説明

作業機械

【課題】 閉扉ストッパの構造を簡略化し、エンジンカバーを片手のみで簡単に開,閉操作できると共に、オペレータの負担を軽減できるようにする。
【解決手段】 エンジンカバー14を閉扉状態に保持する閉扉ストッパ20を、建屋カバー8の支柱8Dに支持部材24等を介して固定されたストッパ受け21と、エンジンカバー14の補強板14Gにブラケット25を介して設けられたストッパ部材27とにより構成する。エンジンカバー14を閉扉状態から開扉するときには、エンジンカバー14の把手18を開扉方向に持上げる外力でエンジンカバー14全体を撓み変形させる。そして、エンジンカバー14の撓み変形を利用して閉扉ストッパ20のストッパ部材27をストッパ受け21の掛止め部21Bから引離す方向に動かし、両者の掛止め状態を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、クレーン、ホイールローダ、フォークリフト等の建設機械または運搬機械等として好適に用いられる作業機械に関し、特に、エンジン等の動力源を収容する建屋カバーを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の作業機械(建設機械)にあっては、車体のフレーム上に建屋カバーを設け、この建屋カバーによりエンジン等の動力源を内部に収容する機械室を画成する構成としている。また、建屋カバーの上部には、機械室内のエンジンを整備、点検するために点検用の開口部を設け、この開口部をエンジンカバー(ボンネット)により開閉可能に覆う構成としている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、前記エンジンカバーと建屋カバーとの間には、エンジンカバーを閉じた状態(閉扉状態)に保持するために、例えばキャッチと呼ばれる固定具等からなる閉扉ストッパを設ける構成としている。そして、このキャッチと呼ばれる固定具は、掴み手、フックおよび係止軸等を用いて構成され、建屋カバー側に設けた前記掴み手でフックを回動操作することにより、エンジンカバー側に設けた前記係止軸にフックを掛止めしてエンジンカバーを閉扉状態に固定するものである。
【0004】
【特許文献1】特開2001−323507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来技術による作業機械では、所謂キャッチと呼ばれる固定具(閉扉ストッパ)を用いて、エンジンカバーを閉扉状態に保持する構成としているため、エンジンカバーを開,閉操作するときには、その度毎にオペレータは前記キャッチを指先等で回動操作する必要があり、余分な手間がかかってオペレータの負担が増大するという問題がある。
【0006】
この場合、作業機械のオペレータは、閉扉状態にあるエンジンカバーを上向きに持上げて開く前に、例えば指先等でキャッチをエンジンカバーから外す方向に回動操作して、キャッチによるエンジンカバーのロック状態を解除する。その後にオペレータは、エンジンカバーの把手側に向き直るように姿勢を変え、この状態で前記把手を強く把持しながらエンジンカバーを開扉方向に持上げる操作が要求されるものである。
【0007】
このため、エンジンカバーを閉扉状態から開扉するまでに、オペレータにとっては両手を使いながら、適宜に作業姿勢も変えるという煩雑な作業(操作)が要求されることになり、オペレータの負担を軽減することができないものである。
【0008】
しかも、油圧ショベル等の建設機械では、建屋カバーの上面位置が地面から2〜3m(メートル)以上の高所位置となるため、オペレータは建屋カバー上でエンジンカバーを開,閉操作するときに、前記キャッチの位置まで狭い足場を通って近付く必要があり、建屋カバー上の高所位置から誤って転落しないように、オペレータは十分な注意を払わなければならず、これによってもオペレータの負担は増大するという問題がある。
【0009】
また、従来技術で用いている閉扉ストッパとしてのキャッチは、前述の如くフックや係止軸等の多数の部品を用いて構成されるため、複雑な構造となり、キャッチ1個当りの単価が高くなるばかりでなく、エンジンカバーと建屋カバーとの間にキャッチを組付けるときの作業性も悪いという問題がある。
【0010】
さらに、従来技術で用いているキャッチは、エンジンカバーの高さ方向に取付けるために、エンジンカバーの高さ寸法をキャッチの全長よりも大きく形成する必要が生じる。しかし、エンジンカバーの高さ寸法を大きくすると、これによって運転室からの後方視界が遮られ、視界を広く確保することができないという問題がある。
【0011】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、片手のみの操作でエンジンカバーを簡単に開扉操作することができ、オペレータの負担を確実に軽減できるようにした作業機械を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、閉扉ストッパを簡単な構造として組付け時の作業性を向上することができると共に、エンジンカバーの高さ寸法を小さくすることができ、例えば運転室からの後方視界を広く確保することができるようにした作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために、本発明は、作業装置が設けられた車体のフレームと、該フレーム上に搭載されたエンジンと、該エンジンを外側から取囲んで前記フレーム上に立設され上部側に開口部が設けられた建屋カバーと、該建屋カバーの開口部を覆うように該建屋カバー上に開閉可能に設けられたエンジンカバーと、該エンジンカバーにより前記建屋カバーの開口部を閉じたときに該エンジンカバーを閉扉状態に保持する閉扉ストッパとを備えてなる作業機械に適用される。
