説明

作業機のエンジン制御装置

【課題】 目標回転速度指令手段により目標回転速度を指令することができない異常状態であっても、点検修理を行うまでの間に一時的に作業機を駆動することを可能にして使い勝手を向上することが可能となる作業機のエンジン制御装置を提供する。
【解決手段】 エンジンEの目標回転速度を指令する手動操作式の目標回転速度指令手段40と、エンジンEの回転速度を検出する回転速度検出手段S6と、エンジンEの回転速度を変更調整自在な回転速度調整手段42と、回転速度検出手段S6の検出情報に基づいてエンジンEの回転速度が目標回転速度になるように回転速度調整手段42を制御する制御手段Hとが備えられ、制御手段Hが、目標回転速度指令手段40により目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別すると、エンジンEの回転速度が予め設定された作業用の設定回転速度になるように回転速度調整手段42を制御する異常用代替処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの目標回転速度を指令する手動操作式の目標回転速度指令手段と、前記エンジンの回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記エンジンの回転速度を変更調整自在な回転速度調整手段と、前記目標回転速度指令手段の指令情報並びに前記回転速度検出手段の検出情報に基づいて前記エンジンの回転速度が前記目標回転速度になるように前記回転速度調整手段を制御する制御手段とが備えられた作業機のエンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作業機のエンジン制御装置において、従来では、前記目標回転速度指令手段の一例としてアクセルレバーの操作位置を検出するポテンショメータ式のアクセル位置センサが備えられ、エンジンの回転速度がそのアクセル位置センサにて指令される目標回転速度になるように回転速度調整手段としての電子ガバナーを制御するように構成されたものがあった(特許文献1参照。)。そして、特許文献1には記載されていないが、この種の作業機のエンジン制御装置では、アクセル位置センサにおいて断線やショート等の故障が発生する等、目標回転速度指令手段により目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別すると、制御手段がエンジンを非常停止させるように制御するのが一般的であった。
【0003】
【特許文献1】特開平9−4481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成では、上記したように目標回転速度指令手段により目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別すると、制御手段が、エンジンを非常停止させるように制御するものであるから、その後は作業を行うことはできず、点検修理等を行うためにメンテナンス作業員が来るまで待たなければならず、使い勝手が悪いものとなっていた。
【0005】
例えば、作業機の一例としてのコンバインでは、圃場内で刈取作業しているときに上記したような異常状態になるおそれがあるが、そのような異常状態になると、エンジンを非常停止させるので、その後は圃場内での刈取作業を行うことができない。そうすると、例えば1日で終了すべき予定の圃場内での刈取作業があと少しで終了するような場合であっても刈り残している穀稈を刈り取る作業が行えないものとなり、点検修理等を行うためにメンテナンス作業員が来るまで待たなければならず、使い勝手が悪いものとなっていた。
【0006】
本発明の目的は、目標回転速度指令手段により目標回転速度を指令することができない異常状態であっても、点検修理を行うまでの間に一時的に作業を行うことを可能にして使い勝手を向上することが可能となる作業機のエンジン制御装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、エンジンの目標回転速度を指令する手動操作式の目標回転速度指令手段と、前記エンジンの回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記エンジンの回転速度を変更調整自在な回転速度調整手段と、前記回転速度検出手段の検出情報に基づいて前記エンジンの回転速度が前記目標回転速度になるように前記回転速度調整手段を制御する制御手段とが備えられた作業機のエンジン制御装置であって、その第1特徴構成は、前記制御手段が、前記目標回転速度指令手段により前記目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別すると、前記エンジンの回転速度が予め設定された作業用の設定回転速度になるように前記回転速度調整手段を制御する異常用代替処理を実行するように構成されている点にある。
【0008】
第1特徴構成によれば、制御手段が、目標回転速度指令手段により目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別すると、エンジンの回転速度が予め設定された作業用の設定回転速度になるように回転速度調整手段を制御する。つまり、目標回転速度指令手段により目標回転速度を指令することができない異常状態であっても、エンジンを作業用の設定回転速度で作動させることができるのである。
【0009】
このようにエンジンが作業用の設定回転速度で作動することにより、点検修理等を行うためにメンテナンス作業員が来るまで待たなくても、作業を継続して行うことができ、例えば1日で終了すべき予定の作業を終了させる等、点検修理を行うまでの間に一時的に作業を継続することが可能となる。
【0010】
従って、第1特徴構成によれば、目標回転速度指令手段により目標回転速度を指令することができない異常状態であっても、点検修理を行うまでの間に一時的に作業を行うことを可能にして使い勝手を向上することが可能となる作業機のエンジン制御装置を提供できるに至った。
【0011】
本発明の第2特徴構成は、エンジンの目標回転速度を指令する手動操作式の目標回転速度指令手段と、前記エンジンの回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記エンジンの回転速度を変更調整自在な回転速度調整手段と、前記回転速度検出手段の検出情報に基づいて前記エンジンの回転速度が前記目標回転速度になるように前記回転速度調整手段を制御する制御手段とが備えられた作業機のエンジン制御装置であって、前記制御手段が、前記目標回転速度指令手段により前記目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別し且つ作業状態検出手段の検出結果に基づいて作業の実行が指令されていることを判別すると、前記エンジンの回転速度が予め設定された作業用の設定回転速度になるように前記回転速度調整手段を制御し、前記目標回転速度指令手段により前記目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別し且つ作業の実行が指令されていないことを判別すると、予め設定された非作業用の設定回転速度になるように前記回転速度調整手段を制御する異常用代替処理を実行するように構成されている点にある。
【0012】
