説明

作業用車両

【課題】車台上における作業者の移動を妨げず過大な曲げ変形が抑制された手摺を備えた作業用車両を提供すること。
【解決手段】ブーム5と、ブーム5の側方に設けられた通行路30とを備えた作業用車両(高所作業車1)であって、安全帯を取り付けるために通行路30に沿って設けられている安全帯掛止用手摺50と、安全帯掛止用手摺50の少なくとも下方への変形を抑制する受け部材70とを有し、安全帯掛止用手摺50と受け部材70との間には所定の間隙が設けられていること。これにより、安全帯掛止用手摺50に安全帯を掛止した状態で作業者が通行路30から落下した場合でも、安全帯掛止用手摺50の下方に配置された受け部材70に安全帯掛止用手摺50が当接して、過大な曲げ変形等が防止できる。また、安全帯掛止用手摺50と受け部材70との間隔により受け部材70の前後で安全帯の掛け変えをする必要がなく、作業者の移動を妨げることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブームを備えた作業用車両に関し、特にブームの側方に設けられた通行路を作業者が移動する際に安全帯を掛止するための手摺の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業用車両として、荷台や荷室が車台に架装された運搬車や、クレーン装置、ミキサー装置、昇降装置等の種々の機械装置が車台に架装された特装車が知られている。こうした作業用車両においては、作業を行うにあたって作業者が架装物に昇降する必要が生じる場合がある。特に、先端に昇降装置を備えた高所作業車においては、作業者が車両に設けられた作業床に乗り込むことが前提となる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された作業用車両では、先端に作業床を備えたブームが搭載されており、このブームが車台側に格納されている状態で作業者がブームの側方に設けられた通行路を通って作業床まで移動するようになっている。このような作業用車両では、作業者が通行路を安全に通過できるように手摺が設けられている。
【0004】
上記例においては、通行路がブームと略平行して設けられているため、ブームの上面に設けられたカバーの側縁部に対してブームと略平行な手摺が配置されている。この手摺は両端がブーム又はカバーに固定されるとともに、途中の複数箇所がステーを介してブーム又はカバーに固定されることで所定の剛性を担保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−1404
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような作業用車両において、作業者がより安全に通行路を移動するために安全帯を利用することが考えられる。しかしながら、上記のように構成された手摺を安全帯の掛止部として利用すると、手摺の途中に設けられたステー部分を通過するたびに安全帯を掛け直す必要が生じてしまい作業者のスムースな移動を妨げてしまう。そこで、このようなことが起こらないように、ステーを排除して両端のみで手摺を固定することが考えられる。しかし、単にステーを排除しただけでは、手摺の剛性が小さくなってしまうため、作業者が落下してしまった場合に手摺が大きく曲がってしまったり、それに伴って手摺が脱落してしまったりする虞がある。また、剛性を保つために、例えば手摺の材料や構造を従来とは別のものにする場合には、製造のコストが高くなってしまう虞がある。
【0007】
本発明は、車台上における作業者の移動を妨げず過大な曲げ変形が抑制された手摺を備えた作業用車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明では、ブームと、該ブームの側方に設けられた通行路とを備えた作業用車両であって、安全帯を取り付けるために前記通行路に沿って設けられている手摺と、該手摺の少なくとも下方への変形を抑制する受け部材とを有し、前記手摺と前記受け部材との間には所定の間隙が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明では、前記受け部材が、上端の位置が前記手摺の高さ以上であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明では、前記受け部材が、前記手摺の長手方向の両側部から中央に向かって徐々に高さが高くなる傾斜部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、手摺に安全帯を掛止した状態で作業者が通行路から落下した場合でも、手摺の下方に配置された受け部材によって手摺が支持されるため、手摺が過大な曲げ変形を起こすことや脱落してしまうことを防止できる。