【0014】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記閉扉ストッパを、前記建屋カバー側に固定して設けられ弾性変形可能に形成されたストッパ受けと、前記エンジンカバーに固定して設けられ該ストッパ受けに対して係脱可能に係合するストッパ部材とにより構成し、該ストッパ部材は、前記エンジンカバーを閉扉状態から開扉方向に持上げるときの外力で該エンジンカバーが弾性的に撓み変形するのを利用して前記ストッパ受けに対する係合状態を解除する構成としたことにある。
【0015】
また、請求項2の発明によると、前記エンジンカバーには、長さ方向の一側に前記建屋カバー上でエンジンカバーを開,閉するときの回動支点となるヒンジを設け、その長さ方向他側には、当該エンジンカバーを開,閉操作するときに把持される把手を幅方向の中間位置に設け、前記閉扉ストッパのストッパ部材は、前記把手からエンジンカバーの幅方向に離間した位置に配置し、前記ストッパ受けは、前記ストッパ部材よりもエンジンカバーの幅方向外側となる位置に配置する構成としている。
【0016】
また、請求項3の発明によると、前記ストッパ受けは、前記建屋カバーの開口部のうち前記車体の後部側となる位置から屈曲して上向きに突出する掛止め部を有する構成とし、前記ストッパ部材は、前記ストッパ受けの掛止め部とは逆向きに屈曲して該掛止め部に係脱可能に係合する係合爪部を有する構成としている。
【0017】
さらに、請求項4の発明によると、前記エンジンカバーには、前記エンジンカバーの幅方向外側から内側に向けて延びストッパ挿入穴が形成されたブラケットを設け、該ブラケットの先端側には、前記係合爪部が前記ストッパ挿入穴内に嵌入するように前記ストッパ部材を設け、前記ストッパ受けの掛止め部は、前記エンジンカバーを閉扉するときに前記ブラケットのストッパ挿入穴に挿入されて前記ストッパ部材の係合爪部と係合する構成としている。
【発明の効果】
【0018】
上述した如く、請求項1に記載の発明によれば、閉扉ストッパを、建屋カバー側に設けるストッパ受けと、エンジンカバー側に設けるストッパ部材とにより構成しているので、閉扉ストッパを簡単な構造に構成することができ、閉扉ストッパとしてのコストを低減できると共に、組付け時の作業性も向上することができる。また、エンジンカバーを開扉状態から閉扉するときには、例えばエンジンカバーを下向きに押込むだけで閉扉ストッパのストッパ部材をストッパ受けに対して係合させることができ、エンジンカバーを閉扉状態に簡単に保持することができる。そして、このような閉扉ストッパにより閉扉状態に保持されたエンジンカバーを開扉するときには、例えばオペレータがエンジンカバーを開扉方向に持上げるように外力を加えると、この持上げ力(外力)でエンジンカバー全体を弾性的に撓み変形させることにより、この撓み変形を利用して閉扉ストッパのストッパ部材をストッパ受けから引離す方向に動かすことができ、これによって、前記ストッパ受けに対するストッパ部材の係合状態を強制的に解除することができる。
【0019】
このため、例えば作業機械のオペレータはエンジンカバーの把手等を把持した状態で、エンジンカバーを開扉方向に持上げるだけで閉扉ストッパの係合状態を解除でき、このままエンジンカバーを上向きに持上げるだけで開扉位置まで動かすことができる。従って、オペレータは、閉扉ストッパの位置まで近付く必要もなく、片手のみの操作でエンジンカバーを簡単に開扉操作することができ、キャッチ等を用いた従来技術に比較してオペレータの負担を大幅に軽減できる。しかも、前述の如く簡単な構造の閉扉ストッパを採用することによって、エンジンカバーの高さ寸法を小さくすることが可能となり、例えば運転室からの後方視界を広く確保することができる。
【0020】
また、請求項2に記載の発明は、エンジンカバーの長さ方向一側にヒンジを設け、長さ方向他側には幅方向の中間位置に把手を設け、閉扉ストッパのストッパ受けは、ストッパ部材よりも該把手から離れた位置で、エンジンカバーの幅方向外側となる位置に配置する構成としているので、例えば作業機械のオペレータ等がエンジンカバーを開扉するために把手を強く把持して上向きに持上げたときには、この持上げ力(外力)によりエンジンカバー全体が把手の位置を中心にして凸湾曲状に撓むように弾性変形し、エンジンカバー側に設けているストッパ部材は、エンジンカバーの幅方向内側へと把手に近付く方向に変位する。これにより、閉扉ストッパのストッパ部材をストッパ受けの掛止め部から引離す方向に動かすことができ、エンジンカバーの撓み変形を利用してストッパ部材のストッパ受けに対する係合状態を解除することができる。
【0021】
また、請求項3に記載の発明によれば、ストッパ受けは、建屋カバーの開口部のうち車体の後部側となる位置から屈曲して上向きに突出する掛止め部を有し、ストッパ部材は、該ストッパ受けの掛止め部とは逆向きに屈曲した係合爪部を有する構成としているので、ストッパ部材の係合爪部をストッパ受けの掛止め部に対して背面合せするように、両者を背面側で係脱可能に係合することができる。そして、例えばオペレータがエンジンカバーを開,閉操作するときには、エンジンカバーよりも車体の前側となる位置から把手を把持するだけでエンジンカバーを開扉または閉扉することができ、車体の後部側(例えば、カウンタウエイトの位置)まで建屋カバー上を移動することなくエンジンカバーの開,閉操作を行うことができる。このため、オペレータは、エンジンカバーの開,閉操作を建屋カバー上の広いスペース位置から安心して行うことができ、オペレータの負担を軽減できると共に、作業性、安全性等を確実に向上することができる。
【0022】
