説明

作業分析装置

【課題】作業者の工程配分を正しく調整し、生産効率の向上を図る。
【解決手段】各ミシン10からオペレータID、工程ID及びピッチタイムのデータを含む作業記録データDを取得するデータ取得手段36と、各作業記録データの全体又は一部の範囲で、各作業工程について各オペレータごとのピッチタイムを求める作業所要時間算出手段105と、各オペレータごとに各作業工程のピッチタイムを合計して実作業時間を算出する実作業時間算出手段105と、を備え、実作業時間算出手段は、各作業記録データ中に一つの作業工程を複数のオペレータで分業した場合の作業所要時間特定情報がある場合に、これらオペレータの作業工程の作業所要時間を調和平均により平均化し、当該各作業所要時間に基づいて実作業時間を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の作業者がそれぞれ分担された作業工程の作業を同時に実施して生産する製品の生産に関わる作業記録データを集計の上、分析してその分析結果を表示または外部に出力する作業分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ミシンにより縫製を施して生産する製品は、そのパーツごとに作業工程が分けられており、当該各作業工程を複数のオペレータ(作業者)が分担して縫製作業に従事するのが一般的である。
図16は、製品の一例であるソファーの縫製作業をそのパーツごとに複数の作業工程に分け、五人のオペレータがそれぞれ分担された作業工程の縫製作業を実施する場合の例を示した説明図である。なお、実際のオペレータ人数やパーツ数、作業工程数などはもっと多くなる場合もあるが、ここでは説明のために簡略化している。
一つ製品に係わる縫製作業を複数の作業工程に分けて分担する場合、一部のオペレータが担当する作業工程のみが遅れたりしないように、全ての作業工程が同時に進行することが望ましく、各オペレータの作業所要時間のバラツキを少なくすることが作業の高効率化のためには必須となる。
このため、従来の作業分析装置は、オペレータを特定する作業者特定情報、作業工程を特定する工程特定情報と、一作業工程ごとの作業所要時間とから、各オペレータがいずれの作業工程を実施し、一作業工程にどのくらいの時間を要するかを逐一記録したデータを収集し、作業分析装置により、それらを集計して分析、分析結果を表示していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図17はミシンにより得られた作業記録データを集計して、オペレータごとに割りあてられた工程の工程ID(工程特定情報)と、各工程の一回の縫製作業に要したピッチタイム(作業所要時間)と各工程のピッチタイムを各オペレータごとに合計した実作業時間とを表形式で示した集計データであり、左側のデータD1は調整を行う前の状態を示し、右側のデータD2は調整後の状態を示す。また、図18における折れ線L1はデータD1、折れ線L2はデータD2に従ってオペレータと実作業時間との関係を示したものである。
ここで、「実作業時間」とは、ある一つの製品に属する作業工程を複数オペレータで分担する場合において、各工程のピッチタイムをオペレータごとに合計した値である。この実作業時間は、一つの製品に要する縫製作業全体に対してそれぞれのオペレータが従事する時間を示す値であり、これがばらつかないように各オペレータに対して各工程を割り当てることで、一部の工程の遅れによる製品完成の遅れを解消し、ラインバランスのとれた高効率の共同作業を実現することができる。
折れ線L1を見ると分かるように、全オペレータの中で、オペレータ(1113)は実作業時間が長く、オペレータ(1106)は実作業時間が短くなっており、ラインバランスは良好ではない。このような場合、オペレータ(1113)に割り当てられていた一部の作業工程(ここでは工程71)をオペレータ(1106)に振り分けて調整を行う。これにより、データD2及び折れ線L2に示すように、各オペレータにおける実作業時間格差が大幅に軽減され、ラインバランスは良好となる。
【0004】
従来の作業分析装置は、上記分析や調整を円滑に行うことができるように、各ミシンから収集された作業記録データを集計し、上記データD1の作成及び表示並びにデータの編集作業を行う機能を備えている。また、作業分析装置が取り扱う集計データでは、各工程のピッチタイムは、複数枚数の縫製作業に従事した従事時間を枚数で除算して平均値を算出し、データD1の作成を行っているが、その際の平均ピッチタイムは相加平均により算出されている。
【0005】
ところで、縫製作業の現場では、あるオペレータに割り当てられた一部の工程に遅れが生じた場合、手のあいたオペレータが遅れている工程の縫製予定枚数のうちの一部を手伝うことがしばし行われている。そのような場合、手伝いを行ったオペレータは手伝った工程について工程IDを入力して手伝った分を作業記録データ中に計上する。
かかる作業記録データを作業分析装置が集計した集計データD3の一例を表形式で図19に示す。かかる集計データD3は上記データD1を工程基準、つまり、集計された作業記録データの内容を各工程ごとにまとめたものである。
かかる集計データD3のエリアA1は、工程(45)をオペレータ(1106),(1067),(1105)で分業した例を示している。なお、集計データD3において、「平均ピッチタイム(1)」は各オペレータが行った個々の工程ごとの平均ピッチタイム(オペレータ基準の平均ピッチタイムとも言う)であり、「平均ピッチタイム(2)」は工程ごとの平均ピッチタイム(工程基準の平均ピッチタイムとも言う)であり、両平均ピッチタイム(1)と(2)とは、各工程が単一のオペレータにより作業される場合に同一の値となるが、工程(45)のように一つの工程を複数のオペレータが分業して行う場合は、異なる値となる。
そして、従来の作業分析装置では、一つの工程を複数のオペレータが分業して行った場合の工程基準の平均ピッチタイム(2)の算出は、相加平均処理により算出していた。具体的には、集計データD3のエリアA1に示すように、三人のオペレータの平均ピッチタイム(1)がそれぞれ85[s],103[s],69[s]である場合、工程基準の平均ピッチタイム(2)=(85+103+69)/3=86[s]として、分業を担当したオペレータそれぞれの「平均ピッタイム(1)」を加算して人数で除算することにより算出していた。
