説明

作業車両

【課題】フィルタを簡易に交換できる作業車両を提供すること。
【解決手段】車体11内の空間ER内に内燃機関EGが配置された作業車両(フォークリフト)10は、車体11に形成され、かつ、空間ERと車体11外とを連通させる開口部111と、開口部111を開閉する蓋部材22と、内燃機関EG内を循環するオイルを清浄化する清浄装置31とを備える。清浄装置31は、内燃機関EG内を循環するオイルの一部が内部を流通する第1ホース32と、第1ホース32からオイルが流入する装置本体34と、装置本体34に着脱自在に設けられ、かつ、装置本体34に流入したオイルを清浄化するオイルフィルタ36と、オイルフィルタ36により清浄化されたオイルを内燃機関EGに供給する第2ホース33とを備える。装置本体34は、蓋部材22の近傍で、かつ、内燃機関EGから離間した位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関を有するフォークリフト等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車両として、車体前部に鉛直に立設された昇降マストと、当該昇降マストに沿って昇降するフォーク爪と、当該フォーク爪を昇降駆動するリフトシリンダとを備えたフォークリフトが知られている。このようなフォークリフトとして、リフトシリンダの駆動及び車両走行の動力源となるエンジンを備えたエンジン式フォークリフトが知られている。
【0003】
ところで、4ストローク式のガソリンエンジン及びディーゼルエンジンでは、内部にオイル(エンジンオイル)を循環させることで、当該エンジンの潤滑、冷却、気密、清浄分散及び防錆・防食を図っているが、このようなオイルには、使用に伴って不純物(金属粉やスラッジ)等が含まれるようになる。このため、オイルをろ過して清浄化するフィルタを備えたエンジンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載のエンジンでは、クランクケースの側面に潤滑オイル用のカートリッジ式オイルフィルタが装着されている。このエンジン内部のオイルは、当該オイルフィルタを通過する過程で、ろ過されて清浄化され、再びエンジン内部に流通する。
【0004】
【特許文献1】特開平9−25811号公報(図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のエンジンでは、フィルタがクランクケースの側方に取り付けられているため、フィルタの交換作業が煩雑であるという問題がある。
具体的に、フォークリフト等の作業車両では、エンジンは、車体内に形成され、かつ、蓋部材により覆われるエンジンルーム内に配置されることが一般的であるが、前述の特許文献1に記載のエンジンのように、クランクケースの側方にフィルタが位置していると、エンジンルーム内のエンジンと車体との隙間に手を挿し入れてフィルタを取り外す作業を行わねばならない。このため、フィルタの交換作業を行いづらいという問題がある。特に、エンジンを停止させてから間を置かずにフィルタを交換する場合には、エンジン自体が高温であるため、更に作業性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、フィルタを簡易に交換することができる作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した目的を達成するために、本発明の請求項1に係る作業車両は、車体内に形成された空間内に内燃機関が配置された作業車両であって、前記車体に形成され、かつ、前記空間と前記車体外とを連通させる開口部と、前記開口部を開閉する蓋部材と、前記内燃機関内を循環するオイルを清浄化する清浄装置とを備え、前記清浄装置は、一端が前記内燃機関に接続され、かつ、前記内燃機関内を循環するオイルの一部が内部を流通する第1ホースと、前記第1ホースの他端と接続され、かつ、当該第1ホースからオイルが流入する装置本体と、前記装置本体に着脱自在に設けられ、かつ、当該装置本体に流入したオイルを清浄化するオイルフィルタと、一端及び他端が前記装置本体及び前記内燃機関にそれぞれ接続され、前記オイルフィルタにより清浄化されたオイルを前記内燃機関に供給する第2ホースとを備え、前記装置本体は、前記蓋部材近傍で、かつ、前記内燃機関から離間した位置に配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に係る作業車両は、請求項1に記載の作業車両において、前記オイルフィルタは、前記装置本体に対して前記開口部の開口面に沿う方向に着脱されることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に係る作業車両は、請求項1又は請求項2に記載の作業車両において、前記蓋部材は、当該作業車両における前記内燃機関の前側に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上において、本発明の請求項1に係る発明によれば、蓋部材を開放することにより、オイルフィルタが装着された清浄装置の装置本体を露出させることができる。これによれば、エンジンの側方にオイルフィルタが設けられていた前述の構成に比べ、内燃機関と車体との間の狭い隙間に手を挿し入れる必要がないだけでなく、内燃機関の熱による作業効率の低下を抑制することができる。従って、オイルフィルタの交換作業を簡易に行うことができる。
