説明

作業用仮設足場の放射能汚染検査装置

【課題】作業用仮設足場を外部に搬出する際の放射能検査を、広い面積を占有することなく少人数で簡易に実施する。
【解決手段】仮設足場材(2)の放射能汚染を検出するための放射線検出器が備えられた放射線検出装置(12)と、載置した仮設足場材を該放射線検出装置によって走査するように運搬するコンベア(22)と、からなり、前記コンベアは仮設足場材を前方に運搬し、仮設足場材は前記放射線検出装置によって1以上の方向から走査される。ここで前記仮設足場材が略円筒型の足場パイプ(2a)であるときには、前記放射線検出装置は一方向から足場パイプを走査し、前記コンベアは足場パイプを軸回転させながら軸方向前方に運搬する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射能汚染検査装置に関し、特に、原子力施設管理区域より搬出される仮設足場材(被測定物)への放射能汚染を検査するのに適した作業用仮設足場の放射能汚染検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から原子力施設管理区域内で使用された全てのものは、原子力施設管理区域外に搬出される際には必ず放射能汚染がないことを確認し、その安全性を担保した上で搬出が行われている。
【0003】
そのための放射能汚染検査装置としては、例えば特許文献1に記載の「物品搬出モニタ」のように、放射線測定装置のスペース、重量および駆動部電源容量を削減し、放射線測定の処理能率を向上させた放射線計測装置が開示されている。
【特許文献1】特開2005−83978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原子力施設では、高所の設備の点検・整備のために、足場パイプや足場踏板等を組み合わせた作業用仮設足場が設けられることも多い。原子力施設管理区域内で使用された作業用仮設足場は、その使用後には分解され全ての仮設足場材に放射能汚染がないことが確認された上で搬出が行われる。
【0005】
これまで作業用仮設足場に放射能汚染がないことを確認するための検査は、様々な長さの足場パイプや足場踏板、クランプ等の仮設足場材(検査対象物)を重ならないようにして床一面に広げ、その上側(表面)からハンディータイプの放射線検出器(ガイガーカウンタ)などの装置をかざしてスキャンした後、床に広げた全ての検査対象物を裏返し、その上側(裏面)を再びスキャンすることによって行われていた。
【0006】
このようにかかる作業は仮設足場材を床面に広げる必要性から広い面積が必要とされるばかりでなく、搬出口付近が占有されるため他の作業の妨げとなる虞があった。また仮設足場材を一面に並べる作業や一面に並べた仮設足場材を裏返す作業は大変な重労働であった。さらに放射線検出装置を用いて床一面に広げた仮設足場材をスキャンする作業は複数人で行われることが多いが、そのため一部の仮設足場材についてそのスキャンをし忘れる虞があった。
【0007】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、その目的は原子力施設管理区域内で使用された作業用仮設足場を外部に搬出する際の放射能検査を、広い面積を占有することなく少人数で簡易に実施することを可能とする放射能汚染検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するため本発明の放射能汚染検査装置は、検査対象物である仮設足場材(2)の放射能汚染を検出するための放射線検出器が備えられた放射線検出装置(12)と、載置した仮設足場材を該放射線検出装置によって走査するように運搬するコンベア(22)と、からなり、前記コンベアは仮設足場材を前方に運搬し、仮設足場材は前記放射線検出装置によって1以上の方向から走査される、ことを特徴とする。
【0009】
ここで、前記仮設足場材(2)は略円筒型の足場パイプ(2a)であり、前記放射線検出装置(12)は一方向から足場パイプを走査し、前記コンベア(22)は足場パイプを軸回転させながら軸方向前方に運搬する、ものとすることも好ましい。
【0010】
また、前記放射線検出装置(12)は、ハンディータイプの放射線検出器(14)を懸架台(16)に掛け止めた構造を有し、上方、側方又は下方から前記仮設足場材(2)を走査する、ようにすることも好ましい。
【0011】
ここで、前記懸架台(16)は、掛け止めたハンディータイプの放射線検出器(14)の向きや位置を調節自在なフレキシブル構造を有する、ものとする。
【0012】