【0006】
また、従来の作業分析装置は、図20に示すように、オペレータ基準の集計データD4の算出も行う。かかる集計データD4は、各オペレータごとに、割り当てられた工程の工程ID、各工程ごとの生産数量、各工程の平均ピッチタイム(2)、オペレータごとの実作業時間がまとめられたデータである。
かかる集計データD4のエリアA2はオペレータ(1106),(1067),(1105)の三人で分業した工程(45)の平均ピッチタイム(2)を示すが、ここでも三人のオペレータの平均ピッチタイム(1)を相加平均で求めた平均ピッチタイム(2)(=86[s])が採用されていた。
そして、集計データD4に示すように、従来の作業分析装置においては、オペレータごとの実作業時間の算出の際にも、複数のオペレータが分業した工程(45)については、上述の相加平均で求めた平均ピッチタイム(2)=86[s]が分業を担当した各オペレータの共通の平均ピッチタイムとして用いられていた。
【特許文献1】特開平04−13546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のように、複数人での分業した工程について工程基準の平均ピッチタイム(2)を算出するに当たって、単に各人のピッチタイムの相加平均を行うのでは、正しい平均値を求めることはできなかった。つまり、ここで述べている正しい平均値とは、同一工程の作業を分業した複数のオペレータの平均的能力を有するオペレータが当該工程に要する所要時間のことをいうものである。
前述のオペレータ(1106),(1067),(1105)のピッチタイムを例に説明する。集計データD3に示す平均ピッチタイム(1)の単位を秒([s])とすると、各人の工程(45)の処理速度[枚/s]はそれぞれ、(1/85)[枚/s],(1/103)[枚/s],(1/69)[枚/s]なので、共同して工程(45)を行うと、その所要時間は((1/85)+(1/103)+(1/69))-1=27.8[s]となる。従って、平均的な能力のオペレータは、一人で工程(45)を行うと、その3倍の時間で行うこととなるので、正しい平均ピッチタイム(2)は27.8×3≒83[s]となるはずであるが、上記相加平均値86[s]となっており、正しい所要時間83[s]と一致しない。
このため、一つの工程を分業した場合に、ラインバランスを評価するための実作業時間が正しく算出できず、当該実作業時間に基づいて作業者の工程配分を調整しても生産効率が上がらないという問題があった。
【0008】
さらに、従来の実作業時間の算出方法にあっては、一つの工程を分業した場合に、各オペレータの作業比率が考慮されていなかった。前述のオペレータ(1106),(1067),(1105)が分業した場合を例に説明すると、例えば、集計データD4に示すように、オペレータ(1105)は工程(41),(42),(44)については30枚の縫製を行っているが、工程(45)については5枚しか縫製を行っていない。つまり、他の工程の6分の1の数量しか縫製をしていないにもかかわらず、実作業時間の算出に際しては他の工程と同じ数量を縫ったものとして平均ピッチタイム(2)が加算されている。
このような要因からも、実作業時間が正しく算出されず、作業者の工程配分の調整による生産効率の向上が図れなかった。
【0009】
本発明は、作業者の工程配分を正しく調整し、生産効率の向上を図ることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、複数の作業者がそれぞれ分担された作業工程の作業を同時に実施して生産する製品の生産に関わる作業記録データを集計の上、分析してその分析結果を表示または外部に出力する作業分析装置において、前記各作業工程を担当した作業者特定情報、作業工程特定情報及び各作業工程ごとの作業所要時間特定情報を含む作業記録データを取得するデータ取得手段と、前記各作業記録データの全体又は一部の範囲で、各作業工程について各作業者ごとの作業所要時間を求める作業所要時間算出手段と、前記各作業者ごとに、当該各作業者が行った作業工程の作業所要時間を合計して実作業時間を算出する実作業時間算出手段と、を備え、前記実作業時間算出手段は、前記各作業記録データ中に一つの作業工程を複数の作業者で分業した場合の作業所要時間特定情報がある場合に、これら作業者の前記作業工程の作業所要時間を調和平均により平均化し、当該平均化により求められた作業所要時間に基づいて前記各作業者ごとの実作業時間を算出することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記各作業記録データには、各作業者による各作業工程ごとの生産数量情報が含まれると共に、前記実作業時間算出手段は、前記各作業記録データ中に一つの作業工程を複数の作業者で分業した場合の作業所要時間特定情報がある場合に、前記各作業者の実作業時間を、前記調和平均により平均化して算出された作業所要時間に前記分業した作業工程全体の生産数量に対する個々の作業者の生産数量が占める比率を乗じた上で、他の作業工程の作業所要時間と合計して算出することを特徴とする。
【0012】
なお、「作業記録データ」の「作業所要時間特定情報」や「生産数量情報」は、その内容が直接的に所要時間を示したり、生産数量を示すものに限らず、計算処理を施すことで結果的に所要時間や生産数量が得られる間接的なものであっても良い。例えば、ミシンの毎回の縫製の開始又は終了時刻を示す情報などであって、それらの時刻の差から所要時間を求めたり、また、一回の縫製ごとに必ず記録される何らかの情報について所定期間内における当該情報の個数をカウントすることで生産数量を求めても良い。
また、上述の「作業工程特定情報」とは、例えば、ミシンによる縫製作業工程等の分類全般の識別情報(識別情報とはID、その他、データ処理を行う装置で識別可能な情報であれば何でも良い)を示し、例えば、各種の縫いの識別、ロット単位で作業を管理する場合にはロットを識別可能な情報を含むものであっても良い。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明である作業分析装置は、作業記録データを取得すると、作業所要時間算出手段が、作業記録データに含まれる作業者特定情報、作業工程特定情報及び作業所要時間特定情報とにより、いずれの作業者がいずれの作業工程を行い、当該作業工程にどのくらいの作業所要時間を要したかを集計する。