また、請求項4に記載の発明によれば、エンジンカバーの幅方向外側から内側に向けて延びるブラケットにストッパ挿入穴を形成し、該ブラケットの先端側には、係合爪部が前記ストッパ挿入穴内に嵌入するようにストッパ部材を設け、ストッパ受けの掛止め部は、前記エンジンカバーを閉扉するときに前記ブラケットのストッパ挿入穴に挿入されて前記ストッパ部材の係合爪部と係合する構成としているので、前記ブラケットを用いて閉扉ストッパのストッパ部材をストッパ受けよりもエンジンカバーの幅方向内側となる位置に配置でき、この幅方向内側となる位置でストッパ部材の係合爪部をストッパ受けの掛止め部に対して係脱可能に掛止めすることができる。そして、オペレータがエンジンカバーを開扉方向に持上げ、エンジンカバー全体を弾性的に撓み変形させたときには、この撓み変形を利用してストッパ部材の係合爪部をストッパ受けの掛止め部から離れる方向に動かすことができ、これによって、前記ストッパ受けに対するストッパ部材の係合状態(掛止め状態)を解除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態による作業機械を、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0024】
ここで、図1ないし図8は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は作業機械としての油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、図1に示すように自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、例えば土砂等の掘削作業を行うため該上部旋回体3の前部に俯仰動可能に設けられた作業装置4とにより大略構成されている。
【0025】
この場合、油圧ショベル1の上部旋回体3は、下部走行体2と共に作業機械の車体を構成するものである。そして、上部旋回体3は、後述の旋回フレーム5、キャブ6、カウンタウエイト7、建屋カバー8、エンジン10およびエンジンカバー14等により構成されている。また、上部旋回体3の車幅は、図2中に示す寸法Wに設定され、後述の建屋カバー8は、この寸法Wの範囲で小さくコンパクトに形成されるものである。
【0026】
5は上部旋回体3の支持構造体(フレーム)を構成する旋回フレームで、該旋回フレーム5は、その前側に作業装置4が俯仰動可能に取付けられ、後側には後述のカウンタウエイト7が取付けられている。
【0027】
6は旋回フレーム5の前部左側に配設されたオペレータの搭乗部となるキャブで、該キャブ6は、その内部に運転室を画成し、オペレータが着座する運転席、操作レバー、操作ペダル(いずれも図示せず)等が配設されている。
【0028】
7は旋回フレーム5の後端側に設けられたカウンタウエイトで、該カウンタウエイト7は、旋回フレーム5の後端側に着脱可能に搭載され、前側の作業装置4に対して上部旋回体3全体の重量バランスをとるものである。また、カウンタウエイト7の前側には、後述のエンジン10等を収容する建屋カバー8が設けられている。
【0029】
ここで、カウンタウエイト7の上面側には、図3ないし図6に示すように上置き板7Aが固定して設けられ、この上置き板7Aは、カウンタウエイト7の一部を構成すると共に、その上面が後述の上部カバー8Bとほぼ同一の面上(高さ位置)に配置されるものである。そして、上置き板7Aは、後述のエンジンカバー14が閉扉されるときに、上部カバー8Bと共にエンジンカバー14に対する平坦なシート面を提供するものである。
【0030】
8はキャブ6とカウンタウエイト7との間に位置して旋回フレーム5上に立設された建屋カバーで、該建屋カバー8は、図1ないし図4に示すように鋼板等からなる複数枚の金属パネルを用いて形成され、内部に機械室を画成するものである。そして、建屋カバー8は、旋回フレーム5の左,右両側に立設されたサイドカバー8A,8Aと、該各サイドカバー8Aの上部側に設けられた上部カバー8B等とにより構成されている。
【0031】
ここで、建屋カバー8の上部カバー8Bは、図5に示す如く上部旋回体3(車体)の前,後方向に離間して旋回フレーム5上に上向きに立設された複数の支柱8C,8Dと、これらの支柱8C,8D間を上端側で連結した連結梁8E等とを用いて下側から支持されている。即ち、これらの支柱8C,8Dおよび連結梁8E等は、後述のメンテナンス(点検)時等にオペレータが上部カバー8B上に乗り降りしても、頑丈な支持構造をなして建屋カバー8の上部カバー8Bを下側から支持するものである。
【0032】
9は建屋カバー8の上部カバー8Bに設けられた点検口となる開口部で、該開口部9は、図4に示す如く後述のエンジン10等を上方から点検したりするときにエンジンカバー14を介して開,閉されるものである。そして、開口部9は、カウンタウエイト7の前側に位置して上部カバー8Bの前,後方向と左,右方向に延びる略四角状の角穴として形成されている。
【0033】
また、開口部9は、上部カバー8Bの中央位置に対して左,右方向の一側(車体の後方からみて左側寄りの位置)にオフセットして配設され、後述するエンジン10のうち熱交換器11および冷却ファン12等の整備、点検を上方から有利に行い得るように形成されている。そして、この開口部9は、後述のエンジンカバー14によって上側から開閉可能に覆われるものである。
【0034】
この場合、建屋カバー8の上部カバー8Bは、開口部9の周囲となる部位が前記支柱8C,8D、連結梁8E等により補強されている。即ち、建屋カバー8の支柱8Cは、上部旋回体3(車体)の後方からみて開口部9の前部右側となる角隅の近傍位置に配置され、支柱8Dは、開口部9の後部右側となる角隅の近傍位置に配置されている。そして、前記連結梁8Eは、開口部9の右側部分を縁取るように支柱8C,8D間を前,後に延び、開口部9の右側位置で上部カバー8Bを下側から支持(補強)するものである。
