説明

作業車両

【課題】作業車両において、先の減速動作終了時点から次の復帰増速動作開始時点までの間は、常に一定の時間間隔を空けて待機する設定であるため、作業状況やオペレータの好み等に合わせた自動車速制御を実行し難いという問題を解消する。
【解決手段】燃料噴射ポンプ199のラック位置から燃料供給量を検出するラック位置センサ200と、自動車速制御を実行するコントローラ190と、自動車速制御において先の減速動作終了時点から次の復帰増速動作開始時点までの待機時間Twを手動設定するための待機時間設定器98とを備える。コントローラ190は、先の減速動作が終了してから、待機時間設定器98にて予め設定された設定待機時間Twを経たのち、次の復帰増速動作を行うように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、コンバイン等の農作業機のような作業車両に係り、より詳しくは、当該作業車両の車速制御を実行するための構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、作業車両としてのコンバインにおいては、走行機体に搭載されたエンジンからの動力を油圧式駆動手段にて適宜変速し、この変速出力を刈取部や脱穀部等の作業部と走行部とに別々に伝達するように構成されている。そして、コンバインの作業状態や作物条件等によってエンジンの負荷が変動しても、エンジンの回転数を略一定に保つ定回転制御(アイソクロナス制御)を実行することは知られている(例えば特許文献1参照)。かかる定回転制御はエンジンの負荷が所定値を超えない範囲で行われるものである。
【0003】
また、特許文献1には、エンジンの過負荷時にエンジンストップするのを回避するために、エンジンの負荷が所定値以上(過負荷)になると走行機体の車速を所定比率又は所定量だけ減速し、エンジンの過負荷が解消すると走行機体の車速を減速前の元の車速にまで復帰増速するという自動車速制御を実行することも開示されている。
【特許文献1】特開平10−339181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記自動車速制御においては、先の減速動作終了時点から次の復帰増速動作開始時点までの間は、常に一定の時間間隔(タイムラグ)を空けて待機するように設定するのが一般的である。
【0005】
このため、前記一定の時間間隔が短過ぎると、先の減速動作から次の復帰増速動作への切り替わりが急になり、走行機体がいわゆるハンチングに近い状態で進行することになるから、オペレータにとって乗り心地が悪い。逆に、前記一定の時間間隔が長過ぎると、先の減速動作から次の復帰増速動作への切り替わりが遅くなるから、刈取脱穀作業のスムーズな履行を妨げるおそれがある。
【0006】
要するに、先の減速動作終了時点から次の復帰増速動作開始時点までの時間間隔が常に一定である場合は、作業状況やオペレータの好み等に合わせた自動車速制御を実行し難いのであった。
【0007】
そこで、本願発明は上述の問題を解消した作業車両を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この技術的課題を解決するため、請求項1の発明に係る作業車両は、走行機体に搭載されたエンジンからの動力を、油圧式駆動手段を介して作業部と走行部とに伝達するように構成されており、前記エンジンへの燃料供給手段に関連させて前記エンジンの負荷を検出する負荷検出手段と、前記エンジンの過負荷時に前記走行機体の車速を減速し、前記過負荷が解消すると前記走行機体の車速を減速前の元の車速にまで復帰増速するという自動車速制御を実行する車速制御手段と、前記自動車速制御において先の減速動作終了時点から次の復帰増速動作開始時点までの待機時間を手動設定するための待機時間設定手段とを備えており、前記車速制御手段は、先の減速動作が終了してから、前記待機時間設定手段にて予め設定された設定待機時間を経たのち、次の復帰増速動作を行うように制御するというものである。
【0009】
請求項2の発明に係る作業車両は、走行機体に搭載されたエンジンからの動力を、油圧式駆動手段を介して作業部と走行部とに伝達するように構成されており、前記エンジンへの燃料供給手段に関連させて前記エンジンの負荷を検出する負荷検出手段と、前記エンジンの過負荷時に当該過負荷が解消するまで前記走行機体の車速を繰り返し減速し、前記過負荷が解消すると前記走行機体の車速を減速前の元の車速にまで復帰増速するという自動車速制御を実行する車速制御手段と、前記自動車速制御において先の減速動作終了時点から次の減速動作又は復帰増速動作開始時点までの待機時間を手動設定するための待機時間設定手段とを備えており、前記車速制御手段は、先の減速動作が終了してから、前記待機時間設定手段にて予め設定された設定待機時間を経たのち、次の減速動作又は復帰増速動作を行うように制御するというものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載した作業車両において、前記エンジンが過負荷のときに相当するしきい値としての設定エンジン負荷率を手動設定するための負荷率設定手段を更に備えており、前記車速制御手段は、前記負荷検出手段の検出情報から得られるエンジン負荷率が前記設定負荷率以上になると、前記エンジンが過負荷であると判断して前記走行機体の車速を減速する一方、前記エンジン負荷率が前記設定エンジン負荷率の値に応じて定まる復帰負荷率以下になると、前記エンジンの過負荷が解消したと判断して前記走行機体の車速を減速前の元の車速にまで復帰増速するように制御するというものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1や請求項2の発明によると、自動車速制御において先の減速動作終了時点から次の復帰増速動作(若しくは減速動作)開始時点までの待機時間を手動設定するための待機時間設定手段を備えており、車速制御手段は、先の減速動作が終了してから、前記待機時間設定手段にて予め設定された設定待機時間を経たのち、次の復帰増速動作(若しくは減速動作)を行うように制御するから、前記待機時間設定手段を設定操作することによって、前記自動車速制御における先の減速動作終了時点から次の復帰増速動作(若しくは減速動作)開始時点までの設定待機時間を簡単に変更・調節できる。
【0012】
このため、刈取脱穀作業をできるだけ手早く(スムーズに)行いたいときは前記設定待機時間を短くできるし、前記走行機体がハンチングに近い状態で進行するのを抑制して乗り心地及び操縦安全性の向上を図りたいときは前記設定待機時間を長くできる。つまり、作業状況やオペレータの好み等に合わせた状態で自動車速制御を実行できるという効果を奏する。
【0013】
また、請求項3の発明によると、前記エンジンが過負荷のときに相当するしきい値としての設定負荷率を手動設定するための負荷率設定手段を更に備えており、前記車速制御手段は、前記負荷検出手段の検出情報から得られるエンジン負荷率が前記設定負荷率以上になると、前記エンジンが過負荷であると判断して前記走行機体の車速を減速する一方、前記エンジン負荷率が前記設定負荷率の値に応じて定まる復帰負荷率以下になると、前記エンジンの過負荷が解消したと判断して前記走行機体の車速を減速前の元の車速にまで復帰増速するように制御するから、前記負荷率設定手段を設定操作することによって、前記エンジンが過負荷状態か否か、すなわち前記走行機体の車速を強制減速するか否かを判別するための基準値を調節できる。
【0014】
このため、自動車速制御を実行する際に、作業状況やオペレータの好み等に合わせた適切な設定を簡単に採用でき、この点でも、自動車速制御の適正化を図れるという効果を奏する。
【0015】
なお、前記設定負荷率が決まるとこの値に対応した復帰負荷率が自動的に定まるという構成を採用することにより、前記復帰負荷率についての手動設定の手間を省いている。この点ではオペレータの操作負担の抑制に寄与している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を、作業車両としての普通型コンバインに適用した場合の図面(図1〜図14)に基づいて説明する。図1はコンバインの側面図、図2はコンバインの走行駆動系統を示すスケルトン図、図3は操縦部の平面図、図4はサイドコラムの斜視図、図5は主変速レバー及び操向ハンドルと油圧式駆動手段との連結関係を模式的に示す説明図、図6はデテント手段と連係機構と電動モータとの関係を示す正面図、図7は図6のVII−VII視側断面図、図8のうち(a)は直進用デテント杆を前進増速方向に回動させた状態を示す図、(b)は電動モータの駆動にてセクタギヤ及び中継アームを最大強制減速位置に回動させた状態を示す図、(c)は電動モータの駆動にてセクタギヤ及び中継アームを初期位置に復帰回動させた状態を示す図、図9はコントローラの機能ブロック図、図10は走行機体の車速と減速量との関係を示す制御マップの図、図11は自動車速制御の一例を示すフローチャート、図12は自動車速制御の一例を示すタイムチャート、、図13は自動車速制御の別例を示すフローチャート、図14は自動車速制御の別例を示すタイムチャートである。
【0017】
(1).コンバインの概略構造
まず、図1を参照しながら、コンバインの概略構造について説明する。
【0018】
実施形態における普通型コンバインは、走行部としての左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、稲、麦、大豆等の植立穀稈を刈り取りながら取り込む刈取部3が単動式の油圧シリンダ4にて昇降調節可能に装着されている。
【0019】
走行機体1の前部一側(実施形態では前部右側)には、キャビンタイプの操縦部5が搭載されている。操縦部5の後方には、動力源としてのディーゼル式エンジン6(図2参照)と、脱穀後の穀粒を貯留するための穀粒タンク7が配置されている。
【0020】
走行機体1の他側(実施形態では左側)には、刈取部3から送られてきた刈取穀稈を脱穀処理するための脱穀部8が搭載されている。脱穀部8の下方には、揺動選別及び風選別を行うための選別部9が配置されている。
【0021】
