説明

作業車両

【課題】3つの防振部材を介してフレームにエンジンを取り付ける作業車両において、出力軸の回転方向と反対方向へのエンジンの移動を規制できる防振部材を備えた構成を提供する。
【解決手段】トラクタは、エンジン19の後方に1つ配置される後面側防振部材50aと、エンジン19の左右方向の両側にそれぞれ配置される左側防振部材50bと右側防振部材50cを備える。後面側防振部材50aは、機体フレーム30側に固定されるとともにエンジン19側にも固定される。後面側防振部材50aは、フレーム側規制部82及びエンジン側被規制部72によって、出力軸の回転方向と反対方向である右方向へのエンジン19の移動を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振部材を介してフレームにエンジンを取り付ける作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラクタ等の作業車両において、防振部材を介してフレームにエンジンを取り付ける構成が従来から知られている。この種の作業車両を開示するものとして、特許文献1がある。
【0003】
特許文献1は、エンジンの出力部にフライホイールを配置し、前記エンジンの動力がフライホイール及びドライブ軸を介してミッションケースに伝えられるように構成してなる作業車両において、以下の構成を開示する。即ち、作業車両は、前記フライホイール上方のエンジン側部に第1防振部材を配置し、前記フライホイールの設置側面に隣接するエンジンの両側面部に第2防振部材をそれぞれ配置して構成される。そして、側面視で前記エンジンの略対角線方向に前記第1防振部材と第2防振部材とが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−103431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される作業車両は、エンジンの左右両側に配置される2つの第2防振部材と、エンジンのフライホイールが設置される側面に配置される2つの第1防振部材と、の合計4つの防振部材を介して、フレームにエンジンを支持する構成になっている。この構成は、エンジンを安定的に支持できるというメリットがあるものの、部品点数の削減及び支持構造の簡素化という観点から改善の余地があった。
【0006】
なお、特許文献1の構成において部品点数を削減する方法としては、前記第1防振部材を1つにして、合計3つの防振部材によってエンジンを支持することが考えられる。しかしながら、作業車両において大きな負荷がエンジンの出力軸に加わると、当該出力軸を回転させようとする力の反力によって、出力軸の回転方向と反対方向に当該エンジンが移動しようとすることがある。この点、上述の3つの防振部材を介してフレームでエンジンを支持する構成は、4つの防振部材によってエンジンを支持する構成に比べて、エンジンの一側への移動の影響を受け易くなるおそれがあった。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、3つの防振部材を介してフレームにエンジンを取り付ける作業車両において、出力軸の回転方向と反対方向へのエンジンの移動を規制できる防振部材を備えた構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の観点によれば、以下のように構成される作業車両が提供される。即ち、作業車両は、エンジンと、フレームと、第1防振部材と、第2防振部材と、を備える。前記エンジンは、出力軸を有する。前記フレームには、前記エンジンが取り付けられる。前記第1防振部材は、前記フレームに前記エンジンを取り付けるために、当該エンジンの前後方向の一側に1つ配置される。第2防振部材は、前記フレームに前記エンジンを取り付けるために、当該エンジンの左右方向の両側にそれぞれ配置される。また、前記第1防振部材は、エンジン側連結部と、フレーム側連結部と、規制部と、被規制部と、を有する。エンジン側連結部は、前記エンジン側に当該第1防振部材を固定するためのものである。フレーム側連結部は、前記フレーム側に当該第1防振部材を固定するためのものである。規制部は、エンジン側又はフレーム側の何れか一方に配置される。被規制部は、フレーム側又はエンジン側の何れか一方に配置され、前記規制部とともに前記エンジンの左右方向一側への移動を規制する。前記規制部及び前記被規制部によって規制される前記エンジンの移動は、前記出力軸の回転方向と反対方向への前記エンジンの移動である。
【0010】
これにより、回転に抗する向きの大きな負荷が出力軸に加えられたときに、当該出力軸から受けた反力によって起こるエンジンの移動を規制部及び被規制部によって規制できる。
【0011】