【0035】
10はカウンタウエイト7寄りに位置して旋回フレーム5の後部側に設けられた原動機としてのエンジンで、該エンジン10は、例えば図2中に二点鎖線で示すように建屋カバー8内(機械室)に横置き状態で収容され、建屋カバー8内を左,右方向に延在している。そして、エンジン10の一側には、例えばラジエータ、オイルクーラ等からなる熱交換器11と冷却ファン12等とが配設され、エンジン10の他側には、複数台の油圧ポンプ(図示せず)等が配設されるものである。
【0036】
13は建屋カバー8の上部カバー8Bから上向きに突出して設けられた排気用の煙突で、該煙突13は、エンジン10の排気側に接続され、エンジン10から排出される排気ガスを上部カバー8Bの上方から外部の大気中に放出するものである。
【0037】
14は建屋カバー8の開口部9を開,閉するエンジンカバーで、該エンジンカバー14は、図2ないし図4に示す如く、略長方形状をなす上側の蓋板部14Aと、該蓋板部14Aの長さ方向(左,右方向)両側に位置し斜め下向きに拡開して延びた左側板部14B,右側板部14Cと、蓋板部14Aの幅方向(前,後方向)両側に位置し斜め下向きに拡開して延びた前板部14D,後板部14Eとにより、四角形状をなす浅底なカバー体として形成されている。
【0038】
この場合、エンジンカバー14の長さ方向一側に位置する左側板部14Bは、その下側部位が後述のヒンジ16等を用いて建屋カバー8(上部カバー8B)の上面に回動可能に連結されている。これにより、エンジンカバー14は、ヒンジ16を回動支点として上向きに開閉され、このときに長さ方向他側の右側板部14Cは、自由端となって図4に示す如く上,下に起伏される。
【0039】
また、エンジンカバー14を図2、図3に示すように閉じたときには、左側板部14B、右側板部14Cおよび前板部14D等が上部カバー8Bの上面に後述のシール部材17等を介して当接し、後板部14Eはカウンタウエイト7の上置き板7Aにシール部材17等を介して当接する。これにより、閉扉状態のエンジンカバー14は、例えば雨水、ダスト等の異物が上部カバー8Bの開口部9から建屋カバー8内に浸入するのを防ぐものである。
【0040】
ここで、エンジンカバー14は、建屋カバー8の開口部9を開,閉するために上部カバー8Bの左,右方向一側(車体の後方からみて左側となる位置)にオフセットして配設されている。そして、エンジンカバー14の長さ(左,右方向の寸法)は、図2中の車幅(寸法W)に比較して、例えば1/3〜1/2程度まで小さく形成されている。
【0041】
これにより、エンジンカバー14は重量が軽減され、メンテナンス作業等を行うオペレータは、後述の把手18を持ってエンジンカバー14を容易に開くことができるものである。また、エンジンカバー14の蓋板部14Aは、その長さ方向(左,右方向)の途中部分が段付形状をなすように形成され、エンジンカバー14(蓋板部14A)の高さ寸法は、左側板部14Bよりも右側板部14Cの方が低い(小さい)寸法に形成されている。
【0042】
また、エンジンカバー14の内側面には、図5に示す如く蓋板部14Aと前板部14D,後板部14Eとの間を補強する補強板14F,14Gが溶接等の手段により固定して設けられ、これらの補強板14F,14Gは、例えば薄い鋼板等からなる金属板を断面L字状に折曲げることにより形成されている。
【0043】
15はエンジンカバー14の左側板部14Bにヒンジ16を取付けるための取付板で、該取付板15は、例えば金属薄板を折曲げることにより図4に示すように形成され、エンジンカバー14の左側板部14B(内側面)に溶接等の手段を用いて固着されている。そして、取付板15は、エンジンカバー14の左側板部14Bを内側から補強すると共に、後述のヒンジ16を左側板部14Bに対して強固に取付けるものである。
【0044】
16,16は建屋カバー8の上部カバー8Bにエンジンカバー14を開閉可能に連結するヒンジで、これらのヒンジ16は、例えば蝶番等からなる連結具により構成されている。そして、ヒンジ16は、図4に示すように建屋カバー8の上部カバー8Bとエンジンカバー14の取付板15との間に回動可能に取付けられ、エンジンカバー14を開,閉するときの支点(回動中心)を構成するものである。
【0045】
17はエンジンカバー14の下面側に設けられたシール部材で、該シール部材17は、図5に示すようにエンジンカバー14の下面全体(左側板部14B、右側板部14C、前板部14Dおよび後板部14Eの下面)に取付けられ、開口部9の周囲に位置する上部カバー8B、カウンタウエイト7の上置き板7Aとエンジンカバー14との間をシールするものである。
【0046】
また、シール部材17は、エンジンカバー14を閉扉状態としたときに前記カウンタウエイト7の上置き板7A、上部カバー8Bとエンジンカバー14の下面側との間で弾性変形され、この状態でエンジンカバー14に対する振動緩衝作用を発揮する。即ち、エンジン10等からの振動が建屋カバー8の上部カバー8B等からエンジンカバー14に伝わるのをシール部材17により緩衝し、振動音等の発生を抑えるものである。
【0047】
18はエンジンカバー14の蓋板部14Aに固定して設けた把手で、該把手18は、図2、図3に示す如くエンジンカバー14の右側板部14Cに近い位置で蓋板部14Aの幅方向中間部(前,後方向の中間位置)に取付けられている。そして、メンテナンス作業等を行うオペレータは、把手18を片手で把持しつつエンジンカバー14を、ヒンジ16を回動支点として持上げることにより開扉操作を行うものである。
【0048】