また、手摺と受け部材との間に所定の間隔が設けられているため、受け部材の前後で安全帯の掛け変えをする必要がなく、作業者の移動を妨げることがない。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、受け部材が手摺の下方のみならず下方から側方にかけてもカバーしているため、作業者が側方に飛び出すように落下した場合など、手摺が側方や斜め下等へ変形してしまうときにも受け部材によって手摺を支持することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、受け部材が手摺の長手方向に沿った傾斜部を備えて形成されているため、受け部材の前後で安全帯を持ち上げる等の余計な動作を行わなくとも安全帯が受け部材の上を通過するため煩わしさがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一の実施の形態に係る高所作業車を斜め後方から見た斜視図である。
【図2】(a)本発明の一の実施の形態に係る高所作業車のブームの平面図である。(b)本発明の一の実施の形態に係る高所作業車のブームの側面図である。
【図3】(a)図2(b)のA−A断面図である。(b)図2(b)のB−B断面図である。
【図4】(a)本発明の他の実施の形態に係る高所作業車のブームの平面図である。(b)本発明の他の実施の形態に係る高所作業車のブームの側面図である。
【図5】(a)図4(b)のA部分拡大図である。(b)図4(b)のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。便宜上、同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。なお、本発明は、車台に架装物が架装された作業用車両に広く適用可能であるが、ここでは本発明を高所作業車に適用した場合の一例について説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1乃至図3に本発明に係る一の実施の形態を示す。図1は、高所作業車を斜め後方から見た斜視図である。高所作業車1は、車台2(ボディ)に前輪3F,3F及び後輪3R,3Rを有しており、前輪3F,3Fの上方には、高所作業車1の走行操作を行うためのキャブ4が設けられている。このキャブ4の後方には、主に以下の架装物が架装されている。
【0017】
すなわち、車台2の後端近傍には、不図示の油圧ポンプから供給される作動油によって旋回される旋回台6が設けられ、該旋回台6には、起伏自在にブーム5が枢支されている。なお、ブーム5には起伏シリンダ8が接続されており、この起伏シリンダ8を伸縮させることで、ブーム5が起伏するようになっている。ブーム5は多段式に構成されており、その先端には、バケット7が常に水平を維持するように揺動自在に取り付けられている。つまり、バケット7は、ブーム5の伸縮と起伏シリンダ8の伸縮とによって高さ方向の位置を調節することができ、また、旋回台6の旋回によって水平方向の位置を調節することができる。なお、ブーム5、起伏シリンダ8及びこれらに作動油を供給する油圧ポンプによって昇降装置が構成されている。
【0018】
また、車台2には、アウトリガ9,10が架装されている。アウトリガ9はキャブ4及び前輪3F,3Fの近傍に設けられ、アウトリガ10は車台2の後端に設けられている。アウトリガ9,10は、いずれも同一の構成であるため、ここではアウトリガ10について説明する。
【0019】
アウトリガ10は、一対のインナーボックス10b,10cが格納されたアウターボックス10aを、車台2の幅方向に沿って延設させている。インナーボックス10b,10cは、車台2の前後方向にずらして並列に配置されており、インナーボックス10bは車台2の前方側(高所作業車1の前進方向x側)に、インナーボックス10cは車台2の後方側(高所作業車1の後進方向y側)に配置されている。これら両インナーボックス10b,10cには、不図示のスライドシリンダがそれぞれ接続されており、このスライドシリンダの伸長動作によって、インナーボックス10bは車台2の左側(高所作業車1の前進方向xに向かって左側)に張り出し、インナーボックス10cは車台2の右側(高所作業車1の前進方向xに向かって右側)に張り出すこととなる。
