説明

作業車両のブレーキ操作装置

【課題】 マスタブレーキペダルや左右独立ブレーキペダルの操作性を向上するとともに、メンテナンス性を向上し、さらには後付構成の容易化を図るものである。
【解決手段】 左右サイドブレーキ機構29L,29Rを同時に制動側に連動するマスタブレーキペダル45と、該左右サイドブレーキ機構29L,29Rを独立して制動側に連動する独立ブレーキペダル56L,56Rとを備え、左右のブレーキ作動軸31L,31Rをそれぞれ連動する独立ブレーキペダル56L,56Rのペダル面をマスタブレーキペダル45のペダル面の後方に左右並べて配置するとともに該独立ブレーキペダル56L,56Rの基部回動軸芯をペダル面よりも後方に配置し、下方への踏み込みによって左右サイドブレーキ機構29L,29Rを独立して制動側に連動するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタ等作業車両のブレーキ操作装置に関し、特に左右ブレーキを別々に制動操作する一対の独立ブレーキペダルに加え、左右ブレーキを同時に制動操作して左右車輪を同時に制動するマスタブレーキペダルとを備えるブレーキ連動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にトラクタには旋回半径を小さくするために、左右のブレーキを独立して制動操作する左右一対の独立ブレーキペダルを備えている。しかし一般の道路を走行するときに左右独立ブレーキを踏み込むと急旋回を引き起こして危険であるので、左右ブレーキを同時に制動することができる構成とし、踏みやすい位置に左右同時ブレーキ可能なマスタブレーキペダルを配した構成がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭53−8101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成によると、高速で道路走行を行うときの制動は前側に配置する同時ブレーキペダルの踏み込みによって左右車輪を同時に制動することで急停止を行え、圃場内で作業中に車体を旋回させるときには後方に配置した左右独立ブレーキペダルの一方を踵で踏みこむことによって旋回内側の車輪を制動して小回り旋回を行える。ところで、引用文献1の構成によると、独立ブレーキペダルの基部回動支点がペダル面の下方前側に位置しているからペダル面を踵で踏み込むと後方に大きく孤を描く軌跡上を移動するため、着座姿勢のままで踵をさらに後方に移動させねばならず操作性に難がある。
【0005】
この発明は、前方の同時ブレーキペダル、後方の左右独立ブレーキペダルの配置構成を採用してマスタブレーキペダルや左右独立ブレーキペダルの操作性を向上するとともに、メンテナンス性を向上し、さらには後付構成の容易化を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、走行車体(1)に左右後輪(3L,3R)を独立して制動する左右のサイドブレーキ機構(29L,29R)を備え、これら左右サイドブレーキ機構(29L,29R)を同時に制動側に連動するマスタブレーキペダル(45)と、該左右サイドブレーキ機構(29L,29R)を独立して制動側に連動する独立ブレーキペダル(56L,56R)、(62L,62R)、(67L,67R)とを備える作業車両のブレーキ操作装置において、左右のサイドブレーキ機構(29L,29R)にはそれぞれブレーキ作動軸(31L,31R)を設け、この左右ブレーキ作動軸(31L,31R)それぞれにブレーキアーム(33L,33R)を備え、ブレーキアーム(33L,33R)と前記マスタブレーキペダル(45)を支持するマスタブレーキ軸(40)とを連動ロッド(44L,44R)を介して連結し、前記左右のブレーキ作動軸(31L,31R)をそれぞれ連動する左右の独立ブレーキペダル(56L,56R)、(62L,62R)、(67L,67R)のペダル面を前記マスタブレーキペダル(45)のペダル面の後方に左右並べて配置するとともに該独立ブレーキペダル(56L,56R)、(62L,62R)、(67L,67R)の基部回動軸芯をペダル面よりも後方に配置し、該ペダル面を下方へ踏み込むことによって左右サイドブレーキ機構(29L,29R)を独立して制動側に連動する構成とした作業車両のブレーキ操作装置とする。