走行部としての左右の走行クローラ2は、走行機体1の下方にある前後長手のトラックフレーム10の前後端にそれぞれ配置された駆動輪11及び従動輪12と、トラックフレーム10の長手中途部に複数個配置された転動輪13と、これら車輪11〜13の外周に巻き掛けられた履帯14とを備えている。左右の駆動輪11が後述するミッションケース30から左右外向きに突出した駆動出力軸60(図2参照)からの動力にて回転駆動することにより、左右の履帯14が各車輪11〜13の周りを回行駆動するように構成されている。
【0022】
刈取部3は、脱穀部8の前部開口に連通した角筒状のフィーダハウス15と、フィーダハウス15の前端に連設された横長バケット状のプラットホーム16とを備えている。フィーダハウス15の下面部と走行機体1の前端部とが単動式の油圧シリンダ4を介して連結されている。
【0023】
プラットホーム16内には横送りオーガ17が回転可能に軸支されている。横送りオーガ17の前部上方にはタインバー付きの掻き込みリール18が配置されている。プラットホーム16の下面側には横長バリカン状の刈刃19が配置されている。プラットホーム16の前部には左右一対の分草体20が突設されている。
【0024】
掻き込みリール18にて後方に引き倒された植立穀稈は、刈刃19にて刈り取られたのち、横送りオーガ17の回転駆動にてプラットホーム16の左右中央部付近に集められる。集められた刈取穀稈は、フィーダハウス15内のチェーンコンベヤ21を介して脱穀部8に送り込まれる。
【0025】
脱穀部8の扱室には、刈取穀稈を脱穀処理するための前後長手の扱胴22が内蔵されている。なお、詳細は図示していないが、扱胴22の外周面には、複数の切歯を有するスクリュー羽根が螺旋状に巻回突設されている。扱室内に搬送された刈取穀稈は、扱胴22の各切歯にて細かく切断される。
【0026】
脱穀部8の下方に配置された選別部9は、受網やチャフシーブ等を有する揺動選別装置23と、唐箕ファン等を有する風選別装置24とを備えている。受網から漏下した穀粒は、揺動選別装置23及び風選別装置24にて、精粒等の一番物、枝梗付き穀粒等の二番物及び排稈(藁屑)等に選別される。
【0027】
揺動選別装置23及び風選別装置24による選別を経て、走行機体1の下部にある一番受け樋に集められた精粒等の一番物は、一番コンベヤ25及び揚穀コンベヤ(図示せず)を介して穀粒タンク7に集積される。枝梗付き穀粒等の二番物は、二番コンベヤ26及び還元コンベヤ27等を介して扱室に戻され、扱胴22にて再脱穀される。再脱穀後の二番物は選別部9にて再選別される。排稈等は、脱穀部8の後部下方に配置されたスプレッダ28にて細かく切断されたのち、走行機体1の後方に排出される。
【0028】
穀粒タンク7内の穀粒は、走行機体1の後部に立設された排出オーガ29を介して、輸送用トラックの荷台等(走行機体1の外部)に搬出される。
【0029】
(2).コンバインの走行駆動系統
次に、図2を参照しながら、コンバインの走行駆動系統について説明する。
【0030】
実施形態の普通型コンバインでは、エンジン6からの動力をミッションケース30内の油圧式駆動手段31等にて適宜変速し、ミッションケース30から左右外向きに突出した駆動出力軸60を介して左右の駆動輪11に出力するように構成されている。
【0031】
この場合、ミッションケース30内には、エンジン6からの動力を変速するための油圧式駆動手段31と、低速、中速、高速及び中立の各変速段を有する副変速機構32と、左右一対の遊星ギヤ機構51等を有する差動ギヤ機構33とが内装されている。
【0032】
エンジン6からの動力は、当該エンジン6の出力軸34からプーリ及びベルト伝動系を経由して、油圧式駆動手段31に伝達される。油圧式駆動手段31は、第1油圧ポンプ36及び第1油圧モータ37からなる直進用HST式変速機構35と、第2油圧ポンプ39及び第2油圧モータ40からなる旋回用HST式変速機構38とを備えている。
【0033】
出力軸34から油圧式駆動手段31に向かう動力は、ミッションケース30の外側において両油圧ポンプ36,39の共通ポンプ軸41に伝達される。直進用及び旋回用のいずれのHST式変速機構35,38においても、共通ポンプ軸41に伝達された動力にて、油圧ポンプ36,39から油圧モータ37,40に向けて作動油が送り込まれる。
【0034】
直進用HST式変速機構35においては、操縦部5に配置された主変速レバー77(詳細は後述する)のシフト位置等に応じて、第1油圧ポンプ36の回転斜板の傾斜角度を変更調節して、第1油圧モータ37への作動油の吐出方向及び吐出量を変更することにより、第1油圧モータ37から突出した直進用モータ軸42の回転方向及び回転数を任意に調節するように構成されている。
【0035】
第1油圧モータ37における直進用モータ軸42の回転動力は、直進用モータ軸42に固着された直進出力ギヤ43から伝動ギヤ機構44を介して副変速機構32に伝達される。なお、直進用モータ軸42の回転動力は、出力ギヤ45を介して、クラッチ手段47を有するPTO軸46にも分岐して伝達される。詳細は図示していないが、PTO軸46に分岐した回転動力にて、刈取部3や脱穀部8等の作業部を駆動させるように構成されている。
【0036】
副変速機構32は従来から周知の歯車機構からなるものであり、操縦部5に配置された副変速レバー78(詳細は後述する)の操作にて、直進用モータ軸42からの回転動力(回転方向及び回転数)の調節範囲を低速、中速、高速及び中立という4段階の変速段に切り換え可能に設定されている。副変速機構32の構成要素であるブレーキ軸48には、湿式多板ディスク等のブレーキ手段49が設けられている。なお、実施形態では、走行機体1の車速を検出するためのロータリエンコーダ等の車速センサ197がブレーキ軸48に関連させて設けられている。
【0037】
副変速機構32からの回転動力は、ブレーキ軸48に固着された副変速出力ギヤ50から差動ギヤ機構33に伝達される。差動ギヤ機構33の構成要素である左右一対の遊星ギヤ機構51は左右対称状に形成されており、複数個の遊星ギヤ53を同一半径上に回転可能に軸支してなる左右一対のキャリヤ52を備えている。これら両キャリヤ52は、同一軸線上において適宜間隔を開けて相対向するように配置されている。
【0038】
左右両キャリヤ52の間に位置した太陽軸54の中央部にはセンターギヤ55が固着されている。このセンターギヤ55が副変速機構32側の副変速出力ギヤ50と噛み合っている。太陽軸54のうちセンターギヤ55を挟んで左右両側には太陽ギヤ56が固着されている。各太陽ギヤ56は、これに対応するキャリヤ52の各遊星ギヤ53と噛み合っている。太陽軸54における左右の端部は各キャリヤ52の回転中心部に位置した軸受け(図示せず)に回転可能に軸支されている。
【0039】
内周面の内歯と外周面の外歯とを有する左右一対のリングギヤ57は、その内歯を複数個の遊星ギヤ53に噛み合わせるようにして、太陽軸54と同心状に配置されている。各リングギヤ57は、キャリア52の外側面から左右外向きに突出したキャリヤ軸58に、軸受け(図示せず)を介して回転可能に軸支されている。
【0040】
副変速機構32における副変速出力ギヤ50からの回転動力は、太陽軸54に固着されたセンターギヤ55を介して左右の遊星ギヤ機構51に伝達される。左右の遊星ギヤ機構51に伝達された回転動力は、各キャリヤ52のキャリヤ軸58から伝達ギヤ機構59を介して左右の駆動出力軸60に出力される。
【0041】
他方、旋回用HST式変速機構38においては、操縦部5に配置された操向ハンドル73(詳細は後述する)の回動操作量に応じて、第2油圧ポンプ39の回転斜板の傾斜角度を変更調節して、第2油圧モータ40への作動油の吐出方向及び吐出量を変更することにより、第2油圧モータ40から突出した旋回用モータ軸61の回転方向及び回転数を任意に調節するように構成されている。
【0042】
第2油圧モータ40における旋回用モータ軸61の回転動力は、旋回用モータ軸61に固着された旋回出力ギヤ62から歯車機構63を介して左右一対の回転ギヤ64に伝達される。左回転ギヤ64は逆転ギヤ65を介して左リングギヤ57の外歯と噛み合っている。右回転ギヤ64は右リングギヤ57の外歯と直接噛み合っている。従って、第2油圧モータ40の正回転により左リングギヤ57が所定回転数にて正回転すると、右リングギヤ57は左リングギヤ57と同一回転数にて逆回転することになる。
【0043】
かかる構成によると、例えば旋回用HST式変速機構38の駆動を停止させれば、左右両リングギヤ57が回転不能なロック状態(固定状態)となる。このとき、湿式多板ディスク等のブレーキ手段66にて、第2油圧モータ40の旋回用モータ軸61をロック(固定)するのが好ましい。
【0044】
旋回用HST式変速機構38の駆動を停止させた状態で、直進用HST式変速機構35を駆動させると、直進用モータ軸42の直進出力ギヤ43から太陽軸54のセンターギヤ55に伝達された回転動力は左右の太陽ギヤ56に同一回転数で伝達され、左右の遊星ギヤ53及びキャリヤ52を介して、左右の駆動出力軸60ひいては駆動輪11に同一方向及び同一回転数にて出力される。その結果、走行機体1は直進走行する。この場合、直進用モータ軸42が正回転方向に駆動すれば走行機体1は前進し、逆回転方向に駆動すれば走行機体1は後退することになる。
【0045】
逆に、直進用HST式変速機構35の駆動を停止させた場合は、太陽軸54及び左右両太陽ギヤ56が回転不能なロック状態(固定状態)となる。このときも、湿式多板ディスク等のブレーキ手段67にて、第1油圧モータ37の直進用モータ軸42をロック(固定)するのが好ましい。
【0046】
直進用HST式変速機構35の駆動を停止させた状態で、旋回用HST式変速機構38を駆動させると、旋回用モータ軸61からの回転動力は、左回転ギヤ64及び逆転ギヤ65を介して左リングギヤ57を所定回転数にて正(逆)回転させる一方、右回転ギヤ64を介して右リングギヤ57を左リングギヤ57と同一回転数にて逆(正)回転させる。
【0047】
左リングギヤ57に伝達された正(逆)方向の回転動力は、左側の各遊星ギヤ53及びキャリヤ52を経由して、左駆動出力軸60ひいては左駆動輪11を正(逆)方向に回転させる。右リングギヤ57に伝達された逆(正)方向の回転動力は、右側の各遊星ギヤ53及びキャリヤ52を経由して、右駆動出力軸60ひいては右駆動輪11を逆(正)方向に回転させる。
【0048】