前記の作業車両においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記第1防振部材は、前記規制部又は前記被規制部に配置される弾性部材を有する。
【0012】
これにより、弾性部材の弾性変形によって、被規制部が規制部に規制される際の衝撃を緩和でき、防振性を効果的に向上させることができる。
【0013】
前記の作業車両においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、作業車両は、エンジン側又はフレーム側の何れか一方に配置される第2規制部を備える。そして、前記第1防振部材は、フレーム側又はエンジン側の何れか一方に配置され、前記第2規制部に接触することで、前記エンジンの左右方向他側への移動を規制する第2被規制部を有する。
【0014】
これにより、出力軸の回転方向へのエンジンの移動についても、第2規制部と第2被規制部によって規制することができる。これによって、第1防振部材を利用してエンジンの左右方向の移動を規制できる簡素な構成を実現できる。
【0015】
前記の作業車両においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記第1防振部材は、前記エンジンの前方への移動を規制する前方移動規制部及び前方移動被規制部、又は、後方への移動を規制する後方移動規制部及び後方移動被規制部を有する。また、前記第2防振部材は、前記エンジンの後方への移動を規制する後方移動規制部及び後方移動被規制部、又は、前方への移動を規制する前方移動規制部及び前方移動被規制部を有する。そして、前記第1防振部材及び前記第2防振部材によって、前記エンジンの前方向及び後方向の移動を規制する。
【0016】
これにより、エンジンの前後方向の移動を原因とする振動をより効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るトラクタの側面図。
【図2】機体フレームに取り付けられたエンジンの背面斜視図。
【図3】エンジン、機体フレーム及び防振部材の背面図。
【図4】防振部材の構造を示した分解斜視図。
【図5】後面側防振部材と左側防振部材の位置関係を示した拡大側面図。
【図6】防振部材によってエンジンの移動を規制する様子を模式的に示した平面図。
【図7】後面側防振部材の拡大背面図。
【図8】第1変形例の後面側防振部材の拡大背面図。
【図9】第2変形例の後面側防振部材の拡大背面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る作業車両としてのトラクタ10の側面図である。本実施形態のトラクタ10は、農業作業用の作業車両であり、ロータリ、ローダ、プラウ、ボックススクレーパー等の各種のアタッチメント(作業機)を必要に応じて装着し、アタッチメントを用いた各種の作業を行うことができる。なお、以下の説明では、単に「左側」「右側」等というときは、トラクタ10が前進する方向に向かって左側及び右側を意味するものとする。また、単に、「前面側」というときは、トラクタ10の前進する方向を意味し、「後面側」等というときは、トラクタ10の前進する方向と反対方向を意味するものとする。
【0019】
図1に示すように、トラクタ10は、左右一対の前輪14と、左右一対の後輪15と、を備えた四輪駆動式の車体11を有する。車体11の前部にはボンネット20が配置されており、当該ボンネット20の内部にはエンジン19が配置されている。
【0020】
ボンネット20の後方には、オペレータ(運転者)が搭乗するためのキャビン16が配置されている。このキャビン16の内部には、運転操作具及び運転座席等が設けられており、オペレータは、この運転操作具を操作することによって、トラクタ10の走行及び各種のアタッチメントの操作等を行う。
【0021】
キャビン16の下方には、ミッションケース21が配置されている。エンジン19が出力する回転駆動力は、このミッションケース21に入力される。ミッションケース21内には、図略の油圧式無段変速装置が配置されており、この油圧式無段変速装置によってエンジン19の出力が変速されて、前輪14及び後輪15に伝達される。
【0022】
また、ミッションケース21の後端部からは、図略のPTO軸が後方に突出しており、このPTO軸を介して前記アタッチメントにエンジン19の動力が伝達される。
【0023】
本実施形態のエンジン19は、エンジン19の後面側と左右両側に配置される合計3つの防振部材50を介して機体フレーム30に支持されている。次に、エンジン19を機体フレーム30に支持する構成について説明する。図2は、機体フレーム30に取り付けられたエンジン19の背面斜視図である。図3は、エンジン19、機体フレーム30及び防振部材50の背面図である。
【0024】