19はエンジンカバー14に設けられた鎖錠用のロック装置で、該ロック装置19は、図2、図3に示すように車体の後方からみてエンジンカバー14の前部右側に位置する蓋板部14Aの角隅側に設けられている。また、ロック装置19には、図5に示す如く上部カバー8B側に向けて延びるロックレバー19Aが設けられ、該ロックレバー19Aは、支軸19Bを中心にして回動されるものである。
【0049】
即ち、ロック装置19は、その鍵穴にキー(いずれも図示せず)を差込んで廻すことにより、ロックレバー19Aが支軸19Bを中心にして回動され、このときにロックレバー19Aの先端側が上部カバー8B側のロックプレート(図示せず)等にロック(鎖錠)されたり、またはロック解除されたりするものである。
【0050】
20は本実施の形態で採用した閉扉ストッパで、該閉扉ストッパ20は、図2に示すように車体の後方からみてエンジンカバー14の後部右側に位置する蓋板部14Aの角隅側に配置され、把手18を挟んでロック装置19とは反対側となる位置に設けられている。そして、閉扉ストッパ20は、エンジンカバー14により建屋カバー8の開口部9を閉じたときにエンジンカバー14を閉扉状態に保持するもので、後述のストッパ受け21とストッパ部材27等とにより構成されている。
【0051】
21は建屋カバー8側に固定して設けられたストッパ受けで、該ストッパ受け21は、図4、図8に示すように建屋カバー8の開口部9のうち後部右側の角隅近傍に配置され、エンジンカバー14の開,閉操作に従って後述するストッパ部材27の係合爪部27Bに係脱可能に掛止めされるものである。そして、ストッパ受け21は、弾性変形可能な金属板(例えば、ばね鋼等)を用いて図5ないし図8に示すように屈曲して形成され、その下端(基端)側は、後述の支持部材24にボルト22、ナット23を介して着脱可能に固定される固定板部21A(図6参照)となっている。
【0052】
また、ストッパ受け21は、図6に示す如く固定板部21Aの上端から後述のストッパ部材27側に向けて斜め上向きに屈曲した傾斜板部21B1 と、該傾斜板部21B1 の上端(先端)側からほぼ直角に折返して形成されたガイド板部21B2 とからなる掛止め部21Bを有し、該掛止め部21Bは、傾斜板部21B1 とガイド板部21B2 とが「く」の字状に屈曲する形状となっている。そして、ストッパ受け21の掛止め部21Bは、傾斜板部21B1 が後述するストッパ部材27の係合爪部27Bと背面合せするように斜めに屈曲した形状に形成され、ストッパ部材27の係合爪部27Bに対して係脱可能に掛止めされるものである。
【0053】
この場合、ストッパ受け21の掛止め部21Bは、図6に示す如く傾斜板部21B1 がストッパ部材27の係合爪部27Bに面接触状態で掛止めされる。また、掛止め部21Bのガイド板部21B2 は、エンジンカバー14は下向きに閉扉されるときに、ストッパ部材27の係合爪部27Bを傾斜板部21B1 側へと円滑にガイドするため、ストッパ受け21の掛止め部21Bを係合爪部27Bとは逆向きに弾性変形させるガイド機能を有するものである。
【0054】
24はストッパ受け21を片持ち状態で支持する支持部材で、該支持部材24は、図8に示すようにL字形鋼等の金属板材を用いて形成され、その長さ方向の一側は、建屋カバー8の支柱8Dの上端側に溶接等の手段を用いて固着されている。そして、支持部材24は、ストッパ受け21(固定板部21A)の幅寸法よりも僅かに大きい長さ寸法を有し、カウンタウエイト7の前面に沿って左,右方向に延びている。
【0055】
また、支持部材24の長さ方向他側は、自由端となって前記開口部9の後部右側に位置する角隅近傍に配置され、この位置でストッパ受け21の固定板部21Aをボルト22、ナット23を介して位置決めするものである。これにより、ストッパ受け21は、図4に示すように掛止め部21B側が開口部9の後部右側となる角隅の近傍位置から上向き突出するように配置される。
【0056】
25はエンジンカバー14に固定して設けられた板状のブラケットで、該ブラケット25は、後述のストッパ部材27をストッパ受け21と対向する位置で片持ち状態に支持するものである。そして、ブラケット25は、図8に示す如く金属板(例えば、鋼板)を幅方向でコ字状に折曲げることにより曲げ剛性を高める形状に形成され、図4に示すようにエンジンカバー14内を片持ち状態で幅方向(車体の前,後方向)に延びている。なお、図8中では、ブラケット25の形状を明示するためにエンジンカバー14を省略して示している。
【0057】
ここで、ブラケット25の基端側は、図6、図7に示すようにエンジンカバー14の補強板14Gに重合せて接合される接合板部25Aとなっている。また、ブラケット25の先端側は、例えば2個のナット26,26(図8参照)を介して後述のストッパ部材27がねじ止めされる座板部25Bとなり、この座板部25Bと接合板部25Aとの中間部位には、四角形状のストッパ挿入穴25Cが形成されている。
【0058】
この場合、ブラケット25はエンジンカバー14の幅方向外側から内側に向けて延び、ブラケット25のストッパ挿入穴25C内には、図6に示すようにストッパ受け21の掛止め部21Bとストッパ部材27の係合爪部27Bとが隙間をもって挿入されるものである。そして、ブラケット25は、ストッパ部材27をストッパ受け21と対向する位置で支持すると共に、ストッパ部材27をストッパ受け21よりもエンジンカバー14の幅方向内側となる位置に配置するものである。
【0059】
また、ブラケット25には、図8に示すように座板部25Bおよびストッパ挿入穴25Cの左,右両側となる位置に左,右の折曲げ部25D,25Dが形成され、これらの折曲げ部25Dは、図6に示すようにストッパ受け21の掛止め部21Bがストッパ挿入穴25C内に挿入されたときに、この挿入位置で掛止め部21Bを外側から保護すると共に、ストッパ受け21の掛止め部21Bがストッパ部材27の係合爪部27Bに対し安定した係合状態を保つのを補償するものである。