すなわち、旋回用HST式変速機構38からの回転動力は、左右の遊星ギヤ機構51に互いに逆方向の回転力を付与するように伝達され、左右の走行クローラ2の駆動輪11のうち一方が前進回転、他方が後退回転して、走行機体1はその場でスピンターンする。
【0049】
また、直進用HST式変速機構35を駆動させつつ旋回用HST式変速機構38を駆動させると、左右の走行クローラ2の駆動速度に差が生じることになり、走行機体1は前進又は後退しながらスピンターン旋回半径より大きい旋回半径で左又は右に旋回する。このときの旋回半径は左右の走行クローラ2の駆動速度差に応じて決定される。
【0050】
(3).操縦部内の詳細構造
次に、図3及び図4を参照しながら、操縦部内の詳細構造について説明する。
【0051】
キャビンタイプの操縦部5内に配置された操縦座席70の前方には、縦長のステアリングコラム71が立設されている。ステアリングコラム71から上向きに突出したハンドル軸72(図5参照)には、走行機体1の進行(旋回)方向及び旋回速度を変更操作するための丸型の操向ハンドル73が取り付けられている。実施形態では、操向ハンドル73の回動可能範囲が中立位置を挟んで左右に約135°ずつ程度の大きさに設定されている。いうまでもないが、操向ハンドル73から手を離せば、当該操向ハンドル73は中立位置に自動的に復帰するように構成されている。
【0052】
操向ハンドル73における略環状のハンドルホイル部の内側には、液晶表示装置75等を有するセンターパネル体74が配置されている。なお、センターパネル体74はステアリングコラム71にのみ固定されていて、操向ハンドル73には連結していないので、操向ハンドル73を回動操作しても、センターパネル体74ひいては液晶表示装置75は動かず、常にオペレータから画面が見易い状態になっている。
【0053】
操縦座席70の一側方(実施形態では左側)には、前後に長いサイドパネル体76が配置されている。このサイドパネル体76上には、前方から順に、主変速レバー77、副変速レバー78及びクラッチレバー79が配置されている。
【0054】
主変速レバー77は、走行機体1の前進、停止、後退及びその車速を無段階に変更操作するためのものである。実施形態の主変速レバー77は、サイドパネル体76における平面視クランク状のガイド溝80に沿って前後傾動可能に構成されている。
【0055】
詳細については後述するが、主変速レバー77をほぼ垂直姿勢の中立(停止)位置から前方に倒すと、直進用HST式変速機構35の駆動にて走行機体1が前進するように構成されている。そして、主変速レバー77の前方への倒れ角度が大きいほど、走行機体1の前進速度が速くなるように構成されている。反対に、主変速レバー77を中立位置から後方に倒すと、直進用HST式変速機構35の駆動にて走行機体1が後退するように構成されている。そして、主変速レバー77の後方への倒れ角度が大きいほど、走行機体1の後退速度が速くなるように構成されている。
【0056】
副変速レバー78は、作業状態に応じてミッションケース30内の副変速機構32を変更操作して、油圧式駆動手段31の出力(直進用モータ軸42の回転方向及び回転数)の調節範囲を低速、中速、高速及び中立という4段階に設定保持するためのものである。副変速レバー78も、主変速レバー77と同様に前後傾動可能に構成されている。
【0057】
クラッチレバー79は、刈取部3の動力継断操作用のレバーと脱穀部8の動力継断操作用のレバーとを1本で兼ねたものであり、サイドパネル体76における平面視略L字状のガイド溝81に沿って左右及び前後方向に傾動可能に構成されている。
【0058】
実施形態のクラッチレバー79は、ガイド溝81における左右溝部81aの左端位置に傾動させると刈取クラッチ及び脱穀クラッチ(共に図示せず)が共に切り状態となり、左右溝部81aの右端位置(前後溝部81bの後端位置でもある)に傾動させると脱穀クラッチのみが入り状態となり、前後溝部81bの前端位置に傾動させると両クラッチとも入り状態となるように構成されている。
【0059】
サイドパネル体76上には、操作用の各種スイッチ類及び設定用のダイヤル類も複数配置されている。実施形態では、サイドパネル体76のうち主変速レバー77より前方の箇所には、自動車速スイッチ82、負荷率設定手段としての負荷率設定ダイヤル83、待機時間設定手段としての待機時間設定器98、自動刈高さスイッチ84、刈高さ設定ダイヤル85、自動水平スイッチ86、及び傾斜設定ダイヤル87等が配置されている。
【0060】
自動車速スイッチ82は、エンジン6の過負荷時に車速を減速して刈取部3や脱穀部8の回転駆動を一定に保持する自動車速制御の入り切りを操作するためのものである。負荷率設定ダイヤル83は、自動車速制御時におけるエンジン6の設定負荷率LFaを手動にて設定操作するためのものである。詳細については後述するが、実施形態では、エンジン6の負荷率LFが設定負荷率LFa以上になると、走行機体1の前進方向の車速を強制減速するように設定されている。
【0061】
ここで、エンジン負荷率LFについて説明すると、エンジン負荷率LFとは、後述するラック位置センサ200にて検出されたエンジン負荷が最高のときを100%として、刈取脱穀作業中のエンジン負荷の比率を算出したものである。アイドリング状態のエンジン負荷率LFが0(零)になる。
【0062】
設定負荷率LFaは、エンジン6が過負荷のときに相当するしきい値である。換言すると、設定負荷率LFaは、エンジン6が過負荷状態か否かを判別するための基準値になっている。この場合、負荷率設定ダイヤル83は、その摘み(指針)の位置を連続的(アナログ的)又は段階的(デジタル的)に変更・調節して、設定負荷率LFaを70〜100%の範囲で任意に調節し得るように構成されている。
【0063】
詳細については後述するが、実施形態では、設定負荷率LFaが決まるとこれに対応した復帰負荷率LFbが自動的に設定される。この復帰負荷率LFbは設定負荷率LFaより所定割合だけ小さい値(LFb(%)=LFa−α)になっている。自動車速制御での強制減速後に、エンジン負荷率LFが復帰負荷率LFb以下になると、走行機体1の前進方向の車速を主変速レバー77の前向き傾動操作位置に対応した元の車速にまで増速するように設定されている。
【0064】
待機時間設定器98は、自動車速制御において先の減速動作終了時点から次の減速動作又は復帰増速動作開始時点までの待機時間Tw(以下、設定待機時間Twという。図11及び図12参照)を手動設定するためのものであり、この設定器98も、前述の負荷率設定ダイヤル83と同様に、その摘み(指針)の位置を連続的(アナログ的)又は段階的(デジタル的)に変更・調節し得るように構成されている。
【0065】
自動刈高さスイッチ84は、刈取部3を所定の刈高さ位置に維持する自動刈高さ制御の入り切りを操作するためのものである。刈高さ設定ダイヤル85は、自動刈高さ制御時の刈高さ位置を設定操作するためのものである。自動水平スイッチ86は、走行機体1を左右水平な姿勢に維持する自動水平制御の入り切りを操作するためのものである。傾斜設定ダイヤル87は、走行機体1の左右傾斜角度を設定操作するためのものである。
【0066】
また、サイドパネル体76のうち主変速レバー77より後方の箇所には、定回転制御スイッチ88、アクセルダイヤル89、リール高さ調節ダイヤル90、及びリール変速自動スイッチ91等が配置されている。
【0067】
定回転制御スイッチ88は、エンジン6の回転数を一定に保持する定回転制御の入り切りを操作するためのものである。アクセルダイヤル89は、エンジン6の回転数を調節操作するためのものである。リール高さ調節ダイヤル90は、刈取部3の掻き込みリール18の高さ位置を調節操作するためのものである。リール変速自動スイッチ91は、走行機体1の車速に合わせて掻き込みリール18の回転速度を自動調節するモードの入り切りを操作するためのものである。
【0068】
操縦座席70の下面側には、当該操縦座席70にオペレータが座っているか否かを検出するためのシートスイッチ92が配置されている。操縦座席70と操向ハンドル73との間に位置するステップ板93の下面側には、当該ステップ板93上にオペレータの足が載っているか否かを検出するための左右一対のステップスイッチ94が配置されている。
【0069】
シートスイッチ92及び両ステップスイッチ94は、操縦部5内にオペレータが居るか否かを検出するための存在検出手段に相当する。シートスイッチ92及び両ステップスイッチ94のうち少なくとも1つが入り作動しているときは、エンジン6の始動を許可すると共に、エンジン6から走行部や作業部への動力伝達を許容するように設定されている。また、シートスイッチ92及び両ステップスイッチ94の全てが切り作動しているときは、エンジン6の駆動を停止するか、又はエンジン6から走行部や作業部への動力伝達を自動的に遮断するように設定されている。なお、これらスイッチ92,94は少なくとも1つ備えていればよい。
【0070】
(4).主変速レバー及び操向ハンドルと油圧式駆動手段との連結構造
次に、図5〜図7を参照しながら、主変速レバー及び操向ハンドルと油圧式駆動手段との連結構造について説明する。
【0071】
変速操作手段としての主変速レバー77は、中継リンク機構95を介してステアリングコラム71内に配置された機械的切換手段100に連動連結されている。また、操向ハンドル73のハンドル軸72も機械的切換手段100に連動連結されている。
【0072】
実施形態の機械的切換手段100は、
1.主変速レバー77を中立位置以外の位置に傾動操作した状態で、操向ハンドル73を中立位置以外の位置に回動操作すると、その回動操作量が大きいほど小さな旋回半径で走行機体1が左又は右に旋回し、且つ旋回半径が小さいほど走行機体1の車速(前進及び後退時の旋回速度)が減速する、
2.主変速レバー77を前進及び後退のいずれの方向に傾動操作した場合であっても、操向ハンドル73の回動操作方向と走行機体1の旋回方向とが一致する(操向ハンドル73を右に回せば走行機体1は右旋回し、操向ハンドル73を左に回せば走行機体1は左旋回する)、
3.主変速レバー77が中立位置にあると操向ハンドル73を操作しても機能しない、
という各種動作を実行するために、主変速レバー77や操向ハンドル73からの操作力を適宜変換して、ステアリングコラム71の下端部に回動可能に配置された縦長の二重軸101に伝達するように構成されている。
【0073】
なお、機械的切換手段100自体は本願発明と直接的に関係しないので詳述しないが、必要であれば特開2002−274421号公報等を参照されたい。
【0074】
機械的切換手段100に関連付けられた二重軸101は、互いに独立して回動可能な直進用外筒軸102と旋回用内軸103とにより縦長同心状に形成されている。直進用外筒軸102は、ミッションケース30の前面から前向きに突出した直進用回動軸105に、直進用リンク機構104を介して連動連結されている。一方、旋回用内軸103は、ミッションケース30の前面から前向きに突出した旋回用回動軸107に、旋回用リンク機構106を介して連動連結されている。
【0075】
ここで、直進用回動軸105は、直進用HST式変速機構35における第1油圧ポンプ36の回転斜板の傾斜角度を調節するためのものであり、直進用HST式変速機構35の変速出力を調節する調節部として機能する。旋回用回動軸107は、旋回用HST式変速機構38における第2油圧ポンプ39の回転斜板の傾斜角度を調節するためのものであり、旋回用HST式変速機構38の変速出力を調節する調節部として機能する。
【0076】
直進用リンク機構104は、ミッションケース30の上面にブラケット108を介して固定された支持筒109に回動可能に挿入された横支軸110、直進用外筒軸102に突設された直進用回動アーム111と横支軸110の一端(実施形態では右端)に固着された直進用第1揺動アーム112とをつなぐ直進用中継杆113、並びに、横支軸110の他端(実施形態では左端)に固着された直進用第2揺動アーム114と直進用回動軸105に取り付けられた直進用操作アーム115とをつなぐ直進用連動杆116とを備えている。
【0077】
直進用中継杆113の一端部(実施形態では前端部)は、直進用外筒軸102側の直進用回動アーム111に、縦向きの枢着ピン117にて回動可能に枢着されている。直進用中継杆113の他端部(実施形態では後端部)は、横支軸110側の直進用第1揺動アーム112に、左右横向きの枢着ピン118を介して回動可能に枢着されている。
【0078】
直進用連動杆116の一端部(実施形態では上端部)は、横支軸110側の直進用第2揺動アーム114に、左右横向きの枢着ピン119にて回動可能に枢着されている。直進用連動杆116の他端部(実施形態では下端部)は、直進用回動軸105側の直進用操作アーム115に、前後横向きの枢着ピン120を介して回動可能に枢着されている。
【0079】
主変速レバー77を中立位置から前方に傾動操作した場合は、中継リンク機構95を介して機械的切換手段100が直進用外筒軸102及び直進用回動アーム111を旋回用内軸103回りの矢印SA方向に一体的に回動させることにより、直進用中継杆113が前方に引っ張られて(移動して)、直進用第1揺動アーム112、横支軸110及び直進用第2揺動アーム114が横支軸110回りの矢印SB方向に一体的に回動する。
【0080】
そして、直進用第2揺動アーム114が矢印SB方向への回動移動にて直進用連動杆116を引き上げることにより、直進用操作アーム115ひいては直進用回動軸105が矢印SC方向(前進増速方向(又は後退減速方向)、図5及び図6参照)に回動する。その結果、走行機体1は主変速レバー77の前向き傾動操作量に比例して前進動作を実行する。
【0081】
反対に、主変速レバー77を中立位置から後方に傾動操作した場合は、中継リンク機構95を介して機械的切換手段100が直進用外筒軸102及び直進用回動アーム111を矢印SD方向に一体的に回動させることにより、直進用中継杆113が後方に移動して、直進用第1揺動アーム112、横支軸110及び直進用第2揺動アーム114が先ほどとは逆の矢印SE方向に一体的に回動する。
【0082】
そして、直進用第2揺動アーム114が矢印SE方向への回動移動にて直進用連動杆116を押し下げることにより、直進用操作アーム115ひいては直進用回動軸105が矢印SF方向(後退増速方向(又は前進減速方向)、図5及び図6参照)に回動する。その結果、走行機体1は主変速レバー77の後ろ向き傾動操作量に比例して後退動作を実行する。
【0083】
一方、旋回用リンク機構106は、横支軸110における支持筒109からの突出部位に回動可能に被嵌された回動筒121、旋回用内軸103に突設された旋回用回動アーム122と回動筒121に突設された略棒状の旋回用第1揺動アーム123とをつなぐ旋回用中継杆124、並びに、回動筒121に突設された略L字状の旋回用第2揺動アーム125と旋回用回動軸107に取り付けられた旋回用操作アーム126とをつなぐ旋回用連動杆127とを備えている。
【0084】
旋回用中継杆124の一端部(実施形態では前端部)は、旋回用内軸103側の旋回用回動アーム122に、縦向きの枢着ピン128にて回動可能に枢着されている。旋回用中継杆124の他端部(実施形態では後端部)は、回動筒121側の旋回用第1揺動アーム123に、左右横向きの枢着ピン129を介して回動可能に枢着されている。
【0085】
旋回用連動杆127の一端部(実施形態では上端部)は、回動筒121側の旋回用第2揺動アーム125に、左右横向きの枢着ピン130にて回動可能に枢着されている。旋回用連動杆127の他端部(実施形態では下端部)は、旋回用回動軸107側の旋回用操作アーム126に、前後横向きの枢着ピン131を介して回動可能に枢着されている。
【0086】
例えば主変速レバー77を前傾させた状態で操向ハンドル73を左方向に回動操作した場合は、ハンドル軸72を介して機械的切換手段100が旋回用内軸103及び旋回用回動アーム122を矢印TA方向に一体的に回動させることにより、旋回用中継杆124が前方に引っ張られて、旋回用第1揺動アーム123、回動筒121及び旋回用第2揺動アーム125が横支軸110回りの矢印TB方向に一体的に回動する。
【0087】
そして、旋回用第2揺動アーム125が矢印TB方向への回動移動にて旋回用連動杆127を引き上げることにより、旋回用操作アーム126ひいては旋回用回動軸107が矢印TC方向(前進左旋回方向、図5及び図6参照)に回動する。その結果、走行機体1は操向ハンドル73の左方向への回動操作量に比例して左旋回動作を実行する。
【0088】
この場合、直進用リンク機構104は、機械的切換手段100の作用により、操向ハンドル73の左方向への回動操作量に比例して直進用回動軸105を矢印SF方向(前進減速方向)に回動させ、そのときの旋回半径に対応して走行機体1の前進旋回速度を減速させる。
【0089】
反対に、主変速レバー77を前傾させた状態で操向ハンドル73を右方向に回動操作した場合は、ハンドル軸72を介して機械的切換手段100が旋回用内軸103及び旋回用回動アーム122を矢印TD方向に一体的に回動させることにより、旋回用中継杆124が後方に移動して、旋回用第1揺動アーム123、回動筒121及び旋回用第2揺動アーム125が先ほどとは逆の矢印TE方向に一体的に回動する。
【0090】
そして、旋回用第2揺動アーム125が矢印TE方向への回動移動にて旋回用連動杆127を押し下げることにより、旋回用操作アーム126ひいては旋回用回動軸107が矢印TF方向(前進右旋回方向、図5及び図6参照)に回動する。その結果、走行機体1は操向ハンドル73の右方向への回動操作量に比例して右旋回動作を実行する。
【0091】
この場合も、直進用リンク機構104は、機械的切換手段100の作用により、操向ハンドル73の右方向への回動操作量に比例して直進用回動軸105を矢印SF方向(前進減速方向)に回動させ、そのときの旋回半径に対応して走行機体1の前進旋回速度を減速させる。
【0092】
なお、主変速レバー77を後傾させた状態で操向ハンドル73を左右に回動操作した場合は、旋回用リンク機構106及び直進用リンク機構104の動作がそれぞれ前記態様の逆になる。すなわち、前進左旋回時の両リンク機構106,104の動作は後退右旋回時のそれと同じである一方、前進右旋回時の両リンク機構106,104の動作は後退左旋回時のそれと同じに設定されている。
【0093】
図6及び図7に示すように、直進用回動軸105には、主変速レバー77が中立位置にあるときに第1油圧ポンプ36の回転斜板を中立位置に保持するための直進用デテント手段132が取り付けられている。また同様に、旋回用回動軸107には、操向ハンドル73が中立位置にあるときに第2油圧ポンプ39の回転斜板を中立位置に保持するための旋回用デテント手段133が取り付けられている。
【0094】
図6から明らかなように、直進用デテント手段132と旋回用デテント手段133とは左右対称状に配置されており、基本的に同じような構成である。直進用デテント手段132においては、直進用HST式変速機構35の調節部としての直進用回動軸105に、略円筒状のボス部材134が一体的に回動するように被嵌されている(図7参照)。直進用回動軸105の先端部には、略Y字板状に形成された直進用デテント杆135の中途部がナット136で固定されている。
【0095】
ミッションケース30における左右中央寄りの箇所に突設された枢支軸137には、略L字板状に形成された中立保持アーム138のコーナ部が回動可能に枢支されている。中立保持アーム138における横アーム部138aの先端には、直進用デテント杆135の上端面に形成された中立保持カム面135aに当接する中立保持ローラ139が回動可能に取り付けられている。中立保持ローラ139は、付勢ばね140の弾性付勢力にて、直進用デテント杆135の中立保持カム面135aに常時押圧当接するように構成されている。なお、実施形態の付勢ばね140は、直進用である中立保持アーム138の縦アーム部138bと旋回用である中立保持アーム158の縦アーム部158b(詳細は後述する)との間に装架されている。
【0096】
一方、ボス部材134の中途部に回動可能に被嵌された円筒部材141には、略L字状の直進用操作アーム115のコーナ部とストッパー板142とが固着されている。直進用操作アーム115においては、横アーム部115aの先端が直進用連動杆116の他端部(実施形態では下端部)に前後横向きの枢着ピン120にて回動可能に枢着されている。直進用操作アーム115の縦アーム部115bは正面視で直進用デテント杆135の縦杆部135bに重なるように延びている。
【0097】
円筒部材141の外周部には、戻し付勢手段としてのねじりばね143が被嵌されている。このねじりばね143の両端部は交差しながら下方に延びていて、直進用操作アーム115の縦アーム部115bと直進用デテント杆135の縦杆部135bとを挟み込んでいる。
【0098】
なお、直進用デテント杆135における縦杆部135bの左右両側には、直進用デテント杆135及び直進用操作アーム115の直進用回動軸105回りの回動を規制するための一対のストッパー受け体144が配置されている。これらストッパー受け体144はストッパー板142の前面下部に固定されている。縦杆部135bに後ろ向き突設された当接体145が各ストッパー受け体144に当たることにより、直進用デテント杆135及び直進用操作アーム115が直進用回動軸105回りに所定角度以上回動しないように規制されている。
【0099】
また、ミッションケース30の前面側に配置されたブラケット146には、上下回動可能な感知アーム148を有するポテンショメータ式の主変速位置センサ147が取り付けられている。この主変速位置センサ147は、直進用デテント杆135の上端部に設けられた作動ピン149との当接による感知アーム148の回動角度から、第1油圧ポンプ36における回転斜板の傾斜角度や主変速レバー77の傾動操作量を検出するというものである。
【0100】
旋回用デテント手段133においては、旋回用HST式変速機構38の調節部としての旋回用回動軸107に、略円筒状のボス部材(図示せず)が一体的に回動するように被嵌されている。旋回用回動軸107の先端部には、略Y字板状に形成された旋回用デテント杆155の中途部がナット156にて固定されている。
【0101】
ミッションケース30における左右中央寄りの箇所に突設された枢支軸157には、略L字板状に形成された中立保持アーム158のコーナ部が回動可能に枢支されている。中立保持アーム158における横アーム部158aの先端には、旋回用デテント杆155の上端面に形成された中立保持カム面155aに当接する中立保持ローラ159が回動可能に取り付けられている。中立保持ローラ159は、付勢ばね140の弾性付勢力にて、旋回用デテント杆155の中立保持カム面155aに常時押圧当接するように構成されている。
【0102】
一方、ボス部材の中途部に回動可能に被嵌された円筒部材(図示せず)には、略L字状の旋回用操作アーム126のコーナ部とストッパー板162とがそれぞれ固着されている。旋回用操作アーム126においては、横アーム部126aの先端が旋回用連動杆127の他端部(実施形態では下端部)に前後横向きの枢着ピン131にて回動可能に枢着されている。旋回用操作アーム126の縦アーム部126bは、正面視で旋回用デテント杆155の縦杆部155bに重なるように延びている。
【0103】
円筒部材(図示せず)の外周部には、戻し付勢手段としてのねじりばね163が被嵌されている。このねじりばね163の両端部は交差しながら下方に延びていて、旋回用操作アーム126の縦アーム部126bと旋回用デテント杆155の縦杆部155bとを挟み込んでいる。
【0104】
なお、旋回用デテント杆155における縦杆部155bの左右両側には、旋回用デテント杆155及び旋回用操作アーム126の旋回用回動軸107回りの回動を規制するための一対のストッパー受け体164が配置されている。これらストッパー受け体164はストッパー板162の前面下部に固定されている。縦杆部155bに後ろ向き突設された当接体165が各ストッパー受け体164に当たることにより、旋回用デテント杆155及び旋回用操作アーム126が旋回用回動軸107回りに所定角度以上回動しないように規制されている。
【0105】
(5).電動モータと油圧式駆動手段との連動構造
次に、図6〜図8を参照しながら、電動モータと油圧式駆動手段との連動構造について説明する。
【0106】
直進用HST式変速機構35の調節部である直進用回動軸105には、変速アクチュエータとしての電動モータ170が、主変速レバー77から直進用回動軸105に向かう操作系統(中継リンク機構95、機械的切換手段100及び直進用リンク機構104)とは別系統の連係機構171を介して関連付けられている。
【0107】
実施形態では、ミッションケース30上の支持筒109に固定されたブラケット板169の背面側に、変速アクチュエータとしての正逆回転可能な電動モータ170がねじ止めされている。電動モータ170のモータ出力軸172には、駆動側ギヤとしてのピニオンギヤ173が固着されている。一方、ブラケット板169の背面のうち電動モータ170より下方の箇所には、従動側ギヤとしてのセクタギヤ174が、直進用回動軸105や旋回用回動軸107と平行に延びる枢軸175にて回動可能に枢着されている。これら両ギヤ173,174を噛み合わせることによって、電動モータ170からの回転駆動力が連係機構171を介して直進用回動軸105に伝達可能となるように構成されている。
【0108】
連係機構171は、調節部材としての直進用デテント杆135の縦杆部135bと、前述したセクタギヤ174及びその枢軸175に固定された中継アーム176と、縦杆部135bと中継アーム176とを連動して回動させるための連係ロッド177とを備えている。
【0109】
実施形態では、直進用デテント杆135の縦杆部135bが旋回用デテント杆155の縦杆部155bより長く延びた形態になっている。直進用デテント杆135における縦杆部135bの下端部は、連係ロッド177の一端部に、前後横向きの枢着ピン178にて回動可能に枢着されている。
【0110】
連係ロッド177における中継アーム176側の他端部には、その長手方向に延びるガイド溝穴179が形成されている。連係ロッド177の他端部と中継アーム176とは、ガイド溝穴179に挿入された枢支ピン180を介して連結されている。
【0111】
中継アーム176及びセクタギヤ174は、電動モータ170によるピニオンギヤ173の回転駆動にて、図6及び図8(a)(c)に示す初期位置(自動車速制御を実行していないときの待機位置)から、図8(b)に示す最大強制減速位置までの範囲において、枢軸175回りに回動可能に構成されている。
【0112】
なお、ブラケット板169におけるセクタギヤ174の左右両側には、セクタギヤ174の枢軸175回りの回動を規制するための一対のストッパー軸体181が配置されている。セクタギヤ174における回動方向の側縁部が各ストッパー軸体181に当たることにより、セクタギヤ174及び中継アーム176が枢軸175回りに初期位置〜最大強制減速位置の範囲を超えて回動しないように規制されている。
【0113】
以上のように構成すると、前記従来(特許文献1の構成)のように、主変速レバー77から直進用回動軸105に向かう操作系統と電動モータ170とを連動連結しなくて済むことになる。このため、電動モータ170や連係機構171のレイアウト等の制約が格段に少なくなり、自動車速制御のための連動構造を設計する上での自由度が向上する。その結果、前記連動構造の簡素化や部品点数の削減が可能になり、製造コストの抑制に寄与できる。
【0114】
直進用デテント杆135が中立位置にあり且つセクタギヤ174及び中継アーム176が初期位置にある場合(図6参照)、すなわち、主変速レバー77が中立位置にあって走行機体1が停止している場合は、中継アーム176に固着された枢支ピン180が連係ロッド177におけるガイド溝穴179の長手中央部に位置するように設定されている。
【0115】
自動車速スイッチ82が切り状態である(自動車速制御を実行していない)場合は、セクタギヤ174及び中継アーム176は常に初期位置に保持されている。そして、この状態では、主変速レバー77を前後いずれの方向に傾動操作しても、中継アーム176側の枢支ピン180がガイド溝穴179における長手方向の両縁部に当たらないように、ガイド溝穴179の長径寸法が設定されている。すなわち、自動車速制御を実行していない場合において主変速レバー77を傾動操作したときに、中継アーム176側の枢支ピン180は連係ロッド177のガイド溝穴179内をスライド移動するものの、ガイド溝穴179における長手方向の両縁部に引っ掛からずに遊んだ状態となり、連係機構171の存在が主変速レバー77の傾動操作を妨げることはない。
【0116】
主変速レバー77を中立位置から前方に傾動操作した場合は、直進用リンク機構104を介して直進用操作アーム115が矢印SC方向(前進増速方向)に回動する。直進用操作アーム115の縦アーム部115bは、ねじりばね143の両端部にて直進用デテント杆135の縦杆部135bと一緒に挟み込まれているため、直進用デテント杆135及びこれに固着された直進用回動軸105も矢印SC方向(前進増速方向)に回動する(図8(a)参照)。その結果、走行機体1の前進方向の車速が増速する。
【0117】
直進用デテント杆135が直進用回動軸105回りに矢印SC方向(前進増速方向)に回動すると、連係ロッド177は中継アーム176側の枢支ピン180に向けて斜め上向きに押しやられ、枢支ピン180は連係ロッド177におけるガイド溝穴179の下縁部(縦杆部135b寄りの縁部)近傍に相対的にスライド移動する(図8(a)参照)。
【0118】
自動車速スイッチ82が入り状態である(自動車速制御を実行している)場合に、電動モータ170によるピニオンギヤ173の回転駆動にて、中継アーム176及びセクタギヤ174を初期位置から最大強制減速位置に向かう矢印RE方向に回動させると(図8(b)参照)、中継アーム176側の枢支ピン180が連係ロッド177におけるガイド溝穴179の下縁部に当たって、連係ロッド177を直進用デテント杆135の縦杆部135bに向けて斜め下向きに押しやり、直進用デテント杆135ひいては直進用回動軸105を矢印SF方向(前進減速方向)に回動させる。その結果、走行機体1の前進方向の車速が減速する。
【0119】
実施形態では、中継アーム176及びセクタギヤ174を最大強制減速位置まで回動させると、直進用デテント杆135が中立位置まで戻り回動して(図8(b)参照)、直進用回動軸105ひいては第1油圧ポンプ36の回転斜板を中立位置に移動させるように構成されている。このため、自動車速制御の実行中にエンジン6が過負荷になると、走行機体1は実質上停止する状態まで減速することが可能になっている。
【0120】