図2に示すように、エンジン19は、冷却ファン25が前方で、出力軸43が連結されるフライホイール44が後方になるように、機体フレーム30に取り付けられる。図3に示すように、出力軸43は、背面視において(後面側から見たときに)、反時計回りに回転している。この出力軸43の回転駆動力がフライホイール44及びドライブシャフト17を介してミッションケース21に伝達される。
【0025】
エンジン19が取り付けられる機体フレーム30は、機体の前側に配置される一対のフロントフレーム31と、後側に配置される一対のリアフレーム32と、を備える。
【0026】
フロントフレーム31は、前後方向に細長い枠状に構成されており、フロントウェイト18、フロントアクスルハウジング22、エンジン19の前部等を支持する。図3に示すように、フロントフレーム31の左側には防振部材50を取り付けるための左側フレームプレート62が配置されており、右側には防振部材50を取り付けるための右側フレームプレート63が配置されている。
【0027】
また、一対のフロントフレーム31間の幅は、一対のリアフレーム32間の幅より短くなるように構成されており、このフロントフレーム31の後端部にリアフレーム32の前端部が間座33を介して連結されている。
【0028】
リアフレーム32は、前後方向に細長く構成されており、ミッションケース21、リアアクスルハウジング23及びエンジン19の後部等を支持している。また、リアフレーム32の内側には、ブリッジフレーム35が左右方向に横設されている。
【0029】
ブリッジフレーム35の上部には、ブリッジフレーム35から前上方にせり上がるように突出する防振部材支持フレーム61が配置されている。この防振部材支持フレーム61の上面には防振部材50が固定されている。
【0030】
エンジン19の後面には、防振部材50を取り付けるための後面側エンジンプレート40が固定されている。後面側エンジンプレート40は、後方に向かって突出する取付プレート41を有する。取付プレート41は、平面部分が上下方向を向いた平板状に構成されている。
【0031】
防振部材50が防振部材支持フレーム61に固定されるとともに、取付プレート41に固定されることで、エンジン19の後部が防振部材50を介してリアフレーム32に支持される。以下の説明において、エンジン19の後面側に配置される防振部材50のことを後面側防振部材50aと称することがある。
【0032】
また、エンジン19の左側の側面には左側エンジンプレート45が固定されており、右側の側面には右側エンジンプレート46が固定されている。左側エンジンプレート45及び右側エンジンプレート46は、何れも、端面がL字状に構成されている。
【0033】
防振部材50が左側フレームプレート62に固定されるとともに左側エンジンプレート45に固定されることで、エンジン19の前部の左側が防振部材50を介してフロントフレーム31に支持される。同様に、防振部材50が右側フレームプレート63に固定されるとともに右側エンジンプレート46に固定されることで、エンジン19の前部の右側が防振部材50を介してフロントフレーム31に支持される。以下の説明において、エンジン19の左側に配置される防振部材50を左側防振部材50bと称し、エンジン19の右側に位置する防振部材50を右側防振部材50cと称することがある。
【0034】
本実施形態において、後面側防振部材50a、左側防振部材50b及び右側防振部材50cは、何れも同一の構造の防振部材50である。次に、図4を参照して、本実施形態の防振部材50の構造について説明する。図4は、防振部材50の構造を示した分解斜視図である。
【0035】
図4に示すように、防振部材50は、エンジン側ブラケット70と、フレーム側ブラケット80と、ゴム90と、連結部材55と、を主要な構成として備える。
【0036】
エンジン側連結部材としてのエンジン側ブラケット70は、本体部71と、エンジン側被規制部72と、エンジン側被規制部73と、を有する。本体部71は平板状に構成されており、この本体部71がエンジン19側に固定される。エンジン側被規制部72は、本体部71の端部を折り曲げて形成されたものである。エンジン側被規制部73は、エンジン側被規制部72を形成した部分とは異なる端部を、エンジン側被規制部72と同じ側に折り曲げて形成されたものである。エンジン側被規制部72とエンジン側被規制部73は、隣接した位置に形成されている。
【0037】
フレーム側連結部材としてのフレーム側ブラケット80は、本体部81と、フレーム側規制部82と、フレーム側規制部83と、を有する。本体部81は平板状に構成されており、この本体部81が機体フレーム30側に固定される。フレーム側規制部82は、本体部81の端部を折り曲げて形成されたものである。フレーム側規制部83は、フレーム側規制部82を形成した部分とは異なる端部を、フレーム側規制部82と同じ側に折り曲げて形成されたものである。フレーム側規制部82とフレーム側規制部83は、隣接した位置に形成されている。