【0020】
そして、インナーボックス10b,10cの先端には、鉛直方向に伸縮自在なジャッキ11b,11cがそれぞれ固定されている。ジャッキ11b,11cの下端には、それぞれアウトリガフロート12が設けられており、不図示のジャッキシリンダによってジャッキ11b,11cを伸長させることにより、アウトリガフロート12が接地面に接地し、車両を持ち上げることによって車両を安定支持することができる。
【0021】
車台2上には、作業用の工具等を収納するための工具箱13〜15が、車台2の長手方向に沿って配列されている。工具箱13は、車台2の後端から、図中符号S1で示すスペース分の間隔をもって配置されており、この工具箱13の前方(高所作業車1の前進方向x)に隣接するようにして工具箱14が配置されている。この工具箱14は、工具箱13よりも高さ方向に長く形成されており、工具箱13,14の間に段差が生じるようにしている。また、工具箱15は、工具箱14の上面14a上に固定されているが、このとき、工具箱14の上面14aが露出するように、工具箱15を工具箱14の後端から前方にずらして配置している。
【0022】
したがって、車台2の後端から前方に向かって、スペースS1、工具箱13の上面13a、工具箱14の上面14a、工具箱15の上面15a、工具箱15に隣接するステップ16の順に階段状に高くなっていくこととなる。このように構成されたスペースS1及び上面13a,14a,15aは作業者のための通行路30として使用することができる。作業者が乗り込むバケット7は、格納状態においてキャブ4の上方に位置しているので、このバケット7に作業者が乗り込むためには階段状に設けられた通行路30を歩行することで、車台2上からバケット7までを移動することができる。
【0023】
なお、通常、高所作業車1のような作業用車両において、車台2は、架装される架装物の重量に耐えられるように、前後方向に延びるシャーシフレーム上に、シャーシフレームと同様に前後方向に延びるサブフレームがさらに設けられている。そのため、接地面と車台2との高さが高くなり、車台2に昇降する際にも昇降経路が必要となる。実施例においては、接地面から車台2上までの昇降経路として、アウターボックス10aの上面にステップを設け、さらにアウターボックス10aの下方にステップ19を設けることで昇降経路を形成している。なお、アウターボックス10aの上方には、ブレーキランプ、バックランプ及び方向指示器を一体化したリヤコンビランプ17L,17Rが設けられている。
【0024】
これにより、作業者は接地面から車台2の後端部(スペースS1)まではステップ19とアウターボックス10aの上面とによって構成される昇降経路を移動し、車台2の後端部からバケット7までは通行路30を利用して移動することができる。そして、作業者は通行路30を移動する際には、通行路に沿って配置されている格納状態のブーム5に設けられた把持用手摺40及び安全帯掛止用手摺50を利用することでより安全に移動することができる。以下、ブーム5に設けられた把持用手摺40及び安全帯掛止用手摺50について、さらに詳しく説明する。
【0025】
図2において、(a)に把持用手摺40及び安全帯掛止用手摺50が設けられているブーム5の平面図を、(b)に把持用手摺40及び安全帯掛止用手摺50が設けられているブーム5の側面図をそれぞれ示す。また、図3において、(a)に図2(b)のA−A断面図を、(b)に図2(b)のB−B断面図をそれぞれ示す。なお、図3(b)には安全帯掛止用手摺50に掛止された安全帯のフック部分60も併せて示している。
【0026】
図示例のブーム5は、最外部の第1ブーム5aに対して第2ブーム5b及び第3ブーム5cが入れ子状に構成されており、先端の第3ブームにバケット7(図2において図示省略)が設けられている。第1ブーム5aの上面にはバケット7に対する給電ケーブル等(図示省略)を保護するカバー19が設けられている。図示例ではブーム5に沿って、その左側(高所作業車1の前進方向xに向かって左側)に通行路30が設けられているため、カバー19の左側にブーム5の長手方向に沿って延びる段状の切欠部19aが設けられ、該切欠部19aの空間内に把持用手摺40が固設されている。これにより、作業者は把持用手摺40を掴みながら通行路30を安全に移動することができる。なお、図示例の把持用手摺40は、後部側と前部側とで2つに分割されている例を示しているが、これに限られることなく、連続した一の手摺によって構成しても構わない。
