説明

作業車輌

【課題】変速時における速度切換え時間を短縮し、速度切換え時のシフトショックを軽減することができる作業車輌を提供する。
【解決手段】エンジン6からの動力を、主変速装置20、主クラッチ30、副変速装置40及び前後進切換え装置50を有するトランスミッションを介して駆動車軸73に伝達して走行する作業車輌を、前記主変速装置20、副変速装置40及び主クラッチ30は、変速操作手段の操作に基づくアクチュエータの作動により操作され、前記副変速装置40は、同期歯合式歯車変速装置からなり、かつ前記主クラッチ30に対して伝動経路の直下流側に配置され、前記前後進切換え装置50は、前記副変速装置40の伝動下流側に配置するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業用のトラクタ等、不整地を走行しながら作業を行うための作業車輌に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタ等の作業車輌においては、圃場等の不整地で各種の作業を行うため、作業場所の状況や作業内容に応じた走行速度を得ることが必要になり、路上走行する一般の自動車に比べより多段の速度切換えが要求されている。
【0003】
このようなニーズに応えるものとして、例えば、複数段に変速操作可能な主変速装置と、前後進切換え装置とを直列に配置して、高速と低速の2段に切換え可能な副変速装置を前後進切換え装置の前進側の下流側に配置し、副変速装置の高速と低速の伝動比を、主変速装置における各段間における伝動比より小さく設定した作業車輌が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−240297号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記作業車輌においては、副変速装置が前後進切換え装置の下流側にあるので、その同期歯合式歯車変速装置が、前後進切換え装置等のイナーシャの影響を受け、回転速度を同期させるまでの時間が長くなり、速度切換え時におけるシフトショックが大きくなることがある。
【0006】
前記の事情に鑑み、本発明は、速度切換え時間を短縮し、シフトショックを軽減することができる作業車輌を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1に係る本発明は、エンジン(6)からの動力を、主変速装置(20)、主クラッチ(30)、副変速装置(40)及び前後進切換え装置(50)を有するトランスミッションを介して駆動車軸(73)に伝達してなる作業車輌(1)において、
前記主変速装置(20)、副変速装置(40)及び主クラッチ(30)は、変速操作手段に基づくアクチュエータ(113、123、133、143)の作動により操作され、
前記副変速装置(40)は、同期歯合式歯車変速装置からなり、かつ前記主クラッチ(30)に対して伝動経路の直下流側に配置され、
前記前後進切換え装置(50)は、前記副変速装置(40)の伝動下流側に配置されてなる、
ことを特徴とする作業車輌にある。
【0008】
請求項2に係る本発明は、前記副変速装置(40)は、ダブルコーンタイプの同期歯合式歯車変速装置からなり、
前記主変速装置(20)は、前記主クラッチ(30)の伝動上流側に配置され、かつシングルコーンタイプの同期歯合式歯車変速装置からなる、
請求項1記載の作業車輌にある。
【0009】
なお、前記した括弧内の符号等は、図面を参照するためのものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る本発明によると、副変速装置は、主クラッチの直下流側にあるので、その同期歯合式歯車変速装置が、前後進切換え装置等のイナーシャの影響を受けることなく、素早く同期して、変速時間の短縮を図ることができ、変速操作手段に基づくアクチュエータの作動によるトランスミッション(いわゆるノンクラッチタイプトランスミッション)のシフトショックを低減することができる。
【0011】