第2特徴構成によれば、制御手段が、目標回転速度指令手段により目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別し且つ作業状態検出手段の検出結果に基づいて作業の実行が指令されていないことを判別すると、予め設定された非作業用の設定回転速度になるように回転速度調整手段を制御する。
【0013】
作業の実行が指令されていないときであっても、例えば車体を走行させることができるようにエンジンを駆動させておく必要があるが、作業を実行しないにもかかわらずエンジンを比較的高い回転速度である作業用の設定回転速度で駆動するようにすると、燃料が無駄に消費されたり、騒音が大きくなる等の不利がある。そこで、上述したように、作業の実行が指令されていない場合には、エンジンを作業用の設定回転速度に較べて低い回転速度である非作業用の設定回転速度で駆動することになるので、燃料の消費量を抑制したり、騒音を低減させることが可能となる。
【0014】
一方、制御手段は、目標回転速度指令手段により目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別し且つ作業の実行が指令されていることを判別すると、エンジンの回転速度が予め設定された作業用の設定回転速度になるように回転速度調整手段を制御する。つまり、目標回転速度指令手段により目標回転速度を指令することができない異常状態であってもエンジンを作業用の設定回転速度で作動させることができる。このようにエンジンを作業用の設定回転速度で作動させることにより作業を継続して行うことが可能になる。
【0015】
従って、第2特徴構成によれば、目標回転速度指令手段により目標回転速度を指令することができない異常状態において、作業の実行が指令されている場合には、点検修理を行うまでの間に一時的に作業を行うことが可能なものでありながら、作業の実行が指令されていない場合には、エンジンの燃料の消費量を抑制したり、エンジンの騒音を低減させることが可能となり、使い勝手がさらに向上するものとなる。
【0016】
本発明の第3特徴構成は、エンジンの目標回転速度を指令する手動操作式の目標回転速度指令手段と、前記エンジンの回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記エンジンの回転速度を変更調整自在な回転速度調整手段と、前記回転速度検出手段の検出情報に基づいて前記エンジンの回転速度が前記目標回転速度になるように前記回転速度調整手段を制御する制御手段とが備えられた作業機のエンジン制御装置であって、前記目標回転速度指令手段に代えて前記目標回転速度を指令する手動操作式の代用指令手段が備えられ、前記制御手段が、前記目標回転速度指令手段により前記目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別すると、前記エンジンの回転速度が前記代用指令手段にて指令される前記目標回転速度になるように前記回転速度調整手段を制御する異常用代替処理を実行するように構成されている点にある。
【0017】
第3特徴構成によれば、目標回転速度指令手段に代えて目標回転速度を指令する手動操作式の代用指令手段が備えられており、制御手段は、目標回転速度指令手段により目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別すると、目標回転速度指令手段にて指令される情報ではなく、代用指令手段にて指令される情報を利用して、エンジンの回転速度がその代用指令手段にて指令される目標回転速度になるように回転速度調整手段を制御する。つまり、目標回転速度指令手段により目標回転速度を指令することができない異常状態であっても、制御手段及び回転速度調整手段が正常に動作していれば、エンジンを代用指令手段にて指令される目標回転速度で作動させることができる。
【0018】
このとき、代用指令手段にて指令される目標回転速度が作業を行うのに適した作業用の設定回転速度が指令されると、点検修理等を行うためにメンテナンス作業員が来るまで待たなくても、作業を継続して1日で終了すべき予定の作業を終了させる等、点検修理を行うまでの間に一時的に作業を継続することが可能となる。
【0019】
従って、第3特徴構成によれば、目標回転速度指令手段により目標回転速度を指令することができない異常状態であっても、点検修理を行うまでの間に一時的に作業を行うことを可能にして使い勝手を向上することが可能となる作業機のエンジン制御装置を提供できるに至った。
【0020】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかに加えて、前記制御手段が、前記目標回転速度指令手段より指令される指令値が異常な値であれば前記異常状態であると判別するように構成されている点にある。
【0021】
第4特徴構成によれば、目標回転速度指令手段より指令される指令値が異常な値である場合、すなわち、目標回転速度指令手段自身が故障しているような場合に、制御手段が前記異常状態であると判別して、異常用代替処理を実行することになる。
【0022】
従って、第4特徴構成によれば、目標回転速度指令手段自身が故障して目標回転速度指令手段により目標回転速度を指令することができない異常状態であっても、制御手段が異常用代替処理を実行することで、点検修理を行うまでの間に一時的に作業を行うことが可能になるのである。
【0023】
本発明の第5特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかに加えて、前記目標回転速度指令手段にて指令される前記目標回転速度が通信手段を介して指令されるように構成され、前記制御手段が、前記通信手段が通信異常であれば前記異常状態であると判別するように構成されている点にある。
【0024】
第5特徴構成によれば、目標回転速度指令手段にて指令される目標回転速度が通信手段を介して指令されるように構成されるものにおいて、制御手段は、通信手段が通信異常であれば異常状態であると判別するのである。つまり、目標回転速度指令手段自身が故障していなくても、通信手段が通信異常であるときは、目標回転速度指令手段により目標回転速度が適正に指令されない状態となるので、このような場合には、制御手段が前記異常状態であると判別して、異常用代替処理を実行することになる。
【0025】
従って、第5特徴構成によれば、通信手段が通信異常であって目標回転速度指令手段により目標回転速度を指令することができない異常状態であっても、制御手段が異常用代替処理を実行することで、点検修理を行うまでの間に一時的に作業を行うことが可能になるのである。
【0026】
本発明の第6特徴構成は、第1特徴構成〜第5特徴構成のいずれかに加えて、前記制御手段が、作業機の運転状態を管理する運転状態管理部と、前記回転速度調整手段を制御するエンジン制御部とを備えて構成され、前記目標回転速度指令手段から前記運転状態管理部に前記目標回転速度が指令されるように構成され、且つ、前記運転状態管理部が前記目標回転速度を前記エンジン制御部に指令するように構成され、前記運転状態管理部が、前記異常用代替処理を実行するように構成されている点にある。
【0027】
第6特徴構成によれば、前記制御手段が作業機の運転状態を管理する運転状態管理部と回転速度調整手段を制御するエンジン制御部とを備えて構成されるものであり、目標回転速度指令手段から運転状態管理部に目標回転速度が指令され、その運転状態管理部が目標回転速度をエンジン制御部に指令することになる。そして、運転状態管理部は、目標回転速度指令手段により目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別すると、前記異常用代替処理を実行することになる。