【0038】
弾性部材としてのゴム90は、ゴム本体部91と、ゴム規制部92と、ゴム規制部93と、を有する。ゴム本体部91、ゴム規制部92及びゴム規制部93は、一体的に形成されている。
【0039】
図4の鎖線に示すように、ゴム本体部91は、エンジン側ブラケット70の本体部71と、フレーム側ブラケット80の本体部71と、によって上下方向に挟み込まれた状態で保持される。ゴム規制部92は、エンジン側被規制部72とフレーム側規制部82とによって水平方向で挟み込まれる。同様に、ゴム規制部93はエンジン側被規制部73とフレーム側規制部83とによって水平方向で挟み込まれる。
【0040】
上側の連結部材55は、エンジン側ブラケット70の上面で固定されるとともに、エンジン19側にも固定される。同様に、下側の連結部材55は、フレーム側ブラケット80の下面で固定されるとともに機体フレーム30(フロントフレーム31又はリアフレーム32)側に固定される。
【0041】
図3に示すように、後面側防振部材50aのエンジン側ブラケット70は後面側エンジンプレート40の取付プレート41に固定され、フレーム側ブラケット80は防振部材支持フレーム61に固定される。左側防振部材50bのエンジン側ブラケット70は左側エンジンプレート45に固定され、フレーム側ブラケット80は左側フレームプレート62に固定される。同様に、右側防振部材50cのエンジン側ブラケット70は右側エンジンプレート46に固定され、フレーム側ブラケット80は右側フレームプレート63に固定される。なお、本実施形態の連結部材55はボルトによって構成されており、ナットでエンジン19側又は機体フレーム30側に固定されている。
【0042】
本実施形態の防振部材50は、エンジン側ブラケット70の2つの方向への移動を規制することで、エンジン19の移動を規制する。この2つの方向とは、図4の太い実線の矢印で示す方向と太い破線の矢印で示す方向である。
【0043】
例えば、エンジン側ブラケット70が実線の矢印の方向に移動しようとすると、エンジン側被規制部73に取り付けられているゴム規制部93が当該エンジン側被規制部73とフレーム側規制部83との間に挟まれた状態で圧縮される。フレーム側規制部83を有するフレーム側ブラケット80は機体フレーム30側に固定されているので、エンジン側ブラケット70はゴム規制部93の許容圧縮量以上移動しなくなる。エンジン19と一体的に移動するエンジン側ブラケット70の移動が規制されるので、エンジン19の実線の矢印の方向への移動も規制される。また、弾性変形するゴム規制部93によって、エンジン19の移動によって生じる振動も抑制される。同様に、エンジン側被規制部72、ゴム規制部92及びフレーム側規制部82によって、破線の矢印の方向へのエンジン側ブラケット70の移動も規制され、エンジン19の移動によって生じる振動も抑制される。このように、本実施形態の防振部材50は、エンジン19の移動を2方向で規制でき、この規制する2方向は互いに直交する関係になっている。
【0044】
次に、後面側防振部材50a、左側防振部材50b及び右側防振部材50cのレイアウトについて説明する。図5は、後面側防振部材50aと左側防振部材50bの位置関係を示した拡大側面図である。図6は、防振部材50によってエンジン19の移動を規制する様子を模式的に示した平面図である。なお、図6中の矢印は、防振部材50によって規制されるエンジン19の移動方向である。図7は、後面側防振部材50aの拡大背面図である。
【0045】
図5に示すように、側面視で、後面側防振部材50aは、エンジン19の重心より上方であって、かつ、フライホイール44の上方に位置するように、防振部材支持フレーム61(リアフレーム32側)に固定されている。また、図3が示すように、本実施形態の後面側防振部材50aは出力軸43の上方に位置している。後面側防振部材50aが、エンジン19の重心よりも上方に配置されているので、例えば、急発進や急加速によってエンジン19が後方に倒れ込むような移動をしようとした場合でも、後面側防振部材50aによってエンジン19の重量をしっかりと受け止めることができる。
【0046】
一方、左側防振部材50bは、後面側防振部材50aより下方であり、かつ、エンジンの重心Gより下方に位置するように、左側フレームプレート62(フロントフレーム31側)に固定されている。また、右側防振部材50cは、後面側防振部材50aより下方であり、かつ、エンジンの重心Gより下方に位置するように、右側フレームプレート63(フロントフレーム31側)に固定されている。左側防振部材50bと右側防振部材50cは、左右方向で見たときに同じ位置になるように配置されている。
【0047】
