説明

作業車両

【課題】土質の柔らかい圃場での旋回走行が円滑に行える作業車両を提供すること。
【解決手段】前輪3と後輪4を有する機体2と、前輪へのデファレンシャル機構を切り替えるデフロック機構170と、デフロック機構170を制御するデフロック制御機構200aと、後輪の上下位置を変更するための圧縮スプリングと後輪伝動ケース111と回動軸部112等とを備えた苗移植装置1であって、圧縮スプリング及び後輪伝動ケース111等を作動させる後輪車高調整用シリンダーモーター110と、デフロック機構170の作動を検出する前輪デフロックペダル操作検出スイッチ150と、そのスイッチ150が前記作動を検出した場合、後輪車高調整用シリンダーモーター110を作動させて機体2の車高を変更する車高変更制御機構200bとを備えた作業車両である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の後部に苗移植機などの作業機を連結して各種作業を行う作業車両に関するものであり、農業機械の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、苗移植機などの農作業機を連結した作業車両が、例えば、苗移植作業中において、圃場において旋回時に、走行駆動力が不足する場合には、旋回内側のサイドクラッチ又はサイドブレーキの作動を解除し、左右の前輪デフロック装置をロック状態に切り替えて、左右の前輪の回転を同調させることで走行駆動力を高め、スムーズな旋回動作を行う技術が知られている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−208537号公報
【特許文献2】特開2004−224118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の構成によれば、走行車体の車高は変更されないため、圃場の土質が柔らかく、走行車体の底部が圃場に接地してスリップを起こしていると、デフロック機構を作動させても走行できず、作業が停滞してしまう問題がある。
【0005】
そして、車高の変更装置がある場合でも、旋回時など、圃場から強い抵抗を受けて走行が停止した場合、作業者が一時的に混乱してデフロック機構や車高変更装置を操作し忘れると、その間作業が停滞してしまうので、作業能率が停滞する問題がある。
【0006】
特に旋回時は、作業者はハンドルを常時操作しているため、デフロック機構の操作や車高変更装置の操作に気が回りにくく、上記の問題が発生しやすい。
【0007】
また、傾斜地等を走行する際、機体の前側が浮き上がって前輪の荷重が軽くなると左右どちらか一側の前輪だけが回転してしまい、旋回し始めてしまうことがあるので、作業者はデフロック機構を操作して左右の前輪を同時に回転させるが、この操作を忘れてしまうと、傾斜地での操作性が悪くなる問題がある。
【0008】
本発明は、上記従来の作業車両の課題に鑑み、土質の柔らかい圃場での旋回走行が円滑に行える作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第1の本発明は、
前輪(3)と後輪(4)を有する走行車体(2)と、
前記前輪(3)へのデファレンシャル機構を切り替えるデフロック機構(170)と、
前記デフロック機構(170)を制御するデフロック制御機構(200a)と、
前記後輪の上下位置を変更する後輪上下動機構(110、111、112)と、を備えた作業車両(1)であって、
前記後輪上下動機構を作動させる上下動アクチュエータ(110、110a)と、
前記デフロック機構(170)の作動を検出するデフロック検出装置(150)と、
前記デフロック検出装置(150)が前記作動を検出した場合、前記上下動アクチュエータ(110、110a)を作動させて前記走行車体の車高を変更する車高変更制御機構(200b)と、を備えたことを特徴とする作業車両であるである。
【0010】
また、第2の本発明は、
左右の前記前輪(3)の回転数を検出する回転数センサー部(140)を、更に備え、
前記車高変更制御機構(200b)は、前記回転数センサー部(140)の検出データに基づいて、前記左右の前記前輪(3)の何れかの回転数が設定値以下の場合、又は、前記左右の前記前輪(3)の回転数の差が設定値以上の場合は、前記上下動アクチュエータ(110、110a)を作動させることを特徴とする、上記第1の本発明の作業車両である。
【0011】
また、第3の本発明は、
左右の前記前輪(3)の回転数を検出する回転数センサー部(140)を、更に備え、
前記デフロック制御機構(200a)は、前記回転数センサー部(140)の検出データに基づいて、前記左右の前記前輪(3)の何れかの回転数が設定値以下の場合、又は、前記左右の前記前輪の回転数の差が設定値以上の場合は、前記デフロック機構(170)を作動させることを特徴とする、上記第1の本発明の作業車両である。
【0012】
また、第4の本発明は、
前記後輪(4)への回転力の伝動を入り切りするサイドクラッチ機構(120、180)と、
前記サイドクラッチ機構を制御するサイドクラッチ制御機構(200c)と、
左右の前記前輪(3)の回転数を検出する回転数センサー部(140)を、更に備え、
前記サイドクラッチ制御機構(200c)は、前記回転数センサー部(140)の検出データに基づいて、前記回転数の差が予め定められた下限値以下であればサイドクラッチ機構(120、180)の切り状態を維持し、前記回転数の差が予め定められた上限値以上であればサイドクラッチ機構(120、180)を入り状態にし、前記回転数の差が前記下限値を越えて且つ前記上限値未満であれば前記サイドクラッチ機構(120、180)を半クラッチ状態にすることを特徴とする、上記第1の本発明の作業車両である。
【0013】
また、第5の本発明は、
旋回時に、前記走行車体(2)の後部に昇降自在に装着される作業装置(7)を昇降させる自動昇降機構(30)と、
旋回時に自動的に前記作業装置(7)を作動させる自動作業機構(200d)と、
前記自動昇降機構(30)と前記自動作業機構(200d)とを制御する自動昇降作業制御機構(200e)とを、更に備え、
前記自動昇降作業制御機構(200e)は、前記デフロック検出装置(150)の検出データに基づき、前記デフロック機構(170)の作動により前記デファレンシャル機構がロック状態である場合は、前記デファレンシャル機構が前記ロック状態でない場合に比べて、前記自動昇降機構(30)と前記自動作業機構(200d)の作動開始時間を遅らせる構成としたことを特徴とする、上記第1の本発明の作業車両である。
【0014】
また、第6の本発明は、
前記走行車体(2)の前後方向の傾斜を検出する傾斜センサー(160)を備え、
前記デフロック制御機構(200a)は、前記傾斜センサー(160)の検出データに基づき、前記走行車体(2)が所定角度以上前上がり姿勢になったことを検出した場合は、前記デフロック機構を作動させる構成としたことを特徴とする、上記第1の本発明の作業車両である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の本発明によれば、
デフロック機構(170)を作動させると後輪の上下位置が変更されることにより、機体(2)底面を圃場面から離間させることができるので、後輪(4)がスリップを起こすことが防止され、土質の柔らかい圃場での走行、特に旋回走行が円滑に行なわれるので、作業能率が向上する。
【0016】
また、請求項2に記載の本発明によれば、
例えば、前輪(3)のどちらか一方側が回転していないときはスリップしていると判断し、後輪上下動機構(110、111、112)を作動させて後輪(4)の上下位置を変更することにより、車高を高くすることが出来るので、旋回時等に走行が停滞することがなく、作業能率が向上する。
【0017】
また、請求項3に記載の本発明によれば、
例えば、前輪(3)のどちらか一方側が回転していないときはスリップしていると判断し、例えばデフ機構アクチュエータ(100)を作動させてデフロック機構(170)を作動させるので、前輪(3)の回転数が左右で同調するため、旋回時に機体の走行が停滞せず、作業能率が向上する。
【0018】
また、デフロック機構(170)が、回転数センサー部(140)の検出データに基づいて自動作動しただけでは、スリップ等を解消できない場合があるので、この場合にも対応できる様に、後輪上下動機構(110、111、112)が自動的に作動して車高が変更されて、スリップ状態の解消が自動的に行なわれるため、作業能率が向上する。また、作業者は操作を行なう必要が無いので、操作性が向上する。
【0019】
また、請求項4に記載の本発明によれば、
