説明

作業用走行車

【課題】作業用走行車のオペレータやサービスマンが、操縦部に備える液晶表示部を利用して、ユーザーマニュアルやサービスニュアル等に記載されている詳細情報や、緊急対応を要する異常が機体に生じた時の当該異常内容を確実に把握できるようにする。
【解決手段】作業情報K2を表示する液晶表示部46と、この液晶表示部46に表示する作業情報K2の内容を制御する制御部21とを備える作業用走行車において、前記液晶表示部46に表示する作業情報K2に併せて表示する二次元コードCによって、当該作業情報K2の詳細説明を読み取り可能に構成すると共に、緊急対応を要する異常が機体に生じた時は、前記液晶表示部46に二次元コードCによる割り込み表示がなされるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示部を備えたクローラトラクタ等の作業用走行車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、作業情報を表示する液晶表示部を備えた作業用走行車が増えてきている。例えば、特許文献1に示す作業用走行車(クローラトラクタ)では、運転席が設けられる操縦部にタッチパネル式の液晶表示部を備え、この液晶表示部において各種作業情報の表示や作業条件の設定操作を行えるようになっている。
【特許文献1】特開2005−218386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した特許文献1の作業用走行車では、液晶表示部の画面サイズや表示画素数を十分に確保することが難しいことから、当該液晶表示部を介して多くの作業情報をオペレータ(作業者)に伝達することができないといった問題を有していた。一方、故障診断機能を備える作業用走行車においては、液晶表示部に故障の種別を表示してオペレータに伝達することは可能であるが、ユーザーマニュアルやサービスニュアル等に記載されているような詳細な作業(説明)情報を伝達することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、作業情報を表示する液晶表示部と、この液晶表示部に表示する作業情報の内容を制御する制御部を備え、前記液晶表示部に表示した作業情報に併せて表示する二次元コードによって、前記作業情報の詳細説明を読み取り可能に構成した作業用走行車において、緊急対応を要する異常が機体に生じた時は、前記液晶表示部に二次元コードによる割り込み表示がなされるように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、液晶表示部に表示した作業情報に併せて表示する二次元コードによって、前記作業情報の詳細説明を読み取り可能に構成すると共に、緊急対応を要する異常が機体に生じた時は、前記液晶表示部に二次元コードによる割り込み表示がなされるように構成したので、従来のように液晶表示部の画面サイズや表示画素数を十分に確保することが難しくても、作業用走行車のオペレータは、二次元コードの読み取り機能を備える携帯電話機などの携帯端末を用いて、当該作業情報に関するユーザーマニュアル等の詳細説明(多くの情報)を瞬時に読み取って容易に確認することができ、この詳細説明に基づいてオペレータは適切に対応できるようになる。特に、前記ユーザーマニュアル等は、走行機体に常備されておらず有効である。そして、緊急対応を要する異常が機体に生じた時は、前記二次元コードによる割り込み表示がなされるので、作業用走行車のオペレータは、その異常内容を二次元コード読み取り機能を備える携帯電話機などの携帯端末を用いて確実に把握し、当該異常内容に対して適切に対応できるようになる。即ち、作業用走行車のオペレータから、該作業用走行車のメンテナンスや諸設定を行うサービスマンに対して的確且つ速やかな情報伝達が可能となり、それによってサービスマンの作業負荷も軽減できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、作業用走行車の一例であるクローラトラクタ1の走行機体を示す側面図であって、このクローラトラクタ1は、機体フレーム2上に通常の農業用トラクタと同様にエンジン3を内装したボンネット4、及びキャビン5等を備えており、該キャビン5内には、運転席6を始め、各種操作レバーやスイッチ類を配置した操縦部7を設けている。
【0007】
