下側に位置して停止している搬送用台車1の保守点検作業などが必要になったときは、図2に仮想線で示すように、天井側に吊るしたチエンブロックなどの楊重手段の吊り索45を作業者用コンベヤ9の支持手段28a,28bで軸支される外側辺とは反対側(内側辺)の適当箇所に係止して吊り上げることにより、当該作業者用コンベヤ9を支持手段28a,28bの水平支軸32の周りに上方に回動起立させることが出来る。この場合、作業者用コンベヤ9の内側辺を構成するフレーム15の側枠部材12aの適当箇所に、アイボルトなどにより吊り索45の係止部を設けておくことが出来る。又、支持手段28a,28bには、作業者用コンベヤ9を90度以上の所定角度だけ開動させたときにそれ以上の回倒を阻止するストッパーを設けておくことも出来る。
【0027】
更に、図3に仮想線で示すように、ベルトコンベヤ本体10の前後一対の回転体16a,16bの内、テークアップ手段34が併設されない側の回転体16aの駆動軸24aを、ワークWの移動経路のある側とは反対側へ突出させておき、必要に応じてこの駆動軸24aの突出端にカップリングなどを介して減速機付きモーター46を連動連結させることが出来るように構成しておくことが出来る。この場合、減速機付きモーター46は、ベルトコンベヤ本体10のフレーム15(側枠部材12b)に取付け架台を介して支持させることが出来る。この構成によれば、コンベヤベルト17に対する摩擦従動輪23a,23bによる摩擦駆動力が不足するような場合、例えば1つの作業者用コンベヤ9の作業者搭乗面17aに立つ作業者の人数が多くなるような場合、減速機付きモーター46を取り付けて駆動軸24aと連動連結させることにより、コンベヤベルト17の摩擦駆動力に減速機付きモーター46の回転力を追加して確実にコンベヤベルト17を駆動させることが出来る。尚、減速機付きモーター46を常に取り付けておき、当該減速機付きモーター46の出力軸と駆動軸24aとの間にクラッチを介装しておくことも出来る。
【0028】
又、作業者用コンベヤ9に対する駆動力は、摩擦従動輪23a,23bと搬送用台車1の作業用床面7との間の摩擦力によって決まるので、当該摩擦力を増大させるために、搬送用台車1の作業用床面7上の摩擦従動輪23a,23bが転動する帯状領域に、摩擦を増大させる塗料を塗布したり、別の素材を貼付しておくことも可能である。又、搬送用台車1の作業用床面7上の摩擦従動輪23a,23bが転動する帯状領域が搬送用台車1上のワーク支持手段6に十分接近していて、作業用床面7上での作業者の歩行の妨害になる恐れが少ないときは、作業用床面7上の摩擦従動輪23a,23bが転動する帯状領域にラックギヤを敷設し、摩擦従動輪23a,23bは、前記ラックギヤに咬合するピニオンギヤで構成することにより、一層強力確実に作業者用コンベヤ9を摩擦駆動することが出来る。勿論、前記搬送用台車1側のラックギヤを、搬送用台車1の作業用床面7に形成した凹溝内に敷設することも出来る。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の作業ライン用コンベヤ設備は、搬送用台車上の作業用床面では低くて作業者が積載ワークに対する作業が行い難くなる特定作業区間での作業性を、設備コストを低く抑えながら改善出来る設備として活用出来る。
【符号の説明】
【0030】
1 搬送用台車
6 ワーク支持手段
7 作業用床面
8A〜8D 摩擦駆動装置
9 作業者用コンベヤ
10 ベルトコンベヤ本体
11a,11b スロープ部材
15 フレーム
16a,16b 前後一対の回転体
17 コンベヤベルト
17a 作業者搭乗面
18a,18b カバープレート
22a,22b 回転軸
23a,23b 摩擦従動輪
24a,24b 回転体の駆動軸
25a,25b 伝動手段
26a,26b 平歯車
27 支持用車輪
28a,28b 支持手段
29a,29b 軸受け部材
31a,31b 支持部材
32 水平支軸
33a,33b 補強用軸状部材
34 テークアップ手段
45 チエンブロックなどの吊り索
46 減速機付きモーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク搬送経路に沿って設けられたワーク搬送用コンベヤと、ワーク搬送経路中の一定区間に並設された作業者用コンベヤとを備え、ワーク搬送用コンベヤは、支持するワークより横側方に張り出す作業用床面を有し、作業者用コンベヤは、ワーク搬送用コンベヤの前記作業用床面の上側に重なるように地上側に支持され、この作業者用コンベヤには、前記ワーク搬送用コンベヤの作業用床面に当接して摩擦駆動される摩擦従動輪が軸支され、この摩擦従動輪と作業者用コンベヤの作業者搭乗面を形成する無端掛張回動体とが、前記作業者搭乗面が前記作業用床面と同一速度で移動するように連動連結されている、作業ライン用コンベヤ設備。
【請求項2】
前記作業者用コンベヤは、前記ワーク搬送用コンベヤから横側方に張り出す外側辺がこの作業者用コンベヤ長さ方向と平行な水平支軸の周りに起伏自在に軸支され、前記作業者用コンベヤの内側辺に、前記ワーク搬送用コンベヤの作業用床面に当接して従動回転する複数個の支持用車輪がこの作業者用コンベヤ長さ方向適当間隔おきに軸支され、この複数の支持用車輪の内の少なくとも1つが前記摩擦従動輪を兼用している、請求項1に記載の作業ライン用コンベヤ設備。
【請求項3】
前記ワーク搬送用コンベヤは、縦列状態で走行する複数台の搬送用台車によって構成され、前記作業者用コンベヤの摩擦従動輪は、1台の前記搬送用台車の移動方向の全長と一致しない間隔で前後一対軸支され、この前後一対の摩擦従動輪が、作業者用コンベヤの前記無端掛張回動体を掛張する前後一対の回転体に夫々連動連結され、当該前後一対の摩擦従動輪の中間位置には、前記搬送用台車の作業用床面に当接して従動回転する少なくとも1つの支持用車輪が軸支されている、請求項1又は2に記載の作業ライン用コンベヤ設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−200816(P2012−200816A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67150(P2011−67150)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000157083)トヨタ自動車東日本株式会社 (1,164)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】