かかる構成によると、エンジン6の過負荷時に、直進用HST式変速機構35ひいてはエンジン6からの動力を、走行機体1の前進動には使わずに、ほとんど刈取部3や脱穀部8の回転駆動のために使えることになるから、負荷変動の激しい普通型コンバインであっても、刈取部3の詰まりや脱穀部8の回転低下ひいてはエンジンストップを確実に抑制でき、自動車速制御の実効性(安定性)が向上する。
【0121】
また、直進用デテント杆135の縦杆部135bと直進用操作アーム115の縦アーム部115bとは、ねじりばね143の両端部にて一緒に挟み込まれているが、ねじりばね143の弾性復原力は、直進用操作アーム115を含む直進用リンク機構104を動かすための力に比べれば格段に小さい。
【0122】
このため、自動車速制御の実行時において走行機体1の前進方向の車速を減速させる場合は、直進用デテント杆135(ひいては直進用回動軸105)は矢印SF方向(前進減速方向)に回動するものの、直進用操作アーム115は主変速レバー77の前向き傾動操作位置に対応した位置に位置保持される(図8(b)参照)。
【0123】
従って、直進用デテント杆135の矢印SF方向(前進減速方向)の回動力が直進用リンク機構104及び機械的切換手段100を介して主変速レバー77に伝播することはなく、自動車速制御の実行中に走行機体1が強制減速するたびに、目の前で主変速レバー77が勝手に動くというような煩わしさがない。
【0124】
自動車速制御の実行時において走行機体1の前進方向の車速を減速させた後、電動モータ170によるピニオンギヤ173の回転駆動にて、中継アーム176及びセクタギヤ174を矢印BA方向に回動させて初期位置にまで復帰移動させると(図8(c)参照)、中継アーム176側の枢支ピン180は連係ロッド177のガイド溝穴179内をスライド移動して、当該ガイド溝穴179の下縁部から離れる。
【0125】
そうすると、枢支ピン180がガイド溝穴179の下縁部から離れた分だけ、ねじりばね143の弾性復原力の作用する余地が生じ、この弾性復原力にて、直進用操作アーム115における縦アーム部115の位置まで直進用デテント杆135ひいては直進用回動軸105が緩やかな速度で戻り回動して、図8(a)に示す状態に戻る。
【0126】
このときの直進用デテント杆135の戻り回動位置は、主変速レバー77の前向き傾動操作位置に対応した元の位置(中継アーム176及びセクタギヤ174を矢印RE方向に回動させる前の位置)である。その結果、走行機体1の前進方向の車速が主変速レバー77の前向き傾動操作位置に対応した元の車速にまで緩やかに増速するのである。
【0127】
この場合、直進用デテント杆135の矢印SC方向への戻り回動にて、連係ロッド177が中継アーム176側の枢支ピン180に向けて斜め上向きに押しやられ、枢支ピン180が連係ロッド177におけるガイド溝穴179の下縁部近傍に相対的にスライド移動することはいうまでもない(図8(a)参照)。
【0128】
かかる構成によると、オペレータは、自動車速制御にて走行機体1の前進方向の車速が強制減速した後、車速を元に戻すために、主変速レバー77の前傾操作を一々やり直す必要がない。このため、主変速レバー77の操作頻度が少なくて済み、オペレータの操作負担を軽減できる。
【0129】
また、ねじりばね143の弾性復原力を利用して、直進用操作アーム115における縦アーム部115の位置まで直進用デテント杆135ひいては直進用回動軸105を緩やかな速度で戻り回動させ、走行機体1の前進方向の車速を主変速レバー77の前向き傾動操作位置に対応した元の車速にまで緩やかに増速させるから、走行機体1が急激にスピードアップすることがなく安全である。
【0130】
しかも、復帰車速は主変速レバー77の前向き傾動操作位置に対応した速度以上になることがないから、車速が異常に大きくなるおそれを確実に回避でき、安全性を十分に確保できる。
【0131】
なお、実施形態では、自動車速制御の実行中であっても、主変速レバー77を後方に傾動操作して、直進用デテント杆135及び直進用回動軸105を矢印SF方向(後退増速方向)に回動させた場合(走行機体1が後退している場合)は、電動モータ170が駆動しないように構成されている。
【0132】
また、図6及び図7に示すように、ミッションケース30上の支持筒109に固定されたブラケット板169には、上下回動可能な感知アーム183を有するポテンショメータ式の強制減速位置センサ182が取り付けられている。この強制減速位置センサ182は、中継アーム176とは別に枢軸175に固着された回動プレート184の作動ピン185との当接による感知アーム183の回動角度から、枢支ピン180やセクタギヤ174の位置を検出するというものである。
【0133】
(6).制御手段の構成
次に、図9及び図10を参照しながら、走行機体の自動車速制御等を実行するための構成について説明する。
【0134】
詳細は図示していないが、走行機体1に搭載された車速制御手段としてのマイクロコンピュータ等のコントローラ190は、各種演算処理や制御を実行するための中央処理装置191(CPU)、制御プログラムやデータを記憶させるための読み出し専用メモリ192(ROM)、制御プログラムやデータを一時的に記憶させるための随時読み書き可能メモリ193(RAM)、タイマ機能としてのクロック、各入出力系機器(センサやアクチュエータ等)とデータのやり取りをする入出力インターフェイス(図示せず)等を備えている。
【0135】
コントローラ190のROM192には、ブレーキ軸48(図2参照)に関連させて設けられた車速検出用の車速センサ197の検出値V(走行機体1の車速)と、この車速Vに対する自動車速制御実行時の減速量vrとの関係を示す関係式又は制御マップが予め記憶されている。
【0136】
この場合の関係式としては例えばvr=A×Vが挙げられる。ここでAは比例定数である。かかる関係式を制御マップとした場合を図10に示している。図10では走行機体1の車速Vを横軸に採り、減速量vrを縦軸に採っている。
【0137】
図10に示すように、比例定数Aは0より大きく1以下(0<A≦1)の値になっており、車速Vと減速量vrとの関係が正の傾きを持つ直線で表されている。すなわち、車速Vと減速量vrとは、車速Vが大きくなる(高速になる)ほど減速量vrが大きくなる(大きく減速する)という関係にある。そして、0<A≦1という関係にあるから、減速量vrが車速Vを超えることはない。すなわち、自動車速制御の実行時に減速し過ぎて走行機体1が後退動することはない。なお、車速Vとこれに対応する減速量vrとの対のデータを、テーブルマップとしてコントローラ190のROM192に記憶させるようにしてもよい。
【0138】
コントローラ190の入力インターフェイスには、例えば自動車速スイッチ82、負荷率設定ダイヤル83、自動刈高さスイッチ84、刈高さ設定ダイヤル85、自動水平スイッチ86、傾斜設定ダイヤル87、定回転制御スイッチ88、アクセルダイヤル89、リール高さ調節ダイヤル90、リール変速自動スイッチ91、主変速位置センサ147、副変速レバー78、刈取部3に対する動力継断用の刈取クラッチの入り切り状態を検出するための刈取クラッチセンサ194、脱穀部8に対する動力継断用の脱穀クラッチの入り切り状態を検出するための脱穀クラッチセンサ195、強制減速位置センサ182、シートスイッチ92、左右両ステップスイッチ94、エンジン6の回転数を検出するためのエンジン回転センサ196、車速センサ197、燃料供給手段である電子ガバナ198付き燃料噴射ポンプ199のラック位置から燃料供給量を検出する負荷検出手段としてのラック位置センサ200、コンバイン全体の電源を入り切り操作するための電源スイッチ201、待機時間設定手段としての待機時間設定器98等が接続されている。
【0139】
他方、コントローラ140の出力インターフェイスには、例えばエンジン6の負荷(出力)を調節制御する電子ガバナ198、エンジン6の回転数が所定値となるように燃料噴射ポンプ199のラック位置を調節するラックアクチュエータ202、変速アクチュエータとしての電動モータ170、液晶表示装置75等が接続されている。
【0140】
(7).自動車速制御の態様
次に、図11のフローチャート及び図12のタイムチャートを参照しながら、自動車速制御の一例について説明する。
【0141】
車速制御手段としてのコントローラ190は、ラック位置センサ200の検出情報から得られたエンジン負荷率LFが設定負荷率LFa以上になると、直進用HST式変速機構35の直進用回動軸105が連係機構171を介して矢印SF方向(前進減速方向)に回動するように電動モータ170を駆動させ、その後エンジン負荷率LFが復帰負荷率LFb以下になると、直進用回動軸105が連係機構171を介して元の状態まで矢印SC方向(前進増速方向)に復帰回動するように電動モータ170を駆動させ、その結果、刈取部3や脱穀部8の回転駆動を一定に保持するという自動車速制御を実行する。
【0142】
ここで、自動車速スイッチ82は入り状態に設定されているものとする。また、設定負荷率LFaは負荷率設定ダイヤル83にて予め設定され、復帰負荷率LFbと共にコントローラ190のRAM193に記憶されているものとする。また、設定待機時間Twも待機時間設定器98にて予め設定され、コントローラ190のRAM193に記憶されているものとする。
【0143】
また、後述する減速時間Trに関するデータは、例えばコントローラ190のROM192等に記憶させているものとする。減速時間Trとは自動車速制御における強制減速動作に要する時間のことである(図12参照)。この減速時間Trが短過ぎると、強制減速時にオペレータが慣性力にて操縦座席70から前方につんのめるおそれがあるし、逆に長過ぎると、減速が緩やか過ぎて刈取脱穀作業のスムーズな履行に支障をきたすおそれがある。そこで、実施形態の減速時間Trは、上記のいずれの問題も生じ難い程度の所定値(一定値)に設定されている。なお、この場合は、減速時間Trのほうが設定待機時間Twより十分に長い。
【0144】
まず、自動車速制御のスタートに続いて、刈取クラッチセンサ194の検出情報に基づいて刈取クラッチが入り状態か否かをを判別する(ステップS1)。刈取クラッチが切り状態であると判断されたときは(S1:NO)、コンバインが刈取脱穀作業を行っていないことを意味するので、そのままリターンする。
【0145】
