説明

作業機のエンジン回転速度制御装置

【課題】エンジンの回転速度を設定回転速度に維持するエンジン回転速度制御装置において、高負荷時におけるエンジンの出力を抑えて作業機の破損を防止する。
【解決手段】作業負荷に拘わらずにエンジンの回転速度を設定回転速度に維持する作業機のエンジン回転速度制御装置であって、作業負荷によってエンジンの回転速度が低下した場合に、当該エンジンの回転速度を設定回転速度に復帰させるべく増速出力を行ない、この増速出力の後、所定時間経過してもエンジンの回転速度が設定回転速度に復帰しない場合には、設定回転速度を所定量だけ減算処理して再設定する構成とする。また、再設定前の設定回転速度と現時点でのエンジン回転速度との差に応じて、再設定のための減算量を決定する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバイン等の作業機のエンジン回転速度制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンバイン等の作業機には、作業負荷によってエンジンの回転速度が低下すると、作業の能率や精度が低下する問題があった。
特に、コンバインでは、エンジンの回転速度が低下すると、扱胴の回転速度や揺動選別装置の揺動速度が低下し、適正な脱穀選別作業が行なえなくなる問題が生じる。
【0003】
このため、従来より、作業負荷によってエンジンの回転速度が低下した場合に、このエンジンの回転速度を設定回転速度に復帰させるべく増速出力を行なうエンジン回転速度制御装置が備えられている。
【0004】
このような技術として、特許文献1に示すようなエンジン回転速度制御技術が試みられてきた。
即ち、制御目標となる回転速度を固定的に設定しておき、作業負荷によってエンジン回転速度が低下した場合に、スロットル操作部に対して増速出力を行ない、エンジンの回転速度をこの設定回転速度に維持しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3516303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたエンジン回転速度制御技術では、制御目標となる回転速度が固定的に設定されているため、例えばコンバインの脱穀装置の脱穀処理能力が限界に達するような高負荷作業時において、エンジンの回転速度を設定回転速度に無理やり復帰させようとすることで、脱穀装置内において処理物の詰まりや機構の破損を招く虞があった。
【0007】
この発明は、作業機の作業能率を維持しながら、破損を回避することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上述の課題を解決するために、次の技術的手段を講じる。
即ち、請求項1記載の発明は、作業負荷に拘わらずにエンジンの回転速度を設定回転速度に維持する作業機のエンジン回転速度制御装置であって、作業負荷によってエンジンの回転速度が低下した場合に、当該エンジンの回転速度を設定回転速度に復帰させるべく増速出力を行ない、この増速出力の後、所定時間経過してもエンジンの回転速度が設定回転速度に復帰しない場合には、前記設定回転速度を所定量だけ減算処理して再設定する構成としたことを特徴とする作業機のエンジン回転速度制御装置としたものである。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記再設定前の設定回転速度と現時点でのエンジン回転速度との差に応じて、再設定のための減算量を決定する構成とした請求項1記載の作業機のエンジン回転速度制御装置としたものである。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記設定回転速度を再設定する際の車速に応じて、再設定のための減算量を決定する構成とした請求項1記載の作業機のエンジン回転速度制御装置としたものである。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記減算量の決定に基づいて、一定時間毎に一定回転速度づつ減算処理して設定回転速度を段階的に再設定する構成とした請求項1または請求項2または請求項3記載の作業機のエンジン回転速度制御装置としたものである。