そして、実作業時間算出手段は、各作業者ごとに、当該各作業者が作業を行った作業工程の作業所要時間を合計して実作業時間の算出を行う。
そして、集計される複数の作業記録データの中に、複数の作業者により分業で行われた作業工程が存在した場合には、当該作業工程について各作業者の作業所要時間を調和平均に基づいて平均化する。
例えば、作業者A,B,Cが同じ作業工程をそれぞれ作業所要時間t1,t2,t3で行った場合には、調和平均の概念に従ってその平均値は、ta=3/((1/t1)+(1/t2)+(1/t3))で算出される。この値は、作業者A,B,Cが共同で前記作業工程を行った場合の所要時間の丁度3倍に相当するので、作業者A,B,Cの平均的能力を有する者が当該作業工程を行うのに要する作業所要時間ということができる。
このように、全作業工程を複数の作業者により分担し、その一部の作業工程に共同作業が含まれた場合であっても、各作業者の作業能力を反映した手法により作業所要時間を平均化しているため、各作業者の実作業時間を作業能力に応じてなるべく均等となるように調整する場合において、より合目的的に実作業時間を算出することが可能となり、本願発明である作業分析装置を用いることで、作業者の工程配分を正しく調整し、生産効率の向上を図ることが可能となる。
【0014】
請求項2記載の発明では、作業記録データに各作業者による各作業工程ごとの生産数量情報が含まれる場合であって、一つの作業工程を複数の作業者で分業した場合には、実作業時間算出手段は、各作業者の実作業時間の算出に際し、共同で行われた作業工程の作業所要時間については、調和平均により平均化された値をそのまま他の作業工程の作業所要時間と合計するのではなく、共同作業全体の生産数量に対する一人の作業者の生産数量の占める比率を調和平均化された作業所要時間に乗じた上で、他の作業工程の作業所要時間と合計して作業所要時間を算出する。
実作業時間は、全作業工程からなる作業全体に要する全所要時間のうち作業者各人が負担した時間比率を数値化した概念である。
一方、共同で作業を行った作業工程については、単独の作業者が一つの工程全体を行ったわけではないので、他の工程と同じ数量分の作業を行っておらず、実作業時間の算出において、他の工程と同じように加算することはできない。従って、上記実作業時間算出手段のように、全体数量に対して単独の作業者が作業を行った生産数量の占める比率を作業所要時間に乗じることで、作業全体の全所要時間のうち作業者各人が負担した時間比率をより適切に反映することができるようになる。
従って、本願発明である作業分析装置を用いることで、より適切な実作業時間を求めることができ、作業者の工程配分を正しく調整し、生産効率の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(発明の実施形態の全体構成)
以下、図面を参照して、本発明に係る作業分析装置101を含んだミシンの作業分析システム100について図1乃至図15に基づいて説明する。図1は作業分析システム100の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、この作業分析システム100は、複数台の生産管理ミシン10と、当該各生産管理ミシン10と情報記録媒体の人為的な送受により作業記録データの送受を可能とした作業分析装置101とを備えている。
上記作業分析装置101としては、パーソナルコンピュータかあるいはワークステーションが使用される。また、作業分析装置101と各生産管理ミシン10との間での作業記録データの送受は、無線LANや有線LANなどの無線若しくは有線通信手段を利用しても良い。
【0016】
(生産管理ミシン)
図2は生産管理ミシン10を含む作業分析システム100の概略構成を示すブロック図である。
各生産管理ミシン10は、縫い針を保持する針棒の上下動駆動源であるミシンモータ11と、ミシンモータ11の回転駆動力を上下動駆動源に変換して針棒に伝える図示しない上下動機構と、図示しない布送り機構と、図示しない糸調子装置と、縫いの完了後に縫い糸の切断を行う糸切りメスを駆動させるメス駆動ソレノイド12と、前踏みでミシンモータ11の起動指令を入力し、後踏みでメス駆動ソレノイド12の駆動指令を入力する操作ペダル13と、後述する各種の入力を行う操作キー21と所定の画面表示が行われる表示部22とを備える操作パネル20と、一つの作業工程の縫製が完了したときに押下されるカウントスイッチ23と、後述する各種の処理を実行するための各種のプログラム及び初期データが記憶されたROM32と、各種のプログラムを実行するCPU31と、CPU31の処理に関する各種データをワークエリアに格納するRAM33と、生産管理ミシン10において記録される作業記録データを格納するEEPROM35と、EEPROM35内の作業記録データを当該生産管理ミシン10と作業分析装置101との間で移送するための記録媒体であるフラッシュメモリカード36と、その読み取り書き込み装置37とを備えている。
【0017】
(作業記録データ)
上記生産管理ミシン10は、縫製の過程において図3に示す作業記録データとしての縫製作業時刻データDを生成し、EEPROM35に記録する。なお、この縫製作業時刻データDはEEPROM35からフラッシュメモリ36にコピーされて作業分析装置101に移送される。
縫製作業時刻データDは、CPU31が一縫製作業単位である作業工程の縫いを行うごとにその縫製作業時刻(年月日も含むが図では省略)を逐次記録することで生成され、その記録途中でオペレータIDと工程IDのいずれかでも入力されると、入力時点に応じて各縫製作業時刻のデータの途中に介挿される。上記縫製作業時刻の記録は縫い終了時に押下されるカウントスイッチ23の押下の際に行われる。また、生産管理ミシン10の主電源投入時には、縫製作業時刻データDにミシンIDが記録される。
【0018】
なお、ミシンIDとは、各生産管理ミシン10に対して個別に割り振られた各ミシンを区別するための符号である。