【0060】
27はブラケット25を介してエンジンカバー14内に設けられたストッパ部材で、該ストッパ部材27は、鋼板等の金属板を曲げ加工することにより形成され、図5に示す如く把手18の位置からエンジンカバー14の幅方向に離間した位置(車体の後部側となる位置)に配置されている。そして、ストッパ部材27は、図6ないし図8に示すように、その基端側に位置する固定部27Aと、該固定部27Aの先端側を略「し」字状に折曲げることにより形成された係合爪部27Bとにより構成されている。また、ストッパ部材27の固定部27Aには、図8に示すように長穴からなるボルト挿通穴27C,27Cが形成されている。
【0061】
そして、ストッパ部材27の係合爪部27Bは、ストッパ受け21の掛止め部21Bとは逆向きに屈曲し、図6に示す如くブラケット25のストッパ挿入穴25C内でストッパ受け21の掛止め部21Bに背面合せするように掛止めされるものである。このため、ストッパ部材27は、固定部27Aをブラケット25の座板部25Bに固定するときに、係合爪部27Bがブラケット25のストッパ挿入穴25C内に嵌入(挿入)するように、ブラケット25の先端側に取付けられる。
【0062】
28,28はストッパ部材27をブラケット25の座板部25Bに締結するボルトで、これらのボルト28は、図8に示す如くストッパ部材27の各ボルト挿通穴27Cに挿通した状態で、ブラケット25の座板部25Bを介してナット26に螺着され、これによりストッパ部材27の基端側をブラケット25に着脱可能に固定するものである。
【0063】
ここで、ストッパ部材27の固定部27Aは、ブラケット25の座板部25Bに下面側から当接され、先端側の係合爪部27Bは、ブラケット25のストッパ挿入穴25C内に下側から斜め上向きに挿入するように配置される。そして、ストッパ挿入穴25C内での係合爪部27Bの取付位置は、長穴からなるボルト挿通穴27Cによりブラケット25の長さ方向(車体の前,後方向)で位置調整され、これによりストッパ部材27(係合爪部27B)を、ストッパ受け21(掛止め部21B)に対して安定した掛止め(係合)位置に位置調節できるものである。
【0064】
かくして、閉扉ストッパ20は、ストッパ部材27の係合爪部27Bをストッパ受け21の掛止め部21Bに背面側から弾性変形状態で掛止めすることにより、エンジンカバー14を閉扉状態に保持するものである。そして、このような閉扉状態からエンジンカバー14を開扉するときには、後述の如くエンジンカバー14が弾性的に撓み変形するのを利用してストッパ受け21に対するストッパ部材27の掛止め状態(係合状態)を解除するものである。
【0065】
29はエンジンカバー14を開扉位置に保持する開扉保持手段としてのステーで、このステー29は、図4に示すようにエンジンカバー14を大きく開いた状態に保持するものである。そして、ステー29はエンジンカバー14を開扉状態に保持することにより、後述のメンテナンス作業時等にエンジンカバー14が不用意に閉扉されるのを防ぐものである。
【0066】
次に、30は図2に示すように建屋カバー8の右側前部に位置して旋回フレーム5上に設けられた作動油タンクで、該作動油タンク30は、前記油圧ポンプの吸込側に接続されると共に、油圧アクチュエータ(図示せず)からの戻り油が還流されるものである。また、作動油タンク30の前側には、前記エンジン10に燃料を供給するための燃料タンク31等が設けられている。
【0067】
本実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0068】
まず、油圧ショベル1のキャブ6内に乗り込んだオペレータが始動スイッチを操作し、建屋カバー8内のエンジン10を起動すると、該エンジン10によって前記油圧ポンプ等が駆動される。そして、オペレータがキャブ6内の操作レバー等を適宜に傾動操作することにより、前記油圧ポンプからの圧油が作業装置4の各油圧シリンダ、旋回用の油圧モータ、または下部走行体2の走行用油圧モータ(いずれも図示せず)等に給排され、土砂等の掘削作業を行うものである。
【0069】
また、建屋カバー8内に設けたエンジン10、熱交換器11および冷却ファン12等の保守、点検(メンテナンス作業)を行うときには、建屋カバー8の上部カバー8B上に登ったオペレータが、エンジンカバー14の把手18を片方の手で把持しつつ、上向き(図5中の矢示A方向)に持上げることにより、エンジンカバー14をヒンジ16を回動支点として上方に開くことができ、エンジンカバー14の開扉操作を片手のみの操作で行うことができる。
【0070】
即ち、閉扉状態に保持されたエンジンカバー14を開扉するときには、例えば油圧ショベル1のオペレータ等がエンジンカバー14の把手18を片方の手で把持して上向き(図5中の矢示A方向)に持上げると、このときの持上げ力でエンジンカバー14の蓋板部14Aが、図5中に二点鎖線で示すように凸湾曲状に撓むと共に、これに伴ってエンジンカバー14の前板部14D,後板部14Eが、図5中の矢示B,B方向に弾性的に撓み変形する。
【0071】
そして、エンジンカバー14の後板部14E側に補強板14Gを介して設けたブラケット25は、後板部14Eが図5、図6中の矢示B方向に撓み変形するに伴って矢示C方向へとエンジンカバー14の幅方向内側に向け押動される。これにより、ブラケット25は、ストッパ部材27の係合爪部27Bをストッパ受け21の掛止め部21B(傾斜板部21B1 )から引離す方向に相対的に動かすことができる。
【0072】