【0027】
さらに、第1ブーム5aの左側面には、作業者の腰等に連結された安全帯のフック部材60を掛止するための安全帯掛止用手摺50がブーム5に沿って平行に設けられている。安全帯掛止用手摺50は、両端部に保護用のキャップ59,59が嵌められた鉄等の中実材(図示例では丸棒)によって形成されており、各端が平板状の取付部材51a,51bに溶接され、該取付部材51a,51bが第1ブーム5aに凸設された固定部53a,53bにボルト等の締結部材55によってそれぞれ固設されている。図2(b)及び図3(a)に示すように、安全帯掛止用手摺50は、取付部材51a,51bの上端付近においてブーム5の反対側(通路側)に斜め上方に向かって折曲し、さらにブーム5の長手方向に折曲して形成されている。これにより、安全帯掛止用手摺50はブーム5から張り出すように設けられるため、作業者が安全帯を掛止し易い構造となっている。
【0028】
このように構成された安全帯掛止用手摺50の長手方向中間部には、安全帯掛止用手摺50の下方乃至側方への過大な変形や脱落を抑制するための受け部材70が設けられている。受け部材70は、両端部に保護用のキャップ79,79が嵌められた鉄等の中実材(図示例では丸棒)からなり、一端側が平板状の取付部材71に溶接されている。そして、該取付部材71は、受け部材70がブーム5の長手方向に対して垂直となるように、第1ブーム5aの固定部53aと固定部53bとの中間に凸設された固定部54にボルト等の締結部材55によって固設されている。
【0029】
図2(b)及び図3(b)に示すように、受け部材70は、取付部材71の上端付近においてブーム5の反対側(通路側)に向かって水平方向に折曲し(第1折曲部70a)、安全帯掛止用手摺50よりも延出した位置で上方に向かってさらに折曲して形成されている(第2折曲部70b)。これにより、受け部材70は安全帯掛止用手摺50の下方から側方(ブームと反対側)にかけてカバーすることになる。
【0030】
なお、受け部材70によって安全帯掛止用手摺50の側方をカバーするためには、受け部材70の上端部75が安全帯掛止用手摺50よりも高い位置である必要があるが、図示例における受け部材70の上端部75の位置は安全帯掛止用手摺50と略同じ高さか僅かに高い程度である。これは、必要以上に受け部材70の上端部75を高くしてしまうと、作業者が受け部材70の横を通過する際に受け部材70に安全帯が引っかかり易くなってしまうためである。
【0031】
上記のように構成された安全帯掛止用手摺50は、両端部の途中にステーが介在しないため、作業者が安全帯を掛止した際にも移動を妨げることがない。そして、安全帯を掛止した作業者が通行路30から落下した場合に作業者の重みによって安全帯掛止用手摺50が下方に曲がることがあっても、安全帯掛止用手摺50が受け部材70に当接することで過大に曲がることを抑制することができる。また、作業者が通行路30から側方(ブームと反対側)に飛び出すように落下する場合に安全帯掛止用手摺50が斜め下方や側方に曲がることがあっても、同様に安全帯掛止用手摺50が受け部材70に当接することで過大に曲がることを抑制することができる。
【0032】
図3(b)において、安全帯掛止用手摺50には安全帯の先端に取り付けられるフック部材60が掛止されている。図示例のフック部材60は、安全帯掛止用手摺50等に掛止するための掛止部61と、外れ止め装置63と、安全装置65とからなり、掛止部61の端部には、作業者の体に巻付けたベルトとフック部材60とを接続するロープ(図示省略)の一端を取り付けるための孔部67が設けられている。上述のように、図示例では受け部材70の上端部75の位置が、安全帯掛止用手摺50と略同じ高さか僅かに高い程度であるため、作業者が安全帯掛止用手摺50に安全帯を掛止して受け部材70の横を通過する際には、ロープを持ち上げる等の動作によってフック部材60の孔部67側を上方に傾けることで、安全帯が受け部材70に引っかかることがなく作業者の通行を妨げることがない。
【0033】
実施の形態2.