また、オペレータIDとは、複数のオペレータ(作業者)が各生産管理ミシン10を用いてそれぞれ分担された作業工程の縫製作業を行う際に、各オペレータを区別するために各オペレータに対して個別に割り振られた符号である。
また、工程IDとは、各種の被縫製物に対する各作業工程を区別するために各作業工程ごとに個別に割り振られた符号である。
ここで、作業工程については、被縫製物の種類ごとに作業工程は別のものとして識別されるが、同種の被縫製物について、サイズ、色、仕様、材料種等が異なる場合には、これらの作業工程を別のものとして識別可能となるように別のIDを割り振っても良い。
なお、被縫製物の量産に対応すべく、被縫製物の生産をロット単位で管理している場合には、ロットが異なる場合も作業工程を別のものとして識別しても良い。
【0019】
なお、上記縫製作業時刻データDには、「作業者特定情報」、「作業工程特定情報」、「作業所要時間特定情報」及び「生産数量情報」がそれぞれ記録されている。具体的には、「作業者特定情報」として各作業工程を担当したオペレータのオペレータID、「作業工程特定情報」として工程IDが記録されている。また、「作業所要時間特定情報」は、各作業工程ごとの作業所用時間を特定する情報であり、この「作業所要時間特定情報」としては、前の縫製作業時刻データから次の縫製作業時刻データまでの経過時間を算出することで間接的に作業所要時間を特定することを可能とする縫製作業時刻データが記録されている。
また、「生産数量情報」としては、間接的に生産数量を求めることを可能とする「縫製作業時刻データ」がこれに相当する。つまり、定められた期間内の縫製作業時刻データの個数をカウントすることで間接的に生産数量を特定することを可能とする。
【0020】
図4は生産管理ミシン10のCPU31により実行される縫製作業時刻データDの記録処理プログラムに基づいて行われる処理を示すフローチャートである。
これによれば、まず、主電源がオンされると、ミシン回転数を周期的に検出するための周期を計時する回転数記録タイマ(図示略)が計時を開始する(ステップS1)。そして、縫製作業時刻データDにミシンIDを記録する(ステップS2)。
次いで、CPU31は、表示部22に対してオペレータIDと工程IDの入力を要求する指示を表示させ、操作キー群21からこれらの入力を受けると縫製作業時刻データDにオペレータID及び工程IDを記録する(ステップS3)。
【0021】
そして、図示しない内蔵クロックにより現在時刻を参照し、縫製作業時刻として縫製作業時刻データDに記録する(ステップS4)。
なお、各ID、縫製作業時刻はそれぞれが記録を実行した順番通りに記録され、縫製作業時刻データDの中身となる各データ群を順番に参照すれば記録された順番が分かるようになっている。
【0022】
次いで、ステップS5では、オペレータの交代などにより新たなオペレータIDの入力が行われたかの判定を行い、入力がない場合にはステップS7に処理を進め、入力があった場合には縫製作業時刻データDにオペレータIDを記録する(ステップS6)。
次いで、ステップS7では、工程の変更により新たな工程IDの入力が行われたかの判定を行い、入力がない場合にはステップS9に処理を進め、入力があった場合には縫製作業時刻データDに工程IDを記録する(ステップS8)。
ステップS9では、カウントスイッチ23の入力があったか否かの判定を行い、入力がない場合にはステップS5に処理を戻す。また、入力があった場合には、縫製作業時刻データDに縫製作業時刻を記録してから(ステップS10)、ステップS5に処理を戻す。
上記処理は、生産管理ミシン10の主電源のオフまで継続して行われ、これにより、生産管理ミシン10のEEPROM35には縫製作業時刻データDが記録される。
【0023】
(作業分析装置)
作業分析装置101は、複数のミシンのオペレータが、それぞれ上述した生産管理ミシン10を用いてそれぞれ分担された作業工程の縫製作業を同時に実施して生産する製品の生産に関わる作業記録データを集計の上、分析し、その分析結果として「作業所要時間」や「実作業時間」をモニタ103に表示する。この作業分析装置101は、後述する各種の入力を行うキーボード102と、所定の画面表示が行われる表示手段としてのモニタ103と、基本プログラム及び初期データが記憶されたROM104と、各種のプログラムを実行するCPU105と、CPU105の処理に関する各種データをワークエリアに格納するRAM106と、CPU105と、後述する各処理を行うためのプログラムと各生産管理ミシン10から受信した縫製作業時刻データDを格納する記憶手段としてのHD(ハードディスク)装置108と、縫製作業時刻データDを生産管理ミシン10から取得するためのデータ取得手段としてのフラッシュメモリカード36及びその読み取り書き込み装置109と、モニタ103に表示されるポインタの移動操作及び決定の入力を行うマウス110とを備えている。なお、以下に説明する表示画面に対するマウス110による選択や決定の入力操作は周知であるため、その原理や詳細説明は省略する。
【0024】
(メイン画面)
作業分析装置101では、各生産管理ミシン10から縫製作業時刻データDを取得すると、所定の処理プログラムによりモニタ103にメイン画面M1を表示する。図5はメイン画面M1の表示例である。
メイン画面M1は、各生産管理ミシン10から取得された縫製作業時刻データDの中に、いずれの識別情報(オペレータID及び工程ID)に属し、いずれの期間(日時)についてのデータが存在するかを示す一覧表形式の表示である。かかるメイン画面M1では、縦軸にオペレータID又は工程IDの識別情報の一覧が表示されると共にこれらがIDの選択スイッチとなり、横軸に期間が時系列で並んで表示されると共にこれらが期間の選択スイッチとなっている。そして、任意のIDから横一列に並んだマス目と任意の期間から縦一列に並んだマス目との交差する位置にあるマス目の表示色が、任意のIDにおける任意の期間についてデータが存在するかを示すようになっている。
また、縦軸にオペレータIDと工程IDのいずれをとるかは切り替えスイッチM11へのマウス操作により選択可能となっており、期間の表示範囲の選択は表示期間指定スイッチM12へのマウス操作により行われるようになっている。