【0028】
前記制御手段が、作業機の運転状態を管理する運転状態管理部と回転速度調整手段を制御するエンジン制御部を備えて構成されるので、制御手段の機能を運転状態管理部とエンジン制御部等に分担させるようにして処理負担の軽減を図ることが可能となる。又、前記運転状態管理部は作業機の運転状態を管理するものであるから、前記異常用代替処理を実行するときに、そのときの作業機の運転状態に応じて、例えば前記目標回転速度を適切な値に変更することができる。
【0029】
従って、第6特徴構成によれば、制御手段の機能を運転状態管理部とエンジン制御部に分担させるようにして処理負担の軽減を図ることが可能なものでありながら、異常が発生したときに適切に異常用代替処理を実行することが可能となる。
【0030】
本発明の第7特徴構成は、第1特徴構成〜第5特徴構成のいずれか1項に加えて、前記制御手段が、作業機の運転状態を管理する運転状態管理部と、前記回転速度調整手段を制御するエンジン制御部とを備えて構成され、前記目標回転速度指令手段から前記運転状態管理部に前記目標回転速度が指令されるように構成され、且つ、前記運転状態管理部が前記目標回転速度を前記エンジン制御部に指令するように構成され、前記エンジン制御部が、前記異常用代替処理を実行するように構成されている点にある。
【0031】
第7特徴構成によれば、前記制御手段が作業機の運転状態を管理する運転状態管理部と回転速度調整手段を制御するエンジン制御部とを備えて構成されるものであり、前記目標回転速度指令手段から運転状態管理部に目標回転速度が指令され、その運転状態管理部が目標回転速度をエンジン制御部に指令することになる。そして、エンジン制御部は、目標回転速度指令手段により目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別すると、前記異常用代替処理を実行することになる。
【0032】
前記制御手段が、作業機の運転状態を管理する運転状態管理部と回転速度調整手段を制御するエンジン制御部を備えて構成されるので、制御手段の機能を運転状態管理部とエンジン制御部等に分担させるようにして処理負担の軽減を図ることが可能となる。又、前記エンジン制御部は回転速度調整手段を制御するものであるから、例えば、前記異常状態として前記運転状態管理部からの指令がないような場合であっても前記異常用代替処理を適切に実行することができる。
【0033】
従って、第7特徴構成によれば、制御手段が、作業機の運転状態を管理する運転状態管理部と回転速度調整手段を制御するエンジン制御部を備えて構成されるので、制御手段の機能を運転状態管理部とエンジン制御部等に分担させるようにして処理負担の軽減を図ることが可能なものでありながら、異常が発生したときに適切に異常用代替処理を実行することが可能となる。
【0034】
本発明の第8特徴構成は、第3特徴構成に加えて、前記制御手段が、作業機の運転状態を管理する運転状態管理部と、前記回転速度調整手段を制御するエンジン制御部とを備えて構成され、前記目標回転速度指令手段から前記運転状態管理部に前記目標回転速度が指令されるように構成され、且つ、前記運転状態管理部が前記目標回転速度を前記エンジン制御部に指令するように構成され、前記代用指令手段が、前記エンジン制御部に前記目標回転速度を指令するように構成され、前記運転状態管理部が、前記異常用代替処理として、前記異常状態であることを判別すると、前記エンジン制御部に、前記代用指令手段の指令情報に基づいて前記回転速度調整手段を制御すべく代替指令を指令するように構成され、前記エンジン制御部が、前記異常用代替処理として、前記代替指令が指令されると、前記エンジンの回転速度が前記代用指令手段にて指令される指令回転速度になるように前記回転速度調整手段を制御するように構成されている点にある。
【0035】
第8特徴構成によれば、前記制御手段が作業機の運転状態を管理する運転状態管理部と回転速度調整手段を制御するエンジン制御部とを備えて構成されるものであり、目標回転速度指令手段から運転状態管理部に目標回転速度が指令され、その運転状態管理部が目標回転速度を前記エンジン制御部に指令することになる。そして、運転状態管理部が、目標回転速度指令手段により目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別すると、エンジン制御部に、代用指令手段の指令情報に基づいて回転速度調整手段を制御すべく異常報知指令を指令する。一方、エンジン制御部は、前記異常報知指令が指令されると、前記エンジンの回転速度が前記代用指令手段にて指令される指令回転速度になるように前記回転速度調整手段を制御するのである。
【0036】
従って、第8特徴構成によれば、制御手段が、作業機の運転状態を管理する運転状態管理部と回転速度調整手段を制御するエンジン制御部を備えて構成されるので、制御手段の機能を運転状態管理部とエンジン制御部等に分担させるようにして処理負担の軽減を図ることが可能なものでありながら、異常が発生したときに適切に異常用代替処理を実行することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の実施の形態を作業機の一例としてのコンバインに適用した場合について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、コンバインは、左右一対のクローラ走行装置1R,1Lを備える機体Vの前部に、横軸心X周りに上下揺動操作自在な状態で刈取部1が付設され、その刈取部1の後方に、操縦部2、刈取穀稈を脱穀・選別する脱穀部3、脱穀部3から供給される穀粒を貯留するグレンタンク4、このグレンタンク4内の穀粒を排出するための穀粒排出用のアンローダ5等が搭載されて構成されている。
【0038】
前記刈取部1は、先端部に付設された分草具6、穀稈の引起し装置7、引き起こした穀稈の株元を切断する刈刃8、刈り取られた穀稈を脱穀部3のフィードチェーン9に受け渡す縦搬送装置10、刈取部1の地面に対する高さを検出するための超音波センサS1等を備えて構成されている。前記縦搬送装置10は、刈取部1の揺動軸心Xと同一軸心周りで揺動自在に支持され、扱深さモータM1(図4参照)によって揺動調節自在に設けられ、刈取穀稈を受け取るときの挟持箇所が稈長方向に変更することで脱穀部3での扱深さが調節できるように構成されている。
【0039】
左右の各クローラ走行装置1R、1Lには、緊張輪12及び複数の転動輪13を備えた左右のトラックフレーム14が設けられるとともに、左右のトラックフレーム14を機体Vに対して各別に昇降駆動するためのローリング用シリンダCY2が設けられ、機体Vには、その水平面に対する機体の傾きを検出するローリングセンサS3が設けられている。
【0040】
脱穀部3は、図2に示すように、扱胴16を収納する扱室A、刈取部1から供給される穀稈を搬送するフィードチェーン9、トウミ17と揺動選別板18とからなる選別装置B、穀粒回収用の一番口19、及び、穀粒と藁屑との混合物を回収するための二番口20等を備えている。そして、扱室Aで脱穀された処理物のうち単粒化したものは、扱室Aの下部に設けられた受網21から選別装置Bに漏下し、それ以外の処理物は受網21の後端部より選別装置Bに落下するように構成されている。