図6の平面視に示すように、後面側防振部材50aは、エンジン側被規制部72、ゴム規制部92及びフレーム側規制部82によって、出力軸43の回転方向と反対方向である右方向へのエンジン19の移動を規制している。
【0048】
ところで、トラクタ10が急停止したときや、トラクタ10から動力が供給されていたロータリ(アタッチメント)の爪に石等の異物が引っ掛かったとき等に、回転に抗する向きの大きな負荷が出力軸43に加わることがある。このとき、出力軸43を回転させようとする力の反力によって、エンジン19の上部が右方向に移動しようとする。しかし、本実施形態の構成であれば、フレーム側規制部82及びゴム規制部92によって、エンジン側被規制部72と一体的に移動するエンジン19の右方向への移動を規制することができる。また、エンジン側被規制部72が機体フレーム30側に接触したときの衝撃は、ゴム規制部92の弾性変形によって吸収され、エンジン19の右方向への移動を原因とするエンジン19の振動を効果的に低減することができる。
【0049】
また、図7に示すように、後面側エンジンプレート40は、エンジン19の左側の移動を規制するためのプレート規制部42を備える。このプレート規制部42は、後方に突出する平板状に構成されており、平面部分が左右方向を向いている。この構成で、エンジン19と一体的に移動する後面側エンジンプレート40が左側に移動すると、プレート規制部42がフレーム側規制部82に接触し、エンジン19がそれ以上左側に移動しなくなる(図7の鎖線の位置)。
【0050】
また、後面側防振部材50aのエンジン側被規制部73及びフレーム側規制部83によって、例えば、急停止や急減速によって生じるエンジン19の前方への移動が規制されている。
【0051】
図6に示すように、左側防振部材50bは、エンジン19の右方向への移動を規制するとともに、エンジン19の後方への移動を規制するように配置されている。より具体的には、左側防振部材50bのエンジン側被規制部73及びフレーム側規制部83によって、エンジン19の右方向への移動が規制されている。また、左側防振部材50bのエンジン側被規制部72及びフレーム側規制部82によって、エンジン19の後方への移動が規制されている。
【0052】
一方、右側防振部材50cは、エンジン19の左方向への移動を規制するとともに、エンジン19の後方への移動を規制するように配置されている。より具体的には、右側防振部材50cのエンジン側被規制部72及びフレーム側規制部82によって、エンジン19の左方向への移動が規制されている。また、右側防振部材50cのエンジン側被規制部73及びフレーム側規制部83によって、エンジン19の後方への移動が規制されている。
【0053】
左側防振部材50b及び右側防振部材50cは、前後方向の位置が一致するように配置されており、左右方向でエンジン19の移動を規制する方向が互いに反対となっている。これによって、エンジン19の左右方向の移動を効果的に規制するとともに、左右それぞれの防振部材50のゴム90によって左右方向の振動を効果的に低減することが可能になっている。
【0054】
エンジン19の前部を支持する左側防振部材50b及び右側防振部材50cは、エンジン19の後方への移動を規制しており、エンジン19の後部を支持する後面側防振部材50aは、エンジン19の前方への移動を規制するようになっている。このような規制方向の振分けにより、エンジン19の前方向、後方向何れの移動も規制可能な構成が実現されている。この結果、エンジン19の前後方向の移動を効果的に規制するとともに、それぞれの防振部材50のゴム90によって前後方向の振動を効果的に低減することが可能になっている。
【0055】
以上に示したように、本実施形態の作業車両としてのトラクタ10は以下のように構成される。即ち、トラクタ10は、エンジン19と、機体フレーム30と、後面側防振部材50aと、左側防振部材50b及び右側防振部材50cと、を備える。エンジン19は、背面視において左回りに回転する出力軸43を有する(図3を参照)。機体フレーム30には、エンジン19が取り付けられる。後面側防振部材50aは、機体フレーム30にエンジン19を取り付けるために、当該エンジン19の後方に1つ配置される。左側防振部材50b及び右側防振部材50cは、機体フレーム30にエンジン19を取り付けるために、当該エンジン19の左右方向の両側にそれぞれ配置される。また、後面側防振部材50aは、エンジン側ブラケット70と、フレーム側ブラケット80と、フレーム側規制部82、エンジン側被規制部72と、を有する。エンジン側ブラケット70は、エンジン19側に後面側防振部材50aを固定するためのものである。フレーム側ブラケット80は、機体フレーム30側に後面側防振部材50aを固定するためのものである。フレーム側規制部82は、機体フレーム30側のフレーム側ブラケット80に配置される。エンジン側被規制部72は、エンジン19側のエンジン側ブラケット70に配置され、フレーム側規制部82とともにエンジン19の右側への移動を規制する。そして、フレーム側規制部82及びエンジン側被規制部72によって規制されるエンジン19の移動は、出力軸43の回転方向と反対方向である右方向へのエンジン19の移動である。