さらに、メイン画面M1は、記録内容の表示又はグラフ表示を行う対象となるデータを選択するために、識別情報とデータ記録期間中のいずれかの期間(日時)を選択する「選択手段」として機能する。即ち、前述したように、縦軸はID、横軸は日時を示す格子模様が表示され、格子のそれぞれのマス目が選択スイッチとなっていることから、これらをそれぞれマウス操作で選択することで、選択IDについて選択日時に取得されたデータが特定され、抽出される。
【0025】
上記メイン画面M1においてCPU105が行う処理を図6に基づいて説明する。ここでは、縦軸にオペレータIDが選択された場合を例に説明する。
まず、メイン画面M1の表示の際に各ID及び各期間におけるデータの有無を色分けで示す場合の処理を説明する。
この処理は、まず、縫製作業時刻データDをデータの並びの先頭から読み込み(ステップS21)、一つ目のオペレータIDの記録が存在するかを判定し(ステップS22)、オペレータIDの記録が発見された場合には、当該オペレータIDよりも後方にある直近の縫製作業時刻情報を探索し(ステップS23)、当該縫製作業時刻情報からデータ記録の日時を読み出す(ステップS24)。これを各縫製作業時刻データDの全範囲に対して実行することで(ステップS25)、一つ目のオペレータIDの記録日時を全て得ることができる。同様の処理をそれ以降のオペレータIDについて実行することで、各オペレータIDについて各日時についての作業記録データの存在の有無が確認でき、これに従って、各マス目の色分け表示制御を実行する。
なお、切り替えスイッチM11により縦軸に工程IDが選択されている場合には、上記ステップS22の処理において工程IDが存在するか判定が行われる。
【0026】
次に、メイン画面M1において選択手段として機能する場合にCPU105が行う処理について図7に基づいて説明する。ここでは、縦軸にオペレータIDが選択された場合を例に説明する。
メイン画面M1の表示状態において、CPU105は、縦軸のいずれかのオペレータIDが選択されたか否かを判定し(ステップS31)、次に横軸のいずれかの期間が選択されたかを判定する(ステップS32)。そして、オペレータIDと期間の双方が選択されたか判定する(ステップS33)。
その結果、両方とも選択されている場合には、CPU105は、縫製作業時刻データDに対して選択オペレータIDに属するデータの抽出を行う(ステップS34)。抽出の方法は、縫製作業時刻データDの先頭からデータの読み込みを行い、オペレータIDの検索を行う。オペレータIDを検出すると、そのオペレータIDが選択されたオペレータIDであるかを判定し、それが選択オペレータIDである場合にのみ次のオペレータIDまでのデータを抽出して記録する。オペレータIDの検出、判定、データ抽出を回転数データD1の全範囲について行い、抽出された全データを一時抽出データとしてRAM106に記憶する。
次に、一時抽出データの抽出を行うと、これに対して、CPU105は、選択期間に属する抽出データの抽出を行う(ステップS35)。
抽出の方法は、その一時抽出データの先頭から各縫製作業時刻のデータを読み出し、各データの示す時刻が選択された期間内であるかを判定し、期間内である場合のみ抽出してRAM106に記録し、一時抽出データの全範囲に対して実行する。これにより、縫製作業時刻データDについて選択されたオペレータIDと選択期間に該当する抽出データが抽出される。
なお、切り替えスイッチM11により縦軸に工程IDが選択されている場合には、CPU105は、上記ステップS31の処理において工程IDの選択があるか判定を行い、ステップS34の処理において選択工程IDに属する一時抽出データの抽出を行う。
また、オペレータID又は工程IDと期間の選択は複数であっても良いことは言うまでもない。そして、その場合には、一時抽出データ及び抽出データの抽出は、各選択ID及び各期間ごとに行うことになる。
【0027】
(工程一覧表[1])
各表示画面には、表示カテゴリーの切り替えを行うタブスイッチM13〜M16があり、これら対するマウス操作により、表示カテゴリーを切り替えることを可能としている。なお、ここでは、発明と関連のあるM14の示す稼働状況モニタについて以下に説明することとする。上記タブスイッチM14により表示カテゴリーを稼働状況モニタに切り替えると、モニタ103に図8に示す工程一覧表画面M2を表示することができる。
かかる工程一覧表画面M2では、工程IDを基準とする画面であり、最左列に工程ID、その右隣の列にオペレータID、その右隣の列に作業所要時間としての平均ピッチタイム(1)、その右隣の列に作業所要時間としての平均ピッチタイム(2)が表示される。そして、この工程一覧表画面M2では、各工程IDの右隣には、当該工程IDが示す作業工程を行ったオペレータのIDが表示され、その右側には当該作業工程を当該オペレータが行った時の平均ピッチタイム(1)が表示され、その右側には平均ピッチタイム(1)に基づく平均ピッチタイム(2)が表示されるといったように、各項目が横一列に沿って関連付けられて並べられて表示されるようになっている。
【0028】
ここで、平均ピッチタイム(1)とは各オペレータによる各縫製工程ごとの一枚の縫製物におけるピッチタイム(作業所要時間)の平均値を秒[s]単位で示すものである。当該平均ピッチタイム(1)は、前述した縫製作業時刻データDの抽出データの範囲内において、前後の縫製作業時刻の時間差から算出される。
即ち、作業分析装置101のCPU105は、上記手法により平均ピッチタイム(1)の算出を行うことにより「作業所要時間算出手段」として機能する。
そして、同じオペレータにより同じ作業工程が複数枚について行われた場合のように、抽出データ中にオペレータ及び作業工程が同じである縫製作業時刻が複数存在する場合には、それら全ての縫製作業時刻の合計を縫製回数で除して相加平均により平均化して平均ピッチタイム(1)の算出を行う。
【0029】
平均ピッチタイム(2)は平均ピッチタイム(1)に基づいて算出され、後述する実作業時間の算出に用いられる。