さらに、前記コンベア(22)にはその一端に、トラックの荷台のあおりに掛け止めるためのフック(24)が形成されている、ようにすることも好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の放射能汚染検査装置によれば、コンベアに仮設足場材を載せ、この状態で仮設足場材を放射線検出装置によって走査して放射能汚染を検出することで、従来のように仮設足場材を床面に広げる必要がなくその作業を比較的狭い空間でも行うことが可能となる。また仮設足場材を床面に広げるための作業を省力化することができるだけではなく、検査作業もコンベアに仮設足場材を載せる者とコンベアから仮設足場材を下ろす者の二人で行うことができるようになる。さらに仮設足場材はコンベアに載せられてその放射能汚染をスキャンされながら移動するため、スキャン前の仮設足場材が上流側に、スキャン後の仮設足場材が下流側に分配され、スキャンし忘れの虞をなくすことができる。
【0014】
また仮設足場材が略円筒型の足場パイプである場合には、足場パイプを軸回転させながら軸方向前方に運搬するコンベアを採用することで、一方向からのスキャンによって足場パイプの全周のスキャンが可能となり、高価な機器である放射線検出装置の必要台数を減少させることができる。
【0015】
なお、放射線検出装置をハンディータイプの放射線検出器を懸架台に吊り掛けるものとすることで、これまで利用してきたハンディータイプの放射線検出器を利用してやることができ、装置導入のためのコストを低減することができる。
【0016】
ここで懸架台を、掛け止めた放射線検出器の向きや位置を自在に調節可能なフレキシブル構造を有するものとしてやれば、必要に応じて仮設足場材との放射線検出器の向きや距離を容易に調節してやることができる。
【0017】
また仮設足場材を運搬するコンベアの一端に、トラックのあおりに掛け止めるためのフックを形成してやれば、放射能汚染の検査と、トラックへの積み込みとを同時に行うことができ、仮設足場材の搬出作業を効率化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の放射能汚染検査装置は、原子力発電所の原子力施設管理区域内で使用されたもの、特に高所の設備の点検・整備のために使用された足場パイプや足場踏板などの仮設足場材への放射能汚染の有無の確認作業を効率的に行うためのものである。以下仮設足場を構成する各種仮設足場材について説明した後、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0019】
図1は種々の仮設足場材を説明するための斜視図である。なお各図の縮尺は区々となっている。
図1(a)は、仮設足場の横材となる横支柱2a’(足場パイプ2a)を示している。この横支柱2a’は、外径が6cm程度で、長さが0.4m又は1.8m程度のパイプの両端に、パイプと直行する一方向に伸長するクサビ部3が形成された構造を有している。
図1(b)は、仮設足場の縦材となる縦支柱2a”(足場パイプ2a)を示している。この縦支柱2a”は、外径が6cm程度で、長さが1.8m又は3.6m程度のパイプの側面に、横支柱2a’の両端に形成された一方のクサビ部3を差し入れるための係止部4が所定の間隔に形成された構造を有している。また縦支柱2a”にはその両端開口内部に径方向に伸びる支持棒5が取り付けられている。
図1(c)は、足場パイプ2aを軸方向に接続して延長するための直線ジョイント2bを示している。この直線ジョイント2bは長さが0.3m、外径が5cm程度の中空単管であり、その両端部には縦支柱両端開口の支持棒を掛け止めるためのL字型の切り欠き部6が形成されている。2本の縦支柱2a”の端部開口にこの直線ジョイント2bを挿入し、一方の縦支柱2a”を90°程度捻ることで、縦支柱2a”の支持棒5に直線ジョイント2bの切り欠き部6が係止し、2本の縦支柱は接続される。
図1(d)は、平行に立設する縦支柱2a”間に水平に取り付けられた平行する2本の横支柱2a’間にその両端が掛け止められて載せ置かれる足場踏板2cを示している。この足場踏板2cは縦0.4m、横1.8m程度の網目材に外枠を形成し、その短辺側にU字型のフック7を形成した構造を有している。
なお図面は省略するが仮設足場材には上述した以外にも、組み合わせた縦支柱および横支柱を補強するためのコーナーブラケットや筋交い、地面と接する固定ジャッキベース、各種手摺など様々な部材が存在する。
【0020】
図2および図3は本発明の放射能汚染検査装置の一実施例を示した斜視図であり、図2は放射能汚染検査装置を構成する懸架台の側面図(図2(a))および平面図(図2(b))、図3は放射能汚染検査装置を構成するコンベアの平面図(図3(a))および側面図(図3(b))である。
