説明

作業車両

【課題】左右一対の前後方向のメインフレーム下面側にリヤアクスルケース及びフロントアクスルケースを取付固定し、リヤアクスルケースとフロントアクスルケースとを、メインフレームの下方側に位置する左右一対の前後方向の補強フレームによって連結固定し、十分な強度が確保できるとともに、フロントアクスルケースやリヤアクスルケースの周辺に各種必要スペースを確保可能な作業車両を提供する。
【解決手段】左右一対のメインフレーム17,17間の間隔が前部に対して後部が幅狭になるように、各メインフレーム17を曲げ形成するととともに、左右一対の補強フレーム26,26間の間隔が後部に対して前部が幅狭になるように、各補強フレーム26を曲げ形成し、左右各組のメインフレーム17と補強フレーム26とを、平面視互いに交差するように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、左右一対の前後方向のメインフレーム下面側にリヤアクスルケース及びフロントアクスルケースを取付固定した作用車両に関する。
【背景技術】
【0002】
左右一対の前後方向のメインフレーム下面側にリヤアクスルケース及びフロントアクスルケースを取付固定し、リヤアクスルケースとフロントアクスルケースとを、メインフレームの下方側に位置する左右一対の前後方向の補強フレームによって連結固定し、強度を向上させた特許文献1に示す作業車両が公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3010295号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献の作業車両は、左右の補強フレーム間の間隔が、前部に対して後部が幅広に成形され、前後方向に一直線状に形成された左右のメインフレームが、左右の補強フレームの後部に、それぞれ平面視ラップし、前後全体に亘り幅広になっているため、リヤフレームの左右各箇所の上部側に、左右の後輪への動力伝動を、断続させるサイドクラッチのシフタ等の部材が設置する場合に、この左右のメインフレームが邪魔をして、該部材を配置するスペースを確保することが困難なことがある。
【0005】
本発明は、左右一対の前後方向のメインフレーム下面側にリヤアクスルケース及びフロントアクスルケースを取付固定し、リヤアクスルケースとフロントアクスルケースとを、メインフレームの下方側に位置する左右一対の前後方向の補強フレームによって連結固定し、十分な強度が確保できるとともに、フロントアクスルケースやリヤアクスルケースの周辺に各種必要スペースを確保可能な作業車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1に、左右一対の前後方向のメインフレーム17,17下面側にリヤアクスルケース23及びフロントアクスルケース21を取付固定し、リヤアクスルケース23とフロントアクスルケース21とを、メインフレーム17の下方側に位置する左右一対の前後方向の補強フレーム26によって連結固定した作業車両において、左右一対のメインフレーム17,17間の間隔が前部に対して後部が幅狭になるように、各メインフレーム17を曲げ形成するととともに、左右一対の補強フレーム26,26間の間隔が後部に対して前部が幅狭になるように、各補強フレーム26を曲げ形成し、左右各組のメインフレーム17と補強フレーム26とを、平面視互いに交差するように配置したことを特徴としている。
【0007】
第2に、前記補強フレーム26の前端部をフロントアクスルケース21の背面側に取付けるとともに、前記補強フレーム26の後端部をリヤアクスルケース23の外側面側に取付けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、補強フレームとメインフレームとを平面視交差させることにより、強度がさらに向上するとともに、左右一対の補強フレーム間の間隔が後部に対して前部が幅狭であるため、補強フレームが、操舵時における前輪作動の妨げになることを容易に防止できるとともに、左右一対のメインフレーム間の間隔が前部に対して後部が幅狭であるため、リヤアクスルケースの左右各箇所の上部側に、サイドクラッチ用シフタ等の部材を配置するスペースを容易に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の作業車両を適用した乗用田植機の全体側面図である。
【図2】車台の構成を示す斜視図である。
【図3】車台の構成を示す側面図である。
【図4】車台の構成を示す平面図である。
【図5】車台の構成を示す底面図である。
【図6】(A)乃至(C)は、補強フレームの取付構造を示す正面図、背面図及び斜視図である。
【図7】メインフレームへのフロントアクスルケースの取付構造を示す正面図である。
