説明

作業車両のボンネット

【課題】 側壁の下端縁が機体フレーム側と対向するボンネットの開度を調節することができる作業車両のボンネットを提供することを課題としている。
【解決手段】 エンジンの前方と上方及び側方を覆い、下方及び後方が開口し、縦断面形状がゲート状をなすように樹脂により成形され、エンジンの側方側を覆う側壁8における下端縁が、機体フレーム1a側に対向するボンネット3内に、上記側壁8の下縁後方側の開度を調節する調節手段を設け、ボンネット3内における後方の上方位置のフレーム11とボンネット3の側壁8との間に、側壁8の後方側を内側に湾曲させてセットする補強部材26を設け、補強部材26を調節手段とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の作業車両のボンネットに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの前方を覆う前壁と、エンジンの側方を覆う左右の側壁と、エンジンの上方を覆う天板とを備え、天板の側端縁と側壁の上端縁とが一体的に接続され、天板の前端縁と前壁の上端縁とが一体的に接続され、側壁の前端縁と前壁の側端縁とが一体的に接続され、断面視でゲート状をなすように、樹脂により一体成形され、エンジンの前方と上方及び側方を覆い、後方側と下方側が開口したボンネットが公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−171562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記ボンネットは、後方側と下方側とが開口するため、開放状態の側壁の下縁後方部分は、剛性が低く、経年変化により開き、機体フレーム側との隙間が広がり、周囲への騒音が大きくなる等の不都合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明の作業車両のボンネットは、エンジンの前方と上方及び側方を覆い、下方及び後方が開口し、縦断面形状がゲート状をなすように樹脂により成形され、エンジンの側方側を覆う側壁8における下端縁が、機体フレーム1a側に対向するボンネットにおいて、ボンネット3内に、上記側壁8の下縁後方側の開度を調節する調節手段を設けたことを第1の特徴としている。
【0005】
第2に、ボンネット3内における後方の上方位置にフレーム11を設け、該フレーム11とボンネット3の側壁8との間に、側壁8の後方側を内側に湾曲させてセットする補強部材26を設け、該補強部材26が調節手段をなすことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
以上のように構成される本発明の構造によると、調節手段により側壁の下縁後方の開度を調節することによって、ボンネットの側壁の下縁後方側の寸法を設計寸法に維持することができ、ボンネットと機体フレーム側との隙間を維持することができる。このため、ボンネットの側壁の下端縁と機体フレーム側との間にシール部材を設ける場合、ボンネット内部のシール性を向上させ、周囲への騒音を軽減することができる他、外観の品質を向上させることができるという効果がある。
【0007】
ボンネットの後部上方内にフレームを設け、該フレームとボンネットの側壁との間に、側壁の後方側を内側に湾曲させてセットする補強部材を設け、該補強部材を調節手段とすることによって、調節手段と補強部材を兼用することができる他、補強部材によりボンネットの側壁の後方部分の剛性を向上させることができ、側壁の下縁後方部分の経年変化による開きを抑制することもできるという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1,図2は本発明のボンネットを採用したトラクタの側面図及び平面図である。走行機体1は、左右の下方にクローラタイプの走行装置2を備えている。走行機体1の前方にはボンネット3が設けられている。ボンネット3の後方にはキャビン4が搭載されている。キャビン4内には座席6が設けられ、運転席が構成されている。
【0009】
ボンネット3内には図示しないエンジンが収容されている。エンジンは機体フレーム1a側に搭載されている。ボンネット3は、エンジンの前方,上方,側方を覆う。図3〜図5に示されるように、ボンネット3は、エンジンの前方を覆う前壁7と、エンジンの側方を覆う左右の側壁8と、エンジンの上方を覆う天板9とを備えている。前壁7から側壁8にかけて前照灯等を装着するための孔が設けられている。