そして、キャビン5の後方下部には、ロータリ、プラウ、及びハロー等の作業機を装着することができる三点リンク式の作業機昇降機構8を常装している。また、図中符号9L,9Rは、左右一対のクローラ式走行装置であり、このクローラ式走行装置9L,9R上に機体フレーム2を支持している。
【0008】
更に詳しくは、クローラ式走行装置9L,9Rは、機体フレーム2の下部に一体形成した左右の走行フレーム11L,11Rの前後端部に駆動スプロケット12とアイドラ13を設けると共に、走行フレーム11L,11Rの下部に前後一対のローラ14を備えた二組のイコライザアーム15を上下揺動可能に支持している。
【0009】
そして、走行フレーム11L,11Rの前後略中間位置の上部には、上部ローラ16を軸支しており、これら駆動スプロケット12、アイドラ13、二組のイコライザアーム15に備える前後一対のローラ14、及び上部ローラ16に巻回するクローラ17によってクローラ式走行装置9L,9Rを構成している。
【0010】
また、クローラトラクタ1は、図2に示すように、マイクロコンピュータ(CPU,RAM,ROM,EEPROMを含む)を用いて構成される制御部21を備えている。この制御部21は、後述するモニタユニット22(図4参照)、主変速レバー43に付設した傾きスイッチ24、エンジン3の回転数を検出するエンジン回転センサ25、リフトアーム角を検出するリフトアームセンサ26、リフトロッドシリンダの伸縮長さを検出するリフトロッドセンサ27、ポジションレバー(作業機昇降操作レバー)28のレバー位置を検出するポジションセンサ29、プラウ等の牽引負荷を検出するドラフトセンサ31、走行機体または作業機の左右傾斜を検出する傾斜センサ32、ロータリなどに設けられ、その作業深さを検出する耕深センサ33、均平作業機等に設けられ、レーザ投光器(不図示)から投光されるレーザ光により作業高さを検出するレーザ受光器34、リフトシリンダ用電磁バルブ35、リフトロッドシリンダ用電磁バルブ36、警報ランプ37等に接続してあり、各種の制御機能によってリフトシリンダやリフトロッドシリンダの動作制御を実行することができる。
【0011】
そして、上述した制御部21が備える制御機能には、ポジションレバー28の操作位置に応じて作業機を自動的に昇降制御するポジション制御、耕深センサ33の検出深さに応じて作業機を自動的に昇降制御する深さ自動制御、傾斜センサ32の検出傾斜に応じて作業機を自動的に傾斜制御する傾き自動制御、ドラフトセンサ31の検出負荷に応じて作業機を自動的に昇降制御するドラフト自動制御、エンジン回転センサ25の検出回転に応じて作業機を自動的に昇降制御するSモード制御、レーザ受光器34の受光信号に応じて作業機を自動的に昇降制御するレーザ制御、作業機の最上げ高さを規制する上げ規制制御等が含まれており、これら各制御機能の制御条件は、モニタユニット22で表示及び設定できるようになっている。
【0012】
また、制御部21が備える補助機能には、警報ランプ37の点灯により故障の発生を報知する故障報知機構、故障診断モードによる故障診断結果(故障種別、対処方法、修理方法等)をモニタユニット22に表示する故障診断表示機能、故障種別に対応する詳細情報(対処方法、修理方法等)を提供するWebサイトのアドレスをモニタユニット22に表示するサービス情報表示機能、メーカが運営するお客様相談窓口の電話番号を表示する問合せ電話番号表示機能などが含まれている。
【0013】
そして、キャビン5内に設けられる操縦部7には、図3に示すように、オペレータが前方を向いて着座する運転席6、ステアリングハンドル41、走行速度などを表示するメータパネル42、走行速度を変速操作する主変速レバー43、作業機の高さを設定するポジシヨンレバー28、外部油圧取出装置(不図示)の方向制御弁を操作する外部油圧操作レバー44、情報表示部及び制御条件設定手段として兼用されるモニタユニット22等を配置している。
【0014】
更に詳しくは、運転席6の前方にステアリングハンドル41及びメータパネル42を配置すると共に、運転席6の右側前方に主変速レバー43、ポジションレバー28及び外部油圧操作レバー44を配置し、更に、モニタユニット22は、運転席6の右側方近傍に配置してある。つまり、情報表示部及び制御条件設定手段として兼用されるモニタユニット22をこのように配置すれば、モニタ画面と制御条件設定手段を離間して配置したものと比べ、オペレータによる制御条件の設定操作が容易に行えるだけでなく、オペレータが運転席6に座って半身の姿勢で機体後方の作業機を目視しながら当該制御条件の変更操作を行う時でも、モニタユニット22の良好な視認性と操作性を確保することができる。