【図8】メインフレームへのリヤアクスルケースの取付構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の作業車両を適用した乗用田植機の全体側面図である。本乗用田植機は、移植機の一種であって、左右一対の前輪1,1及び後輪2,2を有する走行機体3と、走行機体3の後端部に昇降リンク4を介して昇降自在に連結された植付作業機6とを備えている。
【0011】
上記走行機体3は、前後方向の車台(シャーシ)7上における前部にエンジン(図示しない)を開閉自在に覆うボンネット8を設置し、車台7上におけるボンネット8後方に操縦部9を設けている。操縦部9には、オペレータが着座する座席11と、座席11前方に配置されたステアリングハンドル12と、ステアリングハンドル12の側方に配置された走行レバー13とを備えており、オペレータは、ステアリングハンドル12によって操向操作を行うとともに、走行レバー13の揺動操作によって、走行機体3の前後進切換及び走行変速切換操作を行う。
【0012】
植付作業機6は、前方に向かって上方に急傾斜する苗載せ台14の下方側に植付部16が設置され、走行機体3の前進走行中に駆動される植付部16によって、苗載せ台14上の苗を掻き取って圃場に植付けるように構成されている。
【0013】
図2乃至5は、車台の構成を示す斜視図、側面図、平面図及び底面図である。同図に示す通り、車台7は、走行機体3の全長に亘り前後方向に延びる角柱状の一対のメインフレーム17,17を左右に対称配置して備えている。この左右のメインフレーム17,17の前部の間は、左右方向に延びる横フレーム18によって連結固定されている他、左右のフレームフレーム17,17の前端部には、フロントバンパ19が取付固定されており、該フロントバンパ19は、車台7の一方側側面から前部を通って他方側側面に至る平面視U字状に成形されている。
【0014】
このメインフレーム17,17の下方側には、左右両側部にフロントアクスルケース21が一体的に成形されたミッションケース22と、リヤアクスルケース23とが配置されている。ミッションケース22及びリヤアクスル23の左右方向中央部が左右のメインフレーム17,17間の左右方向中央部と一致するように、該ミッションケース22及びリヤアクスルケース23が配置されるとともに、左右のフロントアクスルケース21,21がミッションケース22を挟んで左右対称位置に配置されている。
【0015】
ミッションケース22の前部は、上述した横フレーム18にボルト固定される一方で、ミッションケース22の後部は、左右のメインフレーム17,17間に架設された左右方向に延びる板状の取付フレーム24にボルト固定されている。ミッションケース22に一体的に形成された左右のフロントアクスルケース21,21は、左右のメインフレーム17,17の下面側にボルト固定されて取付けられている。ミッションケース22及びフロントアクスルケース21の後方に位置する左右方向のリヤアクスルケース23は、左右2箇所が、左右のメインフレーム17,17の下面側に、それぞれボルト固定されることにより、取付けられている。この左右のフロントアクスルケース21,21と、リヤアクスルケース23の左右2箇所とが、左右に対称配置されて前後方向に延びる一対の補強フレーム26,26によって、それぞれ個別に連結されている。
【0016】
さらに、詳しく説明すると、リヤアクスルケース23の左部と、左側のフロントアクスルケース21とが、左側に配置された丸パイプ状の補強フレーム26によって連結されるとともに、リヤアクスルケース23の右部と、右側のフロントアクスルケース21とが、右側に配置された丸パイプ状の補強フレーム26によって連結されている。
【0017】
そして、左右のメインフレーム17,17間の距離が中途部から後部に向かって次第に短くなるように各メインフレーム17を曲げ形成することにより、左右のメインフレーム17,17の間隔が前部と比較して後部側が幅狭に設定されるとともに、上記左右の補強フレーム26,26間の距離が前部から中途部に向かって次第に長くなるように各補強フレーム26を曲げ形成することにより、左右の補強フレーム26,26の間隔が前部と比較して後部が幅広に設定される他、左右のメインフレーム17,17前部及び中途部の間隔と、左右の補強フレーム26,26の中途部及び後部の間隔とが略同一に設定している。
【0018】
以上により、左側に配置されたメインフレーム17と補強フレーム26とを、平面視互いに交差させるとともに、右側に配置されたメインフレーム17と補強フレーム26とを、平面視互いに交差させ、車台7の強度を向上させている。ちなみに、左右各組のメインフレーム17と補強フレーム26とを互いをクロスさせることにより、正断面視において、左右のメインフレーム17,17の断面と、左右の補強フレーム26,26の断面とを直線で結んだ形状が台形をなすため、これによって、強度が向上する。
【0019】
次に、図2乃至5に基づき、ミッションケース22、フロントアクスルケース21及びリヤアクスルケース23の構成について詳述する。