【0007】
このように構成すると、前側に配置のマスタブレーキペダル(45)を踏み込めば、左右のサイドブレーキ機構(29L,29R)は同時に制動状態とし、後方の左右独立ブレーキペダル(56L,56R)、(62L,62R)、(67L,67R)を踏み込めば、左右いずれか選択された側のサイドブレーキ機構(29L又は29R)を制動状態とする。また、左右独立ブレーキペダル(56L,56R)、(62L,62R)、(67L,67R)の踏み込み操作によるときは、ペダル面は下方に移動し前後方向の特に後方への移動を少なくし得てペダル面から踵が外れるなどの操作不良を来たさない。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、左右のサイドブレーキ機構(29L,29R)のブレーキ作動軸(31L,31R)に、マスタブレーキペダル(45)側に連動する第1ブレーキアーム(33L,33R)と第2ブレーキアーム(34L,34R)とを設け、該第2ブレーキアーム(34L,34R)と左右独立ブレーキペダル(56L,56R)とを連動構成し、左右独立ブレーキペダル(56L,56R)の基部を中間軸(52)、(52´)に支持するとともに左右独立ブレーキペダル(56L,56R)のペダル面を該中間軸(52)、(52´)の前方に配置する。
【0009】
このように構成すると、左右独立ブレーキペダル(56L,56R)を左右選択して一方を踏み込むと中間軸(52)、(52´)を中心に該当のペダル面は下方に回動する。
請求項3に記載の発明は、請求項2において、中中間軸(52´)に左右隣接して独立ブレーキペダル(56L´,56R)のペダルアーム及びペダル面を左右隣接して設けてなる。
【0010】
このように構成すると、遠方側のブレーキアームから延出する独立ブレーキペダルであってもペダルアーム部の湾曲形成を不要とし、コスト削減できる。
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3において、前記中間軸(52)、(52´)をブラケット部材(51)、(60)に支持し、該ブラケット部材(51)、(60)を走行車体(1)に着脱自在に設ける。
【0011】
このように構成すると、中間軸(52)、(52´)や独立ブレーキペダル(56L,56R)を容易に着脱でき、メンテナンスを中心とした作業を容易化できる。また、中間軸(52)、(52´)の配置設計によって第2ブレーキアーム(34L,34R)と中間軸(52)、(52´)へのリンク長等を適正設定でき、独立ブレーキペダル56の踏み込み操作力やそのストローク設計の自由度を高める。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1において、左右のサイドブレーキ機構(29L,29R)のブレーキ作動軸(31L,31R)に、マスタブレーキペダル(45)側に連動するブレーキアーム(61L,61R)を設けるとともに、該ブレーキ作動軸(31L,31R)に該ブレーキアーム(61L,61R)を制動方向に連動する左右独立ブレーキペダル(62L,62R)、(67L,67R)を設けてなる。
【0013】
このように構成すると、ブレーキ作動軸(31L,31R)に直接的に左右独立ブレーキペダル(62L,62R)、(67L,67R)を設け、左右の独立ブレーキペダル(62L,62R)、(67L,67R)をブレーキアーム(61L,61R)に接続する構成であるから、中間軸のような中継部材を省略できる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によると、左右独立ブレーキペダル(56L,56R)、(62L,62R)、(67L,67R)の踏み込み操作によるときは、ペダル面は下方に移動し前後方向の特に後方への移動を少なくし得てペダル面から踵が外れるなどの操作不良を来たさない。