かかる平均ピッチタイム(2)は、抽出データの範囲内において、CPU105による分業判定処理により一つの作業工程について複数のオペレータが作業を行っていたか否かが判定され、否定判定、すなわち、一つの作業工程について一人のオペレータしか作業を行っていないと判定された場合には、平均ピッチタイム(1)=平均ピッチタイム(2)と算出され、工程判定、すなわち、一つの作業工程を複数のオペレータにより分業したと判定された場合には、各オペレータの平均ピッチタイム(1)をさらに調和平均により平均化して算出され、これも秒[s]単位で表示される。
具体的には、工程一覧表画面M2における工程(45)はオペレータ(1067),(1105),(1106)により分業されており、この場合、各人の平均ピッチタイム(1)である85[s],103[s],69[s]を調和平均の概念に従って平均化すると、その平均値は、3/((1/85)+(1/103)+(1/69))≒83[s]が算出される。
この値は、オペレータ(1067),(1105),(1106)が共同で前記作業工程を行った場合の所要時間である1/((1/85)+(1/103)+(1/69))[s]の丁度3倍に相当するので、オペレータ(1067),(1105),(1106)の平均的能力を有する者が当該作業工程を行うのに要する作業所要時間ということができる。
即ち、作業分析装置101のCPU105は、上記手法により平均ピッチタイム(2)の算出を行うことにより当該作業分析装置101の「作業所要時間算出手段」として機能する。
【0030】
図9は工程一覧表画面M2の表示処理を示すフローチャートである。CPU105は、選択オペレータID及び選択期間ごとに縫製作業時刻データDから抽出した抽出データについて先頭から読み込みを行う(ステップS41)。
そして、抽出データの先頭からの読み込みの過程において、工程ID及びオペレータIDの検出を行い、さらに、それに連なる縫製作業時間データの前後の時間差から縫製所要時間であるピッチタイムを順番に算出する(ステップS42)。
【0031】
次いで、順番に算出されたピッチタイムの中から外れ値を除外する処理を行う(ステップS43)。
ここで、上記外れ値を除いて平均値を算出する処理について、CPU105が行う一例を詳述する。
まず、抽出データの範囲でオペレータID及び工程IDが同一の複数のピッチタイムの集まりごとに標準偏差Sを算出する。標準偏差Sは下式(1)〜(3)に基づいて算出される。即ち、上記範囲ごとにピッチタイムの平均値を算出する。ここで、符号xは対象となる範囲の個々のピッチタイムを示し、上線付きのxはその平均値を示す。また、符号nは対象となる範囲のピッチタイムのサンプル数である
そして、求められた平均値から下式(2)に基づいて平方偏差s2を算出し、その平方
根から下式(3)に基づいて標準偏差sを算出する。
【0032】
【数1】

【0033】
次に、標準偏差sから3σの範囲の平均値を算出する。
即ち、+3σ=(xの平均値)+(s×3)と−3σ=(xの平均値)−(s×3)とを求め、±3σの範囲(−3σ以上であって+3σ以下の範囲)内のピッチタイムのみを抽出し、外れ値の除外が行われる。
次いで、外れ値を除外した各範囲ごとの各ピッチタイムを相加平均により再度平均化する処理を行い、各範囲ごとに平均ピッチタイム(1)を算出する(ステップS44)。
【0034】
次いで、平均ピッチタイム(2)を算出する処理を行う(ステップS45)。
かかる平均化処理は、図10のフローチャートに示すように、まず、いずれかの作業工程について複数オペレータによる分業が行われたか否かの判定(分業判定処理)が行われる(ステップS451)。
即ち、抽出データを、各工程ごとに分類し、各工程に属するオペレータが複数存在するか否かにより判定を行う。一つの工程に対して一人のオペレータしか存在しない場合には、当該工程に属する平均ピッチタイム(1)の値をそのまま平均ピッチタイム(2)とする(ステップS452)。
また、一つの工程に対して複数のオペレータが存在する場合には、当該工程に属する各オペレータの平均ピッチタイム(1)の値を調和平均により平均化して平均ピッチタイム(2)を算出する(ステップS453)。
【0035】
抽出データの全工程について平均ピッチタイム(2)が求まると、CPU105は、全工程における平均ピッチタイム(2)の相加平均値を算出する。さらに、かかる総合的な平均値から所定比率を乗じて上限値(=平均値÷0.85)と下限値(=平均値×2−上限値)とを算出する(ステップS46)。
そして、前述した工程一覧表画面M2の表示を行うか、或いはグラフ表示画面M3の表示を行う(ステップS47)。グラフ表示画面M3の表示を行う場合には、図11に示すように、各工程ごとの平均ピッチタイム(2)の値をプロットして折れ線グラフ表示を行うと共に、そのグラフ表示領域内に総合的な平均値の平均値ラインM31と上限値の上限値ラインM32、下限値の下限値ラインM33を表示する。このように、平均ピッチタイム(2)のグラフ表示の際に、上限値及び下限値の各ラインM31とM32を同時に表示することで、縫製作業の管理者は、この上限値及び下限値の各ラインM31とM32を目安に、工程ごとの平均ピッチタイム(2)のバラツキの程度を容易に判断することができる。
表とグラフの切り替えは画面内のグラフ表示ボタンM22へのマウス操作によって行われる。
【0036】
(工程一覧表[2])
工程一覧表画面M2は、前述したように工程ID基準の画面であり、これをオペレータID基準に表示切り替えを行う切り替えスイッチM21が設けられている。即ち、当該切り換えスイッチM21をマウス操作すると、図12に示す、オペレータID基準の工程一覧表画面M4に表示切り替えが行われる。
かかる工程一覧表画面M4では、最左列にオペレータID、その右隣の列に工程ID、その右隣の列に平均ピッチタイム(2)、その右隣の列に生産数量、その右隣の列に実作業時間が表示される。そして、工程一覧表画面M4では各オペレータIDの右隣には、当該オペレータが作業を行った作業工程の工程IDが表示され、その右側には当該オペレータが当該作業工程を行った生産数量が表示され、その右側には当該オペレータが当該作業工程を行った時の平均ピッチタイム(2)が表示され、その右側には平均ピッチタイム(2)に基づく実作業時間が表示されるというように各項目は、横一列に沿って関連付けられて並べられて表示される。
【0037】