請求項2に係る本発明によると、上記ノンクラッチタイプのトランスミッションにあっては、主変速装置及び副変速装置を同時に操作する変速段において主変速装置に比して副変速装置の変速が遅れる傾向にあるが、副変速装置をダブルコーンタイプの同期歯合式歯車変速装置としたので、副変速装置の変速をスムーズにして、上記遅れによるシフトショックを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1乃至図5は、本発明の実施の形態を示すもので、図1は、作業車輌の側面図、図2は、作業車輌のミッションケース内に配置された変速装置の配置を示し、(a)は、側面断面図、(b)は、前後進切替え装置の平面図、(c)は、前後進切替え装置の側面図、図3は、作業車輌の伝動系統図、図4は、作業車輌の主変速装置、主クラッチ、副変速装置の油圧系統を示す油圧回路図、図5は、各変速段における油圧回路のソレノイドバルブの作動対応図である。
【0014】
図1に示すように、作業車輌1は、一体に固定されたエンジン6及びミッションケース8等により構成される機体5を有しており、該機体は、左右に配置された各一対の前輪2(2)と後輪3(3)により支持されている。該機体5の前部に搭載されたエンジン6(図3参照)は、ボンネット7で覆われている。前記エンジン6の出力は、前記機体5に一体に構成されたミッションケース8内に配置された変速装置を介して前記前輪2(2)及び後輪3(3)に伝達され、作業車輌1を前後方向に所要の速度で走行させる。
【0015】
図2、図3に示すように、前記エンジン6からの動力は、クラッチ11、出力軸12と、該出力軸12に固定された出力ギヤ13を介して、該出力ギヤ13と歯合する入力ギヤ15と、該入力ギヤ15を固定した入力軸16に伝達される。前記入力軸16には、歯数の異なる複数のギヤ16a、16b、16c、16dが一体に固定され、前記ミッションケース8内に回転自在に配置されている。
【0016】
また、前記ミッションケース8内には、前記入力軸16と隣接配置された主変速装置20と、前記主変速装置20から出力され下流側に伝達される動力を断続する主クラッチ30と、該主クラッチ30の下流側に接続された副変速装置40と、該副変速装置40に隣接配置された前後進切換え装置50と、該前後進切換え装置50の出力を前記前輪2及び後輪3に伝達する超低変速装置60等が配置され、走行駆動系を構成している。
【0017】
なお、前記ミッションケース8内には、前記入力軸16と隣接配置されたPTO主変速部81と、前記作業車輌1に連結された作業機(図示せず)の正逆回転を行わせるためのPTO副変速部82が配置され、PTO軸83を介して前記作業機に出力するようになっているが、詳細な説明は省略する。
【0018】
前記主変速装置20は、前記ミッションケース8に回転自在に支持された伝動軸21と、該伝動軸21に前記ギヤ16a、16b、16c、16dと常時歯合う歯数の異なるギヤ22a、22b、22c、22dが回転自在に支持されている。また、前記ギヤ22aとギヤ22bの間には、各ギヤ22a、22bとそれぞれ選択的に係合、離脱可能なシングルコーンタイプのシフト部材23が、前記ギヤ22cとギヤ22dの間には、各ギヤ22c、22dとそれぞれ選択的に係合、離脱可能なシングルコーンタイプのシフト部材25が、それぞれ前記伝動軸21の軸方向に移動自在に配置されている。
【0019】
例えば、前記シフト部材23が前記ギヤ22a及びギヤ22bから離脱したニュートラル位置にあるときには、前記各ギヤ22a、22bは、それぞれ前記伝動軸21に対して空転している。前記シフト部材23が前記ギヤ22a(もしくはギヤ22b)と係合している場合には、該シフト部材23がその係合しているギヤ22a(もしくはギヤ22b)と共に回転して前記伝動軸21を回転させる。
【0020】
また、前記シフト部材25が前記ギヤ22c及びギヤ22dから離脱したニュートラル位置にあるときには、前記各ギヤ22c、22dは、それぞれ前記伝動軸21に対して空転している。前記シフト部材25が前記ギヤ22c(もしくはギヤ22d)と係合している場合には、該シフト部材23がその係合しているギヤ22c(もしくはギヤ22d)と共に回転して前記伝動軸21を回転させる。
【0021】
即ち、主変速装置20は、前記ギア16a、16b、16c、16dと、これらギア16a、16b、16c、16dと常時歯合うギヤ22a、22b、22c、22dと、前記シフト部材23、25により、シングルコーンタイプの同期歯合式歯車変速装置で構成され、ギヤ16aとギヤ22a、ギヤ16bとギヤ22b、ギヤ16cとギヤ22c、ギヤ16dとギヤ22dの各噛合わせにより、伝動比の異なる4段の変速段が設定されている。
【0022】
前記主クラッチ30は、前記主変速装置20と副変速装置40の間に配置された油圧クラッチで構成され、油圧の供給により前記主変速装置20の出力を前記副変速装置40に伝達する入り状態になり、油圧の遮断により前記主変速装置20の出力を前記副変速装置40に伝達しない切り状態になる。