【0041】
選別装置Bの揺動選別板18は、トウミ17の上方に位置するグレンパン22、その後方に位置するチャフシーブ23、その下方に位置するグレンシーブ24等を備えている。チャフシーブ23は、処理物移送方向に並置された複数個の帯板状部材からなり、その隣接する帯板状部材の間隔(チャフ開度)がチャフ開度調節モータM4によって変更されるように構成されている。トウミ17は、揺動選別板18上の藁屑を吹き飛ばすためのものであり、後方側のファンケースカバー17aをトウミ風力調節モータM3にて開閉操作することにより、揺動選別板18上の処理物に及ぼす風力(トウミ風力)が変更されるように構成されている。そして、揺動選別板18上の処理物の層厚を検出するシーブセンサS3が設けられている。
【0042】
前記操縦部2には、走行機体Vを手動で左右に旋回操作する操向レバー26が設けられ、操縦部2の左側には、直進時の走行速度を指令する変速操作具27が設けられる。操向レバー26の左右方向の揺動操作量を検出するポテンショメータ式の操向指令器29(図4参照)が設けられ、操向レバー26が直進指令位置にあれば直進し、直進指令位置から左右両側の旋回指令位置に移動することで旋回するように、操向指令器29の指令情報に基づいて後述するように走行制御が行われる構成となっている。
【0043】
次に、動力伝達機構について簡単に説明すると、図3に示すように、エンジンEの出力は、脱穀クラッチ30を介して脱穀部3に伝達されるとともに、主クラッチ31を介してミッション部32に伝えられる。ミッション部32においては、変速操作具27の操作に応じて変速される直進用の無段変速装置(HST)33、変速操作機構34によって変速操作される旋回用の無段変速装置(HST)35、直進時には直進用の無段変速装置33の変速出力を左右のクローラ走行装置1R,1Lに伝達し、旋回時には旋回外側のクローラ走行装置を直進用の無段変速装置33にて駆動し、旋回内側のクローラ走行装置を旋回用の無段変速装置35にて駆動するように伝動状態を切り換える伝動状態切換機構36、直進用の無段変速装置33及び旋回用の無段変速装置35夫々の出力回転速度を各別に検出する一対の出力回転センサS4,S5等が備えられている。
【0044】
そして、図4に示すように、マイクロコンピュータを備えて構成される本機制御ユニット11が備えられ、この本機制御ユニット11は、刈高制御の実行が指令されると、超音波センサS1の情報に基づいて刈取部1の対地高さが目標設定高さに維持されるように刈取部1を駆動昇降する刈取昇降シリンダCY1の作動を制御する刈高制御を実行するように構成されている。又、前記本機制御ユニット11は、扱深さ制御の実行が指令されると、搬送経路中に設けられた稈長センサS2の検出情報に基づいて脱穀部3での扱深さが適正扱深さに維持されるように扱深さモータM1の作動を制御する扱深さ制御を実行するように構成されている。尚、詳細な説明は省略するが、前記本機制御ユニット11は、前記刈高制御、前記扱深さ制御以外にも、例えば、アンローダ5の作動制御等、各種の制御を実行可能に構成されている。
【0045】
又、図4に示すように、マイクロコンピュータを備えて構成される姿勢制御ユニット15が設けられ、この姿勢制御ユニット15は、姿勢制御の実行が指令されると、機体姿勢を水平姿勢等の所定姿勢に維持するように、ローリングセンサS3の情報に基づいて左右のローリング用シリンダCY2の作動を制御する姿勢制御を実行するように構成されている。
【0046】
図4に示すように、マイクロコンピュータを備えて構成される脱穀制御ユニット25が備えられ、この脱穀制御ユニット25は、脱穀制御の実行が指令されると、選別装置Bでの選別処理が適正に行われるように、扱室Aからの漏下処理物量、具体的にはシーブセンサS3の検出結果に基づいて、チャフ開度調節モータM4及びトウミ風力調節モータM5の作動を制御する脱穀制御を実行するように構成されている。
【0047】
さらに、図4に示すように、マイクロコンピュータを備えて構成される走行制御ユニット37が備えられ、その走行制御ユニット37は、操向レバー26にて直進が指令されると伝動状態切換機構36を直進状態に切り換え、操向レバー26にて旋回が指令されると伝動状態切換機構36を旋回状態に切り換え、操向レバー26の左右倒し角に応じて、一対の出力回転センサS4,S5の検出情報等に基づいて、左右のクローラ走行装置1R,1Lに速度差をつけて旋回走行すべく変速操作機構34を制御する走行制御を実行するように構成されている。
【0048】
詳細な構成についての説明は省略するが、上述したような各種の制御(刈高制御、扱深制御、姿勢制御、脱穀制御等)の起動停止の指令を行うための複数の自動入切スイッチや制御目標値等の情報を入力するための各種の設定器等を備える操作パネルユニット38、及び、各種の情報を表示する表示パネルユニット39が設けられている。
図5に示すように、操作パネルユニット38には、エンジンEの目標回転速度を指令する手動操作式の目標回転速度指令手段としての手動操作式のアクセル設定器40が備えられている。
【0049】
そして、図4及び図5に示すように、マイクロコンピュータを備えて構成されるエンジン制御ユニット43と、エンジンEの回転速度を検出する回転速度検出手段としての回転速度センサS6と、エンジンEに対する燃料供給量を変更調整することによりエンジンEの回転速度を変更調整自在な回転速度調整手段としての電子ガバナ42とが設けられ、前記エンジン制御ユニット43は、回転速度センサS6の検出情報に基づいて、エンジンEの回転速度が、後述するように本機制御ユニット11を介して通信にて指令される目標回転速度になるように電子ガバナ42を制御するように構成されている。
【0050】
前記エンジン制御ユニット43によるエンジンEの制御について説明すると、エンジンEは刈取作業を実行することにより負荷が掛かると負荷によって回転速度が低下しようとするが、エンジン制御ユニット43は、回転速度センサS6にて検出されるエンジンEの回転速度が前記本機制御ユニット11から指令される目標回転速度に維持されるように電子ガバナ42を制御する一定回転制御を実行するように構成されている。従って、刈取作業中であってもエンジン回転速度は常に一定に維持されることになる。
【0051】
そして、図4に示すように、本機制御ユニット11、脱穀制御ユニット25、姿勢制御ユニット15、走行制御ユニット37、エンジン制御ユニット43、操作パネルユニット38、表示パネルユニット39の夫々が通信手段としての通信線44を介して通信可能に接続されている。これらの通信形態としては、CAN(コントローラ・エリア・ネットワーク)方式による通信形態が採用されており、2線式の通信線44を介して互いに情報を通信可能に接続される構成となっている。又、本機制御ユニット11は、コンバインの運転状態を管理して、そのときの運転状態から他の制御ユニットの制御内容を調整する運転状態管理部として機能する構成となっている。
【0052】
次に、エンジン制御ユニット43に対する目標回転速度を指令するための構成について説明すると、前記操作パネルユニット38に備えられる前記アクセル設定器40にて指令される目標回転速度についての指令値の情報は、操作パネルユニット38から通信線44を介して本機制御ユニット11に伝えられ、本機制御ユニット11は、その目標回転速度についての指令値に基づいて、エンジンEの目標回転速度を求めて、その目標回転速度を通信線44を介してエンジン制御ユニット43に伝えるように構成されている。