例えば、旋回時の左右の回転数センサー部(140)の検出値の差に合わせて例えば後輪クラッチ(180)の連結度合が自動変更されることにより、圃場の土質に適した駆動力で旋回動作を行なうことができるので、旋回時に走行が停滞することが防止され、作業能率が向上する。
【0020】
また、請求項5に記載の本発明によれば、
デフロック機構(170)が作動すると、作業装置(7)の下降開始タイミングと作業装置(7)の作動開始タイミングを、デフロック機構(170)が作動していないときに比べて所定時間延長することにより、デフロック機構(170)を作動させて旋回軌跡が大回りになっても、作業装置(7)を適切なタイミングで下降させて作業開始させることができるので、作業能率が向上する。
【0021】
また、請求項6に記載の本発明によれば、
走行車体(2)が大きくに前上がり姿勢となるとデフロック機構(170)が作動することにより、走行車体(2)の前側が浮き気味になって前輪(3)にかかる荷重が減っても左右の前輪(3)が同調して回転するため、傾斜地等の移動中であっても走行車体(2)が直進しやすく、操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1における、苗移植作業車両の一例である4条型の乗用田植機の側面図
【図2】本発明の実施の形態1における、苗移植作業車両の一例である4条型の乗用田植機の平面図
【図3】本発明の本実施の形態の乗用田植機における、デフロック機構を作動させるための各部の配置構成、及び車高変更機構を構成する後輪車高調整用シリンダーモーター等の配置構成を説明するための部分概略図
【図4】本発明の本実施の形態の乗用田植機のシリンダーロッドの駆動により、圧縮スプリングが最大まで伸長して機体の車高が高くなった状態を示す後輪部分の概略図
【図5】本発明の実施の形態1における乗用田植機の制御システムを示すブロック図
【図6】本発明の実施の形態1における乗用田植機の制御システムにおける制御部を中心とした各装置の動作を説明するためのフロー図
【図7】本発明の実施の形態1における乗用田植機の制御システムにおける制御部を中心とした各装置の動作を説明するためのフロー図
【図8】本発明の実施の形態1における乗用田植機の制御システムにおける制御部を中心とした各装置の動作を説明するためのフロー図
【図9】本発明の実施の形態1における乗用田植機の制御システムにおける制御部を中心とした各装置の動作を説明するためのフロー図
【図10】本発明の実施の形態1における乗用田植機の制御システムにおける制御部を中心とした各装置の動作を説明するためのフロー図
【図11】本発明の実施の形態1における乗用田植機の制御システムにおける制御部を中心とした各装置の動作を説明するためのフロー図
【図12】本実施の形態の乗用田植機を前から見た、前輪伝動ケースの概略断面図
【図13】(a):本実施の形態の乗用田植機の平面図を示す図2のD部拡大図、(b):歪み検知センサーの取付位置を説明するための概略側面図
【図14】本実施の形態の乗用田植機の走行操作レバーとHSTレバー戻しモーターを示す概略側面図
【図15】本実施の形態における乗用田植機の制御システムを示すブロック図
【図16】図15に示す制御システムにおける制御部を中心とした各装置の動作を説明するためのフロー図
【図17】(a):本実施の形態における乗用田植機のシートポジション、及びフロートセンサー等を示す概略側面図、(b):本実施の形態における乗用田植機のシートポジションを説明する概略側面図
【図18】本実施の形態における乗用田植機の制御システムを示すブロック図
【図19】本実施の形態における乗用田植機の油圧昇降シリンダーの油圧感度の調整方法を説明するためのフロー図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の作業車両の一実施の形態の苗移植作業車両についてその構成と動作を説明する。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の苗移植作業車両の一例である4条型の乗用田植機の側面図であり、図2は、その平面図である。
【0025】
I.まず、これらの図面を用いて、本実施の形態の乗用田植機1の構成を中心に説明する。
【0026】
図1、図2に示す通り、苗移植作業車両の一例である4条型の乗用田植機1は、圃場走行可能に機体2(本願発明の走行車体の一例に該当)を支持する前後輪3,4と、これら前後輪3,4に走行動力を変速伝動する変速装置5と、この変速装置5を含む各機器に動力を供給する原動部であるエンジン6と、機体後部に昇降可能に支持されて変速装置5からの分岐動力により圃場に苗を植付けする苗移植装置7と、苗移植装置7を機体後部に連結するためのリンク機構8と、苗移植装置7を上下に昇降させる油圧昇降シリンダー9等を備えている。また、変速装置を切り替えて走行速度を操作する走行操作レバー(HSTレバーとも呼ぶ)10や各種機器を操作するための操作具、ステアリングハンドル11、及び圃場で苗移植作業中に旋回する際に、自動リフト・旋回・自動植付開始を行うための自動旋回植付スイッチ17等を配置した操縦部12等から構成される。
【0027】
また、運転席18の足下には、ミッションケース19の内部のデファレンシャル機構をロック状態にするための前輪デフロックペダル13が設けられている。作業者が前輪デフロックペダル13を踏み込むことにより、デフロック機構が作動すると同時に、スイッチが入って、後輪独立スイングが左右最大まで動き、車高を上げる構成である。
【0028】
また、運転席18の足下には、ブレーキペダル405が設けられている。
【0029】
変速装置5は、HSTと略称される静油圧式無段変速機を備え、走行操作レバー10の操作に連動した前後進切替えと無段変速を行うモーター電動操作によるトラニオン軸(図示省略)の角度調節により、ベルト5aによる伝動で受けたエンジン動力を前後輪3,4に変速伝動し、中低速域の作業走行および高速域の路上走行のそれぞれについて停止速から最高速までの変速が可能に構成する。
【0030】
エンジン6は、後進走行モード、低燃費走行モード、標準走行モード、高出力走行モードの各種モードでの動力特性範囲の走行動力をスロットル開度のモーター電動調節によりカバー可能に構成するほか、油圧機器駆動用の油圧ポンプ等の補機を駆動する。
【0031】
苗移植装置7は油圧動力によって昇降駆動されるとともにローリング角度調節によって水平支持され、また、変速装置5からの分岐動力によって車速連動で植付動作可能に構成する。尚、苗移植装置7は、本例では、4条植の構成で、植付条数分に仕切られた苗載せ面に土付きのマット状苗が載置される植付条数分の苗載置タンク14と、苗載置タンク14上の苗を圃場に植え付ける植付条数分の植付部15と、圃場面上を滑走して整地するサイドフロート16、センターフロート16c等から構成されている。
【0032】
また、各苗載置タンク14の下端部から苗を分離して保持し、その保持した苗を圃場に植え付ける植付爪15aが設けられた植付部15は、ロータリーケース400に回動可能に取り付けられている。植付動作時において、ロータリーケース400が回転することにより、植付爪15aの先端は、側面視略楕円形状の植付軌跡線E(図1、図13参照)を描いて苗の植付動作を行う構成である。
【0033】
また、マット状苗を収容して後側下方へ繰り出す多条植付形態の苗載置タンク14の後側下部には、左右方向に往復移動する苗載置タンク14のガイドとしての側断面略L字型の前板401が設けられている(図1、図2、図13参照)。前板401には、各苗載置タンク14の下端部のマット状苗から苗を分離するために、植付爪15aが通過する軌跡線E上に対応する箇所に、上面視略コの字型の苗取口プレート402が取付られており、植付爪15aが通過する空間としての苗取口403を形成している(図2、図13参照)。
【0034】
次に、本実施の形態の乗用田植機1に設けられている、ミッションケース19に内蔵されたデフロック機構170、及び後輪車高調整用シリンダーモーター110などについて図3〜図5を用いて説明する。
【0035】
図3は、本実施の形態の乗用田植機1における、デフロック機構170を作動させるための各部の配置構成、及び車高変更機構を構成する後輪車高調整用シリンダーモーター110等の配置構成を説明するための部分概略図である。
【0036】
図3に示す通り、前輪デフロックペダル13は、バネ部材(図示省略)で上下動可能に保持されて、その先端部13aが運転席18の足下の車体フロアーから上方に所定寸法だけ突出しており、途中において水平に張りだしたスイッチ駆動用突起片13cを備えた前輪デフロックペダル軸部13bが車体フロアーから下方に伸びて、その前輪デフロックペダル軸部13bの下方先端部13dが、第1可動アングル171の一方の端部が水平方向に折り曲げられたフランジ部171aの上面に当接している。
【0037】