【0012】
請求項5記載の発明は、前記減算量の決定に基づいて、一定走行距離毎に一定回転速度づつ減算処理して設定回転速度を段階的に再設定する構成とした請求項1または請求項2または請求項3記載の作業機のエンジン回転速度制御装置としたものである。
【0013】
請求項6記載の発明は、前記再設定される設定回転速度が所定の回転速度以下になった場合に、当該設定回転速度の再設定を禁止する構成とした請求項1から請求項5のいずれか一項記載の作業機のエンジン回転速度制御装置としたものである。
【0014】
請求項7記載の発明は、前記再設定される設定回転速度が所定の回転速度以下になった場合に、エンジンを自動的に停止させる構成とした請求項1から請求項6のいずれか一項記載の作業機のエンジン回転速度制御装置としたものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によると、作業負荷によってエンジンの回転速度が低下した場合に、当該エンジンの回転速度を設定回転速度に復帰させるべく増速出力を行ない、この増速出力の後、所定時間経過してもエンジンの回転速度が設定回転速度に復帰しない場合には、この設定回転速度を所定量だけ減算処理して再設定することにより、高負荷時におけるエンジンの出力を抑えて作業機の破損を防止することができる。
【0016】
請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果に加え、再設定前の設定回転速度と現時点でのエンジン回転速度との差に応じて、再設定のための減算量を決定することで、作業能率の低下を抑えながら、エンジンの出力を抑えて作業機の破損を防止することができる。
【0017】
請求項3記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果に加え、設定回転速度を再設定する際の車速に応じて、再設定のための減算量を決定することで、作業能率の低下を抑えながら、エンジンの出力を抑えて作業機の破損を防止することができる。
【0018】
請求項4記載の発明によると、上記請求項1または請求項2または請求項3記載の発明の効果に加え、減算量の決定に基づいて、一定時間毎に一定回転速度づつ減算処理して設定回転速度を段階的に再設定することで、作業機の破損を防止しながら作業能率の低下を少なくすることができる。
【0019】
請求項5記載の発明によると、上記請求項1または請求項2または請求項3記載の発明の効果に加え、減算量の決定に基づいて、一定走行距離毎に一定回転速度づつ減算処理して設定回転速度を段階的に再設定することで、作業機の破損を防止しながら作業能率の低下を少なくすることができる。
【0020】
請求項6記載の発明によると、上記請求項1から請求項5のいずれか一項記載の発明の効果に加え、再設定される設定回転速度が所定の回転速度以下になった場合に、当該設定回転速度の再設定を禁止することで、エンジン回転速度の過剰な低下を防止し、作業能率の低下を少なくすることができる。
【0021】
請求項7記載の発明によると、上記請求項1から請求項6のいずれか一項記載の発明の効果に加え、再設定される設定回転速度が所定の回転速度以下になった場合に、エンジンを自動的に停止させることで、作業機の走行を停止して破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】コンバインの側面図
【図2】コンバインの平面図
【図3】エンジン回転速度制御装置のブロック回路図
【図4】フローチャート
【図5】車速と目標エンジン回転数の関係を示すグラフ
【図6】時間と目標エンジン回転数の関係を示すグラフ
【図7】走行距離と目標エンジン回転数の関係を示すグラフ
【図8】排出筒旋回制御回路のブロック回路図
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の実施の形態を、自脱型のコンバインを例示して説明する。
(機体構成)