図4及び図5に本発明の他の実施の形態として、受け部材170が側面視において逆U字型である例を示す。図4において(a)に把持用手摺40及び安全帯掛止用手摺50が設けられているブーム5の平面図を、(b)に把持用手摺40及び安全帯掛止用手摺50が設けられているブーム5の側面図をそれぞれ示す。また、図5において(a)に図3(b)のA部分拡大図を、(b)に図3(b)のB−B断面図をそれぞれ示す。なお、前記実施の形態1と同一または対応する部分には、図1乃至図3と同一の符号を用いて、主として前記実施の形態1と異なる構成を説明する。
【0034】
第1ブーム5a上面のカバー19における切欠部19aには、把持用手摺40が固設され、さらに、第1ブーム5aの左側面には、作業者の腰等に連結された安全帯のフック部材60を掛止するための安全帯掛止用手摺50がブーム5に沿って平行に設けられている。該安全帯掛止用手摺50は、各端が平板状の取付部材51a,51bに溶接されており、該取付部材51a,51bが第1ブーム5aに凸設された固定部53a,53bにボルト等の締結部材55によってそれぞれ固設されている。図4(a)、(b)に示すように、安全帯掛止用手摺50は、ブーム5の反対側(通路側)に斜め上方に向かって折曲し、さらに長手方向に折曲して形成されている。
【0035】
安全帯掛止用手摺50の長手方向中間部付近には、安全帯掛止用手摺50の下方乃至側方への過大な変形や脱落を抑制するための受け部材170が設けられている。受け部材170は、両端部に保護用のキャップ179,179が嵌められた鉄等の中実材(図示例では丸棒)によって形成されており、各端が平板状の取付部材171a,171bに溶接されている。そして、この取付部材171a,171bが第1ブーム5aの固定部53aと固定部53bとの中間付近に凸設された固定部154a,154bにボルト等の締結部材55によってそれぞれ固設されている。
【0036】
図4(a)、(b)及び図5(a)、(b)に示すように、受け部材170は、取付部材171a,171bの上端付近においてブーム5の反対側(通路側)に向かって水平方向に折曲し(第1折曲部170a)、安全帯掛止用手摺50よりも延出した位置でそれぞれ上方に向かってさらに折曲して形成されている(第2折曲部170c)。そして、安全帯掛止用手摺50と略同じ高さの位置でそれぞれ向き合うように内側に折曲して形成されている(第3折曲部170c)。これにより、受け部材170は安全帯掛止用手摺50の下方から側方(ブーム5と反対側)にかけてカバーすることになる。
【0037】
なお、受け部材170によって安全帯掛止用手摺50の側方をカバーするためには、受け部材170の上端部175が安全帯掛止用手摺50よりも高い位置である必要があるが、図示例における受け部材170の上端部175の位置は安全帯掛止用手摺50と略同じ高さか僅かに高い程度である。これは、必要以上に受け部材170の上端部175を高くしてしまうと、作業者が受け部材170の横を通過する際に受け部材170に安全帯が引っかかり易くなるためである。
【0038】
さらに、この実施の形態2では、第2折曲部170bが曲がりきった直後から第3折曲部170cが始まるため、第3折曲部170cは大きく湾曲して設けられる。これにより、第3折曲部170cは安全帯掛止用手摺50の長手方向において両側から中央に向かって徐々に高さが高くなるように傾斜して設けられることになる。このように、受け部材170が傾斜部として機能する第3折曲部170cを有することにより、作業者が安全帯掛止用手摺50に安全帯を掛止して受け部材170の横を通過する際に、安全帯は第3折曲部170cに当たってそのまま傾斜にしたがって移動することができる。これにより、作業者はロープを持ち上げる等の動作をする必要がなく、通行を妨げることがない。
【0039】
そして、安全帯を掛止した作業者が通行路30から落下した場合に、作業者の重みによって安全帯掛止用手摺50が下方に曲がることがあっても、安全帯掛止用手摺50が受け部材に当接することで過大に曲がることを抑制することができる。また、作業者が通行路30から側方(ブームと反対側)に飛び出すように落下する場合に、安全帯掛止用手摺50が斜め下方や側方に曲がることがあっても、同様に安全帯掛止用手摺50が受け部材170に当接することで過大に曲がることを抑制することができる。