上記ミッションケース22には、HSTによって無段階変速されたエンジン動力が入力され、この入力された動力が、デファレンシャルギヤ機構を介して、左右のフロントアクスルケース21,21内に分配伝動される他、前後方向のプロペラシャフト27(図1参照)を介して、リヤアクスルケース23内の伝動させる。
【0020】
上記左右の各フロントアクスルケース21は、ミッションケース22から外側方に突出する左右方向の横筒28と、横筒28の左右外側端部から下方に延出させる上下方向の縦筒29とを備え、縦筒29の下部は、自身の軸回りに回動可能に支持された可動筒29aによって構成されており、この可動筒29aから、左右外側側方に向かって前輪1用のドライブシャフト31が突出形成されている。ミッションケース22からフロントアクスルケース21内に入力された動力は、横筒28及び縦筒29内の伝動軸やギヤ機構等の各種伝動機構によって、ドライブシャフト31まで伝動され、前輪1を回転駆動させる。また、可動筒29aの軸回りの回動によって、前輪1の直進方向に対する左右の傾き角(操舵角)が変更され、走行機体3を左右旋回させる。ちなみに、この操舵角の変更は、ミッションケース22の下方側に近接配置された操向機構32によって行われる。
【0021】
上記リヤアクスルケース23は、左右両側方が開放された左右方向に延びる本体ケース33と、本体ケース33の左右の開放端側をそれぞれ閉塞してカバーする左右一対の閉塞カバー34,34とを備え、この左右の閉塞カバー34,34からは、外側方に向かって左右方向のドライブシャフト36,36が、それぞれ突出形成されており、この左右のドライブシャフト36,36に左右の後輪2,2をそれぞれ設置している。閉塞カバー34及び本体ケース33の左右の開放端部は、側面視後方に向かって斜め下方に延びる形状に成形され、閉塞カバー34は、複数のボルト37を介して本体ケース33に取付固定されるとともに、各閉塞カバー34の下端部に前記ドライブシャフト36が支持されている。
【0022】
リヤアクスルケース23の左部及び右部には、図示しないサイドクラッチがそれぞれ内装され、ミッションケース22からリヤアクスルケース23内に入力されて左右分配されたエンジン動力が、左右のサイドクラッチを介して、左右のドライブシャフト36に断続伝動され、後輪2を駆動させる。このサイドクラッチは、シフト部材の一種であるシフタアーム38によって、断続操作される。
【0023】
このシフタアーム38は、サイドクラッチ毎に設けられ、リヤアクスルケース23の上面側における左右対称位置(具体的には、各閉塞カバー34の上端部)に、それぞれメインフレーム17を避けるようにして、設置されており、各メインフレーム17の外側側方にシフタアーム38が位置している。このようにして、対応するサイドクラッチに近接配置された各シフトアーム38は、前後に水平回動するようにリヤアクスルケース23に取付支持されており、操向作動に連動する連動機能40によって、このシフトアーム38が前後水平回動操作されることにより、サイドクラッチが断続される。
【0024】
上記操向機構32は、ステアリングハンドル12による操向操作に連動して左右水平回動されるピットマンアーム39と、該ピットマンアーム39を左右のフロントアクスルケース21,21の可動筒29a,29aにそれぞれ連結する左右一対の操向リンク41,41とを備えている。この操向機構32によれば、走行時、ステアリングハンドル12によって、左旋回するようにステアリングハンドル12を左回りに回動操作した場合には、ピットマンアーム39が左側に水平回動され、左右の各前輪1が直進方向に対して左側に傾く一方で、走行時、ステアリングハンドル12によって、右旋回するようにステアリングハンドル12を右回りに回動操作した場合には、ピットマンアーム39が右側に水平回動され、左右の各前輪1が直進方向に対して右側に傾く。
【0025】
この際、左右の補強フレーム26,26前部の間隔は、幅狭に設定されているため、可動筒29a及び前輪1を、補強フレーム26から離した外側方位置に配置することが容易であり、補強フレーム26が前輪1の操向作動の妨げになることが防止される。
【0026】
上記連動機構40は、操向機構32のピットマン39と、左右のシフタアーム38とに連結されている。そして、左旋回側にピットマンアーム39が揺動されている際には、左側のサイドクラッチが切断されるとともに右側のサイドクラッチが接続されるように各シフタアーム38を揺動させる一方で、右旋回側にピットマンアーム39が揺動されている際には、右側のサイドクラッチが切断されるとともに左側のサイドクラッチが接続されるように各シフタアーム38を揺動させる他、直進するようにピットマンアーム39が揺動されている際には、左右の各サイドクラッチが接続されるように各シフタアーム38を揺動させるように前記連動機構40を構成している。
【0027】
この際、左右のメインフレーム17,17後部の間隔は、上述した通り、幅狭に設定されているため、シフタアーム38の前後水平回動に際して、メインフレーム17が妨げになることが防止される。