【0015】
また、モニタユニット22は、図4及び図5に示すように、タッチパネル式の液晶表示部46と、この液晶表示部46に表示する作業項目を選択する四つの選択スイッチ51〜54と、液晶表示部46に表示されるカーソルを上下左右に移動させる四つのカーソル移動スイッチ55〜58と、それらの決定操作を行うための決定スイッチ59と、深さ設定操作、ドラフト設定操作、及び自動入切操作等に兼用する第一設定操作ダイヤル61と、傾き設定操作、決定操作等に兼用する第二設定操作ダイヤル62と、インディペンデントPTOの設定操作及び入切操作に兼用するPTO設定ダイヤル63とを一体的に備えて構成している。
【0016】
そして、上述した四つの選択スイッチ51〜54により、例えば図5に示すように、作業機を自動的に昇降制御する深さ自動制御を選択した時は、その制御項目K1が液晶表示部46の左側上部に表示される。また、液晶表示部46の右側半分には、当該深さ自動制御の作業情報K2、即ち感度、ダッシング、及び上昇/下降速度の設定状態が表示されると共に、これらの作業情報K2の詳細説明を読み取ることができる二次元コードCを液晶表示部46の左側下部に併せて表示できるように構成している。尚、二次元コードCは、縦横2方向に情報を記録可能な情報記録コードであり、二次元コード読み取り機能を備える携帯電話機等の携帯端末で読み取れば、その記録内容を携帯端末の表示部に表示させることが可能である。例えば、JISX0510として規格化された二次元コードCは、21セル×21セル〜177セル×177セルの大きさを有し、最大で1817文字の漢字を記録することができる。
【0017】
以上説明したように、深さ自動制御における作業情報K2(感度、ダッシング、及び上昇/下降速度)の詳細説明を記録した二次元コードCを、この二次元コードCを読み取ることができる携帯電話機によって読み取ると、例えば図6に示すように、携帯電話機の画面に当該作業情報K2に対応したユーザーマニュアルを表示することができる。即ち、従来のように液晶表示部46の画面サイズや表示画素数を十分に確保することが難しくても、クローラトラクタ1のオペレータは、二次元コードCの読み取り機能を備える携帯電話機などの携帯端末を用いて、作業情報K2に関するユーザーマニュアル等の詳細説明(多くの情報)を瞬時に読み取って容易に確認することができ、この詳細説明に基づいてオペレータは適切に対応できるようになる。特に、ユーザーマニュアル等は、機体に常備されておらず有効である。
【0018】
一方、クローラトラクタ1の機体に緊急対応を要する重要な異常や故障が発生した時、例えばエンジン3に関連するオーバーヒート、エンジンオイル上がり、及びバッテリの充電不良や、走行変速装置である図示しないHST(静油圧式無段変速装置)の異常、またロータリ等の作業機を装着した三点リンク式の作業機昇降機構8の異常動作が生じた時は、モニタユニット22における液晶表示部46の通常表示状態、即ち図5に例示したような液晶表示部46の表示状態に換えて、図7に示す如く当該液晶表示部46に二次元コードCによる割り込み表示がなされるように構成している。
【0019】
更に詳しくは、図8は、上述した二次元コードCによる割り込み表示制御のフローチャートを示したものであって、具体的に説明すると、先ずステップS1では、クローラトラクタ1の機体に異常や故障が発生したか否かを判断し、異常や故障が発生していなければ元に戻り、異常や故障が発生したならばステップS2に進む。ステップS2では、前記異常や故障の重要度及び緊急度を判断し、緊急対応の必要がなければ元に戻り、緊急対応の必要があればステップS3に進む。ステップS3では、液晶表示部46の通常の表示状態
(例えば図5に例示した表示状態)から図7に示すような割り込み表示を実行して元に戻る。
【0020】
つまり、ステップS3においては、モニタユニット22の液晶表示部46にエンジン停止表示と、クローラトラクタ1の製造メーカーが運営する故障時相談窓口の電話番号が表示されると共に、二次元コードCによる割り込み表示がなされ、且つこの二次元コードCの読み取り機能を備える携帯電話機等の携帯端末を用いて当該二次元コードCを読み取れば、上述した製造メーカーが運営する故障時相談窓口に直接電話することができるように構成している。
【0021】