ここで、実作業時間は、原則として、前述した縫製作業時刻データDの抽出データの範囲内の工程IDが示す全ての作業工程がオペレータごとに分けられ、各オペレータに属する作業工程の平均ピッチタイム(2)を合計することにより算出される。
但し、複数のオペレータにより分業した作業工程が存在する場合には、領域Bに示すように、分業を行ったオペレータについては、平均ピッチタイム(2)の値に対して、当該作業工程の全生産枚数に対する当該オペレータの生産枚数分の比率を乗じた上で、他の各作業工程の平均ピッチタイム(2)と合計し、実作業時間を算出する。
【0038】
前述したように、工程(45)はオペレータ(1067),(1105),(1106)により分業されており、オペレータ(1105)を例に説明すると、当該オペレータ(1105)の工程(45)における平均ピッチタイム(2)は約83[s]になるが(図8参照)、工程(45)の全生産数量は5+15+10=30であり、その内、オペレータ(1105)の生産数量は5なので、83[s]に5/30が乗じられ、83×(5/30)≒14[s]となる。
従って、オペレータ(1105)の実作業時間は、上記値と他の作業工程の平均ピッチタイム(2)との合計により、88+194+72+14=368[s]と算出される。
即ち、作業分析装置101のCPU105は、上記手法により実作業時間の算出を行うことにより「実作業時間算出手段」として機能する。
【0039】
図13は工程一覧表画面M4の表示処理を示すフローチャートである。CPU105は、選択オペレータID及び選択期間ごとに縫製作業時刻データDから抽出した抽出データについて先頭から読み込みを行う(ステップS51)。
そして、抽出データの先頭からの読み込みの過程において、工程ID及びオペレータIDの検出を行い、さらに、それに連なる縫製作業時間データの前後の時間差から縫製所要時間であるピッチタイムを順番に算出する。また、工程とオペレータが一致する縫製作業時間データの個体数をカウントし、生産数量を算出する(ステップS52)。
【0040】
次いで、順番に算出されたピッチタイムの中から外れ値を除外する処理を行う(ステップS53)。外れ値を除外の手法は前述のステップS43と同じである。
次いで、外れ値を除外した上で、オペレータ及び工程が一致する範囲ごとの各ピッチタイムを相加平均により再度平均化する処理を行い、各範囲ごとに平均ピッチタイム(1)を算出する(ステップS54)。
【0041】
次いで、平均ピッチタイム(2)及び実作業時間を算出する処理を行う(ステップS55)。
かかる処理は、図14のフローチャートに示すように、ステップS451と同じように、いずれかの作業工程について複数オペレータによる分業が行われたか否かの判定(分業判定処理)が行われる(ステップS551)。
そして、分業が行われていない場合には、当該工程に属する平均ピッチタイム(1)の値をそのまま平均ピッチタイム(2)とする(ステップS552)。
また、分業が行われている場合には、当該工程に属する各オペレータの平均ピッチタイム(1)の値を調和平均により平均化して平均ピッチタイム(2)を算出する(ステップS553)。
さらに、分業を行ったオペレータごとに、算出された平均ピッチタイム(2)の値に各オペレータの生産数量比率(オペレータ個人による生産数量/工程全体の生産数量)を乗じる(ステップS554)。
そして、オペレータごとに、各オペレータが作業を行った工程の平均ピッチタイム(2)を合算する。このとき、分業が行われた工程についての平均ピッチタイム(2)は前述したように生産数量比率を乗じた値が合算される(ステップS555)。かかる処理により、各オペレータごとの実作業時間が算出される。
【0042】
抽出データの全オペレータについて実作業時間が求まると、CPU105は、全オペレータにおける実作業時間の相加平均値を算出する。さらに、かかる総合的な平均値から所定比率を乗じて上限値(=平均値÷0.85)と下限値(=平均値×2−上限値)とを算出する(ステップS56)。
そして、前述した工程一覧表画面M4の表示を行うか、或いはグラフ表示画面M5の表示を行う(ステップS57)。グラフ表示画面M5の表示を行う場合には、図15に示すように、各オペレータごとの実作業時間の値をプロットして折れ線グラフ表示を行うと共に、そのグラフ表示領域内に総合的な平均値の平均値ラインM51と上限値の上限値ラインM52、下限値の下限値ラインM53を表示する。このように、実作業時間のグラフ表示の際に、上限値及び下限値の各ラインM51と52を同時に表示することで、縫製作業の管理者は、この上限値及び下限値の各ラインM51とM52を目安に、実作業時間のバラツキの程度を容易に判断することができる。
この場合も、表とグラフの切り替えは画面内のグラフ表示ボタンM22へのマウス操作によって行われる。
【0043】
(発明の実施形態の効果)
ミシンの作業分析システム100では、複数の生産管理ミシン10から取得された複数の縫製作業時刻データDに基づいて、作業分析装置101が、縫製作業時刻データDに含まれるオペレータID、工程ID及び縫製作業時刻情報とにより、いずれのオペレータがいずれの作業工程を行い、当該作業工程にどのくらいのピッチタイムを要したかを集計する。そして、集計される複数の縫製作業時刻データDから抽出された抽出データの中に、複数のオペレータにより分業して行われた作業工程が存在した場合には、分業したオペレータごとに相加平均で求められた平均ピッチタイム(1)の値をさらに調和平均により平均化して平均ピッチタイム(2)を算出する。これにより、分業したオペレータの平均的能力を有する者が当該作業工程を行うのに要するピッチタイムを求めることができ、各オペレータの作業能力を反映した手法により実作業時間を求めることができる。
従って、各オペレータの実作業時間を作業能力に応じてなるべく均等となるように調整する場合において、より合目的的に実作業時間を算出することが可能となり、作業分析装置101を用いることで、オペレータの工程配分を正しく調整し、生産効率の向上を図ることが可能となる。
【0044】