【0023】
前記副変速装置40は、前記主変速装置20の伝動軸21と同一軸心上に位置するように前記ミッションケース8に回転自在に支持された入力軸41と、前記入力軸16と同一軸心上に位置するように前記ミッションケース8に回転自在に支持された伝動軸46とを備えている。
【0024】
前記入力軸41は、前記主クラッチ30を介して前記伝動軸21に連結され、該主クラッチ30の入り状態にとき前記伝動軸21と共に回転する。前記入力軸41には、歯数の異なるギヤ42a、42b、42cが回転自在に支持されている。また、前記ギヤ42aの近傍には、ギヤ42aと係合、離脱可能なダブルコーンタイプのシフト部材43が、前記ギヤ42bとギヤ42cの間には、各ギヤ42b、42cとそれぞれ選選択的に係合、離脱可能なダブルコーンタイプのシフト部材45が、それぞれ前記入力軸41の軸方向に移動自在に配置されている。
【0025】
前記伝動軸46には、前記ギヤ42a、42b、42cと常時噛合う歯数の異なる複数のギヤ46a、46b、46cと前記前後進切換え装置50への出力を行うギヤ46d、46eが一体に固定されている。
【0026】
例えば、前記シフト部材43が前記ギヤ42aから離脱したニュートラル位置にあるときには、前記ギヤ42aは、前記入力軸41に対して空転している。前記シフト部材43が前記ギヤ42aと係合している場合には、該シフト部材43を介してギヤ42aを前記入力軸41と共に回転させ、前記ギヤ42aを介して前記伝動軸46を回転させる。
【0027】
また、前記シフト部材45が前記ギヤ42b及びギヤ42cから離脱したニュートラル位置にあるときには、前記各ギヤ42b、42cは、それぞれ前記入力軸41に対して空転している。前記シフト部材45が前記ギヤ42b(もしくはギヤ42c)と係合している場合には、該シフト部材45を介してその係合しているギヤ42b(もしくはギヤ42c)を前記入力軸41と共に回転させ、前記ギヤ46b(もしくはギヤ46c)を介して前記伝動軸46を回転させる。
【0028】
即ち、前記副変速装置40は、前記ギア42a、42b、42cと、これらギア42a、42b、42cと常時歯合うギヤ46a、46b、46cと、前記シフト部材43、45により、ダブルコーンタイプの同期歯合式歯車変速装置で構成され、ギヤ42aとギヤ46a、ギヤ42bとギヤ46b、ギヤ42cとギヤ46cの各噛合わせにより、伝動比の異なる3段の変速段が設定されている。
【0029】
前記前後進切換え装置50は、前記伝動軸46と平行に、前記ミッションケース8に回転自在に支持された中間軸51と伝動軸55を備えている。前記中間軸51には、前記ギヤ46eと噛合う中間ギヤ51aが一体に固定されている。
【0030】
前記伝動軸55には、前記ギヤ46dと噛合うギヤ56aと、前記ギヤ51aと噛合うギヤ56cを一体に構成したギヤ56bが回転自在に支持されている。前記ギヤ56aとギヤ56bの間には、各ギヤ56a、56bとそれぞれ選選択的に係合、離脱可能なシフト部材57が、前記伝動軸55の軸方向に移動自在に配置されている。
【0031】
例えば、前記シフト部材57が前記ギヤ56a及びギヤ56bから離脱したニュートラル位置にあるときには、前記各ギヤ56a、56bは、それぞれ前記伝動軸55に対して空転している。前記シフト部材57が前記ギヤ56a(もしくはギヤ56b)と係合している場合には、該シフト部材57がその係合しているギヤ56a(もしくはギヤ56b)と共に回転して、前記伝動軸55を回転させる。
【0032】
この時、前記ギヤ56aの回転を前記伝動軸55に伝達する場合と、前記ギヤ56bの回転を前記伝動軸55に伝達する場合では、前記中間ギヤ51aの作用により前記伝動軸55に伝達される回転方向が逆になる。即ち、前記ギヤ56aを介して前記伝動軸55に伝達される回転を、前記作業車輌1の前進方向の回転とすれば、前記ギヤ56bを介して前記伝動軸55に伝達される回転は、前記作業車輌1の後進方向の回転となり、前記作業車輌1の前後進の切換えを行うことができる。
【0033】
連動軸58は、前記ミッションケース8に回転自在に支持され、かつ前記伝動軸55に連結され、該伝動軸55と共に回転する。前記連動軸58には、歯数の異なる一対のギヤ58a、58bが一体に固定されている。出力軸71は、前記連動軸58と平行に、前記ミッションケース8に回転自在に支持され、歯車71aが固定されている。