【0021】
この放射能汚染検査装置は、検査対象物である仮設足場材の放射能汚染を検出するための放射線検出器が備えられた放射線検出装置12と、載置した仮設足場材を放射線検出装置12によって走査するように運搬するコンベア22とから構成されている。
【0022】
放射線検出装置12は、予め定めた規定値以上の放射能を検出した場合に、内蔵スピーカから警告音を鳴らすハンディータイプの放射線検出器14を、スタンド状の懸架台16に掛け止めた構造を有している。
【0023】
この懸架台16は、地面と接する十分な重量の脚部16aと軽量な多関節のアーム部16bとから構成され、アーム部先端に掛け止めたハンディータイプの放射線検出器14の向きや位置を調節自在なフレキシブル構造を有している。これにより懸架台16に取り付けられた放射線検出器14は、高さが1〜2m程度の範囲内で自由な向きに移動させることができるようになっている。
【0024】
コンベア22は、全体として幅0.9m、長さ8m程度の大きさを有しており、その上に載置した仮設足場材2を自動的に運搬する。
より詳細にはこのコンベア22は、コンベアの骨格を形成する外枠22aと、コンベア長手方向に対して傾斜した状態で等間隔に平行に並んだ複数の車軸25に取り付けられた複数のタイヤ27と、このタイヤ27が取り付けられた車軸25を回転させるための回転手段29とから構成されている。なお外枠22aには載置した仮設足場材2がコンベア22上からずれ落ちることのないように、その長手側両側に立設する壁部31が形成されている。また外枠22aの下方四隅には脚部33が形成されており、外枠22aの一端には、図4の使用態様に示したようにトラックの荷台のあおりに掛け止めるためのフック24が形成されている。
車軸25に取り付けられた複数のタイヤ27は、その直径が15cm程度、幅が3cm程度の例えばゴム製タイヤであり、隣接するタイヤ同士の間から、例えば直線ジョイント2bなどの比較的小さな仮設足場材2が抜け落ちない程度の間隔を空けて配置されている。コンベア22長手方向に対して傾斜する複数のタイヤは、コンベア長手方向に整然と並ぶように配置されている。ここで隣接する複数の車軸25とタイヤ27とは互いに接触しており、電動モータなどの回転手段29が一の車軸を回転させると全ての車軸25が同じ回転速度で回転するようになっている。なお車軸25とタイヤ27を接触させる代わりに、ベルト又は歯車によって全ての車軸を連結することで、全てのタイヤの回転を連動させてやってもよい。以上に説明したコンベア22では複数の車軸25に取り付けられた複数のタイヤ27は、図3に矢印で示したようにコンベア長手方向に対して傾斜した状態で一方向に回転する。
【0025】
次に本実施例の放射能汚染検査装置を用いた仮設足場材の検査態様について説明する。
【0026】
コンベア22に載置される仮設足場材2が、図1(a)に示した横支柱2a’や図1(b)に示した縦支柱2a”などの略円筒型の足場パイプ2aである場合、寝かせた状態でコンベアに載置された足場パイプ2aは、コンベア22の複数タイヤ27に載ってその回転により軸回転しながら軸方向前方へと運搬される。
ここで横支柱2a’にはその両端部にクサビ部3が、縦支柱2a”にはその側面に係止部4が形成されているため、単純な円筒(パイプ)ではなく突起がある構造となっているが、複数の車軸25に取り付けられて所定間隔で並んだ複数のタイヤ27の間には一定の空間が形成されているため、このタイヤ間の空間を利用することで多少の突起がある足場パイプ2aであっても、その突起3,4がタイヤ27間の空間に逃げその軸回転が可能となる。
このように仮設足場材2が略円筒型の足場パイプ2aである場合には、足場パイプを軸回転させながら軸方向前方に運搬することで、足場パイプ2aを例えば上側からのみ放射線検出装置12で放射能汚染をスキャンする場合にも、その全周のスキャンが可能となり、放射線検出装置12の必要台数を減少させることができる。
【0027】
一方コンベア22に載置される仮設足場材2が、図1(d)に示した足場踏板2cやコーナーブラケット、筋交い、固定ジャッキベース、各種手摺などの面形や複雑な形状をしたものである場合には、これらの仮設足場材2はコンベア22のタイヤ27の回転によって回転することができず、まず斜め前方向に運搬される。そしてコンベア22の壁部31と衝突した後には、壁部と摺接しながらこれに沿ってコンベア前方へと運搬される。
このように仮設足場材2が面形や複雑な形状をしたものである場合には、これらをコンベア22の一壁面側によせた状態で運搬することで、放射線検出装置でスキャンする範囲を絞り込むことができ、放射線検出装置の必要台数も減少させることができる。
【0028】