【0053】
前記アクセル設定器40は、手動操作にて変更調整されるポテンショメータにて構成され、その両側端子に夫々抵抗器45を介して設定電圧(5V)が印加されており、その出力端子から得られる出力電圧(指令値の一例)が手動による調整操作に伴って0.5V〜4.5Vの範囲で変化する構成となっており、この出力電圧が操作パネルユニット38に備えられる制御処理部46に入力され、この制御処理部46にてデジタル値に変換されたのち通信用のデータに変換されて通信線44を介して本機制御ユニット11に伝えられる構成となっている。
【0054】
本機制御ユニット11は、操作パネルユニット38から通信にて伝えられるアクセル設定器40の出力電圧に対応するデータと、エンジンEの目標回転速度との相関関係を定めたマップデータあるいは演算式等を予め記憶しておき、操作パネルユニット38から通信されるアクセル設定器40の出力電圧に対応するデータ及び前記マップデータあるいは演算式等からエンジンEの目標回転速度を求めて通信用のデータに変換して、そのデータをエンジン制御ユニット43に通信線44を介して伝える構成となっている。
【0055】
前記本機制御ユニット11は、前記アクセル設定器40から適正に目標回転速度が指令されている状態であれば、言い換えると、後述するような異常状態が判別されていない状態であれば、次のような制御を実行する。
つまり、本機制御ユニット11は、刈取作業状態においては、アクセル設定器40より目標回転速度が指令されているときはその目標回転速度をエンジン制御ユニット43に指令するように構成され、エンジン制御ユニット43は、本機制御ユニット11より目標回転速度が指令されると、回転速度センサS6にて検出されるエンジンEの回転速度が前記目標回転速度になるように電子ガバナ42を制御するように構成されている。
【0056】
又、本機制御ユニット11は、非作業状態においては、アクセル設定器40から指令される目標回転速度にかかわらず、エンジン制御ユニット43に、非作業用の設定回転速度としてのアイドリング回転速度を指令するように構成され、エンジン制御ユニット43が、本機制御ユニット11よりアイドリング回転速度が指令されると、回転速度センサS6にて検出されるエンジンEの回転速度がアイドリング回転速度になるように電子ガバナ42を制御するように構成されている。
【0057】
従って、本機制御ユニット11及びエンジン制御ユニット43により、回転速度検出手段としての回転速度センサS6の検出情報に基づいて、エンジンEの回転速度が、目標回転速度指令手段としてのアクセル設定器40により指令される目標回転速度になるように前記回転速度調整手段としての電子ガバナ42を制御する制御手段Hが構成される。
【0058】
刈取作業状態であるか非作業状態であるかを判別するための構成として、変速操作具27が中立位置(走行停止を指令する位置)にあればオンとなり変速操作具27が中立位置になければオフとなる中立スイッチS9と、脱穀クラッチ30が入状態であればオンとなり脱穀クラッチ30が切状態であればオフとなる脱穀スイッチS8とが備えられており、本機制御ユニット11は、中立スイッチS9がオフしており且つ脱穀スイッチS8がオンであれば刈取作業状態であると判別し、そのうちのいずれかの条件が満たされないと非刈取作業であると判別するように構成されている。
【0059】
そして、前記本機制御ユニット11が、アクセル設定器40により目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別すると、エンジンEの回転速度が予め設定された作業用の設定回転速度になるように電子ガバナ42を制御する異常用代替処理を実行するように構成されている。
【0060】
以下、本機制御ユニット11の具体的な制御処理についてフローチャートに基づいて説明する。
図6に示すように、本機制御ユニット11は、アクセル設定器40により目標回転速度を指令することができない異常状態であるか否かを判別する処理を実行する(ステップ1)。具体的には、操作パネルユニット38から通信にて伝えられるアクセル設定器40の出力電圧(指令値)に対応するデータが異常な値であるか否かにより前記異常状態であるか否かを判別する構成となっている。すなわち、前記本機制御ユニット11は、アクセル設定器40の出力電圧が調整操作に伴う変更範囲(0.5V〜4.5V)を外れて、0.5V未満の出力電圧や4.5Vを越える出力電圧に相当するデータが指令されている場合には、アクセル設定器40が例えば断線故障又は短絡故障を起こして、アクセル設定器40により目標回転速度を指令することができない異常状態であると判別するのである。
【0061】
前記異常状態であるか否かを判別する処理においては、アクセル設定器40の出力電圧(指令値)による判別処理の他に、前記通信線44を介して行われる通信処理の異常についても判別するようにしている。
つまり、本機制御ユニット11は、通信線44を介して通信を行う各制御ユニットに対して定期的に通信を行いポーリング送信するが、それに対する応答を受信すると通信が正常に行われている状態であると判断するようになっている。そして、その応答が適正に受信できないときは相手側との間で通信が適正に行うことが出来ない通信異常と判別するようになっている。そこで、アクセル設定器40が備えられる操作パネルユニット38との間での通信異常が判別されると、アクセル設定器40により目標回転速度を指令することができない異常状態であると判別するのである。
【0062】
前記本機制御ユニット11は、前記異常状態であるか否かを判別する処理において、前記異常状態でないことを判別すると、中立スイッチS9及び脱穀スイッチS8の検出結果に基づいて非作業状態であるか否かを判別し、非作業状態でなければ、アクセル設定器40の出力電圧(指令値)に対応した目標回転速度をエンジン制御ユニット43に指令し、非作業状態であればアイドリング回転速度をエンジン制御ユニット43に指令する(ステップ2,3,4)。
【0063】
そして、アクセル設定器40により目標回転速度を指令することができない異常状態であると判別すると、前記異常用代替処理として、エンジン制御ユニット43に作業用の設定回転速度としての定格回転速度を指令する(ステップ5)。さらに、使用者に修理交換等のメンテナンス作業を促すために、本機制御ユニット11は、表示パネルユニット39に異常が発生していることを報知する異常報知処理の実行を指令する(ステップ6)。
【0064】
このとき、前記エンジン制御ユニット43は、エンジンEの回転速度が本機制御ユニット11から指令される定格回転速度になるように電子ガバナ42を制御することになる。
【0065】
このように、アクセル設定器40により目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別すると、エンジンEが定格回転速度になるように電子ガバナ42を制御することになる。その結果、エンジンEが定格回転速度にて作動する状態が維持されるので、点検修理等を行うためにメンテナンス作業員が来るまで待たなくても、作業を継続して1日で終了すべき予定の作業を終了させることが可能となる。
【0066】