以上説明したように、緊急対応を要する重要な異常や故障が発生した時は、モニタユニット22の液晶表示部46に二次元コードCによる割り込み表示がなされるので、更にその異常内容を説明する二次元コードCによる割り込み表示も実行されるように構成すれば、クローラトラクタ1のオペレータは、その異常内容を二次元コード読み取り機能を備える携帯電話機などの携帯端末を用いて確実に把握し、当該異常内容に対して適切に対応できるようになる。即ち、クローラトラクタ1のオペレータから、該クローラトラクタ1のメンテナンスや諸設定を行うサービスマンに対して異常や故障に関する的確且つ速やかな情報伝達が可能となり、それによってサービスマンの作業負荷も軽減できるようになる。
【0022】
更に、図9に示すように、モニタユニット22の液晶表示部46に、クローラトラクタ1の取扱説明に関する情報を提供するWebサイトのアドレスを二次元コードCによって表示できるように構成すれば、クローラトラクタ1のメンテナンスや諸設定を行うサービスマンは、二次元コードCの読み取り機能を備える携帯電話機等の携帯端末を用いて当該Webサイトにアクセスし、作業現場において直接且つ容易に取扱説明に関する情報を確認できるのでサービスマンの作業負荷が軽減する。
【0023】
また、上述したクローラトラクタ1の製造メーカーが運営する故障時相談窓口の電話番号や、取扱説明に関する情報を提供するWebサイトのアドレスを記録した二次元コードCを、図10(a),(b)に示すように、機体に貼付する表示ラベル71,72に印刷してもよく、この場合もクローラトラクタ1のオペレータやサービスマンが二次元コードCの読み取り機能を備える携帯電話機等の携帯端末を用いて当該二次元コードCを読み取れば、上述した製造メーカーが運営する故障時相談窓口に直接電話することができると共に、前記Webサイトにアクセスすれば、作業現場において直接且つ容易に取扱説明に関する情報を確認できるようになる。
【0024】
同様に、図11は、クローラトラクタ1に装着する作業機の耕深や傾斜調整を行う設定部の表示ラベル73を例示したものであって、この表示ラベル73にも、各種設定項目に対応する調整方法を記録した二次元コードCを印刷しておけば、クローラトラクタ1のオペレータやサービスマンが二次元コードCの読み取り機能を備える携帯電話機等の携帯端末を用いて当該二次元コードCを読み取ることができる。即ち、クローラトラクタ1のオペレータやサービスマンは、各種設定項目に対応する調整方法を作業現場において的確に把握することができるので作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】クローラトラクタの側面図。
【図2】制御部の入出力を示すブロック図。
【図3】操縦部の平面図。
【図4】操縦部の要部斜視図。
【図5】モニタユニットの正面図。
【図6】携帯電話機の画面を示す正面図。
【図7】液晶表示部の割り込み表示画面を示す正面図。
【図8】割り込み表示制御の手順を示すフローチャート。
【図9】液晶表示部の表示画面(Webサイトへのアクセス)を示す正面図。
【図10】(a),(b)二次元コードを印刷した表示ラベルを示す正面図。
【図11】二次元コードを印刷した設定部の表示ラベルを示す正面図。
【符号の説明】
【0026】
21 作業情報
46 液晶表示部
K2 作業情報
C 二次元コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業情報(K2)を表示する液晶表示部(46)と、この液晶表示部(46)に表示する作業情報(K2)の内容を制御する制御部(21)を備え、前記液晶表示部(46)に表示した作業情報(K2)に併せて表示する二次元コード(C)によって、前記作業情報(K2)の詳細説明を読み取り可能に構成した作業用走行車において、緊急対応を要する異常が機体に生じた時は、前記液晶表示部(46)に二次元コード(C)による割り込み表示がなされるように構成したことを特徴とする作業用走行車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−26(P2009−26A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162199(P2007−162199)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】