このように、エンジンカバー14の撓み変形を利用して閉扉ストッパ20のストッパ部材27をストッパ受け21の掛止め部21Bから引離す方向に動かすことより、ストッパ部材27の係合爪部27Bは、ストッパ受け21に対する掛止め状態が図7に例示するように強制的に解除されるものである。
【0073】
このため、例えば油圧ショベル1のオペレータ等は、エンジンカバー14の把手18を把持した状態で、エンジンカバー14を開扉方向(上向き)に持上げるだけで閉扉ストッパ20の掛止め状態を解除でき、このままエンジンカバー14を上向きに持上げるだけで、エンジンカバー14を図4に示す開扉位置まで片手のみの操作で簡単に動かすことができる。
【0074】
そして、この開扉位置では、エンジンカバー14をステー29等により大きく開いた状態に保持することができる。これにより、建屋カバー8内に設けたエンジン10、熱交換器11および冷却ファン12等の保守、点検作業を、開口部9の上側から安心して行うことができる。
【0075】
一方、エンジンカバー14で建屋カバー8の開口部9を閉じるときには、エンジンカバー14をヒンジ16を中心にして回動しつつ、例えば把手18を下向きに押込むだけで、閉扉ストッパ20のストッパ部材27をストッパ受け21の掛止め部21Bに対し図5、図6に示す如く背面合せ状態で掛止めすることができ、エンジンカバー14を閉扉状態に簡単に保持することができる。
【0076】
即ち、ストッパ受け21のガイド板部21B2 は、エンジンカバー14は下向きに閉扉されるときに、係合爪部27Bの先端側が当接されるに伴って掛止め部21Bを係合爪部27Bとは逆向きに弾性変形させ、これにより、ストッパ部材27の係合爪部27Bを傾斜板部21B1 側へと円滑にガイドすることができ、エンジンカバー14を閉扉状態に簡単に保持できるものである。
【0077】
かくして、本実施の形態によれば、エンジンカバー14を閉扉状態に保持する閉扉ストッパ20を、建屋カバー8の支柱8Dに支持部材24等を介して固定されたストッパ受け21と、エンジンカバー14の補強板14Gにブラケット25を介して設けられたストッパ部材27とにより構成しているので、閉扉ストッパ20を簡単な構造に構成することができ、閉扉ストッパ20のコストを低減できると共に、組付け時の作業性も向上することができる。
【0078】
また、エンジンカバー14を開扉状態から閉扉するときには、例えばエンジンカバー14の把手18を下向きに押込むだけで、閉扉ストッパ20のストッパ部材27をストッパ受け21の掛止め部21Bに弾性変形状態で掛止めすることができ、エンジンカバー14を閉扉状態に簡単に保持することができる。
【0079】
そして、前記閉扉ストッパ20により閉扉状態に保持されたエンジンカバー14を開扉するときには、例えばオペレータがエンジンカバー14の把手18を開扉方向に持上げ、この持上げ力(外力)でエンジンカバー14全体を弾性的に撓み変形させることにより、この撓み変形を利用して閉扉ストッパ20のストッパ部材27をストッパ受け21の掛止め部21Bから引離す方向に動かすことができ、これによって、ストッパ受け21に対するストッパ部材27の掛止め状態を強制的に解除することができる。
【0080】
従って、エンジン10等の整備、点検を行うために建屋カバー8の上部カバー8B上に登ったオペレータは、カウンタウエイト7に近い閉扉ストッパ20の位置まで近付く必要もなく、片手のみの操作でエンジンカバー14を簡単に開,閉操作することができ、例えばキャッチ等を用いた従来技術に比較してオペレータの負担を大幅に軽減することができる。
【0081】
即ち、例えばオペレータがエンジンカバー14を開,閉操作するときには、エンジンカバー14よりも車体(上部カバー8B)の前側となる位置から把手18を把持するだけで、エンジンカバー14を開扉または閉扉することができ、車体の後部側(例えば、カウンタウエイト7の位置)まで上部カバー8B上を移動することなく、エンジンカバー14の開,閉操作を行うことができる。
【0082】
このため、オペレータは、エンジンカバー14の開,閉操作を建屋カバー8上の広いスペース位置から安心して行うことができ、オペレータの負担を軽減できると共に、作業性、安全性等を確実に向上することができる。そして、建屋カバー8内に収容したエンジン10等の整備、点検(メンテナンス作業)を安定して行うことができ、メンテナンス時の作業性も向上することができる。
【0083】
また、閉扉ストッパ20のストッパ受け21とストッパ部材27とは、建屋カバー8の開口部9とエンジンカバー14との間に収納される構造であるため、従来技術で用いているキャッチ等のように外部の塵埃や雨水等にさらされることがなく、閉扉ストッパ20としての耐久性、寿命等を確実に延ばすことができる。
【0084】
しかも、エンジンカバー14(蓋板部14A)の高さ寸法は、ヒンジ16が設けられる左側板部14Bよりも、把手18が設けられる右側板部14Cの高さ寸法を小さく形成することができ、これによって、キャブ6(運転室)からの後方視界を広く確保することができる。
【0085】
なお、前記実施の形態では、ストッパ受け21の掛止め部21Bを「く」字状に屈曲した形状に形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、ストッパ受けの掛止め部を、例えば「V」字状または「U」字状に屈曲させて形成してもよく、要は、エンジンカバー14の把手18を閉扉状態から上向きに持上げたときに、エンジンカバー14の撓み変形を利用してストッパ受けに対するストッパ部材の掛止め状態を解除できる構成であればよいものである。
【0086】