図1、図2に示すように、コンバインは、機体フレーム1の下方に走行装置2を設け、機体フレーム1の上部左側には脱穀装置3を搭載し、機体フレーム1の上部右側には穀粒貯留装置4を搭載し、機体フレーム1上における穀粒貯留装置4の前側には電子ガバナ式或いはコモンレール燃料噴射式のエンジンEを搭載し、走行装置2の前方位置には刈取装置5を設けて構成する。
【0024】
前記走行装置2の構成については後述するが、機体フレーム1の前部に、エンジンEから静油圧式無段変速装置(図示省略)を介して駆動されるミッションケース6を取り付け、このミッションケース6から駆動される左右の駆動輪7と多数の転輪8にわたって、クローラ9を巻き掛けて構成する。前記静油圧式無段変速装置には、油圧モータ側の斜板角度を2位置に切り換えて出力を2段階に変速する機構を備える。
【0025】
前記脱穀装置3は、扱胴、ニ番処理胴、排塵処理胴、排塵ファンを内装する上部の扱室3aと、揺動選別棚、唐箕、一番移送螺旋、ニ番移送螺旋を内装する下部の選別室3bから構成し、扱室3aの外側部には、フィードチェンの上側に対向する挟扼杆を設ける。
【0026】
前記穀粒貯留装置4は、箱型の容器に形成し、後側に立設した旋回自在の揚穀筒10の上端部に、排出筒11の基部を昇降回動自在に接続する。
前記刈取装置5は、機体フレーム1の前部に縦支持フレーム12の後端部を上下回動自在に支持し、この縦支持フレーム12の前端部に左右方向の下部ギヤケース13の左右中間部を連結し、この下部ギヤケース13の前側に固定した分草フレーム14の中間部に左右方向のバリカン式の刈刃15を取り付け、分草フレーム14の前部に引起装置16の下部を取り付け、分草フレーム14の前端部に分草体17を取り付けて構成する。
【0027】
上記脱穀装置3は、エンジンEの出力軸からテンションクラッチ式の脱穀クラッチを介して駆動され、刈取装置5は、前記ミッションケース6の中間出力軸からテンションクラッチ式の刈取クラッチを介して駆動される構成とする。この脱穀クラッチと刈取クラッチは、夫々設けた電動モータで作動する。尚、刈取装置5を、エンジンEによって駆動される刈取装置駆動用の静油圧式無段変速装置を介して変速駆動する構成としてもよい。
【0028】
前記エンジンEを囲うエンジンカバーの上部には操縦席を搭載し、この操縦席の前方に、走行機体の操向および刈取装置5の昇降を行う操向レバーを備え、操縦席の側方には、前記静油圧式無段変速装置を変速操作して走行速度を変速する変速レバーと、刈取装置5と脱穀装置3への駆動力の伝達を接続および遮断操作する刈取脱穀クラッチレバーを設け、これらをキャビン18で覆う。
(エンジン回転速度制御装置の全体構成)
図3に示すように、エンジン回転速度制御装置19は、一点鎖線で囲んだエンジン制御コントローラ20に対して、その入力側に、刈取クラッチの接続/遮断状態を検出する刈取クラッチスイッチ21と、脱穀クラッチの接続/遮断状態を検出する脱穀クラッチスイッチ22と、刈取脱穀クラッチレバーの操作位置を検出する刈取脱穀ポジションセンサ23と、変速レバーの操作位置を検出する走行変速ポジションセンサ24と、ミッションケース6内の伝動軸の回転速度から車速を検出する車速センサ25と、エンジンEの駆動回転速度を検出するエンジン回転速度センサ26を接続する。
【0029】
そして、エンジン制御コントローラ20の出力側には、エンジンEへの燃料供給量を増加させて該エンジンEの出力回転速度を増速させる増速ソレノイド27と、エンジンEへの燃料供給量を減少させて該エンジンEの出力回転速度を減速させる減速ソレノイド28と、エンジンEへの燃料供給を絶ってエンジンEを停止させるエンジン停止ソレノイド29を接続する。
(エンジン制御コントローラの構成)
前記エンジン制御コントローラ20は、中核となるエンジン回転速度制御指示回路30に対して、デジタル信号入力処理回路31とアナログ信号入力処理回路32とパルス入力処理回路33を入力接続し、タイマーカウント処理回路34と走行距離カウント回路35を相互通信状態に接続し、エンジン増速出力処理回路36とエンジン減速出力処理回路37とエンジン停止出力処理回路38を出力接続して構成する。
【0030】
前記刈取クラッチスイッチ21と脱穀クラッチスイッチ22はデジタル信号入力処理回路31の入力側に接続し、前記刈取脱穀ポジションセンサ23と走行変速ポジションセンサ24はアナログ信号入力処理回路32の入力側に接続し、前記車速センサ25とエンジン回転速度センサ26はパルス入力処理回路33の入力側に接続する。