【0028】
次に、図6乃至8に基づき、補強フレーム26、フロントアクスルケース21及びリヤアクスルケース23の取付構造について詳述する。
図6(A)乃至(C)は、補強フレームの取付構造を示す正面図、背面図及び斜視図である。補強フレーム26の前端部には、フロントアクスルケース21の背面に沿う板状の連結ブラケット42が溶接等で一体的に取付固定される一方で、補強フレーム26の後端部には、リヤアクスルケース23の閉塞カバー34に沿う板状の延設プレート43が一体的に延設されている。
【0029】
上記連結ブラケット42をフロントアクスルケース21の背面にボルト固定することにより、補強フレーム26が、フロントアクスルケース21の背面側に取付固定される。一方、上記延設プレート43には、後方に延びる連結プレート44の前端部がボルト固定されており、この連結プレート44を、ボルト37によって、上述した閉塞カバー34とともに、本体ケース33に共締めすることにより、補強フレーム26,26の後端部をリヤアクスルケース23の外側面側に取付固定している。
【0030】
また、この左右の延設プレート43,43の間には、左右方向に延びる丸パイプ状の架設フレーム46が架設固定されている。このように、左右の補強フレーム26,26の後端部の間に架設された架設フレーム46によって、さらに強度補強が図られている。
【0031】
図7は、メインフレームへのフロントアクスルケースの取付構造を示す正面図である。左右のメインフレーム17,17における平面視フロントアクスルケース21,21と交差する箇所からは、下方に向かって取付ブラケット47が一体的に延出されている。この取付ブラケット47に、上述した補強フレーム26の連結ブラケット42とともに、フロントアクスルケース21背面側を、共締めして、ボルト固定することによって、メインフレーム17の下側にフロントアクスルケース21が取付固定される。
【0032】
図8は、メインフレームへのリヤアクスルケースの取付構造を示す正面図である。リヤアクスルケース23の左右箇所は、取付具48によって、左右のメインフレーム17,17にそれぞれ取付固定されている。左右の各取付具48は、メインフレーム17の後端部が嵌合挿入された状態で溶着固定される平面視U字状の固定部48aと、固定部48aの前端部から左右両側方に一体延設された前面部48bと、固定部48aの下端部から左右両側方及び後方に延設に一体延設された平面部48cとを有している。
【0033】
そして、平面部48cの下面側にリヤアクスルケース23の上面側が当接されてボルト固定されるとともに、前面部48bの前面側に上端部がボルト固定される上下方向の取付プレート49の下端部に、リヤアクスルケース23の前面側が当接され、ボルト固定されており、これによって、左右のメインフレーム17,17の下側に、左右方向の単一のリヤアクスルケース23が取付固定される。ちなみに、取付具48の平面部48cの後端側は、下方に屈曲形成され、リヤアクスルケース23の背面に近接又は接触している。
【0034】
このように、リヤアクスルケース23の上面及び前面側をメインフレーム17にボルト固定することにより、メインフレーム17へのリヤアクスルケース23の取付強度が向上する。
【符号の説明】
【0035】
17 メインフレーム
21 フロントアクスルケース
23 リヤアクスルケース
26 補強フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の前後方向のメインフレーム(17),(17)下面側にリヤアクスルケース(23)及びフロントアクスルケース(21)を取付固定し、リヤアクスルケース(23)とフロントアクスルケース(21)とを、メインフレーム(17)の下方側に位置する左右一対の前後方向の補強フレーム(26)によって連結固定した作業車両において、左右一対のメインフレーム(17),(17)間の間隔が前部に対して後部が幅狭になるように、各メインフレーム(17)を曲げ形成するととともに、左右一対の補強フレーム(26),(26)間の間隔が後部に対して前部が幅狭になるように、各補強フレーム(26)を曲げ形成し、左右各組のメインフレーム(17)と補強フレーム(26)とを、平面視互いに交差するように配置した作業車両。
【請求項2】
前記補強フレーム(26)の前端部をフロントアクスルケース(21)の背面側に取付けるとともに、前記補強フレーム(26)の後端部をリヤアクスルケース(23)の外側面側に取付けた請求項1に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−121342(P2012−121342A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271217(P2010−271217)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】