また、前記実施の形態では、閉扉ストッパ20をエンジンカバー14の幅方向一側(例えば、車体の後方からみて開口部9の後部右側となる位置)に設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば閉扉ストッパ20を車体の後方からみて開口部9の右側となる前,後の位置(エンジンカバー14の幅方向両側)それぞれ設ける構成としてもよい。
【0087】
一方、前記実施の形態では、建屋カバー8の上部カバー8B上でエンジンカバー14を開閉するときに、その開扉方向を車両の左,右方向にする場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば車両の前,後となる方向でエンジンカバーを上向きに開閉する構成としてもよい。
【0088】
また、前記実施の形態では、作業機械として油圧ショベルを例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば油圧クレーン、ホイールローダ、フォークリフト等の建設機械または運搬機械等のように、建屋カバーの上部に設けた点検用の開口部を、エンジンカバーで開閉する構成とした種々の作業機械にも広く適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施の形態による油圧ショベルを示す全体図である。
【図2】図1中の上部旋回体を上側からみた平面図である。
【図3】上部旋回体の後部側を拡大して示す斜視図である。
【図4】図3中のエンジンカバーを開扉位置に保持した状態を示す斜視図である。
【図5】建屋カバーの開口部、エンジンカバーおよび閉扉ストッパ等を図3中の矢示V−V方向からみた拡大断面図である。
【図6】図5中の閉扉ストッパ等を拡大して示す断面図である。
【図7】エンジンカバーを僅かに開いた状態を示す図5と同様位置での断面図である。
【図8】開扉ストッパのストッパ受け、支持ブラケットおよびストッパ部材等を拡大して示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0090】
1 油圧ショベル(作業機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 作業装置
5 旋回フレーム(フレーム)
6 キャブ
7 カウンタウエイト
8 建屋カバー
8A サイドカバー
8B 上部カバー
8C,8D 支柱
8E 連結梁
9 開口部
10 エンジン
11 熱交換器
12 冷却ファン
14 エンジンカバー
14E 後板部
14F,14G 補強板
16 ヒンジ
17 シール部材
18 把手
19 ロック装置
20 閉扉ストッパ
21 ストッパ受け
21B 掛止め部
22,28 ボルト
23,26 ナット
24 支持部材
25 ブラケット
25C ストッパ挿入穴
27 ストッパ部材
27B 係合爪部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置が設けられた車体のフレームと、該フレーム上に搭載されたエンジンと、該エンジンを外側から取囲んで前記フレーム上に立設され上部側に開口部が設けられた建屋カバーと、該建屋カバーの開口部を覆うように該建屋カバー上に開閉可能に設けられたエンジンカバーと、該エンジンカバーにより前記建屋カバーの開口部を閉じたときに該エンジンカバーを閉扉状態に保持する閉扉ストッパとを備えてなる作業機械において、
前記閉扉ストッパは、前記建屋カバー側に固定して設けられ弾性変形可能に形成されたストッパ受けと、前記エンジンカバーに固定して設けられ該ストッパ受けに対して係脱可能に係合するストッパ部材とにより構成し、
該ストッパ部材は、前記エンジンカバーを閉扉状態から開扉方向に持上げるときの外力で該エンジンカバーが弾性的に撓み変形するのを利用して前記ストッパ受けに対する係合状態を解除する構成としたことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前記エンジンカバーには、長さ方向の一側に前記建屋カバー上でエンジンカバーを開,閉するときの回動支点となるヒンジを設け、その長さ方向他側には、当該エンジンカバーを開,閉操作するときに把持される把手を幅方向の中間位置に設け、前記閉扉ストッパのストッパ部材は、前記把手からエンジンカバーの幅方向に離間した位置に配置し、前記ストッパ受けは、前記ストッパ部材よりもエンジンカバーの幅方向外側となる位置に配置する構成としてなる請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記ストッパ受けは、前記建屋カバーの開口部のうち前記車体の後部側となる位置から屈曲して上向きに突出する掛止め部を有する構成とし、前記ストッパ部材は、前記ストッパ受けの掛止め部とは逆向きに屈曲して該掛止め部に係脱可能に係合する係合爪部を有する構成としてなる請求項1または2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記エンジンカバーには、前記エンジンカバーの幅方向外側から内側に向けて延びストッパ挿入穴が形成されたブラケットを設け、該ブラケットの先端側には、前記係合爪部が前記ストッパ挿入穴内に嵌入するように前記ストッパ部材を設け、前記ストッパ受けの掛止め部は、前記エンジンカバーを閉扉するときに前記ブラケットのストッパ挿入穴に挿入されて前記ストッパ部材の係合爪部と係合する構成としてなる請求項3に記載の作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−100351(P2007−100351A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290241(P2005−290241)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】