なお放射線検出装置12を、必要に応じてコンベアの周りに2台以上設置することも勿論可能である。特に仮設足場材2が足場パイプ2aではなくコンベア22のタイヤ27によっても軸回転しない仮設足場材である場合には、少なくとも仮設足場材2の上側と下側の二方向から放射能汚染の有無を放射能検出器14でスキャンしてやることが好ましい。
【0029】
以上に説明したように、本実施例の放射能汚染検査装置によれば、コンベアに載せた状態で仮設足場材の検査をするため、これまでのように仮設足場材を床面に広げる必要がなく作業を比較的狭い空間でも行うことが可能となる。またコンベアの利用により検査作業を省力化することができるとともにスキャンし忘れの虞もなくなる。なお仮設足場材が足場パイプである場合には、これを軸回転させることで一方向からのスキャンによって足場パイプの全周を検査しながら運搬することができ、また仮設足場材が足場踏板などである場合には、これをコンベアの一壁面側に偏らせた状態で運搬することで、放射線検出装置でスキャンする範囲を絞り込むことができる。
【0030】
なお本発明は、作業用の仮設足場材の放射能汚染の有無を調べるための検査作業を、少ない作業スペースで効率的かつ確実に行うことができるものであれば上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の放射能汚染検査装置は、電力事業者の原子力施設での使用に限定されず、放射能汚染を検査することが必要なあらゆる場面全般に有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】種々の仮設足場材を説明するための斜視図である。
【図2】放射能汚染検査装置を構成する懸架台の側面図および平面図である。
【図3】放射能汚染検査装置を構成するコンベアの平面図および側面図である。
【図4】放射能汚染検査装置の使用態様を表した図である。
【符号の説明】
【0033】
2 仮設足場材
2a 足場パイプ
2a’ 横支柱
2a” 縦支柱
2b 直線ジョイント
2c 足場踏板
3 クサビ部
4 係止部
5 支持棒
6 切り欠き部
7 フック
10 放射能汚染検査装置
12 放射線検出装置
14 放射線検出器
16 懸架台
16a 脚部
16b アーム部
22 コンベア
22a 外枠
24 フック
25 車軸
27 タイヤ
29 回転手段
31 壁部
33 脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物である仮設足場材(2)の放射能汚染を検出するための放射線検出器が備えられた放射線検出装置(12)と、載置した仮設足場材を該放射線検出装置によって走査するように運搬するコンベア(22)と、からなり、
前記コンベアは仮設足場材を前方に運搬し、仮設足場材は前記放射線検出装置によって1以上の方向から走査される、ことを特徴とする作業用仮設足場の放射能汚染検査装置。
【請求項2】
前記仮設足場材は略円筒型の足場パイプ(2a)であり、
前記放射線検出装置(12)は一方向から足場パイプを走査し、前記コンベア(22)は足場パイプを軸回転させながら軸方向前方に運搬する、ことを特徴とする請求項1に記載の作業用仮設足場の放射能汚染検査装置。
【請求項3】
前記放射線検出装置(12)は、ハンディータイプの放射線検出器(14)を懸架台(16)に掛け止めた構造を有し、上方、側方又は下方から前記仮設足場材(2)を走査する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の作業用仮設足場の放射能汚染検査装置。
【請求項4】
前記懸架台(16)は、掛け止めたハンディータイプの放射線検出器(14)の向きや位置を調節自在なフレキシブル構造を有する、ことを特徴とする請求項3に記載の作業用仮設足場の放射能汚染検査装置。
【請求項5】
前記コンベア(22)にはその一端に、トラックの荷台のあおりに掛け止めるためのフック(24)が形成されている、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の作業用仮設足場の放射能汚染検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−111688(P2008−111688A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293497(P2006−293497)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(596133119)中電プラント株式会社 (101)
【Fターム(参考)】