また、ミシンの作業分析システム100では、複数のオペレータにより分業が行われた作業工程が存在した場合には、作業分析装置101が、各オペレータの実作業時間の算出に際し、分業が行われた作業工程の平均ピッチタイム(2)については、各オペレータの生産数量比率を乗じた上で、他の作業工程の平均ピッチタイム(2)と合算して実作業時間を算出する。このため、共同で行われた作業工程全体の全所要時間のうちオペレータ各人が負担した時間比率をより適切に反映した実作業時間を求めることができ、作業者の工程配分を正しく調整し、生産効率の向上を図ることが可能となる。
【0045】
なお、本発明の作業分析装置は、上記実施の形態に限定されるものでなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、複数のオペレータにより分業が行われた作業工程が存在した場合には、常に調和平均により求めた平均ピッチタイムを用いて実作業時間を算出しているが、複数のオペレータにより分業が行われた作業工程の有無に関わりなく、全オペレータについて、相加平均により平均ピッチタイムを用いて実作業時間を算出するように切り替える選択手段を設け、作業現場の状況に対応していずれか一方を選択しても良い。
また、上述の実施の形態では、本発明の作業分析装置は、縫製作業時刻データDを集計、分析した分析結果である「作業所要時間」や「実作業時間」作業分析装置本体のモニタに表示しているのみであるが、作業分析装置に外部のプリンタやメモリ素子等と通信可能な不図示のインターフェースを設け、その分析結果を外部のプリンタやメモリ素子等に出力するようにても良い。
また、上述の実施の形態では、本発明の作業分析装置を、ミシンによる縫製作業を分析する場合を例に説明したが、本発明の作業分析装置は、上記実施の形態に限定されるものでなく、複数の作業者がそれぞれ分担された作業工程の作業を同時に実施して生産する製品であれば、種々の製品の生産に適用し得ることは、勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】ミシンの作業分析システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】生産管理ミシンを含む作業分析システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】作業記録データとしての縫製作業時刻データの記録構造を示す説明図である。
【図4】生産管理ミシンのCPUにより実行される作業記録データの記録処理プログラムに基づいて行われる処理を示すフローチャートである。
【図5】メイン画面の表示例である。
【図6】メイン画面においてCPUが行う表示処理を示すフローチャートである。
【図7】メイン画面においてCPUが行う選択処理を示すフローチャートである。
【図8】工程基準の工程一覧表画面の表示例である。
【図9】工程一覧表画面の表示処理を示すフローチャートである。
【図10】工程一覧表画面の表示処理中に行われるピッチタイムの平均化処理を示すフローチャートである。
【図11】平均ピッチタイム(2)のグラフ表示画面の表示例である。
【図12】オペレータID基準の工程一覧表画面の表示例である。
【図13】工程一覧表画面の表示処理を示すフローチャートである。
【図14】工程一覧表画面の表示処理中に行われる実作業時間の算出処理を示すフローチャートである。
【図15】実作業時間のグラフ表示画面の表示例である。
【図16】ソファーの縫製作業を工程ごとに五人のオペレータが分担する場合の例を示した説明図である。
【図17】作業記録データをオペレータに属する各工程と各工程に要した時間と各オペレータの実作業時間とを表形式で示した集計データを示す図表である。
【図18】図17のデータD1及びD2を折れ線で示した線図である。
【図19】作業記録データを工程ごとにまとめた集計データを示す図表である。
【図20】作業記録データをオペレータごとにまとめた集計データを示す図表である。
【符号の説明】
【0047】
10 生産管理ミシン
36 フラッシュメモリカード(データ取得手段)
37 読み取り書き込み装置(データ取得手段)
101 作業分析装置
103 モニタ(表示手段)
105 CPU(作業所要時間算出手段、実作業時間算出手段)
D 縫製作業時刻データ(作業記録データ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の作業者がそれぞれ分担された作業工程の作業を同時に実施して生産する製品の生産に関わる作業記録データを集計の上、分析してその分析結果を表示または外部に出力する作業分析装置において、
前記各作業工程を担当した作業者特定情報、作業工程特定情報及び各作業工程ごとの作業所要時間特定情報を含む作業記録データを取得するデータ取得手段と、
前記各作業記録データの全体又は一部の範囲で、各作業工程について各作業者ごとの作業所要時間を求める作業所要時間算出手段と、
前記各作業者ごとに、当該各作業者が行った作業工程の作業所要時間を合計して実作業時間を算出する実作業時間算出手段と、
を備え、 前記実作業時間算出手段は、前記各作業記録データ中に一つの作業工程を複数の作業者で分業した場合の作業所要時間特定情報がある場合に、これら作業者の前記作業工程の作業所要時間を調和平均により平均化し、当該平均化により求められた作業所要時間に基づいて前記各作業者ごとの実作業時間を算出することを特徴とする作業分析装置。
【請求項2】
前記各作業記録データには、各作業者による各作業工程ごとの生産数量情報が含まれると共に、
前記実作業時間算出手段は、前記各作業記録データ中に一つの作業工程を複数の作業者で分業した場合の作業所要時間特定情報がある場合に、
前記各作業者の実作業時間を、前記調和平均により平均化して算出された作業所要時間に前記分業した作業工程全体の生産数量に対する個々の作業者の生産数量が占める比率を乗じた上で、他の作業工程の作業所要時間と合計して算出することを特徴とする請求項1記載の作業分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−61519(P2010−61519A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228237(P2008−228237)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】