【0011】
本発明の請求項2に係る発明によれば、オイルフィルタの軸方向が、開口部の開口面に沿うこととなるので、オイルフィルタの交換時に、当該開口面に対する垂直方向(開口部が上方に開口している場合の上方向)から、フィルタレンチ等の工具をオイルフィルタに係合させることができる。従って、オイルフィルタに工具を係合させる方向が、当該開口部の開口面に沿う方向(前述の場合の水平方向)である場合に比べ、オイルフィルタに工具を係合させやすくすることができる。
また、この際、オイルフィルタは装置本体に対して、前述の開口面に沿う方向に着脱されるので、オイルフィルタの着脱の方向が、当該開口面に対する垂直方向である場合に比べ、オイルフィルタの着脱に際して、他の部材が邪魔になることを抑えることができる。
従って、オイルフィルタの交換作業をより一層簡易に行うことができる。
【0012】
本発明の請求項3に係る発明によれば、蓋部材は、車体における内燃機関の前側に設けられている。ここで、車体における内燃機関の後側には、ラジエタ等の冷却系や、マフラ等の排気系が配置されていることが多い。このため、内燃機関の後側にオイルフィルタが配置されていると、これら冷却系及び排気系からの熱により、オイルフィルタの交換時の作業効率が低下する。これに対し、蓋部材、ひいては、当該蓋部材の下方に配置される装置本体及びオイルフィルタが内燃機関の前側に位置することにより、これらの熱の影響を受けることなく、オイルフィルタを交換することができる。従って、オイルフィルタの交換時の作業効率の低下を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
〔フォークリフトの概略構成〕
図1及び図2は、本実施形態に係るフォークリフト10を示す左側面図及び平面図である。
本実施形態に係るフォークリフト10は、図1及び図2に示すように、車体11の前後にそれぞれ左右の前輪12及び後輪13を備えた4輪型の作業車両である。この車体11内には、エンジンルームER(図3及び図4参照)が形成され、当該エンジンルームER内には、前輪12及び後輪13の駆動力を供給する内燃機関としてのエンジンEG(図1)が収容されている。すなわち、本実施形態のフォークリフト10は、エンジン式のフォークリフトである。なお、本発明のフォークリフトとしては、後輪13が1つだけの3輪型であってもよい。
【0014】
車体11の前側には、荷役用の作業機14が設けられている。この作業機14は、鉛直に立設された昇降マスト15と、当該昇降マスト15に沿って昇降するフォーク爪16と、当該フォーク爪16を昇降駆動するリフトシリンダ17と、車体11に対して作業機14全体を所定角度範囲で前後に傾斜させるチルトシリンダ18とを備えている。これらのうち、リフトシリンダ17及びチルトシリンダ18の駆動力は、エンジンEGにより供給される。
【0015】
車体11には、エンジンEGの上部に対応する位置に、オペレータ(操作者)が着座するための運転席19が設けられている。この運転席19の上方は、車体11上に取り付けられたヘッドガード20で覆われている。
また、運転席19は、下方のフードパネル21に一体的に設けられており、当該フードパネル21は、上下に開閉自在に車体11に設けられている。このフードパネル21の下方の空間は、エンジンルームER(図3参照)として形成されている。
【0016】
フードパネル21の前方には、エンジンルームERと連通する開口部111を覆い、かつ、開閉自在な蓋部材としてのフロアカバー22が設けられている。このフロアカバー22を開放することで、後述する清浄装置31を構成するオイルフィルタ36(図3及び図4参照)の交換等を行うことができる。
また、フードパネル21の後方には、サブボンネット23が設けられている。このサブボンネット23を開放することで、ラジエータ(図示省略)へのエンジン冷却水の補給等を行うことができる。
【0017】
車体11の後側には、カウンターウェイト24が設けられている。このカウンターウェイト24は、車体11前後の重量バランスを調節するためのものであり、当該カウンターウェイト24には、内部を前後に貫通する風洞25が形成されている。そして、エンジンEGの冷却ファンにより車体11の下部側から吸引された冷却空気は、当該エンジンEG表面及びラジエータ(図示省略)を冷却した後、風洞25を通して後方側に排出される。また、風洞25の下方には、排気口26(図1)が形成されており、当該排気口26から、マフラ等の排気装置(図示省略)を介して、エンジンEGの排出ガスが排出される。