【0031】
前記増速ソレノイド27はエンジン増速出力処理回路36の出力側に接続し、減速ソレノイド28はエンジン減速出力処理回路37の出力側に接続し、エンジン停止ソレノイド29はエンジン停止出力処理回路38の出力側に接続する。
(制御フロー)
以上の構成による制御の流れを説明する。
【0032】
まず、前提となるエンジン速度制御は、エンジン回転速度を設定回転速度に維持するために、負荷の増大によってエンジン回転速度がこの設定回転速度から低下した場合には、上述の増速ソレノイド27への出力によってエンジン回転速度を増速させる。一方、負荷の減少によってエンジン回転速度が設定回転速度から上昇した場合には、上述の減速ソレノイド28への出力によってエンジン回転速度を減速させる。
【0033】
この前提となる制御において、以下の処理を行なう。
即ち、図4のフローチャートにおいて、エンジンEを始動した状態で、刈取脱穀ポジションセンサ23の検出値から刈取脱穀クラッチレバーがクラッチ接続位置に操作されているか否かをチェックし、これがクラッチ接続位置に操作されていると判定された場合に、刈取クラッチスイッチ21がONしているか否かのチェックを行なう。
【0034】
そして、刈取クラッチスイッチ21がONしているか否かのチェックを行い、これがONして刈取クラッチが接続されていると判定された場合に、走行変速ポジションセンサ24によって変速レバーが中立域以外の位置、即ち前進側または後進側の操作域に操作されているか否かの判定を行なう。
【0035】
そして、変速レバーが中立域以外の位置に操作されていると判定された場合に、エンジン回転速度センサ26からの検出値をチェックし、このエンジン回転速度が予め設定した所定値よりも低速である場合には、この低速駆動状態が所定時間にわたって継続した場合に、エンジン回転速度制御の目標値である設定回転速度を所定量だけ減算処理して再設定し、上述の前提となるエンジン回転速度制御を行なう。
【0036】
上述の刈取クラッチスイッチ21のON/OFF判定において、刈取クラッチスイッチがONしていないと判定された場合には、脱穀クラッチスイッチ22のON/OFF判定を行い、これがONであれば、上述の走行変速ポジションセンサ24による変速レバーの位置判定に移行する。
【0037】
また、この変速レバーの位置判定によって、変速レバーが中立域にあると判定された場合には、車速センサ25によって検出される車速をチェックし、この車速が前進走行状態に相当する場合には、上述のエンジン回転速度の判定に移行する。
【0038】
また、上述のエンジン回転速度の判定において、検出されたエンジン回転速度が停止させるべき低速状態と判定された場合には、エンジン停止ソレノイド29への出力によってエンジンEを停止させる。
【0039】
また、上述のエンジンEの低速駆動状態が所定時間以内に終了した場合には、目標値である設定回転速度の再設定は行なわない。
以上のように、作業負荷によってエンジンの回転速度が低下した場合に、エンジンの回転速度を設定回転速度に復帰させるべく増速出力を行ない、この増速出力の後、所定時間経過してもエンジンの回転速度が設定回転速度に復帰しない場合には、設定回転速度を所定量だけ減算処理して再設定することで、高負荷時におけるエンジンの出力を抑えて作業機の破損を防止することができる。
【0040】
また、再設定前の設定回転速度と現時点でのエンジン回転速度との差に応じて、再設定のための減算量を決定することで、作業能率の低下を抑えながら、エンジンの出力を抑えて作業機の破損を防止することができる。
【0041】
また、図5に示すように、設定回転速度を再設定する際の車速に応じて、再設定のための減算量を決定する構成とすれば、作業能率の低下を抑えながら、エンジンの出力を抑えて作業機の破損を防止することができる。
【0042】
また、図6に示すように、減算量の決定に基づいて、一定時間毎に一定回転速度づつ減算処理して設定回転速度を段階的に再設定する構成とすれば、エンジンEの回転速度を徐々に低下させて、作業機の破損を防止しながら作業能率の低下を少なくすることができる。