前輪デフロックペダル操作検出スイッチ150は、スイッチ駆動用突起片13cの下方に配置されており、作業者が前輪デフロックペダル13を踏み込むことにより、スイッチ駆動用突起片13cが下方に移動して前輪デフロックペダル操作検出スイッチ150の突起部を押すことで、前輪デフロックペダル13が操作されたことを検出し、その検出信号は後述する制御部200(図5参照)に送られる構成である。その検出信号を受けた制御部200は、例えば、後述する後輪車高調整用シリンダーモーター110(図3,4参照)を駆動させるための駆動信号を出力する。
【0038】
第1可動アングル171は、機体2の骨格部分を構成する略矩形状のアンダーフレーム2aにおいて、他方の端部171bが回動軸172により回動可能に保持されており、作業者が前輪デフロックペダル13を踏み込んだ際、前輪デフロックペダル軸部13bの下方先端部13dが、フランジ部171aの上面を押し下げることにより、矢印Aの方向に回動する。
【0039】
一方、ミッションケース19には、デファレンシャル機能(エンジンからの駆動力を駆動輪に伝達しながら、左右の駆動輪の回転数の差を吸収する機能)をロック状態に切り替えるための第2可動アングル173が設けられている。第2可動アングル173の一方の端部はミッションケース19の内部に挿入されており、他方の端部173bは、第1可動アングル171のフランジ部171aとワイヤー174にて連結されている。また、第2可動アングル173は、両端部のほぼ中央に配置された回動軸173aを中心にして回動自在に保持されている。ワイヤー174は、中央近傍においてスプリングバネ175と連結されており、機体2の前方方向(図3中において左方向)に常に引っ張られている。
【0040】
作業者が前輪デフロックペダル13を踏み込むことによって、フランジ部171aが矢印A方向に回動し、それに連動したワイヤー174が、第2可動アングル173の他方の端部173bをB方向に引っ張る。これにより、ミッションケース19の内部に挿入されている第2可能アングル173の一方の端部がB方向とは逆の方向に移動して、デファレンシャル機能をロック状態にする構成である。
【0041】
また、傾斜検出センサー160は、機体2のアンダーフレーム2aの上面であって、前輪3と後輪4の中間より少し後輪側に寄った位置に配置されており、機体2の前側が大きく上方に傾斜したこと(本実施の形態では、10°以上傾斜したこと)を検知して、その検知信号を制御部200に出力する構成である。尚、この傾斜検出センサー160は、機体2が前上がりに大きく傾斜した場合のみ検知し、前下がりになった場合は働かない構成である。また、この傾斜検出センサー160は、傾斜角度そのものを検出する構成でも良いし、傾斜による角速度を検出する構成であっても良く、要するに機体2が前上がりに大きく傾斜したことを検知できればどの様な構成であってもかまわない。尚、制御部200は、傾斜検出センサー160からの検出信号を受けて、デフロック作動用シリンダーモーター100を駆動させるための信号を出力する(図5参照)。
【0042】
また、デフロック作動用シリンダーモーター100は、本体部分が第1可動アングル171の上方に保持されており、駆動時に伸縮するシリンダーロッド100aの先端が、第1可動アングル171に回動可能に固定されている。制御部200から伸長用の駆動信号を受けたデフロック作動用シリンダーモーター100は、シリンダーロッド100aを所定長さまで伸長駆動する。これによって、第1可動アングル171は、作業者が前輪デフロックペダル13を踏み込んでいない場合であっても、他方の端部171bの回転軸を中心に矢印A方向に回動するため、それに連動したワイヤー174の動きにより、作業者が前輪デフロックペダル13を踏み込んだ場合と同様に、デファレンシャル機能をロック状態にする構成である。
【0043】
また、後輪車高調整用シリンダーモーター110は、アンダーフレーム2aの後端2a1であって左右の後輪伝動ケースの上方にそれぞれ固定されており、駆動時に伸縮するシリンダーロッド110aの先端が、左右の後輪伝動ケース111に回動自在に固定されている。後輪車高調整用シリンダーモーター110は、制御部200からの駆動信号を受けると、シリンダーロッド110aを最大まで伸長する。これにより、後輪を左右独立的にスイング可能に構成された圧縮スプリング(図示省略)を最大限まで伸長させる方向、即ち、左右にある後輪伝動ケース111が回動軸部112を中心として矢印C方向に回動することにより、機体2の車高H(図3参照)が、H(H<H)となる(図4参照)。尚、図4は、シリンダーロッド110aの駆動により、圧縮スプリングが最大まで伸長して、機体2の車高が高くなった状態を示す後輪部分の概略図である。これにより、左右の後輪の独立スイング機能は働かないが、車高は高くなる。
【0044】
また、前輪回転数検出センサー140は、ミッションケース19の左右前輪駆動軸の回転数をそれぞれ独立して検出可能に配置されており、左右それぞれの検出結果を制御部200に出力する構成である。
【0045】
次に、本実施の形態の乗用田植機1に設けられている、所定の条件に従って各機器を制御する制御システムを、図5を用いて説明する。
【0046】
ここで、図5は、本実施の形態の乗用田植機1の制御システムを示すブロック図である。
【0047】
図5に示す様に、本実施の形態の制御システムは、変速装置(HST)5、エンジンスロットル20、苗移植装置7、苗移植装置7を昇降させるための、油圧昇降制御弁(図示省略)や油圧昇降シリンダー9を含む昇降装置30、デフロック作動用シリンダーモーター100、後輪車高調整用シリンダーモーター110等の動作を制御部200からの制御信号によって制御可能に構成している。
【0048】
また、図5に示す通り、制御部200への入力側には、変速装置5の変速操作用の走行操作レバー(HSTレバーとも呼ぶ)10、苗移植装置7が所定高さを超えたことを検知する上昇検知部130、乗用田植機1の動作モードを、作業モード(例えば、植付モード)と移動モード(例えば、路上走行モード)の何れかに切り替える副変速操作レバー190のレバー位置の検出を行う副変速操作レバー位置検出部191、左右の前輪3の回転数をそれぞれ検出する前輪回転数検出センサー140と、前輪デフロックペダル13が踏み込まれたことを検出する前輪デフロックペダル操作検出スイッチ150と、機体2の前後の傾斜角度を検出する傾斜検出センサー160、左右前輪のフロントアクスルにおける振動を検知するための振動検知センサー192等が接続されている。振動検知センサー192については、下記の項目IIIで更に説明する。
【0049】
尚、走行操作レバー10の動きは、走行操作レバー10の前進・後進の操作領域における移動量を検出するためのポテンショメータ(図示省略)の検出値及び、後進位置検出部(図示省略)による検出結果として制御部200に入力される構成である。
【0050】
制御部200は、制御部200に入力されたポテンショメータの検出値と、後進位置検出部による検出結果とに応じて、変速装置5(HST)と、エンジンスロットル20に対して、それぞれ制御信号を出力する構成である。
【0051】
即ち、制御部200は、変速装置5に対しては、モーター電動操作によるトラニオン軸(図示省略)の角度調節などを行うための制御信号を出力し、エンジンスロットル20に対しては、開度調節用モーターを駆動して、エンジン6の回転数を制御するための制御信号を出力する構成である。
【0052】
また、走行操作レバー10は、8段階の前進走行域、前進停止位置(前進アイドリング位置)、後進停止位置(後進アイドリング位置)、及び、5段階の後進走行域の、各変速位置に位置決め可能に構成されている。
【0053】
尚、圧縮スプリング(図示省略)、後輪伝動ケース111、及び回動軸部112等を含む概念が、本発明の後輪上下動機構の一例である。また、本実施の形態の後輪車高調整用シリンダーモーター110は、本発明の上下動アクチュエータの一例である。また、本実施の形態の苗移植装置7は本発明の作業装置の一例であり、本実施の形態の昇降装置30は本発明の自動昇降機構の一例である。
【0054】
また、本実施の形態の前輪デフロックペダル操作検出スイッチ150は、本発明のデフロック検出装置の一例である。また、本実施の形態の制御部200は、本発明のデフロック制御機構(200a)、本発明の車高変更制御機構(200b)、本発明のサイドクラッチ制御機構(200c)、本発明の自動作業機構(200d)、及び本発明の自動昇降作業制御機構(200e)の一例である。
【0055】
また、本実施の形態の前輪回転数検出センサー140は、本発明の回転数センサー部の一例である。
【0056】
また、本実施の形態の傾斜検出センサー160は、本発明の傾斜センサーの一例である。
【0057】