ところで、上述の説明では、アクセル設定器40により目標回転速度を指令することができない異常状態であることについて説明したが、各部の動作が正常であるか異常であるかの判別処理は別途行うようになっている。例えば、本機制御ユニット11とエンジン制御ユニット43との間では定期的にチェック用の信号が通信されて、相手側から通信がなければ通信線44による通信処理又は相手側の制御ユニットの動作が異常であると判断することになる。一方、電子ガバナ42等についても同様に、エンジン回転速度が指令した値と大きく異なっているような場合には、電子ガバナ42が動作異常であると判断する。このように異常と判断したときには報知作動を行い緊急停止する等の処理を実行することになる。
【0067】
次に、エンジンEを始動させる処理及び停止させる処理について説明する。
図5に示すように、エンジンEを始動させるときは、エンジン始動スイッチSW2が入り操作される。そのとき、本機制御ユニット11は、エンジン始動スイッチSW2が操作されるに伴って、中立スイッチS9及び脱穀スイッチS8の検出結果に基づいて非作業状態であることを判別してエンジンEを始動させても安全な状態であることを確認すると、エンジン制御ユニット43にエンジン始動用の燃料供給状態にするように指令し、リレー49を切り換えてスタータモータ50を作動させてエンジンEを始動させる。
【0068】
エンジンEを停止させるときは、前記各制御ユニット11、15、25,37,43並びに各パネルユニット38,39の夫々に対する制御用の電力供給を断続するメインスイッチSW1(図5参照)を切り操作することによってエンジンEを停止させることができる。すなわち、メインスイッチSW1を切り操作することによってエンジン制御ユニット43がそのことを検知すると、エンジンEへの燃料供給を遮断するように電子ガバナ42を制御するエンジン終了処理を実行する。
【0069】
説明を加えると、エンジン制御ユニット43や本機制御ユニット11等には、メインスイッチSW1を介して制御用の電力供給が行われる電源ライン47とは別に電源電圧がそのまま供給される直接電源ライン48が設けられており、メインスイッチSW1が切り操作された後の数秒間を利用して、この直接電源ライン48から供給される電力を利用して各種の終了処理を実行するようになっている。つまり、エンジン制御ユニット43はこのようなメインスイッチSW1の切り操作後の数秒間にて上述したようなエンジン終了処理を実行することになる。
【0070】
又、本機制御ユニット11及びエンジン制御ユニット43も同様にその終了処理において、そのときの設定状態が記憶されることになり、しかも、上述したようなエンジンの始動並びに停止のための処理は前記異常用代替処理を実行している途中であっても適用する構成となっている。従って、異常用代替処理を実行している途中でエンジンを停止させたような場合であっても、その状態が記憶されているから、エンジンEを停止した後に、再度、エンジンEを始動させると前記異常用代替処理を引き続いて実行することになる。
【0071】
ちなみに、本機制御ユニット11では、メインスイッチSW1が切り操作されたときの前記各制御における各種の設定値をメモリに記憶する処理等を実行することになる。終了処理が終了したのちは、各制御ユニット11、15、25,37,43内に設けられている通電状態の自己保持用のスイッチングトランジスタを切り操作して直接電源ライン48を遮断するようになっている。
【0072】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態を説明する。この実施形態では、前記制御手段Hによる制御構成が異なるが、それ以外の構成は第1実施形態と同じであるから、異なる構成についてのみ説明し、同じ構成については説明は省略する。
【0073】
すなわち、この実施形態では、前記制御手段Hが、前記目標回転速度指令手段としてのアクセル設定器40により目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別し且つ作業状態検出手段の検出情報に基づいて作業の実行が指令されていることを判別すると、エンジンの回転速度が予め設定された作業用の設定回転速度になるように回転速度調整手段としての電子ガバナ42を制御し、アクセル設定器40により目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別し且つ作業状態検出手段の検出情報に基づいて作業の実行が指令されていないことを判別すると、予め設定された非作業用の設定回転速度になるように電子ガバナ42を制御する異常用代替処理を実行するように構成されている。
【0074】
この実施形態では、第1実施形態と同様に、前記制御手段が、作業機の運転状態を管理する運転状態管理部としての本機制御ユニット11、前記回転速度調整手段を制御するエンジン制御部としてのエンジン制御ユニット43を備えて構成され、且つ、前記本機制御ユニット11が前記異常用代替処理を実行するように構成されている。
【0075】
又、前記中立スイッチS9及び前記脱穀スイッチS8により前記作業状態検出手段が構成され、本機制御ユニット11は、中立スイッチS9がオフしており且つ脱穀スイッチS8がオンであれば刈取作業状態である、言い換えると、作業の実行が指令されている状態であると判別し、そのうちのいずれかの条件が満たされないと非刈取作業である、言い換えると、作業の実行が指令されていない状態であると判別するように構成されている。
【0076】
以下、本機制御ユニット11の具体的な制御処理についてフローチャートに基づいて説明する。
図7に示すように、アクセル設定器40により目標回転速度を指令することができない異常状態であるか否かを判別する処理を実行する(ステップ11)。この異常処理の具体構成は第1実施形態のときと同じである。そして、前記異常状態でないことを判別すると、そのとき、中立スイッチS9及び脱穀スイッチS8の検出結果に基づいて非作業状態であるか否かを判別し、非作業状態でなければ、アクセル設定器40の出力電圧(指令値)に対応した目標回転速度をエンジン制御ユニット43に指令し、非作業状態であれば、アイドリング回転速度をエンジン制御ユニット43に指令する(ステップ12,13,14)。
【0077】
そして、アクセル設定器40により目標回転速度を指令することができない異常状態であると判別すると、エンジン制御ユニット43に異常用代替処理の実行を指令する(ステップ15)。又、そのときにも、中立スイッチS9及び脱穀スイッチS8の検出結果に基づいて非作業状態であるか否か、言い換えると、作業の実行が指令されている状態であるか又は指令されていない状態であるかを判別して、非作業状態でなければ、言い換えると作業の実行が指令されているときは、作業用の設定回転速度としての定格回転速度をエンジン制御ユニット43に指令する(ステップ15、16)。又、非作業状態であることが判別されたとき、言い換えると作業の実行が指令されていないときは、アイドリング回転速度をエンジン制御ユニット43に指令する(ステップ17)。さらに、異常が発生していることを表示パネルユニット39にて報知する異常報知処理の実行を指令する(ステップ18)。
【0078】
前記エンジン制御ユニット43は、エンジンEの回転速度が本機制御ユニット11から指令される作業用の設定回転速度(定格回転速度)、あるいは、アイドリング回転速度になるように電子ガバナ42を制御することになる。