【0015】
請求項2に記載の発明によると、請求項1に記載の効果に加え、左右独立ブレーキペダル(56L,56R)を左右選択して一方を踏み込むと中間軸(52)、(52´)を中心に該当のペダル面は下方に回動する。中間軸(52)、(52´)の配設設計に基づいて、第2ブレーキアーム(34L,34R)から中間軸(52)、(52´)へのリンク長等を適正設定でき、独立ブレーキペダル56の踏み込み操作力やそのストローク設計の自由度を高める。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1及び請求項2に記載の効果に加え、遠方側のブレーキアームから延出する独立ブレーキペダルであってもペダルアーム部の湾曲形成を不要とし、コスト削減できる。
【0017】
請求項4に記載の発明によると、請求項3に記載の効果に加え、遠方側のブレーキアームから延出する独立ブレーキペダルであってもペダルアーム部の湾曲形成を不要とし、コスト削減できる。
【0018】
請求項5に記載の発明によると、請求項1に記載の効果に加え、左右の独立ブレーキペダル(62L,62R),(67L,67R)をブレーキアーム(61L,61R)に接続する構成であるから、中間軸のような中継部材を省略でき、構成を簡単化できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】農用トラクタの側面図である。
【図2】農用トラクタの平面図である。
【図3】後車軸部拡大断面図である。
【図4】第一実施例を示す側面図(A)、及び平面図(B)である。
【図5】第二実施例を示す側面図(A)、及び平面図(B)である。
【図6】第三実施例を示す側面図(A)、及び平面図(B)である。
【図7】第四実施例を示す側面図(A)、及び平面図(B)である。
【図8】第五実施例を示す側面図(A)、及び平面図(B)である。
【図9】第六実施例を示す側面図(A)、及び平面図(B)である。
【図10】フロア及びその近傍の斜視図である。
【図11】独立ブレーキペダルの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の実施の態様を図面に基づき説明する。
走行車体1は前輪2L,2R(左右一対の構成のうち、Lは左側を示し、Rは右側を示す、以下同じ)及び後輪3L,3Rを備え、その前部のボンネット4内にエンジン5を搭載し、エンジン5の後部のクラッチハウジング6、前部ミッションケース7及び後部ミッションケース8を連結して剛体構成としている。エンジン5下部のフロントアクスルブラケット9に前後方向に沿う軸心周りに左右側が上下揺動するようにフロントアクスルケース10を支架する。このフロントアクスルケース10の左右端部には車体1のシート11部前方のステアリングハンドル12によって操向連動すべく前記前輪2,2を装着している。フロントアクスルケース10内には前車軸13を備え前輪を伝動する構成である。
【0021】
前記後部ミッションケース8の左右に後輪軸14L,14Rを内装するリヤアクスルケース15L,15Rを装着する。各後車軸14L,14Rの端部には後輪3L,3Rを装着する。
【0022】
前記車体1後部に3点リンク機構16によりロータリ耕耘装置17等の作業機を昇降自在に連結している。後部ミッションケース8上には、3点リンク機構16のリフトロッド17,17を連動して作業機を昇降連動する油圧式のリフトアーム18,18を備えている。
【0023】
前記シート11は左右後輪フェンダ19,19間に亘って設けるシートフロア20の上部に配置される。該シートフロア20は補強構造を伴いシート11を載せる水平面部20aと縦面部20bとから構成し、縦面部20bにはステップフロア21を接続している。
【0024】