【0034】
前記超低変速装置60は、前記連動軸58及び出力軸71と平行に、前記ミッションケースに回転自在に支持された切換え軸61を備えている。前記切換え軸61には、歯数の異なるギヤ61a、61b、61cが所定の間隔で固定され、前記ギヤ61bは、前記ギヤ71aと歯合し、前記切換え軸61の回転を前記出力軸71に減速して伝達する。前記超低変速装置60のギヤ列の一部を構成する大径のギヤと小径のギヤが一体に形成されたギヤ62bは、前記出力軸71に回転自在に支持されている。
【0035】
前記切換え軸61には、前記ギヤ58aと噛合う大径のギヤと前記ギヤ62bの大径のギヤと噛合う小径のギヤが一体に形成されたギヤ62aと、前記ギヤ62bの小径のギヤと噛合う大径のギヤ62cと、前記ギヤ58bと噛合う小径のギヤ62dが回転自在に支持されている。前記ギヤ62cとギヤ62dの間には、各ギヤ62c、62dと選択的に係合、離脱可能なシフト部材63が、前記切換え軸61の軸方向に移動自在に配置されている。
【0036】
例えば、前記シフト部材63が前記ギヤ62c、62dから離脱したニュートラル位置にあるときには、前記各ギヤ62c、62dは、それぞれ切換え軸61に対して空転している。前記シフト部材63が前記ギヤ62c(もしくはギヤ62d)と係合している場合には、該シフト部材63が前記ギヤ62c(もしくはギヤ62d)と共に回転して、前記切換え軸61を回転させる。
【0037】
この時、前記シフト部材63が前記ギヤ62cと係合している場合には、前記ギヤ58aとギヤ62a、前記ギヤ62aとギヤ62b、前記ギヤ62bとギヤ62cの組み合わせにより、前記連動軸58の回転が減速されて、前記切換え軸61に伝達される。一方、前記シフト部材63が前記ギヤ62dと係合している場合には、前記ギヤ58bとギヤ62dの組み合わせにより、前記連動軸58の回転が増速されて、前記切換え軸61に伝達される。
【0038】
前記切換え軸61の回転は、前記ギヤ61bとギヤ71aの組み合わせにより、前記切換え軸61の回転が減速されて前記出力軸71に伝達される。前記出力軸71の回転は、ディファレンシャルギヤ72、駆動車軸73等を介して前記後輪3、3に伝達され、後輪3、3を回転させ、前記作業車輌1を走行駆動する。
【0039】
また、前記ギヤ61a、61cの回転は、クイックターンケース75内のクラッチ76に配置された低速回転用のギヤ76aと、高速回転用のギヤ76bに伝達される。前記クラッチ76の作動により、前記ギヤ76a、76bのいずれか一方の回転がディファレンシャルギヤ77等を介して前記前輪2、2に伝達され、前輪2、2を回転駆動させる。なお、クラッチ76を切ることにより、前記前輪2、2への動力の伝達を遮断することもできる。
【0040】
図4に示すように、油タンク85からフィルタ86を介して吸引され、油圧ポンプ87から吐出される圧油の一部は、リリーフバルブ88を介してパワーステアリング用として利用される。また、圧油の他の一部は、リリーフバルブ90を介して走行操作用として利用される。
【0041】
走行操作用の圧油の一部は、ソレノイドバルブ91を通して前記クラッチ76に送られ、前記作業車輌1のクイックターンに利用され、あるいはソレノイドバルブ92を通して、前記作業車輌1の緩旋回に利用される。さらに、前記油圧ポンプ87から吐出された圧油の一部は、前記リリーフバルブ90から逆止弁93を通して前記主変速装置20、主クラッチ30、副変速装置40等の油圧制御回路95に流入する。
【0042】
フィルタ96を通して油圧制御回路95に流入した圧油は、油温センサ97、油圧センサ98でその温度と圧力が検出され、電気的な制御装置(図示せず)へフィードバックされる。フィルタ100は、フィルタ96と油圧センサ98の間に配置されている。
【0043】
前記フィルタ96を通して圧油に一部は、フィルタ101を介して電磁比例減圧弁102へ供給されている。前記電磁比例減圧弁102は、各変速段への変速操作によって移動するシフトピストン103の移動を検知するピン105の作動によって通電され作動する。前記電磁比例減圧弁102の作動によって、フィルタ106及びシャトル弁107を介して前記主クラッチ30に圧油が送られ、前記主変速装置20と前記副変速装置40が接続される。
【0044】