【0018】
図3及び図4は、エンジンルームER内に収納されたエンジンEG及び清浄装置31を示す左側面図及び平面図である。
エンジンEGは、前述のように、車体11内に形成されたエンジンルームER内に収納されている。このエンジンEGには、図3及び図4に示すように、ターボチャージャーとして構成された過給器30と、清浄装置31とが接続されている。このうち、過給器30を構成し、かつ、内部にタービンを収納するタービンハウジング301は、エンジンEGの左側略中央に固定されている。
【0019】
〔清浄装置の構成〕
清浄装置31は、エンジンEG内部を循環して当該エンジンEGの潤滑、冷却、気密、清浄分散及び防錆・防食を図るオイルを清浄化する。この清浄装置31は、一対のホース32,33と、装置本体34と、固定部材35と、オイルフィルタ36とを備えて構成されている。
【0020】
ホース32は、本発明の第1ホースに相当し、当該ホース32の一端は、エンジンEGにおけるタービンハウジング301の下方に形成された流出口EG1と接続され、他端は、装置本体34に接続されている。そして、図示しないオイルポンプの駆動により、エンジンEG内部を循環するオイルの一部がホース32内に圧送され、当該オイルは、装置本体34に供給される。なお、流出口EG1は、エンジンEGの下部に設けられたオイルパンEG3の底部近傍に形成されている。
【0021】
ホース33は、本発明の第2ホースに相当し、当該ホース33の一端は、エンジンEGにおけるタービンハウジング301の下方で、かつ、流出口EG1の上方に形成された流入口EG2と接続され、他端は、装置本体34に接続されている。そして、ホース33内には、オイルフィルタ36を介して清浄化されたオイルが流入し、当該オイルは流入口EG2を介してエンジンEG内に供給される。
【0022】
装置本体34は、エンジンルームER内におけるエンジンEGから離れた位置に、平面視略L字状を有する固定部材35により車体11に固定されている。具体的に、装置本体34は、エンジンEGから離間し、かつ、フロアカバー22の直下に応じた位置に固定されている。この装置本体34には、オイルフィルタ36が取り付けられている。
【0023】
オイルフィルタ36は、装置本体34に流入したオイルを清浄化するものであり、カートリッジ361内部に設けられたフィルタ材を交換可能に構成されたフィルタ交換式のオイルフィルタである。このオイルフィルタ36は、フィルタレンチ(図示省略)により、側方(水平方向であり、開口部111の開口面に沿う方向)から装置本体34に着脱される。
【0024】
このため、オイルフィルタ36を交換する際には、フロアカバー22を取り外した後、開口部111を介してエンジンルームER内にフィルタレンチを上方(開口部111の開口面に対する垂直方向)から挿し込み、オイルフィルタ36の端部(装置本体34から離間する側の端部)をフィルタレンチにより把持させる。そして、フィルタレンチにより、オイルフィルタ36を回転させることで、装置本体34からオイルフィルタ36を、水平方向に沿って取り外すことができる。また、新たなオイルフィルタ36を取り付ける場合には、水平方向から装置本体34にオイルフィルタ36を当接させた後、フィルタレンチを用いて当該オイルフィルタを回転させることにより、装置本体34にオイルフィルタ36を取り付けることができる。
【0025】
このような構成により、エンジンEGの側方にオイルフィルタ36が設けられている場合に比べ、エンジンEGからの熱の影響を作業者が受けづらくすることができるほか、狭いエンジンルームER内における車体11とエンジンEGとの間に手を挿し入れる必要がないので、オイルフィルタ36の交換作業を行いやすくすることができる。
更に、装置本体34に対してオイルフィルタ36が水平方向に脱着されるので、フィルタレンチをオイルフィルタ36に係合させやすくすることができ、当該オイルフィルタ36の交換作業を一層行いやすくすることができる。
【0026】
なお、このような装置本体34及びオイルフィルタ36は、前述のように、フロアカバー22の下方に設けられている。換言すると、清浄装置31は、車体11におけるエンジンEGの前方側に設けられている。
ここで、前述のように、車体11におけるエンジンEGの後方側には、カウンターウェイト24内にラジエタ等の冷却系、及び、排気装置等の排気系が配置されている。このため、エンジンEGの後方側に清浄装置31を配置することが困難であるだけでなく、配置した場合には、オイルフィルタ36の交換時に、これら冷却系及び排気系からの熱の影響を受け、作業効率が低下する。