【0079】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態を説明する。この実施形態では、手動操作式の代用指令手段としての緊急用設定器が備えられる点、及び、制御手段Hの制御構成が異なるが、それ以外の構成は第1実施形態と同じであるから、異なる構成についてのみ説明し、同じ構成については説明は省略する。
【0080】
すなわち、この実施形態では、前記目標回転速度指令手段としてのアクセル設定器40に代えて目標回転速度を指令する手動操作式の代用指令手段としての緊急用設定器52が備えられ、制御手段Hが、アクセル設定器40により目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別すると、エンジンEの回転速度が緊急用設定器52にて指令される目標回転速度になるように回転速度調整手段としての電子ガバナ42を制御する異常用代替処理を実行するように構成されている。
【0081】
そして、第1実施形態と同様に、作業機の運転状態を管理する運転状態管理部としての本機制御ユニット11と前記回転速度調整手段を制御するエンジン制御部としてのエンジン制御ユニット43とにより前記制御手段Hが構成されている。
又、前記緊急用設定器52が、前記エンジン制御部としてのエンジン制御ユニット43に前記目標回転速度を指令するように構成され、前記本機制御ユニット11が、前記異常用代替処理として、前記異常状態であることを判別すると、前記エンジン制御ユニット43に、前記緊急用設定器52の指令情報に基づいて電子ガバナ42を制御すべく代替指令を指令するように構成され、前記エンジン制御ユニット43が、前記異常用代替処理として、前記代替指令が指令されると、前記エンジンの回転速度が前記緊急用設定器52にて指令される指令回転速度になるように電子ガバナ42を制御するように構成されている。
【0082】
具体的には、図8に示すように、エンジン制御ユニット43に、アクセル設定器40に代えて回転速度を指令する緊急用設定器52を接続するための接続用コネクタ53が設けられ、アクセル設定器40により目標回転速度を指令することができない異常状態が発生すると、作業者が、緊急用設定器52を接続用コネクタ53に接続して、手動操作にて回転速度を指令することになる。
【0083】
そして、本機制御ユニット11は、第1実施形態と同様に、アクセル設定器40により目標回転速度を指令することができない異常状態が発生すると、エンジン制御ユニット43に対して、前記緊急用設定器52の指令情報に基づいて電子ガバナ42を制御すべく代替指令を指令する。具体的には、図6におけるステップ5の処理に代えて、緊急用設定器52の指令に基づく電子ガバナ42の制御を行うように代替を指令する。さらに、使用者に緊急用設定器52の使用を促すために、本機制御ユニット11は、表示パネルユニット39に異常が発生していることを報知して使用者に知らせる。そこで、使用者が接続用コネクタ53に緊急用設定器52を接続して、その緊急用設定器52を操作してエンジンEを作動させるための回転速度を指令することになる。一方、エンジン制御ユニット43は、その代替指令に基づいて、緊急用設定器52にて指令される指令回転速度になるように電子ガバナ42を制御するのである。
【0084】
〔第4実施形態〕
次に、第4実施形態を説明する。この実施形態では、制御手段Hの制御構成が異なるが、それ以外の構成は第1実施形態と同じであるから、異なる構成についてのみ説明し、同じ構成については説明は省略する。
【0085】
すなわち、この実施形態では、第1実施形態と同様に、前記制御手段が、作業機の運転状態を管理する運転状態管理部としての本機制御ユニット11、前記回転速度調整手段を制御するエンジン制御部としてのエンジン制御ユニット43を備えて構成され、且つ、前記エンジン制御ユニット43が、前記目標回転速度指令手段としてのアクセル設定器40により前記目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別すると、前記エンジンの回転速度が予め設定された作業用の設定回転速度になるように前記回転速度調整手段としての電子ガバナを制御する前記異常用代替処理を実行するように構成されている。
【0086】
すなわち、エンジン制御ユニット43が、目標回転速度指令手段としてのアクセル設定器40にて指令される目標回転速度の情報を受け取れないときは前記異常状態であると判別し、自己が記憶している作業用の設定回転速度になるように電子ガバナ42を制御する構成である。前記異常状態としては、前記アクセル設定器40の故障や操作オパネルユニット38と本機制御ユニット11との間、あるいは、本機制御ユニット11とエンジン制御ユニット43との間での通信異常等がある。
【0087】
又、作業用の設定回転速度になるように電子ガバナ42を制御する構成に限らず、図8に示すような緊急用設定器52にて設定される回転速度になるように電子ガバナ42を制御するようにしてもよい。
【0088】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
【0089】
(1)上記第2実施形態では、前記中立スイッチS9及び前記脱穀スイッチS8の検出結果に基づいて、作業の実行が指令されているか否かを判別する構成としたが、このような構成に代えて、車体の走行速度を検出する車速センサや刈取穀稈の存否を検出する存否センサを設けて、それらの検出結果に基づいて判別してもよく、又、手動操作にて作業の実行が指令されているか否かを直接切り換え指令する手動操作式の指令手段を備える構成等、各種の形態で実施することができる。
【0090】
(2)上記第3実施形態では、アクセル設定器40に代えて目標回転速度を指令する手動操作式の代用指令手段としての緊急用設定器が、作業者によってエンジン制御ユニット43の接続用コネクタに接続される構成としたが、このような構成に代えて、緊急用設定器を常時、操縦部に位置する状態でコンバインに装備する構成として、緊急用設定器とエンジン制御ユニット43との接続を断続するスイッチを備えて、そのスイッチを自動で切り換えるようにしたり、あるいは手動で切り換えるように構成してもよい。
又、代用指令手段としての緊急用設定器をエンジン制御ユニット43に接続する構成に代えて、緊急用設定器を本機制御ユニット11に接続する構成としてもよい。
【0091】
(3)上記第4実施形態では、前記エンジン制御ユニット43が、前記異常用代替処理として、前記エンジンの回転速度が予め設定された作業用の設定回転速度になるように前記回転速度調整手段としての電子ガバナ42を制御するようにしたが、このような構成に代えて、図8に示すような代用指令手段としての緊急用設定器52をエンジン制御ユニット43に接続して、この緊急用設定器52にて指令された回転速度になるように電子ガバナ42を制御するようにしてもよい。
【0092】
(4)上記各実施形態では、前記制御手段Hが、運転状態管理部としての本機制御ユニット11及びエンジン制御部としてのエンジン制御ユニット43により構成するものを例示したが、このような構成に限らず、1つの制御装置によって制御手段Hを構成するものでもよい。又、前記目標回転速度指令手段にて指令される前記目標回転速度が通信手段を介して指令されるように構成されるものに限らず、前記目標回転速度指令手段にて指令される前記目標回転速度が直接、制御手段Hに指令される構成としてもよい。
【0093】
(5)上記各実施形態では、作業機としてコンバインを例示したが、コンバインに限らず、トラクタや建設機械等の他の作業機でもよく、走行可能な作業機に限らず定置式の作業機であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】脱穀部の概略構成図