【0056】
これにより、回転に抗する向きの大きな負荷が出力軸43に加えられたときに、当該出力軸43から受けた反力によって起こるエンジン19の移動をフレーム側規制部82及びエンジン側被規制部72によって規制できる。
【0057】
また、本実施形態のトラクタ10は、以下のように構成される。即ち、後面側防振部材50aは、フレーム側規制部82に配置されるゴム規制部92を有する。
【0058】
これにより、ゴム規制部92の弾性変形によって、エンジン側被規制部72がフレーム側規制部82に規制される際の衝撃を緩和でき、防振性を効果的に向上させることができる。
【0059】
また、本実施形態のトラクタ10は、以下のように構成される。即ち、トラクタ10は、エンジン19側に配置される第2規制部としてのプレート規制部42を備える。そして、後面側防振部材50aのフレーム側規制部82は、機体フレーム30側に配置され、プレート規制部42に接触することで、エンジン19の左側への移動を規制する第2被規制部として機能する。
【0060】
これにより、出力軸43の回転方向へのエンジン19の移動についても、プレート規制部42とフレーム側規制部82によって規制することができる。これによって、後面側防振部材50aを利用してエンジン19の左右方向の移動を規制できる簡素な構成を実現できる。
【0061】
また、本実施形態のトラクタ10は、以下のように構成される。即ち、後面側防振部材50aは、エンジン19の前方への移動を規制するフレーム側規制部83及びエンジン側被規制部73を有する。また、左側防振部材50bは、エンジン19の後方への移動を規制するエンジン側被規制部72及びフレーム側規制部82を有する。また、右側防振部材50cは、エンジン19の後方への移動を規制するエンジン側被規制部73及びフレーム側規制部83を有する。そして、後面側防振部材50a、左側防振部材50b及び右側防振部材50cによって、エンジン19の前方向及び後方向の移動を規制する。
【0062】
これにより、エンジン19の前後方向の移動を原因とする振動をより効果的に抑制できる。
【0063】
以上に本発明の実施形態を説明したが、次に、後面側防振部材50aの変形例について説明する。なお、変形例において、後面側防振部材50a以外の構成は上述の実施形態と同様であるので、それ以外の構成の詳細な説明を省略する。また、上述した実施形態と同一及び類似する構成には、図面に同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0064】
まず、図8を参照して後面側防振部材の第1変形例について説明する。図8は、第1変形例の後面側防振部材150の拡大背面図である。図8に示すように、第1変形例の後面側防振部材150は、エンジン側ブラケット170と、ゴム90と、フレーム側ブラケット80と、を備える。なお、ゴム90及びフレーム側ブラケット80の構成は、上述した実施形態と同様である。
【0065】
エンジン側ブラケット170は、本体部71と、エンジン側被規制部72と、エンジン側被規制部73と、エンジン側規制部142と、を備える。図8に示すように、エンジン側規制部142は、本体部71と一体的に形成されている。エンジン側規制部142は、フレーム側規制部82よりも右側に位置するように構成されている。エンジン側規制部142とフレーム側規制部82は、左右方向で対面しており、エンジン19が左に移動した場合は、エンジン側規制部142がフレーム側規制部82に接触するようになっている。即ち、第1変形例では、エンジン側規制部142がエンジン19の左側への移動を規制する第2規制部として機能するのである。
【0066】
次に、図9を参照して後面側防振部材の第2変形例について説明する。図9は、第2変形例の後面側防振部材250の拡大背面図である。図9に示すように、第2変形例の後面側防振部材250は、エンジン側ブラケット70と、ゴム90と、フレーム側ブラケット280と、を備えている。なお、エンジン側ブラケット70及びゴム90の構成は、上述した実施形態と同様である。
【0067】
フレーム側ブラケット280は、本体部81と、フレーム側規制部82と、フレーム側規制部83と、フレーム側被規制部242と、を備える。図9に示すように、フレーム側被規制部242は、フレーム側規制部82より左側に位置するように構成されている。このフレーム側被規制部242は、ゴム90を貫通した状態で、本体部81の底面から上方に突出する平板状に構成されている。フレーム側規制部82とフレーム側被規制部242は、左右方向で対面しており、エンジン19が左に移動した場合は、エンジン側被規制部72がフレーム側被規制部242に接触するようになっている。即ち、第2変形例では、フレーム側被規制部242がエンジン19の左側への移動を規制する第2規制部として機能するようになっている。