【0043】
また、図7に示すように、減算量の決定に基づいて、一定走行距離毎に一定回転速度づつ減算処理して設定回転速度を段階的に再設定する構成とすれば、エンジンEの回転速度を徐々に低下させて、作業機の破損を防止しながら作業能率の低下を少なくすることができる。
【0044】
また、再設定される設定回転速度が所定の回転速度以下になった場合に、当該設定回転速度の再設定を禁止することで、エンジン回転速度の過剰な低下を防止し、作業能率の低下を少なくすることができる。
【0045】
また、再設定される設定回転速度が所定の回転速度以下になった場合に、エンジンを自動的に停止させることで、作業機の走行を停止して破損を防止することができる。
(排出筒旋回制御)
前記揚穀筒10を縦軸(内装する螺旋軸)中心に回動させる電動モータと、揚穀筒10に対して排出筒11を上下回動させる油圧シリンダを設け、揚穀筒10を縦軸中心に回動させることで、排出筒11を旋回させる構成とする。また、排出筒11を基部側の筒体と先端側の筒体とに分割して嵌合させ、伸縮用電動モータの駆動によって基部側の筒体に対して先端側の筒体を長手方向に摺動させることで、排出筒11を伸縮自在に構成する。即ち、排出筒11内には、連続螺旋を券着した中空の螺旋軸に対して、多数の分割螺旋体を長手方向摺動のみ自在に嵌合した六角軸を伸縮自在に嵌合させて設ける。また、揚穀筒10および排出筒11に内装された排出螺旋を駆動する排出クラッチを入り切り作動させる排出用電動モータを設ける。
【0046】
そして、図8に示すように、オーガ制御コントローラ39に対して、その入力側に、受信機40から受信電圧信号処理回路41を介して、排出筒上昇信号(a)と、排出筒下降信号(b)と、排出筒左旋回信号(c)と、排出筒右旋回信号(d)と、排出筒伸長信号(e)と、排出筒短縮信号(f)と、排出駆動開始/停止信号(g)と、排出筒自動収納/張出信号(h)と、排出筒緊急停止信号(i)とが入力される構成とする。前記受信機40は、遠隔操作装置42からの信号を受信し、受信電圧信号処理回路41へ出力するものである。
【0047】
また、オーガ制御コントローラ39の出力側には、前記油圧シリンダを伸長させる排出筒上昇ソレノイド43と、油圧シリンダを短縮させる排出筒下降ソレノイド44と、前記電動モータを正転駆動する排出筒左旋回リレー45と、電動モータを逆転駆動する排出筒右旋回リレー46と、前記伸縮用電動モータを伸長側に駆動する伸長側リレー47と、伸縮用電動モータを短縮側に駆動する短縮側リレー48と、前記排出用電動モータを正転させて排出クラッチを接続する排出クラッチ接続側リレー49と、排出用電動モータを逆転させて排出クラッチを遮断する排出クラッチ遮断側リレー50を接続する。
【0048】
上記オーガ制御コントローラ39は、中核となるオーガ旋回制御回路51に対して、その入力側に、前記(a)〜(i)の信号が入力されるデジタル信号入力処理回路52と、アナログ信号入力処理回路53と、パルス入力信号処理回路54を接続する。また、オーガ旋回制御回路51の出力側には、前記排出筒上昇ソレノイド43と排出筒下降ソレノイド44へ出力するオーガ上昇/下降出力処理回路55と、前記排出筒左旋回リレー45と排出筒右旋回リレー46と伸長側リレー47と短縮側リレー48へ出力するオーガモータ出力処理回路56と、前記排出クラッチ接続側リレー49と排出クラッチ遮断側リレー50へ出力する排出クラッチ出力処理回路57を接続する。また、オーガ旋回制御回路51には、タイマーカウント処理回路58を相互通信可能に接続する。
【0049】
以上の構成により、遠隔操作装置42の操作によって出力された無線信号が受信機40に受信され、排出筒11の旋回、昇降回動、伸縮、排出駆動が行なわれるが、遠隔操作装置42の操作によって排出筒11を自動旋回させる信号が受信機40に受信された後、この遠隔操作装置42からの信号の受信状態が不良となった場合に、排出筒11の旋回を自動的に停止させる構成とする。
【0050】
または、この受信状態の不良が検出された場合に、所定の自動旋回位置まで、この旋回作動を継続した後に停止させる構成としてもよい。
また、受信状態の不良が検出された場合に、一定時間だけ直前の旋回出力を継続し、受信状態が良好な状態に回復した場合に、再度、遠隔操作装置42からの信号に従って旋回出力を行なう構成としてもよい。
(エンジン自動停止制御)
前記走行駆動用の静油圧式無段変速装置の油圧ポンプのトラニオン軸を電動モータで回動制御する構成とし、この電動モータを変速レバーの走行変速ポジションセンサ24の検出値に応じて駆動制御する構成とする。
【0051】
そして、前記車速センサ25によって走行停止状態が検出されている状態で刈取脱穀クラッチレバーが遮断操作された場合にエンジンEを自動的に停止させ、変速レバーが中立域から増速操作された場合または刈取脱穀クラッチレバーが接続操作された場合にはエンジンEを自動的に始動する構成とし、変速レバーの中立域からの増速操作によってエンジンEが始動した場合は、この変速レバーを一旦中立域内へ操作しないと静油圧式無段変速装置が出力しないよう、走行変速ポジションセンサ24による電動モータの制御を牽制する。
【0052】
即ち、変速レバーによる発進操作に基づいてエンジンEを始動すると、エンジンEの回転速度が上昇する前に走行開始してしまうため、静油圧式無段変速装置やエンジンE自体が過負荷状態となり、耐久性が著しく低下する問題がある。また、エンジンEの始動に伴う静油圧式無段変速装置のポンプの回転速度の上昇により、急発進することとなり、安全性が低下する問題がある。
【0053】
これに対して、上述の構成によれば、変速レバーの中立域からの増速操作でエンジンEが始動した場合は、停車状態を維持し、変速レバーを一旦中立域内に戻した後に静油圧式無段変速装置の出力を許可することで、急発進を防止して安全性を高めることができる。
【0054】
尚、変速レバーの中立域からの増速操作によってエンジンEが始動した後、エンジンEの回転速度が所定の回転速度に達するまで、走行変速ポジションセンサ24による電動モータの制御を牽制する構成としてもよい。
【0055】
また、上述の刈取脱穀クラッチレバーの接続操作によってエンジンEが始動した場合には、刈取脱穀クラッチレバーを一旦遮断位置へ操作しないと、刈取クラッチと脱穀クラッチが接続されないよう、刈取クラッチ接続用の電動モータと脱穀クラッチ接続用の電動モータの作動を牽制する。
【0056】
即ち、刈取脱穀クラッチレバーの接続操作に基づいてエンジンEを始動すると、エンジンEの回転速度が上昇する前に刈取装置5と脱穀装置3が駆動するため、これら作業機の駆動系やエンジンEが過負荷状態となり、耐久性が著しく低下する問題がある。また、エンジンEの始動に伴い刈取装置5と脱穀装置3が急激に駆動され、安全性が低下する問題がある。
【0057】
これに対して、上述の構成によれば、刈取脱穀クラッチレバーの接続操作でエンジンEが始動した場合は、作業機の停止状態を維持し、刈取脱穀クラッチレバーを一旦遮断位置に戻し操作した後に刈取クラッチおよび脱穀クラッチの接続を許可することで、作業機の急駆動を防止して安全性を高めることができる。
【0058】
尚、刈取脱穀クラッチレバーの接続操作によってエンジンEが始動した後、エンジンEの回転速度が所定の回転速度に達するまで、刈取クラッチ接続用の電動モータと脱穀クラッチ接続用の電動モータの作動を牽制する構成としてもよい。
(排出筒の伸縮制御)
前記排出筒11の伸縮位置(基部側の筒体に対する先端側の筒体の摺動位置)を検出するポジションセンサを設け、伸縮用電動モータに短縮側への作動出力を一定時間にわたって出力しても、このポジションセンサの検出値が変化しない場合に、排出筒11内の分割螺旋体の間に穀粒を挟んで圧縮している状態と判定し、このときのポジションセンサの検出値を記憶値として記憶しておく。そして、次回の排出作業時に、この記憶値と現時点のポジションセンサの検出値とを比較し、現時点の検出値が記憶値よりも伸び側にある場合にのみ、排出クラッチの接続を許可する構成とする。また、排出クラッチの接続が禁止されている状態で排出クラッチを接続する操作があった場合には、ブザー出力とモニターへの表示出力がなされ、オペレータに報知される構成としてもよい。
【0059】
この構成によって、排出筒11内での穀粒の圧縮による分割螺旋体の破損を防止することができる。
(条合わせアシスト制御)
前記刈取装置5の右側端部と左側端部に、前方を撮像するカメラを設置し、左側のカメラによる画像を常時解析しながら画像中のコントラストから境界線を判別し、この境界線が一定の角度を有し、一定の速度で画角中を移動するときに、この境界線を植立穀稈の端であると判定する。そして、刈取装置5の前方に植立穀稈がない状態で、一定時間以上の旋回を検出した後、左側のカメラの画像から植立穀稈の端を判定した場合には、この判定した植立穀稈の端を右端の分草杆に合わせるように旋回制御を行なう。続いて、右側のカメラの画像から植立穀稈の端を判定すると、この判定した植立穀稈の端に右端の分草杆が沿うように旋回制御を行なう。
【0060】
これによって、枕地での回行を自動的に行なうことができる。
また、上述の旋回制御の後、画像中の境界線が画角中に設定したラインと一致し、画像の下側(機体手前側)いっぱいにラインが認識された場合に、刈取装置5を自動的に下降させるように構成してもよい。
【0061】
これによって、枕地を旋回して植立穀稈に再度条合わせをした後、植立穀稈が手前に迫ると刈取装置5を自動的に下降させて刈取作業を再開することができる。
【符号の説明】
【0062】
E エンジン
19 エンジン回転速度制御装置
20 エンジン制御コントローラ
21 刈取クラッチスイッチ
22 脱穀クラッチスイッチ
23 刈取脱穀ポジションセンサ
24 走行変速ポジションセンサ
25 車速センサ
26 エンジン回転速度センサ
27 増速ソレノイド
28 減速ソレノイド
29 エンジン停止ソレノイド
30 エンジン回転速度制御指示回路
31 デジタル信号入力処理回路
32 アナログ信号入力処理回路
33 パルス入力処理回路
34 タイマーカウント処理回路
35 走行距離カウント回路
36 エンジン増速出力処理回路
37 エンジン減速出力処理回路
38 エンジン停止出力処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業負荷に拘わらずにエンジンの回転速度を設定回転速度に維持する作業機のエンジン回転速度制御装置であって、作業負荷によってエンジンの回転速度が低下した場合に、当該エンジンの回転速度を設定回転速度に復帰させるべく増速出力を行ない、この増速出力の後、所定時間経過してもエンジンの回転速度が設定回転速度に復帰しない場合には、前記設定回転速度を所定量だけ減算処理して再設定する構成としたことを特徴とする作業機のエンジン回転速度制御装置。
【請求項2】
前記再設定前の設定回転速度と現時点でのエンジン回転速度との差に応じて、再設定のための減算量を決定する構成とした請求項1記載の作業機のエンジン回転速度制御装置。
【請求項3】
前記設定回転速度を再設定する際の車速に応じて、再設定のための減算量を決定する構成とした請求項1記載の作業機のエンジン回転速度制御装置。
【請求項4】
前記減算量の決定に基づいて、一定時間毎に一定回転速度づつ減算処理して設定回転速度を段階的に再設定する構成とした請求項1または請求項2または請求項3記載の作業機のエンジン回転速度制御装置。
【請求項5】
前記減算量の決定に基づいて、一定走行距離毎に一定回転速度づつ減算処理して設定回転速度を段階的に再設定する構成とした請求項1または請求項2または請求項3記載の作業機のエンジン回転速度制御装置。
【請求項6】
前記再設定される設定回転速度が所定の回転速度以下になった場合に、当該設定回転速度の再設定を禁止する構成とした請求項1から請求項5のいずれか一項記載の作業機のエンジン回転速度制御装置。
【請求項7】
前記再設定される設定回転速度が所定の回転速度以下になった場合に、エンジンを自動的に停止させる構成とした請求項1から請求項6のいずれか一項記載の作業機のエンジン回転速度制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−50042(P2013−50042A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187188(P2011−187188)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】