ソレノイドバルブ111とソレノイドバルブ112は、前記副変速装置40の前記シフト部材45の位置を変位させるための油圧アクチュエータ113を制御する。前記油圧アクチュエータ113のシフトピストン115は、前記各ソレノイドバルブ111、112から供給される圧油により伸縮し、その停止位置は、ピン116により保持される。チェックバルブ117は、前記シフトピストン115が移動して前記ピン116が前記シフトピストン115の切り欠き部から軸部へ移動したとき開放され、前記主クラッチ30に供給される油圧を減圧して、該主クラッチ30の切り操作を行う。
【0045】
前記ソレノイドバルブ111から前記油圧アクチュエータ113に圧油が供給されると、前記シフトピストン115が伸張し、前記ソレノイドバルブ112から前記油圧アクチュエータ113に圧油が供給されると、前記シフトピストン115が収縮し、前記副変速装置40の前記シフト部材45を前記入力軸41に沿って移動させる。
【0046】
例えば、前記油圧アクチュエータ111の前記シフトピストン115が伸張位置にあるとき、前記副変速装置40の前記シフト部材45を前記ギヤ42bと噛合わせ、前記シフトピストン115が収縮位置にあるときには、前記シフト部材45を前記ギヤ42cと噛合わせる。また、図4に示すように、シフトピストン115が中間位置にあるときには、前記シフト部材45を、前記ギヤ42b、42cと噛合わないニュートラル位置に位置決めする。
【0047】
ソレノイドバルブ121は、前記副変速装置40の前記シフト部材43の位置を変位させるための油圧アクチュエータ123を制御する。前記油圧アクチュエータ123の前記シフトピストン125は、前記ソレノイドバルブ121から供給される圧油により伸縮し、その停止位置は、ピン126により保持される。チェックバルブ127は、前記シフトピストン125が移動して前記ピン126が前記シフトピストン125の切り欠き部から軸部へ移動したとき開放され、前記主クラッチ30に供給される油圧を減圧して、該主クラッチ30の切り操作を行う。
【0048】
前記ソレノイドバルブ121から前記油圧アクチュエータ123に圧油が供給されると、前記シフトピストン125が伸張し、前記副変速装置40の前記シフト部材43を前記入力軸41に沿って移動させる。
【0049】
例えば、前記油圧アクチュエータ121の前記シフトピストン125が伸張位置にあるとき、前記副変速装置40の前記シフト部材43を前記ギヤ42aと噛合わせ、前記シフトピストン125が収縮位置にあるときには、前記シフト部材43を、前記ギヤ42aと噛合わないニュートラル位置に位置決めする。
【0050】
ソレノイドバルブ131とソレノイドバルブ132は、前記主変速装置20の前記シフト部材23の位置を変位させるための油圧アクチュエータ133を制御する。前記油圧アクチュエータ133のシフトピストン135は、前記各ソレノイドバルブ131、132から供給される圧油により伸縮し、その停止位置は、ピン136により保持される。チェックバルブ137は、前記シフトピストン135が移動して前記ピン136が前記シフトピストン135の切り欠き部から軸部へ移動したとき開放され、前記主クラッチ30に供給される油圧を減圧して、該主クラッチ30の切り操作を行う。
【0051】
前記ソレノイドバルブ131から前記油圧アクチュエータ133に圧油が供給されると、前記シフトピストン135が伸張し、前記ソレノイドバルブ132から前記油圧アクチュエータ133に圧油が供給されると、前記シフトピストン135が収縮し、前記主変速装置20の前記シフト部材23を前記伝動軸21に沿って移動させる。
【0052】
例えば、前記油圧アクチュエータ131の前記シフトピストン135が伸張位置にあるとき、前記主変速装置20の前記シフト部材23を前記ギヤ22aと噛合わせ、前記シフトピストン135が収縮位置にあるときには、前記シフト部材23を前記ギヤ22bと噛合わせる。また、図4に示すように、シフトピストン135が中間位置にあるときには、前記シフト部材23は、前記ギヤ22a、22bと噛合わないニュートラル位置に位置決めされる。
【0053】
ソレノイドバルブ141とソレノイドバルブ142は、前記主変速装置20の前記シフト部材25の位置を変位させるための油圧アクチュエータ143を制御する。前記油圧アクチュエータ143のシフトピストン145は、前記各ソレノイドバルブ141、142から供給される圧油により伸縮し、その停止位置は、ピン146により保持される。チェックバルブ147は、前記シフトピストン145が移動して前記ピン146が前記シフトピストン145の切り欠き部から軸部へ移動したとき開放され、前記主クラッチ30に供給される油圧を減圧して、該主クラッチ30の切り操作を行う。