【0010】
ボンネット3は、天板9の側端縁と側壁8の上端縁とが滑らかに一体的に連接され、天板9の前端縁と前壁7の上端縁とが滑らかに一体的に連接され、側壁8の前端縁と前壁7の側端縁とが滑らかに一体的に連接され、断面視でゲート状をなすように、樹脂により一体成形されている。ボンネット3は後方側と下方側が開口している。
【0011】
ボンネット3内の後方側上部には、フレーム11が一体的に設けられている。該フレーム11の上方位置から後方にステー12が延出している。キャビン4の前方には、縦方向の支柱13が機体フレーム1a側から立設されている。ボンネット3は、ステー12の後端側と支柱13との間に設けられる回動支点14を介して機体フレーム1a側に回動自在に支持されて取り付けられている。
【0012】
これによりボンネット3は開閉自在となっている。支柱13側とフレーム11側との間にはガスダンパ16が設けられている。ボンネット3の前端部分と機体フレーム1a側との間には、ボンネットキャッチャ17が設けられている。ボンネット3はボンネットキャッチャ17によって閉状態(エンジンを覆っている状態)が維持される。ロック解除レバー18の操作によってボンネットキャッチャ17を解除し、ボンネット3を開状態に回動させると、ガスダンパ16によってボンネット3を開状態に維持することができる。
【0013】
ボンネット3の側壁8の後方下方は切り欠かれている。該切欠き部分19は、ボンネット3の閉状態においては、機体フレーム1a側に着脱自在に取り付けられたサイドカバー21によって塞がれる。エンジンの側方はボンネット3(側壁8)とサイドカバー21とによって覆われる。
【0014】
上記ボンネット3の閉状態においては、側壁8の下端縁は、機体フレーム1a側と対向し、機体フレーム1a上のウェザーストリップ22(シール部材)に押接される。ボンネット3の閉状態においては、切欠き部分19の周縁は、機体フレーム1a側となるサイドカバー21の外周面部分と対向し、サイドカバー21の周縁部分に設けられたウェザーストリップ23(シール部材)に押接される。ボンネット3はウェザーストリップ22及びウェザーストリップ23によって閉状態でシールされる。
【0015】
上記フレーム11の下方位置から後方にステー24が延出している。該ステー24から下方に向かってブラケット26が延出している。ブラケット26とステー24とは一体的に溶着固定されている。ブラケット26の下端は、ボンネット3の側壁8の切欠き部分19の直前位置における上下中央より下方側に固定して取り付けられている。
【0016】
ブラケット26の下端には上下方向の長孔27が設けられている。該長孔27にボルト28を通し、ボンネット3の側壁8の内面に設けられた取付部29にボルト28を螺合させ、ボルト28を締めることによって、ブラケット26とボンネット3の側壁8とが固定される。ブラケット26をボルト28に対して長孔27によってスライドさせることによって、ブラケット26の固定位置を変更することができる。
【0017】
ボンネット3は樹脂により一体成形されているため、剛性の低い開口部分、つまり側壁8の後方下端縁部分(切欠き部分19の下端縁部分)が外側に向かって開こうとする。これに対して、側壁8の後方下方側をフレーム11に対して上方に向かって引き上げるように、ボンネット3側にブラケット26によって力をかけることによって、ブラケット26の固定位置に応じて側壁8の後下方側をボンネット3の内側に向かうように弾力的に湾曲させることができる。上記ボンネット3の側壁8の内側への湾曲調節によって、ボンネット3の側壁8の後方下端縁部分(切欠き部分19の下端縁部分)の開度が変更調節される。
【0018】
上記ブラケット26により、ボンネット3の側壁8の後下方部分の剛性が向上し、経年変化等による上記ボンネット3の下端縁側の外側への開きを抑制することができる他、上記ボンネット3の下端縁側の外側への開きが発生した場合、ブラケット26の固定位置を調節することによって、ボンネット3の側壁8の下端をボンネット3の内側に向かうように湾曲させ、ボンネット3の側壁8の後方下端縁部分(切欠き部分19の下端縁部分)の寸法を設計寸法に調節することが可能となる。
【0019】
これによりボンネット3と機体フレーム1aやサイドカバー21側との隙間を維持管理することができるため、ボンネット3の内部のシール性が向上し、周囲への騒音を軽減することができる他、外観の品質を向上させることができる。
【0020】
一方ブラケット26は、ボンネット3の側壁8の後下方部分の剛性を向上させる補強部材であり、且つ上記側壁8の下縁後方の開度を調節する調節手段を構成している。このためブラケット26が上記補強部材と調節手段とを兼用し、部品点数の増加やコストアップを抑制することができる。
【0021】
キャビン4内の運転席には、図6に示されるように、座席6の前方にステアリングハンドル31が、座席6の側方に操作パネル32が設けられている。操作パネル32内には、主変速レバー33が、レバーガイド34のガイド孔36に沿って揺動操作自在に設けられている。主変速レバー33の揺動操作によって走行機体1を揺動角度に応じて無段階に変速して走行させることができる。
【0022】
上記レバーガイド34に、図7,図8に示されるような位置決め機構37を設けることもできる。該位置決め機構37は、ガイド孔36の側方に設けられた前後方向の案内溝38を備えている。該案内溝38には、ノブ付きボルトからなるグリップ部39のボルト41が挿入されている。ボルト41にはワッシャ42が取り付けられている。
【0023】
上記ボルト41は、レバーガイド34の裏側において、プレート43に一体的に設けられたナット44に螺合している。ボルト41はナット44より突出し、ロックナット46により抜け止めされる。上記プレート43には上方に突出する爪47が前後にそれぞれ設けられている。両爪47は案内溝38に係合する。上記プレート43には平面視で逆L字状をなすストッパ48が一体的に固定されている。
【0024】
ストッパ48はガイド孔36側に向かって湾曲している。グリップ部39を緩めるとプレート43の爪47が案内溝38をスライドすることによって、ストッパ48が案内溝38に沿ってスライド移動する。グリップ部39を締めることによってストッパ48の位置が固定される。ガイド孔36の前進変速部の全域にストッパ48を位置させることができるように案内溝38が設けられている。
【0025】
ストッパ48は揺動される主変速レバー33と当接し、主変速レバー33のストッパ48より前方への揺動を規制する。主変速レバー33をストッパ48に当接させて所定の前進ポジションに位置させ、走行機体1を所定の速度で走行させている状態から、主変速レバー33をいったん低速側に移動させた後は、主変速レバー33をストッパ48に当接させることによって、主変速レバー33を低速側に移動させる前の主変速レバー33のポジション、すなわち走行速度を再現することが可能となる。
【0026】
これにより走行機体1を旋回させる等によって主変速レバー33の位置を変更した場合でも、次工程での走行機体1の走行速度を再現することができ、例えば種まき作業でのムラの防止や、均一耕耘、均一整地等を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】トラクタの側面図である。
【図2】トラクタの平面図である。
【図3】ボンネット部分の側面図である。
【図4】ボンネット部分の平面透視図である。
【図5】ボンネットの正面断面図である。
【図6】運転席の要部平面図である。
【図7】レバーガイド部分の要部平面図である。
【図8】レバーガイド部分の要部側断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1a 機体フレーム
3 ボンネット
8 側壁
11 フレーム
22 ウェザーストリップ(シール部材)
23 ウェザーストリップ(シール部材)
26 ブラケット(補強部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの前方と上方及び側方を覆い、下方及び後方が開口し、縦断面形状がゲート状をなすように樹脂により成形され、エンジンの側方側を覆う側壁(8)における下端縁が、機体フレーム(1a)側に対向するボンネットにおいて、ボンネット(3)内に、上記側壁(8)の下縁後方側の開度を調節する調節手段を設けた作業車両のボンネット。
【請求項2】
ボンネット(3)内における後方の上方位置にフレーム(11)を設け、該フレーム(11)とボンネット(3)の側壁(8)との間に、側壁(8)の後方側を内側に湾曲させてセットする補強部材(26)を設け、該補強部材(26)が調節手段をなす請求項1の作業車両のボンネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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