II.以上の構成の下で、次に、本実施の形態の乗用田植機1の制御システムにおける、機体2の車高を高くする制御動作等について、図を参照しながら説明する。
【0058】
ここで、図6〜図11は、本発明の実施の形態1における乗用田植機の制御システムにおける制御部200を中心とした各装置の動作を説明するためのフロー図である。
【0059】
(II−1).ここでは、本実施の形態の乗用田植機1の苗移植作業中(苗移植作業は、単に、植付作業と呼ぶ)に、作業者が前輪デフロックペダル13を踏み込むことによって、機体2の車高を高くする動作について説明する。
【0060】
図6に示す通り、HSTレバー10を前進走行域に設定して、乗用田植機1を直進させて植付作業を開始する(ステップS101)。この状態では、左右後輪4の独立スイング機能は自由に働いている。尚、圧縮スプリングは基本的には縮んだ状態である。
【0061】
次に、ステップS102では、制御部200は、前輪デフロックペダル操作検出スイッチ150からの検出信号を受信したか否かを判定し、受信していなければステップS102の直前に戻り、受信していると判定すれば、作業者が前輪デフロックペダル13を踏み込んだものと判断できるので、次に進む。
【0062】
ステップS103では、制御部200からの出力信号により、左右の後輪車高調整用シリンダーモーター110が作動して、シリンダーロッド110aが伸長される。これにより、左右の後輪4の圧縮スプリングが最大限まで伸長されて、車高が高くなる(ステップS104)。
【0063】
ステップS105では、制御部200は、前輪デフロックペダル操作検出スイッチ150からの検出信号を継続的に受信出来ているか否かを判定し、出来ていると判定されれば、ステップS105の直前に戻り、出来ていないと判定されれば、作業者が前輪デフロックペダル13から足を離したものと判断できるので、次に進む。
【0064】
ステップS106では、制御部200からの出力信号により、後輪車高調整用シリンダーモーター110が、シリンダーロッド110aを縮む方向に作動させるので、左右の後輪4のそれぞれの圧縮スプリングは元どおりに縮み、車高が元に戻り、左右の独立スイングが自在に行える状態になる。その後、ステップS102に戻り、上記動作を繰り返す。
【0065】
尚、乗用田植機1が直進しながら植付作業を続けて、畦まで来ると、旋回ターンした後、制御部200の制御フローは、再びステップS100に戻り、上記動作を繰り返す。
【0066】
これにより、例えば、深い圃場や土質の柔らかい圃場において、機体2の底面が圃場表面に接地し、車輪がスリップして進めなくなる場合であっても、作業者が前輪デフロックペダル13を踏み込むことにより、左右後輪4の独立スイングの最大変化幅を利用して、車高を高くすることが出来るので、直進走行が停滞することがなく、作業能率が向上する。
【0067】
尚、上記実施の形態では、乗用田植機1が直進している場合において車高を高くする例について説明したが、これに限らず例えば、乗用田植機1が旋回中において、車輪がスリップして進めなくなる場合であっても、作業者が前輪デフロックペダル13を踏み込むことにより、左右後輪4の独立スイングの最大変化幅を利用して、車高を高くすることが出来るので、旋回走行が停滞することがなく、作業能率が向上する。
【0068】
(II−2).ここでは、本実施の形態の乗用田植機1の苗移植作業中に旋回ターンする際に、前輪の左右の回転数差等に応じて、機体2の車高を高くする動作について説明する。
【0069】
図7に示す通り、HSTレバー10を前進走行域に設定して、乗用田植機1を直進させて植付作業を開始する(ステップS201)。
【0070】
次に、ステップS202では、作業者がステアリングハンドル11を回して乗用田植機1の旋回動作を開始したか否かを判定し、開始していないと判定されれば、ステップS202の直前に戻り、開始していると判定されれば、次のステップS203に進む。
【0071】
ステップS203では、畦まで直進した後、作業者がステアリングハンドル11を回して乗用田植機1を旋回させた場合、苗移植装置7が昇降装置30により自動的に上昇し、その上昇高さが所定高さに達したことを上昇検知部130が検知して、検知信号を制御部200に出力する。
【0072】
ステップS204では、上記検知信号を受信した制御部200は、左右の前輪回転数検出センサー140からの出力信号を利用して、前輪の外側と内側の回転数の差を算出する。
【0073】
ステップS205では、制御部200は、算出された回転数の差と、前輪内側の回転数とに基づいて、予め定められた基準と比較して、車高を高くするか否かを判定する。即ち、回転数の差が、予め定められた閾値(通常生じ得る回転数の差程度)以下であれば、ステップS206に進み、上記閾値より大きい場合(前輪がスリップしているときの回転数差に相当する値)、又は、前輪内側が停止していると判定された場合、ステップS207へ進む。
【0074】
ステップS206では、車高の変更は行わないでステップS209へ進む。
【0075】
また、ステップS207では、制御部200からの出力信号により、左右の後輪車高調整用シリンダーモーター110が作動して、シリンダーロッド110aが伸長される。これにより、左右の後輪4の圧縮スプリングが強制的に最大限まで伸長されて、車高が高くなる。
【0076】
ステップS208では、制御部200は、上記旋回動作が終了して、苗移植装置7の降下が完了したか否かを判定し、完了していないと判定すればステップS208の直前に戻り、完了していると判定すればステップS210へ進む。
【0077】
ステップS209では、制御部200からの出力信号により、後輪車高調整用シリンダーモーター110が、シリンダーロッド110aを縮む方向に作動させるので、左右の後輪4のそれぞれの圧縮スプリングは元どおりに縮み、車高が元に戻り、左右の独立スイングが自在に行える状態になる。その後、ステップS202に戻り、上記動作を繰り返す。
【0078】
これにより、前輪のどちらか一方側が回転していない場合や、前輪の左右の回転数差が、スリップしている時の回転数差に達している場合、それを自動的に検知出来て、作業者が前輪デフロックペダル13を踏み込まなくても、左右後輪4の独立スイングの最大変化幅を利用して、自動的に車高を高くすることが出来るので、旋回走行が停滞することがなく、作業能率が向上する。
【0079】
(II−3).ここでは、本実施の形態の乗用田植機1の苗移植作業中に旋回ターンする際に、前輪の左右の回転数差に応じて、機体2のサイドクラッチ機構を制御する動作について説明する。
【0080】
尚、本発明のサイドクラッチ機構の一例である本実施の形態のサイドクラッチ機構は、左右の後輪のそれぞれに設けられた、後述するクラッチ操作用油圧シリンダー120、後輪クラッチ180、及びクラッチ操作アーム(図示省略)等を含む包括的な概念である。
【0081】
図8に示す通り、HSTレバー10を前進走行域に設定して、乗用田植機1を直進させて植付作業を開始する(ステップS301)。
【0082】
次に、ステップ302では、作業者がステアリングハンドル11を回して乗用田植機1の旋回動作を開始したか否かを判定し、開始していないと判定されれば、ステップS302の直前に戻り、開始していると判定されれば、次のステップS303に進む。
【0083】
ステップS303では、畦まで直進した後、作業者がステアリングハンドル11を回して乗用田植機1を旋回させた場合、苗移植装置7が昇降装置30により自動的に上昇し、その上昇高さが所定高さに達したことを上昇検知部130が検知して、検知信号を制御部200に出力する。
【0084】
ステップS304では、上記検知信号を受信した制御部200は、左右の前輪回転数検出センサー140からの出力信号を利用して、前輪の外側と内側の回転数の差を算出する。
【0085】
ステップS305では、制御部200は、算出された回転数の差に応じて、予め定められた基準と比較して、両側の後輪クラッチ180の内、旋回内側のクラッチを切った状態にするか(ステップS306)、半クラッチ状態でつなぐか(ステップS307)、それともクラッチを完全につなぐか(ステップS308)の何れにするかを判定する。
【0086】
尚、従来の作業車両では通常、ステアリングハンドルを一定範囲以上旋回操作すると、例えば、所定量右旋回させると、所定の連結機構により右クラッチ操作アーム(図示省略)が操作されて、右側後輪のクラッチが切れて、旋回内側の後輪が遊転状態となる。
【0087】
即ち、前輪の回転数の差が、通常レベルの範囲(回転数の比が、1:7.5未満)にあれば、ステップS306に進み、通常レベルより少し大きい範囲(回転数の比が、1:7.5〜1:8.5)にあれば、ステップS307に進み、通常レベルよりかなり大きい範囲(回転数の比が、1:8.5より大きい)にあれば、ステップS308に進む。
【0088】