後部ミッションケース8内には主変速機構および副変速機構を経て変速された動力がドライブ軸25に伝えられ、ドライブ軸25からデフ機構26のリングギヤ26aに伝動された後、該デフ機構26、左右後車軸27,27、減速ギヤ28,28を経て前記後輪軸14に差動出力可能の構成である。
【0025】
前記左右後車軸27L,27Rの各途中部において、前記リヤアクスルケース15L,15Rと一体成型のブレーキケース30L,30R内に、摩擦板形態の左右サイドブレーキ29L,29Rを設ける。左右サイドブレーキ29L,29R夫々には、ブレーキ作動軸31L,31R周りに回動するプレッシャアームによってプレッシャ板32L,32Rが押圧作用し、摩擦板形態のサイドブレーキ29L,29Rをブレーキ制動状態となし、後輪3L,3Rを独立的に制動できる構成である。
【0026】
前記ブレーキケース30L,30Rの外側に延出するブレーキ作動軸31L,31Rには第1のブレーキアーム33L,33Rと第2のブレーキアーム34L,34Rを備える。すなわち、第1のブレーキアーム33L,33Rのボス部35L,35Rに第2のブレーキアーム34L,34Rを夫々同時成形、あるいは固着手段によって一体構成するものである。
【0027】
前記クラッチハウジング6の前後中央部下位に左右貫通状に設けるマスタブレーキ軸40を設ける。このマスタブレーキ軸40の左右突出端の一方に筒状ボス体41を貫通しロールピン42等によって軸40部と一体化する。また左右突出端の他方に連結金具47をマスタブレーキ軸40と溶接により一体化する。筒状ボス体41と連結金具47にアーム43L,43Rを設け、前記第1のブレーキアーム33L,33Rとの間を左右それぞれに連動ロッド44L,44Rを介して連結し、前記筒状ボス体41に単一のマスタブレーキペダル45の基部を固着する。このマスタブレーキペダル45を右足で下方に踏み込み操作すると、マスタブレーキ軸40を回動し、左右の連動ロッド44L,44R、および第1のブレーキアーム33L,33Rを介して左右のサイドブレーキ29L,29Rを共に制動状態とする構成である。マスタブレーキペダル45のペダルアーム部途中とクラッチハウジング6との間には復帰スプリング46を設け、マスタブレーキペダル45を常時非制動の状態に付勢している。
【0028】
マスタブレーキペダル45と車体1側(図例ではクラッチハウジング6側壁)との間に、駐車ロック機構47を設ける。該駐車ロック機構47は、マスタブレーキペダル45のペダルアーム部に設ける櫛歯型被係合部47aとクラッチハウジング6側に設ける係止爪47bとを備える。手元に駐車ブレーキレバー48を上下に往復回動操作自在に設け、バネ48aの付勢で上下2位置の支点越え状態に置く構成である。駐車ブレーキレバー48を下方回動操作し下位置で支点越え状態に置き、マスタブレーキペダル45を踏み込み操作すると、被係合部47aと係止爪47bとが係合してペダル45をロックし左右後輪3L,3Rをともに制動する。駐車ブレーキレバー48を上方回動操作し上位置で支点越え状態に置くと上記の係合が解除されマスタブレーキペダル45のロックも解除状態となる。
【0029】
前記後部ミッションケース8の上部に、前記リフトアーム18,18を上下回動する油圧シリンダ(図示せず)を内装するシリンダケース50を載置するが、このシリンダケース50の左右両側に、ブラケット基板51L,51Rを着脱自在に設ける。この基板51L,51Rに横軸芯に中間軸52を装着し、この中間軸52の左右両端部に筒状ボス53L,53Rをそれぞれ独立的に中間軸52に対して回動自在に装着する。なお、図例の中間軸52は左右に一対の構成52L,52Rの構成であるが、設置場所の制約等がなければ左右に長い一軸形態としてもよい。各筒状ボス53L,53Rにはそれぞれアーム54L,54Rを設け、これらアーム54L,54Rと前記第2のブレーキアーム34L,34Rとを連動ロッド55L,55Rで連結する。上記筒状ボス53L,53Rには、アーム54L,54Rの配置位置と対向する位置に左右独立ブレーキペダル56L,56Rの基部を接続する。左右独立ブレーキペダル56L,56Rはそれぞれ独立的に前記第2ブレーキアーム34L,34Rを作用し、左右のサイドブレーキ29L,29Rを作動し、後輪3L,3Rを独立して制動できる構成である。
【0030】
上記の左右独立ブレーキペダル56関係をシリンダケース50や後部ミッションケース8等の車体側に着脱自在に連結する構成とすると、シートフロア20やステップフロア21が防振支持構造をとっているが故にミッションケース7,8等とは独立して振動してもこの動きで独立ブレーキペダル56に誤作動を生じさせることがなく安定して制動を行うことができる。またブラケット基板51に支持させる構成であるから組立の容易化が図れる。
【0031】
なお、前記左右独立ブレーキペダル56L,56Rはシート11に座ったオペレータの足の踵による下方への押し下げにより前記一連の制動作用をおこなうことができるように構成している。そして、左右の片ブレーキペダル56L,56Rのペダル部が左右に併設するように、図例では左側のブレーキペダル56Lのペダルアーム部を湾曲させて構成し(図4(B))、右足踵のみで、左右の独立ブレーキペダル56L,56Rを選択して踏み込み操作できる構成としている。なお、前記シートフロア20を貫通すべく左右の独立ブレーキペダル56L,56Rのペダルアーム部を延長し、ペダル部をシートフロア20の縦面部近傍に配置している。
【0032】
前記第1のブレーキアーム33とマスタブレーキペダル45への連動ロッド44との間に長孔57を介して両者を連結することにより、左右独立ブレーキペダル56の操作に連動ロッド44やマスタブレーキペダル45が追随連動しない融通機構を構成している。また、同様に第2のブレーキアーム34と左右独立ブレーキペダル56側連動ロッド55とを長孔58を介して両者を連結することにより、マスタブレーキペダル45の操作に連動ロッド55や左右独立ブレーキペダル56が追随連動しない融通機構を構成している。
【0033】
上記のように構成すると、通常作業や道路上等で走行中にブレーキ操作するときは、右足で前方のマスタブレーキペダル45を操作する。これによって、左右の後輪3L,3Rは同時に制動され車体は減速する。完全に停止させる場合には左足でクラッチペダル49を踏み込み操作するとよい。一方、圃場で作業の際圃場端で旋回する場合には、ステアリングハンドル12操作と同時に、右足を後方にずらせ、旋回内側のサイドブレーキ29Lまたは29Rを連動すべく、独立ブレーキペダル56Lまたは56Rを踏み込み操作する。これによって旋回内側のサイドブレーキが制動され旋回半径小さく車体は旋回できる。
【0034】
特に高速で道路走行する場合、サイドブレーキ29Lまたは29Rの片側のみを制動すると車体を旋回させてしまうため危険であるが、右足の前側にマスタブレーキペダル45を配し、後ろ側に独立ブレーキペダル56L,56Rを配する構成であるから、咄嗟のときには感覚的な慣れにも依拠して前側に踏み出してマスタブレーキペダル45を容易に選択して踏み込みできる。一方独立ブレーキペダル56L,56Rを踏み込む場合には、オペレータは旋回を意図して操作に入るものであるから、踵による操作であっても誤操作なく安全に操作できるものである。また、右方一側に独立ブレーキペダル56L、56Rのペダル面を配置する構成であるから、右足の踵でいずれかを選択的に踏み込み操作できる。
【0035】
前記第1ブレーキアーム33L,33Rにはそれぞれに制動用油圧シリンダ59L,59Rの伸出ピストン部が作用して制動できる構成であり、制動用油圧シリンダ59L,59Rには、前記ステアリングハンドル12の左右旋回操作に基づいて、旋回内側の後輪3を制動すべく制御出力する構成である。
【0036】
左右独立ブレーキペダル56の支持構成について、図5に示すように、左独立ブレーキペダル56L´を右側ブラケット基板51Rの内側に接近して設ける構成である。すなわち、左独立ブレーキペダル56L´の基部に一軸形態の中間軸52´に回動自在に装着する筒状ボス53´を追加し、左独立ブレーキペダル56L´の踏み込み操作は中間軸52´を介して左側筒状ボス53Lに伝わり、さらに左側の連動ロッド55Lを介して左側の第2ブレーキアーム34Lを回動し左側サイドブレーキ29Lを制動作用させる。この場合、右側の筒状ボス53Rは中間軸52に遊嵌しており該中間軸52を連動しない構成としている。
【0037】
次いで、図6に示す構成例について説明する。図4,5におけるシリンダケース50に着脱するブラケット基板51L,51Rに代替して、適宜に補強構造を付加したシートフロア20に吊下ブラケット60L,60Rを着脱自在に設け、この吊下ブラケット60L,60Rに前記中間軸52´を設けるものである。このように構成すると、シートフロア20側に独立ブレーキペダル関係を組立てでき、キャビン仕様においても、キャビンユニットにサブ組立できることなり、組立の容易化や部品の共用化に寄与できる。
【0038】
図4〜図6のいずれもブラケット部材としての基板ブラケット51L,51Rまたは吊下ブラケット60L,60Rを着脱することができ、中間軸52または52´や独立ブレーキペダル56L,56Rを容易に着脱でき、メンテナンスを中心とした作業を容易化できる。また、中間軸52または52´を設ける構成であるが、この中間軸52または52´の配置設計によって連動ロッド55長等を適正設定でき、独立ブレーキペダル56の踏み込み操作力やそのストローク設計の自由度を高める。
【0039】
図7〜図9は左右独立ブレーキペダル構成の異なる例を示す。前記の例ではブレーキアームを第1及び第2のブレーキアーム33,34で構成したが、この例では単一のブレーキアーム61としている。すなわち、マスタブレーキペダル45側と連動するブレーキアーム61L,61Rのボス部63L,63Rに、左右の独立ブレーキペダル62L,62Rを一体成形している(図7)。左右独立ブレーキペダル62L,62Rは並列配置のため、左側ペダル62Lのペダルアームを右側ペダル62R側に延出状に形成してなる。また、左右ペダル62L,62Rとも側面視でく型に形成し、ペダル部分がシートフロア20の縦面部を貫通してオペレータの右足踵で踏み込み可能に配置される。右足踵で踏み込み時に制動状態とする構成である。また、上記のボス部63を共通とする構成に替えて、左右の独立ブレーキペダル62L,62Rのボス部64L,64Rを形成して、上記ボス部63L,63Rとこのボス部64L,64Rとを前記ブレーキ作動軸31L,31Rにそれぞれ装着するように構成してもよい(図8)。
【0040】
前記ブレーキアーム61とマスタブレーキペダル45への連動ロッド44との間に長孔65を介して両者を連結することにより、左右独立ブレーキペダル62の操作に連動ロッド44やマスタブレーキペダル45が追随連動せず、かつマスタブレーキペダル45の操作に左右独立ブレーキペダル62が追随連動しない融通機構を構成している。
【0041】
さらに、図9に示す構成は、左右独立ブレーキペダル67L,67Rをブレーキ作動軸31L,31Rに回動自由な遊嵌状態に装着し、該左右ブレーキペダル67L,67Rのペダルアーム部に横側方に向けて作動アーム68L,68Rを設け、この作動アーム68L,68Rはブレーキアーム61L,61Rの背面側(後方側)に対向し、左右ブレーキペダル67L,67Rの踏み込み操作で作動アーム68L,68Rを前方に変位させこの変位動によってブレーキアーム61L,61Rを前方に回動しサイドブレーキ機構29L,29Rをそれぞれ制動側に作動する構成としている。符号69は左右ブレーキペダル67L,67Rを非制動姿勢に付勢するバネである。マスタブレーキペダル45を操作するときにはブレーキアーム61L,61Rが連動して制動側に回動するが、この場合、左右ブレーキペダル67L,67Rはバネ69によって姿勢維持され、マスタブレーキペダル45の制動操作に伴う連動を生じないので不測の挟み込み事故等を生じない。
【0042】
前記図7〜図9のように構成すると、前記図4〜6の実施例と同様に、通常作業や道路上等で走行中にブレーキ操作するときは、右足で前方のマスタブレーキペダル45を操作する。これによって、左右の後輪3L,3Rは同時に制動され車体は減速する。完全に停止させる場合には左足でクラッチペダル49を踏み込み操作するとよい。一方、圃場で作業するときに圃場端で旋回する場合には、ステアリングハンドル12操作と同時に、右足を後方にずらせ、旋回内側のサイドブレーキ機構29Lまたは29Rを連動すべく、独立ブレーキペダル62L(又は67L)、62R(又は67R)を踏み込み操作する。これによって旋回内側のサイドブレーキ機構が制動状態とされ旋回半径小さく車体は旋回できる。
【0043】
さらに、高速で道路走行する場合、サイドブレーキ機構29Lまたは29Rの片側のみを制動すると車体を旋回させてしまうため危険であるが、右足の前側にマスタブレーキペダル45を配し、後ろ側に独立ブレーキペダル62L(67L),62R(67)を配する構成であるから、咄嗟のときには感覚的な慣れにも依拠して前側に踏み出してマスタブレーキペダル45を容易に選択して踏み込みできる。一方独立ブレーキペダル62L(67L),62R(67R)を踏み込む場合には、オペレータは旋回を意図して操作に入るものであるから、踵による操作であっても誤操作なく安全に操作できるものである。なお、左右独立ブレーキペダル62L(67L),62R(67R)を踏み込む場合、ペダルの回動支点となるブレーキ作動軸31L,31Rとペダル面との関係はブレーキ作動軸31L,31Rが下方になるため、ペダル面の右足踵による踏み込みの際ペダル面はむしろ前方に変位し楽に踏み込み操作を行える。
【0044】
特に、図7〜図9における実施例では、前記中間軸52に相当する部品を廃止することができ、構成の簡素化ひいてはコストダウンに寄与する。すなわち、左右の独立ブレーキペダル62L(67L),62R(67R)をブレーキアーム61L,61Rに接続する構成であるから、前記実施例におけるような中間軸52を廃止できる。
【0045】
上記のように右足の踵で左右併設の独立ブレーキペダル56,62を選択して踏み込み、左右所望の側のブレーキ機構29L又は29Rを作動させることができる。
従来、右足前方に配置されるブレーキペダルは左右独立ブレーキペダル形態で、道路での走行や比較的高い速度で移動する場合には左右独立ブレーキペダルを連結する連結金具を連結側にロックして左右同時ブレーキが左右後輪3L,3Rを制動できる構成とするが、連結金具の左右ロックを怠ると片ブレーキ状態となって危険であるが、本実施例の場合には、マスタブレーキ軸40に単一のマスタブレーキペダル45を構成するとともに、左右独立ブレーキペダル56,62は誤操作踏み込みの行い難い右足踵後方に配置されるものであるから、不測に左右独立ブレーキペダル56,62のいずれかを踏み込み操作することがなく不用意な旋回操作を少なくし安全性を向上する。
【0046】
図10において、符号75はデフロックペダルである。後車軸のデフ機構26の差動を規制するためのデフロック機構76を備え、デフロックペダル75の踏み込み操作により、シフト機構77を介してデフロック状態とする構成である。このデフロックペダル75は左足踵部で踏み込み操作すべくステップフロア21の左側におけるクラッチペダル49の後方に配置している。このように構成すると、右足踵での左右独立ブレーキペダル操作と間違うことがない。
【0047】
図11は独立ブレーキペダル56,62,67の改良構成を示すもので、左右に配置される左右一対の独立ブレーキペダル70L,70Rの各ペダル部71L,71Rの対向する端部を夫々上方に湾曲形成して凸部72L,72Rを形成する構成である。このように構成すると、オペレータは右足踵を左右方向に振る動作で凸部72L又は72Rの存在を感知し、左側ペダル部71L又は右側ペダル部71Rに即座に踵を位置させ得て、操作性が向上する。凸部72L又は72Rはいずれか一方にのみ設ける形態でもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 走行車体
3L,3R 後輪
29L,29R サイドブレーキ機構
31L,31R ブレーキ作動軸
33L,33R 第1ブレーキアーム(ブレーキアーム)
34L,34R 第2ブレーキアーム
44L,44R 連動ロッド
45 マスタブレーキペダル
51 ブラケット基板(ブラケット部材)
52 中間軸
52´ 中間軸
56L,56R 独立ブレーキペダル
60 吊下ブラケット(ブラケット部材)
61L,61R ブレーキアーム
62L,62R 独立ブレーキペダル
67L,67R 独立ブレーキペダル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1)に左右後輪(3L,3R)を独立して制動する左右のサイドブレーキ機構(29L,29R)を備え、これら左右サイドブレーキ機構(29L,29R)を同時に制動側に連動するマスタブレーキペダル(45)と、該左右サイドブレーキ機構(29L,29R)を独立して制動側に連動する独立ブレーキペダル(56L,56R)、(62L,62R)、(67L,67R)とを備える作業車両のブレーキ操作装置において、
左右のサイドブレーキ機構(29L,29R)にはそれぞれブレーキ作動軸(31L,31R)を設け、この左右ブレーキ作動軸(31L,31R)それぞれにブレーキアーム(33L,33R)を備え、ブレーキアーム(33L,33R)と前記マスタブレーキペダル(45)を支持するマスタブレーキ軸(40)とを連動ロッド(44L,44R)を介して連結し、
前記左右のブレーキ作動軸(31L,31R)をそれぞれ連動する左右の独立ブレーキペダル(56L,56R)、(62L,62R)、(67L,67R)のペダル面を前記マスタブレーキペダル(45)のペダル面の後方に左右並べて配置するとともに該独立ブレーキペダル(56L,56R)、(62L,62R)、(67L,67R)の基部回動軸芯をペダル面よりも後方に配置し、該ペダル面を下方へ踏み込むことによって左右サイドブレーキ機構(29L,29R)を独立して制動側に連動する構成とした作業車両のブレーキ操作装置。
【請求項2】
左右のサイドブレーキ機構(29L,29R)のブレーキ作動軸(31L,31R)に、マスタブレーキペダル(45)側に連動する第1ブレーキアーム(33L,33R)と第2ブレーキアーム(34L,34R)とを設け、該第2ブレーキアーム(34L,34R)と左右独立ブレーキペダル(56L,56R)とを連動構成し、左右独立ブレーキペダル(56L,56R)の基部を中間軸(52)、(52´)に支持するとともに左右独立ブレーキペダル(56L,56R)のペダル面を該中間軸(52)、(52´)の前方に配置する請求項1に記載の作業車両のブレーキ操作装置。
【請求項3】
中間軸(52´)に左右隣接して独立ブレーキペダル(56L´,56R)のペダルアーム及びペダル面を左右隣接して設けてなる請求項2に記載の作業車両のブレーキ操作装置。
【請求項4】
前記中間軸(52)、(52´)をブラケット部材(51)、(60)に支持し、該ブラケット部材(51)、(60)を走行車体(1)に着脱自在に設ける請求項2または請求項3に記載の作業車両のブレーキ操作装置。
【請求項5】
左右のサイドブレーキ機構(29L,29R)のブレーキ作動軸(31L,31R)に、マスタブレーキペダル(45)側に連動するブレーキアーム(61L,61R)を設けるとともに、該ブレーキ作動軸(31L,31R)に該ブレーキアーム(61L,61R)を制動方向に連動する左右独立ブレーキペダル(62L,62R)、(67L,67R)を設けてなる請求項1に記載の作業車両のブレーキ操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−10463(P2013−10463A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145314(P2011−145314)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】