【0068】
図7の構成において、プレート規制部42(第2規制部)とフレーム側規制部82(第2被規制部)の間にゴム(弾性部材)を配置する構成に変更することもできる。これによって、プレート規制部42がフレーム側規制部82に接触するときの衝撃をゴムによって吸収し、左右方向の振動をより低減することができる。
【0069】
本発明は、上記のようなエンジンレイアウトのトラクタに限定されず、出力軸43及びフライホイール44が前面側に位置するように(冷却ファン25が後面側に位置するように)エンジン19を機体フレーム30に取り付けたトラクタ10に対しても適用することができる。この場合、エンジンの前面側に第1防振部材を配置し、この第1防振部材の規制部と被規制部によって出力軸43の回転方向と反対方向へのエンジンの移動を規制することが好ましい。
【0070】
上記の実施形態(図6)とは逆に、左側防振部材50b及び右側防振部材50cがエンジン19の前方への移動を規制し、後面側防振部材50aがエンジン19の後方への移動を規制するように構成しても良い。また、右側防振部材50cがエンジン19の右方向への移動を規制し、左側防振部材50bがエンジン19の左方向への移動を規制するように構成しても良い。
【0071】
また、上記の実施形態及び変形例ではトラクタ10に本発明を適用しているが、本発明を適用できる作業車両はトラクタ10に限定されない。例えば、稲、大根、人参等を収穫する自走式の作業車両に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
10 トラクタ(作業車両)
19 エンジン
30 機体フレーム(フレーム)
50a 後面側防振部材(第1防振部材)
50b 左側防振部材(第2防振部材)
50c 右側防振部材(第2防振部材)
70 エンジン側ブラケット(エンジン側連結部)
72 エンジン側被規制部(被規制部)
80 フレーム側ブラケット(フレーム側連結部)
82 フレーム側規制部(規制部)
90 ゴム(弾性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸を有するエンジンと、
前記エンジンが取り付けられるフレームと、
前記フレームに前記エンジンを取り付けるために、当該エンジンの前後方向の一側に1つ配置される第1防振部材と、
前記フレームに前記エンジンを取り付けるために、当該エンジンの左右方向の両側にそれぞれ配置される第2防振部材と、
を備え、
前記第1防振部材は、
前記エンジン側に当該第1防振部材を固定するためのエンジン側連結部と、
前記フレーム側に当該第1防振部材を固定するためのフレーム側連結部と、
エンジン側又はフレーム側の何れか一方に配置される規制部と、
フレーム側又はエンジン側の何れか一方に配置され、前記規制部とともに前記エンジンの左右方向一側への移動を規制する被規制部と、
を有し、
前記規制部及び前記被規制部によって規制される前記エンジンの移動は、前記出力軸の回転方向と反対方向への前記エンジンの移動であることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両であって、
前記第1防振部材は、
前記規制部又は前記被規制部に配置される弾性部材を有することを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の作業車両であって、
エンジン側又はフレーム側の何れか一方に配置される第2規制部を備え、
前記第1防振部材は、
フレーム側又はエンジン側の何れか一方に配置され、前記第2規制部に接触することで、前記エンジンの左右方向他側への移動を規制する第2被規制部と、
を有することを特徴とする作業車両。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の作業車両であって、
前記第1防振部材は、
前記エンジンの前方への移動を規制する前方移動規制部及び前方移動被規制部、又は、後方への移動を規制する後方移動規制部及び後方移動被規制部を有し、
前記第2防振部材は、
前記エンジンの後方への移動を規制する後方移動規制部及び後方移動被規制部、又は、前方への移動を規制する前方移動規制部及び前方移動被規制部を有し、
前記第1防振部材及び前記第2防振部材によって、前記エンジンの前方向及び後方向の移動を規制することを特徴とする作業車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate