説明

作業車両の冷却装置

【課題】 作業車両において他に転用可能なスペースを確保し、車両の振動等の影響を防止し、しかも確実に安定して支持することのできる作業車両の冷却装置を提供する。
【解決手段】 冷却装置1を、ラジエータ2、アフタークーラ3及びオイルクーラ4からなる冷却機器と、同冷却機器を収納する枠体20とから構成する。また、枠体20に対して剛性を持たせるとともに、冷却機器を収納させることにより壁構造として冷却装置1を構成する。外装フレーム10を構成する部材の一部として、壁構造として構成した冷却装置1を機能させる。これにより、従来、スタンドアローンとして構成するために必要であった冷却装置の支持部材を排することができ、同支持部材を配設するに要していたスペースを確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両における冷却装置に関する。
尚、本願明細書の記載において前後方向とは、外気が供給される冷却装置の前面側を前方向とし、冷却装置を通過した空気が流れ出る方向を後方向としている。また、冷却装置を中心にして見たとき、冷却装置の前面に対峙して左右方向を横方向あるいは側方向とし、冷却装置の底部側を下方向、上部側を上方向としている。
【背景技術】
【0002】
従来から建設機械、土木機械、農業機械、運搬車両、走向車両等の作業車両においては、エンジンを冷却する冷却水の放熱を行うラジエータや、アクチュエータを作動する作動油の放熱を行うオイルクーラ等の冷却機器を備えた冷却装置が配設されている。
【0003】
冷却装置は、ラジエータ、オイルクーラ、アフタークーラ等の冷却機器と、前記冷却機器を支持する支持部材とから構成されている。冷却装置は、スタンドアローン状態で車体フレーム等に取り付けられている。
【0004】
従来の作業車両では、図6に示すような冷却装置と車体フレームとの間での配置構成が用いられている。図6に示すように、冷却装置50は、ラジエータ51、オイルクーラ52、アフタークーラ53及びこれらを包囲する枠体54等から構成されている。ラジエータ51、オイルクーラ52、アフタークーラ53の前面側には、防塵ネット71が枠体54に対して着脱自在に取り付けられている。
【0005】
枠体54は、一対の縦フレーム55、一対の縦フレーム55の上端部及び下端部にそれぞれ連結された上フレーム56及び下フレーム57とから構成されている。枠体54の中には、ラジエータ51、オイルクーラ52、アフタークーラ53が枠体54に対して着脱自在に固定された状態で収納されている。
【0006】
枠体54は、図示せぬボルト等を介して車体フレーム61上に立設固定されている。また、冷却装置50の前後方向の揺れを防止するため、枠体54は、支持部材58、59によって支持固定されている。枠体54を支持する支持部材58は、一方の縦フレーム55に取り付けた支持片58aと車体フレーム61に支持固定した支持片58cとが連結部材58bを介して連結固定されたリジッド構造となっている。また、支持部材59は、他方の縦フレーム55に取り付けた支持片59aと、車体フレーム61に支持固定した支持片59cとが連結部材59bを介して連結固定されたリジッド構造となっている。
【0007】
また、車体フレーム61上には、支柱63、後壁64、側壁65、支柱70等を立設固定して外装フレーム60を構成している。外装フレーム60は、冷却装置50とは独立して構成されている。後壁64と側壁65との間を連結固定する梁66が設けられ、同梁66は後壁64及び側壁65の上端部に固定されている。尚、外装フレームは、図示しない外装カバーを取り付けるためのフレーム(骨組み)として構成されているものである。
【0008】
支柱63の上端部と梁66とは、横桁68によって連結固定されている。また、横桁68は、後壁64の上端部を支持している。支柱63と支柱70との間は、中間梁67が掛け渡されている。また、支柱70と梁66との間には、作業者が乗ることのできる踏み板69が掛け渡されて取り付けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術として記載した冷却装置50は、外装フレーム60とは独立してスタンドアローン状態にて車体フレーム61上に立設している。このため、支持部材58、59を用いて枠体54を支持しておかなければならない。従って、支持部材58、59を配設するためのスペースを必要とした。また、支持部材58、59を配設するためのスペースを確保しなければならないため、各機器を配設するためのレイアウト設計において支持部材58、59の存在が大きな制約となっていた。
【0010】
本発明では、上述したような問題点を解決し、作業車両において他に転用可能なスペースを確保して、しかも冷却装置を確実に安定して支持することのできる作業車両の冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の課題は請求項1、請求項2に記載された各発明により達成することができる。
即ち、本発明では請求項1に記載したように、作業車両の冷却装置において、前記冷却装置が、少なくともラジエータを含む冷却機器と、前記冷却機器を収納する枠体とを備え、前記枠体内に収納した前記冷却機器によって、前記冷却装置が壁構造として構成され、前記枠体を構成する少なくとも一方の側板が、外装フレームの一部として構成されてなることを最も主要な特徴となしている。
【0012】
また、本発明では請求項2に記載したように、外装フレームとなる冷却機器を収納する枠体の側板と外装フレームとの連結構成を特定したことを主要な特徴となしている。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、冷却装置を枠体で囲まれた強固な構造として、外装フレームを構成する一部材として兼用している。このため、従来例で用いているような、冷却装置を支持するための専用の支持部材を用いなくてすむ。しかも、従来例のように外装フレームを構成する一つの支柱の代わりに、壁構造とした冷却装置の側壁を用いることができる。
【0014】
このため、専用の支持部材を配設するためのスペースや、冷却装置で代用して不要となった一つの支柱を配設するためのスペースが不要となる。従って、これらのスペースを、他の機器を配設するためのスペースとして転用することができる。また、これらのスペースが増えることによって、各機器を配設するためのレイアウト設計において設計の自由度を増やすことができる。特に、有効スペースの確保が難しい小型の作業車両において、新たな有効スペースを確保できることは、小型の作業車両を設計する上において極めて重要な意味を有している。
【0015】
また、冷却機器を構成する側板が外装フレームの一部として構成されているので、冷却装置を確実にしかも安定して支持することができる。しかも、外装フレームとしての強度を有する側板で冷却装置が構成されているので、車両の振動等の影響を防止するのに十分な強度を冷却装置に持たせることができる。
【0016】
特に、冷却装置を壁構造として構成しているので、冷却装置に作用する曲げ応力、捩じり応力及び座屈応力等に対しての充分な剛性を備えることができる。このように、壁構造となって強度を増した冷却装置を、外装フレームの構成部材として用いることができるので、外装フレームとしての強度を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本発明に係わる作業車両の冷却装置としては、以下で説明する形状、配置構成以外にも本発明の課題を解決することができる形状、配置構成であれば、それらの形状、配置構成を本発明に係わる冷却装置として採用することができるものである。このため、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【実施例】
【0018】
以下、本発明に係わる実施形態による作業車両として、油圧ショベルを例に挙げ図5に従って説明する。作業車両47は、下部走向体46の上部に図示せぬスイングサークルを介して旋回可能な上部旋回体41が搭載されている。上部旋回体41は、図示せぬ旋回モータにより旋回可能に配設されている。上部旋回体41は、図示せぬ旋回フレーム、カウンタウエイト43、エンジンルーム9、運転室40、作業機44によって大略構成されている。
【0019】
外装カバー45は、例えば、エンジンルーム9の上部を覆うように構成されている。外装カバー45としては、後述する外装フレーム10(例えば、図1参照。)にボルト等を介して直接取り付けられる構成となっているものがある。また、外装カバー45の一部として構成されている、エンジンルーム9内を開放する点検窓のように、蝶番、リンクなどを介して間接的に外装フレーム10に取り付けられる構成となっているものもある。
【0020】
図1には、外装フレーム10を冷却装置1側から見た斜視図を示している。また、図2には、エンジンルーム9側から外装フレーム10を見た斜視図を示している。図1、図2に示すように冷却装置1は、ラジエータ2、アフタークーラ3及びオイルクーラ4の冷却機器と、同冷却機器を収納する枠体20とを有している。
【0021】
枠体20は、図示せぬボルト等を介して車体フレーム8上に立設固定されている。車体フレーム8には、支柱13、後壁14、側壁15等が立設固定され、冷却装置1とともに外装フレーム10の側面部を構成している。後壁14と側壁15との間を連結固定する梁11cが設けられ、同梁11cは後壁14及び側壁15の上端部に固定されている。支柱13の上端部と梁11cとは、横桁16によって連結固定されている。また、横桁16は、後壁14の上端部を支持している。
【0022】
支柱13と冷却装置1の枠体20における縦フレーム21aとの間は、梁11a及び梁11bが掛け渡されている。各梁11a、11bは断面略L字状に形成され、それぞれの各両端部は、支柱13に取り付けた支持片31a、31bと縦フレーム21aに取り付けた支持片24a、24b(支持片24bについては、図3参照。)との間でボルトにより固定されている。また、梁11aと梁11cとの間には、作業者が乗ることのできる踏み板17が掛け渡されて取り付けられている。
【0023】
これにより、外装フレーム10は、冷却装置1、側壁15及び後壁14によって3方を壁とし、底面部も車体フレームにより面構成とした直方体形状に構成することができる。これによって、外装フレーム10の強度を向上させることができる。
【0024】
尚、図1では作業車両の外装カバーは、省略して示していないが、適宜の取り付け手段によって外装フレーム10に取り付けることができる。又、外装カバーとしては、開閉可能な扉として構成しておくこともできる。
【0025】
冷却装置1のエンジンルーム9側には、冷却風の流通経路を構成するシュラウド6が取り付けられている。シュラウド6内には図示せぬ冷却用ファンが配設され、外部から取り入れた空気をラジエータ2、アフタークーラ3及びオイルクーラ4を通過させて、エンジンルーム9内に取り入れることができる。尚、冷却ファンを駆動するモータ及びエンジンの図示は、省略している。
【0026】
次に図3、図4を用いて、冷却装置の構成を説明する。ラジエータ2、アフタークーラ3及びオイルクーラ4等の冷却機器を収納する枠体20は、略筐体形状に構成されている。一対の縦フレーム21a、21b間は、溶接等の固定手段によって上フレーム22と下フレーム23とが一体的に固定されている。
【0027】
尚、上フレーム22及び下フレーム23と一対の縦フレーム21a、21bとの間における固定方法は、溶接等の固定手段に限定されるものではない。枠体20として曲げ応力、捩じり応力、座屈応力等に対する剛性を持たせることができる固定方法を採用することができる。
【0028】
縦フレーム21aには、梁11a、11bの一端部を固定支持する支持片24a、24bが取り付けられている。また、縦フレーム21bには、図1に示すように冷却装置1を側壁15に固定支持する支持片24c(図3参照。)、支持片24dが取り付けられている。また、一対の縦フレーム21a、21bは断面コ字状に形成され、枠体20に収納する冷却機器の案内ガイド、枠体20に収納した冷却機器の抜け止め構成となっている。
【0029】
一対の縦フレーム21a、21bを断面コ字状に形成することによって、一対の縦フレーム21a、21bの強度を向上させることができる。更に、冷却装置1に取り付けるシュラウドの取り付け用のフランジ部としての機能を持たせていることもできる。
【0030】
上フレーム22は、冷却機器の上端部の固定を行うとともに、図4に示すように防塵ネット5a、5bの上端部の取り付け部となっている。下フレーム23は、冷却機器の倒れを防止するフランジ部が上フレーム22と同じ側に形成されているとともに、冷却機器の位置決め用として配設されたゴム等の嵌合孔部材32が配設されている。また、アフタークーラ3を位置決め支持する支持片30が取り付けられている。
【0031】
これによって、ラジエータ2、オイルクーラ4及びアフタークーラ3は、それぞれ枠体20に対して上方への引き抜きが可能に枠体20内に収納されることになる。
【0032】
図4に示すように、枠体20の前面側には防塵ネット5a、5bを着脱自在に取り付けることができる。防塵ネット5a、5bを取り付けた構成は、図1に示している。オイルクーラ4は前後2枚から構成され、保持板27及び連結片28によって一体的に固定されている。
【0033】
保持板27、連結片28は、上フレーム22に取り付けることができる。また、オイルクーラ4の下端部には、位置決め用の位置決めピン26と冷却するオイルの連通路4aが形成されている。連結路4aは、支持部材25によって保護され、連通路4aが直接下フレーム23に当接するのを防止している。
【0034】
図3に示すように、ラジエータ2の下端部に形成した図示せぬ位置決めピンと下フレーム23に形成した嵌合孔部材32とを嵌合させることにより、ラジエータ2の枠体20に対する位置決めを行うことができる。
【0035】
枠体20に対して位置決めされたラジエータ2、アフタークーラ3及びオイルクーラ4からなる冷却機器は、図1、図2に示すようにサイドバイサイド形式の配置構成を示している。しかし、冷却機器の配置構成としては、図1、図2に示すようなサイドバイサイドの配置構成に限定されるものではない。例えば、枠体20内にラジエータを装填し、装填したラジエータの前面にオイルクーラ、アフタークーラを配設した構成とすることも、ラジエータだけを用いた構成、ラジエータとオイルクーラとを用いた構成等適宜の構成を採用することができる。
【0036】
このため、枠体の構成としては、図示例の構成に限定されるものではなく、少なくともラジエータを収納することができる構成であれば、他の構成を採用することができる。また、保持板27、連結片28や支持部材25等は、オイルクーラの構成等によっては、必要の無い部材となるものである。
【0037】
外装フレーム10を構成する部材として、梁11a〜11c、支柱13、後壁14、側壁15、横桁16等を用いた構成に基づいて説明を行ったが、外装フレームとしては図示例の構成に限定されるものではなく、冷却装置1を外装フレームの一部の構成としている構成であれば、外装フレームとして他の構成を採用することができる。
【0038】
本願発明では、冷却装置1を外装フレーム10の一部構成部材として構成したことにより、図6のように冷却装置50の前後方向の揺れを防止するために必要となる支持部材58,59が不要となる。これによって、図1においては、防塵ネット5a、5bの前方におけるスペースを有効利用することができるようになった。また、縦フレーム21aの後方部において梁11aや梁11bを支持していた支柱が不要となったため、不要となった支柱があったスペースも有効利用することができるようになった。しかも、冷却装置の壁構造によって、外装フレーム10の強度を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本願発明の技術思想を適用することができる装置及びブルドーザ等の車両に対しては、本願発明の技術思想を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】外装カバー内における要部の配置構成を示す概略斜視図である。(実施例)
【図2】図1とは異なる方向から見た外装カバー内の概略斜視図である。(実施例)
【図3】枠体の斜視図である。(実施例)
【図4】冷却装置を組立てる前における概略斜視図である。(実施例)
【図5】作業車両の斜視図である。(実施例)
【図6】外装カバー内における冷却装置の斜視図である。(従来例)
【符号の説明】
【0041】
1…冷却装置、 2…ラジエータ、 3…アフタークーラ、 4…オイルクーラ、 8…車体フレーム、 10…外装フレーム、11a,11b,11c…梁、 14…後壁、 15…側壁、 20…枠体、 21a,21b…縦フレーム、 22…上フレーム、 23…下フレーム、 41…上部旋回体、 46…下部走向体、 47…作業車両、 50…冷却装置、 54…枠体、 55…縦フレーム、 58…支持部材、 59…支持部材、 60…外装フレーム、 61…車体フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両の冷却装置において、
前記冷却装置が、少なくともラジエータを含む冷却機器と、前記冷却機器を収納する枠体とを備え、
前記枠体内に収納した前記冷却機器によって、前記冷却装置が壁構造として構成され、
前記枠体を構成する少なくとも一方の側板が、外装フレームの一部として構成されてなることを特徴とする作業車両の冷却装置。
【請求項2】
前記外装フレームとなる側板と、前記冷却装置の後方側において前記冷却装置から離間している外装フレームとを連結してなることを特徴とする請求項1記載の作業車両の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−335329(P2006−335329A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165993(P2005−165993)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】