ステップS306では、スリップがほとんど無い状態であると判断できるので、制御部200は、旋回内側の後輪クラッチ180を入れた状態にする。
【0089】
また、ステップS307では、ある程度のスリップが発生していると判断できるので、制御部200は、旋回内側の後輪クラッチ180は、半クラッチ状態にする。
【0090】
また、ステップS308では、大きなスリップが発生していると判断できるので、制御部200は、旋回内側の後輪クラッチ180を、完全に繋いだ状態にする。
【0091】
ステップS309では、ステアリングハンドル11がもとに戻ると、通常通り、両側の後輪4のクラッチを完全につなぎ、両方の後輪1を駆動する。そのご、ステップS302へ戻り、上記動作を繰り返す。
【0092】
本実施の形態では、左右のクラッチ操作アーム(図示省略)は、従来の構成のように、ステアリングハンドルに所定の連結機構を介して連結されている構成ではない。即ち、本実施の形態の後輪クラッチ180の連結状態を切り替えるためのクラッチ操作アーム(図示省略)は、それぞれがクラッチ操作用油圧シリンダー120に繋がっている。これにより、制御部200が、クラッチ操作用油圧シリンダー120のピストンの伸長度合を制御して、クラッチ操作アームの操作量を変化させるので、旋回内側の後輪クラッチ180の連結度合を、連結解除状態、半クラッチ状態、及び完全連結状態の何れかの状態に自動的に切り替えることが出来る。
【0093】
尚、ここでは、後輪クラッチ180の連結度合を切り替えるための手段としてクラッチ操作用油圧シリンダー120を用いる場合について説明したが、これに限らず例えば、電動シリンダーを用いても良い。特に、電動駆動やハイブリッド駆動では、電動シリンダーを用いる可能性があり、また、ガソリン/ディーゼルエンジンの場合でも、油圧回路の複雑化を避けるためには電動シリンダーを用いても良い。また、上記以外に例えば、ソレノイドや、比例電磁弁などを用いる構成でも良い。
【0094】
これにより、旋回時の左右の前輪回転数検出センサー140の検出値の差に合わせて、旋回内側の後輪クラッチ180の連結度合(連結解除状態、半クラッチ状態、及び完全連結状態)が自動変更されることにより、圃場の土質に適した駆動力で旋回動作を行なうことができるので、旋回時に走行が停滞することが防止され、作業能率が向上する。
【0095】
また、これにより、回転数差が通常より小さい場合、即ち、スリップがないと判断できる場合には、旋回内側の後輪は駆動しない方が小さい半径で旋回できるので、回転数差に応じて、即ち、スリップ率に応じて、旋回内側の後輪のクラッチの連結度合(連結解除状態、半クラッチ状態、及び完全連結状態)を3段階に自動変更できるので、より作業能率が向上する。
【0096】
(II−4).ここでは、本実施の形態の乗用田植機1の苗移植作業中に旋回ターンする際に、旋回軌跡が大回りになっても、苗移植装置7を適切なタイミングで自動下降させ、且つ、苗移植装置7により苗の植え付けを適切なタイミングで開始させるための制御動作について説明する。
【0097】
図9に示す通り、HSTレバー10を前進走行域に設定して、乗用田植機1を直進させて植付作業を開始する(ステップS401)。
【0098】
次に、ステップS402では、作業者が、前進走行中において、ステアリングハンドル11を回したか、又は、HSTレバー10を後進走行域に変更したかを検出し、検出した場合は、ステップS403へ進み、検出しなかった場合は、ステップS402へ戻る。
【0099】
ステップS403では、ステアリングハンドル11が回されたことを検知した検知部(図示省略)からの検知信号又は、HSTレバー10が前進操作域側から後進操作域側に移動したことを検知した後進位置検出部からの検出信号を受け付けた制御部200は、苗移植装置7の植え付け動作を停止し、昇降装置30の油圧昇降シリンダー9に信号を出力して、苗移植装置7を自動的に上昇させる。
【0100】
ステップS404では、苗移植装置7が昇降装置30により自動的に上昇し、その上昇高さが所定高さに達したことを上昇検知部130が検知すると、その検知信号を制御部200に出力する。
【0101】
ステップS405では、左右の後輪に設けられた後輪回転センサー(図示省略)により、左右の後輪のそれぞれが何回転したかを0回転からカウントを始めて、カウントしたデータを制御部200へ送る。
【0102】
ステップS406では、制御部200は、前輪デフロックペダル操作検出スイッチ150が、前輪デフロックペダル13が踏み込まれたことを検出したか否かを判定し、NOであればステップS407へ進み、YESであればステップS408へ進む。
【0103】
ステップS407では、制御部200は、左右の後輪の内、回転の遅い方が0.4回転したか否かを判定し、YESであれば次のステップへ進み、NOであればステップS407の直前に戻る。
【0104】
ステップS409では、制御部200は、昇降装置30に指令を出して、苗移植装置7を自動降下させる。
【0105】
ステップS410では、制御部200は、左右の後輪の内、回転の遅い方が、ステップS405でカウントを開始してからの合計として0.95回転したか否かを判定し、YESであれば次のステップへ進み、NOであればステップS410の直前に戻る。
【0106】
ステップS411では、制御部200は、昇降装置30に指令を出して、苗移植装置7を自動降下させる。
【0107】
ステップS412では、制御部200は、左右の後輪の内、回転の遅い方が、ステップS405でカウントを開始してからの合計として1.05回転したか否かを判定し、YESであれば次のステップへ進み、NOであればステップS412の直前に戻る。
【0108】
ステップS413では、制御部200からの指令により、苗移植装置7による苗の植え付けを自動的に再開させる。
【0109】
これにより、作業車両が旋回中にデフロック機構170が作動したことを制御部200が検出した場合、制御部200は、苗移植装置7の下降開始タイミングと、苗移植装置7の植え付け動作開始タイミングを、デフロック機構170が作動していない場合と比べて所定時間遅くするので、デフロック機構170を作動させることにより旋回軌跡が大回りになっても、苗移植装置7を適切なタイミングで自動下降させ、且つ、苗植え付け動作を適切なタイミングで開始させることが出来る。よって、作業能率が向上する。
【0110】
尚、ステップS408、S412のそれぞれで判定基準として説明した旋回内側の後輪回転数は、旋回の開始と同時にデフロック機構170を作動させた場合、即ちほぼ最初から同ペースで旋回する場合における数値であり、仮に旋回途中でデフロック機構170を作動させた場合は、この判定基準の数値は増加する。また、何れの場合も、判定基準の数値は、圃場条件等によっても変わり得るものであり、本願発明が上記数値に限定されるものでは無い。
【0111】
(II−5).ここでは、本実施の形態の乗用田植機1の苗移植作業中に旋回ターンする際に、旋回軌跡が大回りになっても、苗移植装置7を適切なタイミングで自動下降させ、且つ、苗移植装置7により苗の植え付けを適切なタイミングで開始させるための制御動作について、図10を用いて説明する。
【0112】
本実施の形態と、上記図9の実施の形態との主な相違点は、苗移植装置7の自動降下のタイミング及び苗の植え付け動作の開始のタイミングを通常の旋回に比べて遅延させるか否かが、図9の構成では、前輪デフロックペダル操作検出スイッチ150からの出力に依存しているのに対して、本実施の形態では、左右の後輪の回転数差に依存している点である。
【0113】
以下、図10において、図9の説明と同じものについては同じ符号を付してその説明を省略し、両者の相違点を中心に説明する。
【0114】
図10に示す通り、ステップS400〜ステップS405は、図9と同じである。
【0115】
ステップS506では、制御部200は、旋回内側の後輪と旋回外側の後輪とが、それぞれ何回転したかのカウントをステップS405で開始し始めているので、それらのカウント数を対比計算する。即ち、制御部200は、ステップS506の時点における、旋回内側の後輪の回転のカウント数に対する旋回外側の後輪の回転のカウント数の比が、0.4回転:3回転=1:7.5を基準(スリップしていない状態)として、旋回外側の後輪が内側に比べて7.5倍以下の回転数差で回っていると判定した場合は、ステップS407へ進み、7.5倍よりも大きい回転数差で回っていると判定した場合は、ステップS408へ進む。
【0116】
ステップS409〜ステップS413は、図9と同じである。
【0117】
これにより、作業車両が旋回中に後輪の回転数に予め定められた比率以上の差が発生したことを制御部200が検出した場合、制御部200は、苗移植装置7の下降開始タイミングと、苗移植装置7の植え付け動作開始タイミングを、標準的な田における旋回走行の場合と比べて所定時間遅くするので、例えば湿田での後輪の回転数差(例えば、旋回内側の後輪が0.4回転する間に、旋回外側の後輪は約3回転する)が、標準田での後輪の回転数差(例えば、旋回内側の後輪が0.4回転する間に、旋回外側の後輪は4回転する)より大きい場合でも、即ち、湿田でのスリップに起因して旋回軌跡が大回りになっても、苗移植装置7を適切なタイミングで自動下降させ、且つ、苗植え付け動作を適切なタイミングで開始させることが出来る。よって、作業能率が向上する。
【0118】
(II−6).ここでは、本実施の形態の乗用田植機1が、例えば圃場から畦に出る時等には、機体2が急激に前上がり姿勢になる場合が多く、その様な場合には、制御部200が、傾斜センサーの検出データに基づき、機体2が所定角度以上前上がり姿勢になったと判断し、デフロック機構170を作動させる制御動作について、図11を用いて説明する。
【0119】
図11に示す通り、ステップS600では、HSTレバー10が前進走行域に設定されており、乗用田植機1はデフロック機構170が解除された状態で前進中である。
【0120】
ステップS601では、制御部200において、機体2の前側が10°以上、上方に傾斜したことを傾斜検出センサー160が検出したか否かを判定し、検出した場合は、ステップS603へ進み、検出していない場合は、ステップS602へ進み、デフロック機能が解除された状態を維持したまま、ステップS600へ戻る。例えば、乗用田植機1が圃場から畦に出る時には、通常、機体2は10°以上前上がり姿勢になるので、ステップS603へ進む。
【0121】
一方、ステップS603では、制御部200からの出力信号によりデフロック作動用シリンダーモーター100がONして、デフロック機構170が作動する(ステップS604)。
【0122】
ステップS605では、前上がり傾斜角が10°未満であるか否かを判定し、YESであればステップS606へ進み、NOであればステップS604へ戻る。
【0123】
ステップS606では、制御部200からの出力信号によりデフロック作動用シリンダーモーター100がOFFして、デフロック機構170の作動が解除され(ステップS607)、ステップS600に戻る。
【0124】
これにより、機体2が大きく前上がり姿勢となるとデフロック機構170が作動することにより、機体2の前側が浮き気味になって前輪3にかかる荷重が減っても左右の前輪3が同調して回転するため、傾斜地等の移動中であっても機体2が直進しやすく、操作性が向上する。
【0125】
III.次に、上記実施の形態の乗用田植機1の制御システムの他の制御動作、及び変形例としての別の制御動作について、更に説明する。
【0126】
(III−1).ここでは、路上走行中に、左右の前輪伝動ケース内における振動差が予め定められたレベル以上になった場合に、それを検知して、前輪伝動ケース内に何らかのトラブルが発生する前兆であると判定して、事前に走行クラッチを切るなどの動作を自動的に行う場合の制御について、図12を用いて説明する。
【0127】
図12は、乗用田植機1を前から見た、前輪伝動ケースの概略断面図である。
【0128】
図12に示す通り、前輪伝動ケース300の中央部では、前輪の車軸310が回転自在に支持されており、車軸310を回転させるための走行動力伝動歯車320が軸着されており、その走行動力伝動歯車320の片側の円周部分には傘歯車321が形成されている。また、前輪伝動ケース300の上部では、前輪伝動ケース300の回転中心軸であるキングピン330の中央位置近傍でキングピン軸受け部材331により回転自在に支持されており、キングピン330の下端には下傘歯車332が軸着されており、キングピン330の上端には上傘歯車(図示省略)が軸着されている。
【0129】
また、キングピン軸受け部材331の下面にはアーム340の一端が当接して取付られており、他端が前輪伝動ケース300の外部に露出している。振動検知センサー192は、キングピン軸受け部材331の他端の上面側に取付られており、検知信号を制御部200に出力する構成である。
【0130】
即ち、振動検知センサー192は、前輪伝動ケース300の内部で生じるトラブル(例えば、キングピン軸受け部材331のベアリングの破損、キングピン330の折損等)を事前に検知出来る様にするために、キングピン軸受け部材331から伝達されてくる上記トラブルの前兆となる異常振動を検知する構成である。
【0131】
エンジン6の回転力は、デファレンシャル機構及びフロントアクスルを介して、キングピン330の上傘歯車に伝達されて、キングピン330の下傘歯車332から走行動力伝動歯車320を介して前輪3に伝動する構成である。
【0132】
以上の構成のもとで、作業者は、副変速操作レバー190(図5参照)を路上走行モードに設定しているものとする。
【0133】
制御部200は、副変速操作レバー位置検出部191(図5参照)からの出力信号を受けて、乗用田植機1の動作モードが路上走行モードであることを認識している。その場合において、左右の前輪3のそれぞれに取り付けられた振動検知センサー192(図5,図12参照)から出力される振動データの差が、予め定めた閾値(制御部200のメモリ(図示省略)に予め記録されている)以上の高い値であると、制御部200が判定した場合は、前輪伝動ケース300に異常の生じている可能性があるので、トラブルの発生を未然に防止するために、制御部200は以下の何れか一つ、又は複数の動作を自動的に実施する。
【0134】
その動作としては、例えば、作業者に対する警告として、音声または操縦部12の操作パネル面(図示省略)での警告表示を行うか、或いは、走行クラッチ(図示省略)を切るか、HSTレバー10を停止位置(アイドリング位置)の近傍に移動させる等である。
【0135】
この様に、本実施の形態の構成によれば、アーム340に振動検知センサー192を取り付けたことで、アンダーフレーム2a等に振動が伝わり易いミッションケース19(図3参照)等に取り付けた場合と比べて、駆動部の異常による前輪のばたつきを最も効率よく検知できるという効果を発揮する。
【0136】
また、これにより、左右の前輪伝動ケース300の回転中心軸にアーム340を設け、このアーム340からの振動を検知できる様に振動検知センサー192を設けて前輪3の振動数を検出することにより、左右の振動数に極端な差が生じた場合、何れかの前輪伝動ケース300に異常が生じていることを検出できるので、異常が検出されたら直ちに作業を中断することにより、圃場内で走行不能に陥り、圃場内からの機体2の回収作業を行う必要がなくなる。
【0137】
尚、上記の構成とは別に、制御部200が、左右の振動検知センサー192による振動差が所定の閾値以上であると検知した場合、左右の何れの振動検知センサー192の振動値が大きいかを判定して、その判定結果から、左右何れかの振動が大きい側の苗載置タンク14のウインカー(図示省略)を点滅させると共に、操縦部12の操作パネル面(図示省略)に更に詳しい異常個所をエラーコードなどで表示する構成としても良い。
【0138】
これにより、作業者は、左右何れの側の前輪伝動ケース300に異常が発生しているかが容易に分かる。
【0139】
また、異常発生箇所に応じた振動特性を予め分析して制御部200のメモリ部(図示省略)にデータテーブルとして格納しておくことにより、制御部200が振動検知センサー192から振動データを受け付けた場合、その振動データを分析し、その分析結果に最も類似する振動特性を有する異常発生箇所のデータを、予め格納されているデータテーブルにおいて検索し、その検索結果を、操縦部12の操作パネル面(図示省略)や、メンテナンス用のエラーコード表示部(図示省略)に表示することにより、更に詳細な異常発生箇所が判断可能となるので、メンテナンス性が向上する。
【0140】
(III−2).ここでは、上記実施の形態の乗用田植機1の変形例として、植え付け動作中において、苗取口に石などが挟まって、ロータリーケースの回転がロックした場合の制御動作について、図13〜図16を用いて説明する。
【0141】
図13(a)、図13(b)に示す通り、苗取口プレート402の背面側には歪み検知センサー404がそれぞれ設けられている(図1、図13参照)。
【0142】
ここで、図13(a)は、図2のD部拡大図であり、前板401に形成された苗取口403や歪み検知センサー404を説明するための概略図である。また、図13(b)は、歪み検知センサー404の取付位置を説明するための概略側面図である。
【0143】
また、通常、作業者は、走行操作レバー10を手動で適宜移動させるが、例えば、異常時において、作業者の操作に関わらず、走行操作レバー10を停止位置(中立位置)に自動的に戻すためのHSTレバー戻しモーター406が、走行操作レバー10の下部に設けられている(図14、図15参照)。
【0144】
尚、図14は、本実施の形態の乗用田植機1の走行操作レバー10とHSTレバー戻しモーター406を示す概略側面図である。図15は、本実施の形態における乗用田植機1の制御システムを示すブロック図である。
【0145】
また、図15に示す通り、本実施の形態での制御部2001と、上記実施の形態で説明した制御部200(図5参照)との相違点は、振動検知センサー192に代えて歪み検知センサー404が設けられており、更にHSTレバー戻しモーター406が制御部2001に接続されている点であり、上記制御部200と同じ構成については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0146】
図16に示す通り、HSTレバー10を前進走行域に設定して、乗用田植機1を直進させて植付作業を開始する(ステップS701)。
【0147】
植付作業中において、植付爪15aの先端と苗取口403の隙間に石4010が挟まって(図13(a)参照)、ロータリーケース402の回転がメカロックし、安全クラッチ(図示省略)が作動して(ステップS702)、苗取口プレート402に応力が加わることにより、その背面側に取付られた歪み検知センサー404(図13(a)参照)が大きな力が加わっていることを検知して、制御部200にデータを出力する(ステップS703)。
【0148】
歪み検知センサー404からのデータを受けた制御部200は、HSTレバー10に取り付けられたHSTレバー戻しモーター406(図14参照)を作動させて(ステップS704)、HSTレバー10を停止位置(中立位置)に自動的に戻す(ステップS705)。
【0149】
作業者が一旦、運転席18から降りて、苗取口403に挟まった石410等を取り除くことで、歪み検知センサー404からの出力は正常状態に戻り(ステップS706)、制御部200は、HSTレバー戻しモーター406によるHSTレバー10の停止位置への強制作動を解除して、作業者が自由に手動操作可能とし(ステップS707)、ステアリングハンドル11が回されるまでは、直進して植付作業を続ける(ステップS701)。
【0150】
尚、歪み検知センサー404が作動(ON)した場合、上記の様にHSTレバー10を停止位置に自動的に戻す構成の他に、これに代えて、例えば、ブレーキペダル405に連結されたブレーキペダル踏み込みモーター(図示省略)を設け、制御部2001からの指令により、ブレーキペダルを自動的にゆっくり踏み込むように構成しても良いし、又は、制御部2001からの指令により警報ブザー(図示省略)を鳴らす構成としても良い。
【0151】
これにより、例えば、2条分のロータリーケース400の安全クラッチ(図示省略)が作動して、2条分の植付部15だけがロック状態にあって回っていないにも関わらず、作業者がそれに気付かずに、そのまま植付作業を続けるのを防止出来るので、作業効率が向上する。
【0152】
(III−3).ここでは、上記実施の形態の変形例としての乗用田植機1の制御部2002が、植え付け動作中における運転席18aのポジションによって、油圧昇降シリンダー9の油圧感度(苗移植装置7の上昇側への切り替わり易さの度合)を自動的に調整することにより、植え付け動作時の苗載置タンク14の追従性を最適化する制御機構について、図17〜図19を用いて説明する。
【0153】
図17(a)、(b)に示す通り、運転席18aは、そのシートポジションが前後にスライド可能に構成されており、シートポジションが標準位置(図17(b)の矢印502参照)と、前方位置(図17(b)の矢印501参照)と、後方位置(図17(b)の矢印503参照)の3通りの位置を認識するシートポジション検知センサー504(図18参照)が設けられており、位置情報を制御部2002に出力する構成である。また、図17に示す通り、センターフロート16cの上面側には、フロートの水平面に対する仰角θを検知するためのフロートセンサー505(図18参照)が設けられており、仰角θの情報を制御部2002に出力する構成である。
【0154】
図18に示す通り、本実施の形態での制御部2002と、上記実施の形態で説明した制御部200(図5参照)との相違点は、振動検知センサー192に代えてシートポジション検知センサー504と、フロートセンサー505が設けられている点である。更に、制御部2002は、シートポジション検知センサー504と、フロートセンサー505との出力に基づいて、油圧昇降シリンダー9の油圧感度を自動的に調整する点で、上記制御部200と相違するが、上記制御部200と同じ構成については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0155】
ここで、図18は、本実施の形態における乗用田植機1の制御システムを示すブロック図である。また、図19は、圃場の凹凸に応じて苗移植装置7を上昇させるための油圧昇降シリンダー9の油圧感度の調整方法を説明するためのフロー図である。
【0156】
図19に示す通り、ステップS800では、制御部2002が、シートポジション検知センサー504からの出力信号を受けて、運転席18aのシートポジションが何れであるかを判定し、「シート前方位置」と判定すればステップS801へ進み、「標準位置」と判定すればステップS802へ進み、「シート後方位置」と判定すればステップS803へ進む。
【0157】
ステップS801では、制御部2002は、苗移植装置7を上昇させるための油圧昇降シリンダー9の油圧感度を決める上昇角ΦをΦ+α(シートポジションが標準位置の場合において、苗移植装置7の上昇を開始させるフロートの仰角θの閾値がΦであり、αは予め定めた正の補正角度である)に補正する。即ち、シートポジションが前方位置501に設定されている場合は、前輪3に対する作業者の荷重が増加するため、機体2前方が沈み易く、苗移植装置7が浮き上がり易くなった状態に適切に対応できる様に、油圧昇降シリンダー9の油圧感度を鈍くする構成である。
【0158】
ステップS802では、制御部2002は、油圧感度を決める上昇角ΦとしてΦをそのまま用いる。即ち、シートポジションが標準位置502に設定されている場合は、機体2の前後のバランスは標準レベルに維持出来ているため、油圧感度を決める上昇角Φはフロートの仰角θの閾値Φをそのまま用いる構成である。
【0159】
ステップS803では、制御部2002は、油圧感度を決める上昇角ΦをΦ−αに補正する。即ち、シートポジションが後方位置503に設定されている場合は、前輪3に対する作業者の荷重が減少するため、機体2前方が浮き上がり易く、苗移植装置7が沈み易くなった状態に適切に対応できる様に、油圧昇降シリンダー9の油圧感度を敏感にする構成である。
【0160】
これにより、乗用田植機1を構成する部品と比べて最も重い作業者の荷重が、前方側、標準、後方側の何れのシートポジションにおいて作用しているかをシートポジション検知センサー504で検知することにより、植え付け動作時の苗載置タンク14の追従性を最適化することが出来る。
【0161】
尚、図7を用いて説明した上記実施の形態の乗用田植機1の制御システムとしては、図5に示す通りの各種センサー、スイッチ、装置、及び機構などを全て備えた構成を前提とした場合について説明した。
そのため、図7の実施の形態では、例えば、図6を用いて説明した、前輪デフロックペダル操作検出スイッチ150からの検出信号を受信した制御部200により車高を高くする動作を行う機能をも兼ね備えたことを前提とした上で、デフロック機構170が作動したか否かに関わらず、左右の前輪回転数検出センサー140の検出データに基づいて、前輪がスリップなどしていると制御部200により判定された場合は、車高を高くする構成を説明しているが、これに限らず例えば、図5に示す、デフロック検出装置の一例である前輪デフロックペダル操作検出スイッチ150を備えない制御システム構成、即ち、前輪デフロックペダル操作検出スイッチ150からの検出信号を受信した制御部200により車高を高くする動作を行う機能を備えていない構成において、左右の前輪回転数検出センサー140の検出データに基づいて、前輪がスリップなどしていると制御部200により判定された場合は、車高を高くする構成であっても良い。
この場合でも、例えば、前輪(3)のどちらか一方側が回転していないときはスリップしていると判断し、後輪上下動機構(110、111、112)を作動させて後輪(4)の上下位置を変更することにより、車高を高くすることが出来るので、旋回時等に走行が停滞することがなく、作業能率が向上するという効果を発揮する。
【0162】
また、図6を用いて説明した上記実施の形態の乗用田植機1の制御システムでは、作業者が前輪デフロックペダル13を踏み込んだことをトリガーとして、デフロック機構170が作動し、デフロック検出装置の一例である前輪デフロックペダル操作検出スイッチ150からの検出信号を受信した制御部200からの指令により後輪車高調整用シリンダーモーター110が作動して車高を高くする構成について説明が、これに限らず例えば、デフロック制御機構の一例である制御部200が、左右の前輪3の回転数を検出する回転数センサー部140の検出データに基づいて、左右の前輪3の何れかの回転数が設定値以下の場合、又は、左右の前輪3の回転数の差が設定値以上の場合は、そのことをトリガーとして、デフロック作動用シリンダーモーター100をONさせて、デフロック機構170を作動させる構成でも良い。
【0163】
即ち、この場合、制御部200から伸長用の駆動信号を受けたデフロック作動用シリンダーモーター100は、シリンダーロッド100aを所定長さまで伸長駆動する。これによって、第1可動アングル171は、作業者が前輪デフロックペダル13を踏み込んでいない場合であっても、他方の端部171bの回転軸を中心に矢印A方向に回動するため、それに連動したワイヤー174の動きにより、作業者が前輪デフロックペダル13を踏み込んだ場合と同様に、デファレンシャル機能をロック状態にする。
また、この場合、デフロック検出装置の一例としての前輪デフロックペダル操作検出スイッチ150に代えて、デフロック検出装置(図示省略)の検知部(図示省略)が、第1可動アングル171の動きを検出できる様に、例えば、フランジ部171aの下面に当接するように、デフロック検出スイッチを固定した構成とすれば良い。
【0164】
また、この場合、作業者が前輪デフロックペダル13を踏み込んだことをトリガーとして、デフロック機構170が作動する機能を実現するための前輪デフロックペダル操作検出スイッチ150をも備えた構成であっても良いし、あるいは、前輪デフロックペダル操作検出スイッチ150を備えていない構成であっても良い。
【0165】
また、図12を用いて説明した上記実施の形態では、図5に示す通り、振動検出センサー192の他に、車高を高くする機能を実現するための後輪車高調整用シリンダーモーター110や前輪デフロックペダル操作検出スイッチ150等を備えた構成について説明したが、これに限らず例えば、車高を高くする機能を実現する構成は無くても良い。従って、この場合、例えば、後輪車高調整用シリンダーモーター110や前輪デフロックペダル操作検出スイッチ150を備える必要は無い。
【0166】
また、図13を用いて説明した上記実施の形態では、図15に示す通り、歪み検知センサー404、HSTレバー戻しモーター406の他に、車高を高くする機能を実現するための後輪車高調整用シリンダーモーター110や前輪デフロックペダル操作検出スイッチ150等を備えた構成について説明したが、これに限らず例えば、車高を高くする機能を実現する構成は無くても良い。従って、この場合、例えば、後輪車高調整用シリンダーモーター110や前輪デフロックペダル操作検出スイッチ150を備える必要は無い。
【0167】
また、図17を用いて説明した上記実施の形態では、図18に示す通り、シートポジション検知センサー504、フロートセンサー505の他に、車高を高くする機能を実現するための後輪車高調整用シリンダーモーター110や前輪デフロックペダル操作検出スイッチ150等を備えた構成について説明したが、これに限らず例えば、車高を高くする機能を実現する構成は無くても良い。従って、この場合、例えば、後輪車高調整用シリンダーモーター110や前輪デフロックペダル操作検出スイッチ150を備える必要は無い。
【0168】
また、上記実施の形態では、作業装置として苗移植装置を連結した場合について説明したが、これに限らず例えば、苗移植装置以外の各種作業用装置を連結しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明にかかる作業車両は、土質の柔らかい圃場での旋回走行が円滑に行えるという効果を有し、車体の後部に苗移植機などの作業機を連結して各種作業を行う作業車両等として有用である。
【符号の説明】
【0170】
1 乗用田植機
2 機体
3 前輪
4 後輪
5 変速装置
6 エンジン
7 苗移植装置
8 リンク機構
9 油圧昇降シリンダ
10 走行操作レバー
11 ステアリングハンドル
12 操縦部
13 前輪デフロックペダル
14 苗載置タンク
15 植付部
16 サイドフロート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪(3)と後輪(4)を有する走行車体(2)と、
前記前輪(3)へのデファレンシャル機構を切り替えるデフロック機構(170)と、
前記デフロック機構(170)を制御するデフロック制御機構(200a)と、
前記後輪の上下位置を変更する後輪上下動機構(110、111、112)と、を備えた作業車両(1)であって、
前記後輪上下動機構を作動させる上下動アクチュエータ(110、110a)と、
前記デフロック機構(170)の作動を検出するデフロック検出装置(150)と、
前記デフロック検出装置(150)が前記作動を検出した場合、前記上下動アクチュエータ(110、110a)を作動させて前記走行車体の車高を変更する車高変更制御機構(200b)と、を備えたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
左右の前記前輪(3)の回転数を検出する回転数センサー部(140)を、更に備え、
前記車高変更制御機構(200b)は、前記回転数センサー部(140)の検出データに基づいて、前記左右の前記前輪(3)の何れかの回転数が設定値以下の場合、又は、前記左右の前記前輪(3)の回転数の差が設定値以上の場合は、前記上下動アクチュエータ(110、110a)を作動させることを特徴とする、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
左右の前記前輪(3)の回転数を検出する回転数センサー部(140)を、更に備え、
前記デフロック制御機構(200a)は、前記回転数センサー部(140)の検出データに基づいて、前記左右の前記前輪(3)の何れかの回転数が設定値以下の場合、又は、前記左右の前記前輪の回転数の差が設定値以上の場合は、前記デフロック機構(170)を作動させることを特徴とする、請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
前記後輪(4)への回転力の伝動を入り切りするサイドクラッチ機構(120、180)と、
前記サイドクラッチ機構を制御するサイドクラッチ制御機構(200c)と、
左右の前記前輪(3)の回転数を検出する回転数センサー部(140)を、更に備え、
前記サイドクラッチ制御機構(200c)は、前記回転数センサー部(140)の検出データに基づいて、前記回転数の差が予め定められた下限値以下であればサイドクラッチ機構(120、180)の切り状態を維持し、前記回転数の差が予め定められた上限値以上であればサイドクラッチ機構(120、180)を入り状態にし、前記回転数の差が前記下限値を越えて且つ前記上限値未満であれば前記サイドクラッチ機構(120、180)を半クラッチ状態にすることを特徴とする、請求項1に記載の作業車両。
【請求項5】
旋回時に、前記走行車体(2)の後部に昇降自在に装着される作業装置(7)を昇降させる自動昇降機構(30)と、
旋回時に自動的に前記作業装置(7)を作動させる自動作業機構(200d)と、
前記自動昇降機構(30)と前記自動作業機構(200d)とを制御する自動昇降作業制御機構(200e)とを、更に備え、
前記自動昇降作業制御機構(200e)は、前記デフロック検出装置(150)の検出データに基づき、前記デフロック機構(170)の作動により前記デファレンシャル機構がロック状態である場合は、前記デファレンシャル機構が前記ロック状態でない場合に比べて、前記自動昇降機構(30)と前記自動作業機構(200d)の作動開始時間を遅らせる構成としたことを特徴とする、請求項1に記載の作業車両。
【請求項6】
前記走行車体(2)の前後方向の傾斜を検出する傾斜センサー(160)を備え、
前記デフロック制御機構(200a)は、前記傾斜センサー(160)の検出データに基づき、前記走行車体(2)が所定角度以上前上がり姿勢になったことを検出した場合は、前記デフロック機構を作動させる構成としたことを特徴とする、請求項1に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−228913(P2012−228913A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97279(P2011−97279)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】