これに対し、これら冷却系及び排気系からの熱の影響を受けない前方側に、清浄装置31が設けられていることにより、オイルフィルタ36の交換作業を行いやすくすることができる。
【0027】
〔実施形態の変形〕
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、開口部111は、車体11の上方に開口し、車体11には、当該開口部111を開閉する蓋部材としてのフロアカバー22が設けられるとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、蓋部材により開閉される開口部は、車体11の側方に開口していてもよい。このような場合、当該蓋部材の開放に伴って、清浄装置の装置本体及びオイルフィルタが露出するように構成されていればよい。
【0028】
前記実施形態では、オイルフィルタ36は、開口部111の開口面に沿う方向である水平方向に沿って装置本体34に着脱されるとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、前述のフィルタレンチが係合可能であれば、オイルフィルタは、上下方向等の他の方向に沿って装置本体34に対して着脱される構成としてもよい。
【0029】
前記実施形態では、フロアカバー22、清浄装置31の装置本体34及びオイルフィルタ36は、車体11におけるエンジンEGの前側に配置されるとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、これらの配置位置は、オイルフィルタの交換の作業効率等を考慮して、適宜設定してよい。
【0030】
前記実施形態では、内燃機関として、過給器30が設けられたエンジンEGを挙げたが、本発明はこれに限らず、過給器30は無くてもよい。また、内燃機関としては、ガソリン式及びディーゼル式でもよく、プロパン等の液化ガスを燃料として駆動するエンジンであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、フォークリフトに利用することができるほか、油圧ショベル等の比較的小型の作業車両に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る作業車両を示す左側面図。
【図2】前記実施形態における作業車両を示す平面図。
【図3】前記実施形態におけるエンジン及び清浄装置を示す左側面図。
【図4】前記実施形態におけるエンジン及び清浄装置を示す平面図。
【符号の説明】
【0033】
10…フォークリフト(作業車両)、11…車体、22…フロアカバー(蓋部材)、31…清浄装置、32…ホース(第1ホース)、33…ホース(第2ホース)、34…装置本体、36…オイルフィルタ、111…開口部、EG…エンジン(内燃機関)、ER…エンジンルーム(空間)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体内に形成された空間内に内燃機関が配置された作業車両であって、
前記車体に形成され、かつ、前記空間と前記車体外とを連通させる開口部と、
前記開口部を開閉する蓋部材と、
前記内燃機関内を循環するオイルを清浄化する清浄装置とを備え、
前記清浄装置は、
一端が前記内燃機関に接続され、かつ、前記内燃機関内を循環するオイルの一部が内部を流通する第1ホースと、
前記第1ホースの他端と接続され、かつ、当該第1ホースからオイルが流入する装置本体と、
前記装置本体に着脱自在に設けられ、かつ、当該装置本体に流入したオイルを清浄化するオイルフィルタと、
一端及び他端が前記装置本体及び前記内燃機関にそれぞれ接続され、前記オイルフィルタにより清浄化されたオイルを前記内燃機関に供給する第2ホースとを備え、
前記装置本体は、前記蓋部材近傍で、かつ、前記内燃機関から離間した位置に配置されていることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両において、
前記オイルフィルタは、前記装置本体に対して前記開口部の開口面に沿う方向に着脱されることを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の作業車両において、
前記蓋部材は、
当該作業車両における前記内燃機関の前側に設けられていることを特徴とする作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−292610(P2009−292610A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149114(P2008−149114)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000184643)コマツユーティリティ株式会社 (106)
【Fターム(参考)】