【0054】
前記ソレノイドバルブ141から前記油圧アクチュエータ143に圧油が供給されると、前記シフトピストン145が伸張し、前記ソレノイドバルブ142から前記油圧アクチュエータ143に圧油が供給されると、前記シフトピストン145が収縮し、前記主変速装置20の前記シフト部材25を前記伝動軸21に沿って移動させる。
【0055】
例えば、前記油圧アクチュエータ141の前記シフトピストン145が伸張位置にあるとき、前記主変速装置20の前記シフト部材25を前記ギヤ22cと噛合わせ、前記シフトピストン145が収縮位置にあるときには、前記シフト部材25を前記ギヤ22dと噛合わせる。また、図4に示すように、シフトピストン145が中間位置にあるときには、前記シフト部材25は、前記ギヤ22c、22dと噛合わないニュートラル位置に位置決めされる。
【0056】
図5に示すように、本実施の形態では、前記図4に示す7個のソレノイドバルブ111、112、121、131、132、141、142の作動により、前記主変速装置20では4段、前記副変速装置40では3段の変速を行うことができ、この変速段数の組み合わせにより12段に変速を行うことができる。
【0057】
前記構成の作業車輌1においては、前記副変速装置40が、前記主クラッチ30の直下流側にあるので、その副変速装置40を構成する同期歯合式歯車変速装置が、前記前後進切換え装置50等のイナーシャの影響を受けることなく、素早く同期して、変速時間の短縮を図ることができ、変速操作手段の操作に基づく前記各アクチュエータ113、123、133、143の作動によるトランスミッション(いわゆるノンクラッチタイプトランスミッション)のシフトショックを低減することができる。
【0058】
また、前記ノンクラッチタイプのトランスミッションにあっては、前記主変速装置20及び副変速装置40を同時に操作する変速段において前記主変速装置20に比して前記副変速装置40の変速が遅れる傾向にあるが、前記副変速装置40をダブルコーンタイプの同期歯合式歯車変速装置で構成したので、前記副変速装置40の変速をスムーズにして、前記遅れによるシフトショックを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】作業車輌の側面図である。
【図2】作業車輌のミッションケース内に配置された変速装置の配置を示し、(a)は、側面断面図、(b)は、前後進切替え装置の平面図、(c)は、前後進切替え装置の側面図である。
【図3】作業車輌の伝動系統図である。
【図4】作業車輌の主変速装置、主クラッチ、副変速装置の油圧系統を示す油圧回路図である。
【図5】各変速段における油圧回路のソレノイドバルブの作動図である。
【符号の説明】
【0060】
1 作業車輌
6 エンジン
20 主変速装置
30 主クラッチ
40 副変速装置
50 前後進切換え装置
73 駆動車軸
113 アクチュエータ(油圧アクチュエータ)
123 アクチュエータ(油圧アクチュエータ)
133 アクチュエータ(油圧アクチュエータ)
143 アクチュエータ(油圧アクチュエータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの動力を、主変速装置、主クラッチ、副変速装置及び前後進切換え装置を有するトランスミッションを介して駆動車軸に伝達してなる作業車輌において、
前記主変速装置、副変速装置及び主クラッチは、変速操作手段に基づくアクチュエータの作動により操作され、
前記副変速装置は、同期歯合式歯車変速装置からなり、かつ前記主クラッチに対して伝動経路の直下流側に配置され、
前記前後進切換え装置は、前記副変速装置の伝動下流側に配置されてなる、
ことを特徴とする作業車輌。
【請求項2】
前記副変速装置は、ダブルコーンタイプの同期歯合式歯車変速装置からなり、
前記主変速装置は、前記主クラッチの伝動上流側に配置され、かつシングルコーンタイプの同期歯合式歯車変速装置からなる、
請求項1記載の作業車輌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−245972(P2007−245972A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73429(P2006−73429)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】