【図3】伝動構成図
【図4】制御ブロック図
【図5】エンジン制御に関連する制御構成を示すブロック図
【図6】制御動作のフローチャート
【図7】別実施形態の制御動作のフローチャート
【図8】別実施形態のエンジン制御に関連する制御構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0095】
11 運転状態管理部
40 目標回転速度指令手段
42 回転速度調整手段
43 エンジン制御部
44 通信手段
52 代用指令手段
E エンジン
H 制御手段
S6 回転速度検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの目標回転速度を指令する手動操作式の目標回転速度指令手段と、前記エンジンの回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記エンジンの回転速度を変更調整自在な回転速度調整手段と、前記回転速度検出手段の検出情報に基づいて前記エンジンの回転速度が前記目標回転速度になるように前記回転速度調整手段を制御する制御手段とが備えられた作業機のエンジン制御装置であって、
前記制御手段が、
前記目標回転速度指令手段により前記目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別すると、前記エンジンの回転速度が予め設定された作業用の設定回転速度になるように前記回転速度調整手段を制御する異常用代替処理を実行するように構成されている作業機のエンジン制御装置。
【請求項2】
エンジンの目標回転速度を指令する手動操作式の目標回転速度指令手段と、前記エンジンの回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記エンジンの回転速度を変更調整自在な回転速度調整手段と、前記回転速度検出手段の検出情報に基づいて前記エンジンの回転速度が前記目標回転速度になるように前記回転速度調整手段を制御する制御手段とが備えられた作業機のエンジン制御装置であって、
前記制御手段が、
前記目標回転速度指令手段により前記目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別し且つ作業状態検出手段の検出結果に基づいて作業の実行が指令されていることを判別すると、前記エンジンの回転速度が予め設定された作業用の設定回転速度になるように前記回転速度調整手段を制御し、前記目標回転速度指令手段により前記目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別し且つ前記作業状態検出手段の検出結果に基づいて作業の実行が指令されていないことを判別すると、予め設定された非作業用の設定回転速度になるように前記回転速度調整手段を制御する異常用代替処理を実行するように構成されている作業機のエンジン制御装置。
【請求項3】
エンジンの目標回転速度を指令する手動操作式の目標回転速度指令手段と、前記エンジンの回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記エンジンの回転速度を変更調整自在な回転速度調整手段と、前記回転速度検出手段の検出情報に基づいて前記エンジンの回転速度が前記目標回転速度になるように前記回転速度調整手段を制御する制御手段とが備えられた作業機のエンジン制御装置であって、
前記目標回転速度指令手段に代えて前記目標回転速度を指令する手動操作式の代用指令手段が備えられ、
前記制御手段が、
前記目標回転速度指令手段により前記目標回転速度を指令することができない異常状態であることを判別すると、前記エンジンの回転速度が前記代用指令手段にて指令される指令回転速度になるように前記回転速度調整手段を制御する異常用代替処理を実行するように構成されている作業機のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記制御手段が、前記目標回転速度指令手段より指令される指令値が異常な値であれば前記異常状態であると判別するように構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業機のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記目標回転速度指令手段にて指令される前記目標回転速度が通信手段を介して指令されるように構成され、
前記制御手段が、前記通信手段が通信異常であれば前記異常状態であると判別するように構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業機のエンジン制御装置。
【請求項6】
前記制御手段が、作業機の運転状態を管理する運転状態管理部と、前記回転速度調整手段を制御するエンジン制御部とを備えて構成され、
前記目標回転速度指令手段から前記運転状態管理部に前記目標回転速度が指令されるように構成され、且つ、前記運転状態管理部が前記目標回転速度を前記エンジン制御部に指令するように構成され、
前記運転状態管理部が、前記異常用代替処理を実行するように構成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の作業機のエンジン制御装置。
【請求項7】
前記制御手段が、作業機の運転状態を管理する運転状態管理部と、前記回転速度調整手段を制御するエンジン制御部とを備えて構成され、
前記目標回転速度指令手段から前記運転状態管理部に前記目標回転速度が指令されるように構成され、且つ、前記運転状態管理部が前記目標回転速度を前記エンジン制御部に指令するように構成され、
前記エンジン制御部が、前記異常用代替処理を実行するように構成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の作業機のエンジン制御装置。
【請求項8】
前記制御手段が、作業機の運転状態を管理する運転状態管理部と、前記回転速度調整手段を制御するエンジン制御部とを備えて構成され、
前記目標回転速度指令手段から前記運転状態管理部に前記目標回転速度が指令されるように構成され、且つ、前記運転状態管理部が前記目標回転速度を前記エンジン制御部に指令するように構成され、
前記代用指令手段が、前記エンジン制御部に前記目標回転速度を指令するように構成され、
前記運転状態管理部が、前記異常用代替処理として、前記異常状態であることを判別すると、前記エンジン制御部に、前記代用指令手段の指令情報に基づいて前記回転速度調整手段を制御すべく代替指令を指令するように構成され、
前記エンジン制御部が、前記異常用代替処理として、前記代替指令が指令されると、前記エンジンの回転速度が前記代用指令手段にて指令される指令回転速度になるように前記回転速度調整手段を制御するように構成されている請求項3記載の作業機のエンジン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−82283(P2008−82283A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264848(P2006−264848)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】