【0040】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、通行路が工具箱13の上面13a、工具箱14の上面14a、工具箱15の上面15aの順に階段状に高くなっていく例を示したが、これに限られず、通行路が平坦であっても構わない。
【0041】
また、作業者が安全目的で把持するための把持用手摺を設けた例を示したが、これに限られず、例えば安全帯掛止用手摺を積極的に把持させることとして把持用手摺を排除しても構わない。この場合、把持用手摺が設けられていたカバーの切欠部の空間に安全帯掛止用手摺を設ける構成とすることもできる。
【0042】
また、安全帯掛止用手摺が把持用手摺より通行路側に設けられた例を示したが、これに限られず、安全帯掛止用手摺と把持用手摺との位置関係が逆であっても構わない。この場合、安全帯掛止用手摺の外側(通行路側)に配置された把持用手摺が、受け部材としての機能を兼用するように構成することもできる。すなわち、把持用手摺の上端部を安全帯掛止用手摺の上端部より高くすることによって、把持用手摺のステーが受け部材として機能することができる。
【0043】
また、安全帯掛止用手摺が鉄等の中実材による丸棒である例を示したが、これに限られず、所定の剛性を満たすのであれば、例えば鉄以外の金属や合成樹脂であっても構わないし、中空材を用いても構わない。例えば、アルミニウムによって安全帯掛止用手摺を形成した場合には軽量化が図れるし、所定の剛性と弾性を備えた合成樹脂によって安全帯掛止用手摺を形成した場合には曲げ変形を起こしても弾性によって形状が回復するため交換の手間を省くことができる。なお、鉄以外の材料を利用する場合には取付部材への溶接が困難であるため、例えば固定部と取付部材とで挟持する等によって固定することになる。
【0044】
また、受け部材が鉄等の中実材による丸棒である例を示したが、これに限られず、例えば受け部材が板状部材であっても構わない。特に、実施の形態2においては、受け部材が側面視において逆U字状である例を示したが、この場合、受け部材を側面視が逆U字の板状部材とすることができる。板状部材を使用した場合には、固定部への取付において取付部材を省くことができ、固定部に締結部材で直接取り付けることができる。
【0045】
また、実施の形態2として示した逆U字状の例だけでなく、例えば側面視が山型(上に凸状の三角形状)である受け部材や側面視が半円状である受け部材であっても、手摺の長手方向において両側から中央に向かって徐々に高さが高くなる傾斜部に相当する部分があれば構わない。
【0046】
また、安全帯掛止用手摺及び受け部材がブームから通行路側に張り出して形成される例を示したが、この場合、例えば安全帯掛止用手摺及び受け部材の下方に作業用の工具等を収納するための工具箱を設置することで、空間を有効に活用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 高所作業車(作業用車両)
2 車台
5 ブーム
30 通行路
50 安全帯掛止用手摺(手摺)
70、170 受け部材
170c 第3折曲部(傾斜部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームと、該ブームの側方に設けられた通行路とを備えた作業用車両であって、
安全帯を取り付けるために前記通行路に沿って設けられている手摺と、
該手摺の少なくとも下方への変形を抑制する受け部材とを有し、
前記手摺と前記受け部材との間には所定の間隙が設けられていることを特徴とする作業用車両。
【請求項2】
前記受け部材は、上端の位置が前記手摺の高さ以上であることを特徴とする請求項1記載の作業用車両。
【請求項3】
前記受け部材は、前記手摺の長手方向において両側から中央に向かって徐々に高さが高くなる傾斜部を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の作業用車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−162327(P2011−162327A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27931(P2010−27931)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】