刈取クラッチが入り状態であると判断されたときは(S1:YES)、少なくとも刈取部3への動力伝達がなされ、刈取脱穀作業の実行中又は準備完了状態であることを意味する。そこで、次に、シートスイッチ92及び左右両ステップスイッチ94のうち少なくとも1つが入り状態か否かを判別する(ステップS2)。シートスイッチ92及び左右両ステップスイッチ94が全て切り状態であると判断されたときは(S2:NO)、操縦部5にオペレータが居ないことを意味するので、この状態で走行機体1が自動的に増減速する自動車速制御を実行するのを回避すべく、そのままリターンする。
【0146】
シートスイッチ92及び左右両ステップスイッチ94のうち少なくとも1つが入り状態であると判断されたときは(S2:YES)、操縦部5にオペレータが居ることを意味するので、次いで、主変速位置センサ147の検出情報に基づいて主変速レバー77を前方に傾動操作しているか否かを判別する(ステップS3)。主変速レバー77を前方に傾動操作していない(中立又は後傾している)と判断されたときは(S3:NO)、走行機体1が停止又は後退動している状態であり、かかる状態で刈取脱穀作業をすることはまずないから、そのままリターンする。
【0147】
主変速レバー77を前方に傾動操作していると判断されたときは(S3:YES)、走行機体1が前進動している状態であり、自動車速制御の実行に支障がないから、次いで、負荷率設定ダイヤル83の設定値である設定負荷率LFaと、復帰負荷率LFbと、車速センサ197の検出値(走行機体1の車速V)と、ラック位置センサ200の検出値(エンジン負荷)とを読み込み(ステップS4)、該エンジン負荷に基づいて現在のエンジン負荷率LFを演算する(ステップS5)。
【0148】
次いで、現在のエンジン負荷率LFがステップS4にて読み込まれた設定負荷率LFa以上であるか否かを判別する(ステップS6)。現在のエンジン負荷率LFが設定負荷率LFaより小さいと判断されたときは(S6:NO)、刈取部3や脱穀部8ひいてはエンジン6にかかる負荷が小さく、刈取脱穀作業に支障がない状態であるから、そのままリターンする。
【0149】
現在のエンジン負荷率LFが設定負荷率LFa以上であると判断されたときは(S6:YES、図12のT1の時点(このときのエンジン負荷率はLF1)参照)、例えば大量の刈取穀稈を処理している等の理由で、刈取部3や脱穀部8ひいてはエンジン6に大きな負荷がかかっている状態である。このような状態で刈取脱穀作業を続行すると、エンジン6が過負荷で停止する(エンジンストップする)おそれがある。
【0150】
そこで、この場合は、ステップS4にて読み込まれた時点の車速V(図12でV1と表記)と、コントローラ190のROM192に予め記憶された関係式又は制御マップとから、自動車速制御実行時の減速量vr(=A×V)を算出する(ステップS7)。そして、電動モータ170の駆動にて、直進用HST式変速機構35の直進用回動軸105を連係機構171を介して矢印SF方向(前進減速方向)に回動させることによって、所定の減速時間Tr(図12ではTr=T2−T1)を要して、走行機体1の前進方向の車速Vを減速量vrだけ減速させ(図12にV2と表記)、これに連動してエンジン負荷率LFを適宜低下させる(ステップS8、図12のT2の時点(このときのエンジン負荷率はLF2)参照)。
【0151】
このように、減速前の車速Vに比例して減速量vrが大きくなる制御を採用すると、走行機体1の前進方向の車速Vが高速であれば、大きく減速することによってエンジン負荷率LFを速やかに低くできる。また、車速Vが低速であれば、減速量vrをできるだけ小さく抑えて、刈取部及び脱穀部の回転維持、ひいては刈取脱穀作業の能率維持を図れる。従って、そのときの車速に見合った適切な自動車速制御を実行でき、刈取脱穀作業の効率化に寄与できるのである。
【0152】
走行機体1の前進方向の車速Vを減速量vrだけ減速させた後は、再び車速センサ197の検出値(走行機体1の車速V)と、ラック位置センサ200の検出値(エンジン負荷)とを読み込み(ステップS9)、該エンジン負荷に基づいて現在のエンジン負荷率LFを演算する(ステップS10)。
【0153】
そして、ステップS10にて求められた現在のエンジン負荷率LFがステップS4にて読み込まれた復帰負荷率LFb以下であるか否かを判別する(ステップS11)。現在のエンジン負荷率LFが復帰負荷率LFb以下であると判断されたときは(S11:YES)、エンジン負荷が十分に低下し、刈取脱穀作業に支障がない状態になったことを意味するので、後述するステップS15へ移行する。
【0154】
現在のエンジン負荷率LFが復帰負荷率LFbより大きいと判断されたときは(S11:NO、図12のT3の時点(このときのエンジン負荷率はLF2)参照)、エンジン負荷が未だ十分に低下していないことを意味するので、次いで、ステップS9にて読み込まれた時点の車速Vと、コントローラ190のROM192に予め記憶された関係式又は制御マップとから、自動車速制御実行時の減速量vr(=A×V)を新たに算出する(ステップS12)。
【0155】
次いで、ステップS8における走行機体1の減速動作が終了してからの時間T(待機時間)が設定待機時間Tw以上か否か、走行機体1の減速動作が終了してから設定待機時間Twが経過したか否かを判別する(ステップS13)。
【0156】
設定待機時間Twが経過していないときは(S13:NO)、再びステップS13へ戻る。設定待機時間Twが経過しているときは(S13:YES、図12ではTw=T3−T2のとき)、次いで、電動モータ170の駆動にて、直進用HST式変速機構35の直進用回動軸105を連係機構171を介して矢印SF方向(前進減速方向)に回動させることによって、所定の減速時間Tr(図12ではTr=T4−T3)を要して、走行機体1の前進方向の車速Vを所定時間で減速量vrだけ減速させ(図12にV3と表記)、これに連動してエンジン負荷率LFを再び適宜低下させる(ステップS14、図12のT4の時点(このときのエンジン負荷率はLF3)参照)。そして、ステップS9に戻る。
【0157】
すなわち、ステップS9〜S14の一連の流れから明らかなように、現在のエンジン負荷率LFが復帰負荷率LFb以下になるまで、走行機体1の強制減速動作が繰り返されるのである。
【0158】
このように制御すると、強制減速動作の繰り返しにてエンジン負荷率LFを確実に低減できるから、負荷変動の激しい普通型コンバインであっても、刈取部3の詰まりや脱穀部8の回転低下ひいてはエンジンストップの抑制に効果的であり、自動車速制御の実効性(安定性)の更なる向上を図れるのである。
【0159】
ステップS15では、現在のエンジン負荷率LFが既に復帰負荷率LFb以下になっているので、ステップS14における走行機体1の減速動作が終了してからの時間T′(待機時間)が設定待機時間Tw以上か否かを判別する。
【0160】
設定待機時間Twが経過していないときは(S15:NO)、再びステップS15へ戻る。設定待機時間Twが経過しているときは(S15:YES、図12ではTw=T5−T4のとき)、電動モータ170の駆動にて、直進用HST式変速機構35の直進用回動軸105を連係機構171を介して矢印SC方向(前進減速方向)に回動させ、所定時間で、走行機体1の前進方向の車速Vを主変速レバー77の前向き傾動操作位置に対応した元の車速V1にまで復帰増速させる(ステップS16、図12のT5の時点以降参照)。その後、リターンするのである。
【0161】
実施形態においては、操縦部5内のサイドパネル体76上に待機時間設定器98が配置されているので、当該待機時間設定器98の設定操作により、自動車速制御における先の減速動作終了時点から次の減速動作又は復帰増速動作開始時点までの待機時間Twを簡単に変更・調節できる。
【0162】
従って、刈取脱穀作業をできるだけ手早く(スムーズに)行いたいときは設定待機時間Twを短くすればよいし、走行機体1がハンチングに近い状態で進行するのを抑制して乗り心地及び操縦安全性の向上を図りたいときは設定待機時間Twを長くすればよい。つまり、作業状況やオペレータの好み等に合わせた状態で自動車速制御を実行できる。
【0163】
また、操縦部5内のサイドパネル体76上に負荷率設定ダイヤル83も配置されているので、当該負荷率設定ダイヤル83の設定操作により、エンジン6が過負荷状態か否か、すなわち走行機体1の前進方向の車速Vを強制減速するか否かを判別するための基準値を任意(実施形態では70〜100%の範囲)に調節できる。このため、自動車速制御を実行する際に、作業状況やオペレータの好み等に合わせた適切な設定を簡単に採用でき、この点でも、自動車速制御の適正化を図れるのである。
【0164】
なお、実施形態では、設定負荷率LFaが決まるとこの値に対応した復帰負荷率LFbが自動的に定まるという構成を採用することにより、復帰負荷率LFbについての手動設定の手間を省略している。この点ではオペレータの操作負担の抑制に寄与している。
【0165】
(8).自動車速制御の別例
図13及び図14は自動車速制御の別例を示している。この別例では、コントローラ190が、走行機体1の車速を減速する制御を一旦実行した後、ラック位置センサ200の検出情報から得られたエンジン負荷率LFが復帰負荷率LFbより大きく且つ設定負荷率LFaより小さくなると(LFb<LF<LFa)、直進用HST式変速機構35の直進用回動軸105を位置保持させて、走行機体1の車速をその時点の状態で維持するように制御するという点において、前述の例と相違している。その他の構成は前述の例と同じである。
【0166】
別例における自動車速制御のスタートからステップT10までの制御態様は、前述の例におけるスタートからステップS10までの制御態様(図11参照)と同様である。
【0167】
ステップT10にて現在のエンジン負荷率LFを演算した後は、このエンジン負荷率LFがステップT4にて読み込まれた復帰負荷率LFb以下であるか否かを判別する(ステップT11)。現在のエンジン負荷率LFが復帰負荷率LFb以下であると判断されたときは(T11:YES)、エンジン負荷が十分に低下し、刈取脱穀作業に支障がない状態になったことを意味するので、ステップT16へ移行する。
【0168】
ステップT16においては、現在のエンジン負荷率LFが既に復帰負荷率LFb以下になっているので、走行機体1の先の減速動作が終了してからの時間T′(待機時間)が設定待機時間Tw以上か否かを判別する。
【0169】
設定待機時間Twが経過していないときは(T16:NO)、再びステップT16へ戻る。設定待機時間Twが経過しているときは(T16:YES)、電動モータ170の駆動にて、直進用HST式変速機構35の直進用回動軸105を連係機構171を介して矢印SC方向(前進減速方向)に回動させ、所定時間で、走行機体1の前進方向の車速Vを主変速レバー77の前向き傾動操作位置に対応した元の車速V1に向けて復帰増速させる(ステップT17)。その後、リターンする。
【0170】
一方、ステップT11において、現在のエンジン負荷率LFが復帰負荷率LFbより大きいと判断されたときは(T11:NO)、次いで、現在のエンジン負荷率LFが設定負荷率LFa以上であるか否かを再び判別する(ステップT12)。
【0171】
現在のエンジン負荷率LFが設定負荷率LFa以上であると判断されたときは(T12:YES、図14のT2′の時点(このときのエンジン負荷率はLF1′)参照)、エンジン負荷が未だ低下していないことを意味するので、次いで、ステップT9にて読み込まれた時点の車速Vと、コントローラ190のROM192に予め記憶された関係式又は制御マップとから、自動車速制御実行時の減速量vr(=A×V)を新たに算出する(ステップT13)。
【0172】
次いで、走行機体1の先の減速動作が終了してからの時間T(待機時間)が設定待機時間Tw以上か否か、走行機体1の減速動作が終了してから設定待機時間Twが経過したか否かを判別する(ステップT14)。
【0173】
設定待機時間Twが経過していないときは(T14:NO)、再びステップT14へ戻る。設定待機時間Twが経過しているときは(T14:YES、図14ではTw=T3′−T2′のとき)、次いで、電動モータ170の駆動にて、直進用HST式変速機構35の直進用回動軸105を連係機構171を介して矢印SF方向(前進減速方向)に回動させることによって、所定の減速時間Tr(図14ではTr=T4′−T3′)を要して、走行機体1の前進方向の車速Vを所定時間で減速量vrだけ減速させ(図14にV3′と表記)、これに連動してエンジン負荷率LFを再び適宜低下させる(ステップT15、図14のT4′の時点(このときのエンジン負荷率はLF2′)参照)。そして、ステップT9に戻る。
【0174】
すなわち、ステップT9〜T15の一連の流れから明らかなように、現在のエンジン負荷率LFが設定負荷率LFa以下になるまで、走行機体1の強制減速動作が繰り返されるのである。
【0175】
ステップT12において、現在のエンジン負荷率LFが設定負荷率LFaより小さいと判断されたときは(T12:NO)、エンジン負荷率LFが復帰負荷率LFbより大きく且つ設定負荷率LFaより小さくなった状態であるので(LFb<LF<LFa、図14のT4′の時点(このときのエンジン負荷率はLF2′)参照)、次いで、直進用HST式変速機構35の直進用回動軸105を位置保持させて、走行機体1の車速Vをその時点(ステップT9にて読み込んだ車速V、図14にV3′と表記)の状態で維持する(ステップT18)。その後、リターンする。
【0176】
このように制御すると、自動車速制御の実行時に、エンジン負荷率LFが復帰負荷率LFbより大きく且つ設定負荷率LFaより小さくなれば、その時点での所定車速Vを維持した状態で走行機体1が走行することになる。従って、自動車速制御実行中の車速変動が極力抑えられ、当該制御実行中の乗り心地の悪化を抑制できるのである。
【0177】
(9).その他
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば、本願発明は、前述のような普通型コンバインに限らず、自走自脱型コンバインやトラクタ等の農作業機やクレーン車等の特殊作業用車両のような各種作業車両に対して広く適用できる。また、前述の実施形態に採用されたエンジンはいずれもディーゼル式のものであったが、ガソリン式エンジンであってもよい。この場合、燃料噴射ポンプは、気化器における燃料調節用のスロットル弁の箇所に配置される。スロットル弁の移動位置を調節する手段としては、該スロットル弁に取り付けられた弁操作軸を回動させる電磁ソレノイド等のアクチュエータを採用すればよい。スロットル弁の移動位置検出手段(特許請求の範囲に記載した負荷検出手段に相当する)は、該スロットル弁の回動角度を検出するポテンショメータ等の回動角センサを用いればよい。
【0178】
また、前述の実施形態では、自動車速制御においてエンジンの過負荷が解消するまで繰り返し減速する形式を採用したが、これに限らず、自動車速制御において1回減速すれば、その後復帰増速する形式(減速動作と復帰増速動作とが1対1対応した形式)であってもよいことはいうまでもない。
【0179】
その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】コンバインの平面図である。
【図2】コンバインの走行駆動系統を示すスケルトン図である。
【図3】操縦部の平面図である。
【図4】サイドコラムの斜視図である。
【図5】主変速レバー及び操向ハンドルと油圧式駆動手段との連結関係を模式的に示す説明図である。
【図6】デテント手段と連係機構と電動モータとの関係を示す正面図である。
【図7】図6のVII−VII視側断面図である。
【図8】(a)は直進用デテント杆を前進増速方向に回動させた状態を示す図、(b)は電動モータの駆動にてセクタギヤ及び中継アームを最大強制減速位置に回動させた状態を示す図、(c)は電動モータの駆動にてセクタギヤ及び中継アームを初期位置に復帰回動させた状態を示す図である。
【図9】コントローラの機能ブロック図である。
【図10】走行機体の車速と減速量との関係を示す制御マップの図である。
【図11】自動車速制御の一例を示すフローチャートである。
【図12】自動車速制御の一例を示すタイムチャートである。
【図13】自動車速制御の別例を示すフローチャートである。
【図14】自動車速制御の別例を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0181】
1 走行機体
2 走行クローラ
3 刈取部
5 操縦部
6 エンジン
31 油圧式駆動手段
35 直進用HST式変速機構
36 第1油圧ポンプ
37 第1油圧モータ
38 旋回用HST式変速機構
39 第2油圧ポンプ
40 第2油圧モータ
70 操縦座席
73 操向ハンドル
76 サイドパネル体
77 主変速レバー
82 自動車速スイッチ
83 負荷率設定ダイヤル
92 シートスイッチ
94 ステップスイッチ
98 待機時間設定手段としての待機時間設定器
100 機械的切換手段
101 二重軸
104 直進用リンク機構
105 直進用回動軸
106 旋回用リンク機構
107 旋回用回動軸
115 直進用操作アーム
116 直進用連動杆
132 直進用デテント手段
133 旋回用デテント手段
135 直進用デテント杆
135b 縦杆部
143 ねじりばね
170 電動モータ
171 連係機構
173 ピニオンギヤ
174 セクタギヤ
176 中継アーム
177 連係ロッド
179 ガイド溝穴
180 枢支ピン
190 車速制御手段としてのコントローラ
194 刈取クラッチセンサ
197 車速センサ
198 燃料供給手段としての燃料噴射ポンプ
200 負荷検出手段としてのラック位置センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に搭載されたエンジンからの動力を、油圧式駆動手段を介して作業部と走行部とに伝達するように構成されており、
前記エンジンへの燃料供給手段に関連させて前記エンジンの負荷を検出する負荷検出手段と、
前記エンジンの過負荷時に前記走行機体の車速を減速し、前記過負荷が解消すると前記走行機体の車速を減速前の元の車速にまで復帰増速するという自動車速制御を実行する車速制御手段と、
前記自動車速制御において先の減速動作終了時点から次の復帰増速動作開始時点までの待機時間を手動設定するための待機時間設定手段と
を備えており、
前記車速制御手段は、先の減速動作が終了してから、前記待機時間設定手段にて予め設定された設定待機時間を経たのち、次の復帰増速動作を行うように制御することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
走行機体に搭載されたエンジンからの動力を、油圧式駆動手段を介して作業部と走行部とに伝達するように構成されており、
前記エンジンへの燃料供給手段に関連させて前記エンジンの負荷を検出する負荷検出手段と、
前記エンジンの過負荷時に当該過負荷が解消するまで前記走行機体の車速を繰り返し減速し、前記過負荷が解消すると前記走行機体の車速を減速前の元の車速にまで復帰増速するという自動車速制御を実行する車速制御手段と、
前記自動車速制御において先の減速動作終了時点から次の減速動作又は復帰増速動作開始時点までの待機時間を手動設定するための待機時間設定手段と
を備えており、
前記車速制御手段は、先の減速動作が終了してから、前記待機時間設定手段にて予め設定された設定待機時間を経たのち、次の減速動作又は復帰増速動作を行うように制御することを特徴とする作業車両。
【請求項3】
前記エンジンが過負荷のときに相当するしきい値としての設定負荷率を手動設定するための負荷率設定手段を更に備えており、
前記車速制御手段は、前記負荷検出手段の検出情報から得られるエンジン負荷率が前記設定負荷率以上になると、前記エンジンが過負荷であると判断して前記走行機体の車速を減速する一方、
前記エンジン負荷率が前記設定負荷率の値に応じて定まる復帰負荷率以下になると、前記エンジンの過負荷が解消したと判断して前記走行機体の車速を減速前の元の車速にまで復帰増速するように制御することを特徴とする請求項1又は2に記載した作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−61617(P2008−61617A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245146(P2006−245146)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】